フーリエドメインモードロッキング
フーリエドメインモードロッキング(FDML)動作を改善し安定化するための制御システム。本制御システムはまた、フィルタ同調、レーザ利得、偏光、偏光色度、楕円偏光リターダンスおよび/または分散などのFDML動作パラメータの調節を行うこともできる。本制御システムは、FDMLレーザキャビティの内側または外側に配置してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2005年1月20日出願の米国特許仮出願第60/645359号の利益を主張する、2006年1月20日出願の米国特許出願第11/337105号、現在では米国特許第7414779号、の継続出願である、2008年7月28日出願の米国特許出願第12/220898号の一部継続出願である、2008年10月22日出願の米国特許出願第12/288715号の継続出願である。上記出願の全教示は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
政府助成
本発明は、空軍科学研究局(the Air Force Office of Scientific Research)により授与された、認可番号FA9550−07−1−0014およびFA9550−07−1−0101、国立保健研究所(National Institutes of Health)により授与された認可番号RO1−EY011289およびR01−CA75289−12、ならびに国立科学財団(National Science Foundation)により授与された認可番号BES−0522846の下での政府助成により行われたものである。
【背景技術】
【0003】
多くの産業および研究の技術領域において、精密な測定値およびイメージングを得るために様々なシステムや装置が使用されている。精度に対する必要性と合わせて、高速のデータ収集への要求もある。これらの2つの基準を満たすために、多くの波動方式(wave−based)技術が使用されている。特に、大抵において光の形態であることが多い電磁放射が、測定データを得るために異なる応用システムにおいて使用されている。代表的な応用システムとしては、光コヒーレンス断層撮影法(OCT:optical coherence tomography)およびその他の干渉に基づく手法が挙げられる。
【0004】
しかしながら、異なる測定応用システムは、満足できる結果を得るために、追加の条件を必要とすることが多い。電磁放射の発生源およびその結果としての出力波動特性は、一連のパラメータについて不十分であることが多い。例えば、発生源によっては、パワーが低いか、または利用可能なスペクトル強度の一部分だけを使用する波動を生成するものがある。線幅の制限は、その他の波動発生源に問題を引き起こす。その結果として、多くの産業上および技術上の応用が、システムの波動発生構成要素によって制限されている。
【発明の概要】
【0005】
したがって、電力配送を改善し、利用可能なスペクトルの使用を拡大した波動源に対するニーズがある。さらに、高速で精密な測定または画像化を行うことを可能にし、また様々なシステムパラメータを安定させる、装置、システム、および方法に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例示的実施形態においては、フーリエドメインモードロッキング(FDML)レーザの動作をFDMLパラメータを制御することによって安定化させる制御システムおよびこれに対応する方法を提示する。このシステムには、FDMLレーザからのレーザ出力から周期的に波長掃引された光場を受けるように構成することができる光測定装置を含めてもよい。この光測定装置は、測定パラメータを特定するように構成してもよい。このシステムにはさらに、光測定装置と通信することができる比較装置を含めてもよい。この比較装置は、測定パラメータを比較パラメータと比較するように構成してもよい。この比較装置は、比較の結果の関数としてエラー信号を発生するようにさらに構成してもよい。このシステムにはまた、比較器と通信して、エラー信号の関数としてFDMLレーザの動作の制御パラメータを調整する制御信号を発生することができる、レーザ制御装置を含めてもよい。
【0007】
例示的実施形態は、FDMLレーザにおけるFDML動作のための制御信号を再生可能に発生させるシステムおよびこれに対応する方法を含んでもよい。このシステムには、光測定装置を含めてもよい。このシステムにはまた、光測定装置と通信する電子処理装置を含めてもよい。この電子処理装置は、測定パラメータの関数として直接制御信号を発生するように構成してもよい。このシステムには、電子処理装置と通信して、制御信号の関数としてFDMLレーザの動作の制御パラメータを調整するレーザ制御装置も含めてもよい。
【0008】
例示的実施形態において、FDMLレーザにおいてFDML動作のための制御信号を発生するシステムには、光測定装置を含めてもよい。このシステムには、さらに、測定パラメータに基づいて、非正弦波出力制御信号を生成し、FDMLレーザの同調可能波長選択フィルタの時間対波長同調特性を調整するように構成された電子処理装置を含めてもよい。
【0009】
例示的一実施形態においては、電子処理装置は、測定パラメータに基づいて、時間依存利得制御信号を生成し、FDMLレーザのレーザ利得要素を調整して、レーザの強度対波長出力を制御するように構成してもよい。
【0010】
例示的実施形態は、FDMLレーザにおける遅延ファイバの偏光色度(polarization chromaticity)および楕円偏光リターダンス(elliptical polarization retardance)を管理する制御システム、および対応する方法を含んでもよい。この制御システムには、FDMLレーザからの出力を受けて、レーザ出力に基づいて、測定偏光状態を特定するように構成することができる偏光状態分析装置を含めてもよい。このシステムにはまた、測定偏光状態を受けて、測定偏光状態に基づいて偏光制御信号を発生するように構成することができる処理装置を含めてもよい。このシステムにはさらに、偏光制御信号の関数として光の偏光状態を変化させるように構成することができる能動偏光制御器を含めてもよい。
【0011】
例示的実施形態は、また、FDMLレーザにおける遅延ファイバの偏光色度および楕円偏光リターダンスを受動的に管理する制御システムおよび対応する方法を含んでもよい。このシステムには、レーザからレーザ出力を受けるように構成することができる第1の分散要素を含めてもよい。この分散要素はさらに、それぞれの波長に対してそれぞれの偏光回転を与えて、空間的に分散した光を生じるように構成してもよい。このシステムにはまた、空間的に分散した光を受けることができて、それぞれの波長成分に、直交偏光状態のそれぞれの差動位相リターデーションを与えるように構成することができる複屈折材料のくさび(wedge)を含めてもよい。
【0012】
例示的実施形態において、偏光色度および楕円偏光リターダンスを受動的に管理する制御システムには、FDMLレーザからレーザ出力を受けるように構成することができる、結合装置を含めてもよい。このシステムには、また、それぞれが複数のファイバループを含むことができる、複数の複屈折ユニットを含めてもよい。各複屈折ユニットは、レーザ出力のそれぞれの波長に対して、それぞれの偏光回転を与えるように構成してもよい。このシステムにはまた、一対の複屈折ユニットの間にそれぞれを配置することができる、複数の反射器を含めてもよい。これらの反射器は、異なる波長成分が異なる複屈折を受けるそれぞれの位置において、レーザ出力のそれぞれの部分を反射して戻すように構成してもよい。
【0013】
例示的実施形態はさらに、FDMLレーザにおける遅延ファイバの偏光色度および楕円偏光リターダンスへの感度を低減した光を発生させるFDMLレーザを含んでもよい。このFDMLレーザには、特定の波長を有する波動を増幅するように構成することができる利得要素を含めてもよい。このレーザにはまた、利得要素と通信することができる、時変型の同調可能波長選択フィルタ(time varying tunable wavelength selective filter)を含めてもよく、この同調可能フィルタ要素は、波動を選択的にフィルタリングするように構成してもよい。このレーザにはさらに、同調可能フィルタ要素および利得要素と通信することができるフィードバック要素を含めてもよい。このレーザにはさらに、FDMLレーザのキャビティの内部の波長掃引光波形を、遅延ファイバ中を2つの異なる方向に伝播するように誘導するように構成することができる少なくとも1つの光学要素を含めてもよい。
【0014】
他の例示的実施形態は、FDMLレーザの波長掃引波形を修正するシステムを含んでもよい。このシステムには、FDMLレーザの波長掃引波形を、少なくとも2つの部分に分離することができる分離光学要素を含めてもよい。このシステムにはまた、それらの少なくとも2つの部分の間に時間遅延を導入することができる遅延要素を含めてもよい。このシステムにはさらに、時間遅延を導入するのと同時に、少なくとも2つの部分を再結合することができる再結合要素を含めてもよい。
【0015】
例示的実施形態はさらに、FDMLレーザにおける調整式同調可能光学フィルタの掃引周波数をFDMLレーザのキャビティの光往復時間と同期させる制御システムおよび対応する方法を含んでもよい。このシステムには、FDMLレーザの測定過渡出力強度を検出することができる光検出器を含めてもよい。このシステムにはまた、光検出器と通信して、測定過渡出力強度を比較パラメータと比較することができる比較装置を含めてもよい。この比較装置は、比較の関数としてエラー信号を生成して、FDMLレーザの同期波形ドライバの掃引周波数を調整するように構成してもよい。
【0016】
例示的実施形態はまた、FDMLのキャビティの内部のファブリペローフィルタ(Fabry Perot filter)のDC電圧を調整する制御システムおよび対応する方法を含む。このシステムには、波長選択フィルタと通信する少なくとも1つの光検出器を含めてもよい。このシステムにはまた、少なくとも1つの光検出器と通信して、光検出器からの信号のタイミングを、FDML出力掃引と既知の位相関係を有する固定クロックのタイミングと比較することができる比較装置を含めてもよい。この比較装置はさらに、比較の関数として、ファブリペローフィルタのDCオフセット電圧を調整するエラー信号を発生するようにさらに構成してもよい。
【0017】
他の例示的実施形態は、離散的な一連の光周波数にわたって段階状に掃引される光を発生させる、FDMLレーザおよび対応する方法を含む。このレーザには、特定の波長を有する波動を増幅するように構成することができる利得要素を含めてもよい。このレーザにはまた、利得要素と通信する、時変型で調整式の同調可能波長選択フィルタ要素を含めてもよい。この同調可能フィルタ要素は、波動を選択的にフィルタリングするように構成することができ、このフィルタ要素は、時変的、反復的かつ周期的な方法で周期Tと同調させてもよい。この同調可能フィルタ要素はまた、任意に選択することができる離散的な狭い波長帯域内で選択可能な方法で波動をフィルタリングするように構成してもよい。このレーザにはまた、同調可能波長選択フィルタ要素と通信する補助波長選択フィルタ要素を含めてもよい。この補助フィルタ要素は、波動を選択可能な方法でフィルタリングするように構成してもよく、この場合に、この補助フィルタ要素は、利得要素の利得帯域幅内で複数の透過極大を有してもよい。このレーザにはさらに、補助フィルタ要素および利得要素と通信する、フィードバック要素、ならびに時変型で調整式の同調可能波長選択フィルタ要素を含む回路を含めてもよい。補助波長選択フィルタ要素、利得要素およびフィードバック要素は、波動が回路を通過して伝播する往復時間が周期Tの非ゼロの整数倍に実質的に等しい構成にすることができる。
【0018】
前述したことは、異なる図を通して同一の参照符号は同一の部品を示す、添付の図面に図示されるように、本発明の例示的実施形態についての以下に示すより具体的な説明から明白になるであろう。図面は、必ずしも寸法どおりではなく、本発明の説明のための実施形態が強調されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】フーリエドメインモードロックされたレーザなどの波長掃引レーザにおいて同調周期と往復時間とをマッチングするためのシステムを示す概略図である。
【図2】例示的な一実施形態に係る動的フィードバック最適化を用いた制御システムの概略図である。
【図3A】基準波長到達時間の測定を示すグラフである。
【図3B】基準波長到達時間の測定を示すグラフである。
【図4】例示的一実施形態による動的再生式最適化(dynamic regenerative optimization)を用いる制御システムの概略図である。
【図5A】例示的実施形態による一方向システム用の時間多重化出力を示すグラフである。
【図5B】例示的実施形態による一方向システム用の時間多重化出力を示すグラフである。
【図6】例示的な一実施形態に係る時間多重化出力を有するリングキャビティの概略図である。
【図7】例示的な一実施形態に係る準周期的波形を使用する一方向波長掃引の作成を示すグラフである。
【図8】例示的な一実施形態に係る動的フィードバック最適化を用いる別の制御システムの概略図である。
【図9】例示的な一実施形態に係る分散管理のための分散補償器を特徴とするレーザシステムの概略図である。
【図10】改善された分散補償および/または混合フィードバックのための複数遅延要素を特徴とするレーザシステムの略図である。
【図11】例示的実施形態において、FDMLレーザキャビティにおける分散を補償するために、波形持続時間が順次変更されている駆動波形の使用を図解する波形図である。
【図12】例示的実施形態において、FDMLレーザキャビティにおける分散を補償するために、波形持続時間が順次変更されている駆動波形の使用を図解する波形図である。
【図13】例示的実施形態に係る偏光色度管理の能動的方法を用いる制御システムの略図である。
【図14】例示的な一実施形態に係る偏光色度の受動的最少化に使用されるレーザキャビティ設計の概略図である。
【図15】例示的実施形態に係る偏光色度の直接補償に使用することができる光学要素の図である。
【図16A】例示的実施形態に係る偏光色度管理に使用される光学式二重光路制御システムの概略図である。
【図16B】例示的実施形態に係る偏光色度管理に使用される光学式二重光路制御システムの概略図である。
【図17】例示的実施形態に係る偏光色度管理に使用されるキャビティ内マッハツェンダー干渉計(MZI:Mach−Zehnder interferometer)の概略図である。
【図18】例示的実施形態に係るMZIの3つのそれぞれの設計基準を用いた図17のMZIの3つの動作体系の説明例である。
【図19A】例示的実施形態に係るレーザ掃引速度を増大させるのに使用されるキャビティ内およびキャビティ外のMZI列の概略図である。
【図19B】例示的実施形態に係るレーザ掃引速度を増大させるのに使用されるキャビティ内およびキャビティ外のMZI列の概略図である。
【図20】例示的実施形態に係るFDMLレーザの段階的同調を示すグラフである。
【図21】他の例示的実施形態に係るFDMLレーザの段階的同調を示すグラフである。
【図22】例示的実施形態に係る段階的同調可能出力を生成するように構成されたFDMLレーザの説明例を示す概略図である。
【図23】例示的実施形態に係る段階的同調FDMLレーザのフィルタ特性を示すグラフである。
【図24】他の例示的実施形態に係る段階的同調FDMLレーザのフィルタ特性を示すグラフである。
【図25】段階的同調FDMLレーザへの分散の影響を示すグラフである。
【図26】例示的実施形態に係る段階的同調FDMLレーザ用、および分散を補償するためにも使用することができる補助フィルタの概略図である。
【図27】例示的実施形態にに係る段階的同調FDMLレーザ用、および分散を補償するためにも使用することができる補助フィルタの第2の概略図である。
【図28】例示的実施形態に係る段階的同調FDMLレーザによって生成される光周波数段階の大きさを測定するための装置を示す概略図である。
【図29】周波数段階特性が掃引毎に変更される段階的同調FDMLレーザを示すグラフである。
【図30】例示的実施形態に係るデータ取得およびデータ表示の説明例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の例示的実施形態の説明を以下に示す。本明細書において引用したすべての特許、公開された出願および文献の教示は、その全文が参照により組み込まれている。
【0021】
以下において、用語「フーリエドメインモードロックレーザ」または「FDMLレーザ」は、2006年1月20日に出願され、現在は米国特許第7414779号となっている、米国特許出願第11/337105号、「Fourier Domain Mode Locking: Method and Apparatus for the Generation of Fast Frequency Swept Waveforms and Chirped Pulses by Resonant Frequency Tuning」に記載された装置を指している。
【0022】
FDML動作またはFDMLレーザの出力に関する場合には、以下で用いる用語「掃引(sweep)」または「同調(tune)」は、時間経過による光周波数の、またはそれと等価に、時間経過による光波長の、制御された変化を意味すると解釈されるべきである。「掃引」または「同調」は、光周波数が時間において連続的に変化する場合、または光周波数が時間において段階的に不連続に変化する場合を意味することもできる。
【0023】
例示的なFDMLシステムが図1に示されている。システム10は、共振周波数同調を使用するフーリエドメインモードロッキング(FDML)に好適である。図に示すように、回路Cは増幅器/利得媒体(5’)を同調可能フィルタ(6’)と接続して、増幅器内でのフィードバックを容易にする。波動の往復時間Tgは、回路C内のフィルタ位置を基準にして測定される。同調周期または掃引周期Tswは周期的時間であり、その間に、周波数の変化する波動を選択的に通過させるようにフィルタ要素が同調されている。TgおよびTswは、実質的に等しいか、またはTswは、Tgの高次の高調波である。この関係は次のように表すことができる。
n・Tsw=Tg
ここで、nは正の非ゼロ整数であり、Tswは掃引周期または同調時間であり、Tgは波動の群往復時間である。フィルタ掃引または変化の周期と、群往復時間とは同期されている。群往復時間Tgは次式:
Tg = L/νg
によって求められ、ここでνgは群速度であり、フィードバックラインまたはキャビティの長さがLである。結果として、フィードバックは、それ自体で1回の掃引の範囲内ではなく、2回の掃引の範囲内である。キャビティ内のフィードバック遅延ラインは、標準的な周波数掃引発生源と異なり、完全掃引の全周波数を「記憶」する。
【0024】
フィルタを透過した周波数は1周して、フィルタが同一周波数位置にある時間にフィードバックされる。波動は、フィルタが同調される度毎に増強する必要がない。この方法を使用すると、キャビティは、キャビティ寿命時間とは独立に、周波数において迅速に掃引されることが可能である。これによって、狭い瞬間ライン幅が生じる。順次掃引間の一定の位相関係によって、2回の掃引の間の干渉信号を観測することができる。このことは、通常、標準的な同調可能な周波数発生源においては不可能であり、それは、これらの2回の掃引には相互に明確な位相関係がないからである。
【0025】
フィルタ要素が連続的に同調され、往復時間と同期して駆動される場合には、出力は、時間経過に対して周波数における一連の長い掃引である。各掃引内の瞬間スペクトルは狭域であるので、瞬間コヒーレンス長は非常に長い。反復フィードバックと組み合わせると、これによって、周波数掃引または周波数変化の範囲にわたるモード間の一定位相比が得られる。こうして、モードが位相ロックされる。
【0026】
一般に、非常に狭域の反復的フィルタリングの場合には、掃引の全スペクトル範囲にわたり、すべてのモードをロックすることが予測される。より典型的な場合に対しては、フィルタ機能の帯域幅内で、モードの位相のジッタ(jitter)が通常、発生する。しかしながら、フィルタ機能の幅よりも大きくスペクトル上で離間されている、モード間の位相相関が、フィルタリングによって得られる。フィルタ機能内の全モードの平均位相が、フィルタの異なるスペクトル位置に対して安定化されロックされる。
【0027】
以下の段落において説明する例示的実施形態は、FDMLパラメータを制御または調節することによって、フーリエドメインモードロッキング動作を改善または安定化することを支援する。FDMLレーザは、その他のタイプのレーザでは見られない特有の制御システムを用いる。これらの特有の制御システムを適用することによって、FDMLによって生成される出力光の特性も、その他のタイプのレーザでは可能ではない方法で、修正また最適化することができる。例えば、キャビティ内同調可能フィルタの駆動信号または制御信号を適当な方法で管理することで、FDML動作を安定化させることができる。さらに、レーザ媒体の利得特性を制御して、FDMLレーザに典型的な強化コヒーレンス特性を最適化することができる。さらに、FDMLレーザに特有なこととして、全体分散と楕円偏光リターダンスとを、記載の例示的実施形態における方法および装置を使用してバランスさせることができる。例示的実施形態は、FDMLレーザのパラメータに対して、専用の制御システムおよび方法を用いることができ、またFDMLレーザの特有の出力特性を使用して、制御のためのエラー信号を発生させるか、または再生可能駆動信号生成器に対する種信号を発生させてもよい。
【0028】
実験結果によると、FDML動作は、一部の動作パラメータに対して敏感であることがわかっている。その他のタイプの周波数掃引レーザまたはその他のタイプのレーザ一般と比較すると、FDMLレーザは、一部の動作パラメータに対してはるかに敏感であることが多い。例示的実施形態は、FDML動作用のパラメータを安定化させる方法および装置に関し、そのようなパラメータとしては、それに限定はされないが、フィルタ掃引波形、同調またはステッピング周波数および速度、対応する掃引の中心波長、ならびに合計同調範囲または振幅が挙げられる。レーザ利得媒体を変調することによって、スペクトル出力形状を制御することができる。これは、FDML動作においてのみ可能であり、その他のタイプのモードロック型のレーザでは可能ではなく、その理由は、FDML動作においては、全波長掃引がキャビティの内部に記憶されるためである。したがって、異なる波長の光が、異なる時間にレーザ利得媒体を通過し、それによって、レーザ利得媒体に時間変化する修正信号を付加することで、出力スペクトル形状を修正または成形する能力を与える。
【0029】
FDML動作のもう1つの特有の特徴は、通常、数キロメートルの長さの長い光ファイバを組み入れていることである。このファイバは、楕円偏光リターダとして作用し、この場合に、キャビティ内の一組の波長が、キャビティ内の別の組の波長と異なる量の偏光回転を受ける。レーザ利得媒体は、入力光の偏光に応じて、通常、異なる量の利得を生成するので、FDMLレーザに特有の楕円偏光リターダンスは、出力スペクトル形状において望ましくない変化をもたらす。
【0030】
FDML動作についてのこれらの問題に対処するために、専用の制御の方法および装置ならびに新規なFDMLレーザキャビティ設計について、例示的実施形態において説明する。FDMLレーザは、通常は数メガヘルツ未満の低い反復率を示すので、電子処理およびスケーリング技法を応用して、所望の制御信号を発生させることができる。異なる波長成分が、異なる時間にFDMLレーザから外に結合されるので、波長選択性要素を必要とすることなく、簡単な光測定装置による間接的なスペクトル検出を用いることができる。さらに、FDML出力の特性を記述するために、光学帯域通過フィルタなどの波長選択性装置を使用する場合には、簡単な光測定装置で時間ジッタの測定をすれば、波長ジッタおよび波長ドリフトを入手するのに十分である。
【0031】
同調可能フィルタ制御信号の動的最適化
フーリエドメインモードロッキング(FDML)レーザの時間経過における安定かつ最適な動作を保証するために、同調可能フィルタ要素の動作を制御する電子信号への周期的または連続的な調整を行うことが必要となる場合がある。これらの制御信号調整により、広範囲の時間尺度において発生する可能性のある、環境変化や構成部品特性におけるドリフトを補償することができる。例えば、同調可能フィルタ要素としてファブリペローフィルタが使用される場合には、調整を必要とする制御信号としては、AC駆動電圧およびDC電圧オフセットが挙げられる。図1は、共振周波数同調を使用するFDML動作に好適なシステム10を説明している。
【0032】
同調可能フィルタ制御信号を動的に最適化するのに使用できる2つのクラスの技法がある。両方のクラスの技法において、レーザ性能の特性を記述するために、レーザキャビティから外に結合される光の部分について、1回または複数回の測定を行ってもよい。測定パラメータは、1つの波長またはある数の波長において測定された時間平均強度とするか、ある数の波長に対して平均化された時間平均強度、スペクトル中心波長またはその他のスペクトル特性、位相測定値、またはその他任意好適な光の特性とすることができる。
【0033】
a)フィードバック最適化技法
図2は、「フィードバック技法」と呼ぶことができる第1のクラスの最適化技法を使用する制御システム20を示す。この制御システム20には、2006年1月20日に出願され、現在は米国特許第7414779号となっている米国特許出願第11/337105号、および2008年7月28日に出願され、本出願がそれに対して部分係属となっている、米国特許出願第12/220898号に記載されたFDMLキャビティと類似のFDMLレーザキャビティ21を含めてもよい。レーザ性能の特性を記述するために、レーザ出力23をレーザキャビティ21から結合してもよい。レーザ出力は、周期的に波長掃引される光場の形態とすることができる。レーザ出力23は、光測定装置25に誘導される。光測定装置25は、光ダイオードまたは、光検出用として当該技術において知られているその他任意の装置とすることができる。光測定装置25は、測定パラメータ27を特定するために、レーザ出力23を解析するように構成してもよい。
【0034】
フィードバック技法においては、測定パラメータ27を使用して、比較器要素Cによって測定パラメータ27を演算子または所定の比較パラメータ31と比較することによって、エラー信号29を発生させる。比較器要素Cは、演算増幅器とするか、または信号比較用の当該技術で知られている、その他任意の装置とすることができる。比較器要素Cは、電子算術演算、電子論理演算、または両者の組合せを実行することができる。比較パラメータCは、既知の所望のパラメータ、または前回に測定されたパラメータとすることができる。
【0035】
比較が行われると、レーザ制御装置(例えば、同期波形ドライバ)35に入力するのに適当なパワーレベルにエラー信号29を調整するために、エラー信号29は、電子スケーリングユニット33によってスケーリングされる。レーザ制御装置35は、FDMLレーザキャビティ21の動作を調整するために使用される、制御信号37の新規の設定を定義するように構成してもよい。制御信号37は、同調可能フィルタ制御信号、利得制御信号または偏光制御信号の形態の他に、調整可能なその他の任意のFDMLパラメータであってもよい。反復的にこの操作を実行することによって、エラー信号が最小値まで減少して、FDMLレーザが、最適な状態で安定して動作することになる。
【0036】
説明用の一例において、測定パラメータは、FDMLレーザの同調範囲にほぼ対応するある数の波長について平均化された時間平均強度(「出力パワー」)またはある数の掃引について平均化されたFDMLレーザの位相相関(「位相相関」)としてもよい。同調可能フィルタ要素は、ファブリペロー、ファイバファブリペローまたは当該技術において知られているその他任意のフィルタとすることができる。この場合には、エラー信号は、現在の出力パワーまたは位相相関を、前回に測定された出力パワーまたは位相相関と比較することによって生成することもできる。平均出力パワーまたは位相相関の減少が発生すると、エラー信号の絶対値が増加することになる。次いで、ファブリペローフィルタ制御信号のAC駆動電圧成分の周波数が、エラー信号の絶対値を最小化するように、調整される。フィードバック技法のすべての特定の実現形態を、比例・積分・微分(PID)フィードバックループなどの周知の制御システムアーキテクチャを使用して安定で迅速な応答を与えることによって、強化することもできる。
【0037】
同調可能フィルタ制御信号のAC駆動電圧成分の周波数を制御することに加えて、同調可能フィルタ制御信号のDCオフセット成分を制御することにも便益がある場合がある。DCオフセット成分は、同調可能フィルタがその範囲で同調される波長の範囲の中心波長を調整する。したがって、DCオフセット成分の制御を使用して、時間の経過と共に反復的にレーザが所望の波長領域に同調することを確実にすることができる。変化する熱的条件、同調可能フィルタのエージング、レーザ利得媒体利得スペクトルにおける変化、その他影響などの要因が、すべて、FDML出力スペクトルの中心波長における変動に寄与する可能性がある。同調可能フィルタ制御信号のDCオフセット成分を適当に制御することによって、これらの望ましくない影響に対する対策をして、出力スペクトルの中心波長を安定化することができる。
【0038】
フィードバック技法を使用して同調可能フィルタ制御信号のDCオフセット成分を制御するために、測定パラメータまたは比較パラメータは、1つもしくは複数の波長、1つもしくは複数の時間またはその他のパラメータとすることができる。
【0039】
測定パラメータが波長であるDCオフセット制御技法の一説明例においては、測定パラメータを、レーザ出力のスペクトル中心波長として、同調可能フィルタ要素をファブリペローフィルタとすることもできる。光測定装置は、レーザ出力の一部分を解析して、検出されたスペクトルの中心波長を特定する分光計とすることもできる。比較パラメータは、既知の所望の中心波長とすることができる。エラー信号は、現在の中心波長を所望の中心波長と比較することによって発生させることもできる。測定された中心波長が所望の値から逸脱した場合には、エラー信号の絶対値が増加することになる。次いで、同調可能フィルタ制御信号のDCオフセット成分が、エラー信号の符号に応じて、エラー信号を最小化するように調節される。検出スペクトルにおける様々な位置において複数波長を測定して、これらを複数の所望の波長と比較してエラー信号を形成するなど、この方法の変形形態が可能である。
【0040】
測定パラメータが時間であるDCオフセット制御技法の一説明例においては、測定パラメータを、FDMLレーザ出力内での固定波長または波長群の到達時間とすることもできる。光測定装置には、ブラッグ格子またはその他の光学帯域通過フィルタなどの1つもしくは複数の狭帯域波長選択要素およびフィルタリングされた光を検出する1つもしくは複数の光検出器を含めることもできる。このようにすれば、光測定装置は、FDMLレーザ出力において固定波長または波長群が生成される時点または複数の時点を示す1つまたは複数の電子信号を生成することもできる。より具体的には、固定波長は、FDMLレーザ出力の所望の中心波長とし、測定時間は、中心波長が生成される時間に対応させることもできる。すなわち、レーザ出力が、特定の波長を有する時間を示す過渡信号を検出するように、光測定装置を構成してもよい。
【0041】
比較パラメータは、同調可能フィルタ駆動信号と既知の位相関係を有する固定クロックによって発生するタイミング信号とすることもできる。例えば、固定クロックとしては、同調可能フィルタ駆動信号の各周期の開始時に発生する電子パルスを挙げることもできる。比較器は、中心波長の到達時間を、同調可能フィルタ駆動周期の開始に対応する時間と比較することによって、エラー信号を発生することもできる。所与の同調可能フィルタ駆動周波数に対して、測定パラメータと比較パラメータとの差が固定されたままである必要がある。固定クロックを基準として測定された到達時間にずれが生じると、エラー信号の絶対値が増加することになる。次いで、同調可能フィルタ制御信号のDCオフセット成分が、エラー信号の符号に応じて、エラー信号を最小化するように調整される。
【0042】
測定パラメータが時間であるDCオフセット制御技法の第2の説明例において、測定パラメータは、前方と後方の掃引方向の間のFDMLレーザ出力内の固定波長の到達時間における差とすることもできる。FDMLレーザの実施形態によっては、同調可能フィルタに適用される周期駆動波形は、駆動波形の各周期中に、前方掃引(短波長から長波長)および後方掃引(長波長から短波長)を生成する。この場合には、光測定装置としては、ブラッグ格子またはその他の光学帯域通過フィルタなどの狭帯域波長選択要素およびフィルタリングされた光を検出する光検出器を含めることもできる。波長選択要素は、前方および後方の掃引方向において所望の中心波長が発生したときに、光ダイオードが電子信号を生成するように、FDML出力の所望の中心波長を選択するように構成することもできる。
【0043】
図3AおよびBは、この特定の例に対する測定パラメータDTの発生について説明する。FDMLレーザ出力の波長WLは、時間Tの関数として変化する。光測定装置内の光検出器は、所望の中心波長が前後方向掃引中に生成されるときに脈動する電子信号I(PD)を生成する。測定パラメータDTは、1つのI(PD)パルスと前回のI(PD)パルスの到達時間の差である。比較パラメータは、測定パラメータの前回の値とすることもでき、エラー信号は、測定パラメータと比較パラメータとの差とすることもできる。図3Aは、レーザが望みどおりに動作しており、FDML出力の実際の中心波長が、所望の中心波長に等しい場合を説明している。所望の中心波長が、前方掃引および後方掃引の中央で発生するので、I(PD)パルス同士の間隔は等しい。I(PD)パルス間隔が等しいので、DTの各値は実質的に同じであり、比較パラメータの各値は、測定パラメータの各値に等しく、エラー信号はゼロである。
【0044】
