説明

フルオロポリマーを含む第1の層及び第2の層を含む製品

【課題】フルオロポリマーを実質的にフッ素化されていないポリマーに結合するのに有用な組成物を提供すること。
【解決手段】組成物を、実質的にフッ素化されていないポリマーまたはそのポリマーの混合物、塩基、およびクラウンエーテル触媒を含むように構成する。本発明の別の態様は、フルオロポリマーに接着した上述の組成物を含む製品、およびその製品を製造する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロポリマーを実質的にフッ素化されていないポリマーに結合すること、特にフルオロポリマーを実質的にフッ素化されていないポリマーに結合するのに有用な、ポリオレフィン−触媒混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素含有ポリマー(すなわちフルオロポリマーまたはフッ素化されたポリマー)は、商業的に重要な種類の材料である。多くのフルオロポリマーは、高温で高い熱安定性および有用性、ならびに非常に低い温度で高い靭性および可撓性を示すことが知られている。多くのフルオロポリマーは、多種多様な有機溶剤にほぼ完全に不溶性でもあり、抵抗性がより低いその他の種類の材料を劣化させるかもしれない多くの化学物質に対して抵抗性でもある。さらに多くのフルオロポリマーは、遮断性、すなわち液体または蒸気の通過を防ぐ能力によって知られている。
【0003】
蒸発性燃料基準に関する増大する懸念によって、改善された遮断性(バリヤー特性)を有して、給油口ライン、燃料供給ライン、燃料タンク、および自動車排気ガス制御システムのその他の部品などの自動車部品を通じた燃料蒸気の浸透を最小化する燃料系統部品が必要になってきた。これらの用途では、多層チューブなどの多層製品が使用されている。これらの多層製品は、不活性の防湿層を提供するフルオロポリマー、および多層製品に強度、剛性、またはその他の機械的性質を追加できる1つ以上のその他の層を含むことができる。一例として、いくつかの多層製品は、フルオロポリマーと、実質的にフッ素化されていないポリマーを含む層とを含む。
【0004】
最大限に有用であるためには、これらの多層製品は使用中に離層してはならない。すなわち多層製品の異なる層間の接着結合強度は、例えば、燃料、排出流体、腐食性または酸性溶液、またはその他の攻撃的化学薬品に曝された際に、異なる層が分離するのを防ぐために十分に強力で安定でなくてはならない。しかし、2種類の非常に異なる材料、フルオロポリマーおよび炭化水素ポリマーの間の接着が不良であるため、これらの所望の構造物の形成が困難になる。
【0005】
フルオロポリマーを含むポリマー材料を実質的にフッ素化されていないポリマー材料に結合するために、多様な方法が使用されている。例えば、複数の層は、2層間の接着性材料層によって一緒に接着できる。代案としては、独立に、または接着性材料と組み合わせて使用される、複数の層の片方または両方の表面処理を使用して、2つのタイプの材料が一緒に結合される。例えば、フルオロポリマーを含む層を荷電した気体雰囲気によって処理し、引き続き熱可塑性ポリアミド層でラミネーションする。別のアプローチとしては「つなぎ層」を使用して、フルオロポリマー材料を実質的にフッ素化されていないポリマーを含む材料の層に結合する。つなぎ層は、フルオロポリマーの層と実質的にフルオロポリマーでない層との間に配置される、異なる材料の配合物を含む層である。既知のつなぎ層材料のいくつかの不都合な点としては、つなぎ層のベースポリマーの望ましい物性の損失、「つなぎ層」の使用によって必要となる追加的製造ステップ、そしてつなぎ層中で使用されるいくつかの成分の取り扱いに関わるその他の問題が挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一面において、本発明は、溶融加工性で実質的にフッ素化されていないポリマーと、塩基およびクラウンエーテルを含む触媒系との混合物を含む組成物を提供する。
【0007】
別の面において、本発明は、
a)フルオロポリマーを含む第1の層、および
b)第1の層に結合した、溶融加工性で実質的にフッ素化されていないポリマーと、塩基と、クラウンエーテルとの混合物を含む第2の層
を含む製品を提供する。
【0008】
別の面において、本発明は、
a)溶融加工性で実質的にフッ素化されていないポリマーと、塩基と、クラウンエーテルとの混合物を含む結合組成物を提供するステップと、
b)フルオロポリマーを提供するステップと、
c)結合組成物をフルオロポリマーの表面に適用するステップと、
d)実質的にフッ素化されていないポリマーを含む材料層をフルオロポリマーを含む材料層に、それらの2つの材料層間に介在して密着する結合組成物により、ラミネートすることによって多層製品を形成するステップと
