説明

フロック化装置

【課題】多量の水分を含む汚泥を固液分離装置によって脱水処理するに先立って、その汚泥をフロック化するフロック化装置の構成を簡素化し、そのコストを低減することを目的とする。
【解決手段】第1の導管10中を流れる水に、第2の導管14を流れた高分子凝集剤原液を注入し、第1の導管10中に設けられた混合手段19によって、第1の導管10中の水と、その水に注入された高分子凝集剤原液の流れを乱してこれらを混合することによって高分子凝集剤を得、その高分子凝集剤を第1の導管10を通して混和槽3に送り込む。この混和槽3には、供給管4を通して汚泥が流入し、その汚泥が、混和槽に送り込まれた高分子凝集剤原液によってフロック化される。フロック化された汚泥は、固液分離装置2に送られて脱水される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多量の水分を含む処理対象物を固液分離装置によって脱水処理するに先立って、その処理対象物をフロック化するフロック化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、廃豆腐、食品加工排水、下水処理物或いは養豚場や牛舎から排出される廃水などの有機系汚泥、その有機系汚泥を微生物によって分解処理した汚泥、メッキ廃液、インク廃液、顔料廃液、塗料廃液などの無機系汚泥などの多量の水分を含む処理対象物から水分を分離する固液分離装置は従来より周知である(例えば、特許文献1及び2参照)。このような固液分離装置によって処理対象物を脱水処理するには、その処理に先立って処理対象物をフロック化装置によってフロック化する必要がある(特許文献2及び3参照)。
【0003】
図3は従来のフロック化装置の一例を示す部分断面説明図である。図中の太線は断面を表している(図1においても同じ)。ここに示したフロック化装置30は、高分子凝集剤原液SAを収容した原液槽31を有し、その原液槽31内の高分子凝集剤原液SAは、矢印Gで示すように、原液移送ポンプ32によって希釈槽33に送られる。一方、この希釈槽33には、矢印Hで示すように水が供給され、その水と高分子凝集剤原液が、モータ35により回転駆動された撹拌羽根36により撹拌される。このように高分子凝集剤原液と水とを撹拌することによって、高分子凝集剤原液を水で希釈した高分子凝集剤が得られる。その高分子凝集剤は、矢印Iで示すように、剤移送ポンプ37によって混和槽38に送られる。一方、この混和槽38には、矢印Jで示すように、多量の水分を含んだ処理対象物が供給され、混和槽38内の処理対象物と高分子凝集剤が、モータ39により回転駆動された撹拌羽根40によって撹拌される。これにより処理対象物がフロック化され、そのフロック化された処理対象物は、図示していない出口から、同じく図示していない固液分離装置に送られ、ここで脱水処理される。
【0004】
ところで、高分子凝集剤原液を水で希釈すべく、その高分子凝集剤原液を水中に供給すると、高分子凝集剤原液がゲル化して、塊状となり、高分子凝集剤原液を均一に溶解させることができなくなるおそれがある。高分子凝集剤原液がこのように塊状となれば、処理対象物をフロック化する機能が低下し、ないしはその機能が失われる。このため、従来は高分子凝集剤原液が送られる希釈槽33に多量の水を供給し、その水と高分子凝集剤原液を、撹拌羽根36によって急激に激しく撹拌して、高分子凝集剤原液が塊状となることを阻止していた。このようにして、従来のフロック化装置によっても、高分子凝集剤原液を水で均一に溶解して高分子凝集剤を得、その高分子凝集剤によって処理対象物を効率よくフロック化することができるのであるが、従来のフロック化装置においては、高分子凝集剤原液を希釈するために、希釈槽33と、モータ35及び撹拌羽根36を有する撹拌装置とを必要とするため、フロック化装置全体の構成が複雑化すると共に、そのコストが上昇する欠点を免れなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−228695号公報
【特許文献2】特許第3573742号公報