図3Bは、レーザが望みどおりに動作していない場合を説明しており、FDML出力の実際の中心波長は、所望の中心波長に等しくない。I(PD)パルス間隔は等しくなく、したがって連続するDTの値は等しくない。エラー信号は、この場合には非ゼロとなる。次いで、同調可能フィルタ制御信号のDCオフセット成分が、エラー信号の符号に応じて、エラー信号を最小化するように調整される。
【0045】
b)再生式最適化技法
図4は、「再生式技法」と呼ぶことができる、第2のクラスの最適化技法を使用する別の制御システム40を説明している。制御システム40には、FDMLレーザキャビティ21を含めてもよく、そこでは、レーザ出力23がキャビティ21から出るように連結されて、光測定装置25に入力される。光測定装置25は、電子処理ユニット41に直接適用することができる測定パラメータ27をもたらすことができる。
【0046】
再生式技法において、測定パラメータ27は、ユニット41による電子処理の後にレーザ制御装置35に直接的に適用され、レーザ制御装置35は、次いで制御信号37を供給する。図2に関して考察したように、制御信号37は、同調可能フィルタ制御信号、利得制御信号、または偏光制御信号の形態の他に、調整することができるその他任意のFDMLパラメータとしてもよい。その後に、制御信号37は、FDMLレーザ動作を制御するために、キャビティ21内の同調可能フィルタ要素に適用してもよい。
【0047】
再生式最適化技法は、制御構造が簡略化されている、および、通常は、最適制御信号設定における変化に対して応答時間が速いという利点を有する。このクラスの最適化技法においては、測定パラメータは、FDMLレーザキャビティ内部の特定の同調可能フィルタ要素により要求される制御信号と適切にマッチングさせてもよい。例えば、ファブリペローフィルタが同調可能フィルタ要素として使用される場合に、このファブリペローを制御するのに、AC駆動電圧およびDC電圧オフセットを使用してもよい。したがって、測定パラメータは、ファブリペローフィルタ制御するのに好適なAC駆動電圧および/またはDC電圧オフセットを発生する能力がある。
【0048】
一説明例において、光測定装置は、レーザキャビティの往復時間に対応する周波数よりも大きな帯域幅を有する高速光ダイオードとすることもできる。測定パラメータは、FDMLレーザ出力の時間ドメイン無線周波数(RF)強度となる。このRF信号には、レーザキャビティの往復時間に対する周波数成分およびこの周波数の整数倍を含めてもよい。この状況は、FDMLレーザ発振動作なしでも、例えば、駆動信号が同調可能フィルタ要素に適用されないときにも、発生することがある。電子処理ユニットには、レーザキャビティの往復時間に対応する周波数を中心とするある範囲の周波数を実質的に透過する電子帯域通過フィルタを含めることもできる。電子処理ユニットには、さらに、得られる信号が同調可能フィルタ要素を駆動するのに十分なパワーを含むことを確実にするために、増幅ステージを含めることもできる。電子処理ユニットにはまた、ファブリペローフィルタを特に駆動するために、DC電圧オフセットの印加を含めることができる。この配設を使用すると、最適AC駆動周波数における変動が、同調可能フィルタ要素に即座に伝送されて、補正される。
【0049】
性能改善のための知的駆動方法
FDMLレーザの同調可能フィルタ要素および利得媒体は、同調可能フィルタ要素および利得媒体の具体的なタイプに応じて、様々な波形で駆動することができる。例えば、ファブリペローフィルタが同調可能フィルタ要素として使用される場合に、使用することができる1つのタイプの波形は、追加のDC電圧オフセットを含むAC正弦電圧波である。利得媒体が半導体光学増幅器(SOA)である場合には、DC電流を駆動波形として使用してもよい。なお、その他のタイプの駆動波形をこれらの要素に適用することも可能である。さらに、FDMLレーザ性能を改善するために、波形または波形の変調を選んでもよい。
【0050】
a)一方向周波数掃引を発生させる方法
FDMLレーザのいくつかの実施態様の望ましくない特性の1つは、双方向波長掃引である。双方向掃引は、同調可能フィルタ要素の動作のモードの結果である。例えば、同調可能フィルタ要素がファイバファブリペロー(FFP)フィルタである場合に、フィルタ内のファイバは、それが同調されるときに、物理的に前方および後方に移動する。結果的に、レーザは、方向が短波長から長波長(「前方掃引」)へ、続いて長波長から短波長(「後方掃引」)の方向に交番する波長掃引を生成する。FDMLレーザの掃引周波数が増大されると、一方の掃引方向の性能が、他方の掃引方向に対して低下する。このことは、以前から知られている従来型掃引波長レーザ発生源についても当てはまる。すなわち、低下を防止するために、例示的実施形態においては、一方向波長掃引を使用してもよい。
【0051】
一方向波長掃引を創出する一方法は、FDMLキャビティを複数区域に分割し、利得媒体を矩形パルストレインで変調することによる。図5Aに示すように、一方向周波数掃引は、時間多重化によって、レーザ出力をレーザ出力の遅延バージョンと結合させ、レーザの利得を適切に変調することによって達成可能である。図示した例においては、正弦周波数掃引(曲線上の点1から点2)の立上がりエッジの間に出力が得られるように、レーザ利得が変調される。次いで、レーザ出力は、レーザの往復時間の半分(Trep/2)だけ遅延された出力と結合される。これによって、図5Bに示される結合出力が生成され、周波数掃引がレーザの反復率の2倍で、Trep/2毎に発生し、周波数掃引が低周波数から高周波数へと一方向に発生している。
【0052】
時間多重化を、レーザの出力を分割し、一方の出力を時間遅延させ、それらを結合することによって行ってもよい。この作用は、アンバランスマッハツェンダー干渉計(図示せず)などの装置によって実行することができる。しかしながら、レーザそれ自体から直接的に時間多重化を実行することも可能である。図6は、2つの時間遅延出力を発生するリングレーザ構成を示す。このリングレーザは、利得G、フィルタF、アイソレータISO、ファイバ遅延L1、カプラC1、第2ファイバ遅延L2、カプラC2および2つの出力を結合するコンバイナ(combiner)C3を含む。このコンバイナは、ファイバカプラ、偏光ビームスプリッタ、または後続の偏光ビームスプリッタアセンブリを備えたポッケルスセル(Pockels cell)のような能動光学スイッチング要素とすることができる。音響光学的偏向器(acousto−optic deflector)を2つのポート間の切り換えに使用することもできる。
【0053】
リングの合計往復遅延は、リング内のその他の構成要素からの追加の遅延を含めて、2つの遅延長L1およびL2におけるファイバの長さによって決まる。カプラC1およびC2からの2つの出力の間の相対遅延は、ファイバ遅延L2の長さによって決まる。カプラC1およびC2のカップリング比は、減衰損失を考慮しながら、連結されて出された強度を等しくするために、違えて選ぶことができる。カプラC3のカップリング比は、カプラC1およびC2からの2つの出力から結合された強度を等しくするように、最適化することもできる。カプラC3は、2つの出力を等しく結合する場合には、約1/2の損失を有することになる。この例は、2つの時間多重化出力に対して示されたが、このキャビティ構成は、多数の出力を時間多重化するのに一般化することができる。偏光制御器(図示せず)を使用して、必要であれば、時間多重化出力の偏光が含まれることを確実にすることができる。
【0054】
他の例示的実施形態においては、図7に示すように、準周期的波形を同調可能フィルタ要素に適用することによって、一方向掃引を作り出すことが可能である。この配設においては、所望の掃引方向(余弦波の最初の半分など)を作り出す役割を負う駆動波形の部分が、周期的に同調可能フィルタ要素に適用されることになる。図7において、このことは、時点1〜2、3〜4、および5〜6の波形区間によって示されている。Trepは、FDMLレーザキャビティの往復時間であり、駆動波形の周期的区間は、持続時間で1/2Trepである。望ましくない掃引方向(余弦波の2番目の半分など)を作り出す役割を負う駆動波形の部分が、非周期的な関数によって置き換えられる。図7において、このことが、時点2〜3および4〜5の間の波形区間によって示されている。代替的に、置換関数を、キャビティの往復時間の整数倍ではない周期で周期的にすることもできる。FDMLレーザ発振動作は、同調可能フィルタ駆動信号がキャビティ往復時間に同期されていないときには発生できないので、レーザ発振は、置換関数が同調可能フィルタ要素に適用される時間中には、発生しないことになる。
【0055】
既知の従来型波長掃引レーザと異なり、FDMLレーザに対して好ましい掃引方向を選ぶことは、非自明である。従来型掃引レーザにおいて、前方掃引方向(短波長から長波長への掃引)は、後方掃引よりも高い出力パワーと低いノイズが得られるので、好ましい場合がある。このことは、当該分野で活動する多数のグループによって一貫して観測されている。(例えば、非特許文献1および2)しかしながら、例示的実施形態において、FDMLレーザに対しては、後方掃引方向が、前方掃引と比較して位相安定性を向上させると共にノイズを減少させるので、好ましい場合がある。
【0056】
b)線形または任意の光周波数掃引対時間を発生させる方法
FDMLレーザの一部の実施形態の第2の望ましくない特性は、レーザ出力の瞬間光周波数と時間との間の非線形関係である。例えば、ファブリペローフィルタが同調可能フィルタ要素として使用され、DC電圧オフセットを有する正弦波が駆動信号として使用される場合には、結果として生じる周波数掃引もまた、正弦関数である。多くの応用において、非線形周波数掃引の結果として、追加の信号処理の必要性や性能劣化が生じる。このことは、異なる光周波数がレーザ出力において異なる量の時間だけ、存在するために起きるものであり、これはレーザ出力の時間分解測定を混乱させる可能性がある。デジタルサンプリング時間が各波長に不均一に割り当てられるので、データ収集も悪影響を受ける。
【0057】
OCTなどの干渉イメージング応用において、非線形周波数掃引を行うと、画像を形成する前に、追加の処理ステップを実行して、検出された干渉信号を均一な光周波数間隔を有するグリッド上にサンプリングし直すことが必要となる。これらおよび他の理由によって、FDMLレーザに対しては、したがって瞬間光周波数が時間と線形である出力掃引を作り出すのが望ましい。
【0058】
例示的実施形態によれば、FDMLレーザを用いて線形周波数掃引を作り出すのに使用できる2つのクラスの技法がある。線形化技法の第1のクラスは、「キャラクタライゼーション技法」と呼ぶことができる。キャラクタライゼーション技法において、同調可能フィルタ要素のRF周波数応答が測定されて、線形周波数掃引を作り出すのに好適な駆動波形を決定するのに使用される。この周波数応答は、(インパルス関数またはステップ関数などの)任意の既知の電子試験波形をフィルタに印加して、次いでそのフィルタの応答を直接的または間接的に観測することによって測定することができる。ファブリペローフィルタの場合には、例えば、フィルタの内部のファイバの動きを直接的に観測するのは、構成部品を分解することなしには困難である。したがって、例示的一実施形態においては、フィルタ応答は、既知のスペクトル形状を有する光をフィルタに通して、その出力を、試験波形が印加されるときの時間の関数として観測することによって間接的に観測することもできる。
【0059】
ファブリペローフィルタの周波数応答の特性を記述する別の方法は、RFスペクトルアナライザを使用して、ファブリペローフィルタのピエゾ電気変換器(PZT)またはその他の作動要素の電子周波数応答を特定する方法である。既知の理論モデルを使用すると、RF振幅および位相スペクトルを使用して機械的応答を予測することができる。
【0060】
さらに別の例示的実施形態によれば、機械的応答を直接的に特定するさらに別の方法は、広帯域光源をファブリペローフィルタ中に連結して、所与の駆動周波数において時間平均された透過スペクトル強度を分光計で測定する方法である。透過スペクトルの幅から振幅応答が得られる。モノクロメータおよび高速光ダイオードを使用すると、機械的および光学的な位相応答を測定することが可能になる。この測定に対して可能な1つの手順は、AC駆動波形をファブリペローフィルタに印加することなく、モノクロメータをファブリペローフィルタの中心位置に設定することである。次いで、ファブリペローフィルタを既知のスペクトルオフセットに設定する。次いで、ファブリペローフィルタおよびモノクロメータの両方を透過した光を、時間分解測定を使用して測定する。印加電子駆動信号と検出光強度との間の測定時間シフトから、電子駆動信号と光透過率との間の位相シフトまたはファブリペローフィルタの機械的応答が得られる。異なる波長において上記の測定を実行すると、ファブリペローフィルタの機械的応答の振幅および位相の特性を実質的に記述することになる。
【0061】
同調可能フィルタ要素の周波数応答がわかると、例示的実施形態によれば、所望の掃引の周波数変換をフィルタの周波数応答によって除算することによって、線形光周波数掃引を作り出すのに必要な駆動波形を得ることができる。次いで、この駆動波形をアナログまたはデジタル波形シンセサイザによって合成することができる。同調可能フィルタ要素の周波数応答を使用するより進歩的な計算によって、さらなる性能便益を得ることができる。これらの便益の例としては、フィルタ応答における非線形性の補償、同調可能フィルタにおけるヒステレシス効果の補償、同調可能フィルタにおけるエージング効果の補償および同調可能フィルタにおける熱的および機械的なドリフトの補償が挙げられる。
【0062】
他の例示的実施形態においては、第2のクラスの線形化技法は、「フィードバック技法」と呼んでもよく、図8の制御システム80に説明されている。図8の制御システム80において、レーザ出力23をFDMLレーザキャビティ21から連結することができる。このレーザ出力23を光測定装置25に入力することができる。光測定装置25は、比較器Cに入力することができる測定パラメータ27を生成するのに使用することができる。フィードバック技法においては、掃引の線形性の特性を記述するために、FDMLレーザ出力のパラメータまたはパラメータの組合せが光測定装置25によって測定される。
【0063】
パラメータ27は、比較器C内で、比較パラメータ31と呼ばれる既知の所望のパラメータまたは前回に測定されたパラメータと比較される。比較器はエラー信号29を発生するように構成されて、これが次いで電子波形シンセサイザ81に入力される。波形シンセサイザ81は、同調可能フィルタ制御信号37を作り出すように構成される。後続のエラー信号が減少してその後に最小化されるように、エラー信号29および制御信号37に基づいて新規のフィルタ駆動波形を作り出すために、同調可能フィルタ制御信号37が、FDMLレーザキャビティ21に入力される。
【0064】
掃引線形化のためのフィードバック技法の一説明例においては、レーザから引き出されるエネルギーの一部分を、マイケルソン(Michelson)干渉計またはマッハツェンダー干渉計などの周期フィルタに誘導することができる。周期フィルタの出力には、掃引の位相進展、したがって掃引の線形性を符号化する発振構成要素を含めることができる。周期フィルタの出力は、光ダイオードによって検出が可能であり、結果として得られる電子信号は、無線周波数(RF)スペクトルアナライザによって解析される。したがって、光測定装置は、周期フィルタ、光ダイオードおよびRFスペクトルアナライザを含む。測定パラメータは、RFスペクトルのスペクトル幅としてもよく、これは掃引がより線形になるにつれて減少する。この場合には、比較パラメータは、スペクトル幅の前回の測定値とすることもできる。電子波形シンセサイザは、ある数の電子周波数において一連のスケーリングされて位相シフトされた信号を結合することによって機能させることもできる。これらの信号は、高次信号のテイラー級数展開を形成するか、またはキャビティ往復時間の倍数とすることもできる。安定した最適化プロセスを維持するために、1つの周波数成分に対するパラメータが、次の周波数に進む前に最適化されるように、各信号の振幅および位相シフトは、連続して最適化されることになる。異なる周波数におけるこれらのスケーリングされ、かつシフトされた信号を加算することによって、エラー信号を連続的に低減し最小化させて、その結果として最大限に線形性の光周波数掃引が得られる。
【0065】
c)FDMLレーザキャビティにおける分散を補償する方法
FDMLレーザの一部の実施形態の第3の望ましくない特性は、色分散(chromatic dispersion)の影響による性能低下である。これらの影響としては、帯域幅減少、ノイズ増加および平均出力パワー低下が挙げられる。FDMLレーザキャビティにおける色分散の主要な影響は、異なる波長成分を異なる速度で伝播させることである。例えば、1060nm波長領域において、コーニング(Corning)HI−1060などの、標準のシングルモード光ファイバがキャビティ内で使用される場合には、短い波長が、長い波長よりもより低速で伝播する。したがって、正弦波などの単純な駆動波形を使用して、同調可能フィルタ要素の掃引時間を、レーザ内で活性な全波長の伝播時間に同期させることはできない。色分散の望ましくない影響は、FDMLレーザキャビティの長さが大きくなるほど、あるいはレーザの動作波長が、標準光ファイバにおける1310nmのゼロ分散点から遠ざかるほど悪化する。800nm、1060nmおよび1550nm付近の領域などの1310nmから大幅に離れた波長でFDMLレーザを動作させることが望ましいことが多いので、色分散の制限を克服するための技法を提供することが必要である。
【0066】
なお、図8および9に示すような光学的方法およびある種のFDMLキャビティ設計を使用して、色分散の影響を低減することができることに留意されたい。
【0067】
図9は、分散補償90を備えるレーザシステムを示す。残留群速度分散(GVD:residual group−velocity dispersion)は、異なる周波数成分の往復時間ミスマッチを引き起こす。同期波形ドライバ36によって駆動される走査フィルタ(F)6’の間隔時間と異なる往復時間を有する周波数成分は、フィルタを通過することができない。したがって、残留GVDは、掃引発生源の光帯域幅を低減する。レーザキャビティ内の残留GVDの最小化は、広域スペクトル動作を達成するのに重要である。レーザキャビティのGVDは、光学フィルタ、増幅器/利得(G)5’、および遅延ライン91などの、用いられる光学構成要素によって誘起される。分散補償ファイバ、チャープトファイバブラッグ格子(chirped fiber Bragg grating)および格子対などの分散補償器(DC)92、プリズムコンプレッサ、音響光学式または液晶式整形装置は、それらがレーザキャビティ内に配置される場合には、GVD効果を低減することができる。複数のDC要素を使用して、キャビティ内部に波形の規定された発達を達成して、局所的な強度を管理することができる。
【0068】
図10は、キャビティ内に異なる遅延91を有するシステム800を示す。フィルタ6’は、FDML動作モードにおいて同期波形ドライバ36によって駆動される。フィルタを通過して伝播する光は、利得媒体5’によって増幅される。キャビティ内の光は、例えば、ダイクロイックスプリッタ(dichroic splitter)またはその他のカプラ801によって2つ以上の別個の径路に分割されて、次いで、ビームコンバイナ802によって結合される。この手法は、異なる波長が異なる経路を伝播し、それによって両方の経路における合計分散が異なる場合には、分散管理の向上のために使用することができる。また、この複数遅延方式の概念は、より高次の分散の補償を改善することを可能にする。この概念の別の応用は、片方のアームにおける往復時間が、掃引周期と一致し、他方が掃引周期の倍数(例えば、2倍)に一致する場合に行われる。このことによって、1つの掃引から次へ、さらに次のその後への混合フィードバックが行われることになる。この理由で、フィードバックの平均化効果が得られるにつれて、位相安定化の改善が期待できる。
【0069】
例示的実施形態において、同調可能フィルタ要素および利得媒体に印加される駆動波形を変更することによって、分散の影響を低減することも可能である。図10および11は、波形持続時間が、FDMLキャビティ内での分散を補償するために順次変更される、駆動波形の使用の概念を説明している。図11における同調可能フィルタ駆動波形は、曲線区間として示されている。利得媒体の状態(オンまたはオフ)が破線ボックスによって示されている。類似の方法を双方向掃引に対して適用することもできることを理解されたい。図11において、Tlongは、掃引における最長波長に対するキャビティ往復時間を表す。Tshortは、掃引における最短波長に対するキャビティ往復時間を表す。図11は、TshortがTlongよりも長い(「正常分散」)FDMLキャビティの場合を表すが、類似の方法をTlongがTshortよりも長いとき(「異常分散」)に適用することもできる。図11は、また、掃引内の最長波長が、時点1、3、5および7に対応する各駆動区間の始点において発生している場合を表わしている。図11は、また、利得媒体が、一方向掃引を作り出すように変調されている場合を表わしているが、これは必ずしも必要ではない。
【0070】
キャビティ内の分散を補償するために、同調可能フィルタ駆動波形区間の長さは、それぞれの連続する掃引と共に変更される。区間が延長されるか、または圧縮される詳細な方法は、FDMLキャビティの分散特性によって決まる。例えば、FDMLキャビティが、1本のコーニングHI−1060光ファイバを含み、レーザが、1060nm付近の中心波長で動作しているとすると、レーザは、正常分散の体系において動作することができる。したがって、後方掃引(長波長から短波長へ)の場合には、各駆動区間は、先の区間に対して延長する必要があり、正確な延長特性図は、分散曲線の形状によって決まる。その結果として、有限の数の駆動区間に対して、フィルタは、掃引内の各波長がフィルタ入力に達すると、同一の位置に復帰する。したがって、フィルタは、有限の期間に対して、分散に関係なく、各波長に対してキャビティ往復時間に同期される。図12は、この概念をさらに可視化したものであり、連続する掃引に対して、駆動波形対時間を示している。
【0071】
正常分散の場合には、1回の掃引における最長波長は、結局、前回の掃引からの最短波長と同時に、同調可能フィルタ入力に到達する。図11において、この効果は、利得媒体がオフの間(時間区間2〜3、4〜5、および6〜7)に、フィルタを移動させるのに利用可能な時間の連続的は減少によってわかる。この点において、駆動波形方式の分散補償技法は限界に達し、波形を再設定しなくてはならない。再設定事象中は、レーザ発振は、一時的に崩壊し、数回の掃引にわって再び増強する必要がある。再設定事象間の掃引回数は、キャビティの分散特性に依存するが、多くの場合に、実際的な使用に対して十分に大きい。光コヒーレンス断層撮影法(OCT)応用において、再設定事象は、画像化装置のビーム走査検流計のフライバック中に時間を合わせることができる。このようにすると、OCT画像データは検流計フライバックの間は収集できないので、一連の2次元OCT画像を取得するのに、追加の時間が必要でない。
【0072】
TlongがTshortよりも大きく、FDMLレーザが異常な分散体系で動作している場合に、同等な技法が可能である。この場合には、同調可能フィルタ駆動波形は、後方掃引に対して漸進的に短くなり、前方掃引に対して逆となる。前回の掃引からの最長波形と同時に、1回の掃引からの最短波形が同調可能フィルタ入力に達するときに、限界に達する。この状態ではまた、駆動波形の再設定、およびFDMLキャビティにおいて再び増強するためのレーザ発振が行われる。
【0073】
「偏光色度」制御
FDMLレーザは、その偏光特性について、非常に特異で普通ではない挙動を示す。偏光管理の主要な問題が、熱ドリフト効果、音響振動および光学構成要素(ファイバ)内で変化する応力である、連続波(cw)(ファイバ)レーザまたはパルス式(ファイバ)レーザにおける場合とは異なり、FDMLレーザでは、波長に依存する偏光状態の固有の反復可能な変化が観測される。そのために、全出力偏光が時間と共に変化する標準的レーザの場合と異なり、FDMLでは、波長または周波数が掃引されるときに、(通常、わずかな時間的なドリフトを含み)出力偏光が変化する。この効果を、本明細書においては、偏光色度と呼ぶ。偏光色度は、遅延を経て伝播した後の偏光構成要素間の高次遅延の特有の結合、および長い瞬間コヒーレンス長の効果によって引き起こされる可能性がある。cw(ファイバ)レーザ(モノクロマティックまたは掃引)またはパルス式ファイバレーザなどの、標準的レーザにおいては、波長板、ファイバスクィーザ(fiber squeezer)、ファラデー素子、その他などの既知のデバイスを使用してこれらの偏光効果を管理することができる。しかしながら、FDMLレーザにおいて、直交偏光状態の高次遅延の特有の効果、偏光色度のために、前記効果を管理するには異なる方法および装置が必要となる場合がある。
【0074】
FDMLレーザにおいて、光の偏光状態について規定された管理または制御を行うことは、偏光色度を打ち消す、相殺する、または回避するために非常に望ましい。それは、レーザ内部には偏光依存性の構成要素(例えば、レーザ利得媒体の偏光依存性利得(例えば、SOA内)、または、アイソレータ、フィルタ、遅延ラインファイバカプラなど、レーザの他の能動または受動構成要素における、偏光依存性の透過または群遅延)があるので、偏光色度を管理または除去するために有用であり得る。レーザの偏光色度が制御されること対するさらなる理由は、FDMLレーザが使用される測定システムから生じ得る。例えば、OCT設備において、完全に偏光した出力か、または完全に偏光していない出力のいずれかが、ファイバ曲げに対する感受性をなくしたり、または偏光依存性の画像コントラストを与えたり、スペックルノイズ(speckle noise)を低減するために望ましい。
【0075】
a)FDMLレーザにおける色偏光回転/状態
上述のように、ほとんどの既知の(ファイバ)レーザ偏光問題は、温度変動、変化するファイバ内の応力および複屈折性、または音響信号、その他によるランダム偏光変動に限定されている。ほとんどの場合に、スペクトルの広いレーザ(例えば、短パルスレーザ)のすべての波長成分は、同様に影響を受ける。しかしながら、FDMLレーザにおいては、異なった、そして非常に異常な挙動が観測される。ファイバを通過して伝播した後に、偏光状態は、周期的、波長依存性の再生可能な変調を示す。この特有の偏光効果、偏光色度、はファイバ遅延における「色偏光モード分散(chromatic polarization mode dispersion)」(色PMD)と記述してもよい効果によって、最も引き起こされやすい。この効果は、FDMLレーザに特有のものであり、その理由は、これらのレーザが長いキャビティ内ファイバループを使用し、同時に出力波長成分の広いスペクトル領域があるためである。スペクトルの広いパルス式ファイバレーザは、通常、キャビティ内に数キロメートル長さの非常に長いファイバを有することはない。標準的なPMDは周知であるのに対して、「色PMD」または偏光色度の狭帯域同調可能レーザに対する影響は、FDMLレーザに特有のものである。
【0076】
事例的実施形態による以下の方法および装置は、レーザ内部の偏光を管理する方法、特に「偏光色度」の観測効果を補償して、規定された出力偏光状態を得る方法を提供する。完全に偏光なしの出力が望まれることもあり、この場合には、通常、偏光状態が実質的にポアンカレ球を介して回転される時間スケールを意味する、ランダム化時間スケールが、データ取得ゲート間隔(1つのデータポイントの測定時間)よりも短くなくてはならない。
【0077】
b)偏光および「偏光色度」の安定化および制御のための能動的方法
規定された偏光出力を提供する第1のクラスの方法は、偏光制御の能動的方法に関係する。図13は、この方法のステップを利用する制御システム130の略図である。この制御システム130は、FDMLレーザキャビティ21を特徴とする。FDMLレーザキャビティ21にはさらに、通常、電子信号によって時間の経過と共に調整可能である、キャビティ内またはキャビティ外の偏光制御器(PC)131を組み入れてもよい。この制御器は、それに限定はされないが、PZT式ファイバスクィーザ、2つの直交偏光状態の間に1/2または1/4波遅延を導入するモータ式ファイバループパドル(motorized fiber loop paddle)、または電気光学式偏光制御器とすることもできる。一般に、PCは、入力光場の偏光状態の変更可能な回転または変化を導入することができる任意の装置とすることができる。
【0078】
レーザ出力またはキャビティタップ23は、FDMLレーザキャビティ21から外に連結することができる。制御システムにはさらに、それに限定はされないが、偏光器、波長板(waveplate)、および光ダイオードの組合せとすることができる、偏光状態解析装置135を含めてもよい。解析装置135は、入力として、レーザ出力またはキャビティタップ23を受けることができ、光場の瞬間偏光状態に関係する、通常は電子式の、信号137を供給することができる。信号は、偏光制御器(PC)131用の制御信号139を発生する、スケーリング装置または処理装置133に供給される。制御信号139を受け取ると、PCは、例示的実施形態によれば、以下に述べるように、少なくとも4つの偏光制御の方法を利用することができる。
【0079】
i)サンプリング内(Intra−sampling)制御方法
サンプリング内制御体系において、偏光制御がその上で動作する時間スケールは、PC制御回路が偏光状態の実質的な変化をその上で発生させることができる時間スケールを意味し、FDMLレーザを使用する測定システムの1サンプリング間隔または逆検出帯域幅よりも短い。そのような動作モードは、準偏光解消光(quasi depolarized light)を発生させるために使用してもよく、PCは非常に速くなくてはならない。
【0080】
ii)掃引内(Intra−sweep)制御方法
掃引内制御体系において、偏光制御が動作する時間スケールは、PC制御回路が偏光状態の実質的な変化を発生させることができる時間スケールを意味し、FDMLレーザを使用する測定システムの1サンプリング間隔または逆検出帯域幅よりも長いが、掃引持続時間よりも短い。この方法は、1掃引の波長または周波数の関数としての偏光状態における変動を意味する、FDMLレーザに典型的な「偏光色度」を補償するために使用することができる。
【0081】
iii)掃引間(Inter−sweep)制御方法
掃引間制御体系において、偏光制御が動作する時間スケールは、PC制御回路が偏光状態の実質的な変化を発生させることができる時間スケールを意味し、FDMLレーザを使用する測定システムの1サンプリング間隔または逆検出帯域幅よりも長く、掃引自体には作用しないが、次の掃引に作用する。PCの帯域幅は、「掃引内方法」の場合における帯域幅と同等であるが、回路内の遅延によって、1回の掃引からの偏光解析器からの信号が、次回またはその後の掃引のためのPCに対して作用させることが可能になる。フィードバックは、掃引間ではなく、1回の掃引と後の掃引との間である。
【0082】
iv)長期制御方法
長期制御体系において、偏光制御が動作する時間スケールは、PC制御回路が偏光状態の実質的な変化を発生させることができる時間スケールを意味し、1掃引周期よりも長い。そのようなシステムは、長期間の熱ドリフト効果を補償しなくてはならない場合に使用されることになる。通常、制御器は、多数の掃引の平均化された信号に対して作用し、偏光回転の程度をゆっくりと調整する。
【0083】
c)偏光および「偏光色度」の安定化、制御、および管理の受動的方法
規定の偏光出力を提供するための第2のクラスの方法は、偏光制御の受動的に方法に関する。レーザにおける光学構成要素の専用の選択、設計およびネットワークが、所望の効果を達成するために使用される。以下の方法は、FDMLレーザの特有の偏光問題である偏光色度を最小化するために使用される。FDMLレーザは、短い瞬間コヒーレンス長を有する、短パルスレーザではなく、また単色のcwレーザでもないので、偏光管理の対策は標準の偏光管理方法とは異なる。偏光解消器などの偏光依存性の光学構成要素が、cw光と、または広帯域光源と使用されることはよく知られている。以下の方法は、受動装置を用いて、または特別に設計された方法で、偏光を管理するのに適切であり、使用される。
【0084】
i)専用キャビティ設計:
偏光色度を最小化する方法の第1のクラスが、図14(A)〜14(C)に示されている。3つの事例的システム130、131および132が示されている。専用キャビティ設計によって、偏光色度が低減される。キャビティ設計は、少なくとも1つの利得媒体(GAIN)5’、少なくとも1つの光学フィルタ(FIL)6’、任意選択のアイソレータ(ISO)133または光サーキュレータ(CIR)134、任意選択の偏光制御器(PC)135、ビームスプリッタ/カプラ要素(CP)136、遅延要素(D)137、任意選択のファラデーミラーFRMまたは波長板(WP)138を組み入れる。
【0085】
図14(A)の設計は、「シグマリング」キャビティの形態のFDMLレーザの例示的一実施形態を示している。特定の例示的一実施形態においては、フィルタ(FIL)6’は、ファブリペローフィルタとし、利得媒体を半導体光学増幅器、またはドープトファイバとしてもよい。ファイバ種類は、キャビティにおけるウォークオフ(walk off)およびモード分散を防止するために、シングルモードファイバとしてもよい。しかしながら、1つまたは複数本の短いマルチモードファイバは、偏光スクランブリングの効果を生み出し、準無偏光(quasi−non polarized)光を発生させるのを助ける。レーザは、説明したように、光往復時間とフィルタ駆動周期とを高度に同期させて動作している。線形遅延の端部のファラデーミラーまたは波長板138は、光が後方に伝播するときに2つの直交偏光状態を切り換えて、偏光色度の補償を行う。
【0086】
図14(B)に示された設計は、サーキュレータ(CIR)134によって生じることのある追加の偏光問題を補償するための装置を示す。偏光に依存しないサーキュレータの場合でも、サーキュレータを通過する2つの直交偏光した光場の間の波長依存遅延は起こり得る。この設計は、サーキュレータ134なしで、FDMLレーザにおける偏光色度効果を防止するように最適化された、シグマリング装置を実現する技法を示している。
