説明

フレキシブルガイド及びフレキシブルガイドを有する産業用ロボットのケーブル支持装置

【課題】周辺機器との干渉が少なく、ケーブルやホースの伸び曲げ挙動を考慮する必要のない一定形状を維持可能な構造が簡単で取扱易いフレキシブルガイド及びそれを用いた産業用ロボットのケーブル支持装置を提供。
【解決手段】筒状のフレキシブル部材20と、フレキシブル部材の両端に設けられた固定部7、8と、フレキシブル部材の長手方向に沿って軸対称に形成された一組の挿通穴12a、12bと、それぞれの挿通穴に挿通された固定部間の長さL1、L2が異なる二本の線材13、14とを有するフレキシブルガイド9とする。線材の長さは調整可能とする。産業用ロボットの第一のアーム1と、アーム支持軸1aに対して回転自在に支持された第二のアーム2に、フレキシブルガイドの両固定部の開口穴7a、8aがアーム支持軸回りに同方向側に向くように、かつ、線材の長さが短い側の側面部7d、8dをアーム支持軸線側となるように各アームに固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットのアーム先端に取り付けられる作業工具へ接続されるケーブル・ホースの引き回しを処理するケーブル支持装置に関し、特にケーブル支持装置に用いるフレキシブルガイド及びフレキシブルガイドを用いた産業用ロボットのケーブル支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットはロボットアーム先端のエンドエフェクタに取り付けられた作業工具と、ロボットアーム上または周辺に設置された機器との間を、動力・信号用のケーブルおよびホースで接続されている。ロボットの動作に必要な移動量分のケーブルを弛ませてロボットアームの周囲に敷設した場合、ケーブルの挙動が安定しないばかりか、ロボットアーム自身や周辺機器に干渉しケーブルが損傷する問題がある。
【0003】
そこで、ケーブルの挙動をアームに巻きつくようなU字型形状に維持することで、周辺機器との干渉を少なくするケーブル支持装置として、特許文献1に円弧帯状の部材に配置された複数の扇形サポートブロックによるケーブル支持装置、特許文献2に複数のサポートブロックをピン結合により円弧帯状に連結するケーブル支持装置、特許文献3に中央で連結される複数のサポートブロックのそれぞれに連結部を挟んでスペーサあるいは突出規制部を設けて円弧形状を形成するケーブル支持装置が開示されている。また、特許文献4には円筒型ガイド内でU字型にケーブルを案内するケーブル支持装置が開示されている。また、特許文献5には、基部側の支持部を摺動・回転可能としてケーブルの弛みを吸収するケーブル支持装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭58−184293号公報
【特許文献2】特開昭62−34795号公報
【特許文献3】特開2006−304559号公報
【特許文献4】特開2004−17220号公報
【特許文献5】特開2006−150496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2、3に開示する公知の解決手段は、いずれも円弧帯状に配列された複数のサポートブロックを連結することにより、アーム周囲に巻きつくU字型形状を維持する。いずれの場合も、必要な移動量に応じた数量のサポートブロックを1つ1つ連結する必要があり、製作には多大な工数が発生する問題がある。また、部品点数の多さが高コストの要因となっている。
【0006】
さらに、特許文献1、2、3のいずれの場合も円弧帯状に配置されるサポートブロックの形状によって円弧の曲率半径が決まるため、U字型形状を形成した際のアームに巻きつく径も一意に決まってしまう。求める巻きつき径はロボットの大きさや適用部位によって異なるため、それぞれに応じた形状のサポートブロックが必要という問題があり、転用や流用の自由度が少ない。また、サポートブロックは一般に樹脂成型されており、これらを複数種類必要とすることも高コストの要因となっている。
【0007】
また、特許文献4に開示される解決手段では、アーム周囲に巻きつく形状を維持するため円筒状の案内ガイドが必要であり、装置の大型化および重量が増加する問題がある。
【0008】
さらに、特許文献5に開示される解決手段では、アーム周囲の弛みが生じない代わりに、基部側アーム上にケーブルが大きく張り出す形で弛みが吸収されるため、アーム周囲以外のロボット上方や後方でケーブルが周辺機器などと干渉する問題がある。
