説明

フレキシブルな吸収シートの製造方法

【課題】酸性の吸水性樹脂、塩基性の吸水性樹脂および可塑剤を含有するフレキシブルな吸収シート材料および該シート材料の製造方法を提供する。
【解決手段】本願発明によるシートは酸性および塩基性の吸水性樹脂および可塑剤を約60〜100質量%含有する。該吸収シートは予期されなかった可とう性および構造的インテグリティを有し、その一方で優れた吸水性および保水性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高吸収性ポリマーおよび可塑剤を約60〜100%含有する吸収シート材料、その製造方法、および該吸収シート材料を有する吸収製品に関する。該吸収シートは少なくとも1種の中和されていない酸性吸水性樹脂、少なくとも1種の中和されていない塩基性吸水性樹脂および可塑剤成分を含有する。吸収シート材料は吸収製品の容易な製造のために優れた可とう性および構造的インテグリティを有する。該吸収シート材料および該シートを有する製品は、大量の水性媒体を迅速に吸収し、かつ吸収した媒体の保持が優れている。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂はサニタリー用品、衛生用品、ふき取りクロス、保水剤、脱水剤、スラッジ凝集剤、使い捨てタオルおよびバスマット、使い捨てドアマット、増粘剤、ペット用の使い捨てごみマット、結露防止剤、および種々の化学薬品のための放出制御剤において広く使用されている。吸水性樹脂は置換された、および非置換の天然および合成ポリマー、たとえばデンプンアクリロニトリルグラフトポリマーの加水分解物、カルボキシメチルセルロース、架橋したポリアクリレート、スルホン化されたポリスチレン、加水分解されたポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドンおよびポリアクリロニトリルを含む種々の化学的形状で得られる。
【0003】
このような吸水性樹脂は「高吸収性ポリマー」またはSAPとよばれ、かつ一般にわずかに架橋した親水性ポリマーである。SAPは一般的にGoldman等のUS特許第5,669,894号および同第5,559,335号で議論されており、これらの文献を引用することによってここに取り入れる。SAPはその化学的同一性において異なりうるが、しかし全てのSAPは、中圧下でも、その自重の数倍に相応する液体量を吸収し、かつ保持することができる。たとえばSAPはその自重の百倍またはそれ以上の蒸留水を吸収することができる。封圧下で水性の液体を吸収する能力は、おむつのような衛生用品において使用されるSAPのための重要な要求条件である。
【0004】
ここで、および以下で使用される「SAP粒子」の用語は、乾燥状態の高吸収性ポリマー、つまり水を含有していないか、または粒子の重さより少ない量の水を含有している粒子を意味する。「SAPゲル」または「SAPヒドロゲル」の用語は、水和状態の高吸収性ポリマー、つまり水中で少なくともその自重、および一般に水中でその自重の数倍を吸収した粒子を意味する。
【0005】
使い捨ておむつ、大人用失禁パッドおよびパンツおよび生理用品、たとえば生理用ナプキンとして使用するための高吸収体、SAP含有製品の開発は、重要な商業上の関心の対象である。このような吸収製品の大いに所望される特徴は薄さである。たとえば薄いおむつは着用してもかさばらず、衣服の下でより良好にフィットし、かつ目立ちにくい。製品の包装もまたよりコンパクトであり、このことにより消費者がおむつをより容易に運搬および貯蔵することができる。包装がコンパクトであることにより製造業者および配達業者にとって配達コストが低減し、おむつのユニットあたりに必要とされる貯蔵空間も少なくなる。
【0006】
種々のパラメータがSAP粒子および吸収コアの、大量の水性の液体を迅速に吸収し、かつ吸収した液体を種々のストレス下に維持する性能に影響を与える。これらのパラメータの最適化により、おむつのコア中に存在するセルロース繊維またはフラフの量を低減することができ、このことによりおむつの全体のかさが低減される。従ってSAP粒子およびコアは吸収容量、吸収速度、アクィジション時間、ゲル強度および浸透性を最適化し、かつコアの厚さを低減するように設計される。
【0007】
本発明は、酸性の吸水性樹脂、塩基性の吸水性樹脂および可塑剤から製造された吸収シート材料が、加熱圧縮後に、優れた構造的インテグリティのフレキシブルなシートを生じるという意外な、かつ予期しない発見に関する。該シートは優れた液体吸収性および保持性を有し、かつ吸収シート材料中のフラフの排除またはその量の低減を可能にする。
【0008】
吸収製品コアは一般に、比較的少量の(たとえば約50質量%より少ない)SAP粒子を複数の理由で含有している。第一に、目下吸収製品中で使用されているSAPは、SAP粒子が迅速に体液を、特に「噴出する」状況において吸収することが可能になるような吸収速度を有していない。このことは、排出された液体がヒドロゲル形成吸収ポリマーにより吸収されるまで保持するための一時的な貯蔵部として製品の吸収コア中でSAPと混合された繊維、一般に木材パルプ繊維を必要とする。
【0009】
ほぼ、または完全にセルロース繊維を含有していないおむつ用コアのためのシート材料を製造するために、連続的なSAP粒子の帯域が必要である。しかしSAP粒子の性質により、SAP中で高い吸収容量および高いゲル強度のような特性を組み合わせることは不可能であった。というのは、1つの特性を改善することが別の特性に不利な影響を与えるからである。
【0010】
特にSAPは一般にゲルブロッキングを示す。「ゲルブロッキング」は、SAP粒子が湿潤し、かつSAP粒子が膨潤して吸収構造の液体がその他の領域へ移行することを遅延させる場合に生じる。吸収部材のこれらのその他の領域は、緩慢な拡散プロセスにより湿潤する。ゲルブロッキングは特に、SAP粒子が適切なゲル強度を有しておらず、かつ粒子が吸収された液体により膨潤したときにストレス下で変形もしくは拡散する場合に深刻な問題となりうる。実地の条件では吸収製品による液体のアクィジションは、液体が排出される、特に噴出する状況における速度よりもはるかに遅い。吸収製品からの漏れおよび/または該製品の変形は、吸収製品中のSAP粒子が十分に飽和されるよりもはるかに前か、または液体が「ブロック」粒子を通過して吸収コアの残りの部分へ拡散もしくは吸い上げることができる前に生じうる。
【0011】
ゲルブロッキング現象はSAP粒子を分散させ、かつSAP粒子を相互に分離するための繊維状材料の使用を必要とする。繊維状マトリックスは液体が最初の液体衝突箇所から離れたコアの領域に配置されたSAPへ到達することを可能にする毛細管構造も提供する。しかし比較的低量のSAPを繊維状マトリックスへ分散させてゲルブロッキングを最小化もしくは回避することにより、吸収コアの全液体貯蔵容量が低減される。総じて低量のSAPを使用することによりSAPの利点、つまり与えられた体積あたり、大量の体液を吸収し、かつ保持する能力が制限される。
【0012】
比較的大量のSAP粒子を含有する吸収シート材料に関してはその他のSAP特性もまた重要である。体液の存在下でSAPが膨潤したときに形成されるヒドロゲル層の開放度または多孔度は、特にSAPが吸収コア中に大量に存在する場合に、SAPが液体を集め、かつ輸送する能力を決定する助けとなることが判明した。多孔度は固体材料により占有されていない粒子の画分体積を意味する。完全にSAPから形成されているヒドロゲル層に関して、多孔度とはヒドロゲルにより占有されていない層の画分体積(fractional volume)を意味する。ヒドロゲルを含有する吸収構造に関して、ならびにその他の成分に関して、多孔度はヒドロゲルまたはその他の固体成分(たとえばセルロース繊維)により占有されていない画分体積(空隙率ともよばれる)である。
【0013】
US特許第4,076,673号および同第4,861,539号は、線状の吸収性ポリマーの溶液を押出成形し、かつ引き続き該ポリマーを架橋させることにより製造される高吸収性フィルムを有する吸収製品を開示している。得られるSAPフィルムは著量の液体を吸収することができるが、しかし該フィルムがほぼ無孔質であるために、つまり内部のキャピラリーチャネルを有していないために、限定的な液体輸送特性を有する。従ってこのようなSAPフィルムは特にゲルブロッキングの傾向がある。さらに、架橋剤、たとえばグリセロールのヒドロキシ基と、SAPのカルボキシ基との間での架橋反応は比較的遅いので、つまりグリセロール処理した線状のポリマーは一般に200℃で50分間硬化され、結合された吸収材粒子の比較的脆いシートが生じる。これらの脆いシートは、特に最終的に所望される吸収製品の製造において取り扱いが難しい。
【0014】
本発明による吸収シートはSAPを高い割合で含有する吸収シートを有するおむつ用コアに関する問題を克服する。本発明によるシート材料はフレキシブルであり、かつシート製造、取り扱い、およびおむつ用コアの製造の容易性のために高い構造的インテグリティを有する。本発明によるシート材料は中和されていない酸性の吸水性樹脂、中和されていない塩基性の吸収性樹脂および可塑剤の混合物から製造され、これは加熱圧縮処理の後で、吸収製品中で使用するための改善された吸収シート材料を生じる。酸性および塩基性の吸水性樹脂は、物理的なブレンドとして、つまり酸性の樹脂粒子と塩基性の樹脂粒子との混合床として存在していてもよいし、あるいは酸性および塩基性の樹脂は単一の多成分高吸収性樹脂粒子中に存在していてもよい。
【0015】
優れた液体吸収性および保持特性を有する吸収シート材料を提供することに加えて、該シート材料は十分にフレキシブルであり、かつ連続的な製造および経済的な輸送および貯蔵のためにロール状に形成するために十分な構造的インテグリティを有する。シート材料のロールは吸収製品、特にフラフを含有しない吸収製品の製造を促進する。
【0016】
その他の研究者らは、粒状のSAP、たとえばポリアクリル酸ナトリウムを高い割合で含有するシート材料の連続的なロールを製造しようと試みた。高吸収性ポリマーにより含浸された繊維状の支持体の例は、US特許第5,614,269号、同第5,980,996号および同第5,756,159号に記載されており、この場合、繊維状の支持体をモノマーにより含浸し、引き続きUV線によりインサイチューで重合して繊維状支持体と接触しているSAPを形成する。
【0017】
US特許第5,607,550号および同第5,997,690号を含むその他の特許は、湿潤製紙法によりSAP粒子を約50〜60%含有する繊維状の支持体の連続的な製造を開示している。湿潤法によれば繊維および高吸収性粒子を大量の水またはSAP粒子を膨潤させることができるその他の液状媒体と混合し、かつ透水性の支持部材、一般にフーディーニー(Fourdinier)ワイヤ上に排出し、ここで水の大部分を除去して繊維およびSAP粒子の湿潤材料が残留する。湿潤マットを前記の支持部材から移動させ、かつ熱および圧力下で硬化させてSAP粒子が全体的に分散した繊維状の支持体を形成する。
【0018】
比較的高い割合のSAP粒子を含有する吸収シート材料を連続的に製造する際に生じる困難な問題は、シートの構造的インテグリティを製造中および製造後の両方において達成すること、およびシートからの高吸収性粒子の顕著な損失(シェイクアウト(shakeout))を克服することを含む。その他の顕著な問題は、吸収シートの不十分な可とう性であり、この場合、「硬質」の脆いシートを破損させることなく取り扱うことが困難であり、かつ貯蔵、輸送および吸収コアの製造の促進のためのロールに形成することが不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】US特許第5,669,894号
【特許文献2】US特許第5,559,335号
【特許文献3】US特許第4,076,673号
【特許文献4】US特許第4,861,539号
【特許文献5】US特許第5,614,269号
【特許文献6】US特許第5,980,996号
【特許文献7】US特許第5,756,159号
【特許文献8】US特許第5,607,550号
【特許文献9】US特許第5,997,690号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従って本願発明の課題は、新規の高吸水性ポリマーシートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明によれば、意外なことに中和されていない酸性の吸水性樹脂および中和されていない塩基性の吸水性樹脂の粒子(つまりそれぞれ0%〜約50%が中和されている)および可塑剤から形成される連続的なシート材料を製造することができ、酸性および塩基性の吸水性樹脂および可塑剤を約60〜100質量%含有する吸水性シート材料が得られることが判明した。本発明のシート材料を形成するために使用されるSAPは、分離した酸性の樹脂粒子および塩基性の樹脂粒子であってもよいし、または酸性および塩基性の樹脂の両方を1つの粒子中に含有する多成分の粒子であってもよい。シート材料は優れた液体吸収性および保持特性に加えて、新規の、かつ予期されない可とう性および製造中および製造後の構造的インテグリティを有する。