【特許文献3】特許第3640957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、構成を簡素化できると共に、コストを大幅に低減することのできるフロック化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、多量の水分を含む処理対象物と高分子凝集剤とが送り込まれる混和槽と、該混和槽に送られた処理対象物と高分子凝集剤とを撹拌して該処理対象物をフロック化する撹拌装置とを有するフロック化装置において、水が送り込まれる第1の導管と、高分子凝集剤原液が送り込まれる第2の導管とを有し、該第2の導管は、前記第1の導管中を流れる水に第2の導管を流れた高分子凝集剤原液が注入されるように、第1の導管に接続されていて、該第1の導管中には、当該第1の導管中の水と、その水に注入された高分子凝集剤原液との流れを乱して、該水と高分子凝集剤原液を混合するミキシング部材を備えた混合手段が設けられており、該混合手段によって水と高分子凝集剤原液とを混合することにより、水に注入された高分子凝集剤原液をその水で希釈して前記高分子凝集剤を得、該高分子凝集剤を第1の導管を通して前記混和槽に送り込むことを特徴とするフロック化装置を提案する(請求項1)。
【0008】
その際、前記第1の導管の下流側端は前記混和槽内の処理対象物の液面よりも下方で開口し、該液面よりも下方の第1の導管部分には、通常は開閉手段により閉鎖されている液排出口が設けられ、該液排出口よりも下流側の第1の導管の部分には、液の逆流を阻止する逆止弁が設けられていると有利である(請求項2)。
【0009】
また、上記請求項1又は2に記載のフロック化装置において、前記第2の導管には、原液槽に収容された高分子凝集剤原液を第2の導管に送り込む原液移送ポンプと、液の逆流を阻止する逆止弁とが設けられ、前記第1の導管には、水タンクに収容された水を第1の導管に送り込む水移送ポンプが設けられていて、該水移送ポンプは、フロック化装置によりフロック化された処理対象物が送り込まれる固液分離装置が作動を停止し、かつ前記原液移送ポンプが作動を停止した後も、所定時間、作動を継続するように制御されると有利である(請求項3)。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1の導管を流れる水に高分子凝集剤原液を注入し、その水と高分子凝集剤原液を、第1の導管中に設けられた混合手段により混合して高分子凝集剤原液を水に均一に溶かすことができるので、第1の導管中に設けられる混合手段を追加するだけで、従来、必ず必要とされた希釈層と、その希釈槽内の高分子凝集剤原液と水とを撹拌する撹拌装置とが不要となり、フロック化装置の構成を簡素化でき、そのコストを大きく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】フロック化装置と固液分離装置を示す部分断面概略図である。
【図2】第1の導管内に設けられた混合手段の具体例を示す断面図である。
【図3】従来のフロック化装置の一例を示す部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0013】
図1はフロック化装置1と固液分離装置2を示す部分断面説明図である。固液分離装置2によって各種の処理対象物を脱水処理できるが、ここでは多量の水分を含んだ汚泥を脱水処理するものとする。
【0014】
図1に示したフロック化装置1は、混和槽3を有し、この混和槽3には、矢印Aで示すように供給管4を通して多量の水分を含んだ汚泥が送り込まれ、しかも矢印Bで示すように、高分子凝集剤原液を水で所定の割合に希釈して得た高分子凝集剤が送り込まれる。この汚泥中には、必要に応じて凝集促進剤が含まれている。混和槽3に送り込まれる汚泥の含水率は、例えば99重量%である。また混和槽3には、モータ5と、そのモータ5により回転駆動される撹拌羽根6とを有する撹拌装置7が配置され、混和槽3に送られた汚泥と高分子凝集剤は、回転する撹拌羽根6によって撹拌され、これによって汚泥がフロック化される。
【0015】
フロック化された汚泥は、矢印Cで示すように混和槽3の出口から固液分離装置2に送り込まれ、ここで脱水処理される。この固液分離装置2によって、汚泥から分離された水分は、矢印Dで示すように下方に流下し、水分の減少したケーキ状の汚泥は矢印Eで示すように固液分離装置2から排出される。このように脱水処理されたケーキ状の汚泥の含水率は、例えば75乃至85重量%程度である。固液分離装置2としては、例えば特許文献1又は2に記載された装置、又はその他の形式の装置を適宜採用することができる。
