説明

フルオロエラストマーの凝固方法

フルオロエラストマーの製造方法において、500,000以上の粘度平均分子量を有するポリエチレンオキシドホモポリマーまたはコポリマーの水性溶液である水溶性ポリマー凝固剤が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロエラストマーの新規な凝固方法であって、あるクラスの水溶性ポリマーが凝固剤として用いられる、より具体的にはこのクラスの水溶性ポリマーがポリエチレンオキシドホモポリマーおよびポリエチレンオキシドのコポリマーを含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
優れた耐熱性、耐油性、および耐化学薬品性を有するフッ化ビニリデンのエラストメリックコポリマーは、シーリング材料、容器およびホース用に広く使用されている。
【0003】
乳化重合法によるかかるフルオロエラストマーの製造は、当該技術分野でよく知られており;例えば、米国特許第4,214,060号明細書および同第4,281,092号明細書を参照されたい。重合の結果は、ポリマーの分散液またはラテックスである。一般に、フルオロエラストマーは次に、スラリーを形成するための凝固剤の添加によって分散液から分離される。スラリーは次に洗浄され、乾燥され、次に商業用の最終形態へ成形される。
【0004】
これまで用いられた凝固剤は典型的には無機多価カチオンの塩である、A.L.Logothetis、Prog.Polym.Sci、14(1989)、251〜296ページ。これらには、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩、硫酸カリウムアルミニウムなどのミョウバン、塩化カルシウムおよび硝酸カルシウムなどのカルシウム塩、ならびに塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、および硝酸マグネシウムなどのマグネシウム塩が含まれる。これらの塩は凝固剤として非常に有効に働くが、残留量のこれらの塩がポリマー中に残る。これらの塩の存在は、半導体製造におけるシールなどの汚染に敏感な用途での使用に不適当である。従って、フルオロエラストマーの乳化重合での使用に有効な他の凝固剤を見いだすことが望ましいであろう。
【0005】
塩化ナトリウムなどの、一価カチオンの塩が、フルオロエラストマーの製造用の凝固剤として提案されてきた。これらの塩の残留量は、幾つかの最終使用用途で比較的無害であると考えられる。しかしながら、フルオロエラストマーを十分に凝固させるためには過度に大量の一価カチオンの塩が必要とされる。生じたポリマーは十分に乾燥させることが困難である。加えて、ポリマーを凝固させるために必要とされる大量のこれらの塩は、大きな、費用のかかる水処理施設を必要とする。
【0006】
有機凝固剤の使用は、ポリマー汚染を回避するための別の方法である。残留量の有機凝固剤が半導体プロセスを汚染することはなく、どんな場合でも硬化プロセス中にポリマーから揮発し得る。米国特許第3,598,794号明細書は、フルオロエラストマー用の凝固剤としてポリアミンを開示している。フルオロエラストマー分散液へのポリアミンの添加は、水相から分離することができるゲルを形成する。しかしながら、このゲルの洗浄は困難であり、フルオロエラストマー中に残る残留ポリアミンは、硬化操作を妨害する。
【0007】
米国特許第3,997,705号明細書は、加硫促進剤として働く有機塩基または塩でのフルオロエラストマーの凝固を開示している。しかしながら、かかる凝固剤の使用は、早過ぎる硬化またはスコーチを受けるフルオロエラストマーをもたらす。加えて、顧客が受け取るときには加硫促進剤がポリマー中に既に存在するので、かかる凝固剤の使用はフルオロエラストマーの次の配合の選択肢を制限する。
【0008】
国際公開第2008/097639 A1号パンフレットは、フルオロエラストマー用の凝固剤として少なくとも2つの第四級オニウム中心を有する水溶性ポリマーの使用を開示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
意外にも、ポリエチレンオキシド(PEO)ホモポリマーおよびコポリマーがフルオロエラストマーを凝固させるために使用されてもよいことが分かった。本発明の一態様は、
(A)少なくとも2つの共重合性モノマーの共重合単位を含む、フルオロエラストマーを含む水性分散液を提供する工程であって、第1モノマーが、前記フルオロエラストマーの総重量を基準として、5〜70重量パーセントの量で存在し、前記第1モノマーがフッ化ビニリデンおよびテトラフルオロエチレンからなる群から選択される工程と;
(B)少なくとも500,000の粘度平均分子量を有する、ポリエチレンオキシドホモポリマーおよびポリエチレンオキシドコポリマーからなる群から選択される水溶性ポリマーを前記水性分散液に加え、それによって前記フルオロエラストマーを凝固させる工程と
を含む、少なくとも53重量パーセントのフッ素を有するフルオロエラストマーの製造のための凝固方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、フルオロエラストマーゴムまたは粉末を製造するための凝固方法を指向する。「フルオロエラストマー」とは、非晶質のエラストメリックフルオロポリマーを意味する。フルオロポリマーは、それが少なくとも53重量パーセントのフッ素、好ましくは少なくとも64重量%のフッ素を含有する限り、部分フッ素化されていてもまたは過フッ素化されていてもよい。本発明の方法に用いられてもよいフルオロエラストマーは、フルオロエラストマーの重量を基準として、5〜70重量パーセントの、フッ化ビニリデン(VF)またはテトラフルオロエチレン(TFE)であってもよい第1モノマーの共重合単位を含有する。フルオロエラストマー中の残りの単位は、フッ素含有オレフィン、フッ素含有ビニルエーテル、炭化水素オレフィンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、前記第1モノマーとは異なる、1つ以上の追加の共重合モノマーからなる。
【0011】
第1モノマーと共重合可能なフッ素含有オレフィンには、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(1−HPFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)およびフッ化ビニルが含まれるが、それらに限定されない。
【0012】
第1モノマーと共重合可能なフッ素含有ビニルエーテルには、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテルが含まれるが、それらに限定されない。モノマーとしての使用に好適なパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル(PAVE)には、式
