説明

フラッシュ可能な多層フィルム

本発明は、層厚が10μm未満の、少なくとも1種の少なくとも部分的に鹸化したポリ酢酸ビニルに基づく、水の作用により粉砕され得、かつ、冷水に耐性であるかまたは冷水にゆっくり溶解され得る、少なくとも1つの層と、冷水に可溶性であり、少なくとも1種の少なくとも部分的に鹸化したポリ酢酸ビニル、および、少なくとも1種の水溶性を増大させる物質とに基づく少なくとも1つの層であって、該物質が、生分解性ポリマー、界面活性剤、無機顔料および無機充填剤からなる群から選択される少なくとも1つの層とから作成される、少なくともフラッシュ可能な熱可塑性層複合体を包含する多層フィルムに関し、かつ、前記多層フィルムから製造されるフラッシュ可能な包装に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水への曝露によって少なくとも粉砕可能であり、冷水に耐性であるかもしくは冷水への溶解を遅らせることができ、かつ、少なくとも1種の少なくとも部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルに基づく、層厚が10μm未満の少なくとも1つの層と、少なくとも1種の少なくとも部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、および、水への溶解を促進させる少なくとも1種の物質に基づく、少なくとも1つの冷水溶性層であって、該物質が、生分解性ポリマー、界面活性剤、無機顔料および無機充填剤からなる群から選択される冷水溶性層とから作成される、少なくともフラッシュ可能な(flushable)熱可塑性層複合体を包含する多層フィルムに関し、多層フィルムから製造される包装にも関し、かつ、衛生用品の構成要素にも関する。
【背景技術】
【0002】
フラッシュ可能な多層フィルムから作成される包装は、先行技術において公知であり、その場合フィルムの層は、様々な水への溶解度を有する。湿度および温度が過剰である場合、または、過剰に高レベルの接触水分が存在する場合(例えば手からの水分)、これらの既知フィルムの中の、水溶性のより低い外部表面層は、遮断し(block)(ある程度まで)溶解する傾向があり、結果的に、その下に位置し表面層により保護されている、それよりも水溶性の高い層が攻撃され、結果として層複合体の早期の崩壊が起こる。従って、この種類のフィルムは、ごく限られた有効期間しかなく、それらを取り扱う際にはある種の予防策、例えば手袋の使用が必要である。
【0003】
欧州特許第0613362B1号は、周囲水分に耐性があり、それぞれの層が異なる水への溶解度を有する2層フィルムを製造することにより上記問題を解決しようと試みている。これらの層の一方は、冷水溶性ポリビニルアルコールからなり、水中で攪拌することにより1分以内に完全に溶解することができる。もう一方の層は、熱水溶性ポリビニルアルコールからなり、前記条件下で溶解することができるが、しかしあまりに遅いために本発明の目的においてはフラッシュ不可能(non−flushable)と分類される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、周囲水分に対して相対的に耐性があるが、少なくとも水に流すことのできる多層フィルムに対する必要性がある。特に、水に流す際、例えばトイレに流す際に、流出物または配水管もしくは下水管において詰まりを引き起こさない、この種類の多層フィルムから作成される、フラッシュ可能な包装に対する必要性がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、周囲水分に対して相対的に耐性のある、フラッシュ可能な多層フィルム、および、対応するフラッシュ可能な包装材料、および、多層フィルムからそれぞれに作成される、非常に幅広い種類の用途のための包装を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、
A)水への曝露によって少なくとも粉砕可能であり、冷水に耐性であるかもしくは冷水への溶解を遅らせることができ、かつ、少なくとも1種の少なくとも部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルに基づく、層厚が10μm未満の少なくとも1つの層と、
B)少なくとも1種の少なくとも部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、および、水への溶解を促進させる少なくとも1種の物質に基づく、少なくとも1つの冷水溶性層であって、該物質が、生分解性ポリマー、界面活性剤、無機顔料ならびに無機充填剤からなる群から選択される冷水溶性層と
から作成される、少なくともフラッシュ可能な熱可塑性層複合体を包含する本発明の多層フィルムの提供により実現される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の目的において、「冷」という表現は、最大25℃の温度を意味する。
