説明

フレーバーオイルの可溶化プロセス

本発明のプロセスは、水におけるフレーバーオイルの可溶化を可能にして、澄んだ飲料を製造する。オイル可溶化に必要とされる乳化剤の量は、オイルの量よりも少なく、典型的なオイル対乳化剤の比は、2:1である。まず、乳化剤溶液とフレーバーオイルとを激しい剪断混合に供することによって、原料エマルジョンが作られる。次に、このエマルジョンがホモジナイザーに供給されて、より上質なエマルジョンを製造する。次に、得られたフレーバー濃縮物を希釈して、澄んだ飲料を製造することができる。また、このプロセスは、通常不溶性な栄養補助剤、特には親油性のものを飲料中に導入することを容易にする。マイクロエマルジョンの配合と比べて、このプロセスは、様々なフレーバー及び栄養補助剤に合わせて配合する簡単な方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
先行する出願への相互参照
本願は、米国仮出願第60/826,766号(2006年9月25日出願)及び第60/828,205号(2006年10月4日出願)の本出願であり、これらの出願の利益及び優先権を主張するものである。
【0002】
米国政府のサポート
なし。
【0003】
発明の背景
発明の分野
本発明は、精油を可溶化して、澄んだ(clear)飲料を製造するプロセスに関する。
【0004】
背景
飲料の製造における多くの香味料(flavoring agent)は、一般に水に不溶な精油である。オレンジ、レモン及びグレープフルーツなどの一般的なフレーバーは、水の中では限られた溶解度を有している。しかしながら、これらのフレーバーは、特には飲料における所望の芳香及び香味のおかげで、消費者に好評を博している。
【0005】
これらの油を水中へと導入する幾つかの産業的な慣習がある。主な技術は、この精油を、水混和性溶媒を用いて洗浄/抽出して、水に不溶な成分の大部分を除去することにある。この洗浄プロセスでは、オイルの水溶性成分、即ち極性成分が抽出され、この抽出物は澄んだ飲料を作り出すのに使用され得る。しかしながら、このプロセスは、精油の芳香及び香味の全てを維持するものではなく、例えば柑橘油によって提供されるフレーバーの「爽やかさ(freshness)」は低減される。使用される他の一般的な技術は、マイクロエマルジョンとなるように精油を配合することにある。これらのマイクロエマルジョンは、約30%の精油と、20−50%の界面活性剤とを含んでおり、残部は、グリセロール、プロピレングリコール、エタノールなどの食品用溶媒又は水である。これらのマイクロエマルジョンの殆どは、ポリソルベートなどのエトキシ化された界面活性剤も含有している。