説明

フューエルロック機構および運動変換機構

【課題】プランジャーの突出・引込み運動をケーブルの押し引き運動へ変換するための機構であって、小型・軽量化ができ、室内スペースを広くできると共に、レイアウトの自由度を確保することができる機構を提供する。
【解決手段】フューエルリッドのプランジャーが突出位置にあり、かつスライドドアがロックされている状態で、係止体7の嵌合部7dとプランジャー3の被嵌合部3cとが嵌合可能な位置からズレており、その状態からプランジャーが引込み位置に移動すると、プランジャーの被嵌合部3cが前記嵌合部7dと嵌合可能な位置に移動し、プランジャーの突出運動が規制される、フューエルロック機構1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車のフューエルリッドおよびスライドドアの開閉同士のインターロックをとるフューエルロック機構および運動変換機構に関する。さらに詳しくは、フューエルリッドの開時にスライドドアを開かないように規制すると共に、スライドドアのロック時にフューエルリッドをロックするフューエルロック機構およびそれに適した運動変換機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には図6に示すフューエルリッドの開閉制御機構が記載されている。このフューエルリッドの開閉制御機構100はフューエルリッドFの開閉運動によって往復運動するプランジャー101aの往復運動が伝達されるプッシュプルケーブル101と、スライドドアのスライドを停止させるストッパ102と、前記プッシュプルケーブル101の往復運動によりストッパ102を開閉操作する機構103とからなる。そのストッパ102を開閉操作する機構103はハウジング104と、そのハウジングの内部に、フューエルリッドFの開閉に対応する開方向と閉方向とに摺動自在に収容され、押動面105aを備えたリッドスライダ105と、前記ハウジング内部に、ストッパ102を作動させる作動方向と解除させる解除方向とに摺動自在に収容され、リッドスライダ105が閉方向に摺動すると前記押動面105aによって解除方向に押動される当接面106aを備えたストッパスライダ106と、そのストッパスライダ106を作動方向に付勢する弾性部材107とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−348671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フューエルリッドおよびスライドドアは車体の側面に配置されているのが通常であり、フューエルリッドの開閉に伴うプランジャーの引込み・突出方向と、スライドドアが開くのを規制するストッパを作動させるケーブルの押し引き方向とは異なる。そのため、スライドドアは車体の側面に沿ってスライドさせると、給油のためにフューエルリッドを開いたり、あるいは給油口に給油ガンを挿入したりすると、フューエルリッドおよび給油ガンがスライドドアと干渉してしまう。
そのため、特許文献1のフューエルリッドの開閉制御機構のようにプッシュプルケーブルを用いた場合には、プッシュプルケーブルの剛性のために約180度方向転換させて配索することが困難であるために、必要なスペースが大きくなってしまい、車両の室内空間を犠牲とし、レイアウトの自由度も制限されてしまう。
【0005】
また、特許文献1のような、ストッパーをフューエルリッド開閉と連動させて、フューエルリッドがオープン時にはストッパーがドアの全開を阻止するフューエルリッドの開閉制御機構は、走行中にフューエルリッドが開かないように、ドアをロックした場合にはフューエルリッドの開閉をするプランジャーを、係止体がアクチュエータにより駆動し嵌合してロックする機構を採用することができる。しかし、ドアをロックした際に係止体がプランジャーと嵌合するように一律に駆動する場合には、フューエルリッドを閉じる前にドアロックがされると、フューエルロックがされずにドアロックがされてしまい、フューエルロックがされる前に車両が走行してしまう場合も懸念される。そのため、ドアをロックしてもフューエルリッドをロックすることができることが、さらに好ましい。従来からフューエルリッドの開閉に伴うプランジャーの引込み・突出運動を、レバーなどの回動する駆動要素によってケーブルの押し引き運動へと変更し、そのケーブルの押し引き運動によりドアのストッパーを連動させる機構がある。このものは、プッシュプルケーブルに比べて小さな半径で方向転換することができるが、フューエルリッド付近の車内に回動可能なスペースを必要とする。
