説明

フレキソ刷版の印刷性能を改善する方法

感光性印刷ブランクからレリーフ像印刷要素を作製する方法を提供する。少なくとも1つの光硬化性層上に配置されたレーザアブレーション可能な層を有する感光性印刷ブランクをレーザアブレーションして、その場マスクを作製する。次いで、その場マスクを通して少なくとも1つの化学線源に前記印刷ブランクを曝露して、光硬化性層の一部を選択的に架橋し、硬化させる。曝露工程中の少なくとも1つの光硬化性層への空気の拡散を制限し、曝露工程中に、少なくとも1つの化学線源の照明の種類、出力、及び入射角のうちの少なくとも1つを変化させることが好ましい。得られたレリーフ像は、複数のドットを含み、段ボールに印刷するために印刷フルーティングに対する耐性の高いドット形状の複数のドットが生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、レリーフ構造を改善するためのレリーフ像フレキソ印刷要素を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキソ印刷は、大量生産に一般的に使用されている印刷方法である。フレキソ印刷は、紙、板紙素材、段ボール、フィルム、フォイル、及び積層体等の多様な基材に対する印刷に用いられる。新聞及び食料雑貨用袋が主な例である。粗い表面及び伸縮性フィルムに経済的に印刷するにはフレキソ印刷を用いるしかない。フレキソ刷版は、画像要素が開口領域の上方に隆起しているレリーフ版である。一般的に、前記版は、若干柔らかく、印刷シリンダに巻き付けるのに十分な程度可撓性であり、且つ百万枚超を印刷するのに十分な程度耐久性がある。かかる版は、主にその耐久性及び作製容易性により、多くの長所をプリンタにもたらす。
【0003】
段ボールは、一般的に、中芯原紙を含み、これは、典型的に、「ライナ」と呼ばれる平判紙又は紙様層に隣接している「フルート」と呼ばれるひだ付又は複数の溝付の板紙である。典型的な段ボール構造は、2枚のライナ層の間に挟まれたフルート層を含む。他の実施形態は、複数の層のフルート及び/又はライナを含んでいてもよい。波状の中間層は、段ボールに構造的剛性をもたらす。段ボールは、包装材として使用されて箱及び容器に成形されるので、パッケージを識別するための情報は、段ボールの外側表面を形成するライナ層に印刷されることが多い。外側ライナ層は、下層のフルート層による支持が不均一であるので、僅かに窪んでいることが多い。
【0004】
段ボール基材に印刷を行うときに直面する可能性のある問題は、「フルーティング(fluting)」と呼ばれる印刷作用の発生である(これは、「バンディング(banding)」、「ストリッピング(striping)」、又は「ウォッシュボーディング(washboarding)」としても知られている)。フルーティングは、段ボールを組み立てた後に前記段ボールの外側表面のライナに印刷を行うときに生じる場合がある。フルーティング作用は、段ボールの下層のフルーティング構造に対応して、暗い印刷領域、即ち密度の濃いバンドと、明るい印刷領域、即ち密度の低いバンドとが交互に現れる作用である。波状の中間層構造の最上部がライナの印刷表面を支持している箇所で、より暗い印刷領域が生じる。フルーティング作用は、インクの付いた領域が総面積のごく一部を表す色調又は色合いの値を有する印刷画像の領域、及びインクによる被覆率がより高い印刷画像の領域において明白である場合がある。このフルーティング作用は、典型的に、デジタルワークフロープロセスを用いて生産されるフレキソ印刷要素を用いて印刷が行われるときにより顕著である。更に、印圧を上昇させてもストリッピングはなくならず、印圧の上昇が段ボール基材に損傷を与える場合もある。したがって、段ボール基材に印刷を行うときのストリッピング又はフルーティングを低減する他の方法が必要とされている。
【0005】
製造業者によって供給される典型的なフレキソ刷版は、裏層、即ち支持層;1以上の未露光の光硬化層;保護層、即ちスリップフィルム;及び多くの場合保護カバーシートの順に作製された多層物品である。
【0006】
支持シート、即ち裏層は、版を支持するためのものである。支持シート、即ち裏層は、紙、セルロースフィルム、プラスチック、又は金属等の透明又は不透明な材料から形成することができる。好ましい材料としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリアミド等の合成ポリマー材料から作製されるシートが挙げられる。一般的に、最も広く用いられている支持層は、ポリエチレンテレフタレートの可撓性フィルムである。支持シートは、任意で、より確実に光硬化性層に取り付けるために接着層を含んでいてもよい。任意で、支持層と1以上の光硬化性層との間にハレーション防止層を設けてもよい。ハレーション防止層は、光硬化性樹脂層の非画像領域内においてUV光の散乱によって引き起こされるハレーションを最小化するために用いられる。