ポリソルベートの使用は、風味だけでなく規制の問題も生じさせる。マイクロエマルジョンは自発的に生じるが、オイル、界面活性剤及び溶媒の相対量は、それらの形成にとって重要なものである。或るフレーバーオイルの組成は、その起源及び処理に依存するので、マイクロエマルジョンは、オイルの違いに合わせてあつらえられねばならない。更に、飲料中におけるフレーバーの分散を可能にする固体フレーバー配送システムも開発されている。これらシステムでは、親水コロイド及び/又はスターチがキャリアとして使用される。これらシステムの欠点は、フレーバーの添加量が制限されることである。例えば、米国特許第4,707,367号(Millerら)は、この固体が平均で僅かに20重量%のフレーバーを含有したシステムを開示している。
【0006】
機能性飲料の人気の増加に伴い、コエンザイムQ10、オメガ3脂肪酸、ビタミン及びカロチノイドなどの栄養補助剤が飲料中で補われている。これらの栄養補助剤の多くは、本質的に親油性であり、限られた水溶性を示す。目的とする最終製品が澄んだ飲料である場合、これらの栄養補助食品は、飲料に導入する前に、水溶性の形態へと配合されねばならない。
【0007】
発明の詳細な説明
以下の説明は、当業者が本発明を実施及び使用できるように提供されており、本発明者が企図した、彼の発明を実施する最良の形態を示している。しかしながら、ここには、フレーバーオイルの可溶化のための改善されたプロセスを提供するための本発明の概略的な本質が詳細に規定されているので、様々な変更は、当業者には直ちに明らかなままであろう。
【0008】
フレーバーオイルを澄んだ飲料中に混ぜ込むための我々の改善された方法は、高親水−親油平衡(HLB)乳化剤と共に、高圧ホモジナイザー(homogenizer)を使用して、フレーバーオイルを可溶化し、洗浄/抽出を行うことも、この産業において一般的な共溶媒を含める必要もなしに、より明るく、より爽やかな飲料を与える。優れたオイル可溶化という結果に加えて、本プロセスは、更に、オイルを可溶化するのに必要とされる乳化剤の量を低減する。
【0009】
このプロセスでは、1つの乳化剤又は乳化剤のブレンドが、シングルフォールドオイル(single fold oil)、特には、オレンジ、レモン及びライムなどの柑橘系フレーバーによって香味が付けられた光学的に澄んだ飲料を得るのに使用され得る。シングルフォールドオイルに加えて、この技術は、天然フレーバーオイル及び合成香味料の混合物を含んだフレーバーベースにも働く。
【0010】
このプロセスでは、多種多様な乳化剤が使用され得る。使用され得る乳化剤を、表1にまとめる。
【表1】

