フラットケーブル
【課題】端部一括加工でグランドバーを半田付け接合できるフラットケーブルを提供する。
【解決手段】フラットケーブル15はその端部近傍の所定位置において、上下から同軸ケーブル2およびディスクリートケーブル7を挟持する一対の導電性グランドバー10、11を有して構成される。この一対の導電性グランドバー10、11は、所定位置において外周側絶縁被覆6を除去して露出するシールド層5を挟持して半田接合されるとともに、同軸ケーブル2のシールド層部外径とディスクリートケーブル外径との外径差に相当する厚みの空隙75を有してディスクリートケーブル7を挟持することを特徴としている。この空隙75を有することで、ヒータ手段73からの熱がグランドバー11を介してディスクリートケーブル7の絶縁被覆9に伝わることなく遮断されるため、絶縁被覆9を溶融させることなく半田付け接合可能となる。
【解決手段】フラットケーブル15はその端部近傍の所定位置において、上下から同軸ケーブル2およびディスクリートケーブル7を挟持する一対の導電性グランドバー10、11を有して構成される。この一対の導電性グランドバー10、11は、所定位置において外周側絶縁被覆6を除去して露出するシールド層5を挟持して半田接合されるとともに、同軸ケーブル2のシールド層部外径とディスクリートケーブル外径との外径差に相当する厚みの空隙75を有してディスクリートケーブル7を挟持することを特徴としている。この空隙75を有することで、ヒータ手段73からの熱がグランドバー11を介してディスクリートケーブル7の絶縁被覆9に伝わることなく遮断されるため、絶縁被覆9を溶融させることなく半田付け接合可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブルとディスクリートケーブルを平行に並べて保持してなるフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
中心部を直線状に延びる芯線を内周側絶縁被覆により覆い、この内周側絶縁被覆の外周をシールド層により覆い、このシールド層の外周を外周側絶縁被覆により覆って構成される同軸ケーブルは従来から一般的に知られている。また、このような同軸ケーブルを複数本、少なくとも端部において同一平面上に平行に並べて保持して構成されるフラットケーブルが知られている。上記フラットケーブルはその端部にコネクタ(フラットケーブル用コネクタと呼ぶ)が取り付けられて使用されるが、コネクタと接続する前にフラットケーブル端部の同軸ケーブルにおいて、外周側絶縁被覆を剥離しシールド層を露出させる、露出したシールド層を導電性グランドバーで挟持し半田付け接合する、導電性グランドバーより先端側のシールド層を剥離し内周側絶縁被覆を露出させる、露出した内周側絶縁被覆を剥離して芯線を露出させるといった端部加工が必要となる。この加工方法として、例えば特許文献1に示す端部一括加工が知られている。
【0003】
最近では、フラットケーブル用コネクタを接続して使用する電気機器側からの仕様要求として、各ケーブルのすべてが同軸ケーブルである必要がなく、一部のケーブルについては耐ノイズ性能要求が低く、シールド層を有しないディスクリートケーブルを用いても良いものがある。ここでディスクリートケーブルは、その中心部を直線状に延びる芯線と芯線を覆う絶縁被覆とによって構成され、同軸ケーブルと比較して構造が簡素で安価という特徴を有する。このため、一部の同軸ケーブルをシールド層を有しないディスクリートケーブルに置き換えて同軸ケーブルとディスクリートケーブルが混在した構成とするフラットケーブルとする構成の方が製造コストを低減できる。
【0004】
【特許文献1】特開平10-144145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記同軸ケーブルとディスクリートケーブルが混在したフラットケーブルを、特許文献1に示すような端部一括加工によってシールド層と一対の導電性グランドバーとを半田付け接合する場合、同軸ケーブルとディスクリートケーブルでは互いにケーブルの構造およびケーブル外径が異なるために、ヒータ手段から発生する熱でディスクリートケーブルの絶縁被覆を溶融させてしまいフラットケーブルの性能に影響を及ぼすことから、端部一括加工は非常に困難であった。
【0006】
上記の端部一括加工を行わず同軸ケーブルのみとディスクリートケーブルのみとに分けて端部加工を行い、それぞれの端部加工が終了した後にラミネートフィルムで貼り合わせる方法も考えられえるが、この場合は加工工数が増えること、ラミネートフィルムで貼り合わせる際の位置精度を出しにくいという問題を生じる。また、同軸ケーブルはディスクリートケーブルに要求される電気的性能を満足させることが可能であるので、同軸ケーブルとディスクリートケーブルとが混在する構成が可能なフラットケーブルに対して、すべて同軸ケーブルで構成するフラットケーブルを用いて、フラットケーブルの電気的性能を満足させつつ端部一括加工を行う方法も考えられるが、ディスクリートケーブルと比較して高価な同軸ケーブルのみでフラットケーブルを構成すれば、製造コストが高くなるという不都合が生じる。
【0007】
以上のような課題に鑑みて本発明では、同軸ケーブルとディスクリートケーブルが混在したフラットケーブルにおいて、端部一括加工によって一対の導電性グランドバーと同軸ケーブルのシールド層とを半田付け接合できるフラットケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明に係るフラットケーブルは、直線状に延びる芯線、芯線を覆って設けられた内周側絶縁被覆、内周側絶縁被覆の外周を覆って設けられたシールド層、およびシールド層の外周を覆って設けられた外周側絶縁被覆からなる同軸ケーブルと、直線状に延びる芯線、芯線を覆って設けられた絶縁被覆からなり、同軸ケーブルのシールド層よりも小さな外径を有するディスクリートケーブルと、同軸ケーブルとディスクリートケーブルとを互いに平行に平面状に並べた状態で、同軸ケーブルとディスクリートケーブルの端部近傍の所定位置において、上下から同軸ケーブルおよびディスクリートケーブルを挟持する一対の導電性グランドバーとを有して構成される。このディスクリートケーブルは、同軸ケーブルに両側から挟まれるように平面状に並んで配置され、また一対の導電性グランドバーは、所定位置において外周側絶縁被覆を除去して露出するシールド層を挟持して半田接合されるとともに、同軸ケーブルのシールド層部外径とディスクリートケーブル外径との外径差に相当する厚みの空隙を有してディスクリートケーブルを挟持して構成される。
【0009】
一対の導電性グランドバーのうち、同軸ケーブルのシールド層に半田付け接合させるためにヒータ手段が接して加熱する側のグランドバーとディスクリートケーブルとの間に、同軸ケーブルのシールド層部外径とディスクリートケーブル外径との外径差に相当する厚みの空隙を有するように構成することで、この空隙によりヒータ手段が接して加熱する側のグランドバーを介してディスクリートケーブルの絶縁被覆に熱が伝わりにくくなるため、端部一括加工によって絶縁被覆を溶融させることなく一対の導電性グランドバーと同軸ケーブルのシールド層とが半田付け接合可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に関するフラットケーブルによれば、両側から同軸ケーブルに挟まれるディスクリートケーブルについて、同軸ケーブルの露出したシールド層と導電性グランドバーを半田付け接合する際に、ヒータ手段を用いて上下一対となっているグランドバーの一方を加熱するが、ディスクリートケーブルと加熱されるグランドバーとの間に同軸ケーブルのシールド層部外径とディスクリートケーブル外径との外径差に相当する厚みの空隙を断熱層とすることにより、加熱されたグランドバーを介してディスクリートケーブルの絶縁被覆に熱が伝わらないので、ディスクリートケーブルの絶縁被覆を溶融させることがない。つまり、端部一括加工によって同軸ケーブルの露出したシールド層と一対の導電性グランドバーとを半田付け接合可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下において、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施に係るフラットケーブル1を用いたフラットケーブル用コネクタ20を図1から図3に示す。フラットケーブル用コネクタ20は、基板等に設けられた相手側コネクタ90(図10を参照)と嵌合接続されるようになっている。フラットケーブル1と、金属製の複数の(21本の)コンタクト21と、コンタクト21を保持する絶縁材料製の保持部材30と、保持部材30の上下の底面を覆うように設けられた第1シェル部材40および第2シェル部材60と、コンタクト21の一部と第1シェル部材40とを電気的に接続させる2つのグランド部材50と、相手側コネクタ90との嵌合をロック保持するロック部65と、ロック部65によるロック保持を解除するための操作が行われる操作部67とを主体にフラットケーブル用コネクタ20は構成される。
【0012】
フラットケーブル1は、その端部がフラットケーブル用コネクタ20の中央部近傍に取り付けられており、少なくとも1本以上の同軸ケーブル2と少なくとも1本以上のディスクリートケーブル7とを有して構成される。例えば図7に示すように、8本の同軸ケーブル2と8本のディスクリートケーブル7とを有し、左端に同軸ケーブル2が2本、その右隣にディスクリートケーブル7が2本、さらにその右隣に同軸ケーブル2が2本、さらにその右隣にディスクリートケーブル7が2本配列されて構成される。残り8本のケーブルはフラットケーブル1のケーブル配列方向に対する中心線76に関して、左側8本のケーブルと対称な配列となっている。これら合計16本のケーブルは、それぞれ所望間隔に平行かつ平面状に並んでおり、フラットケーブル1の端部近傍においてこれらのケーブルを挟持するように金属材料でできた板状の一対の導電性グランドバー10,11が配設されている。これらのケーブルは少なくともケーブル端部において、例えばラミネートフィルム71を接着することにより所望間隔に保持されている。同軸ケーブル2のシールド層5と一対の導電性グランドバー10、11とが半田付け接合できるように、同軸ケーブル2の外周側絶縁被覆6の一部が剥離されている。図7中におけるVIII−VIIIの断面図を図8に示す。
【0013】