【0022】
簡潔にいえば本発明は中和されていない酸性の吸水性樹脂、中和されていない塩基性の吸水性樹脂および可塑剤を含有する混合物から製造される吸収シート材料に関する。該吸収シート材料は、有利には連続的に製造することができ、酸性および塩基性の吸水性樹脂および可塑剤を約60〜100質量%含有するシートが得られる。中和されていない酸性および塩基性の吸水性樹脂は、本発明によるシート材料中で分離した酸性および塩基性の樹脂粒子として、または酸性および塩基性の樹脂の両方を1つの粒子中に含有する多成分粒子として存在していてよい。
【0023】
本発明による吸収シート材料は、新規の、および予期されなかった可とう性および構造的インテグリティを有し、製造中もしくは製造後にシートからの粒子のシェイクアウトまたは損失はほとんどないか、またはない。該シートはロール状に形成するために十分な可とう性を有し、かつ任意の所望の形状の吸収コアへ組み込むことができる。
【0024】
本発明のシート材料は電解質を含有する水性の液体に関して特に顕著な吸水性および保水性を有し、かつこのことによって塩被毒作用を克服する。中和されていない酸性の吸水性樹脂および中和されていない塩基性の吸水性樹脂を含有するSAPにより塩被毒作用および該作用を克服する方法は、US特許第6,072,101号、同第6,159,591号、同第6,222,091号、同第6,235,965号および同第6,342,298号において議論されており、それぞれをここで引用することにより取り入れる。さらに吸収シート材料は大量の水性媒体を迅速に吸収することができ、シート材料またはシート材料を含有する吸収コアへの、および該シートを通過する、良好な液体透過性および伝導性を有し、ゲルブロッキング抵抗性である。従って該シート材料は、シート材料から形成されるヒドロゲルが水和の際に、適用されるストレスまたは圧力の下での変形に抵抗するような高いゲル強度を有する。
【0025】
本発明によるシート材料は多数の実地での適用において、および特に吸収製品の吸収コア中で有用である。本発明の重要な特徴によれば、吸収動力学およびゲル強度を含む吸収シートの可とう性、構造的インテグリティおよび吸収性および保持性により、セルロース繊維を含有しない吸収コアの製造が可能になる。
【0026】
従って本発明は、(a)少なくとも1種の中和されていない酸性の吸水性樹脂、たとえばポリ(アクリル酸)、および少なくとも1種の中和されていない塩基性の吸水性樹脂、たとえばポリ(ビニル−アミン)またはポリエチレンイミンを含有するSAP成分、および(b)可塑剤成分、たとえばプロピレングリコールまたはグリセロール、から製造される吸収シート材料に関する。SAP成分は(a)US特許第6,072,101号、同第6,159,591号、同第6,222,091号、同第6,235,965号および同第6,342,298号(それぞれここで引用することにより取り入れる)に開示されているような多成分高吸収性粒子、(b)(i)多成分高吸収性粒子および(ii)中和されていない酸性の吸水性樹脂、中和されていない塩基性の吸水性樹脂、または両方、の混合物、または(c)(i)中和されていない酸性の吸水性樹脂および(ii)中和されていない塩基性の吸水性樹脂の粒子の混合物であってよい。吸収シートはSAP成分の粒子、可塑剤成分および任意の成分を混合し、次いで得られる混合物をフレキシブルなシートを形成するために十分な熱および圧力により十分な時間で処理することにより製造される。高い圧力の場合、付加的な加熱は不要である。
【0027】
加熱圧縮または高い圧力での圧縮の熱および圧力は、吸収製品の製造における取り扱いおよび使用のために十分な構造的インテグリティ有するシートを形成するために十分である。熱および圧力または圧力単独、および処理の時間は、酸性および塩基性の樹脂の官能基および可塑剤に存在する官能基の間で実質的に表面架橋反応が起こらないような程度である、つまり可塑剤は加熱圧縮工程において消費されない。
【0028】
従って吸収シート材料は、連続的に製造し、かつロールへと形成するために十分な可とう性および構造的インテグリティを有する。吸収性および物理的特性の組合せにより本発明による吸収シートからフラフを含有しないおむつ用コアの製造が可能になる。
【0029】
従って本発明の1つの実施態様は、高い吸収速度を有し、良好な透過性およびゲル強度を有し、塩被毒作用を克服し、かつ電解質を含有する液体、たとえば食塩水、血液、尿および月経血を吸収し、かつ保持するために改善された能力を有するSAP粒子含有の吸収シート材料を提供することである。
【0030】
本発明のもう1つの実施態様は、(i)少なくとも1種の塩基性の吸水性樹脂の少なくとも1つのミクロドメインと接触しているか、または近接している、少なくとも1種の酸性の吸水性樹脂の少なくとも1つの分離したミクロドメインを有する多成分SAP粒子からなるSAP成分、および(ii)可塑剤成分、を含有する吸収シート材料を提供することである。
【0031】
本発明のもう1つの実施態様は、SAP成分が、(i)多成分SAP粒子および(ii)中和されていない酸性の吸水性樹脂、中和されていない塩基性の吸水性樹脂およびこれらの混合物からなる群から選択される第二の吸水性樹脂の粒子を含有する混合物からなる吸収シート材料を提供することである。この実施態様のSAP成分は多成分SAP粒子を約10〜約90質量%および第二の吸水性樹脂の粒子を約10〜約90質量%含有する。
【0032】
本発明のもう1つの実施態様は、SAP材料が(i)中和されていない酸性の吸水性樹脂の粒子および(ii)中和されていない塩基性の吸水性樹脂の粒子、を含有する混合物からなる吸収シート材料を提供することである。該混合物は酸性の樹脂粒子を約10〜約90質量%および塩基性の樹脂粒子を約10〜約90質量%含有する。
【0033】
本発明のもう1つの実施態様は、本発明の吸収シートを1以上含有する吸収コアを有する吸収製品、たとえばおむつおよび生理用品を提供することである。該吸収製品はコアを有し、その際、該コアは吸収シートを50質量%〜100質量%まで含有する。
【0034】
本発明のこれらの、およびその他の実施態様および利点は有利な実施態様の以下の詳細な記載から明らかになる。
【0035】
図面の簡単な記載
図1は、第二の樹脂の連続層中に分散した第一の樹脂のミクロドメインを含有する吸水性粒子の略図であり;
図2は、粒子全体に第一の樹脂のミクロドメインおよび第二の樹脂のミクロドメインを有する吸水性粒子の略図であり;
図3および4は、SAPとして本発明の吸収シートを100質量%含有するコアを有する吸収製品の断面図であり;
図5および6は、それぞれの本発明のシート材料に対する第二、第三および第四の衝突(insult)に関する再湿潤速度(g)およびアクィジション速度(ml/sec)対ゲル床透過率(GBP)をプロットしたものであり;かつ
図7は、コア密度(g/cc)および剛性(mNm)対プロピレングリコール濃度をプロットしたものである。
【0036】
有利な実施態様の詳細な記載
本発明によれば、(a)SAP成分および(b)可塑剤成分、および所望の任意の成分を含有する混合物から、有利には連続的に吸収シート材料を製造する。SAP成分は中和されていない酸性の吸水性樹脂および中和されていない塩基性の吸水性樹脂を含有する。酸性および塩基性の樹脂は、それぞれの樹脂の分離した粒子として、またはそれぞれの粒子が酸性の吸水性樹脂の少なくとも1つのミクロドメインおよび塩基性の吸水性樹脂の少なくとも1つのミクロドメインを有する多成分SAP粒子としてシート材料に組み込むことができる。可塑剤成分は酸性および塩基性の吸水性樹脂の一方または両方を可塑化することができる材料である。有利には可塑剤成分は吸収シートを製造するために使用される加熱圧縮条件下で非揮発性である。
【0037】
本発明による吸収シートは、SAPおよび可塑剤成分を約60〜100質量%、および任意の非吸収性繊維または充填剤、通常のSAPおよびその他の任意の成分を0〜約40質量%含有するシートに関して予期されない可とう性および構造的インテグリティを有する。従って該吸収シートはシートからのSAP粒子のシェイクアウトはほとんど生じないか、または生じない。従って吸収シートはフラフを含有していない吸収製品のコアへ組み込むことができる。吸収シート材料は、たとえばおむつのコア、生理用品およびその他の衛生用品、吸収パッド、ふき取りクロスおよび個人用および工業用の使用のためのその他の吸収製品として有用である。
【0038】
SAP成分
本発明は、中和されていない酸性の吸水性樹脂と、中和されていない塩基性の吸水性樹脂とを含有するSAP成分を含有する吸収シートに関する。ここで使用される「中和されていない」という用語は、0〜50%中和された吸水性樹脂として定義されている。本発明の重要な特徴によれば、SAP成分のSAP粒子は約10〜約810μmの粒径および約400μmより小さい平均粒径を有する。
【0039】
1実施態様ではSAP成分は、塩基性の吸水性樹脂の少なくとも1つのミクロドメインに近接しており、かつ有利には接触している、酸性の吸水性樹脂の少なくとも1つのミクロドメインを有する多成分SAP粒子を含有する。それぞれの粒子は酸性樹脂のミクロドメインを1つ以上および塩基性樹脂のミクロドメインを1つ以上有する。ミクロドメインはそれぞれの粒子に不均一に、または均一に分散していてよい。多成分SAP粒子は約10〜約810μmの粒径分布を有し、かつ約400μmより小さい質量平均粒径を有する。
【0040】
それぞれの多成分SAP粒子は、少なくとも1種の酸性の吸水性樹脂および少なくとも1種の塩基性の吸水性樹脂を含有する。1実施態様では、SAP粒子は実質的に酸性樹脂と塩基性樹脂とからなり、かつ酸性および/または塩基性の樹脂のミクロドメインを有する。もう1つの実施態様では、酸性および塩基性の樹脂のミクロドメインはUS特許第6,159,591号に定義されているような吸収性マトリクス樹脂中に分散している。
【0041】
多成分SAP粒子は特定の構造または形状に限定されていない。しかし実質的にそれぞれの多成分SAP粒子が、相互に近接している酸性の吸水性樹脂の少なくとも1つのミクロドメインおよび塩基性の吸水性樹脂の少なくとも1つのミクロドメインを有していることが重要である。改善された吸水性および保水性、および多成分SAP粒子を通過し、かつ該粒子の間での改善された液体透過性は、酸性樹脂のミクロドメインおよび塩基性樹脂のミクロドメインが粒子中で近接している場合に観察される。有利な実施態様では、酸性および塩基性の樹脂のミクロドメインは接触している。
【0042】
1実施態様では、本発明の多成分SAP粒子は塩基性樹脂の連続相中に分散した酸性樹脂の1つ以上のミクロドメインとしてであっても、連続的な酸性樹脂中に分散した塩基性樹脂の1つ以上のミクロドメインとしてでもよい。これらの理想化された多成分SAP粒子は、第二の樹脂12の連続相中に分散した樹脂の分離したミクロドメイン14を有するSAP粒子10を示す図1に記載されている。ミクロドメイン14が酸性樹脂を含有している場合、連続相12は塩基性樹脂を含有している。反対に、ミクロドメイン14が塩基性樹脂を含有している場合、連続相12は酸性樹脂を含有している。
【0043】
もう1つの実施態様ではSAP粒子は連続相を有さずにそれぞれの粒子全体に分散した酸性樹脂のミクロドメインおよび塩基性樹脂のミクロドメインとしてであってもよい。この実施態様は、粒子20全体に分散した酸性樹脂のミクロドメイン22を複数、および塩基性樹脂のミクロドメイン24を複数有する理想化された多成分SAP粒子20を示す図2に記載されている。
【0044】
もう1つの実施態様では酸性および塩基性樹脂のミクロドメインはマトリックス樹脂からなる連続相全体に分散している。この実施態様もまた図1に記載されており、その際、多成分SAP粒子10は1つ以上のミクロドメイン14を有しており、それぞれは酸性樹脂もしくは塩基性樹脂であり、マトリックス樹脂の連続相12に分散している。多成分SAP粒子の付加的な実施態様はUS特許第6,159,591号および同第6,342,298号に開示されている。
【0045】
