説明

フレキシブルプリント配線板用の銅張積層板およびフレキシブルプリント配線板

【課題】フレキシブルプリント配線板に必要とされる柔軟性に優れ、また優れた接着性と高い耐熱性とを有し、しかも優れた作業性で形成することが可能な接着層を備えた銅張積層板を提供する。
【解決手段】電気絶縁性フィルム、接着層、銅箔がこの順に積層されてなり、接着層が、ジカルボン酸成分としてダイマー酸をジカルボン酸成分全体の50モル%以上含むポリアミド樹脂を含有することを特徴とするフレキシブルプリント配線板用の銅張積層板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板用の銅張積層板およびフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板は、携帯電話やデジタルカメラ、プラズマディスプレイなどの機器に使用されており、軽量化と高屈曲性が要求される。
一般に、フレキシブルプリント配線板は、銅張積層板とカバーレイとから構成され、またこの銅張積層板は、ポリイミドフィルムのような電気絶縁性フィルムと、接着層と、銅箔とから構成される。
【0003】
このフレキシブルプリント配線板用の銅張積層板を構成する接着層には、高耐熱性であるという理由から、エポキシ樹脂を主成分とする接着剤が一般に使用されている。しかし、近年エッチングパターンの微細化が要求され、エポキシ樹脂を使用した接着層は、フレキシブルプリントプリント配線板に必要な柔軟性、可とう性に乏しいという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、エポキシ樹脂に、カルボキシ化アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム等の、柔軟性のあるゴム成分を添加した接着剤が使用され、接着層に柔軟性を付与することが検討されてきた(特許文献1〜3)。しかしながら、この接着剤を使用した接着層は、耐熱性に劣り、特に加熱により接着性が低下するという問題があった。また、これらの接着剤は、分散または溶解媒体として有機溶剤を使用しており、人体への健康面ならびに環境負荷の面から好適とは言い難いものであった。
【0005】
また、柔軟性成分を有するエラストマーをエポキシ樹脂自体に混練し、得られる樹脂を接着層に使用することも検討されている。しかしこの樹脂を使用した接着層も、耐熱性に劣り、特に加熱により接着性が著しく劣化するという問題があり、また、高粘度化や加水分解などの新たな問題を生じるものであった。
【0006】
さらにエポキシ樹脂を主成分とする接着剤には、作業性について問題点がある。すなわち、エポキシ樹脂を硬化させるのに、熱または硬化剤を必要とする。エポキシ樹脂を熱で硬化する場合、高温長時間の作業が必要となり手間がかかる上に、消費エネルギーも多い。また、エポキシ樹脂を硬化剤で硬化する場合、使用時にエポキシ樹脂と硬化剤とを混合することが必要であり、また混合後の接着剤のポットライフは数時間ほどしかないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭62−199627号公報
【特許文献2】特開平07−235767号公報
【特許文献3】特開2007−138149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題を解決するものであって、フレキシブルプリント配線板に必要とされる柔軟性に優れ、また優れた接着性と高い耐熱性とを有し、しかも優れた作業性で形成することが可能な接着層を備えた銅張積層板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、課題解決のため鋭意検討を行った結果、銅張積層板を構成する接着層に特定のポリアミド樹脂を使用することによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
(1)電気絶縁性フィルム、接着層、銅箔がこの順に積層されてなり、接着層が、ジカルボン酸成分としてダイマー酸をジカルボン酸成分全体の50モル%以上含むポリアミド樹脂を含有することを特徴とするフレキシブルプリント配線板用の銅張積層板。
(2)接着層の厚みが、1〜50μmであることを特徴とする(1)記載の銅張積層板。
(3)ポリアミド樹脂が、架橋剤および/または放射線照射により、架橋されていることを特徴とする(1)または(2)記載の銅張積層板。