【0007】
光硬化性層は、公知のフォトポリマー、モノマー、反応開始剤、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、充填剤、及び染料のいずれかを含んでいてもよい。「光硬化性」という用語は、化学線に反応して重合、架橋、又は任意の他の硬化若しくは固化反応を受ける組成物を指し、前記反応の結果、材料の未露光部分を露光(硬化)部分から選択的に分離及び除去して、硬化した材料の三次元パターン、即ちレリーフパターンを形成することができる。好ましい光硬化性材料としては、エラストマー化合物、少なくとも1つの末端エチレン基を有するエチレン性不飽和化合物、及び光反応開始剤が挙げられる。例示的な光硬化性材料は、特許文献1〜15に開示されており、これらの主題は、参照することにより全体が本願に援用される。1超の光硬化性層を用いてもよい。
【0008】
光硬化性材料は、一般的に、少なくとも幾つかの化学線波長域においてラジカル重合を通して架橋(硬化)及び固化する。本明細書で使用するとき、化学線は、曝露部分に化学的な変化を及ぼすことができる放射線である。化学線としては、例えば、特に、UV及び紫色波長域における増幅光(例えば、レーザー)及び非増幅光が挙げられる。1つの一般的に用いられる化学線源は、水銀灯であるが、他の源も当業者に一般的に公知である。
【0009】
スリップフィルムは、埃からフォトポリマーを保護し、取扱容易性を高める薄層である。従来の(「アナログ」)製版プロセスでは、スリップフィルムは、UV光を透過する。このプロセスでは、プリンタが刷版ブランクからカバーシートを引き剥がし、スリップフィルム層上にネガを配置する。次いで、前記ネガを透過したUV光によって前記版及びネガをフラッド露光する。露光された領域は光硬化又は固化するので、未露光領域を取り除いて(現像して)刷版上にレリーフ像を形成する。版の取扱容易性を改善するために、スリップフィルムの代わりにマット層を用いてもよい。マット層は、典型的に、結合剤水溶液中に懸濁している微粒子(シリカ又は類似の粒子)を含む。マット層をフォトポリマー層にコーティングし、次いで、空気乾燥させる。次いで、後で光硬化性層をUVによってフラッド露光するためにマット層にネガを配置する。
【0010】
「デジタル」即ち「ダイレクト刷版」製版プロセスでは、レーザは、電子データファイルに保存されている画像によって導かれ、デジタル(即ち、レーザアブレーション可能な)マスキング層にその場でネガを形成するために用いられる。前記マスキング層は、一般的に放射線不透過材料を含むように改変されているスリップフィルムである。レーザアブレーション可能な層の一部は、選択された波長及びレーザ出力でレーザ照射にマスキング層を曝露することによってアブレーションされる。レーザアブレーション可能な層の例は、例えば、特許文献16〜18に開示されており、これらの主題を参照することにより全体を本願に援用する。
【0011】
画像形成後、感光性印刷要素を現像して、光硬化性材料の層の未重合部分を取り除き、硬化した感光性印刷要素における架橋されたレリーフ像を形成する。典型的な現像方法としては、様々な溶媒又は水で洗浄することが挙げられ、多くの場合ブラシが用いられる。現像の他の選択肢としては、エアナイフの使用、及び熱とブロッターとの使用が挙げられる。得られる表面は、印刷される画像を複製するレリーフパターンを有する。レリーフパターンは、典型的に、複数のドットを含み、多くの要因の中でも前記ドットの形状及びレリーフの深さが印刷される画像の品質に影響を与える。レリーフ像を現像した後、レリーフ像印刷要素をプレスに実装し、印刷を開始することができる。
【0012】
光硬化性樹脂組成物は、典型的に、化学線に曝露されるとラジカル重合により硬化する。しかし、硬化反応は、典型的に樹脂組成物に溶解している分子状酸素によって阻害されることがあり、これは、酸素がラジカル捕捉剤として機能するためである。したがって、光硬化性樹脂組成物がより迅速且つ均一に硬化することができるように、像様露光前に溶解している酸素を樹脂組成物から除去することが望ましい。
【0013】
溶解している酸素の除去は、例えば、溶解している酸素を置き換えるために、露光前に一晩、二酸化炭素ガス又は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中に感光性樹脂版を配置することによって行うことができる。この方法の特筆すべき問題点は、不便で、面倒で、且つ装置が広いスペースを必要とする点である。