【0009】
本発明の課題は、係る従来技術の問題点の解決を目的とし、簡単な調整により求めるケーブル挙動を実現する、低コストで簡便、小型、軽量のケーブル支持装置に用いるフレキシブルガイド及びフレキシブルガイドを用いた産業用ロボットのケーブル支持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明においては、筒状のフレキシブル部材と、前記フレキシブル部材の両端に設けられ前記フレキシブル部材の貫通穴と開口を共通にする開口穴を有する固定部と、前記フレキシブル部材の長手方向に沿って前記フレキシブル部材の横断面中心軸対称に形成された一組の挿通穴と、それぞれの挿通穴に挿通された二本の線材と、を有し、前記線材の両端はそれぞれ前記固定部に固定され、前記二本の線材の固定部間の長さが異なっているフレキシブルガイドを提供することにより、前述した課題を解決した。
【0011】
筒状のフレキシブル部材は、柔軟又は蛇腹状の樹脂や金属チューブ、あるいは外装につるまきばね等の材料を用い、単数又は複数の組み合わせで構成され、曲げ、ねじり、伸縮自在にされる。本発明においては、両端に固定部を設け、横断面中心軸対称の挿通穴に通した線材を固定部に固定したので、線材によりフレキシブル部材の曲げ、ねじり、伸縮方向に規制がかかるようにされる。さらに、線材の長さが異なるので、短い方の線材を内側とし、長い方の線材を外側とするドーナツ形状の一部、半ドーナツ形状を形成する。両端の固定部の幅方向位置を規制すれば、U字形状あるいはΩ字形状等を形成する。また、線材の長さを調整することにより、任意の曲率半径を容易に得ることができる。
【0012】
そして、例えば、フレキシブルガイドの固定部側を手前にして水平に置かれた状態で、左右の固定部材を短い方の両線材が下側になるよう内側に回転させると、フレキシブル部材の中央部が下方に向かうように力を受ける。その状態で持ち上げると、重力の影響を受けフレキシブル部材の中央部が下方手前側にねじれた形状を形成する。この性質を利用して、短い方の線材が軸側となるように、また、重力によりフレキシブル部材の中央部が下方に向かうように、軸に沿って固定部材を配置することにより、重力による曲がりと、異なる長さの線材の曲げ力によりフレキシブル部材が軸周りに巻きつくような形状を確保することができる。これにより、固定部材以外の場所を規制することなくフレキシブルガイドの形状を確保することができる。
【0013】
なお、短い方の線材の両方を上側になるよう外側に回転させると、フレキシブル部材の中央部が上側にねじれるように力が加わる。また、固定部を長くすれば、フレキシブルガイド全体の形状をU字状に、短くすればΩ字状に近似するように調整することもできる。さらに、フレキシブル部材の変形方向に合わせて、固定部に曲げを加えれば、巻きつき形状を確保しやすくなる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明においては、前記線材の固定部間の長さを調整可能した。これにより、フレキシブルガイドの長さ、曲率に対応でき、特に種々の曲げ力、曲げ半径等を容易に得ることができる。また、線材の材質を代えても有効である。
【0015】
かかるフレキシブルガイドを用いることにより、基部となる第一のアームに設けられたアーム支持軸に回転自在に支持された第二のアームを有する産業用ロボットのケーブルをアーム支持軸線、すなわち第二のアーム軸周りに巻きつくように規制できる。そこで、請求項3に記載の発明においては、基部となる第一のアームと、前記第一のアームのアーム支持軸に対して回転自在に支持された棒状の第二のアームと、を有する産業用ロボットであって、請求項1記載の前記フレキシブルガイドの両端の固定部の開口穴が前記アーム支持軸回りに同方向側に向くように、かつ、一方の前記固定部の前記線材の長さが短い側の側面部が前記アーム支持軸線側となるように前記第一のアームに固定され、他方の前記固定部の前記線材の長さが短い側の側面部が前記第二のアームの外周に固定され、前記開口穴を通って前記第一のアーム及び第二のアーム間を接続するケーブルが前記貫通穴に挿通されているフレキシブルガイドを有する産業用ロボットのケーブル支持装置を提供する。
【0016】
これにより、第一のアームに対して第二のアームがアーム支持軸周りに相対回転しても、フレキシブルガイドは重力と、異なる長さの線材による曲げ力とでアーム支持軸線周りに巻きつくようなU字状又はΩ字状の形状を自ら確保するように働き、ケーブルはフレキシブルガイドにより保持される。なお、フレキシブルガイドにはケーブルの他、油又は空圧用のフレキシブルホース(配管)や信号線等が挿通されてもよいことはいうまでもない。