(4)ポリアミド樹脂が、その100質量部に対して、0.5〜100質量部の架橋剤により架橋されていることを特徴とする(3)記載の銅張積層板。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の銅張積層板を用いて作製されてなるフレキシブルプリント配線板。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフレキシブルプリント配線板用の銅張積層板は、接着層がジカルボン酸成分としてダイマー酸をジカルボン酸成分全体の50モル%以上含むポリアミド樹脂を含有するので、柔軟性、耐熱性に優れ、また電気絶縁性フィルムと銅箔とが優れた接着性で接着している。またこの接着層は、優れた作業性で形成することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の銅張積層板は、電気絶縁性フィルム、接着層、銅箔がこの順に積層されたものである。
【0012】
本発明において、電気絶縁性フィルムとして、公知の絶縁性樹脂を主成分として含むフィルムを利用することができる。電気絶縁性フィルムの具体例として、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN樹脂)および液晶ポリマーが挙げられる。これらの中でも、電気絶縁性フィルムは、耐熱性を保持したフィルムが好ましく、自己消火性を有し耐燃性が高く、誘電特性にも優れるポリイミドや、液晶ポリマーが好ましい。これらの耐熱性樹脂を含む耐熱フィルムとしては、公知の樹脂フィルム作製方法を利用して作製したものを用いることができるが、市販品の入手が容易なフィルムを用いることが好適である。具体的には、三井デュポン社製カプトン、宇部興産社製ユーピレックス、カネカ社製アピカルなどを用いることが出来るが、これらに限定されるものではない。フィルムの厚みは、薄いほうが柔軟性に優れる。
【0013】
本発明の銅張積層板を構成する銅箔の種類は特に限定されるものではない。
銅箔は、厚みが1μm以上であることが好ましく、9μm以上であることがより好ましい。銅箔の厚みを1μm以上とすることにより、プリント配線板に形成される銅配線パターンの形成不良を抑制することができる。また、銅箔の厚みの上限値は特に限定されるものではないが、エッチングにより銅配線パターンを形成する際の生産性の確保等の実用上の観点から70μm以下とすることが好ましい。
【0014】
本発明の銅張積層板を構成する接着層は、ジカルボン酸成分としてダイマー酸をジカルボン酸成分全体の50モル%以上含むポリアミド樹脂を含有することが必要である。
【0015】
ジカルボン酸成分としてダイマー酸を含むポリアミド樹脂(以下、ダイマー酸系ポリアミド樹脂と略称する)は、主鎖にアミド結合を有するものであり、主にジカルボン酸成分としてのダイマー酸とジアミン成分とを用いた脱水縮合反応によって得られるものである。ダイマー酸系ポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂として広く使用されているナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などの樹脂に比べて、大きな炭化水素グループを有するために柔軟性を有している。
本発明において、ダイマー酸系ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸成分としてダイマー酸をジカルボン酸成分全体の50モル%以上含有することが必要であり、60モル%以上含有することが好ましく、70モル%以上含有することがさらに好ましい。ダイマー酸の割合が50モル%未満であると、ダイマー酸系ポリアミド樹脂の特性や効果を奏することが困難となる。
【0016】
ここでダイマー酸とは、オレイン酸やリノール酸などの炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られるものであり、ダイマー酸成分の25質量%以下であれば、単量体であるモノマー酸(炭素数18)、三量体であるトリマー酸(炭素数54)、炭素数20〜54の他の重合脂肪酸を含んでもよく、さらに水素添加して不飽和度を低下させたものでもよい。ダイマー酸は、ハリダイマーシリーズ(ハリマ化成社製)、プリポールシリーズ(クローダジャパン社製)、ツノダイムシリーズ(築野食品工業社製)などとして市販されており、これらを用いることができる。
【0017】
ダイマー酸系ポリアミド樹脂のジカルボン酸成分としてダイマー酸以外の成分を用いる場合は、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ノナンジカルボン酸、フマル酸などを用いることが好ましく、これらを50モル%未満含有することにより、樹脂の軟化点や接着性などの制御が容易となる。
【0018】
また、ダイマー酸系ポリアミド樹脂のジアミン成分としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、m−キシレンジアミン、フェニレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピペラジンなどを用いることができ、中でもエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、m−キシレンジアミン、ピペラジンが好ましい。
