説明

フルオロケミカル表面層を含む物品

本発明はフルオロケミカル表面層を有する表示装置および保護物品ならびに前記物品を製造する方法に関する。本発明はフルオロポリエーテルアクリレート組成物にも関連する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
光学的表示装置は熱可塑性フィルムまたはスラブから製作された露出目視面を典型的に有する。一般的に用いられる熱可塑性ポリマーは非常に良好な光学的透明性、寸法安定性および耐衝撃性を有するが、残念なことに、劣った耐磨耗性を有する。パーソナルディジタルアシスタント(「PDA」)、携帯電話、液晶表示装置(LCD)パネル、タッチセンシティブスクリーンおよび除去可能なコンピュータフィルタなどのデバイスの光学的表示装置は、頻繁な取扱いならびに使用者の顔または指、筆記具、宝石類および他の物体との接触を被る。例えば、フェイシャルオイルは、携帯電話表示装置のコントラスト、彩度または輝度に悪影響を及ぼしうる。投影テレビおよびラップトップコンピュータのスクリーンは、それよりも頻繁に取り扱われることはないが、それにもかかわらず、触れられやすく、引っ掻かれやすく、または汚されやすい。従って、表示装置の目視面は日常的使用中に起きる引っ掻き、磨耗および汚れを受けやすい。これは、表示装置の解像度および透明度を低下させるとともに、時には読み取り不能または作動不能を引き起こす場合がある。こうした表示装置を保護するために、保護フィルムまたは保護塗料を用いることが可能である。
【0002】
ハードコートも光学表示装置の面を保護するために用いられてきた。これらのハードコートは、結合剤前駆体樹脂マトリックスに分散させたナノメートル寸法の無機酸化物粒子、例えばシリカを典型的に含み、時には「セラマー」と呼ばれる。
【0003】
米国特許第6,132,861号明細書(カング(Kang)ら、‘861号特許)、第6,238,798B1号明細書(カング(Kang)ら、‘798号特許)、第6,245,833B1号明細書(カング(Kang)ら、‘833号特許)、第6,299,799号明細書(クレイグ(Craig)ら)および国際公開第99/57185号パンフレット(ハング(Huang)ら)には、コロイド状無機酸化物粒子、硬化性結合剤前駆体および特定のフルオロケミカル化合物のブレンドを含むセラマー組成物が記載されている。これらの組成物は、単一層被膜中に耐歪み性・耐磨耗性のハードコートを提供すると記載されている。
【0004】
米国特許第6,660,389号明細書(リュー(Liu)ら)には、柔軟で実質的に透明のシートのスタックを含む、情報表示領域を有する表示装置のための情報表示プロテクタであって、前記シートが接着剤層を片側に有するとともに、結合剤マトリックスに分散させた無機酸化物粒子および低表面エネルギーフッ素化化合物を含むハードコート層を他方側に有し、前記シートを情報表示領域に合致させるように前記スタックが切断されている情報表示プロテクタが記載されている。低表面エネルギーフッ素化化合物はハードコート層の一部であることが可能であり、ハードコート層の頂上にある別個の層であることが可能である。プロテクタは非常に良好な耐引掻き性、耐汚れ性および耐グレア性を有する。プロテクタのスタックは、例えばパーソナルディジタルアシスタントまたはそのカバーあるいはそのケース上に貯蔵することが可能である。
【0005】
特開2000−301053号公報には、ハードコートシートおよびその製造が記載されている。組成物は、アルキルフルオロアクリレートA、Aに非相溶性であるとともに3個以上の官能基を有する少なくとも10%のアクリルモノマーを含むアクリルモノマーB、Aに非相溶性であるとともに少なくとも50%の親水性アクリルモノマーを含むアクリルモノマーCならびにA、BおよびCにそれぞれ相溶性である溶媒Dから構成されている。
【0006】
国際公開第2004/002734号パンフレットには、防汚特性、潤滑性、耐擦傷性および耐磨耗性に優れるハードコーティングを有する物体およびハードコーティングを形成する方法が記載されている。化学エネルギー線硬化性化合物を含むハードコーティング材料組成物はハードコーティング層で被覆されるべき物体(1)の表面に被着させて、よってハードコーティング材料組成物の層を形成させる。フッ素化多官能性(メタ)アクリレート化合物およびフッ素化一官能性(メタ)アクリレートを含む表面材料のフィルムはハードコーティング材料組成物の層上に形成して、表面材料の層を形成させる。ハードコーティング材料組成物の層およびこうして形成された表面材料層に化学エネルギー線を照射して、両方の層を同時に硬化させる。従って、物体(1)の表面に接触しているハードコーティング層(2)およびハードコーティング層(2)の表面に接触している防汚表面層(3)が形成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光学的表示装置のための種々の表面塗料を記載してきたけれども、産業界は表面特性の相乗作用を奏する組み合わせを付与する新規組成物において利点を見つけるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態において、本発明は、表示装置パネル上の保護物品として用いるために適する物品であって、
a)(i)少なくとも1種のフルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物、および
(ii)少なくとも1種の非フッ素化架橋剤
の反応生成物を含む表面層を有する光透過性基材と、
b)前記基材と前記表面層との間に配置されたハードコート層と
を含む物品に関する。
【0009】
基材は典型的には透明または艶消の高分子フィルムである。物品はハードコート層と典型的には基材の逆面上の接着剤層を含む。
【0010】
もう1つの実施形態において、本発明は、少なくとも1種のフルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物と少なくとも1種の非フッ素化架橋剤との反応生成物を含む表面層と、前記基材と前記表面層との間に配置されたハードコート層とを含む物品(例えば表示装置パネル)に関する。
【0011】
これらの実施形態の各々において、表面層は、好ましくは、少なくとも90度の水との静的接触角および/または少なくとも50度のヘキサデカンとの前進接触角によって示される低表面エネルギーを示す。表面層は、好ましくは約10〜200ナノメートルの範囲の厚さを有する。表面層は、好ましくは、2%未満の初期曇り度および/または少なくとも90%の初期透過率を示す。更に、表面層は、耐久性試験(the Durability Test)後に特性(すなわち、接触角、インキ剥離性、インキビード形成(ink bead up)、曇り度、透過率)の持続によって示されるように好ましくは耐久性である。
【0012】
もう1つの実施形態において、本発明は、少なくとも1種のフルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物、少なくとも1種の非フッ素化架橋剤および炭化水素溶媒を含む塗料組成物に関する。塗料組成物は光開始剤を更に含んでもよい。塗料組成物は好ましくはフッ素化溶媒を含まない。
【0013】
もう1つの実施形態において、本発明は、こうした塗料組成物を被着させることにより基材上に表面層を提供する方法に関する。
【0014】
もう1つの実施形態において、本発明は、
a)式(RA)−W−(CH2F1−H)(式中、RAは(メタ)アクリレート基またはCH2=CFCO基であり、RF1は炭素原子数2〜7のフルオロアルキレン基であり、Wは連結基である)を有する少なくとも1種の化合物、
b)少なくとも1種のフルオロポリエーテルアクリレート化合物、および
c)少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を有する少なくとも1種の架橋剤
の反応生成物を含む組成物に関する。
【0015】
これらの実施形態の各々に関して、フルオロポリエーテル化合物は典型的には過フッ素化部分を含む。(パー)フルオロポリエーテルアクリレート化合物は、単一の一官能性(パー)フルオロポリエーテルアクリレート、単一の多官能性(パー)フルオロポリエーテルアクリレートまたはそれらのいずれかの組み合わせを含んでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、フルオロケミカル表面層を有する表示装置および保護物品ならびにこうした物品を製造する方法に関する。本物品は、例えば、光透過性の基材および前記基材と表面層との間に配置されたハードコート層を含む。本発明は特定のフルオロケミカル組成物にも関連する。
【0017】
フルオロケミカル表面層は少なくとも1種のフルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物と少なくとも1種の架橋剤との反応生成物を含む。フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物は好ましくは過フッ素化部分を含む。本明細書で用いられる(パー)フルオロポリエーテルは、任意に過フッ素化されているフルオロポリエーテルを意味する。
【0018】
本明細書で用いられる「(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物」は、典型的には連結基によって接合された少なくとも1個の(パー)フルオロポリエーテル基および少なくとも1個の(メタ)アクリル基を含む化合物を意味する。好ましくは、(メタ)アクリル基は水素またはフッ素で任意に置換された(メタ)アクリレート基である。少なくとも幾つかの実施形態において、アクリレート基が好ましい。本明細書で用いられる(メタ)アクリル基は、水素またはフッ素で任意に置換された、(メタ)アクリレートエステル、(メタ)アクリルアミドおよびN−アルキル(メタ)アクリルアミドなどの化合物の類を含む。好ましくは、(メタ)アクリル基は、水素またはフッ素で任意に置換された(メタ)アクリレート基である。少なくとも幾つかの実施形態において、アクリレート基が好ましい。
【0019】
「架橋剤」および「クロスリンカ」は本明細書において互換可能に用いられ、少なくとも2個の(メタ)アクリル基を有するモノマーまたはオリゴマーを意味する。好ましくは、クロスリンカは少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を含み、従って、ポリ(メタ)アクリレート化合物である。少なくとも幾つかの実施形態において、アクリレート基が好ましい。
【0020】
本明細書において用いられる「重量%」は、特に明記がない限り塗料組成物またはその反応生成物を基準にして重量%固形物を意味する。
【0021】
架橋剤の種類および量は、表面被膜の所望する耐久性を提供するように選択される。架橋剤は好ましくはフッ素化されていない。出願人は、(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物が非フッ素化架橋剤と改善された相溶性を示し、よって(例えば目に見える)表面欠陥の実質的にない光学的にクリアな硬化した表面層をもたらすことを見出した。それに反して、非相溶性原料を含む組成物は光学的品質を損ないうる(例えば、より高い曇り度またはより低い透過率)、および/またはより劣った耐久性でありうる。