【0017】
また、請求項4に記載の発明においては、前記フレキシブルガイドの前記第一のアーム側の固定部の前記開口穴は下向きに開口するようにした。これにより、フレキシブルガイドに重力を効率よく作用させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フレキシブル部材の両端に固定部を設け、横断面中心軸対称の挿通穴に通した長さの異なる線材をそれぞれ固定部に固定するという簡単な構造で、フレキシブルガイドの曲げ、ねじり、伸縮方向に規制をかけることを可能としたので、簡単な調整により求めるケーブル挙動を規制する、低コストで簡便、小型、軽量のフレキシブルガイドを提供するものとなった。
【0019】
また、請求項2に記載の発明においては、線材の長さを調整可能とし、種々の曲げ力、曲げ半径等を容易に得ることができ、さらに、フレキシブルガイド、挿通穴、線条部材は連続体であり、任意の長さを容易に得ることができ、種類も少なく、取り扱いも容易なものとなった。さらに、線材の長さ調整で円弧形状を形成することにより、円弧の曲率半径は無段階に任意に決定することができ、求める任意の径でロボットアーム等に巻きつくU字型形状を維持するケーブル支持構造を提供することができる。
【0020】
そして、請求項3に記載の発明においては、産業用ロボットの基部となる第一のアームのアーム支持軸に対して回転する第二のアームに対して、フレキシブルガイドが重力と、異なる長さの線材による曲げ力によりアーム支持軸線(第二のアーム外周)周りに巻きつくようなU字状又はΩ字状の形状を自ら確保するように働く、あるいは一定形状を維持可能としたので、ケーブルやホースを収納し、ケーブルやホースの伸び曲げ挙動を考慮する必要を減じて、多数のサポートブロックや大型の案内ブロックを不要とするものとなった。さらには、ケーブル類の張り出しを少なくでき、産業用ロボットのアーム周りの構造が簡単で、メンテナンスしやすく、見栄えもすっきりするケーブル支持装置となった。また、フレキシブルガイドに挿通させるケーブル移動量に応じて必要な長さに切り出すことで製作が可能であるため、部品点数が少なく、組立が容易な低コストのケーブル支持装置を提供可能となった。
【0021】
また、請求項4に記載の発明においては、フレキシブルガイドの第一のアーム側の固定部の開口穴を下向きに開口させ、重力を有効に作用させたので、フレキシブルガイドをアーム支持軸線(第二のアーム軸)周りに確実に巻きつくようにすることができるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】の部分断面斜視図である。
【図2】図1のX−X線断面を示す拡大断面図である。
【図3】ケーブル支持装置をU字型に折り曲げた状態を表す概略図である。
【図4】(a)、(b)、(c)は本発明の他の実施の形態を示すフレキシブルガイドの図1のX−X線断面図に相当する部分を示す拡大断面図である。
【図5】(a)は本発明の産業ロボットのケーブル支持装置の一実施形態を示す概略上面図、(b)は正面図、(c)は(b)のY−Y線断面を示す部分拡大断面図であり、フレキシブルガイドが中心線対称形となる位置での状態を示している。
【図6】実際にフレキシブルガイドを相対回転する軸間に取り付けてその様子を図示したものであり、(a)、(b)は(c)位置から回転軸を右回転した状態、(c)はフレキシブルガイドが中心線対称形となる位置での状態、(d)は原位置状態から左回転させた状態、(e)(f)はさらに左回転させた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のフレキシブルガイドの第一の実施の形態について図を参照して説明する。図1、2に示すように、本発明のフレキシブルガイド9を構成する筒状のフレキシブル部材20は、ケーブル・ホース10を挿通する貫通穴21を有する筒状の内側フレキシブルチューブ11を芯として、その外周の多数の小径チューブ12、小径チューブの外周に設けられた外筒用チューブ22から構成される。小径チューブ12は内側フレキシブルチューブに沿って同軸方向に多数隙間なしに配置されている。外筒用チューブ22は小径チューブ12、内側フレキシブルチューブ11を外周から押さえて、内側フレキシブルチューブ及び小径チューブの径方向、円周方向の動きを規制している。内側フレキシブルチューブ、小径チューブ、外筒用チューブ等の各部品は柔軟性を有し、曲げ、撓み、ねじり変形等が容易な、樹脂、ゴム、蛇腹、巻き線ばね等の材料を使用する。