【0014】
使用されている別のアプローチは、版を化学線で予備露光(即ち、「バンプ露光」)することを含む。バンプ露光では、より高い強度の主露光線量の化学線に版を曝露する前に、低強度の「前露光」線量の化学線を用いて樹脂を感光させる。バンプ露光は、版領域全体に対して行われ、短時間、低線量で版を露光することにより版(又は他の印刷要素)の光重合を阻害する酸素の濃度を低下させ、完成版における精密な特徴(即ち、ハイライトドット、細い線、独立したドット等)を保持するのに役立つ。しかし、前感光工程によって、シャドートーンが目詰まり(fill in)してしまい、画像のハーフトーンの色調範囲を狭めることもある。
【0015】
また、バンプ露光は、露光時間、照射される光の強度等の、溶解している酸素をクエンチするためにのみ制限される特定の条件を必要とする。更に、感光性樹脂層の厚みが0.1mm超である場合、低強度バンプ露光線量の弱い光では感光性樹脂層の特定の部分(即ち、基材層に最も近接し、且つ化学線源から最も離れている感光性層の側面)に十分に達しないので、そこに溶解している酸素の除去が不十分になる。続いて行われる主露光では、残留酸素が原因で前記部分が十分に硬化しない。他の試みは、単独で又はバンプ露光と組み合わせて特殊な版を形成することを含む。
【0016】
例えば、主題を参照することにより全体を本願に援用する特許文献19は、主な光反応開始剤によって吸収される波長から少なくとも100nm離れた波長で化学線を吸収するために樹脂に添加される別の染料の使用を示唆する。これにより、バンプ用反応開始剤及び主な反応開始剤について反応開始剤の量を別々に最適化することが可能となる。残念なことに、これら染料は、弱い反応開始剤であり、長いバンプ露光時間を必要とする。更に、これら染料は、通常の室内灯で樹脂を感光させるので、作業環境に不便な黄色安全光を必要とする。最後に、特許文献19に記載されているアプローチは、バンプ露光に従来の広帯域型化学線源を使用するので、樹脂の下層に著しい量の酸素を残す傾向がある。
【0017】
主題を参照することにより全体を本願に援用する特許文献20は、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−アルキルオキシメチルアクリルアミド、又はN−アルキルオキシメチルメタクリルアミド、及びメラミン誘導体の縮合反応生成物と、少なくとも1つの水溶性ポリマーと、光重合反応開始剤とを含有する光重合性組成物について記載している。本発明者らによれば、前記組成物により、前露光コンディショニングの必要がなくなり、化学的且つ熱的に安定な版が生産される。
【0018】
他の試みは、樹脂組成物に酸素捕捉剤を添加して、酸素の作用を抑制することに着目している。樹脂系における酸素捕捉剤の使用は、例えば、主題を参照することにより全体を本願に援用する特許文献21及び22に記載されている。
【0019】
しかし、これら方法は全て、特に段ボール基材に印刷するために設計する場合、優れたドット構造を生じさせるレリーフ像印刷要素の生産において未だ不十分である。
【0020】
したがって、段ボール基材に印刷するための典型的なアナログワークフロープロセスのレリーフ構造と同程度であるか又はそれよりも優れている改善されたレリーフ構造を有するレリーフ像印刷要素を調製するための改善されたプロセスが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0456336A2号明細書(Goss等)
【特許文献2】欧州特許出願公開第0640878A1号明細書(Goss等)
【特許文献3】英国特許第1,366,769号明細書
【特許文献4】米国特許第5,223,375号明細書(Berrier等)
【特許文献5】米国特許第3,867,153号明細書(MacLahan)
【特許文献6】米国特許第4,264,705号明細書(Allen)
【特許文献7】米国特許第4,323,636号明細書(Chen等)
【特許文献8】米国特許第4,323,637号明細書(Chen等)
【特許文献9】米国特許第4,369,246号明細書(Chen等)
【特許文献10】米国特許第4,423,135号明細書(Chen等)
【特許文献11】米国特許第3,265,765号明細書(Holden等)
【特許文献12】米国特許第4,320,188号明細書(Heinz等)
【特許文献13】米国特許第4,427,759号明細書(Gruetzmacher等)
