フラッシュバルブ
【課題】便器洗浄用として十分な最大瞬間流量を確保しつつ、主弁の閉弁動作を従来に増して速めることで節水の目的を更に十分に果すことのできるフラッシュバルブを提供する。
【解決手段】フラッシュバルブを、給水路10と、主弁12と、圧力室16と、第1及び第2導水孔34,36と、水抜路18を開放して主弁12の開弁動作を起させる起動弁20と、第2導水孔部36を開閉する導水制御弁38とを含んで構成し、更に主弁12の閉弁動作中、導水制御弁38を主弁12に追従して移動させて第2導水孔部36を開状態に維持し、主弁12の閉弁動作末期に導水制御弁38を閉弁させる追従移動機構50を付加する。
【解決手段】フラッシュバルブを、給水路10と、主弁12と、圧力室16と、第1及び第2導水孔34,36と、水抜路18を開放して主弁12の開弁動作を起させる起動弁20と、第2導水孔部36を開閉する導水制御弁38とを含んで構成し、更に主弁12の閉弁動作中、導水制御弁38を主弁12に追従して移動させて第2導水孔部36を開状態に維持し、主弁12の閉弁動作末期に導水制御弁38を閉弁させる追従移動機構50を付加する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はフラッシュバルブに関し、詳しくは節水のための技術手段に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一定量の水を便器洗浄水として給水した後、自動給水停止するフラッシュバルブとして図14に示すものが用いられていた。
同図において200は給水路で、202は給水路200を開閉するピストン式の主弁であり、この主弁202が弁座204から離間することで即ち開弁することで、給水路200における上流部200aと下流部200bとが連通し、給水が行われる。
また主弁202が弁座204に着座することで即ち閉弁することで、それら上流部200aと下流部200bとが遮断され、給水が停止する。
【0003】
主弁202の背後(図中上側)には圧力室208が形成されており、主弁202は通常時はこの圧力室208内の水の圧力により図15に示す閉弁状態に維持される。
この圧力室208からは、圧力室208内の水を給水路200における下流部200bに抜き出すための水抜路210が延び出しており、その水抜路210上に水抜弁としての起動弁212が配設されている。
【0004】
214は主弁202を貫通し、給水路200における上流部200aと圧力室208とを連通させて、上流部200aの水を圧力室208に導入させる小孔からなる第1導水孔部で、主弁202の開弁後において上流部200aの水がこの第1導水孔部214を通じ圧力室208内に導入されることで、圧力室208内の水の圧力が上昇せしめられる。
尚この第1導水孔部214は、後述の第2導水孔部218とともに全体の導水孔を構成している。
【0005】
216は操作棒で、この操作棒216の操作により起動弁212が傾動せしめられる(図15参照)。
このフラッシュバルブでは、操作棒216を操作して起動弁212を傾動させると、水抜路210が開放状態となって圧力室208の水が給水路200における下流部200bに抜き出され、圧力室208内の水の圧力が消失する。
ここにおいて主弁202が給水路200における上流部200aの圧力により上昇して開弁し、給水路200が開放状態となって給水が行われる。
【0006】
圧力室208内には、主弁202の開弁後において給水路200における上流部200aの水が第1導水孔部214を通じて導入され、次第に圧力が増大する。
そしてその圧力が所定圧力に達することによって主弁202がその押圧作用で弁座204に着座し閉弁する。ここにおいて給水路200が遮断状態となって給水が停止する。
【0007】
このフラッシュバルブにはまた、第1導水孔部214に加えて同じく小孔からなる第2導水孔部218が、主弁202を貫通し、給水路200における上流部200aと圧力室208とを連通させる状態で設けられており、そしてその第2導水孔部218を開閉する、即ち第1導水孔部214と第2導水孔部218とで構成される全体の導水孔を広開度状態と絞った状態とに切り替える導水制御弁220が主弁202に設けられている。
ここで導水制御弁220は、弁座222への着座によって第2導水孔部218を閉状態とし、また弁座222から離間することでこれを開状態とする。
224は導水制御弁220に当接してこれを開弁させるストッパ軸でねじ226を有しており、図中上下方向の位置即ち導水制御弁220への当接位置が上下に調節可能とされている。
【0008】
このフラッシュバルブは全体として次のように動作する。
即ち、図15に示しているように操作棒216を操作して起動弁212を傾動させると、圧力室208内の水が水抜路210を通じて給水路200における下流部200bに抜き出され、ここにおいて主弁202が図17に示しているように給水路200における上流部200aの圧力にて開弁動作する。
この状態で給水路200が開放状態となって給水が行われる。
【0009】
図16に示しているように主弁202が一杯まで開弁した状態では、第2導水孔部218上の導水制御弁220はストッパ軸224により図中下向きに相対的に押し下げられた状態にあって開弁した状態(即ち導水孔を広開度とした状態)にあり、従ってこの状態の下で圧力室208内には第1導水孔部214と第2導水孔部218との2つの導水孔部を通じて給水路200における上流部200aの水が導入される。
従って圧力室208の圧力は第1導水孔部214のみの場合に比べて速やかに圧力上昇し、その後の主弁202の閉弁動作の開始時期が早められる。
【0010】
そして図17に示しているように主弁202が閉弁動作を始めて所定ストローク図中下向きに下降したところで、導水制御弁220がストッパ軸224から離間するのと併せて閉弁状態となり(給水路200における上流部200aの圧力により)第2導水孔部218を閉鎖する。
その後は第1導水孔部214を通じてのみ上流部200aの水が圧力室208へと流入し、主弁202の閉弁速度はそれまでに比べて鈍化する。
そして圧力室208の圧力が所定圧力となることによって主弁202が閉弁状態となり、ここにおいて給水路200が遮断状態となって給水が停止する。
【0011】
このフラッシュバルブでは、主弁202が弁座204に着座する際にはゆっくりと着座即ち閉弁するが、これは急激な閉弁を防止してウォータハンマが発生するのを回避するためである。
【0012】
以上のように第2導水孔部218,導水制御弁220及びストッパ軸224を備えたフラッシュバルブの場合、これらを備えていないものに比べて主弁202の開弁後における閉弁動作を速めることができ、従って最大瞬間流量を維持しつつその後余分に消費される水の量を節約することができ、節水を果すことができる。
【0013】
このような第2導水孔部218,導水制御弁220及びストッパ軸224を備えたフラッシュバルブは、例えば下記特許文献1,特許文献2,特許文献3等に開示されている。