【0008】
本発明の目的において、「冷水溶性」、および、「冷水溶性の」という表現は、それぞれに、材料または層が2分以内に最大25℃の温度の水に溶解することを意味する。
【0009】
このことは、冷水溶性層の構造の喪失が2分以内に観察できることを意味する。
【0010】
本発明の目的において、「冷水に耐性である」という表現は、材料または製品、例えば本発明の多層フィルムの層A)が、上記の「冷水溶性」条件下で、溶解しないか、または、それぞれに、その構造を失わないことを意味する。
【0011】
本発明の目的において、「溶解を遅らせることができる」という表現は、材料または製品、例えば本発明の多層フィルムの層A)が、好ましくは少なくとも2分が経過するまで、最大25℃の温度の水に溶解しないことを意味する。このことは、冷水への溶解を遅らせることのできる層が、少なくとも2分が経過するまで、その構造を失わないことを意味する。
【0012】
本発明の目的において、「粉砕可能な」という表現は、材料または製品、例えば本発明の多層フィルムの層A)が、水への曝露、例えば水のフラッシュ(water−flush)への曝露を通じて、少なくとも粉砕されて、水に流すことのできる(water−flushable)粒子を得ることができることを意味する。
【0013】
本発明の目的において、「フラッシュ性(flushability)」または「フラッシュ可能な」という表現は、材料または製品、特に本発明の多層フィルムまたはそれに由来する包装を、水への曝露、例えば従来のトイレの水のフラッシュへの曝露を通じて、流出物中に、および先に進んで配水管もしくは下水管の中にフラッシュすることにより、結果として詰まりを生じることなく廃棄することができることを意味する。
【0014】
材料または製品、特に本発明の多層フィルム、あるいはそれに由来する商品または包装は、従って、それが少なくともある程度水溶性であるか、あるいは、それぞれに、水への曝露、例えば水のフラッシュ、特にトイレのフラッシュへの曝露を通じて、少なくとも、従来のトイレかまたは付属のパイプラインかまたは任意のポンプ装置の流出物が詰まらないような粒子が得られるまで粉砕可能な場合にフラッシュ可能である。
【0015】
フラッシュ性(flushability)試験の方法は、実施例の文脈中に詳細に示される。
【0016】
本発明において、層A)は、少なくとも、水に、好ましくは水のフラッシュに曝露されてフラッシュ可能な粒子が得られるまで粉砕可能であり、ここで粒子のサイズは、好ましくは10mm未満である。
【0017】
層A)および/または層B)を製造するために使用される部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルの加水分解の程度(the degree of hydrolysis)は、好ましくは50〜98モル%である。
【0018】
層A)および層B)を製造するために使用される部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルは、それぞれに、異なる加水分解の程度を有することが好ましい。
【0019】
層A)を製造するために使用される部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルの加水分解の程度は、85〜98モル%であり、かつ、それらは好ましくは冷水に耐性があるかまたはただ冷水への溶解を遅らせることができることが特に好ましい。
【0020】
層B)を製造するために使用される部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルの加水分解の程度は、70〜95モル%であり、かつ、それらは好ましくは冷水溶性であることが特に好ましい。
【0021】
部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルは、ポリ酢酸ビニル(PVAs)の不完全な加水分解により得られ、従って部分的に加水分解されたポリマーは、エステル基だけでなくヒドロキシ基も有する。
【0022】
十分に加水分解されたポリ酢酸ビニル(ポリビニルアルコール)は、実際には完全に加水分解されたポリ酢酸ビニルであり、それらの加水分解の程度は、98モル%以上である。
【0023】
層Aおよび/または層Bがそれに基づく、少なくとも部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルのメルトインデックス(またはメルトフローインデックス、MFI)は、好ましくは0.01〜45g/10分の範囲内であり(ISO 1133に決定される、190℃/21.6kg)、ここで、層A)中に主な成分として存在する少なくとも部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルのMFIは、好ましくは0.5〜10g/10分の範囲内であり(ISO 1133に決定される、190℃/21.6kg)、かつ、層B)の少なくとも部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルのMFIは、好ましくは15〜45g/10分の範囲内である(ISO 1133に決定される、190℃/21.6kg)。