【0006】
そこで、本発明は小型・軽量化ができ、室内スペースを広くできると共に、レイアウトの自由度を確保することができるプランジャーの突出・引込み運動をケーブルの押し引き運動へ変換するための機構を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフューエルロック機構は、フューエルリッドおよびスライドドアの開閉同士のインターロックをとるフューエルロック機構であって、前記フューエルリッドの開閉によりそれぞれ突出・引込み運動するプランジャーと、そのプランジャーの運動により押し・引きされるケーブルと、そのケーブルの一端が接続されると共に、前記スライドドアの作動範囲に出没自在に配置されるストッパと、前記ケーブルの他端が接続されると共に、前記プランジャーの突出・引込み運動をケーブルの押し・引き運動に変換する運動変換要素と、前記スライドドアのロック・アンロックに同期して、ロック時に前記プランジャーに近づく方向に移動し、アンロック時にプランジャーから離れる方向に移動してプランジャーの運動を規制する係止体とを備えており、前記プランジャーに係止体と嵌合する被嵌合部が設けられると共に、前記係止体に被嵌合部と嵌合する嵌合部が設けられており、そのプランジャーが突出位置にあり、かつスライドドアがロックされている状態で、前記係止体の嵌合部とプランジャーの被嵌合部とが嵌合可能な位置から外れており、前記状態からプランジャーが引込み位置に移動すると、プランジャーの被嵌合部が前記嵌合部と嵌合可能な位置に移動し、プランジャーの突出運動が規制されることを特徴としている。
【0008】
本発明の運動変換機構はハウジングと、そのハウジングに対し突出・引込み運動するように設けられているプランジャーと、そのプランジャーの運動により押し・引き運動されるケーブルと、前記ケーブルの端部が接続されると共に、前記プランジャーの突出・引込み運動をケーブルの押し・引き運動に変換する運動変換要素とからなり、前記運動変換要素が、前記プランジャーに接続されると共に、そのプランジャーの運動に伴って移動する変向部材と、その変向部材に押動されて移動すると共に、ケーブルの一端が接続された移動子と、前記移動子を、変向部材を押し返す方向に付勢し、その方向に移動させる付勢部材とを備えており、前記移動子が変向部材に押動されることにより前記ケーブルを一方に運動させ、前記付勢部材により付勢されて移動することによりケーブルを他方に運動させ、前記変向部材と移動子とにそれぞれが互いに接触して摺動可能な傾斜面をそれぞれ有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
(1)本発明のフューエルロック機構は、前記プランジャーの突出・引込み運動をケーブルの押し・引き運動に変換する運動変換要素を備えていることにより、前記プランジャーの突出・引込み方向の運動をケーブルの押引方向に変換するので、プッシュプルケーブルでは配置できない位置への押引方向への方向変換も可能であるので、プランジャーの突出・引込み方向と略90度の角で交差するケーブルの押引方向への変換をすることができるので、フューエルロック機構の小型・軽量化ができ、室内スペースを広くできると共に、車両のレイアウトの自由度を確保することもできる。また、本発明のフューエルロック機構は、フューエルリッドが開いている(すなわちプランジャーが突出している)と、ストッパがスライドドアのスライド範囲に突出しスライドドアの閉作動を規制する。また、前記スライドドアのロック・アンロックに同期して、ロック時に前記プランジャーに近づく方向に移動し、アンロック時にプランジャーから離れる方向に移動してプランジャーの運動を規制する係止体を備えている。その係止体には嵌合部が設けられ、プランジャーにはその嵌合部と嵌合する被嵌合部が設けられている。それら嵌合部と被嵌合部とはフューエルリッドが閉じていると(すなわちプランジャーが引き込まれていると)、嵌合可能な配置にされている。そのため、前記プランジャーが突出位置にあり、かつスライドドアがロックされている状態からプランジャーが引込み位置に移動させると、プランジャーの被嵌合部が前記嵌合部と嵌合可能な位置に移動するので、プランジャーの突出運動が規制される。このように、係止体をスライドドアのロック・アンロックのみに同期させて作動させても、係止体の動作を確認するためのリミットスイッチなどの部材がなくとも動作が確実である。