を含む、フルオロポリマーを実質的にフッ素化されていないポリマーに結合する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の組成物は、官能性ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリウレタン、および上述のポリマーの高分枝化学種などの炭化水素ポリマーに対するフルオロポリマーの接着を促進して、耐湿性、耐溶剤性、耐腐食性で、フルオロポリマーのみからできた製品よりも経済的に製造される製品を製造するのに有用である。
【0010】
「官能性を付与されたポリオレフィン」は、例えば、ポリオレフィンポリマー主鎖からのペンダント基であるか、あるいは一体化しているイミド、アミド、オキシカルボニル、無水物、アセテート、カルボニル、水酸化物、および類似の化学基である、1つ以上の官能基を有するポリオレフィンである。
【0011】
本発明の組成物は、ポリエチレン、エチレンモノマーを含む共重合体、ポリアミド、ポリウレタン、およびその他の官能性を付与されたポリオレフィンなどの炭化水素ポリマーに対するフルオロポリマーの接着を促進するのに有用である。理論に拘束されることは望まないが、出願人らは、塩基とクラウンエーテルとの組み合わせが、フッ素化されていないポリマーのペンダントの官能基を活性化し、フルオロポリマーと化学的に相互作用して、フルオロポリマーの脱フッ化水素化を通じて接着を促進するものと考える。
【0012】
本発明の組成物は、1種以上の実質的にフッ素化されていないポリオレフィンを含有する。有用な実質的にフッ素化されていないポリマー材料は、多くの既知の炭化水素ベースのポリマーおよび共重合体またはそれらの混合物のいずれかを含むことができる。これらのポリマー材料は、感圧接着剤とみなされる実質的にフッ素化されていないポリマー材料も含む。ここで使用した場合、「実質的にフッ素化されていない」と言う用語は、炭素に結合した水素原子の10%未満がフッ素原子で置換されたポリマーおよびポリマー材料を指す。実質的にフッ素化されていないポリマーは、好ましくは炭素に結合した水素原子の2%未満がフッ素原子で置換され、より好ましくは炭素に結合した水素原子の1%未満がフッ素原子で置換される。好ましい実質的にフッ素化されていないポリマーとしては、熱可塑性ポリアミド、ポリウレタン、官能性を付与されたポリオレフィン、およびこれらのポリオレフィンの共重合体または配合物が挙げられる。
【0013】
あらゆる溶融加工性の、カルボキシル、カルボキシレート、カルボニル、無水物、アミド、イミド、ヒドロキシル、またはオキシカルボニル官能性ポリオレフィンを使用して、本発明の実質的にフッ素化されていないポリマー材料を製造しても良い。これらの官能性ポリマーは、官能性モノマーとα−オレフィンモノマー(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、アクリレート、ビニルエーテルなど)との共重合によって調製でき、あるいは代案としてはポリオレフィンポリマーを重合後に、例えば、グラフト化または酸化によって変性、または官能性を付与しても良い。本発明で有用なこのような実質的にフッ素化されていないポリマーを代表するものとしては、デラウェア州ウィルミントンのE.I.Du Pont de Nemours and Companyから「BYNEL」の商品名の下に市販される無水物変性ポリエチレン、E.I.Du Pont de Nemours and Companyから入手できる商品名「ELVAX」の下に市販されるオキシカルボキシ官能性ポリエチレン、ミシガン州ミッドランドのDow Chemical Companyから商品名「Primacor」の下に市販されるエチレン/アクリル酸共重合体、およびテキサス州ヒューストンのChevron Chemical Co.から商品名「EMAC」の下に市販されるエチレン/メチルアクリレート共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0014】
好ましい官能性を付与されたポリオレフィンとしては、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メチルアクリレート共重合体、およびエチレン/酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
【0015】
カルボキシル、カルボキシレート、無水物、アミド、イミド、ヒドロキシル、またはオキシカルボニル官能性ポリオレフィンの配合物を本発明の組成物中で使用しても良い。
【0016】
