説明

フローティングキャリパ型ディスクブレーキ

【課題】軸方向寸法が小さい薄肉のサポート2aを使用して小型・軽量化に有利な構造で、一対のガイドピン3a、3aとインナ、アウタ両パッド5a、6aとの係合部のがたつき防止と、これら両ガイドピン3a、3aとキャリパ4aとの係合部のがたつき防止とを効果的に行える構造を実現する。
【解決手段】回入側と回出側とに、一対の複合型アンチラトルスプリング27、27を設ける。そして、これら両複合型アンチラトルスプリング27、27により、前記両パッド5a、6aに対して前記キャリパ4aを径方向外方に押圧すると同時に、前記両ガイドピン3a、3aに対して前記両パッド5a、6aを径方向内方に押圧する。この構成により、前記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の制動に使用するフローティングキャリパ型ディスクブレーキの改良に関する。具体的には、小型且つ軽量に構成できるサポートを有する構造で、非制動時に可動部ががたつくのを、より効果的に防止できる構造の実現を意図したものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の制動装置として、ディスクブレーキが広く使用されている。ディスクブレーキには大きく分けて、対向ピストン型とフローティングキャリパ型とがある。このうちのフローティングキャリパ型のディスクブレーキは、固定のサポートに、キャリパ、及び、インナ側、アウタ側両パッドを、軸方向の変位を可能に支持している。そして、制動時には、前記キャリパのインナ側部分に設けたシリンダ部に嵌装したピストンと、このキャリパのアウタ側端部に設けたキャリパ爪とにより、前記両パッドを前記ロータの両側面に押し付ける。この様なフローティングキャリパ型のディスクブレーキは、対向ピストン型のディスクブレーキに比べて安価に製作できる為、一般的な乗用車を中心に使用されている。又、上述の様なフローティングキャリパ型ディスクブレーキのうちで、サポートの回入側、回出側両端部に一対のガイドピンを、インナ側及びアウタ側に突出する状態で設け、これら両ガイドピンに、キャリパ及びインナ、アウタ両パッドを、軸方向の変位を可能に支持した構造が、例えば特許文献1〜3に記載される等により、従来から知られている。この様な構造は、サポートの容積を小さく抑えて、小型・軽量化を図る上で有利になる。尚、特に断らない限り、本明細書及び特許請求の範囲で、軸方向、径方向、周方向とは、それぞれロータに関しての、軸方向、径方向、周方向を言う。又、インナ側とは車体への組み付け状態で幅方向中央側を言い、アウタ側とは、同じく外側を言う。更に、回入側とは、車輪と共に回転するロータが入り込む側を言い、回出側とは、同じく抜け出て行く側を言う。
【0003】
図20は、上述の様な従来から知られているフローティングキャリパ型ディスクブレーキのうち、特許文献1に記載された構造を示している。この従来構造は、ロータ1と、サポート2と、一対のガイドピン3、3と、キャリパ4と、インナパッド5と、アウタパッド6とを備える。このうちのロータ1は、車輪と共に回転する。又、前記サポート2は、このロータ1のインナ側面に対向する状態で車体に固定される。又、前記両ガイドピン3、3は、前記サポート2の回入側と回出側とに、それぞれインナ側及びアウタ側に突出する状態で設けられている。又、前記キャリパ4は、回入側と回出側とに突出した一対のガイド腕部7、7の先端部と、前記両ガイドピン3、3のうちで前記サポート2よりもインナ側に突出した部分とを係合させる事により前記サポート2に、軸方向の変位を可能に支持されている。又、前記インナパッド5は、前記両ガイドピン3、3のうちで前記サポート2よりもアウタ側に突出した部分の基端部に、前記ロータ1のインナ側面と対向する状態で、軸方向の変位を可能に支持されている。更に、前記アウタパッド6は、前記両ガイドピン3、3の先端部に、前記ロータ1のアウタ側面と対向する状態で、軸方向の変位を可能に支持されている。
【0004】
上述の様なフローティングキャリパ型ディスクブレーキにより制動を行う際には、前記キャリパ4のインナ側半部に設けたシリンダ内に油圧を導入し、このシリンダ内に油密に嵌装したピストンを押し出して、前記インナパッド5を前記ロータ1のインナ側面に向けて押し付ける。この押し付けの反作用として、前記キャリパ4がインナ側に変位し、このキャリパ4のアウタ側端部に設けたキャリパ爪8が、前記アウタパッド6を前記ロータ1のアウタ側面に向けて押し付ける。この結果、このロータ1が軸方向両側から強く挟持されて、制動が行われる。尚、図20に示した従来構造の場合には、前記両パッド5、6同士の間に、パッドスプリング9を設置している。前記特許文献1には、このパッドスプリング9の機能に就いての説明はないが、前記両パッド5、6が前記ガイドピン3に対してがたつくのを防止すると共に、制動解除に伴って、これら両パッド5、6同士の間隔を広げる為のものであると考えられる。
【0005】
上述の様なフローティングキャリパ型ディスクブレーキの場合、前記両ガイドピン3、3に対して前記キャリパ4及び前記両パッド5、6を、それぞれ軸方向の変位可能に支持している。これら各部の軸方向変位を可能にする為に、前記両ガイドピン3、3と前記キャリパ4との係合部、並びに、これら両ガイドピン3、3と前記両パッド5、6との係合部には、僅かとは言え、隙間が存在する。この為、係合部に外力(ピストンの押し出しに伴う力)が加わらない非制動時には、走行に伴う振動により、前記各係合部ががたつき、不快な振動や騒音を発生する可能性がある。図20に示した従来構造の場合には、前記両ガイドピン3、3と前記両パッド5、6との係合部のがたつきを防止できる可能性はあるが、これら両ガイドピン3、3と前記キャリパ4との係合部のがたつきは防止できない。