【0016】
上述のように、本例のフロック化装置1は、多量の水分を含む処理対象物の一例である汚泥と高分子凝集剤とが送り込まれる混和槽3と、その混和槽3に送られた処理対象物と高分子凝集剤とを撹拌して該処理対象物をフロック化する撹拌装置7とを有している。かかるフロック化装置1によってフロック化された処理対象物を固液分離装置2によって効率よく固液分離することができる。
【0017】
次に混和槽3に供給される高分子凝集剤に関連する構成を明らかにする。
【0018】
図1に示したフロック化装置1は、水道管8から供給された水Wを収容する水タンク9を有している。水道管8には、内部が中空なボール53に固定された棒54によって開閉される弁52が設けられていて、ボール53は、水タンク9内の水Wの水位によって上下動し、その水位が高いときは、水道管8の水出口は、弁52によって閉鎖され、水Wの水位が低下して、ボール53が下方に移動すると、弁52が開き、水道管8の水出口から水道水が水タンク9内に供給される。このようにして、水タンク9内には、ほぼ一定した量の水Wが収容される。
【0019】
水タンク9には、第1の導管10の上流側端11が接続され、この第1の導管10の下流側端12は、混和槽3内の汚泥Sの液面よりも下方で開口している。第1の導管10には、水タンク9に収容された水Wを第1の導管10に送り込む水移送ポンプ13が設けられていて、この水移送ポンプ13が作動することによって、水タンク9内の水Wが第1の導管10に送り込まれ、その水が第1の導管10中を矢印F方向に流れる。このようにして第1の導管10を流れる水には、後述するように高分子凝集剤原液が注入され、両者が混合されることにより高分子凝集剤が得られるが、その水の流れ方向における第1の導管10の最上流側の開口端が該第1の導管10の上流側端11であり、高分子凝集剤が流出する側の第1の導管10の開口端が、該第1の導管10の下流側端12である。
【0020】
また、図1に示したフロック化装置1は、第2の導管14と、高分子凝集剤原液SAを収容した原液槽15を有し、第2の導管14には原液移送ポンプ16が設けられている。この原液移送ポンプ16が作動することにより、原液槽15に収容された高分子凝集剤原液SAが第2の導管14に送り込まれ、その高分子凝集剤原液が第2の導管14中を矢印K方向に流れる。第2の導管14には、原液槽15に収容された高分子凝集剤原液SAを第2の導管14に送り込む原液移送ポンプ16が設けられているのである。
【0021】
第2の導管14中を原液が流れる方向Kにおける第2の導管14の上流側端17は、原液槽15の高分子凝集剤原液SA内で開口し、その原液流れ方向Kにおける下流側端18は、第1の導管10に接続されている。
【0022】
第1の導管10と第2の導管14が上述のように接続され、第1及び第2の導管10,14の流路が合流しているので、第2の導管14を矢印K方向に流れた高分子凝集剤原液は、第2の導管14の下流側端18から第1の導管10内に流入し、第1の導管10を矢印F方向に流れる水に注入される。このように本例のフロック化装置1は、水が送り込まれる第1の導管10と、高分子凝集剤原液が送り込まれる第2の導管14とを有し、その第2の導管14は、第1の導管10中を流れる水に、第2の導管14を流れた高分子凝集剤原液が注入されるように、第1の導管10に接続されているのである。
【0023】
一方、第1の導管10には、図1に簡略化して示したように、第1の導管10を流れる水と高分子凝集剤原液を混合する混合手段19が設けられている。図1に示したフロック化装置1には、2つの混合手段19が設けられているが、その数は適宜定めることができる。かかる混合手段19としては、従来より公知のものを含めて各種形式のものを採用することができる。例えば、図2の(a)に示すように、軸20とその軸20に固定されたらせん状の羽根21とから成る第1のミキシング部材23と、その第1のミキシング部材23の羽根21とは反対の方向にねじられたらせん状の羽根21Aと、その羽根21Aが固定された軸20Aとを有する第2のミキシング部材23Aを、第1の導管10中に交互に配設した混合手段19を用いることができる。羽根21,21Aは第1の導管10の内周面に摩擦力によって固定されている。第1の導管10中の水と高分子凝集剤原液が、その第1の導管10と、第1及び第2のミキシング部材23,23Aの羽根21,21Aと、軸20,20Aとにより区画された流路を流れるとき、その流れが激しく乱され、水と高分子凝集剤原液が急激に混合される。これにより、第1の導管10を流れる水に注入された高分子凝集剤原液が、瞬時に水中に均一に溶け込んで溶解し、水で希釈された所定濃度の高分子凝集剤が得られる。水に注入された高分子凝集剤原液が、ゲル化して塊状となることなく、その水中に均一に溶け込むのである。混合手段19を通過した高分子凝集剤は、引き続き第1の導管10中を矢印F方向に流れて、矢印Bで示したように、混和槽3に送り込まれる。このため、混和槽3に送られた汚泥を効率よくフロック化することができる。