【0024】
図1に示すように、フレキシブル部材20の両端には開口穴を備えた段付き円筒形状の固定部7、8が設けられている。固定部の開口穴7a、8aは内側フレキシブルチューブ11の外径とほぼ同径であり、貫通穴21と開口を共通にしている。固定部はフレキシブル部材20の両端を固定できるように剛体とされ、例えば鉄、アルミニウム等の金属、剛性の高い樹脂等を用いる。
【0025】
特に本実施の形態においては、図1乃至3に示すように、内側フレキシブルチューブ11の外周に円周状に配置された小径チューブ12の対角又は対辺位置(フレキシブル部材20の横断面中心軸20a対称)の一対の小径チューブの内側を挿通穴12a、12bとして、それぞれワイヤー(線材)13、14が挿通されている。ワイヤーの両端はそれぞれ固定部に設けられたワイヤーの固定位置を調整可能なストッパ15、16によって、固定部7、8に固定されている。ワイヤーの固定位置を変えることにより、ワイヤー長さ、すなわち線材の固定部間の長さを調整することができ、二本のワイヤーの固定部間の長さL1、L2を異ならせて固定する。なお、小径樹脂チューブ12は奇数、偶数本、径の異なるものでもよく、一対の挿通穴は完全対称である必要はない。
【0026】
ストッパ15、16は種々の方法が可能である。簡単には、固定部にワイヤー挿通穴7e、8eを設け、ワイヤー13、14の後端にワイヤー挿通穴より大きな抜止部13a,14aを設ける。ワイヤーの先端を図1で右側のワイヤー挿通穴7e、7e、挿通穴12a、12bを挿通して、左側のワイヤー挿通穴8e、8eから引き出し、所定の長さになるようにしてから、ワイヤーの先端をワイヤー挿通穴より大となるかしめ材15a、16aでかしめればよい。
【0027】
かかるフレキシブルガイドを自由状態で平面に置いた場合(平面円弧状態)、円弧内側に配置される内側ワイヤー13の長さL1と、円弧外側に配置される外側ワイヤー14の長さL2の内外差により、ドーナツ形状の一部、半ドーナツ形状を形成する。両端の固定部7、8の幅方向位置を規制すれば、U字形状あるいはΩ字形状等を形成する。またフレキシブルガイド9のなす平面円弧状態における曲率半径Rを無段階に任意に定めることができる。
【0028】
さらに、図3に示すように、長さの短い側のワイヤー(内側ワイヤー)13を下側、長さの長い側のワイヤー(外側ワイヤー)14を上側となるように固定部7、8の向きを合わせてフレキシブルガイド9をU字型に折り曲げて持ち上げると、フレキシブル部材20は仮想軸線bの周りに半径rの円弧状に巻きついたU字型形状を形成する。このようにして形成されたU字型形状のフレキシブルガイドを、同軸上で相対的に回転する軸のそれぞれに固定部の長さの短い側のワイヤー側の側面部7d、8dを取り付けることにより、回転軸の周囲に巻きつくU字型形状を維持したケーブル支持装置等を実現することができる。
【0029】
また、小径チューブ12には必要に応じて流体を流すことも出来るため、内側フレキシブルチューブ11内にさらに配管用チューブを通す必要がなく内側フレキシブルチューブを細くすることができる。この場合、固定部側に小径チューブとの接続穴等の接続部を設ける。
【0030】
次に、本発明のフレキシブルガイド9の他の実施の形態について説明する。第一の実施の形態においては、フレキシブル部材20の線材(ワイヤー)13、14の位置を対称位置あるいは対角又は対辺位置に維持するために、内側フレキシブルチューブ11の外周に小径チューブ12を配置したが、フレキシブル部材20の中心軸20aに対して対称位置であればよく、内側フレキシブルチューブ11の中心とはずれてもよい。また、小径チューブ12はすべて同径である必要はない。
【0031】
そこで、本発明のフレキシブガイドの第二の実施の形態においては、図4(a)に示すように、外筒用チューブ22の内壁に接するように内側フレキシブルチューブ11を偏心させて挿入し、外筒用チューブと内側チューブとの空隙部分に径の異なる小径チューブ12′を複数本配列し、フレキシブル部材の中心軸対称位置に二個の挿通穴12a、12b用の小径チューブ12を設けて、挿通穴にワイヤー13、14を挿通した。なお、小径チューブ12、12′は径の他、穴径(穴のないものを含む)、材質を異ならせてもよい。
【0032】
