説明

フラットケーブル防水コネクタ構造、及びその接続方法

【課題】 フレキシブルフラットケーブルに引っ張り力(外力)が加わっても、フレキシブルフラットケーブルと一体成形部との保持力及びシール性を確保することのできるフラットケーブル防水コネクタ構造を提供すること。
【解決手段】 フラットケーブル防水コネクタ構造におけるフレキシブルフラットケーブル2の導体21間に穴23を設けるとともフレキシブルフラットケーブル2の幅方向端部にスリット24を形成し、ケーブル保持部7を、導体21と端子3との接合部31を含み導体21と端子3の一部に密着性が高い樹脂又は熱可塑性エラストマによって一体成形してなるシール部5と、シール部5を覆いフレキシブルフラットケーブル2の穴23及びスリット24に掛かるように高剛性樹脂よって一体成形してなる保持部6とによって形成してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットケーブル防水コネクタ構造、及びその接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
狭い空間にケーブルを配索するに当たって、狭い空間での配策を可能とするものとして、従来、可撓性を有してなる平板状のフラットケーブルが用いられている。このフラットケーブルは、接続相手コネクタの端子と接続される端子が、フラットケーブルの導体配線が露出された部分に接続されるようになっている。
このような導体配線と端子とを接続する導体配線と端子との接合部は、外部から水が入らないように防水処理を施す必要がある。このため、例えば、特許文献1に示すように、合成樹脂によって導体配線と端子との接合部を封止するフラットケーブル防水コネクタ構造が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載されたフラットケーブル防水コネクタ構造は、フラットケーブル1の長手方向の前端部寄りに、導体2,2の間に位置する透孔5を含むフラットケーブル1の外周に、フラットケーブル1の前端部へ向かって先細りとなる抜きテーパが設けられた合成樹脂製の成形部6が全周に亘って一体成形され、成形部6における長手方向の中間部分には、全周に亘って長手方向のパーティングラインがなく、抜きテーパの始端側となる成形部6の後端部分には、アンダーカット部7が形成されて構成されている。
【0004】
そして、特許文献1に記載されたフラットケーブル防水コネクタ構造は、フレキシブルフラットケーブル(FFC)にゴム及び熱可塑性エラストマを一体成形してなる一体成形部を形成し、そこにリング状のゴム栓を外装したものをコネクターハウジングに挿入し、シール性を確保するようになっている。
【0005】
また、特許文献1に記載されたフラットケーブル防水コネクタ構造には、フレキシブルフラットケーブル(FFC)にゴム及び熱可塑性エラストマを一体成形してなる一体成形部を形成し、そこにリング状のゴム栓を外装し、一体成形部の把持部を、ゴム栓の後方に周設してコネクタハウジングに嵌合するフランジ(リテーナ)とし、コネクターハウジングに挿入し、シール性を確保するようになっているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−123513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように構成される特許文献1に記載されたフラットケーブル防水コネクタ構造は、図8に示すように、フレキシブルフラットケーブル(FFC)100にゴム及び熱可塑性エラストマを一体成形してなる一体成形部110を被覆し、密着部110aが形成されている。さらに、この一体成形部110の上にリング状のゴム栓120を外装する。そして、この一体成形部110とゴム栓120を装着したフレキシブルフラットケーブル(FFC)100の端部をコネクターハウジング130内に挿入して特許文献1に記載されたフラットケーブルと端子の接続構造が構成されている。
そして、特許文献1に記載されたフラットケーブル防水コネクタ構造では、フレキシブルフラットケーブル(FFC)100を保持する保持力の向上のために、フレキシブルフラットケーブル(FFC)に穴を設け、フレキシブルフラットケーブル(FFC)100の上からゴム及び熱可塑性エラストマを被覆して一体成形してなる一体成形部(密着部)110を形成している。
【0008】
すなわち、フレキシブルフラットケーブル(FFC)100の上からゴム及び熱可塑性エラストマを被覆して一体成形してなる一体成形部(密着部)110を形成する際に、溶融するゴム及び熱可塑性エラストマがフレキシブルフラットケーブル(FFC)100に設けた穴を通って、接合し、フレキシブルフラットケーブル(FFC)100の保持力の向上を図っている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されたフラットケーブル防水コネクタ構造にあっては、コネクタ組み込み工程において、一般的に、図8に示すように、フレキシブルフラットケーブル100に、引っ張られる力(外力)Aが発生する。