【0011】
また、このプロセスは、可溶化のための、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ローズマリーオイル又は他の親油性物質のフレーバーオイルへの添加を許容する。オイルに応じて、スクロースアセテートイソブチレート、臭化植物油及びキサンタンガムなどの一般的な増量剤が、濃縮物(concentrate)又は飲料におけるエマルジョンの安定性を高めるために添加され得る。
【0012】
このプロセスの第1工程は、乳化剤を水に溶解させることを含んでいる。表1の乳化剤のうちの何れか(これらの混合物を含む)が使用され得る。また、プロピレングリコール、グリセロール、ベンジルアルコール、トリアセチン、エタノール及びイソプロパノールなどの溶媒と水との組み合わせが、乳化剤を溶解させるのに使用され得る。我々は、共溶媒の使用に加えて、糖(サッカリド)及び/又は糖アルコールをこの乳化剤水溶液混合物に加えることで、改善された結果が得られることを発見した。以下の糖及び糖誘導体が有効であることがわかっている:スクロース、フルクトース、グルコース、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、グリセロール及びこれらの混合物。また、乳化剤は、スクロースと共に乾式混合されてから溶解され得る。使用される乳化剤/乳化剤系に応じて、熱を加えて、溶解を促進しても良い。次の工程において、フレーバーオイルがこの乳化剤溶液に加えられ、激しい剪断混合(high shear mixing)により、原料(crude)エマルジョンが生成される。この原料エマルジョンは、二段階ホモジナイザーへと供給され、複数回の均質化に供される。この均質化プロトコルは、使用されるフレーバーオイルに依存する。典型的には、400barで3回行うことが適切である。均質化の後、エマルジョン濃縮物は、飲料に添加される所望のフレーバーへと希釈される。飲料の性質に応じて、この飲料は、低温殺菌に供されても良い。低温殺菌後、澄んだ溶液が得られる。低温殺菌を受けていない飲料について、この飲料の清澄度は、フレーバーオイルのテルペン含有量に依存する。フレーバーのテルペン含有量が75%未満の場合、澄んだ飲料を得ることができる。低温殺菌は、飲料の清澄化を促進することだけでなく、それを殺菌して、微生物の成長に拠る品質低下を防ぐことに役立つ。低温殺菌に加えて、ろ過、オゾン処理も、飲料を殺菌するのに使用され得る。
【0013】
スクロースモノエステルは、それ単独で、本発明のプロセスのための優れた乳化剤であることが分かっている。スクロースエステルのみが乳化剤として用いられる場合、澄んだ飲料を得ることができる。フレーバーオイルの組成は、その起源、種類及び処理履歴に大きく依存する。更に、オイルのブレンド法は、特定のフレーバープロファイルを達成するために一般的なものである。従って、この可溶化プロセスは、フレーバーオイルの違いに合わせることに関して確固不変(robust)であるべきである。脂肪酸鎖の長さ及びエステル化度の点におけるスクロースエステルの範囲の多様性のおかげで、スクロースエステルブレンドの調整は、様々なオイル及び栄養補助剤に対する迅速なカスタマイズ方法を提供することがわかっている。
【0014】
フレーバーオイルの添加される乳化剤に対する比は、使用されるフレーバーオイルの種類に応じて異なる。テルペン含有量が75%のオレンジフレーバーベースの場合、スクロースモノパルミテートが使用されるときには、この比は2:1である。この段階で、栄養補助剤が、フレーバーオイルと共に添加され得る。栄養補助剤が限られた水溶性を有している場合、オイルの添加量の増加に適応して澄んだ飲料をなおも得るために、添加する乳化剤を増量しても良い。
【0015】
添加比に対する乳化剤及びフレーバーの影響を、例において説明する。しかしながら、清澄度を達成するために、使用される1種若しくは複数種のフレーバーオイル又は乳化剤に応じたこの比の調整が必要であり得る。
【0016】
エマルジョン濃縮物において、フレーバーオイルは、典型的には、3%の濃度で存在し、スクロースモノパルミテートは1.5%の濃度で存在する。これは、最終飲料では、25乃至100ppのフレーバーオイル濃度と、12.5乃至50ppmのスクロースモノパルミテート濃度となる。
【0017】
フレーバーオイルの性質に依存して、フレーバー濃縮物の希釈後に澄んだ飲料が得られない場合がある。この場合、低温殺菌が、飲料の清澄度を保証することがわかっている。低温殺菌が許されない場合、飲料を清澄にするために、均質化プロトコルが調整され得る。
【0018】
均質化後に得られるフレーバー濃縮物は、後の希釈に備えて貯蔵されても良い。貯蔵は、増粘剤(thickners)及び安定剤(stabilizers)の添加を含み得る。他の選択肢は、この濃縮物を乾燥して粉末にすることである。考えられる乾燥技術の例は、噴霧乾燥及び凍結乾燥である。最終的に、このエマルジョン濃縮物は、所望の香味付けを達成するために飲料へと希釈され且つ低温殺菌される。低温殺菌工程がこの混合物を清澄化して、澄んだ溶液が得られる。
【0019】
例1
この例は、オレンジフレーバーベースによって香味付けされた飲料の製造を例証している。使用された乳化剤は、モノエステル含有量が90%を超えたスクロースモノパルミテートであった。
【表2】