また、挿通穴12a,12bとして用いない小径チューブ12′を配管等で使用しない場合は、一体ものでもよい。そこで、本発明のフレキシブガイドの第三の実施の形態においては、図4(b)に示すように、外筒用チューブ22の内壁に接するように内側フレキシブルチューブ11を偏心させて挿入し、外筒用チューブと内側チューブとの空隙部分に空隙部分と嵌合し、その先端がフレキシブル部材の中心軸対称位置となるような、断面三日月状のフレキシブルな介在物17を配設し、外筒用チューブと内側フレキシブルチューブと三日月状介在物17の両先端間の二か所にそれぞれ挿通穴12a、12b用の小径チューブ12を設けて、挿通穴にワイヤー13、14を挿通した。
【0033】
さらには、内側フレキシブルチューブ11とワイヤー13、14の挿入される小径チューブ12a、12bは一体化されてもよい。さらには、外筒用チューブ22とも一体でもよい。そこで、本発明のフレキシブガイドの第四の実施の形態においては、図4(c)に示すように、一体成型のフレキシブルチューブ20′に貫通穴21、を設け、フレキシブルチューブの壁内に中心軸20a対称位置に二か所の挿通穴12a、12bを設けて、挿通穴にワイヤー13、14を挿通した。これにより、さらに、部品点数を削減できる。
【0034】
次に、本発明のフレキシブルガイドを有する産業用ロボットのケーブル支持装置について図を参照して説明する。図5に示すように、本発明の産業用ロボット50のケーブル支持装置51は、基部となる第一のアーム1、第一のアームのアーム支持軸1aに対して回転可能にされた棒状の第二のアーム2と、ケーブル・ホース10が挿通される前述した本発明のフレキシブルガイド9からなる。基部となる第一のアーム1は、例えば産業用ロボットの揺動アーム(図示せず)の軸55を中心として揺動可能(矢印56)にされている。第一のアーム1の図示で左側の出力部1bにアーム支持軸1aが設けられ第二のアーム2の基部2bが第一のアーム1の出力部1bに対して支持軸に対して回転自在(矢印57)に接続されている。なお、産業用ロボットの第一のアーム1、第二のアーム2、先端部以外の他の部分は省略している。
【0035】
第一のアーム1から第二のアーム2に向かってブラケット3が延出している。フレキシブルガイド9の第一のアーム側端部に設けられた固定部7をその開口7aが下向きになるように、かつ、固定部間長さを短くされたワイヤー13側側面部7dがアーム支持軸線1a側になるように、クランプ5によりブラケット3の端部に固定されている。フレキシブルガイド9の第二のアーム側端部に設けられた固定部8が第二のアームの回転方向原位置時点で、その開口8aが下向きになるように、かつ、固定部間長さを短くされたワイヤー13側側面部8dがアーム支持軸線1a側になるように、クランプ6により第二のアームの外周に設けられた側面ブラケット4に固定されている。
【0036】
これにより、フレキシブルガイド9のフレキシブル部材20は、異なる長さのワイヤー13、14による力と、重力を受けて、支持軸1a線周りに巻き付くように変形し、図5に示すような、U字形状を確保する。ケーブル・ホース10は、第一のアーム1側から、フレキシブルガイド9の第一のアーム側の固定部7の開口穴7a、貫通穴11a、第二のアーム側の固定部8の開口穴8aを通って、産業用ロボットの第二のアームの先端52に配設されている。したがって、ケーブル・ホース10もフレキシブルガイドとともにU字形状に規制される。
【0037】
図6は実際にフレキシブルガイド9を相対回転する相対回転する軸間に取り付けてその様子を図示したものである。図5とは左右を逆に示し、左側を基台側とし、右側を回転させている。また、フレキシブルガイド9は第一の実施例と同様であるが、外筒及び内側フレキシブルチューブに巻き線ばねを用いたものである。図6(C)に示すように、フレキシブルガイド9の固定部7をその開口7aが下向きになるように、かつ、固定部間長さを短くされたワイヤー13側がアーム支持軸1a側になるように図示しない基台に固定されている。フレキシブルガイド9の他方の固定部8が、その開口8aが下向きになるように、かつ、固定部間長さを短くされたワイヤー13側がアーム支持軸線1a側になるように、支持軸に対して回転する回転軸(第二のアーム)に図示しない固定部材により固定されている。図5と同様である。
【0038】
次に、回転軸を支持軸1a周りに図で見て右回転58させると図6(b)に示すように、固定部8が下方に移動するが、フレキシブル部材20はU字形状を保持しながらねじれ、支持軸1a周りに巻きつく状態を保持する。さらに、右回転59させると図6(a)に示すように、固定部8が真下に移動するが、フレキシブル部材は形状を保持している。さらに回転させるとねじれが強くなり巻き付き力が大きくなる。