【0024】
また、図2の(b)に示したように、第1の導管10に挿入された棒24に多数の邪魔板25を固定したミキシング部材23Bより成る混合手段19を用いることもできる。邪魔板25の先端は、第1の導管10の内周面に摩擦力によって固定されている。かかる混合手段19を採用したときも、その邪魔板25によって第1の導管10を流れる水と高分子凝集剤原液を混合させ、該高分子凝集剤原液を水中に均一に溶け込ませることができる。
【0025】
或いは、図には示していないが、180°に右方向にねじった羽根より成る第1のミキシング部材と、同様に180°左方向にねじった羽根より成る第2のミキシング部材を、第1の導管10の長手方向に沿って交互にその第1の導管10内に配設し、互いに隣接する第1及び第2のミキシング部材の端部を直交した状態で固定連結して成るそれ自体周知な混合手段を用いることもできる。かかる混合手段によっても、第1の導管10内を流れる水と高分子凝集剤原液を効率よく混合して高分子凝集剤を得ることができる。このような混合手段は、例えば、特公昭63−63020号公報、又は特許第3639796号公報などに詳しく記載されている。
【0026】
また、上述した各形式のミキシング部材と第1の導管10を一体に成形することもできる(特公昭63−63020号公報参照)。
【0027】
上述のように、本例のフロック化装置1は、第1の導管10中の水と、その水に注入された高分子凝集剤原液との流れを乱して、該水と高分子凝集剤原液を混合するミキシング部材23,23A,23Bを備えた混合手段19が第1の導管10中に設けられていて、その混合手段19によって水と高分子凝集剤原液とを混合することにより、水に注入された高分子凝集剤原液をその水で希釈して高分子凝集剤を得、その高分子凝集剤を第1の導管10を通して混和槽3に送り込むように構成されている。このように、本例のフロック化装置1は、第1の導管10内に設けられた混合手段19によって、第1の導管10内の水に高分子凝集剤原液を均一に溶かすことができるので、従来のフロック化装置に必ず必要とされた希釈槽と、その希釈槽内の高分子凝集剤原液と水を撹拌する撹拌装置とを必要としない。このため、フロック化装置1の構成を簡素化できると共に、そのコストを効果的に低減することができる。
【0028】
図1に示した2つの混合手段19がそれぞれ設けられた第1の導管10の部分を特にミキシング配管10Aと称することにすると、この各ミキシング配管10Aを、他の第1の導管10部分とは別部材として構成し、その各ミキシング配管10Aと他の第1の導管10の部分をユニオン27を介して着脱可能に連結することができる。各ユニオン27を操作して、各ミキシング配管10Aを他の第1の導管部分から離脱することにより、各ミキシング配管10A内の混合手段16を清掃することができる。
【0029】
また、図1に示したフロック化装置1においては、原液移送ポンプ16として定量ポンプが用いられていて、その原液移送ポンプ16によって第2の導管14に定量の高分子凝集剤原液が送り込まれる。しかも、第1の導管10を流れる水の流量を計測する流量計26が設けられている。従ってその流量計26の測定結果に応じて、第1の導管10を流れる水の流量と、第2の導管14を流れる高分子凝集剤原液の流量とが所定の割合となるように、水移送ポンプ13の駆動を調整することができる。例えば、高分子凝集剤原液の流量が30ml/分であるとき、水の流量が6l/分となるように水移送ポンプ13を制御することにより、高分子凝集剤原液を水で200倍に希釈した高分子凝集剤を得ることができる。
【0030】