【0019】
本発明において、ダイマー酸系ポリアミド樹脂は、架橋剤および/または放射線照射により、架橋されていることが好ましい。ダイマー酸系ポリアミド樹脂が架橋されることにより、接着層は、はんだ処理後も接着性が優れ、また樹脂の軟化点以上の温度の高温下でも流動性を低くすることができる。
【0020】
架橋剤としては、ダイマー酸系ポリアミド樹脂同士を架橋できるものであれば、どのようなものでも使用でき、例えば、ヒドラジド化合物、イソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物が好ましく、中でもエポキシ化合物が好適である。これらの化合物は、単独で又は混合して用いることができる。
また、架橋剤として、アミノ基と反応する官能基を分子中に複数個有する架橋剤を使用すると、ダイマー酸系ポリアミド樹脂中のアミノ基と効率よく反応させることができる。この他、架橋剤として、自己架橋性を有するものや多価の配位座を有するものなども使用できる。
本発明では、入手が容易であるという点から、市販の架橋剤を用いてもよい。具体的には、ヒドラジド化合物としては、大塚化学社製APAシリーズ(APA−M950、APA−M980、APA−P250、APA−P280など)などが挙げられ、イソシアネート化合物としては、BASF社製のバソナート(BASONAT)PLR8878、バソナートHW−100、住友バイエルウレタン社製のバイヒジュール(Bayhydur)3100、バイヒジュールVPLS2150/1などが挙げられ、メラミン化合物としては、三井サイテック社製サイメル325などが挙げられ、尿素化合物としては、DIC社製のベッカミンシリーズなどが挙げられ、エポキシ化合物としては、ナガセケムテック社製のデナコールシリーズ(EM−150、EM−101など)、ADEKA社製のアデカレジンEM−0517、EM−0526、EM−051R、EM−11−50Bなどが挙げられ、カルボジイミド化合物としては、日清紡社製のカルボジライトシリーズ(SV−02、V−02、V−02−L2、V−04、E−01、E−02、V−01、V−03、V−07、V−09、V−05)など挙げられ、オキサゾリン化合物としては、日本触媒社製のエポクロスシリーズ(WS−500、WS−700、K−1010E、K−1020E、K−1030E、K−2010E、K−2020E、K−2030E)などが挙げられる。これらは、架橋剤を含む分散体又は溶液として市販されている。
【0021】
ダイマー酸系ポリアミド樹脂の架橋は、後述するダイマー酸系ポリアミド樹脂の水性分散体を用いて接着層を形成する際に、水性分散体に架橋剤を添加しておくことによって、容易に行うことができる。
水性分散体における架橋剤の含有量は、ダイマー酸系ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.5〜100質量部であることが好ましい。架橋剤の含有量が0.5質量部未満であると、接着層においてはんだ処理後の接着性が低下することがあり、また所望の高温下低流動性が得難くなり、一方、100質量部を超えると、柔軟性が低下することがあり、また水性分散体の液安定性や加工性などが低下する結果、接着層としての基本性能が得難くなる。
【0022】
また、ダイマー酸系ポリアミド樹脂の架橋は、ダイマー酸系ポリアミド樹脂の水性分散体に、放射線照射することによっても行うことができる。放射線の照射によっても、水性分散体中のポリアミド樹脂の架橋が促進され、この水性分散体から得られる接着層は、はんだ処理後も接着性が優れ、また樹脂の軟化点以上に加熱しても低流動性(高温下低流動性)を示す。
放射線照射の際に、架橋促進の目的で、活性ラジカル種を発生させる公知の化合物を水性分散体に含有させることができる。そのような化合物として、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア184、907等が挙げられ、その使用量は、樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましい。
放射線の線源としては、α線、β線(電子線)、γ線、X線、紫外線等が挙げられ、コバルト60からのβ線、γ線、X線が好ましく、中でもγ線、電子加速器の使用によるβ線照射処理がより好ましい。これら放射線は1種単独で又は2種以上を同時に照射してもよく、また1種以上の放射線を、一定期間をおいて照射してもよい。