多成分SAP粒子は酸性樹脂および塩基性樹脂を約90:10〜約10:90、および有利には約20:80〜約80:20の質量比で含有する。本発明の完全な利点を達成するために、多成分SAP粒子中の酸性樹脂対塩基性樹脂の質量比は約30:70〜約70:30である。酸性および塩基性の樹脂は均一に、または不均一にSAP粒子全体に分散していてもよい。
【0046】
多成分SAP粒子は、酸性樹脂および塩基性樹脂を少なくとも約50質量%、および有利には少なくとも約70質量%含有している。本発明の完全な利点を達成するために、多成分SAP粒子は酸性樹脂および塩基性樹脂を約80〜100質量%含有する。酸性および塩基性の樹脂以外の本発明のSAP粒子の成分は、マトリックス樹脂またはその他の副次的な任意の成分である。
【0047】
多成分SAP粒子、およびその他のSAP材料の粒子は任意の形で、規則的もしくは不規則である、つまり粒状物、繊維、ビーズ、粉末またはフレークまたはその他の所望の形状であってよい。多成分SAPが押出成形工程を使用して製造される実施態様では、SAPの形状は押出成形ダイの形状により決定される。SAP粒子の形状はその他の物理的操作、たとえば粉砕により、または粒子を製造するための方法、たとえば凝集化により決定されうる。
【0048】
本発明の重要な特徴によれば、SAP成分の粒子は約10〜約810ミクロン(μm)、および有利には約10〜約600μmの粒径分布を有する。さらに有利な実施態様では、SAP粒子は約20〜約500μmの粒径分布を有する。本発明の完全な利点を達成するために、SAP粒子は約30〜約375μmの粒径分布を有する。従ってSAP成分の粒子は約400μmより小さい、および有利には約350μmより小さい質量平均粒径を有する。本発明の完全な利点を達成するために、SAP粒子は約300μmより小さい質量平均粒径を有する。有利な実施態様ではSAP成分のSAP粒子は粒状物、ビーズまたは繊維の形である。
【0049】
上記のSAP粒子に関して粒径はふるい分析により決定される寸法として定義されている。従ってたとえば250ミクロンのふるい目を有するUSA標準試験ふるい(U.S.A. Standard Testing Sieve)(たとえばNo.60のU.S. Series Alternate Sieve Designation)上に残留する粒子は250ミクロンよりも大きいサイズを有すると考えられる。250ミクロンの目を有するふるいを通過し、かつ125ミクロンの目を有するふるい(たとえばNo.120のU.S. Series Alternate Sieve Designation)上に残留する粒子は125〜250ミクロンの間の粒径を有すると考えられ、かつ125ミクロンの目を有するふるいを通過する粒子は125ミクロンより小さいサイズを有すると考えられる。
【0050】
SAPの与えられた試料の質量平均粒径は、試料を質量に基づいて半分に分割する、つまり試料の半分は質量平均サイズよりも大きい粒径を有する粒径として定義されている。標準的な粒径プロット法(この場合、所定のふるいサイズ上に残留するか、またはその目を通過する粒子試料の累積質量百分率は、確率紙上のふるい目に対してプロットされている)は一般に、50%質量値がUSA標準試験のふるい目に相応しない場合に平均粒径を決定するために使用される。SAP粒子の粒径を決定するための方法は、さらにUS特許第5,061,259号に記載されており、これを引用することにより取り入れる。
【0051】
ミクロドメインは、多成分SAP粒子中に存在する酸性樹脂または塩基性樹脂の体積として定義されている。それぞれの多成分SAP粒子が、酸性樹脂の少なくとも1つのミクロドメインおよび塩基性樹脂の少なくとも1つのミクロドメインを有しているので、ミクロドメインは多成分SAP粒子の体積よりも小さい体積を有する。従ってミクロドメインは多成分SAP粒子の体積の約90%の大きさであってよい。
【0052】
一般にミクロドメインは約100μm以下の直径を有する。本発明の完全な利点を達成するためにミクロドメインは約20μm以下の直径を有する。従って多成分SAP粒子はサブミクロンの直径を有するミクロドメイン、たとえば1μmより小さい、有利には0.1μm〜約0.01μmのミクロドメイン直径を有するミクロドメインを有する。
【0053】
もう1つの実施態様では、多成分SAP粒子は繊維の形、つまり延ばされた針状のSAP粒子である。繊維は円筒形の形である、たとえば副次的な寸法(つまり直径)と、主要な寸法(つまり長さ)を有する。円筒形の多成分SAP繊維は副次的な寸法(つまり繊維の直径)が約250μmより小さく、かつ約20μmまでである。円筒形のSAP繊維は比較的短い主要な寸法、たとえば約100〜約500μmを有する。
【0054】
多成分SAP粒子中に存在する酸性の吸水性樹脂は強もしくは弱酸性の吸水性樹脂のいずれかであってよい。酸性の吸水性樹脂は単一の樹脂であっても、樹脂の混合物であってもよい。酸性樹脂はホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。酸性の吸水性樹脂の同一性は、該樹脂が中和された形で、水中で膨潤し、かつその質量の少なくとも10倍を吸収することができる限り制限されない。酸性樹脂はその酸性の、もしくは中和されていない形で、つまり酸性成分の50〜100%が遊離酸の形で存在する。以下に記載するように、酸性の吸水性樹脂の遊離酸形が一般に吸水性の小さい吸収材料であっても、多成分SAP粒子または混合された床系中の酸性樹脂および塩基性樹脂の組合せは優れた吸水性および保水性を有する。
【0055】
酸性の吸水性樹脂は一般にわずかに架橋したアクリル樹脂、たとえばわずかに架橋したポリアクリル酸である。わずかに架橋した酸性樹脂は通常、アシル成分を有する酸性のモノマー、たとえばアクリル酸または酸性の基を供給することができる成分、たとえばアクリロニトリルを架橋剤、つまり多官能価の有機化合物の存在下に重合することにより製造される。酸性樹脂は、ポリマーがほぼ、つまり少なくとも10%、および有利には少なくとも25%酸性のモノマー単位である場合には、従来技術において公知のその他の共重合性単位、つまりその他のモノエチレン性不飽和コモノマーを含有していてもよい。本発明の完全な利点を達成するために、酸性樹脂は少なくとも50%、およびさらに有利には少なくとも75%、および100%まで酸性のモノマー単位を含有する。その他の共重合性単位はたとえばポリマーの親水性を改善するために役立つ。
【0056】
酸性の吸水性樹脂中で有用なエチレン系不飽和カルボン酸および無水カルボン酸モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、α−クロロアクリル酸、α−シアノアクリル酸、β−メチルアクリル酸(クロトン酸)、α−フェニルアクリル酸、β−アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、α−クロロソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、p−クロロケイ皮酸、β−ステアリルアクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸、トリカルボキシエチレンおよび無水マレイン酸を含む。
【0057】
エチレン系不飽和スルホン酸モノマーは、脂肪族もしくは芳香族のビニルスルホン酸、たとえばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルスルホン酸およびメタクリルスルホン酸、たとえばスルホエチルアクリレート、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルアクリレート、スルホプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルスルホン酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を含む。
【0058】
上記のとおり、酸性モノマーおよび存在する場合には共重合性モノマーの重合は最も一般的には多官能価の有機化合物の存在下で遊離基重合法により実施される。架橋により酸性樹脂はほぼ水不溶性となり、かつ部分的に樹脂の吸収容量を決定するために役立つ。吸収の適用における使用のために、酸性樹脂はわずかに架橋している、つまり約20%より小さい、有利には約10%より小さい、および最も有利には約0.01〜約7%の架橋密度を有する。
【0059】
架橋剤は最も有利にはモノマーの全質量に対して約7質量%より少ない量で、および一般には約0.1質量%〜約5質量%の量で使用する。架橋性モノマーの例はUS特許第6,159,591号に開示されている。
【0060】
酸性樹脂は強酸性であっても弱酸性でも、その中和された形でSAPとして作用する任意の樹脂であってよい。酸性の樹脂は一般に複数のカルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、リン酸、および/または硫酸成分を含有する。酸性樹脂の例は、ポリアクリル酸、加水分解されたデンプン−アクリロニトリルグラフトコポリマー、デンプン−アクリル酸グラフトコポリマー、けん化されたビニルアセテート−アクリルエステルコポリマー、加水分解されたアクリロニトリルコポリマー、加水分解されたアクリルアミドコポリマー、エチレン−無水マレイン酸コポリマー、イソブチレン−無水マレイン酸コポリマー、ポリ(ビニルスルホン酸)、ポリ(ビニルホスホン酸)、ポリ(ビニルリン酸)、ポリ(ビニル−硫酸)、スルホン化されたポリスチレン、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(乳酸)およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。有利な酸性樹脂はポリ(アクリル酸)である。
【0061】
多成分SAPは、(a)単一の酸性樹脂を含有するか、または(b)2種以上の、つまり酸性樹脂の混合物を含有する、個々のミクロドメインを有していてよい。従って多成分SAPは酸性成分に関して、酸性のミクロドメインの一部が第一の酸性樹脂または酸性樹脂混合物を含有し、かつ残りの部分が第二の酸性樹脂または酸性樹脂混合物を含有するミクロドメインを有していてもよい。
【0062】
酸性樹脂と同様に、塩基性の吸水性樹脂は強もしくは弱塩基性の吸水性樹脂であってよい。塩基性の吸水性樹脂は単一の樹脂であっても、樹脂の混合物であってもよい。塩基性樹脂はホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。塩基性樹脂の同一性は、帯電した形で、塩基性樹脂が水中で膨潤し、かつその重さの少なくとも10倍を吸収することができる限り、限定されない。弱塩基性の樹脂は一般に遊離塩基の形で存在するか、または中和されていない形で、つまり塩基性成分、たとえばアミノ基の50%〜約100%が中和された、帯電していない形で存在する。強塩基性樹脂は一般に水酸化物(OH)または重炭酸塩(HCO)の形で存在する。
【0063】
塩基性の吸水性樹脂は一般に、わずかに架橋したアクリルタイプの樹脂、たとえばポリ(ビニルアミン)またはポリ(ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド)である。塩基性樹脂はわずかに架橋したポリエチレンイミン、ポリ(アリルアミン)、ポリ(アリルグアニジン)、ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムヒドロキシド)、四級化されたポリスチレン誘導体、グアニジン−変性されたポリスチレン、四級化されたポリ(メタ)アクリルアミドまたはエステル類似体、またはポリ(ビニルグアニジン)のようなポリマーであってもよい。わずかに架橋した塩基性の吸水性樹脂はその他の共重合性単位を有していてもよく、かつ酸性の吸水性樹脂に関して上で記載したように、多官能価の有機化合物を使用して架橋している。
【0064】
多成分SAP粒子中で使用される塩基性の吸水性樹脂は一般にアミノ基またはグアニジノ基を有する。従って水溶性の塩基性樹脂は、水性もしくはアルコール性の媒体中で架橋していない塩基性の樹脂を懸濁もしくは溶解し、次いで塩基性樹脂のアミノ基と反応することにより塩基性樹脂を架橋することができる二官能価または多官能価の化合物を添加することにより溶液中で架橋させることもできる。このような架橋剤の例はUS特許第6,235,965号に開示されている。
【0065】
従って塩基性樹脂は強もしくは弱塩基性であっても帯電した形でSAPとして作用する任意の樹脂であってよい。塩基性樹脂は一般にアミノ成分またはグアニジノ成分を含有する。塩基性樹脂の例は、構造
【化1】