【0010】
(2)このようなフューエルロック機構では、前記運動変換要素が、前記プランジャーに接続されると共に、そのプランジャーの運動に伴って移動する変向部材と、その変向部材に押動されて移動すると共に、ケーブルの一端が接続された移動子と、前記移動子を、変向部材を押し返す方向に付勢し、その方向に移動させる付勢部材とを備えており、前記移動子が変向部材に押動されることにより前記ケーブルを一方に運動させ、前記付勢部材により付勢されて移動することによりケーブルを他方に運動させ、前記変向部材と移動子とにそれぞれが互いに接触して摺動可能な傾斜面をそれぞれ有している場合には、それぞれの傾斜面を摺動してプランジャーの運動がケーブルの運動に変換されるので、省スペースである。そのため、フューエルリッドの近傍にそれら装置を配置することができ、組み付けが容易である。また、それぞれの傾斜面の角度を変更することで、適切なカム比を得ることができ、例えばプランンジャーの移動量を増幅させストッパを作動させる十分なケーブルの押し引き量を得ることができる。逆に、小さな力で長い距離を移動させることにより、移動量は小さいが大きな力を得ることもできる。
【0011】
(3)また、前記係止体を移動させるモータをさらに備えており、前記係止体が、モータの回転が伝達されるラックギアを有する本体と、その本体に、プランジャー側に突出する方向と本体側に引込まれる方向とに移動自在に設けられ、かつ先端に前記嵌合部が形成された突出部と、その突出部を本体に対してプランジャ側に付勢する付勢部材とからなり、前記スライドドアがロックされた状態で、かつ前記係止体の嵌合部の位置がプランジャーの被嵌合部の位置と対応していない場合に、前記突出部の先端部がプランジャーあるいは変向部材の外周面を押圧した状態で、本体側に引込まれており、前記プランジャーが引込み方向に移動する間、係止体の突出部の嵌合部がプランジャーあるいは変向部材の外周面を摺動し、前記プランジャーが引込み位置に到達すると、付勢部材により突出部が突出し、嵌合部が被嵌合部へ嵌合する場合には、フューエルリッドが開いているときにスライドドアがロックされても、突出部の先端でプランジャーあるいは変向部材の外周を押圧すると共に、その後方の部分を本体側に引込ませた状態で待機させることができる。また、その後フューエルリッドを閉じてプランジャーを引込む際にも、突出部の先端がプランジャーの外周と摺動して前記待機した状態を維持できる。さらに、プランジャーの被嵌合部が係止体の嵌合部と嵌合可能な位置へ移動してくると、突出部が突出してフューエルリッドをロックすることができる。
【0012】
(4)さらに、前記プランジャー及び前記運動変換要素を内部に収容するハウジングを備え、そのハウジングの内面と変向部材とが嵌合しながら摺動するスライド構造を有しており、そのスライド構造により変向部材の動作がプランジャーの押し引き方向に規制されている場合には、変向部材の摺動が確実である。
【0013】
(5)本発明の運動変換機構は、変向部材がプランジャーの突出・引込み運動による移動により移動子を押動する。その際にお互いの傾斜面を摺動させているので、伝達が確実であり、かつ省スペースである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の運動変換機構の一実施形態を示す平面図である。
【図2】図2は本発明が車体に用いられる様子を示す概略図である。
【図3】図3は本発明のフューエルロック機構の一実施形態を示す平面図である。
【図4】図4aは図1のフューエルロック機構および運動変換機構に用いられる嵌合部と被嵌合部の実施形態を示す模式図、図4bは図4aの他の実施形態を示す模式図、図4cは図4aのさらに他の実施形態を示す模式図である。
【図5】図5は図1の運動変換要素が作動する様子を示す概略図である。
【図6】図6は従来の技術を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