【0006】
特許文献4〜5には、サポートとアウタパッド及びキャリパとの間にばねを設けて、これらアウタパッド及びキャリパのがたつきを防止する構造が記載されている。但し、前記特許文献4〜5に記載された構造は、インナ、アウタ両パッドを径方向に効果的に押圧する事を意図していない為、これら両パッドがサポートに対しがたつくのを十分に防止する事は難しい。又、特許文献6には、両端をサポートに対し支持したアンチラトルスプリングにより、キャリパを径方向外方に、インナ、アウタ両パッドを径方向内方に、それぞれ押圧する構造が記載されている。但し、この構造は、サポートのアウタ側面がアウタパッドよりもアウタ側に突出している必要があり、サポートの薄肉化により、ディスクブレーキの小型・軽量化を図る事が難しい。更に、特許文献7には、一対のガイドピンとアウタパッドとの間に、このアウタパッドを径方向内方に押圧する為のアンチラトルスプリングを、このアウタパッドとキャリパとの間に、これらアウタパッドとキャリパとを軸方向に近づけ合う方向の弾力を有するアンチラトルスプリングを、それぞれ設けた構造が記載されている。この様な特許文献7に記載された構造の場合には、前記キャリパに対して前記アウタパッドが径方向にずれ動く事を防止する機能が弱く、このアウタパッドのがたつきを十分に抑える事が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭56−28324号公報
【特許文献2】特開昭61−79034号公報
【特許文献3】実願昭55−4124号(実開昭56−106241号)のマイクロフィルム
【特許文献4】特表2001−503499号公報
【特許文献5】特表2001−503500号公報
【特許文献6】特開昭51−35860号公報
【特許文献7】特開平3−51525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、軸方向寸法が小さい薄肉のサポートを使用して小型・軽量化に有利な構造で、一対のガイドピンとインナ、アウタ両パッドとの係合部のがたつき防止と、これら両ガイドピンとキャリパとの係合部のがたつき防止とを効果的に行える構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のフローティングキャリパ型ディスクブレーキは、前述した従来から知られているフローティングキャリパ型ディスクブレーキと同様に、ロータと、サポートと、一対のガイドピンと、キャリパと、インナパッドと、アウタパッドとを備える。
このうちのロータは、車輪と共に回転する。
又、前記サポートは、前記ロータのインナ側面に対向する状態で、車体に固定される。
又、前記両ガイドピンは、前記サポートの回入側と回出側とに、それぞれアウタ側及びインナ側に突出する状態で、且つ、それぞれのアウタ側、インナ側両端部を前記サポートに支持されない自由端とした状態で設けられている。
又、前記キャリパは、前記両ガイドピンのうちで前記サポートよりもインナ側に突出した部分により前記サポートに対して、軸方向の変位を可能に支持されている。
又、前記インナパッドは、前記両ガイドピンのうちで前記サポートよりもアウタ側に突出した部分の基端部に、前記ロータのインナ側面と対向する状態で、軸方向の変位を可能に支持されている。
更に、前記アウタパッドは、同じく先端部に、前記ロータのアウタ側面と対向する状態で、軸方向の変位を可能に支持されている。
【0010】
特に、本発明のフローティングキャリパ型ディスクブレーキに於いては、一対の複合型アンチラトルスプリングを、前記両パッドと前記キャリパと前記両ガイドピンとの間に、それぞれ設けている。これら両複合型アンチラトルスプリングは、前記両パッドと前記キャリパとを径方向に相対変位させる方向の弾力、並びに、前記両ガイドピンと前記アウタパッドとを径方向に相対変位させる方向の弾力を有する。
【0011】
上述の様な本発明のフローティングキャリパ型ディスクブレーキを実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に前記アンチラトルスプリングにより、前記インナ、アウタ両パッドの外周縁を、径方向内方に押圧する。
【0012】
この様な請求項2に記載した発明を実施する場合に、具体的には、請求項3に記載した発明の様に、前記サポートに対して前記キャリパを、回入側と回出側とに突出した一対のガイド腕部の先端部と、前記両ガイドピンのうちで前記サポートよりもインナ側に突出した部分とを係合させる事により、軸方向の変位を可能に支持する。そして、前記両複合型アンチラトルスプリングを、それぞれ弾性を有する金属材を曲げ形成する事により一体に造る。そして、これら両複合型アンチラトルスプリングに、位置規制部と、キャリパ押圧部と、インナパッド押圧部と、アウタパッド押圧部とを設ける。このうちの位置規制部は、前記複合型アンチラトルスプリングによりがたつきを抑えられる部材のうちの何れかの部材との係合に基づいて、この複合型アンチラトルスプリングの軸方向の位置を規制する為の部位である。又、前記インナパッド押圧部は、前記インナパッドを径方向内方に押圧する為の部位である。又、前記アウタパッド押圧部は、前記アウタパッドを径方向内方に押圧する為の部位である。更に、前記キャリパ押圧部は、前記キャリパを径方向外方に押圧する為の部位である。
【0013】