放射線を水性分散体に照射する際には、容器に入れた水性分散体を放射線源付近に配置する。その際、照射中に線源または容器の位置を変えるか、または水性分散体を攪拌するかのいずれかによって、実質的に均一に照射することが好ましい。あるいは、ラジカルを発生させるために、水性分散体の一部を線源付近に配置して照射した後、残りの水性分散体と混合してもよい。さらに、水性分散体をポンプ等で送液しつつ放射線を照射してもよい。
放射線の照射線量は、特に限定されないが、10〜400kGyが好ましく、20〜300kGyがより好ましくは、50〜200kGyがさらに好ましい。照射線量が10kGyより少ないと架橋が不十分になり、400kGyを超えると架橋が進みすぎて、柔軟性、機械的特性が低下し、クラックが発生しやすくなるおそれがある。
放射線の照射時の雰囲気には特に制限はないが、酸素濃度が低いほど放射線の照射線量を小さくすることができる。雰囲気を窒素やアルゴンなどの不活性ガスで置換してもよい。
【0023】
本発明において接着層を形成する方法としては、ダイマー酸系ポリアミド樹脂が水性媒体中に分散してなる水性分散体を、電気絶縁性フィルムに塗布し、水性媒体を除き、塗膜として形成する方法が挙げられる。この方法により、電気絶縁性フィルム表面に均一な厚さの塗膜が得られ、この塗膜上に銅箔を積層し熱プレスすることにより、接着層を簡便に形成することができる。以下、ダイマー酸系ポリアミド樹脂が水性媒体中に分散してなる水性分散体を使用し接着層を形成する方法について説明する。
【0024】
水性分散体を構成する水性媒体とは、水、または水と有機溶剤の混合物であり、有機溶剤は、親水性有機溶剤であることが好ましい。
親水性有機溶剤としては、ダイマー酸系ポリアミド樹脂の粒子径をより小さくし、同時にダイマー酸系ポリアミド樹脂の水性媒体への分散をより促進する観点から、20℃における水に対する溶解性が、好ましくは50g/L以上、より好ましく100g/L以上、さらに好ましくは600g/L以上、特に好ましくは水と任意の割合で溶解可能な親水性有機溶剤を選んで使用するとよい。また、親水性有機溶剤の沸点としては、30〜250℃であることが好ましく、50〜200℃であることがより好ましい。沸点が30℃未満になると、水性分散体の調製中に親水性有機溶剤が揮発しやすくなり、その結果、親水性有機溶剤を使用する意味が失われると共に、作業環境も悪化しやすくなる。一方、250℃を超えると、水性分散体から親水性有機溶剤を除去することが困難となる傾向にあり、その結果、塗膜となしたとき、塗膜に有機溶剤が残留し、塗膜の耐溶剤性などを低下させることがある。
親水性有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチルなどのエステル類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチルなどが挙げられる。
【0025】
ダイマー酸系ポリアミド樹脂として、酸価がアミン価より高い樹脂(PA)を使用して水性分散体を調製する場合、水性分散体には、後述する塩基性化合物(B)が含有されることが好ましい。塩基性化合物(B)を含有することによって、樹脂(PA)のカルボキシル基が中和され、中和によって生成したカルボキシルアニオン間の電気反発力によって微粒子間の凝集を防ぐことができ、分散安定性に優れた水性分散体とすることができる。
一方、ダイマー酸系ポリアミド樹脂として、アミン価が酸価より高い樹脂(PB)を使用して水性分散体を調製する場合、水性分散体には、後述する酸性化合物(A)が含有されることが好ましい。酸性化合物(A)を含有することによって、樹脂(PB)に含まれるアミノ基の一部又は全てが中和され、カチオンが生成し、その電気的反発力によって、樹脂微粒子間の凝集が解れ、水性分散体に安定性が付与される。
【0026】
なお、酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数で定義されるものである。一方、アミン価とは、樹脂1g中のアミン成分とモル当量となる水酸化カリウムのミリグラム数で表されるものである。いずれも、JIS K2501に記載の方法で測定される。
【0027】
樹脂(PA)中のアミノ基が酸性化合物(B)で中和された水性分散体において、ダイマー酸系ポリアミド樹脂は、塩基性域で安定した形態を保つことができる。水性分散体のpHとしては、7〜13の範囲が好ましい。
一方、樹脂(PB)中のアミノ基が酸性化合物(A)で中和された水性分散体において、ダイマー酸系ポリアミド樹脂は、酸性域で安定した形態を保つことができる。水性分散体のpHとしては、2〜6の範囲が好ましい。
【0028】
上記塩基性化合物(B)は、常圧時の沸点が185℃未満であることが好ましい。塩基性化合物(B)の常圧時の沸点が185℃を超えると、水性分散体を塗布して塗膜を形成する際に、乾燥によって塩基性化合物(B)を揮発させることが困難になり、衛生面や塗膜特性に悪影響を及ぼす場合がある。