図12は同軸ケーブル2の断面を立体的に示しており、中心部を直線状に延びる芯線3、芯線を覆って設けられた内周側絶縁被覆4、内周側絶縁被覆4の外周を覆って設けられたシールド層5、およびシールド層5の外周を覆って設けられた外周側絶縁被覆6から構成される。近年は同軸ケーブル2を細径化する傾向が強く、例えば芯線径が約0.1mmで外周側絶縁被覆径が約0.35mm程度の極細い同軸ケーブル2も用いられている。図13はディスクリートケーブル7の断面を立体的に示しており、中心部を直線状に延びる芯線8、芯線を覆って設けられた絶縁被覆9から構成され、ディスクリートケーブル7の外径は同軸ケーブル2のシールド層部外径よりも小さな外径を有する(図8を参照)。
【0014】
図7および図8に示すように、同軸ケーブル2およびディスクリートケーブル7は所望間隔で平行かつ平面状に導電性グランドバー10上に配列され、導電性グランドバー11は同軸ケーブル2のシールド層5の上面に接した状態で導電性グランドバー10と略平行な向きに配設される。一対の導電性グランドバー10、11のディスクリートケーブル7を挟持する部分においては、同軸ケーブル2のシールド層部外径とディスクリートケーブル外径との外径差に相当する空隙75を有している。各ケーブルの少なくとも端部近傍において例えばラミネートフィルム71を用いて各ケーブルを両面から接着保持しており、一対の導電性グランドバー10、11は同軸ケーブル2のシールド層5を挟持した状態で半田付け接合されている。図7に示すように、左から4番目と5番目、6番目と7番目、8番目と9番目、10番目と11番目、12番目と13番目の各ケーブル間に隙間があるが、これはグランド部材50のグランド脚部54が配置されるためであったり、または意図的に何とも接続しない構成のために隙間を設けている。フラットケーブル1において、一対の導電性グランドバー10、11よりも先端部で露出した同軸ケーブル2の芯線3、ディスクリートケーブル7の芯線8は、図6に示すようにフラットケーブル用コネクタ20の中央部近傍に設置され、露出部31で露出したコンタクト21の基端側と半田付けにより接合される。
【0015】
コンタクト21は金属材料を用いて棒状に形成され、保持部材30と一体にインサートモールドされることによって保持されており、図6に示すように保持部材30の先端側においてフラットケーブル1における各ケーブル2,7の芯線3、8の配列ピッチと同一のピッチで左右方向に並んで配設される。21本のコンタクト21の中で、左から順に5番目、8番目、11番目、14番目、17番目のコンタクトをそれぞれ21a、21b、21c、21d、21eとしておく。コンタクト21の基端側は保持部材30の中央部近傍に形成された露出部31で露出しており、各ケーブル2,7の露出した芯線3,8もしくはグランド部材50のグランド脚部54と半田付けにより接合される半田接合部22が形成されている。図6の実施例において、コンタクト21cは露出部31で芯線3,8もしくはグランド脚部54のいずれとも半田付け接合されない構成となっている。
【0016】
露出部31の基端部では、コンタクト21の半田接合部22の間に複数のリブが立設さ
れ、このリブの間に各ケーブル2,7の芯線3,8もしくはグランド部材50のグランド脚部54がそれぞれ受容される第1ガイド溝32aが形成される。露出部31の先端部でも同様に、コンタクト21の半田接合部22の間に複数のリブが立設され、このリブの間に、各ケーブル2,7の芯線3,8もしくはグランド部材50のグランド脚部54がそれぞれ受容される第2ガイド溝32bが形成される。
【0017】
保持部材30は絶縁材料を用いて一体成形され、相手側コネクタ90と嵌合可能に構成される。保持部材30の中央部近傍には、前述の露出部31が形成され、さらに露出部31の基端側に繋がってケーブル収容部33が形成される。ケーブル収容部33は、一対の導電性グランドバー10,11の形状に合わせて形成されたグランドバー収容部34を有して構成され、このグランドバー収容部34に一対の導電性グランドバー10,11を収容させることにより、図6に示すようにフラットケーブル1が位置決めされた状態でケーブル収容部33に収容されるようになっている。
【0018】
また、露出部31の先端側に繋がって段差が形成されており、その段差部分には、グラ
ンド部材50のグランド先端部59が干渉するのを防止する凹部35が形成されている。露出部31の上方には、保持部材30の内側に向けて左右に第2シェル部材収容溝36が
形成され、この第2シェル部材収容溝36にそれぞれ第2シェル部材60の左右の先端側
縁部が収容されるようになっている。保持部材30の左右側部には、第2シェル部材60
に繋がって形成されるロック部65および操作部67を受容するロック受容部37が形成
され、ロック受容部37の先端側に位置する開口部38からロック部65の先端側がそれ
ぞれ左右へ突出するようになっている。
【0019】
第1シェル部材40は、図2に示すように金属材料を用いて板状に形成され、保持部材30と一体にインサートモールドされて保持部材30の下側底面を覆うように取り付けられる。第1シェル部材40の中央部には、4つの接続片41が形成されており、この接続片41に対しグランド部材50のグランド基部51およびフラットケーブル1の導電性グランドバー10がそれぞれ半田付けにより接合され、第1シェル部材40がグランド部材50および導電性グランドバー10と電気的に接続されるようになっている。
【0020】
グランド部材50は、図9に示すように金属材料を用いてはしご状に形成され、グランド基部51と、2つのグランド脚部54と、グランド先端部59とを有して構成される。グランド基部51は板状に形成され、前述のように第1シェル部材40の接続片41と半田付けにより接合されるようになっている。グランド基部51には穴部52が形成されており、半田のフィレット量(半田の流れ込む量)を増やして、半田付け性を向上させている。
【0021】
2つのグランド脚部54は、グランド基部51の先端からそれぞれ互いに平行に延びる
棒状に形成され、図5および図6に示すように中央部近傍が保持部材30の第1および
第2ガイド溝32a,32bに受容されて、半田付けにより21本のうち2本のコンタクト21(半田接合部22)とそれぞれ電気的に接続されるようになっている。また、図9に示すように、グランド脚部54の中央部近傍には、それぞれ2箇所に切り欠き部57が形成されており、半田のフィレット量(半田の流れ込む量)を増やして、半田付け性を向上させている。
【0022】
またグランド脚部54は、それぞれグランド脚部54の両端近傍で階段状に折り曲げられ、グランド脚部54の基端側に第1の折り曲げ部55が形成されるとともに、先端側に第2の折り曲げ部56が形成される。第1の折り曲げ部55はグランド基部51に繋がっており、第1の折り曲げ部55における段差、すなわち、グランド脚部54とグランド基部51との間の段差は、同軸ケーブル2の半径とほぼ同じになっている。これにより、フラットケーブル用コネクタ20が組み立てられた状態では、図3に示すように、グランド基部51がフラットケーブル1の導電性グランドバー10と第1シェル部材40の接続片41との間に位置して、導電性グランドバー10および接続片41とそれぞれ接合されるようになっている。
【0023】
一方、第2の折り曲げ部56は、露出部31の先端側に繋がる段差部分の高さに合わせ
て折り曲げ形成され、グランド先端部59にそれぞれ繋がるようになっている。グランド
先端部59は、グランド基部51と平行に延びる板状に形成され、2つあるグランド脚部
54の先端側とそれぞれ繋がるようになっている。またグランド先端部59は、保持部材30における凹部35の上方に位置しており、グランド部材50の取り付け具合に応じてグランド先端部59が自由に上下移動できるようになっている。これによって、グランド脚部54が保持部材30の第1および第2ガイド溝32a,32bに確実に受容される。
【0024】
このようにグランド部材50が、グランド基部51と、グランド基部51からそれぞれ互いに平行に延びる棒状に形成された複数のグランド脚部54と、グランド脚部54の先端側とそれぞれ繋がるグランド先端部59とを有して構成され、さらにはグランド脚部54がそれぞれ両端近傍で階段状に折り曲げられることで、グランド脚部54の先端側に繋がるグランド先端部59によりグランド脚部54が変形し難くなるのに加え、グランド脚部54の曲げ効果により、グランド部材50の脚部(グランド脚部54)の強度を向上させることが可能になる。またグランド部材50が、グランド基部51、グランド脚部54、およびグランド先端部59を有して構成されるため、グランド部材50の取り扱いが容易となることから、フラットケーブル用コネクタ20へのセット時にグランド脚部54が変形してしまうのを防止することが可能になる。
【0025】
第2シェル部材60は、金属材料を用いて板状に形成され、第2シェル部材60の左右の先端側縁部を保持部材30の基端側から第2シェル部材収容溝36に挿入することで、保持部材30の上側底面を覆うように取り付けられる。第2シェル部材60の中央部には、3つの当接片61が形成されており、図3に示すように、フラットケーブル1の導電性グランドバー11に弾性変形した状態で当接し、第2シェル部材60が導電性グランドバー11、同軸ケーブル2のシールド層5、および導電性グランドバー10を介して第1シェル部材40と電気的に接続されるようになっている。これにより半田等を用いずに簡便な構成で、シールド層5等を介して第1シェル部材40と繋がる導電性グランドバー11を第2シェル部材60と電気的に接続させることができ、組立工数を低減させることができることから、製造コストをより低減させることが可能になる。
【0026】
第2シェル部材60の基端部には、階段状に曲げられた押さえ部62が形成され、図3
に示すように、同軸ケーブル2の外周側絶縁被覆6およびディスクリートケーブル7の絶縁被覆9に当接して、保持部材30との間で各ケーブル2,7を挟むように構成される。これにより、各ケーブル2,7の基端部近傍がフラットケーブル用コネクタ20に対してある程度固定保持されることから、各ケーブル2,7がフラットケーブル用コネクタ20に対して曲げられたときに生じる芯線3,8のコンタクト21からの剥離を防止することができる。
【0027】
第2シェル部材60の左右側部63は、第2シェル部材60の左右で垂直(下方)に折
り曲げられて形成され、そこから第2シェル部材60の基端側に延びて一体に繋がった折
り返し部64でそれぞれ折り返される。さらに、折り返し部64から第2シェル部材60
の先端側へ延びるとともに一体に繋がってコの字形の操作部67が形成され、操作部67
から第2シェル部材60の先端側へ延びるとともに一体に繋がってロック部65が形成さ
れる。
【0028】
このように、ロック部65および第2シェル部材60を一体化することにより、部品点
数を減らして組立工数を低減させることができることから、製造コストを低減させること
が可能になる。また、ロック部65および第2シェル部材60を一体化することにより、