【0022】
本明細書に記載された組成物の反応生成物は、炭化水素架橋剤によって付与される良好な耐久性と組み合わせた(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物によって付与される低い表面エネルギーの相乗作用を奏する組み合わせをもたらす。下にあるハードコートも耐久性の一因となる。
【0023】
表面エネルギーは、実施例において記載された試験方法により決定される接触角およびインキ剥離性などの種々の方法によって特性決定することが可能である。本明細書に記載された表面層および物品は、好ましくは少なくとも70度の水との静的接触角を示す。より好ましくは、水との接触角は少なくとも80度であり、なおより好ましくは少なくとも90度(例えば、少なくとも95度、少なくとも100度)である。その代わりにまたはそれに加えて、ヘキサデカンとの前進接触角は少なくとも50度、より好ましくは少なくとも60度である。低い表面エネルギーは汚れ防止特性および表面を清浄化する容易性を示唆する。低い表面エネルギーのなおもう1つの示唆として、「サンフォード・シャピエ、ファインポイント(Sanford Sharpie,Fine Point)パーマネントマーカー、no30001」という商品名で市販されているマーカーからのインキは好ましくはビード形成(bead up)する。さらに、本明細書に記載された表面層および物品が「インキ剥離性」を示すとは、「サーパス・フェイシャル・ティシュ(SURPASS FACIAL TISSUE)」という商品名でジョージア州ロスウェルのキンバリー・クラーク・コーポレーション(Kimberly Clark Corporation(Roswell,GA))から市販されているティシュで拭うことによりインキを容易に除去することが可能であることを意味する。
【0024】
本明細書に記載された組成物は、典型的には親水性原料(例えばモノマー)を含まない。こうした原料を含めると汚れ防止特性を落とす傾向があり、特定の媒体(例えば基材)を汚すからである。親水性成分は、水性系クリーニング剤にさらされると分解も受けやすい。
【0025】
本明細書に記載された表面層および物品が好ましくは耐久性でもあるとは、725gの分銅および200回拭き取りでチーズクロスを用いる実施例に記載された試験方法により行われた耐久性試験後に表面が表面損傷を実質的に示さないか、または光学特性の大幅な損失を示さない(例えば、元の透過率の97%を保持する)ことを意味する。更に、表面層および物品は、好ましくは、こうした耐久性試験後でさえも前述した低表面エネルギー特性(例えば、接触角、インキ剥離性およびビード形成)を示し続ける。
【0026】
ここで記載した表面層は、物品(例えば表示装置)の光学的品質を損なわない。従って、本発明の物品は、本明細書で記載したこうした表面層のない同じ基材またはハードコート被覆基材と比べて実質的に同じ初期の曇り度値および透過率値を示す。好ましくは、曇り度値および透過率値は、耐久性試験後に実質的に同じである。
【0027】
5重量%ほどのクロスリンカが幾つかの用途のために適する耐久性をもたらしうるけれども、特に非フッ素化(メタ)アクリレートクロスリンカがフッ素化化合物より一般に安価なので、クロスリンカの濃度を最大にすることが典型的に好ましい。従って、本明細書に記載された塗料組成物は典型的には少なくとも20重量%の架橋剤を含む。架橋剤の全量は少なくとも50重量%を構成してもよく、塗料組成物の例えば少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、そして約95重量%でさえあってもよい。
【0028】
有用な架橋剤には、例えば、(a)1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化(10)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(30)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(4)ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートなどのジ(メタ)アクリル含有化合物、(b)グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリアクリレート(例えば、エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート)、ペンタエリトリトールトリアクリレート、プロポキシル化トリアクリレート(例えば、プロポキシル化(3)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(5.5)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートなどのトリ(メタ)アクリル含有化合物、(c)ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、エトキシル化(4)ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリトリトールヘキサアクリレートなどのより高い官能価の(メタ)アクリル含有化合物、(d)例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキアクリレートなどのオリゴマー(メタ)アクリル化合物、前述したもののポリアクリルアミド類似物およびそれらの組み合わせからなる群から選択されたポリ(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。こうした化合物は、例えば、ペンシルバニア州エクストンのサートマー・カンパニー(Sartomer Company(Exton,PA))、ジョージア州スミルナのUCBケミカルズ・コーポレーション(UCB Chemicals Corporation(Smyrna,GA))、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI))などの供給業者から広く入手できる。追加の有用な(メタ)アクリレート材料には、例えば、米国特許第4,262,072号明細書(ウェンドリング(Wendling)ら)に記載されたヒダントイン部分含有ポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0029】
好ましい架橋剤は少なくとも3個の(メタ)アクリレート官能性基を含む。市販されている好ましい架橋剤には、「SR351」という商品名で入手できるトリメチロールプロパントリアクリレート、「SR444」という商品名で入手できるペンタエリトリトールトリアクリレート、「SR399LV」という商品名で入手できるジペンタエリトリトールペンタアクリレート、「SR454」という商品名で入手できるエトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレートおよび「SR494」という商品名で入手できるエトキシル化(4)ペンタエリトリトールトリアクリレートなどのペンシルバニア州エクストンのサートマー・カンパニー(Sartomer Company(Exton,PA))から入手できる架橋剤が挙げられる。
【0030】
本明細書に記載された塗料組成物は、一官能性(パー)フルオロポリエーテル化合物の種々の組み合わせ、多官能性(パー)フルオロポリエーテル化合物の組み合わせを含んでもよい。同様に、塗料組成物は、1種以上の多官能性(パー)フルオロポリエーテル化合物と組み合わせて1種以上の一官能性(パー)フルオロポリエーテル化合物を含む。
【0031】
表面層を形成するために重合される塗料組成物中の(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物の全量は、典型的には少なくとも0.5重量%(例えば、少なくとも約1重量%、2重量%、3重量%および4重量%)である。好ましくは、塗料組成物は、少なくとも約5重量%の(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物を含む。特に多官能性(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物を用いる実施形態のために、塗料組成物は、95重量%ほどの(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物を含んでもよい。しかし、前述したように、所望する低い表面エネルギーを提供する(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物の最少濃度を用いることが一般により費用効果に優れる。従って、塗料組成物中に提供される(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物の全量は、典型的には30重量%を超えず、好ましくは約15重量%以下(例えば、約14重量%、13重量%、12重量%および11重量%未満)の量で存在する。
【0032】
様々な(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物を本発明の塗料組成物中で用いてもよい。パーフルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物は、式I:
(Rf)−[(W)−(RA)]w (式I)
によって表すことが可能である。
式中、Rfは(パー)フルオロポリエーテル基であり、Wは連結基であり、RAは(メタ)アクリル基または−COCF=CH2であり、wは1または2である。
【0033】
パーフルオロポリエーテル基Rfは直鎖、分岐、環式またはそれらの組み合わせであることが可能であり、飽和または不飽和であることが可能である。パーフルオロポリエーテルは少なくとも2個の連結された酸素ヘテロ原子を有する。例証的なパーフルオロポリエーテルには、−(Cp2p)−、−(Cp2pO)−、−(CF(Z))−、−(CF(Z)O)−、−(CF(Z)Cp2pO)−、−(Cp2pCF(Z)O)−、−(CF2CF(Z)O)−またはそれらの組み合わせの群から選択された過フッ素化反復単位を有するものが挙げられるが、それらに限定されない。これらの反復単位において、pは典型的には1〜10の整数である。幾つかの実施形態において、pは1〜8、1〜6、1〜4または1〜3の整数である。基Zはパーフルオロアルキル基、パーフルオロエーテル基、パーフルオロポリエーテル基またはパーフルオロアルコキシ基であり、それらのすべては、直鎖、分岐または環式であることが可能である。Z基は、典型的には12個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、9個以下の炭素原子、4個以下の炭素原子、3個以下の炭素原子、2個以下の炭素原子または1個以下の炭素原子を有する。幾つかの実施形態において、Z基は、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下、または0個の酸素原子を有する。これらのパーフルオロポリエーテル構造において、異なる反復単位は鎖に沿って無秩序に分配されることが可能である。