を有するモノマーまたはそのエステル類似体
【化2】

[式中、RおよびRは無関係に、水素及びメチルからなる群から選択され、Yは1〜8個の炭素原子を有する二価の直鎖もしくは分枝鎖状の有機基であり、かつRおよびRは無関係に1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である]を重合し、かつわずかに架橋させることにより製造されるポリ(ビニルアミン)、ポリエチレンイミン、ポリ(ビニルグアニジン)、ポリ(アリルアミン)、ポリ(アリルグアニジン)またはポリ(ジアルキル−アミノアルキル(メタ)アクリルアミド)を含む。有利な塩基性の樹脂はポリ(ビニルアミン)、ポリエチレンイミン、ポリ(ビニルグアニジン)、ポリ(ジメチルアミノエチルアクリルアミド)、(ポリ−(DAEA))およびポリ(ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド)(ポリ(DMAPMA))を含む。酸性樹脂のミクロドメインと同様に、多成分SAPは単一の塩基性樹脂のミクロドメイン、塩基性樹脂の混合物を含有するミクロドメインまたは異なった塩基性樹脂のミクロドメインを有していてもよい。
【0066】
多成分SAPは種々の方法で製造することができる。多成分SAPを製造するための正確な方法は限定されないと理解すべきである。塩基性樹脂の少なくとも1つのミクロドメインと接触しているか、または近接している酸性樹脂の少なくとも1つのミクロドメインを有する粒子が得られる任意の方法が適切である。多成分SAPを製造するための方法の例はUS特許第6,159,591号および同第6,342,298号に開示されている。
【0067】
酸性樹脂、塩基性樹脂および/または多成分SAP粒子は加熱圧縮前に場合により表面処理および/またはアニーリングすることができる。SAP粒子の表面処理および/またはアニーリングはたとえばUS特許第6,159,591号で公知である。多成分SAP粒子およびその製造方法の非限定的な例は、US特許第6,159,591号および同第6,342,298号に見ることができる。
【0068】
本発明の重要な特徴によれば、強酸性樹脂を強塩基性樹脂もしくは弱塩基性樹脂もしくはこれらの混合物と共に使用することができる。弱酸性の樹脂は強塩基性樹脂もしくは弱塩基性樹脂もしくはこれらの混合物と共に使用することができる。さらに有利な実施態様では、弱酸性樹脂、弱塩基性樹脂および/または多成分SAP粒子は表面架橋および/またはアニーリングされている。
【0069】
もう1つの実施態様では、SAP成分は第二の吸水性樹脂の粒子と混合された多成分SAP粒子を含有している。第二の吸水性樹脂は中和されていない酸性の吸水性樹脂、中和されていない塩基性の吸水性樹脂、またはこれらの混合物であってもよい。多成分SAP粒子と同様に、第二の吸水性樹脂粒子は約10〜約810μmの粒径分布を有しており、かつ約400μmより小さい質量平均粒径を有する。第二の吸水性樹脂は0%〜50%中和されている。
【0070】
この実施態様におけるSAP成分は約10質量%〜約90質量%、および有利には約25質量%〜約85質量%の多成分SAP粒子および約10質量%〜約90質量%、かつ有利には約25質量%〜約85質量%の第二の吸水性樹脂の粒子を含有している。さらに有利にはSAP成分のこの実施態様は約30質量%〜約75質量%の多成分SAP粒子を含有している。本発明の完全な利点を達成するために、SAP成分は約35質量%〜約75質量%の多成分SAP粒子を含有している。多成分SAP粒子および第二の吸水性樹脂の粒子は任意の形、たとえば粒状物、繊維、粉末またはフレークであってよい。
【0071】
第二の吸水性樹脂は多成分SAPの製造において使用される前記で議論した任意の酸性樹脂であってよい。第二の樹脂として使用される有利な酸性の吸水性樹脂は、中和されていない、たとえばDN50%までのポリ(アクリル酸)(PAA)である。第二の吸水性樹脂もまた多成分SAPの製造において使用される前記で議論した塩基性の吸水性樹脂であってもよい。第二の樹脂として使用される有利な塩基性の吸水性樹脂は中和されていないポリ(ビニルアミン)(PVAm)または中和されていないポリエチレンイミン(PEI)である。酸性樹脂のブレンド、または塩基性樹脂のブレンドを、第二の吸水性樹脂として使用することができる。酸性樹脂と塩基性樹脂とのブレンドもまた第二の吸水性樹脂として使用することができる。第二の吸水性樹脂は加熱圧縮工程前に、場合により表面において架橋もしくはアニーリングされている。
【0072】
この実施態様のSAP成分の1例は、多成分SAP粒子と中和されていない(DN=0)ポリアクリル酸(PAA)粒子との混合物である。ここで、および詳細な説明を通じて使用されるようにPAA(DN=0)とは、100%中和されていないPAAである。多成分SAP粒子はPAA(DN=0)で分散したPVAmのミクロドメインを有する。多成分SAP粒子のPVAm/PAAの質量比は55/45である。
【0073】
SAP成分のもう1つの実施態様は、中和されていない塩基性の吸水性樹脂、たとえばPVAmの粒子と、中和されていない酸性の吸水性樹脂、たとえばPAAの粒子との混合物を含有し、その際、酸性および塩基性の吸水性樹脂の両方が、約10〜約810μmの粒径および約400μmより小さい平均粒径を有する。酸性および塩基性の吸水性樹脂は両方とも0〜50%中和されている。酸性および塩基性の吸水性樹脂は前記で議論した、多成分SAPの製造において使用される酸性および塩基性の任意の樹脂であってよく、いずれか一方または両方とも、場合により表面が架橋もしくはアニーリングされている。
【0074】
この実施態様のSAP成分は酸性の吸水性樹脂粒子を約10〜約90質量%、および有利には約25〜約85質量%含有し、かつ塩基性の吸水性樹脂粒子を約10〜約90質量%、および有利には約25〜約85質量%含有する。さらに有利にはSAP成分のこの実施態様は、酸性の樹脂粒子を約30〜約75質量%含有する。本発明の完全な利点を達成するためにSAP成分のこの実施態様は、酸性樹脂粒子を約35〜約75質量%含有する。
【0075】
有利な酸性の吸水性樹脂はPAA(DN=0)である。使用される有利な塩基性の吸水性樹脂は中和されていないPVAmまたは中和されていないPEIである。酸性樹脂のブレンドおよび/または塩基性樹脂のブレンドをSAP成分中で使用することができる。
【0076】
この実施態様のSAP成分の例は、中和されていない(DN=0)PAA粒子と、中和されていないPVAm粒子との混合物である。PVAm/PAAの質量比は45/55または30/70である。
【0077】
従って本発明の吸収シート材料の高吸収性成分は別々の酸性および塩基性の樹脂粒子であってよいか、またはそれぞれが酸性の吸水性樹脂の少なくとも1つのミクロドメインおよび塩基性の吸水性樹脂の少なくとも1つのミクロドメインを有する多成分SAP粒子であってもよい。酸性および塩基性の両方の吸水性樹脂は、単一成分の粒子として存在していても、または多成分粒子として存在していても、酸性および塩基性の樹脂が濡れたときに2つの樹脂の間で粒子の中和のためのイオン交換が行われるように中和されていないわずかに架橋したポリマーである。
【0078】
本発明の吸収シート材料において使用される高吸収性成分は2種類の著しく異なった種類の樹脂、つまり酸性樹脂を1種および塩基性樹脂を1種を含有し、両者がシート材料中に含有され、かつ電解質を含有する溶液と接触したときに吸収材料として作用することができる。いずれの樹脂もその帯電していない形ではそのままでは水と接触したときにSAPとして機能しない。水性の液体、たとえば尿と接触したときに、2種類の帯電していない樹脂は少なくとも部分的に中和されて高吸収性材料を形成する。
【0079】
可塑剤成分
本発明の吸収シート材料は可塑剤成分を含有していてもよい。可塑剤成分はシート中に、SAP100質量部に対して約0.1〜約200質量部の量で存在している。有利な実施態様ではシート材料は約1〜約100質量部、およびさらに有利には約2〜約50質量部の可塑剤成分を、SAP成分100質量部に対して含有する。本発明の完全な利点を達成するために、該シート材料はSAP成分100質量部あたり、可塑剤成分を約3〜約50質量部、およびさらに有利には約5〜約25質量部含有する。可塑剤成分がSAP成分100質量部あたり、200質量部より大量に存在している場合には吸収シートの厚さを制御することが困難であり、かつシートは吸収製品において効率よく使用するためには厚すぎることが判明した。
【0080】
可塑剤成分はシートの曲げ剛性、脆性および/または戻り剛性を低減し、かつ実質的にシート材料の亀裂、破断、分裂、破壊およびその他の破壊を生じることなく、吸収シート材料の変形を可能にする。さらに、曲げ剛性、脆性および/または戻り剛性の低減は永久的である。
【0081】
可塑剤成分の同一性は、可塑剤がSAP成分の酸性および/または塩基性の樹脂の可塑化を可能にする限り制限されない。一般に可塑剤成分は塩基性樹脂に影響を与え、かつ塩基性樹脂単独の可塑化は吸収シート材料に優れた可とう性を付与するために十分である。
【0082】
有利には可塑剤成分は、吸収シートを加熱圧縮するために使用される条件において加熱圧縮の後に吸収シート中に残留するために十分に低い揮発性を有している。有利な実施態様では可塑剤成分は約80℃以上の沸点、たとえば約80℃〜250℃の沸点を有する。
【0083】
しかし比較的揮発性の高い化合物を可塑剤成分中で使用して本発明による吸収シート材料の製造を促進することもできる。この場合、揮発性の高い化合物の少なくとも一部がシート材料の加熱圧縮の間に気化する。揮発性の高い化合物は一般に可塑剤成分中に存在するその他の化合物のための希釈剤として使用され、SAP成分の粒子への可塑剤成分の適用を促進し、かつSAP成分上での可塑剤成分の均一な分散が保証されることに役立つ。可塑剤成分中で使用される揮発性の高い化合物は標準温度および圧力で少なくとも20℃の沸点を有する。
【0084】
可塑剤成分中で有用な化合物のクラスは、アルコール、グリコール、トリオール、ポリヒドロキシ化合物、アミンアルコール、アミド、スルホキシド、グリコールエーテル、グリコールエステル、非プロトン性溶剤および類似のクラスの化合物を含むが、これらに限定されない。メタノールおよびエタノールのようなアルコールは一般に揮発性の高い化合物であり、吸収シートの加熱圧縮の間に、または貯蔵の間に蒸発し、かつシートの製造を促進するために使用される。
【0085】
可塑剤成分中で有用な特定の化合物の非限定的な例はグリセロール;プロピレングリコール;エチレングリコール;ヘキシレングリコール;1,3−ブチレングリコール;ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;1,3−プロパンジオール;ペンタエリトリトール;1,4−ブタンジオール;ジアセトンアルコール;水;トリメチロールプロパン;トリメチロールエタン;ネオペンチルグリコール;シクロヘキサンジメタノール;イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシプロパノール−2);ポリエチレングリコール(MW500未満);ポリプロピレングリコール(MW500未満);ポリブチレングリコール(MW500未満);メタノール;エタノール;ブタノール;モノアセチン、ジアセチンおよびトリアセチン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールのモノメチル、エチル、ブチルおよびフェニルエーテル、たとえばプロピレングリコールのモノメチルエーテルまたはエチレングリコールのモノエチルエーテル;ジメチルホルムアミド;ジエチルホルムアミド;N−メチルピロリドン;ジメチルスルホキシド;トリエタノールアミン;ジエタノールアミン;テトラヒドロフラン;エチレンカーボネート;イソホロン;ジオキサン;ヘキサメチルリンアミド;ソルビトール;ソルビタン脂肪酸エステル;水性スクロース;およびこれらの混合物を含む。
【0086】
可塑剤成分は式:
【化3】