第1および第2シェル部材40,60を介してロック部65を接地させることが可能にな
ることから、ノイズの発生を防止することが可能になる。
【0029】
上記のように一対の導電性グランドバー10、11が、各ケーブルを所望間隔に保持した状態でグランドバー収容部34に収容されることで、フラットケーブル1の端部で露出した芯線3,8が保持部材30の中央部近傍においてコンタクト21と確実に半田付け接合されることを可能としている。また一対の導電性グランドバー10、11を、第1シェル部材40、第2シェル部材60およびグランド部材50と電気的に接続することで、効率的なアース接続を可能としている。このような役割を果たす一対の導電性グランドバー10、11は、本発明に係るフラットケーブル1の端部一括加工工程において配設されるが、その加工について工程順に図を参照して説明する。
【0030】
図11に示すように、端部一括加工の説明を行うために、上記フラットケーブル1とは各ケーブル本数ならびに各ケーブル配列が異なるフラットケーブル15を用いて以下説明する。フラットケーブル15は、4本の同軸ケーブル2と4本のディスクリートケーブル7とを有して構成される。左に同軸ケーブル2が2本、中央にディスクリートケーブル7が4本、右に同軸ケーブル2が2本、同一平面上に平行かつ所望間隔に配列しており、4本のディスクリートケーブル7はその両側を同軸ケーブル2によって挟まれて構成される。これらのケーブルは片面に粘着面を有するラミネートフィルム71を、ケーブル両側から貼り付けることにより接着保持されている。
【0031】
図14はフラットケーブル15の端部の平面図であり、まず図11の状態においてフラットケーブル端部より端部一括加工を行う長さaの範囲のラミネートフィルム71を除去した後、フラットケーブル端部より長さb(b<c)以上で長さc(b<c<a)以下の範囲AにCO2レーザを照射して、同軸ケーブル2の外周側絶縁被覆6を溶融除去することによりシールド層5を露出させる。このとき、フラットケーブル端部より長さbの位置からフラットケーブル端部方向に長さeの幅だけ同軸ケーブル2の外周側絶縁被覆6をリング状に残すように、フラットケーブル端部から長さd(d<b)の位置にもCO2レーザを照射して、同軸ケーブル2の外周側絶縁被覆6を溶融除去することによりシールド層5を露出させる。ここでCO2レーザは、絶縁被覆に反応するが金属には反応しないように周波数設定がなされており、また同軸ケーブル2の外周側絶縁被覆6を溶融除去可能な出力とするとともに、一定幅領域を照射しながら範囲Aおよびフラットケーブル端部から長さdの位置を各ケーブルの配列ピッチ方向に往復することで外周側絶縁被覆6を溶融除去する。
【0032】
このとき、CO2レーザは範囲A内およびフラットケーブル端部から長さdの位置においてディスクリートケーブル7の絶縁被覆9の表面にも照射されるが、絶縁被覆9はCO2レーザを照射されても溶融除去されて芯線8が露出しないような外周側絶縁被覆6よりも厚い肉厚を有し、かつ絶縁被覆9の耐熱性が外周側絶縁被覆6の耐熱性よりも格段に大きく、CO2レーザを照射されても損傷を受けにくい材質であるPFA(パーフロロアルコキシ)等を用いて構成される。一方、同軸ケーブル2の外周側絶縁被覆6の材質にはPFA等よりも容易に溶融除去が可能なPET(ポリエチレンテレフタレート)でCO2レーザに反応しやすい色(例えば青)を用いて構成する。このような構成とすることで、CO2レーザを照射したときに同軸ケーブル2の外周側絶縁被覆6は、小さなCO2レーザ照射量で簡単に溶融除去されてシールド層5を露出させることが可能となる。さらに、ディスクリートケーブル7の絶縁被覆9に照射されるCO2レーザ量も小さくなるため、絶縁被覆9の表面に与える損傷も小さく抑えられる。
【0033】
上記CO2レーザを照射する場合、CO2レーザが同軸ケーブル2の露出したシールド層5の隙間を通過して、同軸ケーブル2の内周側絶縁被覆4に達することもあり得るため、同軸ケーブル2の内周側絶縁被覆4も、上記ディスクリートケーブル7の絶縁被覆9と同様に、CO2レーザを照射されても損傷を受けにくい材質であるPFA等を用いて構成する。
【0034】
次に図14に示すように、上記フラットケーブル端部から長さd(d<b)の位置で露出させたシールド層5を切断可能となるように出力調整したYAGレーザを、フラットケーブル端部から長さdの位置に照射してシールド層5を切断する。ここでYAGレーザは、金属に反応するが絶縁被覆には反応しないように周波数設定がなされており、上記長さeのリング状の外周側絶縁被覆6は、YAGレーザを照射することで切断されたシールド層5のラミネートフィルム71側の端部を保持しているため、シールド層5を構成する多数の横巻き極細電線がばらばらにほぐれることがない。このため、シールド層5を一対の導電性グランドバー10、11に接続するときに接続信頼性を向上させるという効果を有する。
【0035】
ここでYAGレーザは、レーザを照射しながらフラットケーブル端部から長さdの位置を、各ケーブルの配列ピッチ方向に往復しながら同軸ケーブル2のシールド層5を切断する。このとき、YAGレーザは同軸ケーブル2のみならずディスクリートケーブル7にも照射されるが、YAGレーザがディスクリートケーブル7の絶縁被覆9を透過して芯線8に損傷を与えてはならないので、絶縁被覆9はYAGレーザを透過させないで遮断する色(例えば黒、白、黄で透明以外の色)の被覆を用いて構成する。このような構成とすることで、ディスクリートケーブル7の芯線8に与える損傷を小さく抑えられる。
【0036】
上記YAGレーザを照射する場合、YAGレーザが同軸ケーブル2のシールド層5を通過して、同軸ケーブル2の内周側絶縁被覆4に達し、その内周側絶縁被覆4を透過して芯線3に損傷を与えてはならないので、内周側絶縁被覆4は、上記と同様にYAGレーザを透過させないで遮断する色(例えば黒、白、黄で透明以外の色)の被覆を用いて構成する。このような構成とすることで、同軸ケーブル2の芯線3に与える損傷を小さく抑えられる。
【0037】
ここで、上記の同軸ケーブル2の内周側絶縁被覆4、外周側絶縁被覆6およびディスクリートケーブル7の絶縁被覆9の材質とその色についてまとめると、同軸ケーブル2の内周側絶縁被覆4とディスクリートケーブル7の絶縁被覆9とは、材質がPFA(パーフロロアルコキシ)等でかつYAGレーザを透過させないで遮断する色(例えば黒、白、黄で透明以外の色)の被覆を用いて構成する。一方、同軸ケーブル2の外周側絶縁被覆6は、材質がPET(ポリエチレンテレフタレート)でかつCO2レーザに反応しやすい色(例えば青)を用いて構成する。
【0038】
次に、上記フラットケーブル端部より長さdの位置で切断された同軸ケーブル2のシールド層5および外周側絶縁被覆6を、フラットケーブル端部方向に引き抜き除去することで、フラットケーブル端部から長さdの範囲における同軸ケーブル2の内周側絶縁被覆4を露出させる。
【0039】
次に図15に示すように、同軸ケーブル2のリング状外周側絶縁被覆6からフラットケーブル端部方向に長さfの位置にテープ72の一端を配置して、フラットケーブル端部側のディスクリートケーブル7の絶縁被覆9、同軸ケーブル2の内周側絶縁被覆4のそれぞれ両面を接着保持する。このテープ72の接着時に、各ケーブルの先端部を所望のケーブル間隔になるように保持しておく。これより後の工程でテープ72を接着保持したまま半田槽に挿入する工程があるので、テープ72は耐熱性を有するテープ(例えばテフロン(登録商標)テープ)を用いるのが好ましい。
【0040】
次に上記CO2レーザを照射して露出させた同軸ケーブル2のシールド層5(図14の範囲A)に、一対の導電性グランドバー10,11を半田付け接合させるための半田(図示せず)を塗布する。このとき用いる半田は、例えば半田ペースト、半田棒、板半田を用いることができる。一対の導電性グランドバー10,11は、各ケーブルを両側から挟持する状態で設置され、後述するヒータ手段73によって同軸ケーブル2のシールド層5と半田付け接合される。
【0041】
保持部材30のグランドバー収容部34に収容される導電性グランドバー10は、金属材料を用いて板状に形成され、同軸ケーブル2の露出したシールド層5より狭い幅でケーブルの配列方向(ピッチ方向)に延びており、導電性グランドバー11とともに各ケーブルを両面から挟持した状態で同軸ケーブル2のシールド層5と半田付け接合されるようになっている。これにより、同軸ケーブル2およびディスクリート用ケーブル7が導電性グランドバー10に沿って同一平面上に並べられる。またこのとき、導電性グランドバー10が同軸ケーブル2の露出状態にあるシールド層5と半田付け接合されることで、同軸ケーブル2のシールド層5を介して導電性グランドバー11と電気的に接続されるようになっている。
【0042】
導電性グランドバー11は、金属材料を用いて上記導電性グランドバー10と同様の板状に形成され、導電性グランドバー10とともに各ケーブルを挟むようにして(導電性グランドバー10と略平行な向きで)、半田付け接合することにより同軸ケーブル2のシールド層5と接合されるようになっている。また導電性グランドバー10と同様に、露出状態にある同軸ケーブル2のシールド層5が導電性グランドバー11に半田付け接合され、導電性グランドバー11がシールド層5を介して導電性グランドバー10と電気的に接続されるようになっている。
【0043】
次に図16には、図15の一対の導電性グランドバー部分XVI−XVIの断面図を示す。一対の同導電性グランドバー10、11と、同軸ケーブル2のシールド層5を半田付け接合する際に、ヒータ手段73が接して加熱する側の導電性グランドバー11とディスクリートケーブル7との間に、同軸ケーブル2のシールド層部外径とディスクリートケーブル外径との外径差に相当する厚みの空隙75を有する構成とすることで、加熱された導電性グランドバー11からの熱がディスクリートケーブル7の絶縁被覆9に伝わらないため、絶縁被覆9を溶融させることなく半田付け接合が可能となる。さらにディスクリートケーブル7は、その両側を同軸ケーブル2によって挟まれて構成されているため、ヒータ手段73が接して導電性グランドバー11を加熱する際に、一対の導電性グランドバー10と11とが平行に保たれた状態で半田付け接合されるため、第1シェル部材40、第2シェル部材60およびグランド部材50と確実に電気的に接続可能となる。
【0044】
一対の導電性グランドバー10、11と同軸ケーブル2のシールド層5を半田付け接合するためのヒータ手段(図16における73に相当)として、例えばパルスヒータによる接合がある。パルスヒータは、発熱性の高い材料(例えばチタン)で形成されたヒータ電極と、ヒータ電極先端に設置された熱電対と、ヒータ電極先端の温度管理を行うパルスヒートコントロール電源とを主として有しており、ヒータ電極を発熱させて半田付け接合を行う構成となっている。