CF=CFO(Rf´O)(Rf´´O) (I)
(式中、Rf’およびRf’’は、2〜6個の炭素原子の異なる線状もしくは分岐のパーフルオロアルキレン基であり、mおよびnは独立して0〜10であり、Rは1〜6個の炭素原子のパーフルオロアルキル基である)
のものが含まれる。
【0013】
好ましいクラスのパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルには、式
CF=CFO(CFCFXO) (II)
(式中、XはFまたはCFであり、nは0〜5であり、Rは1〜6個の炭素原子のパーフルオロアルキル基である)
の組成物が含まれる。
【0014】
経済性および加工の容易さのために最も好ましいクラスのパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルには、式中、nが0または1であり、Rが1〜3個の炭素原子を含有するそれらのエーテルが含まれる。かかる過フッ素化エーテルの例には、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、パーフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)が挙げられる。他の有用なパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルモノマーには、式(III)
CF=CFO[(CFCFCFZO] (III)
(式中、Rは1〜6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキルであり、
m=0または1であり、n=0〜5であり、Z=FまたはCFである)
の化合物が含まれる。このクラスの好ましいメンバーは、RがCであり、m=0、およびn=1であるものである。
【0015】
追加のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルモノマーには、式(IV)
CF=CFO[(CFCF{CF}O)(CFCFCFO)(CF]C2x+1 (IV)
(式中、mおよびnは独立して=0〜10であり、p=0〜3、およびx=1〜5である)
の化合物が含まれる。このクラスの好ましいメンバーには、n=0〜1、m=0〜1、およびx=1である化合物が含まれる。
【0016】
有用なパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)の他の例には、式(V)
CF=CFOCFCF(CF)O(CFO)2n+1 (V)
(式中、n=1〜5、m=1〜3であり、そしてここで、好ましくは、n=1である)
の化合物が挙げられる。
【0017】
PAVEの共重合単位が本発明に用いられるフルオロエラストマー中に存在する場合、PAVE含有率は一般に、フルオロエラストマーの総重量を基準として、25〜75重量パーセントの範囲である。パーフルオロ(メチルビニル)エーテルが使用される場合、フルオロエラストマーは好ましくは30〜55重量%の共重合PMVE単位を含有する。
【0018】
本発明に用いられるフルオロエラストマーに有用な炭化水素オレフィンには、エチレン(E)およびプロピレン(P)が含まれるが、それらに限定されない。炭化水素オレフィンの共重合単位がフルオロエラストマー中に存在する場合、炭化水素オレフィン含有率は一般に4〜30重量パーセントである。
【0019】
本発明の凝固方法に用いられるフルオロエラストマーはまた、任意選択的に、1つ以上の硬化部位モノマーの単位を含んでもよい。好適な硬化部位モノマーの例には、i)臭素含有オレフィン;ii)ヨウ素含有オレフィン;iii)臭素含有ビニルエーテル;iv)ヨウ素含有ビニルエーテル;v)ニトリル基を有するフッ素含有オレフィン;vi)ニトリル基を有するフッ素含有ビニルエーテル;vii)1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(2−HPFP);viii)パーフルオロ(2−フェノキシプロピルビニル)エーテル;およびix)非共役ジエンが挙げられる。
【0020】
臭素化硬化部位モノマーは、他のハロゲン、好ましくはフッ素を含有してもよい。臭素化オレフィン硬化部位モノマーの例は、CF=CFOCFCFCFOCFCFBr;ブロムトリフルオロエチレン;4−ブロム−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(BTFB);および臭化ビニル、1−ブロム−2,2−ジフルオロエチレンなどの他のもの;臭化パーフルオロアリル;4−ブロム−1,1,2−トリフルオロブテン−1;4−ブロム−1,1,3,3,4,4,−ヘキサフルオロブテン;4−ブロム−3−クロロ−1,1,3,4,4−ペンタフルオロブテン;6−ブロム−5,5,6,6−テトラフルオロヘキセン;4−ブロムパーフルオロブテン−1ならびに臭化3,3−ジフルオロアリルである。本発明に有用な臭素化ビニルエーテル硬化部位モノマーには、CFBrCFO−CF=CFなどの、クラスCFBr−R−O−CF=CF(Rはパーフルオロアルキレン基である)の2−ブロム−パーフルオロエチルパーフルオロビニルエーテルおよびフッ素化化合物、ならびにCHOCF=CFBrまたはCFCHOCF=CFBrなどのクラスROCF=CFBrまたはROCBr=CF(式中、Rは低級アルキル基またはフルオロアルキル基である)のフルオロビニルエーテルが含まれる。
【0021】
好適なヨウ素化硬化部位モノマーには、米国特許第5,674,959号明細書に開示されているような式:CHR=CH−Z−CHCHR−I(式中、Rは−Hまたは−CHであり;Zは、線状もしくは分岐の、任意選択的に1個以上のエーテル酸素原子を含有するC〜C18(パー)フルオロアルキレンラジカル、または(パー)フルオロポリオキシアルキレンラジカルである)のヨウ素化オレフィンが含まれる。有用なヨウ素化硬化部位モノマーの他の例は、米国特許第5,717,036号明細書に開示されているなどの、式:I(CHCFCFOCF=CFおよびICHCFO[CF(CF)CFO]CF=CFなど(式中、n=1〜3である)の不飽和エーテルである。加えて、ヨードエチレン、4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(ITFB);3−クロロ−4−ヨード−3,4,4−トリフルオロブテン;2−ヨード−1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(ビニルオキシ)エタン;2−ヨード−1−(パーフルオロビニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエチレン;1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヨード−1−(パーフルオロビニルオキシ)プロパン;2−ヨードエチルビニルエーテル;3,3,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−4−ヨードペンテン;およびヨードトリフルオロエチレンを含む好適なヨウ素化硬化部位モノマーが米国特許第4,694,045号明細書に開示されている。ヨウ化アリルおよび2−ヨード−パーフルオロエチルパーフルオロビニルエーテルもまた有用な硬化部位モノマーである。