【0024】
層A)および/または層B)を製造するために使用される少なくとも部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルは、加工助剤、例えば可塑剤、好ましくはポリオール、特に好ましくはグリセロールなどを含むことができる。少なくとも部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルは、好ましくは最大25重量%のこれらの加工助剤を含む。
【0025】
水、例えば水のフラッシュへの曝露により少なくとも粉砕可能であり、冷水に耐性があるかもしくは冷水への溶解を遅らせることができ、かつ、本発明の多層フィルム中に存在する、層A)を製造するのに好ましい適切な材料は、少なくとも1種の完全に加水分解されたポリ酢酸ビニル、少なくとも1種の部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、少なくとも2種の部分的に異なって加水分解されたポリ酢酸ビニルからなる混合物、または、少なくとも1種の部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルと少なくとも1種の完全に加水分解されたポリ酢酸ビニルからなる混合物である。
【0026】
層A)の厚さは、好ましくは1μm〜9μm、好ましくは3μm〜5μmである。
【0027】
層A)は、好ましくは本発明の層複合体の使用の間、外側にある本発明の多層フィルムの表面層の1層を形成する。
【0028】
1つの好ましい実施形態では、本発明の多層フィルムの層複合体は、層B)が、その表面の各々に層A)を有するように、層B)に直接隣接するさらなる層A)を含む。さらなる層A)はまた、本発明の多層フィルムの表面層の1層を形成することが好ましい。
【0029】
好ましい、冷水溶性層B)を製造するのに適切な材料は、少なくとも1種の部分的に加水分解された、好ましくは冷水溶性のポリ酢酸ビニル、または少なくとも2種の部分的に異なって加水分解された、好ましくは冷水溶性のポリ酢酸ビニルから作成される混合物である。
【0030】
層B)の厚さは、5μm〜200μm、特に10〜150μm、非常に特に20〜100μmであることが好ましい。
【0031】
1つの好ましい実施形態では、層B)は、いずれの場合も層B)の総重量に基づいて、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは80重量%以上の、少なくとも1種の部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルを含む。
【0032】
もう1つの好ましい実施形態では、層B)は、いずれの場合も層B)の総重量に基づいて、0.1〜50重量%、好ましくは1〜40重量%の、生分解性ポリマー、界面活性剤、無機顔料および無機充填剤からなる群から選択される、水への溶解を促進させる少なくとも1種の物質を含む。
【0033】
層B)は、好ましくは、いずれの場合も層B)の総重量に基づいて、1〜5重量%の少なくとも1種の界面活性剤、および/または5〜30重量%の、生分解性ポリマー、ならびに無機顔料および無機充填剤からなる群から選択される、水への溶解度を促進する少なくとも1種の物質を含む。
【0034】
水への溶解を促進させ、かつ使用することのできる生分解性ポリマーは、好ましくは、(好ましくはL−ラクチドおよび/またはD−ラクチドに基づく)乳酸(エステル)ホモポリマーもしくは乳酸(エステル)共重合体、ポリヒドロキシアルカノエート(PHAs)、デンプン、セルロース、セルロース誘導体、ポリエステル、好ましくはラクトン、例えばポリカプロラクトン(PLCs)から誘導されるポリエステル、ポリエーテル、およびエチレン−ビニルアルコール共重合体ならびに上記ポリマーの少なくとも2種から作成される混合物である。
【0035】
本発明において生分解性ポリマーは、堆肥にできるバイオポリマーであり、従って、水に溶解するか、またはDIN EN 13432まで完全に分解される。
【0036】
特に好ましい水への溶解を促進させる無機顔料および無機充填剤は、ケイ酸塩、炭酸塩、好ましくはアルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、炭酸アンモニウム、ならびに酸化物、好ましくは遷移金属酸化物およびその他の金属酸化物からなる群から選択される顔料および充填剤である。
【0037】
使用することのできる好ましいケイ酸塩は、アルカリ金属ケイ酸塩およびアルカリ土類金属ケイ酸塩からなる群から選択されるケイ酸塩である。
【0038】