【0045】
ヒータの形状は電極先端部が狭くなるように形成することで電流が流れにくく発熱しやすい構成となっており、この狭い部分を電流が流れることでヒータ先端部が発熱する。パルスヒートコントロール電源には、ヒータ電極先端に設置した熱電対で検出された温度が、リアルタイムにフィードバックされることでヒータ電極を所望の設定温度に保つ制御機能が備えられている。溶融した半田が十分に一対の導電性グランドバー10、11および同軸ケーブル2のシールド層5に行きわたると、接合部に一定時間送風を行って溶融した半田を冷却固化させることで半田付け接合を確実なものとする。
【0046】
次に図15に示すように、一対の導電性グランドバー10、11のラミネートフィルム71側の端部から長さgの位置に、各ケーブルの配列方向(ピッチ方向)にCO2レーザを照射して、同軸ケーブル2の内周側絶縁被覆4およびディスクリートケーブル7の絶縁被覆9を切断する。このとき、同軸ケーブル2の内周側絶縁被覆4およびディスクリートケーブル7の絶縁被覆9を切断できるようにCO2レーザの出力調整をしておく。そして切断された内周側絶縁被覆4と絶縁被覆9のうちで、テープ72に接着保持されている部分を、テープ72とともにフラットケーブル端部方向に平行に引くことで、図17に示すように同軸ケーブル2の芯線3およびディスクリートケーブル7の芯線8を露出させる。ここで、テープ72に接着保持されている内周側絶縁被覆4と絶縁被覆9の端部とが、芯線3、8から完全に抜けてしまわない範囲でフラットケーブル15端部方向に平行に引くことで芯線3、8を露出させる。
【0047】
次に図17に示すように、一対の導電性グランドバー10、11から長さhの位置よりもフラットケーブル端部側全体(テープ72を含む)を半田槽に挿入することで、露出させた芯線3、8に半田コーティングを施す。半田コーティングを施すことにより芯線3、8の表面に半田を固着させ、次の芯線切断工程において、芯線3、8の切断位置での変形を抑えて確実に切断を行うことができる。一対の導電性グランドバー10,11の端部から所望長さiの位置で、半田コーティングを施された芯線3、8を切断して、切断分離されたフラットケーブル15のテープ72を含む端部側を除去することで、フラットケーブル15におけるコネクタ接続前の端部一括加工は完了となる。なお、ここでは同軸ケーブル2を4本とディスクリートケーブル7を4本とを用いて構成されたフラットケーブル15について端部一括加工を説明したが、実際には図7に示すフラットケーブル1を対象として加工される。
【0048】
次に、フラットケーブル用コネクタ20の組み立て工程を工程順に説明する。まず、インサートモールドによりコンタクト21および第1シェル部材40が取り付けられた保持部材30に、グランド部材50を取り付ける。このとき、図5および図6に示すように、グランド部材50におけるそれぞれ2つのグランド脚部54の中央部近傍を、コンタクト21の基端側(半田接合部22)が露出する保持部材30の第1および第2ガイド溝32a,32bにそれぞれ受容させ、各グランド脚部54を半田付けによりそれぞれコンタクト21(半田接合部22)とそれぞれ電気的に接続させる。このとき、図5に示す左側のグランド部材50の2つのグランド脚部54はコンタクト21a、21bと、右側のグランド部材50の2つのグランド脚部54はコンタクト21d、21eと、それぞれ半田付け可能な位置の第1および第2ガイド溝32a,32bに受容される。
【0049】
次に、グランド部材50が取り付けられた保持部材30に、フラットケーブル1を取り付ける。このとき図6に示すように、一対の導電性グランドバー10,11を保持部材30のグランドバー収容部34に収容させるとともに、各ケーブル2,7の芯線3,8を21本のうち16本の(グランド脚部54と接続されるコンタクト21a、21b、21d、21eおよび21cを除いた)コンタクト21の基端側(半田接合部22)が露出する第1および第2ガイド溝32a,32bにそれぞれ受容させる。そして、各ケーブル2,7の芯線3,8を半田付けにより当該16本のコンタクト21(半田接合部22)とそれぞれ電気的に接続させる。
【0050】
これにより、図6における左から1、2、6、7、15、16、20、21番目のコンタクト21が同軸ケーブル2の芯線3と繋がり、図6における左から3、4、9、10、12、13、18、19番目のコンタクト21がディスクリートケーブル7の芯線8と繋がることになる。また、図6におけるコンタクト21a、21b、21d、21eはグランド部材50と繋がり、これらが接地用のコンタクトになる。
【0051】
次に、グランド部材50およびフラットケーブル1が取り付けられた保持部材30に、第2シェル部材60を保持部材30の基端側から(図1を参照)取り付ける。このとき、保持部材30の第2シェル部材収容溝36に第2シェル部材60の左右の先端側縁部を挿入するとともに、保持部材30のロック受容部37に左右のロック部65および操作部67を挿入して、開口部38からロック部65の先端側をそれぞれ左右へ突出させる。このとき、第2シェル部材60の3つの当接片61が導電性グランドバー11に弾性変形した状態で当接する。
【0052】
そして、第1シェル部材40の接続片41に対し、グランド部材50のグランド基部51およびフラットケーブル1の導電性グランドバー10をそれぞれ半田付けにより接合させる。このようにして、フラットケーブル用コネクタ20が組み立てられ、図10示すように、フラットケーブル用コネクタ20を相手側コネクタ90に嵌合接続させることが可能になる。なおこのとき、フラットケーブル用コネクタ20の保持部材30が、相手側保持部材92と嵌合するとともに、フラットケーブル用コネクタ20のコンタクト21が相手側コンタクト91と接触し、さらに図10で示すように、フラットケーブル用コネクタ20のロック部65がシールド部材93のロック係合部95と係合して、相手側コネクタ90との嵌合がロック保持される。これに対し、左右の操作部67をそれぞれ内側に押圧する操作を行うことで、ロック部65がロック係合部95から外れてロック保持が解除され、フラットケーブル用コネクタ20を相手側コネクタ90から取り外すことが可能になる。
【0053】
上述の実施形態において、図6に示すコンタクト21cは露出部31で芯線3,8もしくはグランド脚部54のいずれとも半田付け接合されない構成となっているが、このようなコンタクトの本数ならびに保持部材30における位置は任意に構成可能である。
【0054】
上述の実施形態において、ラミネートフィルム71は、少なくともフラットケーブル端部において各ケーブルを接着保持しており、フラットケーブル15の両面から接着保持しても良いし、片側のみから接着保持しても良い。
【0055】
上述の実施形態において、コンタクト21の本数(ピン数)は、21本に限らず、任意の(複数の)本数にすることが可能である。
【0056】
上述の実施形態において、図6におけるコンタクト21a、21b、21d、21eがグランド部材50と繋がり、これらが接地用のコンタクトになるように構成されているが、この構成に限られるものではなく、グランド部材50等の構成に支障がなければ別の組み合わせでも構わない。
【0057】
上述の実施形態において、フラットケーブル用コネクタ20にグランド部材50が用いられているが、これに限られるものではなく、本実施形態と同様の構成であれば、一般のケーブル用のコネクタに対しても本実施形態によるグランド部材50を適用することが可能である。
【0058】
上述の実施形態において、フラットケーブル1がフラットケーブル用コネクタ20に設置される工程で、第1シェル部材40の接続片41と、グランド部材50のグランド基部51および導電性グランドバー10が半田付け接合により接合後に、これらが半田付け接合されている接合部に、フラットケーブル用コネクタ20の底面側(第1シェル部材40側)から絶縁性を有した充填剤を注入することもできる。こうすることで、フラットケーブル用コネクタ20に働く外力に対して、半田付け接合を補強することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】フラットケーブル用コネクタの平面図である。
【図2】フラットケーブル用コネクタの底面図である。
【図3】フラットケーブル用コネクタの側断面図である。
【図4】保持部材の斜視図である。
【図5】保持部材にグランド部材が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図6】保持部材にフラットケーブルが取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図7】フラットケーブルの斜視図である。
【図8】図7中の矢印VIII−VIIIに沿った断面図である。
【図9】グランド部材の斜視図である。
【図10】フラットケーブル用コネクタが相手側コネクタと嵌合接続された状態を示す平面図(左端ロック部が部分断面図)である。
【図11】端部一括加工を行う前のフラットケーブルの斜視図である。
【図12】同軸ケーブルの構造を示す斜視図である。
【図13】ディスクリートケーブルの構造を示す斜視図である。
【図14】同軸ケーブルの外周側絶縁被覆を一部剥離し、シールド層を露出させた状態を示す平面図である。
【図15】フラットケーブルの端部にテープを取り付け、一対の導電性グランドバーを半田付け接合した状態を示す平面図である。
【図16】図15中の矢印XVI−XVIに沿った断面図である。
【図17】フラットケーブルの芯線を露出させた状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0060】
1、15 フラットケーブル
2 同軸ケーブル
3 芯線(同軸用)
4 内周側絶縁被覆
5 シールド層
6 外周側絶縁被覆
7 ディスクリートケーブル
8 芯線(ディスクリート用)
9 絶縁被覆
10、11 導電性グランドバー
75 空隙
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブルとディスクリートケーブルを平行に並べて保持してなるフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
中心部を直線状に延びる芯線を内周側絶縁被覆により覆い、この内周側絶縁被覆の外周をシールド層により覆い、このシールド層の外周を外周側絶縁被覆により覆って構成される同軸ケーブルは従来から一般的に知られている。また、このような同軸ケーブルを複数本、少なくとも端部において同一平面上に平行に並べて保持して構成されるフラットケーブルが知られている。上記フラットケーブルはその端部にコネクタ(フラットケーブル用コネクタと呼ぶ)が取り付けられて使用されるが、コネクタと接続する前にフラットケーブル端部の同軸ケーブルにおいて、外周側絶縁被覆を剥離しシールド層を露出させる、露出したシールド層を導電性グランドバーで挟持し半田付け接合する、導電性グランドバーより先端側のシールド層を剥離し内周側絶縁被覆を露出させる、露出した内周側絶縁被覆を剥離して芯線を露出させるといった端部加工が必要となる。この加工方法として、例えば特許文献1に示す端部一括加工が知られている。