【0034】
fは1価または2価であることが可能である。Rfが1価である幾つかの化合物において、末端基は、(Cp2p+1)−、(Cp2p+1O)−、(X’Cp2pO)−または(X’Cp2p+1)−であることが可能であり、ここで、X’は、水素、塩素または臭素であり、pは1〜10の整数である。1価Rf基の幾つかの実施形態において、末端基は過フッ素化されており、pは1〜10、1〜8、1〜6、1〜4または1〜3の整数である。例証的な1価Rf基には、CF3O(C24O)nCF2−およびC37O(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)−が挙げられる。ここで、nは0〜50、1〜50、3〜30、3〜15または3〜10の平均値を有する。
【0035】
二価Rf基のために適する構造には、−CF2O(CF2O)q(C24O)nCF2−、−(CF23O(C48O)n(CF23−、−CF2O(C24O)nCF2−および-CF(CF3)(OCF2CF(CF3))sOCt2tO(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)−が挙げられるが、それらに限定されない。ここで、qは0〜50、1〜50、3〜30、3〜15または3〜10の平均値を有する。nは0〜50、3〜30、3〜15または3〜10の平均値を有する。sは0〜50、1〜50、3〜30、3〜15または3〜10の平均値を有する。合計(n+s)は0〜50または4〜40の平均値を有する。合計(q+n)は0より大きい。tは2〜6の整数である。
【0036】
合成された時、式Iによる化合物は、典型的にはRf基の混合物を含む。平均構造は、混合物成分にわたって平均された構造である。これらの平均構造の中のq、nおよびsの値は、化合物が少なくとも約400の数平均分子量を有する限り変わることが可能である。式Iの化合物は、しばしば、400〜5000、800〜4000または1000〜3000の分子量(数平均)を有する。
【0037】
パーフルオロポリエーテルセグメントと(メタ)アクリルまたは−COCF=CH2末端基との間の連結基Wは、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレンまたはそれらの組み合わせから選択された二価基およびカルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミドまたはそれらの組み合わせから選択された任意の二価基を含む。Wは非置換であるか、またはアルキル、アリール、ハロまたはそれらの組み合わせにより置換されていることが可能である。W基は典型的には30個以下の炭素原子を有する。幾つかの化合物において、W基は20個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子または4個以下の炭素原子を有する。例えば、Wはアルキレン、アリール基により置換されたアルキレンまたはアリーレンと組み合わせたアルキレンであることが可能である。
【0038】
パーフルオロポリエーテルアクリレート化合物(例えば、式Iのもの)は、米国特許第3,553,179号明細書および第3,544,537号明細書ならびに2003年5月23日出願の米国特許出願第10/444878号明細書、発明の名称「フッ素化ポリマーを含むフルオロケミカル組成物および該組成物による繊維質基材の処理(Fluorochemical Composition Comprising a Fluorinated Polymer and Treatment of a Fibrous Substrate Therewith)」に記載されたような既知の技術によって合成することが可能である。
【0039】
別案としてまたは少なくとも1種の1官能性(パー)フルオロポリエーテルアクリレート化合物に加えて、(パー)フルオロポリエーテルアクリレート化合物は(メタ)アクリレート基などの2個以上の(メタ)アクリル基を有して多官能性であってもよい。
【0040】
好ましい多官能性(パー)フルオロポリエーテルアクリレート化合物の1つのタイプは、少なくとも1個の末端F(CF(CF3)CF2O)aCF(CF3)−基(ここで、aは平均4〜15である)を含む。こうした化合物は、本願と同日に出願の米国仮特許出願第60/569351号明細書、発明の名称「フルオロプロピレンオキシドポリアクリレート組成物(Fluoropropyleneoxide Polyacrylate Compositions)」に更に記載されている。幾つかの実施形態において、多官能性パーフルオロポリエーテルアクリレートは末端HFPO−基を含む。本明細書で用いられる「HFPO−」は、構造F(CF(CF3)CF2O)aCF(CF3)−(ここで、aは平均6〜7(例えば6.3である)を意味する。例証的な化合物には、例えば、HFPO−C(O)N(H)C(CH2OC(O)CH=CH22CH2CH3およびHFPO−C(O)N(H)C(CH2OC(O)CH=CH22Hが挙げられる。
【0041】
少なくとも1個の末端HFPO−基および少なくとも2個の(メタ)アクリル基を含むパーフルオロポリエーテルアクリレートは2工程プロセスにおいて調製することが可能である。第1の工程は、HFPO−アミドポリオールまたはポリアミン、HFPO−エステルポリオールまたはポリアミンあるいは混合アミン基およびアルコール基を有するHFPO−アミドまたはHFPO−エステルを製造するために、HFPO−C(O)OCH3または酸ハロゲン化物HFPO−C(O)Fなどのポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド)エステルと少なくとも3個のアルコール基あるいは第一アミノ基または第二アミノ基を含む材料との反応による。第2の工程は、(メタ)アクリロイルハロゲン化物、(メタ)アクリル無水物または(メタ)アクリル酸によるアルコール基および/またはアミン基の(メタ)アクリレーションである。その例証的な合成は実施例に記載されている。
【0042】
他の実施形態において、(パー)フルオロポリエーテルアクリレート化合物は、HFPO−C(O)N(H)CH2CH2CH2N(H)CH3とトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)の付加体などの、反応性(パー)フルオロポリエーテルとポリ(メタ)アクリレートのマイケル型付加によって調製可能な化合物であってもよい。こうした(パー)フルオロポリエーテルアクリレート化合物は、本願と同日に出願の米国特許出願第10/841792号明細書、発明の名称「重合性組成物、該組成物を製造する方法および該組成物からの複合物品(Polymerizable Compositions,Methods of Making the Same,and Composite Articles Therefrom)」に更に記載されている。
【0043】
本明細書に記載された塗料組成物は、式II:
(RA)−W’−(CH2F1−H) (式II)
によって表すことが可能である一官能性フッ素化化合物を含んでもよい。式中、RAは前述した通りであり(すなわち(メタ)アクリレートまたはCH2=CFCO基)、RF1は炭素原子数2〜7のフルオロアルキレン基であり、W’は連結基である。
【0044】
式IIのRAは、好ましくはアクリレート基である。RF1は直鎖または分岐の過フッ素化アルキレン部分であってもよい。
【0045】
式IIの一官能性フッ素化化合物は既知の技術によって合成することが可能である。式IIの例証的な一官能性フッ素化化合物、ω−ヒドロ2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルアクリレート(H−C48−CH2O−C(O)−CH=CH2)は、サウスカロライナ州ウェストコロンビアのオークウッド・プロダクツ(Oakwood Products(West Columbia,SC))から市販されている。式H(CF2nCH2OCOCH=CH2(式中、n=2、4および6)を有する式IIの一官能性フッ素化化合物、およびCF3CHFCF2CH2OCOC(CH3)CH2(2,2,3,4,4,4ヘキサフルオロブチルメタクリレート)はニューハンプシャー州ウィンダムのランカスター・ケミカル(Lancaster Chemical(Windham,NH))から市販されている。
【0046】
式IIの1種以上の一官能性フッ素化化合物を含めると、少なくとも特定のパーフルオロポリエーテルアクリレート化合物とポリ(メタ)アクリレート架橋剤の相溶性を更に改善することが可能である。この態様は、HFPO−C(O)N(H)CH2CH2OC(O)CH=CH2のような一官能性パーフルオロポリエーテルアクリレート化合物を用いる実施形態のために特に有利である。
【0047】
本発明の塗料組成物中で用いられる式IIの一官能性フッ素化化合物の量は、用いられる(パー)フルオロポリエーテルアクリレート化合物の種類および量に応じて変わることが可能である。典型的には、量は(パー)フルオロポリエーテルアクリレート化合物の量の約半分から(パー)フルオロポリエーテルアクリレート化合物の量の約2倍の範囲である。
【0048】
本明細書に記載された塗料組成物は、種々の他の反応性および非反応性の原料を更に含んでもよい。例えば、組成物は、アルキル部分、パーフルオロアルキル部分およびパーフルオロアルキレン部分を有する重合性(メタ)アクリル化合物を含んでもよい。これらの化合物の例には、ブチルアクリレート、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から入手できる1H,1H−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアクリレート、ニューハンプシャー州ウィンダムのランカスター・シンセシス(Lancaster Synthesis(Windham,NH))から入手できる1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルアクリレートおよび国際公開第01/30873A号パンフレットの実施例2Aおよび2Bの手順によって製造されたC49SO2N(CH3)CH2CH2OC(O)CH=CH2が挙げられる。パーフルオロアルキル部分を有する多くの他の(メタ)アクリル化合物は、米国特許第4,968,116号明細書および(パーフルオロシクロヘキシル)メチルアクリレートを含む)米国特許第5,239,026号明細書に記載されている。
【0049】
硬化を促進するために、本発明による重合性組成物は少なくとも1種のラジカル熱開始剤および/または光開始剤を更に含んでもよい。こうした開始剤および/または光開始剤が存在する場合、こうした開始剤は、重合性組成物の全重量を基準にして重合性組成物の典型的には約10重量%未満、より典型的には約5%未満を構成する。ラジカル硬化技術は技術上周知されており、それらの技術には、例えば、熱硬化法および電子ビームまたは紫外線などの放射線硬化法が挙げられる。ラジカル熱技術および光重合技術に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第4,654,233号明細書(グラント(Grant)ら)、第4,855,184号明細書(クルン(Klun)ら)および第6,224,949号明細書(ライト(Wright)ら)において見られる。