【0039】
一方、回転軸を図で見て左回転60,61させると図6(d)(e)に示すように、固定部8が上方に移動するが、フレキシブル部材20はU字形状を保持しながら支持軸1a周りに巻きつく状態を保持する。さらに、左回転62させると図6(f)に示すように、固定部8が真上に移動するが、フレキシブル部材は形状を保持することができる。
【0040】
図3で述べたように、U字型形状のフレキシブルガイドが仮想軸線bに巻きつく半径rは、図1に示す平面円弧状態における曲率半径Rとほぼ等しい。したがって、求める半径rを得るためにはストッパ15、16の位置調整によりワイヤー13、14の長さL1、L2を調整し、平面円弧状態における曲率半径Rを調整すればよい。また、ワイヤー13、14の長さ調節はケーブル支持装置をロボットアームに搭載した後でも可能であるため、配線施工後の巻きつき径の変更や修正も容易に可能である。
【0041】
以上説明したように、本発明のフレキシブルガイド9を有する産業用ロボット50のケーブル支持装置51は、二本のワイヤー13、14の長さ調整でフレキシブルガイドのなす円弧の曲率半径を無段階に任意に決定することができ、求める任意の径でロボットアームに巻きつくU字型形状を維持するケーブル支持構造を提供することができる。さらに、フレキシブル部材(内側フレキシブルチューブ、小径チューブ、外筒用チューブ等)、線材(ワイヤー)は連続体であり、ケーブル移動量に応じて必要な長さに切り出すことで製作が可能であるため、部品点数が少なく、組立が容易な低コストのケーブル支持装置となった。なお、産業用ロボットのケーブル支持について説明したが、同軸上に相対的に回転可能な機構を有するものであれば産業用ロボット以外にも適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
1 第一のアーム
1a アーム支持軸
2 第二のアーム(回転軸)
7 (一方の)固定部
8 (他方の)固定部
7a,8a 開口穴
7d、8d 短い側の線材側側面部
9 フレキシブルガイド。
10 ケーブル
11 貫通穴
12a、12b 挿通穴
13 (短い側の)線材(ワイヤー)
14 (長い側の)線材(ワイヤー)
20 フレキシブル部材
20a フレキシブル部材の横断面中心軸
50 産業用ロボット
51 ケーブル支持装置。
L1、L2 固定部間の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のフレキシブル部材と、前記フレキシブル部材の両端に設けられ前記フレキシブル部材の貫通穴と開口を共通にする開口穴を有する固定部と、前記フレキシブル部材の長手方向に沿って前記フレキシブル部材の横断面中心軸対称に形成された一組の挿通穴と、それぞれの挿通穴に挿通された二本の線材と、を有し、前記線材の両端はそれぞれ前記固定部に固定され、前記二本の線材の固定部間の長さが異なっていることを特徴とするフレキシブルガイド。
【請求項2】
前記線材の固定部間の長さを調整可能にされていることを特徴とする請求項1記載のフレキシブルガイド。
【請求項3】
基部となる第一のアームと、前記第一のアームのアーム支持軸に対して回転自在に支持された棒状の第二のアームと、を有する産業用ロボットであって、請求項1記載の前記フレキシブルガイドの両端の固定部の開口穴が前記アーム支持軸回りに同方向側に向くように、かつ、一方の前記固定部の前記線材の長さが短い側の側面部が前記アーム支持軸線側となるように前記第一のアームに固定され、他方の前記固定部の前記線材の長さが短い側の側面部が前記第二のアームの外周に固定され、前記開口穴を通って前記第一のアーム及び第二のアーム間を接続するケーブルが前記貫通穴に挿通されているフレキシブルガイドを有する産業用ロボットのケーブル支持装置。
【請求項4】
前記フレキシブルガイドの前記第一のアーム側の固定部の前記開口穴は下向きに開口されていることを特徴とする請求項3記載のフレキシブルガイドを有する産業用ロボットのケーブル支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−176917(P2011−176917A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37740(P2010−37740)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】