【0022】
有用なニトリル含有硬化部位モノマーには、下に示される式のものが含まれる。
CF=CF−O(CF−CN (VI)
式中、n=2〜12、好ましくは2〜6であり;
CF=CF−O[CF−CF(CF)−O]−CF−CF(CF)−CN (VII)
式中、n=0〜4、好ましくは0〜2であり;
CF=CF−[OCFCF(CF)]−O−(CF−CN (VIII)
式中、x=1〜2、およびn=1〜4であり;ならびに
CF=CF−O−(CF−O−CF(CF)CN (IX)
式中、n=2〜4である。式(VIII)のものが好ましい。とりわけ好ましい硬化部位モノマーは、ニトリル基およびトリフルオロビニルエーテル基を有する過フッ素化ポリエーテルである。最も好ましい硬化部位モノマーは、
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN (X)
すなわち、パーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)または8−CNVEである。ニトリル含有硬化部位モノマーは、テトラフルオロエチレンおよびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)をまた含有するコポリマーに特に有用である。
【0023】
非共役ジエン硬化部位モノマーの例には、1,4−ペンタジエン;1,5−ヘキサジエン;1,7−オクタジエン;3,3,4,4−テトラフルオロ−1,5−ヘキサジエン;ならびにカナダ国特許第2,067,891号明細書および欧州特許出願公開第0784064A1号明細書に開示されているものなどの、他のものが挙げられるが、それらに限定されない。好適なトリエンは、8−メチル−4−エチリデン−1,7−オクタジエンである。
【0024】
上にリストされた硬化部位モノマーのうち、フルオロエラストマーが過酸化物で硬化されるであろう状況について、好ましい化合物には、4−ブロム−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(BTFB);4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(ITFB);ヨウ化アリル;ブロムトリフルオロエチレンおよび8−CNVEが含まれる。フルオロエラストマーがポリオールで硬化されるであろうとき、2−HPFPまたはパーフルオロ(2−フェノキシプロピルビニル)エーテルが好ましい硬化部位モノマーである。フルオロエラストマーがテトラアミンで硬化されるであろうとき、ビス(アミノフェノール)またはビス(チオアミノフェノール)、8−CNVEが好ましい硬化部位モノマーである。
【0025】
硬化部位モノマーの単位は、本発明の凝固方法に用いられるフルオロエラストマー中に存在するとき、0.05〜10重量%(フルオロエラストマーの総重量を基準として)、好ましくは0.05〜5重量%、最も好ましくは0.05〜3重量%のレベルで典型的には存在する。
【0026】
本発明の方法に用いられてもよい具体的なフルオロエラストマーには、少なくとも58重量%のフッ素を有する、かつ、i)フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレン;ii)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレン;iii)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンおよび4−ブロム−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;iv)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;v)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、テトラフルオロエチレンおよび4−ブロム−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;vi)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、テトラフルオロエチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;vii)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、テトラフルオロエチレンおよび1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン;viii)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよびエチレン;ix)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、エチレンおよび4−ブロム−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;x)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、エチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;xi)テトラフルオロエチレンおよびプロピレン;xii)テトラフルオロエチレン、プロピレンおよび3,3,3−トリフルオロプロペン;xiii)テトラフルオロエチレン、プロピレン、3,3,3−トリフルオロプロペンおよび4−ブロム−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;xiv)テトラフルオロエチレン、プロピレンおよびフッ化ビニリデン;xv)テトラフルオロエチレンおよびパーフルオロ(メチルビニル)エーテル;xvi)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよびパーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン);xvii)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよび4−ブロム−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;xviii)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;ならびにxix)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよびパーフルオロ(2−フェノキシプロピルビニル)エーテルの共重合単位を含むものが含まれるが、それらに限定されない。