常圧時の沸点が185℃未満の塩基性化合物(B)としては、アンモニア、有機アミン化合物などのアミン類などが挙げられる。有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N、N−ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。常圧時の沸点が185℃未満の塩基性化合物として、中でもトリエチルアミン、N、N−ジメチルエタノールアミンが好ましい。
水性分散体において、塩基性化合物(B)の含有量は、樹脂(PA)固形分に対して0.01〜100質量%であることが好ましく、1〜40質量%がより好ましく、1〜15質量%がさらに好ましい。塩基性化合物(B)の含有量が0.01質量%未満では、塩基性化合物(B)を添加する効果に乏しく、分散安定性に優れた水性分散体を得ることが困難となる。一方、塩基性化合物(B)の含有量が100質量%を超えると、水性分散体の着色やゲル化が生じやすくなる傾向や、エマルションのpHが大きくなりすぎるなどの傾向がある。
【0029】
一方、上記酸性化合物(A)は、酸解離定数(pKa)が、8以下であることが好ましく、−9〜7であることがより好ましく、−5〜6であることがさらに好ましく、0〜5であることが特に好ましい。酸性化合物(A)のpKaが8を超えると、アミノ基が中和され難くなり、樹脂の分散化が困難となることがある。pKaの下限については、特に限定されないが、あまり小さくしすぎると、酸性化合物の腐食性が強くなり、水性分散化のための設備や水性分散体を利用するための設備などを傷めることがある。
さらに、酸性化合物(A)は揮発性であることが好ましく、具体的には、沸点が20〜250℃であることが好ましく、30〜200℃であることがより好ましく、50〜150℃であることがさらに好ましく、50〜120℃であることが特に好ましい。酸性化合物(A)が不揮発性、すなわち、沸点が250℃を超えると、塗膜となした後、その塗膜中に酸性化合物(A)が少なからず残留し、塗膜の密着性、耐水性に悪影響を及ぼすことがある。一方、酸性化合物(A)の沸点が20℃未満であると、水性分散体を調製する際に酸性化合物(A)の多くが揮発してしまう結果、中和効率が低下することがある。
pKaが8以下である酸性化合物(A)の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸などの有機酸、及び塩酸、硫酸、リン酸、硝酸などの無機酸が挙げられる。これらの中でも、比較的腐食性が低くかつアミノ基の中和に優れる有機酸が好ましく、中でもギ酸、酢酸が特に好ましい。
水性分散体において、酸性化合物(A)の含有量は、樹脂(PB)固形分に対して0.01〜100質量%であることが好ましく、1〜40質量%がより好ましく、1〜15質量%がさらに好ましい。酸性化合物(A)の含有量が0.01質量%未満では、酸性化合物(A)を添加する効果に乏しく、分散安定性に優れた水性分散体を得ることが困難となる。一方、酸性化合物(A)の含有量が100質量%を超えると、水性分散体の着色やゲル化が生じやすくなる、エマルションのpHが小さくなりすぎる、などの傾向がある。
【0030】
次に、ダイマー酸系ポリアミド樹脂の水性分散体を製造する方法について説明する。
水性分散体を得るにあたっては、密閉可能な容器を用いることが好ましい。つまり、密閉可能な容器に各成分を仕込み、加熱、攪拌する手段が好ましく採用される。
具体的に、まず、所定量のダイマー酸系ポリアミド樹脂と、塩基性化合物または酸性化合物と、水性媒体とを容器に投入する。次に、容器を密閉し、好ましくは70〜280℃、より好ましくは100〜250℃の温度で、加熱撹拌する。加熱攪拌時の温度が70℃未満になると、ダイマー酸系ポリアミド樹脂の分散が進み難くなる傾向にあり、一方、280℃を超えると、ダイマー酸系ポリアミド樹脂の分子量が低下する恐れがあり、また、系の内圧が無視できない程度まで上がることがあり、いずれも好ましくない。加熱撹拌する際は、樹脂が水性媒体中に均一に分散されるまで毎分10〜1000回転で加熱撹拌することが好ましい。
水性分散体は、以上の方法により得ることができる。容器内には異物や少量の未分散樹脂が稀に残っていることがあるため、水性分散体を払い出す前に、例えば、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(例えば空気圧0.5MPa)することが好ましい。
【0031】
本発明において使用する水性分散体は、常圧時の沸点が185℃以上もしくは不揮発性の水性化助剤を含有しない。ここで、常圧時の沸点が185℃以上もしくは不揮発性の水性化助剤とは、乳化剤成分あるいは保護コロイド作用を有する化合物などを指す。つまり、水性分散体は、これら乳化剤成分あるいは保護コロイド作用を有する化合物を含有することなく、安定な水性分散体となり得ることを意味する。