この外力Aが発生すると、この外力Aによって、フレキシブルフラットケーブル100と一体成形部110と密着する密着部分110aに力がかかる。特許文献1に記載されたフラットケーブル防水コネクタ構造にあっては、フレキシブルフラットケーブル(FFC)に穴を設けることで、保持力は向上するが、引っ張られる力(外力)Aが掛かった場合、密着部分110aに力が掛かることには変わりがなく、シール性が低下し、シール性の低下によって保持力も低下するという問題点を有している。
シール性の保持には、フレキシブルフラットケーブル100と一体成形部110との密着部分110aに密着性が必要である。
【0010】
また、特許文献1に記載されたフレキシブルフラットケーブル100に被覆する一体成形部110にフランジ(リテーナ)を形成するフラットケーブル防水コネクタ構造にあっては、フランジ(リテーナ)が、一体成形部110とコネクターハウジング130との保持や、一体成形部110とゴム栓120の保持には効果はあるが、フレキシブルフラットケーブル100と一体成形部110の密着部の保持には効果がないという問題点を有している。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、フレキシブルフラットケーブルに引っ張り力(外力)が加わっても、フレキシブルフラットケーブルと一体成形部との保持力及びシール性を確保することのできるフラットケーブル防水コネクタ構造、およびフラットケーブル防水コネクタ構造の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明のフラットケーブル防水コネクタ構造は、複数本の導体21を間隔をおいて平行に並べ絶縁フィルム22を上下から被覆して平板状に形成してなるフレキシブルフラットケーブル2と、前記フレキシブルフラットケーブル2の導体21に接合する端子3と、前記フレキシブルフラットケーブル2を該導体21と前記端子3との接合部31を含み一体成形してなるケーブル保持部7と、一端に前記フレキシブルフラットケーブル2に形成する前記ケーブル保持部7を有し、他端に接続相手コネクタを嵌合可能に構成してなるコネクタハウジング4とを有してなるフラットケーブル防水コネクタ構造1において、
前記フレキシブルフラットケーブル2の導体21間に穴23を設けるととも該フレキシブルフラットケーブル2の幅方向端部にスリット24を形成し、
前記ケーブル保持部7を、
前記導体21と前記端子3との接合部31を含み、該導体21と該端子3の一部に密着性が高い樹脂又は熱可塑性エラストマによって一体成形してなるシール部5と、
前記シール部5を覆い、前記フレキシブルフラットケーブル2を高剛性樹脂によって一体成形してなることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するためになされた請求項2に記載の本発明のフラットケーブル防水コネクタ構造の製造は、請求項1に記載のフラットケーブル防水コネクタ構造の製造において、前記保持部6を、前記フレキシブルフラットケーブル2の穴23に高剛性樹脂が入り込み、前記スリット24の一部に掛かるように形成してなることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するためになされた請求項3記載の本発明のフラットケーブル防水コネクタ構造の製造方法は、複数本の導体21を間隔をおいて平行に並べ絶縁フィルム22を上下から被覆して平板状に形成してなるフレキシブルフラットケーブル2と、前記フレキシブルフラットケーブル2の導体21に接合する端子3と、前記フレキシブルフラットケーブル2を該導体21と前記端子3との接合部31を含み一体成形してなるケーブル保持部7と、一端に前記フレキシブルフラットケーブル2に形成する前記ケーブル保持部7を有し、他端に接続相手コネクタを嵌合可能に構成してなるコネクタハウジング4とを有してなるフラットケーブル防水コネクタ構造1において、
前記フレキシブルフラットケーブル2の導体21間の前記絶縁フィルム22に穴23を形成し、
前記フレキシブルフラットケーブル2の幅方向の前記絶縁フィルム22の端部にスリット24を形成し、
前記フレキシブルフラットケーブル2の導体21に前記端子3を接合し、
前記導体21と前記端子3との接合部31を含み、該導体21と該端子3の一部に、密着性が高い樹脂又は熱可塑性エラストマによって一体成形してなるシール部5を形成し、
前記シール部5を覆い、前記フレキシブルフラットケーブル2を高剛性樹脂よって一体成形してなる保持部6を形成し、