しかしながらこれらのフラッシュバルブにおいては、ストッパ軸224の位置、詳しくは導水制御弁220に対する当接位置(つまりは導水制御弁220がストッパ軸224から離れる位置)が調節可能であるとは言っても、調節後においてはその当接位置は一定であり、従って開弁後において主弁202が閉弁動作する際、導水制御弁220を短時間(主弁202における短いストローク分)しか開弁状態に維持できず、節水を十分に果すことができないといった問題があった。
【0014】
【特許文献1】特開昭54−7624号公報
【特許文献2】実開平3−27106号公報
【特許文献3】特開昭53−4336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明はこのような事情を背景とし、便器洗浄用として十分な最大瞬間流量を確保しつつ、主弁の閉弁動作を従来に増して速めることで節水の目的を更に十分に果すことのできるフラッシュバルブを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
而して請求項1のものは、(a)給水路と、(b)該給水路を開閉する主弁と、(c)該主弁の背後に形成され水の圧力により該主弁を押圧して閉弁状態に維持する圧力室と、(d)該主弁を貫通して前記給水路における該主弁の上流部と該圧力室とを連通させ、該給水路の水を該圧力室に導入する小孔からなる導水孔と、(e)該圧力室の水を前記給水路における前記主弁の下流部に抜き出す水抜路と、(f)該水抜路を開放して該主弁の開弁動作を起させる起動弁と、(g)該起動弁を操作する操作部と、を設けて成るフラッシュバルブにおいて、前記導水孔を広開度状態と絞った状態とに切り替える導水制御弁を設け、且つ前記圧力室への水の導入による前記主弁の閉弁動作中、該導水制御弁を該主弁に追従して移動させて該導水孔を前記広開度状態に維持し、該主弁の閉弁動作末期に該導水制御弁を移動停止して該導水孔を前記絞った状態に切り替える該導水制御弁の追従移動機構を設けたことを特徴とする。
【0017】
請求項2のものは、請求項1において、前記導水制御弁の追従移動機構が、前記主弁の外部に設けてあることを特徴とする。
【0018】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記導水制御弁の追従移動機構が、前記導水孔を前記広開度状態に保持するように該導水制御弁を押した状態で前記主弁に追従して移動する可動の弁押えを有していることを特徴とする。
【0019】
請求項4のものは、請求項3において、前記追従移動機構は、前記弁押えを前記主弁の閉弁方向に付勢するばねを有しており、該主弁の閉弁動作時に該ばねの付勢力に基づいて前記弁押えにより前記導水制御弁を前記導水孔が前記広開度となる状態に保持した状態で該主弁の閉弁動作に追従して該導水制御弁を移動させ、該弁押えが可動ストローク分移動したところで該弁押えを該導水制御弁から離間させて、該導水制御弁を前記給水路の圧力により前記導水孔を絞った状態に動作させるものであることを特徴とする。
【0020】
請求項5のものは、請求項3,4の何れかにおいて、前記弁押えの前記導水制御弁への当接面には水路形成用の溝が設けてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0021】
以上のように本発明は、圧力室への水の導入による主弁の閉弁動作中、主弁に追従して導水制御弁を移動させることにより導水孔を広開度状態に維持し、そして主弁の閉弁動作末期に導水制御弁を移動停止して導水孔を絞った状態とする追従移動機構を設けたもので、本発明によれば、主弁の閉弁動作に際して導水孔を広開度状態に維持する時間を長くとることができ、これにより従来に増して主弁の閉弁動作を速め得て、十分な最大瞬間流量を確保しつつ完全閉弁状態に到るまでの時間を短縮化でき、無駄に消費される水量を従来に増して少なくすることができる。即ち従来に増して節水を果すことができる。
【0022】
ここで上記追従移動機構は主弁の外部に設けておくことができる(請求項2)。
このようにすれば、主弁そのものの構造を変えることなく、単に追従移動機構を付加するだけでフラッシュバルブに上記の機能を付加することが可能となる。
【0023】
この場合において上記導水制御弁の追従移動機構は、導水孔を広開度状態に保持するように導水制御弁を押した状態で主弁に追従して移動する可動の弁押えを有するものとなしておくことができる(請求項3)。
【0024】
更にこの追従移動機構は、弁押えを主弁の閉弁方向に付勢するばねを有するものとなし、主弁の閉弁動作時にばねの付勢力に基づいて弁押えにより導水制御弁を導水孔が広開度となる状態に保持しつつ主弁の閉弁動作に追従して移動させ、そして弁押えが可動ストローク分移動したところで導水制御弁から離間させて、その後導水制御弁を給水路の圧力で導水孔を絞った状態に動作させるものとなしておくことができる(請求項4)。
【0025】
請求項5は、弁押えの導水制御弁への当接面に水路形成用の溝を設けたもので、このようにしておくことにより、弁押えにおける導水制御弁への当接面の面積を十分大きくして当接を安定的に行わせる一方で、その当接面を大きくすることによって水路を塞いでしまうのを防止し、かかる溝によって第2導水孔を通じての水の流れを確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において10は給水路で、12は給水路10を開閉するピストン式の主弁である。
主弁12は常時は弁座14に着座した状態にあって、給水路10における上流部10aと下流部10bとを遮断した状態にある。
このフラッシュバルブでは、主弁12が弁座14から図中上向きに離れて開弁することで、給水路10における上流部10aと下流部10bとが連通状態となって、上流部10aの水が下流部10bへと流れ込み、便器(大便器)に対し洗浄水として給水される。
【0027】
主弁12の背後(図中上側)には圧力室16が形成されており、主弁12は通常時はこの圧力室16内の水の圧力で図中下向きに押圧され閉弁状態に維持される。
圧力室16からは、その内部の水を給水路10における下流部10bに抜き出すための水抜路(第1の水抜路)18が延び出しており、その水抜路18上に起動弁(第1の起動弁)20が設けられている。
水抜路18はこの起動弁20にて開閉される。即ち水抜路18における上流部18aと下流部18bとが起動弁20にて連通及び遮断状態とされる。
【0028】
ここで起動弁20は、電磁パイロット弁22とダイヤフラム弁24とを有している。
ダイヤフラム弁24は電磁パイロット弁22にて開閉制御され、電磁パイロット弁22が開弁することでこのダイヤフラム弁24が開弁動作し、また電磁パイロット弁22が閉弁することでダイヤフラム弁24が閉弁動作する。
尚、起動弁20は図示を省略する押ボタン式の操作部の操作に基づいて動作する。
【0029】
この実施形態のフラッシュバルブでは、起動弁20が開弁動作すると、圧力室16内の水が水抜路18を通じて給水路10における下流部10bへと抜き出され、ここにおいて圧力室16内の水の圧力が消失してピストン式の主弁12が給水路10における上流部10aの圧力により図中上向きに開弁動作する。