【0032】
乳化剤成分としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。
例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられる。
ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やソルビタン誘導体等が挙げられる。
両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0033】
保護コロイド作用を有する化合物としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常は5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物が挙げられる。
【0034】
なお、ダイマー酸系ポリアミド樹脂の水性分散体は、常圧時の沸点が185℃以上もしくは不揮発性の水性化助剤を含有しないものであるが、これは、常圧時の沸点が185℃以上もしくは不揮発性の水性化助剤を含有しなくとも安定な水性分散体が得られるということである。したがって、水性分散体を構成成分の一部とする塗剤を得る際に、目的に応じて、上述したような水性化助剤を添加することを妨げるものではない。
【0035】
また、水性分散体中のダイマー酸系ポリアミド樹脂の含有量(固形分濃度)は、3〜40質量%であることが好ましく、中でも10〜35質量%であることが好ましい。水性分散体中のダイマー酸系ポリアミド樹脂の含有量が上記範囲より少ない場合は、乾燥工程によって塗膜を形成する際に時間を要する場合があり、また厚い塗膜を得ることが困難になる。一方、水性分散体中のダイマー酸系ポリアミド樹脂の含有量が上記範囲より多い場合は、分散体の保存安定性が低下しやすくなる。
【0036】
上述のように、接着層は、水性分散体を、電気絶縁性フィルム表面に塗布することによって形成することができる。水性分散体を塗布する方法(塗工方法)としては、公知の方法が適用でき、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等を挙げることができる。これらの方法により水性分散体を電気絶縁性フィルム表面に均一に塗工することができる。
【0037】
上記のようにしてダイマー酸系ポリアミド樹脂の水性分散体を塗布した後、乾燥熱処理することにより、水性媒体を除去することができ、緻密なダイマー酸系ポリアミド樹脂塗膜を電気絶縁性フィルム表面に密着させて、接着層を形成することができる。このとき、水性分散体中の塩基性化合物(B)や酸性化合物(A)が留去される条件で乾燥熱処理を行うことにより、水性分散体中の塩基性化合物(B)や酸性化合物(A)をも除去することが好ましい。
【0038】
電気絶縁性フィルム表面に形成されるダイマー酸系ポリアミド樹脂塗膜の厚み、すなわち接着層の厚みは特に限定されるものではないが、1〜50μmの範囲とすることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。塗膜の厚みが1μm未満ではダイマー酸系ポリアミド樹脂塗膜の特性(接着性)が十分に発現されない場合があり、塗膜の厚みが50μmを超えるとポリアミド樹脂塗膜の特性(効果)が飽和し、コスト的に不利となる。
【0039】
本発明の銅張積層板は、上述したダイマー酸系ポリアミド樹脂の接着層を介して、電気絶縁性フィルムと銅箔とが積層された積層体である。積層の具体的方法としては、ダイマー酸系ポリアミド樹脂の水性分散体を電気絶縁性フィルムに塗布・乾燥して接着層を形成したのち、この接着層の上に銅箔を載せ、加熱して接着する方法が好適である。加熱温度は100〜200℃であることが好ましく、0.1〜50MPaで加圧することが好ましい。
【0040】
本発明の銅張積層板は、柔軟性、耐熱性に優れ、また電気絶縁性フィルムと銅箔とが優れた接着性で接着しており、これに回路を形成したのち、カバーレイを積層することにより、銅張積層板が有する特性を保持したフレキシブルプリント配線板を得ることができる。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0042】
本発明の銅張積層板の各特性について、以下の方法によって測定または評価した。
1.接着性
1−1.初期接着性
実施例、比較例で得られた銅張積層板を、15mm幅で切り出して測定サンプルとした。引張り試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)を用い、引張り速度200mm/分、引張り角度180度で、電気絶縁性フィルムと銅箔との間の剥離強度を測定した。
【0043】
1−2.耐熱接着性(はんだ処理後)