実質的にフッ素化されていないポリマーとして有用なポリアミドとしては、概して多くの供給元から市販されるナイロンが挙げられる。特に好ましいポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、およびナイロン12が挙げられるが、これに限定されるものではない。特定のポリアミド材料の選択は、得られる製品の特定用途の物理的要求に基づくべきであることに注意すべきである。例えば、ナイロン6およびナイロン6,6は、ナイロン11またはナイロン12よりも高い耐熱性を提供し、他方ナイロン11およびナイロン12は、より良い耐薬品性を提供する。本発明で有用なその他のナイロンとしては、ナイロン6,12、ナイロン6,9、ナイロン4、ナイロン4,2、ナイロン4,6、ナイロン7、およびナイロン8が挙げられる。例えば、ナイロン6,Tおよびナイロン6,Iなどの環含有ポリアミドを使用しても良い。PEBAXTMなどのポリエーテル含有ポリアミドを使用しても良い。
【0017】
実質的にフッ素化されていないポリマーとして有用なポリウレタンポリマーとしては、脂肪族、脂環式、芳香族、および多環式ポリウレタンが挙げられる。これらのポリウレタンは、通常、周知の方法に従って、多官能性イソシアネートとポリオールとの反応によって製造される。適当なポリウレタンの製造に用いられる有用なジイソシアネートとしては、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、およびジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。1種以上の多官能性イソシアネートの組み合わせを使用しても良い。有用なポリオールとしては、ポリペンチレンアジペートグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ポリ−1,2−ブチレンオキシドグリコール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。任意に、ブタンジオールまたはヘキサンジオールなどの連鎖延長剤を反応で使用しても良い。本発明で有用な市販されるポリウレタンとしては、ニューハンプシャー州シーブルックのMorton International,Inc.から入手できるPN−04または3429、およびオハイオ州クリーブランドのB.F.Goodrich Companyから入手できるX−4107が挙げられる。
【0018】
本発明の組成物は、1種以上の無機または有機塩基を含む。有用な無機塩基としては、これらのものに限定されるものではないが、水酸化リチウム、水酸化カリウム、および水酸化ナトリウムなどの金属水酸化物、これらのものに限定されるものではないが、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシドなどの金属アルコキシド、これに限定されるものではないが、ナトリウムエチルアミンなどの金属アミン、そして、これに限定されるものではないが、ナトリウムアセトアミドなどの金属アセトアミドが挙げられる。有用な有機塩基の例としては、カリウムフタルイミド、ナトリウムトリメチルシラノエートが挙げられる。
【0019】
本発明の組成物は、相間移動触媒として機能する1種以上のクラウンエーテルを含有する。クラウンエーテルは、中心に位置する金属原子にエーテルの酸素原子を通じて配位できることで金属原子に対する電子供与体として機能する、ジメチレンオキシド単位を含有する巨大環状ポリエーテルである。この種類の化合物は、強い錯化またはキレート化能力を有することが知られており、ジメチレンオキシド基の数次第で、その錯化またはキレート化能力に関して金属イオンに非常に特異的であることができる。ナトリウム、カルシウム、およびカリウムカチオンに対して良好なキレート化能力を示す、本発明で有用なクラウンエーテルとしては、18−クラウン−6エーテルおよび15−クラウン−5エーテルが挙げられるが、これらのものに限定されるものではない。クラウンエーテルの窒素置換相当物、または混合した窒素および酸素置換クラウンエーテル相当物も本発明の結合組成物およびラミネートの調製において使用するのに適切である。
【0020】
本発明で有用なフルオロポリマー材料としては、構造的に3つの基本的種類に大まかに分類されるフルオロポリマーが挙げられる。第1の種類としては、フッ化ビニリデンまたはフッ化ビニル(それぞれ、「VF2」または「VDF」、および「VF」と称されることもある)から誘導される内部重合化単位を含む、フッ素化されたポリマー、共重合体、三元共重合体などが挙げられる。好ましくはこの第1の種類のフルオロポリマー材料は、VF2またはVFから誘導される少なくとも3重量%の内部重合化単位を含む。このようなポリマーは、VF2またはVFのホモポリマー、あるいはVF2またはVFとその他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体であっても良い。VF2またはVFとその他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体が、フルオロポリマーを代表するものである。
【0021】