ここにおいて給水路10が開放状態となって給水が行われ、便器に洗浄水が勢い良く供給されて便器洗浄が行われる。
【0030】
圧力室16からは別の水抜路(第2の水抜路)26が主弁12を貫通して延び出しており、その水抜路26上に傾動式の起動弁(第2の起動弁)28が設けられている。
30はこの起動弁28を操作するための押ボタン式の操作部で、この操作部30を図中左向きに押込操作すると、ロッド32によって起動弁28が傾動させられ開弁動作する。
起動弁28が開弁すると、主弁12を貫通した水抜路26が開放状態となって圧力室16内の水が水抜路26を通じて給水路10における下流部10bに抜き出される。
尚この起動弁28及びその操作部30は停電時等における非常用のもので、通常は上記の起動弁20が図示を省略する押ボタン式の操作部の操作によって動作させられる。
【0031】
上記ピストン式の主弁12には、給水路10における上流部10aの水を圧力室16内に導入する小孔からなる第1導水孔部34と第2導水孔部36とが、主弁12を貫通する状態で設けられている。
即ちこの実施形態においても主弁12を貫通する導水孔が第1導水孔部34と第2導水孔部36とで構成されている。
本実施形態では第2導水孔部36が閉鎖された状態が、それら第1導水孔部34及び第2導水孔部36にて構成される導水孔が絞られた状態であり、また第2導水孔部36が開いた状態が、全体の導水孔が広開度となった状態である。
【0032】
これら導水孔部のうち一方の第1導水孔部34は常時開放状態とされ、また他方の第2導水孔部36には導水制御弁38が設けられていて、この導水制御弁38の開弁及び閉弁動作により第2導水孔部36が開放及び遮断されるようになっている。
尚、35はメッシュからなるストレーナである。
【0033】
導水制御弁38は、図1の部分拡大図,図3及び図4に示しているように平板状の弁本体40と、これより図中上向きに突き出した弁軸42とを有しており、その弁本体40が第2導水孔部36に沿って部分的に形成されたシリンダ部43内を図中上下方向に摺動可能とされている。
ここで平板状の弁本体40は、図3及び図4に示しているように平面形状が四角形状をなしており、シリンダ部43の断面円形の内周面との間に水路44-1が形成されている。
【0034】
この導水制御弁38は、弁本体40が弁座46に着座することにより閉弁し第2導水孔部36を遮断する。
また一方弁本体40が弁座46から図中下向きに離間することで第2導水孔部36を開放する。
【0035】
尚、図1の部分拡大図に示しているように弁軸42回りにも水路44-2が形成されている。
導水制御弁38は、弁本体40が弁座46に着座したとき、弁軸42が主弁12の上面から上向きに突き出した状態となる。詳しくは弁軸42が弁座46の取付部材48の上面より上向きに突き出した状態となる。
【0036】
図1において、50は主弁12に設けられた導水制御弁38の追従移動機構で、この追従移動機構50は、主弁12の閉弁動作中導水制御弁38をその主弁12の移動に追従して図中下向きに移動させ、これを開弁状態に即ち第2導水孔部36を開放状態に維持する働きをなす。
【0037】
図中52は上向きカップ状をなす有底円筒状の弁押えで、この追従移動機構50は、かかる弁押え52を主弁12に追従して図中下向きに移動させることで、導水制御弁38を開弁状態に維持する。
この弁押え52は、図3に示しているようにその底部の下面が導水制御弁38の弁軸42に当接する当接面とされている。
その当接面には径方向に溝54が形成されている。
【0038】
この溝54は、上記水路44-1,44-2を通じて流入してきた水を圧力室16へと導く水路を形成するものである。
即ちこの実施形態では、弁押え52の当接面は導水制御弁38における弁軸42の上端面よりも大きく形成されており、これにより弁押え52を導水制御弁38の弁軸42に対して安定的に当接させることができる。
この場合溝54が形成されていないと、その当接面が水路44-2を閉鎖してしまう恐れがある。
そこでこの実施形態では弁押え52の当接面に溝54を形成し、水路44-2を確保するようにしている。
尚図2,図5に詳しく示しているように、弁押え52の底部の中心部には貫通の小孔56が形成されている。
【0039】
一方その上端の外周面には複数の突起58が周方向に所定間隔で設けられており、それら突起58と58との間において水路60(図3参照)が形成されている。
ここで水路60は、弁押え52の内側に形成された後述のばね室62と、主弁12の背後の圧力室16とを連通させるための水路である。
【0040】
図1において、64は弁押え52の保持部材であって、この保持部材64は上部の軸部66と、下部の円筒形状をなす逆カップ状の保持部68とを有しており、その保持部68において上記弁押え52を上下に移動可能に保持している。
この保持部68の外周面には雄ねじ部70が設けられており、この雄ねじ部70が、フラッシュバルブのボデー72に形成された雌ねじ部に螺合されている。
保持部材64は、その螺合位置を図中上下方向に変化させることで上下の高さ位置が調整可能である。
【0041】
図3に示すようにこの保持部68にて保持された上記弁押え52の内側にはばね室62が形成されている。
このばね室62は、上記のように水路60にて主弁12の背後の圧力室16と常時連通状態にある。
【0042】
ばね室62内には、ばね73が収容されており、このばね73によって弁押え52が図中下向き即ち主弁12の閉弁方向に付勢され、主弁12の図中下向きの移動即ち閉弁動作に伴って、保持部68に保持された弁押え52が主弁12の移動に追従して保持部68から下向きに押し出される。
但し保持部68の下端部にはストッパ74が設けられており、このストッパ74に弁押え52の突起58が当ることにより弁押え52の更なる移動が停止される。
【0043】
次に本実施形態のフラッシュバルブの作用を図6〜図13に基づいて具体的に説明する。
図1に示しているようにこのフラッシュバルブは、通常時は主弁12が閉弁し、またこのとき導水制御弁38は自重で沈み込んだ状態にある。
この状態で起動弁20を開弁動作させると、ここにおいて図6に示しているように水抜路18が開放状態となって、圧力室16内の水がこの水抜路18を通じて給水路10における下流部10bに抜き出され、圧力室16の圧力が消失する。
尚このとき、ばね室62内の水もまた水路60を通じて外部に流出する。
【0044】
このように圧力室16内の圧力が消失すると、先ず第2導水孔部36上の導水制御弁38が給水路10における上流部10aの圧力で弁本体40が弁座46に当る位置まで上昇させられ、また主弁12が上流部10aの圧力で上向きに押し上げられ開弁動作を開始する。
【0045】
その過程で先ず図7に示しているように導水制御弁38の弁軸42が、ストローク一杯まで図中下向きに押し出された状態にある弁押え52の当接面に当接し、その後主弁12の引続く開弁動作に伴って、弁押え52が内部のばね73の付勢力に抗して上向きに押し上げられる。
