説明

フローはんだ付け装置

【課題】合成樹脂製のハウジングを効率良く冷却してはんだ付けによる熱変形を防止する。
【解決手段】合成樹脂製のハウジング6と端子5を備えたコネクタ1と、このコネクタ1が搭載された基板2とを一定方向に一体に移動させながら、はんだ槽4内の溶融はんだSを基板裏側のはんだ付け面に付着させて基板2に対する端子5のはんだ付けを行うフローはんだ付け装置において、コネクタ移動径路の上方に、ハウジング6のみを目標として冷却風を噴射するブロアー7を設け、このブロアー7を回動させて風向を変えることにより、冷却風をハウジング6に追従させてハウジング6のみを冷却するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はとくに鉛フリーでのフローはんだ付けを行う場合に適したフローはんだ付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品としてのコネクタの端子を基板(プリント配線基板)にはんだ付けするためのフローはんだ付け装置を例にとって背景技術を説明する。
【0003】
このフローはんだ付け装置においては、図5に示すようにコネクタ1が搭載された基板2を搬送コンベア3によって一定方向(図では二重線矢印で示すように左から右)に移動させながら、図示しないフラックス塗布部、プレヒータ、はんだ槽4の順で通過させてフラックス塗布、予備加熱、はんだ付けの各処理を自動的に行う。
【0004】
はんだ付け処理は、基板裏側のはんだ付け面をはんだ槽4に浸け、槽内の溶融はんだSを付着させることによって行う。
【0005】
この際、コネクタ1ははんだ槽4の高熱の影響を受ける。とくに、鉛フリーでのフローはんだ付けでは、鉛を成分に含む共晶はんだを用いる場合と比較して、はんだの融点が高いことからはんだ付け温度が高くなり、コネクタ1に加わる熱も遥かに高くなる。
【0006】
また、はんだ上がりが悪い場合には、はんだ付け性を上げるべくフロー時間の延長等の対策がとられるため、コネクタ1の熱負荷がさらに増える。
【0007】
ここで、コネクタ1は、図6にも示すように基板2に結合される複数のコネクタ端子5…を台座となる合成樹脂製のハウジング6に組み込んで構成される。このため、熱に弱いハウジング6がはんだ付け中の高熱によって図6二点鎖線で示すように変形するという問題が生じていた。
【0008】
因みに、鉛フリーでのフローはんだ付けにおいて、基板2としてFR−4と呼ばれる材質(ガラス繊維布をエポキシ樹脂で固めたもの)を用いた場合、はんだ付け中の基板温度はその融点(300℃を少し超える温度)よりもかなり低い200℃C前後であるため、基板2の熱負荷はとくに意識する必要がない。
【0009】
これに対し、ハウジング6の融点は基板2よりも低い温度(ナイロン6を用いた場合で225℃)であり、ガラス転移点(同、47℃)を超えると軟らかくなるため、はんだ付け中に加熱されることで変形が発生し易い。
【0010】
この問題は、コネクタ1に限らず、合成樹脂製のハウジングを含む電子部品をフローはんだ付け(とくに鉛フリーでのフローはんだ付け)する場合全般にあった。
【0011】
この点の対策として、はんだ付け工程で電子部品を冷却することが考えられ、関連する技術として特許文献1,2に記載されたものが公知である。
【0012】
これら公知技術においては、はんだ付け内部の固形化を促進することを目的として、はんだ槽通過中の基板に冷却ガスを吹き付ける構成をとっている。
【特許文献1】特開2001−352162号公報
【特許文献2】特開2006−261417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、いずれの公知技術も、「はんだ付け部分」の温度を下げることを目的に、電子部品と基板の両者、つまり被搬送物全体を冷却する構成をとっているため、基本的に、コネクタハウジングに絞った冷却効率は低くなり、ハウジングの熱変形を防止することが困難となって製品として必要な品質を保てなくなる。
【0014】
かといって、全体の冷却性能を上げてハウジングを熱変形しない温度まで冷却するとなると、今度ははんだ付け部分が低温化し過ぎて肝腎のはんだ付け性が悪くなるため、採用できない。
【0015】
結局、とり得る策は、ハウジングの熱変形を極力抑えるという観点から、はんだ付けの温度と時間を設定し、あるいは基板のパターン設計や部品配置を決めるにとどまる。
【0016】
このため、ハウジングの熱変形防止効果に限界がある上に、設計の自由度と最適化が阻害され、はんだ付けの品質も低くなる。
【0017】
