フラボノイド化合物およびその使用
抗酸化活性を有する新規のフラボノイド化合物について記載する。該化合物および組成物は、抗酸化特性を発揮することが示されており、虚血および再潅流傷害の治療に特に有用である。本発明は、当該フラボノイド化合物を化学的に合成し、それらの効果を試験する方法についても記載する。当該化合物および対応する医薬として許容可能な誘導体および/または塩は、医薬、栄養補助食品および獣医用途の分野で使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている、2005年3月11日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2005901214号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、新規の化合物、これらの化合物を含有する組成物、それらの合成方法、およびこれらの化合物の使用に関する。特に、本発明は、フラボノイド化合物、フラボノイド化合物を合成する方法、フラボノイド化合物を含有する組成物、およびそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
虚血組織の迅速な再潅流は、正常な機能を回復するのに重要である。しかし、この血流の戻りは、逆説的に、可逆的損傷細胞の進行的破壊をもたらすことによって、組織機能不全および梗塞をもたらしうる。この「再潅流傷害」は、多因子の病因を有するが、炎症反応に強く関連しているようである。血流の戻りにより、白血球接着および浸透、ならびに無酸素ラジカル種および過酸化物、例えばH2O2等の反応性酸化種(ROS)の放出を含む、虚血性傷害を増強するいくつかの炎症過程が生じうる。
【0004】
この炎症反応の多くは、多機能のサイトカインのサブクラスであるインターロイキン(IL)によって媒介されるようである。白血球(白色血液細胞)も再潅流傷害に重要な役割を果たすようである。白血球は、内皮および神経を傷つけるのに加えて、直接微小循環を妨害しうる。この白血球毛細血管閉塞は、「無血流再開現象」の主たる機構でもありうる。したがって、血流が戻るとまだ生存可能な実質組織の部分は、十分に再潅流されず、究極的に死ぬ。心筋虚血は、特に、大きな毛細血管閉塞を引き起こす。
【0005】
虚血、および特に再潅流は、さらなる組織損傷をもたらす白血球からのROSの放出の増強を促進する傾向がある。最も損傷の強い種類の遊離ラジカルの1つは、内皮機能、および一酸化窒素(NO)の活性を低下させるように作用するスーパーオキサイド陰イオンである。NOは、血小板凝集を抑制し、内皮への白血球の接着を防止することが証明されているため、このラジカルは、毛細血管閉塞プロセスをさらに悪化させる。
【0006】
虚血および再潅流後に達成される組織回復の程度は、組織の性質および損傷の重度に依存する。
【0007】
虚血は、様々な条件によって引き起こされうる。例えば、卒中、心筋梗塞または機械的外傷等の急性事変、アテローム性動脈硬化、末梢血管疾患および糖尿病等の慢性状態は、虚血を引き起こしうる。高血圧症は、虚血をもたらしうる他の種類の疾患である。
【0008】
冠状動脈の遮断によって引き起こされる心臓発作等の急性事変が起こると、血管の閉塞を除くことで、血流を復帰させて、組織を再潅流するのに役立つ様々な薬品が心臓発作患者に静脈内投与される。しかし、この種の治療は、再潅流に関連する組織損傷を防止または緩和することに向けられるものではない。再潅流が生じて、組織に対する酸素の供給を復帰させるための環境を築くと、遊離ラジカル生成を増加させることによって組織損傷を増大化しうる。
【0009】
この点において、虚血を示す、または虚血の危険性のある被検体に対する従来の治療は、不十分である。
【0010】
様々な物質が、血管の健康および機能を向上させること、および果実および野菜を多く食する集団では、冠状動脈疾患の発生率がより低いことが示唆されている。この効果は、果実および野菜の両方に見いだされるポリフェノン化合物であるフラボノイドの有益な効果に関連づけられてきた。
【0011】
フラボノイドは、低密度リポタンパク質の血漿レベルの低減、血小板凝集の抑制、遊離ラジカルの排出、細胞増殖の低減、ならびに血管緊張の調節を含むいくつかの生物学的効果を発揮すると考えられる非常に大きく、広範にわたる植物由来化合物群である。
【0012】
膨大な数のフラボノイドが識別されており、それらは、ヒドロキシル化またはメチル化の向き、ベンゼノイド置換基の位置、不飽和の程度、および結合された置換基の種類が互いに異なる。多くのフラボノイドの一般的な3つの環構造(A、BおよびC環)は、2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-4-オンの構造に基づいている。
【化1】
【0013】
例えば、合成フラボノイド、3',4'-ジヒドロキシフラボノール(DiOHF)は、3,3'-および4'位にヒドロキシ基を有し、心筋虚血、およびインビトロ研究において再潅流に関連する梗塞および傷害を低減することが実証された(Shen Wang, Gregory Dusting, Clive May and Owen Woodman, British Journal of Pharmacology(2004)142, 443〜452)。
【0014】
しかし、多くのフラボノイドの薬物動態が、それらの治療有用性を著しく制限してきた。合成フラボノイドは、脂溶性の高い分子であるため、水溶性が低く、治療薬としての投与が困難になる傾向がある。これらの特徴は、急性非経口投与が望まれる場合の治療、例えば血管拡張治療に対するそれらの応用性を制限する。
【発明の開示】
【0015】
以上に特定された問題により、知られているフラボノイドと比較して、水溶性および薬物動態が向上した合成フラボノイド誘導体の開発の必要性が残されている。
【0016】
第1の態様によれば、本発明は、医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、一般式Iの少なくとも1つの化合物とともに含む医薬および/または獣医薬組成物を提供する。
【化2】
[式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2、R3、R4、R5は、H、OH、または式(Ia):
【化3】
(ここで、
Oは、酸素であり、
Lは、酸素、および存在する場合にDに共有結合し、または酸素およびEに共有結合するリンカー基であり、または存在せず、
Dは、約1から20個の炭素原子と同等の鎖長を有するスペーサー基であり、または存在せず、
Eは、可溶化基である)による基から独立に選択され、
ただし、R1、R2、R3、R4、R5の少なくとも1つは、HまたはOH以外である]
好ましくは、Eは、エステル、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル、スルファメート、スルホン酸エステル、ホスファメート、ホスホン酸エステル、スルホナート、双性イオン種、アミノ酸、ホスホン酸アミノ、非環式アミン、環式アミン、四級アンモニウム陽イオン、ポリエチレングリコール、オリゴ糖またはデンドリマーから選択される。
【0017】
1つの好ましい実施形態において、Eは、エステル、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル、ポリエチレングリコール、オリゴ糖またはデンドリマーから選択される。
【0018】
好ましくは、Eは、エステル、カルボン酸またはリン酸エステルから選択される。
【0019】
特定の好ましい実施形態において、Eは、式(Ib):
【化4】
(式中、
Wは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Xは、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)による基である。
【0020】
好ましくは、WはO、および/またはXはHである。
【0021】
他の実施形態において、Eは、式(Ic):
【化5】
(式中、
Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレン、アルケニレン、アルキニレンであり、
Wは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Xは、H、置換または非置換のアルキル、アルキルベンジル、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)によるエステルである。
【0022】
好ましくは、Qは、置換または非置換の低級アルキレンである。
【0023】
他の実施形態において、Eは、式(Id):
【化6】
(式中、
Yは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Zは、OまたはSであり、
R6およびR7は、H、置換または非置換のアルキル、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩から独立に選択される)によるリン酸エステルである。
【0024】
好ましくは、YおよびZは、Oである。
【0025】
他の実施形態において、R1、R2、R3、R4およびR5の少なくとも1つは、式(Ie):
【化7】
(式中、R6およびR7は、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩から独立に選択される)によるリン酸エステルである。
【0026】
一実施形態において、Lは、存在し、-CO-、エステル、フェノール、ホスホン酸エステル、カルバメート、カルボネートまたはマニッシュ塩基から選択される。より好ましい実施形態において、Lは、-CO-である。
【0027】
他の実施形態において、Dは、存在し、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、あるいはアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルから選択される。
【0028】
好ましい実施形態において、Dは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレンである。好ましくは、低級アルキレンである。
【0029】
他の態様において、本発明は、医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、一般式IIの少なくとも1つの化合物とともに含む医薬および/または獣医薬組成物を提供する。
【化8】
(式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2およびR3は、以上に規定されている通りである)
さらに他の態様において、本発明は、医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、一般式IIIの少なくとも1つの化合物とともに含む医薬および/または獣医薬組成物を提供する。
【化9】
(式中、R3は、以上に規定されている通りである)
さらに他の態様において、本発明は、医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、一般式IVの少なくとも1つの化合物とともに含む医薬および/または獣医薬組成物を提供する。
【化10】
(式中、
Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレンであり、
Xは、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)
好ましくは、Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換の低級アルキレンである。
【0030】
他の態様において、本発明は、3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;4'-(ベンジルオキシ)-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;4'-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;3',4'-ジベンジルオキシ-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;3,4'-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;フラボン3,4'-ビス(ヘミアジペート);3,7-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3,7-ジヒドロキシフラボン3,7-ビス(ヘミアジペート);4'-ヒドロキシ-3-ヒドロキシフラボン-3-四級アンモニウムエステル;4'-(ベンジルオキシ)-3-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)フラボンおよび3-ヒドロキシフラボン-3-リン酸二ナトリウム塩からなる群から選択される化合物を提供する。
【0031】
他の態様において、本発明は、医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;4'-(ベンジルオキシ)-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;4'-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;3',4'-ジベンジルオキシ-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;3,4'-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;フラボン3,4'-ビス(ヘミアジペート);3,7-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)フラボン;3,7-ジヒドロキシフラボン3,7-ビス(ヘミアジペート);4'-ヒドロキシ-3-ヒドロキシフラボン-3-四級アンモニウムエステル;フラボン-3-リン酸二ナトリウム塩;4'-(ベンジルオキシ)-3-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)フラボンおよび3-ヒドロキシフラボン-3-リン酸二ナトリウム塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物とともに含む医薬および/または獣医薬組成物を提供する。
【0032】
さらなる態様において、本発明は、反応性酸化種(ROS)の存在に関連する被検体における疾病を予防および/または治療する方法であって、以上に規定されている少なくとも1つの化合物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0033】
好ましくは、当該治療を必要とする被検体は、虚血を生じる危険性がある。より好ましくは、被検体は、急性または慢性状態の結果として虚血および/または再潅流傷害にかかっている。
【0034】
特定の実施形態において、慢性状態は、癌、脳血管疾患、肺血管疾患、アテローム性動脈硬化、動脈疾患、鬱血性心臓病、冠状動脈疾患、末梢血管疾患、糖尿病、高血圧症、偏頭痛、火傷、慢性閉塞性肺疾患および網膜血管疾患から選択される。
【0035】
他の実施形態において、急性状態は、卒中、心筋梗塞、衝突傷害または手術に起因する機械的外傷から選択される。好ましくは、手術は、血管手術である。より好ましくは、血管手術は、心臓バイパスおよび/または移植手術である。
【0036】
特定の実施形態において、化合物は、手術前および/または手術中に被検体に投与される。
【0037】
他の態様において、本発明は、被検体におけるアテローム性動脈硬化および/または虚血性心臓疾患の発症を予防、遅延させ、および/またはその進行を遅らせる方法であって、以上に規定されている少なくとも1つの化合物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0038】
さらに他の態様において、本発明は、反応性酸化種(ROS)の存在に関連する被検体における疾病を予防および/または治療する治療および/または予防方法であって、以上に規定されている少なくとも1つの化合物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0039】
さらなる態様において、本発明は、虚血および/または再潅流傷害によって引き起こされる被検体に対する損傷を予防および/または少なくとも改善する方法であって、以上に規定されている少なくとも1つの化合物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0040】
さらなる態様において、本発明は、治療薬の投与によって引き起こされる被検体に対する損傷を予防および/または少なくとも改善する方法であって、被検体に対して、
i)治療薬と、
ii)以上に規定されている少なくとも1つの化合物の有効量とを同時投与することを含む方法を提供する。
【0041】
好ましくは、治療薬は、酸化性治療薬である。
【0042】
特定の実施形態において、治療薬は、抗癌剤である。好ましくは、抗癌剤は、アントラシクリンおよびその誘導体である。
【0043】
特定の実施形態において、化合物は、経口、局所、皮下、非経口、筋肉内、動脈内および/または静脈内投与される。
【0044】
他の態様において、本発明は、医薬品の調製のための以上に規定されている化合物の使用を提供する。
【0045】
他のさらなる態様において、本発明は、一般式Iの化合物、およびその医薬および/または獣医薬として許容可能な塩または溶媒和物を提供する。
【化11】
[式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2、R3、R4、R5は、H、OH、または式(Ia):
【化12】
(ここで、
Oは、酸素であり、
Lは、酸素、および存在する場合にDに共有結合し、または酸素およびEに共有結合するリンカー基であり、または存在せず、
Dは、約1から20個の炭素原子と同等の鎖長を有するスペーサー基であり、または存在せず、
Eは、可溶化基である)による基から独立に選択され、
ただし、R1、R2、R3、R4、R5の少なくとも1つは、HまたはOH以外であり、
該化合物は、フラボン、3'-ヒドロキシ-、アセテート;フラボン、4'-ヒドロキシ-、アセテート;フラボン、3-ヒドロキシ-、アセテート;(±)41-アセトキシフラボン;フラボン、3,4',7-トリヒドロキシ、3-アセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン、-3,7-ビス(アセチルオキシ)-2,3-ジヒドロ-2-フェニル-、(2R-トランス);4H-1-ベンゾピラン-4-オン、7-(アセチルオキシ)-2-[4-(アセチルオキシ)フェニル]-2,3-ジヒドロ-、(±);(+)-4',7-ジアセトキシフラバノン;(2S,3S)-3,7-ジヒドロキシフラバノンジアセテート;フラバノン、3,4'-ジヒドロキシ、ジアセテート;フラバノン、3',4'-ヒドロキシ-、ジアセテート;フラバノン、3,7-ジヒドロキシ-、ジアセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン、3,7-ビス(アセチルオキシ)-2(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2,3-ジヒドロ-、(2R-トランス)-;フラボン、3,3'-ジヒドロキシ-、ジアセテート;フラボン、4',7'-ジヒドロキシ、ジアセテート;フラボン、3,7-ジヒドロキシ-、ジアセテート;フラボン、3,3',7-トリヒドロキシ、トリアセテート;フラボン、3,3',4'-トリヒドロキシ-、トリアセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン、7-(アセチルオキシ)-2-[3,4-ビス(アセチルオキシ)フェニル]-;フラボン、3,4',7-トリヒドロキシ-、トリアセテート;フラバノン、3',4',7-トリヒドロキシ、トリアセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン、7-(アセチルオキシ)-2-[3,4-ビス(アセチルオキシ)フェニル]-2,3-ジヒドロ-、(s)-;フラバノン、3,4',7-トリヒドロキシ-、トリアセテート;フラバノン、3,4',7-トリヒドロキシ-、トリアセテート、トランス-(f);4H-1-ベンゾピラン-4-オン、3,7-ビス(アセチルオキシ)-2-[3,4-ビス(アセチルオキシ)フェニル]-;フスチン、テトラアセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン、3,7-ビス(アセチルオキシ)-2-[3,4-ビス(アセチルオキシ)フェニル]-2,3-ジヒドロ-、(2R-トランス)-;4H-1-ベンゾピラン-4-オン、3,7-ビス(アセチルオキシ)-2-[3,4-ビス(アセチルオキシ)フェニル]-2,3-ジヒドロ-、トランス-;フラバノン、3,3',4',7-テトラヒドロキシ-、テトラアセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン、3-(1-オキソプロポキシ)-2-フェノール-;プロパノン酸、2-メチル、4-オキソ-2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-3-イルエステル;プロパノン酸、2,2-ジメチル-、4-オキソ-2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-3-イルエステル;ベンゼン酢酸、4-オキソ-2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-3-イルエステル;ベンゼンプロパノン酸、4-オキソ-2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-3-イルエステル;ベンゼン酢酸、a-フェニル-、4-オキソ-2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-3イルエステル;ホスホロチオ酸、o-[4-[3-[(ジエトキシホスフィノチオイル)オキシ]-4-オキソ-4H-1-ベンゾピラン-2-イル]フェニル]o,o-ジエチルエステル;ホスホロチオ酸、o-[3-[3-[(ジエトキシホスフィノチオイル)オキシ]-4-オキソ-4H-1-ベンゾピラン-2-イル]フェニル]o,o-ジエチルエステル;リン酸、ジエチル4-(4-オキソ-4H-1-ベンゾピラン-2-イル)フェニルエステル;4H-1-ベンゾピラン-4-オン、2-フェニル-3-(ホスホノオキシ)-;フラボン、3-ヒドロキシ-、リン酸二水素二アンモニウム塩;4H-1-ベンゾピラン-4-オン、2-フェニル-3-(ホスホノオキシ)-、マグネシウム塩(1:1)、五水化物;4H-1-ベンゾピラン-4-オン、2-[3-ヒドロキシ-4-(ホスホノオキシ)フェニル]-;3',4'-ジヒドロキシフラボン-4'-リン酸;3'4'-ジヒドロキシフラボン-4'-β-D-グルコピラノシドナトリウム塩;3',4'-ジヒドロキシフラボン-4'-β-D-リボフラノシドナトリウム塩でない]
好ましくは、R1、R2、R3、R4およびR5は、以上に規定されている通りである。
【0046】
他の態様において、本発明は、一般式(II)による化合物を提供する。
【化13】
(式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2およびR3は、以上に規定されている通りである)
さらに他の態様において、本発明は、一般式(III)による化合物を提供する。
【化14】
(式中、R3は、以上に規定されている通りである)
さらに他の態様において、本発明は、一般式(IV)による化合物を提供する。
【化15】
(式中、
Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレンであり、
Xは、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)
好ましくは、Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換の低級アルキレンである。
【0047】
他の態様において、本発明は、一般式(V)による化合物を提供する。
【化16】
(式中、R3およびR5は、以上に規定されている通りである)
他の態様において、以上に規定されている化合物を合成するための方法を提供する。
【0048】
さらに他の態様によれば、本発明は、以下の一般式の化合物、およびその医薬として許容可能な塩または溶媒和物を提供する。
【化17】
(式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2、R3、R4およびR5は、R1、R2、R3、R4およびR5の少なくとも1つが、HまたはOHでないことを前提として、H、OH、置換または非置換のアルコキシ、アリールオキシ、エステル、炭酸エステル、エーテル、リン酸エステルおよびα-アシルオキシアルキルエーテルから独立に選択される)
好ましくは、少なくともR3は、置換または非置換のエステル、炭酸エステル、エーテル、リン酸エステルおよびα-アシルオキシアルキルエーテルから選択される。
【0049】
好ましくは、R1、R2、R3、R4およびR5の少なくとも1つは、
i)一般式:
【化18】
(式中、Yは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Zは、OまたはSであり、
R6およびR7の各々は、置換または非置換のアルキル、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩から独立に選択される)を有するリン酸エステル、
ii)一般式:
【化19】
(式中、R8は、置換または非置換の低級アルキル、低級アルキルアルコキシである)を有するエステル、
iii)一般式:
【化20】
(式中、Qは、置換または非置換の低級アルキレン、低級アルケニルおよびアルキニルであり、
Wは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Xは、H、置換または非置換のアルキル、アルキルベンジル、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)を有するエステル、
およびその医薬として許容可能な塩または溶媒和物から選択される。
【0050】
本発明の特定の実施形態において、YおよびZは、ともにOである。
【0051】
一実施形態において、本発明は、以下の一般式の化合物、およびその医薬として許容可能な塩または溶媒和物を提供する。
【化21】
(式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2およびR3は、R1、R2およびR3の少なくとも1つが、HまたはOHでないことを前提として、H、OH、置換または非置換のアルコキシ、アリールオキシ、エステル、炭酸エステル、エーテル、リン酸エステルおよびα-アシルオキシアルキルエーテルから独立に選択される)
好ましくは、R1、R2およびR3の少なくとも1つは、
i)一般式:
【化22】
(式中、Yは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Zは、OまたはSであり、
R6およびR7の各々は、置換または非置換のアルキル、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩から独立に選択される)を有するリン酸エステル、
ii)一般式:
【化23】
(式中、R8は、置換または非置換の低級アルキル、低級アルキルアルコキシである)を有するエステル、
iii)一般式:
【化24】
(式中、Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換の低級アルキレン、低級アルケニレン、アルキニレンであり、
Wは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Xは、H、置換または非置換のアルキル、アルキルベンジル、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)を有するエステル、
およびその医薬として許容可能な塩または溶媒和物から選択される。
【0052】
好ましくは、
R1は、HまたはOHであり、
R2は、HまたはOHであり、
R3は、
【化25】
から選択される。
【0053】
他の実施形態において、本発明は、以下の一般式の化合物を提供する。
【化26】
(式中、
R9は、置換、または非置換のアルコキシ、アリールオキシ、エステル、炭酸エステル、エーテル、あるいは式:
【化27】
による基であり、Uは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレンである)
他の実施形態において、本発明は、以下の一般式の化合物を提供する。
【化28】
(式中、nは、2から6の整数であり、好ましくは、nは、4である)
本明細書に示されている式は、すべての可能な幾何および光学異性体、ならびにそれらのラセミ体混合物にも適用される。
【0054】
他の態様において、本発明は、式I、式II、式IIIまたは式IV(ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R8、U、Q、W、X、Y、Z、nは、上記と同じ意味を有する)による化合物、またはその医薬として許容可能な塩または溶媒和物を合成するための方法を提供する。
【0055】
他の実施形態において、本発明は、医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、式I、式II、式IIIまたは式IV(ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R8、U、Q、W、X、Y、Z、nは、上記と同じ意味を有する)による少なくとも1つの化合物、またはその医薬として許容可能な塩または溶媒和物を含む医薬および/または獣医薬組成物を提供する。
【0056】
本発明の他の態様によれば、治療薬の投与によって引き起こされる被検体に対する損傷を防止および/または少なくとも改善する方法であって、
i)治療薬と、
ii)式I、式II、式III、式IVまたは式V(ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R8、U、Q、W、X、Y、Z、nは、上記と同じ意味を有する)による少なくとも1つの化合物、またはその医薬として許容可能な塩または溶媒和物の有効量とを被検体に同時投与する方法が提供される。
【0057】
さらなる態様において、本発明は、反応性酸化種(ROS)の存在に関連する疾病を予防および/または治療する方法であって、式I、式II、式III、式IVまたは式V(ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R8、U、Q、W、X、Y、Z、nは、上記と同じ意味を有する)による少なくとも1つの化合物、またはその医薬として許容可能な塩または溶媒和物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0058】
さらなる実施形態において、本発明は、反応性酸化種(ROS)の存在に関連する疾病を予防および/または治療する方法であって、式I、式II、式IIIまたは式IV(ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R8、U、Q、W、X、Y、Z、nは、上記と同じ意味を有する)による少なくとも1つの化合物、またはその医薬として許容可能な塩または溶媒和物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0059】
典型的には、当該治療を必要とする被験者は、虚血を生じる危険性のある人である。あるいは、被検体は、急性または慢性状態の結果として、虚血および/または再潅流に現在かかっている人でありうる。
【0060】
さらなる態様において、本発明は、虚血および/または再潅流によって引き起こされる被検体に対する損傷を防止および/または少なくとも改善する方法であって、式I、式II、式IIIまたは式IV(ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R8、U、Q、W、X、Y、Z、nは、上記と同じ意味を有する)による少なくとも1つの化合物、またはその医薬として許容可能な塩または溶媒和物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0061】
好ましくは、可溶化基は、化合物を水溶液、好ましくは水に少なくとも部分的に、より好ましくは全体的に可溶にする。
【0062】
好ましくは、本発明の化合物は、少なくとも1つのインビボ酵素開裂性置換基を有する。
【0063】
好ましくは、インビボ酵素開裂性置換基は、生理的pHにおいてイオン性の基である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
定義
本明細書に用いられているように、「アルキル」という用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tertブチル、オクタ-デシルおよび2-メチルペンチル等の分枝または非分枝炭化水素鎖を含む。これらの基は、非置換、またはヒドロキシル、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード、メルカプトまたはチオ、シアノ、アルキルチオ、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、カルボキシル、カルバルコイル、アルキル、アルケニル、ニトロ、アミノ、アルコキシおよびアミド等の、当該鎖と一般に結合する1つまたは複数の官能基で置換されて、トリフルオロメチル、3-ヒドロキシヘキシル、2-カルボキシプロピル、2-フルオロエチル、カルボキシメチルおよびシアノブチル等のアルキル基を形成しうる。
【0065】
「低級」という用語は、炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖を含む。
【0066】
「アルキレン」という用語は、メチレン(-CH2-)、プロピレン(-CH2CH2CH2-)、クロロエチレン(-CHCICH2-)、2-チオブテン-CH2CH(SH)CH2CH2、1-ブロモ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンテン(-CHBrCH2CH(OH)CH(CH3)CH2-)、メチルエチレン、トリメチレン、1-プロピレン、2-プロピレン、テトラメチレン、1-メチルトリメチレン、2-メチルトリメチレン、3-メチルトリメチレン、1-エチルエチレン、2-エチルエチレン、ペンタメチレン、1-メチルテトラメチレン、2-メチルテトラメチレン、3-メチルテトラメチレン、4-メチルテトラメチレンおよびヘキサメチレン等の以上に定められている二価のアルキルを意味する。
【0067】
「アルケニル」という用語は、1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を含む分枝または非分枝炭化水素鎖を含む。
【0068】
「アルキニル」という用語は、1つまたは複数の炭素-炭素三重結合を含む分枝または非分枝炭化水素鎖を含む。
【0069】
「アリール」とは、場合によって一、二または三置換されている、単環(例えばフェニル)、複数の環(例えばビフェニル)、または少なくとも1つが芳香族である複数の縮合環(例えば1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、ナフチル)を有する芳香族炭素環基を意味する。本明細書におけるアリール基は、非置換、あるいは明記されているように、1つまたは複数の置換可能位置において様々な基で置換されている。
【0070】
本明細書に示されているように、「シクロアルキル」という用語は、3から12個の炭素原子を有する飽和炭素環基を意味する。シクロアルキルは、一環または多環融合系でありうる。当該基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルが挙げられる。本明細書におけるシクロアルキル基は、非置換、または明記されているように、1つまたは複数の置換可能位置において様々な基で置換されている。例えば、当該シクロアルキル基は、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ(C1〜C6)アルキルアミノ、ジ(C1〜C6)アルキルアミノ、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルキニル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6ハロアルコキシ、アミノ(C1〜C6)アルキル、モノ(C1〜C6)アルキルアミノ(C1〜C6)アルキルまたはジ(C1〜C6)アルキルアミノ(C1〜C6)アルキルで場合によって置換されていてもよい。
【0071】
「アシル」という用語は、ホルミル、アセチル、プロピオニルまたはブチル等の-C(O)R基(ただし、Rは、以上に定められているアルキルまたはアリールである)を含む。
【0072】
「アルコキシ」という用語は、-OR-(ただし、Rは、アルキルである)を含む。「低級アルコキシ」という用語については、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシおよびイソヘキシルオキシ基等の1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシを挙げることができる。
【0073】
「アミド」という用語は、アミド結合:-C(O)NR-(ただし、Rは、水素またはアルキルである)を含む。
【0074】
「アミノ」という用語は、アミン結合:-NR-(ただし、Rは、水素またはアルキルである)を指す。
【0075】
「カルボキシル」という用語は、-C(O)O-を指し、「カルボニル」という用語は、-C(O)-を指す。
【0076】
「カルボネート」という用語は、-OC(O)O-を指す。
「スルホネート」という用語は、-S(O)2O-を指す。
「ホスホン酸エステル」という用語は指す。
「カルボン酸」という用語は、-C(O)OHを指す。
「スルホン酸」という用語は、-S(O)2OHを指す。
「ホスホン酸」という用語は、-P(O)(OH)2を指す。
「ホスファメート」という用語は、-Ar-NHPO4-を指す。
「リン酸エステル」という用語は、-O-P(O)(OR)2を指す。
「スルファメート」という用語は、-Ar-NHSO3-を指す。
「スルホン酸エステル」という用語は、-S(O)2-ORを指す。
「スルホネート」という用語は、-S(O)2O-を指す。
「ホスホン酸エステル」という用語は、R-P(O)(OR)2を指す。
「カルボン酸」という用語は、-C(O)OHを指す。
「スルホン酸」という用語は、-S(O)2OHを指す。
「ホスホン酸」という用語は、-P(O)(OH)2を指す。
「ホスファメート」という用語は、-Ar-NHPO4-を指す。
「カルバメート」という用語は、-NHC(O)O-を指す。
【0077】
炭化水素鎖は、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれうる。
【0078】
リンカー基は、存在する場合は、本明細書に記載されている分野で知られているいくつかの当該分子のいずれかであってもよい。
【0079】
以上の説明から明らかなように、スペーサー基Dは、存在していなくてもよい。リンカー基が存在していなくてもよいことも以上の説明から明らかである。
【0080】
本発明は、フラボノイド誘導体、およびフラボノイド誘導体を含有する組成物、ならびにその使用方法を提供する。
【0081】
生体組織における反応性酸化種(ROS)の存在は、動物の多くの疾患に関係することが示された。反応性酸化種は、窒素および酸素、または酸素原子のみを含有することができる。ROS分子のいくつかの例としては、O2、H2O2、またはOH-、O2-、NO-およびROO-等の遊離ラジカルが挙げられる。これらの種の多くは、通常の代謝活動中に形成されるが、それらの濃度レベルは、慢性炎症、感染および他の疾病に関係する酸化応力の条件下で上昇しうる。
【0082】
多くのROS分子は、酸素代謝および炎症プロセス等の天然のプロセスの結果である。例えば、細胞が、エネルギーを生成するために酸素を使用すると、ミトコンドリアによるATP生成の結果として遊離ラジカルが生成される。運動は、イオン化ラジカル(工業活動、日光曝露、宇宙線および医療X線による)、環境毒、環境状態の変化(例えば低酸素および高酸素)、オゾンおよび酸化窒素(主に自動車排気、治療による)等の環境的刺激のように遊離ラジカルのレベルを高めうる。喫煙および過剰アルコール摂取等の生活侵襲要因も遊離ラジカルのレベルに影響することが知られている。ラジカル種は、結合して、スーパーオキサイドおよび酸化窒素のラジカル反応の生成物である過酸化窒素ONOO-等の他のより有害または有毒な種を形成しうる。
【0083】
ROS種の他の源は、抗癌薬等のいくつかの治療薬である。アントラサイクリン誘導体は、急性白血病、悪性リンパ腫等の新生物性疾患の治療に極めて有用な抗癌薬である。しかし、それらの投与の望ましくない特徴は、心筋症および予測される心不全をもたらしうる組織の酸化性損傷でありうる。したがって、治療薬の存在は、鬱血性心不全(CHF)の発生を引き起こしうる。いくつかの治療薬のこの特徴は、それらの効果を制限し、適切な同時投与療法を開発することが有用となる。
【0084】
したがって、本発明の一態様において、治療薬の投与によって引き起こされる被検体への損傷を防止および/または少なくとも改善する方法であって、
i)治療薬と、
ii)式I、式II、式IIIまたは式IV(ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R8、U、Q、W、X、Y、Z、nは、上記と同じ意味を有する)による少なくとも1つの化合物、またはその医薬として許容可能な塩または溶媒和物の有効量とを被検体に同時投与することを含む方法を提供する。
【0085】
他の態様において、本発明は、被検体の皮膚へのUV損傷を防止および/または少なくとも改善する方法であって、本発明の組成物の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。この態様では、好ましくは、組成物は、日焼け止めに処方される。組成物は、典型的には、皮膚に塗布されうる。組成物は、緩和剤および加湿剤を含有することができる。
【0086】
他の態様において、本発明は、老化の効果を防止および/または逆転させ、明白な皺を低減し、または/または乾燥肌を治療もしくは予防する方法を提供する。
【0087】
他の態様において、本発明は、酸化性損傷を含む疾病または疾患を有する被検体を治療する方法であって、本発明の組成物の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0088】
好ましくは、酸化性損傷を含む疾病または疾患は、癌、心臓病、神経系疾患、自己免疫疾患、虚血-再潅流傷害、糖尿病併発症、敗血症性ショック、肝炎、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、およびHIV、またはB型肝炎を含む肝炎から生じる併発症からなる群から選択される。
【0089】
他の態様において、本発明は提供する。
特定の実施形態において、被検体は、動物である。動物は、ヒト、ヒト以外の霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、トリ、ニワトリまたは他の家禽類、カモ、ガチョウ、キジ、シチメンチョウ、ウズラ、モルモット、ウサギ、ハムスター、ラットおよびマウスからなる群から選択されうる。
【0090】
本発明のいくつかの態様において、1つまたは複数のフラボノイド誘導体は、1つまたは複数の治療薬と同時に、個別に、または順次的に投与される。
【0091】
当該組合せで使用される場合は、1つまたは複数の治療薬、本発明による1つまたは複数のフラボノイド誘導体を別個の薬剤として同一または異なる時間に投与することができ、あるいは両化合物を含む単一組成物として処方することができる。
【0092】
遊離ラジカルは、脂質、タンパク質およびDNA等の細胞における重要な有機物質と反応する。これらの生体分子の酸化は、それらに損傷を与え、正常な機能を妨害し、様々な疾病状態に寄与しうる。一定の器官系は、より高レベルの酸化性応力または窒素性応力を受けやすいことが注目された。損傷を最も受けやすいそれらの器官系は、肺系(高レベルの酸素に曝される)、脳(強い代謝活性を示すものの、内因性抗酸化物質のレベルが低い)、眼(有害なUV光に絶えず曝される)、循環系(酸素および酸化窒素レベルの変動の犠牲)および生殖系(精子細胞の強い代謝活性により危険)である。
【0093】