そして弁押え52がある程度押し上げられると、その時点で一定量圧縮されたばね73の付勢力が打勝つに到って、その後主弁12の開弁動作とともに導水制御弁38が弁座46から離間して導水制御弁38が開弁した状態となる。図8はこのときの状態を表している。
【0046】
その後図9に示しているように起動弁20の閉弁により第1導水孔部34を通じて給水路10における上流部10aの水が圧力室16内に導かれ、圧力室16内の圧力が上昇し始める。
【0047】
このとき第2導水孔部36を通じても圧力室16内に水が導かれる。即ち第1導水孔部34と、第2導水孔部36との両方から上流部10aの水が圧力室16内に流入するようになり、圧力室16内への水の導入量が急激に増大せしめられる。
そして導入された水の圧力により、主弁12が開弁完了後速やかに閉弁動作を開始する。
【0048】
上記弁押え52は、主弁12の閉弁動作中主弁12に追従して図中下向きに移動し、導水制御弁38を依然開弁状態に保持する。
即ち弁押え52は、主弁12の閉弁動作に追従して図中下向きに移動することで、主弁12に設けられた導水制御弁38を同じく主弁12に追従して下向きに移動させ、かかる導水制御弁38を主弁12の閉弁動作中も開弁状態に維持する。
従って主弁12は、閉弁動作を開始した後においても図10に示しているように第1導水孔部34及び第2導水孔部36のそれぞれからの導水による圧力室16内の急激な圧力上昇によって速い速度で閉弁動作を続行する。
【0049】
而して主弁12が閉弁位置直近まで到ると、図11に示しているように弁押え52の突起58が保持部68のストッパ74に当って更なる下降が阻止され、ここにおいて導水制御弁38は主弁12の更なる移動につれて閉弁動作し、第2導水孔部36を遮断つまり閉鎖した状態とする。
従って以後は第1導水孔部34を通じてのみ圧力室16内に水が導かれることとなり、圧力室16内への導水の速度は鈍化する。
即ち主弁12は、導水制御弁38の閉弁後においてはゆっくりと閉弁動作し、最終的に弁座14に着座して完全閉弁状態となる。
図12はこのときの状態を表している。
【0050】
以上のような本実施形態のフラッシュバルブでは、主弁12の閉弁動作に際して第2導水孔部36を開状態に維持する時間を長くとることができ、これにより従来に増して主弁12の閉弁動作を速め得て、十分な最大瞬間流量を確保しつつ完全閉弁状態に到るまでの時間を短縮化でき、無駄に消費される水量を従来に増して少なくすることができる。即ち従来に増して節水を果すことができる。
【0051】
因みに図13は本実施形態のフラッシュバルブの給水開始以後の瞬間給水量の時間的な変化を比較例との比較において表したものである。
ここで比較例1は、上記のような導水制御弁38を設けていない従来タイプのフラッシュバルブにおける瞬間給水量の変化を、また比較例2は単に導水制御弁38を設けただけで本実施形態のような追従移動機構50を設けない場合の瞬間給水量の変化を表している。
【0052】
同図に示しているように本実施形態のフラッシュバルブは、比較例1,比較例2と同等の瞬間最大流量を確保しており、一方で瞬間最大流量を過ぎた後は速やかに給水量が減少し、全体としての給水量は大幅に減少している。
因みに比較例1の場合、水圧0.07MPa時において開弁から閉弁に到るまでの全体の給水量は10L、比較例2の場合は8Lであった。これに対して本実施形態の場合、全体の給水量は6Lであった。
図中比較例2の曲線と本実施形態の曲線とで囲まれた部分の面積(図中網点の部分)が、本実施形態に従って追従移動機構50を設けたことによる節水量を表している。
【0053】
また本実施形態では、上記追従移動機構50を主弁12の外部に設けてあるため、主弁12そのものの構造を変えることなく、単に追従移動機構50を付加するだけで、フラッシュバルブに上記の機能を付加することができる。
【0054】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態であるフラッシュバルブを示す断面図である。
【図2】図1に示す追従移動機構を分解して示す斜視図である。
【図3】図1の要部断面図である。
【図4】導水制御弁を示す図である。
【図5】弁押えを示す図である。
【図6】同実施形態のフラッシュバルブの作用説明図である。
【図7】図6に続く作用説明図である。
【図8】図7に続く作用説明図である。
【図9】図8に続く作用説明図である。
【図10】図9に続く作用説明図である。
【図11】図10に続く作用説明図である。
【図12】図11に続く作用説明図である。
【図13】本実施形態のフラッシュバルブの給水開始以後の瞬間給水量の時間的な変化を比較例とともに表した図である。
【図14】従来のフラッシュバルブを示す断面図である。
【図15】図14のフラッシュバルブの作用説明図である。
【図16】図15に続く作用説明図である。
【図17】図16に続く作用説明図である。
【符号の説明】
【0056】
10 給水路
10a 上流部
10b 下流部
12 主弁
16 圧力室
18,26 水抜路
20,28 起動弁
30 操作部
34 第1導水孔部
36 第2導水孔部
38 導水制御弁
50 追従移動機構
52 弁押え
54 溝
62 ばね室
73 ばね
74 ストッパ
【技術分野】
【0001】
この発明はフラッシュバルブに関し、詳しくは節水のための技術手段に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一定量の水を便器洗浄水として給水した後、自動給水停止するフラッシュバルブとして図14に示すものが用いられていた。
同図において200は給水路で、202は給水路200を開閉するピストン式の主弁であり、この主弁202が弁座204から離間することで即ち開弁することで、給水路200における上流部200aと下流部200bとが連通し、給水が行われる。
また主弁202が弁座204に着座することで即ち閉弁することで、それら上流部200aと下流部200bとが遮断され、給水が停止する。
【0003】
主弁202の背後(図中上側)には圧力室208が形成されており、主弁202は通常時はこの圧力室208内の水の圧力により図15に示す閉弁状態に維持される。
この圧力室208からは、圧力室208内の水を給水路200における下流部200bに抜き出すための水抜路210が延び出しており、その水抜路210上に水抜弁としての起動弁212が配設されている。
【0004】
214は主弁202を貫通し、給水路200における上流部200aと圧力室208とを連通させて、上流部200aの水を圧力室208に導入させる小孔からなる第1導水孔部で、主弁202の開弁後において上流部200aの水がこの第1導水孔部214を通じ圧力室208内に導入されることで、圧力室208内の水の圧力が上昇せしめられる。
尚この第1導水孔部214は、後述の第2導水孔部218とともに全体の導水孔を構成している。
【0005】
216は操作棒で、この操作棒216の操作により起動弁212が傾動せしめられる(図15参照)。