VF2およびVF含有ポリマーおよび共重合体は、例えば、エチレン性不飽和モノマーの存在下または不在下におけるVF2のフリーラジカル重合などの周知の従来の手法によって製造できる。このようなポリマーおよび共重合体のコロイド水性分散液の調製については、例えば、米国特許第4,335,238号(Mooreら)で述べられている。この参考文献は、例えば、フリーラジカルを生成する、アンモニウムまたはアルカリ金属過硫酸塩あるいはアルカリ金属過マンガン酸塩などの水溶性重合開始剤の存在下で、あるいは特にペルフルオロオクタン酸のアンモニウムまたはアルカリ金属塩などの乳化剤の存在下で実施される、コロイド水性分散液中におけるフッ素化されたオレフィンの共重合について述べる。
【0022】
VF2またはVFと共重合するのに有用なフッ素含有モノマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン(「HFP」)、テトラフルオロエチレン(「TFE」)、クロロトリフルオロエチレン(「CTFE」)、2−クロロペンタフルオロプロペン、例えば、CF3OCF=CF2またはCF3CF2OCF=CF2などのペルフルオロアルキルビニルエーテル、1−ヒドロペンタフルオロプロペン、2−ヒドロ−ペンタフルオロプロペン、ジクロロジフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、1,1−ジクロロフルオロエチレン、フッ化ビニル、および米国特許第4,558,142号(Squire)で述べられるようなペルフルオロ−1,3−ジオキソールが挙げられる。ペルフルオロジアリルエーテルおよびペルフルオロ−1,3−ブタジエンなどの特定のフッ素含有ジオレフィンも有用である。例えば、エチレンまたはプロピレンなどのフッ素を含まない末端不飽和オレフィンコモノマーと、前記フッ素含有モノマーまたはモノマーとを共重合しても良い。好ましくは重合性混合物中の全モノマーの少なくとも50重量%が、フッ素含有モノマーである。過酸化物硬化性ポリマーを調製するために、フッ素含有モノマーと、ヨウ素または臭素を含有する硬化部位モノマーとを共重合しても良い。適切な硬化部位モノマーとしては、ブロモジフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ヨードトリフルオロエチレン、および4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロ−ブテン−1などの炭素原子2〜4個の末端不飽和モノオレフィンが挙げられる。
【0023】
この第1の種類の市販されるフルオロポリマー材料としては、例えば、THV 200フルオロポリマー(ミネソタ州セントポールのDyneon LLCから入手できる)、THV500フルオロポリマー(Dyneon LLCから入手できる)、KYNARTM740フルオロポリマー(ニュージャージー州グレンロックのElf Atochem North America,Inc.から入手できる)、および、例えば、BF6と架橋されたFLUORELTMFC−2178フルオロポリマー(Dyneon LLCから入手できる)などのフルオロエラストマーが挙げられ、あるいは保護されたポリヒドロキシ芳香族化合物も本発明のラミネート構造物の調製において使用するのに適している。
【0024】
本発明の実施において有用な第2の種類のフッ素化された材料は、広義において、1種以上のヘキサフルオロプロピレン(「HFP」)モノマー、テトラフルオロエチレン(「TFE」)モノマー、クロロトリフルオロエチレンモノマー、および/またはその他の過ハロゲン化されたモノマーから誘導され、かつさらには1種以上の水素含有および/またはフッ素化されていないオレフィン性不飽和モノマーから誘導される内部重合化単位を含む、フッ素化されたポリマー、共重合体、三元共重合体などを含む。有用なオレフィン性不飽和モノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ヒドロペンタフルオロプロペン、2−ヒドロペンタフルオロプロペンなどのアルキレンモノマーが挙げられる。
【0025】
この第2の種類のフルオロポリマーは、フルオロポリマーの技術分野で既知の方法によって調製できる。このような方法としては、例えば、ヘキサフルオロプロピレンおよび/またはテトラフルオロエチレンモノマーと、フッ素化されていないエチレン性不飽和モノマーとのフリーラジカル重合が挙げられる。一般的に、所望のオレフィンモノマーは、アンモニウムまたはアルカリ金属過硫酸塩あるいはアルカリ金属過マンガン酸塩などのフリーラジカルを生成する水溶性重合開始剤の存在下において、そしてペルフルオロオクタン酸のアンモニウムまたはアルカリ金属塩などの乳化剤の存在下において、水性コロイド分散液中で共重合できる。例えば、米国特許第4,335,238号(Mooreら)を参照されたい。
【0026】