ROSの生成を引き起こす該当する急性疾患の例としては、虚血再潅流、卒中、心筋梗塞、または衝突傷害もしくは手術等の機械的外傷を含む。心臓バイパスまたは移植手術等のいくつかの形態の手術は、組織の虚血および再潅流を必然的に引き起こす。典型的には、本発明による1つまたは複数のフラボノイド誘導体は、被検体に手術の前および/または最中に投与される。
【0094】
慢性疾患は、癌、脳血管疾患、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈疾患を含む動脈疾患、末梢血管疾患(糖尿病等の疾病によって引き起こされる損傷を含む)、高血圧症、肺高血圧症、慢性気道閉塞疾患、肺気腫、神経系疾患、自己免疫疾患、糖尿病併発症、敗血症および低血液量性ショック、火傷、肝炎、ならびに肝炎およびHIVから生じる併発症を含む群から選択されうる。他の慢性疾患は、網膜または他の眼疾損傷を含む、特にヒト未熟児における呼吸支援にしばしば適用される高圧酸素療法の投与または高酸素分圧環境に起因する併発症から選択されうる。該当する慢性疾患の危険性のある被検体を徴候の分析、診断試験、酵素マーカー、または遺伝子試験によって診断して、遺伝的素因を特定することができる。心臓発作または卒中等の一定の急性疾患に対する素因を遺伝子試験によって特定することもでき、危険性のある被検体に対する1つまたは複数のフラボノイド誘導体の予防的適用を促進することができる。ROSによる薬物誘発疾患、例えば薬物誘発鬱血性心臓病。
【0095】
疾病または疾患が、卒中または卒中の危険性である場合は、上記の組成物は、好ましくは、卒中の発生の危険性を低減するための予防薬として卒中が発生する前に投与され、または卒中の発生の24時間以内(好ましくは4時間以内)に投与される。
【0096】
ROSが関与する病理的状態の例は、身体の一部に対する血流の欠乏が、酸素の不十分な組織潅流をもたらす虚血である。虚血は、組織損傷を引き起こし、損傷の重度は、組織が酸素を奪われている時間の長さ、および十分な酸素の再潅流が虚血事象の後に行われているかどうかに依存する。
【0097】
本発明による少なくとも1つの化合物をいくつかの異なる経路、例えば局所、経口、皮下、筋肉内、動脈内、および/または静脈内経路を介して投与することができる。
【実施例】
【0098】
化合物の合成
本発明は、式I、II、IIIまたはIV、Vによるフラボノイド化合物、ならびに当該化合物を合成する方法を提供する。
【0099】
フラボノイドの誘導体
リン酸フラボノイド誘導体は、選択的保護/脱保護合成手法によって生成される。
【0100】
3-ヒドロキシフラボン-3-リン酸二ナトリウム塩(5)
図1には、3-ヒドロキシフラボン-3-リン酸二ナトリウム塩の合成方法が示されている。3-ヒドロキシフラボン(1)は、ジベンジルN,N-ジイソプロピルホスホラミダイトで処理すると、亜リン酸化し、その中間リン酸エステルをm-クロロ過安息香酸(mCPBA)によって直接酸化して、その対応する保護リン酸エステルとした。リン酸エステルをフラッシュクロマトグラフィーで精製した後、再結晶した(収率45%)。
【0101】
このリン酸エステルを水酸化パラジウムによりエタノール中で水素化分解させてリン酸エステルを形成し、わずかに過剰の0.1M水酸化ナトリウム溶液を添加することによって、それをそのまま二ナトリウム塩に変換した。水素化分解による脱保護を行って、収率73%の3-ヒドロキシフラボン-3-リン酸二ナトリウム塩の純粋な試料を得た。
【0102】
対応する二アンモニウム塩を、(5)のジエチルアミノエチルカラム(DEAC)を使用したイオン交換クロマトグラフィーによって生成した。
【0103】
3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ホスフェート(二ナトリウム塩として)(10)
図2に示すように、同一の手順をトリヒドロキシフラボン類似体の合成に対して実施した。
【0104】
したがって、3',4'-ジベンジルオキシ-3-ヒドロキシフラボン(6)を1H-テトラゾール存在下でジイソプロピルN,N-ジベンジルオキシホスホラミダイトにより亜リン酸化して、3',4'-ジベンジルオキシ-フラボン-3-ホスファイトジベンジルオキシエステル(7)を形成し、それをmCPBAによって酸化して、保護リン酸エステル、すなわち3',4'-ジベンジルオキシ-フラボン-3-ホスフェートジベンジルオキシエステル(8)とした。これらの2つの工程により、再結晶化後に収率40%の所望の化合物を生成した。
【0105】
次いで、リン酸エステルをパラジウムによりエタノール中で水素化分解して、所望の3',3'-ジヒドロキシ-フラボン-3-ホスフェート(9)を形成し、NaOHを添加することによって、それを対応する二ナトリウム塩、すなわち3',4'-ジヒドロキシ-フラボン-3-リン酸二ナトリウム塩(10)に変換した。
【0106】
フラボノイドのエステル誘導体
3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミスクシネート(15)
図3に示されている反応によって3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミスクシネート(15)を生成した。無水コハク酸(11)とベンジルアルコール(12)をジクロロメタン中の4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)およびピリジンの存在下で反応させて、収率77%の白色結晶性フレークとしてのコハク酸モノベンジルエステル(13)を生成した。この保護コハク酸誘導体をDCCおよびDMAPの存在下で3-ヒドロキシフラボン(1)に結合して、静置すると固体化した収率96%までの黄色または褐色の油としてのフラボン-3-ヘミスクシネートモノベンジルエステル(14)を形成した。
【0107】
THF:EtOH:酢酸溶媒系にPd(OAc)2を使用して、対応するヘミスクシネートを形成するためのモノベンジルエステルの脱保護では、大規模な反応を行って、必要な3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミスクシネート(15)を得た。
【0108】
3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(19)
図4に示されているように、上述の手順と同様の手順に従って、3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(19)を合成した。
【0109】
p-TsOHの存在下でアジピン酸およびベンジルアルコールからアジピン酸モノベンジルエステル(17)を生成して、収率34%の無色の油としての所望の生成物を得た。
【0110】
次いで、保護アジピン酸を3-ヒドロキシフラボン(1)とDCC結合させて、収率59%の黄色/褐色のゴム質としてのフラボン-3-ヘミアジペートモノベンジルエステルを形成した。THF系溶媒系(9:1 THF:EtOH+0.05%酢酸)を使用して、Pd(OH)2触媒の存在下でこの化合物を水素化することで、モノベンジルエステルを水素化分解して、収率89%の黄色固体としてのフラボン-3-ヘミアジペートを形成した。
【0111】
3'4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)
3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)の合成のためのスキームを図5に示す。以上に規定した手法に従って、3'4'-ジベンジルオキシ-3-ヒドロキシフラボン(6)およびアジピン酸モノベンジルエステル(17)をDCC結合させて、収率59%の褐色のゴム質としてのヘミアジペートモノベンジルエステルを生成した。
【0112】
小規模(100〜500mg)の水素化分解による脱保護を円滑に進めて、3〜5時間で終了させて、収率33%の3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)を得た。
【0113】
III 組成物および方法
本発明の化合物を様々な担体および送達系で処方することができる。投与すべき治療化合物の量および該化合物の濃度は、選択されるビヒクルまたはデバイス、患者の臨床状態、副作用、および製剤における化合物の安定性に依存する。したがって、医師は、適切な濃度の治療化合物を含有する適切な調製物を採用し、問題の患者または類似の患者に対する臨床経験に応じて、投与する製剤の量を選択する。
【0114】
また、賦形剤を製剤に含めることができる。例としては、補助溶剤、界面活性剤、油、湿潤剤、緩和剤、防腐剤、安定剤および抗酸化剤が挙げられる。任意の薬理学的に許容可能な緩衝剤、例えばトリスまたはリン酸緩衝剤を使用できる。希釈剤、添加剤および賦形剤の有効量は、溶解性、生物活性等の点で医薬として許容可能な製剤を得るのに有効な量である。
【0115】
したがって、本発明の組成物は、局所、経口または非経口投与のための従来の医薬として許容可能なビヒクルで処方することができる治療化合物を含む。製剤は、等張性、生理的およびpH安定性を維持するために緩衝剤および防腐剤等の少量の補助剤を含むこともできる。
【0116】
IV 投与
本発明の化合物をヒトおよび動物の被検体の双方に投与することができる。
本発明の化合物を、活性化合物が1つまたは複数の不活性成分と十分に混合され、1つまたは複数のさらなる活性成分を場合によって含む組成物で投与することができる。それらの化合物を、ヒトおよび動物に対する投与のための当業者に知られている任意の組成物に使用できる。
【0117】
本発明の組成物を投与形態に応じた適正な経路で投与することができる。例えば、注射物を静脈内、動脈内、皮下および筋肉内投与することができる。
【0118】
経口投与については、固体または流体の単位投与形態を調製することができる。水溶性の形態を糖、芳香剤および防腐剤とともに水性ビヒクルに溶解させて、シロップを形成することができる。エリキシルは、水アルコール(例えばエタノール)ビヒクルを芳香剤とともに糖およびサッカリン等の好適な甘味料と使用することによって調製される。アカシア、トラガカントおよびメチルセルロース等の懸濁剤を利用して、水性ビヒクルにより懸濁剤を調製することができる。本発明の合成フラボノイド化合物を安定化剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の金属キレート剤還元剤またはメタ重亜硫酸ナトリウム等の還元剤と処方することもできる。
【0119】
非経口用途に向けた適切な製剤は、実務者にとって明らかである。通常、治療化合物は、約1から約100mg/mLの濃度にて水溶液で調製される。より典型的には、濃度は、約10から60mg/mLまたは約20mg/mLである。使用に応じて選択される化合物の溶解性および効力に応じて1mg/mL未満の濃度が必要な場合もありうる。無菌である製剤は、皮内、関節内、筋肉内、血管内、静脈内、吸入および皮下を含む様々な非経口経路に好適である。
【0120】
本発明による組成物は日焼け止め、スキンケア組成物、加湿剤の緩和剤に処方することができる。
【0121】
任意の数の生体高分子(生物ベースの系)、リポソームを採用する系、およびポリマー送達系、例えばデンドリマーを含む徐放または長時間放出送達系を本明細書に記載されている組成物に利用して、連続的または長期的な治療化合物源を提供することができる。当該徐放系は、局所、眼、経口および非経口用途の製剤に適用可能である。
【0122】
本発明の合成フラボノイド化合物は、栄養補助薬品または栄養補助食品として処方することもできる。例えば、合成フラボノイド化合物を経口摂取用のシリアル等の食品、フルーツジュース等の飲料、アルコール飲料、パン等に処方することができる。
【0123】
V フラボノイド誘導体の血管弛緩および抗酸化活性
NADPHの存在下でラット大動脈に生成されたスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対するビヒクル、フラボン-3-ヘミアジペート(10-8〜10-4M)およびDiOHF(10-4M)の効果を測定し、対照に対する百分率で表した。フラボン-3-ヘミアジペートの存在は、いずれの濃度においてもスーパーオキサイド生成に対して効果がないことがわかった。
【0124】
図6には、対照に対する百分率で表されるNADPHの存在下でラット大動脈に生成されたスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対する、ビヒクル、ブチルコリンエステラーゼ(BuCHE、1000U/L)の存在下および不在下でのフラボン-3-ヘミアジペート(F3HA)、およびDiOHF(10-4M)の効果が示されている。エステラーゼの不在下で、スーパーオキサイド生成に対する影響はないようである。コリンエステラーゼの存在は、フラボン-3-ヘミアジペートの濃度依存阻害効果を示す。これは、ヘミアジペート基がインビトロで除去されて、遊離ヒドロキシル誘導体、3-ヒドロキシフラボンを形成することと一致している。フラボン-3-ヘミアジペート(19)およびエステラーゼの双方を含めることによるスーパーオキサイド生成の抑制は、DiOHF(3',4'-ジヒドロキシフラボノール)の活性に好適に匹敵する。スーパーオキサイドおよび他のROSの濃度の低下は、これらのラジカルの存在によって誘発される心筋損傷の想定される低減に関連づけられた。
【0125】
ラットから単離された内皮の無処理大動脈環におけるビヒクル、または濃度を増加させていったフラボン-3-ヘミアジペート(15)(F3HA、10-8M〜10-4M)の存在下でのCa2+に対する濃度応答曲線を求めた。より低い濃度(10-8M〜10-5M)では、フラボン-3-ヘミアジペートは、大動脈環のCa2+収縮に影響しなかった。より高い試験濃度(10-4M)では、フラボン-3-ヘミアジペートは、恐らくラットの大動脈組織におけるエステラーゼの存在により、ある程度の阻害効果を有する。
【0126】
NADPHの存在下でラット大動脈に生成されたスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対するビヒクル(dH2O)、3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)(DiOHF3HA、10-8M〜10-4M)、およびDiOHF(10-4M)の効果を対照に対する百分率で表した。スーパーオキサイド濃度は、DiOHF3HAの試験濃度範囲全体を通じて一定であったため、DiOHF3HAは、スーパーオキサイド生成に対して効果がなかった。
【0127】
図7には、対照に対する百分率で表されるNADPHの存在下でラット大動脈に生成されたスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対する、ビヒクル、ブチルコリンエステラーゼ(BuCHE、1000U/L)の存在および不在下での3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)(DiOHF3HA、10-6M〜10-4M)の効果が示されている。比較のために、対照に対する百分率で表されるNADPHの存在下でラット大動脈に生成されたスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対してDiOHF(10-4M)を使用した結果も示されている。コリンエステラーゼの存在は、スーパーオキサイドレベルの濃度依存阻害を表していた。
【0128】
ラットから単離された内皮の無処理大動脈環におけるビヒクル、または濃度を増加させていった3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)(DioHFHA、10-8M〜10-4M)の存在下でのCa2+に対する濃度応答曲線。収縮率は、DiOHF3HAで処理する前に観察されたCa2+(3×10-3M)に対する初期応答に対する百分率で表される。DiOHF3HAは、10-4MにおいてわずかなCa2+阻害作用を有するものと思われる。この効果は、恐らく、ラットの大動脈組織におけるエステラーゼの存在によるものである。
【0129】
図8には、ラットから単離された内皮の無処理大動脈環におけるDiOHFと比較した、ビヒクル、またはBuCHEの存在および不在下における3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)(DiOHF3HA、10-4M)の存在下でのCa2+に対する濃度応答曲線が示されている。収縮率は、DiOHF3HAで処理する前に観察されたCa2+(3×10-3M)に対する初期応答に対する百分率で表される。コリンエステラーゼの存在は、DiOHF3HAの阻害効果を顕著に向上させた。
【0130】
図9には、対照に対する百分率で表されるNADPHの存在下でラット大動脈に生成されるスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対する、ビヒクル、ホスファターゼ(1000U/L)の存在下でのフラボン-3-ホスフェート(F3P、10-8M〜10-4M)、およびDiOHF(10-4M)の効果が示されている。フラボン-3-ホスフェートの存在は、スーパーオキサイドのレベルの濃度依存低下を引き起こした。この効果は、B環における3',4'-ジヒドロキシル基の存在がスーパーオキサイドのレベルを低下させるのに決定的であることを示した先の試験と対照的である。
【0131】
ラットから単離された内皮の無処理大動脈環におけるビヒクル、または濃度を増加させていったフラボン-3-ホスフェート(F3P、10-8M〜10-4M)の存在下でのCa2+に対する濃度応答曲線を求めた。フラボン-3-ホスフェートは、より高い濃度においてカルシウム誘発収縮の部分的な阻害を引き起こした。
【0132】
図10には、ラットから単離された内皮の無処理大動脈環におけるビヒクル、またはホスファターゼ(P、1000U/L)の存在および不在下におけるフラボン-3-ホスフェート(F3P、10-8M〜10-4M)の存在下でのCa2+に対する濃度応答曲線が示されている。収縮率は、フラボン-3-ホスフェートで処理する前に観察されたCa2+(3×10-3M)に対する初期応答に対する百分率で表される。ホスファターゼの存在は、フラボン-3-ホスフェートの阻害効果を顕著に向上させた。
【0133】
本発明を以下の非限定的な例によって説明する。
フラボノイド誘導体の合成
3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン
【化29】
3-ヒドロキシフラボン(0.105g、0.442mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.193g、0.933mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(9.80mg、0.0802mmol)を、アジピン酸モノベンジルエステル(0.168g、0.754mmol)をジクロロメタン(10mL)に溶解させた溶液に添加し、混合物を室温で19時間にわたってN2下で攪拌した。水(50μL)を添加し、得られた混合物を10分間攪拌し、次いでジエチルエーテル(10mL)を添加した。混合物を濾過し、濾液を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(トルエン中15〜40%EtOH)で精製して、黄色のゴム質としてのモノベンジルエステル(0.16g、80%)を得た。少量部をEtOAc/軽油から再結晶させて、無色の粉末を得た(融点=74〜76℃)。1H NMR (399.7 MHz, CDCl3) δ 1.60 - 1.75 (m, 4H, CO2CH2CH2); 2.31 (t, J = 6.8 Hz, 2H, CO2CH2); 2.55 (t, J = 6.8 Hz, 2H, CO2CH2); 5.02 (s, 2H, CH2Ph); 7.20 - 7.28, 7.39 - 7.45 (2m, H, PhCH2, H3', 4', 5'); 7.34 (dd, 1H, J5,6 = 8.0 Hz, J6,7 = 7.6 Hz, H6); 7.46 (d, 1H, J7,8 = 8.0 Hz, H8); 7.62 (ddd, 1H, J5,7 = 1.6 Hz, J6,7 = 7.6 Hz, J7,8 = 8.0 Hz, H7); 7.73 - 7.77 (m, 2H, H2', 6'); 8.16 (dd, 1H, J5,7 = 1.6 Hz, H5). 13C NMR (100.5 MHz, CDCl3) δ 25.29 (2C, CO2CH2CH2); 34.62, 34.91 (2C, CO2CH2); 67.30 (1C, CH2Ph); 119.21, 124.68, 126.29, 127.17, 129.29, 129.40, 129.63, 129.75, 131.05, 132.36, 134.72, 135.06, 137.03, 156.71, 157.45 (20C
, Ar); 171.54, 173.27, 174.16 (3C, C=O). 元素分析: 実測値: C, 73.54; H, 5.27; C42H36O8 計算値: C, 73.67; H, 5.30%. HRMS (ESI+) m/z 479.1469, C28H24NaO6 [M + Na]+ 計算値: 479.1471.
【0134】
3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート
【化30】
3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン(312mg、0.7mmol)およびPd(OH)2(49.4mg)をTHF:EtOH(9:1)+0.05%酢酸(15mL)に含めた混合物をH2で5時間処理した。粗生成物を(セライトで)濾過し、濾液を濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(トルエン中10〜25%のEtOAc+1%酢酸)で精製して、淡黄色の固体(0.211g、89%)としてのヘミアジペートを得た。少量部をEtOAc/軽油から再結晶させた(融点=118〜121℃)。1H NMR (399.7 MHz, CDCl3) δ 1.66 - 1.83 (m, 4H, CH2CH2CO2); 2.38 (t, J = 6.8 Hz, 2H, CH2CO2); 2.63 (t, J = 6.8 Hz, 2H, CH2CO2); 7.42 (dd, 1H, J5,6 = 8.0 Hz, J6,7 = 8.0 Hz, H6); 7.47 - 7.53 (m, 3H, H3', 4', 5'); 7.54 (d, 1H, J7,8 = 8.4 Hz, H8); 7.70 (ddd, 1H, J5,7 = 1.6 Hz, J6,7 = 8.0 Hz, J7,8 = 8.4 Hz, H7); 7.81 - 7.86 (m, 2H, H2', 6'); 8.24 (dd, 1H, J5,6 = 8.0 Hz, J5,7 = 1.6 Hz, H5). 13C NMR (100.5 MHz, CDCl3) δ 25.01, 25.20 (2C, CO2CH2CH2); 34.57 (2C, CO2CH2); 119.20, 124.66, 126.33, 127.21, 129.41, 129.76, 131.04, 132.40, 134.70, 135.10, 156.74, 157.60 (14C, Ar); 171.52, 173.38, 179.36 (3C, C=O). 元素分析: 実測値: C, 68.89; H, 4.91; C21H18O6 計算値: C, 68.85; H, 4.95%. HRMS (ESI+) m/z 389.1000, C21H18NaO6 [M + Na]+ 計算値: 389.1001].
【0135】
4'-(ベンジルオキシ)-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン
【化31】
二塩化エチレン(EDC)(843mg、4.40mmol)を、4'-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシフラボン(1.00g、2.90mmol)、アジピン酸モノベンジルエステル(1.30g、5.50mmol)およびDMAP(354mg、2.89mmol)をジクロロメタン(110mL)に溶解させた溶液に添加し、混合物を一晩攪拌した。次いで、反応混合物を濃縮し、残渣を酢酸エチルに溶解した。有機相を水(×3)、1MのHCl(×3)、飽和NaHCO3(×3)、塩水(×3)で洗浄し、(MgSO4で)乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(50%EtOAc/石油)によって精製して、褐色の油としてのベンジルエステルを得、それをEtOAc/石油から再結晶させて、無色の固体(900mg、55%)を得た(融点93℃)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 1.77-1.83 (m, 4H, CH2CH2), 2.42 (t, 2H, J = 7.5 Hz, CH2CO), 2.67 (t, 2H, J = 6.5 Hz, CH2CO), 5.13 (s, 2H, CH2Ph), 5.15 (s, 2H, CH2Ph), 7.09 (d, 1H, J7,8 = 8.5 Hz, H8), 7.35 (app. d, 2H, J = 8.5 Hz, H2',6'), 7.40-7.46 (m, 11H, 2 × Ph, H6), 7.69 (ddd, 1H, J5,7 = 1.5, J6,7 = 7.0, J7,8 = 8.5 Hz, H7), 7.85 (app. d, 2H, J = 8.5 Hz, H3',5'), 8.25 (d, 1H, J5,6 = 8 Hz, H5); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 24.2 (× 2), 33.6, 33.8 (4C, CH2), 66.2, 70.1 (2C, CH2Ph), 115.0, 117.9, 122.4, 123.5, 125.0, 126.0, 127.4, 128.1, 128.2, 128.5, 128.7, 130.0, 133.0, 133.7, 135.9, 136.2, 155.5, 156.1, 161.1 (Ar), 170.4, 172.0, 173.0 (3C,
C=O); IR (薄膜) 2937, 1760, 1730, 1646, 1602, 1507, 1468, 899 cm-1; 元素分析: 実測値 C, 74.67; H, 5.29, C35H30O7 計算値: C, 74.72; H, 5.37%.
【0136】
4'-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート
【化32】
4'-(ベンジルオキシ)-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン(400mg、0.711mmol)およびPd(OH)2(56mg)をTHF(10mL)、エタノール(1.2mL)およびAcOH(100μL)に含めた混合物を水素(50psi)で18時間処理した。次いで、反応混合物を(セライトで)濾過し、パッドをTHFで洗浄した。濾液を濃縮し、固体の残渣をフラッシュクロマトグラフィー(70%のTHF/トルエン+1%のAcOH)で精製し、得られた固体をTHF/石油から再結晶させて、無色の固体としての酸(150mg、55%)を得た(融点177〜180℃)。1H NMR (500 MHz, d6-DMSO) δ 1.56-1.66 (m, 4H, CH2CH2), 2.25 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.64 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 6.96 (app. d, 2H, J = 8.5 Hz, H2',6'), 7.52 (t, 1H, J6,7 = J7,8 = 7.5 Hz, H7), 7.80 (app. d, 2H, J = 7.5 Hz, H3',5'), 7.78 (m, 1H, H8), 7.85 (t, 1H, J5,6 = J6,7 = 7.5 Hz, H6), 8.06 (d, 1H, J5,6 = 8.0 Hz, H5); 13C NMR (125 MHz, d6-DMSO) δ 23.8, 23.9, 32.9, 33.3 (4C, CH2), 115.9, 118.5, 119.7, 122.7, 125.0, 125.6, 130.1, 131.9, 134.5, 154.9, 155.8 160.6 (Ar), 170.4 170.9, 174.3 (3C, C=O); IR 3257, 2944, 2869, 1765, 1706, 1595, 854 cm-1; HRMS (ESI+) m/z 383.1123, C21H19O7 [M + H]+ 計算値: 383.1131.
【0137】
3',4'-ジベンジルオキシ-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン
【化33】
3',4'-ジベンジルオキシフラボノール(1.21g、2.68mmol)を乾燥ジクロロメタン(100mL)に溶解させた攪拌溶液にアジピン酸モノベンジルエステル(1.91g、5.04mmol)を添加した後、塩酸EDC(0.764g、3.98mmol)およびDMPA(0.324g、2.65mmol)を添加し、得られた混合物を室温で3時間にわたってN2下で攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、酢酸エチル(100mL)に再懸濁させた。次いで、懸濁物を水(3×50mL)、1MのHCl(3×50mL)、飽和NaHCO3(3×50mL)および塩水(3×50mL)で洗浄した。有機抽出物を(MgSO4で)乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮し、黄色の残渣をEtOAc/軽油から再結晶させて、線毛質の黄色固体としてのベンジルエステル(1.58g、88%)を得た(融点=84〜85℃)。1H NMR (399.8 MHz, CDCl3); δ 1.70 - 1.80 (m, 4H, CH2CH2); 2.38 (t, 2H, J = 6.8 Hz, CH2CO); 2.55 (m, 2H, CH2CO); 5.10 (s, 2H, CH2Ph); 5.20 (s, 2H, CH2Ph); 5.24 (s, 2H, CH2Ph); 7.01 (d, 1H, J7,8 = 8.4 Hz, H8); 7.26 - 7.49 (m, 19H, Ar, H6, 2', 5', 6'); 7.62 (ddd, 1H, J5,7 = 1.2 Hz, J6,7 = 7.2 Hz, J7,8 = 8.4 Hz, H7); 8.22 (dd, 1H, J5,6 = 7.6 Hz, J5,7 = 1.2 Hz, H5). 13C NMR (100.5 MHz, CDCl3) δ 25.33 (2C, CH2CH2CO2); 34.59, 34.93 (2C, CH2CO2); 67.30, 71.91, 72.59 (2C, CH2Ph); 114.77, 115.84, 119.06, 123.76, 123.84, 124.60, 126.19, 127.12, 128.25, 128.36, 129.15, 129.29, 129.64, 129.73, 130.12, 134.23, 134.89, 137.
05, 137.54, 137.85, 149.61, 152.64, 156.53, 157.00 (32C, Ar); 171.49, 173.12, 174.18 3C, C=O). 元素分析: 実測値: C, 75.39; H, 5.47; C42H36O8 計算値: C, 75.43; H, 5.43%. HRMS (ESI+) m/z 691.2303, C42H36NaO8 [M + Na]+ 計算値: 691.2308.
【0138】
3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート
【化34】
3',4'-ジベンジルオキシ-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン(2.12g、3.16mmol)およびPd(OH)2(107mg)を、0.05%酢酸を含有するTHF:EtOH(9:1)(50.0mL)に含めた混合物を高圧下で5時間にわたってH2で処理した。反応混合物を(セライトで)濾過し、濃縮して、濃緑色の固体を得た。緑色の残渣をフラッシュクロマトグラフィー(30〜90%のTHF/トルエン+1%の酢酸)で精製した後、THF/軽油から再結晶させて、淡褐色の固体としての純粋のヘミアジペート(0.70g、56%)を得た(融点=194〜197℃)。1H NMR (399.8 MHz, CDCl3); δ 1.44 - 1.62 (m, 4H, CH2CH2); 2.10 (t, 2H, J = 6.8 Hz, CH2CO); 2.44 (t, 2H, J = 6.8 Hz, CH2CO); 6.73 (d, 1H, J5',6' = 8.4 Hz, H5'); 7.09 (dd, 1H, J2',6' = 2.0 Hz, J5',6' = 8.4 Hz, H6'); 7.16 - 7.22 (m, 2H, H6, 2'); 7.32 (d, 1H, J7,8 = 8.0 Hz, H8); 7.48 (ddd, 1H, J5,7 = 1.6 Hz, J6,7 = 6.8 Hz, J7,8 = 8.0 Hz, H7); 7.94 (dd, 1H, J5,6 = 8.4 Hz, J5,7 = 1.6 Hz, H5). 13C NMR (100.5 MHz, d6-DMSO) δ 25.30, 25.62 (2C, CH2CH2CO2); 34.43, 34.81 (2C, CH2CO2); 116.59, 117.42, 119.98, 121.41, 122.06, 124.13, 126.51, 127.07, 133.32, 136.04, 146.97, 150.65, 156.35, 157.27 (14C, Ar); 171.97, 173.46, 179.95 (3C, C=O). 元素分析: 実測値: C, 68.89; H, 4.91; C21H18O6 計算値: C, 68.85; H, 4.95 %. HRMS (ESI+) m
/z 389.1000, C21H18NaO6 [M + Na]+ 計算値: 389.1001.
【0139】
3,4'-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン
【化35】
二塩化エチレン(1.13g、5.91mmol)を、3,4'-ジヒドロキシフラボン(500mg、1.97mmol)、アジピン酸モノベンジルエステル(1.86g、7.88mmol)およびDMAP(481mg、3.94mmol)をジクロロメタン(30mL)に溶解させた溶液に添加し、混合物を室温で50分間攪拌した。次いで、反応混合物を濃縮し、残渣を酢酸エチルに溶解した。有機相を水(×3)、1MのHCl(×3)、飽和NaHCO3(×3)、塩水(×3)で洗浄し、(MgSO4で)乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(50%EtOAc/石油)によって精製して、無色の油としてのジエステルを得、それをEtOAc/石油から結晶化させて、無色の油(850mg、62%)を得た(融点79℃)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 1.76-1.82 (m, 8H, 2 × CH2CH2), 2.42 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.45 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.62 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.65 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 5.12 (s, 2H, CH2Ph), 5.14 (s, 2H, CH2Ph), 7.25 (d, 2H, J = 8.5 Hz, H2',6'), 7.31-7.37 (m, 10H, 2 × Ph), 7.44 (t, 1H, J5,6 = J6,7 = 8.5 Hz, H6), 7.55 (d, 1H, J7,8 = 8.5 Hz, H8), 7.72 (td, 1H, J6,7 = J7,8 = 8.5, J7,5 = 1.5 Hz, H7), 7.89 (d, 2H, J = 8.5 Hz, H3',5'), 8.25 (dd, 1H, J5,6 = 8.5, J5,7 = 1.5 Hz, H8); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 24.16, 24.17, 24.21, 33.5, 33.8, 33.9, 66.1, 66.3 (CH2), 118.0, 121.9, 123.5, 125.2, 126.1, 127.4, 128.1, 128.18, 128.22, 128.49
, 128.53, 129.7, 133.7, 134.0, 135.9, 136.0, 152.8, 155.4, 155.5 (Ar), 170.3, 171.2, 172.1, 173.97, 173.0 (5C, C=O); IR 2943, 1765, 1732, 1652, 1501, 1465, 902 cm-1; 元素分析: 実測値 C, 71.30; H, 5.56, C41H38O10 計算値: C, 71.29; H, 5.55%.
【0140】
フラボン-3,4'-ビス(ヘミアジペート)
【化36】
3,4'-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン(435mg、0.629mmol)およびPd(OH)2(50mg)をEtOAc(5mL)に含めた混合物を水素で2時間処理して、灰色の沈殿を得た。THFを添加して、沈殿を溶解し、混合物を(セライトで)濾過した。パッドをTHFで洗浄し、濾液を濃縮した。固体の残渣をTHF/石油から再結晶させて、無色の固体としてのビス(ヘミアジペート)(183mg、50%)を得た(融点133℃)。1H NMR (500 MHz, d6-DMSO) δ 1.55-1.70 (m, 8H, CH2CH2), 2.24 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.27 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.63 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.64 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 7.37 (app. d, 2H, J = 9.0 Hz, H3',5'), 7.55 (dd, 1H, J5,6 = 8.5, J6,7 = 7.5, Hz, H6), 7.80 (d, 1H, J7,8 = 8.5 Hz, H8), 7.88 (ddd, 1H, J6,7 = 7.5, J7,8 = 8.5, J5,7 = 1.5 Hz, H7), 7.96 (app. d, 2H, J = 9.0 Hz, H2',6'), 8.08 (dd, 1H, J5,6 = 8.5, J5,7 = 1.5 Hz, H5); 13C NMR (125 MHz, d6-DMSO) δ 23.77, 23.82, 32.6, 33.2, 33.3, 44.3 (CH2), 118.7, 122.5, 122.6, 122.7, 125.1, 126.8, 129.7, 132.9, 134.8, 152.7, 154.9, 155.1 (Ar), 170.4, 171.1, 171.4, 174.3, 174.3 (5C, C=O); IR 3059, 2940, 2873, 1768, 1706, 1504, 759 cm-1; HRMS (ESI-) m/z 509.1441, C27H25O10 [M - H]- 計算値: 509.1442.
【0141】
3,7-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン
【化37】
二塩化エチレン(EDC)(517mg、2.7mmol)を、3,7-ジヒドロキシフラボン(250mg、0.983mmol)、アジピン酸モノベンジルエステル(921mg、3.90mmol)およびDMAP(220mg、1.80mmol)をジクロロメタン(25mL)に溶解させた溶液に添加し、混合物を室温で1時間攪拌した。次いで、反応混合物を濃縮し、残渣を酢酸エチルに溶解した。有機相を水(×2)、1MのHCl(×2)、飽和NaHCO3(×2)、塩水(×2)で洗浄し、(MgSO4で)乾燥し、濃縮した。残渣を、50%EtOAc/石油で溶出するシリカのパッドで濾過して固体を得、それをEtOAc/石油から再結晶させて、無色の固体としてのジエステル(565mg、91%)を得た(融点58℃)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 1.74-1.82 (m, 8H, CH2CH2 × 2), 2.39 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.45 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.62-2.64 (m, 4H, CH2CO × 2), 7.15-7.17 (m, 2H, H2', 6'), 7.30-7.36 (m, 10H, 2 × Ph), 7.39 (d, 1H, J6,8 = 1.6 Hz, H8), 7.48-7.51 (m, 2H, H3', 5'), 7.81-7.83 (m, 2H, 4' H6) 8.25 (d, 1H, J5,6 = 9, H5); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 24.1, 24.20, 24.21, 33.5, 33.80, 33.82, 34.0, 44.7, 66.2, 66.3, (CH2), 111.0, 119.5, 121.5, 172.5, 128.19, 128.22, 128.3, 128.5, 128.6, 128.7, 129.8, 131.3, 133.7, 135.9, 136.0, 154.8, 156.1, 156.6 (Ar), 170.3, 170.8, 171.5, 172.96, 173.0 (5C, C=O) IR 3071, 3035, 2944, 2876, 1760, 1726, 1615, 848 cm-1; 元素分析:
実測値 C, 71.34; H, 5.60%, C41H38O10 計算値: C, 71.29; H, 5.55%.
【0142】
3,7-ジヒドロキシフラボン-3,7-ビス(ヘミアジペート)
【化38】
3,7-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン(565mg、0.818mmol)およびPd(OH)2(65mg)をEtOAc(10mL)に含めた混合物を水素で3時間処理した。灰色の沈殿が形成され、それが溶解するまでTHFを添加した。混合物を(セライトで)濾過し、パッドをTHFで洗浄し、濾液を濃縮した。固体の残渣をTHF/石油から再結晶させて、無色の固体としての二酸(311mg、76%)を得た(融点128℃)。1H NMR (400 MHz, d6-DMSO) δ 1.55-1.74 (m, 8H, CH2CH2 × 2), 2.23 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.28 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.61-2.68 (m, 4H, CH2CO × 2), 7.34 (m, 1H, H4'), 7.58-7.61 (m, 3H, H6, H2', 6'), 7.68 (d, 1H, J6,8 = 1.6 Hz, H8), 7.87-7.89 (m, 2H, H3', 5'), 8.12 (d, 1H, J5,6 = 8.8, H5); 13C NMR (100 MHz, d6-DMSO) δ 23.7, 23.76, 23.78, 23.9, 32.9, 33.19, 33.24, 33.28 (CH2), 111.9, 120.5, 120.6, 126.6, 128.1, 129.0, 129.2, 131.7, 133.0, 154.9, 155.6, 155.9 (Ar), 170.4, 170.6, 171.1, 174.2, 174.3 (5C, C=O); IR 3035, 2952, 2920, 1762, 1708, 1112 cm-1; 元素分析: 実測値 C, 63.64; H, 5.14%, C27H26O10 計算値: C, 63.53; H, 5.13%.