【0087】
図14(C)に示された設計は、光場が遅延(D)137を通過して反対方向に伝播する場合の概念を示している。このようなサニャック(Sagnac)構成において、両方の逆伝播波動は、同一の偏光色度を生じる。任意選択の偏光制御器135は、好適な偏光状態を準備するのを助ける。
【0088】
記述したすべての設計において、個々の構成要素の順序と位置は、FDML動作が可能である限り、変更することができる。利得要素5’は、二重光路(double pass)利得を得るために、直線部分(D)137に配置することができる。出力カプラ136は、キャビティのほとんどの部分に配置することができる。ファラデーミラー138はまた、出力カプラとしても作用させることができる。複数のPC135を、キャビティ内の実質的にすべての点に配置することができる。利得媒体5’の利得およびフィルタの逆反射強度に応じて、1つのアイソレータ133が必要であるか、または必要でない。リングには、偏光維持ファイバを含めることができる。
【0089】
ii)ファイバスプールにおいて偏光色度および回転を低減する方法および設計:
偏光色度を最小化する第2のクラスの方法および設計は、遅延(DL)としてのファイバスプールの場合に、遅延部分における偏光効果を低減するものである。以下において考察する設計は、ファイバスプールにおける偏光色度を低減するか、またはそれを補償して相殺する方法のいずれかである。
【0090】
低減された複屈折は、偏光色度に好結果を与えるので、偏光色度を最小化する1つの方法は、ファイバスプールにおけるループ直径を最大化することである。ファイバスプールの直径が、レーザのシャシの大きさに近づく、設計を選ぶ必要がある。通常、最小曲げ半径は、最小シャシ寸法の20%以上である。ゆるく巻かれた空気スプールは、応力によって生じる偏光色度を低減するのをさらに助長する。標準アクリル被覆以外のファイバ被覆は、偏光色度を低減して過剰な摩擦と長期間でのファイバ同士の固着を防止するのを助ける。偏光色度を最小化する別の方法は、より小径のファイバを使用することである。例示的一実施形態においては、80μmクラッドファイバ、標準コアのシングルモードファイバ(波長に依存する)であるがクラッド径を低減したもの、を使用してもよい。1300nmまたは1500nmの中心波長近くでのFDML動作に対して、コーニングSMF28またはそれに等価なファイバなどの標準光ファイバを、9μmコアと80μmクラッドを含むファイバで置き換えてもよい。ファイバスプールもまた、回転/スピンドル軸を非平行に向けることができる、いくつかの部分に分割することもできる。この複数部分は、異なる回旋数/巻き数および異なる半径を有することができる。複数のスプールが平行に向けられると、その間の偏光制御器を、偏光状態を変化させるのに使用することができる。巻き数のより少ない、一連のより小さい調整可能スプール(パドル)を、直交偏光状態同士の間に高次の遅延を導入するのに使用することができる。ここで、この技法は、1/2または1/4波長板を組み入れた偏光制御器パドルを指すものではなく、高次の遅延を備える列を指すものであることを指摘しておきたい。巻き数は、1波長を超える、高次遅延が、異なる直交偏光状態間で発生するようにされる。例示的一実施形態においては、これらのループ/パドル上で2進の巻き数(1、2、4、8、16…)を備えるシリーズを用いてもよい。
【0091】
ファイバは、局所曲げ半径ベクトルが1ループ上で実質的に変化する、またはループが1つの面にない(3次元巻回)、非円形対称に巻回してもよい。例示的実施形態においては、トロイダル巻回、または90°傾斜スピンドル軸による8の字巻回を使用してもよい。
【0092】
iii)光が遅延に入る前に偏光色度に対して頑強性があるか、または光が遅延から出た後の状態を補償する偏光状態を準備する方法および設計
光学要素は、キャビティ遅延に入る前の、波長非依存の光の偏光状態を準備するのに使用することができる。例示的状態としては、線形でスプールの低速軸に平行、線形でスプールの高速軸に平行または円形が挙げられる。偏光制御器の色度を低減するために、大容量(bulk)光偏光器を使用することができる。
【0093】
偏光解消板の形態の偏光解消器(depolarizer)または能動的偏光解消器(偏光変調器)を、光が遅延に入る前、またはそこから出た後に、光の実質的な無偏光状態を準備するのに使用することができる。1本または複数本のマルチモードファイバを、光を偏光解消させるのに使用することができる。この1本のマルチモードファイバの非線形または非平面の構成を使用することができる。
【0094】
図15は、偏光色度を直接的に補償することができる要素の略図を示す。この要素は、異なる波長に対して異なる偏光回転を与える。光151は、プリズム、格子などのような、分散要素153の中に連結されて、空間的に分散された光155が、複屈折材料のくさび157または空間依存性の位相リターデーションを有する任意の要素を通って伝播する。異なる波長成分が、それらの直交偏光状態の異なる差動位相リターデーションを受ける。格子後のビームを平行化するレンズ、および再結合するためのレンズおよび格子は図示してない。二重光路構成によって、一組の格子とレンズが有効になる。
【0095】
図16Aは、光ファイバ等価物を示す。光(入力)は、連結されて実質的に複屈折性を有する区分の中に入る。この場合に、この連結は、サーキュレータ(CIR)を介して達成されるが、その他の設計も等価である。複屈折部分は、一連のファイバループ、1本のPMファイバまたは同等のファイバ、あるいは2つの直交偏光状態に対して異なる群速度を有する任意の構成要素とすることもできる。一連の反射器(ここではファイバブラッグ格子(FBG)であるが、その他の波長選択反射器も可能である)が、スペクトルの異なる部分を異なる遅延に対応する異なる位置で反射して戻す。このようにして、異なる波長成分は、異なる複屈折を受けて、偏光色度の所望の効果を達成するか、または相殺することができる。ここで、そのような一連の反射器は、異なる波長に対して異なる光キャビティ長を与えるので、同時に使用して分散を補償することができることに留意されたい。記述した例は、一般的な偏光色度補償方法の特殊な事例であり、これらの事例は、空間的または時間的に異なる波長成分を分離して、分離された部分に様々な量の複屈折を導入するステップを含む。
【0096】
図16Bは、偏光色度に対して頑強性のある別のFDMLレーザ構成1600を示す。この構成において、制御された偏光状態を維持するために、偏光維持ファイバ(PM)1601がキャビティの円形部分に使用されている。偏光ビームスプリッタ(PBS)1602が、光をキャビティの線形部分に誘導するのに使用されている。ファラデー回転ミラー(FRM)1604が入力光の偏光を、2回目にファイバ遅延1603を通過する前に、90度だけ回転させることになるので、ファイバ遅延1603は、一定偏光状態を維持しない従来型光ファイバとすることができる。従来型ファイバ(SMF)1605は偏光維持ファイバよりもずっと安価であるため、このことによって、ファイバのコストを低く保つことができる。キャビティの円形部分に戻る光が、キャビティの線形部分に進入した光と比較して90度回転されているので、光の偏光状態を利得媒体の好ましい偏光軸と一致させるために、ファイバ内での90度捻り1606を、レーザ利得媒体(G)5’の前に使用してもよい。この90度捻り1606は、同調可能フィルタ6’の前、PBS1602に続くアイソレータ1607の前、またはPBS自体の内部に配置することもできる。キャビティ内の光の偏光状態の向きは、ページの面に垂直1608であるか、またはページの面に平行1609であるかによって表わされる。キャビティ内の光伝播の方向は、矢印1610によって表わされている。
【0097】
図17は、キャビティ内マッハツェンダー干渉計(MZI)を備えるFDMLレーザ1700を示す。偏光色度は通常、規則的なスペクトル変調を示すので、光を分割して、2つの別個の偏光制御器(PC)135を備えるマッハツェンダー干渉計を導入することができる。偏光制御器は独立に設定することができ、スペクトル変調の程度を低下させることができる。マッハツェンダー干渉計出力の一方のポートは、レーザ出力カプラ(CP)136として使用し、他方のポートを、光をキャビティに戻すのに使用することができる。スペクトル変調を避けるために、例示的一実施形態は、マッハツェンダーのアーム長を一波長よりも正確にマッチングさせること、または瞬間コヒーレンス長よりも大きいミスマッチを導入することを含む。利得要素(G)5’、アイソレータ(ISO)1607、同調可能フィルタ要素(F)6’、およびファイバ遅延(D)91は、FDMLレーザの他の実施形態と同様に配設される。
【0098】
性能改善のための追加のキャビティ内またはキャビティ外の能動要素または受動要素
用途に応じて、キャビティの内部または外部の追加の光学要素によって、FDMLレーザの性能を改善することができる。
【0099】
a)マッハツェンダー干渉計
特殊なクラスの要素がマッハツェンダー干渉計(MZI)である。1×2カプラの他にその他の形態のカプラを使用してMZIを構築してもよく、実際に以下に記述するすべての方法は、1×nカプラに拡張できるものと理解されたい。MZIは、図17に描かれているようにFDMLキャビティの内部で使用することができる。なお、この点において、記述の特徴、設計および方法はまた、光場を有限の数の光路に分割し、それらを再び再結合するその他任意のタイプの干渉計によっても達成できることに留意されたい。通常、主たる概念は、2つの異なる光学要素をMZIの2つのブランチ/アームに挿入するか、または規定された方法で長さを調整して、所望の性能改善を達成することである。例えば、パワー性能を増大させるために、同一の要素を挿入することも行うことができる。
【0100】
このようなMZIのスペクトル伝達特性およびスペクトル変調が理由で、MZIをFDMLレーザにおいて使用しようとするならば、専用の設計が用いられる。その他のレーザと比較した差異は、そのようなMZIの特徴的なスペクトル変調は、遅延波形の発生と本質的に関係しており、FDMLレーザにおいてフィルタ駆動時間と往復時間とを有効に同期させるのを妨げる可能性があることである。したがって、専用の設計を適用するのが有益な場合がある。FDMLレーザ内のそのようなMZIに対して、一般に3種の方法および設計がある(図18の略図を参照)。
【0101】
(i)サブ波長ミスマッチ(Sub−wavelength mismatch)体系:
MZIの2つのアーム長(光場(A)(1)および(A)(2)によって表わされる)が、1波長のオーダーまたはそれよりも小さい長さまでマッチングされている。この体系において、MZIは、掃引範囲にわたって、顕著なスペクトル伝達特性を有していない。2つの光場は、コヒーレントに結合されて、光場(A)(3)が生じる。この動作体系において、アーム長を、1波長よりも精度のよい値まで安定化させることは、意図的な平均化が望ましくない場合には、非常に重要である。通常、光場の意図的な平均化が望まれない限り、過剰なファイバ長は使用することができない。この体系は、利得要素を多重化するには理想的であり得る。この場合には、各アームは、別個の利得要素を有することになる。アームは、異なる利得波長を有して、掃引範囲を広げることもできる。
【0102】
(ii)コヒーレンス長ミスマッチ(Coherence−length mismatch)体系:
MZIの2つのアーム長には、光場(B)(1)および(B)(2)によって説明されるように、1波長よりも大きいが、瞬間コヒーレンス長よりも小さい、意図的なミスマッチがある。この体系において、MZIは、掃引範囲にわたって顕著なスペクトル伝達特性を有する。2つの光場は、光場(B)(3)によって示されるように、コヒーレントに結合されるが、強い変調が観測される。光コヒーレンス断層撮影法(OCT)応用においては、これによって、画像化範囲内でエコーを生成する。この動作体系におけるコヒーレント加算が理由で、意図的な平均化が望まれないのであれば、アーム長を1波長よりも精度のよい値まで安定化させることが重要である。通常、光場の意図的な平均化が望まれない限り、過剰なファイバ長はどちらのアームでも使用することができない。
【0103】
(iii)非コヒーレント大ミスマッチ(Non−coherent large mismatch)体系:
MZIの2つのアーム長には、光場(C)(1)および(C)(2)によって説明されているように、レーザの瞬間コヒーレンス長よりも大きい意図的なミスマッチがある。この体系において、2つの波形は非コヒーレントに加算されて、光場(C)(3)が生じているので、MZIは、掃引範囲にわたってスペクトル伝達特性を有さず、2つのアームは、MZIの第2のカプラの中に連結された、独立の発生源のように作用する。
【0104】
FDMLレーザのキャビティの内部においてMZIの様々な用途があり、その用途に応じて、異なるミスマッチ体系が使用される。例示的実施形態(a)〜(f)について以下に述べる。
(a)先の段落で述べたように、2つのアームは、2つの独立した偏光制御ユニット(PC)を有して、干渉縞コントラストを低減して、偏光色度に起因するスペクトル変調を出力することができる(図17)。通常、これは、スペクトル変調を避けるために、サブ波長ミスマッチ体系(i)または非コヒーレント大ミスマッチ体系(iii)において実行されることになる。しかしながら、コヒーレンス長ミスマッチ体系(ii)において、干渉縞および変調を厳密に打ち消す値に、ミスマッチを設定することも可能である。
【0105】
(b)2つのブランチにおける非対称を、システムの分散が補償されるような値に設定することができる。キャビティを通過する合計往復時間は、両アームに対して異なる。例えば、長い波長領域に対する往復時間を、短い波長領域に対する往復時間にマッチングさせることが可能である。これは、波長依存スプリッタまたは正規のカプラによって達成することができる。通常、これは、スペクトル変調を避けるために、また大きなオフセットが必要であるために、非コヒーレント大ミスマッチ体系(iii)において実行されることになる。
【0106】
(c)OCT用途において、アーム長ミスマッチによって設定される遅延によって意図的なエコーを発生させることが可能である。普通、これは、非コヒーレント大ミスマッチ体系(iii)において行われることになる。それは、掃引発生源OCT応用(ss−OCT)の測定範囲を複製して、コヒーレンス長を増大させる。これによって、普通、OCTはわずか数ミリメートの限定された測距深さを有するので、OCT設備のマイケルソン(Michelson)干渉計のアーム長における最初のマッチングを見つける労力を最小化するのを助けることができる。
【0107】
(d)偏光依存性MZIを使用して、利得媒体の偏光依存性利得を相殺することができる。そのようなMZIは、無偏光ビームスプリッタまたはカプラの代わりに偏光ビームスプリッタを有することになる。追加の偏光制御器または偏光維持ファイバを使用して、両アームにおける2つの偏光依存性利得チップに対する適切な偏光状態を確実にする。すべての3つのミスマッチ体系を使用することができる。
【0108】
(e)両アームにおける利得要素を使用して、パワーを増大させるか、または掃引範囲を拡張することができる。通常、これは、スペクトル変調を避けるために、サブ波長ミスマッチ体系(i)または非コヒーレント大ミスマッチ体系(iii)において実行される。
【0109】
(f)アーム/ブランチの一方に、フィルタ掃引時間にマッチングされたファイバ遅延を持たせることができる。この非常に大きいミスマッチは、図18に示されている、非コヒーレント大ミスマッチ体系(iii)に対応する。この設計は、波形を光学的に平均化する効果があり、レーザの安定性を増大させる。2進長と直列の一連のMZIを適用して、平均化効果を増大させることができる。そのようなMZI列はまた、キャビティの内部で掃引速度を倍加するのに使用することもできる。図19Aは、2の累乗で増加するファイバ遅延1901、1902、および1903と直列の、一連のMZIを備えるFDMLレーザを示す。ファイバ遅延は、各MZIにおいてアーム長ミスマッチとして作用する。直列の複数MZIの利点は、キャビティ内MZIの場合に(第2のカプラが出力として使用される場合には)パワー損失がないこと、および外部列の場合には、掃引速度が乗算される係数に関係なく、パワー損失が3dBだけであることである。利得要素(G)5’、アイソレータ(ISO)1607、同調可能フィルタ要素(F)6’およびファイバ遅延(D)91は、FDMLレーザのその他の実施形態と同様に配設される。
【0110】
一連のMZIはまた、FDMLレーザキャビティの外部でも、掃引速度を倍増させるのに使用することもできる。図19Bは、2の累乗として増大するファイバ遅延1901および1902を備えた一連の外部MZIを備えるFDMLレーザを示す。各MZIステージにおいて、FDML光周波数掃引がコピーされて、1つのコピーが、ファイバ遅延に対応する時間だけ時間遅延され、次いで再結合される。コピーされた周波数掃引が、時間的に重複するのを防止するために、レーザは、それに対応してより短い期間において動作可能にされる。これは、FDMLレーザの内部で利得媒体を変調することによって達成される。このようにして、掃引速度が、一連のキャビティ内MZIを使用して行われるのと同様にして、倍増される。この原理は、第1の周波数対時間プロット1904および第2の周波数対時間プロット1905に示されている。第1のプロット1904は、レーザ利得媒体が動作可能にされている(実線)、同調可能フィルタ要素駆動期間(点線)の部分を示す。第2のプロット1905は、掃引の4つの非重複コピーが生成された、遅延D2 1902を備える第2のMZIの後方の出力を示す。そのような高次掃引周波数倍増は、正弦波がますます線形になる、正弦波駆動波形の非常に小さい部分だけを使用することが可能であるので、周波数における線形掃引の前提条件とすることもできる。例示的一実施形態においては、一連の干渉計の中での各干渉計のアーム長ミスマッチを、FDMLレーザ内部の全キャビティ長の2の累乗の分数(例えば、1/2、1/4、1/8)に実質的に等しくできる。
【0111】
b)FDMLレーザにおけるファイバブラッグ格子(FBG)
一連のファイバブラッグ格子を使用して、キャビティ分散を補償すると共に、異なる波長成分に対して往復時間をマッチングさせることができる。図16Aにおけるのと類似の設定を使用してもよいが、追加の本数のファイバまたは偏光要素を各FBG間に、必ずしも含める必要はない。図16Aに示す設定において、および正常分散体系(例えば、1050nm波長領域)におけるFDML動作の場合に、サーキュレータ/キャビティに近いFBGは、短い波長成分を反射することになる。リング/サーキュレータからさらに遠くのFBGは、長い波長成分を反射することになる。なお、FDMLレーザの全波長領域をカバーする1つのチャープトFBG(チャープトFBGは連続的に変化する周期を有する)を使用できること、またはいくつかのチャープトFBGまたは非チャープトFBGを一連にして使用することができることを指摘したい。FDMLレーザにおいて、短パルスレーザとは異なり、FBGは必ずしも位相マッチングさせる必要がないことを注記しておくのは重要である。
【0112】
c)光スイッチ
特定の波長を選択し、それらをキャビティを通過する異なる光路を再経由させるために、光スイッチを使用することができる。これは、異なる光路長を有する分散補償方式を適用するため、または特定の波長を取り上げ、それらをキャビティの外に連結するのに、使用することができる。次いで、ここでも、光キャビティ長をl、光の速度をc、追加のファイバの光周波数帯域をbとした場合に、l<c/bを条件として、追加の外部ファブリペローまたはその他の共振器を使用して連続波(cw)出力を提供することができる。
【0113】
d)位相変調器
FDMLレーザは、その動作において、わずかに不連続な同調特性またはモードホップを有することができる。不連続動作またはモードホッピング動作においては、出力光は、1つの周波数において有限時間、留まり、次いで急速に変化する。これは、出力光の周波数が円滑かつ連続的に変化する連続同調と対照的である。FDMLレーザのスペクトル出力の観点で、不連続動作によって、非常に狭いスペクトル線が生じ、これは時折、急激にジャンプする。このことは、特定の波長値が出力スペクトルから失われたり、予測不能な時点に発生したりするので、波長解像測定用途に対しては問題となり得る。キャビティの内部または外部の位相変調器は、スペクトル線幅を広げるのに使用することができる。位相変調器は、所望の効果を得るために、レーザの瞬間光帯域幅のオーダーの電子周波数によって駆動すべきである。なお、線幅の拡張はまた、振幅変調器によっても達成できることを理解されたい。
【0114】
キャビティ内フィルタおよび段階的同調
多くの応用において、FDMLレーザを掃引モードで動作させることは便益があり、そのようなモードでは、発生する掃引波形は、一連の離散的光周波数を含むか、または連続的に段階状になった波長を含む。離散的な段階的同調は、光コヒーレンス断層撮影法、分光分析、および計測学などの多くの用途に対して便益があり得る。離散的段階を有する掃引同調は、より狭い瞬間レーザ線幅、改善されたコヒーレンス特性および改善されたノイズをもたらす場合がある。これらの特性は、掃引発生源光コヒーレンス断層撮影法および干渉計応用における画像化性能を改善することができる。一連の離散的周波数または波長段階の発生はまた、レーザ出力を測定することおよびレーザパラメータの制御を改善することにも有利である。
【0115】
図20は、段階状掃引FDML動作の例を説明している。FDMLレーザは、持続時間tSTEP−ONの間、ある光周波数または波長の光を放出し、次いで、その出力周波数または波長を次の値に切り換える。この周波数または波長における段階の発生過程は、掃引レーザ出力の所望の同調領域全体にわたって反復される。場合によっては、システムを、段階同士の間にレーザ出力がない時間tOFFがあるように構成してもよい。しかしながら、システムパラメータに応じて、FDMLレーザは、ほぼ連続的な強度を含む出力または段階間で強度における変調を含む出力を発生してもよい。一部の用途に対しては、各段階間の差が、光周波数において一定値ΔνSTEPを有すること、また段階が、一定の時間間隔tSTEP−PERIODで、一定の速度で発生することが望ましい。一連の段階の後に、全段階状掃引出力が、周期的時間FDMLPERIODがFDML条件を満足するように、FDML条件に従う反復速度で反復され、ここで、FDMLPERIODは、キャビティ光往復時間またはその倍数に等しい。
【0116】
段階状掃引FDML動作の別の例が、図21に示されている。FDMLレーザは、光周波数または波長の分布または櫛型(comb)を有する段階パターンを含む光を放出し、複数の離散周波数または波長が一時に生成される。この分布または櫛型の中心または平均周波数は、レーザが掃引されるときに、時間と共に変化するが、櫛型内の個々の周波数は固定されたままである。所望の周波数領域の全体にわたって掃引されたのちに、全段階状掃引出力が、FDMLレーザの反復速度において、反復される。図の例は、一方向掃引を説明しているが、同一の概念が、双方向掃引にも適用されることを理解されたい。
【0117】
図22は、FDMLレーザから、段階状掃引同調を得るための構成の例を示す。段階状FDML同調には、レーザ内での2つのフィルタの使用を含む:本明細書においては「同調可能FDMLフィルタ」と呼ぶFDML動作に使用される調整式同調可能フィルタ、および本明細書においては「補助フィルタ」と呼ぶ複数の狭帯域周波数または波長極大を含む追加の補助フィルタである。図22に示す略図では、レーザ利得媒体G、アイソレータIso、補助フィルタAF、同調可能FDMLフィルタF、出力カプラOPCおよびファイバ遅延Lが、FDMLレーザキャビティを形成している。なお、補助フィルタは、固定式であるか、または1掃引周期よりも大きい時間スケールで調整可能であり、レーザ出力の特性を変更するものであることを理解されたい。FDMLレーザ出力はまた、キャビティの外部の補助フィルタによってフィルタリングさせることができるが、補助フィルタをキャビティの内部に配置することは、より高い出力パワーおよびより狭いライン幅が必要とされる場合には、望ましい場合がある。この例は、FDMLレーザの単純なリングキャビティ実施形態に対して示しているが、等価の方法を、FDMLレーザのその他の実施形態、例えば、それに限定はされないが、線形キャビティ、シグマリングおよびFDML動作を可能にする任意のキャビティ設計に関連するものに応用できるものと認識される。
【0118】
追加の補助フィルタは、レーザ利得媒体の利得帯域幅内に、複数の狭帯域の透過極大を有する必要がある。補助フィルタの帯域幅は、同調可能FDMLフィルタの帯域幅よりも狭くなくてはならない。補助フィルタの例としては、それに限定はされないが、エタロン(etalon)フィルタまたはファブリペロー型フィルタ、サーキュレータなどの要素と組み合わせた一連のファイバブラッグ格子、または所望の出力周波数または波長において複数の狭帯域のフィルタリングを行うように構成された、一連の狭帯域誘電体または導波路フィルタが挙げられる。応用によっては、追加の補助フィルタの透過特性は、所望の帯域幅を含む所定の組の波長または周波数を透過または反射するように、固定されることになる。しかしながら、その他の応用においては、補助フィルタ特性は、制御システムを使用して調整し、安定化させてもよい。例えば、FDMLレーザが、周波数または波長が正確に決められた段階状掃引出力を発生することが望ましい場合には、波長基準の外部周波数に対してロックされるか、または安定化された、調整可能補助フィルタを有する構成を使用することができる。代替的方法は、FDMLレーザが特定の周波数段階を発生しているときに、特定の時間にFDMLレーザの出力を測定し、レーザ出力周波数が外部基準に対してロックされるか、または安定化されるように補助フィルタを調整するものである。多くのタイプのフィルタの透過特性および最大透過周波数は、波長依存性を示すので、補助的または同調可能なFDMLフィルタは、電子回路を使用してその温度を制御することによって安定化させてもよい。
【0119】
段階状掃引FDMLレーザ出力を外部基準周波数に対してロックするのを容易にするために、正確にわかっている光周波数において別個の狭い線幅の光源をキャビティ中に導入することによって、補助フィルタを測定することができる。この狭い線幅の発生源は、補助フィルタの後に位置する波長選択フィルタおよび光検出器を使用することによって、補助フィルタを透過した後に測定されることになる。次いで、狭い線幅の発生源が正確にわかっている時間に透過されるように、補助フィルタを調整して、それによってFDML出力を狭い線幅の発生源の正確にわかっている光周波数にロックすることもできる。
【0120】
FDMLの段階状掃引動作は、所望の動作に応じた特定の判断基準に従って、同調可能FDMLフィルタおよび補助フィルタの特性の設計を行ってもよい。図23および24は、異なる動作体系に対する、同調可能FDMLフィルタおよび補助フィルタの特性を説明する略図である。補助フィルタは、透過帯域幅BWAuxiliaryを有する、透過極大周波数ν1、ν2、ν3などにおける1組の透過極大によって特性が表わされる。補助フィルタがファブリペローフィルタである場合には、透過周波数は、均一な間隔で配列され、透過周波数間の周波数段階Δνを表す、自由スペクトル領域FSRAuxiliaryによって特性が表わされる。同調可能FDMLフィルタは、帯域幅BWFDMLおよび、時間の関数として調整可能な、透過極大周波数VFDMLによって特性が表わされる。補助フィルタの帯域幅BWAuxiliaryは、FDMLフィルタBWFDMLよりも狭く、したがって補助フィルタは、FDMLフィルタ単独で可能であるよりも狭い線幅の出力を、FDMLレーザに生成させる。
【0121】
一般性を失うことなく、これらの判断基準は、同調FDMLフィルタがファブリペローフィルタであり、補助フィルタが第2のファブリペローフィルタである例を用いて説明することができる。しかしながら、その他のフィルタを使用して、これらの実施形態に対して設計基準を構築できることを認識されたい。この例において、同調可能FDMLフィルタは、その透過極大周波数VFDMLを周波数範囲にわたって掃引することによって調整される。同調可能FDMLフィルタは、キャビティ内での有効な光の往復時間、またはその倍数に同期して駆動される。同調可能FDMLフィルタがファブリペローフィルタである場合に対して、透過極大周波数VFDMLは、ファブリペローミラー間隔を変化させて同調され、したがって透過極大周波数は、異なる周波数値の範囲にわたって連続的に走査する。
【0122】
なお、その他のタイプのフィルタが補助フィルタとして使用される場合には、多くの場合に例示的実施形態は等間隔に配列された透過極大を発生することになるが、透過極大の間隔は等間隔でない場合があることに留意されたい。補助フィルタとしてファブリペローフィルタを使用することは、ファブリペローフィルタが、周波数において等間隔に配列された多数の透過極大を生成し、また非常に狭い帯域幅または線幅を有するという利点がある。複数の透過ピークを有するキャビティ内補助ファブリペローフィルタを使用して、FDML式周波数櫛型を生成することの主な利点は、広範囲の光周波数間隔を得ることが比較的簡単であることである。数MHzから高THzまでのFSRを有するファブリペローフィルタが入手可能であるので、非常に小さい周波数間隔から非常に大きいものまで発生させることができる。このフィルタは、周波数間隔比に対して非常に狭い線幅、または高い鮮鋭度(finesse)を有することができる。さらに、補助フィルタ極大の位置は、静止している必要はなく、外部周波数または波長基準にロックされるように調整可能にすることもできる。しかしながら、補助フィルタのフィルタ特性は、通常は、キャビティ内の光の往復時間に同期して同調されないことに留意されたい。
【0123】
FDMLレーザの段階状掃引動作に対して、以下のように区別することができる、異なる動作体系がある:
(i)BWFDML<FSRAuxiliary:この動作体系は図23に示されており、図20に示すような出力を有する。この構成は、一連の隔離された周波数段階を含むFDMLレーザ出力を得ることが望ましいときに使用される。このレーザは、補助フィルタの透過極大周波数の範囲にわたって段階状に掃引し、ある光周波数においてレーザ出力を時間tSTEP−ONの間、発生し、この時間中、同調可能FDMLフィルタ極大VFDMLが補助フィルタの透過極大と重畳する。この出力の後に時間tOFFが続き、このときには、レーザ出力強度が実質的に減少して、ゼロ強度に達する場合があり、同調可能FDMLフィルタ透過極大周波数VFDMLが補助フィルタの2つの透過極大周波数の間にある場合に起こる。その後に、FDMLフィルタが掃引を続けるにつれて、レーザは、補助フィルタの次の透過極大周波数において、新しい光周波数に切り換わる。
【0124】
この動作モードには、FDMLレーザが、変調された強度または各パルスが光周波数における異なる段階に対応する一連のパルスを発生するという利点がある。補助フィルタがファブリペローフィルタである場合においては、周波数段階は等距離に配列されている。したがって、レーザが後続の光周波数の段階に移る度に、出力強度の変化が起こるので、FDMLレーザの強度出力は、レーザから直接的に光周波数または「k空間(k−space)」トリガ信号を発生するのに使用される。
【0125】
さらに、光周波数段階の持続時間は、FDMLレーザの分散および同期特性についての情報を与える。各tSTEP−ONのタイミングを測定することによって、FDMLフィルタAC駆動周波数およびキャビティ内分散を制御するために、フィードバック信号を発生させることができる。
【0126】
この動作体系は、より狭い線幅と改善された性能を有することができるので、掃引発生源光コヒーレンス断層撮影法に有用である。これはまた、コヒーレントアンチストークスラマン散乱(CARS:coherent anti−Stokes Raman scattering)顕微鏡検査などの応用のための、変化する周波数を有する短いパルスを発生させるのにも使用することができる。短いパルスを発生させるには、条件、BWFDML<<FSRAxuxiliaryが望ましい。
【0127】
(ii)BWFDML>FSRAuxiliary:この場合に、FDMLレーザは、一時に、補助フィルタのいくつかのモード、または透過極大で動作し、この場合に、透過極大の群はFDMLフィルタによって選択される。この動作体系は、図24に示されており、図21に示されるような出力を有する。FDMLフィルタが同期されて同調されるにつれて、FDMLレーザは、補助フィルタによって選択された、波長または光周波数の分布または櫛型を有する、段階状掃引パターンを発生する。中心または平均の周波数または波長が、FDMLフィルタの透過極大周波数によって選択される。中心周波数は、レーザが掃引されるときに、時間と共に変化するが、櫛型内の個々の周波数は固定されたままである。この構成において、FDMLフィルタと補助フィルタの組合せフィルタリング効果によって、1組の周波数を常に発振させることができるので、FDMLレーザは、大幅な変調のない準連続出力強度を発生する。
【0128】
この動作モードには、FDMLレーザが一時に複数の周波数を発生するが、個々の周波数は、FDMLフィルタが単独で使用される場合よりも、狭い線幅を有するという利点がある。掃引発生源OCT、干渉測定または計測学などの多くの応用に対して、狭い線幅は、測定範囲または測定精度を改善する。複数の周波数出力は、OCTイメージングまたは干渉測定においてエイリアシング効果を生成する可能性がある。したがって、FSRAuxiliaryで決まる周波数の間隔は、意図する応用と整合させて選ぶ必要がある。
【0129】
(iii)特定の応用に対しては、同様に、BWtuning≒FSRAuxiliaryとなる体系においてレーザを動作させるのが望ましい。この場合には、FDMLレーザは、補助フィルタに対応する1つまたは少数の周波数において、主として動作することになる。FDMLフィルタが同期して同調されるときに、異なる周波数が出力される。この動作の体系は、FDMLレーザのコヒーレンス特性を改善するのに使用することができる。この場合に、強度出力は、準一定でもなく、また先述の場合のように、完全に変調もされていない。