水への溶解を促進させる使用される界面活性剤は、好ましくは、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、および両性界面活性剤からなる群から選択される界面活性剤であってよい。
【0039】
使用される陽イオン性界面活性剤は、通常、四級アンモニウム基などの少なくとも1つの正に帯電した官能基を有する。好ましい陽イオン性界面活性剤は、四級アルキル−およびアリールハロゲン化アンモニウム(混合アルキル−およびアリールハロゲン化アンモニウムを含む)、例えばジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、またはデカリニウムクロリドである。
【0040】
使用される陰イオン性界面活性剤は、好ましくは、カルボキシ基、スルホン基、または硫酸基などの少なくとも1つの負に帯電した官能基を有する。
【0041】
陰イオン性界面活性剤は、好ましくは、アルキルカルボン酸、アルキルベンゼンカルボン酸、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸の塩、および同様に脂肪アルコールの硫黄モノエステルからなる群から選択されるものである。
【0042】
使用される非イオン性界面活性剤は、好ましくは、脂肪アルコールアルコキシレート、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリコシド、およびアルキルフェノールアルコキシレートからなる群から選択されるものである。
【0043】
使用される両性界面活性剤は、好ましくは少なくとも1つの負に帯電した官能基だけでなく少なくとも1つの正に帯電した官能基も有し、好ましくは、少なくとも1つの四級アルキル−もしくはアリールアンモニウム基(混合アルキル−およびアリールアンモニウム基を含む)および1つのカルボキシ基またはスルホン基または硫酸基を有する化合物から選択されるものであり、例はベタインまたはスルタインである。
【0044】
層A)はまた、場合により、生分解性ポリマー、界面活性剤、無機顔料および無機充填剤からなる群から選択される、上記の水への溶解を促進させる物質の少なくとも1つを、それが本発明において定義されるフラッシュ性を実現するために必要であるならば、層A)の総重量に基づいて好ましくは5〜35重量%含むことができる。
【0045】
1つの好ましい実施形態では、本発明の多層フィルムの層複合体は、層B)が、層A)と層B)をそれぞれその表面に有するように、層B)に直接隣接するさらなる層B)を含む。2つの層B)は、同一の構造を有し、かつ、生産技術から生じる理由で、本発明の多層フィルムの構造の範囲内であることが好ましい。
【0046】
任意の所望の生産工程、例えば積層、押出、および好ましくは同時押出を、本発明の多層フィルムの層複合体を製造するため、および所望によりさらなる層を製造するために使用してよい。
【0047】
押出、好ましくはインフレーションフィルム(blown−film)押出および/またはフラットフィルム押出、特にインフレーションフィルム同時押出および/またはフラットフィルム同時押出を、本明細書において使用して、個々の層だけでなく本発明の層複合体の全ての層を、所望により本発明の多層フィルムのさらなる層とともに形成することができる。
【0048】
上記製造工程および対応する製造パラメータは、当業者に周知である。
【0049】
本発明の層複合体および場合により本発明の多層フィルムのさらなる層は、好ましくは、同時押出により製造され、本明細書において非常に特に好ましいものは、フラットフィルム同時押出工程である。
【0050】
1つの好ましい実施形態では、本発明の多層フィルムに含まれる水でのフラッシュ可能な本発明の層複合体の弾性率は、最大3000N/mm、好ましくは最大2000N/mm、特に好ましくは最大1800N/mmである(DIN EN ISO 527により決定できる)。
【0051】
本発明の多層フィルムは、好ましくは印刷可能なフィルムおよび/または透明フィルムおよび/または着色フィルムおよび/または少なくとも1つの片側に(monolaterally)シリコン処理可能なフィルムである。
【0052】
特に好ましい一実施形態では、本発明の多層フィルムは、層A)および層B)からなる層複合体のみからなる。
【0053】
別の非常に好ましい実施形態では、本発明の多層フィルムは、層B)が、その表面の各々に層A)を有するように、層A)と層B)からなる層複合体、および層B)に直接隣接するさらなる層A)のみからなる。
【0054】
別の非常に好ましい実施形態では、本発明の多層フィルムは、層B)が、その表面に層A)と層B)をそれぞれ有するように、層A)と層B)からなる層複合体、および層B)に直接隣接するさらなる層B)、のみからなる。
【0055】
少なくとも1つの層A)および少なくとも1つの層B)から作成される本発明の多層フィルムは、あらゆる種類の包装を製造するのに適し、ここで層A)は、包装の内容物を保護するために常に包装の外部層として存在する。
【0056】