第2の種類のフルオロポリマー材料を代表するものとしては、例えば、ポリ(エチレン−コ−テトラフルオロエチレン)(ETFE)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−プロピレン)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン−コ−エチレン)(ECTFE)、および三元共重合体ポリ(エチレン−コ−テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)が挙げられ、これらは全て上述の既知の重合方法によって調製しても良い。多くの有用なフルオロポリマー材料は、例えば、Dyneon LLCからHOSTAFLONTMX6810およびX6820の商品名の下に、アラバマ州ディケーターのDaikin America,Inc.からNEOFLONTMEP−541、EP−521、およびEP−610の商品名の下に、ノースカロライナ州シャーロットのAsahi Glass Co.からAFLONTMCOP C55A、C55AX、C88Aの商品名の下に、そしてE.I.Du Pont de Nemours and CompanyからTEFZELTM230および290の商品名の下に市販もされる。
【0027】
本発明の実施において有用なフッ素化された材料の第3の種類は、広義に、フルオロポリマーとポリオレフィンの配合物を含む。特定の例としては、PVDFとポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の配合物、およびPVDFと高い酢酸ビニル官能性を付与されたポリオレフィンの配合物が挙げられる。
【0028】
本発明の組成物は、1種以上の有機オニウム塩触媒をさらに含んでも良い。有機オニウムは、ルイス塩基を適切なアルキル化剤(例えば、ハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アシル)と反応させることで形成できるルイス塩基共役酸(例えば、ホスフィン、アミンおよびエーテル)である。反応の結果、ルイス塩基上の電子供与性原子の原子価、および有機オニウム化合物上の正電荷の拡大がある。本発明で有用な多くの有機オニウム化合物が、少なくとも1個のヘテロ原子(すなわち有機または無機部分に結合するN、P、およびOなどの非炭素原子)を含有する。本発明で特に有用な四級有機オニウム化合物の1種類は、比較的正のおよび比較的負のイオンを広義に含み、そこでは亜リン酸、ヒ素、アンチモン、または窒素が概して正イオンの中心原子を構成し、負イオンが有機または無機アニオン(例えば、ハロゲン化物、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩、ホスホネート、水酸化物、アルコキシド、フェノキシド、ビスフェノキシドなど)であっても良い。ほとんどの無機塩基の存在下で比較的安定性していることから、ホスホニウムが本発明で使用するのに最も好ましい有機オニウムである。スルホニウムはほとんどの有機および無機塩基の存在下で化学的に安定でなく、本発明では有用とみなされない。
【0029】
有用な有機オニウム化合物の多くが知られており、文献中で述べられている。例えば、米国特許第4,233,421号(Worm)、第4,912,171号(Grootaertら)、第5,086,123号(Guentherら)、および第5,262,490号(Kolbら)を参照されたい。米国特許第5,591,804号(Coggioら)で述べられたようなフッ素化されたオニウム、および同一分子中に2個以上のオニウム基を含む多官能性オニウム(例えば、ビスホスホニウム)を用いても良い。代表例としては、個々に列挙した以下の化合物およびそれらの混合物が挙げられるが、これらのものに限定されるものではない。
塩化トリフェニルベンジルホスホニウム
塩化トリブチルアリルホスホニウム
塩化トリブチルベンジルアンモニウム
臭化テトラブチルアンモニウム
臭化テトラブチルホスホニウム
塩化8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ユネセニウム
塩化ベンジルトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム
塩化ベンジル(ジエチルアミノ)ホスホニウム
塩化ベンジル(ジエチルアミノ)ジフェニルホスホニウム
【0030】
本組成物へのオニウム触媒の添加は、場合によってはフルオロポリマーおよび/または別の基材に対するつなぎ層組成物の接着を助け、または増大する。
【0031】
本発明の結合組成物は、実質的にフッ素化されていないポリマーを溶解するのに十分な熱と、均一な混合物を製造する付随する混合を使用して、混合容器内で組成物の構成材料を配合して製造しても良い。製造を容易にするために、押出し機内で配合操作を実施しても良い。
【0032】