【0050】
有用なラジカル熱開始剤には、例えば、アゾ開始剤、過酸化物開始剤、過硫酸塩開始剤およびレドックス開始剤ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
有用なラジカル光開始剤には、例えば、アクリレートポリマーのUV硬化において有用として知られている光開始剤が挙げられる。こうした開始剤には、ベンゾフェノンおよびその誘導体、ベンゾイン、アルファメチルベンゾイン、アルファフェニルベンゾイン、アルファアリルベンゾイン、アルファベンジルベンゾイン、ベンジルジメチルケタール(「イルガキュア(IRGACURE)」651という商品名でニューヨーク州タリータウンのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation(Tarrytown,NY))から市販されている)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテルなどのベンゾインエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(「ダロキュア(DAROCUR)」1173という商品名でチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から市販されている)および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(「イルガキュア(IRGACURE)」184という商品名でこれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から市販されている)などのアセトフェノンおよびその誘導体、「イルガキュア(IRGACURE)」907という商品名でこれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から市販されている2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン、「イルガキュア(IRGACURE)」369という商品名でチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から市販されている2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、ベンゾフェノンおよびその誘導体ならびにアントラキノンおよびその誘導体などの芳香族ケトン、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩などのオニウム塩、例えば、「CGI784DC」という商品名でこれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から市販されているものなどのチタニウム錯体、ハロメチルニトロベンゼンならびに「イルガキュア(IRGACURE)」1700、「イルガキュア(IRGACURE)」1800、「イルガキュア(IRGACURE)」1850、「イルガキュア(IRGACURE)」819、「イルガキュア(IRGACURE)」2005、「イルガキュア(IRGACURE)」2010、「イルガキュア(IRGACURE)」2020および「ダロキュア(DAROCUR)」4265という商品名でチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から入手できるものなどのモノアシルホスフィンおよびビスアシルホスフィンが挙げられる。2種以上の光開始剤の組み合わせを用いてもよい。更に、ミシシッピー州パスカゴウラのファースト・ケミカル・コーポレーション(First Chemical Corporation(Pascagoula,MS))から市販されている2−イソプロピルチオキサントンなどの増感剤を「イルガキュア(IRGACURE)」369などの光開始剤と合わせて用いてもよい。
【0052】
当業者は、例えば界面活性剤、帯電防止剤(例えば導電性ポリマー)、均染剤、光増感剤、紫外線(「UV」吸収剤)、安定剤、酸化防止剤、潤滑剤、顔料、染料、可塑剤および懸濁剤のような任意の他の補助剤を塗料組成物が含むことが可能であることは認めている。
【0053】
本発明の塗料組成物は、好ましくは、ハードコート上への本発明の組成物の被覆を助ける溶媒を用いて別個の表面層として被着される。当業者は、所望する溶媒および溶媒レベルの選択が被覆対象の基材または表面、塗料組成物の原料および被覆条件に応じて異なることを認めるであろう。フッ素化溶媒を単独でまたは有機溶媒と組み合わせて任意に用いることができるけれども、(パー)フルオロポリエーテルアクリレートおよび架橋剤は、一般に非フッ素化溶媒に十分に可溶性である。従って、塗料組成物は、有利にフッ素化溶媒なしであることが可能である。好ましい溶媒には、意図した被膜厚さを得るための濃度(例えば、固形物2%〜3%)でメチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチレンケトン(MIBK)およびメチルプロピルケトン(MPK)などのケトンならびに酢酸エチルなどの酢酸エステルが挙げられる。前述したあらゆる補助剤は、典型的には溶媒により溶解後に添加される。
【0054】
塗料組成物は、様々な従来の塗布方法を用いてハードコートに被着させることが可能である。適する塗布方法には、例えば、スピン塗布、ナイフ塗布、ダイ塗布、ワイヤ塗布、流し塗布、パディング、噴霧、ロール塗布、浸漬、ブラシ掛けおよび発泡塗布などが挙げられる。塗料は、典型的には強制空気炉を用いて乾燥させる。乾燥させた塗料はエネルギー源を用いて少なくとも部分的に、典型的には完全に硬化される。
【0055】
好ましいエネルギー源は、約5〜60ミリジュール/平方センチメートル(mJ/cm2)のUV「C」線量を提供する紫外線硬化装置を含む。好ましくは、硬化は少ない酸素量、例えば約100ppm未満を含む環境内で行われる。
【0056】
好ましくは、塗料組成物は、少なくとも約10ナノメートル、好ましくは少なくとも約25ナノメートルの厚さを有する硬化した層を提供するのに十分な量で被着される。硬化した層は、典型的には約200ナノメートル未満、好ましくは約100ナノメートル未満、より好ましくは約75ナノメートル未満の厚さを有する。従って、耐久性の大部分は、下にあるハードコート層によって提供される。
【0057】
図1に描かれたように、本明細書で記載された組成物の反応生成物18は、物品10(例えば表示装置)の目視表面上に配置される。ハードコート層16は(例えば透明)基材13と表面層18との間に配置される。他の層も存在してよいけれども、ハードコートは表面層の下にある(すなわち、目視面を基準として)。ハードコートは、基材および下にある表示装置スクリーンを引っ掻き、磨耗および溶媒などの原因からの損傷から保護する強靱で耐磨耗性の層である。しかし、ハードコート単独では所望する低表面エネルギーを提供しない。表面層が好ましくは無機酸化物粒子を実質的に含まないけれども、ハードコートは、結合剤マトリックスに分散したナノメートルサイズのこうした無機酸化物粒子を好ましくは含む。ハードコートは、典型的にはフッ素化化合物を含まないけれども、必要に応じて任意にフッ素化化合物を含んでもよい。典型的には、ハードコートは、基材上に硬化性液体セラマー組成物を被覆し、現場(in−situ)で組成物を硬化させて硬化したフィルムを形成することにより形成される。適する塗布方法はフルオロケミカル表面層の塗布のために前述した方法を含む。ハードコートに関する更なる詳細は、米国特許第6,132,861号明細書(カング(Kang)ら、‘861号特許)、第6,238,798B1号明細書(カング(Kang)ら、‘798号特許)、第6,245,833B1号明細書(カング(Kang)ら、‘833号特許)および第6,299,799号明細書(クレイグ(Craig)ら、‘799号特許)において見られる。
【0058】
表示装置パネルの製造中に行われうるような物品または表面上の表面層として本発明の塗料を提供する代案として、本発明の塗料組成物は保護物品上の(例えば表面)層として用いてもよい。
【0059】
図2は、30として一般に識別された本発明の表示装置への塗布のために適する保護物品を示している。可撓性膜33の下面は、保護ライナー32が被着されている接着剤層34で被覆されている。接着剤34の下面は、任意に、描かれているように微細表面模様付きであってもよい。微細表面模様付きは、情報表示装置プロテクタ30を表示装置スクリーンに被着させる時に情報表示装置プロテクタ30の下から気泡が逃げるのを助け、よって情報表示装置プロテクタ30とスクリーンとの間の良好な光学的結合を提供するのを助ける。膜33の上面はハードコート層36で被覆される。ハードコート36は耐引掻き性および耐摩耗性を提供して、スクリーンが損傷しないように保護するのを助ける。ハードコート36は描かれているように粗い上面37を任意に有する。粗い表面は、表示装置スクリーンのためにグレア保護を提供し、針を用いて表示スクリーン上に書き込むことをより容易にする。本発明の塗料組成物38は、ハードコート36の粗い上面37が目視面31上に複製されるように典型的には十分薄い。こうした表示装置プロテクタに関する更なる情報は米国特許第6,660,389号明細書に記載されている。
【0060】
種々の永久グレード接着剤組成物および除去可能グレード接着剤組成物を基材の逆側(ハードコートの逆側に)に被覆してもよく、そうして物品は表示装置表面に容易に取り付けることが可能である。適する接着剤組成物には、「クレイトン(Kraton)」G−1657という商品名でテキサス州ウェストホローのクレイトン・ポリマーズ(Kraton Polymers(Westhollow,TX))から市販されているものなどの(例えば水素添加)ブロックコポリマー、および他の(例えば類似の)熱可塑性ゴムが挙げられる。例証的な他の接着剤には、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤およびエポキシ系接着剤が挙げられる。好ましい接着剤は、接着剤が経時的に黄変しないように、または光学的表示装置の目視品質を低下させるような屋外暴露すると黄変しないように十分な光学的品質および光安定性の接着剤である。接着剤は、転写塗布、ナイフ塗布、スピン塗布およびダイ塗布などの様々な既知の塗布技術を用いて被着させることが可能である。例証的な接着剤は米国特許出願公開第2003/0012936号明細書に記載されている。こうした接着剤の幾つかは、8141、8142および8161という商品名でミネソタ州セントポールのスリーエム・カンパニー(3M Company(St.Paul,MN))から市販されている。
【0061】