[式中、R、RおよびRは、無関係に、C〜C−アルキルであり、かつRは水素、C〜C−アルキルおよびC(O)Rからなる群から選択されており、その際、Rはアルキル基である]を有するシトレートを含んでいてもよい。シトレートの例はトリメチルシトレート、アセチルトリメチルシトレート、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−ヘキシルシトレート、n−ブチリルトリ−n−ヘキシルシトレート、アセチルトリ−n−(ヘキシル/オクチル/デシル)シトレート、アセチルトリ−n−(オクチル/デシル)シトレートおよびこれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。
【0087】
非イオン性界面活性剤もまた可塑剤成分の成分として有用である。有用な界面活性剤は疎水性塩基、たとえば長鎖アルキル基またはアルキル化されたアリール基、および十分な数(つまり6〜約20)のエトキシ成分および/またはプロポキシ成分を有する親水性の鎖を有する。非イオン性界面活性剤のクラスの例はエトキシル化されたアルキルフェノール、エトキシル化およびプロポキシル化された脂肪(C〜C22)アルコール、メチルグルコースのポリエチレングリコールエーテル、ソルビトールのポリエチレングリコールエーテル、エチレンオキシド−プロピレンオキシドのブロックコポリマー、脂肪(C〜C22)酸のエトキシル化されたエステル、エチレンオキシドと長鎖のアミンもしくはアミドとの縮合生成物およびこれらの混合物を含む。
【0088】
可塑剤成分中で有用な非イオン性界面活性剤の例は、メチルグルセト−10、PEG−20エチルグルコースジステアレート、PEG−20メチルグルコースセスキステアレート、C11〜C15−パレト−20、セテト−8、セテト−12、ドドキシノール−12、ラウレト−15、PEG−20ひまし油、ポリソルベート20、ステアレト−20、ポリオキシエチレン−10セチルエーテル、ポリオキシエチレン−10ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−20セチルエーテル、ポリオキシエチレン−10オレイルエーテル、ポリオキシエチレン−20オレイルエーテル、エトキシル化されたノニルフェノール、エトキシル化されたオクチルフェノール、エトキシル化されたドデシルフェノール、6〜20のエチレンオキシド成分を有するエトキシル化された脂肪(C〜C22)アルコール、ポリオキシエチレン−20イソヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレン−23グリセロールラウレート、ポリオキシエチレン−20グリセリルステアレート、ポリオキシエチレン−20ソルビタンモノエステル、ポリオキシエチレン−15トリデシルエーテルおよびこれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。
【0089】
もう1つの実施態様では、酸性樹脂および/または塩基性樹脂は加熱圧縮工程の前に内部で可塑化されている。内部の可塑化では酸性もしくは塩基性樹脂はSAPのカルボキシル基またはアミノ基(たとえばグリシジル基)および可塑剤化合物として作用することができる基(たとえばヒドロキシル基)と反応することができる成分を有する化合物と反応させる。たとえば酸性もしくは塩基性樹脂は、エチレングリコールのモノグリシジルエーテルまたは類似の化合物と反応することにより内部で架橋していてもよい。
【0090】
任意の成分
本発明の吸収シート材料は任意の成分を合計で0〜約40質量%、および有利には0〜約30質量%含有していてもよい。本発明の完全な利点を達成するために、該シート材料は任意の成分を合計で0〜約20質量%含有する。個々の任意の成分はシート材料の0〜約25質量%存在していてよい。
【0091】
SAPの従来技術における当業者に公知の任意の成分は全て、任意の成分がシートの物理的特性(たとえば可とう性または構造的インテグリティ)またはシートのSAP成分の吸収特性に不利な影響を与えない限り、吸収シート材料中に含まれていてよい。任意の成分の例は通常のSAP、非吸収性充填剤、浸透促進剤、不織布繊維および類似の成分を含むが、これらに限定されるものではない。
【0092】
たとえば吸収シートは通常のSAP、特に50より大のDNおよび一般にDN=65〜80を有するPAAを約20質量%まで含有していてよい。通例のSAPは標準的なアルカリ、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはトリエタノールアミンにより中和される。1実施態様ではトリエタノールアミンにより中和されたPAAは可塑化された通例のSAPを生じ、これは不利な影響を与えることなく、かつ吸収シートの可とう性に貢献することができる。
【0093】
その他の通例のSAPは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、加水分解生成物、ビニルアセテートおよびその水解物、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルスルホン酸およびそのエステルおよびアミド、および(メタ)アクリル酸のN−アルキルおよびN,N−ジアルキル置換されたエステルおよび/またはアミド、またはこれらのモノマーの無水物および第四アンモニウム化合物のモノマー単位を有する中和された、水膨潤性のポリマーまたはコポリマーを含む。さらに本発明の吸収シート中での通例のSAPとして有用である天然の水膨潤性ポリマーは、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ガーゴム、キサンタン、アルギン酸塩、デンプンおよびその誘導体、ならびにこれらの天然のポリマーおよび上記のモノマーの中和されたグラフトポリマーを含むが、これらに限定されるものではない。
【0094】
通例のSAPの例は、デンプンアクリロニトリルグラフトポリマーの加水分解生成物、カルボキシメチルセルロース、架橋したポリアクリレート、スルホン化されたポリスチレン、水酸化ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、デンプン−アクリル酸グラフトコポリマー、けん化ビニルアセテート−アクリルエステルコポリマー、加水分解されたアクリロニトリルコポリマー、加水分解されたアクリルアミドコポリマー、エチレン−無水マレイン酸コポリマー、イソブチレン−無水マレイン酸コポリマー、ポリ(ビニルスルホン酸)、ポリ(ビニルホスホン酸)、ポリ(ビニルリン酸)、ポリ(ビニル硫酸)、スルホン化ポリスチレン、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(乳酸)およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。その他のわずかに架橋した親水性ポリマーはGoldman等のUS特許第5,669,894号および同第5,559,335号に開示されており、それぞれを引用することによりここに取り入れる。有利な酸性樹脂は中和されたPAAである。
【0095】
充填剤および浸透促進剤の例は、ケイ酸ナトリウム、シリカ、吸収性粘土(たとえばベントナイト)、カオリン粘土、白亜、シリカゲル、ケイ酸、活性炭および顔料、たとえば二酸化チタンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0096】
任意の不織布繊維はたとえばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル(たとえばポリエチレンテレフタレート)、ビスコース、レーヨンおよびこれらの混合物であってよい。入手可能な不織布の種類は、カーデッド・サーマルドット接着、樹脂接着、カーデッド・スルーエアー接着、スパンボンド、メルトブロー、スパン・メルトブロー・スパン(SMS)、水流交絡(スパンレース)、ドライレイド熱接着である。不織布繊維はさらに、シート材料100g/m(gsm)あたり約10〜約100グラムの量で使用する場合、本発明による吸収シートに湿潤強度を付与する。有利な不織布繊維はロール材料、たとえば上記の不織布であり、これらはSAP成分と混合されたフリーな繊維であってもよいことに注意すべきである。
【0097】
適切な繊維はポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸樹脂、たとえばORLON(R)、ポリビニルアセテート、ポリエチルビニルアセテート、不溶性もしくは可溶性のポリビニルアルコール、ポリオレフィン、たとえばポリエチレン(たとえばPULPEX(R))およびポリプロピレン、ポリアミド(たとえばナイロン)、ポリエステル(たとえばDACRON(R)またはKODEL(R))、ポリウレタン、ポリスチレンなどから製造することができる。
【0098】
親水性繊維は有利であり、かつレーヨン、ポリエステル繊維、たとえばポリエチレンテレフタレート(たとえばDACRON(R))、親水性ナイロン(HYDROFIL)などを含む。適切な親水性繊維は、疎水性繊維を親水化することによっても得られ、たとえば界面活性剤処理またはシリカ処理した熱可塑性樹脂繊維はたとえばポリオレフィン、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン、ポリアクリル酸樹脂、ポリアミド、ポリスチレン、ポリウレタンなどから得られる。
【0099】
本発明の有利なシート材料は、「フラフ不含」である、つまりセルロース繊維またはその他の「フラフ」材料を含有していない。しかし、所望の場合には、本発明のシート材料はここで定義されるようにフラフ材料を約25質量%まで含有していてもよい。
【0100】
「フラフ」を含有するシート材料に関して、「フラフ」は繊維状の材料を含む。繊維とは天然に生じる繊維(変性もしくは非変性)を含む。適切な非変性/変性の天然由来の繊維の例は綿、エスパルト草、バガス、ケンプ、亜麻、絹、ウール、木材パルプ、化学的に変性された木材パルプ、およびジュートを含む。WO98/37149およびUS特許第5,859,074号を参照のこと。それぞれを引用することにより、吸収シート製品中で使用するための「親水性」および「フラフ」成分の完全な議論に関してここに取り入れる。
【0101】
本発明の吸収シート材料はSAP成分、可塑剤成分および任意の成分を混合し、次いで得られた混合物を十分な時間、十分な温度および圧力で加熱圧縮して、SAP成分と可塑剤成分との間にほぼ表面架橋反応を生じることなく、吸収シートを形成することにより製造される。ここで使用される「ほぼ表面架橋反応を生じない」とは、可塑剤成分の少なくとも90%が加熱圧縮後に、反応した残留物の形、たとえば表面架橋した形と異なり、その遊離の、もしくは未反応の形で吸収シート中に存在することを意味すると定義される。
【0102】
一般にSAP成分は粒子としてまず支持体、たとえば板またはプラスチックシート上に薄層として堆積する。次いで可塑剤成分を噴霧するか、またはその他の方法(たとえば浸漬)でSAP成分粒子の表面上に施与し、引き続き加熱圧縮する。あるいはSAP成分をまず可塑化し、可塑剤成分を加熱圧縮の前にSAP成分に施与する工程を省略することができる。
【0103】
本発明の重要な特徴によれば、十分な量のSAP成分を層として支持体上に拡散させて最終的に、約0.05〜約1.5mm、および有利には約0.1〜約1mmの厚さを有する吸収シート材料が得られる。本発明の完全な利点を達成するために、吸収シートは約0.2〜約0.5mm、および最も有利には約0.3〜約0.4mmの厚さを有する。
【0104】
さらに有利には、本発明の吸収シート材料はSAPおよび可塑剤成分を約30℃〜約80℃、および有利には約35℃〜約70℃の温度で加熱圧縮することにより製造される。本発明の完全な利点を達成するために、SAP可塑剤成分混合物を約40℃〜約60℃で圧縮する。
【0105】
加熱圧縮は約100〜約1000psi(pounds per square inch)、および有利には約150〜約600psiの圧力で実施する。本発明の完全な利点を達成するために、加熱圧縮は200〜約400psiおよびさらに有利には250〜約400psiで実施する。加熱圧縮工程の間に適用される圧力は1000psiより大きくてもよく、というのは、不利な影響は観察されないからであるが、しかしそれ以上の利点も観察されない。たとえばシート密度におけるそれ以上の増大はない。
【0106】
加熱圧縮は約10秒から約10分で、および有利には約1分〜約8分で実施する。本発明の完全な利点を達成するために、加熱圧縮を約2〜約7分で、および最も有利には約3〜約6分で実施する。
【0107】
本発明の重要な特徴によれば、および以下に記載するように、緻密な吸収シートは構造的インテグリティを付与し、かつ意外にも改善されたおむつのコア再湿潤値およびアクィジション速度を示す。従って本発明によるシート材料は、約0.35〜約0.9g/cc、および有利には約0.45〜約0.85g/ccの密度を有する。本発明の完全な利点を達成するために、吸収シートは約0.65〜約0.85g/ccの密度を有する。付加的な利点として、緻密な吸収シートは薄いおむつコアにつながる。
【0108】
上記で開示された加熱圧縮条件では、可塑剤成分は実質的にSAP成分の官能基と反応する。従って加熱圧縮工程は表面架橋反応工程とは異なる。本発明の重要な特徴は、SAP成分−可塑剤成分の混合物の加熱圧縮の間の実質的な表面架橋を回避することである。これは表面架橋を達成するために不十分な時間、温度、および圧力を利用することにより達成される。
【0109】
従って十分な量の可塑剤成分はその遊離の、未反応の形で吸収シート材料中に存在し、シートにおける可とう性を付与し、かつ維持する。可塑剤成分が加熱処理の間に表面架橋反応においてほぼ消費されると、吸収シート材料の可とう性および構造的インテグリティは不利な影響を受ける。
【0110】
当業者は、実質的な表面架橋を回避するための粒状のSAP成分と可塑剤成分のための加熱圧縮の温度、圧力および時間を適切に選択することができる。特に当業者は本発明の吸収シートの可塑剤として有用な種々の化合物をSAPの表面架橋剤として使用することもできることを認識している。当業者は表面架橋に影響を与えるために必要な条件も認識しており、かつ可塑剤成分によりSAP成分の実質的な表面架橋を回避するための加熱圧縮条件を設計することができる。
【0111】
あるいは加熱圧縮の代わりに、室温で付加的な加熱を行わずに圧力を適用することもできる。一般的な温度は15℃〜25℃の範囲である。適用すべき圧力の一般的な範囲は300〜2000バール、有利には500〜1000バールである。このような圧力は従来技術によるカレンダー装置により得られる。
【0112】
さらに、以下においてより詳細に議論するように、本発明の吸収シートにエンボス加工工程を行うことができる。エンボス加工工程は、吸収シートの可とう性を改善し、かつ意外にも吸収シートのアクィジション速度を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】第二の樹脂の連続層中に分散した第一の樹脂のミクロドメインを含有する吸水性粒子を示す図
【図2】粒子全体に第一の樹脂のミクロドメインおよび第二の樹脂のミクロドメインを有する吸水性粒子を示す図
【図3】本発明による吸収シートを100質量%含有するコアを有する吸収製品の断面図を示す図
【図4】本発明による吸収シートを100質量%含有するコアを有する吸収製品の断面図を示す図
【図5】本発明のシート材料に対する第一、第二、第三および第四の衝突に関する再湿潤速度(g)とゲル床透過率(GBP)との関係のグラフを示す図
【図6】本発明のシート材料に対する第一、第二、第三および第四の衝突に関するアクィジション速度(ml/sec)とゲル床透過率(GBP)との関係のグラフを示す図
【図7】コア密度(g/cc)および剛性(mNm)と、プロピレングリコール濃度との関係のグラフを示す図
【実施例】
【0114】
以下の実施例は本発明の吸収シート材料の製造を記載する。
【0115】
実施例1
プロピレングリコール0.3gおよび脱イオン水0.03gを含有する溶液を多成分高吸収性粒子3gに噴霧した。粒子はSAF粒子とよばれ、かつPAA(DN=0)55質量%およびPVAm(100%中和されていない)45質量%を含有している。SAF粒子は約38〜約355μmの粒径分布を有していた。噴霧したSAP粒子を15000ポンド(約385psi)で5分間、Carver 12インチ×12インチの加熱プレートを使用して50℃で圧縮した。次いで得られるシートを60℃で1時間加熱した。冷却後、該シートは可とう性を維持しており、かつ該シートを破損することなく切断することができた。これらの条件下で、多成分高吸収性粒子はプロピレングリコールにより表面架橋していなかった。
【0116】
実施例2
本発明の可とう性吸収シート材料を3種類製造した。
【0117】
(a)多成分高吸収性ポリマーの粒子を層として12cm×21cmのポリエチレンシート上に分散させた。該多成分高吸収性ポリマーはPAA(DN=0)を約70質量%およびPVAm(100%中和されていない)を約30質量%含有しており、かつLAFとよばれる。LAF粒子は約38μm〜約355μmの粒径分布を有する。プロピレングリコール(0.3g)をLAF粒子上に噴霧し、かつ第二のポリエチレンシートを噴霧したLAF粒子上に配置した。次いで噴霧したLAF粒子をポリエチレンシートの間で5分間、45℃および15000psi(約385psi)でCarver 12インチ×12インチの加熱プレートを使用して圧縮した。加熱圧縮および冷却後、ポリエチレンシートを除去して優れた構造的インテグリティを有する可とう性の吸収シート材料が得られた。
【0118】
(b)手順(a)を繰り返したが、ただしLAF粒子をDENACOL EX−810(エチレングリコールジグリシジルエーテル)0.03gおよびプロピレングリコール0.27gを含有する溶液で噴霧した。加熱圧縮に加えて吸収シート材料も60℃で1時間加熱した。得られる可とう性の吸収シートは実質的に(a)のシートと同一であった。
【0119】
(c)(b)の手順を繰り返したが、ただしポリエチレンシートを目の開いた繊維のマットとしての樹脂接着ポリプロピレンのシートと交換した。従って樹脂接着ポリプロピレン繊維が可とう性の吸収シート材料中に残留した。樹脂接着繊維はシートの可とう性に不利な影響を与えず、かつシートの強度およびシートの再湿潤特性を改善した。