はじめに図2を参照して本発明のフューエルロック機構が用いられる車体を説明する。前記フューエルロック機構1は、例えばワンボックスタイプの車体20などに用いられる。その車体20の側面にはスライドドア21が設けられ、車体20の中央のレール20aと上下端に設けられたレール20b、20bに沿ってスライドする。また、前記スライドドア21の後方の車体20の側面にはフューエルリッド22が設けられている。前記フューエルロック機構1は、アクチュエータ11(運動変換機構)と、その運動変換機構11から運動が伝達されスライドドア21のスライドを規制するストッパ6とからなる。前記運動変換機構11は、フューエルリッド22の周囲に配置されており、ストッパ6は中央のレール20aの付近に設けられている。また、ストッパ6を上下のレール20bに設けてもよい。
【0016】
次に図1を用いて運動変換機構11について説明する。前記運動変換機構11は箱状のハウジング2を備えている。そのハウジング2の内部には、プランジャー3が設けられており、フューエルリッド22(図2参照)の開閉動作によりそれぞれハウジング2の外へ突出したり、あるいはハウジング内に引込まれたりする。そのプランジャー3の突出・引込み運動は運動変換要素4によりケーブル5の押し・引き運動に変換される。そして、前記ケーブル5が押し・引き運動することにより前記スライドドア21(図2参照)の作動範囲にストッパ6を突出させたり、引っ込めさせたりすることができる。また、前記プランジャー3の近傍には、前記スライドドア21のロック・アンロックに同期して、モータ7aの駆動によりロック時に前記プランジャー3に近づく方向に移動し、アンロック時にプランジャー3から離れる方向に移動してプランジャー3の運動を規制する係止体7が配置されている。
【0017】
前記ハウジング2は底板の周囲から側壁が立設した有底筒状であり、上方の開口には蓋2aが取り付けられている。
【0018】
前記プランジャー3は、フューエルリッドを車体の外向きに突き放す従来公知のプッシュ式のもので、先端側をハウジング2の側壁から外部に突出させ、後端をハウジング2の内部へ延ばした棒状部3aと、その棒状部3aのハウジング2内の部分を収納している収納部3bとからなる。その収納部3bは棒状部3aを付勢部材により外向きに付勢しているが、棒状部3aが所定量だけ収納されると、その位置で棒状部3aをロックするロック機構を備えている。その固定された状態から再度、棒状部3aを収納部3bに収納させる方向に押動すると、前記ロック機構のロックが解除され、棒状部3aが収納部3bから突出される。
【0019】
運動変換要素4は、前記プランジャー3に接続されると共に、そのプランジャーの運動により移動する変向部材8と、その変向部材8に押動されて移動すると共に、ケーブル5の一端が接続された移動子9とからなり、移動子9には変向部材8側に移動させる方向に付勢する圧縮コイルバネなどの付勢部材10がさらに接続されている。また、変向部材8と移動子9とには互いに接触して摺動可能な傾斜面8a、9aをそれぞれ有している。本実施形態ではそれら斜面の角度はほぼ45°にされており、それら斜面8a、9a同士を接触させると、それらの移動方向が直角になるように形成されている。なお、前記変向部材8とプランジャー3の後端とを接続しないで、当接させておいてもよい。その場合はプランジャー3が引込まれる際にその後端部で変向部材8が押動される。反対にプランジャー3が突出する際には付勢部材10の付勢力により移動子9に押動されプランジャー3に追従するように移動する。付勢部材10は、移動子9とハウジングとの間に、ケーブルの押し方向に力に抗するように配置することにより、プランジャー3が突き出し位置にいるときには、付勢部材10が移動子9を介して変向部材8を押し上げるとともに、ケーブル5を引くこととなる。付勢部材10を配することにより、運動変換要素とストッパーとの間にプッシュプルケーブルを用いなくてもよい。なお、前記運動変換機構11はフューエルリッド22の上下・前後に自由に設けることができるが、スペースに余裕のある後方に設けるのが好ましい。
なお、前記ハウジング2、変向部材8および移動子9は、亜鉛合金などの金属あるいは合成樹脂で一体成形されるのがよい。合成樹脂としてはポリブチレンテレフタレート(PBT)またはポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましく、特にポリオキシメチレン(POM)のような耐磨耗性の高い材料が好ましい。
【0020】