【0027】
さらに、ヨウ素含有末端基、臭素含有末端基またはそれらの混合物が、フルオロエラストマーの製造中の連鎖移動剤または分子量調整剤の使用の結果としてフルオロエラストマーポリマー鎖端の1つまたは両方に任意選択的に存在してもよい。連鎖移動剤の量は、用いられるとき、0.005〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%の範囲のフルオロエラストマー中のヨウ素または臭素レベルをもたらすと計算される。
【0028】
連鎖移動剤の例には、ポリマー分子の一端または両端に結合ヨウ素の組み込みをもたらすヨウ素含有化合物が挙げられる。ヨウ化メチレン;1,4−ジヨードパーフルオロ−n−ブタン;および1,6−ジヨード−3,3,4,4−テトラフルオロヘキサンがかかる試剤を代表するものである。他のヨウ素化連鎖移動剤には、1,3−ジヨードパーフルオロプロパン;1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン;1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン;1,2−ジ(ヨードジフルオロメチル)−パーフルオロシクロブタン;モノヨードパーフルオロエタン;モノヨードパーフルオロブタン;2−ヨード−1−ハイドロパーフルオロエタンなどが含まれる。欧州特許出願公開第0868447A1号明細書に開示されているシアノ−ヨウ素連鎖移動剤もまた含まれる。ジヨウ素化連鎖移動剤が特に好ましい。
【0029】
臭素化連鎖移動剤の例には、1−ブロム−2−ヨードパーフルオロエタン;1−ブロム−3−ヨードパーフルオロプロパン;1−ヨード−2−ブロム−1,1−ジフルオロエタンおよび米国特許第5,151,492号明細書に開示されているなどの他のものが挙げられる。
【0030】
本発明の方法に使用するのに好適な他の連鎖移動剤には、米国特許第3,707,529号明細書に開示されているものが含まれる。かかる試剤の例には、イソプロパノール、マロン酸ジエチル、酢酸エチル、四塩化炭素、アセトンおよびドデシルメルカプタンが挙げられる。
【0031】
硬化部位モノマーおよび連鎖移動剤は、ニートでまたは溶液として反応器に加えられてもよい。重合の開始近くに反応器へ導入されることに加えて、ある量の連鎖移動剤は、製造中のフルオロエラストマーの所望の組成、使用中の連鎖移動剤、および全反応時間に依存して、全体重合反応期間の全体にわたって加えられてもよい。
【0032】
本発明の凝固方法に用いられてもよいフルオロエラストマーは、連続、セミバッチ式またはバッチ式方法であってもよい本発明の乳化重合法で典型的には製造される。
【0033】
セミバッチ式乳化重合法では、所望の組成のガス状モノマー混合物(初期モノマー装入物)が水性溶液を含有する反応器へ導入される。水性溶液は界面活性剤を任意選択的に含有してもよい。反応器は典型的には、蒸気空間が残るように、水性溶液で完全には満たされていない。任意選択的に、水性溶液は、重合反応のpHを調整するためのリン酸塩または酢酸塩緩衝剤などの、pH緩衝剤を含有してもよい。緩衝剤の代わりに、NaOHなどの、塩基がpHを調整するために使用されてもよい。一般に、pHは、製造中のフルオロエラストマーの種類に依存して、1〜7に調整される。あるいはまた、またはさらに、pH緩衝剤または塩基は、単独でまたは重合開始剤、液体硬化部位モノマー、追加の界面活性剤または連鎖移動剤などの他の成分と組み合わせてのどちらかで、重合反応の全体にわたって様々な時間に反応器に加えられてもよい。また任意選択的に、初期水性溶液は、水溶性の過酸化物重合開始剤を含有してもよい。加えて、初期水性溶液は、フルオロエラストマーラテックス粒子形成を促進し、こうして重合プロセスを加速するために、前に製造されたフルオロエラストマー種ポリマーなどの、核剤を含有してもよい。
【0034】
初期モノマー装入物は、TFEまたはVFのどちらかのある量の第1モノマーと第1モノマーとは異なる1つ以上の追加のモノマーとを含有する。初期装入物に含有されるモノマー混合物の量は、0.5〜10MPaの反応器圧力をもたらすように設定される。
【0035】
モノマー混合物は水性媒体中に分散され、任意選択的に、連鎖移動剤もまた、反応混合物が典型的には機械撹拌によって撹拌されながらこの時点で加えられてもよい。初期ガス状モノマー装入物において、各モノマーの相対量は反応速度論によって決定され、共重合モノマー単位の所望の比を有するフルオロエラストマーをもたらすように設定される(すなわち、反応性の非常に低いモノマーは、他のモノマーと比べて、生成するフルオロエラストマーの組成で望まれるより高い量で存在しなければならない)。
【0036】
セミバッチ式反応混合物の温度は、25℃〜130℃、好ましくは50℃〜120℃の範囲に維持される。重合は、開始剤が熱分解するかまたは還元剤と反応するかのどちらかであり、生じたラジカルが分散したモノマーと反応するときに開始する。
【0037】
追加量のガス状主モノマーおよび硬化部位モノマー(増分供給物)は、制御された温度で一定の反応器圧力を維持するために、重合の全体にわたって制御された速度で加えられる。増分供給物中に含有されるモノマーの相対比は、生じるフルオロエラストマー中の共重合モノマー単位の所望の比とおおよそ同じものであるように設定される。従って、増分供給物は、モノマー混合物の総重量を基準として、5〜70重量パーセントのTFEまたはVFのどちらかの第1モノマーと95〜30重量パーセントの第1モノマーとは異なる1つ以上の追加のモノマーとを含有する。連鎖移動剤はまた、任意選択的に、重合のこの段階中の任意の時点で反応器へ導入されてもよい。典型的には、追加の重合開始剤もまた、重合のこの段階中に反応器に供給される。形成されるポリマーの量は、増分モノマー供給物の累積量にほぼ等しい。当業者は、初期装入物の組成が正確には、選択された最終フルオロエラストマー組成物について必要とされるものではない可能性があるので、または増分供給物中のモノマーの一部が、反応することなく、既に形成されたポリマー粒子中へ溶解する可能性があるので、増分供給物中のモノマーのモル比が生じるフルオロエラストマー中の所望の(すなわち、選択された)共重合モノマー単位組成のそれと必ずしも正確に同じものではないことを認めるであろう。2〜30時間の範囲の重合時間が、このセミバッチ式重合法では典型的に用いられる。