【0120】
以下に記載する試験結果において、本発明の吸収材シート材料を無荷重での吸収(AUNL)および0.28psiおよび0.7psiの荷重下での吸収(AUL(0.28psi)およびAUL(0.7psi))に関して試験した。荷重下での吸収(AUL)はSAPが適用された圧力下で液体を吸収する能力の尺度である。AULはUS特許第5,149,335号および同第6,159,591号に開示されており、引用によってここに取り入れる。
【0121】
比較的大量の液体を吸収し、かつ保持する能力に加えてSAPが良好な透過性を示し、ひいては液体を迅速に吸収することもまた重要である。従って吸収容量、またはゲル体積に加えて、有用なSAP材料は高いゲル強度も有する、つまり粒子は液体を吸収した後に変形しない。さらに、液体の存在下でSAP粒子が膨潤する時、またはすでに膨潤したときに形成されるヒドロゲルの透過性または流れ伝導性はSAP粒子の実地での使用にとって極めて重要な特性である。吸収ポリマーの透過性または流れ伝導性は直接、吸収製品が体液を集め、かつ分散するための能力に影響を与えうる。
【0122】
多くのタイプのSAP粒子がゲルブロッキングを示す。「ゲルブロッキング」はSAP粒子が濡れて膨潤する場合に生じ、このことによりSAP粒子の内部へ、および吸収SAP粒子の間の液体の透過が妨げられる。ゲルブロッキングはSAP粒子が適切なゲル強度を有しておらず、かつSAP粒子が吸収した液体によって膨潤した後でストレス下に変形もしくは拡散する場合に、特に深刻な問題である。
【0123】
従ってSAPシート材料は良好なAUL値を有しうるが、しかし吸収構造の高い濃度で有用であるためには不適切な透過性または流れ伝導性を有する。高いAUL値を有するためには、SAP材料から形成されるヒドロゲルが、0.3psiの封圧下でゲルブロッキングが顕著に生じないような最小限の透過性を有することが必要であるにすぎない。単にゲルブロッキングを回避するために必要とされる透過性の度合いは、良好な液体輸送性を得るために必要とされる透過性よりもはるかに低い。従って、ゲルブロッキングを回避し、かつ良好なAUL値を有するSAP材料はこれらのその他の液体取り扱い性において著しく不足している。
【0124】
本発明の吸収シート材料の重要な特性は、SAP粒子のゲル床透過性(GBP)により定義される液体により膨潤した時にヒドロゲル帯域または層を形成する透過性である。GBPはSAPが塩溶液を輸送する能力、たとえば膨潤したSAPから形成されるヒドロゲル層が体液を輸送する能力を測定する。特にゲル透過性は全体としてSAP粒子の質量の特性であり、かつ粒径分布、粒子の形状、開放気孔の連続性、および膨潤したゲルの圧縮性に関係する。
【0125】
SAPが高い濃度で吸収構造中に存在し、かつ次いで膨潤して使用圧力の下でヒドロゲルを形成する場合、ヒドロゲルの境界が接触し、かつこの高いSAP濃度の領域の間隙率は一般にヒドロゲルにより結合される。このことが生じると、この領域における透過性または塩水の流れ伝導性は一般にSAP単独から形成されるヒドロゲル帯域の透過性または塩水の流れ伝導性を表示する。これらの膨潤した高濃度の領域の透過性を通常のアクィジション/分散材料、たとえば木材パルプ、フラフに近いか、またはこれを超えるレベルに増大することは、吸収構造のための優れた液体取り扱い性を生じ、従って特に高い液体負荷における漏れの現象を低減する。
【0126】
従って高いGBP値を有し、再湿潤値に不利な影響を与えない吸収シート材料を提供することが高く望まれる。これは特に、SAPの高い局所的な濃度を吸収製品中で効果的に使用する場合に該当する。高いGBP値は得られるヒドロゲルが標準的な使用条件下で体液を吸収し、かつ保持する能力も示す。SAP粒子のGBP値を決定するための方法は、US特許第6,376,011号に記載されており、引用によってここに取り入れる。ここに開示されているGBP値はUS特許第6,376,011号に記載されている方法により測定されているが、ただし、例外的に流速を測定する前の水和時間は60分間を使用した。
【0127】
本発明の吸収シート材料は0.7psiで優れたAULを示す。約38〜約355μmの粒径分布を有するSAP成分を含有する本発明の吸収シート材料は約1000〜約6000、および有利には約1500〜約5000のGBP値も有する。本発明の完全な利点を達成するために、GBP値は約2000〜約4000である。
【0128】
以下で議論するように、試験は吸収シートを形成するための加熱圧縮が吸収シートのSAP成分の吸収性および保水性に不利な影響を与えないことを示している。さらに、吸収シート材料は、シートを多数の実地での適用において有用なものとする優れた構造的インテグリティおよび可とう性を有する。
【0129】
特に従来の高吸収性シート材料およびSAPを高い負荷率で含有するコアは可とう性がなく、かつ脆かった。このため、脆性を低減し、かつ可とう性を付与するために、フラフ材料、たとえばセルロースまたは親水性繊維をシート中で高い割合(たとえば少なくとも50%)で含有する必要があった。本発明の吸収シートまたは吸収コアは、SAP成分および可塑剤成分を100%まで含有し(つまりフラフ0%)、かつそれでも実地での適用のために十分な可とう性および構造的インテグリティを有する。従って、本発明の有利な吸収シートおよびコアは25質量%以下、有利には20質量%以下、およびさらに有利には15質量%以下および0%までのフラフを含有する。
【0130】
従来の高吸収性シート材料が直面するもう1つの問題は、ゲルブロッキングである。本発明の吸収シートは十分な間隙率を有しているので、液体の吸収後もゲルブロッキングが回避される。さらに、吸収の間、本発明の吸収シート中で使用される小さい個々のSAP粒子のサイズが増大し、このことにより粒子間の間隙率が増大される。このことは可塑剤成分により付与されるシートの可とう性に貢献する。従って本発明の吸収シートはゲルブロッキングのないSAPを高い割合で含有する第一のシートであり、従って吸収製品の製造における使用にとって優れている。
【0131】
従って本発明の吸収シート材料は、SAP成分を可塑化し、かつゲルブロッキングを示さず、かつ良好な液体吸い上げの度合いを維持する、安定した可とう性のシートへと加熱接着する、高いゲル強度、粒子間の付着、およびゲル床透過性のような特性を有する上記のSAP成分を含有する。本発明の吸収シートはアクィジション速度および再湿潤特性の両方において、通例のおむつ用コアより薄く、より軽く、かつより良好な挙動の積層体を形成するために優れている。
【0132】
本発明の重要な特徴に従って、衛生製品、またはその他の吸収製品は、高吸収性成分および可塑剤成分を吸収シート材料の約60〜100質量%、有利には約70〜100質量%、さらに有利には約75〜100質量%、および最も有利には約80〜100質量%を含有するコア、つまりフラフを含有していないコアを有する。
【0133】
多成分SAP粒子および樹脂粒子の混合床は高い割合でおむつ用コア中で使用されており、かつ優れたアクィジション速度を有するが、しかし再湿潤値は極めて高くてよい。この考察は最初の水和、または衝突の後のコアの開放性に貢献し、このことによりコア中の毛細管作用の損失が生じる。最初の水和の後のコアの開放性は、コア中の粒子/粒子と粒子/フラフの接着に基づいている。粒子が膨潤するにつれて、これらの接着力により、毛細管作用による液体の輸送が不可能な大きな間隙の形成を生じる。
【0134】
本発明は有利には比較的小さい粒径のSAP粒子をシートのSAP成分中で使用して、(a)ゲルブロッキングを回避する間隙および(b)フラフが少ない、およびフラフを含有しないコア中の毛細管ウィキング作用、を維持する。従って本発明の吸収シートは固有の毛細管ウィキング作用を有する。通常、通例のSAPはSAPの水和がゲルブロッキングを生じる傾向があるために、比較的大きな粒径(たとえば>400μm)で使用される。しかしイオン交換SAPが優れたゲル床透過性(つまり高いGBP)を、小さい粒径においても有しているので、より小さい粒径範囲がフラフの少ないコア中で有利である。十分に小さいSAP粒径により、ウィキング作用はセルロース繊維を完全に排除することができるために十分である。吸収シート中の小さい粒径のSAPはコアのウィキング機能および貯蔵機能の両方を実施することができる。
【0135】
本発明の吸収シートを含有する吸収コアは著しく負荷されたコア(たとえばSAP−可塑剤60〜95質量%)からフラフを含有しないコア(つまりSAP−可塑剤100%)までの範囲であってよい。フラフを含有しないコアは一般に(a)ウィキング層、たとえば組織、および(b)吸収シートの、交互の層から構成される。さらに、より早いアクィジション速度を得るために、通例の高吸収性ポリマーの層の表面層またはアクィジション層を使用することができる。
【0136】
ウィキング層は有利にはセルロース組織であるが、しかし液体を吸い上げる作用を有する材料、たとえば親水性ポリプロピレン繊維、ポリマーフォーム(たとえばHIPE、通例の高吸収材、ラテックス、レゾルシノール/ホルムアルデヒドポリマー、またはビスコース)および基本重量の高いセルロース(たとえばペーパータオルおよび比較的重い組織)の任意の層であってよい。
【0137】
いくつかの実施態様はウィキング層を有しておらず、かつ有利な実施態様はアクィジション層を有していないが、いくつかの実施態様では、たとえば大人の失禁における噴出する状況で、より大きなアクィジション速度が所望されるか、または要求される。アクィジション層はUS特許第5,382,400号に開示されているようなかさ高な不織布、US特許第4,822,453号に開示されているようなカールセルロース繊維、US特許第5,260,345号に開示されているようなHIPEフォーム、US特許第5,338,766号および同第6,136,873号に開示されているような高吸収性フォーム、およびWO01/56625に開示されているような親水性不織布を含み、これら全てを引用によりここに取り入れる。
【0138】
今日のおむつは一般に着用している人の肌に接触する不織布から製造されるトップシート、トップシートの下(つまり着用者の肌とは反対側)のアクィジション層、該アクィジション層の下のコア、および該コアの下のバックシートからなる。この構成は産業において周知である。有利な実施態様では本発明のおむつは実質的にトップシート、コアおよびバックシートからなる、つまりアクィジション層は存在していない。以下に記載するように、本発明の吸収シート材料により得られる改善により、使い捨ておむつからアクィジション層を排除することができる。このような結果はこの分野で重要である。というのも、高価なアクィジション層を排除することができ、おむつはより軽く、かつより薄く、かつ吸収性に不利な影響を与えないからである。
【0139】
本発明の単一の吸収シートは吸収コアの吸収成分として使用することができる。有利には複数の吸収シートを吸収コア中で、さらに有利にはウィキング層(たとえば組織層)と共に吸収シートの間で使用して、吸収シートの間および該シートを通過する液体の吸い上げを改善する。さらに有利な実施態様では、吸収コア中の少なくとも1つの吸収シートが、吸収コアの湿潤強度を改善し、かつ吸い上げを補助するために不織布繊維を含有する。
【0140】
以下で議論するように、有利なコアは本発明による吸収シートの層を2〜5つ有する。単一の厚い吸収シートとは対照的に、薄い吸収シートの積層体を使用することにより、コアの水平な拡張が低減し、かつ垂直な拡張が促進される。この特徴によりコアを通過する液体の良好な輸送が提供され、当初の衝突後に、より良好にフィットするおむつが得られ、かつおむつが引き続き第二および付加的な衝突により再湿潤される場合の漏れを回避する。さらに有利な実施態様ではコアは2以上の吸収シートを有し、その際、ウィキング層はそれぞれの吸収シート層の間に、および積層体の上部および底部に配置されている。
【0141】
本発明の吸収シート、または本発明のシートからなる積層体は吸収コア中に存在し、約50〜約800gsm(g/m)、および有利には約150〜約600gsmの所望の基本質量(つまりコア中のSAPの質量)を有する。本発明の完全な利点を達成するために、基本質量は約300〜約550gsmである。コアの所望の基本質量はコアの最終使用に関連する。たとえば新生児のためのおむつは、幼児のための中程度の基本質量、および夜用の高い基本質量とは対照的に低い基本質量を有している。
【0142】
本発明のフラフを有していないコアは図3に記載されている。図3はトップシート32、バックシート36、および40で示される、トップシート32とバックシート36との間に配置された吸収コアを有する吸収製品30の断面図を示す。図3に示されているように、コア40は複数の層42からなる。層42は本発明の吸収シート材料を有し、かつ相互に組織層44により分離されている。
【0143】
トップシート32の例は、約1.5デニールのステープル長さのポリプロピレン繊維、たとえばHercules社(Wilmington、DE)から市販されているHerculesタイプ151ポリプロピレンである。ここで使用する「ステープル長さの繊維」とは、少なくとも約15.9mm(0.62インチ)の長さを有する繊維を意味する。バックシート36は液体を透過せず、かつ一般に薄いプラスチックフィルムから製造されるが、液体を透過しないその他のフレキシブルな材料を使用することもできる。バックシートは、おむつ30と接触する湿潤製品、たとえばベッドシートおよび下着から吸収コア40中に吸収され、かつ含有されている浸出液を防止する。
【0144】
図3のフラフを有していないコアは、トップシート32と層42との間に配置された付加的な層(図に示されていない)を有していてもよい。この任意の付加的な層はアクィジション/分配層として作用し、かつ通常のSAP、たとえばPAA(DN=70)を含有する。図3に記載されたフラフを有していないコアは1〜5、および有利には2〜4つの層42、つまり本発明の吸収シート材料を1〜5層有していてもよい。
【0145】
有利な実施態様では、本発明のおむつ用コアは実質的にトップシート、コア、およびバックシートからなる、つまりアクィジション層は存在しない。本発明の吸収シート材料によりもたらされる改善により、アクィジション層を使い捨ておむつから排除することが可能になる。このような結果は、高価なアクィジション層を排除することができ、おむつはより軽く、かつより薄く、かつ吸収性は不利な影響を受けない点で従来技術では新規でもあり、かつ意想外でもある。
【0146】
本発明の吸収シートを1つ以上有するコアを、0.7psiの荷重下での再湿潤、液体アクィジション時間、および液体アクィジション速度に関して試験した。以下のものは衛生用品、たとえばおむつの荷重下でのアクィジションおよび再湿潤を測定するために使用した手順を記載する。これらの試験は、衛生用品により0.7psiの荷重下で3〜5回の別々の液体の衝突にわたる、0.9質量%の食塩溶液の吸収の速度および液体保持率を示す。
【0147】
装置:
7ml/secの流速を生じるように構成された100mlの分液漏斗または該分液漏斗に相当するもの;円形の重り3.642kg(0.7psi)、直径10cm、重りの中心を通過する2.38cmのIDパースペクス線量管;
VWR Scientific、9cmの濾紙またはこれに相当するもの;
2.5kgの円形のおもり(0.7psi)、直径8cm;
デジタルタイマー;
電子はかり(精度0.01グラム);
ストップウォッチ。
【0148】
手順:
1.製造
(a)試験すべき衛生用品、たとえばおむつの重さ(g)の記録、
(b)たとえば弾性材料の除去および/または製品の端部のベンチトップへのテープ接着によるベンチトップへの衛生用品の平坦な設置、
(c)衝突箇所に配置されたパースペクス線量管の開放による衛生用品上への3.64kgの円形の重りの設置(つまり中心から前方へ向かって5cm)。
【0149】
2.初期の衝突および再湿潤試験
(a)0.9%NaCl溶液(つまり脱イオン水または蒸留水中、塩化ナトリウム0.9質量%)100mlを分液漏斗に秤量する。NaCl溶液を流速7ml/secで重りのパースペクス管へ排出し、かつ直ちにタイマーを開始する。全てのNaCl溶液がパースペクス管の底で衛生用品の表面から完全に消えたらタイマーを停止する。この時間を初期アクィジション時間(sec)として記録する。
【0150】
(b)10分経過後に、重りを除去し、かつ再湿潤手順を行う:
(i)10枚の濾紙のパイルを秤量し、この値を記録する(乾燥質量)、
(ii)該濾紙を衛生用品の衝突箇所に設置する。タイマーを2分に設定する。2.5kgのおもりを濾紙上に設置し、かつ直ちにタイマーを開始する、
(iii)2分経過後に、重りを除去し、かつ濾紙を再度秤量する(湿潤質量)。濾紙の乾燥質量を湿潤質量からマイナスし、これが再湿潤値である。この値を初期再湿潤値(g)として記録する。
【0151】
3.第二の衝突および再湿潤試験
(a)3.64kgの重りをふたたび、衛生用品の前回と同じ位置に設置する。NaCl溶液50mlを使用して工程2aを(第二のアクィジション時間として吸収時間を記録する)、および20枚の濾紙を用いて工程2b(i)〜(iii)を繰り返す(第二の再湿潤としての再湿潤を記録する)。
【0152】
4.第三、および付加的な衝突および再湿潤試験
(a)重りをふたたびおむつの前回と同じ位置に設置する。NaCl溶液50mlを使用して工程2a(第三のアクィジション時間としての吸収時間を記録する)を、および30枚の濾紙を用い工程2b(i)〜(iii)を繰り返す(第三またはその後の再湿潤としての再湿潤値を記録する)。
【0153】
本発明の吸収シート材料によりもたらされる新規で意想外の利点を示すために以下の試験を実施した。
【0154】
1つの試験では可塑剤成分の量を変更し、かつ吸収シートの種々の吸収パラメータへの影響を測定した。特にSAP成分(つまりPAA55質量%およびPVAm45質量%を含有する多成分SAP粒子)に適用した可塑剤成分(つまりプロピレングリコール)の量を変更した。そのデータは以下の表にまとめられている。全てのデータは0.7psiの荷重下で生じた。これらの試験において、吸収シートに0.9%の塩溶液100mlで第一の衝突を行い、次いで0.9%の塩溶液50mlで第二、第三および第四の衝突を行った。
【0155】
【表1】