図1に示したフロック化装置1においては、その混和槽3にてフロック化された汚泥Sを、矢印Cで示したように、混和槽3の上部の出口からオーバフローさせながら固液分離装置2に送っている。その際、混和槽3内において、その混和槽3に矢印Aで示したように送り込まれた汚泥を、矢印Bで示したように混和槽3に供給された高分子凝集剤によってフロック化するには、所定の反応時間が必要とされる。このため、混和槽3に汚泥を供給する供給管4を混和槽3の下部に接続し、その供給管4を通して混和槽3内に流入した汚泥が、混和槽3の上部出口から矢印C方向に流出するまでに比較的長い時間がかかるようにしている。これにより充分な反応時間を確保することが可能となる。
【0031】
同様に、汚泥と高分子凝集剤の充分な反応時間を確保するには、第1の導管10を通して混和槽3内に流入した高分子凝集剤を、供給管4を通して混和槽3に流入した汚泥にできるだけ早く接触させることが好ましい。これが、前述のように、第1の導管10の下流側端12を、混和槽3内の処理対象物である汚泥Sの液面よりも下方で開口させた理由である。供給管4を通して混和槽3の下部から流入した汚泥に対して、汚泥Sの液面よりも下方で開口した第1の導管10の下流側端12から高分子凝集剤を供給することにより、両者を早期に接触させ、汚泥が混和槽3の上部から矢印C方向に流出するまでに長い時間がかかるようにし、充分な反応時間を確保したのである。
【0032】
一方、第1の導管10には、液排出口28が設けられ、その液排出口28は、通常は、開閉手段の一例である蓋29によって閉鎖されている。第1の導管10内を清掃するときは、固液分離装置2の作動と、モータ5やポンプ13,16などのフロック化装置1の要素の作動を停止させた上で、蓋29を外して、第1の導管10中の液を液排出口28を通して外部に排出させることができる。その際、第1の導管10内の液を効率よく排出させるために、液排出口28を第1の導管10における下部の位置に設けることが望ましい。このため、図1に示したフロック化装置1においては、混和槽3内の汚泥Sの液面よりも下方の第1の導管部分に、通常は開閉手段の一例である蓋29により閉鎖されている液排出口28が設けられている。ところが、この状態のままで、蓋29を外して液排出口28を開放したとすると、第1の導管10の下流側端12は混和槽3内の汚泥Sの液面よりも下方で開口しているので、混和槽3内の汚泥Sが、通常の流れ方向と逆の方向Mに流れて、多量の汚泥が液排出口28から外部に流出してしまうことになる。
【0033】
そこで、本例のフロック化装置1には、第1の導管10内の通常の液流れ方向に関して、液排出口28よりも下流側の第1の導管10の部分に、液の逆流を阻止する逆止弁50が設けられている。この逆止弁50は、第1の導管10中の高分子凝集剤が矢印F方向に流れることは許容するが、その逆のM方向に流れることを禁止するものである。このような逆止弁50が設けられているので、固液分離装置2と、フロック化装置1のモータ5やポンプ13,16などの作動を停止させた上で、蓋29を外して液排出口28を開放したとき、混和槽3内の多量の汚泥Sが第1の導管10内を矢印M方向に逆流して、液排出口28から外部28に流出することはない。
【0034】
液排出口28を開閉する開閉手段としては、上述した蓋29のほかに、例えばボールバルブやコックなどを用いることもできる。この場合も、液排出口28は、通常、ボールバルブ又はコックにより閉鎖され、第1の導管10内の液体を排出して、その第1の導管10内を清掃するときは、ボールバルブ又はコックを操作して、液排出口28を開放し、その液排出口28から第1の導管10内の液体を外部に排出させることができる。
【0035】
ところで、固液分離装置2とフロック化装置1の作動を停止したとき、第1の導管10内に未溶解の高分子凝集剤原液が残っている。この状態でフロック化装置1を、例えば数日間放置したとすると、未溶解の高分子凝集剤原液が塊状となって第1の導管10が詰まってしまい、数日後に固液分離装置2とフロック化装置の作動を再開させたとき、フロック化装置1が正しく作動しなくなるおそれがある。
【0036】
そこで、本例のフロック化装置1においては、固液分離装置2の作動を停止させ、かつモータ5や原液移送ポンプ16の作動を停止させた後も、図示していないタイマーを用いて、所定時間だけ水移送ポンプ13を作動させ、水タンク9内の水を第1の導管10に流し、その第1の導管10内を水で清掃して、未溶解の高分子凝集剤原液が第1の導管10内に残されないように構成されている。水移送ポンプ13は、フロック化装置1によりフロック化された処理対象物が送り込まれる固液分離装置2が作動を停止し、かつ原液移送ポンプ16が作動を停止した後も、所定時間、作動を継続するように制御されるのである。これにより、フロック化装置1の作動を長時間に亘って停止したままにしても、第1の導管10が詰まってしまうおそれはない。