このフラッシュバルブでは、操作棒216を操作して起動弁212を傾動させると、水抜路210が開放状態となって圧力室208の水が給水路200における下流部200bに抜き出され、圧力室208内の水の圧力が消失する。
ここにおいて主弁202が給水路200における上流部200aの圧力により上昇して開弁し、給水路200が開放状態となって給水が行われる。
【0006】
圧力室208内には、主弁202の開弁後において給水路200における上流部200aの水が第1導水孔部214を通じて導入され、次第に圧力が増大する。
そしてその圧力が所定圧力に達することによって主弁202がその押圧作用で弁座204に着座し閉弁する。ここにおいて給水路200が遮断状態となって給水が停止する。
【0007】
このフラッシュバルブにはまた、第1導水孔部214に加えて同じく小孔からなる第2導水孔部218が、主弁202を貫通し、給水路200における上流部200aと圧力室208とを連通させる状態で設けられており、そしてその第2導水孔部218を開閉する、即ち第1導水孔部214と第2導水孔部218とで構成される全体の導水孔を広開度状態と絞った状態とに切り替える導水制御弁220が主弁202に設けられている。
ここで導水制御弁220は、弁座222への着座によって第2導水孔部218を閉状態とし、また弁座222から離間することでこれを開状態とする。
224は導水制御弁220に当接してこれを開弁させるストッパ軸でねじ226を有しており、図中上下方向の位置即ち導水制御弁220への当接位置が上下に調節可能とされている。
【0008】
このフラッシュバルブは全体として次のように動作する。
即ち、図15に示しているように操作棒216を操作して起動弁212を傾動させると、圧力室208内の水が水抜路210を通じて給水路200における下流部200bに抜き出され、ここにおいて主弁202が図17に示しているように給水路200における上流部200aの圧力にて開弁動作する。
この状態で給水路200が開放状態となって給水が行われる。
【0009】
図16に示しているように主弁202が一杯まで開弁した状態では、第2導水孔部218上の導水制御弁220はストッパ軸224により図中下向きに相対的に押し下げられた状態にあって開弁した状態(即ち導水孔を広開度とした状態)にあり、従ってこの状態の下で圧力室208内には第1導水孔部214と第2導水孔部218との2つの導水孔部を通じて給水路200における上流部200aの水が導入される。
従って圧力室208の圧力は第1導水孔部214のみの場合に比べて速やかに圧力上昇し、その後の主弁202の閉弁動作の開始時期が早められる。
【0010】
そして図17に示しているように主弁202が閉弁動作を始めて所定ストローク図中下向きに下降したところで、導水制御弁220がストッパ軸224から離間するのと併せて閉弁状態となり(給水路200における上流部200aの圧力により)第2導水孔部218を閉鎖する。
その後は第1導水孔部214を通じてのみ上流部200aの水が圧力室208へと流入し、主弁202の閉弁速度はそれまでに比べて鈍化する。
そして圧力室208の圧力が所定圧力となることによって主弁202が閉弁状態となり、ここにおいて給水路200が遮断状態となって給水が停止する。
【0011】
このフラッシュバルブでは、主弁202が弁座204に着座する際にはゆっくりと着座即ち閉弁するが、これは急激な閉弁を防止してウォータハンマが発生するのを回避するためである。
【0012】
以上のように第2導水孔部218,導水制御弁220及びストッパ軸224を備えたフラッシュバルブの場合、これらを備えていないものに比べて主弁202の開弁後における閉弁動作を速めることができ、従って最大瞬間流量を維持しつつその後余分に消費される水の量を節約することができ、節水を果すことができる。
【0013】
このような第2導水孔部218,導水制御弁220及びストッパ軸224を備えたフラッシュバルブは、例えば下記特許文献1,特許文献2,特許文献3等に開示されている。
しかしながらこれらのフラッシュバルブにおいては、ストッパ軸224の位置、詳しくは導水制御弁220に対する当接位置(つまりは導水制御弁220がストッパ軸224から離れる位置)が調節可能であるとは言っても、調節後においてはその当接位置は一定であり、従って開弁後において主弁202が閉弁動作する際、導水制御弁220を短時間(主弁202における短いストローク分)しか開弁状態に維持できず、節水を十分に果すことができないといった問題があった。
【0014】
【特許文献1】特開昭54−7624号公報
【特許文献2】実開平3−27106号公報
【特許文献3】特開昭53−4336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明はこのような事情を背景とし、便器洗浄用として十分な最大瞬間流量を確保しつつ、主弁の閉弁動作を従来に増して速めることで節水の目的を更に十分に果すことのできるフラッシュバルブを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
而して請求項1のものは、(a)給水路と、(b)該給水路を開閉する主弁と、(c)該主弁の背後に形成され水の圧力により該主弁を押圧して閉弁状態に維持する圧力室と、(d)該主弁を貫通して前記給水路における該主弁の上流部と該圧力室とを連通させ、該給水路の水を該圧力室に導入する小孔からなる導水孔と、(e)該圧力室の水を前記給水路における前記主弁の下流部に抜き出す水抜路と、(f)該水抜路を開放して該主弁の開弁動作を起させる起動弁と、(g)該起動弁を操作する操作部と、を設けて成るフラッシュバルブにおいて、前記導水孔を広開度状態と絞った状態とに切り替える導水制御弁を設け、且つ前記圧力室への水の導入による前記主弁の閉弁動作中、該導水制御弁を該主弁に追従して移動させて該導水孔を前記広開度状態に維持し、該主弁の閉弁動作末期に該導水制御弁を移動停止して該導水孔を前記絞った状態に切り替える該導水制御弁の追従移動機構を設けたことを特徴とする。
【0017】
請求項2のものは、請求項1において、前記導水制御弁の追従移動機構が、前記主弁の外部に設けてあることを特徴とする。
【0018】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記導水制御弁の追従移動機構が、前記導水孔を前記広開度状態に保持するように該導水制御弁を押した状態で前記主弁に追従して移動する可動の弁押えを有していることを特徴とする。
【0019】
請求項4のものは、請求項3において、前記追従移動機構は、前記弁押えを前記主弁の閉弁方向に付勢するばねを有しており、該主弁の閉弁動作時に該ばねの付勢力に基づいて前記弁押えにより前記導水制御弁を前記導水孔が前記広開度となる状態に保持した状態で該主弁の閉弁動作に追従して該導水制御弁を移動させ、該弁押えが可動ストローク分移動したところで該弁押えを該導水制御弁から離間させて、該導水制御弁を前記給水路の圧力により前記導水孔を絞った状態に動作させるものであることを特徴とする。
【0020】