【0130】
約10THzの半導体光学増幅器の典型的な利得帯域幅を考慮して、例示的一実施形態は、1THzより低い自由スペクトル領域を有する補助フィルタを組み入れることになる。調節式同調可能FDMLフィルタは、1THzを超える自由スペクトル領域を有することになる。この実施形態によって、光コヒーレンス断層撮影法や計測学などの多くの応用に対して好ましい場合のある10またはそれ以上の周波数段階を有するFDMLレーザ出力が得られる。ここで、場合によっては、連続的透過極大間の周波数間隔が等距離ではない条件で、補助フィルタが使用されることがあることを理解されたい。この場合に、連続する透過極大間の周波数間隔は、この例示的実施形態に対して1THz未満ということになる。
【0131】
FDMLレーザが一連の隔離された周波数段階を発生する図20および23に示された構成は、レーザ動作の特性を表すと共に、FDMLレーザパラメータを制御する新しい方法を提供する。最適なFDMLレーザ動作を達成するために、同調可能FDMLフィルタの駆動反復速度または駆動周波数は、キャビティ内の波形の有効往復時間またはその倍数に実質的に等しくなるように、同期されなければならない。離調またはミスマッチがあると、FDMLフィルタと補助フィルタの組合せが、入射光周波数を透過するように同調されていないときに、所望の時間よりも早いか、または遅い時間に波形がFDMLフィルタおよび補助フィルタに復帰する結果になる。FDMLレーザが、図20に示すように、周波数における段階を発生するように構成されている場合には、この離調またはミスマッチの影響は、時間tSTEP−ONが短くなり、出力パルスが短くなるように、周波数段階を時間的に狭くすることである。所与の時間間隔にわたって積分された出力パワーも低くなる。したがって、FDMLフィルタの駆動周波数およびその他のパラメータも、出力パルスのパルス持続時間、または所与の時間間隔にわたる出力パワーのいずれかを測定することによって、制御して最適化することもできる。FDMLフィルタの駆動周波数を制御する一方法は、パルス持続時間または積分出力パワーが最大化されるように、駆動周波数を調整するものである。
【0132】
周波数段階が一定である場合には、各出力パルスは、所与の光周波数段階に対応するので、FDMLレーザの出力周波数は、周波数掃引における段階を数えることによって求めることができる。いつ計数を開始するかを示す基準信号は、いつレーザが特定の基準周波数を通過して掃引するかを特定するために、狭帯域フィルタと光検出器によってFDMLレーザ出力を測定することによって得ることができる。明確に定義された一連の周波数を通過してレーザが段階状に掃引されるときのデータ取得をトリガリングするのに、パルス式出力を使用することができるので、掃引発生源光コヒーレンス断層撮影法などの応用に対して、この特徴は特に重要である。
【0133】
同調可能FDMLフィルタ用の駆動波形もまた、所望の段階状掃引出力を得るために、測定して制御することができる。一部の応用に対しては、時間的に等間隔な周波数段階を一定の率で発生させるのが望ましい。この場合には、補助フィルタは、周波数において等間隔に配列された透過極大を有するように選ばれて、同調可能FDMLフィルタの帯域幅は周波数間隔よりも小さくなる。レーザが、隔離された周波数段階を発生するように構成されていれば、各出力パルスのタイミングは、同調可能FDMLフィルタの同調率の尺度である。同調可能FDMLフィルタ用の駆動波形は、周波数段階に対応するFDMLレーザ出力パルスのタイミングを測定し、パルスが時間において等間隔に配列されるように駆動波形を調整することによって、調整、発生または合成することができる。この出力パルスのタイミングを測定して、同調可能FDMLフィルタの駆動波形を調整する工程は、反復的に実行してもよい。同調可能FDMLフィルタがファブリペローフィルタである場合に対しては、駆動波形が、ファブリペローフィルタ内のミラーの間隔を制御し、それによってフィルタの透過極大波長を変化させる。しかしながら、周波数は波長と逆比例するので、極大周波数が一定の率で変化するようにFDMLファブリペローフィルタを走査するには、駆動波形の補正を用いてもよい。
【0134】
FDMLキャビティ内の分散は、周波数または波長の関数として光の群速度を変化させる。これによって、キャビティ内の光波形の往復時間が、周波数または波長の関数として変化し、その結果、周波数または波長の一部だけが、FDMLフィルタの駆動波形に同期されることになる。分散の影響は、図25に概略的に示されている。実線は、FDMLレーザによって発生された、同調可能FDMLフィルタと補助フィルタの組合せ同調作用に対応する、1組の周波数段階を示す。これらの周波数段階を含む光波形が、FDMLレーザキャビティのまわりを移動するとき、分散によって、光波形の異なる周波数成分が、破線によって示すように、異なる時間に到着するようになる。実線および破線は、それらが明瞭に見えるように、わずかにずらされているが、それらは同一の周波数にあることを理解されたい。
【0135】
図25は、同調可能FDMLフィルタ周期が、光波形における中心周波数νcが、同調可能FDMLフィルタと補助フィルタとの組合せフィルタリング作用と同期して到着するように、調整されている場合を示す。しかしながら、分散の影響によって、光波形中の低い周波数νlまたは高い周波数νhなどのその他の周波数成分が、FDMLフィルタの同調に対して、早く到着しすぎるか、または遅く到着しすぎることになる。この脱同期化によって、これらの周波数において、FDMLレーザの出力パルス持続時間が減少することになる。階段状掃引FDMLレーザは、段階時間TONの大部分に含まれる周波数がなお、FDMLフィルタと補助フィルタとの組合せフィルタリングと同期されているので、標準FDMLレーザよりも分散に対する敏感性は低い。最後に、掃引全体にわたって段階状掃引FDMLレーザにおける出力パルスのパルス持続時間の変動を測定することによって、分散の測定が可能になることに留意されたい。
【0136】
先述したように、レーザ利得媒体の利得帯域幅内で複数の狭帯域幅の透過極大を与える、補助フィルタに対して可能な異なる実施形態がある。補助フィルタの実施形態の一部は、分散の補償を可能にする。図26は、サーキュレータおよび異なる波長λ1、λ2、λ3などにおいて狭帯域反射極大を有する一連のファイバブラッグ格子(FBG)を使用して構築されたフィルタの例を示す。サーキュレータ(CIR)は入力光を一連のファイバブラッグ格子フィルタ中に誘導し、ファイバブラッグ格子フィルタは、光の所望の波長を再帰反射して(retro−reflect)サーキュレータに戻し、サーキュレータでは、フィルタリングされた光が出力に誘導される。これによって、ファイバブラッグ格子によって選択される、特定の波長において、一連の狭帯域幅透過極大が生成される。この構成によって、FDMLレーザは、ファイバブラッグ格子パラメータを選ぶことによって選択される、異なる波長または周波数を含む出力を発生することが可能となる。
【0137】
この構成はまた、FDMLレーザキャビティ内の分散を補償するのにも使用できる。レーザキャビティ内の分散によって、掃引光波形中の異なる周波数または波長の成分が、レーザキャビティまわりで、異なる群速度または往復時間を有するようになる。このことは、同調されたFDMLフィルタは、掃引波形におけるすべての周波数または波長に対しては、キャビティ内の光の往復時間に正確に同期することはできないということを意味している。しかしながら、フィルタ内の連続するファイバブラッグ格子の間に光遅延が導入され、これらの光遅延が、掃引波形における異なる周波数または波長成分のキャビティ往復時間における差を補償するように設定されると、掃引帯域幅の全体にわたる複数の周波数または波長に対してFDMLフィルタ同期条件を満足させることができ、それによって分散が補償される。分散を補償することによって、FDMLレーザのパワー、同調帯域幅および線幅性能が改善される。
【0138】
図27は別の実施形態を示し、この場合には、補助フィルタが、サーキュレータおよび一連のフィルタを使用して構築され、この一連のフィルタは、異なる波長λ1、λ2、λ3などにおいて狭帯域反射極大を有し、再帰反射器と共に使用される。このフィルタは、誘電体フィルタ、積分光学フィルタまたは特定の波長のまわりに狭い帯域幅を選択する、その他の既知のフィルタとしてもよい。異なる波長は再帰反射され、そこでそれらの波長はフィルタを再び通過して、サーキュレータに戻り、さらに補助フィルタの出力へと伝播する。所望の波長または動作の周波数において一連の透過極大を生成する特性を有する実施形態もあることを理解すべきであるが、図示された特定の実施形態は、二重光路構成内で各フィルタを使用する。FDMLレーザキャビティにおける分散を補償するために、異なるフィルタ要素間に光遅延を使用することができる。
【0139】
OCT画像化またはその他の測定を実施するために、段階同調レーザ発生源または段階状掃引レーザ発生源の光周波数間隔を測定することが望ましいことが多い。段階状掃引FDMLレーザの光周波数間隔を測定するために、キャビティ内の異なる位置から外に連結されるレーザからの2つの出力を、干渉計使用法で結合することができ、結果として得られる光信号を光検出器で検出することができる。レーザ出力の一部分をそれ自体の時間遅延コピーと干渉計使用法によって結合し、結果として得られた干渉信号が光干渉計によって検出される、外部マッハツェンダーまたはその他類似の干渉計構成を使用することも可能である。これらの構成は、図28に模式的に示されている。補助フィルタ(AF)2801は、レーザキャビティの内部に設置されて、段階的同調出力を発生する。これらの構成は、リングFDMLレーザキャビティ構成を用いて示されているが、これらはその他任意のFDMLレーザキャビティに応用してもよいことを理解されたい。これらの構成は、段階間の周波数間隔が十分に小さく、キャビティの内部または外部のいずれかに位置する高速光検出器D1およびD2と電子回路とによって検出できる段階状掃引FDMLレーザ構成用に機能する。光検出器D1およびD2によって生成される電子ビート信号の周波数は、レーザからの2つの出力の間の光周波数における差に直接的に関係することになる。背景強度変動を相殺して、ビート信号を付加するために、2つの検出器D1およびD2の出力が減算される二重検出器構成を使用することができる。2つの出力の到着間の遅延時間が、1段階周期tSTEP−PERIODに等しくなるように調整されると、各個の段階の光周波数が、電子ビート周波数によって測定できる。遅延時間は、図28に示すようにキャビティの内部または外部とすることができるファイバ遅延2802を使用して調整することができる。光周波数間隔の正確な測定によって、周知の制御方法を使用して、光周波数間隔を制御および調整することが可能になる。このようにして、各個のレーザ段階間の光周波数間隔を、電子ビート周波数として測定することができる。したがって、絶対光周波数差を、非常に高精度で測定することができる。
【0140】
段階的同調FDMLレーザの周波数段階特性が掃引毎に変わることが望まれる状況もある。この状況が、図29に説明されている。そのような状況に対して、補助フィルタは、その透過パターンを、FDMLレーザにおける光の往復時間と同期して変化させることになる。例示的一実施形態において、FDMLフィルタは、レーザキャビティ内の光の光往復時間の1つの倍数に同期して同調されることになる。補助フィルタは、レーザキャビティにおける光の光往復時間の低い倍数に同調されることになる。例えば、FMDLフィルタは、往復時間の第2の倍数で同調されることもでき、補助フィルタは、第1の倍数で同調されてもよい。このようにして、各第2の段階的同調出力は、異なる周波数段階パターンを有することになる。
【0141】
段階的または不連続的な同調のための代替的な同調可能フィルタ
レーザキャビティの内部の単一の同調可能フィルタを使用することによって、FDMLレーザの段階的同調を達成することができる。これは、システム内の構成要素の数を低減し、それによって複雑度を低減するので、望ましいことがある。単一の同調可能フィルタを使用すると、任意に指定可能な光周波数を出力するFDMLレーザを構築することもできる。このことは、FDMLレーザ出力の柔軟性を向上させるので望ましい。段階的同調および任意に指定可能な光周波数を得るために、同調可能フィルタは、2つの特性を有さなければならない。第1に、光を1つまたは複数の離散的な狭い帯域へとフィルタリングすべきであり、その場合に、離散的狭帯域の中心周波数を、FDML動作を可能にする周期的な方法で、時間の経過と共に同調させることが可能である。第2に、離散的な狭帯域の中心周波数は、任意の離散的設定点に設定できなければならない。
【0142】
FDMLにおける段階的または不連続的な同調に対する要件を満足するフィルタには、数タイプのフィルタがある。1つのタイプのフィルタは、通常、動的利得等化器(DGE)、動的チャネル等化器、可変波長ブロッカ(variable wavelength blocker)、波長選択スイッチ、可変波長減衰器または可変光学減衰器と呼ばれる。これらのフィルタは、一般に、波長分割多重化システムからの狭い離散的波長帯域を選択的に減衰させるか、または遮断するために、電気通信において使用されている。広い領域の波長を搬送する光ファイバは、通常、そのようなフィルタの入力となる。入力光は、アレイ導波路格子(AWG)、リング共振器、エシェル格子(echelle grating)またはその他の回折性構成要素を使用して、いくつかの離散的な波長帯域に分割される。次いで、熱光学スイッチ、電子光学スイッチ、可変光学減衰器またはその他のタイプの減衰構成要素などの減衰構成要素を使用して、各離散的波長帯域を部分的に減衰させるか、または完全に遮断することができる。次いで、離散的な波長帯域は、第2のAVG、リング共振器、エシェル格子またはその他の回折性構成要素を使用して、再結合される。フィルタリングされた光は、第2の光ファイバ上で透過されてフィルタから出る。このようにして、フィルタは、1つまたは複数の離散的波長帯域を通過させるように構成することができる。
【0143】
透過された離散的波長帯域の中心波長を、FDMLレーザキャビティにおける光の往復時間と同期された周期的な方法で、同調させることができて、FDML動作が可能になる。フィルタは、離散的波長帯域のみを通過させるように構成できるので、不連続同調が発生する。波長帯域のどの群も、フィルタ内の構成要素を減衰させることによって、任意のときに遮断することができるので、透過波長帯域は任意に設定することができる。したがって、FDMLレーザの離散的波長出力は、単調に増加または減少する波長として生成する必要はなく、出力波長は任意に指定できる。
【0144】
バーニア同調(vernier tuned)FDMLレーザ
FDMLフィルタとしてバーニア効果(Vernier effect)を使用する同調可能フィルタを組み入れることによって、段階的同調FDML出力を実現することも可能である。そのようなバーニア同調可能フィルタには、静的ファブリペローフィルタおよび実質的に同等の帯域幅およびわずかに異なる自由スペクトル領域を有する同調可能ファブリペローフィルタを含めることができる。同調可能ファブリペローフィルタが同調されている間に、透過極大の異なる対が重複して、段階的同調挙動を起こさせる。FDML動作に対して、同調可能ファブリペローフィルタは、キャビティの往復時間に同期して同調されることになる。ここで、複数の透過極大を生成する、その他任意のタイプの光学フィルタを、ファブリペローフィルタの代わりに使用できることを理解されたい。また、静止ファブリペローフィルタおよび同調可能ファブリペローフィルタの組合せは、1つの段階的同調フィルタとして、または1つのバーニア同調可能フィルタとして考えられることも理解されたい。
【0145】
FDMLレーザに対する新規の応用
以前から知られている従来型波長掃引レーザと比較して、FDMLレーザの性能が改善されたことにより、以前には可能ではなかった新規の測定システムが提供される。FDMLレーザの利点は、第1に、掃引速度が劇的に増大したこと、振幅ノイズが劇的に減少したこと、および位相ノイズが劇的に減少したことに関する。したがって、以前には達成不能な速度と感度で、振幅方式測定および位相方式測定を行うことができる。FDMLレーザが以前から知られていた測定システムに組み込まれると、測定システムは、以前には不可能であった測定を実施することができるようになる。
【0146】
1つの具体的な例においては、以前から知られていた測定システムを、低コヒーレンス干渉法に基づくものとすることができる。この例としては、光コヒーレンス断層撮影法、光周波数ドメインイメージング、スペクトルレーダ、低コヒーレンス後方散乱分光法、光コヒーレンス顕微鏡検査または低コヒーレンス干渉法のその他任意の変形形態を挙げることができる。この場合には、FDMLレーザは、以前には達成不能であった速度と感度で、干渉測定を行うことを可能にする。したがって、以下の特性のいずれか、またはそれらの任意の組合せによって特性が表わされるサンプルまたは対象を調査することが可能であり、そのような特性としては、急速過渡事象、急速運動、高吸収、弱反射、弱後方散乱、弱透過および測定信号の弱生成(weak generation)がある。さらに、FDMLレーザは、低コヒーレンス干渉データを可視化する新規の方法を可能にする。これらのデータは、これらのデータが取得される方法とは異なる1D、2D、3Dまたは4D(3D+時間)法で可視化することができる。3つの直交軸(X、Y、およびZ)の固定の直角座標系を使用するときには、例えばデータは、有限のY寸法上で、連続する一連のXZ面として取得されるが、XY「正面」画像として表示することができる。この形状が図30に示されている。
【0147】
第2の例においては、以前から知られていた測定システムを、干渉縞の振幅を解析する、光コヒーレンス断層撮影システムとすることができる。このような例としては、眼科OCTイメージングシステム、内視鏡適合OCTイメージングシステムおよび顕微鏡適合OCTイメージングシステムが挙げられる。この場合に、FDMLレーザは、以前には達成不能であった速度と感度で実行されるOCT測定を提供する。これによって、3次元データセットを、運動アーチファクトの影響を大幅に低減する速度で、高い空間サンプリング密度を有する生体対象において取得することが可能になる。生体対象と関連する運動アーチファクトは、以前には、そのような高密度3D画像化を不可能にしていた。運動アーチファクトは、生体(眼など)の不随意運動、組織運動(tissue motility)(大腸、胃、および食道など)、近傍臓器の運動により、またはその他の過程(呼吸および心臓サイクルなど)に関連する動きによって生じる場合がある。FDMLレーザをOCTイメージングシステムに追加することによって、これらの運動アーチファクトが実質的に低減されるか、または場合によっては、実質的に除去される。これが可能であるのは、FDMLレーザの掃引速度が、組織運動に関連する特性時間よりも、数オーダー高いからである。
【0148】
FDMLレーザを組み込むことによってOCTイメージングにおける運動アーチファクトを低減することによって、以前には不可能であったOCT画像可視化方法が提供される。例えば、サンプルが図30に示すように向けられているとすると、XY面に配向されたOCT画像を表示するのが望ましいことがある。これらのXY画像は「正面」画像と呼ぶことができ、これは、Z成分(「横断面画像」)を含むOCTデータを、Z成分を含まないデータに対して位置合わせするのに望ましい。正面画像のさらに別の利点は、正面画像は、人間の観測者にとって非常になじみがあることである。したがって、正面画像は、横断面画像の価値を高め、人間の観測者により横断面画像がより正確に解釈されることを可能にする。
【0149】
以前から知られていたOCT画像検査用のレーザを使用すると、正面画像は、高い画素密度および高い画像化速度では表示できなかった。運動アーチファクトが存在するサンプルを解析するために、サンプル運動に関連する時間よりも実質的な大きな速度で更新される、詳細な正面図が必要である。FDMLレーザは、運動アーチファクトの負の影響が無視できるように、高画素密度の正面OCT画像検査をビデオ画像速度で可能にする。このことは、以前に記載したレーザを使用するOCTシステムと比較して、OCTデータが取得されるときに、人間の観測者がそれを解釈する能力を向上させる。
【0150】
第3の具体的な例においては、以前から知られていた測定システムを、干渉縞の位相、または干渉縞の振幅と位相の組合せを解析する光コヒーレンス断層撮影システムとすることができる。このような例としては、ドップラ流れOCTイメージングシステム、OCT位相顕微鏡システムおよび位相感知低コヒーレンス干渉法に基づく粗面計(profilometer)を挙げることができる。FDMLレーザは位相ノイズが極めて低く、掃引速度が極めて高いので、これらのシステムに対して重要な便益をもたらす。これによって、速度を向上させた上で、より感度の高い位相測定を可能にする。
【0151】
ドップラ流れOCTイメージングシステムは、サンプル内の流体流れを検出するために、連続する干渉縞の位相の変化を解析する。ドップラOCTシステムに対しては、非常に少量および非常に大量の流れを同一のサンプル内で同時に観測できるように、広い流れのダイナミックレンジを処理することが望ましい。ドップラOCTシステムにおいて波長掃引レーザが使用される場合には、検出可能な最低流速は、レーザの位相ノイズによって限定される。検出可能な最高流速は、レーザの掃引速度によって限定される。FDMLレーザは、以前から知られていた掃引レーザよりも位相ノイズが大幅に低く、以前から知られていた掃引レーザよりも掃引速度が大幅に高い。したがって、FDMLレーザを組み込んだドップラOCTシステムのダイナミックレンジは、大幅に拡張される。これによって、血管および心臓組織などの混濁した流れの領域を含む人間またはその他の生物におけるサンプルを解析することが可能になる。混濁した流れの解析は、以前から知られているドップラOCTシステムでは、これらのシステムの流れのダイナミックレンジが限定されているために不可能である。
【0152】
OCT位相顕微鏡システムおよび位相感応低コヒーレンス粗面計は、光路測定を行うために、干渉縞の定量的な位相を解析する。光路測定の解像度は、振幅感応OCTシステムの場合のレーザの同調帯域幅とは異なり、レーザの位相ノイズによって決まる。OCT位相顕微鏡システムにおいては、複数の軸方向層を解析することができる。位相感応低コヒーレンス粗面計においては、1つの表面層だけが解析される。両方の場合において、軸方向の解像度を向上させて、益々小さくなる特徴を有するサンプルの解析を可能にするために、システムが位相ノイズの低いレーザを内蔵することが望ましい。またレーザは、データ取得時間を低減し、高速の過渡事象の検出を可能にするために、高い掃引速度を有することが望ましい。FDMLレーザは、以前から知られている掃引レーザと比較して、位相ノイズが大幅に低減されると共に、掃引速度が大幅に増加する。これらの改善によって、ナノメートル規模の光路長を、マイクロセカンド規模の期間で解像することが可能になる。応用としては、ピエゾ電気変換器、微小電気機械システム(MEMS)および共振発振器などの急速移動する機械的部品の解析が挙げられる。
【0153】
位相感応低コヒーレンス粗面計の場合には、レーザ出力の長いコヒーレンス長によって、FDMLレーザからのさらなる便益が得られる。粗面計によって1表面だけが解析されるので、測定可能な最大の径路長は、レーザのコヒーレンス長によって決まる。測定可能な最小の径路長は、レーザの位相ノイズによって決まる。FDMLレーザのコヒーレンス長は、通常、約数ミリメートルであり、FDMLレーザの位相ノイズは、通常、約数十ピコメートルであるので、FDMLレーザを内蔵する粗面計のダイナミックレンジは、通常、8桁程度である。このことは、他の低コヒーレンス粗面計に対して大幅な利点であり、ほぼ8桁程度に広がる空間特徴を有するサンプルの解析を可能にする。一部の応用としては、ミクロン規模またはミリメートル規模の曲率を有する生物細胞のナノメートル規模表面特徴を試験すること、およびMEMSデバイスにおけるナノメートル規模の変形を、それらがミクロン規模またはミリメートル規模の距離にわたって作動されるときに試験することが挙げられる。これらのようなサンプルの調査は、以前から知られている波長掃引レーザを使用する、以前から知られている位相感応干渉計システムでは不可能である。
【0154】
表面のトポロジを測定することに加えて、FDML式干渉計を使用する厚さ測定は、重要な利点がある。そのようなシステムにおいては、後方反射光強度は、互いに2つ(例えば、前方および後方表面)以上の表面干渉を形成し、基準アームまたは追加の干渉計を必要としない。応用としては、ガラス、プラスチック薄膜のような透明媒体の厚さ測定、ウエハなどの厚さの測定が考えられる。
【0155】
本明細書において開示される、特定のプロセスは、ハードウエア、ファームウエアまたはソフトウエアとして実現してもよいことを理解されたい。ソフトウエアとして実現される場合には、そのソフトウエアは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、コンパクトディスク読取り専用メモリ(CD−ROM)などの任意の形態のコンピュータ可読媒体に記憶してもよい。動作に際しては、汎用または特定用途のプロセッサが、当該技術においてよく知られている方法で、そのソフトウエアをロードして実行する。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明を、その例示的実施形態を参照して、具体的に示して説明したが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書における構成および細部における様々な変更を行うことができることを、当業者は理解するであろう。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2005年1月20日出願の米国特許仮出願第60/645359号の利益を主張する、2006年1月20日出願の米国特許出願第11/337105号、現在では米国特許第7414779号、の継続出願である、2008年7月28日出願の米国特許出願第12/220898号の一部継続出願である、2008年10月22日出願の米国特許出願第12/288715号の継続出願である。上記出願の全教示は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
政府助成
本発明は、空軍科学研究局(the Air Force Office of Scientific Research)により授与された、認可番号FA9550−07−1−0014およびFA9550−07−1−0101、国立保健研究所(National Institutes of Health)により授与された認可番号RO1−EY011289およびR01−CA75289−12、ならびに国立科学財団(National Science Foundation)により授与された認可番号BES−0522846の下での政府助成により行われたものである。
【背景技術】
【0003】
多くの産業および研究の技術領域において、精密な測定値およびイメージングを得るために様々なシステムや装置が使用されている。精度に対する必要性と合わせて、高速のデータ収集への要求もある。これらの2つの基準を満たすために、多くの波動方式(wave−based)技術が使用されている。特に、大抵において光の形態であることが多い電磁放射が、測定データを得るために異なる応用システムにおいて使用されている。代表的な応用システムとしては、光コヒーレンス断層撮影法(OCT:optical coherence tomography)およびその他の干渉に基づく手法が挙げられる。
【0004】
しかしながら、異なる測定応用システムは、満足できる結果を得るために、追加の条件を必要とすることが多い。電磁放射の発生源およびその結果としての出力波動特性は、一連のパラメータについて不十分であることが多い。例えば、発生源によっては、パワーが低いか、または利用可能なスペクトル強度の一部分だけを使用する波動を生成するものがある。線幅の制限は、その他の波動発生源に問題を引き起こす。その結果として、多くの産業上および技術上の応用が、システムの波動発生構成要素によって制限されている。
【発明の概要】
【0005】
したがって、電力配送を改善し、利用可能なスペクトルの使用を拡大した波動源に対するニーズがある。さらに、高速で精密な測定または画像化を行うことを可能にし、また様々なシステムパラメータを安定させる、装置、システム、および方法に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例示的実施形態においては、フーリエドメインモードロッキング(FDML)レーザの動作をFDMLパラメータを制御することによって安定化させる制御システムおよびこれに対応する方法を提示する。このシステムには、FDMLレーザからのレーザ出力から周期的に波長掃引された光場を受けるように構成することができる光測定装置を含めてもよい。この光測定装置は、測定パラメータを特定するように構成してもよい。このシステムにはさらに、光測定装置と通信することができる比較装置を含めてもよい。この比較装置は、測定パラメータを比較パラメータと比較するように構成してもよい。この比較装置は、比較の結果の関数としてエラー信号を発生するようにさらに構成してもよい。このシステムにはまた、比較器と通信して、エラー信号の関数としてFDMLレーザの動作の制御パラメータを調整する制御信号を発生することができる、レーザ制御装置を含めてもよい。
【0007】
例示的実施形態は、FDMLレーザにおけるFDML動作のための制御信号を再生可能に発生させるシステムおよびこれに対応する方法を含んでもよい。このシステムには、光測定装置を含めてもよい。このシステムにはまた、光測定装置と通信する電子処理装置を含めてもよい。この電子処理装置は、測定パラメータの関数として直接制御信号を発生するように構成してもよい。このシステムには、電子処理装置と通信して、制御信号の関数としてFDMLレーザの動作の制御パラメータを調整するレーザ制御装置も含めてもよい。
【0008】
例示的実施形態において、FDMLレーザにおいてFDML動作のための制御信号を発生するシステムには、光測定装置を含めてもよい。このシステムには、さらに、測定パラメータに基づいて、非正弦波出力制御信号を生成し、FDMLレーザの同調可能波長選択フィルタの時間対波長同調特性を調整するように構成された電子処理装置を含めてもよい。
【0009】
例示的一実施形態においては、電子処理装置は、測定パラメータに基づいて、時間依存利得制御信号を生成し、FDMLレーザのレーザ利得要素を調整して、レーザの強度対波長出力を制御するように構成してもよい。
【0010】
例示的実施形態は、FDMLレーザにおける遅延ファイバの偏光色度(polarization chromaticity)および楕円偏光リターダンス(elliptical polarization retardance)を管理する制御システム、および対応する方法を含んでもよい。この制御システムには、FDMLレーザからの出力を受けて、レーザ出力に基づいて、測定偏光状態を特定するように構成することができる偏光状態分析装置を含めてもよい。このシステムにはまた、測定偏光状態を受けて、測定偏光状態に基づいて偏光制御信号を発生するように構成することができる処理装置を含めてもよい。このシステムにはさらに、偏光制御信号の関数として光の偏光状態を変化させるように構成することができる能動偏光制御器を含めてもよい。
【0011】
例示的実施形態は、また、FDMLレーザにおける遅延ファイバの偏光色度および楕円偏光リターダンスを受動的に管理する制御システムおよび対応する方法を含んでもよい。このシステムには、レーザからレーザ出力を受けるように構成することができる第1の分散要素を含めてもよい。この分散要素はさらに、それぞれの波長に対してそれぞれの偏光回転を与えて、空間的に分散した光を生じるように構成してもよい。このシステムにはまた、空間的に分散した光を受けることができて、それぞれの波長成分に、直交偏光状態のそれぞれの差動位相リターデーションを与えるように構成することができる複屈折材料のくさび(wedge)を含めてもよい。
【0012】
例示的実施形態において、偏光色度および楕円偏光リターダンスを受動的に管理する制御システムには、FDMLレーザからレーザ出力を受けるように構成することができる、結合装置を含めてもよい。このシステムには、また、それぞれが複数のファイバループを含むことができる、複数の複屈折ユニットを含めてもよい。各複屈折ユニットは、レーザ出力のそれぞれの波長に対して、それぞれの偏光回転を与えるように構成してもよい。このシステムにはまた、一対の複屈折ユニットの間にそれぞれを配置することができる、複数の反射器を含めてもよい。これらの反射器は、異なる波長成分が異なる複屈折を受けるそれぞれの位置において、レーザ出力のそれぞれの部分を反射して戻すように構成してもよい。
【0013】
例示的実施形態はさらに、FDMLレーザにおける遅延ファイバの偏光色度および楕円偏光リターダンスへの感度を低減した光を発生させるFDMLレーザを含んでもよい。このFDMLレーザには、特定の波長を有する波動を増幅するように構成することができる利得要素を含めてもよい。このレーザにはまた、利得要素と通信することができる、時変型の同調可能波長選択フィルタ(time varying tunable wavelength selective filter)を含めてもよく、この同調可能フィルタ要素は、波動を選択的にフィルタリングするように構成してもよい。このレーザにはさらに、同調可能フィルタ要素および利得要素と通信することができるフィードバック要素を含めてもよい。このレーザにはさらに、FDMLレーザのキャビティの内部の波長掃引光波形を、遅延ファイバ中を2つの異なる方向に伝播するように誘導するように構成することができる少なくとも1つの光学要素を含めてもよい。
【0014】