【0037】
ところで、上述のように固液分離装置2と原液移送ポンプ16の作動を停止させて、所定時間だけ水移送ポンプ13を作動させると、第1の導管10を流れた水が、第2の導管14に流れ込み、その水が第2の導管14中を矢印N方向に逆流し、これが原液槽15に流入するおそれがある。このようになれば、原液槽15内の高分子凝集剤原液SAが塊状に固まってしまう。
【0038】
そこで、本例のフロック化装置1においては、第2の導管14にも、液の逆流を阻止する逆止弁51が設けられている。この逆止弁51は、第2の導管14中を液が矢印K方向に流れることを許容するが、その反対の矢印N方向に流れることを禁止するものである。かかる逆止弁51を設けることによって、原液移送ポンプ16を停止させた状態で、水移送ポンプ13を所定時間だけ作動させても、第1の導管10中の水が原液槽15に流入する不具合を阻止することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 フロック化装置
2 固液分離装置
3 混和槽
7 撹拌装置
9 水タンク
10 第1の導管
12 下流側端
13 水移送ポンプ
14 第2の導管
15 原液槽
16 原液移送ポンプ
19 混合手段
23,23A,23B ミキシング部材
28 液排出口
50,51 逆止弁
SA 高分子凝集剤原液
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多量の水分を含む処理対象物と高分子凝集剤とが送り込まれる混和槽と、該混和槽に送られた処理対象物と高分子凝集剤とを撹拌して該処理対象物をフロック化する撹拌装置とを有するフロック化装置において、
水が送り込まれる第1の導管と、高分子凝集剤原液が送り込まれる第2の導管とを有し、該第2の導管は、前記第1の導管中を流れる水に第2の導管を流れた高分子凝集剤原液が注入されるように、第1の導管に接続されていて、該第1の導管中には、当該第1の導管中の水と、その水に注入された高分子凝集剤原液との流れを乱して、該水と高分子凝集剤原液を混合するミキシング部材を備えた混合手段が設けられており、該混合手段によって水と高分子凝集剤原液とを混合することにより、水に注入された高分子凝集剤原液をその水で希釈して前記高分子凝集剤を得、該高分子凝集剤を第1の導管を通して前記混和槽に送り込むことを特徴とするフロック化装置。
【請求項2】
前記第1の導管の下流側端は前記混和槽内の処理対象物の液面よりも下方で開口し、該液面よりも下方の第1の導管部分には、通常は開閉手段により閉鎖されている液排出口が設けられ、該液排出口よりも下流側の第1の導管の部分には、液の逆流を阻止する逆止弁が設けられている請求項1に記載のフロック化装置。
【請求項3】
前記第2の導管には、原液槽に収容された高分子凝集剤原液を第2の導管に送り込む原液移送ポンプと、液の逆流を阻止する逆止弁とが設けられ、前記第1の導管には、水タンクに収容された水を第1の導管に送り込む水移送ポンプが設けられていて、該水移送ポンプは、フロック化装置によりフロック化された処理対象物が送り込まれる固液分離装置が作動を停止し、かつ前記原液移送ポンプが作動を停止した後も、所定時間、作動を継続するように制御される請求項1又は2に記載のフロック化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−98287(P2011−98287A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254593(P2009−254593)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【特許番号】特許第4480792号(P4480792)
【特許公報発行日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(591007022)アムコン株式会社 (28)
【Fターム(参考)】