請求項5のものは、請求項3,4の何れかにおいて、前記弁押えの前記導水制御弁への当接面には水路形成用の溝が設けてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0021】
以上のように本発明は、圧力室への水の導入による主弁の閉弁動作中、主弁に追従して導水制御弁を移動させることにより導水孔を広開度状態に維持し、そして主弁の閉弁動作末期に導水制御弁を移動停止して導水孔を絞った状態とする追従移動機構を設けたもので、本発明によれば、主弁の閉弁動作に際して導水孔を広開度状態に維持する時間を長くとることができ、これにより従来に増して主弁の閉弁動作を速め得て、十分な最大瞬間流量を確保しつつ完全閉弁状態に到るまでの時間を短縮化でき、無駄に消費される水量を従来に増して少なくすることができる。即ち従来に増して節水を果すことができる。
【0022】
ここで上記追従移動機構は主弁の外部に設けておくことができる(請求項2)。
このようにすれば、主弁そのものの構造を変えることなく、単に追従移動機構を付加するだけでフラッシュバルブに上記の機能を付加することが可能となる。
【0023】
この場合において上記導水制御弁の追従移動機構は、導水孔を広開度状態に保持するように導水制御弁を押した状態で主弁に追従して移動する可動の弁押えを有するものとなしておくことができる(請求項3)。
【0024】
更にこの追従移動機構は、弁押えを主弁の閉弁方向に付勢するばねを有するものとなし、主弁の閉弁動作時にばねの付勢力に基づいて弁押えにより導水制御弁を導水孔が広開度となる状態に保持しつつ主弁の閉弁動作に追従して移動させ、そして弁押えが可動ストローク分移動したところで導水制御弁から離間させて、その後導水制御弁を給水路の圧力で導水孔を絞った状態に動作させるものとなしておくことができる(請求項4)。
【0025】
請求項5は、弁押えの導水制御弁への当接面に水路形成用の溝を設けたもので、このようにしておくことにより、弁押えにおける導水制御弁への当接面の面積を十分大きくして当接を安定的に行わせる一方で、その当接面を大きくすることによって水路を塞いでしまうのを防止し、かかる溝によって第2導水孔を通じての水の流れを確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において10は給水路で、12は給水路10を開閉するピストン式の主弁である。
主弁12は常時は弁座14に着座した状態にあって、給水路10における上流部10aと下流部10bとを遮断した状態にある。
このフラッシュバルブでは、主弁12が弁座14から図中上向きに離れて開弁することで、給水路10における上流部10aと下流部10bとが連通状態となって、上流部10aの水が下流部10bへと流れ込み、便器(大便器)に対し洗浄水として給水される。
【0027】
主弁12の背後(図中上側)には圧力室16が形成されており、主弁12は通常時はこの圧力室16内の水の圧力で図中下向きに押圧され閉弁状態に維持される。
圧力室16からは、その内部の水を給水路10における下流部10bに抜き出すための水抜路(第1の水抜路)18が延び出しており、その水抜路18上に起動弁(第1の起動弁)20が設けられている。
水抜路18はこの起動弁20にて開閉される。即ち水抜路18における上流部18aと下流部18bとが起動弁20にて連通及び遮断状態とされる。
【0028】
ここで起動弁20は、電磁パイロット弁22とダイヤフラム弁24とを有している。
ダイヤフラム弁24は電磁パイロット弁22にて開閉制御され、電磁パイロット弁22が開弁することでこのダイヤフラム弁24が開弁動作し、また電磁パイロット弁22が閉弁することでダイヤフラム弁24が閉弁動作する。
尚、起動弁20は図示を省略する押ボタン式の操作部の操作に基づいて動作する。
【0029】
この実施形態のフラッシュバルブでは、起動弁20が開弁動作すると、圧力室16内の水が水抜路18を通じて給水路10における下流部10bへと抜き出され、ここにおいて圧力室16内の水の圧力が消失してピストン式の主弁12が給水路10における上流部10aの圧力により図中上向きに開弁動作する。
ここにおいて給水路10が開放状態となって給水が行われ、便器に洗浄水が勢い良く供給されて便器洗浄が行われる。
【0030】
圧力室16からは別の水抜路(第2の水抜路)26が主弁12を貫通して延び出しており、その水抜路26上に傾動式の起動弁(第2の起動弁)28が設けられている。
30はこの起動弁28を操作するための押ボタン式の操作部で、この操作部30を図中左向きに押込操作すると、ロッド32によって起動弁28が傾動させられ開弁動作する。
起動弁28が開弁すると、主弁12を貫通した水抜路26が開放状態となって圧力室16内の水が水抜路26を通じて給水路10における下流部10bに抜き出される。
尚この起動弁28及びその操作部30は停電時等における非常用のもので、通常は上記の起動弁20が図示を省略する押ボタン式の操作部の操作によって動作させられる。
【0031】
上記ピストン式の主弁12には、給水路10における上流部10aの水を圧力室16内に導入する小孔からなる第1導水孔部34と第2導水孔部36とが、主弁12を貫通する状態で設けられている。
即ちこの実施形態においても主弁12を貫通する導水孔が第1導水孔部34と第2導水孔部36とで構成されている。
本実施形態では第2導水孔部36が閉鎖された状態が、それら第1導水孔部34及び第2導水孔部36にて構成される導水孔が絞られた状態であり、また第2導水孔部36が開いた状態が、全体の導水孔が広開度となった状態である。
【0032】
これら導水孔部のうち一方の第1導水孔部34は常時開放状態とされ、また他方の第2導水孔部36には導水制御弁38が設けられていて、この導水制御弁38の開弁及び閉弁動作により第2導水孔部36が開放及び遮断されるようになっている。
尚、35はメッシュからなるストレーナである。
【0033】
導水制御弁38は、図1の部分拡大図,図3及び図4に示しているように平板状の弁本体40と、これより図中上向きに突き出した弁軸42とを有しており、その弁本体40が第2導水孔部36に沿って部分的に形成されたシリンダ部43内を図中上下方向に摺動可能とされている。
ここで平板状の弁本体40は、図3及び図4に示しているように平面形状が四角形状をなしており、シリンダ部43の断面円形の内周面との間に水路44-1が形成されている。
【0034】
この導水制御弁38は、弁本体40が弁座46に着座することにより閉弁し第2導水孔部36を遮断する。
また一方弁本体40が弁座46から図中下向きに離間することで第2導水孔部36を開放する。
【0035】
尚、図1の部分拡大図に示しているように弁軸42回りにも水路44-2が形成されている。
導水制御弁38は、弁本体40が弁座46に着座したとき、弁軸42が主弁12の上面から上向きに突き出した状態となる。詳しくは弁軸42が弁座46の取付部材48の上面より上向きに突き出した状態となる。
【0036】