【0038】
フルオロエラストマーの製造のための連続乳化重合法は、以下のようにセミバッチ式方法とは異なる。反応器は、蒸気空間が全くないように水性溶液で完全に満たされる。ガス状モノマーと水溶性モノマー、連鎖移動剤、緩衝剤、塩基、重合開始剤、界面活性剤などの他の成分の溶液とが一定速度で別個の流れで反応器に供給される。供給速度は、反応器における平均ポリマー滞留時間が概して0.2〜4時間であるように制御される。短い滞留時間は反応性の高いモノマーについて用いられるが、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテルなどの反応性のより低いモノマーは、より多くの時間を必要とする。連続法反応混合物の温度は、25℃〜130℃、好ましくは80℃〜120℃の範囲に維持される。また、フルオロエラストマーラテックス粒子は、核剤が重合反応を開始するために典型的には必要とされないほど、より容易に連続法では形成される。
【0039】
重合圧力は、0.5〜10MPa、好ましくは1〜6.2MPaの範囲に制御される。セミバッチ式方法では、所望の重合圧力は最初には、初期装入物中のガス状モノマーの量を調節することによって達成され、反応が開始した後は、圧力は増分ガス状モノマー供給物を制御することによって調整される。連続法では、圧力は、分散液流出物ラインの背圧調整器によって調整される。重合圧力は、それが1MPaより下である場合、重合反応系でのモノマー濃度が低すぎて満足のいく反応速度を得ることができないので、上記の範囲に設定される。加えて、分子量は十分に増加しない。圧力が10MPaより上である場合、必要とされる高圧装置のコストが非常に高い。
【0040】
形成されるフルオロエラストマーコポリマーの量は、装入された増分供給物の量にほぼ等しく、水性媒体の100重量部当たり10〜30重量部のコポリマーの範囲に、好ましくは20〜25重量部のコポリマーの範囲にある。コポリマー形成度は、それが10重量部未満である場合、生産性が望ましくないことに低く、しかし一方それが30重量部より上である場合、固形分が満足のいく撹拌にとって余りにも高くなる。
【0041】
本発明で重合を開始させるために使用されてもよい水溶性の無機過酸化物には、例えば、過硫酸水素のアンモニウム、ナトリウムまたはカリウム塩が含まれる。水溶性の有機過酸化物には、例えば、ジスクシニルペルオキシドが含まれる。酸化還元型開始では、亜硫酸ナトリウムなどの還元剤が、過酸化物に加えて存在する。これらの水溶性の過酸化物は、単独でまたは2つ以上の種類の混合物として使用されてもよい。使用されるべき量は、ポリマーの100重量部当たり0.01〜0.4重量部、好ましくは0.05〜0.3重量部の範囲で一般に選択される。重合中に、フルオロエラストマーポリマー鎖端の幾らかは、これらの過酸化物の分解によって生じた断片でキャップされる。
【0042】
界面活性剤、典型的にはアニオン界面活性剤がこれらの方法で任意選択的に用いられる。界面活性剤の例には、パーフルオロオクタン酸(およびその塩)、オクチルスルホン酸ナトリウム、ならびにパーフルオロヘキシルエチルスルホン酸(およびその塩)が挙げられるが、それらに限定されない。しかしながら、界面活性剤は必ずしも必要とされない。
【0043】
フルオロエラストマーゴムまたは粉末は、分散液への水溶性ポリマー凝固剤の添加によってフルオロエラストマー分散液から単離される。この凝固剤は、エチレンオキシド(CHCHO−)のホモポリマーまたはエチレンオキシドのコポリマーのどちらかを含む。かかるコポリマーの具体的な例には、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマーおよびエチレンオキシド−ブチレンオキシドコポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。
【0044】
凝固剤ポリマーの、レオロジーによって測定される、粘度平均分子量(Mv)は、少なくとも500,000、好ましくは2,000,000超でなければならない。ポリエチレンオキシド(PEO)ホモポリマーまたはコポリマーの粘度平均分子量が500,000未満であるとき、凝固が全く起こらないかまたは必要とされるポリエチレンオキシドホモポリマーまたはコポリマーの量が無駄に多いかのどちらかである。当業者は、凝固剤として有用であるPEOホモポリマーまたはコポリマーの最小粘度平均分子量がフルオロエラストマー組成、エラストマー末端基、分散液中に存在する界面活性剤の種類、界面活性剤の量、pHなどに依存して変わるであろうが、一般に500,000であることを認めるであろう。幾つかのシステムではそれは1,000,000またはさらに2,000,000であってもよく、他のシステムではそれは200,000ほどに低くてもよい。ポリエチレンオキシドは、特に低分子量で、ポリエチレングリコールと時々言われる。
【0045】
ポリエチレンオキシドホモポリマーまたはコポリマーは好ましくは、水性溶液としてフルオロエラストマー分散液に加えられる。有用な濃度は0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜1.0重量%である。任意選択的に、防腐剤または酸化防止剤が、貯蔵寿命を延ばすために溶液に添加されてもよい。
【0046】
任意選択的に、ポリエチレンオキシドホモポリマーまたはコポリマーによって凝固されたフルオロエラストマーの特性は、いかなる硬化剤も不存在下に、ポリマー粉末を高温にさらすことによって高めることができる。この加熱プロセスは、ポリマーが当該技術分野で公知の典型的なポリヒドロキシまたはポリアミン硬化剤と配合した後により速く硬化することを可能にする。ポリマーは、静止状態で(すなわち、剪断の不存在下に)少なくとも200℃に1時間以上加熱されてもよい。しかしながら、厄介なオーブン老化プロセスを回避するために、ポリエチレンオキシドで凝固されたポリマーは好ましくは、熱処理を行うために押出機に通される。好ましくは、押出機でのポリマー温度は少なくとも150℃に達し、より好ましくは、ポリマー温度は少なくとも250℃に達する。押出機は単軸スクリュー、二軸スクリュー、またはBuss(登録商標)混練機型であってもよい。好ましくは、押出機は二軸スクリュー押出機またはBuss Kneader(混練機)であり、より好ましくは、押出機は真空揮発除去セクションを含む。
【0047】
本発明の方法によって製造されたフルオロエラストマーは、シール、ワイヤコーティング、チュービングおよびラミネートを含む多くの工業用途に有用である。
【実施例】
【0048】
試験方法
ムーニー(Mooney)粘度、ML(1+10)は、1分の予熱時間および10分の回転子操作時間を用いて、121℃でL(大きい)型回転子を使ってASTM D1646に従って測定した。