【0003】
最近では、フラットケーブル用コネクタを接続して使用する電気機器側からの仕様要求として、各ケーブルのすべてが同軸ケーブルである必要がなく、一部のケーブルについては耐ノイズ性能要求が低く、シールド層を有しないディスクリートケーブルを用いても良いものがある。ここでディスクリートケーブルは、その中心部を直線状に延びる芯線と芯線を覆う絶縁被覆とによって構成され、同軸ケーブルと比較して構造が簡素で安価という特徴を有する。このため、一部の同軸ケーブルをシールド層を有しないディスクリートケーブルに置き換えて同軸ケーブルとディスクリートケーブルが混在した構成とするフラットケーブルとする構成の方が製造コストを低減できる。
【0004】
【特許文献1】特開平10-144145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記同軸ケーブルとディスクリートケーブルが混在したフラットケーブルを、特許文献1に示すような端部一括加工によってシールド層と一対の導電性グランドバーとを半田付け接合する場合、同軸ケーブルとディスクリートケーブルでは互いにケーブルの構造およびケーブル外径が異なるために、ヒータ手段から発生する熱でディスクリートケーブルの絶縁被覆を溶融させてしまいフラットケーブルの性能に影響を及ぼすことから、端部一括加工は非常に困難であった。
【0006】
上記の端部一括加工を行わず同軸ケーブルのみとディスクリートケーブルのみとに分けて端部加工を行い、それぞれの端部加工が終了した後にラミネートフィルムで貼り合わせる方法も考えられえるが、この場合は加工工数が増えること、ラミネートフィルムで貼り合わせる際の位置精度を出しにくいという問題を生じる。また、同軸ケーブルはディスクリートケーブルに要求される電気的性能を満足させることが可能であるので、同軸ケーブルとディスクリートケーブルとが混在する構成が可能なフラットケーブルに対して、すべて同軸ケーブルで構成するフラットケーブルを用いて、フラットケーブルの電気的性能を満足させつつ端部一括加工を行う方法も考えられるが、ディスクリートケーブルと比較して高価な同軸ケーブルのみでフラットケーブルを構成すれば、製造コストが高くなるという不都合が生じる。
【0007】
以上のような課題に鑑みて本発明では、同軸ケーブルとディスクリートケーブルが混在したフラットケーブルにおいて、端部一括加工によって一対の導電性グランドバーと同軸ケーブルのシールド層とを半田付け接合できるフラットケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明に係るフラットケーブルは、直線状に延びる芯線、芯線を覆って設けられた内周側絶縁被覆、内周側絶縁被覆の外周を覆って設けられたシールド層、およびシールド層の外周を覆って設けられた外周側絶縁被覆からなる同軸ケーブルと、直線状に延びる芯線、芯線を覆って設けられた絶縁被覆からなり、同軸ケーブルのシールド層よりも小さな外径を有するディスクリートケーブルと、同軸ケーブルとディスクリートケーブルとを互いに平行に平面状に並べた状態で、同軸ケーブルとディスクリートケーブルの端部近傍の所定位置において、上下から同軸ケーブルおよびディスクリートケーブルを挟持する一対の導電性グランドバーとを有して構成される。このディスクリートケーブルは、同軸ケーブルに両側から挟まれるように平面状に並んで配置され、また一対の導電性グランドバーは、所定位置において外周側絶縁被覆を除去して露出するシールド層を挟持して半田接合されるとともに、同軸ケーブルのシールド層部外径とディスクリートケーブル外径との外径差に相当する厚みの空隙を有してディスクリートケーブルを挟持して構成される。
【0009】
一対の導電性グランドバーのうち、同軸ケーブルのシールド層に半田付け接合させるためにヒータ手段が接して加熱する側のグランドバーとディスクリートケーブルとの間に、同軸ケーブルのシールド層部外径とディスクリートケーブル外径との外径差に相当する厚みの空隙を有するように構成することで、この空隙によりヒータ手段が接して加熱する側のグランドバーを介してディスクリートケーブルの絶縁被覆に熱が伝わりにくくなるため、端部一括加工によって絶縁被覆を溶融させることなく一対の導電性グランドバーと同軸ケーブルのシールド層とが半田付け接合可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に関するフラットケーブルによれば、両側から同軸ケーブルに挟まれるディスクリートケーブルについて、同軸ケーブルの露出したシールド層と導電性グランドバーを半田付け接合する際に、ヒータ手段を用いて上下一対となっているグランドバーの一方を加熱するが、ディスクリートケーブルと加熱されるグランドバーとの間に同軸ケーブルのシールド層部外径とディスクリートケーブル外径との外径差に相当する厚みの空隙を断熱層とすることにより、加熱されたグランドバーを介してディスクリートケーブルの絶縁被覆に熱が伝わらないので、ディスクリートケーブルの絶縁被覆を溶融させることがない。つまり、端部一括加工によって同軸ケーブルの露出したシールド層と一対の導電性グランドバーとを半田付け接合可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下において、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施に係るフラットケーブル1を用いたフラットケーブル用コネクタ20を図1から図3に示す。フラットケーブル用コネクタ20は、基板等に設けられた相手側コネクタ90(図10を参照)と嵌合接続されるようになっている。フラットケーブル1と、金属製の複数の(21本の)コンタクト21と、コンタクト21を保持する絶縁材料製の保持部材30と、保持部材30の上下の底面を覆うように設けられた第1シェル部材40および第2シェル部材60と、コンタクト21の一部と第1シェル部材40とを電気的に接続させる2つのグランド部材50と、相手側コネクタ90との嵌合をロック保持するロック部65と、ロック部65によるロック保持を解除するための操作が行われる操作部67とを主体にフラットケーブル用コネクタ20は構成される。
【0012】
フラットケーブル1は、その端部がフラットケーブル用コネクタ20の中央部近傍に取り付けられており、少なくとも1本以上の同軸ケーブル2と少なくとも1本以上のディスクリートケーブル7とを有して構成される。例えば図7に示すように、8本の同軸ケーブル2と8本のディスクリートケーブル7とを有し、左端に同軸ケーブル2が2本、その右隣にディスクリートケーブル7が2本、さらにその右隣に同軸ケーブル2が2本、さらにその右隣にディスクリートケーブル7が2本配列されて構成される。残り8本のケーブルはフラットケーブル1のケーブル配列方向に対する中心線76に関して、左側8本のケーブルと対称な配列となっている。これら合計16本のケーブルは、それぞれ所望間隔に平行かつ平面状に並んでおり、フラットケーブル1の端部近傍においてこれらのケーブルを挟持するように金属材料でできた板状の一対の導電性グランドバー10,11が配設されている。これらのケーブルは少なくともケーブル端部において、例えばラミネートフィルム71を接着することにより所望間隔に保持されている。同軸ケーブル2のシールド層5と一対の導電性グランドバー10、11とが半田付け接合できるように、同軸ケーブル2の外周側絶縁被覆6の一部が剥離されている。図7中におけるVIII−VIIIの断面図を図8に示す。
【0013】
図12は同軸ケーブル2の断面を立体的に示しており、中心部を直線状に延びる芯線3、芯線を覆って設けられた内周側絶縁被覆4、内周側絶縁被覆4の外周を覆って設けられたシールド層5、およびシールド層5の外周を覆って設けられた外周側絶縁被覆6から構成される。近年は同軸ケーブル2を細径化する傾向が強く、例えば芯線径が約0.1mmで外周側絶縁被覆径が約0.35mm程度の極細い同軸ケーブル2も用いられている。図13はディスクリートケーブル7の断面を立体的に示しており、中心部を直線状に延びる芯線8、芯線を覆って設けられた絶縁被覆9から構成され、ディスクリートケーブル7の外径は同軸ケーブル2のシールド層部外径よりも小さな外径を有する(図8を参照)。
【0014】
図7および図8に示すように、同軸ケーブル2およびディスクリートケーブル7は所望間隔で平行かつ平面状に導電性グランドバー10上に配列され、導電性グランドバー11は同軸ケーブル2のシールド層5の上面に接した状態で導電性グランドバー10と略平行な向きに配設される。一対の導電性グランドバー10、11のディスクリートケーブル7を挟持する部分においては、同軸ケーブル2のシールド層部外径とディスクリートケーブル外径との外径差に相当する空隙75を有している。各ケーブルの少なくとも端部近傍において例えばラミネートフィルム71を用いて各ケーブルを両面から接着保持しており、一対の導電性グランドバー10、11は同軸ケーブル2のシールド層5を挟持した状態で半田付け接合されている。図7に示すように、左から4番目と5番目、6番目と7番目、8番目と9番目、10番目と11番目、12番目と13番目の各ケーブル間に隙間があるが、これはグランド部材50のグランド脚部54が配置されるためであったり、または意図的に何とも接続しない構成のために隙間を設けている。フラットケーブル1において、一対の導電性グランドバー10、11よりも先端部で露出した同軸ケーブル2の芯線3、ディスクリートケーブル7の芯線8は、図6に示すようにフラットケーブル用コネクタ20の中央部近傍に設置され、露出部31で露出したコンタクト21の基端側と半田付けにより接合される。
【0015】
コンタクト21は金属材料を用いて棒状に形成され、保持部材30と一体にインサートモールドされることによって保持されており、図6に示すように保持部材30の先端側においてフラットケーブル1における各ケーブル2,7の芯線3、8の配列ピッチと同一のピッチで左右方向に並んで配設される。21本のコンタクト21の中で、左から順に5番目、8番目、11番目、14番目、17番目のコンタクトをそれぞれ21a、21b、21c、21d、21eとしておく。コンタクト21の基端側は保持部材30の中央部近傍に形成された露出部31で露出しており、各ケーブル2,7の露出した芯線3,8もしくはグランド部材50のグランド脚部54と半田付けにより接合される半田接合部22が形成されている。図6の実施例において、コンタクト21cは露出部31で芯線3,8もしくはグランド脚部54のいずれとも半田付け接合されない構成となっている。