前記保持部6を形成した後、前記コネクタハウジング4の一端に装着してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外力が発生した場合、高剛性樹脂材によって構成される保持部に先に力がかかり、フレキシブルフラットケーブが保持され、密着性が高い樹脂材や熱可塑性エラストマによって構成されるシール部に外力が作用するのを軽減し、シール性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかるフラットケーブル防水コネクタ構造の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に図示するフラットケーブル防水コネクタ構造の断面図である。
【図3】図3は、導体間の絶縁フィルムに穴と幅方向の端部にスリットをを形成したフレキシブルフラットケーブの導体に端子を接合した状態を示す図である。
【図4】図4は、図1に図示するフラットケーブル防水コネクタ構造が外力を受けた状態を示す図である。
【図5】図5は、図1に図示する一次一体成形したシール部の拡大斜視図である。
【図6】図6は、図1に図示するフラットケーブル防水コネクタ構造のシール部と保持部の関係を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態にかかるフラットケーブル防水コネクタ構造の製造方法を示す斜視図である。
【図8】図8は、従来技術を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明にかかるフラットケーブル防水コネクタ構造、及びその製造方法の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0018】
図1−6には、本発明の実施の形態にかかるフラットケーブル防水コネクタ構造の実施例が示されている。
図において、本発明の実施の形態にかかるフラットケーブル防水コネクタ構造1は、フレキシブルフラットケーブル2と、複数の端子3と、コネクタハウジング4と、シール部5と保持部6とからなるケーブル保持部7とを有して構成されている。
【0019】
フレキシブルフラットケーブル2は、図3に示す如く、複数の導体21と、絶縁フィルム22とによって構成されている。
複数の導体21は、銅あるいは銅合金等からなり、可撓性を有しており、本実施例においては、三本の導体21を有してなっている。これら三本の導体21は、端子3の並列間隔に対応して平行に並べられ、この導体21の上に絶縁フィルム22が上下から挟むように被覆されて平板状に形成されている。
なお、本実施例においては、導体21が三本のものが示されているが、導体の本数に関しては、これに限定されるものではない。すなわち、導体21の数は1本以上であればよい。
【0020】
絶縁フィルム22は、例えば、ポリプロピレン等の絶縁材料によって導体21を被覆したものである。
このような、フラットケーブル2は、導体21を間隔をおいて平行に並べ絶縁フィルム22によって上下から挟むように被覆されて平板状に形成されている。フラットケーブル2は、このように平板状に被覆することによって可撓性を備えるように構成されている。
また、このフラットケーブル2の先端端部は、絶縁フィルム22が除去され、導体21が露出されており、この露出された導体21のそれぞれに端子3が接合されている。
【0021】
絶縁フィルム22には、各導体21と各導体21との間に、上下に貫通する穴23が設けられている。この穴23は、本実施例においては、導体21aと導体21bとの間と、導体21bと導体21cとの間の2箇所に設けられている。
また、複数の導体21平行に並べ上から絶縁フィルム22を被覆して形成されるフレキシブルフラットケーブル2の幅方向の両端部には、絶縁フィルム22に凹状又はコ字状のスリット24が設けられている。すなわち、フレキシブルフラットケーブル2の幅方向の両端部は、スリット24によって長手方向中心に向かって凹みが形成された状態となっている。
【0022】
端子3は、導電性を有する金属で形成されており、各導体21に対応して、所定長さを有する長板状に形成されている。この端子3は、フレキシブルフラットケーブル2の各導体21に、超音波溶接、圧着等の方法によって接合され、接合部31が形成されている。
本実施例においては、端子3は雄型端子であり、導体21と接合されいる接合部31が形成されている側の反対側は、接続相手端子と接続されるようになっている。
なお、本実施例においては、フラットケーブル防水コネクタ構造1が、3本の端子3を有するものとなっているが、端子3の本数は、これに限定されるものではなく、端子3の本数は1本以上であればよい。
【0023】
導体21と端子3が接合されいる接合部31と、接合部31より突出する端子3は、コネクタハウジング4内に収納されている。
コネクタハウジング4は、剛性を有する合成樹脂によって形成され、端子3と図示しない接続相手の端子とが接続できるように図示しない接続相手のコネクタと嵌合できるようになっている。