【0049】
残留金属含有率は、ポリマーサンプルを白金坩堝中に秤量することによって測定した。サンプルを525℃までマッフル炉でゆっくり灰化した。灰を、塩酸、フッ酸、および脱イオン水中で温浸した。この溶液をPerkin−Elmer 5300 ICP Spectrometerで分析した。
【0050】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示されるが、それらに限定されない。
【0051】
実施例1
VF/HFPコポリマーフルオロエラストマーを、十分に撹拌される4.0リットルのステンレススチール液体充満反応容器中115℃で実施される、連続乳化重合法によって製造した。脱イオン水中の4.37g/時間(g/h)の過硫酸アンモニウム開始剤、1.75g/hの水酸化ナトリウム、3.75g/hのオクチルスルホン酸ナトリウム、および4.50g/hのイソプロパノール連鎖移動剤からなる水性溶液を、10.0L/時間の速度で反応器に供給した。反応器を、流出物ラインの背圧調整弁によって6.2MPaの圧力で液体充満レベルに維持した。30分後に、重合を、ダイヤフラム圧縮機によって供給される1538g/hのフッ化ビニリデン(VF)および1150g/hのヘキサフルオロプロピレン(HFP)からなるガス状モノマー混合物の導入によって開始させた。2.0時間後に、流出物分散液の収集を開始し、収集を5.0時間続行した。4.36のpHを有し、20.48重量%の固形分を含有する、流出物ラテックスを、大気圧での脱ガス容器中で残存モノマーから分離した。
【0052】
凝固剤溶液を、2グラムのUCARFLOC 309、Mv=8,000,000(Dow Chemical Co.)を1998グラムの脱イオン水に溶解させることによって調製した。ラテックスを、ラテックス1リットル当たり45mLの凝固剤溶液の用量で30mL/分の速度で凝固剤溶液を供給することによって凝固させた。生じたポリマー粉末を2回洗浄し、70℃で48時間乾燥させた。60.7重量%のVF単位および39.3重量%のHFP単位からなる生成物は、示差走査熱量測定法(加熱モード、10℃/分、転移の変曲点)によって測定されるように、−19.1℃のガラス転移温度を有する非晶質エラストマーであった。このエラストマーの固有粘度は、メチルエチルケトン中30℃で測定される、0.60dL/gであり、ムーニー粘度、121℃でのML(1+10)は、27.1であった。
【0053】
実施例2
VF/HFPコポリマーフルオロエラストマーを、十分に撹拌される4.0リットルのステンレススチール液体充満反応容器中115℃で実施される、連続乳化重合法によって製造した。脱イオン水中の4.37g/時間(g/h)の過硫酸アンモニウム開始剤、1.75g/hの水酸化ナトリウム、3.75g/hのオクチルスルホン酸ナトリウム、および3.00g/hのイソプロパノール連鎖移動剤からなる水性溶液を10.0L/時間の速度で反応器に供給した。反応器を、流出物ラインの背圧調整弁によって6.2MPaの圧力で液体充満レベルに維持した。30分後に、重合を、ダイヤフラム圧縮機によって供給される1538g/hのフッ化ビニリデン(VF)および1150g/hのヘキサフルオロプロピレン(HFP)からなるガス状モノマー混合物の導入によって開始させた。2.0時間後に、流出物分散液の収集を開始し、収集を5.0時間続行した。5.15のpHを有し、20.11重量%の固形分を含有する、流出物ラテックスを、大気圧での脱ガス容器中で残存モノマーから分離した。
【0054】
凝固剤溶液を、2グラムのポリ(エチレンオキシド)、Mv=5,000,000(Aldrich Chemical Co.)を1998グラムの脱イオン水に溶解させることによって調製した。ラテックスを、ラテックス1リットル当たり45mLの凝固剤溶液の用量で30mL/分の速度で凝固剤溶液を供給することによって凝固させた。生じたポリマー粉末を2回洗浄し、70℃で48時間乾燥させた。60.4重量%のVF単位および39.6重量%のHFP単位からなる生成物は、示差走査熱量測定法(加熱モード、10℃/分、転移の変曲点)によって測定されるように、−18.8℃のガラス転移温度を有する非晶質エラストマーであった。このエラストマーの固有粘度は、メチルエチルケトン中30℃で測定される、0.70dL/gであり、ムーニー粘度、121℃でのML(1+10)は、42.8であった。
【0055】
乾燥したポリマー粉末の金属含有率をICPによって測定し、百万当たりの部の単位で報告する。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例3
VF/HFP/TFEコポリマーフルオロエラストマーを、十分に撹拌される2.0リットルのステンレススチール液体充満反応容器中115℃で実施される、連続乳化重合法によって製造した。脱イオン水中の2.09g/時間(g/h)の過硫酸アンモニウム開始剤、0.84g/hの水酸化ナトリウム、1.80g/hのオクチルスルホン酸ナトリウム、および1.01g/hのイソプロパノール連鎖移動剤からなる水性溶液を、5.0L/時間の速度で反応器に供給した。反応器を、流出物ラインの背圧調整弁によって6.2MPaの圧力で液体充満レベルに維持した。30分後に、重合を、ダイヤフラム圧縮機によって供給される730g/hのフッ化ビニリデン(VF)、384g/hのヘキサフルオロプロピレン(HFP)、および130g/hのテトラフルオロエチレン(TFE)からなるガス状モノマー混合物の導入によって開始させた。2.0時間後に、流出物分散液の収集を開始し、収集を6時間続行した。4.52のpHを有し、20.12重量%の固形分を含有する、流出物ポリマーラテックスを、大気圧での脱ガス容器中で残存モノマーから分離した。
【0058】
本発明の凝固方法を利用してフルオロエラストマーを単離した。凝塊を、2000グラムの0.1重量%のポリエチレンオキシド(Mv=5,000,000)(Aldrich Chemical Co.)溶液を38リットルのポリマーラテックスに加えることによって形成した。水相をスラリーから除去し、生じた湿潤粉末を、おおよそ50℃〜65℃での空気炉中で1重量%未満の含水率まで乾燥させた。61.5重量%のVF単位、29.3重量%のHFP単位、および9.21重量%のTFE単位からなる生成物は、示差走査熱量測定法(加熱モード、10℃/分、転移の変曲点)によって測定されるように、−21.8℃のガラス転移温度を有する非晶質エラストマーであった。このエラストマーの固有粘度は、メチルエチルケトン中30℃で測定される、0.93dL/gであり、ムーニー粘度、121℃でのML(1+10)は、66.9であった。
【0059】
実施例4