図1においては、前記ハウジング2の側壁は、前記変向部材8の摺動方向、すなわちプランジャー3の突出・引込み方向に平行に設けられ、変向部材8の凸部(図示せず)と摺動する変向部材摺動溝2dを有し、移動子9の移動方向に平行に設けられ、移動子9の凸部(図示せず)と摺動する移動子摺動溝2eを有する。すなわち、前記変向部材8および移動子9は互いに向かい合う側にそれぞれ斜面を有しており、当該斜面同士が摺動自在にされると共に、向かい合わない他方の側では変向部材摺動溝2dと移動子摺動溝2eとにそれぞれ摺動自在な状態で変向部材及び移動子の移動方向が規制されている。そのため、変向部材8と移動子9の移動は変向部材摺動溝2dと移動子摺動溝2eとにより安定化され、プランジャーの動作による力が、適正にインナーケーブル5に伝えられることとなる。
【0021】
図1においては、前記変向部材8は全体としてL字状に形成されており、一方の先端側に斜面8aが形成されている。また、他方はプランジャー3の後端に接続あるいは接している。前記移動子9は変向部材8に押動されることにより付勢部材10の付勢力に抗して移動し、前記ケーブル5を押出している。また、プランジャー3の突出により変向部材8が移動子9から離間する方向に移動すると、移動子9は前記付勢部材10により付勢され、変向部材の斜面8aに接しており、ケーブル5を引込む方向に運動させる。
【0022】
前記ハウジング2の底面には、変向部材8の移動を案内するための変向部材摺動溝2dと、移動子9の移動を案内するための移動子摺動溝2eが形成されている。変向部材摺動溝2dは1本設けられ、移動子摺動溝2eは1本設けられているが、変向部材8及び移動子9の移動が適切に行われるのであれば本数が制限されるものではなく、どちらか1本であってもよい。なお、移動子9に押圧部31を設け、プランジャー3がフューエルリッドが閉じた状態の位置となったときの押圧部の位置にスイッチ32を配置して、例えば、フューエルリッドが開いた際に信号を送信して、開状態となったことを電気的に表示させるようにして、フューエルリッドの開閉状態を電気的に表示してもよい。
【0023】
図3に示すように、前記ストッパ6は前記スライドドア21(図2参照)の中央のレール20a内に出没自在に設けられた剛性の高い板状部材である。そのストッパ6は回動軸6aにより車体20に取り付けられるベース6bに回動自在に設けられている。また、ストッパ6の一方の面の回動軸6aの上方には前記ケーブル5に係止される係止部6cが設けられている。一方、ケーブル5の端部にはその係止部6cを通すための長孔5bが形成された連結部材5aが連結されており、係止部6cを移動自在に係止している。インナーケーブル5は、金属素線を複数本撚り合わせた従来公知のものを用いることができ、プッシュ・プルケーブルも用いることができる。プッシュ・プルケーブルにより、その一端は移動子9に連結され、他端は前記ストッパ6に連結され、それらの間で押し引き運動が伝達されていることができるが、係止部6cと長孔5bとが長孔の長さ方向に遊嵌状態にあるときにストッパ6がベース6bに収納された状態となるようにストッパ6にバネを取り付けることにより、インナーケーブル5としてプルケーブルを用いることもできる。
【0024】
図1において、係止体7は、モータ7aの回転が伝達されるラックギア7bを外周に有する筒状の本体7cと、本体7cに、プランジャー3側に突出する方向と本体7c側に引込まれる方向に移動自在に設けられ、かつ先端に嵌合部7dが形成された突出部7eと、その突出部7eを本体7cに対してプランジャー3側に付勢する付勢部材7fとからなる。モータ7aの回転軸にはウォーム12aが設けられている。そのウォーム12aの回転はウォームホイール12bと同心に設けられたピニオン12cによりラック7bに伝達される。係止体7は前記スライドドア21のロック・アンロックに同期して、ロック時にモータ7aの回転駆動によりラックギア7bを作動させ本体7cをプランジャー3に近づく方向に移動させる。一方、アンロック時にはモータ7aが逆回転し、本体7cをプランジャー3から離れる方向に移動させる。
【0025】