他の例示的実施形態は、FDMLレーザの波長掃引波形を修正するシステムを含んでもよい。このシステムには、FDMLレーザの波長掃引波形を、少なくとも2つの部分に分離することができる分離光学要素を含めてもよい。このシステムにはまた、それらの少なくとも2つの部分の間に時間遅延を導入することができる遅延要素を含めてもよい。このシステムにはさらに、時間遅延を導入するのと同時に、少なくとも2つの部分を再結合することができる再結合要素を含めてもよい。
【0015】
例示的実施形態はさらに、FDMLレーザにおける調整式同調可能光学フィルタの掃引周波数をFDMLレーザのキャビティの光往復時間と同期させる制御システムおよび対応する方法を含んでもよい。このシステムには、FDMLレーザの測定過渡出力強度を検出することができる光検出器を含めてもよい。このシステムにはまた、光検出器と通信して、測定過渡出力強度を比較パラメータと比較することができる比較装置を含めてもよい。この比較装置は、比較の関数としてエラー信号を生成して、FDMLレーザの同期波形ドライバの掃引周波数を調整するように構成してもよい。
【0016】
例示的実施形態はまた、FDMLのキャビティの内部のファブリペローフィルタ(Fabry Perot filter)のDC電圧を調整する制御システムおよび対応する方法を含む。このシステムには、波長選択フィルタと通信する少なくとも1つの光検出器を含めてもよい。このシステムにはまた、少なくとも1つの光検出器と通信して、光検出器からの信号のタイミングを、FDML出力掃引と既知の位相関係を有する固定クロックのタイミングと比較することができる比較装置を含めてもよい。この比較装置はさらに、比較の関数として、ファブリペローフィルタのDCオフセット電圧を調整するエラー信号を発生するようにさらに構成してもよい。
【0017】
他の例示的実施形態は、離散的な一連の光周波数にわたって段階状に掃引される光を発生させる、FDMLレーザおよび対応する方法を含む。このレーザには、特定の波長を有する波動を増幅するように構成することができる利得要素を含めてもよい。このレーザにはまた、利得要素と通信する、時変型で調整式の同調可能波長選択フィルタ要素を含めてもよい。この同調可能フィルタ要素は、波動を選択的にフィルタリングするように構成することができ、このフィルタ要素は、時変的、反復的かつ周期的な方法で周期Tと同調させてもよい。この同調可能フィルタ要素はまた、任意に選択することができる離散的な狭い波長帯域内で選択可能な方法で波動をフィルタリングするように構成してもよい。このレーザにはまた、同調可能波長選択フィルタ要素と通信する補助波長選択フィルタ要素を含めてもよい。この補助フィルタ要素は、波動を選択可能な方法でフィルタリングするように構成してもよく、この場合に、この補助フィルタ要素は、利得要素の利得帯域幅内で複数の透過極大を有してもよい。このレーザにはさらに、補助フィルタ要素および利得要素と通信する、フィードバック要素、ならびに時変型で調整式の同調可能波長選択フィルタ要素を含む回路を含めてもよい。補助波長選択フィルタ要素、利得要素およびフィードバック要素は、波動が回路を通過して伝播する往復時間が周期Tの非ゼロの整数倍に実質的に等しい構成にすることができる。
【0018】
前述したことは、異なる図を通して同一の参照符号は同一の部品を示す、添付の図面に図示されるように、本発明の例示的実施形態についての以下に示すより具体的な説明から明白になるであろう。図面は、必ずしも寸法どおりではなく、本発明の説明のための実施形態が強調されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】フーリエドメインモードロックされたレーザなどの波長掃引レーザにおいて同調周期と往復時間とをマッチングするためのシステムを示す概略図である。
【図2】例示的な一実施形態に係る動的フィードバック最適化を用いた制御システムの概略図である。
【図3A】基準波長到達時間の測定を示すグラフである。
【図3B】基準波長到達時間の測定を示すグラフである。
【図4】例示的一実施形態による動的再生式最適化(dynamic regenerative optimization)を用いる制御システムの概略図である。
【図5A】例示的実施形態による一方向システム用の時間多重化出力を示すグラフである。
【図5B】例示的実施形態による一方向システム用の時間多重化出力を示すグラフである。
【図6】例示的な一実施形態に係る時間多重化出力を有するリングキャビティの概略図である。
【図7】例示的な一実施形態に係る準周期的波形を使用する一方向波長掃引の作成を示すグラフである。
【図8】例示的な一実施形態に係る動的フィードバック最適化を用いる別の制御システムの概略図である。
【図9】例示的な一実施形態に係る分散管理のための分散補償器を特徴とするレーザシステムの概略図である。
【図10】改善された分散補償および/または混合フィードバックのための複数遅延要素を特徴とするレーザシステムの略図である。
【図11】例示的実施形態において、FDMLレーザキャビティにおける分散を補償するために、波形持続時間が順次変更されている駆動波形の使用を図解する波形図である。
【図12】例示的実施形態において、FDMLレーザキャビティにおける分散を補償するために、波形持続時間が順次変更されている駆動波形の使用を図解する波形図である。
【図13】例示的実施形態に係る偏光色度管理の能動的方法を用いる制御システムの略図である。
【図14】例示的な一実施形態に係る偏光色度の受動的最少化に使用されるレーザキャビティ設計の概略図である。
【図15】例示的実施形態に係る偏光色度の直接補償に使用することができる光学要素の図である。
【図16A】例示的実施形態に係る偏光色度管理に使用される光学式二重光路制御システムの概略図である。
【図16B】例示的実施形態に係る偏光色度管理に使用される光学式二重光路制御システムの概略図である。
【図17】例示的実施形態に係る偏光色度管理に使用されるキャビティ内マッハツェンダー干渉計(MZI:Mach−Zehnder interferometer)の概略図である。
【図18】例示的実施形態に係るMZIの3つのそれぞれの設計基準を用いた図17のMZIの3つの動作体系の説明例である。
【図19A】例示的実施形態に係るレーザ掃引速度を増大させるのに使用されるキャビティ内およびキャビティ外のMZI列の概略図である。
【図19B】例示的実施形態に係るレーザ掃引速度を増大させるのに使用されるキャビティ内およびキャビティ外のMZI列の概略図である。
【図20】例示的実施形態に係るFDMLレーザの段階的同調を示すグラフである。
【図21】他の例示的実施形態に係るFDMLレーザの段階的同調を示すグラフである。
【図22】例示的実施形態に係る段階的同調可能出力を生成するように構成されたFDMLレーザの説明例を示す概略図である。
【図23】例示的実施形態に係る段階的同調FDMLレーザのフィルタ特性を示すグラフである。
【図24】他の例示的実施形態に係る段階的同調FDMLレーザのフィルタ特性を示すグラフである。
【図25】段階的同調FDMLレーザへの分散の影響を示すグラフである。
【図26】例示的実施形態に係る段階的同調FDMLレーザ用、および分散を補償するためにも使用することができる補助フィルタの概略図である。
【図27】例示的実施形態にに係る段階的同調FDMLレーザ用、および分散を補償するためにも使用することができる補助フィルタの第2の概略図である。
【図28】例示的実施形態に係る段階的同調FDMLレーザによって生成される光周波数段階の大きさを測定するための装置を示す概略図である。
【図29】周波数段階特性が掃引毎に変更される段階的同調FDMLレーザを示すグラフである。
【図30】例示的実施形態に係るデータ取得およびデータ表示の説明例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の例示的実施形態の説明を以下に示す。本明細書において引用したすべての特許、公開された出願および文献の教示は、その全文が参照により組み込まれている。
【0021】
以下において、用語「フーリエドメインモードロックレーザ」または「FDMLレーザ」は、2006年1月20日に出願され、現在は米国特許第7414779号となっている、米国特許出願第11/337105号、「Fourier Domain Mode Locking: Method and Apparatus for the Generation of Fast Frequency Swept Waveforms and Chirped Pulses by Resonant Frequency Tuning」に記載された装置を指している。
【0022】
FDML動作またはFDMLレーザの出力に関する場合には、以下で用いる用語「掃引(sweep)」または「同調(tune)」は、時間経過による光周波数の、またはそれと等価に、時間経過による光波長の、制御された変化を意味すると解釈されるべきである。「掃引」または「同調」は、光周波数が時間において連続的に変化する場合、または光周波数が時間において段階的に不連続に変化する場合を意味することもできる。
【0023】
例示的なFDMLシステムが図1に示されている。システム10は、共振周波数同調を使用するフーリエドメインモードロッキング(FDML)に好適である。図に示すように、回路Cは増幅器/利得媒体(5’)を同調可能フィルタ(6’)と接続して、増幅器内でのフィードバックを容易にする。波動の往復時間Tgは、回路C内のフィルタ位置を基準にして測定される。同調周期または掃引周期Tswは周期的時間であり、その間に、周波数の変化する波動を選択的に通過させるようにフィルタ要素が同調されている。TgおよびTswは、実質的に等しいか、またはTswは、Tgの高次の高調波である。この関係は次のように表すことができる。
n・Tsw=Tg
ここで、nは正の非ゼロ整数であり、Tswは掃引周期または同調時間であり、Tgは波動の群往復時間である。フィルタ掃引または変化の周期と、群往復時間とは同期されている。群往復時間Tgは次式:
Tg = L/νg
によって求められ、ここでνgは群速度であり、フィードバックラインまたはキャビティの長さがLである。結果として、フィードバックは、それ自体で1回の掃引の範囲内ではなく、2回の掃引の範囲内である。キャビティ内のフィードバック遅延ラインは、標準的な周波数掃引発生源と異なり、完全掃引の全周波数を「記憶」する。
【0024】
フィルタを透過した周波数は1周して、フィルタが同一周波数位置にある時間にフィードバックされる。波動は、フィルタが同調される度毎に増強する必要がない。この方法を使用すると、キャビティは、キャビティ寿命時間とは独立に、周波数において迅速に掃引されることが可能である。これによって、狭い瞬間ライン幅が生じる。順次掃引間の一定の位相関係によって、2回の掃引の間の干渉信号を観測することができる。このことは、通常、標準的な同調可能な周波数発生源においては不可能であり、それは、これらの2回の掃引には相互に明確な位相関係がないからである。
【0025】
フィルタ要素が連続的に同調され、往復時間と同期して駆動される場合には、出力は、時間経過に対して周波数における一連の長い掃引である。各掃引内の瞬間スペクトルは狭域であるので、瞬間コヒーレンス長は非常に長い。反復フィードバックと組み合わせると、これによって、周波数掃引または周波数変化の範囲にわたるモード間の一定位相比が得られる。こうして、モードが位相ロックされる。
【0026】
一般に、非常に狭域の反復的フィルタリングの場合には、掃引の全スペクトル範囲にわたり、すべてのモードをロックすることが予測される。より典型的な場合に対しては、フィルタ機能の帯域幅内で、モードの位相のジッタ(jitter)が通常、発生する。しかしながら、フィルタ機能の幅よりも大きくスペクトル上で離間されている、モード間の位相相関が、フィルタリングによって得られる。フィルタ機能内の全モードの平均位相が、フィルタの異なるスペクトル位置に対して安定化されロックされる。
【0027】
以下の段落において説明する例示的実施形態は、FDMLパラメータを制御または調節することによって、フーリエドメインモードロッキング動作を改善または安定化することを支援する。FDMLレーザは、その他のタイプのレーザでは見られない特有の制御システムを用いる。これらの特有の制御システムを適用することによって、FDMLによって生成される出力光の特性も、その他のタイプのレーザでは可能ではない方法で、修正また最適化することができる。例えば、キャビティ内同調可能フィルタの駆動信号または制御信号を適当な方法で管理することで、FDML動作を安定化させることができる。さらに、レーザ媒体の利得特性を制御して、FDMLレーザに典型的な強化コヒーレンス特性を最適化することができる。さらに、FDMLレーザに特有なこととして、全体分散と楕円偏光リターダンスとを、記載の例示的実施形態における方法および装置を使用してバランスさせることができる。例示的実施形態は、FDMLレーザのパラメータに対して、専用の制御システムおよび方法を用いることができ、またFDMLレーザの特有の出力特性を使用して、制御のためのエラー信号を発生させるか、または再生可能駆動信号生成器に対する種信号を発生させてもよい。
【0028】
実験結果によると、FDML動作は、一部の動作パラメータに対して敏感であることがわかっている。その他のタイプの周波数掃引レーザまたはその他のタイプのレーザ一般と比較すると、FDMLレーザは、一部の動作パラメータに対してはるかに敏感であることが多い。例示的実施形態は、FDML動作用のパラメータを安定化させる方法および装置に関し、そのようなパラメータとしては、それに限定はされないが、フィルタ掃引波形、同調またはステッピング周波数および速度、対応する掃引の中心波長、ならびに合計同調範囲または振幅が挙げられる。レーザ利得媒体を変調することによって、スペクトル出力形状を制御することができる。これは、FDML動作においてのみ可能であり、その他のタイプのモードロック型のレーザでは可能ではなく、その理由は、FDML動作においては、全波長掃引がキャビティの内部に記憶されるためである。したがって、異なる波長の光が、異なる時間にレーザ利得媒体を通過し、それによって、レーザ利得媒体に時間変化する修正信号を付加することで、出力スペクトル形状を修正または成形する能力を与える。
【0029】
FDML動作のもう1つの特有の特徴は、通常、数キロメートルの長さの長い光ファイバを組み入れていることである。このファイバは、楕円偏光リターダとして作用し、この場合に、キャビティ内の一組の波長が、キャビティ内の別の組の波長と異なる量の偏光回転を受ける。レーザ利得媒体は、入力光の偏光に応じて、通常、異なる量の利得を生成するので、FDMLレーザに特有の楕円偏光リターダンスは、出力スペクトル形状において望ましくない変化をもたらす。
【0030】
FDML動作についてのこれらの問題に対処するために、専用の制御の方法および装置ならびに新規なFDMLレーザキャビティ設計について、例示的実施形態において説明する。FDMLレーザは、通常は数メガヘルツ未満の低い反復率を示すので、電子処理およびスケーリング技法を応用して、所望の制御信号を発生させることができる。異なる波長成分が、異なる時間にFDMLレーザから外に結合されるので、波長選択性要素を必要とすることなく、簡単な光測定装置による間接的なスペクトル検出を用いることができる。さらに、FDML出力の特性を記述するために、光学帯域通過フィルタなどの波長選択性装置を使用する場合には、簡単な光測定装置で時間ジッタの測定をすれば、波長ジッタおよび波長ドリフトを入手するのに十分である。
【0031】
同調可能フィルタ制御信号の動的最適化
フーリエドメインモードロッキング(FDML)レーザの時間経過における安定かつ最適な動作を保証するために、同調可能フィルタ要素の動作を制御する電子信号への周期的または連続的な調整を行うことが必要となる場合がある。これらの制御信号調整により、広範囲の時間尺度において発生する可能性のある、環境変化や構成部品特性におけるドリフトを補償することができる。例えば、同調可能フィルタ要素としてファブリペローフィルタが使用される場合には、調整を必要とする制御信号としては、AC駆動電圧およびDC電圧オフセットが挙げられる。図1は、共振周波数同調を使用するFDML動作に好適なシステム10を説明している。
【0032】
同調可能フィルタ制御信号を動的に最適化するのに使用できる2つのクラスの技法がある。両方のクラスの技法において、レーザ性能の特性を記述するために、レーザキャビティから外に結合される光の部分について、1回または複数回の測定を行ってもよい。測定パラメータは、1つの波長またはある数の波長において測定された時間平均強度とするか、ある数の波長に対して平均化された時間平均強度、スペクトル中心波長またはその他のスペクトル特性、位相測定値、またはその他任意好適な光の特性とすることができる。
【0033】
a)フィードバック最適化技法
図2は、「フィードバック技法」と呼ぶことができる第1のクラスの最適化技法を使用する制御システム20を示す。この制御システム20には、2006年1月20日に出願され、現在は米国特許第7414779号となっている米国特許出願第11/337105号、および2008年7月28日に出願され、本出願がそれに対して部分係属となっている、米国特許出願第12/220898号に記載されたFDMLキャビティと類似のFDMLレーザキャビティ21を含めてもよい。レーザ性能の特性を記述するために、レーザ出力23をレーザキャビティ21から結合してもよい。レーザ出力は、周期的に波長掃引される光場の形態とすることができる。レーザ出力23は、光測定装置25に誘導される。光測定装置25は、光ダイオードまたは、光検出用として当該技術において知られているその他任意の装置とすることができる。光測定装置25は、測定パラメータ27を特定するために、レーザ出力23を解析するように構成してもよい。
【0034】
フィードバック技法においては、測定パラメータ27を使用して、比較器要素Cによって測定パラメータ27を演算子または所定の比較パラメータ31と比較することによって、エラー信号29を発生させる。比較器要素Cは、演算増幅器とするか、または信号比較用の当該技術で知られている、その他任意の装置とすることができる。比較器要素Cは、電子算術演算、電子論理演算、または両者の組合せを実行することができる。比較パラメータCは、既知の所望のパラメータ、または前回に測定されたパラメータとすることができる。
【0035】
比較が行われると、レーザ制御装置(例えば、同期波形ドライバ)35に入力するのに適当なパワーレベルにエラー信号29を調整するために、エラー信号29は、電子スケーリングユニット33によってスケーリングされる。レーザ制御装置35は、FDMLレーザキャビティ21の動作を調整するために使用される、制御信号37の新規の設定を定義するように構成してもよい。制御信号37は、同調可能フィルタ制御信号、利得制御信号または偏光制御信号の形態の他に、調整可能なその他の任意のFDMLパラメータであってもよい。反復的にこの操作を実行することによって、エラー信号が最小値まで減少して、FDMLレーザが、最適な状態で安定して動作することになる。
【0036】
説明用の一例において、測定パラメータは、FDMLレーザの同調範囲にほぼ対応するある数の波長について平均化された時間平均強度(「出力パワー」)またはある数の掃引について平均化されたFDMLレーザの位相相関(「位相相関」)としてもよい。同調可能フィルタ要素は、ファブリペロー、ファイバファブリペローまたは当該技術において知られているその他任意のフィルタとすることができる。この場合には、エラー信号は、現在の出力パワーまたは位相相関を、前回に測定された出力パワーまたは位相相関と比較することによって生成することもできる。平均出力パワーまたは位相相関の減少が発生すると、エラー信号の絶対値が増加することになる。次いで、ファブリペローフィルタ制御信号のAC駆動電圧成分の周波数が、エラー信号の絶対値を最小化するように、調整される。フィードバック技法のすべての特定の実現形態を、比例・積分・微分(PID)フィードバックループなどの周知の制御システムアーキテクチャを使用して安定で迅速な応答を与えることによって、強化することもできる。
【0037】
同調可能フィルタ制御信号のAC駆動電圧成分の周波数を制御することに加えて、同調可能フィルタ制御信号のDCオフセット成分を制御することにも便益がある場合がある。DCオフセット成分は、同調可能フィルタがその範囲で同調される波長の範囲の中心波長を調整する。したがって、DCオフセット成分の制御を使用して、時間の経過と共に反復的にレーザが所望の波長領域に同調することを確実にすることができる。変化する熱的条件、同調可能フィルタのエージング、レーザ利得媒体利得スペクトルにおける変化、その他影響などの要因が、すべて、FDML出力スペクトルの中心波長における変動に寄与する可能性がある。同調可能フィルタ制御信号のDCオフセット成分を適当に制御することによって、これらの望ましくない影響に対する対策をして、出力スペクトルの中心波長を安定化することができる。
【0038】
フィードバック技法を使用して同調可能フィルタ制御信号のDCオフセット成分を制御するために、測定パラメータまたは比較パラメータは、1つもしくは複数の波長、1つもしくは複数の時間またはその他のパラメータとすることができる。
【0039】
測定パラメータが波長であるDCオフセット制御技法の一説明例においては、測定パラメータを、レーザ出力のスペクトル中心波長として、同調可能フィルタ要素をファブリペローフィルタとすることもできる。光測定装置は、レーザ出力の一部分を解析して、検出されたスペクトルの中心波長を特定する分光計とすることもできる。比較パラメータは、既知の所望の中心波長とすることができる。エラー信号は、現在の中心波長を所望の中心波長と比較することによって発生させることもできる。測定された中心波長が所望の値から逸脱した場合には、エラー信号の絶対値が増加することになる。次いで、同調可能フィルタ制御信号のDCオフセット成分が、エラー信号の符号に応じて、エラー信号を最小化するように調節される。検出スペクトルにおける様々な位置において複数波長を測定して、これらを複数の所望の波長と比較してエラー信号を形成するなど、この方法の変形形態が可能である。
【0040】
測定パラメータが時間であるDCオフセット制御技法の一説明例においては、測定パラメータを、FDMLレーザ出力内での固定波長または波長群の到達時間とすることもできる。光測定装置には、ブラッグ格子またはその他の光学帯域通過フィルタなどの1つもしくは複数の狭帯域波長選択要素およびフィルタリングされた光を検出する1つもしくは複数の光検出器を含めることもできる。このようにすれば、光測定装置は、FDMLレーザ出力において固定波長または波長群が生成される時点または複数の時点を示す1つまたは複数の電子信号を生成することもできる。より具体的には、固定波長は、FDMLレーザ出力の所望の中心波長とし、測定時間は、中心波長が生成される時間に対応させることもできる。すなわち、レーザ出力が、特定の波長を有する時間を示す過渡信号を検出するように、光測定装置を構成してもよい。
【0041】
比較パラメータは、同調可能フィルタ駆動信号と既知の位相関係を有する固定クロックによって発生するタイミング信号とすることもできる。例えば、固定クロックとしては、同調可能フィルタ駆動信号の各周期の開始時に発生する電子パルスを挙げることもできる。比較器は、中心波長の到達時間を、同調可能フィルタ駆動周期の開始に対応する時間と比較することによって、エラー信号を発生することもできる。所与の同調可能フィルタ駆動周波数に対して、測定パラメータと比較パラメータとの差が固定されたままである必要がある。固定クロックを基準として測定された到達時間にずれが生じると、エラー信号の絶対値が増加することになる。次いで、同調可能フィルタ制御信号のDCオフセット成分が、エラー信号の符号に応じて、エラー信号を最小化するように調整される。
【0042】
測定パラメータが時間であるDCオフセット制御技法の第2の説明例において、測定パラメータは、前方と後方の掃引方向の間のFDMLレーザ出力内の固定波長の到達時間における差とすることもできる。FDMLレーザの実施形態によっては、同調可能フィルタに適用される周期駆動波形は、駆動波形の各周期中に、前方掃引(短波長から長波長)および後方掃引(長波長から短波長)を生成する。この場合には、光測定装置としては、ブラッグ格子またはその他の光学帯域通過フィルタなどの狭帯域波長選択要素およびフィルタリングされた光を検出する光検出器を含めることもできる。波長選択要素は、前方および後方の掃引方向において所望の中心波長が発生したときに、光ダイオードが電子信号を生成するように、FDML出力の所望の中心波長を選択するように構成することもできる。
【0043】
図3AおよびBは、この特定の例に対する測定パラメータDTの発生について説明する。FDMLレーザ出力の波長WLは、時間Tの関数として変化する。光測定装置内の光検出器は、所望の中心波長が前後方向掃引中に生成されるときに脈動する電子信号I(PD)を生成する。測定パラメータDTは、1つのI(PD)パルスと前回のI(PD)パルスの到達時間の差である。比較パラメータは、測定パラメータの前回の値とすることもでき、エラー信号は、測定パラメータと比較パラメータとの差とすることもできる。図3Aは、レーザが望みどおりに動作しており、FDML出力の実際の中心波長が、所望の中心波長に等しい場合を説明している。所望の中心波長が、前方掃引および後方掃引の中央で発生するので、I(PD)パルス同士の間隔は等しい。I(PD)パルス間隔が等しいので、DTの各値は実質的に同じであり、比較パラメータの各値は、測定パラメータの各値に等しく、エラー信号はゼロである。
【0044】
図3Bは、レーザが望みどおりに動作していない場合を説明しており、FDML出力の実際の中心波長は、所望の中心波長に等しくない。I(PD)パルス間隔は等しくなく、したがって連続するDTの値は等しくない。エラー信号は、この場合には非ゼロとなる。次いで、同調可能フィルタ制御信号のDCオフセット成分が、エラー信号の符号に応じて、エラー信号を最小化するように調整される。
【0045】
b)再生式最適化技法
図4は、「再生式技法」と呼ぶことができる、第2のクラスの最適化技法を使用する別の制御システム40を説明している。制御システム40には、FDMLレーザキャビティ21を含めてもよく、そこでは、レーザ出力23がキャビティ21から出るように連結されて、光測定装置25に入力される。光測定装置25は、電子処理ユニット41に直接適用することができる測定パラメータ27をもたらすことができる。
【0046】
再生式技法において、測定パラメータ27は、ユニット41による電子処理の後にレーザ制御装置35に直接的に適用され、レーザ制御装置35は、次いで制御信号37を供給する。図2に関して考察したように、制御信号37は、同調可能フィルタ制御信号、利得制御信号、または偏光制御信号の形態の他に、調整することができるその他任意のFDMLパラメータとしてもよい。その後に、制御信号37は、FDMLレーザ動作を制御するために、キャビティ21内の同調可能フィルタ要素に適用してもよい。
【0047】
再生式最適化技法は、制御構造が簡略化されている、および、通常は、最適制御信号設定における変化に対して応答時間が速いという利点を有する。このクラスの最適化技法においては、測定パラメータは、FDMLレーザキャビティ内部の特定の同調可能フィルタ要素により要求される制御信号と適切にマッチングさせてもよい。例えば、ファブリペローフィルタが同調可能フィルタ要素として使用される場合に、このファブリペローを制御するのに、AC駆動電圧およびDC電圧オフセットを使用してもよい。したがって、測定パラメータは、ファブリペローフィルタ制御するのに好適なAC駆動電圧および/またはDC電圧オフセットを発生する能力がある。
【0048】
一説明例において、光測定装置は、レーザキャビティの往復時間に対応する周波数よりも大きな帯域幅を有する高速光ダイオードとすることもできる。測定パラメータは、FDMLレーザ出力の時間ドメイン無線周波数(RF)強度となる。このRF信号には、レーザキャビティの往復時間に対する周波数成分およびこの周波数の整数倍を含めてもよい。この状況は、FDMLレーザ発振動作なしでも、例えば、駆動信号が同調可能フィルタ要素に適用されないときにも、発生することがある。電子処理ユニットには、レーザキャビティの往復時間に対応する周波数を中心とするある範囲の周波数を実質的に透過する電子帯域通過フィルタを含めることもできる。電子処理ユニットには、さらに、得られる信号が同調可能フィルタ要素を駆動するのに十分なパワーを含むことを確実にするために、増幅ステージを含めることもできる。電子処理ユニットにはまた、ファブリペローフィルタを特に駆動するために、DC電圧オフセットの印加を含めることができる。この配設を使用すると、最適AC駆動周波数における変動が、同調可能フィルタ要素に即座に伝送されて、補正される。
【0049】
性能改善のための知的駆動方法
FDMLレーザの同調可能フィルタ要素および利得媒体は、同調可能フィルタ要素および利得媒体の具体的なタイプに応じて、様々な波形で駆動することができる。例えば、ファブリペローフィルタが同調可能フィルタ要素として使用される場合に、使用することができる1つのタイプの波形は、追加のDC電圧オフセットを含むAC正弦電圧波である。利得媒体が半導体光学増幅器(SOA)である場合には、DC電流を駆動波形として使用してもよい。なお、その他のタイプの駆動波形をこれらの要素に適用することも可能である。さらに、FDMLレーザ性能を改善するために、波形または波形の変調を選んでもよい。
【0050】
a)一方向周波数掃引を発生させる方法
FDMLレーザのいくつかの実施態様の望ましくない特性の1つは、双方向波長掃引である。双方向掃引は、同調可能フィルタ要素の動作のモードの結果である。例えば、同調可能フィルタ要素がファイバファブリペロー(FFP)フィルタである場合に、フィルタ内のファイバは、それが同調されるときに、物理的に前方および後方に移動する。結果的に、レーザは、方向が短波長から長波長(「前方掃引」)へ、続いて長波長から短波長(「後方掃引」)の方向に交番する波長掃引を生成する。FDMLレーザの掃引周波数が増大されると、一方の掃引方向の性能が、他方の掃引方向に対して低下する。このことは、以前から知られている従来型掃引波長レーザ発生源についても当てはまる。すなわち、低下を防止するために、例示的実施形態においては、一方向波長掃引を使用してもよい。
【0051】
一方向波長掃引を創出する一方法は、FDMLキャビティを複数区域に分割し、利得媒体を矩形パルストレインで変調することによる。図5Aに示すように、一方向周波数掃引は、時間多重化によって、レーザ出力をレーザ出力の遅延バージョンと結合させ、レーザの利得を適切に変調することによって達成可能である。図示した例においては、正弦周波数掃引(曲線上の点1から点2)の立上がりエッジの間に出力が得られるように、レーザ利得が変調される。次いで、レーザ出力は、レーザの往復時間の半分(Trep/2)だけ遅延された出力と結合される。これによって、図5Bに示される結合出力が生成され、周波数掃引がレーザの反復率の2倍で、Trep/2毎に発生し、周波数掃引が低周波数から高周波数へと一方向に発生している。
【0052】
時間多重化を、レーザの出力を分割し、一方の出力を時間遅延させ、それらを結合することによって行ってもよい。この作用は、アンバランスマッハツェンダー干渉計(図示せず)などの装置によって実行することができる。しかしながら、レーザそれ自体から直接的に時間多重化を実行することも可能である。図6は、2つの時間遅延出力を発生するリングレーザ構成を示す。このリングレーザは、利得G、フィルタF、アイソレータISO、ファイバ遅延L1、カプラC1、第2ファイバ遅延L2、カプラC2および2つの出力を結合するコンバイナ(combiner)C3を含む。このコンバイナは、ファイバカプラ、偏光ビームスプリッタ、または後続の偏光ビームスプリッタアセンブリを備えたポッケルスセル(Pockels cell)のような能動光学スイッチング要素とすることができる。音響光学的偏向器(acousto−optic deflector)を2つのポート間の切り換えに使用することもできる。
【0053】
リングの合計往復遅延は、リング内のその他の構成要素からの追加の遅延を含めて、2つの遅延長L1およびL2におけるファイバの長さによって決まる。カプラC1およびC2からの2つの出力の間の相対遅延は、ファイバ遅延L2の長さによって決まる。カプラC1およびC2のカップリング比は、減衰損失を考慮しながら、連結されて出された強度を等しくするために、違えて選ぶことができる。カプラC3のカップリング比は、カプラC1およびC2からの2つの出力から結合された強度を等しくするように、最適化することもできる。カプラC3は、2つの出力を等しく結合する場合には、約1/2の損失を有することになる。この例は、2つの時間多重化出力に対して示されたが、このキャビティ構成は、多数の出力を時間多重化するのに一般化することができる。偏光制御器(図示せず)を使用して、必要であれば、時間多重化出力の偏光が含まれることを確実にすることができる。
【0054】
他の例示的実施形態においては、図7に示すように、準周期的波形を同調可能フィルタ要素に適用することによって、一方向掃引を作り出すことが可能である。この配設においては、所望の掃引方向(余弦波の最初の半分など)を作り出す役割を負う駆動波形の部分が、周期的に同調可能フィルタ要素に適用されることになる。図7において、このことは、時点1〜2、3〜4、および5〜6の波形区間によって示されている。Trepは、FDMLレーザキャビティの往復時間であり、駆動波形の周期的区間は、持続時間で1/2Trepである。望ましくない掃引方向(余弦波の2番目の半分など)を作り出す役割を負う駆動波形の部分が、非周期的な関数によって置き換えられる。図7において、このことが、時点2〜3および4〜5の間の波形区間によって示されている。代替的に、置換関数を、キャビティの往復時間の整数倍ではない周期で周期的にすることもできる。FDMLレーザ発振動作は、同調可能フィルタ駆動信号がキャビティ往復時間に同期されていないときには発生できないので、レーザ発振は、置換関数が同調可能フィルタ要素に適用される時間中には、発生しないことになる。
【0055】