様々な基材を本発明の物品の中で用いることが可能である。適する基材材料には、ガラス、およびポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレートすなわち「PMMA」)、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレンすなわち「PP」)、ポリウレタン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレートすなわち「PET」)、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリルコポリマーおよびエポキシドなどの熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが挙げられる。典型的には、基材は意図した用途のために必要な光学的特性および機械的特性にある程度基づいて選択される。こうした機械的特性は、典型的には可撓性、寸法安定性および耐衝撃性を含む。基材の厚さも、典型的には意図した用途に応じて異なる。殆どの用途のために、約0.5mm未満の基材厚さが好ましく、より好ましくは約0.02〜約0.2mmである。自立高分子フィルムは好ましい。PETなどのポリエステルまたはPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)およびPVC(ポリ塩化ビニル)などのポリオレフィンから製造されたフィルムは特に好ましい。高分子材料は、押出および押出フィルムの任意の一軸配向または二軸配向によるなどの従来のフィルム製造技術を用いてフィルムに成形することが可能である。基材は、基材とハードコート層との間の接着力を改善するために処理することが可能である。例えば、化学処理、空気コロナまたは窒素コロナなどのコロナ処理、プラズマ、火炎または化学線。必要ならば、任意の繋ぎ層またはプライマは、層間接着力を高めるために基材および/またはハードコート層に被着させることが可能である。
【0062】
表示装置パネルおよび保護物品などの物品の場合、基材は光透過性であり、それは表示装置を見ることができるように基材を通して光を透過することが可能であることを意味する。透明(例えば光沢)光透過性基材と艶消光透過性基材の両方が表示装置パネル中で用いられる。艶消基材は、典型的な光沢フィルムより低い透過率および高い曇り度値を典型的に有する。艶消フィルムは、光を拡散させるシリカなどのマイクロメートルサイズの分散無機充填剤の存在にゆえに典型的にこの特性を示す。例証的な艶消フィルムは、「N4D2A」という商品名でジョージア州シダータウンのU.S.A.キモト・テック(U.S.A.Kimoto Tech(Cedartown,GA))から市販されている。透明基剤、ハードコート被覆透明基材および透明基材よりなる表示装置物品の場合、曇り度値は好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満、なおより好ましくは1%未満である。別案としてまたはそれに加えて、透過率は好ましくは約90%より大きい。
【0063】
様々な無機酸化物粒子をハードコートの中で用いることが可能である。粒子は、典型的には、形状において実質的に球であり、サイズにおいて比較的均一である。粒子は、2つ以上の実質的に単分散の分布をブレンドすることにより得られた実質的に単分散のサイズ分布または多峰分布を有することが可能である。無機酸化物粒子は典型的には非凝集(実質的にばらばら)である。凝集が無機酸化物粒子の沈殿またはハードコートのゲル化をもたらしうるからである。無機酸化物粒子はサイズにおいて典型的にコロイドであり、約0.001〜約0.2マイクロメートル、約0.05マイクロメートル未満および約0.03マイクロメートル未満の平均粒径を有する。これらのサイズ範囲は、結合剤樹脂への無機酸化物粒子の分散を促進し、望ましい表面特性および光学的透明性をセラマーに与える。無機酸化物粒子の平均粒子サイズは、所定の直径の無機酸化物粒子の数をカウントするために透過電子顕微鏡を用いて測定することが可能である。無機酸化物粒子には、コロイドシリカ、コロイドチタニア、コロイドアルミナ、コロイドジルコニア、コロイドバナジア、コロイドクロミア、コロイド酸化鉄、コロイド酸化アンチモン、コロイド酸化錫およびそれらの混合物が挙げられる。無機酸化物粒子は、シリカなどの単一酸化物から本質的になるか、またはシリカなどの単一酸化物からなることが可能であるか、あるいはシリカと酸化アルミニウムなどの酸化物の組み合わせを含むことが可能であるか、あるいはもう1つのタイプの酸化物が上に沈着している1つのタイプの酸化物のコア(または金属酸化物以外の材料のコア)を含むことが可能である。シリカは一般的な無機粒子である。無機酸化物粒子は、しばしば、液媒体中の無機酸化物粒子のコロイド分散液を含むゾルの形を取って提供される。ゾルは様々な技術を用いて、そして例えば、米国特許第5,648,407号明細書(ゴエツ(Goetz)ら)、同第5,677,050号明細書(ビルカジ(Bilkadi)ら)および同第6,299,799号明細書(クレイグ(Craig)ら)に記載されたようにヒドロゾル(水が液媒体として機能する)、オルガノゾル(有機液体が液媒体として機能する)、混合ゾル(液媒体が水と有機液体の両方を含む)を含む様々な形態を取って調製することが可能である。(例えば、非晶質シリカの)水性ゾルを用いることが可能である。ゾルは、ゾルの全重量を基準にして一般に少なくとも2重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも25重量%およびしばしば少なくとも35重量%のコロイド無機酸化物粒子を含む。コロイド無機酸化物粒子の量は、典型的には50重量%以下(例えば45重量%)である。無機粒子の表面は、ビルカジ(Bilkadi)らにおいて記載されたように「アクリレート官能化」されていることが可能である。ゾルは結合剤のpHに調和させることも可能であり、すべてカング(Kang)らによる‘798号特許に記載されたように対イオンまたは水溶性化合物(例えばアルミン酸ナトリウム)を含むことが可能である。
【0064】
ハードコートは、無機酸化物粒子の水性ゾルをラジカル硬化性結合剤前駆体(例えば、適する硬化エネルギー源にさらされると架橋反応に参加することが可能である1種以上のラジカル硬化性モノマー、オリゴマーまたはポリマー)と混合することにより便利に調製することが可能である。得られた組成物は、組成物を被着させる前に通常は乾燥させて、実質的にすべての水を除去する。この乾燥工程は時には「ストリッピング」と呼ばれる。得られたセラマー組成物を被着させる前に有機溶媒を得られたセラマー組成物に添加して、改善された粘度特性を付与するとともに基材上にセラマー組成物を被覆するのを助けることが可能である。被覆後に、セラマー組成物は乾燥させて、添加された一切の溶媒を除去することが可能であり、その後、乾燥させた組成物を適するエネルギー源に供してラジカル硬化性結合剤前駆体の少なくとも部分的な硬化を引き起こすことにより、少なくとも部分的に硬化させることが可能である。
【0065】
様々な結合剤をハードコートの中で用いることが可能である。結合剤は、一旦ハードコート組成物が基材上に被覆されると光硬化させることが可能であるラジカル重合性前駆体から誘導される。‘799号特許に記載されたアクリル酸のプロトン性基置換エステルまたはアミドあるいは‘799号特許らに記載されたエチレン系不飽和モノマーなどの結合剤前駆体は、しばしば好ましい。適する結合剤前駆体には、エチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1−エトキシ−2,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,6−ヘキサメチレンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,6−シクロヘキサンジメタノール、レゾルシノール、ピロカテコール、ビスフェノールAおよびビス(2−ヒドロキシエチル)フタレートを含むジオールのジアクリレートエステルまたはジ(メタ)アクリレートエステル、グリセリン、1,2,3−プロパントリメタノール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,3,6−ヘキサントリオール、1,5,10−デカントリオール、ピロガロール、フロログリシノールおよび2−フェニル−2,2−メチロールエタノールを含むトリオールのトリアクリル酸エステルまたはトリメタクリル酸エステル、1,2,3,4−ブタンテトロール、1,1,2,2−テトラメチロールエタン、1,1,3,3−テトラメチロールプロパンおよびペンタエリトリトールテトラアクリレートを含むテトラオールのテトラアクリル酸エステルまたはテトラメタクリル酸エステル、アドニトールを含むペントールのペンタアクリル酸エステルまたはペンタメタクリル酸エステル、ソルビトール、ジペンタエリトリトール、ジヒドロキシエチルヒダントインを含むヘキサノールのヘキサアクリル酸エステルまたはヘキサメタクリル酸エステルおよびそれらの混合物などの多価アルコールのポリアクリル酸エステルまたはポリメタクリル酸エステルが挙げられる。結合剤は、カング(Kang)らによる‘798号特許に記載されたように1種以上の一官能性モノマーから誘導することも可能である。結合剤はビルカジ(Bilkadi)らにおいて記載されたように1種以上のN,N−二置換アクリルアミドおよび/またはN−置換−N−ビニルアミドモノマーを含む。ハードコートは、セラマー組成物中の固形物の全重量を基準にして約20〜約80%のエチレン系不飽和モノマーおよび約5〜約40%のN,N−二置換アクリルアミドモノマーまたはN−置換−N−ビニルアミドモノマーを含むセラマー組成物から誘導してもよい。
【0066】
ハードコートの中の無機粒子、結合剤および他の一切の原料は、硬化したハードコートが基材の屈折率に近い屈折率を有するように選択される。これは、干渉模様または目に見える他の干渉縞の可能性を減らすのを助けることが可能である。
【0067】
上述したように、ハードコートは、被覆する前に水を除去するためにストリッピングされているとともに組成物を被覆するのを助けるために溶媒で任意に希釈されている水性塗料組成物から形成することが可能である。当業者は、所望する溶媒および溶媒レベルの選択がハードコートの中の個々の原料の性質および所望する基材ならびに被覆条件に応じて異なることを認めるであろう。カング(Kang)らによる‘798号特許には、幾つかの有用な溶媒、溶媒レベルおよび塗料粘度が記載されている。
【0068】
ハードコートは、ハードコートの凝集強度または耐久性を高めるために種々の薬剤で架橋することが可能である。典型的な架橋剤は、比較的多数の利用可能な官能基を有し、ペンタエリトリトールトリアクリレートおよびペンタエリトリトールテトラアクリレートなどのトリアクリレートおよびテトラアクリレートを含む。架橋剤を用いる時、架橋剤は、結合剤100重量部当たり約30〜約50重量部などの約60部未満であることが多い。
【0069】
コロイド無機酸化物粒子の水性ゾルを結合剤前駆体と組み合わせることによりハードコートを調製する場合、ゾルは粒子が負の表面電荷を有するようなpHを有する。例えば、無機粒子が主としてシリカ粒子である場合、ゾルはアルカリ性であり、pHは7より高い、8より高い、または9より高い。NH+4が負の表面電荷を有する粒子のための対カチオンとして利用できるように、ゾルは水酸化アンモニウムなどを含んでもよい。コロイド無機酸化物粒子の表面処理を望む場合、適する表面処理剤を例えばカング(Kang)らによる‘833号特許に記載されたようにゾルにブレンドすることが可能である。この特許の開示は本明細書に引用して援用する。その後、ラジカル硬化性結合剤前駆体はセラマー組成物に添加される。セラマー組成物はストリッピングして、実質的にすべての水を除去する。例えば、水の約98%を除去し、よってセラマー組成物中に約2%の水を残すのは適することが見出された。実質的にすべての水を除去すると直ぐに、カング(Kang)らによる‘798号特許に記載されたタイプの有機溶媒は、典型的には、セラマー組成物が約5重量%〜約99重量%の固形物(約10〜約70%)を含むような量で添加される。