このコネクタハウジング4は、図示しない接続相手のコネクタと嵌合される嵌合部41と、フレキシブルフラットケーブル2を保持するケーブル保持部7とを有している。
【0024】
嵌合部41は、断面外形が長円形状の筒状に形成され、内部に図示しない接続相手のコネクタが嵌入されるようになっている。すなわち、図示しない接続相手のコネクタが嵌合部41が嵌合部41に嵌入されることによって、端子3が接続相手のコネクタに設けられた図示しない接続相手のコネクタの端子と接続されるようになっている。
ケーブル保持部7は、シール部5と保持部6とからなり、フレキシブルフラットケーブル2の導体21と端子3との接合部31を含んでフレキシブルフラットケーブル2を保持する部分である。
【0025】
シール部5は、フレキシブルフラットケーブル2の導体21と、端子3とが接合されている接合部31を含み、接合部31からコネクタハウジング4の嵌合部41側に向かって所定距離の端子3と、接合部31からフレキシブルフラットケーブル2の長手方向に向かって所定距離の導体21に、覆い被さるように、一体成形によって被覆する樹脂である。
すなわち、シール部5は、フレキシブルフラットケーブル2の導体21と、端子3とが接合されている接合部31を含み、端子3と導体21とを包み込むように樹脂を被覆することによって形成されている。
【0026】
シール部5は、密着性が高い樹脂、又は熱可塑性エラストマによって一体成形されて形成されている。この密着性が高い樹脂は、通常の樹脂よりも高い密着性を有する樹脂である。また、熱可塑性エラストマは、スチレン・ブタジエン系,ポリオレフィン系,ウレタン系,ポリエステル系,ポリアミド系,1,2−ポリブタジエン,ポリ塩化ビニル系,アイオノマーなどの熱可塑性エラストマ樹脂で構成されている。
このシール部5は、フレキシブルフラットケーブル2の絶縁フィルム22の形成部位から長手方向に向かって所定距離の導体21を覆い被せるように、一体成形によって被覆してある。このシール部5と絶縁フィルム22とは、シール部5が密着性が高い樹脂、又は熱可塑性エラストマ形成されておれ、絶縁フィルム22がポリプロピレン等の絶縁材料によって形成されているため、接着性があり密着性が高くなっている。
【0027】
したがって、密着性が高い樹脂、又は熱可塑性エラストマによって一体成形によってケーブル保持部7のシール部5を形成すると、シール部5と端子3、シール部5と導体21とは、密着性を良くすることができる。
このため、図4に示す如く、フレキシブルフラットケーブル2にコネクタハウジング4から引き抜くような外力Aが掛かった場合は、シール部5におけるシール部5と端子3とが密着する密着部51、シール部5と導体21とが密着する密着部52に力がかかる。
しかしながら、密着部51と、密着部52に力がかかっても、フレキシブルフラットケーブル2とシール部5との密着性は、高いため、外力Aによって密着性は低下することなく、充分な密着性を保つことができる。
【0028】
保持部6は、図6に示す如く、シール部5の外周に、シール部5を覆いフレキシブルフラットケーブ2の穴23及びスリット24に掛かるように一体成形によって被覆する樹脂である。そして、この保持部6は、コネクタハウジング4を構成するケーブル保持部7を構成している。
保持部6は、高剛性樹脂によって一体成形されて形成されている。この高剛性樹脂は、一般的にコネクタハウジングの材料に用いられるポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA) 、液晶ポリマー(LCP)等の熱可塑性樹脂のことで、コネクタハウジング4を形成するに充分な剛性を備えた樹脂によって構成されている。
【0029】
フレキシブルフラットケーブ2の絶縁フィルム22には、穴23が2箇所に設けられている。
シール部5の外周に、シール部5を覆いフレキシブルフラットケーブ2の穴23及びスリット24に掛かるように保持部6を一体成形によって被覆すると、穴23には、絶縁フィルム22の上に保持部6を形成する際に被覆する樹脂が、フレキシブルフラットケーブ2の穴23の両側から入り込む。
したがって、図4に示す如く、フレキシブルフラットケーブル2にコネクタハウジング4から引き抜くような外力Aが掛かると、穴23に入り込んだ保持部6を形成する樹脂が、フレキシブルフラットケーブル2のコネクタハウジング4から引き抜かれる方向に対してストッパの役目を果たす。
【0030】
このため、フレキシブルフラットケーブル2にコネクタハウジング4から引き抜くような外力Aが掛かっても、フレキシブルフラットケーブル2が保持部6から抜けて外れることがなく、保持部6によってフレキシブルフラットケーブル2を確実に保持することができる。