実施例、比較例で得られた銅張積層板を、105℃で1時間乾燥した後、260℃のはんだ浴に、銅箔がはんだに接触するように30秒間浮かべた後、15mm幅で切り出して測定サンプルとした。引張り試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)を用い、引張り速度200mm/分、引張り角度180度で、電気絶縁性フィルムと銅箔との間の剥離強度を測定した。
【0044】
2.柔軟性
実施例、比較例で得られた銅張積層板について、銅箔面が内側となるよう500gの荷重をかけ、180°の一回ハゼ折り試験を行い、白化の有無を評価した。
○:白化なし
△:一部に白化が認められる
×:白化あり
【0045】
3.耐熱性
実施例、比較例で得られた銅張積層板を、105℃で1時間乾燥した後、260℃のはんだ浴に、銅箔がはんだに接触するように30秒浮かべた後、銅張積層板内部のフクレ、銅張積層板全体の反りの有無を確認した。
○:フクレ、反りなし
×:フクレ、反りあり
【0046】
実施例1
<ダイマー酸系ポリアミド樹脂の水性分散体A−1の製造>
撹拌機、留去管を取り付けた1リットルの4口フラスコ中に、ダイマー酸(ツノダイム395、築野食品工業社製、ダイマー酸含有率94%)616.0g、エチレンジアミン60.1g、ステアリン酸11.4gを添加し、窒素雰囲気下において、200℃まで昇温し30分間反応を行った。さらに、所望の酸価、アミン価になるように反応時間を調整し、ポリアミド樹脂P−1を得た。得られたポリアミド樹脂は、ダイマー酸をジカルボン酸成分全体の100モル%含むダイマー酸系ポリアミド樹脂であり、酸価15.0mgKOH/g、アミン価0.3mgKOH/g、軟化点110℃、200℃における溶融粘度は1,100mPa・sであった。
撹拌機およびヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器に、得られたダイマー酸系ポリアミド樹脂75.0gと、37.5gのイソプロパノール(和光純薬社製、以下IPA)、37.5gのテトラヒドロフラン(和光純薬社製、以下THF)、7.2gのN,N−ジメチルエタノールアミン(和光純薬社製)および217.8gの蒸留水を仕込んだ。回転速度を300rpmで撹拌しながら、系内を加熱し、120℃で60分間加熱攪拌を行った。その後、撹拌しながら室温付近(約30℃)まで冷却し、100gの蒸留水を追加した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)でごくわずかに加圧しながらろ過した。得られた水性分散体を1Lナスフラスコに入れ、80℃に加熱した湯浴につけながらエバポレーターを用いて減圧し、IPA、THF、水の混合媒体約100gを留去し、乳白色の均一なポリアミド樹脂水性分散体(A−1)を得た。
<銅張積層板の製造>
得られたダイマー酸系ポリアミド樹脂の水性分散体A−1を、電気絶縁性フィルムとしてのポリイミドフィルム(三井デュポン社製カプトン、厚み25μm)上に、乾燥後の接着層の厚みが1μmになるようにマイヤーバーでコートし、120℃で1分間乾燥した。
その後、接着層上に、厚み35μmの圧延銅箔を積層し、ヒートプレス機にて、シール圧0.3MPa、温度150℃で5分間プレスして銅張積層板を作製した。
【0047】
実施例2
<ダイマー酸系ポリアミド樹脂の水性分散体A−2の製造>
実施例1と同様の方法で、ジカルボン酸成分として、ダイマー酸を85モル%、アゼライン酸を15モル%含有し、ジアミン成分としてピペラジンを50モル%、エチレンジアミンを50モル%含有し、酸価が10.0mgKOH/g、アミン価が0.1mgKOH/g、軟化点が158℃、200℃における溶融粘度が10,000mPa・sであるダイマー酸系ポリアミド樹脂P−2を得た。
得られたダイマー酸系ポリアミド樹脂75.0gと、93.8gのIPAと、6.0gのN,N−ジメチルエタノールアミンと、200.3gの蒸留水とを、撹拌機およびヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器に仕込んだ。回転速度を300rpmで撹拌しながら、系内を加熱し、120℃で60分間加熱攪拌を行った。その後、撹拌しながら室温付近(約30℃)まで冷却し、130gの蒸留水を追加した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)でごくわずかに加圧しながらろ過した。得られた水性分散体を1Lナスフラスコに入れ、80℃に加熱した湯浴につけながらエバポレーターを用いて減圧し、IPA、水の混合媒体約130gを留去し、乳白色の均一なダイマー酸系ポリアミド樹脂の水性分散体A−2を得た。
<銅張積層板の製造>