【0016】
露出部31の基端部では、コンタクト21の半田接合部22の間に複数のリブが立設さ
れ、このリブの間に各ケーブル2,7の芯線3,8もしくはグランド部材50のグランド脚部54がそれぞれ受容される第1ガイド溝32aが形成される。露出部31の先端部でも同様に、コンタクト21の半田接合部22の間に複数のリブが立設され、このリブの間に、各ケーブル2,7の芯線3,8もしくはグランド部材50のグランド脚部54がそれぞれ受容される第2ガイド溝32bが形成される。
【0017】
保持部材30は絶縁材料を用いて一体成形され、相手側コネクタ90と嵌合可能に構成される。保持部材30の中央部近傍には、前述の露出部31が形成され、さらに露出部31の基端側に繋がってケーブル収容部33が形成される。ケーブル収容部33は、一対の導電性グランドバー10,11の形状に合わせて形成されたグランドバー収容部34を有して構成され、このグランドバー収容部34に一対の導電性グランドバー10,11を収容させることにより、図6に示すようにフラットケーブル1が位置決めされた状態でケーブル収容部33に収容されるようになっている。
【0018】
また、露出部31の先端側に繋がって段差が形成されており、その段差部分には、グラ
ンド部材50のグランド先端部59が干渉するのを防止する凹部35が形成されている。露出部31の上方には、保持部材30の内側に向けて左右に第2シェル部材収容溝36が
形成され、この第2シェル部材収容溝36にそれぞれ第2シェル部材60の左右の先端側
縁部が収容されるようになっている。保持部材30の左右側部には、第2シェル部材60
に繋がって形成されるロック部65および操作部67を受容するロック受容部37が形成
され、ロック受容部37の先端側に位置する開口部38からロック部65の先端側がそれ
ぞれ左右へ突出するようになっている。
【0019】
第1シェル部材40は、図2に示すように金属材料を用いて板状に形成され、保持部材30と一体にインサートモールドされて保持部材30の下側底面を覆うように取り付けられる。第1シェル部材40の中央部には、4つの接続片41が形成されており、この接続片41に対しグランド部材50のグランド基部51およびフラットケーブル1の導電性グランドバー10がそれぞれ半田付けにより接合され、第1シェル部材40がグランド部材50および導電性グランドバー10と電気的に接続されるようになっている。
【0020】
グランド部材50は、図9に示すように金属材料を用いてはしご状に形成され、グランド基部51と、2つのグランド脚部54と、グランド先端部59とを有して構成される。グランド基部51は板状に形成され、前述のように第1シェル部材40の接続片41と半田付けにより接合されるようになっている。グランド基部51には穴部52が形成されており、半田のフィレット量(半田の流れ込む量)を増やして、半田付け性を向上させている。
【0021】
2つのグランド脚部54は、グランド基部51の先端からそれぞれ互いに平行に延びる
棒状に形成され、図5および図6に示すように中央部近傍が保持部材30の第1および
第2ガイド溝32a,32bに受容されて、半田付けにより21本のうち2本のコンタクト21(半田接合部22)とそれぞれ電気的に接続されるようになっている。また、図9に示すように、グランド脚部54の中央部近傍には、それぞれ2箇所に切り欠き部57が形成されており、半田のフィレット量(半田の流れ込む量)を増やして、半田付け性を向上させている。
【0022】
またグランド脚部54は、それぞれグランド脚部54の両端近傍で階段状に折り曲げられ、グランド脚部54の基端側に第1の折り曲げ部55が形成されるとともに、先端側に第2の折り曲げ部56が形成される。第1の折り曲げ部55はグランド基部51に繋がっており、第1の折り曲げ部55における段差、すなわち、グランド脚部54とグランド基部51との間の段差は、同軸ケーブル2の半径とほぼ同じになっている。これにより、フラットケーブル用コネクタ20が組み立てられた状態では、図3に示すように、グランド基部51がフラットケーブル1の導電性グランドバー10と第1シェル部材40の接続片41との間に位置して、導電性グランドバー10および接続片41とそれぞれ接合されるようになっている。
【0023】
一方、第2の折り曲げ部56は、露出部31の先端側に繋がる段差部分の高さに合わせ
て折り曲げ形成され、グランド先端部59にそれぞれ繋がるようになっている。グランド
先端部59は、グランド基部51と平行に延びる板状に形成され、2つあるグランド脚部
54の先端側とそれぞれ繋がるようになっている。またグランド先端部59は、保持部材30における凹部35の上方に位置しており、グランド部材50の取り付け具合に応じてグランド先端部59が自由に上下移動できるようになっている。これによって、グランド脚部54が保持部材30の第1および第2ガイド溝32a,32bに確実に受容される。
【0024】
このようにグランド部材50が、グランド基部51と、グランド基部51からそれぞれ互いに平行に延びる棒状に形成された複数のグランド脚部54と、グランド脚部54の先端側とそれぞれ繋がるグランド先端部59とを有して構成され、さらにはグランド脚部54がそれぞれ両端近傍で階段状に折り曲げられることで、グランド脚部54の先端側に繋がるグランド先端部59によりグランド脚部54が変形し難くなるのに加え、グランド脚部54の曲げ効果により、グランド部材50の脚部(グランド脚部54)の強度を向上させることが可能になる。またグランド部材50が、グランド基部51、グランド脚部54、およびグランド先端部59を有して構成されるため、グランド部材50の取り扱いが容易となることから、フラットケーブル用コネクタ20へのセット時にグランド脚部54が変形してしまうのを防止することが可能になる。
【0025】
第2シェル部材60は、金属材料を用いて板状に形成され、第2シェル部材60の左右の先端側縁部を保持部材30の基端側から第2シェル部材収容溝36に挿入することで、保持部材30の上側底面を覆うように取り付けられる。第2シェル部材60の中央部には、3つの当接片61が形成されており、図3に示すように、フラットケーブル1の導電性グランドバー11に弾性変形した状態で当接し、第2シェル部材60が導電性グランドバー11、同軸ケーブル2のシールド層5、および導電性グランドバー10を介して第1シェル部材40と電気的に接続されるようになっている。これにより半田等を用いずに簡便な構成で、シールド層5等を介して第1シェル部材40と繋がる導電性グランドバー11を第2シェル部材60と電気的に接続させることができ、組立工数を低減させることができることから、製造コストをより低減させることが可能になる。
【0026】
第2シェル部材60の基端部には、階段状に曲げられた押さえ部62が形成され、図3
に示すように、同軸ケーブル2の外周側絶縁被覆6およびディスクリートケーブル7の絶縁被覆9に当接して、保持部材30との間で各ケーブル2,7を挟むように構成される。これにより、各ケーブル2,7の基端部近傍がフラットケーブル用コネクタ20に対してある程度固定保持されることから、各ケーブル2,7がフラットケーブル用コネクタ20に対して曲げられたときに生じる芯線3,8のコンタクト21からの剥離を防止することができる。
【0027】
第2シェル部材60の左右側部63は、第2シェル部材60の左右で垂直(下方)に折
り曲げられて形成され、そこから第2シェル部材60の基端側に延びて一体に繋がった折
り返し部64でそれぞれ折り返される。さらに、折り返し部64から第2シェル部材60
の先端側へ延びるとともに一体に繋がってコの字形の操作部67が形成され、操作部67
から第2シェル部材60の先端側へ延びるとともに一体に繋がってロック部65が形成さ
れる。
【0028】
このように、ロック部65および第2シェル部材60を一体化することにより、部品点
数を減らして組立工数を低減させることができることから、製造コストを低減させること
が可能になる。また、ロック部65および第2シェル部材60を一体化することにより、
第1および第2シェル部材40,60を介してロック部65を接地させることが可能にな
ることから、ノイズの発生を防止することが可能になる。
【0029】
上記のように一対の導電性グランドバー10、11が、各ケーブルを所望間隔に保持した状態でグランドバー収容部34に収容されることで、フラットケーブル1の端部で露出した芯線3,8が保持部材30の中央部近傍においてコンタクト21と確実に半田付け接合されることを可能としている。また一対の導電性グランドバー10、11を、第1シェル部材40、第2シェル部材60およびグランド部材50と電気的に接続することで、効率的なアース接続を可能としている。このような役割を果たす一対の導電性グランドバー10、11は、本発明に係るフラットケーブル1の端部一括加工工程において配設されるが、その加工について工程順に図を参照して説明する。
【0030】
図11に示すように、端部一括加工の説明を行うために、上記フラットケーブル1とは各ケーブル本数ならびに各ケーブル配列が異なるフラットケーブル15を用いて以下説明する。フラットケーブル15は、4本の同軸ケーブル2と4本のディスクリートケーブル7とを有して構成される。左に同軸ケーブル2が2本、中央にディスクリートケーブル7が4本、右に同軸ケーブル2が2本、同一平面上に平行かつ所望間隔に配列しており、4本のディスクリートケーブル7はその両側を同軸ケーブル2によって挟まれて構成される。これらのケーブルは片面に粘着面を有するラミネートフィルム71を、ケーブル両側から貼り付けることにより接着保持されている。
【0031】
図14はフラットケーブル15の端部の平面図であり、まず図11の状態においてフラットケーブル端部より端部一括加工を行う長さaの範囲のラミネートフィルム71を除去した後、フラットケーブル端部より長さb(b<c)以上で長さc(b<c<a)以下の範囲AにCO2レーザを照射して、同軸ケーブル2の外周側絶縁被覆6を溶融除去することによりシールド層5を露出させる。このとき、フラットケーブル端部より長さbの位置からフラットケーブル端部方向に長さeの幅だけ同軸ケーブル2の外周側絶縁被覆6をリング状に残すように、フラットケーブル端部から長さd(d<b)の位置にもCO2レーザを照射して、同軸ケーブル2の外周側絶縁被覆6を溶融除去することによりシールド層5を露出させる。ここでCO2レーザは、絶縁被覆に反応するが金属には反応しないように周波数設定がなされており、また同軸ケーブル2の外周側絶縁被覆6を溶融除去可能な出力とするとともに、一定幅領域を照射しながら範囲Aおよびフラットケーブル端部から長さdの位置を各ケーブルの配列ピッチ方向に往復することで外周側絶縁被覆6を溶融除去する。