既知の従来型波長掃引レーザと異なり、FDMLレーザに対して好ましい掃引方向を選ぶことは、非自明である。従来型掃引レーザにおいて、前方掃引方向(短波長から長波長への掃引)は、後方掃引よりも高い出力パワーと低いノイズが得られるので、好ましい場合がある。このことは、当該分野で活動する多数のグループによって一貫して観測されている。(例えば、非特許文献1および2)しかしながら、例示的実施形態において、FDMLレーザに対しては、後方掃引方向が、前方掃引と比較して位相安定性を向上させると共にノイズを減少させるので、好ましい場合がある。
【0056】
b)線形または任意の光周波数掃引対時間を発生させる方法
FDMLレーザの一部の実施形態の第2の望ましくない特性は、レーザ出力の瞬間光周波数と時間との間の非線形関係である。例えば、ファブリペローフィルタが同調可能フィルタ要素として使用され、DC電圧オフセットを有する正弦波が駆動信号として使用される場合には、結果として生じる周波数掃引もまた、正弦関数である。多くの応用において、非線形周波数掃引の結果として、追加の信号処理の必要性や性能劣化が生じる。このことは、異なる光周波数がレーザ出力において異なる量の時間だけ、存在するために起きるものであり、これはレーザ出力の時間分解測定を混乱させる可能性がある。デジタルサンプリング時間が各波長に不均一に割り当てられるので、データ収集も悪影響を受ける。
【0057】
OCTなどの干渉イメージング応用において、非線形周波数掃引を行うと、画像を形成する前に、追加の処理ステップを実行して、検出された干渉信号を均一な光周波数間隔を有するグリッド上にサンプリングし直すことが必要となる。これらおよび他の理由によって、FDMLレーザに対しては、したがって瞬間光周波数が時間と線形である出力掃引を作り出すのが望ましい。
【0058】
例示的実施形態によれば、FDMLレーザを用いて線形周波数掃引を作り出すのに使用できる2つのクラスの技法がある。線形化技法の第1のクラスは、「キャラクタライゼーション技法」と呼ぶことができる。キャラクタライゼーション技法において、同調可能フィルタ要素のRF周波数応答が測定されて、線形周波数掃引を作り出すのに好適な駆動波形を決定するのに使用される。この周波数応答は、(インパルス関数またはステップ関数などの)任意の既知の電子試験波形をフィルタに印加して、次いでそのフィルタの応答を直接的または間接的に観測することによって測定することができる。ファブリペローフィルタの場合には、例えば、フィルタの内部のファイバの動きを直接的に観測するのは、構成部品を分解することなしには困難である。したがって、例示的一実施形態においては、フィルタ応答は、既知のスペクトル形状を有する光をフィルタに通して、その出力を、試験波形が印加されるときの時間の関数として観測することによって間接的に観測することもできる。
【0059】
ファブリペローフィルタの周波数応答の特性を記述する別の方法は、RFスペクトルアナライザを使用して、ファブリペローフィルタのピエゾ電気変換器(PZT)またはその他の作動要素の電子周波数応答を特定する方法である。既知の理論モデルを使用すると、RF振幅および位相スペクトルを使用して機械的応答を予測することができる。
【0060】
さらに別の例示的実施形態によれば、機械的応答を直接的に特定するさらに別の方法は、広帯域光源をファブリペローフィルタ中に連結して、所与の駆動周波数において時間平均された透過スペクトル強度を分光計で測定する方法である。透過スペクトルの幅から振幅応答が得られる。モノクロメータおよび高速光ダイオードを使用すると、機械的および光学的な位相応答を測定することが可能になる。この測定に対して可能な1つの手順は、AC駆動波形をファブリペローフィルタに印加することなく、モノクロメータをファブリペローフィルタの中心位置に設定することである。次いで、ファブリペローフィルタを既知のスペクトルオフセットに設定する。次いで、ファブリペローフィルタおよびモノクロメータの両方を透過した光を、時間分解測定を使用して測定する。印加電子駆動信号と検出光強度との間の測定時間シフトから、電子駆動信号と光透過率との間の位相シフトまたはファブリペローフィルタの機械的応答が得られる。異なる波長において上記の測定を実行すると、ファブリペローフィルタの機械的応答の振幅および位相の特性を実質的に記述することになる。
【0061】
同調可能フィルタ要素の周波数応答がわかると、例示的実施形態によれば、所望の掃引の周波数変換をフィルタの周波数応答によって除算することによって、線形光周波数掃引を作り出すのに必要な駆動波形を得ることができる。次いで、この駆動波形をアナログまたはデジタル波形シンセサイザによって合成することができる。同調可能フィルタ要素の周波数応答を使用するより進歩的な計算によって、さらなる性能便益を得ることができる。これらの便益の例としては、フィルタ応答における非線形性の補償、同調可能フィルタにおけるヒステレシス効果の補償、同調可能フィルタにおけるエージング効果の補償および同調可能フィルタにおける熱的および機械的なドリフトの補償が挙げられる。
【0062】
他の例示的実施形態においては、第2のクラスの線形化技法は、「フィードバック技法」と呼んでもよく、図8の制御システム80に説明されている。図8の制御システム80において、レーザ出力23をFDMLレーザキャビティ21から連結することができる。このレーザ出力23を光測定装置25に入力することができる。光測定装置25は、比較器Cに入力することができる測定パラメータ27を生成するのに使用することができる。フィードバック技法においては、掃引の線形性の特性を記述するために、FDMLレーザ出力のパラメータまたはパラメータの組合せが光測定装置25によって測定される。
【0063】
パラメータ27は、比較器C内で、比較パラメータ31と呼ばれる既知の所望のパラメータまたは前回に測定されたパラメータと比較される。比較器はエラー信号29を発生するように構成されて、これが次いで電子波形シンセサイザ81に入力される。波形シンセサイザ81は、同調可能フィルタ制御信号37を作り出すように構成される。後続のエラー信号が減少してその後に最小化されるように、エラー信号29および制御信号37に基づいて新規のフィルタ駆動波形を作り出すために、同調可能フィルタ制御信号37が、FDMLレーザキャビティ21に入力される。
【0064】
掃引線形化のためのフィードバック技法の一説明例においては、レーザから引き出されるエネルギーの一部分を、マイケルソン(Michelson)干渉計またはマッハツェンダー干渉計などの周期フィルタに誘導することができる。周期フィルタの出力には、掃引の位相進展、したがって掃引の線形性を符号化する発振構成要素を含めることができる。周期フィルタの出力は、光ダイオードによって検出が可能であり、結果として得られる電子信号は、無線周波数(RF)スペクトルアナライザによって解析される。したがって、光測定装置は、周期フィルタ、光ダイオードおよびRFスペクトルアナライザを含む。測定パラメータは、RFスペクトルのスペクトル幅としてもよく、これは掃引がより線形になるにつれて減少する。この場合には、比較パラメータは、スペクトル幅の前回の測定値とすることもできる。電子波形シンセサイザは、ある数の電子周波数において一連のスケーリングされて位相シフトされた信号を結合することによって機能させることもできる。これらの信号は、高次信号のテイラー級数展開を形成するか、またはキャビティ往復時間の倍数とすることもできる。安定した最適化プロセスを維持するために、1つの周波数成分に対するパラメータが、次の周波数に進む前に最適化されるように、各信号の振幅および位相シフトは、連続して最適化されることになる。異なる周波数におけるこれらのスケーリングされ、かつシフトされた信号を加算することによって、エラー信号を連続的に低減し最小化させて、その結果として最大限に線形性の光周波数掃引が得られる。
【0065】
c)FDMLレーザキャビティにおける分散を補償する方法
FDMLレーザの一部の実施形態の第3の望ましくない特性は、色分散(chromatic dispersion)の影響による性能低下である。これらの影響としては、帯域幅減少、ノイズ増加および平均出力パワー低下が挙げられる。FDMLレーザキャビティにおける色分散の主要な影響は、異なる波長成分を異なる速度で伝播させることである。例えば、1060nm波長領域において、コーニング(Corning)HI−1060などの、標準のシングルモード光ファイバがキャビティ内で使用される場合には、短い波長が、長い波長よりもより低速で伝播する。したがって、正弦波などの単純な駆動波形を使用して、同調可能フィルタ要素の掃引時間を、レーザ内で活性な全波長の伝播時間に同期させることはできない。色分散の望ましくない影響は、FDMLレーザキャビティの長さが大きくなるほど、あるいはレーザの動作波長が、標準光ファイバにおける1310nmのゼロ分散点から遠ざかるほど悪化する。800nm、1060nmおよび1550nm付近の領域などの1310nmから大幅に離れた波長でFDMLレーザを動作させることが望ましいことが多いので、色分散の制限を克服するための技法を提供することが必要である。
【0066】
なお、図8および9に示すような光学的方法およびある種のFDMLキャビティ設計を使用して、色分散の影響を低減することができることに留意されたい。
【0067】
図9は、分散補償90を備えるレーザシステムを示す。残留群速度分散(GVD:residual group−velocity dispersion)は、異なる周波数成分の往復時間ミスマッチを引き起こす。同期波形ドライバ36によって駆動される走査フィルタ(F)6’の間隔時間と異なる往復時間を有する周波数成分は、フィルタを通過することができない。したがって、残留GVDは、掃引発生源の光帯域幅を低減する。レーザキャビティ内の残留GVDの最小化は、広域スペクトル動作を達成するのに重要である。レーザキャビティのGVDは、光学フィルタ、増幅器/利得(G)5’、および遅延ライン91などの、用いられる光学構成要素によって誘起される。分散補償ファイバ、チャープトファイバブラッグ格子(chirped fiber Bragg grating)および格子対などの分散補償器(DC)92、プリズムコンプレッサ、音響光学式または液晶式整形装置は、それらがレーザキャビティ内に配置される場合には、GVD効果を低減することができる。複数のDC要素を使用して、キャビティ内部に波形の規定された発達を達成して、局所的な強度を管理することができる。
【0068】
図10は、キャビティ内に異なる遅延91を有するシステム800を示す。フィルタ6’は、FDML動作モードにおいて同期波形ドライバ36によって駆動される。フィルタを通過して伝播する光は、利得媒体5’によって増幅される。キャビティ内の光は、例えば、ダイクロイックスプリッタ(dichroic splitter)またはその他のカプラ801によって2つ以上の別個の径路に分割されて、次いで、ビームコンバイナ802によって結合される。この手法は、異なる波長が異なる経路を伝播し、それによって両方の経路における合計分散が異なる場合には、分散管理の向上のために使用することができる。また、この複数遅延方式の概念は、より高次の分散の補償を改善することを可能にする。この概念の別の応用は、片方のアームにおける往復時間が、掃引周期と一致し、他方が掃引周期の倍数(例えば、2倍)に一致する場合に行われる。このことによって、1つの掃引から次へ、さらに次のその後への混合フィードバックが行われることになる。この理由で、フィードバックの平均化効果が得られるにつれて、位相安定化の改善が期待できる。
【0069】
例示的実施形態において、同調可能フィルタ要素および利得媒体に印加される駆動波形を変更することによって、分散の影響を低減することも可能である。図10および11は、波形持続時間が、FDMLキャビティ内での分散を補償するために順次変更される、駆動波形の使用の概念を説明している。図11における同調可能フィルタ駆動波形は、曲線区間として示されている。利得媒体の状態(オンまたはオフ)が破線ボックスによって示されている。類似の方法を双方向掃引に対して適用することもできることを理解されたい。図11において、Tlongは、掃引における最長波長に対するキャビティ往復時間を表す。Tshortは、掃引における最短波長に対するキャビティ往復時間を表す。図11は、TshortがTlongよりも長い(「正常分散」)FDMLキャビティの場合を表すが、類似の方法をTlongがTshortよりも長いとき(「異常分散」)に適用することもできる。図11は、また、掃引内の最長波長が、時点1、3、5および7に対応する各駆動区間の始点において発生している場合を表わしている。図11は、また、利得媒体が、一方向掃引を作り出すように変調されている場合を表わしているが、これは必ずしも必要ではない。
【0070】
キャビティ内の分散を補償するために、同調可能フィルタ駆動波形区間の長さは、それぞれの連続する掃引と共に変更される。区間が延長されるか、または圧縮される詳細な方法は、FDMLキャビティの分散特性によって決まる。例えば、FDMLキャビティが、1本のコーニングHI−1060光ファイバを含み、レーザが、1060nm付近の中心波長で動作しているとすると、レーザは、正常分散の体系において動作することができる。したがって、後方掃引(長波長から短波長へ)の場合には、各駆動区間は、先の区間に対して延長する必要があり、正確な延長特性図は、分散曲線の形状によって決まる。その結果として、有限の数の駆動区間に対して、フィルタは、掃引内の各波長がフィルタ入力に達すると、同一の位置に復帰する。したがって、フィルタは、有限の期間に対して、分散に関係なく、各波長に対してキャビティ往復時間に同期される。図12は、この概念をさらに可視化したものであり、連続する掃引に対して、駆動波形対時間を示している。
【0071】
正常分散の場合には、1回の掃引における最長波長は、結局、前回の掃引からの最短波長と同時に、同調可能フィルタ入力に到達する。図11において、この効果は、利得媒体がオフの間(時間区間2〜3、4〜5、および6〜7)に、フィルタを移動させるのに利用可能な時間の連続的は減少によってわかる。この点において、駆動波形方式の分散補償技法は限界に達し、波形を再設定しなくてはならない。再設定事象中は、レーザ発振は、一時的に崩壊し、数回の掃引にわって再び増強する必要がある。再設定事象間の掃引回数は、キャビティの分散特性に依存するが、多くの場合に、実際的な使用に対して十分に大きい。光コヒーレンス断層撮影法(OCT)応用において、再設定事象は、画像化装置のビーム走査検流計のフライバック中に時間を合わせることができる。このようにすると、OCT画像データは検流計フライバックの間は収集できないので、一連の2次元OCT画像を取得するのに、追加の時間が必要でない。
【0072】
TlongがTshortよりも大きく、FDMLレーザが異常な分散体系で動作している場合に、同等な技法が可能である。この場合には、同調可能フィルタ駆動波形は、後方掃引に対して漸進的に短くなり、前方掃引に対して逆となる。前回の掃引からの最長波形と同時に、1回の掃引からの最短波形が同調可能フィルタ入力に達するときに、限界に達する。この状態ではまた、駆動波形の再設定、およびFDMLキャビティにおいて再び増強するためのレーザ発振が行われる。
【0073】
「偏光色度」制御
FDMLレーザは、その偏光特性について、非常に特異で普通ではない挙動を示す。偏光管理の主要な問題が、熱ドリフト効果、音響振動および光学構成要素(ファイバ)内で変化する応力である、連続波(cw)(ファイバ)レーザまたはパルス式(ファイバ)レーザにおける場合とは異なり、FDMLレーザでは、波長に依存する偏光状態の固有の反復可能な変化が観測される。そのために、全出力偏光が時間と共に変化する標準的レーザの場合と異なり、FDMLでは、波長または周波数が掃引されるときに、(通常、わずかな時間的なドリフトを含み)出力偏光が変化する。この効果を、本明細書においては、偏光色度と呼ぶ。偏光色度は、遅延を経て伝播した後の偏光構成要素間の高次遅延の特有の結合、および長い瞬間コヒーレンス長の効果によって引き起こされる可能性がある。cw(ファイバ)レーザ(モノクロマティックまたは掃引)またはパルス式ファイバレーザなどの、標準的レーザにおいては、波長板、ファイバスクィーザ(fiber squeezer)、ファラデー素子、その他などの既知のデバイスを使用してこれらの偏光効果を管理することができる。しかしながら、FDMLレーザにおいて、直交偏光状態の高次遅延の特有の効果、偏光色度のために、前記効果を管理するには異なる方法および装置が必要となる場合がある。
【0074】
FDMLレーザにおいて、光の偏光状態について規定された管理または制御を行うことは、偏光色度を打ち消す、相殺する、または回避するために非常に望ましい。それは、レーザ内部には偏光依存性の構成要素(例えば、レーザ利得媒体の偏光依存性利得(例えば、SOA内)、または、アイソレータ、フィルタ、遅延ラインファイバカプラなど、レーザの他の能動または受動構成要素における、偏光依存性の透過または群遅延)があるので、偏光色度を管理または除去するために有用であり得る。レーザの偏光色度が制御されること対するさらなる理由は、FDMLレーザが使用される測定システムから生じ得る。例えば、OCT設備において、完全に偏光した出力か、または完全に偏光していない出力のいずれかが、ファイバ曲げに対する感受性をなくしたり、または偏光依存性の画像コントラストを与えたり、スペックルノイズ(speckle noise)を低減するために望ましい。
【0075】
a)FDMLレーザにおける色偏光回転/状態
上述のように、ほとんどの既知の(ファイバ)レーザ偏光問題は、温度変動、変化するファイバ内の応力および複屈折性、または音響信号、その他によるランダム偏光変動に限定されている。ほとんどの場合に、スペクトルの広いレーザ(例えば、短パルスレーザ)のすべての波長成分は、同様に影響を受ける。しかしながら、FDMLレーザにおいては、異なった、そして非常に異常な挙動が観測される。ファイバを通過して伝播した後に、偏光状態は、周期的、波長依存性の再生可能な変調を示す。この特有の偏光効果、偏光色度、はファイバ遅延における「色偏光モード分散(chromatic polarization mode dispersion)」(色PMD)と記述してもよい効果によって、最も引き起こされやすい。この効果は、FDMLレーザに特有のものであり、その理由は、これらのレーザが長いキャビティ内ファイバループを使用し、同時に出力波長成分の広いスペクトル領域があるためである。スペクトルの広いパルス式ファイバレーザは、通常、キャビティ内に数キロメートル長さの非常に長いファイバを有することはない。標準的なPMDは周知であるのに対して、「色PMD」または偏光色度の狭帯域同調可能レーザに対する影響は、FDMLレーザに特有のものである。
【0076】
事例的実施形態による以下の方法および装置は、レーザ内部の偏光を管理する方法、特に「偏光色度」の観測効果を補償して、規定された出力偏光状態を得る方法を提供する。完全に偏光なしの出力が望まれることもあり、この場合には、通常、偏光状態が実質的にポアンカレ球を介して回転される時間スケールを意味する、ランダム化時間スケールが、データ取得ゲート間隔(1つのデータポイントの測定時間)よりも短くなくてはならない。
【0077】
b)偏光および「偏光色度」の安定化および制御のための能動的方法
規定された偏光出力を提供する第1のクラスの方法は、偏光制御の能動的方法に関係する。図13は、この方法のステップを利用する制御システム130の略図である。この制御システム130は、FDMLレーザキャビティ21を特徴とする。FDMLレーザキャビティ21にはさらに、通常、電子信号によって時間の経過と共に調整可能である、キャビティ内またはキャビティ外の偏光制御器(PC)131を組み入れてもよい。この制御器は、それに限定はされないが、PZT式ファイバスクィーザ、2つの直交偏光状態の間に1/2または1/4波遅延を導入するモータ式ファイバループパドル(motorized fiber loop paddle)、または電気光学式偏光制御器とすることもできる。一般に、PCは、入力光場の偏光状態の変更可能な回転または変化を導入することができる任意の装置とすることができる。
【0078】
レーザ出力またはキャビティタップ23は、FDMLレーザキャビティ21から外に連結することができる。制御システムにはさらに、それに限定はされないが、偏光器、波長板(waveplate)、および光ダイオードの組合せとすることができる、偏光状態解析装置135を含めてもよい。解析装置135は、入力として、レーザ出力またはキャビティタップ23を受けることができ、光場の瞬間偏光状態に関係する、通常は電子式の、信号137を供給することができる。信号は、偏光制御器(PC)131用の制御信号139を発生する、スケーリング装置または処理装置133に供給される。制御信号139を受け取ると、PCは、例示的実施形態によれば、以下に述べるように、少なくとも4つの偏光制御の方法を利用することができる。
【0079】
i)サンプリング内(Intra−sampling)制御方法
サンプリング内制御体系において、偏光制御がその上で動作する時間スケールは、PC制御回路が偏光状態の実質的な変化をその上で発生させることができる時間スケールを意味し、FDMLレーザを使用する測定システムの1サンプリング間隔または逆検出帯域幅よりも短い。そのような動作モードは、準偏光解消光(quasi depolarized light)を発生させるために使用してもよく、PCは非常に速くなくてはならない。
【0080】
ii)掃引内(Intra−sweep)制御方法
掃引内制御体系において、偏光制御が動作する時間スケールは、PC制御回路が偏光状態の実質的な変化を発生させることができる時間スケールを意味し、FDMLレーザを使用する測定システムの1サンプリング間隔または逆検出帯域幅よりも長いが、掃引持続時間よりも短い。この方法は、1掃引の波長または周波数の関数としての偏光状態における変動を意味する、FDMLレーザに典型的な「偏光色度」を補償するために使用することができる。
【0081】
iii)掃引間(Inter−sweep)制御方法
掃引間制御体系において、偏光制御が動作する時間スケールは、PC制御回路が偏光状態の実質的な変化を発生させることができる時間スケールを意味し、FDMLレーザを使用する測定システムの1サンプリング間隔または逆検出帯域幅よりも長く、掃引自体には作用しないが、次の掃引に作用する。PCの帯域幅は、「掃引内方法」の場合における帯域幅と同等であるが、回路内の遅延によって、1回の掃引からの偏光解析器からの信号が、次回またはその後の掃引のためのPCに対して作用させることが可能になる。フィードバックは、掃引間ではなく、1回の掃引と後の掃引との間である。
【0082】
iv)長期制御方法
長期制御体系において、偏光制御が動作する時間スケールは、PC制御回路が偏光状態の実質的な変化を発生させることができる時間スケールを意味し、1掃引周期よりも長い。そのようなシステムは、長期間の熱ドリフト効果を補償しなくてはならない場合に使用されることになる。通常、制御器は、多数の掃引の平均化された信号に対して作用し、偏光回転の程度をゆっくりと調整する。
【0083】
c)偏光および「偏光色度」の安定化、制御、および管理の受動的方法
規定の偏光出力を提供するための第2のクラスの方法は、偏光制御の受動的に方法に関する。レーザにおける光学構成要素の専用の選択、設計およびネットワークが、所望の効果を達成するために使用される。以下の方法は、FDMLレーザの特有の偏光問題である偏光色度を最小化するために使用される。FDMLレーザは、短い瞬間コヒーレンス長を有する、短パルスレーザではなく、また単色のcwレーザでもないので、偏光管理の対策は標準の偏光管理方法とは異なる。偏光解消器などの偏光依存性の光学構成要素が、cw光と、または広帯域光源と使用されることはよく知られている。以下の方法は、受動装置を用いて、または特別に設計された方法で、偏光を管理するのに適切であり、使用される。
【0084】
i)専用キャビティ設計:
偏光色度を最小化する方法の第1のクラスが、図14(A)〜14(C)に示されている。3つの事例的システム130、131および132が示されている。専用キャビティ設計によって、偏光色度が低減される。キャビティ設計は、少なくとも1つの利得媒体(GAIN)5’、少なくとも1つの光学フィルタ(FIL)6’、任意選択のアイソレータ(ISO)133または光サーキュレータ(CIR)134、任意選択の偏光制御器(PC)135、ビームスプリッタ/カプラ要素(CP)136、遅延要素(D)137、任意選択のファラデーミラーFRMまたは波長板(WP)138を組み入れる。
【0085】
図14(A)の設計は、「シグマリング」キャビティの形態のFDMLレーザの例示的一実施形態を示している。特定の例示的一実施形態においては、フィルタ(FIL)6’は、ファブリペローフィルタとし、利得媒体を半導体光学増幅器、またはドープトファイバとしてもよい。ファイバ種類は、キャビティにおけるウォークオフ(walk off)およびモード分散を防止するために、シングルモードファイバとしてもよい。しかしながら、1つまたは複数本の短いマルチモードファイバは、偏光スクランブリングの効果を生み出し、準無偏光(quasi−non polarized)光を発生させるのを助ける。レーザは、説明したように、光往復時間とフィルタ駆動周期とを高度に同期させて動作している。線形遅延の端部のファラデーミラーまたは波長板138は、光が後方に伝播するときに2つの直交偏光状態を切り換えて、偏光色度の補償を行う。
【0086】
図14(B)に示された設計は、サーキュレータ(CIR)134によって生じることのある追加の偏光問題を補償するための装置を示す。偏光に依存しないサーキュレータの場合でも、サーキュレータを通過する2つの直交偏光した光場の間の波長依存遅延は起こり得る。この設計は、サーキュレータ134なしで、FDMLレーザにおける偏光色度効果を防止するように最適化された、シグマリング装置を実現する技法を示している。
【0087】
図14(C)に示された設計は、光場が遅延(D)137を通過して反対方向に伝播する場合の概念を示している。このようなサニャック(Sagnac)構成において、両方の逆伝播波動は、同一の偏光色度を生じる。任意選択の偏光制御器135は、好適な偏光状態を準備するのを助ける。
【0088】
記述したすべての設計において、個々の構成要素の順序と位置は、FDML動作が可能である限り、変更することができる。利得要素5’は、二重光路(double pass)利得を得るために、直線部分(D)137に配置することができる。出力カプラ136は、キャビティのほとんどの部分に配置することができる。ファラデーミラー138はまた、出力カプラとしても作用させることができる。複数のPC135を、キャビティ内の実質的にすべての点に配置することができる。利得媒体5’の利得およびフィルタの逆反射強度に応じて、1つのアイソレータ133が必要であるか、または必要でない。リングには、偏光維持ファイバを含めることができる。
【0089】
ii)ファイバスプールにおいて偏光色度および回転を低減する方法および設計:
偏光色度を最小化する第2のクラスの方法および設計は、遅延(DL)としてのファイバスプールの場合に、遅延部分における偏光効果を低減するものである。以下において考察する設計は、ファイバスプールにおける偏光色度を低減するか、またはそれを補償して相殺する方法のいずれかである。
【0090】
低減された複屈折は、偏光色度に好結果を与えるので、偏光色度を最小化する1つの方法は、ファイバスプールにおけるループ直径を最大化することである。ファイバスプールの直径が、レーザのシャシの大きさに近づく、設計を選ぶ必要がある。通常、最小曲げ半径は、最小シャシ寸法の20%以上である。ゆるく巻かれた空気スプールは、応力によって生じる偏光色度を低減するのをさらに助長する。標準アクリル被覆以外のファイバ被覆は、偏光色度を低減して過剰な摩擦と長期間でのファイバ同士の固着を防止するのを助ける。偏光色度を最小化する別の方法は、より小径のファイバを使用することである。例示的一実施形態においては、80μmクラッドファイバ、標準コアのシングルモードファイバ(波長に依存する)であるがクラッド径を低減したもの、を使用してもよい。1300nmまたは1500nmの中心波長近くでのFDML動作に対して、コーニングSMF28またはそれに等価なファイバなどの標準光ファイバを、9μmコアと80μmクラッドを含むファイバで置き換えてもよい。ファイバスプールもまた、回転/スピンドル軸を非平行に向けることができる、いくつかの部分に分割することもできる。この複数部分は、異なる回旋数/巻き数および異なる半径を有することができる。複数のスプールが平行に向けられると、その間の偏光制御器を、偏光状態を変化させるのに使用することができる。巻き数のより少ない、一連のより小さい調整可能スプール(パドル)を、直交偏光状態同士の間に高次の遅延を導入するのに使用することができる。ここで、この技法は、1/2または1/4波長板を組み入れた偏光制御器パドルを指すものではなく、高次の遅延を備える列を指すものであることを指摘しておきたい。巻き数は、1波長を超える、高次遅延が、異なる直交偏光状態間で発生するようにされる。例示的一実施形態においては、これらのループ/パドル上で2進の巻き数(1、2、4、8、16…)を備えるシリーズを用いてもよい。
【0091】
ファイバは、局所曲げ半径ベクトルが1ループ上で実質的に変化する、またはループが1つの面にない(3次元巻回)、非円形対称に巻回してもよい。例示的実施形態においては、トロイダル巻回、または90°傾斜スピンドル軸による8の字巻回を使用してもよい。
【0092】
iii)光が遅延に入る前に偏光色度に対して頑強性があるか、または光が遅延から出た後の状態を補償する偏光状態を準備する方法および設計
光学要素は、キャビティ遅延に入る前の、波長非依存の光の偏光状態を準備するのに使用することができる。例示的状態としては、線形でスプールの低速軸に平行、線形でスプールの高速軸に平行または円形が挙げられる。偏光制御器の色度を低減するために、大容量(bulk)光偏光器を使用することができる。
【0093】
偏光解消板の形態の偏光解消器(depolarizer)または能動的偏光解消器(偏光変調器)を、光が遅延に入る前、またはそこから出た後に、光の実質的な無偏光状態を準備するのに使用することができる。1本または複数本のマルチモードファイバを、光を偏光解消させるのに使用することができる。この1本のマルチモードファイバの非線形または非平面の構成を使用することができる。
【0094】
図15は、偏光色度を直接的に補償することができる要素の略図を示す。この要素は、異なる波長に対して異なる偏光回転を与える。光151は、プリズム、格子などのような、分散要素153の中に連結されて、空間的に分散された光155が、複屈折材料のくさび157または空間依存性の位相リターデーションを有する任意の要素を通って伝播する。異なる波長成分が、それらの直交偏光状態の異なる差動位相リターデーションを受ける。格子後のビームを平行化するレンズ、および再結合するためのレンズおよび格子は図示してない。二重光路構成によって、一組の格子とレンズが有効になる。
【0095】
図16Aは、光ファイバ等価物を示す。光(入力)は、連結されて実質的に複屈折性を有する区分の中に入る。この場合に、この連結は、サーキュレータ(CIR)を介して達成されるが、その他の設計も等価である。複屈折部分は、一連のファイバループ、1本のPMファイバまたは同等のファイバ、あるいは2つの直交偏光状態に対して異なる群速度を有する任意の構成要素とすることもできる。一連の反射器(ここではファイバブラッグ格子(FBG)であるが、その他の波長選択反射器も可能である)が、スペクトルの異なる部分を異なる遅延に対応する異なる位置で反射して戻す。このようにして、異なる波長成分は、異なる複屈折を受けて、偏光色度の所望の効果を達成するか、または相殺することができる。ここで、そのような一連の反射器は、異なる波長に対して異なる光キャビティ長を与えるので、同時に使用して分散を補償することができることに留意されたい。記述した例は、一般的な偏光色度補償方法の特殊な事例であり、これらの事例は、空間的または時間的に異なる波長成分を分離して、分離された部分に様々な量の複屈折を導入するステップを含む。
【0096】
図16Bは、偏光色度に対して頑強性のある別のFDMLレーザ構成1600を示す。この構成において、制御された偏光状態を維持するために、偏光維持ファイバ(PM)1601がキャビティの円形部分に使用されている。偏光ビームスプリッタ(PBS)1602が、光をキャビティの線形部分に誘導するのに使用されている。ファラデー回転ミラー(FRM)1604が入力光の偏光を、2回目にファイバ遅延1603を通過する前に、90度だけ回転させることになるので、ファイバ遅延1603は、一定偏光状態を維持しない従来型光ファイバとすることができる。従来型ファイバ(SMF)1605は偏光維持ファイバよりもずっと安価であるため、このことによって、ファイバのコストを低く保つことができる。キャビティの円形部分に戻る光が、キャビティの線形部分に進入した光と比較して90度回転されているので、光の偏光状態を利得媒体の好ましい偏光軸と一致させるために、ファイバ内での90度捻り1606を、レーザ利得媒体(G)5’の前に使用してもよい。この90度捻り1606は、同調可能フィルタ6’の前、PBS1602に続くアイソレータ1607の前、またはPBS自体の内部に配置することもできる。キャビティ内の光の偏光状態の向きは、ページの面に垂直1608であるか、またはページの面に平行1609であるかによって表わされる。キャビティ内の光伝播の方向は、矢印1610によって表わされている。
【0097】
図17は、キャビティ内マッハツェンダー干渉計(MZI)を備えるFDMLレーザ1700を示す。偏光色度は通常、規則的なスペクトル変調を示すので、光を分割して、2つの別個の偏光制御器(PC)135を備えるマッハツェンダー干渉計を導入することができる。偏光制御器は独立に設定することができ、スペクトル変調の程度を低下させることができる。マッハツェンダー干渉計出力の一方のポートは、レーザ出力カプラ(CP)136として使用し、他方のポートを、光をキャビティに戻すのに使用することができる。スペクトル変調を避けるために、例示的一実施形態は、マッハツェンダーのアーム長を一波長よりも正確にマッチングさせること、または瞬間コヒーレンス長よりも大きいミスマッチを導入することを含む。利得要素(G)5’、アイソレータ(ISO)1607、同調可能フィルタ要素(F)6’、およびファイバ遅延(D)91は、FDMLレーザの他の実施形態と同様に配設される。