更には、請求項4に記載した発明の様に、前記キャリパ押圧部を、インナ側キャリパ押圧部と、アウタ側キャリパ押圧部とから成るものとする。このうちのインナ側キャリパ押圧部は、前記キャリパのうちで前記両ガイド腕部の基部の径方向内側面に設けた係止溝に係合して、これら両ガイド腕部の基部を径方向外方に押圧する。又、前記アウタ側キャリパ押圧部は、前記インナパッド押圧部とアウタパッド押圧部との間に設けて、前記キャリパの径方向内側面のうちの回入側、回出側両端部に係合して、このキャリパを径方向外方に押圧する。
【0014】
又、請求項3〜4に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項5に記載した発明の様に、前記インナパッド押圧部を、軸方向に配置された直線部とする。そして、この直線部の長さ寸法を、前記インナパッドを構成するインナ側プレッシャプレートの厚さ寸法よりも大きくする。
【0015】
或は、請求項3〜5に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項6に記載した発明の様に、前記位置規制部を、インナ側位置規制部とアウタ側位置規制部とから成るものとする。このうちのインナ側位置規制部は、前記両複合型アンチラトルスプリングのインナ側端部に設け、前記キャリパのうちで前記両ガイド腕部の基部の径方向内側面に設けた係止溝と係合した状態で、前記両ガイド腕部のインナ側、アウタ側両側面との係合に基づいて、前記両複合型アンチラトルスプリングの軸方向の移動を規制する。又、前記アウタ側位置規制部は、これら両複合型アンチラトルスプリングのアウタ側端部に設け、前記アウタパッドを構成するアウタ側プレッシャプレートの、回入側、回出側両端部のインナ側、アウタ側両側面との係合に基づいて、前記両複合型アンチラトルスプリングの軸方向の移動を規制する。
【発明の効果】
【0016】
上述の様に構成する本発明によれば、軸方向寸法が小さい薄肉のサポートを使用して小型・軽量化に有利な構造で、一対のガイドピンとインナ、アウタ両パッドとの係合部のがたつき防止と、これら両ガイドピンとキャリパとの係合部のがたつき防止とを効果的に行えるフローティングキャリパ型ディスクブレーキを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を、組み立てた状態でアウタ側且つ径方向外側から見た状態で示す斜視図。
【図2】同じく径方向外側から見た状態で示す正投影図。
【図3】同じく径方向内側から見た状態で示す正投影図。
【図4】同じく図2の右方から見た状態で示す正投影図。
【図5】同じく組立途中の状態を図1と同方向から見た状態で示す斜視図。
【図6】本発明の実施の形態の第2例を、組み立てた状態でアウタ側且つ径方向外側から見た状態で示す斜視図。
【図7】同じくアウタ側から見た状態で示す正投影図。
【図8】同じく径方向外側から見た状態で示す正投影図。
【図9】同じく図7の右方から見た状態で示す正投影図。
【図10】同じくインナ側から見た状態で示す正投影図。
【図11】同じく径方向内側から見た状態で示す正投影図。
【図12】同じく組立途中の状態を図6と同方向から見た状態で示す斜視図。
【図13】本発明に関する参考例の1例を、組み立てた状態でアウタ側且つ径方向外側から見た状態で示す斜視図。
【図14】同じくアウタ側から見た状態で示す正投影図。
【図15】同じく径方向外側から見た状態で示す正投影図。
【図16】同じく図14の右方から見た状態で示す正投影図。
【図17】同じく径方向内側から見た状態で示す正投影図。
【図18】同じく組立途中の状態を図13と同方向から見た状態で示す斜視図。
【図19】アンチラトルスプリングをキャリパの内周面にセットした状態で示す、図18の左上部に相当する斜視図。
【図20】従来構造の1例を、一部を切断して径方向外側から見た状態で示す正投影図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施の形態の第1例]
図1〜5は、請求項1〜6に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例のフローティングキャリパ型ディスクブレーキは、サポート2aとして、鋼板等の、十分な強度及び剛性を有する金属板に、打ち抜き、曲げ等のプレス加工を施した、所謂板金サポートを使用している。前記サポート2aは、平板状である内径側基部10の回入側、回出側両端部に、それぞれ支持腕部11、11を、径方向外方に突出する状態で設けている。これら両支持腕部11、11の先半部(径方向外半部)は、前記内径側基部10と実質的に平行な支持板部12とし、基半部(径方向内半部)は、外径側に向かう程インナ側に向かう方向に傾斜した、傾斜板部13としている。前記内径側基部10の回入側、回出側両端部に、前記サポート2aを懸架装置を構成するナックルに固定する為のボルトを螺合する為のねじ孔若しくは通孔14を形成している。又、前記両支持腕部11、11の支持板部12に、それぞれ次述するガイドピン3a、3aの中間部に設けた雄ねじ部15を螺合する為のねじ孔(図面非表示)を設けている。フローティングキャリパ型ディスクブレーキを構成した状態でこの様なサポート2aは、前記ねじ孔若しくは通孔14に螺合若しくは挿通したボルトにより、車輪と共に回転するロータ1(図20参照)のインナ側に近接した状態で、前記ナックルに結合固定される。
【0019】