【0070】
セラマー組成物は、約1〜約100マイクロメートル、約2〜約50マイクロメートルまたは約3〜約30マイクロメートルの厚さを有する硬化したハードコートを提供するのに十分な塗布量で被覆される。被覆後、たとえあるにしても溶媒は熱および/または真空などにより急速に蒸発する。その後、被覆されたセラマー組成物は、熱エネルギー、可視光線、紫外線または電子ビーム線などの適するエネルギー形態を照射することにより硬化される。周囲条件での紫外線による照射は、この硬化技術の相対的な低コストおよび高速のゆえに用いられることが多い。更に、ハードコート表面は任意に粗くするか、または表面模様付けして艶消表面を提供する。これは、シリカサンドまたはガラスビーズなどの適する小粒子充填剤をハードコートに添加することにより、または米国特許第5,175,030号明細書(リュー(Lu)ら)および同第5,183,597号明細書(リュー(Lu))に記載されたように適する粗い原盤を対照にして硬化を行うことにより、ビードブラストされたか、または別段に粗された適する工具によりハードコートをエンボスすることを含む当業者が精通している多様な方法において実行することが可能である。
【0071】
塗料組成物、その反応生成物(すなわち、硬化した塗料組成物)および本発明の保護物品は、光学的透明性も維持しつつ低表面エネルギー(例えば、汚れ防止、耐染み性、撥油性および/または撥水性)と耐久性(例えば耐摩耗性)の組み合わせが必要とされる様々な表示装置および保護物品上で用いることが可能である。
【0072】
種々の照明付きおよび照明なしの表示装置パネルは知られている。こうした表示装置には、液晶表示装置(「LCD」)、プラズマ表示装置、フロント投影表示装置およびリア投影表示装置、陰極線管(「CRT」)、ビジュアルサイン伝達などの多文字、特に多文字多線表示装置ならびに発光ダイオード(「LED」)、シグナルランプおよびスイッチなどの単一文字表示装置またはバイナリー表示装置が挙げられる。こうした表示装置パネルの光透過性(すなわち露出)基材を「レンズ」と呼んでもよい。本発明は、通常使用中に損傷を受けやすい目視面を有する表示装置のために特に有用である。
【0073】
塗料組成物、その反応生成物(すなわち、乾燥させ硬化させた塗料組成物)および本発明の保護物品は、PDA、携帯電話(組み合わせPDA/携帯電話を含む)、タッチセンシティブスクリーン、腕時計、カーナビシステム、全地球測位システム、深さファインダー、計算器、電子ブック、CDプレーヤーまたはDVDプレーヤー、投影テレビスクリーン、コンピュータモニター、ノート型コンピュータ表示装置、インストルメントゲージ、インストルメントパネルカバー、グラフィックディスプレイ(屋内および屋外グラフィックスなどを含む)などのビジュアルサイン伝達を含む様々な携帯式および非携帯式の情報表示装置の中で用いることが可能である。これらの表示装置は、平面目視面または典型的なCRTの若干曲った面などの非平面目視面を有する。典型的には、表示要素は、情報表示装置の目視面からかなり距離を取っているのでなく情報表示装置の目視面に位置するか、または情報表示装置の目視面に物理的に極めて接近して位置する。
【0074】
塗料組成物、反応生成物および保護物品は、例えば、カメラレンズ、眼鏡レンズ、双眼鏡レンズ、再帰反射シート、自動車窓、建物窓、列車窓、船舶窓、航空機窓、車両の前照灯および尾灯、表示装置ケース、眼鏡、船体、道路舗装マーキング、オーバーヘッドプロジェクター、ステレオキャビネットドア、ステレオカバー、家具、バスステーションプラスチック、時計カバー、ならびに光学記録ディスクおよび磁気−光学記録ディスクなどの様々な他の物品上でも用いることが可能である。
【0075】
本発明の目的および利点を以下の実施例によって更に例示するが、これらの実施例において挙げられた特定の材料および材料の量ならびに他の条件および詳細は本発明を不当に限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0076】
試験方法
1.接触角
水とヘキサデカンの接触角の測定を受ける前にIPA中で手による掻き混ぜによって1分にわたり塗料をリンスした。受領したままの試薬グレードヘキサデカン(アルドリッチ(Aldrich))およびミリポア・コーポレーション(Millipore Corporation)(マサチューセッツ州ビレリカ(Billerica,MA))から購入した濾過システムを通して濾過された脱イオン水を用いて、ASTプロダクツ(AST Products)(マサチューセッツ州ビレリカ(Billerica,MA))からVCA−2500XEという製品番号として入手できるビデオ接触角アナライザで測定を行った。報告した値は、滴の右側および左側で測定された少なくとも3滴に関する測定の平均であり、第2表に示している。滴の体積は静的測定については5μLならびに前進および後退については1〜3μLであった。ヘキサデカンに関して、前進接触角および後退接触角のみを報告している。静的値と前進値がほぼ等しいことが判明したからである。
【0077】
2.耐久性試験
フィルムの表面を横切って(ゴムガスケットによって)針に固定されたチーズクロスまたは鋼綿を往復できる機械的装置の使用によって、硬化したフィルムの耐摩耗性を交差ウェブ方向から被覆方向に試験した。針は3.5回拭取り/秒の速度で幅10cmの走査幅にわたって往復した。ここで、「拭取り」を10cmの片道移動として定義する。針はチーズクロスに関しては直径1.25インチ(3.2cm)の平坦な円筒形状、および鋼綿に関しては直径6mmの平坦な円筒形状を有していた。フィルムの表面に垂直な針によって加えられる力を増加させるために分銅を上に置いたプラットホームを機械的装置に取り付けた。チーズクロスは、「Mil Spec CCC−c−440プロダクト#S12905」という商品名でペンシルバニア州ハッツフィールドのEMS・アクイジション・コーポレーション(EMS Acquisition Corp.(Hatsfield,PA))のサマーズ・オプティカル,EMSパッケージング,Aサブディビジョン(Summers Optical,EMS Packaging,A subdivision)から購入した。チーズクロスを12層に折り畳んだ。鋼綿は、「#0000−Super−Fine」という商品名でワシントン州ベリングハムのホーマックス・プロダクツ(Homax Products(Belingham,WA))のディビジョンであるローデス・アメリカン(Rhodes−American)から購入し、受領したまま用いた。実施例ごとに単一サンプルを試験した。針に加えたグラムの重量および試験中に用いた拭取りの回数を第3表および第4表で報告している。
【0078】
3.ビード形成
「サンフォード・シャピエ、ファインポイント・パーマネントマーカー、no30001(Sanford Sharpie,Fine Point permanent marker,no30001)」という商品名で市販されているペンで表面層にインキマーキングを被着させた。基材に被着させた時にインキマークがビード形成したか(すなわち第3表および第4表により「イエス」)、ビード形成しなかったか(すなわち第3表および第4表により「ノー」)どうかを決定するために観察を行った。
【0079】
4.インキ剥離性
「サンフォード・シャピエ、ファインポイント・パーマネントマーカー、no30001(Sanford Sharpie,Fine Point permanent marker,no30001)」という商品名で市販されているペンで表面層にインキマーキングを被着させた。「サーパス・フェイシャル・ティシュ(SURPASS FACIAL TISUUE)」という商品名でジョージア州ロスウェルのキンバリー・クラーク・コーポレーション(Kimberly Clark Corporation(Roswell,GA))から市販されているような乾燥ティシュで拭くことによりインキマークが容易に除去されたか(すなわち第3表および第4表により「イエス」)、ビード形成しなかったか(すなわち第3表および第4表により「ノー」)どうかを決定するために観察を行った。
【0080】
5.曇り度および透過率
被覆されたフィルムの値を「BYKガードナー曇り度−透明度−透過率(BYK Gardner Haze−Clarity−Transmission)」計によって測定した。値を%として報告している。
【0081】
原料
F(CF(CF3)CF2O)aCF(CF3)COOCH3(ここで、aは平均約6.3であり、平均分子量は1,211g/モルである):米国特許第3,250,808号明細書(ムーア(Moore)ら)で報告された方法により調製することが可能である。精製は分留による。
トリメチロールプロパントリアクリレート(「TMPTA」)は、「SR351」という商品名でペンシルバニア州エクストンのサートマー・カンパニー(Sartomer Company(Exton,PA))から購入した(AC−1)。
ペンタエリトリトールトリアクリレートとペンタエリトリトールテトラアクリレートの混合物は、「SR295」という商品名でサートマー・カンパニー(Sartomer Company)から購入した(AC−2)。
トリエチレングリコールジアクリレートは、「SR306」という商品名でサートマー・カンパニー(Sartomer Company)から購入した(AC−3)。
ω−ヒドロ2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルアクリレート(H−C48−CH2O−C(O)−CH=CH2)は、サウスカロライナ州ウェストコロンビアのオークウッド・プロダクツ(Oakwood Products(West Columbia,SC))から購入した(FC−6)。
N−メチル−1,3−プロパン−ジアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールおよび2−アミノ−1,3−プロパンジオールは、ウィスコンシン州ミルウォーキーのシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich(Milwaukee,WI))から購入した。
塩化アクリロイルはシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から購入した。
用いたUV光開始剤は、「ダロキュア(DAROCUR)」1173という商品名でニューヨーク州タリータウンのチバ・スペシャルティ・プロダクツ(Ciba Specialty Products(Tarrytown,NY))から購入した。
【0082】
1.HFPOC(O)−NH−CH2CH2−OH出発材料(すなわち、HFPO−AE−OH)の調製