VF/PMVE/TFEコポリマーフルオロエラストマーを、十分に撹拌される2.0リットルのステンレススチール液体充満反応容器中105℃で実施される、連続乳化重合法によって製造した。1.98g/時間(g/h)の過硫酸アンモニウム開始剤および0.79g/hの水酸化ナトリウムからなる水溶液を4L/時間の速度で反応器に供給した。反応器を、流出物ラインの背圧調整弁によって6.2MPaの圧力で液体充満レベルに維持した。30分後に、重合を、ダイヤフラム圧縮機によって供給される、569g/hのフッ化ビニリデン(VF)、393g/hのパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、および101g/hのテトラフルオロエチレン(TFE)からなるガス状モノマー混合物の導入によって開始させた。重合が開始した15分後に、4−ブロム−3,3,4,4−テトラフルオロ−1−ブテン(BTFB)を、10.0g/hの速度で反応器へ供給した。さらなる1.75時間後に流出物分散液の収集を開始し、収集を5時間続行した。8.64のpHを有し、20.7重量%の固形分を含有する、流出物ポリマーラテックスを、大気圧での脱ガス容器中で残存モノマーから分離した。
【0060】
本発明の凝固方法を利用してフルオロエラストマーを単離した。凝塊を、45グラムのPEO溶液対1リットルのラテックスの比で、Mv=5,000,000のポリエチレンオキシド(Aldrich Chemical Co.)から調製された0.1重量%のポリエチレンオキシド溶液をポリマーラテックスに加えることによって形成した。水相をスラリーから除去し、生じた湿潤粉末を、おおよそ50℃〜65℃での空気炉中で1重量%未満の含水率まで乾燥させた。55.1重量%のVF単位、35.2重量%のPMVE単位、8.7重量%のTFE単位、および1.0重量%のBTFB単位からなる生成物は、示差走査熱量測定法(加熱モード、10℃/分、転移の変曲点)によって測定されるように、−31.3℃のガラス転移温度を有する非晶質エラストマーであった。このエラストマーの固有粘度は、メチルエチルケトン中30℃で測定される、1.20dL/gであり、ムーニー粘度、121℃でのML(1+10)は、93.3であった。
【0061】
実施例5
VF/HFPコポリマーを、十分に撹拌される33.3リットルのステンレススチール反応容器中80℃で実施されるセミバッチ式方法によって製造した。容器に24kgの脱イオン水を装入し、容器を38重量%のVFと62重量%のHFPとの混合物で0.66MPaに加圧した。350ミリリットルの過硫酸アンモニウムの10.0重量%溶液を反応器に供給した。重合が始まるにつれて、反応器圧力が低下した。反応器圧力を、60重量%のVFと40重量%のHFPとの混合物を供給することによって0.66MPaに維持した。6000グラムのこの第2混合物を反応器に供給した後、反応器を脱圧し、冷却した。2.8のpHおよび19.22重量%のポリマー固形分のラテックスが得られた。
【0062】
本発明の凝固方法を利用してフルオロエラストマーを単離した。凝塊を、2000グラムのPEO溶液対1キログラムのラテックスの比で、Mv=600,000のポリエチレンオキシド(Aldrich Chemical Co.)から調製された0.1重量%のポリエチレンオキシド溶液を1キログラムのこのポリマーラテックスに加えることによって形成した。水相をスラリーから除去し、生じた湿潤粉末を、おおよそ50℃〜65℃での空気炉中で1重量%未満の含水率まで乾燥させた。60.5重量%のVF単位および39.5重量%のHFP単位からなる生成物は、示差走査熱量測定法(加熱モード、10℃/分、転移の変曲点)によって測定されるように、−18.5℃のガラス転移温度を有する非晶質エラストマーであった。このエラストマーの固有粘度は、メチルエチルケトン中30℃で測定される、0.94dL/gであり、ムーニー粘度、121℃でのML(1+10)は、51.9であった。
【0063】
第2凝塊を、694グラムのPEO溶液対1キログラムのラテックスの比で、Mv=1,000,000のポリエチレンオキシド(Aldrich Chemical Co.)から調製された0.1重量%のポリエチレンオキシド溶液を1キログラムの上記ポリマーラテックスに加えることによって形成した。水相をスラリーから除去し、生じた湿潤粉末を、おおよそ50℃〜65℃での空気炉中で1重量%未満の含水率まで乾燥させた。
【0064】
実施例6
TFE/PMVEコポリマーを、十分に撹拌される33.3リットルのステンレススチール反応容器中80℃で実施されるセミバッチ式方法によって製造した。容器に24kgの脱イオン水を装入し、容器を28重量%のTFEと72重量%のPMVEとの混合物で1.48MPaに加圧した。300ミリリットルの過硫酸アンモニウムの10.0重量%溶液を反応器に供給した。重合が始まるにつれて、反応器圧力が低下した。反応器圧力を、52重量%のTFEと48重量%のPMVEとの混合物を供給することによって1.48MPaに維持した。6000グラムのこの第2混合物を反応器に供給した後、反応器を脱圧し、冷却した。3.6のpHおよび19.79重量%のポリマー固形分のラテックスが得られた。
【0065】
本発明の凝固方法を利用してフルオロエラストマーを単離した。凝塊を、627グラムのPEO溶液対1キログラムのラテックスの比で、Mv=600,000のポリエチレンオキシド(Aldrich Chemical Co.)から調製された0.1重量%のポリエチレンオキシド溶液を1キログラムのこのポリマーラテックスに加えることによって形成した。水相をスラリーから除去し、生じた湿潤粉末を、おおよそ50℃〜65℃での空気炉中で1重量%未満の含水率まで乾燥させた。
【0066】
第2凝塊を、53グラムのPEO溶液対1キログラムのラテックスの比で、Mv=5,000,000のポリエチレンオキシド(Aldrich Chemical Co.)から調製された0.1重量%のポリエチレンオキシド溶液を1キログラムのこのポリマーラテックスに加えることによって形成した。水相をスラリーから除去し、生じた湿潤粉末を、おおよそ50℃〜65℃での空気炉中で1重量%未満の含水率まで乾燥させた。
【0067】
53.5重量%のTFE単位および46.5重量%のPMVE単位からなる生成物は、示差走査熱量測定法(加熱モード、10℃/分、転移の変曲点)によって測定されるように、−1.1℃のガラス転移温度を有する非晶質エラストマーであった。ムーニー粘度、150℃でのML(1+10)は、83.7であった。
【0068】
実施例7
VF/HFPコポリマーを、十分に撹拌される33.3リットルのステンレススチール反応容器中80℃で実施されるセミバッチ式方法によって製造した。容器に、40.0グラムのZonylTM 1033D(E.I.DuPont de Nemours Co.)、1.3グラムの水酸化ナトリウム、および23,958.7グラムの脱イオン水の溶液を装入し、容器を38重量%のVFと62重量%のHFPとの混合物で1.14MPaに加圧した。30ミリリットルの過硫酸アンモニウムの5.0重量%溶液を反応器に供給した。重合が始まるにつれて、反応器圧力が低下した。反応器圧力を、60重量%のVFと40重量%のHFPとの混合物を供給することによって1.14MPaに維持した。6000グラムのこの第2混合物を反応器に供給した後、反応器を脱圧し、冷却した。3.2のpHおよび18.74重量%のポリマー固形分のラテックスが得られた。