上述の様なサポート2aの回入側、回出側両端部で径方向外端部に、それぞれ前記両ガイドピン3a、3aの軸方向中間部を螺合・固定している。これら両ガイドピン3a、3aはそれぞれ、アウタ側半部を比較的(ブレーキトルクを支承する為の十分な外径を有するが、他の部分に比べて)小径で円柱状のパッドガイド部16としている。又、軸方向中間部でこのパッドガイド部16のインナ側に隣接する部分を、このパッドガイド部16よりも少し外径が大きい前記雄ねじ部15としている。又、インナ寄り部分でこの雄ねじ部15のインナ側に隣接する部分を、最も外径が大きい、円柱状のキャリパガイド部17としている。更に、インナ側端部を、正六角柱状等、ボックスレンチ、スパナ等の工具を係止する為の非円形柱部18としている。尚、これら各部15〜18は、総て同心である。
【0020】
上述の様な前記両ガイドピン3a、3aは、前記両支持腕部11、11の支持板部12に形成したねじ孔に、インナ側からアウタ側に挿通する。そして、このねじ孔に前記雄ねじ部15を螺合し、更に、前記キャリパガイド部17のアウタ側端面を前記支持板部12のインナ側面に押し当てつつ、前記非円柱部18に係合させた工具により締め付ける事で、前記サポート2aに対し固定する。この状態で前記両ガイドピン3a、3aは、このサポート2aの回入側と回出側とに、それぞれインナ側及びアウタ側に突出する状態で固定されている。即ち、前記両支持腕部11、11の支持板部12からアウタ側に前記パッドガイド部16が、前記ロータ1の中心軸とほぼ平行に突出し、同じくインナ側に前記キャリパガイド部17が、この中心軸とほぼ平行に突出する。尚、上記サポート2aに対し前記両ガイドピン3a、3aを固定するタイミングは、他の構成各部材の組立手順との関係で前後する。この点に関しては、ガイドピンを用いたフローティングキャリパ型ディスクブレーキの技術分野で従来から周知であり、本発明の要旨とも関係しない為、詳しい説明は省略する。
【0021】
前記両ガイドピン3a、3aのキャリパガイド部17によりキャリパ4aを前記サポート2aに対し、軸方向の変位を可能に支持している。この為にこのキャリパ4aの周方向両側面に一対のガイド腕部7a、7aを、それぞれ回入側、回出側に突出する状態で設けている。これら両ガイド腕部7a、7aの先半部には、それぞれガイド切り欠き19を形成している。このガイド切り欠き19は、軸方向から見た形状が略巾着状で、径方向内側に存在する開口部の幅が狭く、奥部の幅が広くなっている。又、前記ガイド切り欠き19の形状は、開口部及び奥端部を除いて円形である。この様なガイド切り欠き19の内側に、ステンレスのばね鋼板等の、弾性及び耐食性を有する板材を略C字形に曲げ形成して成るガイドクリップ20を、軸方向にも、前記開口部を通じて径方向内方にも抜け出ない様に装着している。そして、これら両ガイドクリップ20の内側に、前記両ガイドピン3a、3aのキャリパガイド部17を挿通している。この状態で前記キャリパ4aが前記サポート2aに、軸方向の変位を可能に支持される。
【0022】
一方、前記両ガイドピン3a、3aのうちで、前記サポート2aの前記両支持腕部11、11の支持板部12よりもアウタ側に突出したパッドガイド部16により、インナパッド5aとアウタパッド6aとを、軸方向の変位を可能に支持している。これら両パッド5a、6aはそれぞれ、プレッシャプレート21a、21bの表面(前記ロータ1を介して互いに対向する面)にライニング22a、22bを添着固定して成る。前記両プレッシャプレート21a、21bの周方向両端部には突出板部23a、23bを、それぞれ周方向及び径方向外方に突出する状態で設けており、これら各突出板部23a、23bの中央部に、それぞれ通孔24a、24bを形成している。そして、これら各通孔24a、24bに、前記両ガイドピン3a、3aのパッドガイド部16を、緩く(軸方向の変位を容易に行える限りできるだけ隙間を小さく抑えた状態で)挿通している。この状態で前記両パッド5a、6aが前記サポート2aに、軸方向の変位を可能に支持された状態となる。
【0023】
この様にこのサポート2aに対して、前記キャリパ4a及び前記両パッド5a、6aを軸方向の変位を可能に支持した状態で、このキャリパ4aのアウタ側端部に設けたキャリパ爪8aのインナ側面が、前記アウタパッド6aを構成するプレッシャプレート21bの裏面に対向(当接)する。又、このプレッシャプレート21bの裏面に突設した一対の係止突起36、36と、前記キャリパ爪8aに形成した一対の係止孔37、37とを嵌合させる。一方、前記キャリパ4aのインナ側半部に設けたシリンダ部25に嵌装したピストン26の先端面(アウタ端面)が、前記インナパッド5aを構成するプレッシャプレート21aの裏面に対向(当接)する。制動を行う際には、前記シリンダ部25内に設けたシリンダ空間内に油圧を導入し、前記ピストン26を押し出して、前記インナパッド5aを前記ロータ1のインナ側面に向けて押し付ける。更に、この押し付けの反作用として、前記キャリパ4aがインナ側に変位し、前記キャリパ爪8aにより前記アウタパッド6aを前記ロータ1のアウタ側面に向けて押し付ける。この結果、このロータ1が軸方向両側から強く挟持されて、制動が行われる。
【0024】
以上の構成及び作用は、基本的には、従来から知られているフローティングキャリパ型ディスクブレーキの場合と同様である。特に、本例のフローティングキャリパ型ディスクブレーキに於いては、前記両ガイドピン3a、3aと、前記サポート2a及び前記キャリパ4a及び前記両パッド5a、6aとの間に、一対の複合型アンチラトルスプリング27、27を設けている。そして、これら両複合型アンチラトルスプリング27、27により、前記両ガイドピン3a、3aと、前記キャリパ4aと、前記両パッド5a、6aとの可動部のがたつきを抑えている。
【0025】