HFPO−C(O)OCH3(Mw=1211g/モル、50.0g)を200mlの丸底フラスコに入れた。フラスコを窒素でパージし、水浴に入れて50℃以下の温度を維持した。このフラスコに3.0g(0.045モル)の2−アミノエタノール(アルドリッチ(Aldrich)から購入したもの)を添加した。反応混合物を約1時間にわたり攪拌し、その時間後に、反応混合物の赤外線スペクトルは、1790cm-1でメチルエステル帯域の完全な喪失および1710cm-1で強いアミドカルボニルストレッチの存在を示した。メチルt−ブチルエーテル(MTBE、200ml)を反応混合物に添加し、有機相を水/HCl(約5%)で2回抽出して、未反応のアミンおよびメタノールを除去した。MTBE層をMgSO4で乾燥させた。MTBEを減圧下で除去して、透明で粘性の液体を生じさせた。1H核磁気共鳴分光分析(NMR)および赤外線分光分析(IR)は、上で特定した化合物の生成を確認した。
【0083】
一官能性パーフルオロポリエーテルアクリレート(FC−1)の調製
HFPO−C(O)N(H)CH2CH2OC(O)CH=CH2(HFPO−AEA)
メカニカルスターラー、還流コンデンサ、添加漏斗および窒素ガス源に接続されたホースアダプターが装着された三口丸底フラスコ内でHFPO−AE−OH(600g)を酢酸エチル(600g)およびトリエチルアミン(57.9g)と組み合わせた。混合物を窒素雰囲気下で攪拌し、40℃に加熱した。塩化アクリロイル(51.75g)を添加漏斗から約30分にわたりフラスコに滴下した。混合物を40℃で一晩攪拌した。その後、混合物を放置して室温に冷却し、300mlの2N水性HClで希釈し、分液漏斗に移送した。水層を除去し、酢酸エチル層を2N・HClのもう1つの300ml部分で抽出した。その後、有機相を5重量%水性NaHCO3で1回抽出し、分離し、MgSO4上で乾燥させ、濾過した。ロータリーエバポレータを用いて揮発性成分を除去すると、596gの製品(収率93%)をもたらした。1H NMRおよびIR分光分析は、上で特定した化合物の生成を確認した。
【0084】
2.HFPOC(O)−NH−CH2CH2−O−CH2CH2−OH出発材料(すなわちHFPO−AEE−OH)の調製
HFPO−C(O)OCH3(Mw=1211g/モル、51.0g)を200mlの丸底フラスコに入れた。フラスコを窒素でパージし、水浴に入れて50℃以下の温度を維持した。このフラスコに5.35g(0.045モル)の2−アミノエトキシエタノール(アルドリッチ(Aldrich)から購入したもの)を添加した。反応混合物を約1時間にわたり攪拌し、その時間後に、反応混合物の赤外線スペクトルは、1790cm-1でメチルエステル帯域の完全な喪失および1710cm-1で強いアミドカルボニルストレッチの存在を示した。メチルt−ブチルエーテル(200ml)を反応混合物に添加し、有機相を水/HCl(約15%)で2回抽出して、未反応のアミンおよびメタノールを除去した。MTBE層を組み合わせ、MgSO4で乾燥させた。MTBEを減圧下で除去して、透明で粘性の液体を生じさせた。室温で0.1mmHgで16時間にわたり更に乾燥させると、48g(収率90%)をもたらした。1H NMRおよびIR分光分析は、上で特定した化合物の生成を確認した。
【0085】
一官能性パーフルオロポリエーテルアクリレート(FC−2)の調製
HFPO−C(O)N(H)CH2CH2OCH2CH2OC(O)CH=CH2
メカニカルスターラー、還流コンデンサ、添加漏斗および窒素ガス源に接続されたホースアダプターが装着された三口丸底フラスコ内でHFPO−AEE−OH(25g)を酢酸エチル(200g)およびトリエチルアミン(5g)と組み合わせた。混合物を窒素雰囲気下で攪拌し、40℃に加熱した。塩化アクリロイル(5.5g)を添加漏斗から約30分にわたりフラスコに滴下した。混合物を40℃で一晩攪拌した。その後、混合物を放置して室温に冷却し、300mlの2N水性HClで希釈し、分液漏斗に移送した。水層を除去し、酢酸エチル層を2N・HClのもう1つの300ml部分で抽出した。その後、有機相を5重量%水性NaHCO3で1回抽出し、分離し、MgSO4上で乾燥させ、濾過した。ロータリーエバポレータを用いて揮発性成分を除去すると、製品をもたらした。1H NMRおよびIR分光分析は、上で特定した化合物の生成を確認した。
【0086】
3.パーフルオロポリエーテルアミド−アミン出発材料の調製
HFPO−C(O)N(H)CH2CH2CH2N(H)CH3
1リットルの丸底フラスコに291.24g(0.2405モル)のHFPO−C(O)OCH3(すなわちMw=1211g/モル)および21.2g(0.2405モル)のN−メチル−1,3−プロパンジアミンを両方とも室温で投入して、曇った溶液を生成させた。フラスコを回転させ、溶液温度は45℃に上昇し、よってウォータホワイト液に澄み、それを55℃で一晩加熱した。その後、溶液を75℃および28インチHgの真空でロータリーエバポレータ上に置いて、メタノールを除去し、301.88g(99%)の若干黄色の粘性液をもたらした。それをNMR法によって純度98%の上で特定した化合物であると特性分析した。
【0087】
多官能性パーフルオロポリエーテルアクリレート(FC−3)の調製
1:1モル比におけるHFPO−C(O)N(H)CH2CH2CH2N(H)CH3とTMPTAのマイケル型付加・付加体
250mLの丸底フラスコに4.48g(15.2モル、294の公称MWを基準にして)のTMPTA、4.45gのテトラヒドロフラン(THF)および1.6gのフェノチアジン(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から購入したもの)を投入し、55℃で油浴に入れた。次に、100mLのジャー内で、32gのTHFに20g(15.78モル、Mw1267.15)のHFPO−C(O)N(H)CH2CH2CH2N(H)CH3を溶解させた。この溶液を均圧器具付きの60mLの滴下漏斗に入れ、ジャーを約3mLのTHFでリンスし、それも滴下漏斗に添加した。漏斗の内容物を空気雰囲気下でTMPTA/THF/フェノチアジン混合物に38分にわたり添加した。反応は初めに曇っていたが、約30分で澄んだ。添加が完了してから20分後に、反応フラスコを28インチの真空下で45〜55℃でロータリーエバポレータ上に置いて、24.38gの透明で粘性の黄色液をもたらし、それをNMRおよびHPLC/質量分光分析法によって上で特定した化合物として特性分析した。
【0088】
4.HFPO−C(O)N(H)C(CH2OH)2CH2CH3出発材料の調製
スターラー、還流コンデンサおよび加熱浴が装着された500mlの三口フラスコに11.91g(0.1モル)のH2NC(CH2OH)2CH2CH3(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から購入したもの)および60gのTHFを投入した。次に、滴下漏斗を経由して、121.1g(0.1モル)のHFPO−C(O)OCH3を約85℃の加熱浴温度で約80分にわたり添加した。反応は初めに曇っていたが、反応が始まって約1時間で透明になった。添加が完了した後、加熱浴を切り離し、反応を放置して3日にわたり冷却した。材料をアスピレータ真空下で55℃で濃縮して、130.03gの淡色シロップをもたらした。NMR分析は、製品が次の通りの構造I対IIの87:13混合物であることを示した。
【0089】
【化1】

【0090】
多官能性パーフルオロポリエーテルアクリレートの調製
HFPO−C(O)N(H)C(CH2OC(O)CH=CH22CH2CH3 (FC−4)
オーバーヘッドスターラーが装着された250mLの三口丸底フラスコに上で生成した製品混合物である65g(0.05モル)のHFPO−C(O)N(H)C(CH2OH)2CH2CH3、12.65g(0.125モル)のトリエチルアミンおよび65gの酢酸エチルを投入した。均圧滴下漏斗を用いて、室温のフラスコに11.31g(0.125モル)の塩化アクリロイルを12分にわたり添加した。反応温度は25から40℃の最大に上昇した。漏斗を追加の5gの酢酸エチルでリンスし、すすぎ水を反応に添加し、その後、反応を40℃の浴に入れ、放置して2時間10分の追加の時間にわたり反応させた。その後、有機層を65gの2%水性硫酸、65gの2%水性炭酸水素ナトリウムおよび65gの水で逐次洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、16mgのメトキシヒドロキノン(MEHQ)で処理し、45℃でロータリーエバポレータで濃縮して粗製品62.8gをもたらした。次に、この材料35gを、溶離液として25:75の酢酸エチル:ヘプタンを用いる600mlのシリカゲル(SX0143U−3、グレード62、60〜200メッシュ、EMサイエンス(EM Science))でクロマトグラフィによって分離した。最初の2つのフラクションは体積250mlであり、残りのフラクションは体積125mlであった。フラクション4〜10を組み合わせ、8mgのMEHQをフラクションに添加し、それを55℃でロータリーエバポレータで濃縮して、25.36gの製品をもたらした。それをNMRによって分析し、構造III対IVの88:12混合物であることが判明した。
【0091】
【化2】

【0092】
5.HFPO−C(O)N(H)C(CH2OH)2H出発材料の調製
HFPO−C(O)N(H)C(CH2OH)2CH2CH3の調製に似た方法によって、106.74g(0.088モル)のHFPO−C(O)CH3を51gのTHF中の8.03g(0.088モル)の2−アミノ−1,3−プロパンジオールと反応させて、93:7アミドジオール:エステルアミノアルコールである製品を提供した。
【0093】
多官能性パーフルオロポリエーテルアクリレート(FC−5)の調製
HFPO−C(O)N(H)C(CH2OC(O)CH=CH22
HFPO−C(O)N(H)C(CH2OC(O)CH=CH22CH2CH3の調製に似た方法において、50g(0.3936モル)のHFPO−C(O)N(H)C(CH2OH)2Hを100gの酢酸エチル中の8.55g(0.0945モル)の塩化アクリロイルおよび9.56g(0.946モル)のトリエチルアミンと反応させて、ワークアップ(workup)およびクロマトグラフィの後にジアクリレートとアクリルアミドアクリレートの93:7混合物を提供した。
【0094】
塗料溶液の調製
第1A表および第1B表で報告された材料および重量による量を用いて基材を重合性組成物で被覆した。すべての重合性成分をメチルエチルケトン中で全固形物10重量%に希釈した。メチルエチルケトン中の10%固形物光開始剤溶液を用いて、光開始剤「ダロキュア(Darocur)」1173の固形物に基づく2重量%を重合性組成物中に含めた。塗料溶液の最終濃度に混合物を希釈する前に光開始剤を添加した。メチルイソブチルケトンを用いて、固形物濃度(すなわち2重量%または2.5重量%)への希釈を達成した。実施例ごとの塗料溶液の最終固形物濃度を第1A表および第1B表に記載している。
【0095】
被覆、乾燥、硬化プロセス