従って、本発明は、フラッシュ可能であり、周囲水分に耐えるという理由で保存することのできる包装を製造するための、少なくとも1つの層A)および少なくとも1つの層B)から作成される本発明の多層フィルムの使用をさらに提供する。
【0057】
層A)および層B)から作成される層複合体を包含する、本発明の多層フィルムから作成されるこの包装は、好ましくは、前記層複合体からなるか、または層複合体ならびに層B)に直接隣接するさらなる層A)からなるか、または前記層複合体ならびに層B)に直接隣接するさらなる層B)からなる本発明の多層フィルムから作成される包装も、本発明により提供される。
【0058】
上記包装は、詰まりの問題を引き起こさずに、水、好ましくはトイレのフラッシュを用いてフラッシュすることができるという大きな利点を有するだけでなく、周囲水分に対して相対的に良好な耐性を特に示すので、問題のない保存が可能である。実施例によって、周囲水分に対する耐性を試験するための方法が開示される。
【0059】
本発明の包装は、非常に幅広い種類の内容物のための保護包装として役立つことが好ましい。これらの内容物は、洗濯用洗剤、食器用洗剤、またはバスソルトであってよく、これらは好ましくは個々の部分に(特に好ましくはタブの形態で)包装されていて、フラッシュ可能な包装と一緒に使用される。
【0060】
衛生用品、例えばタンポン、オムツ、または生理用ナプキンなどは、さらに、好ましくは個別に、本発明の多層フィルムを使用して包装されてよい。
【0061】
ひとたび上記商品の使用のために包装が取り外されると、包装は水のフラッシュによって、トイレのフラッシュを使用することによって簡単に廃棄することができる。
【0062】
本発明の多層フィルムは、さらに、上記衛生用品、例えばタンポン、オムツ、または生理用ナプキンなどが全体として(従って、これらの商品のその他の部分を含む)、フラッシュ可能な程度まで、これらの商品のうちの1つの構成要素であってよい。
【0063】
本発明の多層フィルムは、さらに、接着剤層または接着剤領域、好ましくは衛生用品の接着剤層または接着剤領域の上の剥離フィルムまたは保護外装フィルムとして使用するためのシリコン処理されたフィルムであってよい。この種類の剥離層の厚さは、通常非常に小さく、従って本発明のフィルムのフラッシュ性(flushability)への結果として起こる影響がない。従って、本発明の多層フィルムの少なくとも1つの表面層は、この目的のためにシリコン処理されていることが可能であることが好ましい。
【0064】
本発明は、層A)および層B)からなる層複合体を包含する本発明の多層フィルム、好ましくは、上記層複合体からなるか、または上記層複合体ならびに層B)に直接隣接するさらなる層B)からなる本発明の多層フィルム、を包含する、湿度を測定するための手段をさらに提供する。本発明の多層フィルムの外部層B)は、好ましくはシリコン処理された層である。
【実施例】
【0065】
以下の実施例は、本発明を説明する役目をするものであり、限定するものと解釈されるものではない。
使用した原料の化学特性表示:
Mowiflex TC 232:Kuraray製の部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル;メルトインデックス(MFI、ISO 1133に決定される):39.8±8g/10分(190℃/21.6kg);加水分解の程度:88±1モル%
DS 3507.1:Kuraray製の部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル;メルトインデックス(MFI、ISO 1133に決定される):4±2g/10分(190℃/21.6kg);加水分解の程度:93±1モル%
DS2707.9:Kuraray製の部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル;メルトインデックス(MFI、ISO 1133に決定される):1±1g/10分(190℃/21.6kg);加水分解の程度:95±1モル%
PLA 2002:Natureworks製のポリラクチド
PLA DC 511:Sukano製のポリラクチドに基づく粘着防止剤マスターバッチ
Exceval LP DS 0806.2:Kuraray製のエチレン−ビニルアルコール共重合体
「マスターバッチ1」:Mowiflex TC 232(25重量%)、Bioflex−F 1131(40重量%)、炭酸カルシウム(34.5重量%)、界面活性剤(シス−13−ドコセンアミド)(0.5重量%)から作成されるブレンド
「マスターバッチ2」:PLAに基づくカラーマスターバッチ
Bio−Flex F 1131:バイオポリマー、無機充填剤および生分解性添加剤から作成される、DIN EN 13432まで堆肥にできる混合物
UV Silikon 1624 Evonik製のUV−硬化シリコーン系
【0066】
実施例1:
多層フィルムは、層A)および層B)の層複合体からなり、同時押出により製造された。以下の%データは常に重量%である。
【0067】
【表1】