このようにフレキシブルフラットケーブ2の絶縁フィルム22に2箇所設けられている穴23は、保持部6を形成する樹脂を絶縁フィルム22の上に被覆した際に、保持部6を形成する溶融樹脂が穴23の両側から入り込み、フレキシブルフラットケーブル2に抜き方向の外力が掛かった際に、穴23に入り込んだ保持部6を形成する被覆樹脂によってストッパの役目を果たさせるためのものである。すなわち、この穴23は、穴23に入り込む樹脂によって、外力によってフレキシブルフラットケーブル2が保持部6から抜けて外れることがなく、保持部6によってフレキシブルフラットケーブル2が確実に保持できるようにするためのものである。
【0031】
フレキシブルフラットケーブ2の絶縁フィルム22には、凹状又はコ字状のスリット24がフレキシブルフラットケーブル2の幅方向の両端部に設けられている。
シール部5の外周に、シール部5を覆いフレキシブルフラットケーブ2のスリット24に掛かるように保持部6を一体成形によって被覆すると、スリット24には、絶縁フィルム22の上に保持部6を形成する際に被覆する樹脂が、入り込み、図6に示す如く、保持部6が形成される。
したがって、フレキシブルフラットケーブル2に、図4に示す如きコネクタハウジング4から引き抜くような外力Aが掛かると、スリット24に入り込んで扱かした樹脂で構成される保持部6が、フレキシブルフラットケーブル2のコネクタハウジング4から引き抜かれる方向に対してストッパの役目を果たす。
【0032】
このようにフレキシブルフラットケーブ2の絶縁フィルム22にフレキシブルフラットケーブル2の幅方向の両端部に設けられている凹状又はコ字状のスリット24は、保持部6を形成する樹脂を絶縁フィルム22の上に被覆した際に、保持部6を形成する溶融樹脂がスリット24に入り込み、フレキシブルフラットケーブル2に抜き方向の外力が掛かった際に、スリット24に入り込んだ保持部6を形成する被覆樹脂が係合突起の役目を果たさせるためのものである。
すなわち、このスリット24は、スリット24に入り込む樹脂によって、外力によってフレキシブルフラットケーブル2が保持部6から抜け出るのを防いで保持部6によってフレキシブルフラットケーブル2が確実に保持できるようにするためのものである。
このようにフレキシブルフラットケーブル2は、穴23とスリット24との協働によって、フレキシブルフラットケーブル2をより強固に保持部6で保持できるようにしている。
【実施例2】
【0033】
図7には、本発明の実施の形態にかかるフラットケーブル防水コネクタ構造の製造方法の実施例が示されている。
図7は、図1に示したフラットケーブル防水コネクタ構造1の製造方法を示した図である。
図において、本発明の実施の形態にかかるフラットケーブル防水コネクタ構造は、図1−6に図示のフラットケーブル防水コネクタ構造1ど同一の構成を有している。
【0034】
まず、フラットケーブル2の端子3との接続側端部の絶縁フィルム22を除去し、各導体21(21a,21b,21c)を露出させる。そして、露出した各導体21と各端子3とを超音波溶接、圧着等の方法によって接合する(図7(a)参照)。
次に、各導体21(21a,21b,21c)と各端子3の接合部31を覆うように密着性が高い樹脂、又は熱可塑性エラストマによってシール部5を一体成形する(図7(b)参照)。
そして、密着部51と、密着部52に高い密着性を持たせ、フレキシブルフラットケーブル2に、コネクタハウジング4から引き抜くような外力Aが掛かっても、外力Aによって密着性は低下することなく、充分な密着性を保つことができるよようにする。
【0035】
これによってフレキシブルフラットケーブル2の導体21と、端子3とが接合されている接合部31を含み、接合部31からコネクタハウジング4の嵌合部41側に向かって所定距離の端子3と、接合部31からフレキシブルフラットケーブル2の長手方向に向かって所定距離の導体21が被覆される。
【0036】
しかる後、シール部5の上に、シール部5を覆いフレキシブルフラットケーブ2の穴23を覆い、スリット24に掛かるように保持部6を一体成形によって被覆する(図7(c)参照)。
これによって、保持部6を形成する樹脂が、穴23とスリット24に入り込み、フレキシブルフラットケーブル2に抜き方向の外力Aが掛かった際に、穴23に入り込んだ保持部6を形成する被覆樹脂がストッパの役目を果たすと共に、スリット24に入り込んだ保持部6を形成する被覆樹脂が係合突起の役目を果たし、保持力を向上させる。
【0037】
このように本発明は、フレキシブルフラットケーブ2の端部を一体成型するケーブル保持部7に、シール性向上を目的としたシール部5を形成する一次成型に密着性が高い樹脂を用い、保持力向上を目的とした保持部6には、高剛性樹脂を二次成型することによって、シール性と保持力を確保する構造を得ることができる。