得られたダイマー酸系ポリアミド樹脂の水性分散体A−2を、電気絶縁性フィルムとしてのポリイミドフィルム(三井デュポン社製カプトン、厚み25μm)上に、乾燥後の接着層の厚みが1μmになるようにマイヤーバーでコートし、120℃で1分間乾燥した。
その後、接着層上に、厚み35μmの圧延銅箔を積層し、ヒートプレス機にて、シール圧0.3MPa、温度150℃で5分間プレスして銅張積層板を作製した。
【0048】
実施例3〜6
接着層の厚みを、10μm(実施例3)、25μm(実施例4)、50μm(実施例5)0.5μm(実施例6)とした以外は実施例2と同様の方法で銅張積層板を作製した。
【0049】
実施例7〜9
ダイマー酸系ポリアミド樹脂の水性分散体A−2に、エポキシ架橋剤(ナガセケムテック社製デナコールシリーズEM−150)を、固形分質量比が100/10(実施例7)、100/100(実施例8)、100/110(実施例9)となるように添加して得られた水性分散体をコートした以外は実施例3と同様の方法で銅張積層板を作製した。
【0050】
実施例10
ダイマー酸系ポリアミド樹脂の水性分散体A−2に、ヒドラジド架橋剤(大塚化学社製APA−M950)を、固形分質量比が100/10となるように添加して得られた水性分散体をコートした以外は実施例3と同様の方法で銅張積層板を作製した。
【0051】
実施例11
ダイマー酸系ポリアミド樹脂の水性分散体A−2の100gをガラス製のサンプル瓶に入れ、コバルト−60を線源としたγ線を100kGy照射した水性分散体をコートした以外は実施例3と同様の方法で銅張積層板を作製した。
【0052】
比較例1
エポキシ樹脂(油化シェル化学社製エピコート1001)100部と、硬化剤としてのジアミノジフェニルスルホン20部とを、メチルエチルケトンに溶解分散させて、濃度40%の接着剤E−1を得た。この接着剤E−1をコートした以外は実施例3と同様の方法で銅張積層板を作製した。
【0053】
比較例2
エポキシ樹脂(油化シェル化学社製エピコート1001)100部と、エチレン−アクリル酸エステル共重合ゴム(住友化学社製エスプレンEMA2752)100部と、硬化剤としてのジアミノジフェニルスルホン20部とを、メチルエチルケトンに溶解分散させて、濃度40%の接着剤E−2を得た。この接着剤E−2をコートした以外は実施例3と同様の方法で銅張積層板を作製した。
【0054】
上記実施例、比較例で得られた銅張積層板の評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1に示すように、実施例1〜5で得られた銅張積層板は、接着性、柔軟性、耐熱性に優れるものであった。特に接着層の厚みが10または25μmである実施例3、4の銅張積層板は、はんだ処理後の接着性も高いものであった。接着層の厚みが0.5μmである実施例6の銅張積層板は、柔軟性、耐熱性に優れるが、接着性に低下がみられた。実施例7〜10では、ダイマー酸系ポリアミド樹脂が架橋剤により架橋されているので、また実施例11では、放射線の照射により架橋されているので、それぞれはんだ処理後の接着性が向上していた。
【0057】
これに対して、接着層にエポキシ樹脂を使用した比較例1の銅張積層板は、接着性が極めて高く、また耐熱性にも問題はないが、柔軟性の面で、本発明の銅張積層板よりも劣るものであった。また接着層として、エポキシ樹脂にアクリルゴムを添加した樹脂を用いた比較例2の銅張積層板では、柔軟性が比較例1より改善したものの、はんだ処理後の接着性や耐熱性などのエポキシ樹脂単体で有していた優れた特性は、著しく低下するものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性フィルム、接着層、銅箔がこの順に積層されてなり、接着層が、ジカルボン酸成分としてダイマー酸をジカルボン酸成分全体の50モル%以上含むポリアミド樹脂を含有することを特徴とするフレキシブルプリント配線板用の銅張積層板。
【請求項2】
接着層の厚みが、1〜50μmであることを特徴とする請求項1記載の銅張積層板。
【請求項3】
ポリアミド樹脂が、架橋剤および/または放射線照射により、架橋されていることを特徴とする請求項1または2記載の銅張積層板。
【請求項4】
ポリアミド樹脂が、その100質量部に対して、0.5〜100質量部の架橋剤により架橋されていることを特徴とする請求項3記載の銅張積層板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の銅張積層板を用いて作製されてなるフレキシブルプリント配線板。



【公開番号】特開2012−234849(P2012−234849A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100286(P2011−100286)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】