前記両複合型アンチラトルスプリング27、27は、ステンレスのばね鋼製等、弾性及び耐食性を有する線材を曲げ形成する事により一体に造られたもので、インナ側から順番に、インナ側位置規制部28と、インナパッド押圧部29と、キャリパ押圧部30と、アウタパッド押圧部31と、アウタ側位置規制部32とを備える。前記両複合型アンチラトルスプリング27、27の形状は、回入側と回出側とで、互いに鏡面対称である。
【0026】
前記インナ側位置規制部28は、前記線材を、径方向外方が開口した略コ字形に曲げ形成して成るもので、軸方向に存在する直線部33と、この直線部33のインナ側、アウタ側両端部から径方向外方に向け直角に折れ曲がった、先端側折れ曲がり部34及び基端側折れ曲がり部35とから成る。本例の場合に前記インナ側位置規制部28は、前記両複合型アンチラトルスプリング27、27の軸方向位置のずれを阻止する機能に加えて、前記キャリパ4aのインナ寄り部分を径方向外方に押圧する役目も有する。即ち、前記インナ側位置規制部28は、インナ側キャリパ押圧部としての機能も兼ね備えている。この為に前記インナ側位置規制部28は、前記両複合型アンチラトルスプリング27、27を所定位置に組み付けた状態で、径方向外方に向いた弾力を有する。
【0027】
又、前記インナパッド押圧部29は、前記線材を、前記基端側折れ曲がり部35からアウタ側に直角に折り曲げて成り、軸方向に配置された直線状である。この様なインナパッド押圧部29は、前記インナパッド5aを構成するプレッシャプレート21aの厚さ寸法Taよりも十分に大きな長さ寸法La(図2参照)を有する(Ta≪La)。この様なインナパッド押圧部29は、前記両複合型アンチラトルスプリング27、27を所定位置に組み付けた状態で、径方向内方に向いた弾力を有する。
【0028】
又、前記キャリパ押圧部30は、前記線材をコ字形若しくはU字形に曲げ形成して成るもので、前記インナパッド押圧部29のアウタ側端部から、径方向に関して斜め外方に、且つ、周方向に関して前記キャリパ4aの中央側に突出する状態で設けられている。この様なキャリパ押圧部30は、前記両複合型アンチラトルスプリング27、27を所定位置に組み付けた状態で、径方向外方に向いた弾力を有する。又、この状態で、これら両複合型アンチラトルスプリング27、27のキャリパ押圧部30の先端部同士の間隔は、前記キャリパ4aの円周方向長さよりも少し短くなる。又、前記キャリパ押圧部30は、前記インナパッド押圧部29と前記アウタパッド押圧部31との間に設けられており、特許請求の範囲に記載したアウタ側キャリパ押圧部に相当する。
【0029】
又、前記アウタパッド押圧部31は、前記線材を、前記キャリパ押圧部30のアウタ側端部からアウタ側に向け直角に折り曲げたもので、前記インナパッド押圧部29と同心の直線状である。この様なアウタパッド押圧部31は、前記アウタパッド6aを構成するプレッシャプレート21bの厚さ寸法Tbよりも少しだけ大きな長さ寸法Lb(図2参照)を有する(Tb<Lb)。この様なアウタパッド押圧部31は、前記インナパッド押圧部29と同様に、前記両複合型アンチラトルスプリング27、27を所定位置に組み付けた状態で、径方向内方に向いた弾力を有する。
【0030】
更に、前記アウタ側位置規制部32は、前記線材のアウタ側端部をコ字形若しくはU字形に曲げ形成したもので、前記キャリパ4aの周方向に関して中央側が開口しており、前記アウタパッド6aのプレッシャプレート21bの周方向端部に突設した突出板部23bを、インナ側とアウタ側とから抱持する形状を有する。
【0031】
上述の様な、前記両複合型アンチラトルスプリング27、27は、次の様にして、前記両ガイドピン3a、3aと、前記サポート2a及び前記キャリパ4a及び前記両パッド5a、6aとの間に組み付ける。先ず、前記インナ側位置規制部28は、前記直線部33を前記両ガイド腕部7a、7aの基部の径方向内側面に設けた係止溝38に係合させると共に、前記先端側、基端側両折れ曲がり部34、35により前記両ガイド腕部7a、7aの基部をインナ側とアウタ側とから挟持する状態に組み付ける。又、前記キャリパ押圧部30の先端部を、前記キャリパ4aの径方向内側面の周方向両端部のアウタ寄り部分に、弾性的に当接させる。更に、前記アウタ側位置規制部32により、前記突出板部23bの周方向端部を抱持すると共に、このアウタ側位置規制部32のアウタ側部分を、前記ガイドピン3aのアウタ側端部で前記プレッシャプレート21bのアウタ側面から突出した部分に、径方向内側から弾性的に当接させる。
【0032】
前記両複合型アンチラトルスプリング27、27を上述の様に組み付けた状態では、前記インナ側規制部28と前記両ガイド腕部7a、7aの基部との係合、並びに、前記アウタ側位置規制部32と前記突出板部23bの周方向端部との係合に基づき、前記両複合型アンチラトルスプリング27、27が軸方向に変位する事が阻止される。従って、走行時に加わる振動に拘らず、前記両複合型アンチラトルスプリング27、27が脱落する事はない。又、前記インナパッド押圧部29が、前記インナパッド5aのプレッシャプレート21aの周方向両端寄り部分を径方向内方に押圧する。又、前記アウタパッド押圧部31が、前記アウタパッド6aのプレッシャプレート21bの周方向両端寄り部分を径方向内方に押圧する。更に、前記インナ側位置規制部28が前記キャリパ4aのインナ寄り部分を、前記キャリパ押圧部30が前記キャリパ4aのアウタ寄り部分を、それぞれ径方向外方に押圧する。この結果、制動時に相対変位を可能にすべく、互いの間に隙間を介在させて組み合わされた部材同士が、走行時の振動等によりがたつく事がなくなる。又、前記キャリパ4aが径方向外方に、前記アウタパッド6aが径方向内方に、それぞれ押圧される事に伴って、前記両係止突起36、36と前記両係止孔37、37との係合部ががたつく事もなくなる。