【0069】
本発明の凝固方法を利用してフルオロエラストマーを単離した。凝塊を、163グラムのPEO溶液対1キログラムのラテックスの比で、Mv=2,000,000のポリエチレンオキシド(Aldrich Chemical Co.)から調製された0.1重量%のポリエチレンオキシド溶液を1キログラムのこのポリマーラテックスに加えることによって形成した。水相をスラリーから除去し、生じた湿潤粉末を、おおよそ50℃〜65℃での空気炉中で1重量%未満の含水率まで乾燥させた。
【0070】
実施例8
TFE/プロピレンコポリマーを、十分に撹拌される33.3リットルのステンレススチール反応容器中80℃で実施されるセミバッチ式方法によって製造した。容器に、400.0グラムのZonyl 1033D(E.I.DuPont de Nemours Co.)、68.0グラムのリン酸水素二アンモニウム、および23,532グラムの脱イオン水の溶液を装入し、容器を97重量%のTFEと3重量%のプロピレンとの混合物で1.83MPaに加圧した。100ミリリットルの過硫酸アンモニウムの10.0重量%溶液を反応器に供給した。重合が始まるにつれて、反応器圧力が低下した。反応器圧力を、78重量%のTFEと22重量%のプロピレンとの混合物を供給することによって1.83MPaに維持した。8000グラムのこの第2混合物を反応器に供給した後、反応器を脱圧し、冷却した。3.3のpHおよび25.13重量%のポリマー固形分のラテックスが得られた。
【0071】
本発明の凝固方法を利用してフルオロエラストマーを単離した。凝塊を、170グラムのPEO溶液対1キログラムのラテックスの比で、Mv=5,000,000のポリエチレンオキシド(Aldrich Chemical Co.)から調製された0.1重量%のポリエチレンオキシド溶液を1キログラムのこのポリマーラテックスに加えることによって形成した。水相をスラリーから除去し、生じた湿潤粉末を、おおよそ50℃〜65℃での空気炉中で1重量%未満の含水率まで乾燥させた。
【0072】
比較例1
VF/HFPコポリマーフルオロエラストマーを、十分に撹拌される4.0リットルのステンレススチール液体充満反応容器中115℃で実施される、連続乳化重合法によって製造した。脱イオン水中の4.37g/時間(g/h)の過硫酸アンモニウム開始剤、1.75g/hの水酸化ナトリウム、3.75g/hのオクチルスルホン酸ナトリウム、および3.00g/hのイソプロパノール連鎖移動剤からなる水性溶液を10.0L/時間の速度で反応器に供給した。反応器を、流出物ラインの背圧調整弁によって6.2MPaの圧力で液体充満レベルに維持した。30分後に、重合を、ダイヤフラム圧縮機によって供給される1538g/hのフッ化ビニリデン(VF)および1150g/hのヘキサフルオロプロピレン(HFP)からなるガス状モノマー混合物の導入によって開始させた。2.0時間後に、流出物分散液の収集を開始し、収集を5.0時間続行した。4.44のpHを有し、19.91重量%の固形分を含有する、流出物ラテックスを、大気圧での脱ガス容器中で残存モノマーから分離した。
【0073】
集められた分散液から、3つの10.0kg部分を量り分けた。一部分を、600グラムの硝酸カルシウム四水和物の5重量%溶液で凝固させた。第2部分を、407グラムの硫酸カリウムアルミニウムの3重量%溶液で凝固させた。第3部分を、188グラムの硫酸アルミニウム四水和物の10重量%溶液で凝固させた。全3つのポリマー粉末サンプルを、10kgの脱イオン水で2回洗浄し、70℃で48時間乾燥させた。
【0074】
乾燥ポリマー粉末の金属含有率をICPによって測定し、百万当たりの部の単位で報告する。
【0075】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも2つの共重合性モノマーの共重合単位を含む、フルオロエラストマーを含む水性分散液を提供する工程であって、
第1モノマーが、前記フルオロエラストマーの総重量を基準として、5〜70重量パーセントの量で存在し、前記第1モノマーがフッ化ビニリデンおよびテトラフルオロエチレンからなる群から選択される工程と;
(B)少なくとも500,000の粘度平均分子量を有する、ポリエチレンオキシドホモポリマーおよびポリエチレンオキシドのコポリマーからなる群から選択される水溶性ポリマーを前記水性分散液に加え、それによって前記フルオロエラストマーを凝固させる工程と、
を含む、少なくとも53重量パーセントのフッ素を有するフルオロエラストマーの製造のための凝固方法。
【請求項2】
前記ポリマーが少なくとも2,000,000の粘度平均分子量を有する請求項1に記載の凝固方法。
【請求項3】
前記フルオロエラストマーがフッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンの共重合単位を含む請求項1に記載の凝固方法。
【請求項4】
前記フルオロエラストマーがフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレンの共重合単位を含む請求項1に記載の凝固方法。
【請求項5】
前記フルオロエラストマーがフッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)およびテトラフルオロエチレンの共重合単位を含む請求項1に記載の凝固方法。
【請求項6】
前記フルオロエラストマーがテトラフルオロエチレンおよびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)の共重合単位を含む請求項1に記載の凝固方法。
【請求項7】
前記フルオロエラストマーがテトラフルオロエチレンおよびプロピレンの共重合単位を含む請求項1に記載の凝固方法。

【公表番号】特表2012−503069(P2012−503069A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527842(P2011−527842)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/044057
【国際公開番号】WO2010/033269
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(597035953)デュポン パフォーマンス エラストマーズ エルエルシー (44)
【Fターム(参考)】