説明

フレキシブルコンテナ用シートおよびフレキシブルコンテナ

【課題】形状保持性および屈曲疲労性に優れたフレキシブルコンテナ用シートおよびそれからなるフレキシブルコンテナを提供する。
【解決手段】織物からなるフレキシブルコンテナに用いるフレキシブルコンテナ用シートにおいて、該織物を、ポリエチレンナフタレート繊維を経糸または緯糸の少なくとも一方に用いてなる織物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナの形状保持性および屈曲疲労性に優れたフレキシブルコンテナ用シートおよびフレキシブルコンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種樹脂ペレット類、薬剤類、農薬類、肥料類あるいは食品類などの粒状物を輸送するために、繊維基布に熱可塑性樹脂を被覆加工したシートを用いたフレキシブルコンテナが広く使用されている。そして、上記繊維基布としては、ポリエチレンテレフタレート繊維からなる布帛などが用いられている(例えば、特許文献1など)。さらに、上記シートは、フレキシブルコンテナ袋体の本体布や内張布に使用される。しかしながら、従来の上記袋体には、折り畳みなどの繰り返し屈曲を受けたり、粒状内容物の出し入れ時や運搬時の振動により、布帛を構成する繊維の一部分に過度の荷重が掛かり、変形したり、また繰り返し使用により布帛が部分的に破れるといった問題がある。
【特許文献1】特開平10−237741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、かかる背景技術に鑑みなされたもので、その目的は、形状保持性および屈曲疲労性に優れたフレキシブルコンテナ用シートおよびそれからなるフレキシブルコンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らが検討した結果、かかる課題は、織物からなるフレキシブルコンテナに用いるシートであって、該織物が、ポリエチレンナフタレート繊維を経糸または緯糸の少なくとも一方に用いてなる織物であることを特徴とするフレキシブルコンテナ用シート、および、該フレキシブルコンテナ用シートで構成されていることを特徴とするフレキシブルコンテナより達成できることを見出した。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、形状保持性および屈曲疲労性に優れたフレキシブルコンテナ用シートおよびフレキシブルコンテナを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のフレキシブルコンテナ用シートは、織物からなるフレキシブルコンテナに用いるシートである。
【0007】
本発明においては、上記織物が、ポリエチレンナフタレート繊維を経糸または緯糸の少なくとも一方に用いてなる織物であることが肝要である。すなわち、従来のポリエチレンテレフタレート繊維などの織物を用いたシートでは、折り畳みなどの繰り返し屈曲を受けたり、粒状内容物の出し入れ時や、運搬時の振動により、布帛を構成する繊維の一部分に過度の荷重が掛かり変形したり、また繰り返し使用により布帛が部分的に破れるという問題がある。かかる問題に対して本発明者らが検討を行い、上記のようにポリエチレンナフタレート繊維からなる織物を用いたところ、シートが変形しにくく、しかもシートの屈曲疲労性が格段に向上することを究明した。
【0008】
なお、本発明においては、ポリエチレンナフタレート繊維が、織物の経糸または緯糸のいずれかに用いるだけでも十分な効果を得ることができるが、より高い形状保持性や屈曲疲労性を実現する上では、織物の経糸および緯糸の両方に用いることが好ましい。
【0009】
本発明に用いるポリエチレンナフタレート繊維は、エチレン−2,6−ナフタレート単位を主たる構成成分とするポリエステルからなる繊維であり、10モル%以下の範囲で適当な第3成分を含む共重合体からなる繊維であってもよい。
【0010】
上記ポリエチレンナフタレート繊維の総繊度は、50〜2000dtex、単繊維繊度は1〜10dtexが好ましい。また、上記繊維の横断面形状は、丸断面でも異型断面でもかまわない。
【0011】
また、上記ポリエチレンナフタレート繊維は、形状保持性や屈曲疲労性の観点から、強度は、6cN/dtex以上が好ましく、7cN/dtex以上がより好ましく、また、伸度は、5%以上好ましく、8%以上がより好ましい。同様の観点から、固有粘度は、0.6以上が好ましく、0.7以上がより好ましい。
【0012】
織物を構成するポリエチレンナフタレート繊維以外の繊維としては、ポリアミド繊維、ポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維、アクリル系繊維、塩化ピニリデン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、アラミド系繊維、ポリイミド系繊維、ポリスルホン系繊維、フッ素系繊維などの繊維単体であっても、またそれらの組み合わせたものであっても良いが、物理的特性、化学的特性の点からポリエステル系繊維が好ましい。
なお、前述したポリエチレンナフタレート繊維、および、上記繊維は、長繊維、短繊維の両方を使用できるが、強力の点から長繊維が好ましい。
【0013】
また、前述したポリエチレンナフタレート繊維、および、上記繊維は、着色剤、耐候剤、難燃剤、充填剤、帯電防止剤、撥水剤、接着剤などが、含有あるいは繊維表面に付着していてかまわない。
【0014】
本発明に用いる織物は、特に限定されないが、経糸密度および緯糸密度としては、10〜30本/インチを採用することができる。また、上記織物は、公知の方法により製織することができる。
本発明においては、上記織物の少なくとも少なくとも片面が、熱可塑性樹脂で被覆されていてもよい。
【0015】
上記の熱可塑性樹脂とは、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリフッ化ピニリデンなどのフッ素系樹脂、シリコン系樹脂などであり、これらの少なくとも一種を使用する。なかでも、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂が柔軟性、コストなどから好ましく使用される。本発明で使用する塩化ビニル系樹脂は塩化ビニル重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体などであり、これらを単独、あるいは2種以上を混合したものに可塑剤、安定剤、耐候剤、架橋剤、抗菌剤、充填剤、防炎剤、着色剤、帯電防止剤などの添加剤を混合したものである。塩化ビニル系樹脂の重合度は600〜3500であり、好ましくは800〜2000のものを使用する。