【0143】
リン酸フラボノールの調製
3-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)フラボン
【化39】
ジベンジルジイソプロピルホスホラミダイト(12.5mL、38.0mmol)および1H-テトラゾール(74.0mL、31.7mmol)を、3-ヒドロキシフラボン(3.00g、12.6mmol)を乾燥ジクロロメタン(150mL)に溶解させた溶液に添加した。反応混合物を室温で2時間にわたってN2下で攪拌した。次いで、混合物を-78度まで冷却し、m-CPBA(8.72g、50.6mmol)を添加した。混合物を室温に戻し、さらに45分間攪拌した。反応混合物を0.25MのNa2S2O4(3×100mL)、飽和NaHCO3(3×100mL)および水(2×100mL)で洗浄した。有機抽出物を(MgSO4で)乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、粗製の白色固体を得た。その粗製物質をフラッシュクロマトグラフィー(トルエン中20〜50%EtOAc)によって精製した後、EtOAc/軽油で結晶化させて、白色の線毛質の固体としての保護リン酸塩(5.28g、84%)を得た(融点=85〜88℃)。1H NMR (399.7 MHz, CDCl3); δ 5.09 - 5.17 (m, 4H, CH2Ph); 7.22 - 7.30, 7.38 - 7.47 (2 × m, 14H, Ar, H3', 4', 5',6'); 7.51 (d, J7,8 = 8.5 Hz, H8); 7.69 (ddd, J5,7 = 1.5 Hz, J6,7 = 7.2 Hz, J7,8 = 8.5 Hz, 1H, H7); 7.93 - 7.96 (m, 2H, H2',6'); 8.29 (dd, J5,6 = 7.5 Hz, J5,7 = 1.5 Hz, 1H, H5). 13C NMR (100.5 MHz, CDCl3); δ 78.13 (2C, CH2Ph); 119.13, 124.86, 126.23, 127.22, 128.90, 129.36, 129.48, 129.62, 130.06, 131.03, 132.29, 135.06, 157.03, 157.10 (25C, Ar); 136.89 (1C, JC,P = 8.0 Hz, C-O-ホスフェート); 173.87 (1C, C=O). 31P NMR (161.8 MHz, CDCl3); δ -7.45 (s, P=O). 元素分析: 実測値: C, 69.81; H, 4.60; C29H23O6P 計算値: C, 69.88; H, 4.65%. HRMS (ESI+) m/z 521.1126, C29H23NaO6P [M + Na]+ 計算値: 521.1130].
【0144】
3-ヒドロキシフラボン-3-リン酸二ナトリウム塩
【化40】
3-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)フラボン(2.05g、4.09mmol)および炭素上パラジウム(10%、0.25g)をEtOH:水(4:1、250mL)に溶解させた溶液を大気圧で3.5時間にわたってH2で処理した。反応混合物を(セライトで)濾過し、濾液をNaOH(0.50g/水100mL)で処理した。水性混合物を減圧下で濃縮し、次いで水/アセトンから結晶化させて、淡黄色の結晶としてのリン酸塩(1.03g、収率87%)を得た。1H NMR (499.7 MHz, D2O) δ 7.33 (dd, 1H, J5,6 = 8.0 Hz, J5,7 = 1.2 Hz, H6); 7.40 - 7.46 (m, 3H, H3', 4', 5'); 7.52 (d, 1H, J7,8 = 8.5 Hz, H8); 7.64 (ddd, 1H, J5,7 = 1.2 Hz, J6,7 = 7.5 Hz, J7,8 = 8.5 Hz, H7); 7.97 (dd, 1H, J5,6 = 8.0 Hz, J5,7 = 1.2 Hz, H5); 8.10 (m, 2H, H2', 6'). 13C NMR (100.5 MHz, D2O) δ 118.29, 122.92, 124.97, 125.06, 128.50, 129.15, 130.92, 131.33, 134.22, 155.06, 156.68 (13C, Ar); 136.11 (1C, JC, P = 6.8 Hz, C-O-P); 177.15 (1C, C=O). 31P NMR (161.8 MHz, D2O) δ 2.98 (s, P). 元素分析: 実測値: C, 49.68; H, 2.51; C15H11Na2O6P 計算値: C, 49.74; H, 2.50%.
【0145】
4'-(ベンジルオキシ)-3-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)フラボン
【化41】
1H-テトラゾール(483mg、6.89mmol)を、4'-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシフラボン(1.00g、2.72mmol)、ジベンジルN,N-ジイソプロピルホスホラミダイト(1.5mL、1.6g、4.4mmol)のジクロロメタン(30mL)混合物に添加し、反応物を室温で2時間攪拌した。さらなるジベンジルN,N-ジイソプロピルホスホラミダイト(1.0ml、1.1g、1.5mmol)を添加し、反応物をさらに1時間攪拌した。次いで、反応混合物を-78℃まで冷却し、m-CPBA(3.00g、12.1mmol、70%w/w)を添加した。次いで、反応物を室温まで暖め、45分間攪拌した。有機層を0.25MのNa2S2O4(×3)、飽和NaHCO3(×3)、塩水(×3)で洗浄し、(MgSO4で)乾燥させ、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(50%EtOAc/石油)によって精製して、黄色の固体を得、それをEtOAc/石油から再結晶させて、無色の固体としてのリン酸塩(1.01g、58%)を得た(融点101℃)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 5.02 (s, 2H, CH2Ph), 5.16 (s, 2H, CH2Ph), 5.17 (s, 2H, CH2Ph), 6.97 (app. d, 2H, J = 8.8 Hz, H3',5'), 7.29-7.36 (m, 15H, 3 × Ph), 7.41 (t, 1H, J5,6 = J6,7 = 8.0 Hz, H6), 7.51 (d, J7,8 = 8.5 Hz, H8), 7.68 (dd, 1H, J6,7 = 8.0, J7,8 = 8.5 Hz, H7), 7.96 (app. d, 2H, J = 8.8, H2',6'), 8.30 (dd, 1H, J7,8 = 8.5, J6,8 =1.5 Hz, H8); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 69.9, 70.0 (CH2), 144.7, 117.9, 122.3, 123.7, 125.0, 126.1, 127.4, 127.8, 128.2, 128.4, 128.7, 130.7, 133.8, 135.8, 135.9, 136.1, 155.2, 155.7, 161.0 (Ar), 172.6 (1C, C=O); 31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ -5.3 (s, P); IR 3063, 3031, 1647, 1601, 1506, 983 cm-1; 元素分析: 実測値 C, 72.60; H, 5.05%, C36H29O7P 計算値: C, 71.52; H, 4.83%.
【0146】
フラボン-3-リン酸二ナトリウム塩
【化42】
4'-(ベンジルオキシ)-3-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)フラボン(1.00g、1.65mmol)およびPd(OH)2(120mg)をTHF(10mL)および水(15mL)に含めた混合物を水素で3日間処理した。混合物を(セライトで)濾過し、パッドをTHFおよび水で洗浄し、濾液を濃縮した。固体の残渣をTHF(20mL)および水(10mL)に溶解し、トリエチルアミン(600μL、4.3mmol)を添加し、室温で30分間攪拌した。混合物を濃縮し、残渣を水に溶解した。不溶性物質を濾過によって除去し、溶液をイオン交換カラムに通した。溶離液を濃縮して、固体を得、それをアセトン/水から再結晶させて、褐色の固体としてのリン酸塩(226mg、36%)を得た(融点182〜184℃)。1H NMR (500 MHz, D2O) δ 7.07 (app. d, 2H, J = 8.5 Hz, H3',5'), 7.62 (t, 1H, J5,6 = J6,7 = 7.5 Hz, H6), 7.72 (d, J7,8 = 8.5 Hz, H8), 7.92 (t, 1H, J6,7 = J7,8 = 7.5 H7), 8.18 (d, 1H, J5,6 = 7.5 Hz, H5) 8.19 (app. d, 2H, J = 8.5, H2',6'); 13C NMR (100 MHz, D2O) δ 118.4, 122.5, 122.6, 124.9, 125.3, 131.2, 134.4, 155.0, 157.1, 157.2, 158.5 (Ar), 176.3 (1C, C=O); 31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ 0.60 (s, P); IR 3281, 1597, 1579, 1542, 1393, 903 cm-1; HRMS (ESI-) m/z 333.0160, C15H10O7P [M + H]- 計算値: 333.0159.
【0147】
塩化4'-(ベンジルオキシ)-3-(トリメチルアンモニウムイルプロピルカルボニルオキシ)フラボン
【化43】
塩化カルボキシプロピルトリメチルアンモニウム(0.5g、2.7mmol)と塩化チオニル(2mL、3.26g、27mmol)の混合物を室温で一晩攪拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をニトロベンゼン(2mL)に溶解し、4'-ベンジルオキシフラボノール(344mg、1.00mmol)を添加した。溶液を室温で30分間攪拌し、次いで65℃で5時間攪拌した。ニトロベンゼンを減圧下(80℃水浴)で除去し、残渣をシリカのプラグによる濾過(EtOAc:MeOH:H2O(7:2:1))によって精製した。残渣をTHFで洗浄し、エタノール/軽油から再結晶させて、黄色の粉末(30mg)を得た。1H NMR (399.7 MHz, CDCl3) δ 2.01-2.13 (2H, m, CH2), 2.78 (2H, d, J 6.8 Hz, CH2), 3.09 (9H, s, NMe3), 3.25-3.35 (2H, m, CH2N), 5.21 (2H, m, CH2Ph), 7.24 (2H, app. d, J 9.2 Hz, H2',6'), 7.33-7.49 (m, 5H, Ph), 7.54 (1H, dd, J 8.0, 8.0 Hz, H6), 7.81 (1H, d, J7,8 8.4 Hz, H8), 7.88 (1H, d, J 8.0, 8.4 Hz, H7), 7.92 (2H, app. d, J 9.2 Hz, H3',5'), 8.07 (1H, d, J5,6 8.0 Hz, H5).
【0148】
塩化4'-(ヒドロキシ)-3-(トリメチルアンモニウムイルプロピルカルボニルオキシ)フラボン
【化44】
フラボン(30mg)およびPd/C(5%、5mg)をEtOH(5mL)に含めた混合物を水素環境下で2時間攪拌した。混合物を濾過し、溶媒を蒸発させて、黄色の固体を得た。
【0149】
フラボノイド誘導体の血管弛緩および抗酸化活性
Ca2+誘発収縮に対するフラボノイド誘導体の効果
細胞外Ca2+の流入に対する応答に対するフラボノイドの効果を測定するために、Ca2+を含まない高K+溶液(60mM、KPSS)においてフラボノイドの存在下でのCa2+の外因性導入に対する収縮応答を調べた。Ca2+を含まない通常のPSSにおいて1gの静止張力で最初に大動脈環を45分間にわたって平衡化した。次いで、浴媒体(bath medium)をCa2+を含まないKPSSで45分間にわたって置換して、Ca2+(3×10-3M)に対する基準収縮率を測定した。Ca2+を含まないPSSとの30分間の再平衡期間の後に、ある範囲の濃度(10-8〜10-4M)のビヒクル、3',4'-ジヒドロキシフラボノール、3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート、3',4'-ジヒドロキシ-3-ヘミアジペート、3-ヒドロキシフラボン-3-ホスフェートの存在下で、KPSSにおけるCa2+(10-5〜3×10-3M)に対する累積的な収縮応答を測定した。Ca2+に対する応答を調べる前に、フラボノイドに対して20分間のインキュベーション期間を与えた。
【0150】
フラボノイド誘導体による弛緩
内皮結合性の試験に続いて、環を繰り返し洗浄し、30分間にわたって再平衡させてから、PE(10-8〜2×10-7M)および9,11-ジデオキシ-9α、11α-エポキシメタノ-プロスタグランジンF2α(U46619、10-9〜10-8M)を添加して、40〜60%のKPSS誘発収縮率の範囲で活性力を生成させた。PEおよびU46619の濃度を調整することによってそれぞれのグループ間の前収縮のレベルを一致させた。3',4'-ジヒドロキシフラボノール、3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート、3',4'-ジヒドロキシ-3-ヘミアジペート、3-ヒドロキシフラボン-3-ホスフェートについて、10-8〜10-4Mの範囲の累積的濃度応答曲線を作成した。
【0151】
ヘミアジペート誘導体についてはエステラーゼ、ブチルコリンエステラーゼ(BuCHE、1000U/L)の存在下で、フォスフェート塩誘導体の場合はホスファターゼ(1000U/L)の存在下で実験を行った。
【0152】
インビトロ検定におけるスーパーオキサイドレベルに対するフラボノイド誘導体の効果
ラットから単離した大動脈断片におけるスーパーオキサイド大動脈生成を、ルシゲニン化学発光を用いて測定した。大動脈環を上述のように調製し、氷冷クレブス-(N-[2-ヒドロキシエチル]ピペラジン-N'-[2-エタンスルホン酸](HEPES緩衝剤)(組成(mM);NaCl:99.0、KCl:4.7、KH2PO4:1.0、MgSO4・7H2O:1.2、D-グルコース:11.0、NaHCO3:25.0、CaCl2・2H2O:2.5、Na-HEPES:20.0)に仕込んだ。ジエチルチオカルバミド酸(DETCA、10-3M)を含有するクレブス-HEPES緩衝剤中で大動脈環を37℃、pH7.4で45分間予めインキュベーションして、スーパーオキサイドジスムターゼ、およびNADPHオキシダーゼに対する基質としてのフォスフェートβ-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADPH、10-4M)、および正の対照としての3',4'-ジヒドロキシフラボノール(10-4M)、ビヒクル、3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート、3',4'-ジヒドロキシ-3-ヘミアジペート、3-ヒドロキシフラボン-3-ホスフェート(10-8〜10-4M)を不活性化した。1ウェル当たり0.3mlのクレブス-HEPES緩衝剤をルシゲニン(5×10-5M)およびビヒクルまたはフラボノイド(10-8〜10-4M)とともに含む96ウェルのオプチプレートにおいて12サイクルにわたってバックグラウンドフォトン放射量を測定した。各サイクルを1分毎に計数した。バックグラウンド読取りが完了した後に、インキュベーションした大動脈環を適切なウェルに移し、フォトン放射量を上記のように再度計数した。次いで、組織を65℃のオーブンに48時間にわたって仕込んで、スーパーオキサイド生成を乾燥組織の重量に対して正規化することを可能にした。
【0153】
エステラーゼの存在または不在下でのインビトロ検定におけるスーパーオキサイドレベルに対するフラボノイド誘導体の効果
NADPHの存在下でラットの単離大動脈断片に生成されたスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対するビヒクル、3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)(DiOHF3HA、10-8M〜10-4M)、およびブチリルコリンエステラーゼ(BuCHE、100、300および1000U/L)の存在および不在下でのDiOHF(10-4M)の効果を対照に対する百分率で表した。用いた方法は、ブチリルコリンエステラーゼを添加したこと以外は上述の通りであった。
【0154】
ホスファターゼの存在または不在下でのインビトロ検定におけるスーパーオキサイドレベルに対するフラボノイド誘導体の効果
対照に対する百分率で表されるNADPHの存在下でラット大動脈に生成されたスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対するビヒクル、ホスファターゼ(1000U/L)の存在または不在下での3-ヒドロキシフラボン-3-ホスフェート(10-8M〜10-4M)を3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペートについて上述のように測定した。ホスファターゼの不在下での3-ヒドロキシフラボン-3-ホスフェートを使用して、スーパーオキサイド陰イオン生成に対する測定可能な効果を観察した。これは、単離されたラット組織における天然ホスファターゼの存在によって生じるものと考えられた。
【0155】
ラットの血管機能に対するフラボノイド誘導体の効果についてのインビボ試験
3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(15)の水溶液の単位投与物を、麻酔下の雄のSprague Dawleyラットのグループに静脈内投与し、一定時間にわたって血圧を監視した。
【0156】
フラボノイド誘導体によって引き起こされたインビボ血管弛緩を示す、ラットの血圧の有意な低下が観察された。水溶液を第2のグループのラットに投与したときは、効果が観察されなかった。
【0157】
ラットの血圧の明確な低下をもたらした他の合成フラボノイド誘導体の水溶液を用いて実験を繰り返した。
【0158】
活性および薬物動態についてのスクリーニング
ラット大動脈の調製
ラットの下行胸部大動脈を迅速に切開し、クレブス-重炭酸塩溶液に入れた。表面結合組織、および大動脈を囲む脂肪を除去し、大動脈を2〜3mmの長さの断片に切断し、有機浴に配置した。
【0159】
AChおよびSNP弛緩に対するフラボノイドの効果
洗浄、および30分間の再平衡の後に、大動脈環をPEおよびU46619で準最大に前収縮させ、それを用いて、KPSS誘発最大収縮の45〜60%の活性張力を生成させた。フラボノイド、フラボノール、フラボン-3-ヘミアジペート(F3HA)、3',4'-ジヒドロキシフラボン、3',4'-ジヒドロキシフラボノール、3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(DiOHF3HA)およびフラボン-3-ホスフェート(F3P)の血管弛緩応答に対する効果を検討するときに、環を準最大に前収縮させる前に化合物の1つとともに20分間インキュベーションし、その後ACh(100nM〜10μM)またはSNP(10pM〜1μM)に対する累積濃度応答曲線を作成した。F3P(1000U/L)を使用した実験において、いくつかの実験では、ホスファターゼを使用して、フォスフェート塩を開裂させた。ブチリルコリンエステラーゼ(BuCHE、1000U/L)の存在および不在下でいくつかの実験を実施して、DiOHF3HAおよびF3HAにおけるアジペートを開裂させた。
【0160】
PE誘発収縮に対するフラボノールおよびフラボンの効果
環をある範囲の濃度(10-7〜10-4M)のDiOHF3HAまたはビヒクル(0.1%ジメチルスルホキシド、DMSO)とともに20分間インキュベーションした。次いで、内皮の無処理(EI)大動脈環におけるPE(10-9〜10-5M)に対する濃度応答曲線を作成した。BuCHE(1000U/L)の存在および不在下で実験を実施して、DiOHF3HAにおけるアジペートを開裂させた。
【0161】
Ca2+誘発収縮に対するフラボノイドの効果
細胞外Ca2+の流入に対する応答に対するフラボノイドの効果を測定するために、Ca2+を含まない高K+溶液(60mM、K+-PSS)においてフラボノイドの存在下でのCa2+の外因性導入に対する収縮応答を調べた。Ca2+を含まないPSSにおいて1gの静止張力で最初に大動脈環を45分間にわたって平衡化した。次いで、浴媒体をCa2+を含まないKPSSで45分間にわたって置換して、添加Ca2+(3mM)に対する基準収縮率を測定した。Ca2+を含まないPSSとの30分間の再平衡期間の後に、ビヒクル(0.1%DMSO)、あるいはある範囲の濃度の(10-7〜10-4M)の3'-ヒドロキシフラボノール、F3HA、DiOHF3HAまたはE3Pの存在下で、K+PSSにおけるCa2+(10-5〜3×10-3M)に対する累積的な収縮応答を測定した。Ca2+に対する応答を調べる前に、フラボノイドに対して20分間のインキュベーション期間を与えた。実験をBuCHE(1000U/L)の存在および不在下で実施して、F3HAおよびDiOHF3HAにおけるアジペートを開裂させた。F3Pを使用した実験において、いくつかの実験ではホスファターゼ(1000U/L)を使用して、フォスフェート塩を開裂させた。
【0162】
フラボノイドによる弛緩
内皮結合性の試験に続いて、環を繰り返し洗浄し、30分間にわたって再平衡させてから、PE(10-8〜2×10-7M)および9,11-ジデオキシ-9α、11α-エポキシメタノ-プロスタグランジンF2α(U46619、10-9〜10-8M)を添加して、40〜60%のKPSS誘発収縮率の範囲で活性力(active force)を生成させた。ビヒクル、3'-ヒドロキシフラボノール、F3HA、DiOHF3HA、F3Pについて、10-7〜10-4Mの範囲の累積的濃度応答曲線を作成した。実験を1000U/LのBuCHEの存在および不在下で実施して、F3HAおよびDiOHF3HAにおけるアジペートを開裂させた。F3Pを使用した実験において、いくつかの実験では1000U/Lのホスファターゼを使用して、フォスフェート塩を開裂させた。
【0163】
酸化応力の存在下でのAChに対する血管弛緩に対するフラボノールおよびフラボンの効果
AChに対する対照の累積的弛緩応答を、ピロガロール(2×10-5M)で処理された内皮の無処理大動脈環から得られた応答と比較した。ピロガロール(2×10-5M)に接触されたラット単離大動脈環におけるAChに対する応答に対するビヒクル(0.1%DMSO)、ホスファターゼ(1000U/L)またはF3P(10-6〜10-4M)の効果も測定した。大動脈環がPEおよびU44619による収縮の安定したレベルに達し、KPSS誘発張力の50から70%のレベルになったときに、ピロガロールを添加し、AChに対する累積的濃度応答曲線を測定する前に10分間おいた。F3Pを使用したいくつかの実験において、1000U/Lのホスファターゼを使用して、フォスフェート塩を開裂させた。
【0164】
麻酔下のラットにおけるDiOHF3HAおよびF3Pの効果
雄のSprague-Dawleyラット(250〜350g)をペントバルビトンナトリウム(60mgkg-1、ip)で麻酔した。気管を単離し、ポリエチレン気管チューブ(内径2.0mm)をカニューレ挿入し、ラットに自発的に呼吸させた。
【0165】
動脈圧および心拍数の測定
右頸動脈をカニューレ挿入し、ヘパリン化生理食塩水充填カニューレ(外径0.75mm、内径0.58mm)と接続し、圧力変換器に接続した。平均および位相動脈圧を連続的に測定し、ポリグラフに記録した。回転計を使用して、位相動脈圧から心拍数を導いた。
【0166】
フラボノールおよびジヒドロキシフラボンの抗酸化および血管効果
フラボノールおよびジヒドロキシフラボン(DiOHFne)は、ラット大動脈環によって生成されたスーパーオキサイドレベルの濃度依存低下を引き起こした。最高試験濃度(0.1mM)では、フラボノールおよびDiOHFneはともにスーパーオキサイドレベルを対照の36±3%に低下させた。フラボノールは、AChまたはSNPの弛緩効果に影響しなかった。DiOHFneは、DiOHFの効果より弱いラット大動脈の濃度依存弛緩を引き起こした。フラボノールは、DiOHFについての先の観察と比べて比較的弱いラット大動脈環のカルシウム誘発収縮の濃度依存低下を引き起こした。
【0167】
フラボン-3-ヘミアジペート(F3HA)の抗酸化および血管効果
F3HA(10-7〜10-4M)は、ラット大動脈によるスーパーオキサイド生成に対する阻害効果を示さなかったが、ブチリルコリンエステラーゼ(BuCHE、100〜1000U/ml)の存在は、F3HAの阻害効果の濃度依存上昇を引き起こした(図6)。F3HAは、最高試験濃度(0.1mM)における細胞外カルシウムの濃度の上昇に対する収縮応答のみを阻害した。
【0168】
ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(DiOHF3HA)の抗酸化および血管効果
DiOHF3HA(10-7〜10-4M)は、ラット大動脈によるスーパーオキサイド生成に対する阻害効果を示さなかったが、ブチリルコリンエステラーゼ(100〜1000U/ml)の存在は、濃度依存阻害効果を示した。DiOHF3HA単独では、AChまたはSNPに対する弛緩応答に対する効果を示さなかった。対照的に、BuCHE(1000U/ml)の存在下で、DiOHF3HAは、SNPに対する弛緩応答の感応性を有意に高めた。同様に、DiOHF3HA単独では、ラット大動脈のカルシウム誘発収縮に対する効果をほとんど示さなかったが、BuCHE(1000U/ml)の存在下で、DiOHF3HA(0.1mM)は、DiOHFと同等の阻害効果を示した。これは、アジペートがエステラーゼによって除去されたときに、ヘミアジペートが親DiOHFと同等の活性を有したことを示唆している。DiOHF3HAは、エステラーゼの存在下でのみ前収縮ラット大動脈環の直接的な弛緩を引き起こすことも確認された(図11)。
【0169】
DiOHF3HA(0.1、0.3、1、3mg/kg)を、少なくとも30分間の間隔をおきながら静脈注射し、平均動脈圧および心拍数のピーク変化を測定した。DiOHF3HAは、動脈圧(図12a)および心拍数(図12b)の用量依存低下を引き起こした。個別的な実験群において、ACh(0.3mg/kg iv)およびフェニレフリン(PE、30mg/kg iv)をDiOHF3HA(3mg/kg iv)の前、および30分後、すなわち動脈圧および心拍数が対照レベルに戻ったときに注射した。DiOHF3HAは、AChに対する抑制剤応答を有意に増強し、動脈圧のPE誘発上昇を減衰させた(図13)。
【0170】
ラット大動脈環において、DiOHF3HA(0.1mM)は、コリンエステラーゼの不在または存在下で、カルシウムイオノフォアA23187またはイソプレナリンに応答する内皮依存弛緩に対する効果を示さなかった。単独で与えられたDiOHF3HA(0.1mM)は、PE誘発収縮に対する効果を示さなかったが、エステラーゼの存在下で顕著な阻害を引き起こした。阻害のレベルは、同じ濃度(0.1mM)のDiOHFの存在に応答して観察されたものと同様であった。
【0171】
フラボン-3-ホスフェート(F3P)の抗酸化および血管効果
F3Pまたはホスファターゼ(1000U/L)は、ラット大動脈断片によるスーパーオキサイド生成に対する効果を示さなかったが、F3Pは、ホスファターゼの存在下でスーパーオキサイドレベルの濃度依存阻害を引き起こした。F3Pは、ホスファターゼの存在下で、AChによる弛緩に対するラット大動脈環の感応性を高めたが、SNPにより弛緩に対する感応性を高めなかった。ピロガロール(2×10-5M)の存在によって引き起こされた酸化応力は、AChに対する最大応答を有意に低下させたが、応答は、F3P+ホスファターゼの存在によって回復された。SNPに対する応答は、それらの処理のいずれによっても影響されなかった。F3Pは、カルシウム誘発収縮の小規模の阻害を引き起こしたが、その効果は、ホスファターゼの存在によって有意に高められた。
【0172】
F3P(0.1、0.3、1、3、10mg/kg)を、少なくとも30分間の間隔をおきながら静脈注射し、平均動脈圧および心拍数のピーク変化を測定した(図16a)。DiOHF3HAは、動脈圧および心拍数の用量依存低下を引き起こしたが(図12aおよび12b)、抑制剤応答は、DiOHF(1mg/kg iv)と比較して小さかった。
【0173】
概要
これらの試験は、フラボン、3',4'-ジヒドロキシフラボン(DiOHFne)、3',4'-ジヒドロキシフラボノール(DiOHF)、フラボン-3-ヘミアジペート(F3HA)、3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(DiOHF3HA)およびフラボン-3-ホスフェートの血管および抗酸化活性の評価を含んでいた。
【0174】
フラボン-3-ヘミアジペート(F3HA)単独では、単独で適用された場合は抗酸化または血管活性を示さなかったが、アジペート置換基を開裂させるコリンエステラーゼの存在は、カルシウム誘発収縮を阻害するF3HAの能力を発揮した。
【0175】
ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(DiOHF3HA)は、単独で適用された場合は抗酸化または血管活性を示さなかったが、アジペート置換基を開裂させるクロリンエステラーゼの存在は、ラット大動脈によって生成されるスーパーオキサイドレベルを阻害し、カルシウム誘発収縮を阻害し、ラット大動脈環の直接的な弛緩を引き起こすDiOHF3HAの能力を発揮した。エステラーゼの存在下で、DiOHF3HAの活性のレベルは、DiOHFと同様であった。麻酔下のラットにおいて、DiOHF3HAは、動脈圧および心拍数の濃度依存低下を引き起こした。
【0176】
フラボン-3-ホスフェート(F3P)単独では、抗酸化または血管活性を示さなかったが、フォスフェート塩置換基を開裂させるホスファターゼの存在は、ラット大動脈によって生成されるスーパーオキサイドレベルを阻害し、カルシウム誘発収縮を阻害し、酸化応力の存在下で内皮依存弛緩を増強するF3Pの能力を発揮した。ホスファターゼの存在下で、F3Pの活性のレベルは、DiOHFと同様であった。麻酔下のラットにおいて、F3Pは、動脈圧および心拍数のごく小規模な濃度依存低下を引き起こした。それらの効果は、DiOHFについて見られたものよりはるかに小さかった。
【0177】
心筋虚血再潅流に続くアジピン酸3',4'-ジヒドロキシフラボノール(DiOHF3HA)の心臓保護
麻酔下のヒツジにおける心筋虚血および再潅流傷害を予防する合成フラボノール、アジピン酸3',4'-ジヒドロキシフラボノール(DiOHF3HA)の能力を評価した。親化合物DiOHFと異なり、アジペート誘導体は、水溶液、特に水に可溶であった。
【0178】
水溶液で投与されたDiOHF3HAは、梗塞サイズの用量関連低下を引き起こしたが、それは、DMSOに溶解した場合の同様のモル投与量のDiOHFによって引き起こされたものと同様であった。
【0179】
DiOHF3HAの静脈内注入は、血流力学的指標(動脈血圧、心拍数、左心室拡張期圧(LV-EDP))を変化させなかった。
【0180】
DiOHF3HAは、麻酔下のヒツジにおいて、心臓虚血再潅流傷害の後に、親化合物と同等の程度の心臓保護をもたらしたため、これらのデータは、この新規の誘導体化合物がインビボで親化合物に効率的に変換されるという説を裏づけるものである。
【0181】
外科的調製
5つのグループの麻酔下の成体メリノヒツジ(35〜45kgの去勢された雄)について調査した。
(1)対照(n=5)
(2)DiOHF(2mg/kg、n=2)
(3)DiOHF3HA(2.7mg/kg、n=3)
(4)DiOHF(5mg/kg、n=3)
(5)DiOHF3HA(6.6mg/kg、n=4)
【0182】
静脈内チオペントンナトリウム(15mg/kg)によって麻酔を誘発し、イソフラン(1.5〜2%)によって続く気管挿管を維持した。動脈血液のサンプリングおよび動脈圧の監視のために、カテーテルを右顔面動脈に挿入した。頸静脈に挿入されたカテーテルを介して静脈内注入を行った。第4の肋間隙で行われた左胸壁切開を通じて心臓を露出させた。4Fカテーテル先端圧力計を、左心房を通じて左心室に挿入して、左心室圧力(LVP)を測定した。リグノカインの注入およびエバンスブルーの注入のために、追加的なサイラスティックカニューレを左心房付属器に挿入した。左前区下行冠動脈(LAD)をその第2の筋違のすぐ隣の心膜から切除し、トランジットタイム2mm流量プローブをそのまわりに配置して、LAD血液流量を監視した。絹縫合糸をプローブの近傍のLADの下に通し、絹の両端をプラスチックチューブに通して、血管係蹄を形成した。
【0183】
実験の設計
外科手順の完了後に、動物を10〜15分間安定させた。次いで、ヒツジを無作為に異なるグループに分割した。すべてのヒツジに30分間のベースライン記録を与えた後に、1時間の虚血および3時間の再潅流を行った。
【0184】
実験の過程を通じて、血流力学的測定値を5分間隔で記録し、指定の時点において血液試料を採取した。30分間の虚血後に、フラボノール処理を施した。DiOHFを2mlのDMSO+14mlのポリエチレングリコール:水(1:1)に溶解した。DiOHF3HAを20mlの0.1MのNa2CO3に溶解した。薬物を1ml/分i.v.で与えた。2投与量のDiOHF3HA(2.7mg/kgおよび6.6mg/kg)を選択して、親DiOHF化合物と同等のモル投与量(それぞれ2mg/kgおよび5mg/kg)を達成した。対照の動物は、静脈内溶液を受けなかった。必要に応じてリグノカインを使用して、不整脈を改善した。
【0185】
危険性のある領域および梗塞サイズの測定
危険性のある心筋の領域および梗塞サイズをエバンスブルーおよび塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)染色によって描写した。3時間の再潅流の後に、LADを本来の閉塞部位で再閉塞させた。心臓を停止させるペントバルビトン(100mgkg-1)の静脈内注射の直後に、エバンスブルー染料(1.5%、40ml)を左心房に注入して、危険性のある心筋の範囲を規定した。心臓を迅速に除去し、左心室を約1cmの厚さの横断切片にスライスした。未染色の危険性領域を同じ透明紙にトレースした。次いで、1%TTCを含有する0.1Mフォスフェートナトリウム緩衝剤中で切片を20分間インキュベーションした(37℃、pH7.4)。梗塞性領域を透明紙にトレースした。危険性のある心筋の領域、および梗塞サイズをコンピュータ化された平面測量によって測定した。前者を全左心室体積に対する百分率(AR/LV%)で表し、梗塞サイズを危険性のある心筋の領域に対する百分率(IS/AR%)で表した。
【0186】
心筋梗塞に対する血漿マーカー
虚血中のベースライン、および再潅流期間中の3つの時点(1時間、2時間および3時間)において動脈血液試料(5ml)を冷やしたヘパリン化チューブに回収した。4℃で遠心分離した後に、乳酸デヒドロゲナーゼおよびクレアチンキナーゼのレベルを求めるための測定まで血漿試料を-20℃で保管した。
【0187】
結果
以下の結果の概要では、5つの異なる処理グループにおける心筋梗塞サイズを報告する。最大容量のDiOHF3HAの効果について、他のすべてのパラメータの変化は、対照グループの動物対DiOHF3HA(6.6mg/kg)グループの動物に関して報告されているにすぎない。
【0188】
対照グループにおいて、最初の10分間の再潅流で1匹のヒツジが心室細動のため死んだ。したがって、対照データは、n=4匹に基づく。
【0189】
心筋梗塞サイズ
この試験において、5つの異なる処理グループのヒツジの間で虚血された左心室の領域(AR)は類似していた(11%〜20%、図17、左側パネル)。対照的に、ARに対して正規化された梗塞サイズは、DiOHFおよびDiOHF3HA処理グループの方が、対照動物と比較して小さかった(図17、右側パネル)。具体的には、危険性のある領域に対して正規化された梗塞サイズ(IS/AR)は、対照における83±4%からDiOHF3HAによる49±8%(6.7mg/kg)およびDiOHFによる47±8%(5mg/kg)に低下した。低投与量のDiOHF3HA(2.7mg/kg)およびDiOHF(2mg/kg)についてのIS/ARは、それぞれ64%および73%であった。
【0190】
LAD流量
ベースラインLAD流量は、対照およびDiOHF3HA(6.6mg/kg)グループのヒツジ(7〜9ml/分)で類似していた。虚血中は、すべての動物に追いてLAD流量が0に低下した。再潅流の初期段階では、すべてのヒツジにおいて冠状動脈過潅流が生じた。一般には、このLAD流量の一時的な増加は、30〜60分間の再潅流後にベースラインレベルに戻った。流量の回帰は、DiOHF3HAグループの方が迅速であった。
【0191】
虚血/再潅流に対する血流力学的応答
ベースライン動脈圧は、2つのグループのヒツジの間で差がなかった(30分間の平均は80mmHg以下)。対照的に、静止HRは、対照ヒツジ(90±4bpm)の方がDiOHF3HA処理ヒツジ(105±3bpm)と比較して低かった(P<0.05)。この差は、実験の過程全体を通じて維持された。MAPおよびHRの両方は、DiOHF3HA投与の20分間の注入期間を通じて変化しなかった。さらに、心筋虚血および再潅流中は、いずれのグループのヒツジにおいても、動脈圧またはHRの顕著な変化は観察されなかった。
【0192】
静止LV-EDPは、2つのグループのヒツジの間で差がなかったが(11mmHg以下)、LVPの第1導関数の最大正値(dP/dtmax)は、対照グループ(1454±62mmHg/s)の方がDiOHF3HA処理ヒツジ(1967±103mmHg/s)と比較して低かった(P<0.05)。この差は、実験の過程全体を通じて維持された。LV-EDPおよびdP/dtmaxの両方は、DiOHF3HA投与の20分間の注入期間を通じて変化しなかった。さらに、心筋虚血および再潅流中は、いずれのグループのヒツジにおいても、LV-EDPおよびdP/dtmaxの顕著な変化が観察されなかった。該薬物の血流力学的利点は、24時間の再潅流後に、より明らかになった。
【0193】
麻酔下のヒツジにおいて、1時間の虚血および3時間の再潅流の後に、血漿乳酸デヒドロゲナーゼは、対照グループ(n=3)では227±141U/Lだけ増加し、DiOHF3HAで処理されたグループ(n=4)では67±32U/Lだけ増加した。これらのヒツジにおいて、血漿クレアチンキナーゼは、対照グループでは2411±958U/Lだけ増加し、DiOHF3HAで処理されたグループでは1579±936U/Lだけ増加した。
【0194】
合成フラボノイドを使用したラットにおける虚血性卒中からの回復
心筋梗塞に対する血漿マーカー
神経機能に対する毎日の監視、および卒中から72時間後における脳梗塞の死後の形態学的評価により、意識のあるラットにおける虚血性卒中を調査した。強力な血管収縮剤エンドセリン-1を右中脳動脈MCAの外側であるが近くに(前移植ガイドチューブを介して)注入することによって、意識のあるラットに、片側性の一時的脳虚血および再潅流を誘発した。持続する卒中を直後の挙動によって0から5のスケールに等級分けし、卒中の3時間後、およびその後24時間間隔で強力な神経保護化合物を静脈内注入した。
【0195】
外科的調製
急性薬物投与のための静脈内(i.v.)カテーテルの頸静脈への挿入のために、雄のHooded Wistarラット(280〜340g)に0.6mlの体積のペントバルビトンナトリウム(60mg/kg i.p.)で麻酔した。次いで、23ゲージのステンレス鋼のガイドカニューレを右側MCAの背部の梨状皮質2mmに定位的に移植した(上側0.2mm、横側-5.2mmおよび腹側-5.9mm)。カニューレを歯科用アクリレートセメントで固定し、2つの小さいねじを頭蓋に挿入した。頭皮を縫合糸で閉じた。ラットを18〜22℃の温度にて12時間毎の日/夜サイクルで個々に収容し、卒中の誘発前に5日間にわたって回復させた。
【0196】
卒中の誘発
先に移植された定位ガイドカニューレの端部から2mm突出した30ゲージ注射器を介して強力な血管収縮剤エンドセリン-1(ET-1)(10分間にわたって3μlの生理食塩水中60pmol)を投与することによって、意識のあるラットに右中脳動脈(MCA)の血管収縮を誘発させた。注射器をポリ管カフによって所定位置に保持し、ラットをET-1注射中の観察のための透明プレキシグラスに配置した。卒中誘発中に、対側前肢の反時計回りの循環、クレンチングおよびドラッギングを観察し、カニューレの正しい配置を検証した。これらの挙動変化は、ET-1注射の開始から2から10分以内に発生し、同様の挙動が、このモデルを採用した他の研究者によって報告された。卒中時のこれらの挙動変化に基づいて卒中の重度の評点を割り当て、より高い卒中の評点が割り当てられたビヒクル処理ラットは、より大きい梗塞量および神経系障害を有することを示した。挙動変化を示さなかったラットは、卒中を有していないと見なされ、試験から除外された。偽物が注入されたラットは、カニューレ移植が施されたが、FT-1注射を受けなかった。卒中の前、および卒中後3時間にわたって30または60分間隔で直腸温度をサーミスタプローブで測定した。
【0197】
機能的成果の評価
すべての挙動試験は、あらゆる手順の前(手術前、1日)、ET-1誘発MCA閉塞の直前(虚血前、6日)、およびET-1誘発MCA閉塞から24、48および72時間後に実施された。各ラットの挙動を卒中前と比較すると、各ラットは、同一対照として行動していた。検査者に処理条件が知られないようにすべてのラットを符号化した。異常姿勢および半身不随の検出に基づく神経系障害得点を用いて神経系の異常を評価した。ラットを尾で吊るし、胸部のねじれおよび前肢の伸びを採点することによって異常姿勢を評価した。ラットを隆起プラットホームに配置して半身不随を評価した。梗塞性半球に対して対側の後肢がプラットホームの先端から滑り落ちた場合、および/または鼻および髭が表面に接触していないときに対側前肢が滑り落ちた場合に障害が存在すると見なされた。すべての挙動を、0=障害なし;1=わずかな障害;2=中程度の障害;および3=重度の障害のスケールで採点した。したがって、得点を合計すると、最大神経系障害得点は12であった。0の得点を正常と見なした。