一方、プランジャー3には係止体7の嵌合部7dと嵌合する被嵌合部3cが設けられている。図4aに示すようにプランジャー3に貫通孔を形成して被嵌合部3cとし、係止体7の先端に孔(3c)に嵌合できるテーパ状の部位を形成して嵌合部7dとしている。また、図4bに示すようにプランジャー3bの外周に凹溝を形成して被嵌合部3cとし、係止体7の突出部7eを板状の部材として、その先端に内向きに前記凹溝の底周面に沿う略U字状の切り欠きを形成して嵌合部7dとしてもよい。さらに、図4cに示すように前記プランジャー3に突起を設けて被嵌合部3cとし、係止体7の先端に前記突起(3c)に嵌合できる孔を形成して嵌合部7dとしてもよい。なお、収納部3bについては、上述のように従来公知の機構を用いることができ、例えば、プランジャー3を過剰に押し込むこと(オーバーストローク)なしにプランジャー3cを引込み位置に固定できる場合には、図4a〜図4cのいずれの嵌合構造も用いることができる。ただし、プランジャー3cが過剰に押し込まれた後に引込み位置に固定される場合には、過剰な押し込み時においてプランジャー3に設けられた係合突起が収納部3bの内側に設けられた案内部に案内されて周方向に回転し、当該回転後に過剰な押し込みから突き出し方向に戻って引込み位置に固定されるような機構を用い、図4aまたは図4cの嵌合構造を用いることで、過剰な押し込み前にプランジャー3の被係合部3cが嵌合部7dと嵌合してしまうことがなく、フューエルリッドが開いている時にドアロックがされて突出部7eがプランジャー3の外周面を押圧した状態でのロックをスムーズに行うことができる。
【0026】
次に、図5を用いて運動変換機構11が作動する様子を説明する。基準の状態ではフューエルリッド22(図2参照)が閉じられ、プランジャー3は本体2内へ引込まれ、かつスライドドア21(図2参照)がロックされ、係止体の嵌合部7dがプランジャーの被嵌合部3cと嵌合している(フューエルロック状態S1)。その状態S1からスライドドア21のロックを解除すると、それに同期してモータ7aが回転しそれが係止体7のラックギア7bと噛み合って、本体7cをプランジャー3から離間させる方向に移動させ、嵌合が解除される(フューエルアンロック状態S2)。
【0027】
次いで、閉じているフューエルリッド22をさらに内向きに押動すると(図1の符号A参照)、変向部材8も押動される。すると、前記変向部材8の斜面8aが移動子9の斜面9aを登るように摺動しつつ、全体としてL方向に移動する(状態S3)。そうすると、プッシュ式のプランジャー3の係止状態が解放され、プランジャー3がフューエルリッド22を外向きに突き放し、フューエルリッド22が開いて給油することができるようになる(状態S4)。このとき、プランジャー3は外向きに突出するので、その被嵌合部3cはR方向に移動し、係止体7の嵌合部7dと嵌合できない位置にくる。また、変向部材8はプランジャー3の移動に追従しR方向に移動する。そうすると、変向部材8の斜面8aと摺動する斜面9aを有する移動子9が付勢部材10により変更部材8側に押動され、上方に移動して、ケーブル5が引っ張られる。そして、ストッパ6(図3参照)がスライドドア21のスライド範囲に突出し、スライドドア21のスライドを規制する。
【0028】
次いで、前記状態S4のフューエルリッド22が開いた状態でスライドドアがロックされると、係止体7の本体7cがモータ7a駆動によりプランジャー3側に接近する(状態S5)。しかし、被嵌合部3cがR方向に移動しているので、嵌合できず、突出部7eが付勢部材7f(図1参照)の付勢力により変向部材8の外周面を押圧し、そのまま待機している。その後、フューエルリッド22が運転者などにより閉じられると、前記突出部7eの先端が変向部材8およびプランジャー3の外周面上を摺動し、被嵌合部3cが嵌合部7dと嵌合できる位置にくる。そうすると、突出部7eが付勢部材7fの付勢力で突出し、被嵌合部3cに嵌合され、元のフューエルロック状態(S1)に戻る。
【符号の説明】
【0029】
1 フューエルロック機構
2 ハウジング
2a 蓋
2b 変向部材側壁
2c 移動子側壁
2d 変向部材摺動溝
2e 移動子摺動溝
3 プランジャー
3a 棒状部
3b 収納部
3c 被嵌合部
4 運動変換要素
5 ケーブル
5a 連結部材
5b 長孔
6 ストッパ
6a 回動軸
6b ベース
6c 係止部
7 係止体
7a モータ
7b ラックギア
7c 本体
7d 嵌合部
7e 突出部
7f 付勢部材
8 変向部材
8a 斜面
9 移動子
9a 斜面
10 付勢部材
11 運動変換機構
12a ウォーム
12b ウォームホイール
12c ピニオン
20 車体
20a 中央のレール
21 スライドドア
22 フューエルリッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フューエルリッドおよびスライドドアの開閉同士のインターロックをとるフューエルロック機構であって、
前記フューエルリッドの開閉によりそれぞれ突出・引込み運動するプランジャーと、