【0032】
このとき、CO2レーザは範囲A内およびフラットケーブル端部から長さdの位置においてディスクリートケーブル7の絶縁被覆9の表面にも照射されるが、絶縁被覆9はCO2レーザを照射されても溶融除去されて芯線8が露出しないような外周側絶縁被覆6よりも厚い肉厚を有し、かつ絶縁被覆9の耐熱性が外周側絶縁被覆6の耐熱性よりも格段に大きく、CO2レーザを照射されても損傷を受けにくい材質であるPFA(パーフロロアルコキシ)等を用いて構成される。一方、同軸ケーブル2の外周側絶縁被覆6の材質にはPFA等よりも容易に溶融除去が可能なPET(ポリエチレンテレフタレート)でCO2レーザに反応しやすい色(例えば青)を用いて構成する。このような構成とすることで、CO2レーザを照射したときに同軸ケーブル2の外周側絶縁被覆6は、小さなCO2レーザ照射量で簡単に溶融除去されてシールド層5を露出させることが可能となる。さらに、ディスクリートケーブル7の絶縁被覆9に照射されるCO2レーザ量も小さくなるため、絶縁被覆9の表面に与える損傷も小さく抑えられる。
【0033】
上記CO2レーザを照射する場合、CO2レーザが同軸ケーブル2の露出したシールド層5の隙間を通過して、同軸ケーブル2の内周側絶縁被覆4に達することもあり得るため、同軸ケーブル2の内周側絶縁被覆4も、上記ディスクリートケーブル7の絶縁被覆9と同様に、CO2レーザを照射されても損傷を受けにくい材質であるPFA等を用いて構成する。
【0034】
次に図14に示すように、上記フラットケーブル端部から長さd(d<b)の位置で露出させたシールド層5を切断可能となるように出力調整したYAGレーザを、フラットケーブル端部から長さdの位置に照射してシールド層5を切断する。ここでYAGレーザは、金属に反応するが絶縁被覆には反応しないように周波数設定がなされており、上記長さeのリング状の外周側絶縁被覆6は、YAGレーザを照射することで切断されたシールド層5のラミネートフィルム71側の端部を保持しているため、シールド層5を構成する多数の横巻き極細電線がばらばらにほぐれることがない。このため、シールド層5を一対の導電性グランドバー10、11に接続するときに接続信頼性を向上させるという効果を有する。
【0035】
ここでYAGレーザは、レーザを照射しながらフラットケーブル端部から長さdの位置を、各ケーブルの配列ピッチ方向に往復しながら同軸ケーブル2のシールド層5を切断する。このとき、YAGレーザは同軸ケーブル2のみならずディスクリートケーブル7にも照射されるが、YAGレーザがディスクリートケーブル7の絶縁被覆9を透過して芯線8に損傷を与えてはならないので、絶縁被覆9はYAGレーザを透過させないで遮断する色(例えば黒、白、黄で透明以外の色)の被覆を用いて構成する。このような構成とすることで、ディスクリートケーブル7の芯線8に与える損傷を小さく抑えられる。
【0036】
上記YAGレーザを照射する場合、YAGレーザが同軸ケーブル2のシールド層5を通過して、同軸ケーブル2の内周側絶縁被覆4に達し、その内周側絶縁被覆4を透過して芯線3に損傷を与えてはならないので、内周側絶縁被覆4は、上記と同様にYAGレーザを透過させないで遮断する色(例えば黒、白、黄で透明以外の色)の被覆を用いて構成する。このような構成とすることで、同軸ケーブル2の芯線3に与える損傷を小さく抑えられる。
【0037】
ここで、上記の同軸ケーブル2の内周側絶縁被覆4、外周側絶縁被覆6およびディスクリートケーブル7の絶縁被覆9の材質とその色についてまとめると、同軸ケーブル2の内周側絶縁被覆4とディスクリートケーブル7の絶縁被覆9とは、材質がPFA(パーフロロアルコキシ)等でかつYAGレーザを透過させないで遮断する色(例えば黒、白、黄で透明以外の色)の被覆を用いて構成する。一方、同軸ケーブル2の外周側絶縁被覆6は、材質がPET(ポリエチレンテレフタレート)でかつCO2レーザに反応しやすい色(例えば青)を用いて構成する。
【0038】
次に、上記フラットケーブル端部より長さdの位置で切断された同軸ケーブル2のシールド層5および外周側絶縁被覆6を、フラットケーブル端部方向に引き抜き除去することで、フラットケーブル端部から長さdの範囲における同軸ケーブル2の内周側絶縁被覆4を露出させる。
【0039】
次に図15に示すように、同軸ケーブル2のリング状外周側絶縁被覆6からフラットケーブル端部方向に長さfの位置にテープ72の一端を配置して、フラットケーブル端部側のディスクリートケーブル7の絶縁被覆9、同軸ケーブル2の内周側絶縁被覆4のそれぞれ両面を接着保持する。このテープ72の接着時に、各ケーブルの先端部を所望のケーブル間隔になるように保持しておく。これより後の工程でテープ72を接着保持したまま半田槽に挿入する工程があるので、テープ72は耐熱性を有するテープ(例えばテフロン(登録商標)テープ)を用いるのが好ましい。
【0040】
次に上記CO2レーザを照射して露出させた同軸ケーブル2のシールド層5(図14の範囲A)に、一対の導電性グランドバー10,11を半田付け接合させるための半田(図示せず)を塗布する。このとき用いる半田は、例えば半田ペースト、半田棒、板半田を用いることができる。一対の導電性グランドバー10,11は、各ケーブルを両側から挟持する状態で設置され、後述するヒータ手段73によって同軸ケーブル2のシールド層5と半田付け接合される。
【0041】
保持部材30のグランドバー収容部34に収容される導電性グランドバー10は、金属材料を用いて板状に形成され、同軸ケーブル2の露出したシールド層5より狭い幅でケーブルの配列方向(ピッチ方向)に延びており、導電性グランドバー11とともに各ケーブルを両面から挟持した状態で同軸ケーブル2のシールド層5と半田付け接合されるようになっている。これにより、同軸ケーブル2およびディスクリート用ケーブル7が導電性グランドバー10に沿って同一平面上に並べられる。またこのとき、導電性グランドバー10が同軸ケーブル2の露出状態にあるシールド層5と半田付け接合されることで、同軸ケーブル2のシールド層5を介して導電性グランドバー11と電気的に接続されるようになっている。
【0042】
導電性グランドバー11は、金属材料を用いて上記導電性グランドバー10と同様の板状に形成され、導電性グランドバー10とともに各ケーブルを挟むようにして(導電性グランドバー10と略平行な向きで)、半田付け接合することにより同軸ケーブル2のシールド層5と接合されるようになっている。また導電性グランドバー10と同様に、露出状態にある同軸ケーブル2のシールド層5が導電性グランドバー11に半田付け接合され、導電性グランドバー11がシールド層5を介して導電性グランドバー10と電気的に接続されるようになっている。
【0043】
次に図16には、図15の一対の導電性グランドバー部分XVI−XVIの断面図を示す。一対の同導電性グランドバー10、11と、同軸ケーブル2のシールド層5を半田付け接合する際に、ヒータ手段73が接して加熱する側の導電性グランドバー11とディスクリートケーブル7との間に、同軸ケーブル2のシールド層部外径とディスクリートケーブル外径との外径差に相当する厚みの空隙75を有する構成とすることで、加熱された導電性グランドバー11からの熱がディスクリートケーブル7の絶縁被覆9に伝わらないため、絶縁被覆9を溶融させることなく半田付け接合が可能となる。さらにディスクリートケーブル7は、その両側を同軸ケーブル2によって挟まれて構成されているため、ヒータ手段73が接して導電性グランドバー11を加熱する際に、一対の導電性グランドバー10と11とが平行に保たれた状態で半田付け接合されるため、第1シェル部材40、第2シェル部材60およびグランド部材50と確実に電気的に接続可能となる。
【0044】
一対の導電性グランドバー10、11と同軸ケーブル2のシールド層5を半田付け接合するためのヒータ手段(図16における73に相当)として、例えばパルスヒータによる接合がある。パルスヒータは、発熱性の高い材料(例えばチタン)で形成されたヒータ電極と、ヒータ電極先端に設置された熱電対と、ヒータ電極先端の温度管理を行うパルスヒートコントロール電源とを主として有しており、ヒータ電極を発熱させて半田付け接合を行う構成となっている。
【0045】
ヒータの形状は電極先端部が狭くなるように形成することで電流が流れにくく発熱しやすい構成となっており、この狭い部分を電流が流れることでヒータ先端部が発熱する。パルスヒートコントロール電源には、ヒータ電極先端に設置した熱電対で検出された温度が、リアルタイムにフィードバックされることでヒータ電極を所望の設定温度に保つ制御機能が備えられている。溶融した半田が十分に一対の導電性グランドバー10、11および同軸ケーブル2のシールド層5に行きわたると、接合部に一定時間送風を行って溶融した半田を冷却固化させることで半田付け接合を確実なものとする。
【0046】
次に図15に示すように、一対の導電性グランドバー10、11のラミネートフィルム71側の端部から長さgの位置に、各ケーブルの配列方向(ピッチ方向)にCO2レーザを照射して、同軸ケーブル2の内周側絶縁被覆4およびディスクリートケーブル7の絶縁被覆9を切断する。このとき、同軸ケーブル2の内周側絶縁被覆4およびディスクリートケーブル7の絶縁被覆9を切断できるようにCO2レーザの出力調整をしておく。そして切断された内周側絶縁被覆4と絶縁被覆9のうちで、テープ72に接着保持されている部分を、テープ72とともにフラットケーブル端部方向に平行に引くことで、図17に示すように同軸ケーブル2の芯線3およびディスクリートケーブル7の芯線8を露出させる。ここで、テープ72に接着保持されている内周側絶縁被覆4と絶縁被覆9の端部とが、芯線3、8から完全に抜けてしまわない範囲でフラットケーブル15端部方向に平行に引くことで芯線3、8を露出させる。
【0047】
次に図17に示すように、一対の導電性グランドバー10、11から長さhの位置よりもフラットケーブル端部側全体(テープ72を含む)を半田槽に挿入することで、露出させた芯線3、8に半田コーティングを施す。半田コーティングを施すことにより芯線3、8の表面に半田を固着させ、次の芯線切断工程において、芯線3、8の切断位置での変形を抑えて確実に切断を行うことができる。一対の導電性グランドバー10,11の端部から所望長さiの位置で、半田コーティングを施された芯線3、8を切断して、切断分離されたフラットケーブル15のテープ72を含む端部側を除去することで、フラットケーブル15におけるコネクタ接続前の端部一括加工は完了となる。なお、ここでは同軸ケーブル2を4本とディスクリートケーブル7を4本とを用いて構成されたフラットケーブル15について端部一括加工を説明したが、実際には図7に示すフラットケーブル1を対象として加工される。