本発明のラミネート構造体は、同時押出し工程によって製造しても良く、そこではラミネート構造体の種々の層が熱および圧力でまとめられて、ラミネートの種々の構成要素間に適切な接着が得られるかもしれない。しかし、得られる接着力が低すぎる場合は、得られる多層組成物を、例えば、追加的熱および/または圧力によってさらに処理して、層間接着力を増大させることが望ましい。より長時間の熱への暴露は、同時押出し工程から出てくる組成物の冷却を単に遅らせることで実施できる。追加的加熱が必要な場合、構成要素の常態での加工に必要なよりも高い温度でラミネートを同時押出しして達成しても良い。代案としては、完成品を長期間高温に保持しても良く、あるいはオーブンまたは加熱された液体浴などの製品温度を上げる別の手段に完成品を入れても良い。ラミネートに追加的な熱および圧力をかけるさらに別の方法は、それを十分な温度および圧力に保持される1つ以上の加熱圧延ロールに通過させて、所望の層間結合強度を得ることである。これらの方法の組み合わせを使用しても良い。
【0033】
本発明のラミネート構造体は、熱と圧力をかけて結合組成物のフィルムをフルオロポリマー材料にラミネートし、引き続き第2のステップで熱と圧力をかけて実質的にフルオロポリマーでない材料を結合組成物にラミネートして調製しても良い。代案としては、ラミネート構造体は、フルオロポリマーフィルム、結合組成物フィルム、および実質的にフルオロポリマーでないフィルムをこの順で含むフィルムの積層体を組み立てて、熱と圧力をかけてフィルム積層体から圧密化ラミネートを形成することで、単一操作によって調製できる。
【0034】
本発明のラミネート構造体を形成する第3の方法は、結合組成物を溶液コーティングとしてフルオロポリマー材料に塗布して溶剤を気化させ、実質的にフッ素化されていないポリマー材料をフルオロポリマー表面の結合組成物塗布部分に塗布し、引き続いて圧密化ラミネート生じるのに十分な熱と圧力をラミネートにかけて、ラミネート構造物を形成することである。
【0035】
本発明の方法は、改善された層間接着を有する多層組成物を提供する。本発明の方法および組成物は、例えば、燃料ラインホースとして自動車で使用するのに適したチューブおよびホースなどの製品、および耐薬品性または遮断性が重要であるボトルおよび落書き防止フィルムなどのフィルムおよび吹込成形品を製造するのに特に有用である。本発明の2層組成物は、3つ以上の層を有する組成物を調製するのにも有用である。例えば、フルオロポリマーと、酸無水物変性ポリオレフィンと、未変性ポリオレフィンの3層組成物が調製でき、燃料タンク構造物中で有用たり得る。
【0036】
本発明の多層組成物の透明な実施態様は、一般的には再帰反射性シート製品の構造物で、特に、化学薬品、溶剤、汚れに対する抵抗性、低下した透湿性、または激しい屈曲を受ける可撓性シートで良好な層間接着が必要な場合、特定の有用性がある。
【0037】
本発明の組成物は、組成物の片面に再帰反射性要素を形成することで、あるいは代案としては透明接着剤また直接ラミネーションの手段によってシートに再帰反射性ベースシートを付着することで、再帰反射性にもできる。再帰反射性ベースシートは、例えば、透明微小球の単一層と、多層組成物から単一層の反対側に配置された反射手段とを含む、キューブコーナ再帰反射性要素を持つ部分を含んでも良く、あるいは微小球ベースの再帰反射性構造物を含んでも良い。ベース層が多層組成物の非フルオロポリマー層上に配置されることが好ましい。本発明の実施態様は、本発明に従った多層組成物によってカバー層が提供される米国特許第3,190,178号(McKenzie)で開示されるように、カプセル型再帰反射性シート製品を含む。
【0038】
本発明の再帰反射性製品は、硬質または可撓性の形態で製造しても良い。本発明の多層組成物は、隔壁層として使用しても良い。本発明の実施態様としては、可塑剤抵抗性の隔壁層が本発明に従った多層組成物を含む、米国特許第5,069,964号(Tolliver)に従った製品が挙げられる。本発明の多層組成物は、可撓性再帰反射性シート製品の構造で特定の有用性を見い出すことができる。本発明の好ましい実施態様としては、PCT公報第WO95/11464号または第WO95/11943号に従った再帰反射性製品が挙げられ、PCT公報第WO95/11464号で述べられる可撓性のオーバーレイフィルム、またはPCT公報第WO95/11943号の可撓性の本体層は、本発明に従った多層組成物で構成される。
【実施例】
【0039】
用語集
EVAL 105は、イリノイ州ライルのEval Company of Am.から入手できるエチレンビニルアルコール共重合体の商品名である。
ELVAX 250、ELVAX 450は、デラウェア州ウィルミントンのE.I.DuPont de Nemours and Co.から市販されるエチレン/酢酸ビニル共重合体の商品名である。
PRIMACOR 3150は、ミシガン州ミッドランドのDow Chemical Companyから市販されるエチレン/アクリル酸共重合体の商品名である。
EMAC 2220は、テキサス州ヒューストンのChevron Chemical Co.から市販されるエチレン/メチルアクリレート共重合体の商品名である。
BYNELL 3101は、エチレン/酢酸ビニル共重合体の商品名で、上述のグラフトされた有機酸基を有し、E.I.DuPont de Nemoursから市販される。