【0198】
接着テープ(極接着ラベル、直径100mmの円形)を各々の手首の末端橈骨領域に配置することからなる試験により、感覚的ヘミネグレクトを評価した。第1のテープを対側肢と同側肢の間に無作為に配置した。動物をプレキシグラスケージに配置し、ストップウォッチで測定する前に、両前肢上のテープに同時に接触し、対側および同側前肢からの各刺激に接触する潜在性および各刺激を除く潜在性を記録した。テープが既に除去されていた場合は180秒で試験を終了させた。
【0199】
薬物処理
37μmol/kgを与える濃度で、卒中の3時間後に、単一丸薬投与としてすべての化合物を静脈内投与した。ビヒクル対照も使用され、各化合物に対して特異的であった。卒中の3時間後の第1の投与の後に、動物に薬物を1日1回、またはビヒクルを24および48時間目に注入した。各化合物の全注入体積を300gのラットに対して約300μlとし、薬物の十分な投与を保証するために200μlの生理食塩水を連続的に流した。
【0200】
虚血損傷の定量
虚血から72時間後にラットを断頭し、それらの脳を取り出して、液体窒素で凍結させ、-80℃で保管した。ブレグマに対して-3.2から6.8mmの脳全体を通じて、冠状クライオスタット切片(16μm)を8つの所定の冠状平面で切断した。未染色のスライド装着脳切片における損傷領域は、明確に輪郭化された艶のない領域または暗い領域として裸眼で見えるのに対して、正常組織は、本質的に半透明であるという所見に基づいて、梗塞を3通りの未染色切片で測定した。弾道光伝搬の原理を応用し、単純な装置をコンピュータ化された画像解析システムと併用することによって、損傷領域を示す未染色のスライド装着切片をモニター上ではっきりと目に見えるようにした。光は、透明な無損傷の組織を直接透過してカメラに至るのに対して、光線は、損傷組織によって回折される。次いで、画像解析システムを使用して、損傷の領域を容易に輪郭化し、選択し、記録することができる。レベル間に距離を有する各定位レベルで損傷の断面積を積分することによって梗塞の体積を計算した。(正常な半球の面積/梗塞性半球の面積)×梗塞の面積の式を適用することによって、梗塞領域に対する水腫の影響を補正した。また、検査者に処理条件が知られないようにスライドを符号化した。
【0201】
卒中の評点
ラットは、ET-1注入の2〜10分以内に卒中を示唆する神経挙動障害を示したが、同体積の生理食塩水のみを与えた後は当該障害を示さなかった。これらの障害は、クレンチング、および対側前肢の伸長不良、ならびに閉塞に対する対側の方向の循環等の特異的な挙動応答を含んでいた。グルーミング挙動が、循環に先行し、ほぼすべてのラットに観察された。グルーミングは、決まった形で発生し、顔面グルーミングの後に、1つの連続的な動きの全身グルーミングが生じた。歯をガチガチ鳴らすこと、ケージを噛むこと、および寝そべることまたは舌を出すこと等の他の挙動は、より低頻度に観察された。卒中時に観察されたこれらの挙動応答をそれらの程度および重度に基づいてランク付けすることが可能であった。ビヒクル処理ラット(n=40)において、卒中の評点と神経系障害得点との間、および卒中の評点と梗塞体積との間に正の相関があることをも示した。ランク付けに続いて、卒中の評点が、ビヒクルグループと薬物処理グループの間に均等に行き渡るように、平等な卒中の評点に基づいて卒中のラットを組み合わせた。次いで、処理を知らずに残りの評価を実施できるようにラットを符号化した。
【0202】
薬物処理の階層化
卒中患者の臨床管理を支援するとともに、臨床試験において処理グループを正確に階層化するために、ヒト卒中患者における機能的成果および生存性を予測するのに予後モデルが使用される。実験用卒中動物に同様のモデルを使用することは、これまで試みられなかった。MCA閉塞のET-1モデルにおいて、卒中誘発中に挙動応答を観察し、これらの応答に基づいて卒中の重度の評価スケールを割り当てることが可能である。したがって、どの動物が重度の卒中を有し、どの動物が軽度または中程度の卒中を有しているかを予測することが可能である。このプロセスは、卒中後に神経保護剤によって潜在的に救済可能である危険性の領域のある程度の予測をも可能にする。梗塞が、全半球体積の70%を上回る体積を占めると仮定すると、重度の卒中には、神経保護に対応する危険性の領域がほとんど残っていない。しかし、軽度または中程度の卒中では、救済に対応する危険性の領域がより大きいため、神経保護の機会がより大きい。実際、誰が将来の薬物治療の恩恵を受ける可能性が最も高いかを判断するために、同様にして患者を階層化するのに、患者における臨床MRI試験が現在用いられている。この理由により、薬物処理分析の最後に、4または5の重度の卒中評点を有する動物を除外し、試験されたすべての将来的化合物について、軽度または中程度の卒中グループ(評点1〜3)におけるデータを再解析した。
【0203】
3',4'-ジヒドロキシフラボノール(DIOHF)
我々の実験室で実施した初期の実験では、卒中発症の3時間後に静脈内投与されたDiOHF(10mg/kg)の遅延神経保護の潜在性を評価した。20%のDMSO、40%のポリエチレングリコールおよび40%の注射用無菌水に溶解したDiOHFの3つの丸薬投与物を各ラットに投与した。中程度の卒中のラットに3'4'-ジヒドロキシフラボノール(DiOHF)を投与すると(得点2〜3、n=6および5、それぞれ化合物およびビヒクル)、48および72時間目に神経系障害が低減され、卒中後のヘミネグレクト得点(「粘着テープ試験」)の増加が防がれ、それは、エンドセリン+薬物ビヒクル単独を与えられた対照ラットに観察された。重要なことは、DiOHFにより、脳皮質に発生した梗塞の体積が減少され、脳の線条体に生じる梗塞が完全に防止された。
【0204】
軽度または中程度の卒中のラットにおけるDiOHF(10mg/kg)処理は、ビヒクル処理と比較して、皮質および線条体全体を通じて梗塞の領域を有意に低減した。DiOHF処理は、また、ビヒクル処理ラットと比較して、軽度または中程度の卒中のラットにおける神経系成果を有意に向上させた。
【0205】
卒中の治療のための3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(DiOHF3HA)
注射用Na2CO3緩衝生理食塩水(0.1M、pH7.8)に溶解したDiOHF3HA(15mg/kg/日i.v.)の3つの丸薬投与物を各ラットに投与した。
ビヒクル DiOHF3HA
グレード#2(n=3) #2(n=1)
グレード#3(n=4) #3(n=4)
グレード#4(n=7) #4(n=6)
【0206】
いずれの処理グループにおいても、卒中の後に、有意な体重低下がなかった。両処理グループにおける卒中の前の核心温度は、正常な生理的範囲内であった。両処理グループにおいて、卒中の後に、30分間で有意な温度上昇があったが、この後、温度は正常レベル内に戻った。ビヒクルまたはDiOHF3HAの静脈内注入の後に、両処理グループにおいて、温度が上昇したが、これは、卒中前温度とさほど違わなかった。
【0207】
卒中の後に、両処理グループにおけるラットは、卒中の24、48および72時間後に、卒中前の得点と比較して有意に高い神経系障害得点を示した。DiOHF3HA(15mg/kg/日)で処理すると、ビヒクル処理ラットと比較して、卒中の24、48または72時間後の神経系障害が測定可能に向上した。ビヒクル処理ラットは、同側と比較した場合に、卒中に影響された対側の前肢から粘着ラベルを除去する高い潜在性を示した(P<0.05、2ファクター反復による二方向RM-ANOVA、卒中後の時間、およびサイド)。この効果は、DiOHF3HA(15mg/kg/日)で処理した後に消滅した。
【0208】
皮質の梗塞領域は、DiOHF3HA(15mg/kg i.v.)による処理後に、ビヒクルによる処理と比較して有意に減少された。
【0209】
要するに、DiOHF3HA(15mg/kg)処理は、ヘミネグレクト試験における神経系機能を有意に向上させるとともに、ビヒクル処理と比較して、卒中後の線条体における損傷の領域を減少させた。
【0210】
軽度または中程度の卒中におけるDiOHF3HAの効果
軽度または中程度の卒中の選択されたラットのグループを調査した。
ビヒクル DiOHF3HA
グレード#3(n=4) #2(n=1)
グレード#4(n=3) #3(n=4)
【0211】
ラットは、いずれの処理グループにおいても、軽度または中程度の卒中の後に体重が低下しなかった。両処理グループにおける卒中の前の核心温度は、正常な生理的範囲内であった。両処理グループにおいて、軽度または中程度の卒中の後に、30分間で有意な温度上昇があったが、この後、温度は正常レベル内に戻った。
【0212】
軽度または中程度の卒中の後に、両処理グループにおけるラットは、卒中前、および卒中の24、48および72時間後に、手術前の得点と比較して有意に高い神経系障害得点を示した。DiOHF3HA(15mg/kg/日)で処理しても、ビヒクル処理ラットと比較して神経系障害得点に対する効果がなかった。軽度または中程度の卒中のビヒクル処理ラットは、24および48時間において、同側と比較した場合に、卒中に影響された対側の前肢の粘着ラベルに接触する高い潜在性を示した(P<0.05、2ファクター反復による二方向RM-ANOVA、卒中後の時間、およびサイド)。これらの効果は、DiOHF3HA(15mg/kg/日)で処理した後に消滅した(図18)。
【0213】
軽度または中程度の卒中のラットにおける皮質の梗塞領域は、DiOHF3HA(15mg/kg i.v./日)による処理後にビヒクルと比較して有意に減少された(図19)。DiOHF3HA処理は、線条体の梗塞の領域をも有意に減少させた。
【0214】
要するに、軽度または中程度の卒中のラットにおけるDiOHF3HA(15mg/kg)処理は、ビヒクル処理と比較して、皮質および線条体の梗塞の領域を有意に減少させた。DiOHF3HA処理は、また、ヘミネグレクト試験における神経系機能を有意に回復させた。
【0215】
特に指定のない限り、グラフにおけるすべての値は、標準誤差が縦線で示される平均値である。
【0216】
本明細書に含まれている文書、作用、物質、デバイスまたは物体についての説明は、単に本発明に対する脈絡を提供することを目的としている。これらの事項のいずれかまたはすべてが、従来技術の基礎の一部を形成している、または本願の各請求項の優先日の前に存在していたように本発明に関連する分野における一般常識であったことを認めるものとして捉えられるべきではない。
【0217】
本明細書全体を通じて、「含む(comprise)」という言葉、または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」等の変形は、指定された要素、整数または工程、あるいは要素、整数または工程群を含むが、他の要素、整数または工程、あるいは要素、整数または工程群を排除しないことを暗示することが理解されるであろう。
【0218】
大まかに記載されている本発明の主旨または範囲から逸脱することなく、具体的な実施形態に示されている本発明に多くの変更および/または修正を加えることができることを当業者なら理解するであろう。したがって、本発明は、すべての点において、例示的なものとして見なされるべきであり、限定的なものと見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】図1は、3-ヒドロキシフラボン-3-フォスフェート二ナトリウム塩(5)の合成のための合成スキームを示す図である。
【図2】図2は、3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ホスフェート(10)の合成のための合成スキームを示す図である。
【図3】図3は、コハク酸モノベンジルエステルを介する3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミスクシネート(15)の合成のための合成スキームを示す図である。
【図4】図4は、アジピン酸モノベンジルエステルを介する3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(19)の合成のための合成スキームを示す図である。
【図5】図5は、3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)の合成のための合成スキームを示す図である。
【図6】図6は、対照に対する百分率で表されるNADPHの存在下でラット大動脈に生成されたスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対する、ビヒクル(dH2O)、ブチルコリンエステラーゼ(BuCHE、1000U/L)の存在下および不在下でのフラボン-3-ヘミアジペート(19)(F3HA)、およびDiOHF(10-4M)の効果を示す図である。
【図7】図7は、対照に対する百分率で表されるNADPHの存在下でラット大動脈に生成されたスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対する、ビヒクル(dH2O)、ブチルコリンエステラーゼ(BuCHE、1000U/L)の存在および不在下での3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)(DioHFHA、10-6M〜10-4M)、およびDiOHF(10-4M)の効果を示す図である。
【図8】図8は、ラットから単離された内皮の無処理大動脈環におけるDiOHFと比較した、ビヒクル、またはBuCHEの存在および不在下における3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)(DiOHF3HA、10-4M)の存在下でのCa2+に対する濃度応答曲線を示す図である。収縮率は、DiOHF3HAで処理する前に観察されたCa2+(3×10-3M)に対する初期応答に対する百分率で表される。
【図9】図9は、対照に対する百分率で表されるNADPHの存在下でラット大動脈に生成されるスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対する、ビヒクル(dH2O)、ホスファターゼ(1000U/L)の存在下でのフラボン-3-ホスフェート(F3P、10-8M〜10-4M)、およびDiOHF(10-4M)の効果を示す図である。
【図10】図10は、ラットから単離された内皮の無処理大動脈環におけるビヒクル、またはホスファターゼ(P、1000U/L)の存在および不在下におけるフラボン-3-ホスフェート(F3P、10-8M〜10-4M)の存在下でのCa2+に対する濃度応答曲線を示す図である。収縮率は、フラボン-3-ホスフェートで処理する前に観察されたCa2+(3×10-3M)に対する初期応答に対する百分率で表される。
【図11】図11は、ビヒクル、1000U/L BuCHE、DiOHF3HA(10-4M)、DiOHF3HA(10-4M)プラス1000U/L BuCHEの直接弛緩効果を示す図である。ビヒクル、1000U/L BuCHEおよびDiOHF3HA(10-4M)は、PE前収縮管に対して効果を示さなかった。DiOHF3HA(10-4M)プラス1000U/L BuCHEは、PEで前収縮されたラット大動脈にける血管緊張に対して顕著な効果を示した。
【図12】図12(a)は麻酔下のラットにおけるDiOHF3HAに応答する血管拡張を示す、MAP(mmHg)の用量依存低下を示す図である。図12(b)はDiOHF3HAに応答する心拍数(鼓動数/分)の用量依存低下を示す図である。
【図13】図13は、麻酔下のラットにおけるAChに応答する血管拡張を示す、MAP(mmHg)の低下を示す図である。3mg/kgのDiOHF3HAで30分間前処理することによってAChに対する拡大筋応答を増強させた。麻酔下のラットにおけるPEに応答する血管収縮を示すMAP(mmHg)の上昇、mg/kgのDiOHF3HAで30分間前処理することによって、PEに対する括約筋応答を低下させた。
【図14】図14は、ラット大動脈環における、対照、BuCHEを含む、および含まないDiOHF3HA、およびDiOHFの存在下で生成されたPEの濃度応答曲線を示す図である。BuCHEの存在下でのDiOHF3HA、およびDiOHFは、ともに濃度依存的にPEに対する応答を抑制することがわかった。最大収縮(パーセント3mM Ca2+):[対照]101±1、[DiOHF3HA 10-4M]101±1、[DiOHF3HA 10-4M+BuCHE]35±6、[DiOHF 10-4M]18±2
【図15】図15は、ラットの内皮の無処理環におけるAChに対する濃度応答曲線に対する、ホスファターゼ(1000U/L)、およびホスファターゼを含むフラボン-3-ホスフェート(F3P)(10-5M〜10-4M)の効果を示す図である(n=5)。ホスファターゼ単独では、AChに対する弛緩応答に対する効果はなかったが、AChに対する弛緩応答は、対照環と比較した場合における双方の試験濃度でのホスファターゼを含むF3Pの存在下で高められた。pEC50, Rmax:[対照]7.31±0.03,100±3、[ホスファターゼ10-4M(P)]7.30±0.04,100±1、[F3P 10-5M+P]7.80±0.06,100±1、[F3P 10-4M+P]7.70±0.07,100±1
【図16】図16(a)は麻酔下のラットにおけるF3PおよびDiOHFに応答するMAP(mmHg)の用量依存低下を示す図である。図16(b)は麻酔下のラットにおけるF3PおよびDiOHFに応答するHR(回/分)の用量依存低下を示す図である。
【図17】図17は、麻酔下のヒツジの対照(n=4)、DiOHF(2mg/kg、n=2および5mg/kg、n=3)およびDiOHF3HA(2.7mg/kg、n=3および6.6mg/kg、n=4)処理グループにおける心筋危険性領域(左側パネル)および心筋梗塞サイズ(右側パネル)を示す図である。AR/LV%=全左心室体積に対する百分率で表される危険性領域。IS/AR%=心筋危険性領域に対する百分率で表される梗塞サイズ。*は、対照処理動物とアジペート(6.6mg/kg)処理動物との梗塞サイズの有意な差を示している。
【図18】図18は、ET-1-誘発卒中、および軽度または中程度の卒中のラットにおけるビヒクル(A&B)またはDiOHF3HA(15mg/kg/日)(C&D)から24、48および72時間後に評価した同側前肢と比較した反対側前肢に対する刺激物質の接触(A&C)および除去(B&D)の潜在性を示す図である。
【図19】図19は、軽度または中程度の卒中のラットの皮質(A)および線条体(B)における梗塞領域に対するDiOHF3HA(15mg/kg/日)またはビヒクルの遅延投与の効果を示す図である。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている、2005年3月11日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2005901214号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、新規の化合物、これらの化合物を含有する組成物、それらの合成方法、およびこれらの化合物の使用に関する。特に、本発明は、フラボノイド化合物、フラボノイド化合物を合成する方法、フラボノイド化合物を含有する組成物、およびそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
虚血組織の迅速な再潅流は、正常な機能を回復するのに重要である。しかし、この血流の戻りは、逆説的に、可逆的損傷細胞の進行的破壊をもたらすことによって、組織機能不全および梗塞をもたらしうる。この「再潅流傷害」は、多因子の病因を有するが、炎症反応に強く関連しているようである。血流の戻りにより、白血球接着および浸透、ならびに無酸素ラジカル種および過酸化物、例えばH2O2等の反応性酸化種(ROS)の放出を含む、虚血性傷害を増強するいくつかの炎症過程が生じうる。
【0004】
この炎症反応の多くは、多機能のサイトカインのサブクラスであるインターロイキン(IL)によって媒介されるようである。白血球(白色血液細胞)も再潅流傷害に重要な役割を果たすようである。白血球は、内皮および神経を傷つけるのに加えて、直接微小循環を妨害しうる。この白血球毛細血管閉塞は、「無血流再開現象」の主たる機構でもありうる。したがって、血流が戻るとまだ生存可能な実質組織の部分は、十分に再潅流されず、究極的に死ぬ。心筋虚血は、特に、大きな毛細血管閉塞を引き起こす。
【0005】
虚血、および特に再潅流は、さらなる組織損傷をもたらす白血球からのROSの放出の増強を促進する傾向がある。最も損傷の強い種類の遊離ラジカルの1つは、内皮機能、および一酸化窒素(NO)の活性を低下させるように作用するスーパーオキサイド陰イオンである。NOは、血小板凝集を抑制し、内皮への白血球の接着を防止することが証明されているため、このラジカルは、毛細血管閉塞プロセスをさらに悪化させる。
【0006】
虚血および再潅流後に達成される組織回復の程度は、組織の性質および損傷の重度に依存する。
【0007】
虚血は、様々な条件によって引き起こされうる。例えば、卒中、心筋梗塞または機械的外傷等の急性事変、アテローム性動脈硬化、末梢血管疾患および糖尿病等の慢性状態は、虚血を引き起こしうる。高血圧症は、虚血をもたらしうる他の種類の疾患である。
【0008】
冠状動脈の遮断によって引き起こされる心臓発作等の急性事変が起こると、血管の閉塞を除くことで、血流を復帰させて、組織を再潅流するのに役立つ様々な薬品が心臓発作患者に静脈内投与される。しかし、この種の治療は、再潅流に関連する組織損傷を防止または緩和することに向けられるものではない。再潅流が生じて、組織に対する酸素の供給を復帰させるための環境を築くと、遊離ラジカル生成を増加させることによって組織損傷を増大化しうる。
【0009】
この点において、虚血を示す、または虚血の危険性のある被検体に対する従来の治療は、不十分である。
【0010】
様々な物質が、血管の健康および機能を向上させること、および果実および野菜を多く食する集団では、冠状動脈疾患の発生率がより低いことが示唆されている。この効果は、果実および野菜の両方に見いだされるポリフェノン化合物であるフラボノイドの有益な効果に関連づけられてきた。
【0011】
フラボノイドは、低密度リポタンパク質の血漿レベルの低減、血小板凝集の抑制、遊離ラジカルの排出、細胞増殖の低減、ならびに血管緊張の調節を含むいくつかの生物学的効果を発揮すると考えられる非常に大きく、広範にわたる植物由来化合物群である。
【0012】
膨大な数のフラボノイドが識別されており、それらは、ヒドロキシル化またはメチル化の向き、ベンゼノイド置換基の位置、不飽和の程度、および結合された置換基の種類が互いに異なる。多くのフラボノイドの一般的な3つの環構造(A、BおよびC環)は、2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-4-オンの構造に基づいている。
【化1】
【0013】
例えば、合成フラボノイド、3',4'-ジヒドロキシフラボノール(DiOHF)は、3,3'-および4'位にヒドロキシ基を有し、心筋虚血、およびインビトロ研究において再潅流に関連する梗塞および傷害を低減することが実証された(Shen Wang, Gregory Dusting, Clive May and Owen Woodman, British Journal of Pharmacology(2004)142, 443〜452)。
【0014】
しかし、多くのフラボノイドの薬物動態が、それらの治療有用性を著しく制限してきた。合成フラボノイドは、脂溶性の高い分子であるため、水溶性が低く、治療薬としての投与が困難になる傾向がある。これらの特徴は、急性非経口投与が望まれる場合の治療、例えば血管拡張治療に対するそれらの応用性を制限する。
【発明の開示】
【0015】
以上に特定された問題により、知られているフラボノイドと比較して、水溶性および薬物動態が向上した合成フラボノイド誘導体の開発の必要性が残されている。
【0016】
第1の態様によれば、本発明は、医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、一般式Iの少なくとも1つの化合物とともに含む医薬および/または獣医薬組成物を提供する。
【化2】
[式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2、R3、R4、R5は、H、OH、または式(Ia):
【化3】
(ここで、
Oは、酸素であり、
Lは、酸素、および存在する場合にDに共有結合し、または酸素およびEに共有結合するリンカー基であり、または存在せず、
Dは、約1から20個の炭素原子と同等の鎖長を有するスペーサー基であり、または存在せず、
Eは、可溶化基である)による基から独立に選択され、
ただし、R1、R2、R3、R4、R5の少なくとも1つは、HまたはOH以外である]
好ましくは、Eは、エステル、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル、スルファメート、スルホン酸エステル、ホスファメート、ホスホン酸エステル、スルホナート、双性イオン種、アミノ酸、ホスホン酸アミノ、非環式アミン、環式アミン、四級アンモニウム陽イオン、ポリエチレングリコール、オリゴ糖またはデンドリマーから選択される。
【0017】
1つの好ましい実施形態において、Eは、エステル、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル、ポリエチレングリコール、オリゴ糖またはデンドリマーから選択される。
【0018】
好ましくは、Eは、エステル、カルボン酸またはリン酸エステルから選択される。
【0019】
特定の好ましい実施形態において、Eは、式(Ib):
【化4】
(式中、
Wは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Xは、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)による基である。
【0020】
好ましくは、WはO、および/またはXはHである。
【0021】
他の実施形態において、Eは、式(Ic):
【化5】
(式中、
Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレン、アルケニレン、アルキニレンであり、
Wは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Xは、H、置換または非置換のアルキル、アルキルベンジル、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)によるエステルである。
【0022】
好ましくは、Qは、置換または非置換の低級アルキレンである。
【0023】
他の実施形態において、Eは、式(Id):
【化6】
(式中、
Yは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Zは、OまたはSであり、
R6およびR7は、H、置換または非置換のアルキル、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩から独立に選択される)によるリン酸エステルである。
【0024】
好ましくは、YおよびZは、Oである。
【0025】
他の実施形態において、R1、R2、R3、R4およびR5の少なくとも1つは、式(Ie):
【化7】
(式中、R6およびR7は、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩から独立に選択される)によるリン酸エステルである。
【0026】
一実施形態において、Lは、存在し、-CO-、エステル、フェノール、ホスホン酸エステル、カルバメート、カルボネートまたはマニッシュ塩基から選択される。より好ましい実施形態において、Lは、-CO-である。
【0027】
他の実施形態において、Dは、存在し、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、あるいはアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルから選択される。
【0028】
好ましい実施形態において、Dは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレンである。好ましくは、低級アルキレンである。
【0029】
他の態様において、本発明は、医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、一般式IIの少なくとも1つの化合物とともに含む医薬および/または獣医薬組成物を提供する。
【化8】
(式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2およびR3は、以上に規定されている通りである)
さらに他の態様において、本発明は、医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、一般式IIIの少なくとも1つの化合物とともに含む医薬および/または獣医薬組成物を提供する。
【化9】
(式中、R3は、以上に規定されている通りである)
さらに他の態様において、本発明は、医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、一般式IVの少なくとも1つの化合物とともに含む医薬および/または獣医薬組成物を提供する。
【化10】
(式中、
Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレンであり、
Xは、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)
好ましくは、Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換の低級アルキレンである。
【0030】
他の態様において、本発明は、3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;4'-(ベンジルオキシ)-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;4'-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;3',4'-ジベンジルオキシ-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;3,4'-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;フラボン3,4'-ビス(ヘミアジペート);3,7-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3,7-ジヒドロキシフラボン3,7-ビス(ヘミアジペート);4'-ヒドロキシ-3-ヒドロキシフラボン-3-四級アンモニウムエステル;4'-(ベンジルオキシ)-3-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)フラボンおよび3-ヒドロキシフラボン-3-リン酸二ナトリウム塩からなる群から選択される化合物を提供する。
【0031】
他の態様において、本発明は、医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;4'-(ベンジルオキシ)-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;4'-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;3',4'-ジベンジルオキシ-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;3,4'-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;フラボン3,4'-ビス(ヘミアジペート);3,7-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)フラボン;3,7-ジヒドロキシフラボン3,7-ビス(ヘミアジペート);4'-ヒドロキシ-3-ヒドロキシフラボン-3-四級アンモニウムエステル;フラボン-3-リン酸二ナトリウム塩;4'-(ベンジルオキシ)-3-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)フラボンおよび3-ヒドロキシフラボン-3-リン酸二ナトリウム塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物とともに含む医薬および/または獣医薬組成物を提供する。
【0032】
さらなる態様において、本発明は、反応性酸化種(ROS)の存在に関連する被検体における疾病を予防および/または治療する方法であって、以上に規定されている少なくとも1つの化合物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0033】
好ましくは、当該治療を必要とする被検体は、虚血を生じる危険性がある。より好ましくは、被検体は、急性または慢性状態の結果として虚血および/または再潅流傷害にかかっている。
【0034】
特定の実施形態において、慢性状態は、癌、脳血管疾患、肺血管疾患、アテローム性動脈硬化、動脈疾患、鬱血性心臓病、冠状動脈疾患、末梢血管疾患、糖尿病、高血圧症、偏頭痛、火傷、慢性閉塞性肺疾患および網膜血管疾患から選択される。
【0035】
他の実施形態において、急性状態は、卒中、心筋梗塞、衝突傷害または手術に起因する機械的外傷から選択される。好ましくは、手術は、血管手術である。より好ましくは、血管手術は、心臓バイパスおよび/または移植手術である。
【0036】
特定の実施形態において、化合物は、手術前および/または手術中に被検体に投与される。
【0037】
他の態様において、本発明は、被検体におけるアテローム性動脈硬化および/または虚血性心臓疾患の発症を予防、遅延させ、および/またはその進行を遅らせる方法であって、以上に規定されている少なくとも1つの化合物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0038】
さらに他の態様において、本発明は、反応性酸化種(ROS)の存在に関連する被検体における疾病を予防および/または治療する治療および/または予防方法であって、以上に規定されている少なくとも1つの化合物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0039】
さらなる態様において、本発明は、虚血および/または再潅流傷害によって引き起こされる被検体に対する損傷を予防および/または少なくとも改善する方法であって、以上に規定されている少なくとも1つの化合物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0040】
さらなる態様において、本発明は、治療薬の投与によって引き起こされる被検体に対する損傷を予防および/または少なくとも改善する方法であって、被検体に対して、
i)治療薬と、
ii)以上に規定されている少なくとも1つの化合物の有効量とを同時投与することを含む方法を提供する。
【0041】
好ましくは、治療薬は、酸化性治療薬である。
【0042】
特定の実施形態において、治療薬は、抗癌剤である。好ましくは、抗癌剤は、アントラシクリンおよびその誘導体である。
【0043】
特定の実施形態において、化合物は、経口、局所、皮下、非経口、筋肉内、動脈内および/または静脈内投与される。
【0044】
他の態様において、本発明は、医薬品の調製のための以上に規定されている化合物の使用を提供する。
【0045】
他のさらなる態様において、本発明は、一般式Iの化合物、およびその医薬および/または獣医薬として許容可能な塩または溶媒和物を提供する。
【化11】
[式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2、R3、R4、R5は、H、OH、または式(Ia):
【化12】
(ここで、
Oは、酸素であり、
Lは、酸素、および存在する場合にDに共有結合し、または酸素およびEに共有結合するリンカー基であり、または存在せず、
Dは、約1から20個の炭素原子と同等の鎖長を有するスペーサー基であり、または存在せず、
Eは、可溶化基である)による基から独立に選択され、
ただし、R1、R2、R3、R4、R5の少なくとも1つは、HまたはOH以外であり、
該化合物は、フラボン、3'-ヒドロキシ-、アセテート;フラボン、4'-ヒドロキシ-、アセテート;フラボン、3-ヒドロキシ-、アセテート;(±)41-アセトキシフラボン;フラボン、3,4',7-トリヒドロキシ、3-アセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン、-3,7-ビス(アセチルオキシ)-2,3-ジヒドロ-2-フェニル-、(2R-トランス);4H-1-ベンゾピラン-4-オン、7-(アセチルオキシ)-2-[4-(アセチルオキシ)フェニル]-2,3-ジヒドロ-、(±);(+)-4',7-ジアセトキシフラバノン;(2S,3S)-3,7-ジヒドロキシフラバノンジアセテート;フラバノン、3,4'-ジヒドロキシ、ジアセテート;フラバノン、3',4'-ヒドロキシ-、ジアセテート;フラバノン、3,7-ジヒドロキシ-、ジアセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン、3,7-ビス(アセチルオキシ)-2(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2,3-ジヒドロ-、(2R-トランス)-;フラボン、3,3'-ジヒドロキシ-、ジアセテート;フラボン、4',7'-ジヒドロキシ、ジアセテート;フラボン、3,7-ジヒドロキシ-、ジアセテート;フラボン、3,3',7-トリヒドロキシ、トリアセテート;フラボン、3,3',4'-トリヒドロキシ-、トリアセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン、7-(アセチルオキシ)-2-[3,4-ビス(アセチルオキシ)フェニル]-;フラボン、3,4',7-トリヒドロキシ-、トリアセテート;フラバノン、3',4',7-トリヒドロキシ、トリアセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン、7-(アセチルオキシ)-2-[3,4-ビス(アセチルオキシ)フェニル]-2,3-ジヒドロ-、(s)-;フラバノン、3,4',7-トリヒドロキシ-、トリアセテート;フラバノン、3,4',7-トリヒドロキシ-、トリアセテート、トランス-(f);4H-1-ベンゾピラン-4-オン、3,7-ビス(アセチルオキシ)-2-[3,4-ビス(アセチルオキシ)フェニル]-;フスチン、テトラアセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン、3,7-ビス(アセチルオキシ)-2-[3,4-ビス(アセチルオキシ)フェニル]-2,3-ジヒドロ-、(2R-トランス)-;4H-1-ベンゾピラン-4-オン、3,7-ビス(アセチルオキシ)-2-[3,4-ビス(アセチルオキシ)フェニル]-2,3-ジヒドロ-、トランス-;フラバノン、3,3',4',7-テトラヒドロキシ-、テトラアセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン、3-(1-オキソプロポキシ)-2-フェノール-;プロパノン酸、2-メチル、4-オキソ-2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-3-イルエステル;プロパノン酸、2,2-ジメチル-、4-オキソ-2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-3-イルエステル;ベンゼン酢酸、4-オキソ-2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-3-イルエステル;ベンゼンプロパノン酸、4-オキソ-2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-3-イルエステル;ベンゼン酢酸、a-フェニル-、4-オキソ-2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-3イルエステル;ホスホロチオ酸、o-[4-[3-[(ジエトキシホスフィノチオイル)オキシ]-4-オキソ-4H-1-ベンゾピラン-2-イル]フェニル]o,o-ジエチルエステル;ホスホロチオ酸、o-[3-[3-[(ジエトキシホスフィノチオイル)オキシ]-4-オキソ-4H-1-ベンゾピラン-2-イル]フェニル]o,o-ジエチルエステル;リン酸、ジエチル4-(4-オキソ-4H-1-ベンゾピラン-2-イル)フェニルエステル;4H-1-ベンゾピラン-4-オン、2-フェニル-3-(ホスホノオキシ)-;フラボン、3-ヒドロキシ-、リン酸二水素二アンモニウム塩;4H-1-ベンゾピラン-4-オン、2-フェニル-3-(ホスホノオキシ)-、マグネシウム塩(1:1)、五水化物;4H-1-ベンゾピラン-4-オン、2-[3-ヒドロキシ-4-(ホスホノオキシ)フェニル]-;3',4'-ジヒドロキシフラボン-4'-リン酸;3'4'-ジヒドロキシフラボン-4'-β-D-グルコピラノシドナトリウム塩;3',4'-ジヒドロキシフラボン-4'-β-D-リボフラノシドナトリウム塩でない]
好ましくは、R1、R2、R3、R4およびR5は、以上に規定されている通りである。
【0046】
他の態様において、本発明は、一般式(II)による化合物を提供する。
【化13】
(式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2およびR3は、以上に規定されている通りである)
さらに他の態様において、本発明は、一般式(III)による化合物を提供する。
【化14】
(式中、R3は、以上に規定されている通りである)
さらに他の態様において、本発明は、一般式(IV)による化合物を提供する。
【化15】
(式中、
Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレンであり、
Xは、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)
好ましくは、Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換の低級アルキレンである。
【0047】
他の態様において、本発明は、一般式(V)による化合物を提供する。
【化16】
(式中、R3およびR5は、以上に規定されている通りである)
他の態様において、以上に規定されている化合物を合成するための方法を提供する。
【0048】
さらに他の態様によれば、本発明は、以下の一般式の化合物、およびその医薬として許容可能な塩または溶媒和物を提供する。
【化17】
(式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2、R3、R4およびR5は、R1、R2、R3、R4およびR5の少なくとも1つが、HまたはOHでないことを前提として、H、OH、置換または非置換のアルコキシ、アリールオキシ、エステル、炭酸エステル、エーテル、リン酸エステルおよびα-アシルオキシアルキルエーテルから独立に選択される)
好ましくは、少なくともR3は、置換または非置換のエステル、炭酸エステル、エーテル、リン酸エステルおよびα-アシルオキシアルキルエーテルから選択される。
【0049】
好ましくは、R1、R2、R3、R4およびR5の少なくとも1つは、
i)一般式:
【化18】
(式中、Yは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Zは、OまたはSであり、
R6およびR7の各々は、置換または非置換のアルキル、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩から独立に選択される)を有するリン酸エステル、
ii)一般式:
【化19】
(式中、R8は、置換または非置換の低級アルキル、低級アルキルアルコキシである)を有するエステル、
iii)一般式:
【化20】
(式中、Qは、置換または非置換の低級アルキレン、低級アルケニルおよびアルキニルであり、
Wは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Xは、H、置換または非置換のアルキル、アルキルベンジル、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)を有するエステル、
およびその医薬として許容可能な塩または溶媒和物から選択される。
【0050】
本発明の特定の実施形態において、YおよびZは、ともにOである。
【0051】
一実施形態において、本発明は、以下の一般式の化合物、およびその医薬として許容可能な塩または溶媒和物を提供する。
【化21】
(式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2およびR3は、R1、R2およびR3の少なくとも1つが、HまたはOHでないことを前提として、H、OH、置換または非置換のアルコキシ、アリールオキシ、エステル、炭酸エステル、エーテル、リン酸エステルおよびα-アシルオキシアルキルエーテルから独立に選択される)
好ましくは、R1、R2およびR3の少なくとも1つは、
i)一般式:
【化22】
(式中、Yは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Zは、OまたはSであり、
R6およびR7の各々は、置換または非置換のアルキル、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩から独立に選択される)を有するリン酸エステル、
ii)一般式:
【化23】
(式中、R8は、置換または非置換の低級アルキル、低級アルキルアルコキシである)を有するエステル、
iii)一般式:
【化24】
(式中、Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換の低級アルキレン、低級アルケニレン、アルキニレンであり、
Wは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Xは、H、置換または非置換のアルキル、アルキルベンジル、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)を有するエステル、
およびその医薬として許容可能な塩または溶媒和物から選択される。
【0052】
好ましくは、
R1は、HまたはOHであり、
R2は、HまたはOHであり、
R3は、
【化25】
から選択される。
【0053】
他の実施形態において、本発明は、以下の一般式の化合物を提供する。
【化26】
(式中、
R9は、置換、または非置換のアルコキシ、アリールオキシ、エステル、炭酸エステル、エーテル、あるいは式:
【化27】
による基であり、Uは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレンである)
他の実施形態において、本発明は、以下の一般式の化合物を提供する。
【化28】
(式中、nは、2から6の整数であり、好ましくは、nは、4である)
本明細書に示されている式は、すべての可能な幾何および光学異性体、ならびにそれらのラセミ体混合物にも適用される。
【0054】
他の態様において、本発明は、式I、式II、式IIIまたは式IV(ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R8、U、Q、W、X、Y、Z、nは、上記と同じ意味を有する)による化合物、またはその医薬として許容可能な塩または溶媒和物を合成するための方法を提供する。
【0055】
他の実施形態において、本発明は、医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、式I、式II、式IIIまたは式IV(ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R8、U、Q、W、X、Y、Z、nは、上記と同じ意味を有する)による少なくとも1つの化合物、またはその医薬として許容可能な塩または溶媒和物を含む医薬および/または獣医薬組成物を提供する。
【0056】
本発明の他の態様によれば、治療薬の投与によって引き起こされる被検体に対する損傷を防止および/または少なくとも改善する方法であって、
i)治療薬と、
ii)式I、式II、式III、式IVまたは式V(ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R8、U、Q、W、X、Y、Z、nは、上記と同じ意味を有する)による少なくとも1つの化合物、またはその医薬として許容可能な塩または溶媒和物の有効量とを被検体に同時投与する方法が提供される。
【0057】
さらなる態様において、本発明は、反応性酸化種(ROS)の存在に関連する疾病を予防および/または治療する方法であって、式I、式II、式III、式IVまたは式V(ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R8、U、Q、W、X、Y、Z、nは、上記と同じ意味を有する)による少なくとも1つの化合物、またはその医薬として許容可能な塩または溶媒和物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0058】
さらなる実施形態において、本発明は、反応性酸化種(ROS)の存在に関連する疾病を予防および/または治療する方法であって、式I、式II、式IIIまたは式IV(ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R8、U、Q、W、X、Y、Z、nは、上記と同じ意味を有する)による少なくとも1つの化合物、またはその医薬として許容可能な塩または溶媒和物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0059】
典型的には、当該治療を必要とする被験者は、虚血を生じる危険性のある人である。あるいは、被検体は、急性または慢性状態の結果として、虚血および/または再潅流に現在かかっている人でありうる。
【0060】
さらなる態様において、本発明は、虚血および/または再潅流によって引き起こされる被検体に対する損傷を防止および/または少なくとも改善する方法であって、式I、式II、式IIIまたは式IV(ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R8、U、Q、W、X、Y、Z、nは、上記と同じ意味を有する)による少なくとも1つの化合物、またはその医薬として許容可能な塩または溶媒和物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0061】
好ましくは、可溶化基は、化合物を水溶液、好ましくは水に少なくとも部分的に、より好ましくは全体的に可溶にする。
【0062】
好ましくは、本発明の化合物は、少なくとも1つのインビボ酵素開裂性置換基を有する。
【0063】
好ましくは、インビボ酵素開裂性置換基は、生理的pHにおいてイオン性の基である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
定義
本明細書に用いられているように、「アルキル」という用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tertブチル、オクタ-デシルおよび2-メチルペンチル等の分枝または非分枝炭化水素鎖を含む。これらの基は、非置換、またはヒドロキシル、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード、メルカプトまたはチオ、シアノ、アルキルチオ、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、カルボキシル、カルバルコイル、アルキル、アルケニル、ニトロ、アミノ、アルコキシおよびアミド等の、当該鎖と一般に結合する1つまたは複数の官能基で置換されて、トリフルオロメチル、3-ヒドロキシヘキシル、2-カルボキシプロピル、2-フルオロエチル、カルボキシメチルおよびシアノブチル等のアルキル基を形成しうる。
【0065】
「低級」という用語は、炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖を含む。
【0066】
「アルキレン」という用語は、メチレン(-CH2-)、プロピレン(-CH2CH2CH2-)、クロロエチレン(-CHCICH2-)、2-チオブテン-CH2CH(SH)CH2CH2、1-ブロモ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンテン(-CHBrCH2CH(OH)CH(CH3)CH2-)、メチルエチレン、トリメチレン、1-プロピレン、2-プロピレン、テトラメチレン、1-メチルトリメチレン、2-メチルトリメチレン、3-メチルトリメチレン、1-エチルエチレン、2-エチルエチレン、ペンタメチレン、1-メチルテトラメチレン、2-メチルテトラメチレン、3-メチルテトラメチレン、4-メチルテトラメチレンおよびヘキサメチレン等の以上に定められている二価のアルキルを意味する。
【0067】
「アルケニル」という用語は、1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を含む分枝または非分枝炭化水素鎖を含む。
【0068】
「アルキニル」という用語は、1つまたは複数の炭素-炭素三重結合を含む分枝または非分枝炭化水素鎖を含む。
【0069】
「アリール」とは、場合によって一、二または三置換されている、単環(例えばフェニル)、複数の環(例えばビフェニル)、または少なくとも1つが芳香族である複数の縮合環(例えば1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、ナフチル)を有する芳香族炭素環基を意味する。本明細書におけるアリール基は、非置換、あるいは明記されているように、1つまたは複数の置換可能位置において様々な基で置換されている。
【0070】
本明細書に示されているように、「シクロアルキル」という用語は、3から12個の炭素原子を有する飽和炭素環基を意味する。シクロアルキルは、一環または多環融合系でありうる。当該基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルが挙げられる。本明細書におけるシクロアルキル基は、非置換、または明記されているように、1つまたは複数の置換可能位置において様々な基で置換されている。例えば、当該シクロアルキル基は、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ(C1〜C6)アルキルアミノ、ジ(C1〜C6)アルキルアミノ、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルキニル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6ハロアルコキシ、アミノ(C1〜C6)アルキル、モノ(C1〜C6)アルキルアミノ(C1〜C6)アルキルまたはジ(C1〜C6)アルキルアミノ(C1〜C6)アルキルで場合によって置換されていてもよい。
【0071】
「アシル」という用語は、ホルミル、アセチル、プロピオニルまたはブチル等の-C(O)R基(ただし、Rは、以上に定められているアルキルまたはアリールである)を含む。
【0072】
「アルコキシ」という用語は、-OR-(ただし、Rは、アルキルである)を含む。「低級アルコキシ」という用語については、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシおよびイソヘキシルオキシ基等の1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシを挙げることができる。
【0073】
「アミド」という用語は、アミド結合:-C(O)NR-(ただし、Rは、水素またはアルキルである)を含む。
【0074】
「アミノ」という用語は、アミン結合:-NR-(ただし、Rは、水素またはアルキルである)を指す。
【0075】
「カルボキシル」という用語は、-C(O)O-を指し、「カルボニル」という用語は、-C(O)-を指す。
【0076】
「カルボネート」という用語は、-OC(O)O-を指す。
「スルホネート」という用語は、-S(O)2O-を指す。
「ホスホン酸エステル」という用語は指す。
「カルボン酸」という用語は、-C(O)OHを指す。
「スルホン酸」という用語は、-S(O)2OHを指す。
「ホスホン酸」という用語は、-P(O)(OH)2を指す。
「ホスファメート」という用語は、-Ar-NHPO4-を指す。
「リン酸エステル」という用語は、-O-P(O)(OR)2を指す。
「スルファメート」という用語は、-Ar-NHSO3-を指す。
「スルホン酸エステル」という用語は、-S(O)2-ORを指す。
「スルホネート」という用語は、-S(O)2O-を指す。
「ホスホン酸エステル」という用語は、R-P(O)(OR)2を指す。
「カルボン酸」という用語は、-C(O)OHを指す。
「スルホン酸」という用語は、-S(O)2OHを指す。
「ホスホン酸」という用語は、-P(O)(OH)2を指す。
「ホスファメート」という用語は、-Ar-NHPO4-を指す。
「カルバメート」という用語は、-NHC(O)O-を指す。
【0077】
炭化水素鎖は、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれうる。
【0078】
リンカー基は、存在する場合は、本明細書に記載されている分野で知られているいくつかの当該分子のいずれかであってもよい。
【0079】
以上の説明から明らかなように、スペーサー基Dは、存在していなくてもよい。リンカー基が存在していなくてもよいことも以上の説明から明らかである。
【0080】
本発明は、フラボノイド誘導体、およびフラボノイド誘導体を含有する組成物、ならびにその使用方法を提供する。
【0081】
生体組織における反応性酸化種(ROS)の存在は、動物の多くの疾患に関係することが示された。反応性酸化種は、窒素および酸素、または酸素原子のみを含有することができる。ROS分子のいくつかの例としては、O2、H2O2、またはOH-、O2-、NO-およびROO-等の遊離ラジカルが挙げられる。これらの種の多くは、通常の代謝活動中に形成されるが、それらの濃度レベルは、慢性炎症、感染および他の疾病に関係する酸化応力の条件下で上昇しうる。
【0082】
多くのROS分子は、酸素代謝および炎症プロセス等の天然のプロセスの結果である。例えば、細胞が、エネルギーを生成するために酸素を使用すると、ミトコンドリアによるATP生成の結果として遊離ラジカルが生成される。運動は、イオン化ラジカル(工業活動、日光曝露、宇宙線および医療X線による)、環境毒、環境状態の変化(例えば低酸素および高酸素)、オゾンおよび酸化窒素(主に自動車排気、治療による)等の環境的刺激のように遊離ラジカルのレベルを高めうる。喫煙および過剰アルコール摂取等の生活侵襲要因も遊離ラジカルのレベルに影響することが知られている。ラジカル種は、結合して、スーパーオキサイドおよび酸化窒素のラジカル反応の生成物である過酸化窒素ONOO-等の他のより有害または有毒な種を形成しうる。
【0083】
ROS種の他の源は、抗癌薬等のいくつかの治療薬である。アントラサイクリン誘導体は、急性白血病、悪性リンパ腫等の新生物性疾患の治療に極めて有用な抗癌薬である。しかし、それらの投与の望ましくない特徴は、心筋症および予測される心不全をもたらしうる組織の酸化性損傷でありうる。したがって、治療薬の存在は、鬱血性心不全(CHF)の発生を引き起こしうる。いくつかの治療薬のこの特徴は、それらの効果を制限し、適切な同時投与療法を開発することが有用となる。
【0084】
したがって、本発明の一態様において、治療薬の投与によって引き起こされる被検体への損傷を防止および/または少なくとも改善する方法であって、
i)治療薬と、
ii)式I、式II、式IIIまたは式IV(ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R8、U、Q、W、X、Y、Z、nは、上記と同じ意味を有する)による少なくとも1つの化合物、またはその医薬として許容可能な塩または溶媒和物の有効量とを被検体に同時投与することを含む方法を提供する。
【0085】
他の態様において、本発明は、被検体の皮膚へのUV損傷を防止および/または少なくとも改善する方法であって、本発明の組成物の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。この態様では、好ましくは、組成物は、日焼け止めに処方される。組成物は、典型的には、皮膚に塗布されうる。組成物は、緩和剤および加湿剤を含有することができる。
【0086】
他の態様において、本発明は、老化の効果を防止および/または逆転させ、明白な皺を低減し、または/または乾燥肌を治療もしくは予防する方法を提供する。
【0087】
他の態様において、本発明は、酸化性損傷を含む疾病または疾患を有する被検体を治療する方法であって、本発明の組成物の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0088】
好ましくは、酸化性損傷を含む疾病または疾患は、癌、心臓病、神経系疾患、自己免疫疾患、虚血-再潅流傷害、糖尿病併発症、敗血症性ショック、肝炎、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、およびHIV、またはB型肝炎を含む肝炎から生じる併発症からなる群から選択される。
【0089】
他の態様において、本発明は提供する。
特定の実施形態において、被検体は、動物である。動物は、ヒト、ヒト以外の霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、トリ、ニワトリまたは他の家禽類、カモ、ガチョウ、キジ、シチメンチョウ、ウズラ、モルモット、ウサギ、ハムスター、ラットおよびマウスからなる群から選択されうる。
【0090】
本発明のいくつかの態様において、1つまたは複数のフラボノイド誘導体は、1つまたは複数の治療薬と同時に、個別に、または順次的に投与される。
【0091】
当該組合せで使用される場合は、1つまたは複数の治療薬、本発明による1つまたは複数のフラボノイド誘導体を別個の薬剤として同一または異なる時間に投与することができ、あるいは両化合物を含む単一組成物として処方することができる。
【0092】
遊離ラジカルは、脂質、タンパク質およびDNA等の細胞における重要な有機物質と反応する。これらの生体分子の酸化は、それらに損傷を与え、正常な機能を妨害し、様々な疾病状態に寄与しうる。一定の器官系は、より高レベルの酸化性応力または窒素性応力を受けやすいことが注目された。損傷を最も受けやすいそれらの器官系は、肺系(高レベルの酸素に曝される)、脳(強い代謝活性を示すものの、内因性抗酸化物質のレベルが低い)、眼(有害なUV光に絶えず曝される)、循環系(酸素および酸化窒素レベルの変動の犠牲)および生殖系(精子細胞の強い代謝活性により危険)である。
【0093】
ROSの生成を引き起こす該当する急性疾患の例としては、虚血再潅流、卒中、心筋梗塞、または衝突傷害もしくは手術等の機械的外傷を含む。心臓バイパスまたは移植手術等のいくつかの形態の手術は、組織の虚血および再潅流を必然的に引き起こす。典型的には、本発明による1つまたは複数のフラボノイド誘導体は、被検体に手術の前および/または最中に投与される。
【0094】
慢性疾患は、癌、脳血管疾患、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈疾患を含む動脈疾患、末梢血管疾患(糖尿病等の疾病によって引き起こされる損傷を含む)、高血圧症、肺高血圧症、慢性気道閉塞疾患、肺気腫、神経系疾患、自己免疫疾患、糖尿病併発症、敗血症および低血液量性ショック、火傷、肝炎、ならびに肝炎およびHIVから生じる併発症を含む群から選択されうる。他の慢性疾患は、網膜または他の眼疾損傷を含む、特にヒト未熟児における呼吸支援にしばしば適用される高圧酸素療法の投与または高酸素分圧環境に起因する併発症から選択されうる。該当する慢性疾患の危険性のある被検体を徴候の分析、診断試験、酵素マーカー、または遺伝子試験によって診断して、遺伝的素因を特定することができる。心臓発作または卒中等の一定の急性疾患に対する素因を遺伝子試験によって特定することもでき、危険性のある被検体に対する1つまたは複数のフラボノイド誘導体の予防的適用を促進することができる。ROSによる薬物誘発疾患、例えば薬物誘発鬱血性心臓病。
【0095】
疾病または疾患が、卒中または卒中の危険性である場合は、上記の組成物は、好ましくは、卒中の発生の危険性を低減するための予防薬として卒中が発生する前に投与され、または卒中の発生の24時間以内(好ましくは4時間以内)に投与される。
【0096】
ROSが関与する病理的状態の例は、身体の一部に対する血流の欠乏が、酸素の不十分な組織潅流をもたらす虚血である。虚血は、組織損傷を引き起こし、損傷の重度は、組織が酸素を奪われている時間の長さ、および十分な酸素の再潅流が虚血事象の後に行われているかどうかに依存する。
【0097】
本発明による少なくとも1つの化合物をいくつかの異なる経路、例えば局所、経口、皮下、筋肉内、動脈内、および/または静脈内経路を介して投与することができる。
【実施例】
【0098】
化合物の合成
本発明は、式I、II、IIIまたはIV、Vによるフラボノイド化合物、ならびに当該化合物を合成する方法を提供する。
【0099】
フラボノイドの誘導体
リン酸フラボノイド誘導体は、選択的保護/脱保護合成手法によって生成される。
【0100】
3-ヒドロキシフラボン-3-リン酸二ナトリウム塩(5)
図1には、3-ヒドロキシフラボン-3-リン酸二ナトリウム塩の合成方法が示されている。3-ヒドロキシフラボン(1)は、ジベンジルN,N-ジイソプロピルホスホラミダイトで処理すると、亜リン酸化し、その中間リン酸エステルをm-クロロ過安息香酸(mCPBA)によって直接酸化して、その対応する保護リン酸エステルとした。リン酸エステルをフラッシュクロマトグラフィーで精製した後、再結晶した(収率45%)。
【0101】
このリン酸エステルを水酸化パラジウムによりエタノール中で水素化分解させてリン酸エステルを形成し、わずかに過剰の0.1M水酸化ナトリウム溶液を添加することによって、それをそのまま二ナトリウム塩に変換した。水素化分解による脱保護を行って、収率73%の3-ヒドロキシフラボン-3-リン酸二ナトリウム塩の純粋な試料を得た。
【0102】
対応する二アンモニウム塩を、(5)のジエチルアミノエチルカラム(DEAC)を使用したイオン交換クロマトグラフィーによって生成した。
【0103】
3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ホスフェート(二ナトリウム塩として)(10)
図2に示すように、同一の手順をトリヒドロキシフラボン類似体の合成に対して実施した。
【0104】
したがって、3',4'-ジベンジルオキシ-3-ヒドロキシフラボン(6)を1H-テトラゾール存在下でジイソプロピルN,N-ジベンジルオキシホスホラミダイトにより亜リン酸化して、3',4'-ジベンジルオキシ-フラボン-3-ホスファイトジベンジルオキシエステル(7)を形成し、それをmCPBAによって酸化して、保護リン酸エステル、すなわち3',4'-ジベンジルオキシ-フラボン-3-ホスフェートジベンジルオキシエステル(8)とした。これらの2つの工程により、再結晶化後に収率40%の所望の化合物を生成した。
【0105】
次いで、リン酸エステルをパラジウムによりエタノール中で水素化分解して、所望の3',3'-ジヒドロキシ-フラボン-3-ホスフェート(9)を形成し、NaOHを添加することによって、それを対応する二ナトリウム塩、すなわち3',4'-ジヒドロキシ-フラボン-3-リン酸二ナトリウム塩(10)に変換した。
【0106】
フラボノイドのエステル誘導体
3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミスクシネート(15)
図3に示されている反応によって3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミスクシネート(15)を生成した。無水コハク酸(11)とベンジルアルコール(12)をジクロロメタン中の4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)およびピリジンの存在下で反応させて、収率77%の白色結晶性フレークとしてのコハク酸モノベンジルエステル(13)を生成した。この保護コハク酸誘導体をDCCおよびDMAPの存在下で3-ヒドロキシフラボン(1)に結合して、静置すると固体化した収率96%までの黄色または褐色の油としてのフラボン-3-ヘミスクシネートモノベンジルエステル(14)を形成した。
【0107】
THF:EtOH:酢酸溶媒系にPd(OAc)2を使用して、対応するヘミスクシネートを形成するためのモノベンジルエステルの脱保護では、大規模な反応を行って、必要な3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミスクシネート(15)を得た。
【0108】
3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(19)
図4に示されているように、上述の手順と同様の手順に従って、3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(19)を合成した。
【0109】
p-TsOHの存在下でアジピン酸およびベンジルアルコールからアジピン酸モノベンジルエステル(17)を生成して、収率34%の無色の油としての所望の生成物を得た。
【0110】
次いで、保護アジピン酸を3-ヒドロキシフラボン(1)とDCC結合させて、収率59%の黄色/褐色のゴム質としてのフラボン-3-ヘミアジペートモノベンジルエステルを形成した。THF系溶媒系(9:1 THF:EtOH+0.05%酢酸)を使用して、Pd(OH)2触媒の存在下でこの化合物を水素化することで、モノベンジルエステルを水素化分解して、収率89%の黄色固体としてのフラボン-3-ヘミアジペートを形成した。
【0111】
3'4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)
3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)の合成のためのスキームを図5に示す。以上に規定した手法に従って、3'4'-ジベンジルオキシ-3-ヒドロキシフラボン(6)およびアジピン酸モノベンジルエステル(17)をDCC結合させて、収率59%の褐色のゴム質としてのヘミアジペートモノベンジルエステルを生成した。
【0112】
小規模(100〜500mg)の水素化分解による脱保護を円滑に進めて、3〜5時間で終了させて、収率33%の3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)を得た。
【0113】
III 組成物および方法
本発明の化合物を様々な担体および送達系で処方することができる。投与すべき治療化合物の量および該化合物の濃度は、選択されるビヒクルまたはデバイス、患者の臨床状態、副作用、および製剤における化合物の安定性に依存する。したがって、医師は、適切な濃度の治療化合物を含有する適切な調製物を採用し、問題の患者または類似の患者に対する臨床経験に応じて、投与する製剤の量を選択する。
【0114】
また、賦形剤を製剤に含めることができる。例としては、補助溶剤、界面活性剤、油、湿潤剤、緩和剤、防腐剤、安定剤および抗酸化剤が挙げられる。任意の薬理学的に許容可能な緩衝剤、例えばトリスまたはリン酸緩衝剤を使用できる。希釈剤、添加剤および賦形剤の有効量は、溶解性、生物活性等の点で医薬として許容可能な製剤を得るのに有効な量である。
【0115】
したがって、本発明の組成物は、局所、経口または非経口投与のための従来の医薬として許容可能なビヒクルで処方することができる治療化合物を含む。製剤は、等張性、生理的およびpH安定性を維持するために緩衝剤および防腐剤等の少量の補助剤を含むこともできる。
【0116】
IV 投与
本発明の化合物をヒトおよび動物の被検体の双方に投与することができる。
本発明の化合物を、活性化合物が1つまたは複数の不活性成分と十分に混合され、1つまたは複数のさらなる活性成分を場合によって含む組成物で投与することができる。それらの化合物を、ヒトおよび動物に対する投与のための当業者に知られている任意の組成物に使用できる。
【0117】
本発明の組成物を投与形態に応じた適正な経路で投与することができる。例えば、注射物を静脈内、動脈内、皮下および筋肉内投与することができる。
【0118】
経口投与については、固体または流体の単位投与形態を調製することができる。水溶性の形態を糖、芳香剤および防腐剤とともに水性ビヒクルに溶解させて、シロップを形成することができる。エリキシルは、水アルコール(例えばエタノール)ビヒクルを芳香剤とともに糖およびサッカリン等の好適な甘味料と使用することによって調製される。アカシア、トラガカントおよびメチルセルロース等の懸濁剤を利用して、水性ビヒクルにより懸濁剤を調製することができる。本発明の合成フラボノイド化合物を安定化剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の金属キレート剤還元剤またはメタ重亜硫酸ナトリウム等の還元剤と処方することもできる。
【0119】
非経口用途に向けた適切な製剤は、実務者にとって明らかである。通常、治療化合物は、約1から約100mg/mLの濃度にて水溶液で調製される。より典型的には、濃度は、約10から60mg/mLまたは約20mg/mLである。使用に応じて選択される化合物の溶解性および効力に応じて1mg/mL未満の濃度が必要な場合もありうる。無菌である製剤は、皮内、関節内、筋肉内、血管内、静脈内、吸入および皮下を含む様々な非経口経路に好適である。
【0120】
本発明による組成物は日焼け止め、スキンケア組成物、加湿剤の緩和剤に処方することができる。
【0121】
任意の数の生体高分子(生物ベースの系)、リポソームを採用する系、およびポリマー送達系、例えばデンドリマーを含む徐放または長時間放出送達系を本明細書に記載されている組成物に利用して、連続的または長期的な治療化合物源を提供することができる。当該徐放系は、局所、眼、経口および非経口用途の製剤に適用可能である。
【0122】
本発明の合成フラボノイド化合物は、栄養補助薬品または栄養補助食品として処方することもできる。例えば、合成フラボノイド化合物を経口摂取用のシリアル等の食品、フルーツジュース等の飲料、アルコール飲料、パン等に処方することができる。
【0123】
V フラボノイド誘導体の血管弛緩および抗酸化活性
NADPHの存在下でラット大動脈に生成されたスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対するビヒクル、フラボン-3-ヘミアジペート(10-8〜10-4M)およびDiOHF(10-4M)の効果を測定し、対照に対する百分率で表した。フラボン-3-ヘミアジペートの存在は、いずれの濃度においてもスーパーオキサイド生成に対して効果がないことがわかった。
【0124】
図6には、対照に対する百分率で表されるNADPHの存在下でラット大動脈に生成されたスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対する、ビヒクル、ブチルコリンエステラーゼ(BuCHE、1000U/L)の存在下および不在下でのフラボン-3-ヘミアジペート(F3HA)、およびDiOHF(10-4M)の効果が示されている。エステラーゼの不在下で、スーパーオキサイド生成に対する影響はないようである。コリンエステラーゼの存在は、フラボン-3-ヘミアジペートの濃度依存阻害効果を示す。これは、ヘミアジペート基がインビトロで除去されて、遊離ヒドロキシル誘導体、3-ヒドロキシフラボンを形成することと一致している。フラボン-3-ヘミアジペート(19)およびエステラーゼの双方を含めることによるスーパーオキサイド生成の抑制は、DiOHF(3',4'-ジヒドロキシフラボノール)の活性に好適に匹敵する。スーパーオキサイドおよび他のROSの濃度の低下は、これらのラジカルの存在によって誘発される心筋損傷の想定される低減に関連づけられた。
【0125】
ラットから単離された内皮の無処理大動脈環におけるビヒクル、または濃度を増加させていったフラボン-3-ヘミアジペート(15)(F3HA、10-8M〜10-4M)の存在下でのCa2+に対する濃度応答曲線を求めた。より低い濃度(10-8M〜10-5M)では、フラボン-3-ヘミアジペートは、大動脈環のCa2+収縮に影響しなかった。より高い試験濃度(10-4M)では、フラボン-3-ヘミアジペートは、恐らくラットの大動脈組織におけるエステラーゼの存在により、ある程度の阻害効果を有する。
【0126】
NADPHの存在下でラット大動脈に生成されたスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対するビヒクル(dH2O)、3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)(DiOHF3HA、10-8M〜10-4M)、およびDiOHF(10-4M)の効果を対照に対する百分率で表した。スーパーオキサイド濃度は、DiOHF3HAの試験濃度範囲全体を通じて一定であったため、DiOHF3HAは、スーパーオキサイド生成に対して効果がなかった。
【0127】
図7には、対照に対する百分率で表されるNADPHの存在下でラット大動脈に生成されたスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対する、ビヒクル、ブチルコリンエステラーゼ(BuCHE、1000U/L)の存在および不在下での3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)(DiOHF3HA、10-6M〜10-4M)の効果が示されている。比較のために、対照に対する百分率で表されるNADPHの存在下でラット大動脈に生成されたスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対してDiOHF(10-4M)を使用した結果も示されている。コリンエステラーゼの存在は、スーパーオキサイドレベルの濃度依存阻害を表していた。
【0128】
ラットから単離された内皮の無処理大動脈環におけるビヒクル、または濃度を増加させていった3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)(DioHFHA、10-8M〜10-4M)の存在下でのCa2+に対する濃度応答曲線。収縮率は、DiOHF3HAで処理する前に観察されたCa2+(3×10-3M)に対する初期応答に対する百分率で表される。DiOHF3HAは、10-4MにおいてわずかなCa2+阻害作用を有するものと思われる。この効果は、恐らく、ラットの大動脈組織におけるエステラーゼの存在によるものである。
【0129】
図8には、ラットから単離された内皮の無処理大動脈環におけるDiOHFと比較した、ビヒクル、またはBuCHEの存在および不在下における3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)(DiOHF3HA、10-4M)の存在下でのCa2+に対する濃度応答曲線が示されている。収縮率は、DiOHF3HAで処理する前に観察されたCa2+(3×10-3M)に対する初期応答に対する百分率で表される。コリンエステラーゼの存在は、DiOHF3HAの阻害効果を顕著に向上させた。
【0130】
図9には、対照に対する百分率で表されるNADPHの存在下でラット大動脈に生成されるスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対する、ビヒクル、ホスファターゼ(1000U/L)の存在下でのフラボン-3-ホスフェート(F3P、10-8M〜10-4M)、およびDiOHF(10-4M)の効果が示されている。フラボン-3-ホスフェートの存在は、スーパーオキサイドのレベルの濃度依存低下を引き起こした。この効果は、B環における3',4'-ジヒドロキシル基の存在がスーパーオキサイドのレベルを低下させるのに決定的であることを示した先の試験と対照的である。
【0131】
ラットから単離された内皮の無処理大動脈環におけるビヒクル、または濃度を増加させていったフラボン-3-ホスフェート(F3P、10-8M〜10-4M)の存在下でのCa2+に対する濃度応答曲線を求めた。フラボン-3-ホスフェートは、より高い濃度においてカルシウム誘発収縮の部分的な阻害を引き起こした。
【0132】
図10には、ラットから単離された内皮の無処理大動脈環におけるビヒクル、またはホスファターゼ(P、1000U/L)の存在および不在下におけるフラボン-3-ホスフェート(F3P、10-8M〜10-4M)の存在下でのCa2+に対する濃度応答曲線が示されている。収縮率は、フラボン-3-ホスフェートで処理する前に観察されたCa2+(3×10-3M)に対する初期応答に対する百分率で表される。ホスファターゼの存在は、フラボン-3-ホスフェートの阻害効果を顕著に向上させた。
【0133】
本発明を以下の非限定的な例によって説明する。
フラボノイド誘導体の合成
3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン
【化29】
3-ヒドロキシフラボン(0.105g、0.442mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.193g、0.933mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(9.80mg、0.0802mmol)を、アジピン酸モノベンジルエステル(0.168g、0.754mmol)をジクロロメタン(10mL)に溶解させた溶液に添加し、混合物を室温で19時間にわたってN2下で攪拌した。水(50μL)を添加し、得られた混合物を10分間攪拌し、次いでジエチルエーテル(10mL)を添加した。混合物を濾過し、濾液を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(トルエン中15〜40%EtOH)で精製して、黄色のゴム質としてのモノベンジルエステル(0.16g、80%)を得た。少量部をEtOAc/軽油から再結晶させて、無色の粉末を得た(融点=74〜76℃)。1H NMR (399.7 MHz, CDCl3) δ 1.60 - 1.75 (m, 4H, CO2CH2CH2); 2.31 (t, J = 6.8 Hz, 2H, CO2CH2); 2.55 (t, J = 6.8 Hz, 2H, CO2CH2); 5.02 (s, 2H, CH2Ph); 7.20 - 7.28, 7.39 - 7.45 (2m, H, PhCH2, H3', 4', 5'); 7.34 (dd, 1H, J5,6 = 8.0 Hz, J6,7 = 7.6 Hz, H6); 7.46 (d, 1H, J7,8 = 8.0 Hz, H8); 7.62 (ddd, 1H, J5,7 = 1.6 Hz, J6,7 = 7.6 Hz, J7,8 = 8.0 Hz, H7); 7.73 - 7.77 (m, 2H, H2', 6'); 8.16 (dd, 1H, J5,7 = 1.6 Hz, H5). 13C NMR (100.5 MHz, CDCl3) δ 25.29 (2C, CO2CH2CH2); 34.62, 34.91 (2C, CO2CH2); 67.30 (1C, CH2Ph); 119.21, 124.68, 126.29, 127.17, 129.29, 129.40, 129.63, 129.75, 131.05, 132.36, 134.72, 135.06, 137.03, 156.71, 157.45 (20C
, Ar); 171.54, 173.27, 174.16 (3C, C=O). 元素分析: 実測値: C, 73.54; H, 5.27; C42H36O8 計算値: C, 73.67; H, 5.30%. HRMS (ESI+) m/z 479.1469, C28H24NaO6 [M + Na]+ 計算値: 479.1471.