図1において、50は主弁12に設けられた導水制御弁38の追従移動機構で、この追従移動機構50は、主弁12の閉弁動作中導水制御弁38をその主弁12の移動に追従して図中下向きに移動させ、これを開弁状態に即ち第2導水孔部36を開放状態に維持する働きをなす。
【0037】
図中52は上向きカップ状をなす有底円筒状の弁押えで、この追従移動機構50は、かかる弁押え52を主弁12に追従して図中下向きに移動させることで、導水制御弁38を開弁状態に維持する。
この弁押え52は、図3に示しているようにその底部の下面が導水制御弁38の弁軸42に当接する当接面とされている。
その当接面には径方向に溝54が形成されている。
【0038】
この溝54は、上記水路44-1,44-2を通じて流入してきた水を圧力室16へと導く水路を形成するものである。
即ちこの実施形態では、弁押え52の当接面は導水制御弁38における弁軸42の上端面よりも大きく形成されており、これにより弁押え52を導水制御弁38の弁軸42に対して安定的に当接させることができる。
この場合溝54が形成されていないと、その当接面が水路44-2を閉鎖してしまう恐れがある。
そこでこの実施形態では弁押え52の当接面に溝54を形成し、水路44-2を確保するようにしている。
尚図2,図5に詳しく示しているように、弁押え52の底部の中心部には貫通の小孔56が形成されている。
【0039】
一方その上端の外周面には複数の突起58が周方向に所定間隔で設けられており、それら突起58と58との間において水路60(図3参照)が形成されている。
ここで水路60は、弁押え52の内側に形成された後述のばね室62と、主弁12の背後の圧力室16とを連通させるための水路である。
【0040】
図1において、64は弁押え52の保持部材であって、この保持部材64は上部の軸部66と、下部の円筒形状をなす逆カップ状の保持部68とを有しており、その保持部68において上記弁押え52を上下に移動可能に保持している。
この保持部68の外周面には雄ねじ部70が設けられており、この雄ねじ部70が、フラッシュバルブのボデー72に形成された雌ねじ部に螺合されている。
保持部材64は、その螺合位置を図中上下方向に変化させることで上下の高さ位置が調整可能である。
【0041】
図3に示すようにこの保持部68にて保持された上記弁押え52の内側にはばね室62が形成されている。
このばね室62は、上記のように水路60にて主弁12の背後の圧力室16と常時連通状態にある。
【0042】
ばね室62内には、ばね73が収容されており、このばね73によって弁押え52が図中下向き即ち主弁12の閉弁方向に付勢され、主弁12の図中下向きの移動即ち閉弁動作に伴って、保持部68に保持された弁押え52が主弁12の移動に追従して保持部68から下向きに押し出される。
但し保持部68の下端部にはストッパ74が設けられており、このストッパ74に弁押え52の突起58が当ることにより弁押え52の更なる移動が停止される。
【0043】
次に本実施形態のフラッシュバルブの作用を図6〜図13に基づいて具体的に説明する。
図1に示しているようにこのフラッシュバルブは、通常時は主弁12が閉弁し、またこのとき導水制御弁38は自重で沈み込んだ状態にある。
この状態で起動弁20を開弁動作させると、ここにおいて図6に示しているように水抜路18が開放状態となって、圧力室16内の水がこの水抜路18を通じて給水路10における下流部10bに抜き出され、圧力室16の圧力が消失する。
尚このとき、ばね室62内の水もまた水路60を通じて外部に流出する。
【0044】
このように圧力室16内の圧力が消失すると、先ず第2導水孔部36上の導水制御弁38が給水路10における上流部10aの圧力で弁本体40が弁座46に当る位置まで上昇させられ、また主弁12が上流部10aの圧力で上向きに押し上げられ開弁動作を開始する。
【0045】
その過程で先ず図7に示しているように導水制御弁38の弁軸42が、ストローク一杯まで図中下向きに押し出された状態にある弁押え52の当接面に当接し、その後主弁12の引続く開弁動作に伴って、弁押え52が内部のばね73の付勢力に抗して上向きに押し上げられる。
そして弁押え52がある程度押し上げられると、その時点で一定量圧縮されたばね73の付勢力が打勝つに到って、その後主弁12の開弁動作とともに導水制御弁38が弁座46から離間して導水制御弁38が開弁した状態となる。図8はこのときの状態を表している。
【0046】
その後図9に示しているように起動弁20の閉弁により第1導水孔部34を通じて給水路10における上流部10aの水が圧力室16内に導かれ、圧力室16内の圧力が上昇し始める。
【0047】
このとき第2導水孔部36を通じても圧力室16内に水が導かれる。即ち第1導水孔部34と、第2導水孔部36との両方から上流部10aの水が圧力室16内に流入するようになり、圧力室16内への水の導入量が急激に増大せしめられる。
そして導入された水の圧力により、主弁12が開弁完了後速やかに閉弁動作を開始する。
【0048】
上記弁押え52は、主弁12の閉弁動作中主弁12に追従して図中下向きに移動し、導水制御弁38を依然開弁状態に保持する。
即ち弁押え52は、主弁12の閉弁動作に追従して図中下向きに移動することで、主弁12に設けられた導水制御弁38を同じく主弁12に追従して下向きに移動させ、かかる導水制御弁38を主弁12の閉弁動作中も開弁状態に維持する。
従って主弁12は、閉弁動作を開始した後においても図10に示しているように第1導水孔部34及び第2導水孔部36のそれぞれからの導水による圧力室16内の急激な圧力上昇によって速い速度で閉弁動作を続行する。
【0049】
而して主弁12が閉弁位置直近まで到ると、図11に示しているように弁押え52の突起58が保持部68のストッパ74に当って更なる下降が阻止され、ここにおいて導水制御弁38は主弁12の更なる移動につれて閉弁動作し、第2導水孔部36を遮断つまり閉鎖した状態とする。
従って以後は第1導水孔部34を通じてのみ圧力室16内に水が導かれることとなり、圧力室16内への導水の速度は鈍化する。
即ち主弁12は、導水制御弁38の閉弁後においてはゆっくりと閉弁動作し、最終的に弁座14に着座して完全閉弁状態となる。
図12はこのときの状態を表している。
【0050】
以上のような本実施形態のフラッシュバルブでは、主弁12の閉弁動作に際して第2導水孔部36を開状態に維持する時間を長くとることができ、これにより従来に増して主弁12の閉弁動作を速め得て、十分な最大瞬間流量を確保しつつ完全閉弁状態に到るまでの時間を短縮化でき、無駄に消費される水量を従来に増して少なくすることができる。即ち従来に増して節水を果すことができる。
【0051】
因みに図13は本実施形態のフラッシュバルブの給水開始以後の瞬間給水量の時間的な変化を比較例との比較において表したものである。
ここで比較例1は、上記のような導水制御弁38を設けていない従来タイプのフラッシュバルブにおける瞬間給水量の変化を、また比較例2は単に導水制御弁38を設けただけで本実施形態のような追従移動機構50を設けない場合の瞬間給水量の変化を表している。
【0052】