AT1841は、カナダ国エドモントンのAT Polymerから市販されるエチレン/酢酸ビニル共重合体である。
PUは、ニューハンプシャー州シーブルックのMorton International,Inc.からMORTHANETML424.167(MI=9.8)の名称の下に市販されるポリウレタンポリマーである。
THV200は、ミネソタ州セントポールのDyneon LLCから市販される、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレンと、フッ化ビニリデンとの三元共重合体である。
THV500は、Dyneon LLCから市販される、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレンと、フッ化ビニリデンとの三元共重合体である。
18−クラウン−6は、ウィスコンシン州ミルウォーキーのAldrich Chemicalから入手できるクラウンエーテルである。
LLDPEは、ミシガン州ミッドランドのDow Chemical Companyから入手できる直鎖で低密度のポリエチレンフィルムである。
Bu4PBrは、臭化テトラブチルホスホニウムである。
NaOSi(CH33は、ナトリウムトリメチルシラノエートである。
KPは、カリウムフタルイミドである。
KOHは、水酸化カリウムである。
LiOHは、水酸化リチウムである。
NaOHは、水酸化ナトリウムである。
KOCH3は、カリウムメトキシドである。
NaOPhは、ナトリウムフェノキシドである。
塩酸チラミン、4−(2−アミノエチル)−フェノールは、Aldrich Chemicalから入手できる。
【0040】
実施例1〜27
下記の第1表に記載される結合組成物は、200℃で混合速度60〜70rpmで10分間操作されるローラーブレードを装着した密閉式ボールミキサー内で、実質的にフッ素化されていないポリマー、塩基、およびクラウンエーテルを配合して調製した。配合された結合組成物を引き続いて、200℃で24KPa(3.5psi)の圧力でおよそ30秒間にわたり操作される加熱プレス内で厚さ0.2cmの平らなフィルムに成形した。サイズ2.54cm×7.62cm(1インチ×3インチ)で厚さ0.2cmのTHV200およびTHV500、サイズ1.25cm×5.08cm(0.5インチ×2インチ)の結合組成物フィルム、およびLLDPEフィルム(2.54cm×7.62cm(1インチ×3インチ)および厚さ0.32cm)のフルオロポリマーフィルムからなるラミネート構造体を組み立てて複合材を調製した。ラミネートをプレスに入れて複合材を製造するのに先立って、2.54cm×7.62cm(1インチ×3インチ)の一片のシリコンライナー(#7520、ミネソタ州セントポールのMinnesota Mining and Manufacturing Companyから入手できる)をラミネート構造体の短軸に沿って、THV層と実質的にフルオロポリマーでない層の間に1.25cm(0.5インチ)の深さに挿入した。200℃で圧力24KPa(3.5psi)で2分間操作されるWabash Hydraulic Press Co.加熱プラテンプレスを使用して、3個の同一複合材を「熱圧プレス」内で同時に調製した。複合材をプレスから取り出して「冷圧プレス」内で室温に冷却し、シリコンライナーを除去して、T剥離試験に適したTHVおよび実質的にフルオロポリマーでない層の「タブ」を有する圧密化ラミネートのサンプルを提供した。
【0041】
フルオロポリマーと実質的にフルオロポリマーでない層の間の接着は、一般に「T剥離」試験として知られるASTM D−1876で概説された手順に従って試験した。ラミネート結合の「T剥離」強度は、クロスヘッド速度100mm/分で操作される、テキサス州プレーノーのInstron Corp.から市販されるInstronTM1125型試験器を使用して測定した。剥離試験中に測定された平均荷重として計算された剥離強度を下記の第1表に示す。
【0042】
比較例1および2は、結合組成物の処方からクラウンエーテルを除外したこと以外は、実質的に上述の実施例1〜27の手順で述べたようにして調製し試験した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)溶融加工性で実質的にフッ素化されていないポリマーと、
b)塩基およびクラウンエーテルを含む触媒系と
の混合物を含む結合組成物。
【請求項2】
a)フルオロポリマーを含む第1の層、および
b)第1の層に結合した、請求項1に記載の組成物を含む第2の層
を含む製品。
【請求項3】
溶融加工性で実質的にフッ素化されていないポリマーが、官能性を付与されたポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリウレタン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物または請求項2に記載の製品。