【0134】
3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート
【化30】
3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン(312mg、0.7mmol)およびPd(OH)2(49.4mg)をTHF:EtOH(9:1)+0.05%酢酸(15mL)に含めた混合物をH2で5時間処理した。粗生成物を(セライトで)濾過し、濾液を濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(トルエン中10〜25%のEtOAc+1%酢酸)で精製して、淡黄色の固体(0.211g、89%)としてのヘミアジペートを得た。少量部をEtOAc/軽油から再結晶させた(融点=118〜121℃)。1H NMR (399.7 MHz, CDCl3) δ 1.66 - 1.83 (m, 4H, CH2CH2CO2); 2.38 (t, J = 6.8 Hz, 2H, CH2CO2); 2.63 (t, J = 6.8 Hz, 2H, CH2CO2); 7.42 (dd, 1H, J5,6 = 8.0 Hz, J6,7 = 8.0 Hz, H6); 7.47 - 7.53 (m, 3H, H3', 4', 5'); 7.54 (d, 1H, J7,8 = 8.4 Hz, H8); 7.70 (ddd, 1H, J5,7 = 1.6 Hz, J6,7 = 8.0 Hz, J7,8 = 8.4 Hz, H7); 7.81 - 7.86 (m, 2H, H2', 6'); 8.24 (dd, 1H, J5,6 = 8.0 Hz, J5,7 = 1.6 Hz, H5). 13C NMR (100.5 MHz, CDCl3) δ 25.01, 25.20 (2C, CO2CH2CH2); 34.57 (2C, CO2CH2); 119.20, 124.66, 126.33, 127.21, 129.41, 129.76, 131.04, 132.40, 134.70, 135.10, 156.74, 157.60 (14C, Ar); 171.52, 173.38, 179.36 (3C, C=O). 元素分析: 実測値: C, 68.89; H, 4.91; C21H18O6 計算値: C, 68.85; H, 4.95%. HRMS (ESI+) m/z 389.1000, C21H18NaO6 [M + Na]+ 計算値: 389.1001].
【0135】
4'-(ベンジルオキシ)-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン
【化31】
二塩化エチレン(EDC)(843mg、4.40mmol)を、4'-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシフラボン(1.00g、2.90mmol)、アジピン酸モノベンジルエステル(1.30g、5.50mmol)およびDMAP(354mg、2.89mmol)をジクロロメタン(110mL)に溶解させた溶液に添加し、混合物を一晩攪拌した。次いで、反応混合物を濃縮し、残渣を酢酸エチルに溶解した。有機相を水(×3)、1MのHCl(×3)、飽和NaHCO3(×3)、塩水(×3)で洗浄し、(MgSO4で)乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(50%EtOAc/石油)によって精製して、褐色の油としてのベンジルエステルを得、それをEtOAc/石油から再結晶させて、無色の固体(900mg、55%)を得た(融点93℃)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 1.77-1.83 (m, 4H, CH2CH2), 2.42 (t, 2H, J = 7.5 Hz, CH2CO), 2.67 (t, 2H, J = 6.5 Hz, CH2CO), 5.13 (s, 2H, CH2Ph), 5.15 (s, 2H, CH2Ph), 7.09 (d, 1H, J7,8 = 8.5 Hz, H8), 7.35 (app. d, 2H, J = 8.5 Hz, H2',6'), 7.40-7.46 (m, 11H, 2 × Ph, H6), 7.69 (ddd, 1H, J5,7 = 1.5, J6,7 = 7.0, J7,8 = 8.5 Hz, H7), 7.85 (app. d, 2H, J = 8.5 Hz, H3',5'), 8.25 (d, 1H, J5,6 = 8 Hz, H5); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 24.2 (× 2), 33.6, 33.8 (4C, CH2), 66.2, 70.1 (2C, CH2Ph), 115.0, 117.9, 122.4, 123.5, 125.0, 126.0, 127.4, 128.1, 128.2, 128.5, 128.7, 130.0, 133.0, 133.7, 135.9, 136.2, 155.5, 156.1, 161.1 (Ar), 170.4, 172.0, 173.0 (3C,
C=O); IR (薄膜) 2937, 1760, 1730, 1646, 1602, 1507, 1468, 899 cm-1; 元素分析: 実測値 C, 74.67; H, 5.29, C35H30O7 計算値: C, 74.72; H, 5.37%.
【0136】
4'-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート
【化32】
4'-(ベンジルオキシ)-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン(400mg、0.711mmol)およびPd(OH)2(56mg)をTHF(10mL)、エタノール(1.2mL)およびAcOH(100μL)に含めた混合物を水素(50psi)で18時間処理した。次いで、反応混合物を(セライトで)濾過し、パッドをTHFで洗浄した。濾液を濃縮し、固体の残渣をフラッシュクロマトグラフィー(70%のTHF/トルエン+1%のAcOH)で精製し、得られた固体をTHF/石油から再結晶させて、無色の固体としての酸(150mg、55%)を得た(融点177〜180℃)。1H NMR (500 MHz, d6-DMSO) δ 1.56-1.66 (m, 4H, CH2CH2), 2.25 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.64 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 6.96 (app. d, 2H, J = 8.5 Hz, H2',6'), 7.52 (t, 1H, J6,7 = J7,8 = 7.5 Hz, H7), 7.80 (app. d, 2H, J = 7.5 Hz, H3',5'), 7.78 (m, 1H, H8), 7.85 (t, 1H, J5,6 = J6,7 = 7.5 Hz, H6), 8.06 (d, 1H, J5,6 = 8.0 Hz, H5); 13C NMR (125 MHz, d6-DMSO) δ 23.8, 23.9, 32.9, 33.3 (4C, CH2), 115.9, 118.5, 119.7, 122.7, 125.0, 125.6, 130.1, 131.9, 134.5, 154.9, 155.8 160.6 (Ar), 170.4 170.9, 174.3 (3C, C=O); IR 3257, 2944, 2869, 1765, 1706, 1595, 854 cm-1; HRMS (ESI+) m/z 383.1123, C21H19O7 [M + H]+ 計算値: 383.1131.
【0137】
3',4'-ジベンジルオキシ-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン
【化33】
3',4'-ジベンジルオキシフラボノール(1.21g、2.68mmol)を乾燥ジクロロメタン(100mL)に溶解させた攪拌溶液にアジピン酸モノベンジルエステル(1.91g、5.04mmol)を添加した後、塩酸EDC(0.764g、3.98mmol)およびDMPA(0.324g、2.65mmol)を添加し、得られた混合物を室温で3時間にわたってN2下で攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、酢酸エチル(100mL)に再懸濁させた。次いで、懸濁物を水(3×50mL)、1MのHCl(3×50mL)、飽和NaHCO3(3×50mL)および塩水(3×50mL)で洗浄した。有機抽出物を(MgSO4で)乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮し、黄色の残渣をEtOAc/軽油から再結晶させて、線毛質の黄色固体としてのベンジルエステル(1.58g、88%)を得た(融点=84〜85℃)。1H NMR (399.8 MHz, CDCl3); δ 1.70 - 1.80 (m, 4H, CH2CH2); 2.38 (t, 2H, J = 6.8 Hz, CH2CO); 2.55 (m, 2H, CH2CO); 5.10 (s, 2H, CH2Ph); 5.20 (s, 2H, CH2Ph); 5.24 (s, 2H, CH2Ph); 7.01 (d, 1H, J7,8 = 8.4 Hz, H8); 7.26 - 7.49 (m, 19H, Ar, H6, 2', 5', 6'); 7.62 (ddd, 1H, J5,7 = 1.2 Hz, J6,7 = 7.2 Hz, J7,8 = 8.4 Hz, H7); 8.22 (dd, 1H, J5,6 = 7.6 Hz, J5,7 = 1.2 Hz, H5). 13C NMR (100.5 MHz, CDCl3) δ 25.33 (2C, CH2CH2CO2); 34.59, 34.93 (2C, CH2CO2); 67.30, 71.91, 72.59 (2C, CH2Ph); 114.77, 115.84, 119.06, 123.76, 123.84, 124.60, 126.19, 127.12, 128.25, 128.36, 129.15, 129.29, 129.64, 129.73, 130.12, 134.23, 134.89, 137.
05, 137.54, 137.85, 149.61, 152.64, 156.53, 157.00 (32C, Ar); 171.49, 173.12, 174.18 3C, C=O). 元素分析: 実測値: C, 75.39; H, 5.47; C42H36O8 計算値: C, 75.43; H, 5.43%. HRMS (ESI+) m/z 691.2303, C42H36NaO8 [M + Na]+ 計算値: 691.2308.
【0138】
3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート
【化34】
3',4'-ジベンジルオキシ-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン(2.12g、3.16mmol)およびPd(OH)2(107mg)を、0.05%酢酸を含有するTHF:EtOH(9:1)(50.0mL)に含めた混合物を高圧下で5時間にわたってH2で処理した。反応混合物を(セライトで)濾過し、濃縮して、濃緑色の固体を得た。緑色の残渣をフラッシュクロマトグラフィー(30〜90%のTHF/トルエン+1%の酢酸)で精製した後、THF/軽油から再結晶させて、淡褐色の固体としての純粋のヘミアジペート(0.70g、56%)を得た(融点=194〜197℃)。1H NMR (399.8 MHz, CDCl3); δ 1.44 - 1.62 (m, 4H, CH2CH2); 2.10 (t, 2H, J = 6.8 Hz, CH2CO); 2.44 (t, 2H, J = 6.8 Hz, CH2CO); 6.73 (d, 1H, J5',6' = 8.4 Hz, H5'); 7.09 (dd, 1H, J2',6' = 2.0 Hz, J5',6' = 8.4 Hz, H6'); 7.16 - 7.22 (m, 2H, H6, 2'); 7.32 (d, 1H, J7,8 = 8.0 Hz, H8); 7.48 (ddd, 1H, J5,7 = 1.6 Hz, J6,7 = 6.8 Hz, J7,8 = 8.0 Hz, H7); 7.94 (dd, 1H, J5,6 = 8.4 Hz, J5,7 = 1.6 Hz, H5). 13C NMR (100.5 MHz, d6-DMSO) δ 25.30, 25.62 (2C, CH2CH2CO2); 34.43, 34.81 (2C, CH2CO2); 116.59, 117.42, 119.98, 121.41, 122.06, 124.13, 126.51, 127.07, 133.32, 136.04, 146.97, 150.65, 156.35, 157.27 (14C, Ar); 171.97, 173.46, 179.95 (3C, C=O). 元素分析: 実測値: C, 68.89; H, 4.91; C21H18O6 計算値: C, 68.85; H, 4.95 %. HRMS (ESI+) m
/z 389.1000, C21H18NaO6 [M + Na]+ 計算値: 389.1001.
【0139】
3,4'-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン
【化35】
二塩化エチレン(1.13g、5.91mmol)を、3,4'-ジヒドロキシフラボン(500mg、1.97mmol)、アジピン酸モノベンジルエステル(1.86g、7.88mmol)およびDMAP(481mg、3.94mmol)をジクロロメタン(30mL)に溶解させた溶液に添加し、混合物を室温で50分間攪拌した。次いで、反応混合物を濃縮し、残渣を酢酸エチルに溶解した。有機相を水(×3)、1MのHCl(×3)、飽和NaHCO3(×3)、塩水(×3)で洗浄し、(MgSO4で)乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(50%EtOAc/石油)によって精製して、無色の油としてのジエステルを得、それをEtOAc/石油から結晶化させて、無色の油(850mg、62%)を得た(融点79℃)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 1.76-1.82 (m, 8H, 2 × CH2CH2), 2.42 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.45 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.62 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.65 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 5.12 (s, 2H, CH2Ph), 5.14 (s, 2H, CH2Ph), 7.25 (d, 2H, J = 8.5 Hz, H2',6'), 7.31-7.37 (m, 10H, 2 × Ph), 7.44 (t, 1H, J5,6 = J6,7 = 8.5 Hz, H6), 7.55 (d, 1H, J7,8 = 8.5 Hz, H8), 7.72 (td, 1H, J6,7 = J7,8 = 8.5, J7,5 = 1.5 Hz, H7), 7.89 (d, 2H, J = 8.5 Hz, H3',5'), 8.25 (dd, 1H, J5,6 = 8.5, J5,7 = 1.5 Hz, H8); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 24.16, 24.17, 24.21, 33.5, 33.8, 33.9, 66.1, 66.3 (CH2), 118.0, 121.9, 123.5, 125.2, 126.1, 127.4, 128.1, 128.18, 128.22, 128.49
, 128.53, 129.7, 133.7, 134.0, 135.9, 136.0, 152.8, 155.4, 155.5 (Ar), 170.3, 171.2, 172.1, 173.97, 173.0 (5C, C=O); IR 2943, 1765, 1732, 1652, 1501, 1465, 902 cm-1; 元素分析: 実測値 C, 71.30; H, 5.56, C41H38O10 計算値: C, 71.29; H, 5.55%.
【0140】
フラボン-3,4'-ビス(ヘミアジペート)
【化36】
3,4'-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン(435mg、0.629mmol)およびPd(OH)2(50mg)をEtOAc(5mL)に含めた混合物を水素で2時間処理して、灰色の沈殿を得た。THFを添加して、沈殿を溶解し、混合物を(セライトで)濾過した。パッドをTHFで洗浄し、濾液を濃縮した。固体の残渣をTHF/石油から再結晶させて、無色の固体としてのビス(ヘミアジペート)(183mg、50%)を得た(融点133℃)。1H NMR (500 MHz, d6-DMSO) δ 1.55-1.70 (m, 8H, CH2CH2), 2.24 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.27 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.63 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.64 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 7.37 (app. d, 2H, J = 9.0 Hz, H3',5'), 7.55 (dd, 1H, J5,6 = 8.5, J6,7 = 7.5, Hz, H6), 7.80 (d, 1H, J7,8 = 8.5 Hz, H8), 7.88 (ddd, 1H, J6,7 = 7.5, J7,8 = 8.5, J5,7 = 1.5 Hz, H7), 7.96 (app. d, 2H, J = 9.0 Hz, H2',6'), 8.08 (dd, 1H, J5,6 = 8.5, J5,7 = 1.5 Hz, H5); 13C NMR (125 MHz, d6-DMSO) δ 23.77, 23.82, 32.6, 33.2, 33.3, 44.3 (CH2), 118.7, 122.5, 122.6, 122.7, 125.1, 126.8, 129.7, 132.9, 134.8, 152.7, 154.9, 155.1 (Ar), 170.4, 171.1, 171.4, 174.3, 174.3 (5C, C=O); IR 3059, 2940, 2873, 1768, 1706, 1504, 759 cm-1; HRMS (ESI-) m/z 509.1441, C27H25O10 [M - H]- 計算値: 509.1442.
【0141】
3,7-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン
【化37】
二塩化エチレン(EDC)(517mg、2.7mmol)を、3,7-ジヒドロキシフラボン(250mg、0.983mmol)、アジピン酸モノベンジルエステル(921mg、3.90mmol)およびDMAP(220mg、1.80mmol)をジクロロメタン(25mL)に溶解させた溶液に添加し、混合物を室温で1時間攪拌した。次いで、反応混合物を濃縮し、残渣を酢酸エチルに溶解した。有機相を水(×2)、1MのHCl(×2)、飽和NaHCO3(×2)、塩水(×2)で洗浄し、(MgSO4で)乾燥し、濃縮した。残渣を、50%EtOAc/石油で溶出するシリカのパッドで濾過して固体を得、それをEtOAc/石油から再結晶させて、無色の固体としてのジエステル(565mg、91%)を得た(融点58℃)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 1.74-1.82 (m, 8H, CH2CH2 × 2), 2.39 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.45 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.62-2.64 (m, 4H, CH2CO × 2), 7.15-7.17 (m, 2H, H2', 6'), 7.30-7.36 (m, 10H, 2 × Ph), 7.39 (d, 1H, J6,8 = 1.6 Hz, H8), 7.48-7.51 (m, 2H, H3', 5'), 7.81-7.83 (m, 2H, 4' H6) 8.25 (d, 1H, J5,6 = 9, H5); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 24.1, 24.20, 24.21, 33.5, 33.80, 33.82, 34.0, 44.7, 66.2, 66.3, (CH2), 111.0, 119.5, 121.5, 172.5, 128.19, 128.22, 128.3, 128.5, 128.6, 128.7, 129.8, 131.3, 133.7, 135.9, 136.0, 154.8, 156.1, 156.6 (Ar), 170.3, 170.8, 171.5, 172.96, 173.0 (5C, C=O) IR 3071, 3035, 2944, 2876, 1760, 1726, 1615, 848 cm-1; 元素分析:
実測値 C, 71.34; H, 5.60%, C41H38O10 計算値: C, 71.29; H, 5.55%.
【0142】
3,7-ジヒドロキシフラボン-3,7-ビス(ヘミアジペート)
【化38】
3,7-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン(565mg、0.818mmol)およびPd(OH)2(65mg)をEtOAc(10mL)に含めた混合物を水素で3時間処理した。灰色の沈殿が形成され、それが溶解するまでTHFを添加した。混合物を(セライトで)濾過し、パッドをTHFで洗浄し、濾液を濃縮した。固体の残渣をTHF/石油から再結晶させて、無色の固体としての二酸(311mg、76%)を得た(融点128℃)。1H NMR (400 MHz, d6-DMSO) δ 1.55-1.74 (m, 8H, CH2CH2 × 2), 2.23 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.28 (t, 2H, J = 7.0 Hz, CH2CO), 2.61-2.68 (m, 4H, CH2CO × 2), 7.34 (m, 1H, H4'), 7.58-7.61 (m, 3H, H6, H2', 6'), 7.68 (d, 1H, J6,8 = 1.6 Hz, H8), 7.87-7.89 (m, 2H, H3', 5'), 8.12 (d, 1H, J5,6 = 8.8, H5); 13C NMR (100 MHz, d6-DMSO) δ 23.7, 23.76, 23.78, 23.9, 32.9, 33.19, 33.24, 33.28 (CH2), 111.9, 120.5, 120.6, 126.6, 128.1, 129.0, 129.2, 131.7, 133.0, 154.9, 155.6, 155.9 (Ar), 170.4, 170.6, 171.1, 174.2, 174.3 (5C, C=O); IR 3035, 2952, 2920, 1762, 1708, 1112 cm-1; 元素分析: 実測値 C, 63.64; H, 5.14%, C27H26O10 計算値: C, 63.53; H, 5.13%.
【0143】
リン酸フラボノールの調製
3-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)フラボン
【化39】
ジベンジルジイソプロピルホスホラミダイト(12.5mL、38.0mmol)および1H-テトラゾール(74.0mL、31.7mmol)を、3-ヒドロキシフラボン(3.00g、12.6mmol)を乾燥ジクロロメタン(150mL)に溶解させた溶液に添加した。反応混合物を室温で2時間にわたってN2下で攪拌した。次いで、混合物を-78度まで冷却し、m-CPBA(8.72g、50.6mmol)を添加した。混合物を室温に戻し、さらに45分間攪拌した。反応混合物を0.25MのNa2S2O4(3×100mL)、飽和NaHCO3(3×100mL)および水(2×100mL)で洗浄した。有機抽出物を(MgSO4で)乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、粗製の白色固体を得た。その粗製物質をフラッシュクロマトグラフィー(トルエン中20〜50%EtOAc)によって精製した後、EtOAc/軽油で結晶化させて、白色の線毛質の固体としての保護リン酸塩(5.28g、84%)を得た(融点=85〜88℃)。1H NMR (399.7 MHz, CDCl3); δ 5.09 - 5.17 (m, 4H, CH2Ph); 7.22 - 7.30, 7.38 - 7.47 (2 × m, 14H, Ar, H3', 4', 5',6'); 7.51 (d, J7,8 = 8.5 Hz, H8); 7.69 (ddd, J5,7 = 1.5 Hz, J6,7 = 7.2 Hz, J7,8 = 8.5 Hz, 1H, H7); 7.93 - 7.96 (m, 2H, H2',6'); 8.29 (dd, J5,6 = 7.5 Hz, J5,7 = 1.5 Hz, 1H, H5). 13C NMR (100.5 MHz, CDCl3); δ 78.13 (2C, CH2Ph); 119.13, 124.86, 126.23, 127.22, 128.90, 129.36, 129.48, 129.62, 130.06, 131.03, 132.29, 135.06, 157.03, 157.10 (25C, Ar); 136.89 (1C, JC,P = 8.0 Hz, C-O-ホスフェート); 173.87 (1C, C=O). 31P NMR (161.8 MHz, CDCl3); δ -7.45 (s, P=O). 元素分析: 実測値: C, 69.81; H, 4.60; C29H23O6P 計算値: C, 69.88; H, 4.65%. HRMS (ESI+) m/z 521.1126, C29H23NaO6P [M + Na]+ 計算値: 521.1130].
【0144】
3-ヒドロキシフラボン-3-リン酸二ナトリウム塩
【化40】
3-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)フラボン(2.05g、4.09mmol)および炭素上パラジウム(10%、0.25g)をEtOH:水(4:1、250mL)に溶解させた溶液を大気圧で3.5時間にわたってH2で処理した。反応混合物を(セライトで)濾過し、濾液をNaOH(0.50g/水100mL)で処理した。水性混合物を減圧下で濃縮し、次いで水/アセトンから結晶化させて、淡黄色の結晶としてのリン酸塩(1.03g、収率87%)を得た。1H NMR (499.7 MHz, D2O) δ 7.33 (dd, 1H, J5,6 = 8.0 Hz, J5,7 = 1.2 Hz, H6); 7.40 - 7.46 (m, 3H, H3', 4', 5'); 7.52 (d, 1H, J7,8 = 8.5 Hz, H8); 7.64 (ddd, 1H, J5,7 = 1.2 Hz, J6,7 = 7.5 Hz, J7,8 = 8.5 Hz, H7); 7.97 (dd, 1H, J5,6 = 8.0 Hz, J5,7 = 1.2 Hz, H5); 8.10 (m, 2H, H2', 6'). 13C NMR (100.5 MHz, D2O) δ 118.29, 122.92, 124.97, 125.06, 128.50, 129.15, 130.92, 131.33, 134.22, 155.06, 156.68 (13C, Ar); 136.11 (1C, JC, P = 6.8 Hz, C-O-P); 177.15 (1C, C=O). 31P NMR (161.8 MHz, D2O) δ 2.98 (s, P). 元素分析: 実測値: C, 49.68; H, 2.51; C15H11Na2O6P 計算値: C, 49.74; H, 2.50%.
【0145】
4'-(ベンジルオキシ)-3-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)フラボン
【化41】
1H-テトラゾール(483mg、6.89mmol)を、4'-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシフラボン(1.00g、2.72mmol)、ジベンジルN,N-ジイソプロピルホスホラミダイト(1.5mL、1.6g、4.4mmol)のジクロロメタン(30mL)混合物に添加し、反応物を室温で2時間攪拌した。さらなるジベンジルN,N-ジイソプロピルホスホラミダイト(1.0ml、1.1g、1.5mmol)を添加し、反応物をさらに1時間攪拌した。次いで、反応混合物を-78℃まで冷却し、m-CPBA(3.00g、12.1mmol、70%w/w)を添加した。次いで、反応物を室温まで暖め、45分間攪拌した。有機層を0.25MのNa2S2O4(×3)、飽和NaHCO3(×3)、塩水(×3)で洗浄し、(MgSO4で)乾燥させ、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(50%EtOAc/石油)によって精製して、黄色の固体を得、それをEtOAc/石油から再結晶させて、無色の固体としてのリン酸塩(1.01g、58%)を得た(融点101℃)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 5.02 (s, 2H, CH2Ph), 5.16 (s, 2H, CH2Ph), 5.17 (s, 2H, CH2Ph), 6.97 (app. d, 2H, J = 8.8 Hz, H3',5'), 7.29-7.36 (m, 15H, 3 × Ph), 7.41 (t, 1H, J5,6 = J6,7 = 8.0 Hz, H6), 7.51 (d, J7,8 = 8.5 Hz, H8), 7.68 (dd, 1H, J6,7 = 8.0, J7,8 = 8.5 Hz, H7), 7.96 (app. d, 2H, J = 8.8, H2',6'), 8.30 (dd, 1H, J7,8 = 8.5, J6,8 =1.5 Hz, H8); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 69.9, 70.0 (CH2), 144.7, 117.9, 122.3, 123.7, 125.0, 126.1, 127.4, 127.8, 128.2, 128.4, 128.7, 130.7, 133.8, 135.8, 135.9, 136.1, 155.2, 155.7, 161.0 (Ar), 172.6 (1C, C=O); 31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ -5.3 (s, P); IR 3063, 3031, 1647, 1601, 1506, 983 cm-1; 元素分析: 実測値 C, 72.60; H, 5.05%, C36H29O7P 計算値: C, 71.52; H, 4.83%.
【0146】
フラボン-3-リン酸二ナトリウム塩
【化42】
4'-(ベンジルオキシ)-3-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)フラボン(1.00g、1.65mmol)およびPd(OH)2(120mg)をTHF(10mL)および水(15mL)に含めた混合物を水素で3日間処理した。混合物を(セライトで)濾過し、パッドをTHFおよび水で洗浄し、濾液を濃縮した。固体の残渣をTHF(20mL)および水(10mL)に溶解し、トリエチルアミン(600μL、4.3mmol)を添加し、室温で30分間攪拌した。混合物を濃縮し、残渣を水に溶解した。不溶性物質を濾過によって除去し、溶液をイオン交換カラムに通した。溶離液を濃縮して、固体を得、それをアセトン/水から再結晶させて、褐色の固体としてのリン酸塩(226mg、36%)を得た(融点182〜184℃)。1H NMR (500 MHz, D2O) δ 7.07 (app. d, 2H, J = 8.5 Hz, H3',5'), 7.62 (t, 1H, J5,6 = J6,7 = 7.5 Hz, H6), 7.72 (d, J7,8 = 8.5 Hz, H8), 7.92 (t, 1H, J6,7 = J7,8 = 7.5 H7), 8.18 (d, 1H, J5,6 = 7.5 Hz, H5) 8.19 (app. d, 2H, J = 8.5, H2',6'); 13C NMR (100 MHz, D2O) δ 118.4, 122.5, 122.6, 124.9, 125.3, 131.2, 134.4, 155.0, 157.1, 157.2, 158.5 (Ar), 176.3 (1C, C=O); 31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ 0.60 (s, P); IR 3281, 1597, 1579, 1542, 1393, 903 cm-1; HRMS (ESI-) m/z 333.0160, C15H10O7P [M + H]- 計算値: 333.0159.
【0147】
塩化4'-(ベンジルオキシ)-3-(トリメチルアンモニウムイルプロピルカルボニルオキシ)フラボン
【化43】
塩化カルボキシプロピルトリメチルアンモニウム(0.5g、2.7mmol)と塩化チオニル(2mL、3.26g、27mmol)の混合物を室温で一晩攪拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をニトロベンゼン(2mL)に溶解し、4'-ベンジルオキシフラボノール(344mg、1.00mmol)を添加した。溶液を室温で30分間攪拌し、次いで65℃で5時間攪拌した。ニトロベンゼンを減圧下(80℃水浴)で除去し、残渣をシリカのプラグによる濾過(EtOAc:MeOH:H2O(7:2:1))によって精製した。残渣をTHFで洗浄し、エタノール/軽油から再結晶させて、黄色の粉末(30mg)を得た。1H NMR (399.7 MHz, CDCl3) δ 2.01-2.13 (2H, m, CH2), 2.78 (2H, d, J 6.8 Hz, CH2), 3.09 (9H, s, NMe3), 3.25-3.35 (2H, m, CH2N), 5.21 (2H, m, CH2Ph), 7.24 (2H, app. d, J 9.2 Hz, H2',6'), 7.33-7.49 (m, 5H, Ph), 7.54 (1H, dd, J 8.0, 8.0 Hz, H6), 7.81 (1H, d, J7,8 8.4 Hz, H8), 7.88 (1H, d, J 8.0, 8.4 Hz, H7), 7.92 (2H, app. d, J 9.2 Hz, H3',5'), 8.07 (1H, d, J5,6 8.0 Hz, H5).