【特許文献14】米国特許第4,622,088号明細書(Min)
【特許文献15】米国特許第5,135,827号明細書(Bohm等)
【特許文献16】米国特許第5,925,500号明細書(Yang等)
【特許文献17】米国特許第5,262,275号明細書(Fan)
【特許文献18】米国特許第6,238,837号明細書(Fan)
【特許文献19】米国特許第5,330,882号明細書(Kawaguchi)
【特許文献20】米国特許第4,540,649号明細書(Sakurai)
【特許文献21】米国特許第3,479,185号明細書(Chambers,Jr.)
【特許文献22】米国特許第4,414,312号明細書(Goff等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、段ボール基材に印刷するときに良好な結果を生じさせるレリーフ像刷版を提供することにある。
【0023】
本発明の別の目的は、段ボール基材に印刷したときの印刷フルーティングを低減するレリーフ像刷版を製造することにある。
【0024】
本発明の別の目的は、印刷表面、エッジ解像力、肩角、深さ、及びドット高さに関して優れたドット構造をレリーフ像印刷要素に作製することにある。
【0025】
本発明の別の目的は、印刷要素上に印刷フルーティングに対する耐性の高いドット形状を提供することにある。
【0026】
本発明の更に別の目的は、レリーフ像印刷要素の印刷表面の表面粗度を制御することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
これら目的のために、本発明は、一般的に、感光性印刷ブランクからレリーフ像印刷要素を作製する方法であって、前記感光性印刷ブランクが、少なくとも1層の光硬化性層に配置されるレーザアブレーション可能なマスク層を含み、前記方法が、
a)前記レーザアブレーション可能なマスク層を選択的にレーザアブレーションして、前記光硬化性層にその場マスク及び非被覆部分を形成する工程と、
b)前記その場マスクを通して少なくとも1つの化学線源にレーザアブレーションされた印刷ブランクを曝露して、前記光硬化性層の一部を選択的に架橋及び硬化させる工程と
を含み、
工程(b)の前に前記光硬化性層のその場マスク及び任意の非被覆部分上に拡散バリアを配置することによって前記少なくとも1層の光硬化性層への酸素の拡散を制限し、前記拡散バリアの酸素拡散係数が、6.9×10−9/秒未満、好ましくは6.9×10−10/秒未満、最も好ましくは6.9×10−11/秒未満である方法に関する。前記拡散バリアは、
i)曝露工程の前に前記光硬化性層のその場マスク及び任意の非被覆部分にバリア膜を積層する、並びに
ii)曝露工程の前に液体、好ましくは油の層で前記光硬化性層のその場マスク及び任意の非被覆部分をコーティングする
からなる群より選択される方法によって配置されることが好ましく、前記バリア膜及び/又は液体の層の酸素拡散係数は、6.9×10−9/秒未満、好ましくは6.9×10−10/秒未満、最も好ましくは6.9×10−11/秒未満である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明を用いることなしに露光された印刷要素のドットと比べたときの、本発明に固有のドット/肩構造を示す複数のドットを有する印刷要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明者らは、印刷ドットの形状及び構造が、それを印刷する手段に重大な影響を及ぼすことを見出した。これを知れば、本明細書に記載される方法によって得られる印刷ドットの形状を操作することができる。また、これら方法の使用は、フルーティングの傾向を低減する機能も有する。
【0030】
段ボール基材に印刷するときの印刷フルーティングを低減するために、本発明者らは、(1)曝露工程から空気を除去し、好ましくは(2)照明の種類、出力、及び入射角を変化させることが必要であることを見出した。
【0031】
これら方法の使用によって、印刷フルーティングに対して高度に耐性であり且つプレスにおいて優れた印象許容度(即ち、印刷中により大きな圧力が版に印加されたときの印刷ゲインの変化に対する耐性)を示すドット形状が得られる。
【0032】
本発明者らは、印刷要素上に形成される印刷ドットの形状を有利に変化させる最も重要な方法は、化学線への曝露中に光硬化性層から空気を取り除くか又は光硬化性層への空気の拡散を制限することであることを見出した。本発明者らは、以下の方法によって光硬化性層への空気の拡散を制限できることを見出した:
(1)光硬化性層のその場マスク及び任意の非被覆部分を被覆するためにフレキソ版上にバリア膜を積層する。前記膜は、その場マスクを作製するためにレーザアブレーションされた後であるが、化学線で露光される前に適用するのが最も有益である場合がある。また、本発明者らは、このシートを用いて版の印刷表面に明確なテクスチャを付与することができることを見出し、これは、この方法の更なる特徴及び利点である。
(2)液体、好ましくは油の層でその場マスク及び任意の非被覆フォトポリマー層をコーティングする。
前記バリア膜及び/又は液体の層の酸素拡散係数は、6.9×10−9/秒未満、好ましくは6.9×10−10/秒未満、最も好ましくは6.9×10−11/秒未満である。
【0033】
また、この点に関して、照明の種類、出力、及び入射角を変化させることが有用である場合があり、これは、複数の方法によって達成することができる。例えば、照明の種類、出力、及び入射角を変化させることは、曝露工程中に版の上方でコリメーティンググリッドを用いることによって達成することができる。アナログ版に対するコリメーティンググリッドの使用は、米国特許第6,245,487号(Randall)におけるアナログ刷版に関して記載されており、この主題を参照することにより全体を本願に援用する。これに代えて、点光源又は他の半干渉光源を使用してもよい。これら光源は、光源及び露光ユニットの設計によって、スペクトル、エネルギー集中、及び入射角を様々な程度変化させることができる。これら点光源の例としては、Olec社製OVAC露光ユニット及びCortron社製eXact露光ユニットが挙げられる。最後に、全干渉(例えば、レーザ)光源を露光に用いてもよい。レーザ光源の例としては、Luscher Xposeイメージャ及びHeidelberg Prosetteイメージャ等のデバイスで用いられるUVレーザダイオードが挙げられる。照明の種類、出力、及び入射角を変化させることができる他の光源を本発明の実施において用いてもよい。
【0034】
1つの実施形態では、本発明は、一般的に、感光性印刷ブランクからレリーフ像印刷要素を作製する方法であって、前記感光性印刷ブランクが、少なくとも1層の光硬化性層に配置されるレーザアブレーション可能なマスク層を含み、前記方法が、
a)前記レーザアブレーション可能なマスク層を選択的にレーザアブレーションして、前記光硬化性層にその場マスク及び非被覆部分を形成する工程と、
b)前記その場マスクを通して少なくとも1つの化学線源にレーザアブレーションされた印刷ブランクを曝露して、前記光硬化性層の一部を選択的に架橋及び硬化させる工程と
を含み、
曝露工程中の前記少なくとも1層の光硬化性層への空気の拡散が、以下のうちの少なくとも1つから選択される方法によって制限される方法に関する:
i)曝露工程の前に前記光硬化性層のその場マスク及び任意の非被覆部分にバリア膜を積層する方法、並びに
ii)曝露工程の前に液体、好ましくは油の層で前記光硬化性層のその場マスク及び任意の非被覆部分をコーティングする方法。
【0035】
広範囲に亘る材料が、バリア膜層として機能することができる。有効なバリア層を生産するための本発明者らが同定した3つの品質は、光透過性、薄い厚み、及び酸素輸送の阻害を含む。酸素輸送の阻害は、低酸素拡散係数に関する尺度である。上述の通り、膜(即ち液体の層)の酸素拡散係数は、6.9×10−9/秒未満、好ましくは6.9×10−10/秒未満、最も好ましくは6.9×10−11/秒未満でなければならない。
【0036】
本発明のバリア膜層として使用するために好適な材料の例としては、ポリアミド類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルセルロース、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、両性インターポリマー、酢酸酪酸セルロース、アルキルセルロース、ブチラール、環状ゴム、及びこれらのうちの1以上の組み合わせ等のフレキソ印刷要素における剥離層として従来用いられている材料が挙げられる。更に、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、及び類似する透明なフィルム等のフィルムも、バリアフィルムとして良好に機能することができる。1つの好ましい実施形態では、バリア膜層は、ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンテレフタレートフィルムを含む。1つの特に好ましいバリア膜は、富士フイルム株式会社から入手可能なFuji(登録商標)最終校正刷り用膜である。
【0037】