【0048】
次に、フラットケーブル用コネクタ20の組み立て工程を工程順に説明する。まず、インサートモールドによりコンタクト21および第1シェル部材40が取り付けられた保持部材30に、グランド部材50を取り付ける。このとき、図5および図6に示すように、グランド部材50におけるそれぞれ2つのグランド脚部54の中央部近傍を、コンタクト21の基端側(半田接合部22)が露出する保持部材30の第1および第2ガイド溝32a,32bにそれぞれ受容させ、各グランド脚部54を半田付けによりそれぞれコンタクト21(半田接合部22)とそれぞれ電気的に接続させる。このとき、図5に示す左側のグランド部材50の2つのグランド脚部54はコンタクト21a、21bと、右側のグランド部材50の2つのグランド脚部54はコンタクト21d、21eと、それぞれ半田付け可能な位置の第1および第2ガイド溝32a,32bに受容される。
【0049】
次に、グランド部材50が取り付けられた保持部材30に、フラットケーブル1を取り付ける。このとき図6に示すように、一対の導電性グランドバー10,11を保持部材30のグランドバー収容部34に収容させるとともに、各ケーブル2,7の芯線3,8を21本のうち16本の(グランド脚部54と接続されるコンタクト21a、21b、21d、21eおよび21cを除いた)コンタクト21の基端側(半田接合部22)が露出する第1および第2ガイド溝32a,32bにそれぞれ受容させる。そして、各ケーブル2,7の芯線3,8を半田付けにより当該16本のコンタクト21(半田接合部22)とそれぞれ電気的に接続させる。
【0050】
これにより、図6における左から1、2、6、7、15、16、20、21番目のコンタクト21が同軸ケーブル2の芯線3と繋がり、図6における左から3、4、9、10、12、13、18、19番目のコンタクト21がディスクリートケーブル7の芯線8と繋がることになる。また、図6におけるコンタクト21a、21b、21d、21eはグランド部材50と繋がり、これらが接地用のコンタクトになる。
【0051】
次に、グランド部材50およびフラットケーブル1が取り付けられた保持部材30に、第2シェル部材60を保持部材30の基端側から(図1を参照)取り付ける。このとき、保持部材30の第2シェル部材収容溝36に第2シェル部材60の左右の先端側縁部を挿入するとともに、保持部材30のロック受容部37に左右のロック部65および操作部67を挿入して、開口部38からロック部65の先端側をそれぞれ左右へ突出させる。このとき、第2シェル部材60の3つの当接片61が導電性グランドバー11に弾性変形した状態で当接する。
【0052】
そして、第1シェル部材40の接続片41に対し、グランド部材50のグランド基部51およびフラットケーブル1の導電性グランドバー10をそれぞれ半田付けにより接合させる。このようにして、フラットケーブル用コネクタ20が組み立てられ、図10示すように、フラットケーブル用コネクタ20を相手側コネクタ90に嵌合接続させることが可能になる。なおこのとき、フラットケーブル用コネクタ20の保持部材30が、相手側保持部材92と嵌合するとともに、フラットケーブル用コネクタ20のコンタクト21が相手側コンタクト91と接触し、さらに図10で示すように、フラットケーブル用コネクタ20のロック部65がシールド部材93のロック係合部95と係合して、相手側コネクタ90との嵌合がロック保持される。これに対し、左右の操作部67をそれぞれ内側に押圧する操作を行うことで、ロック部65がロック係合部95から外れてロック保持が解除され、フラットケーブル用コネクタ20を相手側コネクタ90から取り外すことが可能になる。
【0053】
上述の実施形態において、図6に示すコンタクト21cは露出部31で芯線3,8もしくはグランド脚部54のいずれとも半田付け接合されない構成となっているが、このようなコンタクトの本数ならびに保持部材30における位置は任意に構成可能である。
【0054】
上述の実施形態において、ラミネートフィルム71は、少なくともフラットケーブル端部において各ケーブルを接着保持しており、フラットケーブル15の両面から接着保持しても良いし、片側のみから接着保持しても良い。
【0055】
上述の実施形態において、コンタクト21の本数(ピン数)は、21本に限らず、任意の(複数の)本数にすることが可能である。
【0056】
上述の実施形態において、図6におけるコンタクト21a、21b、21d、21eがグランド部材50と繋がり、これらが接地用のコンタクトになるように構成されているが、この構成に限られるものではなく、グランド部材50等の構成に支障がなければ別の組み合わせでも構わない。
【0057】
上述の実施形態において、フラットケーブル用コネクタ20にグランド部材50が用いられているが、これに限られるものではなく、本実施形態と同様の構成であれば、一般のケーブル用のコネクタに対しても本実施形態によるグランド部材50を適用することが可能である。
【0058】
上述の実施形態において、フラットケーブル1がフラットケーブル用コネクタ20に設置される工程で、第1シェル部材40の接続片41と、グランド部材50のグランド基部51および導電性グランドバー10が半田付け接合により接合後に、これらが半田付け接合されている接合部に、フラットケーブル用コネクタ20の底面側(第1シェル部材40側)から絶縁性を有した充填剤を注入することもできる。こうすることで、フラットケーブル用コネクタ20に働く外力に対して、半田付け接合を補強することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】フラットケーブル用コネクタの平面図である。
【図2】フラットケーブル用コネクタの底面図である。
【図3】フラットケーブル用コネクタの側断面図である。
【図4】保持部材の斜視図である。
【図5】保持部材にグランド部材が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図6】保持部材にフラットケーブルが取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図7】フラットケーブルの斜視図である。
【図8】図7中の矢印VIII−VIIIに沿った断面図である。
【図9】グランド部材の斜視図である。
【図10】フラットケーブル用コネクタが相手側コネクタと嵌合接続された状態を示す平面図(左端ロック部が部分断面図)である。
【図11】端部一括加工を行う前のフラットケーブルの斜視図である。
【図12】同軸ケーブルの構造を示す斜視図である。
【図13】ディスクリートケーブルの構造を示す斜視図である。
【図14】同軸ケーブルの外周側絶縁被覆を一部剥離し、シールド層を露出させた状態を示す平面図である。
【図15】フラットケーブルの端部にテープを取り付け、一対の導電性グランドバーを半田付け接合した状態を示す平面図である。
【図16】図15中の矢印XVI−XVIに沿った断面図である。
【図17】フラットケーブルの芯線を露出させた状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0060】
1、15 フラットケーブル
2 同軸ケーブル
3 芯線(同軸用)
4 内周側絶縁被覆
5 シールド層
6 外周側絶縁被覆
7 ディスクリートケーブル
8 芯線(ディスクリート用)
9 絶縁被覆
10、11 導電性グランドバー
75 空隙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に延びる芯線、前記芯線を覆って設けられた内周側絶縁被覆、前記内周側絶縁被覆の外周を覆って設けられたシールド層、および前記シールド層の外周を覆って設けられた外周側絶縁被覆からなる同軸ケーブルと、
直線状に延びる芯線、前記芯線を覆って設けられた絶縁被覆からなり、前記同軸ケーブルのシールド層よりも小さな外径を有するディスクリートケーブルと、
前記同軸ケーブルと前記ディスクリートケーブルとを互いに平行に平面状に並べた状態で、前記同軸ケーブルと前記ディスクリートケーブルの端部近傍の所定位置において、上下から前記同軸ケーブルおよび前記ディスクリートケーブルを挟持する一対の導電性グランドバーとを有し、
前記ディスクリートケーブルは、前記同軸ケーブルに両側から挟まれるように平面状に並んで配置され、前記一対の導電性グランドバーは、前記所定位置において前記外周側絶縁被覆を除去して露出する前記シールド層を挟持して半田接合されるとともに、前記同軸ケーブルのシールド層部外径と前記ディスクリートケーブル外径との外径差に相当する厚みの空隙を有して前記ディスクリートケーブルを挟持することを特徴とするフラットケーブル。
【請求項1】
直線状に延びる芯線、前記芯線を覆って設けられた内周側絶縁被覆、前記内周側絶縁被覆の外周を覆って設けられたシールド層、および前記シールド層の外周を覆って設けられた外周側絶縁被覆からなる同軸ケーブルと、
直線状に延びる芯線、前記芯線を覆って設けられた絶縁被覆からなり、前記同軸ケーブルのシールド層よりも小さな外径を有するディスクリートケーブルと、
前記同軸ケーブルと前記ディスクリートケーブルとを互いに平行に平面状に並べた状態で、前記同軸ケーブルと前記ディスクリートケーブルの端部近傍の所定位置において、上下から前記同軸ケーブルおよび前記ディスクリートケーブルを挟持する一対の導電性グランドバーとを有し、
前記ディスクリートケーブルは、前記同軸ケーブルに両側から挟まれるように平面状に並んで配置され、前記一対の導電性グランドバーは、前記所定位置において前記外周側絶縁被覆を除去して露出する前記シールド層を挟持して半田接合されるとともに、前記同軸ケーブルのシールド層部外径と前記ディスクリートケーブル外径との外径差に相当する厚みの空隙を有して前記ディスクリートケーブルを挟持することを特徴とするフラットケーブル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−192358(P2008−192358A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23080(P2007−23080)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000105338)ケル株式会社 (51)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000105338)ケル株式会社 (51)
【Fターム(参考)】
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