【0156】
【表2】

【0157】
上記の表にまとめられている結果はアクィジション速度(つまり最初(第一)の衝突で1.45ml/sec)に関する可塑剤の最適量がSAP成分100質量部あたりプロピレングリコール25質量部であったことを示している。このデータは本発明のシート中の可塑剤成分の有利な量が、SAP成分100質量部あたり可塑剤成分約3〜約50質量部、およびさらに有利には約5〜約25質量部であることを示している。
【0158】
この試験におけるプロピレングリコールコア25、50および100質量部に関する再湿潤値は決定的なものではない。というのは、これらのコアの透過性は第一の衝突の一部がコアの端から漏れるほど高かったからである。0および10質量部のプロピレングリコールコア、たとえば約27.6g/gのSAPの利用率は優れていた。比較のために、通常入手可能なLUSVリーク・ガード・コアは約22.7g/gのSAP利用率を有する。さらに、コアの厚さにおける目立った増大はコア中でプロピレングリコール10〜25質量部を使用した場合に観察されなかった。SAPの利用率を以下のとおりに計算する。
【0159】
SAP利用率の計算:
再湿潤の測定は3gより大きい再湿潤値が得られるまで実施した。再湿潤の測定は無荷重下でのアクィジション時間(ストライク・スルー)試験と関連させて実施した。合計した全質量(g)から、最後の再湿潤マイナス過剰の3gの量を減じ、次いで試験したコア中のSAPの全質量で割った(g)。組織および不織布繊維による吸収は無視された。
【0160】
SAP利用率=(g−(g−3))/g
上記のシート2に関する計算例:
合計された全質量(グラム)=合計された全体積(ml)=g=210、
最終的な再湿潤(グラム)=g=4、
コア中のSAPのグラム=g=9、
SAP利用率=(210−(4−3))/9=23.2g/g。
【0161】
本発明の重要な特徴に従って、コアは再湿潤性能を犠牲にすることなく迅速なアクィジション速度を示した。たとえば種々のおむつ用コア中のSAP利用率は、本発明の可塑化された、フラフを含有しない、アクィジション/分配(AD)層を有するコアは市販のコアの性能を上回ることを示している(つまり19.2〜22.6gに対して23.2g/g)。さらに、AD層が存在していなくても、本発明のフラフを有していないコアのSAP利用率は市販の製品に匹敵する(つまり19.2〜22.6g/gに対して20.0g/g)。
【0162】
次の試験において使用される、本発明による可塑化されたフラフを有していないコアは以下のとおりに製造した:
21cm×12cmの長方形の型を、その上に樹脂接着した不織布15gsmの21cm×12cmのシートが重ねられた21cm×12cmの組織のシート上に設置した。食塩入れを使用して、多成分高吸収性ポリマー粒子(PVAm50質量%/PAA50質量%、いずれもDN=0および粒径範囲38〜355μm)3グラムを該組織および不織布繊維上に均一に分散させた。次いでプロピレングリコール0.3グラム(SAP粒子の質量に対して10質量部)をSAP粒子上に噴霧した。該プロセスを不織布繊維の不存在下に繰り返し、かつついで不織布繊維のシートを用いてもう1回繰り返した。組織の最後の層をSAP成分−可塑剤成分の混合物の上部に配置した。次いでこの積層体をCarver Press中、圧力15000ポンド(12cm×12cmの積層体上で約385psi)および50℃で5分間で圧縮した。それぞれのシートは可とう性であり、かつそれぞれのシートは以下の表にまとめられるような性能を示した。
【0163】
これらの可塑化されたフラフを有していないコアの構成は、トップ組織52およびボトム組織54を有し、組織52と54との間に配置された複数の層を有する、3層に積層された、フラフを有していない吸収コア50の断面図を示す図4に記載されている。図4に示されているように、コア50はSAP、可塑剤および不織布繊維を含有するシート材料の2つの層58を有する。コア50はSAPと可塑剤とを含有するシート材料の層60も有する。層58および60は相互に組織層56により分離されている。層58および60中のSAP成分はプロピレングリコールで噴霧した(SAP成分100質量部あたり、10質量部)。
【0164】
【表3】

【0165】
以下の表は従来技術の市販のおむつと、上記の方法で製造された、PAA50質量%およびPVAm50質量%を含有し、かつ38〜355μmの粒径分布を有し、SAP成分100質量部あたりプロピレングリコール20質量部により可塑化された多成分SAP粒子9グラムを含有し、2層の不織布繊維、および4層の組織を有する本発明の3層の積層コアとのアクィジション速度を記載する。コアは、不織布トップシートのみを使用し、かつAD層を用いずに、上記のアクィジション速度の手順によって試験された。
【0166】
【表4】

【0167】
このデータは本発明のコアの第一および第二のアクィジション速度はいずれもAD層を有する市販のおむつよりもはるかに優れていることを明らかに示している。
【0168】
本発明の吸収シート中に不織布繊維が存在することによりもたらされる湿潤強度における改善を示すために、もう1つの試験を実施した。該試験は図4に記載されているコアで実施し、かつその結果は第1表にまとめられている。
【0169】
【表5】

【0170】
これらの結果はコア中の不織布繊維の層が再湿潤性能を改善することを示している。不織布繊維は、コア中の液体流を妨げるしわおよび亀裂の形成を最小化することに役立つことが理論化されるが、しかしこのことは当てにされない。有利には湿潤強度インテグリティを改善するために、SAPおよび可塑剤成分を含有する不織布繊維の少なくとも2つの層がコア中に存在する。
【0171】
もう1つの試験では、本発明のコアを市販のコア、つまりKimberly−Clark社(Menasha、WI)から入手可能なUltra Trimおむつのコアと比較した。0.7psiの荷重下で直接的な比較を実施した。第3表にまとめられているこの結果は、AD層が存在していなくても、第一(1st)および第二(2nd)の衝突に関するアクィジション速度は、主要な製品として産業において認識されている市販の製品よりも優れていることを示している。SAP利用率もまた、本発明の可塑化され、フラフを有していないコアにおいて改善される。
【0172】
【表6】

【0173】
もう1つの試験において、図5および図6は、GBPに対する再湿潤値(図5)およびアクィジション速度(図6)の関係を示している。図5および図6におけるGBP試験は、約300〜約600μmの粒径分布を有するSAP成分において実施した。次いでこれらの粒子を約38〜約355μmのSAP粒子の粒径分布まで粉砕し、該粒子を可塑化されたフラフ不含のコアに配合した。
【0174】
図5および図6は、アクィジション速度がGBPと共に増大し、かつ再湿潤値は4500のGBPを超えると増大することを示しているが、アクィジション速度の増大は所望され、かつ再湿潤値の増大は所望されない。この現象は極めて高い透過性でのウィキング能力における低下に起因する。従って、粒径において約38〜約355μmのSAP粒子を使用する本発明の吸収シート材料は有利には約1000〜約5000、および好ましくは約2000〜約4500のGBPを有する。
【0175】
一般にGBPおよび再湿潤値はSAPの粒径分布および質量平均粒径により変化する。当業者はGBPおよび再湿潤値との間で認容可能なバランスが生じ、かつ有用な吸収シート材料が得られるようにSAPの粒径分布および質量平均粒径を選択することができる。
【0176】
もう1つの試験では、本発明の吸収シート材料の可とう性を試験した。この試験では、PVAm50質量%/PAA50質量%を含有する多成分SAP粒子3gを12cm×21cmの組織のシート上に均一に分散させることにより、単一の吸収シートを製造した。SAP粒子上に噴霧されるプロピレングリコールの質量%を変更した。最終的な組織を、噴霧したSAP粒子上に配置し、かつ384psiおよび50℃で5分間、加熱圧縮を行った。得られるコアを、標準的なLorentzen & Wettre(AB Lorentzen & Wettre、Kista、スウェーデン)共鳴剛性試験装置(Resonance Stiffness Tester)モデルCODE SE 017により、操作使用説明書に記載されているとおりに試験するために2.5cm×15.25cmに切断した。
【0177】
その結果は以下の表にまとめられている:
【表7】

【0178】
これらの試験結果は、プロピレングリコールの添加の際の剛性における迅速な低下(つまり可とう性における増大)を示している。従って、本発明の吸収シートは約6.3mNmより小さい、有利には約6より小さい、および最も有利には約5.5mNmより小さい剛性を有する。本発明の吸収シートは約2.5mNmより低い剛性を有していることができる。
【0179】
一般に本発明の吸収シートの質量が増加する場合と同様に、コアの基本質量は増加し、コアの剛性もまた上昇することが予測される。この関係は以下の表に記載されている:
【表8】

【0180】
しかし、プロピレングリコールの質量部の関数としての剛性のデータは、プロピレングリコールが意外にも、基本質量の増大にもかかわらず、シートの剛性を低下させることを示してる。
【0181】
もう1つの試験はコア性能に関するSAP成分の密度(g/cc)の効果を評価するために実施した。試験したコアは図4に記載されている構成を有していた。以下の表は密度/圧縮力および再湿潤/アクィジション速度の関係をまとめている。これらの試験において、次の値および計算を使用した。
【0182】
平均組織質量=0.415g/12×21cmシート、
平均組織厚さ=0.09mm。
【0183】
平均樹脂接着不織布シート質量=0.363g/12×21cmシート、
平均樹脂接着不織布シート厚さ=0.21mm。
【0184】
コア密度の計算(SAP/可塑剤/組織):
コア密度=質量(12cm×21cm×(厚さ/10)
SAP密度の計算(SAP/可塑剤):
SAP密度=(質量−組織の質量−不織布の質量/(12cm×21cm×(厚さ−組織の厚さ)/10)。
【0185】
不織布の厚さは無視した。コアは多成分SAP粒子(つまりPAA(DN=0)50質量%およびPVAm(100%中和されていない)50質量%、粒径分布38〜355μm)およびSAP100質量部あたりプロピレングリコール10質量部を含有する吸収シートの層を有していた。全てのコアは2層の不織布シート(0.726グラム)および4層の組織(1.66グラム、0.36mm)を有していた。
【0186】
計算例:
26psi、コア質量=12.315g、および厚さ=1.275mmの場合、
コア密度=12.315/(12×21×(1.275/10))=0.383g/cc。
【0187】
SAP密度=(12.315−0.726−1.66)/(12×21×(1.275−0.36)/10))=0.431g/cc。
【0188】
【表9】