そこで本発明は、ハウジングの冷却効率を高めてその熱変形防止効果を上げることができるフローはんだ付け装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1の発明は、合成樹脂製のハウジングを備えた電子部品と、この電子部品が搭載された基板とを一定方向に一体に移動させながら、はんだ槽内の溶融はんだを基板裏側のはんだ付け面に付着させて基板に対する電子部品のはんだ付けを行うように構成されたフローはんだ付け装置において、上記ハウジングのみを目標として、かつ、ハウジングに追従して冷却風を噴射するブロアーが設けられたものである。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、ブロアーは、はんだ付け開始前からはんだ付け中、さらにはんだ付け終了後までに亘り、ハウジングに追従して冷却風を噴射するように構成されたものである。
【0020】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成において、ブロアーは、一定位置で回動して風向を変えることにより、ハウジングに追従して冷却風を噴射するように構成されたものである。
【0021】
請求項4の発明は、請求項1または2の構成において、ブロアーは、ハウジング移動方向にハウジングと同期して移動することにより、ハウジングに追従して冷却風を噴射するように構成されたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、ブロアーによる冷却風を、ハウジングのみを目標として、かつ、ハウジングに追従して噴射することによってハウジングのみを冷却するため、基板を含めた被搬送物全体を冷却する場合と比較して、ハウジングの冷却効率を格段に高めることができる。
【0023】
これにより、ハウジングの熱変形を防止し、製品として求められる品質を確保することができる。
【0024】
また、ハウジングの熱変形を気にする必要がなくなるため、はんだ付けに必要な温度と時間の設定、パターン設計や部品配置に関する自由度を高め、最適化を図ることができる。
【0025】
ここで、ブロアーによるハウジングの冷却は、ハウジングが最も高熱を受ける、はんだ槽通過中のみに行うように構成してもよいが、請求項2の発明のように、その前後を含めた、はんだ付け開始前からはんだ付け終了後までに亘って行う構成をとれば、予冷却及び後冷却を合わせた高い冷却効果が得られ、ハウジングの変形防止効果を一層高めることができる。
【0026】
一方、ブロアーによる冷却風をハウジングに追従して噴射させる手段として、請求項3の発明のようにブロアーを一定位置で回動させて風向を変える構成をとれば、冷却風をハウジングに追従させるための駆動機構が簡単かつコンパクトですみ、設備コストが安くなる。
【0027】
これに対し、請求項4の発明のようにブロアーそのものをハウジングに同期して移動させる構成をとれば、ブロアーの冷却風噴射口とハウジングの距離を常に一定に保つことができるため、冷却効率の点で好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施形態を図1〜図4によって説明する。
【0029】
図1,2に第1実施形態、図3に第2実施形態をそれぞれ示す。両実施形態では、背景技術の説明に合わせて、コネクタの端子を基板にフローはんだ付けする場合を例にとっている。
【0030】
このフローはんだ付け装置の基本的構成、すなわち、
(I) コネクタ1が搭載された基板2を搬送コンベア3によって一定方向に移動させながら、図示しないフラックス塗布部、プレヒータ、はんだ槽4の順で通過させてフラックス塗布、予備加熱、はんだ付けの各処理を自動的に行うように構成されている点、
(II) はんだ付け処理は、基板裏側のはんだ付け面をはんだ槽4に浸け、槽内の溶融はんだSを付着させることによって行うように構成されている点、
(III) コネクタ1は、基板2に結合される複数のコネクタ端子5…を合成樹脂(たとえば前記ナイロン6)製のハウジング6内に組み込んで構成される点
は図5,6に示す従来技術と同じである。
【0031】
両実施形態にかかるフローはんだ付け装置においては、共通の構成として、コネクタ1のハウジング6の移動径路の上方に冷却手段としてのブロアー7が設けられ、このブロアー7から、ハウジング6のみを目標として、かつ、ハウジング6に追従して冷却風を噴射させることによってハウジング6のみを冷却するように構成されている。
【0032】