【0033】
上述の様に本例のフローティングキャリパ型ディスクブレーキによれば、前記両ガイドピン3a、3aと前記インナ、アウタ両パッド5a、6aとの係合部のがたつき防止と、これら両ガイドピン3a、3aと前記キャリパ4aとの係合部のがたつき防止とを、同じ複合型アンチラトルスプリング27、27により行える。この為、部品製作、部品管理、組立作業を何れも容易にできて、フローティングキャリパ型ディスクブレーキの製造コストの低廉化を図る面で有利になる。
【0034】
制動の繰り返しにより前記両パッド5a、6aのライニング22a、22bが摩耗すると、制動時に、前記ピストン26を押し出した状態での、前記両パッド5a、6aのプレッシャプレート21a、21b同士の間隔が縮まる。又、前記両ライニング22a、22bの摩耗に伴って、前記シリンダ部25に内蔵した間隙調整装置が作動して、制動解除に伴う、前記ピストン26の後退量を規制し、非制動状態で前記ロータ1の両側面と前記ライニング22a、22bとの間に存在する隙間が過大になる事を防止する。
【0035】
この様な間隙調整装置の作動に伴って、前記両複合型アンチラトルスプリング27、27と、前記キャリパ4a及び前記インナパッド5aとの、軸方向に関する位置関係が変化する。具体的には、前記両ライニング22a、22bの摩耗が進行する(これら両ライニング22a、22bが薄くなって前記両プレッシャプレート21a、21b同士の間隔が縮まる)程、前記インナパッド5aのプレッシャプレート21aが、前記両複合型アンチラトルスプリング27、27のインナパッド押圧部29に対して、アウタ側に変位する。このインナパッド押圧部29は、直線状で軸方向に存在する為、このアウタ側への変位は円滑に行われる。従って、前記両複合型アンチラトルスプリング27、27の存在に関係なく、前記間隙調整装置による、前記ロータ1の両側面と前記両ライニング22a、22bとの間の隙間の調整は確実に行われ、且つ、調整の前後に拘らず、前記各部材同士のがたつき防止も、確実に図られる。
【0036】
更に本例の場合には、前記インナ側、アウタ側各パッド押圧部29、31を、前記両プレッシャプレート21a、21bの外周縁に当接させているので、非制動状態での、前記ロータ1の両側面と前記両ライニング22a、22bとの擦れ合いを効果的に抑えられる。この理由は、次の通りである。前記ロータ1は、幾何中心と回転中心との間の不可避的なずれに基づいて、僅かとは言え、軸方向に振れる。制動解除時には前記インナ、アウタ両パッド5a、6aが、この振れに基づいて、軸方向に押される。前記ロータ1の振れは径方向外側程大きくなるので、前記各パッド押圧部29、31を前記両プレッシャプレート21a、21bの外周縁に当接させれば、前記両パッド5a、6aの非制動状態への移動(前記ロータ1の側面からの退避)を効果的に行って、前記擦れ合いを抑えられる。これに対して、プレッシャプレートの内周縁部を径方向外方に押圧する構造を採用すると、制動解除時にこのプレッシャプレートがロータに押されても、内周縁部を中心に揺動変位するのみで、パッドの非制動状態への移動が効果的に行われない。
【0037】
[実施の形態の第2例]
図6〜12は、請求項1〜5に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、キャリパ4bに設けた一対のガイド腕部7b、7bの形状、これら両ガイド腕部7b、7bの先半部に係止するガイドクリップ20a、20aの形状、一対の複合型アンチラトルスプリング27a、27aの形状、アウタパッド6bを構成するプレッシャプレート21cの回入側、回出側両端部の形状が、上述した実施の形態の第1例と相違する。これらの相違点に就いて、順番に説明する。
【0038】
先ず、前記両ガイド腕部7b、7bに関しては、先半部を閉鎖円環状としている。又、基半部に関しては、単純な角柱状として、上述した実施の形態の第1例の様な係止溝38(図3、5参照)は設けていない。又、前記両ガイドクリップ20a、20aは、閉鎖円環状とした前記両ガイド腕部7b、7bの先半部に係止(内嵌)可能とすべく、直径を弾性的に縮めた状態での軸方向両端部の外接円直径がこの先半部の内径よりも小さく、同じく広げた状態での軸方向両端部の外接円直径がこの先半部の内径よりも大きくなる様にしている。
【0039】
又、前記両複合型アンチラトルスプリング27a、27aに関しては、それぞれのインナ側端部を直線部33として、上述した実施の形態の第1例の様な先端側折れ曲がり部34(図3、5参照)は設けていない。又、前記アウタパッド6bを構成するプレッシャプレート21cの回入側、回出側両端部に、それぞれガイドピン3a、3aの先端部を軸方向の相対変位を可能に挿入する為の、切り欠き39、39を形成している。これら両切り欠き39、39は、前述した実施の形態の第1例に於ける通孔24b、24b(図1、5参照)の代わりとなるもので、周方向に関して互いに反対側に(キャリパ4bと逆側に)開口している。本例の場合には、前記先端側折れ曲がり部34を省略している為、前述した実施の形態の第1例に於けるインナ側位置規制部28(図2〜3参照)は設けられていない。但し、前記両複合型アンチラトルスプリング27a、27aのアウタ側端部に設けた折り返し部と前記アウタパッド6bを構成するプレッシャプレート21cの回入側、回出側両端部とを係合させる事で、アウタ側位置規制部32、32を構成している為、前記両複合型アンチラトルスプリング27a、27aが軸方向に過剰に変位して、所定位置から脱落する事はない。
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