【0148】
塩化4'-(ヒドロキシ)-3-(トリメチルアンモニウムイルプロピルカルボニルオキシ)フラボン
【化44】
フラボン(30mg)およびPd/C(5%、5mg)をEtOH(5mL)に含めた混合物を水素環境下で2時間攪拌した。混合物を濾過し、溶媒を蒸発させて、黄色の固体を得た。
【0149】
フラボノイド誘導体の血管弛緩および抗酸化活性
Ca2+誘発収縮に対するフラボノイド誘導体の効果
細胞外Ca2+の流入に対する応答に対するフラボノイドの効果を測定するために、Ca2+を含まない高K+溶液(60mM、KPSS)においてフラボノイドの存在下でのCa2+の外因性導入に対する収縮応答を調べた。Ca2+を含まない通常のPSSにおいて1gの静止張力で最初に大動脈環を45分間にわたって平衡化した。次いで、浴媒体(bath medium)をCa2+を含まないKPSSで45分間にわたって置換して、Ca2+(3×10-3M)に対する基準収縮率を測定した。Ca2+を含まないPSSとの30分間の再平衡期間の後に、ある範囲の濃度(10-8〜10-4M)のビヒクル、3',4'-ジヒドロキシフラボノール、3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート、3',4'-ジヒドロキシ-3-ヘミアジペート、3-ヒドロキシフラボン-3-ホスフェートの存在下で、KPSSにおけるCa2+(10-5〜3×10-3M)に対する累積的な収縮応答を測定した。Ca2+に対する応答を調べる前に、フラボノイドに対して20分間のインキュベーション期間を与えた。
【0150】
フラボノイド誘導体による弛緩
内皮結合性の試験に続いて、環を繰り返し洗浄し、30分間にわたって再平衡させてから、PE(10-8〜2×10-7M)および9,11-ジデオキシ-9α、11α-エポキシメタノ-プロスタグランジンF2α(U46619、10-9〜10-8M)を添加して、40〜60%のKPSS誘発収縮率の範囲で活性力を生成させた。PEおよびU46619の濃度を調整することによってそれぞれのグループ間の前収縮のレベルを一致させた。3',4'-ジヒドロキシフラボノール、3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート、3',4'-ジヒドロキシ-3-ヘミアジペート、3-ヒドロキシフラボン-3-ホスフェートについて、10-8〜10-4Mの範囲の累積的濃度応答曲線を作成した。
【0151】
ヘミアジペート誘導体についてはエステラーゼ、ブチルコリンエステラーゼ(BuCHE、1000U/L)の存在下で、フォスフェート塩誘導体の場合はホスファターゼ(1000U/L)の存在下で実験を行った。
【0152】
インビトロ検定におけるスーパーオキサイドレベルに対するフラボノイド誘導体の効果
ラットから単離した大動脈断片におけるスーパーオキサイド大動脈生成を、ルシゲニン化学発光を用いて測定した。大動脈環を上述のように調製し、氷冷クレブス-(N-[2-ヒドロキシエチル]ピペラジン-N'-[2-エタンスルホン酸](HEPES緩衝剤)(組成(mM);NaCl:99.0、KCl:4.7、KH2PO4:1.0、MgSO4・7H2O:1.2、D-グルコース:11.0、NaHCO3:25.0、CaCl2・2H2O:2.5、Na-HEPES:20.0)に仕込んだ。ジエチルチオカルバミド酸(DETCA、10-3M)を含有するクレブス-HEPES緩衝剤中で大動脈環を37℃、pH7.4で45分間予めインキュベーションして、スーパーオキサイドジスムターゼ、およびNADPHオキシダーゼに対する基質としてのフォスフェートβ-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADPH、10-4M)、および正の対照としての3',4'-ジヒドロキシフラボノール(10-4M)、ビヒクル、3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート、3',4'-ジヒドロキシ-3-ヘミアジペート、3-ヒドロキシフラボン-3-ホスフェート(10-8〜10-4M)を不活性化した。1ウェル当たり0.3mlのクレブス-HEPES緩衝剤をルシゲニン(5×10-5M)およびビヒクルまたはフラボノイド(10-8〜10-4M)とともに含む96ウェルのオプチプレートにおいて12サイクルにわたってバックグラウンドフォトン放射量を測定した。各サイクルを1分毎に計数した。バックグラウンド読取りが完了した後に、インキュベーションした大動脈環を適切なウェルに移し、フォトン放射量を上記のように再度計数した。次いで、組織を65℃のオーブンに48時間にわたって仕込んで、スーパーオキサイド生成を乾燥組織の重量に対して正規化することを可能にした。
【0153】
エステラーゼの存在または不在下でのインビトロ検定におけるスーパーオキサイドレベルに対するフラボノイド誘導体の効果
NADPHの存在下でラットの単離大動脈断片に生成されたスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対するビヒクル、3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)(DiOHF3HA、10-8M〜10-4M)、およびブチリルコリンエステラーゼ(BuCHE、100、300および1000U/L)の存在および不在下でのDiOHF(10-4M)の効果を対照に対する百分率で表した。用いた方法は、ブチリルコリンエステラーゼを添加したこと以外は上述の通りであった。
【0154】
ホスファターゼの存在または不在下でのインビトロ検定におけるスーパーオキサイドレベルに対するフラボノイド誘導体の効果
対照に対する百分率で表されるNADPHの存在下でラット大動脈に生成されたスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対するビヒクル、ホスファターゼ(1000U/L)の存在または不在下での3-ヒドロキシフラボン-3-ホスフェート(10-8M〜10-4M)を3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペートについて上述のように測定した。ホスファターゼの不在下での3-ヒドロキシフラボン-3-ホスフェートを使用して、スーパーオキサイド陰イオン生成に対する測定可能な効果を観察した。これは、単離されたラット組織における天然ホスファターゼの存在によって生じるものと考えられた。
【0155】
ラットの血管機能に対するフラボノイド誘導体の効果についてのインビボ試験
3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(15)の水溶液の単位投与物を、麻酔下の雄のSprague Dawleyラットのグループに静脈内投与し、一定時間にわたって血圧を監視した。
【0156】
フラボノイド誘導体によって引き起こされたインビボ血管弛緩を示す、ラットの血圧の有意な低下が観察された。水溶液を第2のグループのラットに投与したときは、効果が観察されなかった。
【0157】
ラットの血圧の明確な低下をもたらした他の合成フラボノイド誘導体の水溶液を用いて実験を繰り返した。
【0158】
活性および薬物動態についてのスクリーニング
ラット大動脈の調製
ラットの下行胸部大動脈を迅速に切開し、クレブス-重炭酸塩溶液に入れた。表面結合組織、および大動脈を囲む脂肪を除去し、大動脈を2〜3mmの長さの断片に切断し、有機浴に配置した。
【0159】
AChおよびSNP弛緩に対するフラボノイドの効果
洗浄、および30分間の再平衡の後に、大動脈環をPEおよびU46619で準最大に前収縮させ、それを用いて、KPSS誘発最大収縮の45〜60%の活性張力を生成させた。フラボノイド、フラボノール、フラボン-3-ヘミアジペート(F3HA)、3',4'-ジヒドロキシフラボン、3',4'-ジヒドロキシフラボノール、3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(DiOHF3HA)およびフラボン-3-ホスフェート(F3P)の血管弛緩応答に対する効果を検討するときに、環を準最大に前収縮させる前に化合物の1つとともに20分間インキュベーションし、その後ACh(100nM〜10μM)またはSNP(10pM〜1μM)に対する累積濃度応答曲線を作成した。F3P(1000U/L)を使用した実験において、いくつかの実験では、ホスファターゼを使用して、フォスフェート塩を開裂させた。ブチリルコリンエステラーゼ(BuCHE、1000U/L)の存在および不在下でいくつかの実験を実施して、DiOHF3HAおよびF3HAにおけるアジペートを開裂させた。
【0160】
PE誘発収縮に対するフラボノールおよびフラボンの効果
環をある範囲の濃度(10-7〜10-4M)のDiOHF3HAまたはビヒクル(0.1%ジメチルスルホキシド、DMSO)とともに20分間インキュベーションした。次いで、内皮の無処理(EI)大動脈環におけるPE(10-9〜10-5M)に対する濃度応答曲線を作成した。BuCHE(1000U/L)の存在および不在下で実験を実施して、DiOHF3HAにおけるアジペートを開裂させた。
【0161】
Ca2+誘発収縮に対するフラボノイドの効果
細胞外Ca2+の流入に対する応答に対するフラボノイドの効果を測定するために、Ca2+を含まない高K+溶液(60mM、K+-PSS)においてフラボノイドの存在下でのCa2+の外因性導入に対する収縮応答を調べた。Ca2+を含まないPSSにおいて1gの静止張力で最初に大動脈環を45分間にわたって平衡化した。次いで、浴媒体をCa2+を含まないKPSSで45分間にわたって置換して、添加Ca2+(3mM)に対する基準収縮率を測定した。Ca2+を含まないPSSとの30分間の再平衡期間の後に、ビヒクル(0.1%DMSO)、あるいはある範囲の濃度の(10-7〜10-4M)の3'-ヒドロキシフラボノール、F3HA、DiOHF3HAまたはE3Pの存在下で、K+PSSにおけるCa2+(10-5〜3×10-3M)に対する累積的な収縮応答を測定した。Ca2+に対する応答を調べる前に、フラボノイドに対して20分間のインキュベーション期間を与えた。実験をBuCHE(1000U/L)の存在および不在下で実施して、F3HAおよびDiOHF3HAにおけるアジペートを開裂させた。F3Pを使用した実験において、いくつかの実験ではホスファターゼ(1000U/L)を使用して、フォスフェート塩を開裂させた。
【0162】
フラボノイドによる弛緩
内皮結合性の試験に続いて、環を繰り返し洗浄し、30分間にわたって再平衡させてから、PE(10-8〜2×10-7M)および9,11-ジデオキシ-9α、11α-エポキシメタノ-プロスタグランジンF2α(U46619、10-9〜10-8M)を添加して、40〜60%のKPSS誘発収縮率の範囲で活性力(active force)を生成させた。ビヒクル、3'-ヒドロキシフラボノール、F3HA、DiOHF3HA、F3Pについて、10-7〜10-4Mの範囲の累積的濃度応答曲線を作成した。実験を1000U/LのBuCHEの存在および不在下で実施して、F3HAおよびDiOHF3HAにおけるアジペートを開裂させた。F3Pを使用した実験において、いくつかの実験では1000U/Lのホスファターゼを使用して、フォスフェート塩を開裂させた。
【0163】
酸化応力の存在下でのAChに対する血管弛緩に対するフラボノールおよびフラボンの効果
AChに対する対照の累積的弛緩応答を、ピロガロール(2×10-5M)で処理された内皮の無処理大動脈環から得られた応答と比較した。ピロガロール(2×10-5M)に接触されたラット単離大動脈環におけるAChに対する応答に対するビヒクル(0.1%DMSO)、ホスファターゼ(1000U/L)またはF3P(10-6〜10-4M)の効果も測定した。大動脈環がPEおよびU44619による収縮の安定したレベルに達し、KPSS誘発張力の50から70%のレベルになったときに、ピロガロールを添加し、AChに対する累積的濃度応答曲線を測定する前に10分間おいた。F3Pを使用したいくつかの実験において、1000U/Lのホスファターゼを使用して、フォスフェート塩を開裂させた。
【0164】
麻酔下のラットにおけるDiOHF3HAおよびF3Pの効果
雄のSprague-Dawleyラット(250〜350g)をペントバルビトンナトリウム(60mgkg-1、ip)で麻酔した。気管を単離し、ポリエチレン気管チューブ(内径2.0mm)をカニューレ挿入し、ラットに自発的に呼吸させた。
【0165】
動脈圧および心拍数の測定
右頸動脈をカニューレ挿入し、ヘパリン化生理食塩水充填カニューレ(外径0.75mm、内径0.58mm)と接続し、圧力変換器に接続した。平均および位相動脈圧を連続的に測定し、ポリグラフに記録した。回転計を使用して、位相動脈圧から心拍数を導いた。
【0166】
フラボノールおよびジヒドロキシフラボンの抗酸化および血管効果
フラボノールおよびジヒドロキシフラボン(DiOHFne)は、ラット大動脈環によって生成されたスーパーオキサイドレベルの濃度依存低下を引き起こした。最高試験濃度(0.1mM)では、フラボノールおよびDiOHFneはともにスーパーオキサイドレベルを対照の36±3%に低下させた。フラボノールは、AChまたはSNPの弛緩効果に影響しなかった。DiOHFneは、DiOHFの効果より弱いラット大動脈の濃度依存弛緩を引き起こした。フラボノールは、DiOHFについての先の観察と比べて比較的弱いラット大動脈環のカルシウム誘発収縮の濃度依存低下を引き起こした。
【0167】
フラボン-3-ヘミアジペート(F3HA)の抗酸化および血管効果
F3HA(10-7〜10-4M)は、ラット大動脈によるスーパーオキサイド生成に対する阻害効果を示さなかったが、ブチリルコリンエステラーゼ(BuCHE、100〜1000U/ml)の存在は、F3HAの阻害効果の濃度依存上昇を引き起こした(図6)。F3HAは、最高試験濃度(0.1mM)における細胞外カルシウムの濃度の上昇に対する収縮応答のみを阻害した。
【0168】
ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(DiOHF3HA)の抗酸化および血管効果
DiOHF3HA(10-7〜10-4M)は、ラット大動脈によるスーパーオキサイド生成に対する阻害効果を示さなかったが、ブチリルコリンエステラーゼ(100〜1000U/ml)の存在は、濃度依存阻害効果を示した。DiOHF3HA単独では、AChまたはSNPに対する弛緩応答に対する効果を示さなかった。対照的に、BuCHE(1000U/ml)の存在下で、DiOHF3HAは、SNPに対する弛緩応答の感応性を有意に高めた。同様に、DiOHF3HA単独では、ラット大動脈のカルシウム誘発収縮に対する効果をほとんど示さなかったが、BuCHE(1000U/ml)の存在下で、DiOHF3HA(0.1mM)は、DiOHFと同等の阻害効果を示した。これは、アジペートがエステラーゼによって除去されたときに、ヘミアジペートが親DiOHFと同等の活性を有したことを示唆している。DiOHF3HAは、エステラーゼの存在下でのみ前収縮ラット大動脈環の直接的な弛緩を引き起こすことも確認された(図11)。
【0169】
DiOHF3HA(0.1、0.3、1、3mg/kg)を、少なくとも30分間の間隔をおきながら静脈注射し、平均動脈圧および心拍数のピーク変化を測定した。DiOHF3HAは、動脈圧(図12a)および心拍数(図12b)の用量依存低下を引き起こした。個別的な実験群において、ACh(0.3mg/kg iv)およびフェニレフリン(PE、30mg/kg iv)をDiOHF3HA(3mg/kg iv)の前、および30分後、すなわち動脈圧および心拍数が対照レベルに戻ったときに注射した。DiOHF3HAは、AChに対する抑制剤応答を有意に増強し、動脈圧のPE誘発上昇を減衰させた(図13)。
【0170】
ラット大動脈環において、DiOHF3HA(0.1mM)は、コリンエステラーゼの不在または存在下で、カルシウムイオノフォアA23187またはイソプレナリンに応答する内皮依存弛緩に対する効果を示さなかった。単独で与えられたDiOHF3HA(0.1mM)は、PE誘発収縮に対する効果を示さなかったが、エステラーゼの存在下で顕著な阻害を引き起こした。阻害のレベルは、同じ濃度(0.1mM)のDiOHFの存在に応答して観察されたものと同様であった。
【0171】
フラボン-3-ホスフェート(F3P)の抗酸化および血管効果
F3Pまたはホスファターゼ(1000U/L)は、ラット大動脈断片によるスーパーオキサイド生成に対する効果を示さなかったが、F3Pは、ホスファターゼの存在下でスーパーオキサイドレベルの濃度依存阻害を引き起こした。F3Pは、ホスファターゼの存在下で、AChによる弛緩に対するラット大動脈環の感応性を高めたが、SNPにより弛緩に対する感応性を高めなかった。ピロガロール(2×10-5M)の存在によって引き起こされた酸化応力は、AChに対する最大応答を有意に低下させたが、応答は、F3P+ホスファターゼの存在によって回復された。SNPに対する応答は、それらの処理のいずれによっても影響されなかった。F3Pは、カルシウム誘発収縮の小規模の阻害を引き起こしたが、その効果は、ホスファターゼの存在によって有意に高められた。
【0172】
F3P(0.1、0.3、1、3、10mg/kg)を、少なくとも30分間の間隔をおきながら静脈注射し、平均動脈圧および心拍数のピーク変化を測定した(図16a)。DiOHF3HAは、動脈圧および心拍数の用量依存低下を引き起こしたが(図12aおよび12b)、抑制剤応答は、DiOHF(1mg/kg iv)と比較して小さかった。
【0173】
概要
これらの試験は、フラボン、3',4'-ジヒドロキシフラボン(DiOHFne)、3',4'-ジヒドロキシフラボノール(DiOHF)、フラボン-3-ヘミアジペート(F3HA)、3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(DiOHF3HA)およびフラボン-3-ホスフェートの血管および抗酸化活性の評価を含んでいた。
【0174】
フラボン-3-ヘミアジペート(F3HA)単独では、単独で適用された場合は抗酸化または血管活性を示さなかったが、アジペート置換基を開裂させるコリンエステラーゼの存在は、カルシウム誘発収縮を阻害するF3HAの能力を発揮した。
【0175】
ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(DiOHF3HA)は、単独で適用された場合は抗酸化または血管活性を示さなかったが、アジペート置換基を開裂させるクロリンエステラーゼの存在は、ラット大動脈によって生成されるスーパーオキサイドレベルを阻害し、カルシウム誘発収縮を阻害し、ラット大動脈環の直接的な弛緩を引き起こすDiOHF3HAの能力を発揮した。エステラーゼの存在下で、DiOHF3HAの活性のレベルは、DiOHFと同様であった。麻酔下のラットにおいて、DiOHF3HAは、動脈圧および心拍数の濃度依存低下を引き起こした。
【0176】
フラボン-3-ホスフェート(F3P)単独では、抗酸化または血管活性を示さなかったが、フォスフェート塩置換基を開裂させるホスファターゼの存在は、ラット大動脈によって生成されるスーパーオキサイドレベルを阻害し、カルシウム誘発収縮を阻害し、酸化応力の存在下で内皮依存弛緩を増強するF3Pの能力を発揮した。ホスファターゼの存在下で、F3Pの活性のレベルは、DiOHFと同様であった。麻酔下のラットにおいて、F3Pは、動脈圧および心拍数のごく小規模な濃度依存低下を引き起こした。それらの効果は、DiOHFについて見られたものよりはるかに小さかった。
【0177】
心筋虚血再潅流に続くアジピン酸3',4'-ジヒドロキシフラボノール(DiOHF3HA)の心臓保護
麻酔下のヒツジにおける心筋虚血および再潅流傷害を予防する合成フラボノール、アジピン酸3',4'-ジヒドロキシフラボノール(DiOHF3HA)の能力を評価した。親化合物DiOHFと異なり、アジペート誘導体は、水溶液、特に水に可溶であった。
【0178】
水溶液で投与されたDiOHF3HAは、梗塞サイズの用量関連低下を引き起こしたが、それは、DMSOに溶解した場合の同様のモル投与量のDiOHFによって引き起こされたものと同様であった。
【0179】
DiOHF3HAの静脈内注入は、血流力学的指標(動脈血圧、心拍数、左心室拡張期圧(LV-EDP))を変化させなかった。
【0180】
DiOHF3HAは、麻酔下のヒツジにおいて、心臓虚血再潅流傷害の後に、親化合物と同等の程度の心臓保護をもたらしたため、これらのデータは、この新規の誘導体化合物がインビボで親化合物に効率的に変換されるという説を裏づけるものである。
【0181】
外科的調製
5つのグループの麻酔下の成体メリノヒツジ(35〜45kgの去勢された雄)について調査した。
(1)対照(n=5)
(2)DiOHF(2mg/kg、n=2)
(3)DiOHF3HA(2.7mg/kg、n=3)
(4)DiOHF(5mg/kg、n=3)
(5)DiOHF3HA(6.6mg/kg、n=4)
【0182】
静脈内チオペントンナトリウム(15mg/kg)によって麻酔を誘発し、イソフラン(1.5〜2%)によって続く気管挿管を維持した。動脈血液のサンプリングおよび動脈圧の監視のために、カテーテルを右顔面動脈に挿入した。頸静脈に挿入されたカテーテルを介して静脈内注入を行った。第4の肋間隙で行われた左胸壁切開を通じて心臓を露出させた。4Fカテーテル先端圧力計を、左心房を通じて左心室に挿入して、左心室圧力(LVP)を測定した。リグノカインの注入およびエバンスブルーの注入のために、追加的なサイラスティックカニューレを左心房付属器に挿入した。左前区下行冠動脈(LAD)をその第2の筋違のすぐ隣の心膜から切除し、トランジットタイム2mm流量プローブをそのまわりに配置して、LAD血液流量を監視した。絹縫合糸をプローブの近傍のLADの下に通し、絹の両端をプラスチックチューブに通して、血管係蹄を形成した。
【0183】
実験の設計
外科手順の完了後に、動物を10〜15分間安定させた。次いで、ヒツジを無作為に異なるグループに分割した。すべてのヒツジに30分間のベースライン記録を与えた後に、1時間の虚血および3時間の再潅流を行った。
【0184】
実験の過程を通じて、血流力学的測定値を5分間隔で記録し、指定の時点において血液試料を採取した。30分間の虚血後に、フラボノール処理を施した。DiOHFを2mlのDMSO+14mlのポリエチレングリコール:水(1:1)に溶解した。DiOHF3HAを20mlの0.1MのNa2CO3に溶解した。薬物を1ml/分i.v.で与えた。2投与量のDiOHF3HA(2.7mg/kgおよび6.6mg/kg)を選択して、親DiOHF化合物と同等のモル投与量(それぞれ2mg/kgおよび5mg/kg)を達成した。対照の動物は、静脈内溶液を受けなかった。必要に応じてリグノカインを使用して、不整脈を改善した。
【0185】
危険性のある領域および梗塞サイズの測定
危険性のある心筋の領域および梗塞サイズをエバンスブルーおよび塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)染色によって描写した。3時間の再潅流の後に、LADを本来の閉塞部位で再閉塞させた。心臓を停止させるペントバルビトン(100mgkg-1)の静脈内注射の直後に、エバンスブルー染料(1.5%、40ml)を左心房に注入して、危険性のある心筋の範囲を規定した。心臓を迅速に除去し、左心室を約1cmの厚さの横断切片にスライスした。未染色の危険性領域を同じ透明紙にトレースした。次いで、1%TTCを含有する0.1Mフォスフェートナトリウム緩衝剤中で切片を20分間インキュベーションした(37℃、pH7.4)。梗塞性領域を透明紙にトレースした。危険性のある心筋の領域、および梗塞サイズをコンピュータ化された平面測量によって測定した。前者を全左心室体積に対する百分率(AR/LV%)で表し、梗塞サイズを危険性のある心筋の領域に対する百分率(IS/AR%)で表した。
【0186】
心筋梗塞に対する血漿マーカー
虚血中のベースライン、および再潅流期間中の3つの時点(1時間、2時間および3時間)において動脈血液試料(5ml)を冷やしたヘパリン化チューブに回収した。4℃で遠心分離した後に、乳酸デヒドロゲナーゼおよびクレアチンキナーゼのレベルを求めるための測定まで血漿試料を-20℃で保管した。
【0187】
結果
以下の結果の概要では、5つの異なる処理グループにおける心筋梗塞サイズを報告する。最大容量のDiOHF3HAの効果について、他のすべてのパラメータの変化は、対照グループの動物対DiOHF3HA(6.6mg/kg)グループの動物に関して報告されているにすぎない。
【0188】
対照グループにおいて、最初の10分間の再潅流で1匹のヒツジが心室細動のため死んだ。したがって、対照データは、n=4匹に基づく。
【0189】
心筋梗塞サイズ
この試験において、5つの異なる処理グループのヒツジの間で虚血された左心室の領域(AR)は類似していた(11%〜20%、図17、左側パネル)。対照的に、ARに対して正規化された梗塞サイズは、DiOHFおよびDiOHF3HA処理グループの方が、対照動物と比較して小さかった(図17、右側パネル)。具体的には、危険性のある領域に対して正規化された梗塞サイズ(IS/AR)は、対照における83±4%からDiOHF3HAによる49±8%(6.7mg/kg)およびDiOHFによる47±8%(5mg/kg)に低下した。低投与量のDiOHF3HA(2.7mg/kg)およびDiOHF(2mg/kg)についてのIS/ARは、それぞれ64%および73%であった。
【0190】
LAD流量
ベースラインLAD流量は、対照およびDiOHF3HA(6.6mg/kg)グループのヒツジ(7〜9ml/分)で類似していた。虚血中は、すべての動物に追いてLAD流量が0に低下した。再潅流の初期段階では、すべてのヒツジにおいて冠状動脈過潅流が生じた。一般には、このLAD流量の一時的な増加は、30〜60分間の再潅流後にベースラインレベルに戻った。流量の回帰は、DiOHF3HAグループの方が迅速であった。
【0191】
虚血/再潅流に対する血流力学的応答
ベースライン動脈圧は、2つのグループのヒツジの間で差がなかった(30分間の平均は80mmHg以下)。対照的に、静止HRは、対照ヒツジ(90±4bpm)の方がDiOHF3HA処理ヒツジ(105±3bpm)と比較して低かった(P<0.05)。この差は、実験の過程全体を通じて維持された。MAPおよびHRの両方は、DiOHF3HA投与の20分間の注入期間を通じて変化しなかった。さらに、心筋虚血および再潅流中は、いずれのグループのヒツジにおいても、動脈圧またはHRの顕著な変化は観察されなかった。
【0192】
静止LV-EDPは、2つのグループのヒツジの間で差がなかったが(11mmHg以下)、LVPの第1導関数の最大正値(dP/dtmax)は、対照グループ(1454±62mmHg/s)の方がDiOHF3HA処理ヒツジ(1967±103mmHg/s)と比較して低かった(P<0.05)。この差は、実験の過程全体を通じて維持された。LV-EDPおよびdP/dtmaxの両方は、DiOHF3HA投与の20分間の注入期間を通じて変化しなかった。さらに、心筋虚血および再潅流中は、いずれのグループのヒツジにおいても、LV-EDPおよびdP/dtmaxの顕著な変化が観察されなかった。該薬物の血流力学的利点は、24時間の再潅流後に、より明らかになった。
【0193】
麻酔下のヒツジにおいて、1時間の虚血および3時間の再潅流の後に、血漿乳酸デヒドロゲナーゼは、対照グループ(n=3)では227±141U/Lだけ増加し、DiOHF3HAで処理されたグループ(n=4)では67±32U/Lだけ増加した。これらのヒツジにおいて、血漿クレアチンキナーゼは、対照グループでは2411±958U/Lだけ増加し、DiOHF3HAで処理されたグループでは1579±936U/Lだけ増加した。
【0194】
合成フラボノイドを使用したラットにおける虚血性卒中からの回復
心筋梗塞に対する血漿マーカー
神経機能に対する毎日の監視、および卒中から72時間後における脳梗塞の死後の形態学的評価により、意識のあるラットにおける虚血性卒中を調査した。強力な血管収縮剤エンドセリン-1を右中脳動脈MCAの外側であるが近くに(前移植ガイドチューブを介して)注入することによって、意識のあるラットに、片側性の一時的脳虚血および再潅流を誘発した。持続する卒中を直後の挙動によって0から5のスケールに等級分けし、卒中の3時間後、およびその後24時間間隔で強力な神経保護化合物を静脈内注入した。
【0195】
外科的調製
急性薬物投与のための静脈内(i.v.)カテーテルの頸静脈への挿入のために、雄のHooded Wistarラット(280〜340g)に0.6mlの体積のペントバルビトンナトリウム(60mg/kg i.p.)で麻酔した。次いで、23ゲージのステンレス鋼のガイドカニューレを右側MCAの背部の梨状皮質2mmに定位的に移植した(上側0.2mm、横側-5.2mmおよび腹側-5.9mm)。カニューレを歯科用アクリレートセメントで固定し、2つの小さいねじを頭蓋に挿入した。頭皮を縫合糸で閉じた。ラットを18〜22℃の温度にて12時間毎の日/夜サイクルで個々に収容し、卒中の誘発前に5日間にわたって回復させた。
【0196】
卒中の誘発
先に移植された定位ガイドカニューレの端部から2mm突出した30ゲージ注射器を介して強力な血管収縮剤エンドセリン-1(ET-1)(10分間にわたって3μlの生理食塩水中60pmol)を投与することによって、意識のあるラットに右中脳動脈(MCA)の血管収縮を誘発させた。注射器をポリ管カフによって所定位置に保持し、ラットをET-1注射中の観察のための透明プレキシグラスに配置した。卒中誘発中に、対側前肢の反時計回りの循環、クレンチングおよびドラッギングを観察し、カニューレの正しい配置を検証した。これらの挙動変化は、ET-1注射の開始から2から10分以内に発生し、同様の挙動が、このモデルを採用した他の研究者によって報告された。卒中時のこれらの挙動変化に基づいて卒中の重度の評点を割り当て、より高い卒中の評点が割り当てられたビヒクル処理ラットは、より大きい梗塞量および神経系障害を有することを示した。挙動変化を示さなかったラットは、卒中を有していないと見なされ、試験から除外された。偽物が注入されたラットは、カニューレ移植が施されたが、FT-1注射を受けなかった。卒中の前、および卒中後3時間にわたって30または60分間隔で直腸温度をサーミスタプローブで測定した。
【0197】
機能的成果の評価
すべての挙動試験は、あらゆる手順の前(手術前、1日)、ET-1誘発MCA閉塞の直前(虚血前、6日)、およびET-1誘発MCA閉塞から24、48および72時間後に実施された。各ラットの挙動を卒中前と比較すると、各ラットは、同一対照として行動していた。検査者に処理条件が知られないようにすべてのラットを符号化した。異常姿勢および半身不随の検出に基づく神経系障害得点を用いて神経系の異常を評価した。ラットを尾で吊るし、胸部のねじれおよび前肢の伸びを採点することによって異常姿勢を評価した。ラットを隆起プラットホームに配置して半身不随を評価した。梗塞性半球に対して対側の後肢がプラットホームの先端から滑り落ちた場合、および/または鼻および髭が表面に接触していないときに対側前肢が滑り落ちた場合に障害が存在すると見なされた。すべての挙動を、0=障害なし;1=わずかな障害;2=中程度の障害;および3=重度の障害のスケールで採点した。したがって、得点を合計すると、最大神経系障害得点は12であった。0の得点を正常と見なした。
【0198】
接着テープ(極接着ラベル、直径100mmの円形)を各々の手首の末端橈骨領域に配置することからなる試験により、感覚的ヘミネグレクトを評価した。第1のテープを対側肢と同側肢の間に無作為に配置した。動物をプレキシグラスケージに配置し、ストップウォッチで測定する前に、両前肢上のテープに同時に接触し、対側および同側前肢からの各刺激に接触する潜在性および各刺激を除く潜在性を記録した。テープが既に除去されていた場合は180秒で試験を終了させた。
【0199】
薬物処理
37μmol/kgを与える濃度で、卒中の3時間後に、単一丸薬投与としてすべての化合物を静脈内投与した。ビヒクル対照も使用され、各化合物に対して特異的であった。卒中の3時間後の第1の投与の後に、動物に薬物を1日1回、またはビヒクルを24および48時間目に注入した。各化合物の全注入体積を300gのラットに対して約300μlとし、薬物の十分な投与を保証するために200μlの生理食塩水を連続的に流した。
【0200】
虚血損傷の定量
虚血から72時間後にラットを断頭し、それらの脳を取り出して、液体窒素で凍結させ、-80℃で保管した。ブレグマに対して-3.2から6.8mmの脳全体を通じて、冠状クライオスタット切片(16μm)を8つの所定の冠状平面で切断した。未染色のスライド装着脳切片における損傷領域は、明確に輪郭化された艶のない領域または暗い領域として裸眼で見えるのに対して、正常組織は、本質的に半透明であるという所見に基づいて、梗塞を3通りの未染色切片で測定した。弾道光伝搬の原理を応用し、単純な装置をコンピュータ化された画像解析システムと併用することによって、損傷領域を示す未染色のスライド装着切片をモニター上ではっきりと目に見えるようにした。光は、透明な無損傷の組織を直接透過してカメラに至るのに対して、光線は、損傷組織によって回折される。次いで、画像解析システムを使用して、損傷の領域を容易に輪郭化し、選択し、記録することができる。レベル間に距離を有する各定位レベルで損傷の断面積を積分することによって梗塞の体積を計算した。(正常な半球の面積/梗塞性半球の面積)×梗塞の面積の式を適用することによって、梗塞領域に対する水腫の影響を補正した。また、検査者に処理条件が知られないようにスライドを符号化した。
【0201】
卒中の評点
ラットは、ET-1注入の2〜10分以内に卒中を示唆する神経挙動障害を示したが、同体積の生理食塩水のみを与えた後は当該障害を示さなかった。これらの障害は、クレンチング、および対側前肢の伸長不良、ならびに閉塞に対する対側の方向の循環等の特異的な挙動応答を含んでいた。グルーミング挙動が、循環に先行し、ほぼすべてのラットに観察された。グルーミングは、決まった形で発生し、顔面グルーミングの後に、1つの連続的な動きの全身グルーミングが生じた。歯をガチガチ鳴らすこと、ケージを噛むこと、および寝そべることまたは舌を出すこと等の他の挙動は、より低頻度に観察された。卒中時に観察されたこれらの挙動応答をそれらの程度および重度に基づいてランク付けすることが可能であった。ビヒクル処理ラット(n=40)において、卒中の評点と神経系障害得点との間、および卒中の評点と梗塞体積との間に正の相関があることをも示した。ランク付けに続いて、卒中の評点が、ビヒクルグループと薬物処理グループの間に均等に行き渡るように、平等な卒中の評点に基づいて卒中のラットを組み合わせた。次いで、処理を知らずに残りの評価を実施できるようにラットを符号化した。
【0202】
薬物処理の階層化
卒中患者の臨床管理を支援するとともに、臨床試験において処理グループを正確に階層化するために、ヒト卒中患者における機能的成果および生存性を予測するのに予後モデルが使用される。実験用卒中動物に同様のモデルを使用することは、これまで試みられなかった。MCA閉塞のET-1モデルにおいて、卒中誘発中に挙動応答を観察し、これらの応答に基づいて卒中の重度の評価スケールを割り当てることが可能である。したがって、どの動物が重度の卒中を有し、どの動物が軽度または中程度の卒中を有しているかを予測することが可能である。このプロセスは、卒中後に神経保護剤によって潜在的に救済可能である危険性の領域のある程度の予測をも可能にする。梗塞が、全半球体積の70%を上回る体積を占めると仮定すると、重度の卒中には、神経保護に対応する危険性の領域がほとんど残っていない。しかし、軽度または中程度の卒中では、救済に対応する危険性の領域がより大きいため、神経保護の機会がより大きい。実際、誰が将来の薬物治療の恩恵を受ける可能性が最も高いかを判断するために、同様にして患者を階層化するのに、患者における臨床MRI試験が現在用いられている。この理由により、薬物処理分析の最後に、4または5の重度の卒中評点を有する動物を除外し、試験されたすべての将来的化合物について、軽度または中程度の卒中グループ(評点1〜3)におけるデータを再解析した。
【0203】
3',4'-ジヒドロキシフラボノール(DIOHF)
我々の実験室で実施した初期の実験では、卒中発症の3時間後に静脈内投与されたDiOHF(10mg/kg)の遅延神経保護の潜在性を評価した。20%のDMSO、40%のポリエチレングリコールおよび40%の注射用無菌水に溶解したDiOHFの3つの丸薬投与物を各ラットに投与した。中程度の卒中のラットに3'4'-ジヒドロキシフラボノール(DiOHF)を投与すると(得点2〜3、n=6および5、それぞれ化合物およびビヒクル)、48および72時間目に神経系障害が低減され、卒中後のヘミネグレクト得点(「粘着テープ試験」)の増加が防がれ、それは、エンドセリン+薬物ビヒクル単独を与えられた対照ラットに観察された。重要なことは、DiOHFにより、脳皮質に発生した梗塞の体積が減少され、脳の線条体に生じる梗塞が完全に防止された。
【0204】
軽度または中程度の卒中のラットにおけるDiOHF(10mg/kg)処理は、ビヒクル処理と比較して、皮質および線条体全体を通じて梗塞の領域を有意に低減した。DiOHF処理は、また、ビヒクル処理ラットと比較して、軽度または中程度の卒中のラットにおける神経系成果を有意に向上させた。
【0205】
卒中の治療のための3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(DiOHF3HA)
注射用Na2CO3緩衝生理食塩水(0.1M、pH7.8)に溶解したDiOHF3HA(15mg/kg/日i.v.)の3つの丸薬投与物を各ラットに投与した。
ビヒクル DiOHF3HA
グレード#2(n=3) #2(n=1)
グレード#3(n=4) #3(n=4)
グレード#4(n=7) #4(n=6)
【0206】
いずれの処理グループにおいても、卒中の後に、有意な体重低下がなかった。両処理グループにおける卒中の前の核心温度は、正常な生理的範囲内であった。両処理グループにおいて、卒中の後に、30分間で有意な温度上昇があったが、この後、温度は正常レベル内に戻った。ビヒクルまたはDiOHF3HAの静脈内注入の後に、両処理グループにおいて、温度が上昇したが、これは、卒中前温度とさほど違わなかった。
【0207】
卒中の後に、両処理グループにおけるラットは、卒中の24、48および72時間後に、卒中前の得点と比較して有意に高い神経系障害得点を示した。DiOHF3HA(15mg/kg/日)で処理すると、ビヒクル処理ラットと比較して、卒中の24、48または72時間後の神経系障害が測定可能に向上した。ビヒクル処理ラットは、同側と比較した場合に、卒中に影響された対側の前肢から粘着ラベルを除去する高い潜在性を示した(P<0.05、2ファクター反復による二方向RM-ANOVA、卒中後の時間、およびサイド)。この効果は、DiOHF3HA(15mg/kg/日)で処理した後に消滅した。
【0208】
皮質の梗塞領域は、DiOHF3HA(15mg/kg i.v.)による処理後に、ビヒクルによる処理と比較して有意に減少された。
【0209】
要するに、DiOHF3HA(15mg/kg)処理は、ヘミネグレクト試験における神経系機能を有意に向上させるとともに、ビヒクル処理と比較して、卒中後の線条体における損傷の領域を減少させた。
【0210】
軽度または中程度の卒中におけるDiOHF3HAの効果
軽度または中程度の卒中の選択されたラットのグループを調査した。
ビヒクル DiOHF3HA
グレード#3(n=4) #2(n=1)
グレード#4(n=3) #3(n=4)
【0211】
ラットは、いずれの処理グループにおいても、軽度または中程度の卒中の後に体重が低下しなかった。両処理グループにおける卒中の前の核心温度は、正常な生理的範囲内であった。両処理グループにおいて、軽度または中程度の卒中の後に、30分間で有意な温度上昇があったが、この後、温度は正常レベル内に戻った。
【0212】
軽度または中程度の卒中の後に、両処理グループにおけるラットは、卒中前、および卒中の24、48および72時間後に、手術前の得点と比較して有意に高い神経系障害得点を示した。DiOHF3HA(15mg/kg/日)で処理しても、ビヒクル処理ラットと比較して神経系障害得点に対する効果がなかった。軽度または中程度の卒中のビヒクル処理ラットは、24および48時間において、同側と比較した場合に、卒中に影響された対側の前肢の粘着ラベルに接触する高い潜在性を示した(P<0.05、2ファクター反復による二方向RM-ANOVA、卒中後の時間、およびサイド)。これらの効果は、DiOHF3HA(15mg/kg/日)で処理した後に消滅した(図18)。
【0213】
軽度または中程度の卒中のラットにおける皮質の梗塞領域は、DiOHF3HA(15mg/kg i.v./日)による処理後にビヒクルと比較して有意に減少された(図19)。DiOHF3HA処理は、線条体の梗塞の領域をも有意に減少させた。
【0214】
要するに、軽度または中程度の卒中のラットにおけるDiOHF3HA(15mg/kg)処理は、ビヒクル処理と比較して、皮質および線条体の梗塞の領域を有意に減少させた。DiOHF3HA処理は、また、ヘミネグレクト試験における神経系機能を有意に回復させた。
【0215】
特に指定のない限り、グラフにおけるすべての値は、標準誤差が縦線で示される平均値である。
【0216】
本明細書に含まれている文書、作用、物質、デバイスまたは物体についての説明は、単に本発明に対する脈絡を提供することを目的としている。これらの事項のいずれかまたはすべてが、従来技術の基礎の一部を形成している、または本願の各請求項の優先日の前に存在していたように本発明に関連する分野における一般常識であったことを認めるものとして捉えられるべきではない。
【0217】
本明細書全体を通じて、「含む(comprise)」という言葉、または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」等の変形は、指定された要素、整数または工程、あるいは要素、整数または工程群を含むが、他の要素、整数または工程、あるいは要素、整数または工程群を排除しないことを暗示することが理解されるであろう。
【0218】
大まかに記載されている本発明の主旨または範囲から逸脱することなく、具体的な実施形態に示されている本発明に多くの変更および/または修正を加えることができることを当業者なら理解するであろう。したがって、本発明は、すべての点において、例示的なものとして見なされるべきであり、限定的なものと見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】図1は、3-ヒドロキシフラボン-3-フォスフェート二ナトリウム塩(5)の合成のための合成スキームを示す図である。
【図2】図2は、3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ホスフェート(10)の合成のための合成スキームを示す図である。
【図3】図3は、コハク酸モノベンジルエステルを介する3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミスクシネート(15)の合成のための合成スキームを示す図である。
【図4】図4は、アジピン酸モノベンジルエステルを介する3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(19)の合成のための合成スキームを示す図である。
【図5】図5は、3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)の合成のための合成スキームを示す図である。
【図6】図6は、対照に対する百分率で表されるNADPHの存在下でラット大動脈に生成されたスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対する、ビヒクル(dH2O)、ブチルコリンエステラーゼ(BuCHE、1000U/L)の存在下および不在下でのフラボン-3-ヘミアジペート(19)(F3HA)、およびDiOHF(10-4M)の効果を示す図である。
【図7】図7は、対照に対する百分率で表されるNADPHの存在下でラット大動脈に生成されたスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対する、ビヒクル(dH2O)、ブチルコリンエステラーゼ(BuCHE、1000U/L)の存在および不在下での3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)(DioHFHA、10-6M〜10-4M)、およびDiOHF(10-4M)の効果を示す図である。
【図8】図8は、ラットから単離された内皮の無処理大動脈環におけるDiOHFと比較した、ビヒクル、またはBuCHEの存在および不在下における3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート(21)(DiOHF3HA、10-4M)の存在下でのCa2+に対する濃度応答曲線を示す図である。収縮率は、DiOHF3HAで処理する前に観察されたCa2+(3×10-3M)に対する初期応答に対する百分率で表される。
【図9】図9は、対照に対する百分率で表されるNADPHの存在下でラット大動脈に生成されるスーパーオキサイド陰イオンのレベルに対する、ビヒクル(dH2O)、ホスファターゼ(1000U/L)の存在下でのフラボン-3-ホスフェート(F3P、10-8M〜10-4M)、およびDiOHF(10-4M)の効果を示す図である。
【図10】図10は、ラットから単離された内皮の無処理大動脈環におけるビヒクル、またはホスファターゼ(P、1000U/L)の存在および不在下におけるフラボン-3-ホスフェート(F3P、10-8M〜10-4M)の存在下でのCa2+に対する濃度応答曲線を示す図である。収縮率は、フラボン-3-ホスフェートで処理する前に観察されたCa2+(3×10-3M)に対する初期応答に対する百分率で表される。
【図11】図11は、ビヒクル、1000U/L BuCHE、DiOHF3HA(10-4M)、DiOHF3HA(10-4M)プラス1000U/L BuCHEの直接弛緩効果を示す図である。ビヒクル、1000U/L BuCHEおよびDiOHF3HA(10-4M)は、PE前収縮管に対して効果を示さなかった。DiOHF3HA(10-4M)プラス1000U/L BuCHEは、PEで前収縮されたラット大動脈にける血管緊張に対して顕著な効果を示した。
【図12】図12(a)は麻酔下のラットにおけるDiOHF3HAに応答する血管拡張を示す、MAP(mmHg)の用量依存低下を示す図である。図12(b)はDiOHF3HAに応答する心拍数(鼓動数/分)の用量依存低下を示す図である。
【図13】図13は、麻酔下のラットにおけるAChに応答する血管拡張を示す、MAP(mmHg)の低下を示す図である。3mg/kgのDiOHF3HAで30分間前処理することによってAChに対する拡大筋応答を増強させた。麻酔下のラットにおけるPEに応答する血管収縮を示すMAP(mmHg)の上昇、mg/kgのDiOHF3HAで30分間前処理することによって、PEに対する括約筋応答を低下させた。
【図14】図14は、ラット大動脈環における、対照、BuCHEを含む、および含まないDiOHF3HA、およびDiOHFの存在下で生成されたPEの濃度応答曲線を示す図である。BuCHEの存在下でのDiOHF3HA、およびDiOHFは、ともに濃度依存的にPEに対する応答を抑制することがわかった。最大収縮(パーセント3mM Ca2+):[対照]101±1、[DiOHF3HA 10-4M]101±1、[DiOHF3HA 10-4M+BuCHE]35±6、[DiOHF 10-4M]18±2
【図15】図15は、ラットの内皮の無処理環におけるAChに対する濃度応答曲線に対する、ホスファターゼ(1000U/L)、およびホスファターゼを含むフラボン-3-ホスフェート(F3P)(10-5M〜10-4M)の効果を示す図である(n=5)。ホスファターゼ単独では、AChに対する弛緩応答に対する効果はなかったが、AChに対する弛緩応答は、対照環と比較した場合における双方の試験濃度でのホスファターゼを含むF3Pの存在下で高められた。pEC50, Rmax:[対照]7.31±0.03,100±3、[ホスファターゼ10-4M(P)]7.30±0.04,100±1、[F3P 10-5M+P]7.80±0.06,100±1、[F3P 10-4M+P]7.70±0.07,100±1
【図16】図16(a)は麻酔下のラットにおけるF3PおよびDiOHFに応答するMAP(mmHg)の用量依存低下を示す図である。図16(b)は麻酔下のラットにおけるF3PおよびDiOHFに応答するHR(回/分)の用量依存低下を示す図である。
【図17】図17は、麻酔下のヒツジの対照(n=4)、DiOHF(2mg/kg、n=2および5mg/kg、n=3)およびDiOHF3HA(2.7mg/kg、n=3および6.6mg/kg、n=4)処理グループにおける心筋危険性領域(左側パネル)および心筋梗塞サイズ(右側パネル)を示す図である。AR/LV%=全左心室体積に対する百分率で表される危険性領域。IS/AR%=心筋危険性領域に対する百分率で表される梗塞サイズ。*は、対照処理動物とアジペート(6.6mg/kg)処理動物との梗塞サイズの有意な差を示している。
【図18】図18は、ET-1-誘発卒中、および軽度または中程度の卒中のラットにおけるビヒクル(A&B)またはDiOHF3HA(15mg/kg/日)(C&D)から24、48および72時間後に評価した同側前肢と比較した反対側前肢に対する刺激物質の接触(A&C)および除去(B&D)の潜在性を示す図である。
【図19】図19は、軽度または中程度の卒中のラットの皮質(A)および線条体(B)における梗塞領域に対するDiOHF3HA(15mg/kg/日)またはビヒクルの遅延投与の効果を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、一般式Iの少なくとも1つの化合物とともに含む医薬および/または獣医薬組成物。
【化1】
[式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2、R3、R4、R5は、H、OH、または式(Ia):
【化2】
(ここで、
Oは、酸素であり、
Lは、酸素、および存在する場合にDに共有結合し、または酸素およびEに共有結合するリンカー基であり、または存在せず、
Dは、約1から20個の炭素原子と同等の鎖長を有するスペーサー基であり、または存在せず、
Eは、可溶化基である)による基から独立に選択され、
ただし、R1、R2、R3、R4、R5の少なくとも1つは、HまたはOH以外である]
【請求項2】
Eは、エステル、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル、スルファメート、スルホン酸エステル、ホスファメート、ホスホン酸エステル、スルホナート、双性イオン種、アミノ酸、ホスホン酸アミノ、非環式アミン、環式アミン、四級アンモニウム陽イオン、ポリエチレングリコール、オリゴ糖またはデンドリマーから選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Eは、エステル、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル、ポリエチレングリコール、オリゴ糖またはデンドリマーから選択される請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
Eは、エステル、カルボン酸またはリン酸エステルから選択される請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
Eは、式(Ib):
【化3】
(式中、
Wは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Xは、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)による基である請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