【0098】
性能改善のための追加のキャビティ内またはキャビティ外の能動要素または受動要素
用途に応じて、キャビティの内部または外部の追加の光学要素によって、FDMLレーザの性能を改善することができる。
【0099】
a)マッハツェンダー干渉計
特殊なクラスの要素がマッハツェンダー干渉計(MZI)である。1×2カプラの他にその他の形態のカプラを使用してMZIを構築してもよく、実際に以下に記述するすべての方法は、1×nカプラに拡張できるものと理解されたい。MZIは、図17に描かれているようにFDMLキャビティの内部で使用することができる。なお、この点において、記述の特徴、設計および方法はまた、光場を有限の数の光路に分割し、それらを再び再結合するその他任意のタイプの干渉計によっても達成できることに留意されたい。通常、主たる概念は、2つの異なる光学要素をMZIの2つのブランチ/アームに挿入するか、または規定された方法で長さを調整して、所望の性能改善を達成することである。例えば、パワー性能を増大させるために、同一の要素を挿入することも行うことができる。
【0100】
このようなMZIのスペクトル伝達特性およびスペクトル変調が理由で、MZIをFDMLレーザにおいて使用しようとするならば、専用の設計が用いられる。その他のレーザと比較した差異は、そのようなMZIの特徴的なスペクトル変調は、遅延波形の発生と本質的に関係しており、FDMLレーザにおいてフィルタ駆動時間と往復時間とを有効に同期させるのを妨げる可能性があることである。したがって、専用の設計を適用するのが有益な場合がある。FDMLレーザ内のそのようなMZIに対して、一般に3種の方法および設計がある(図18の略図を参照)。
【0101】
(i)サブ波長ミスマッチ(Sub−wavelength mismatch)体系:
MZIの2つのアーム長(光場(A)(1)および(A)(2)によって表わされる)が、1波長のオーダーまたはそれよりも小さい長さまでマッチングされている。この体系において、MZIは、掃引範囲にわたって、顕著なスペクトル伝達特性を有していない。2つの光場は、コヒーレントに結合されて、光場(A)(3)が生じる。この動作体系において、アーム長を、1波長よりも精度のよい値まで安定化させることは、意図的な平均化が望ましくない場合には、非常に重要である。通常、光場の意図的な平均化が望まれない限り、過剰なファイバ長は使用することができない。この体系は、利得要素を多重化するには理想的であり得る。この場合には、各アームは、別個の利得要素を有することになる。アームは、異なる利得波長を有して、掃引範囲を広げることもできる。
【0102】
(ii)コヒーレンス長ミスマッチ(Coherence−length mismatch)体系:
MZIの2つのアーム長には、光場(B)(1)および(B)(2)によって説明されるように、1波長よりも大きいが、瞬間コヒーレンス長よりも小さい、意図的なミスマッチがある。この体系において、MZIは、掃引範囲にわたって顕著なスペクトル伝達特性を有する。2つの光場は、光場(B)(3)によって示されるように、コヒーレントに結合されるが、強い変調が観測される。光コヒーレンス断層撮影法(OCT)応用においては、これによって、画像化範囲内でエコーを生成する。この動作体系におけるコヒーレント加算が理由で、意図的な平均化が望まれないのであれば、アーム長を1波長よりも精度のよい値まで安定化させることが重要である。通常、光場の意図的な平均化が望まれない限り、過剰なファイバ長はどちらのアームでも使用することができない。
【0103】
(iii)非コヒーレント大ミスマッチ(Non−coherent large mismatch)体系:
MZIの2つのアーム長には、光場(C)(1)および(C)(2)によって説明されているように、レーザの瞬間コヒーレンス長よりも大きい意図的なミスマッチがある。この体系において、2つの波形は非コヒーレントに加算されて、光場(C)(3)が生じているので、MZIは、掃引範囲にわたってスペクトル伝達特性を有さず、2つのアームは、MZIの第2のカプラの中に連結された、独立の発生源のように作用する。
【0104】
FDMLレーザのキャビティの内部においてMZIの様々な用途があり、その用途に応じて、異なるミスマッチ体系が使用される。例示的実施形態(a)〜(f)について以下に述べる。
(a)先の段落で述べたように、2つのアームは、2つの独立した偏光制御ユニット(PC)を有して、干渉縞コントラストを低減して、偏光色度に起因するスペクトル変調を出力することができる(図17)。通常、これは、スペクトル変調を避けるために、サブ波長ミスマッチ体系(i)または非コヒーレント大ミスマッチ体系(iii)において実行されることになる。しかしながら、コヒーレンス長ミスマッチ体系(ii)において、干渉縞および変調を厳密に打ち消す値に、ミスマッチを設定することも可能である。
【0105】
(b)2つのブランチにおける非対称を、システムの分散が補償されるような値に設定することができる。キャビティを通過する合計往復時間は、両アームに対して異なる。例えば、長い波長領域に対する往復時間を、短い波長領域に対する往復時間にマッチングさせることが可能である。これは、波長依存スプリッタまたは正規のカプラによって達成することができる。通常、これは、スペクトル変調を避けるために、また大きなオフセットが必要であるために、非コヒーレント大ミスマッチ体系(iii)において実行されることになる。
【0106】
(c)OCT用途において、アーム長ミスマッチによって設定される遅延によって意図的なエコーを発生させることが可能である。普通、これは、非コヒーレント大ミスマッチ体系(iii)において行われることになる。それは、掃引発生源OCT応用(ss−OCT)の測定範囲を複製して、コヒーレンス長を増大させる。これによって、普通、OCTはわずか数ミリメートの限定された測距深さを有するので、OCT設備のマイケルソン(Michelson)干渉計のアーム長における最初のマッチングを見つける労力を最小化するのを助けることができる。
【0107】
(d)偏光依存性MZIを使用して、利得媒体の偏光依存性利得を相殺することができる。そのようなMZIは、無偏光ビームスプリッタまたはカプラの代わりに偏光ビームスプリッタを有することになる。追加の偏光制御器または偏光維持ファイバを使用して、両アームにおける2つの偏光依存性利得チップに対する適切な偏光状態を確実にする。すべての3つのミスマッチ体系を使用することができる。
【0108】
(e)両アームにおける利得要素を使用して、パワーを増大させるか、または掃引範囲を拡張することができる。通常、これは、スペクトル変調を避けるために、サブ波長ミスマッチ体系(i)または非コヒーレント大ミスマッチ体系(iii)において実行される。
【0109】
(f)アーム/ブランチの一方に、フィルタ掃引時間にマッチングされたファイバ遅延を持たせることができる。この非常に大きいミスマッチは、図18に示されている、非コヒーレント大ミスマッチ体系(iii)に対応する。この設計は、波形を光学的に平均化する効果があり、レーザの安定性を増大させる。2進長と直列の一連のMZIを適用して、平均化効果を増大させることができる。そのようなMZI列はまた、キャビティの内部で掃引速度を倍加するのに使用することもできる。図19Aは、2の累乗で増加するファイバ遅延1901、1902、および1903と直列の、一連のMZIを備えるFDMLレーザを示す。ファイバ遅延は、各MZIにおいてアーム長ミスマッチとして作用する。直列の複数MZIの利点は、キャビティ内MZIの場合に(第2のカプラが出力として使用される場合には)パワー損失がないこと、および外部列の場合には、掃引速度が乗算される係数に関係なく、パワー損失が3dBだけであることである。利得要素(G)5’、アイソレータ(ISO)1607、同調可能フィルタ要素(F)6’およびファイバ遅延(D)91は、FDMLレーザのその他の実施形態と同様に配設される。
【0110】
一連のMZIはまた、FDMLレーザキャビティの外部でも、掃引速度を倍増させるのに使用することもできる。図19Bは、2の累乗として増大するファイバ遅延1901および1902を備えた一連の外部MZIを備えるFDMLレーザを示す。各MZIステージにおいて、FDML光周波数掃引がコピーされて、1つのコピーが、ファイバ遅延に対応する時間だけ時間遅延され、次いで再結合される。コピーされた周波数掃引が、時間的に重複するのを防止するために、レーザは、それに対応してより短い期間において動作可能にされる。これは、FDMLレーザの内部で利得媒体を変調することによって達成される。このようにして、掃引速度が、一連のキャビティ内MZIを使用して行われるのと同様にして、倍増される。この原理は、第1の周波数対時間プロット1904および第2の周波数対時間プロット1905に示されている。第1のプロット1904は、レーザ利得媒体が動作可能にされている(実線)、同調可能フィルタ要素駆動期間(点線)の部分を示す。第2のプロット1905は、掃引の4つの非重複コピーが生成された、遅延D2 1902を備える第2のMZIの後方の出力を示す。そのような高次掃引周波数倍増は、正弦波がますます線形になる、正弦波駆動波形の非常に小さい部分だけを使用することが可能であるので、周波数における線形掃引の前提条件とすることもできる。例示的一実施形態においては、一連の干渉計の中での各干渉計のアーム長ミスマッチを、FDMLレーザ内部の全キャビティ長の2の累乗の分数(例えば、1/2、1/4、1/8)に実質的に等しくできる。
【0111】
b)FDMLレーザにおけるファイバブラッグ格子(FBG)
一連のファイバブラッグ格子を使用して、キャビティ分散を補償すると共に、異なる波長成分に対して往復時間をマッチングさせることができる。図16Aにおけるのと類似の設定を使用してもよいが、追加の本数のファイバまたは偏光要素を各FBG間に、必ずしも含める必要はない。図16Aに示す設定において、および正常分散体系(例えば、1050nm波長領域)におけるFDML動作の場合に、サーキュレータ/キャビティに近いFBGは、短い波長成分を反射することになる。リング/サーキュレータからさらに遠くのFBGは、長い波長成分を反射することになる。なお、FDMLレーザの全波長領域をカバーする1つのチャープトFBG(チャープトFBGは連続的に変化する周期を有する)を使用できること、またはいくつかのチャープトFBGまたは非チャープトFBGを一連にして使用することができることを指摘したい。FDMLレーザにおいて、短パルスレーザとは異なり、FBGは必ずしも位相マッチングさせる必要がないことを注記しておくのは重要である。
【0112】
c)光スイッチ
特定の波長を選択し、それらをキャビティを通過する異なる光路を再経由させるために、光スイッチを使用することができる。これは、異なる光路長を有する分散補償方式を適用するため、または特定の波長を取り上げ、それらをキャビティの外に連結するのに、使用することができる。次いで、ここでも、光キャビティ長をl、光の速度をc、追加のファイバの光周波数帯域をbとした場合に、l<c/bを条件として、追加の外部ファブリペローまたはその他の共振器を使用して連続波(cw)出力を提供することができる。
【0113】
d)位相変調器
FDMLレーザは、その動作において、わずかに不連続な同調特性またはモードホップを有することができる。不連続動作またはモードホッピング動作においては、出力光は、1つの周波数において有限時間、留まり、次いで急速に変化する。これは、出力光の周波数が円滑かつ連続的に変化する連続同調と対照的である。FDMLレーザのスペクトル出力の観点で、不連続動作によって、非常に狭いスペクトル線が生じ、これは時折、急激にジャンプする。このことは、特定の波長値が出力スペクトルから失われたり、予測不能な時点に発生したりするので、波長解像測定用途に対しては問題となり得る。キャビティの内部または外部の位相変調器は、スペクトル線幅を広げるのに使用することができる。位相変調器は、所望の効果を得るために、レーザの瞬間光帯域幅のオーダーの電子周波数によって駆動すべきである。なお、線幅の拡張はまた、振幅変調器によっても達成できることを理解されたい。
【0114】
キャビティ内フィルタおよび段階的同調
多くの応用において、FDMLレーザを掃引モードで動作させることは便益があり、そのようなモードでは、発生する掃引波形は、一連の離散的光周波数を含むか、または連続的に段階状になった波長を含む。離散的な段階的同調は、光コヒーレンス断層撮影法、分光分析、および計測学などの多くの用途に対して便益があり得る。離散的段階を有する掃引同調は、より狭い瞬間レーザ線幅、改善されたコヒーレンス特性および改善されたノイズをもたらす場合がある。これらの特性は、掃引発生源光コヒーレンス断層撮影法および干渉計応用における画像化性能を改善することができる。一連の離散的周波数または波長段階の発生はまた、レーザ出力を測定することおよびレーザパラメータの制御を改善することにも有利である。
【0115】
図20は、段階状掃引FDML動作の例を説明している。FDMLレーザは、持続時間tSTEP−ONの間、ある光周波数または波長の光を放出し、次いで、その出力周波数または波長を次の値に切り換える。この周波数または波長における段階の発生過程は、掃引レーザ出力の所望の同調領域全体にわたって反復される。場合によっては、システムを、段階同士の間にレーザ出力がない時間tOFFがあるように構成してもよい。しかしながら、システムパラメータに応じて、FDMLレーザは、ほぼ連続的な強度を含む出力または段階間で強度における変調を含む出力を発生してもよい。一部の用途に対しては、各段階間の差が、光周波数において一定値ΔνSTEPを有すること、また段階が、一定の時間間隔tSTEP−PERIODで、一定の速度で発生することが望ましい。一連の段階の後に、全段階状掃引出力が、周期的時間FDMLPERIODがFDML条件を満足するように、FDML条件に従う反復速度で反復され、ここで、FDMLPERIODは、キャビティ光往復時間またはその倍数に等しい。
【0116】
段階状掃引FDML動作の別の例が、図21に示されている。FDMLレーザは、光周波数または波長の分布または櫛型(comb)を有する段階パターンを含む光を放出し、複数の離散周波数または波長が一時に生成される。この分布または櫛型の中心または平均周波数は、レーザが掃引されるときに、時間と共に変化するが、櫛型内の個々の周波数は固定されたままである。所望の周波数領域の全体にわたって掃引されたのちに、全段階状掃引出力が、FDMLレーザの反復速度において、反復される。図の例は、一方向掃引を説明しているが、同一の概念が、双方向掃引にも適用されることを理解されたい。
【0117】
図22は、FDMLレーザから、段階状掃引同調を得るための構成の例を示す。段階状FDML同調には、レーザ内での2つのフィルタの使用を含む:本明細書においては「同調可能FDMLフィルタ」と呼ぶFDML動作に使用される調整式同調可能フィルタ、および本明細書においては「補助フィルタ」と呼ぶ複数の狭帯域周波数または波長極大を含む追加の補助フィルタである。図22に示す略図では、レーザ利得媒体G、アイソレータIso、補助フィルタAF、同調可能FDMLフィルタF、出力カプラOPCおよびファイバ遅延Lが、FDMLレーザキャビティを形成している。なお、補助フィルタは、固定式であるか、または1掃引周期よりも大きい時間スケールで調整可能であり、レーザ出力の特性を変更するものであることを理解されたい。FDMLレーザ出力はまた、キャビティの外部の補助フィルタによってフィルタリングさせることができるが、補助フィルタをキャビティの内部に配置することは、より高い出力パワーおよびより狭いライン幅が必要とされる場合には、望ましい場合がある。この例は、FDMLレーザの単純なリングキャビティ実施形態に対して示しているが、等価の方法を、FDMLレーザのその他の実施形態、例えば、それに限定はされないが、線形キャビティ、シグマリングおよびFDML動作を可能にする任意のキャビティ設計に関連するものに応用できるものと認識される。
【0118】
追加の補助フィルタは、レーザ利得媒体の利得帯域幅内に、複数の狭帯域の透過極大を有する必要がある。補助フィルタの帯域幅は、同調可能FDMLフィルタの帯域幅よりも狭くなくてはならない。補助フィルタの例としては、それに限定はされないが、エタロン(etalon)フィルタまたはファブリペロー型フィルタ、サーキュレータなどの要素と組み合わせた一連のファイバブラッグ格子、または所望の出力周波数または波長において複数の狭帯域のフィルタリングを行うように構成された、一連の狭帯域誘電体または導波路フィルタが挙げられる。応用によっては、追加の補助フィルタの透過特性は、所望の帯域幅を含む所定の組の波長または周波数を透過または反射するように、固定されることになる。しかしながら、その他の応用においては、補助フィルタ特性は、制御システムを使用して調整し、安定化させてもよい。例えば、FDMLレーザが、周波数または波長が正確に決められた段階状掃引出力を発生することが望ましい場合には、波長基準の外部周波数に対してロックされるか、または安定化された、調整可能補助フィルタを有する構成を使用することができる。代替的方法は、FDMLレーザが特定の周波数段階を発生しているときに、特定の時間にFDMLレーザの出力を測定し、レーザ出力周波数が外部基準に対してロックされるか、または安定化されるように補助フィルタを調整するものである。多くのタイプのフィルタの透過特性および最大透過周波数は、波長依存性を示すので、補助的または同調可能なFDMLフィルタは、電子回路を使用してその温度を制御することによって安定化させてもよい。
【0119】
段階状掃引FDMLレーザ出力を外部基準周波数に対してロックするのを容易にするために、正確にわかっている光周波数において別個の狭い線幅の光源をキャビティ中に導入することによって、補助フィルタを測定することができる。この狭い線幅の発生源は、補助フィルタの後に位置する波長選択フィルタおよび光検出器を使用することによって、補助フィルタを透過した後に測定されることになる。次いで、狭い線幅の発生源が正確にわかっている時間に透過されるように、補助フィルタを調整して、それによってFDML出力を狭い線幅の発生源の正確にわかっている光周波数にロックすることもできる。
【0120】
FDMLの段階状掃引動作は、所望の動作に応じた特定の判断基準に従って、同調可能FDMLフィルタおよび補助フィルタの特性の設計を行ってもよい。図23および24は、異なる動作体系に対する、同調可能FDMLフィルタおよび補助フィルタの特性を説明する略図である。補助フィルタは、透過帯域幅BWAuxiliaryを有する、透過極大周波数ν1、ν2、ν3などにおける1組の透過極大によって特性が表わされる。補助フィルタがファブリペローフィルタである場合には、透過周波数は、均一な間隔で配列され、透過周波数間の周波数段階Δνを表す、自由スペクトル領域FSRAuxiliaryによって特性が表わされる。同調可能FDMLフィルタは、帯域幅BWFDMLおよび、時間の関数として調整可能な、透過極大周波数VFDMLによって特性が表わされる。補助フィルタの帯域幅BWAuxiliaryは、FDMLフィルタBWFDMLよりも狭く、したがって補助フィルタは、FDMLフィルタ単独で可能であるよりも狭い線幅の出力を、FDMLレーザに生成させる。
【0121】
一般性を失うことなく、これらの判断基準は、同調FDMLフィルタがファブリペローフィルタであり、補助フィルタが第2のファブリペローフィルタである例を用いて説明することができる。しかしながら、その他のフィルタを使用して、これらの実施形態に対して設計基準を構築できることを認識されたい。この例において、同調可能FDMLフィルタは、その透過極大周波数VFDMLを周波数範囲にわたって掃引することによって調整される。同調可能FDMLフィルタは、キャビティ内での有効な光の往復時間、またはその倍数に同期して駆動される。同調可能FDMLフィルタがファブリペローフィルタである場合に対して、透過極大周波数VFDMLは、ファブリペローミラー間隔を変化させて同調され、したがって透過極大周波数は、異なる周波数値の範囲にわたって連続的に走査する。
【0122】
なお、その他のタイプのフィルタが補助フィルタとして使用される場合には、多くの場合に例示的実施形態は等間隔に配列された透過極大を発生することになるが、透過極大の間隔は等間隔でない場合があることに留意されたい。補助フィルタとしてファブリペローフィルタを使用することは、ファブリペローフィルタが、周波数において等間隔に配列された多数の透過極大を生成し、また非常に狭い帯域幅または線幅を有するという利点がある。複数の透過ピークを有するキャビティ内補助ファブリペローフィルタを使用して、FDML式周波数櫛型を生成することの主な利点は、広範囲の光周波数間隔を得ることが比較的簡単であることである。数MHzから高THzまでのFSRを有するファブリペローフィルタが入手可能であるので、非常に小さい周波数間隔から非常に大きいものまで発生させることができる。このフィルタは、周波数間隔比に対して非常に狭い線幅、または高い鮮鋭度(finesse)を有することができる。さらに、補助フィルタ極大の位置は、静止している必要はなく、外部周波数または波長基準にロックされるように調整可能にすることもできる。しかしながら、補助フィルタのフィルタ特性は、通常は、キャビティ内の光の往復時間に同期して同調されないことに留意されたい。
【0123】
FDMLレーザの段階状掃引動作に対して、以下のように区別することができる、異なる動作体系がある:
(i)BWFDML<FSRAuxiliary:この動作体系は図23に示されており、図20に示すような出力を有する。この構成は、一連の隔離された周波数段階を含むFDMLレーザ出力を得ることが望ましいときに使用される。このレーザは、補助フィルタの透過極大周波数の範囲にわたって段階状に掃引し、ある光周波数においてレーザ出力を時間tSTEP−ONの間、発生し、この時間中、同調可能FDMLフィルタ極大VFDMLが補助フィルタの透過極大と重畳する。この出力の後に時間tOFFが続き、このときには、レーザ出力強度が実質的に減少して、ゼロ強度に達する場合があり、同調可能FDMLフィルタ透過極大周波数VFDMLが補助フィルタの2つの透過極大周波数の間にある場合に起こる。その後に、FDMLフィルタが掃引を続けるにつれて、レーザは、補助フィルタの次の透過極大周波数において、新しい光周波数に切り換わる。
【0124】
この動作モードには、FDMLレーザが、変調された強度または各パルスが光周波数における異なる段階に対応する一連のパルスを発生するという利点がある。補助フィルタがファブリペローフィルタである場合においては、周波数段階は等距離に配列されている。したがって、レーザが後続の光周波数の段階に移る度に、出力強度の変化が起こるので、FDMLレーザの強度出力は、レーザから直接的に光周波数または「k空間(k−space)」トリガ信号を発生するのに使用される。
【0125】
さらに、光周波数段階の持続時間は、FDMLレーザの分散および同期特性についての情報を与える。各tSTEP−ONのタイミングを測定することによって、FDMLフィルタAC駆動周波数およびキャビティ内分散を制御するために、フィードバック信号を発生させることができる。
【0126】
この動作体系は、より狭い線幅と改善された性能を有することができるので、掃引発生源光コヒーレンス断層撮影法に有用である。これはまた、コヒーレントアンチストークスラマン散乱(CARS:coherent anti−Stokes Raman scattering)顕微鏡検査などの応用のための、変化する周波数を有する短いパルスを発生させるのにも使用することができる。短いパルスを発生させるには、条件、BWFDML<<FSRAxuxiliaryが望ましい。
【0127】
(ii)BWFDML>FSRAuxiliary:この場合に、FDMLレーザは、一時に、補助フィルタのいくつかのモード、または透過極大で動作し、この場合に、透過極大の群はFDMLフィルタによって選択される。この動作体系は、図24に示されており、図21に示されるような出力を有する。FDMLフィルタが同期されて同調されるにつれて、FDMLレーザは、補助フィルタによって選択された、波長または光周波数の分布または櫛型を有する、段階状掃引パターンを発生する。中心または平均の周波数または波長が、FDMLフィルタの透過極大周波数によって選択される。中心周波数は、レーザが掃引されるときに、時間と共に変化するが、櫛型内の個々の周波数は固定されたままである。この構成において、FDMLフィルタと補助フィルタの組合せフィルタリング効果によって、1組の周波数を常に発振させることができるので、FDMLレーザは、大幅な変調のない準連続出力強度を発生する。
【0128】
この動作モードには、FDMLレーザが一時に複数の周波数を発生するが、個々の周波数は、FDMLフィルタが単独で使用される場合よりも、狭い線幅を有するという利点がある。掃引発生源OCT、干渉測定または計測学などの多くの応用に対して、狭い線幅は、測定範囲または測定精度を改善する。複数の周波数出力は、OCTイメージングまたは干渉測定においてエイリアシング効果を生成する可能性がある。したがって、FSRAuxiliaryで決まる周波数の間隔は、意図する応用と整合させて選ぶ必要がある。
【0129】
(iii)特定の応用に対しては、同様に、BWtuning≒FSRAuxiliaryとなる体系においてレーザを動作させるのが望ましい。この場合には、FDMLレーザは、補助フィルタに対応する1つまたは少数の周波数において、主として動作することになる。FDMLフィルタが同期して同調されるときに、異なる周波数が出力される。この動作の体系は、FDMLレーザのコヒーレンス特性を改善するのに使用することができる。この場合に、強度出力は、準一定でもなく、また先述の場合のように、完全に変調もされていない。
【0130】
約10THzの半導体光学増幅器の典型的な利得帯域幅を考慮して、例示的一実施形態は、1THzより低い自由スペクトル領域を有する補助フィルタを組み入れることになる。調節式同調可能FDMLフィルタは、1THzを超える自由スペクトル領域を有することになる。この実施形態によって、光コヒーレンス断層撮影法や計測学などの多くの応用に対して好ましい場合のある10またはそれ以上の周波数段階を有するFDMLレーザ出力が得られる。ここで、場合によっては、連続的透過極大間の周波数間隔が等距離ではない条件で、補助フィルタが使用されることがあることを理解されたい。この場合に、連続する透過極大間の周波数間隔は、この例示的実施形態に対して1THz未満ということになる。
【0131】
FDMLレーザが一連の隔離された周波数段階を発生する図20および23に示された構成は、レーザ動作の特性を表すと共に、FDMLレーザパラメータを制御する新しい方法を提供する。最適なFDMLレーザ動作を達成するために、同調可能FDMLフィルタの駆動反復速度または駆動周波数は、キャビティ内の波形の有効往復時間またはその倍数に実質的に等しくなるように、同期されなければならない。離調またはミスマッチがあると、FDMLフィルタと補助フィルタの組合せが、入射光周波数を透過するように同調されていないときに、所望の時間よりも早いか、または遅い時間に波形がFDMLフィルタおよび補助フィルタに復帰する結果になる。FDMLレーザが、図20に示すように、周波数における段階を発生するように構成されている場合には、この離調またはミスマッチの影響は、時間tSTEP−ONが短くなり、出力パルスが短くなるように、周波数段階を時間的に狭くすることである。所与の時間間隔にわたって積分された出力パワーも低くなる。したがって、FDMLフィルタの駆動周波数およびその他のパラメータも、出力パルスのパルス持続時間、または所与の時間間隔にわたる出力パワーのいずれかを測定することによって、制御して最適化することもできる。FDMLフィルタの駆動周波数を制御する一方法は、パルス持続時間または積分出力パワーが最大化されるように、駆動周波数を調整するものである。
【0132】
周波数段階が一定である場合には、各出力パルスは、所与の光周波数段階に対応するので、FDMLレーザの出力周波数は、周波数掃引における段階を数えることによって求めることができる。いつ計数を開始するかを示す基準信号は、いつレーザが特定の基準周波数を通過して掃引するかを特定するために、狭帯域フィルタと光検出器によってFDMLレーザ出力を測定することによって得ることができる。明確に定義された一連の周波数を通過してレーザが段階状に掃引されるときのデータ取得をトリガリングするのに、パルス式出力を使用することができるので、掃引発生源光コヒーレンス断層撮影法などの応用に対して、この特徴は特に重要である。
【0133】
同調可能FDMLフィルタ用の駆動波形もまた、所望の段階状掃引出力を得るために、測定して制御することができる。一部の応用に対しては、時間的に等間隔な周波数段階を一定の率で発生させるのが望ましい。この場合には、補助フィルタは、周波数において等間隔に配列された透過極大を有するように選ばれて、同調可能FDMLフィルタの帯域幅は周波数間隔よりも小さくなる。レーザが、隔離された周波数段階を発生するように構成されていれば、各出力パルスのタイミングは、同調可能FDMLフィルタの同調率の尺度である。同調可能FDMLフィルタ用の駆動波形は、周波数段階に対応するFDMLレーザ出力パルスのタイミングを測定し、パルスが時間において等間隔に配列されるように駆動波形を調整することによって、調整、発生または合成することができる。この出力パルスのタイミングを測定して、同調可能FDMLフィルタの駆動波形を調整する工程は、反復的に実行してもよい。同調可能FDMLフィルタがファブリペローフィルタである場合に対しては、駆動波形が、ファブリペローフィルタ内のミラーの間隔を制御し、それによってフィルタの透過極大波長を変化させる。しかしながら、周波数は波長と逆比例するので、極大周波数が一定の率で変化するようにFDMLファブリペローフィルタを走査するには、駆動波形の補正を用いてもよい。
【0134】
FDMLキャビティ内の分散は、周波数または波長の関数として光の群速度を変化させる。これによって、キャビティ内の光波形の往復時間が、周波数または波長の関数として変化し、その結果、周波数または波長の一部だけが、FDMLフィルタの駆動波形に同期されることになる。分散の影響は、図25に概略的に示されている。実線は、FDMLレーザによって発生された、同調可能FDMLフィルタと補助フィルタの組合せ同調作用に対応する、1組の周波数段階を示す。これらの周波数段階を含む光波形が、FDMLレーザキャビティのまわりを移動するとき、分散によって、光波形の異なる周波数成分が、破線によって示すように、異なる時間に到着するようになる。実線および破線は、それらが明瞭に見えるように、わずかにずらされているが、それらは同一の周波数にあることを理解されたい。
【0135】
図25は、同調可能FDMLフィルタ周期が、光波形における中心周波数νcが、同調可能FDMLフィルタと補助フィルタとの組合せフィルタリング作用と同期して到着するように、調整されている場合を示す。しかしながら、分散の影響によって、光波形中の低い周波数νlまたは高い周波数νhなどのその他の周波数成分が、FDMLフィルタの同調に対して、早く到着しすぎるか、または遅く到着しすぎることになる。この脱同期化によって、これらの周波数において、FDMLレーザの出力パルス持続時間が減少することになる。階段状掃引FDMLレーザは、段階時間TONの大部分に含まれる周波数がなお、FDMLフィルタと補助フィルタとの組合せフィルタリングと同期されているので、標準FDMLレーザよりも分散に対する敏感性は低い。最後に、掃引全体にわたって段階状掃引FDMLレーザにおける出力パルスのパルス持続時間の変動を測定することによって、分散の測定が可能になることに留意されたい。
【0136】
先述したように、レーザ利得媒体の利得帯域幅内で複数の狭帯域幅の透過極大を与える、補助フィルタに対して可能な異なる実施形態がある。補助フィルタの実施形態の一部は、分散の補償を可能にする。図26は、サーキュレータおよび異なる波長λ1、λ2、λ3などにおいて狭帯域反射極大を有する一連のファイバブラッグ格子(FBG)を使用して構築されたフィルタの例を示す。サーキュレータ(CIR)は入力光を一連のファイバブラッグ格子フィルタ中に誘導し、ファイバブラッグ格子フィルタは、光の所望の波長を再帰反射して(retro−reflect)サーキュレータに戻し、サーキュレータでは、フィルタリングされた光が出力に誘導される。これによって、ファイバブラッグ格子によって選択される、特定の波長において、一連の狭帯域幅透過極大が生成される。この構成によって、FDMLレーザは、ファイバブラッグ格子パラメータを選ぶことによって選択される、異なる波長または周波数を含む出力を発生することが可能となる。
【0137】
この構成はまた、FDMLレーザキャビティ内の分散を補償するのにも使用できる。レーザキャビティ内の分散によって、掃引光波形中の異なる周波数または波長の成分が、レーザキャビティまわりで、異なる群速度または往復時間を有するようになる。このことは、同調されたFDMLフィルタは、掃引波形におけるすべての周波数または波長に対しては、キャビティ内の光の往復時間に正確に同期することはできないということを意味している。しかしながら、フィルタ内の連続するファイバブラッグ格子の間に光遅延が導入され、これらの光遅延が、掃引波形における異なる周波数または波長成分のキャビティ往復時間における差を補償するように設定されると、掃引帯域幅の全体にわたる複数の周波数または波長に対してFDMLフィルタ同期条件を満足させることができ、それによって分散が補償される。分散を補償することによって、FDMLレーザのパワー、同調帯域幅および線幅性能が改善される。
【0138】
図27は別の実施形態を示し、この場合には、補助フィルタが、サーキュレータおよび一連のフィルタを使用して構築され、この一連のフィルタは、異なる波長λ1、λ2、λ3などにおいて狭帯域反射極大を有し、再帰反射器と共に使用される。このフィルタは、誘電体フィルタ、積分光学フィルタまたは特定の波長のまわりに狭い帯域幅を選択する、その他の既知のフィルタとしてもよい。異なる波長は再帰反射され、そこでそれらの波長はフィルタを再び通過して、サーキュレータに戻り、さらに補助フィルタの出力へと伝播する。所望の波長または動作の周波数において一連の透過極大を生成する特性を有する実施形態もあることを理解すべきであるが、図示された特定の実施形態は、二重光路構成内で各フィルタを使用する。FDMLレーザキャビティにおける分散を補償するために、異なるフィルタ要素間に光遅延を使用することができる。