同図に示しているように本実施形態のフラッシュバルブは、比較例1,比較例2と同等の瞬間最大流量を確保しており、一方で瞬間最大流量を過ぎた後は速やかに給水量が減少し、全体としての給水量は大幅に減少している。
因みに比較例1の場合、水圧0.07MPa時において開弁から閉弁に到るまでの全体の給水量は10L、比較例2の場合は8Lであった。これに対して本実施形態の場合、全体の給水量は6Lであった。
図中比較例2の曲線と本実施形態の曲線とで囲まれた部分の面積(図中網点の部分)が、本実施形態に従って追従移動機構50を設けたことによる節水量を表している。
【0053】
また本実施形態では、上記追従移動機構50を主弁12の外部に設けてあるため、主弁12そのものの構造を変えることなく、単に追従移動機構50を付加するだけで、フラッシュバルブに上記の機能を付加することができる。
【0054】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態であるフラッシュバルブを示す断面図である。
【図2】図1に示す追従移動機構を分解して示す斜視図である。
【図3】図1の要部断面図である。
【図4】導水制御弁を示す図である。
【図5】弁押えを示す図である。
【図6】同実施形態のフラッシュバルブの作用説明図である。
【図7】図6に続く作用説明図である。
【図8】図7に続く作用説明図である。
【図9】図8に続く作用説明図である。
【図10】図9に続く作用説明図である。
【図11】図10に続く作用説明図である。
【図12】図11に続く作用説明図である。
【図13】本実施形態のフラッシュバルブの給水開始以後の瞬間給水量の時間的な変化を比較例とともに表した図である。
【図14】従来のフラッシュバルブを示す断面図である。
【図15】図14のフラッシュバルブの作用説明図である。
【図16】図15に続く作用説明図である。
【図17】図16に続く作用説明図である。
【符号の説明】
【0056】
10 給水路
10a 上流部
10b 下流部
12 主弁
16 圧力室
18,26 水抜路
20,28 起動弁
30 操作部
34 第1導水孔部
36 第2導水孔部
38 導水制御弁
50 追従移動機構
52 弁押え
54 溝
62 ばね室
73 ばね
74 ストッパ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)給水路と、(b)該給水路を開閉する主弁と、(c)該主弁の背後に形成され水の圧力により該主弁を押圧して閉弁状態に維持する圧力室と、(d)該主弁を貫通して前記給水路における該主弁の上流部と該圧力室とを連通させ、該給水路の水を該圧力室に導入する小孔からなる導水孔と、(e)該圧力室の水を前記給水路における前記主弁の下流部に抜き出す水抜路と、(f)該水抜路を開放して該主弁の開弁動作を起させる起動弁と、(g)該起動弁を操作する操作部と、を設けて成るフラッシュバルブにおいて、
前記導水孔を広開度状態と絞った状態とに切り替える導水制御弁を設け、且つ前記圧力室への水の導入による前記主弁の閉弁動作中、該導水制御弁を該主弁に追従して移動させて該導水孔を前記広開度状態に維持し、該主弁の閉弁動作末期に該導水制御弁を移動停止して該導水孔を前記絞った状態に切り替える該導水制御弁の追従移動機構を設けたことを特徴とするフラッシュバルブ。
【請求項2】
請求項1において、前記導水制御弁の追従移動機構が、前記主弁の外部に設けてあることを特徴とするフラッシュバルブ。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記導水制御弁の追従移動機構が、前記導水孔を前記広開度状態に保持するように該導水制御弁を押した状態で前記主弁に追従して移動する可動の弁押えを有していることを特徴とするフラッシュバルブ。
【請求項4】
請求項3において、前記追従移動機構は、前記弁押えを前記主弁の閉弁方向に付勢するばねを有しており、該主弁の閉弁動作時に該ばねの付勢力に基づいて前記弁押えにより前記導水制御弁を前記導水孔が前記広開度となる状態に保持した状態で該主弁の閉弁動作に追従して該導水制御弁を移動させ、該弁押えが可動ストローク分移動したところで該弁押えを該導水制御弁から離間させて、該導水制御弁を前記給水路の圧力により前記導水孔を絞った状態に動作させるものであることを特徴とするフラッシュバルブ。
【請求項5】
請求項3,4の何れかにおいて、前記弁押えの前記導水制御弁への当接面には水路形成用の溝が設けてあることを特徴とするフラッシュバルブ。
【請求項1】
(a)給水路と、(b)該給水路を開閉する主弁と、(c)該主弁の背後に形成され水の圧力により該主弁を押圧して閉弁状態に維持する圧力室と、(d)該主弁を貫通して前記給水路における該主弁の上流部と該圧力室とを連通させ、該給水路の水を該圧力室に導入する小孔からなる導水孔と、(e)該圧力室の水を前記給水路における前記主弁の下流部に抜き出す水抜路と、(f)該水抜路を開放して該主弁の開弁動作を起させる起動弁と、(g)該起動弁を操作する操作部と、を設けて成るフラッシュバルブにおいて、
前記導水孔を広開度状態と絞った状態とに切り替える導水制御弁を設け、且つ前記圧力室への水の導入による前記主弁の閉弁動作中、該導水制御弁を該主弁に追従して移動させて該導水孔を前記広開度状態に維持し、該主弁の閉弁動作末期に該導水制御弁を移動停止して該導水孔を前記絞った状態に切り替える該導水制御弁の追従移動機構を設けたことを特徴とするフラッシュバルブ。
【請求項2】
請求項1において、前記導水制御弁の追従移動機構が、前記主弁の外部に設けてあることを特徴とするフラッシュバルブ。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記導水制御弁の追従移動機構が、前記導水孔を前記広開度状態に保持するように該導水制御弁を押した状態で前記主弁に追従して移動する可動の弁押えを有していることを特徴とするフラッシュバルブ。
【請求項4】
請求項3において、前記追従移動機構は、前記弁押えを前記主弁の閉弁方向に付勢するばねを有しており、該主弁の閉弁動作時に該ばねの付勢力に基づいて前記弁押えにより前記導水制御弁を前記導水孔が前記広開度となる状態に保持した状態で該主弁の閉弁動作に追従して該導水制御弁を移動させ、該弁押えが可動ストローク分移動したところで該弁押えを該導水制御弁から離間させて、該導水制御弁を前記給水路の圧力により前記導水孔を絞った状態に動作させるものであることを特徴とするフラッシュバルブ。
【請求項5】
請求項3,4の何れかにおいて、前記弁押えの前記導水制御弁への当接面には水路形成用の溝が設けてあることを特徴とするフラッシュバルブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−57354(P2006−57354A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241339(P2004−241339)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]