ここで、ブロアー7による冷却風をハウジング6に追従させる手段として、第1実施形態においてはブロアー7が一定位置でハウジング移動径路と直交する水平軸まわりに回動可能に支持され、このブロアー7が、図示しないブロアー回動機構により、はんだ付け開始からはんだ付け終了後までに亘り、ハウジング6に追従して回動するように構成されている。
【0033】
より詳しくは、ハウジング6が、図1中の一点鎖線で示すはんだ付け開始の少し前の位置(以下、はんだ付け前位置という)に到達した時点から、同実線で示すはんだ中の位置(以下、はんだ中位置という)、さらに同二点鎖線で示すはんだ終了少し後の位置(以下、はんだ後位置という)に達するまでの間、ブロアー7がハウジング6の移動とともに首振り回動して冷却風の風向が変わる。
【0034】
このブロアー7は、ケーシング9と、このケーシング9内で図示しない電動機等によって回転駆動されるファン8と、このファン8の回転によって発生した冷却風(通常は常温の空気流)をハウジング6に向けて噴射する筒状の噴射ノズル10とによって構成され、はんだ槽4のほぼ真上の位置に取付けられている。
【0035】
噴射ノズル10の噴射口(下端開口)は、ハウジング6のみに冷却風が当たる、いいかえればハウジング6以外の部分(基板2及びはんだ付け部分)には冷却風が当たらないように、ハウジング6の平面形状と平面サイズに見合う形状及びサイズに設定されている。
【0036】
また、冷却風の風量及び風速は、ハウジング6が吹き飛んだり浮き上がったりしないで、ハウジング6をその融点(ナイロン6の場合で225℃)以下、望ましくはガラス転移点(同、47℃)以下まで冷却できることを基準として設定される。
【0037】
なお、ブロアー回動機構は、たとえば電動機の回転力を減速機で減速してブロアー7に回動力として伝える構成のものを用いることができる。
【0038】
また、ブロアー7の回動とファン8の回転の制御、すなわち、図1一点鎖線で示すブロアー位置を原位置として、
(イ) ハウジング6がはんだ付け前位置に到達したときに、ブロアー7の回動及びファン8の回転を開始させ、
(ロ) ハウジング6がはんだ付け後位置に達したとき(ブロアー7が図1二点鎖線の位置まで回動したとき)に、ブロアー7の回動とファン8の回転を停止させ、
(ハ) この後、ブロアー7を原位置に向けて逆回動させて停止させる
という制御は、たとえばハウジング6の移動径路中での各位置とフロア7の向きをセンサで検出し、このセンサからの信号に基づいて行うことができる。
【0039】
あるいは、センサとタイマーを組み合わせ、これらの信号に基づいて上記のように制御することもできる。
【0040】
このように、ブロアー7による冷却風を、ハウジング6のみを目標として、かつ、ハウジング6に追従して噴射させることによってハウジング6のみを冷却するため、基板2を含めた被搬送物全体を冷却する場合と比較して、ハウジング6の冷却効率を格段に高めることができる。
【0041】
これにより、ハウジング6の熱変形を防止し、製品として求められる品質を確保することができる。
【0042】
また、ハウジング6の熱変形を気にする必要がなくなるため、はんだ付けに必要な温度と時間の設定、パターン設計や部品配置に関する自由度を高め、最適化を図ることができる。
【0043】
とくにこの第1実施形態の場合、ハウジング6を、はんだ付け中だけでなく、はんだ付け前位置からはんだ付け後位置までに亘って冷却するため、予冷却及び後冷却を合わせた高い冷却効果が得られ、ハウジング6の変形防止効果を一層高めることができる。
【0044】
一方、ブロアー7を一定位置で回動させて風向を変えることにより、ブロアー7による冷却風をハウジング6に追従させるため、この追従のための駆動機構が簡単かつコンパクトですみ、設備コストが安くなる。
【0045】
次に、図3に示す第2実施形態においては、冷却風をハウジング6に追従させる手段として、ブロアー7がハウジング6の移動方向に直線移動可能に支持され、はんだ付け開始前からはんだ付け終了後(ハウジング6のはんだ付け前位置からはんだ付け後位置)までの間に亘り、ブロアー7全体が、図示しないブロアー移動機構によりハウジング6に同期して直線移動するように構成されている。
【0046】
なお、図ではブロアー7がハウジング6の真上に位置する(噴射ノズル10が真下を向く)状態で移動する場合を例示しているが、ブロアー7がハウジング6に対してその移動方向のやや後側に傾いて位置し、冷却風が斜め後方から当たる状態、またはブロアー7がやや前側に傾いて位置し、冷却風が斜め前方から当たる状態で移動するように構成してもよい。
【0047】
また、ブロアー7を直線移動させる機構としては、たとえばブロアー7に設けたローラをレール内で転動させる機構や、フロア7を吊持したワイヤを巻取り/巻戻し駆動する機構等を用いることができる。