バリア膜は、フィルム及びフィルム/フォトポリマー版の組み合わせの取扱に関する構造上の要件と矛盾しない限り、できるだけ薄くなければならない。バリア膜の厚みは、約1ミクロン〜約100ミクロンが好ましく、約1ミクロン〜約5ミクロンが最も好ましい。
【0038】
バリア膜は、感光性印刷ブランクを露光するのに用いられる化学線を膜が吸収したり偏光させたりして悪影響を与えないように十分な光透過性を有している必要がある。したがって、バリア膜の光透過性は、少なくとも50%が好ましく、少なくとも75%が最も好ましい。
【0039】
バリア膜は、化学線による露光中に光硬化性層へ酸素が拡散するのを有効に制限することができるように、酸素の拡散に対して十分に不透過性である必要がある。本発明者らは、上記厚みを有する上記バリア膜材料が、本明細書に記載の通り使用されるとき光硬化性層への酸素の拡散を実質的に制限することを見出した。
【0040】
光硬化性層への酸素の拡散を制限することに加えて、バリア膜を用いて、印刷要素の印刷表面に明確なテクスチャを付与又は刻印したり、印刷要素の印刷表面の表面粗度を所望のレベルに制御したりすることができる。本発明の1つの実施形態では、バリア膜は、マット仕上げを含み、前記マット仕上げのテクスチャを版表面に転写して、刷版の表面に望ましい表面粗度をもたらすことができる。例えば、1つの実施形態では、マット仕上げは、約700nm〜約800nmの平均表面粗度をもたらす。この場合、バリア膜は、硬化したフォトポリマー層を有するポリプロピレンフィルムを含み、前記硬化したフォトポリマー層は、明確なトポグラフィックパターンを有する。バリア膜表面のテクスチャ又は粗度は、積層工程中、フォトポリマー層(光硬化性層)の表面に刻印される。一般的に、これに関しる表面粗度は、Veeco Optical粗面計、モデルWyko NT 3300(Veeco Instruments,Plainville,NY)を用いて測定することができる。
【0041】
本発明の別の実施形態では、バリア膜は、100nm未満の粗度を有する平滑なナノ技術フィルムを含む。この実施形態では、刷版の平均表面粗度を約100nm未満に制御することができる。
【0042】
バリア層は、典型的な積層プロセスにおいて圧力及び/又は熱を用いて刷版の表面に積層させることができる。
【0043】
別の実施形態では、刷版は、曝露工程の前に液体の層、好ましくは油の層で被覆されてもよく、前記油は、透明であっても有色であってもよい。本発明において液体又は油は、バリア膜の別の形態として機能する。固体のバリア膜と同様に、用いられる液体は、光硬化性層を露光するために用いられる化学線に対して光透過性であることが重要である。前記液体の層の光透過性は、少なくとも50%が好ましく、少なくとも75%が最も好ましい。また、前記液体の層は、上述の酸素の拡散係数を有する光硬化性層に酸素が拡散するのを実質的に阻害することができなければならない。また、前記液体は、加工中に所定の位置に留まるのに十分な程度粘性でなければならない。本発明者らは、以下の油:パラフィン系炭化水素油、ナフテン系炭化水素油、シリコーン油、及び植物油のうちのいずれかを含む厚み1μm〜100μmの液体の層が前述の基準を満たすであることを見出した。前記液体は、その場マスクが作製された後であるが、印刷ブランクが化学線に曝露される前に印刷要素の表面に広げなければならない。
【0044】
本明細書に記載される通り感光性印刷ブランクを化学線に曝露した後、印刷ブランクを現像して、前記印刷ブランクにおけるレリーフ像を形成する。一例であって限定するものではないが、現像は、水現像、溶媒現像、及び熱現像を含む様々な方法によって行うことができる。
【0045】
最後に、レリーフ像印刷要素を印刷プレスの印刷シリンダに実装し、印刷を開始する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性印刷ブランクからレリーフ像印刷要素を作製する方法であって、前記感光性印刷ブランクが、少なくとも1層の光硬化性層に配置されるレーザアブレーション可能な層を含み、前記方法が、
a)前記レーザアブレーション可能な層を選択的にレーザアブレーションして、前記光硬化性層にその場マスク及び非被覆部分を形成する工程と、
b)前記その場マスクを通して少なくとも1つの化学線源にレーザアブレーションされた印刷ブランクを曝露して、前記光硬化性層の一部を選択的に架橋及び硬化させる工程と
を含み、
曝露工程中の前記少なくとも1層の光硬化性層への空気の拡散が、以下のうちの少なくとも1つから選択される方法によって制限され:
i)工程(b)の前に前記光硬化性層のその場マスク及び任意の非被覆部分にバリア膜を積層する方法、並びに
ii)工程(b)の前に液体の層で前記光硬化性層のその場マスク及び任意の非被覆部分をコーティングする方法、
前記バリア膜及び前記液体の層の少なくともいずれかの酸素拡散係数が、6.9×10−9/秒未満であることを特徴とする方法。
【請求項2】
バリア膜が用いられ、前記バリア膜が、ポリアミド類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルセルロース、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、両性インターポリマー、酢酸酪酸セルロース、アルキルセルロース、ブチラール、環状ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、及びこれらのうちの2以上の組み合わせからなる群より選択される材料を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バリア膜が用いられ、前記バリア膜が、規定の表面粗度を有する表面を含み、前記バリア膜の表面の前記規定の表面粗度が光硬化性層に刻印される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
バリア膜が、約100nm未満の平均表面粗度を有する平滑表面を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
光硬化性層のその場マスク及び任意の非被覆部分が、工程(b)の前に油の層で被覆される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
バリア膜が、圧力及び熱の少なくともいずれかを用いて光硬化性層のその場マスク及び任意の非被覆部分に積層される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの化学線源の照明の種類、出力、及び入射角のうちの少なくとも1つを曝露工程中に変化させる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの化学線源の照明の種類、出力、及び入射角のうちの少なくとも1つを曝露工程中に変化させる請求項2に記載の方法。
【請求項9】
バリア膜の厚みが、約1ミクロン〜約100ミクロンである請求項2に記載の方法。
【請求項10】
バリア膜の厚みが、約1ミクロン〜約5ミクロンである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
バリア膜が、ポリプロピレンフィルムを含む請求項2に記載の方法。
【請求項12】
バリア膜が、硬化したフォトポリマー層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを含む請求項3に記載の方法。
【請求項13】
硬化したフォトポリマー層が、明確なトポグラフィックパターンを有し、前記フォトポリマー層が、積層工程中に光硬化性層の表面に刻印される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
水現像、溶媒現像、及び熱現像からなる群より選択される方法によって、感光性印刷ブランクを現像して前記感光性印刷ブランクにおけるレリーフ像を形成する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
油の層の厚みが、1μm〜10μmである請求項5に記載の方法。
【請求項16】
バリア膜の光透過性が、少なくとも50%である請求項3に記載の方法。
【請求項17】
油の層の光透過性が、50%である請求項15に記載の方法。
【請求項18】
酸素拡散係数が、6.9×10−10/秒未満である請求項1から17のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−506867(P2013−506867A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532088(P2012−532088)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/046453
【国際公開番号】WO2011/041046
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(506314391)マクダーミッド プリンティング ソリューションズ, エルエルシー (23)
【Fターム(参考)】