Wは、Oである請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
Xは、Hである請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
Eは、式(Ic):
【化4】
(式中、
Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレン、アルケニレン、アルキニレンであり、
Wは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Xは、H、置換または非置換のアルキル、アルキルベンジル、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)によるエステルである請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
Qは、置換または非置換の低級アルキレンである請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
Wは、Oである請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
Eは、式(Id):
【化5】
(式中、
Yは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Zは、OまたはSであり、
R6およびR7は、H、置換または非置換のアルキル、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩から独立に選択される)によるリン酸エステルである請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
YおよびZは、Oである請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
R1、R2、R3、R4およびR5の少なくとも1つは、式(Ie):
【化6】
(式中、R6およびR7は、H、置換または非置換のアルキル、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩から独立に選択される)によるリン酸エステルである請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
Lは、存在し、-CO-、エステル、フェノール、ホスホン酸エステル、カルバメート、カルボネートまたはマニッシュ塩基から選択される請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
Lは、-CO-である請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
Dは、存在し、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、あるいはアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルから選択される請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
Dは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレンである請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、一般式IIの少なくとも1つの化合物とともに含む医薬および/または獣医薬組成物。
【化7】
(式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2およびR3は、請求項1から17のいずれか一項に定められている通りである)
【請求項19】
医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、一般式IIIの少なくとも1つの化合物とともに含む医薬および/または獣医薬組成物。
【化8】
(式中、R3は、請求項1から18のいずれか一項に定められている通りである)
【請求項20】
医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、一般式IVの少なくとも1つの化合物とともに含む医薬および/または獣医薬組成物。
【化9】
(式中、
Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレンであり、
Xは、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)
【請求項21】
Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換の低級アルキレンである請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;4'-(ベンジルオキシ)-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;4'-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;3',4'-ジベンジルオキシ-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;3,4'-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;フラボン3,4'-ビス(ヘミアジペート);3,7-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)フラボン;3,7-ジヒドロキシフラボン3,7-ビス(ヘミアジペート);4'-ヒドロキシ-3-ヒドロキシフラボン-3-四級アンモニウムエステル;フラボン-3-リン酸二ナトリウム塩;4'-(ベンジルオキシ)-3-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)フラボンおよび3-ヒドロキシフラボン-3-リン酸二ナトリウム塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物とともに含む医薬および/または獣医薬組成物。
【請求項23】
反応性酸化種(ROS)の存在に関連する被検体における疾病を予防および/または治療する方法であって、請求項1から22のいずれか一項に規定されている少なくとも1つの化合物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項24】
当該治療を必要とする前記被検体は、虚血を生じる危険性がある請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記被検体は、急性または慢性状態の結果として虚血および/または再潅流傷害にかかっている請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記慢性状態は、癌、脳血管疾患、肺血管疾患、アテローム性動脈硬化、動脈疾患、鬱血性心臓病、冠状動脈疾患、末梢血管疾患、糖尿病、高血圧症、偏頭痛、火傷、慢性閉塞性肺疾患および網膜血管疾患から選択される請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記急性状態は、卒中、心筋梗塞、衝突傷害または手術に起因する機械的外傷から選択される請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記手術は、血管手術である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記血管手術は、心臓バイパスおよび/または移植手術である請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物は、前記手術前および/または手術中に被検体に投与される請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
被検体におけるアテローム性動脈硬化および/または虚血性心臓疾患の発症を予防、遅延させ、および/またはその進行を遅らせる方法であって、請求項1から30のいずれか一項に規定されている少なくとも1つの化合物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項32】
反応性酸化種(ROS)の存在に関連する被検体における疾病を予防および/または治療する治療および/または予防方法であって、請求項1から22のいずれか一項に規定されている少なくとも1つの化合物の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項33】
虚血および/または再潅流傷害によって引き起こされる被検体に対する損傷を予防および/または少なくとも改善する方法であって、請求項1から22のいずれか一項に規定されている少なくとも1つの化合物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項34】
治療薬の投与によって引き起こされる被検体に対する損傷を予防および/または少なくとも改善する方法であって、被検体に対して、
i)治療薬と、
ii)請求項1から22のいずれか一項に規定されている少なくとも1つの化合物の有効量とを同時投与することを含む方法。
【請求項35】
前記治療薬は、酸化性治療薬である請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記治療薬は、抗癌剤である請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記抗癌剤は、アントラシクリンおよびその相同体である請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記化合物は、経口、局所、皮下、非経口、筋肉内、動脈内および/または静脈内投与される請求項23から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
医薬品の調製のための請求項1から22のいずれか一項に規定されている化合物の使用。
【請求項40】
一般式Iの化合物、およびその医薬および/または獣医薬として許容可能な塩または溶媒和物:
【化10】
[式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2、R3、R4、R5は、H、OH、または式(Ia):
【化11】
(式中、
Oは、酸素であり、
Lは、酸素、および存在する場合にDに共有結合し、または酸素およびEに共有結合するリンカー基であり、または存在せず、
Dは、約1から20個の炭素原子と同等の鎖長を有するスペーサー基であり、または存在せず、
Eは、可溶化基である)による基から独立に選択され、
ただし、R1、R2、R3、R4、R5の少なくとも1つは、HまたはOH以外である]
ただし、該化合物はフラボン3'-ヒドロキシ-,アセテート;フラボン,4'-ヒドロキシ-,アセテート;フラボン,3-ヒドロキシ-,アセテート;(±)41-アセトキシフラボン;フラボン,3,4',7-トリヒドロキシ,3-アセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン,-3,7-ビス(アセチルオキシ)-2,3-ジヒドロ-2-フェニル-,(2R-トランス);4H-1-ベンゾピラン-4-オン,7-(アセチルオキシ)-2-[4-(アセチルオキシ)フェニル]-2,3-ジヒドロ-,(±);(+)-4',7-ジアセトキシフラバノン;(2S,3S)-3,7-ジヒドロキシフラバノンジアセテート;フラバノン,3,4'-ジヒドロキシ,ジアセテート;フラバノン,3',4'-ヒドロキシ-,ジアセテート;フラバノン,3,7-ジヒドロキシ-,ジアセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン,3,7-ビス(アセチルオキシ)-2(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2,3-ジヒドロ-,(2R-トランス)-;フラボン,3,3'-ジヒドロキシ-,ジアセテート;フラボン,4',7'-ジヒドロキシ,ジアセテート;フラボン,3,7-ジヒドロキシ-,ジアセテート;フラボン,3,3',7-トリヒドロキシ,トリアセテート;フラボン,3,3',4'-トリヒドロキシ-,トリアセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン,7-(アセチルオキシ)-2-[3,4-ビス(アセチルオキシ)フェニル]-;フラボン,3,4',7-トリヒドロキシ-,トリアセテート;フラボン,3',4',7-トリヒドロキシ,トリアセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン,7-(アセチルオキシ)-2-[3,4-ビス(アセチルオキシ)フェニル]-2,3-ジヒドロ-,(s)-;フラバノン,3,4',7-トリヒドロキシ-,トリアセテート;フラバノン,3,4',7-トリヒドロキシ-,トリアセテート,トランス-(f);4H-1-ベンゾピラン-4-オン,3,7-ビス(アセチルオキシ)-2-[3,4-ビス(アセチルオキシ)フェニル]-;フスチン,テトラアセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン,3,7-ビス(アセチルオキシ)-2-[3,4-ビス(アセチルオキシ)フェニル]-2,3-ジヒドロ-,(2R-トランス)-;4H-1-ベンゾピラン-4-オン,3,7-ビス(アセチルオキシ)-2-[3,4-ビス(アセチルオキシ)フェニル]-2,3-ジヒドロ-,トランス-;フラバノン,3,3',4',7-テトラヒドロキシ-,テトラアセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン,3-(1-オキソプロポキシ)-2-フェニル-;プロパノン酸,2-メチル,4-オキソ-2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-3-イルエステル;プロパノン酸,2,2-ジメチル-,4-オキソ-2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-3-イルエステル;ベンゼン酢酸,4-オキソ-2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-3-イルエステル;ベンゼンプロパノン酸,4-オキソ-2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-3-イルエステル;ベンゼン酢酸,a-フェニル-,4-オキソ-2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-3イルエステル;ホスホロチオ酸,o-[4-[3-[(ジエトキシホスフィノチオイル)オキシ]-4-オキソ-4H-1-ベンゾピラン-2-イル]フェニル]o,o-ジエチルエステル;ホスホロチオ酸,o-[3-[3-[(ジエトキシホスフィノチオイル)オキシ]-4-オキソ-4H-1-ベンゾピラン-2-イル]フェニル]o,o-ジエチルエステル;リン酸,ジエチル4-(4-オキソ-4H-1-ベンゾピラン-2-イル)フェニルエステル;4H-1-ベンゾピラン-4-オン,2-フェニル-3-(ホスホノオキシ)-;フラボン,3-ヒドロキシ-,リン酸二水素二アンモニウム塩;4H-1-ベンゾピラン-4-オン,2-フェニル-3-(ホスホノオキシ)-,マグネシウム塩(1:1),五水化物;4H-1-ベンゾピラン-4-オン,2-[3-ヒドロキシ-4-(ホスホノオキシ)フェニル]-;3',4'-ジヒドロキシフラボン-4'-リン酸;3'4'-ジヒドロキシフラボン-4'-β-D-グルコピラノシドナトリウム塩;3',4'-ジヒドロキシフラボン-4'-β-D-リボフラノシドナトリウム塩ではない。
【請求項41】
Eは、エステル、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル、スルファメート、スルホン酸エステル、ホスファメート、ホスホン酸エステル、スルホナート、双性イオン種、アミノ酸、ホスホン酸アミノ、非環式アミン、環式アミン、四級アンモニウム陽イオン、ポリエチレングリコール、オリゴ糖またはデンドリマーから選択される請求項40に記載の化合物。
【請求項42】
Eは、エステル、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル、ポリエチレングリコール、オリゴ糖またはデンドリマーから選択される請求項40または41に記載の化合物。
【請求項43】
Eは、エステル、カルボン酸またはリン酸エステルから選択される請求項40から42のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項44】
Eは、式(Ib):
【化12】
(式中、
Wは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Xは、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)による基である請求項40から43のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項45】
Wは、Oである請求項44に記載の化合物。
【請求項46】
Xは、Hである請求項44または45に記載の化合物。
【請求項47】
Eは、式(Ic):
【化13】
(式中、
Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレン、アルケニレン、アルキニレンであり、
Wは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Xは、H、置換または非置換のアルキル、アルキルベンジル、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)によるエステルである請求項40から44のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項48】
Qは、置換または非置換の低級アルキレンである請求項47に記載の化合物。
【請求項49】
Wは、Oである請求項47または48に記載の化合物。
【請求項50】
Eは、式(Id):
【化14】
(式中、
Yは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Zは、OまたはSであり、
R6およびR7は、H、置換または非置換のアルキル、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩から独立に選択される)によるリン酸エステルである請求項39から44のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項51】
YおよびZは、Oである請求項50に記載の化合物。
【請求項52】
R1、R2、R3、R4およびR5の少なくとも1つは、式(Ie):
【化15】
(式中、R6およびR7は、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩から独立に選択される)によるリン酸エステルである請求項40から51のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項53】
Lは、存在し、-CO-、エステル、フェノール、ホスホン酸エステル、カルバメート、カルボネートまたはマニッシュ塩基から選択される請求項40から52のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項54】
Lは、-CO-である請求項40から53のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項55】
Dは、存在し、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、あるいはアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルから選択される請求項40から54のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項56】
Dは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレンである請求項55に記載の化合物。
【請求項57】
一般式(II)による化合物。
【化16】
(式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2およびR3は、請求項40から56のいずれか一項に定められている通りである)
【請求項58】
一般式(III)による化合物。
【化17】
(式中、R3は、請求項40から56のいずれか一項に定められている通りである)
【請求項59】
一般式(IV)による化合物。
【化18】
(式中、
Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレンであり、
Xは、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)
【請求項60】
Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換の低級アルキレンである請求項59に記載の化合物。
【請求項61】
一般式Vによる化合物。
【化19】
(式中、R3およびR5は、請求項40から56のいずれか一項に定められている通りである)
【請求項62】
3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;4'-(ベンジルオキシ)-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;4'-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;3',4'-ジベンジルオキシ-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3',4'-ジヒドロキシフラボン3-ヘミアジペート;3,4'-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;フラボン3,4'-ビス(ヘミアジペート);3,7-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3,7-ジヒドロキシフラボン3,7-ビス(ヘミアジペート);4'-ヒドロキシ-3-ヒドロキシフラボン-3-四級アンモニウムエステル;4'-(ベンジルオキシ)-3-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)フラボンおよび3-ヒドロキシフラボン-3-リン酸二ナトリウム塩からなる群から選択される化合物。
【請求項63】
請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物を合成するための方法。
【請求項64】
栄養補助食品として許容可能な担体または希釈剤を、一般式Iの少なくとも1つの化合物とともに含む栄養補助食品組成物(nutraceutical composition)。
【化20】
[式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2、R3、R4、R5は、H、OH、または式(Ia):
【化21】
(ここで、
Oは、酸素であり、
Lは、酸素、および存在する場合にDに共有結合し、または酸素およびEに共有結合するリンカー基であり、または存在せず、
Dは、約1から20個の炭素原子と同等の鎖長を有するスペーサー基であり、または存在せず、
Eは、可溶化基である)による基から独立に選択され、
ただし、R1、R2、R3、R4、R5の少なくとも1つは、HまたはOH以外である]
【請求項1】
医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、一般式Iの少なくとも1つの化合物とともに含む医薬および/または獣医薬組成物。
【化1】
[式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2、R3、R4、R5は、H、OH、または式(Ia):
【化2】
(ここで、
Oは、酸素であり、
Lは、酸素、および存在する場合にDに共有結合し、または酸素およびEに共有結合するリンカー基であり、または存在せず、
Dは、約1から20個の炭素原子と同等の鎖長を有するスペーサー基であり、または存在せず、
Eは、可溶化基である)による基から独立に選択され、
ただし、R1、R2、R3、R4、R5の少なくとも1つは、HまたはOH以外である]
【請求項2】
Eは、エステル、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル、スルファメート、スルホン酸エステル、ホスファメート、ホスホン酸エステル、スルホナート、双性イオン種、アミノ酸、ホスホン酸アミノ、非環式アミン、環式アミン、四級アンモニウム陽イオン、ポリエチレングリコール、オリゴ糖またはデンドリマーから選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Eは、エステル、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル、ポリエチレングリコール、オリゴ糖またはデンドリマーから選択される請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
Eは、エステル、カルボン酸またはリン酸エステルから選択される請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
Eは、式(Ib):
【化3】
(式中、
Wは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Xは、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)による基である請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
Wは、Oである請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
Xは、Hである請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
Eは、式(Ic):
【化4】
(式中、
Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレン、アルケニレン、アルキニレンであり、
Wは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Xは、H、置換または非置換のアルキル、アルキルベンジル、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)によるエステルである請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
Qは、置換または非置換の低級アルキレンである請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
Wは、Oである請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
Eは、式(Id):
【化5】
(式中、
Yは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Zは、OまたはSであり、
R6およびR7は、H、置換または非置換のアルキル、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩から独立に選択される)によるリン酸エステルである請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
YおよびZは、Oである請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
R1、R2、R3、R4およびR5の少なくとも1つは、式(Ie):
【化6】
(式中、R6およびR7は、H、置換または非置換のアルキル、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩から独立に選択される)によるリン酸エステルである請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
Lは、存在し、-CO-、エステル、フェノール、ホスホン酸エステル、カルバメート、カルボネートまたはマニッシュ塩基から選択される請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
Lは、-CO-である請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
Dは、存在し、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、あるいはアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルから選択される請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
Dは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレンである請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、一般式IIの少なくとも1つの化合物とともに含む医薬および/または獣医薬組成物。
【化7】
(式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2およびR3は、請求項1から17のいずれか一項に定められている通りである)
【請求項19】
医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、一般式IIIの少なくとも1つの化合物とともに含む医薬および/または獣医薬組成物。
【化8】
(式中、R3は、請求項1から18のいずれか一項に定められている通りである)
【請求項20】
医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、一般式IVの少なくとも1つの化合物とともに含む医薬および/または獣医薬組成物。
【化9】
(式中、
Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレンであり、
Xは、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)
【請求項21】
Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換の低級アルキレンである請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
医薬および/または獣医薬として許容可能な担体または希釈剤を、3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;4'-(ベンジルオキシ)-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;4'-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;3',4'-ジベンジルオキシ-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3',4'-ジヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;3,4'-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;フラボン3,4'-ビス(ヘミアジペート);3,7-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)フラボン;3,7-ジヒドロキシフラボン3,7-ビス(ヘミアジペート);4'-ヒドロキシ-3-ヒドロキシフラボン-3-四級アンモニウムエステル;フラボン-3-リン酸二ナトリウム塩;4'-(ベンジルオキシ)-3-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)フラボンおよび3-ヒドロキシフラボン-3-リン酸二ナトリウム塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物とともに含む医薬および/または獣医薬組成物。
【請求項23】
反応性酸化種(ROS)の存在に関連する被検体における疾病を予防および/または治療する方法であって、請求項1から22のいずれか一項に規定されている少なくとも1つの化合物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項24】
当該治療を必要とする前記被検体は、虚血を生じる危険性がある請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記被検体は、急性または慢性状態の結果として虚血および/または再潅流傷害にかかっている請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記慢性状態は、癌、脳血管疾患、肺血管疾患、アテローム性動脈硬化、動脈疾患、鬱血性心臓病、冠状動脈疾患、末梢血管疾患、糖尿病、高血圧症、偏頭痛、火傷、慢性閉塞性肺疾患および網膜血管疾患から選択される請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記急性状態は、卒中、心筋梗塞、衝突傷害または手術に起因する機械的外傷から選択される請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記手術は、血管手術である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記血管手術は、心臓バイパスおよび/または移植手術である請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物は、前記手術前および/または手術中に被検体に投与される請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
被検体におけるアテローム性動脈硬化および/または虚血性心臓疾患の発症を予防、遅延させ、および/またはその進行を遅らせる方法であって、請求項1から30のいずれか一項に規定されている少なくとも1つの化合物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項32】
反応性酸化種(ROS)の存在に関連する被検体における疾病を予防および/または治療する治療および/または予防方法であって、請求項1から22のいずれか一項に規定されている少なくとも1つの化合物の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項33】
虚血および/または再潅流傷害によって引き起こされる被検体に対する損傷を予防および/または少なくとも改善する方法であって、請求項1から22のいずれか一項に規定されている少なくとも1つの化合物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項34】
治療薬の投与によって引き起こされる被検体に対する損傷を予防および/または少なくとも改善する方法であって、被検体に対して、
i)治療薬と、
ii)請求項1から22のいずれか一項に規定されている少なくとも1つの化合物の有効量とを同時投与することを含む方法。
【請求項35】
前記治療薬は、酸化性治療薬である請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記治療薬は、抗癌剤である請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記抗癌剤は、アントラシクリンおよびその相同体である請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記化合物は、経口、局所、皮下、非経口、筋肉内、動脈内および/または静脈内投与される請求項23から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
医薬品の調製のための請求項1から22のいずれか一項に規定されている化合物の使用。
【請求項40】
一般式Iの化合物、およびその医薬および/または獣医薬として許容可能な塩または溶媒和物:
【化10】
[式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2、R3、R4、R5は、H、OH、または式(Ia):
【化11】
(式中、
Oは、酸素であり、
Lは、酸素、および存在する場合にDに共有結合し、または酸素およびEに共有結合するリンカー基であり、または存在せず、
Dは、約1から20個の炭素原子と同等の鎖長を有するスペーサー基であり、または存在せず、
Eは、可溶化基である)による基から独立に選択され、
ただし、R1、R2、R3、R4、R5の少なくとも1つは、HまたはOH以外である]
ただし、該化合物はフラボン3'-ヒドロキシ-,アセテート;フラボン,4'-ヒドロキシ-,アセテート;フラボン,3-ヒドロキシ-,アセテート;(±)41-アセトキシフラボン;フラボン,3,4',7-トリヒドロキシ,3-アセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン,-3,7-ビス(アセチルオキシ)-2,3-ジヒドロ-2-フェニル-,(2R-トランス);4H-1-ベンゾピラン-4-オン,7-(アセチルオキシ)-2-[4-(アセチルオキシ)フェニル]-2,3-ジヒドロ-,(±);(+)-4',7-ジアセトキシフラバノン;(2S,3S)-3,7-ジヒドロキシフラバノンジアセテート;フラバノン,3,4'-ジヒドロキシ,ジアセテート;フラバノン,3',4'-ヒドロキシ-,ジアセテート;フラバノン,3,7-ジヒドロキシ-,ジアセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン,3,7-ビス(アセチルオキシ)-2(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2,3-ジヒドロ-,(2R-トランス)-;フラボン,3,3'-ジヒドロキシ-,ジアセテート;フラボン,4',7'-ジヒドロキシ,ジアセテート;フラボン,3,7-ジヒドロキシ-,ジアセテート;フラボン,3,3',7-トリヒドロキシ,トリアセテート;フラボン,3,3',4'-トリヒドロキシ-,トリアセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン,7-(アセチルオキシ)-2-[3,4-ビス(アセチルオキシ)フェニル]-;フラボン,3,4',7-トリヒドロキシ-,トリアセテート;フラボン,3',4',7-トリヒドロキシ,トリアセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン,7-(アセチルオキシ)-2-[3,4-ビス(アセチルオキシ)フェニル]-2,3-ジヒドロ-,(s)-;フラバノン,3,4',7-トリヒドロキシ-,トリアセテート;フラバノン,3,4',7-トリヒドロキシ-,トリアセテート,トランス-(f);4H-1-ベンゾピラン-4-オン,3,7-ビス(アセチルオキシ)-2-[3,4-ビス(アセチルオキシ)フェニル]-;フスチン,テトラアセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン,3,7-ビス(アセチルオキシ)-2-[3,4-ビス(アセチルオキシ)フェニル]-2,3-ジヒドロ-,(2R-トランス)-;4H-1-ベンゾピラン-4-オン,3,7-ビス(アセチルオキシ)-2-[3,4-ビス(アセチルオキシ)フェニル]-2,3-ジヒドロ-,トランス-;フラバノン,3,3',4',7-テトラヒドロキシ-,テトラアセテート;4H-1-ベンゾピラン-4-オン,3-(1-オキソプロポキシ)-2-フェニル-;プロパノン酸,2-メチル,4-オキソ-2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-3-イルエステル;プロパノン酸,2,2-ジメチル-,4-オキソ-2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-3-イルエステル;ベンゼン酢酸,4-オキソ-2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-3-イルエステル;ベンゼンプロパノン酸,4-オキソ-2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-3-イルエステル;ベンゼン酢酸,a-フェニル-,4-オキソ-2-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-3イルエステル;ホスホロチオ酸,o-[4-[3-[(ジエトキシホスフィノチオイル)オキシ]-4-オキソ-4H-1-ベンゾピラン-2-イル]フェニル]o,o-ジエチルエステル;ホスホロチオ酸,o-[3-[3-[(ジエトキシホスフィノチオイル)オキシ]-4-オキソ-4H-1-ベンゾピラン-2-イル]フェニル]o,o-ジエチルエステル;リン酸,ジエチル4-(4-オキソ-4H-1-ベンゾピラン-2-イル)フェニルエステル;4H-1-ベンゾピラン-4-オン,2-フェニル-3-(ホスホノオキシ)-;フラボン,3-ヒドロキシ-,リン酸二水素二アンモニウム塩;4H-1-ベンゾピラン-4-オン,2-フェニル-3-(ホスホノオキシ)-,マグネシウム塩(1:1),五水化物;4H-1-ベンゾピラン-4-オン,2-[3-ヒドロキシ-4-(ホスホノオキシ)フェニル]-;3',4'-ジヒドロキシフラボン-4'-リン酸;3'4'-ジヒドロキシフラボン-4'-β-D-グルコピラノシドナトリウム塩;3',4'-ジヒドロキシフラボン-4'-β-D-リボフラノシドナトリウム塩ではない。
【請求項41】
Eは、エステル、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル、スルファメート、スルホン酸エステル、ホスファメート、ホスホン酸エステル、スルホナート、双性イオン種、アミノ酸、ホスホン酸アミノ、非環式アミン、環式アミン、四級アンモニウム陽イオン、ポリエチレングリコール、オリゴ糖またはデンドリマーから選択される請求項40に記載の化合物。
【請求項42】
Eは、エステル、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル、ポリエチレングリコール、オリゴ糖またはデンドリマーから選択される請求項40または41に記載の化合物。
【請求項43】
Eは、エステル、カルボン酸またはリン酸エステルから選択される請求項40から42のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項44】
Eは、式(Ib):
【化12】
(式中、
Wは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Xは、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)による基である請求項40から43のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項45】
Wは、Oである請求項44に記載の化合物。
【請求項46】
Xは、Hである請求項44または45に記載の化合物。
【請求項47】
Eは、式(Ic):
【化13】
(式中、
Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレン、アルケニレン、アルキニレンであり、
Wは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Xは、H、置換または非置換のアルキル、アルキルベンジル、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)によるエステルである請求項40から44のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項48】
Qは、置換または非置換の低級アルキレンである請求項47に記載の化合物。
【請求項49】
Wは、Oである請求項47または48に記載の化合物。
【請求項50】
Eは、式(Id):
【化14】
(式中、
Yは、O、NH、S、O-、NH-またはS-であり、
Zは、OまたはSであり、
R6およびR7は、H、置換または非置換のアルキル、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩から独立に選択される)によるリン酸エステルである請求項39から44のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項51】
YおよびZは、Oである請求項50に記載の化合物。
【請求項52】
R1、R2、R3、R4およびR5の少なくとも1つは、式(Ie):
【化15】
(式中、R6およびR7は、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩から独立に選択される)によるリン酸エステルである請求項40から51のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項53】
Lは、存在し、-CO-、エステル、フェノール、ホスホン酸エステル、カルバメート、カルボネートまたはマニッシュ塩基から選択される請求項40から52のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項54】
Lは、-CO-である請求項40から53のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項55】
Dは、存在し、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、あるいはアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルから選択される請求項40から54のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項56】
Dは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレンである請求項55に記載の化合物。
【請求項57】
一般式(II)による化合物。
【化16】
(式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2およびR3は、請求項40から56のいずれか一項に定められている通りである)
【請求項58】
一般式(III)による化合物。
【化17】
(式中、R3は、請求項40から56のいずれか一項に定められている通りである)
【請求項59】
一般式(IV)による化合物。
【化18】
(式中、
Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換のアルキレンであり、
Xは、H、一価もしくは二価の陽イオン塩、またはアンモニウム陽イオン塩である)
【請求項60】
Qは、1つまたは複数のヘテロ原子に場合によって割り込まれた置換または非置換の低級アルキレンである請求項59に記載の化合物。
【請求項61】
一般式Vによる化合物。
【化19】
(式中、R3およびR5は、請求項40から56のいずれか一項に定められている通りである)
【請求項62】
3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;4'-(ベンジルオキシ)-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;4'-ヒドロキシフラボン-3-ヘミアジペート;3',4'-ジベンジルオキシ-3-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3',4'-ジヒドロキシフラボン3-ヘミアジペート;3,4'-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;フラボン3,4'-ビス(ヘミアジペート);3,7-ジ-(ベンジルオキシカルボニルブチルカルボニルオキシ)フラボン;3,7-ジヒドロキシフラボン3,7-ビス(ヘミアジペート);4'-ヒドロキシ-3-ヒドロキシフラボン-3-四級アンモニウムエステル;4'-(ベンジルオキシ)-3-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)フラボンおよび3-ヒドロキシフラボン-3-リン酸二ナトリウム塩からなる群から選択される化合物。
【請求項63】
請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物を合成するための方法。
【請求項64】
栄養補助食品として許容可能な担体または希釈剤を、一般式Iの少なくとも1つの化合物とともに含む栄養補助食品組成物(nutraceutical composition)。
【化20】
[式中、
---は、一重または二重結合を表し、
R1、R2、R3、R4、R5は、H、OH、または式(Ia):
【化21】
(ここで、
Oは、酸素であり、
Lは、酸素、および存在する場合にDに共有結合し、または酸素およびEに共有結合するリンカー基であり、または存在せず、
Dは、約1から20個の炭素原子と同等の鎖長を有するスペーサー基であり、または存在せず、
Eは、可溶化基である)による基から独立に選択され、
ただし、R1、R2、R3、R4、R5の少なくとも1つは、HまたはOH以外である]
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2008−532951(P2008−532951A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500009(P2008−500009)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000314
【国際公開番号】WO2006/094357
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(507303273)ハワード フローリー インスティチュート オブ エクスパーリメンタル フィジオロジー アンド メディシン (1)
【出願人】(507303251)ニュープロテクト ピーティーワイ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000314
【国際公開番号】WO2006/094357
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(507303273)ハワード フローリー インスティチュート オブ エクスパーリメンタル フィジオロジー アンド メディシン (1)
【出願人】(507303251)ニュープロテクト ピーティーワイ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]