【0020】
例2
この例は、75%未満のテルペンを含有したレモンフレーバーベースで香味付けされた飲料の製造を例証している。使用された乳化剤は、100%スクロースモノパルミテート(モノエステル含有量は90%を超えていた)であった。
【表3】

【0021】
例3
この例は、スクロースモノラウレートの使用を示している。
【表4】

【0022】
本プロセスは、オレンジオイル、レモンオイル、チョウジ油、シナモンオイル、ミントオイル、バナナオイル及び当技術で周知の他のオイルを包含した任意のフレーバーオイル/精油に有効である。更に、様々な水に不溶なもの、主に親油性のもの、栄養補助剤及びビタミンを、エマルジョン濃縮物中に含めることができる。本発明を使用することによって、トコフェロール(ビタミンE)、カロチノイド(ベータカロチン、他のカロチン及びキサントフィル)及びビタミンDを、容易に飲料に含ませることができる。
【0023】
以下の特許請求の範囲は、上に詳細に例証及び説明されたもの、概念的に等価なもの、明らかに置換され得るもの及び発明の本質的なアイデアを本質的に組み込んだものを包含するものであると理解されるべきである。正に説明した好ましい実施形態についての様々な改造及び変更が、本発明の範囲を逸れることなく構成され得ることは、当業者には明らかであろう。例証された実施形態は、例示のみを目的として示されており、本発明を制限するように解釈されるべきでない。それ故、添付の特許請求の範囲内で、本発明が、ここで詳細に説明した以外の方法で実施され得ることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーバーオイルを可溶化して、澄んだ飲料を製造する方法であって、
フレーバーオイル及び乳化剤を、ハイシアミキサーを用いて水溶液中へと混合して、原料エマルジョンを形成する工程と、
前記原料エマルジョンを均質化させて、フレーバー濃縮物を形成する工程と、
前記フレーバー濃縮物を希釈して、飲料にする工程と、
前記飲料を低温殺菌する工程と
を含んだ方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、前記混合させる工程の前に、スクロースエステル乳化剤とスクロースとを乾式混合させる工程を更に含んだ方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法であって、前記乳化剤は、スクロースエステルを含んでいる方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法であって、前記乳化剤は、複数種の乳化剤の混合物である方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法であって、前記フレーバー濃縮物は、前記均質化工程の後であり且つ前記希釈工程の前に貯蔵される方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法であって、前記フレーバー濃縮物の貯蔵は、増粘剤及び/又は安定剤の添加を更に含んでいる方法。
【請求項7】
請求項5記載の方法であって、前記フレーバー濃縮物の貯蔵は、前記フレーバー濃縮物を乾燥させて粉末にすることを更に含んでいる方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法であって、前記原料エマルジョン中の乳化剤の量は、0.1乃至30重量/体積%(% weight by volume)の範囲内にある方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法であって、前記水溶液は、プロピレングリコール、グリセロール、ベンジルアルコール、トリアセチン、エタノール及びイソプロパノールからなる群より選択される1種以上の水混和性溶媒を更に含有している方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法であって、前記水溶液は、スクロース、フルクトース、グルコース、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、グリセロール及びこれらの混合物からなる群より選択されるサッカリド及び/又は糖アルコールを更に含有している方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法であって、前記原料エマルジョン中の前記フレーバーオイルは、0.2乃至30重量/体積%の範囲内にある方法。
【請求項12】
請求項1記載の方法であって、前記飲料は、0.005乃至0.02重量/重量%(% weight by weight)のフレーバーオイルを含有している方法。
【請求項13】
請求項1記載の方法であって、前記飲料のpHは、2乃至8の範囲内にある方法。
【請求項14】
請求項1記載の方法であって、前記フレーバーオイルは、レモン、ベリー、オレンジ、グレープフルーツ、タンジェリン、ライム、キンカン、マンダリン、ベルガモット及びこれらの混合物からなる群より選択される方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法であって、前記フレーバーオイルは合成香味料も含有している方法。
【請求項16】
請求項1記載の方法であって、前記フレーバー濃縮物は、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ローズマリーオイル及びこれらの混合物からなる群より選択される親油性酸化防止剤を含有している方法。
【請求項17】
請求項1記載の方法であって、前記フレーバー濃縮物は増量剤を更に含有している方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法であって、前記増量剤は、スクロースアセテートイソブチレート、臭化植物油及びキサンタンガムからなる群より選択される方法。
【請求項19】
請求項1記載の方法であって、前記フレーバー濃縮物は栄養補助剤を更に含有している方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法であって、前記栄養補助剤は、コエンザイムQ10、オメガ3脂肪酸、ビタミン及びカロチノイドからなる群より選択される方法。
【請求項21】
請求項1記載の方法であって、前記飲料は、オゾン処理、濾過及び低温殺菌からなる群より選択されるプロセスによって滅菌される方法。

【公表番号】特表2010−517508(P2010−517508A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530482(P2009−530482)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/066861
【国際公開番号】WO2008/039564
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(508204445)
【Fターム(参考)】