図13〜19は、特許請求の範囲に記載した技術的範囲からは外れる、本発明に関する参考例の1例を示している。本参考例の場合には、インナ、アウタ両パッド5a、6cとキャリパ4bとを径方向に相対変位させる方向の弾力を有するアンチラトルスプリング40と、両ガイドピン3a、3aと前記両パッド5a、6cとを径方向に相対変位させる方向の弾力を有する第二のアンチラトルスプリング41とを、互いに別体としている。
【0041】
このうちのアンチラトルスプリング40は、ステンレスのばね鋼板等の、金属板を曲げ形成して成るもので、基板部42と、一対ずつのインナパッド押圧片43、43及びアウタパッド押圧片44、44とを備える。このうちの基板部42は、前記キャリパ4bの中央部に形成した窓孔45を通過しない程度に大きな寸法及び形状を有する。又、前記両インナパッド押圧片43、43は、前記基板部42の周方向両側縁のうちのインナ側部分から周方向に延出する状態で設けたもので、それぞれが弾性腕部46aと押圧部47aとを備えた、T字形に形成している。このうちの弾性腕部46aは、前記基板部42から離れるに従って径方向内方に向かう方向に傾斜している。又、先端側に設けた前記押圧部47aは、前記弾性腕部46aの先端部にその中間部を連続させたもので、この弾性腕部46aの先端部からインナ側とアウタ側とに突出する状態で、軸方向に配置されている。この様なインナパッド押圧片43、43の押圧部47aの軸方向長さ寸法は、インナパッド5aのプレッシャプレート21aの厚さ寸法よりも大きくして、前記インナ、アウタ両パッド5a、6cのライニング22a、22bの摩耗に拘らず、前記押圧部47aと前記プレッシャプレート21aとの係合が外れない様にしている。更に、前記両アウタパッド押圧片44、44は、前記基板部42の両側縁のうちのアウタ側部分から周方向に延出する状態で設けたもので、前記両インナパッド押圧片43、43と同様に、それぞれが弾性腕部46bと押圧部47bとを備えた、T字形に形成している。但し、前記両アウタパッド押圧片44、44の押圧部47bの軸方向長さ寸法は、前記アウタパッド6cを構成するプレッシャプレート21dの厚さ寸法よりも少し大きい程度としている。
【0042】
上述の様なアンチラトルスプリング40は、前記基板部42の一部を前記窓孔45の周縁部に突き当てる状態で、前記キャリパ4bの径方向内側面に係止する。そして、一対のガイドピン3a、3aに前記両パッド5a、6cを係止し、更に、これら両ガイドピン3a、3aに前記キャリパ4bを組み付けた状態で、前記インナ、アウタ各パッド押圧片43、44の押圧部47a、47bにより、前記両パッド5a、6cのプレッシャプレート21a、21dの外周縁を、それぞれ周方向に離隔した2個所位置ずつで、径方向内方に押圧する。この状態で、前記両パッド5a、6cと前記キャリパ4bとの間のがたつきが抑えられる。
【0043】
これに対して、前記第二のアンチラトルスプリング41は、前記両ガイドピン3a、3aのアウタ側端部と、前記アウタパッド6cのプレッシャプレート21dの径方向外端部との間に設けている。前記第二のアンチラトルスプリング41は、ステンレスのばね鋼の如き、弾性を有する線材を曲げ形成して成る線ばね製で、周方向中央部に係合部48を、同じく両端部に弾性押圧部49、49を、それぞれ有する。このうちの係合部48は、前記線材を、径方向内方が開口した長コ字形とし、更に径方向外端部をインナ側に向け直角に折り曲げて成るものである。これに対して、前記両弾性押圧部49、49は、前記キャリパ4bのアウタ側端部に設けたキャリパ爪8aとの干渉を防止する為、それぞれの中間部をアウタ側に迂回する(中間部をアウタ側に膨らませた)形状を有する。そして、前記両弾性押圧部49、49の先端部を、それぞれ前記両ガイドピン3a、3aの先端部の径方向内側に達する様にしている。
【0044】
上述の様な第二のアンチラトルスプリング41を組み付けるべく、前記アウタパッド6cのプレッシャプレート21dの外周縁部のうちの周方向中央部に係止突部50を、径方向外方に突出する状態で形成している。
本参考例のフローティング型ディスクブレーキを組み立てた状態で、前記第二のアンチラトルスプリング41は、前記アウタパッド6cのプレッシャプレート21dのアウタ側に配置した状態で、前記係合部48を前記係止突部50に係合させて、径方向内方への変位を阻止する。そして、この状態で、前記両弾性押圧部49、49の先端部を、それぞれ前記両ガイドピン3a、3aの先端部の径方向内側面に、弾性的に当接させる。この状態では、これら両ガイドピン3a、3a(を固定したサポート2a)に対して前記アウタパッド6cが、径方向内方に押圧される。
【0045】
要するに本参考例の構造の場合には、前記第二のアンチラトルスプリング41により、前記アウタパッド6cが前記サポート2a(に支持固定したガイドピン3a、3a)に対してがたつく事を防止し、前記アンチラトルスプリング40により、前記キャリパ4bが前記インナパッド5a及び前記アウタパッド6cに対してがたつく事を防止する。この結果、制動及びその解除に伴って相対変位する部材同士ががたつく事を防止できる。
【符号の説明】
【0046】
1 ロータ
2、2a サポート
3、3a ガイドピン
4、4a、4b キャリパ
5、5a インナパッド
6、6a、6b、6c アウタパッド
7、7a、7b ガイド腕部
8、8a キャリパ爪
9 パッドスプリング
10 内径側基部
11 支持腕部
12 支持板部
13 傾斜板部
14 ねじ孔若しくは通孔
15 雄ねじ部
16 パッドガイド部
17 キャリパガイド部
18 非円形柱部