ハードコート表面層を各々が有する2つの異なる基材を実施例において用いた。5.0ミルの厚さおよび下塗り表面を有する「メリネックス(Melinex)」618という商品名でデラウエア州ウィルミントンのデュポン・ヌムール(E.I.DuPont de Nemours and Company(Wilmington,DE))から購入した透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムから第1の基材(S−1)を調製した。米国特許第6,299,799号明細書の実施例3と実質的に同じであったハードコート組成物を下塗り表面上に被覆し、50パーツパーミリオン(ppm)未満の酸素を有するUVチャンバ内で硬化させた。メリーランド州ゲーサーズバーグのフュージョンUVシステムズ(Fusion UV Systems(Gaithersburg,MD))製の全動力で動作する600ワットH型バルブがUVチャンバに装着されていた。第2の基材(S−2)は、「N4D2A」という商品名でジョージア州シダータウンのU.S.A.キモト・テック(U.S.A.Kimoto Tech(Cedartown,GA))から市販されている前もって被着されたハードコート表面層を有する艶消フィルムであった(S−2)。この艶消フィルムを更に修正せずに用いた。
【0096】
ハードコートを計量供給式精密ダイ被覆プロセスにより「メリネックス(Melinex)」618フィルムに被着させた。ハードコートを30重量%固形物にIPAの中で希釈し、5ミルのPET裏地上に被覆して、5マイクロメートルの乾燥厚さを達成した。加圧容器からの材料の流速を監視し、設定するために流量計を用いた。チューブを通して、フィルタ、流量計を通して、そしてその後ダイを通して液体を押し出す密封容器内部の空気圧を変えることにより流速を調節した。乾燥させ、硬化させたフィルムを引取ロールで巻き取り、以下に記載する塗料溶液のための入力裏地として用いる。
【0097】
S−1のためのハードコート被膜および乾燥パラメータは次の通りであった。
【0098】
【表1】

【0099】
精密計量供給ダイコータを用いて、S−1またはS−2のいずれかのハードコート層上に本発明の塗料組成物を被覆した。この工程に関しては、ダイに溶液を計量して供給するためにシリンジポンプを用いた。溶液を第1A表及び第1B表に示された2%固形物または2.5%固形物の濃度に希釈し、ハードコート層上に被覆して、40〜60mmの乾燥厚さを達成した。材料を従来の空気浮遊炉内で乾燥させ、その後、50ppm未満の酸素を有するUVチャンバに送った。メリーランド州ゲーサーズバーグのフュージョンUVシステムズ(Fusion UV Systems(Gaithersburg,MD))製の全動力で動作する600ワットH型バルブがUVチャンバに装着されていた。
【0100】
表面層被膜および乾燥パラメータは次の通りであった。
【0101】
【表2】

【0102】
【表3】

【0103】
【表4】

【0104】
【表5】

【0105】
【表6】

【0106】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の例示的な表示装置の断面図である。
【図2】本発明の例示的な保護物品の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)(i)少なくとも1種のフルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物、および
(ii)少なくとも1種の非フッ素化架橋剤
の反応生成物を含む表面層を有する光透過性基材と、
b)前記基材と前記表面層との間に配置されたハードコート層と
を含む物品。
【請求項2】
前記基材は透明または艶消の高分子フィルムである、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記表面層は少なくとも90度の水との静的接触角を示す、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記表面層は少なくとも50度のヘキサデカンとの前進接触角を示す、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記表面層は、耐久性試験に従うチーズクロスおよび725グラムの分銅による200回の拭取り後にインキ剥離性を示す、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記表面層は、耐久性試験に従うチーズクロスおよび725グラムの分銅による200回の拭取り後にインキビード形成を示す、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記表面層は約10〜200ナノメートルの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記表面層は2%未満の初期曇り度を示す、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記表面層は少なくとも90%の初期透過率を示す、請求項7に記載の物品。
【請求項10】
前記基材は前記表面層と逆側に主面を有し、接着剤層が前記逆側の主面上に配置される、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
前記接着剤層は永久接着剤組成物または除去性接着剤組成物から選択される、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
前記フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物は過フッ素化部分を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項13】
前記フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物は一官能性である、請求項1に記載の物品。
【請求項14】
前記フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物は多官能性である、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
前記フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物は少なくとも1種の一官能性化合物と少なくとも1種の多官能性化合物との混合物である、請求項1に記載の物品。
【請求項16】
前記フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物は反応性フルオロポリエーテルとポリ(メタ)アクリレートのマイケル型付加である、請求項1に記載の物品。
【請求項17】
前記フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物は少なくとも1個の末端F(CF(CF3)(CF2O)aCF(CF3)−基(ここで、aは平均4〜15である)および少なくとも2個の(メタ)アクリル基を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項18】
前記架橋剤は、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項19】
塗料組成物は、式(RA)−W−(CH2F1−H)(式中、RAは(メタ)アクリレート基またはCH2=CFCO基であり、RF1は炭素原子数2〜7のフルオロアルキレン基であり、Wは連結基である)を有する少なくとも1種の化合物を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項20】
式(RA)−W−(CH2F1−H)の化合物は、ω−ヒドロ2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルアクリレートである、請求項19に記載の表示装置パネル。
【請求項21】
a)(i)少なくとも1種のフルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物、および
(ii)少なくとも1種の非フッ素化架橋剤
の反応生成物を含む表面層を有する光透過性基材と、
b)前記基材と前記表面層との間に配置されたハードコート層と
を含む表示装置パネル。
【請求項22】
前記物品は、タッチスクリーン、液晶表示装置パネル、プラズマ表示装置パネル、テレビジョンスクリーン、コンピュータスクリーンおよび計器表示装置パネルから選択される、請求項21に記載の表示装置パネル。
【請求項23】
少なくとも1種のフルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物と少なくとも1種の非フッ素化架橋剤との反応生成物を含む表面層を有する基材と、前記基材と前記表面層との間に配置されたハードコート層とを含む物品。
【請求項24】
i)少なくとも1種のフルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物、
ii)少なくとも1種の非フッ素化架橋剤、および
iii)炭化水素溶媒
からなる塗料組成物。
【請求項25】
前記組成物は光開始剤を更に含む、請求項24に記載の塗料組成物。
【請求項26】
前記組成物はフッ素化溶媒を含まない、請求項24に記載の塗料組成物。
【請求項27】
基材上に表面層を提供する方法であって、
a)ハードコート付き基材を提供する工程と、
b)前記ハードコート付き基材上に請求項24に記載の組成物を被覆する工程と、
c)前記組成物を硬化させる工程と
を含む方法。
【請求項28】
a)式(RA)−W−(CH2F1−H)(式中、RAは(メタ)アクリレート基またはCH2=CFCO基であり、RF1は炭素原子数2〜7のフルオロアルキレン基であり、Wは連結基である)を有する少なくとも1種の化合物、
b)少なくとも1種のフルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物、および
c)少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を有する少なくとも1種の架橋剤
の反応生成物を含む組成物。
【請求項29】
前記フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物は過フッ素化部分を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物は一官能性である、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
前記フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物は多官能性である、請求項28に記載の組成物。
【請求項32】
前記フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物は少なくとも1種の一官能性化合物と少なくとも1種の多官能性化合物との混合物である、請求項28に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−537059(P2007−537059A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511358(P2007−511358)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/008570
【国際公開番号】WO2005/113690
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】