そのプランジャーの運動により押し・引きされるケーブルと、
そのケーブルの一端が接続されると共に、前記スライドドアの作動範囲に出没自在に配置されるストッパと、
前記ケーブルの他端が接続されると共に、前記プランジャーの突出・引込み運動をケーブルの押し・引き運動に変換する運動変換要素と、
前記スライドドアのロック・アンロックに同期して、ロック時に前記プランジャーに近づく方向に移動し、アンロック時にプランジャーから離れる方向に移動してプランジャーの運動を規制する係止体とを備えており、
前記プランジャーに係止体と嵌合する被嵌合部が設けられると共に、前記係止体に被嵌合部と嵌合する嵌合部が設けられており、
そのプランジャーが突出位置にあり、かつスライドドアがロックされている状態で、前記係止体の嵌合部とプランジャーの被嵌合部とが嵌合可能な位置から外れており、
前記状態からプランジャーが引込み位置に移動すると、プランジャーの被嵌合部が前記嵌合部と嵌合可能な位置に移動し、プランジャーの突出運動が規制される、フューエルロック機構。
【請求項2】
前記運動変換要素が、前記プランジャーに接続されると共に、そのプランジャーの運動に伴って移動する変向部材と、その変向部材に押動されて移動すると共に、ケーブルの一端が接続された移動子と、前記移動子を、変向部材を押し返す方向に付勢し、その方向に移動させる付勢部材とを備えており、
前記移動子が変向部材に押動されることにより前記ケーブルを一方に運動させ、前記付勢部材により付勢されて移動することによりケーブルを他方に運動させ、
前記変向部材と移動子とにそれぞれが互いに接触して摺動可能な傾斜面をそれぞれ有している、請求項1に記載のフューエルロック機構。
【請求項3】
前記係止体を移動させるモータをさらに備えており、
前記係止体が、モータの回転が伝達されるラックギアを有する本体と、
その本体に、プランジャー側に突出する方向と本体側に引込まれる方向とに移動自在に設けられ、かつ先端に前記嵌合部が形成された突出部と、
その突出部を本体に対してプランジャー側に付勢する付勢部材とからなり、
前記スライドドアがロックされた状態で、かつ前記係止体の嵌合部の位置がプランジャーの被嵌合部の位置と対応していない場合に、前記突出部の先端部がプランジャーあるいは変向部材の外周面を押圧した状態で、本体側に引込まれており、
前記プランジャーが引込み方向に移動する間、係止体の突出部の嵌合部がプランジャーあるいは変向部材の外周面を摺動し、前記プランジャーが引込み位置に到達すると、付勢部材により突出部が突出し、嵌合部が被嵌合部へ嵌合する請求項1または2のいずれかに記載のフューエルロック機構。
【請求項4】
前記プランジャー及び前記運動変換要素を内部に収容するハウジングを備え、
そのハウジングの内面と変向部材とが嵌合しながら摺動するスライド構造を有しており、
そのスライド構造により変向部材の動作がプランジャーの押し引き方向に規制されている請求項1、2あるいは3のいずれかに記載のフューエルロック機構。
【請求項5】
ハウジングと、
そのハウジングに対し突出・引込み運動するように設けられているプランジャーと、
そのプランジャーの運動により押し・引き運動されるケーブルと、
前記ケーブルの端部が接続されると共に、前記プランジャーの突出・引込み運動をケーブルの押し・引き運動に変換する運動変換要素とからなり、
前記運動変換要素が、前記プランジャーに接続されると共に、そのプランジャーの運動に伴って移動する変向部材と、その変向部材に押動されて移動すると共に、ケーブルの一端が接続された移動子と、前記移動子を、変向部材を押し返す方向に付勢し、その方向に移動させる付勢部材とを備えており、
前記移動子が変向部材に押動されることにより前記ケーブルを一方に運動させ、前記付勢部材により付勢されて移動することによりケーブルを他方に運動させ、
前記変向部材と移動子とにそれぞれが互いに接触して摺動可能な傾斜面をそれぞれ有している、運動変換機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−80338(P2011−80338A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235722(P2009−235722)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコーポレーション (362)
【Fターム(参考)】