【0068】
実施例2〜5:
各々の多層フィルムは、層B)がその表面の各々に層A)を有するように、層A)と層B)と、層B)に直接隣接するさらなる層A)とからなる層複合体である。上記層複合体は、常に同時押出により製造された。以下の%データは常に重量%である。
【0069】
実施例2:
【表2】

【0070】
実施例3:
【表3】

【0071】
実施例4:
【表4】

この多層フィルムは、一例として、洗濯用洗剤の包装を製造するために適している。
【0072】
実施例5:
【表5】

この多層フィルムは、一例として、食器用洗剤の包装を製造するために適している。
【0073】
実施例6:
多層フィルムは、層B)がその表面に層A)と層B)を有するように、層A)と層B)と、層B)に直接隣接するさらなる層B)とからなる層複合体であり、同時押出により製造された。以下の%データは常に重量%である。
【0074】
【表6】

外部層B)は、さらにUV Silikon 1624でシリコン処理された。
【0075】
この多層フィルムは、一例として、生理用ナプキンの接着剤層または接着帯のための剥離フィルムまたは保護外装フィルムとして適している。
【0076】
実施例7:
多層フィルムは、層B)がその表面に層A)と層B)を有するように、層A)と層B)と、層B)に直接隣接するさらなる層B)とからなる層複合体であり、同時押出により製造された。以下の%データは常に重量%である。
【0077】
【表7】

【0078】
実施例8:
多層フィルムは、層B)がその表面の各々に層A)を有するように、層A)と層B)と、層B)に直接隣接するさらなる層A)とからなる層複合体である。それは同時押出により製造された。以下の%データは常に重量%である。
【0079】
【表8】

【0080】
実施例9:
多層フィルムは、層B)がその表面の各々に層A)を有するように、層A)と層B)と、層B)に直接隣接するさらなる層A)とからなる層複合体である。それは同時押出により製造された。以下の%データは常に重量%である。
【0081】
【表9】

【0082】
実施例7、実施例8、および実施例9の多層フィルムの各々は、一例として、とりわけ、オムツまたは生理用ナプキンのバックシートとして適している。
【0083】
実施例10:
多層フィルムは、層B)がその表面の各々に層A)を有するように、層A)と層B)と、層B)に直接隣接するさらなる層A)とからなる層複合体である。それは同時押出により製造された。以下の%データは常に重量%である。
【0084】
【表10】