19 ガイド切り欠き
20、20a ガイドクリップ
21a、21b、21c、21d プレッシャプレート
22a、22b ライニング
23a、23b 突出板部
24a、24b 通孔
25 シリンダ部
26 ピストン
27、27a 複合型アンチラトルスプリング
28 インナ側位置規制部
29 インナパッド押圧部
30 キャリパ押圧部
31 アウタパッド押圧部
32 アウタ側位置規制部
33 直線部
34 先端側折れ曲がり部
35 基端側折れ曲がり部
36 係止突起
37 係止孔
38 係止溝
39 切り欠き部
40 アンチラトルスプリング
41 第二のアンチラトルスプリング
42 基板部
43 インナパッド押圧片
44 アウタパッド押圧片
45 窓孔
46a、46b 弾性腕部
47a、47b 押圧部
48 係合部
49 弾性押圧部
50 係止突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転するロータと、このロータのインナ側面に対向する状態で車体に固定されるサポートと、このサポートの回入側と回出側とに、それぞれアウタ側及びインナ側に突出する状態で、且つ、それぞれのアウタ側、インナ側両端部を前記サポートに支持されない自由端とした状態で設けられた一対のガイドピンと、これら両ガイドピンのうちで前記サポートよりもインナ側に突出した部分により前記サポートに対して、軸方向の変位を可能に支持されたキャリパと、これら両ガイドピンのうちでこのサポートよりもアウタ側に突出した部分の基端部に、前記ロータのインナ側面と対向する状態で、軸方向の変位を可能に支持されたインナパッドと、同じく先端部に、前記ロータのアウタ側面と対向する状態で、軸方向の変位を可能に支持されたアウタパッドとを備えたフローティングキャリパ型ディスクブレーキに於いて、これら両パッドと前記キャリパとを径方向に相対変位させる方向の弾力、並びに、前記両ガイドピンと前記アウタパッドとを径方向に相対変位させる方向の弾力を有する、複合型アンチラトルスプリングを一対、前記両パッドと前記キャリパと前記両ガイドピンとの間にそれぞれ設けた事を特徴とするフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。
【請求項2】
前記両複合型アンチラトルスプリングにより、インナ、アウタ両パッドの外周縁を、径方向内方に押圧した、請求項1に記載したフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。
【請求項3】
前記サポートに対して前記キャリパが、回入側と回出側とに突出した一対のガイド腕部の先端部と前記両ガイドピンのうちで前記サポートよりもインナ側に突出した部分とを係合させる事により、軸方向の変位を可能に支持されており、前記両複合型アンチラトルスプリングは、それぞれ弾性を有する金属材を曲げ形成する事により一体に造られており、この複合型アンチラトルスプリングによりがたつきを抑えられる部材のうちの何れかの部材との係合に基づいて、この複合型アンチラトルスプリングの軸方向の位置を規制する為の位置規制部と、前記インナパッドを径方向内方に押圧する為のインナパッド押圧部と、前記アウタパッドを径方向内方に押圧する為のアウタパッド押圧部と、前記キャリパを径方向外方に押圧する為のキャリパ押圧部とを備えている、請求項2に記載したフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。
【請求項4】
前記キャリパ押圧部が、前記キャリパのうちで前記両ガイド腕部の基部の径方向内側面に設けた係止溝に係合してこれら両ガイド腕部の基部を径方向外方に押圧するインナ側キャリパ押圧部と、前記インナパッド押圧部とアウタパッド押圧部との間に設けられて、前記キャリパの径方向内側面のうちの回入側、回出側両端部に係合してこのキャリパを径方向外方に押圧するアウタ側キャリパ押圧部とから成るものである、請求項3に記載したフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。
【請求項5】
前記インナパッド押圧部が、軸方向に配置された直線部であり、この直線部の長さ寸法が、前記インナパッドを構成するインナ側プレッシャプレートの厚さ寸法よりも大きい、請求項3〜4のうちの何れか1項に記載したフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。
【請求項6】
前記位置規制部が、前記両複合型アンチラトルスプリングのインナ側端部に設けられて、前記キャリパのうちで前記両ガイド腕部の基部の径方向内側面に設けた係止溝と係合した状態で、前記両ガイド腕部のインナ側、アウタ側両側面との係合に基づいて前記両複合型アンチラトルスプリングの軸方向の移動を規制するインナ側位置規制部と、これら両複合型アンチラトルスプリングのアウタ側端部に設けられて、前記アウタパッドを構成するアウタ側プレッシャプレートの、回入側、回出側両端部のインナ側、アウタ側両側面との係合に基づいて前記両複合型アンチラトルスプリングの軸方向の移動を規制するアウタ側位置規制部とから成るものである、請求項3〜5のうちの何れか1項に記載したフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−69388(P2011−69388A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218587(P2009−218587)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】