【0016】
本発明で使用するオレフィン系樹脂とは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸アルキル共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、高分子鎖中にゴム弾性を持つゴム成分(ソフトセグメント)と常温付近で塑性変形を防止する結晶ないしガラス状成分(ハードセグメント)との互いに相溶しない両成分を有するオレフィンエラストマーなどであり、これらを単独あるいは2種以上を混合したものに可塑剤、安定剤、耐候剤、架橋剤、抗菌剤、充填剤、防炎剤、着色剤、帯電防止剤などの添加剤を混合したものである。
【0017】
本発明で使用するポリエステル系樹脂とは柔軟性の面からポリエステルエラストマーが好ましく、高融点結晶性重合体セグメントとしてジカルボン酸にテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸などを使用して、ジオールとして1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコールなどを使用し、特にテレフタル酸と1,4−ブタンジオールからなるポリブチレンテレフタレートが好ましい。一方、低融点重合体セグメントはポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペートなどのポリエステルブロック共重合体が好ましい。低融点重合体セグメントの含有量は10〜90重量%、好ましくは15〜75重量%である。さらに、可塑剤、安定剤、耐候剤、架橋剤、抗菌剤、充填剤、防炎剤、着色剤、帯電防止剤などの添加剤を混合してもよい。
【0018】
本発明の熱可塑性樹脂はカレンダー法、溶融押し出し法、溶液コーティング法など公知の方法で織物に付与することができる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例に示す性能値は次の方法で測定した。
【0020】
(1)形状保持性
製造したフレキシブルコンテナにポリエステルチップ(帝人ファイバー製)を1000kg入れ、30日間倉庫内で保管した後、フレキシブルコンテナ表面の変形程度を次の基準で評価し、△および○を合格とした。○:変形が殆ど無い、△:多少の変形が見られる、×:変形している。
【0021】
(2)屈曲疲労性
製造したフレキシブルコンテナにポリエステルチップ(帝人ファイバー製を1000kg入れ、1日間倉庫内で保管した後、フレキシブルコンテナ内のポリエステルチップを排出し、折り畳む。この作業を100回繰り返し、フレキシブルコンテナ表面の繊維の疲労度合いを次の基準で評価し、△および○を合格とした。○:初期の状態と殆ど変わらない、△:フレキシブルコンテナ表面に繊維毛羽が多少発現している、×:フレキシブルコンテナ表面に繊維毛羽が著しく発現している。
【0022】
[実施例1〜4]
経糸または緯糸に、固有粘度が0.71、強度が8.3cN/dtex、伸度が9.4%のポリエチレンナフタレート(PEN)繊維(帝人ファイバー株式会社製テオネックス、1100dtex/250フィラメント)、あるいは、固有粘度が0.7、強度が8.1cN/dtex、伸度が13.5%のポリエチレンテレフタレート(PET)繊維(帝人ファイバー株式会社製テトロン、1100dtex/250フィラメント)を使用して平織物とし、240℃の温度で熱処理を施した。該織物に青色顔料と酸化防止剤を混合したエチレン・酢酸ビニル共重合体(住友化学株式会社製エバテートCV2097)を200ミクロンの厚みでカレンダー成型し、織物の両面に熱圧縮してフレキシブルコンテナ用シートとした。性能評価した結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
[比較例1〜4]
経糸または緯糸に、実施例1で用いたポリエチレンテレフタレート(PET)繊維(帝人テクノプロダクツ株式会社製テトロン)、あるいはアラミド繊維(帝人トワロン株式会社製トワロン、1100dtex/1000フィラメント)、ナイロン繊維(旭化成せんい株式会社製、940dtex/140フィラメント)を使用して平織物とし、240℃の温度で熱処理を施した。該織物に青色顔料と酸化防止剤を混合したエチレン・酢酸ビニル共重合体(住友化学株式会社製エバテートCV2097)を200ミクロンの厚みでカレンダー成型し、繊物の両面に熱圧縮してフレキシブルコンテナ用シートとし性能評価した結果を表2に示す。
【0025】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のフレキシブルコンテナ用シートによれば、これを用いて、形状保持性および屈曲疲労性に優れたフレキシブルコンテナを得ることができる。また、該フレキシブルコンテナは、上記特性を有し、折り畳みなどの繰り返し屈曲を受けたり、粒状内容物の出し入れ時や、運搬時の振動により、布帛を構成する繊維の一部分に過度の荷重が掛かり変形したり、また繰り返し使用により布帛が部分的に破れるといった問題が少ないという特徴を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物からなるフレキシブルコンテナに用いるシートであって、該織物が、ポリエチレンナフタレート繊維を経糸または緯糸の少なくとも一方に用いてなる織物であることを特徴とするフレキシブルコンテナ用シート。
【請求項2】
織物の少なくとも片面が、熱可塑性樹脂により被覆されている請求項1記載のフレキシブルコンテナ用シート。
【請求項3】
熱可塑性樹脂が、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、およびポリエステル樹脂から選ばれた1種である請求項2記載のフレキシブルコンテナ用シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のフレキシブルコンテナ用シートで構成されていることを特徴とするフレキシブルコンテナ。

【公開番号】特開2008−184217(P2008−184217A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21590(P2007−21590)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】