この多層フィルムは、一例として、タンポン用の包装として適している。
【0085】
フラッシュ性試験
試験方法:
材料または製品、特に本発明の多層フィルムまたは包装がフラッシュ可能であるかどうかを決定するために使用することのできる試験方法では、簡単な実験を用いて水のフラッシュ後の詰まりをシミュレートする。詰まりは、材料または製品が、フラッシュのために使用される水によって適切に粉砕されることができない場合に起こる。特定の孔径をもつ篩または、師板は、それぞれ、詰まりの程度の指標として使用することができる。試験方法において、1片の、層厚が30μmの10×10cmのフィルムを、温度23℃の500mlの水道水を含有する1000mlのガラス製ビーカーの中に入れ、500回転/分のマグネチックスターラーにより2分(分)間攪拌する。次に、ビーカーの内容物を、孔径が10mmのステンレス鋼篩を通じて「濾過し」、系を残渣についてチェックする。孔の詰まりを引き起こす材料を残渣と見なす。
【0086】
上記の試験方法を用いて、実施例1)および実施例10)の多層フィルムのフラッシュ性を、それぞれ、同じ総層厚の(表1)2層の比較フィルム1(例えば欧州特許第0613362B1号に記載されるようなもの)のフラッシュ性と比較した。
【0087】
比較フィルム1は、層A)および層B)から作成される層複合体である。それは同時押出により製造された。
表1
【0088】
【表11】

全ての%データでは、それぞれに重量%である。
【0089】
周囲水分に対する耐性(低い水分レベルとの接触による剥離作用)の決定
低い水分レベルとの接触による本発明の剥離フィルムの剥離作用(release effect)は、規定の水分レベルの紙に対する剥離力[cN/cm]によって提示される。
【0090】
規定の水分レベルの80gの天然紙を、本明細書にて気泡が存在しないことを確認しながら、本発明のフィルムまたは(その剥離力が決定されているはずの)比較フィルムの試験片の幅全体に適用する。80gの天然紙は、0.1ml(約2滴)の蒸留水を中央に適用することにより湿らせた。
【0091】
試験片を、規定された水分レベルの80gの天然紙が存在しない、フィルムの1cmの縦余白が常にあるような方法でサイズに切断した。試験片の全幅は、4.5cm(1cm+2.5cm+1cm)である。試験片の長さは常に約30cmであり、試験片は規定された水分レベルの80gの天然紙を適用した後に1分間室温にて保存される。
【0092】
次に、両面接着テープを用いて試験片のフィルム面を、電子引張試験機の金属レール(350×40mm)の中に導入し、レールを下留め具で固定する。長さ約400mmの堅いフィルム片を、試験片の紙側に固定し、上留め具を用いて引張試験機中で固定する。次に、試験接着テープを、180°の角度で1800mm/分の剥離速度で剥離し、示力図をプロットして剥離力を決定する。いずれの場合にも、3回の測定値から平均値を決定する。
【0093】
低い水分レベルとの接触による剥離作用を、上記の同時押出により製造した比較フィルム2〜4、および本発明の実施例1のフィルムに対する試験方法により決定した(表2)。表2
【0094】
【表12】