【0189】
第一に、加熱圧縮工程で使用される圧縮力(つまり圧力)は圧縮されるSAP−可塑剤成分の密度(g/cc)に関連していた。上記の表はシートの密度は26〜512psiの範囲の圧力で増加し、次いで減少し始めることを示している。
【0190】
さらに吸収シートの密度をシートの可とう性(つまり剛性)と比較した。その結果は図7にまとめられており、これは密度と剛性との間の逆の関係を示している。特に図7は増大した可とう性(減少した剛性)の予期しない結果をコア密度の増大として示している。図7はコア密度がSAP成分100質量部に対してプロピレングリコール0〜約50質量部で増大し、かつ次いで約384psiの圧力で減少することを示している。
【0191】
上記の表のデータは、0.9%塩溶液を使用した第一から第四の衝突に関するアクィジション速度は吸収シート材料の密度が上昇するにつれて増大することを示している。さらに、上記の表のデータは第二から第四の衝突に関する再湿潤値が、吸収シートの密度が上昇するにつれて劇的に減少することを示している。
【0192】
従って吸収シートの密度とアクィジション速度、再湿潤および剛性(つまり可とう性)との間に強力な関係が存在する。たとえば再湿潤値は密度が上昇すると低下し、このことは所望される特性であり、かつ毛細管作用の増大に起因する。毛細管作用の増大はより良好なコア利用率にもつながる。
【0193】
意外なことに、コアのアクィジション速度は密度と共に増大するが、これは予期されなかったことである。この予期されない結果は、衝突箇所からの衝突のより良好な移動のために増大されたウィキングの結果であり、このことにより衝突領域におけるゲルブロッキングが低減することが理論化されるが、しかし当てにはならない。
【0194】
要約すると、該試験は本発明の吸収シート材料は、シートが約0.30〜約0.9g/cc、有利には約0.45〜約0.85g/cc、および最も有利には約0.65〜約0.85g/ccである場合に極めて良好に作用することを示している。密度の測定は12cm×21cmのコアの厚さおよび質量を測定し、次いで組織層の質量および厚さを減じることにより行った。
【0195】
もう1つの試験では、本発明の材料の吸収シートをエンボス加工した。従来技術において、エンボス加工、またはキルティングは、シート材料の可とう性を増大することが公知である(つまり機械的柔軟化の1形態)。しかし本発明のフラフを有していないおむつ用コアのエンボス加工はアクィジション速度を増大することも判明した。ニードルパンチ加工もまた本発明のシート材料を機械的に柔軟にするために使用することができる。
【0196】
次の表は、図4に記載した構造を有し、引き続きエンボス加工法として種々のメッシュのスクリーンを用いて圧縮した3層の積層コアにおいて実施した試験の結果をまとめている。エンボス加工工程のために使用した圧力は384psiであり、12インチ×12インチのCarver Pressを50℃で5分間使用した。
【0197】
【表10】

【0198】
標準的な不織布トップシートを使用し、かつAD層の不存在下でコアを試験した。上記の表は中間のメッシュおよび粗目のメッシュは極めて迅速な第一、第二および第三のアクィジション速度をもたらしたことを示している。細目メッシュは第二および第三の衝突の両方に関して優れたアクィジション速度を与える。
【0199】
総じて上記の試験は、本発明の吸収シートを1つ以上有する本発明のおむつ用コアが4回の衝突にわたって実質的に一定の、または低減したアクィジション時間を維持することを示している。この特性の実用的な結果は、アクィジション層の非存在下でも、噴出する状況および再湿潤状況における漏れを防止する改善された能力を有するコアである。
【0200】
本発明のコアにより示される改善された結果は、コアの厚さの低減も可能にする。一般にコアはゲルブロッキングのような問題を回避する一方で、迅速な液体吸収を達成するためにフラフまたはパルプを50%以上含有する。本発明の吸収シートを1つ以上有する本発明のコアは、ゲルブロッキングのような問題を低減するために十分迅速に液体を吸収し、ひいてはコア中のフラフまたはパルプの量を低減するか、または排除することができる。低密度フラフの量を低減することにより、より薄いコアひいてはより薄いおむつが得られる。
【0201】
特に本発明の吸収コアは、現在市販されているコアの4mmの厚さと比較して、約0.5〜約2mmの厚さを有している。さらに、おむつはフラフの排除に基づいてより軽量である、つまり現在市販されているコアの20グラムの重さと比較して10グラムのコアである。
【0202】
可塑化され、フラフを含有していない本発明のコアは一般に同一のSAP濃度を有する市販のコアよりも質量において50%以上軽い。この特徴は輸送コストおよび廃棄処理場へ送られる材料の質量を低減する。さらにこれらの可塑化され、フラフを含有していないコアの厚さは一般に、市販のおむつ用コアよりも約80%少ない。この特徴は包装コストを低減し、かつ使用および着用がより容易な製品を提供することに役立つ。
【0203】
より薄いおむつ用コアに加えて、アクィジション層をおむつから排除することができる。おむつ中のアクィジション層は一般に、不織布または繊維状の材料であり、一般に高い度合いの間隙または「ロフト」を有し、これが液体の初期の吸収を補助する。本発明のコアは、アクィジション層を有していないおむつが実用的であるために十分な速度で液体を吸収する。特に、本発明によるおむつ用コアが、現在市販されているおむつの0.3ml/secと比較して約1ml/secのアクィジション速度を有するので、アクィジション層を排除することができる。従ってより簡単で、より安価な吸収製品を製造することができる。
【0204】
総合的には本発明のシート材料はSAP成分と可塑剤成分とのみからなる不織布繊維に関して優れた構造的インテグリティを有する。特に、該シート材料は輸送、貯蔵およびその後の使用のためにロール状に巻くために十分な可とう性および構造的インテグリティを有する。
【0205】
本発明の吸収シートは衛生製品、たとえばおむつ、大人用失禁製品、生理用ナプキン、一般的な目的のためのふき取り用品およびクロスにおいて、および水性廃棄物の固化において有用である。その他の使用は包装容器、ドラッグデリバリーシステム、創傷清浄用品、火傷の手当用品、イオン交換カラム材料、建築材料、農業用および園芸用材料、たとえば播種用シートまたは保水材料、および産業用の使用、たとえばスラッジまたは油の脱水剤、結露の形成を防止するための材料、乾燥剤および水分制御材料を含む。
【0206】
本発明の趣旨および範囲を離れることなく、本発明の前記の多数の修正および変更を加えることが可能であり、従ってこのような限定は従属請求項により示されているような制限が課されるのみである。
【符号の説明】
【0207】
10 SAP粒子、 12 第二の樹脂、 14 ミクロドメイン、 20 SAP粒子、 22 酸性樹脂、 24 塩基性樹脂、 30 吸収製品、 32 トップシート、 36 バックシート、 40 吸収コア、 42 吸収シート材料の層、 44 組織層、 50 吸収コア、 52 トップ組織、 54 ボトム組織、 56 、 58 シート材料の層、 60 シート材料の層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)次のもの
(i)中和されていない酸性の吸水性樹脂少なくとも1種および
(ii)中和されてない塩基性の吸水性樹脂少なくとも1種
を含有する高吸収性ポリマー成分、および
(b)高吸収性ポリマー成分100質量部に対して可塑化成分を約0.1〜約200質量部の量での可塑化成分
を含有し、その際、シートが(a)および(b)を約60〜100質量%含有する、フレキシブルな吸収シート。
【請求項2】
高吸収性ポリマー成分が酸性樹脂の分離した粒子および塩基性樹脂の分離した粒子を含有する、請求項1記載のシート。
【請求項3】
高吸収性ポリマー成分が多成分の高吸収性ポリマー粒子を含有し、その際、それぞれの粒子は塩基性樹脂のミクロドメイン少なくとも1つと接触しているか、または近接している酸性樹脂のミクロドメイン少なくとも1つを有する、請求項1または2記載のシート。
【請求項4】
高吸収性ポリマー成分が、約10〜約810μmの粒径分布を有する粒子を含有する、請求項1から3までのいずれか1項記載のシート。
【請求項5】
高吸収性ポリマー成分が、約30〜約375μmの粒径分布を有する粒子を含有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のシート。
【請求項6】
高吸収性ポリマー成分が約400μmより小さい質量平均粒径を有する粒子を含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のシート。
【請求項7】
酸性の吸水性樹脂が、ポリアクリル酸、加水分解されたデンプン−アクリロニトリルグラフトコポリマー、デンプン−アクリル酸グラフトコポリマー、けん化されたビニルアセテート−アクリルエステルコポリマー、加水分解されたアクリロニトリルポリマー、加水分解されたアクリルアミドコポリマー、エチレン−無水マレイン酸コポリマー、イソブチレン−無水マレイン酸コポリマー、ポリ(ビニルホスホン酸)、ポリ(ビニルスルホン酸)、ポリ(ビニルリン酸)、ポリ(ビニル硫酸)、スルホン化ポリスチレン、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(乳酸)およびこれらの混合物からなる群から選択されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のシート。
【請求項8】
塩基性の吸水性樹脂が、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド)、N−(ジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド)のエステル類似体から製造されるポリマー、ポリエチレンイミン、ポリ(ビニルグアニジン)、ポリ(アリルグアニジン)、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ジメチルジアルキルアンモニウムヒドロキシド)、グアニジン−変性ポリスチレン、四級化ポリスチレン、四級化ポリ(メタ)アクリルアミドまたはこれらのエステル類似体、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)およびこれらの混合物からなる群から選択されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のシート。
【請求項9】
可塑剤成分がアルコール、グリコール、トリオール、ポリヒドロキシ化合物、アミンアルコール、アミド、スルホキシド、グリコールエーテル、グリコールエステル、非プロトン性溶剤およびこれらの混合物からなる群から選択されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のシート。
【請求項10】
可塑剤成分がグリセロール;プロピレングリコール;エチレングリコール;ヘキシレングリコール;1,3−ブチレングリコール;ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;1,3−プロパンジオール;ペンタエリトリトール;1,4−ブタンジオール;ジアセトンアルコール;水;トリメチロールプロパン;トリメチロールエタン;ネオペンチルグリコール;シクロヘキサンジメタノール;イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシプロパノール−2);ポリエチレングリコール(MW500未満);ポリプロピレングリコール(MW500未満);ポリブチレングリコール(MW500未満);メタノール;エタノール;ブタノール;モノアセチン、ジアセチンおよびトリアセチン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールのモノメチル、エチル、ブチルおよびフェニルエーテル、たとえばプロピレングリコールのモノメチルエーテルまたはエチレングリコールのモノエチルエーテル;ジメチルホルムアミド;ジエチルホルムアミド;N−メチルピロリドン;ジメチルスルホキシド;トリエタノールアミン;ジエタノールアミン;テトラヒドロフラン;エチレンカーボネート;イソホロン;ジオキサン;ヘキサメチルリンアミド;ソルビトール;ソルビタン脂肪酸エステル;水性スクロース;式:
【化1】

[式中、R、RおよびRは、無関係に、C〜C−アルキルであり、かつRは水素、C〜C−アルキルおよびC(O)Rからなる群から選択されており、その際、Rはアルキル基である]を有するシトレート;エトキシル化アルキルフェノール;およびプロポキシル化脂肪(C〜C22−)アルコール;メチルグルコースのポリエチレングリコールエーテル;ソルビトールのポリエチレングリコールエーテル;エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロックコポリマー;脂肪(C〜C22)酸のエトキシル化エステル;エチレンオキシドと長鎖のアミンもしくはアミドとの縮合生成物;およびこれらの混合物からなる群から選択されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のシート。
【請求項11】
SAP成分を内部で可塑化する、請求項1から10までのいずれか1項記載のシート材料。
【請求項12】
酸性の吸水性樹脂がポリ(アクリル酸)を含有し、塩基性の吸水性樹脂がポリ(ビニルアミン)、ポリエチレンイミンまたはこれらの混合物を含有し、かつ可塑剤がプロピレングリコール、グリセロール、水およびこれらの混合物を含有する、請求項1から11までのいずれか1項記載のシート材料。
【請求項13】
任意の成分1種以上を合計で40質量%まで含有する、請求項1から12までのいずれか1項記載のシート。
【請求項14】
任意の成分が通常の高吸収性ポリマー、非吸収性充填剤、不織布繊維、浸透促進剤、顔料、およびこれらの混合物からなる群から選択されている、請求項1から13までのいずれか1項記載のシート。
【請求項15】
約6mNmより小さい剛性を有する、請求項1から14までのいずれか1項記載のシート材料。
【請求項16】
約0.3〜約0.9g/ccの密度を有する、請求項1から15までのいずれか1項記載のシート材料。
【請求項17】
シートがエンボス加工されているか、またはニードルパンチ加工されている、請求項1から16までのいずれか1項記載のシート材料。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか1項記載のシートを有する吸収製品。
【請求項19】
製品がおむつまたは生理用品である、請求項18記載の製品。
【請求項20】
コアを有し、該コアが請求項1から17までのいずれか1項記載の吸収シートを少なくとも1つ有するおむつ。
【請求項21】
コアが請求項1から17までのいずれか1項記載の吸収シートを2〜5つ有する、請求項20記載のおむつ。
【請求項22】
隣接するシートの少なくとも1つが該シート間に配置されたウィキング層を有する、請求項21記載のおむつ。
【請求項23】
さらにコアの第一の表面と接触しているトップシート、およびコアの第二の表面と接触しているバックシートを有し、前記第二のコア表面が前記第一のコア表面に対向している、請求項20から22までのいずれか1項記載のおむつ。
【請求項24】
さらにトップシートとコアとの間に配置されたアクィジション層を有する、請求項20から23までのいずれか1項記載のおむつ。
【請求項25】
おむつがアクィジション層を有していない、請求項20から23までのいずれか1項記載のおむつ。
【請求項26】
シートがセルロース繊維を有していない、請求項20から25までのいずれか1項記載のおむつ。
【請求項27】
シートの少なくとも1つがさらに不織布繊維を25質量%まで含有する、請求項20から26までのいずれか1項記載のおむつ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−229417(P2010−229417A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122624(P2010−122624)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【分割の表示】特願2004−500939(P2004−500939)の分割
【原出願日】平成15年4月29日(2003.4.29)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】