【0048】
さらに、ブロアー7の移動/停止/原位置への復帰移動、及びファン8の回転/回転停止は、第1実施形態と同様に、センサ等からの信号に基づいて制御することができる。
【0049】
この第2実施形態によっても、ハウジング6のみを効率良く冷却してその変形を防止できるという、第1実施形態と同じ基本的効果が得られる。
【0050】
とくに、ブロアー7そのものを移動させるこの第2実施形態によると、ブロアー7の冷却風噴射口(噴射ノズル10)とハウジング6の距離を常に一定に保つことができるため、冷却効率の点でより好ましいものとなる。
【0051】
他の実施形態
(1) 上記第1、第2両実施形態を組み合わせた実施形態として、図4に示すように、ブロアー7を、はんだ付け開始前と終了後の一定区間(たとえば開始前の前半と終了後の後半)で回動させ、残りの区間は直線移動させるように構成してもよい。
【0052】
こうすれば、ブロアー7の噴射ノズル10をハウジング6の全移動区間でハウジング6に接近させて冷却効率を上げながら、ブロアー7の直線移動距離を短縮できる等のメリットがある。
【0053】
(2) ブロアー7による冷却風をハウジング6に追従させる他の手段として、ブロアー7を位置固定する一方、噴射ノズル10を、はんだ付け前、はんだ付け中、はんだ付け後の各ハウジング位置に跨って長く形成し、同ノズル10に設けた複数のシャッターを順次開閉させるにより、ハウジング6に追従して冷却風の噴射領域を変える構成をとってもよい。
【0054】
(3) ハウジング6の冷却は、通常、上記各実施形態のようにはんだ付け前、はんだ付け中、はんだ付け後の各ハウジング位置に亘って行うが、十分なハウジング冷却効果を確保できることを条件として、はんだ付け中のみに行うようにしてもよい。
【0055】
(4) 本発明は、コネクタ用のフローはんだ付け装置に限らず、合成樹脂製のハウジングを備えた電子部品と基板とをフローはんだ付けする装置に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるフローはんだ付け装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1の一部拡大断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態にかかるフローはんだ付け装置の概略構成を示す図である。
【図4】本発明の他の実施形態にかかるフローはんだ付け装置の概略構成を示す図である。
【図5】従来のフローはんだ付け装置の概略構成を示す図である。
【図6】図5の一部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 電子部品としてのコネクタ
2 基板
3 搬送コンベア
4 はんだ槽
5 コネクタ端子
6 ハウジング
7 回動または直線移動するブロアー
10 ブロアーの噴射ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製のハウジングを備えた電子部品と、この電子部品が搭載された基板とを一定方向に一体に移動させながら、はんだ槽内の溶融はんだを基板裏側のはんだ付け面に付着させて基板に対する電子部品のはんだ付けを行うように構成されたフローはんだ付け装置において、上記ハウジングのみを目標として、かつ、ハウジングに追従して冷却風を噴射するブロアーが設けられたことを特徴とするフローはんだ付け装置。
【請求項2】
ブロアーは、はんだ付け開始前からはんだ付け中、さらにはんだ付け終了後までに亘り、ハウジングに追従して冷却風を噴射するように構成されたことを特徴とする請求項1記載のフローはんだ付け装置。
【請求項3】
ブロアーは、一定位置で回動して風向を変えることにより、ハウジングに追従して冷却風を噴射するように構成されたことを特徴とする請求項1または2記載のフローはんだ付け装置。
【請求項4】
ブロアーは、ハウジング移動方向にハウジングと同期して移動することにより、ハウジングに追従して冷却風を噴射するように構成されたことを特徴とする請求項1または2記載のフローはんだ付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−177014(P2009−177014A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15193(P2008−15193)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】