【0095】
実施例1のフィルムとは違って、比較フィルム2〜4は、相当な粘着性を示し、従って、低い水分レベルと接触して剥離作用を低下させた(=必要な剥離力を増加させた)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)水への曝露によって少なくとも粉砕可能であり、冷水に耐性であるかもしくは冷水への溶解を遅らせることができ、かつ、少なくとも1種の少なくとも部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルに基づく、層厚が10μm未満の少なくとも1つの層と
B)少なくとも1種の少なくとも部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、および、水への溶解を促進させる少なくとも1種の物質とに基づく、少なくとも1つの冷水溶性層であって、該物質が、生分解性ポリマー、界面活性剤、無機顔料および無機充填剤からなる群から選択される冷水溶性層と
から作成される、少なくともフラッシュ可能な熱可塑性層複合体を包含する多層フィルム。
【請求項2】
前記層A)が、少なくとも1種の完全に加水分解されたポリ酢酸ビニルに基づくか、少なくとも1種の部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルに基づくか、少なくとも2種の部分的に異なって加水分解されたポリ酢酸ビニルからなる混合物に基づくか、または少なくとも1種の部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルと少なくとも1種の完全に加水分解されたポリ酢酸ビニルからなる混合物に基づくことを特徴とする、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記冷水溶性層B)が、少なくとも1種の部分的に加水分解された、好ましくは冷水溶性のポリ酢酸ビニルに基づくか、または少なくとも2種の部分的に異なって加水分解された、好ましくは冷水溶性のポリ酢酸ビニルからなる混合物に基づくことを特徴とする、請求項1または2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記層A)の前記部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルの前記加水分解の程度が、85〜98モル%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記層B)の前記部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルの前記加水分解の程度が、70〜95モル%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記層B)が、前記層B)の総重量に基づいて、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは80重量%以上の、少なくとも1種の部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項7】
前記層B)が、前記層B)の前記総重量に基づいて、0.1〜50重量%、好ましくは1〜40重量%の、水への溶解を促進させる少なくとも1種の物質を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項8】
水への溶解を促進させる前記無機顔料および無機充填剤が、ケイ酸塩、炭酸塩および酸化物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項9】
水への溶解を促進させるために存在する前記界面活性剤が、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、または両性界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項10】
水への溶解を促進させるために存在する前記生分解性ポリマーが、乳酸(エステル)ホモポリマーもしくは乳酸(エステル)共重合体、ポリヒドロキシアルカノエート、デンプン、セルロース、セルロース誘導体、ポリカプロラクトン、ポリエステル、ポリエーテル、およびエチレン−ビニルアルコール共重合体ならびに上記ポリマーの少なくとも2種からなる混合物からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項11】
前記層A)も、生分解性ポリマー、界面活性剤、無機顔料および無機充填剤からなる群から選択される、水への溶解を促進させる少なくとも1種の物質を、前記層A)の前記総重量に基づいて、好ましくは5〜35重量%含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項12】
前記層A)および場合により前記層B)が、水と接触して、少なくとも粒子を得るまで粉砕されることができ、前記粒子は少なくとも10mm未満のサイズであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項13】
前記フラッシュ可能な層複合体の弾性率が、多くとも3000N/mm、好ましくは多くとも2000N/mm、特に好ましくは多くとも1800N/mmであることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項14】
前記層A)の厚さが、1μm〜9μm、好ましくは3μm〜5μmであることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項15】
1つ以上の前記層A)が、前記多層フィルムの表面層に相当することを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項16】
前記多層フィルムが、印刷されたフィルムおよび/または透明フィルムおよび/または着色フィルムおよび/またはシリコン処理されたフィルムであることを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項17】
前記多層フィルムが、前記層A)と前記層B)からなる層複合体、前記層B)がその表面の各々に層A)を有するように、層B)に直接隣接するさらなる層A)を有する層複合体、または、前記層B)がその表面に層A)と層B)を有するように、層B)に直接隣接するさらなる層B)を有する層複合体から構成される、請求項1〜16のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項18】
フラッシュ可能な包装を製造するための、請求項1〜17のいずれかに記載の多層フィルムの使用。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれかに記載の多層フィルムで作成される、フラッシュ可能な包装。
【請求項20】
洗濯用洗剤、食器用洗剤またはバスソルト用であって、その各々は、好ましくは個別包装の形をとり、特に好ましくはタブの形をとるか、または、衛生用品用であって、好ましくはタンポン、オムツもしくは生理用ナプキンである、請求項19に記載のフラッシュ可能な包装。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれかに記載の多層フィルムで作成される、衛生用品の接着剤領域のフラッシュ可能な保護外装。
【請求項22】
請求項1〜17のいずれかに記載の多層フィルムを含む、湿度を測定するための手段。

【公表番号】特表2012−512061(P2012−512061A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541198(P2011−541198)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/009015
【国際公開番号】WO2010/069553
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(503102423)フータマキ フォルヒハイム ツヴァイクニーダーラッスング デア フータマキ ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (9)
【氏名又は名称原語表記】Huhtamaki Forchheim Zweigniederlassung der Huhtamaki Deutschland GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Zweibrueckenstr. 15−25, D−91301 Forchheim, Germany
【Fターム(参考)】