【請求項4】
塩基が、金属水酸化物、金属アリールオキシド、金属アルコキシド、有機塩基、またはそれらの混合物である、請求項1に記載の組成物または請求項2に記載の製品。
【請求項5】
クラウンエーテルが、18−クラウン−6エーテルまたは15−クラウン−5エーテルである、請求項1に記載の組成物または請求項2に記載の製品。
【請求項6】
官能性を付与されたポリオレフィンが、イミド、アミド、オキシカルボニル、無水物、アセテート、カルボニル、および水酸基からなる群より選択される1つ以上の官能基を含む、請求項1に記載の組成物または請求項2に記載の製品。
【請求項7】
官能基がポリマー主鎖からのペンダント基である、請求項6に記載の組成物または製品。
【請求項8】
金属水酸化物塩基が、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項4に記載の組成物または製品。
【請求項9】
金属アルコキシド塩基が、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項4に記載の組成物または製品。
【請求項10】
有機塩基が、カリウムフタルイミドおよびナトリウムトリメチルシラノエートからなる群より選択される、請求項4に記載の組成物または製品。
【請求項11】
有機オニウムをさらに含む、請求項1に記載の組成物または請求項2に記載の製品。
【請求項12】
溶融加工性で実質的にフッ素化されていないポリマーが、官能性を付与されたポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され、
塩基が、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムフタルイミド、ナトリウムトリメチルシラノエート、およびそれらの混合物からなる群より選択され、そして
クラウンエーテルが、18−クラウン−6エーテルである、
請求項1に記載の組成物または請求項2に記載の製品。
【請求項13】
第2の層に結合した第3の層をさらに含み、その際、第3の層がポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、またはそれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の製品。
【請求項14】
前記製品が、ホース、容器、またはフィルムである、請求項13に記載の製品。
【請求項15】
フルオロポリマーが、フッ化ビニリデンのホモポリマーであるかもしくは、フッ化ビニリデンと、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、およびヘキサフルオロプロピレンから選択される1種以上のモノマーとから誘導される共重合体または三元共重合体であり、
実質的にフッ素化されていないポリマーが、官能性ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され、
塩基が、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、カリウムメトキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムフタルイミド、ナトリウムトリメチルシラノエート、およびそれらの混合物からなる群より選択され、
クラウンエーテルが、18−クラウン−6エーテルであり、そして
第3の層がポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、またはそれらの組み合わせを含む、
請求項2に記載の製品。
【請求項16】
a)請求項1の結合組成物を提供するステップと、
b)フルオロポリマーを提供するステップと、
c)請求項1に記載の結合組成物をフルオロポリマーの表面に適用するステップと、
d)実質的にフッ素化されていないポリマーを含む材料の第1の層と、フルオロポリマー含む材料の第2の層とをラミネートすることによって多層製品を形成するとともに、その際、結合層を第1および第2の材料の間に介在させてそれらと密着するステップと、
を含む、請求項2に記載の製品を製造する方法。
【請求項17】
第1および第2の層をラミネートする手段が同時押出しである、請求項16に記載の方法。

【公開番号】特開2011−102397(P2011−102397A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−5784(P2011−5784)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【分割の表示】特願2001−547205(P2001−547205)の分割
【原出願日】平成12年4月21日(2000.4.21)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】