すなわち、本発明は、フレキシブルフラットケーブ2の端部を一体成型するケーブル保持部7を構成するシール部5に密着性が高い樹脂を用いて一次成型を行い、シール部5におけるシール部5と端子3とが密着する密着部51と、シール部5と導体21とが密着する密着部52の密着性を向上し、ケーブル保持部7を構成する保持部6に高剛性樹脂を用いて二次成型を行うことによって、フレキシブルフラットケーブル2にコネクタハウジング4から引き抜く方向への外力Aが掛かっも、フレキシブルフラットケーブル2がコネクタハウジング4から引き抜かれないような保持力を向上させている。
【0038】
なお、本発明の実施の形態のフラットケーブル防水コネクタ構造1は、端子3が雄端子であるものを例示したがこれに限らず雌端子であってもよい。
【0039】
また、本発明の実施の形態のフラットケーブル防水コネクタ構造1は、コネクタハウジング4が、断面外形が長円形状の筒状の嵌合部41を有してなり、内部に図示しない接続相手のコネクタを嵌入するようになっているものを例示したが、これに限るものではない。すなわち、接続相手のコネクタと嵌合される形状であればその他の形状を用いても構わない。
【0040】
以上、本発明者によってなされた発明を、上述した発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上述した発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…………フラットケーブル防水コネクタ構造, 2…………フレキシブルフラットケーブル, 3…………端子, 4…………コネクタハウジング, 5…………シール部, 6…………保持部, 7…………ケーブル保持部, 21…………導体, 22…………絶縁フィルム, 23…………穴, 24…………スリット, 31…………接合部, 41…………嵌合部, 51…………密着部, 52…………密着部, A…………外力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の導体を間隔をおいて平行に並べ絶縁フィルムを上下から被覆して平板状に形成してなるフレキシブルフラットケーブルと、
前記フレキシブルフラットケーブルの導体に接合する端子と、
前記フレキシブルフラットケーブルを該導体と前記端子との接合部を含み一体成形してなるケーブル保持部と、
一端に前記フレキシブルフラットケーブルに形成する前記ケーブル保持部を有し、他端に接続相手コネクタを嵌合可能に構成してなるコネクタハウジングとを有してなるフラットケーブル防水コネクタ構造において、
前記フレキシブルフラットケーブルの導体間に穴を設けるととも該フレキシブルフラットケーブルの幅方向端部にスリットを形成し、
前記ケーブル保持部を、
前記導体と前記端子との接合部を含み、該導体と該端子の一部に密着性が高い樹脂又は熱可塑性エラストマによって一体成形してなるシール部と、
前記シール部を覆い、前記フレキシブルフラットケーブルを高剛性樹脂によって一体成形してなる保持部と、
によって形成してなる
ことを特徴とするフラットケーブル防水コネクタ構造。
【請求項2】
前記保持部は、
前記フレキシブルフラットケーブルの穴に高剛性樹脂が入り込み、
前記スリットの一部に掛かるように形成してなる
ことを特徴とする請求項1に記載のフラットケーブル防水コネクタ構造。
【請求項3】
複数本の導体を間隔をおいて平行に並べ絶縁フィルムを上下から被覆して平板状に形成してなるフレキシブルフラットケーブルと、
前記フレキシブルフラットケーブルの導体に接合する端子と、
前記フレキシブルフラットケーブルを該導体と前記端子との接合部を含み一体成形してなるケーブル保持部と、
一端に前記フレキシブルフラットケーブルに形成する前記ケーブル保持部を有し、他端に接続相手コネクタを嵌合可能に構成してなるコネクタハウジングとを有してなるフラットケーブル防水コネクタ構造において、
前記フレキシブルフラットケーブルの導体間の前記絶縁フィルムに穴を形成し、
前記フレキシブルフラットケーブルの幅方向の前記絶縁フィルムの端部にスリットを形成し、
前記フレキシブルフラットケーブルの導体に前記端子を接合し、
前記導体と前記端子との接合部を含み、該導体と該端子の一部に、密着性が高い樹脂又は熱可塑性エラストマによって一体成形してなるシール部を形成し、
前記シール部を覆い、前記フレキシブルフラットケーブルを高剛性樹脂よって一体成形してなる保持部を形成し、
前記保持部を形成した後、前記コネクタハウジングの一端に装着してなる
ことを特徴とするフラットケーブル防水コネクタ構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−69600(P2013−69600A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208478(P2011−208478)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】