【0139】
OCT画像化またはその他の測定を実施するために、段階同調レーザ発生源または段階状掃引レーザ発生源の光周波数間隔を測定することが望ましいことが多い。段階状掃引FDMLレーザの光周波数間隔を測定するために、キャビティ内の異なる位置から外に連結されるレーザからの2つの出力を、干渉計使用法で結合することができ、結果として得られる光信号を光検出器で検出することができる。レーザ出力の一部分をそれ自体の時間遅延コピーと干渉計使用法によって結合し、結果として得られた干渉信号が光干渉計によって検出される、外部マッハツェンダーまたはその他類似の干渉計構成を使用することも可能である。これらの構成は、図28に模式的に示されている。補助フィルタ(AF)2801は、レーザキャビティの内部に設置されて、段階的同調出力を発生する。これらの構成は、リングFDMLレーザキャビティ構成を用いて示されているが、これらはその他任意のFDMLレーザキャビティに応用してもよいことを理解されたい。これらの構成は、段階間の周波数間隔が十分に小さく、キャビティの内部または外部のいずれかに位置する高速光検出器D1およびD2と電子回路とによって検出できる段階状掃引FDMLレーザ構成用に機能する。光検出器D1およびD2によって生成される電子ビート信号の周波数は、レーザからの2つの出力の間の光周波数における差に直接的に関係することになる。背景強度変動を相殺して、ビート信号を付加するために、2つの検出器D1およびD2の出力が減算される二重検出器構成を使用することができる。2つの出力の到着間の遅延時間が、1段階周期tSTEP−PERIODに等しくなるように調整されると、各個の段階の光周波数が、電子ビート周波数によって測定できる。遅延時間は、図28に示すようにキャビティの内部または外部とすることができるファイバ遅延2802を使用して調整することができる。光周波数間隔の正確な測定によって、周知の制御方法を使用して、光周波数間隔を制御および調整することが可能になる。このようにして、各個のレーザ段階間の光周波数間隔を、電子ビート周波数として測定することができる。したがって、絶対光周波数差を、非常に高精度で測定することができる。
【0140】
段階的同調FDMLレーザの周波数段階特性が掃引毎に変わることが望まれる状況もある。この状況が、図29に説明されている。そのような状況に対して、補助フィルタは、その透過パターンを、FDMLレーザにおける光の往復時間と同期して変化させることになる。例示的一実施形態において、FDMLフィルタは、レーザキャビティ内の光の光往復時間の1つの倍数に同期して同調されることになる。補助フィルタは、レーザキャビティにおける光の光往復時間の低い倍数に同調されることになる。例えば、FMDLフィルタは、往復時間の第2の倍数で同調されることもでき、補助フィルタは、第1の倍数で同調されてもよい。このようにして、各第2の段階的同調出力は、異なる周波数段階パターンを有することになる。
【0141】
段階的または不連続的な同調のための代替的な同調可能フィルタ
レーザキャビティの内部の単一の同調可能フィルタを使用することによって、FDMLレーザの段階的同調を達成することができる。これは、システム内の構成要素の数を低減し、それによって複雑度を低減するので、望ましいことがある。単一の同調可能フィルタを使用すると、任意に指定可能な光周波数を出力するFDMLレーザを構築することもできる。このことは、FDMLレーザ出力の柔軟性を向上させるので望ましい。段階的同調および任意に指定可能な光周波数を得るために、同調可能フィルタは、2つの特性を有さなければならない。第1に、光を1つまたは複数の離散的な狭い帯域へとフィルタリングすべきであり、その場合に、離散的狭帯域の中心周波数を、FDML動作を可能にする周期的な方法で、時間の経過と共に同調させることが可能である。第2に、離散的な狭帯域の中心周波数は、任意の離散的設定点に設定できなければならない。
【0142】
FDMLにおける段階的または不連続的な同調に対する要件を満足するフィルタには、数タイプのフィルタがある。1つのタイプのフィルタは、通常、動的利得等化器(DGE)、動的チャネル等化器、可変波長ブロッカ(variable wavelength blocker)、波長選択スイッチ、可変波長減衰器または可変光学減衰器と呼ばれる。これらのフィルタは、一般に、波長分割多重化システムからの狭い離散的波長帯域を選択的に減衰させるか、または遮断するために、電気通信において使用されている。広い領域の波長を搬送する光ファイバは、通常、そのようなフィルタの入力となる。入力光は、アレイ導波路格子(AWG)、リング共振器、エシェル格子(echelle grating)またはその他の回折性構成要素を使用して、いくつかの離散的な波長帯域に分割される。次いで、熱光学スイッチ、電子光学スイッチ、可変光学減衰器またはその他のタイプの減衰構成要素などの減衰構成要素を使用して、各離散的波長帯域を部分的に減衰させるか、または完全に遮断することができる。次いで、離散的な波長帯域は、第2のAVG、リング共振器、エシェル格子またはその他の回折性構成要素を使用して、再結合される。フィルタリングされた光は、第2の光ファイバ上で透過されてフィルタから出る。このようにして、フィルタは、1つまたは複数の離散的波長帯域を通過させるように構成することができる。
【0143】
透過された離散的波長帯域の中心波長を、FDMLレーザキャビティにおける光の往復時間と同期された周期的な方法で、同調させることができて、FDML動作が可能になる。フィルタは、離散的波長帯域のみを通過させるように構成できるので、不連続同調が発生する。波長帯域のどの群も、フィルタ内の構成要素を減衰させることによって、任意のときに遮断することができるので、透過波長帯域は任意に設定することができる。したがって、FDMLレーザの離散的波長出力は、単調に増加または減少する波長として生成する必要はなく、出力波長は任意に指定できる。
【0144】
バーニア同調(vernier tuned)FDMLレーザ
FDMLフィルタとしてバーニア効果(Vernier effect)を使用する同調可能フィルタを組み入れることによって、段階的同調FDML出力を実現することも可能である。そのようなバーニア同調可能フィルタには、静的ファブリペローフィルタおよび実質的に同等の帯域幅およびわずかに異なる自由スペクトル領域を有する同調可能ファブリペローフィルタを含めることができる。同調可能ファブリペローフィルタが同調されている間に、透過極大の異なる対が重複して、段階的同調挙動を起こさせる。FDML動作に対して、同調可能ファブリペローフィルタは、キャビティの往復時間に同期して同調されることになる。ここで、複数の透過極大を生成する、その他任意のタイプの光学フィルタを、ファブリペローフィルタの代わりに使用できることを理解されたい。また、静止ファブリペローフィルタおよび同調可能ファブリペローフィルタの組合せは、1つの段階的同調フィルタとして、または1つのバーニア同調可能フィルタとして考えられることも理解されたい。
【0145】
FDMLレーザに対する新規の応用
以前から知られている従来型波長掃引レーザと比較して、FDMLレーザの性能が改善されたことにより、以前には可能ではなかった新規の測定システムが提供される。FDMLレーザの利点は、第1に、掃引速度が劇的に増大したこと、振幅ノイズが劇的に減少したこと、および位相ノイズが劇的に減少したことに関する。したがって、以前には達成不能な速度と感度で、振幅方式測定および位相方式測定を行うことができる。FDMLレーザが以前から知られていた測定システムに組み込まれると、測定システムは、以前には不可能であった測定を実施することができるようになる。
【0146】
1つの具体的な例においては、以前から知られていた測定システムを、低コヒーレンス干渉法に基づくものとすることができる。この例としては、光コヒーレンス断層撮影法、光周波数ドメインイメージング、スペクトルレーダ、低コヒーレンス後方散乱分光法、光コヒーレンス顕微鏡検査または低コヒーレンス干渉法のその他任意の変形形態を挙げることができる。この場合には、FDMLレーザは、以前には達成不能であった速度と感度で、干渉測定を行うことを可能にする。したがって、以下の特性のいずれか、またはそれらの任意の組合せによって特性が表わされるサンプルまたは対象を調査することが可能であり、そのような特性としては、急速過渡事象、急速運動、高吸収、弱反射、弱後方散乱、弱透過および測定信号の弱生成(weak generation)がある。さらに、FDMLレーザは、低コヒーレンス干渉データを可視化する新規の方法を可能にする。これらのデータは、これらのデータが取得される方法とは異なる1D、2D、3Dまたは4D(3D+時間)法で可視化することができる。3つの直交軸(X、Y、およびZ)の固定の直角座標系を使用するときには、例えばデータは、有限のY寸法上で、連続する一連のXZ面として取得されるが、XY「正面」画像として表示することができる。この形状が図30に示されている。
【0147】
第2の例においては、以前から知られていた測定システムを、干渉縞の振幅を解析する、光コヒーレンス断層撮影システムとすることができる。このような例としては、眼科OCTイメージングシステム、内視鏡適合OCTイメージングシステムおよび顕微鏡適合OCTイメージングシステムが挙げられる。この場合に、FDMLレーザは、以前には達成不能であった速度と感度で実行されるOCT測定を提供する。これによって、3次元データセットを、運動アーチファクトの影響を大幅に低減する速度で、高い空間サンプリング密度を有する生体対象において取得することが可能になる。生体対象と関連する運動アーチファクトは、以前には、そのような高密度3D画像化を不可能にしていた。運動アーチファクトは、生体(眼など)の不随意運動、組織運動(tissue motility)(大腸、胃、および食道など)、近傍臓器の運動により、またはその他の過程(呼吸および心臓サイクルなど)に関連する動きによって生じる場合がある。FDMLレーザをOCTイメージングシステムに追加することによって、これらの運動アーチファクトが実質的に低減されるか、または場合によっては、実質的に除去される。これが可能であるのは、FDMLレーザの掃引速度が、組織運動に関連する特性時間よりも、数オーダー高いからである。
【0148】
FDMLレーザを組み込むことによってOCTイメージングにおける運動アーチファクトを低減することによって、以前には不可能であったOCT画像可視化方法が提供される。例えば、サンプルが図30に示すように向けられているとすると、XY面に配向されたOCT画像を表示するのが望ましいことがある。これらのXY画像は「正面」画像と呼ぶことができ、これは、Z成分(「横断面画像」)を含むOCTデータを、Z成分を含まないデータに対して位置合わせするのに望ましい。正面画像のさらに別の利点は、正面画像は、人間の観測者にとって非常になじみがあることである。したがって、正面画像は、横断面画像の価値を高め、人間の観測者により横断面画像がより正確に解釈されることを可能にする。
【0149】
以前から知られていたOCT画像検査用のレーザを使用すると、正面画像は、高い画素密度および高い画像化速度では表示できなかった。運動アーチファクトが存在するサンプルを解析するために、サンプル運動に関連する時間よりも実質的な大きな速度で更新される、詳細な正面図が必要である。FDMLレーザは、運動アーチファクトの負の影響が無視できるように、高画素密度の正面OCT画像検査をビデオ画像速度で可能にする。このことは、以前に記載したレーザを使用するOCTシステムと比較して、OCTデータが取得されるときに、人間の観測者がそれを解釈する能力を向上させる。
【0150】
第3の具体的な例においては、以前から知られていた測定システムを、干渉縞の位相、または干渉縞の振幅と位相の組合せを解析する光コヒーレンス断層撮影システムとすることができる。このような例としては、ドップラ流れOCTイメージングシステム、OCT位相顕微鏡システムおよび位相感知低コヒーレンス干渉法に基づく粗面計(profilometer)を挙げることができる。FDMLレーザは位相ノイズが極めて低く、掃引速度が極めて高いので、これらのシステムに対して重要な便益をもたらす。これによって、速度を向上させた上で、より感度の高い位相測定を可能にする。
【0151】
ドップラ流れOCTイメージングシステムは、サンプル内の流体流れを検出するために、連続する干渉縞の位相の変化を解析する。ドップラOCTシステムに対しては、非常に少量および非常に大量の流れを同一のサンプル内で同時に観測できるように、広い流れのダイナミックレンジを処理することが望ましい。ドップラOCTシステムにおいて波長掃引レーザが使用される場合には、検出可能な最低流速は、レーザの位相ノイズによって限定される。検出可能な最高流速は、レーザの掃引速度によって限定される。FDMLレーザは、以前から知られていた掃引レーザよりも位相ノイズが大幅に低く、以前から知られていた掃引レーザよりも掃引速度が大幅に高い。したがって、FDMLレーザを組み込んだドップラOCTシステムのダイナミックレンジは、大幅に拡張される。これによって、血管および心臓組織などの混濁した流れの領域を含む人間またはその他の生物におけるサンプルを解析することが可能になる。混濁した流れの解析は、以前から知られているドップラOCTシステムでは、これらのシステムの流れのダイナミックレンジが限定されているために不可能である。
【0152】
OCT位相顕微鏡システムおよび位相感応低コヒーレンス粗面計は、光路測定を行うために、干渉縞の定量的な位相を解析する。光路測定の解像度は、振幅感応OCTシステムの場合のレーザの同調帯域幅とは異なり、レーザの位相ノイズによって決まる。OCT位相顕微鏡システムにおいては、複数の軸方向層を解析することができる。位相感応低コヒーレンス粗面計においては、1つの表面層だけが解析される。両方の場合において、軸方向の解像度を向上させて、益々小さくなる特徴を有するサンプルの解析を可能にするために、システムが位相ノイズの低いレーザを内蔵することが望ましい。またレーザは、データ取得時間を低減し、高速の過渡事象の検出を可能にするために、高い掃引速度を有することが望ましい。FDMLレーザは、以前から知られている掃引レーザと比較して、位相ノイズが大幅に低減されると共に、掃引速度が大幅に増加する。これらの改善によって、ナノメートル規模の光路長を、マイクロセカンド規模の期間で解像することが可能になる。応用としては、ピエゾ電気変換器、微小電気機械システム(MEMS)および共振発振器などの急速移動する機械的部品の解析が挙げられる。
【0153】
位相感応低コヒーレンス粗面計の場合には、レーザ出力の長いコヒーレンス長によって、FDMLレーザからのさらなる便益が得られる。粗面計によって1表面だけが解析されるので、測定可能な最大の径路長は、レーザのコヒーレンス長によって決まる。測定可能な最小の径路長は、レーザの位相ノイズによって決まる。FDMLレーザのコヒーレンス長は、通常、約数ミリメートルであり、FDMLレーザの位相ノイズは、通常、約数十ピコメートルであるので、FDMLレーザを内蔵する粗面計のダイナミックレンジは、通常、8桁程度である。このことは、他の低コヒーレンス粗面計に対して大幅な利点であり、ほぼ8桁程度に広がる空間特徴を有するサンプルの解析を可能にする。一部の応用としては、ミクロン規模またはミリメートル規模の曲率を有する生物細胞のナノメートル規模表面特徴を試験すること、およびMEMSデバイスにおけるナノメートル規模の変形を、それらがミクロン規模またはミリメートル規模の距離にわたって作動されるときに試験することが挙げられる。これらのようなサンプルの調査は、以前から知られている波長掃引レーザを使用する、以前から知られている位相感応干渉計システムでは不可能である。
【0154】
表面のトポロジを測定することに加えて、FDML式干渉計を使用する厚さ測定は、重要な利点がある。そのようなシステムにおいては、後方反射光強度は、互いに2つ(例えば、前方および後方表面)以上の表面干渉を形成し、基準アームまたは追加の干渉計を必要としない。応用としては、ガラス、プラスチック薄膜のような透明媒体の厚さ測定、ウエハなどの厚さの測定が考えられる。
【0155】
本明細書において開示される、特定のプロセスは、ハードウエア、ファームウエアまたはソフトウエアとして実現してもよいことを理解されたい。ソフトウエアとして実現される場合には、そのソフトウエアは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、コンパクトディスク読取り専用メモリ(CD−ROM)などの任意の形態のコンピュータ可読媒体に記憶してもよい。動作に際しては、汎用または特定用途のプロセッサが、当該技術においてよく知られている方法で、そのソフトウエアをロードして実行する。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明を、その例示的実施形態を参照して、具体的に示して説明したが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書における構成および細部における様々な変更を行うことができることを、当業者は理解するであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フーリエドメインモードロッキング(FDML)レーザからのレーザ出力から周期的に波長掃引された光場を受けて、測定パラメータを特定するように構成された光測定装置と、
前記測定パラメータを比較パラメータと比較するように構成されるとともに、前記比較の結果の関数としてエラー信号を発生するように構成された前記光測定装置と通信する比較装置と、
該比較装置と通信して、前記エラー信号の関数として前記FDMLレーザの動作の制御パラメータを調整する制御信号を発生するレーザ制御装置と、
を備えたFDMLレーザの動作をFDMLパラメータを制御することによって安定化させる制御システム。
【請求項2】
前記光測定装置は、光検出器と通信する波長選択フィルタである請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記光測定装置が、前記光場における光信号をこれに対応する電気信号に変換する光ダイオードを備えた請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
前記光測定装置が干渉計を備えた請求項1に記載の制御システム。
【請求項5】
前記光測定装置は、前記レーザ出力が、特定の波長を有することを示す過渡信号を検出するように構成される請求項1に記載の制御システム。
【請求項6】
前記光測定装置は、掃引波形の中心波長を測定するように構成される請求項1に記載の制御システム。
【請求項7】
前記比較装置は、前記光測定装置からの前記測定パラメータの到達時間を測定するように構成される請求項1に記載の制御システム。
【請求項8】
前記比較装置は、前記光測定装置からの前記測定パラメータの前記到達時間を、前記比較パラメータの到達時間と比較するように構成される請求項7に記載の制御システム。
【請求項9】
前記制御信号は、前記レーザの時変型で調整式の同調可能波長選択フィルタを調整するための制御電圧である請求項1に記載の制御システム。
【請求項10】
前記制御信号は、前記レーザの利得を調整するための制御電圧である請求項1に記載の制御システム。
【請求項11】
前記制御信号は、前記レーザの偏光を調整するための制御電圧である請求項1に記載の制御システム。
【請求項12】
前記制御信号は、前記レーザにおけるファブリペローフィルタへのDCバイアス電圧入力である請求項1に記載の制御システム。
【請求項13】
前記DCバイアス電圧が、前記レーザの中心波長を制御する請求項12に記載の制御システム。
【請求項14】
前記制御信号は、前記レーザにおけるファブリペローフィルタに対するAC駆動電圧である請求項1に記載の制御システム。
【請求項15】
前記制御信号が、前記レーザにおける調整式同調可能フィルタの駆動周波数を調整する請求項1に記載の制御システム。
【請求項16】
前記制御信号が、前記レーザにおける調整式同調可能フィルタの駆動振幅を調整する請求項1に記載の制御システム。
【請求項17】
フーリエドメインモードロッキング(FDML)レーザからのレーザ出力から周期的に波長掃引された光場を受けて、測定パラメータを特定するように構成された光測定装置と、
前記測定パラメータの関数として直接制御信号を発生するように構成された前記光測定装置と通信する電子処理装置と、
該電子処理装置と通信して、前記制御信号の関数として前記FDMLレーザの動作の制御パラメータを調整するレーザ制御装置と、
を備えたFDMLレーザにおけるFDML動作のための制御信号を再生可能に発生させるシステム。
【請求項18】
前記電子処理装置が、電子帯域通過フィルタを含む請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記光測定装置は、光検出器と通信する波長選択フィルタである請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記電子処理装置は、前記測定パラメータを電子的に修正するように構成されており、前記制御信号が、前記FDMLレーザにおける調整式同調可能フィルタを駆動する請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記レーザ制御装置が、ファブリペローフィルタ用のDC電圧を生成する請求項17に記載のシステム。
【請求項22】
前記レーザ制御装置が、ファブリペローフィルタ用のAC駆動電圧を発生する請求項17に記載のシステム。
【請求項23】
フーリエドメインモードロッキング(FDML)レーザのレーザ出力から周期的に波長掃引された光場を受けて、測定パラメータを特定するように構成された光測定装置と、
前記測定パラメータに基づいて、非正弦波出力制御信号を発生し、前記FDMLレーザの同調可能波長選択フィルタの時間対波長同調特性を調整するように構成された電子処理装置と、
を備えたFDMLレーザにおけるFDML動作のための制御信号を発生するシステム。
【請求項24】
前記電子処理装置は、電子波形シンセサイザである請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記制御信号が、準周期駆動波形を生成する請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
前記準周期駆動波形は、FDMLレーザキャビティにおける分散効果を補償するように構成される請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記駆動波形が、定時に光周波数の線形依存性を有する波長掃引出力を生成する請求項23に記載のシステム。
【請求項28】
前記フィルタ制御信号が、前記フィルタに適用される所定の数値的に最適化された波形に前記駆動波形を調整する請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記フィルタに適用される前記所定の波形は、閉ループ内で制御される請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
フーリエドメインモードロッキング(FDML)レーザのレーザ出力から周期的に波長掃引された光場を受けて、測定パラメータを特定するように構成された光測定装置と、
前記測定パラメータに基づいて、時間依存利得制御信号を生成し、前記FDMLレーザのレーザ利得要素を調整して、前記レーザの強度対波長出力を制御するように構成された電子処理装置と、
を備えたFDMLレーザにおけるFDML動作のための制御信号を発生するシステム。
【請求項31】
前記利得制御信号は、一方向波長掃引を発生させる請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
FDMLレーザからの出力を受けて、前記レーザ出力に基づいて、測定偏光状態を特定するように構成された偏光状態分析装置と、
前記測定偏光状態を受けて、前記測定偏光状態に基づいて偏光制御信号を発生するように構成された処理装置と、
前記偏光制御信号の関数として前記光の偏光状態を変化させるように構成された能動偏光制御器と、
を備えたFDMLレーザにおける遅延ファイバの偏光色度および楕円偏光リターダンスを管理する制御システム。
【請求項33】
前記偏光制御器は、前記FDMLレーザのキャビティの外部に配置されて、前記レーザキャビティの外部の前記光の偏光状態を変化させるように構成される請求項32に記載の制御システム。
【請求項34】
前記偏光制御器は、前記FDMLレーザのキャビティの内部に配置されて、前記レーザキャビティの内部の前記光の偏光状態を変化させるように構成される請求項32に記載の制御システム。
【請求項35】
前記偏光制御信号は、時変型電子制御信号であり、該時変型電子制御信号は、準偏光解消レーザ光を発生させるために、前記レーザと関係して、測定システムのサンプリング速度よりも速い速度で時間的に変化する請求項32に記載の制御システム。
【請求項36】
前記偏光制御信号は、前記FDMLレーザの瞬間コヒーレンス時間よりも短い期間にわたって変化する時変型電子制御信号である請求項32に記載の制御システム。
【請求項37】
サンプリング内制御方法を用いるフィードバックループを備えた請求項32に記載の制御システム。
【請求項38】
掃引内制御方法を用いるフィードバックループを備えた請求項32に記載の制御システム。
【請求項39】
サンプリング間制御方法を用いるフィードバックループを備えた請求項32に記載の制御システム。
【請求項40】
長期制御方法を用いるフィードバックループを備えた請求項32に記載の制御システム。
【請求項41】
レーザからレーザ出力を受けるように構成された第1の分散要素であって、それぞれの波長に対してそれぞれの偏光回転を与えて、空間的に分散した光を生じるように構成された分散要素と、
それぞれの波長成分に、直交偏光状態のそれぞれの差動位相リターデーションを与えるように構成された前記空間的に分散した光を受ける複屈折材料のくさびと、
を備えたFDMLレーザにおける遅延ファイバの偏光色度および楕円偏光リターダンスを受動的に管理する制御システム。
【請求項42】
FDMLレーザからレーザ出力を受けるように構成された結合装置と、
前記レーザ出力のそれぞれの波長に対してそれぞれの偏光回転を与えるように構成された複数のファイバループをそれぞれ含む複数の複屈折ユニットと、
異なる波長成分が異なる複屈折を受けるそれぞれの位置において、前記レーザ出力のそれぞれの部分を反射して戻すように構成された一対の複屈折ユニットの間にそれぞれが位置する複数の反射器と、
を備えたFDMLレーザにおける遅延ファイバの偏光色度および楕円偏光リターダンスを受動的に管理する制御システム。
【請求項43】
特定の波長を有する波動を増幅するように構成された利得要素と、
であって、同調可能フィルタ要素が波動を選択的にフィルタリングするように構成されている前記利得要素と通信する時変型の同調可能波長選択フィルタと、
前記同調可能フィルタ要素および前記利得要素と通信するフィードバック要素と、
前記FDMLレーザのキャビティの内部の波長掃引光波形を、前記遅延ファイバ中を2つの異なる方向に伝播するように誘導するように構成された少なくとも1つの光学要素と、
を備えたFDMLレーザにおける遅延ファイバの偏光色度および楕円偏光リターダンスへの感度を低減した光を発生させるFDMLレーザ。
【請求項44】
前記少なくとも1つの光学要素は、前記光波形の2つの直交偏光状態を切り換えて、光波が後方に伝播するときに、前記光遅延ファイバにおける偏光色度および楕円偏光リターダンスの補償を行うように構成されたファラデー回転ミラーである請求項43に記載のレーザ。
【請求項45】
前記少なくとも1つの光学要素は、少なくとも1つの遅延構成要素を通過して前後方向に移動する前記光波形を分離するように構成された偏光ビームスプリッタである請求項43に記載のレーザ。
【請求項46】
前記少なくとも1つの光学要素は、少なくとも1つの遅延構成要素を通過して前後方向に移動する前記光波を分離するように構成されたサーキュレータである請求項43に記載のレーザ。
【請求項47】
前記少なくとも1つの光学要素は、前記FDMLキャビティの内部のマッハツェンダー干渉計である請求項43に記載のレーザ。
【請求項48】
前記干渉計のアーム長の差は、レーザ出力の1光波長よりも実質的に小さい長さとバランスされる請求項47に記載のレーザ。
【請求項49】
前記干渉計のアーム長の差は、前記レーザの瞬間コヒーレンス長よりも小さい長さとバランスされる請求項47に記載のレーザ。
【請求項50】
前記干渉計のアーム長は、前記レーザの瞬間コヒーレンス長よりも大きい長さとバランスされる請求項47に記載のレーザ。
【請求項51】
FDMLレーザの前記波長掃引波形を少なくとも2つの部分に分離する分離光学要素と、
前記少なくとも2つの部分の間に時間遅延を導入する遅延要素と、
前記時間遅延を導入するのと同時に、前記少なくとも2つの部分を再結合する再結合要素と、
を備えたFDMLレーザの波長掃引波形を修正するシステム。
【請求項52】
前記分離要素、遅延要素および再結合要素は、複数のマッハツェンダー干渉計の列であり、各干渉計のアーム長ミスマッチが、最大キャビティ全長の2の累乗の分数に実質的に等しい請求項51に記載のレーザ。
【請求項53】
前記分離要素、遅延要素および再結合要素は、個々の波長または波長群を選択するように構成された、または分散補償のために構成された前記FDMLレーザのキャビティの内部のスイッチを備えた請求項51に記載のレーザ。
【請求項54】
前記分離要素、遅延要素および再結合要素は、個々の波長または波長群を選択するように構成された、または分散補償のために構成された前記FDMLレーザのシグマリングレーザキャビティの内部の光位相変調器を備えた請求項51に記載のレーザ。
【請求項55】
フーリエドメインモードロッキング(FDML)レーザの測定過渡出力強度を検出する光検出器と、
前記比較の結果の関数としてエラー信号を生成して、前記FDMLレーザの同期波形ドライバの掃引周波数を調整するように構成された前記光検出器と通信して前記測定過渡出力強度を比較パラメータと比較する比較装置と、
を備えたFDMLレーザにおける調整式同調可能光学フィルタの掃引周波数をFDMLレーザのキャビティの光往復時間と同期させる制御システム。
【請求項56】
波長選択フィルタと通信する少なくとも1つの光検出器と、
該少なくとも1つの光検出器と通信して、前記光検出器からの信号のタイミングを、フーリエドメインモードロッキング(FDML)出力掃引と既知の位相関係を有する固定クロックのタイミングと比較するとともに、該比較の関数として、前記ファブリペローフィルタのDCオフセット電圧を調整するエラー信号を発生するように構成された比較装置と、
を備えたFDMLレーザのキャビティの内部のファブリペローフィルタのDC電圧を調整する制御システム。
【請求項57】
特定の波長を有する波動を増幅するように構成された利得要素と、
前記利得要素と通信し、波動を選択的にフィルタリングするように構成されると共に、時変的、反復的かつ周期的な方法で周期Tと同調される時変型で調整式の同調可能波長選択フィルタ要素と、
該同調可能波長選択フィルタ要素と通信し、波動を選択可能な方法でフィルタリングするように構成されていると共に、前記利得要素の利得帯域幅内で複数の透過極大を有する補助波長選択フィルタ要素と、
該補助フィルタ要素および前記利得要素と通信するフィードバック要素と、
前記時変型で調整式の同調可能波長選択フィルタ要素を含む回路と、を含み、
前記補助波長選択フィルタ要素、前記利得要素および前記フィードバック要素は、波動が前記回路を通過して伝播する往復時間が周期Tの非ゼロの整数倍に実質的に等しい構成である離散的な一連の光周波数にわたって段階状に掃引される光を発生させるFDMLレーザ。
【請求項58】
前記時変型で調整式の同調可能フィルタ要素の前記利得帯域幅は、前記補助フィルタ要素の自由スペクトル領域よりも小さい請求項57に記載のレーザ。
【請求項59】
前記時変型で調整式の同調可能フィルタ要素の前記利得帯域幅は、前記補助フィルタ要素の自由スペクトル領域よりも大きい請求項57に記載のレーザ。
【請求項60】
前記時変型で調整式の同調可能フィルタ要素の帯域幅は、前記補助フィルタ要素の自由スペクトル領域にほぼ等しい請求項57に記載のレーザ。
【請求項61】
前記補助フィルタは、ファブリペローフィルタである請求項57に記載のレーザ。
【請求項62】
前記補助フィルタは、1THz未満の自由スペクトル領域を有する請求項61に記載のレーザ。
【請求項63】
前記時変型で調整式の同調可能フィルタ要素は、ファブリペローフィルタである請求項57に記載のレーザ。
【請求項64】
前記時変型で調整式の同調可能フィルタ要素は、1THzを超える自由スペクトル領域を有する請求項63に記載のレーザ。
【請求項65】
前記レーザからの光出力波を、時間的に遅延された前記レーザの別の光出力波と結合することによって、無線周波数ビート信号を発生するように構成された再結合要素を含み、前記無線周波数ビート信号が、連続する光周波数段階間の光周波数の差の測定データを与える請求項57に記載のレーザ。
【請求項66】
前記2つの光出力波の間の時間遅延は、連続する光周波数段階間の時間差またはその整数倍に実質的に等しい請求項65に記載のレーザ。
【請求項67】
前記補助フィルタは、実質的に一定の波長透過特性を有する請求項57に記載のレーザ。
【請求項68】
前記補助フィルタは、電子回路によって熱的に安定化されている請求項57に記載のレーザ。
【請求項69】
前記補助フィルタの透過率は、追加の狭帯域光源によって測定される請求項57に記載のレーザ。
【請求項70】
前記補助フィルタの透過率は、外部光周波数基準に能動的にロックされる請求項57に記載のレーザ。
【請求項71】
前記補助フィルタは、前記FDMLレーザのレーザキャビティの光往復時間の1つの倍数に、時変的、反復的、周期的な方法で同調され、前記時変型で調整式の同調可能フィルタ要素は、前記レーザキャビティの光往復時間の別の倍数に、時変的、反復的、周期的な方法で同調される請求項57に記載のレーザ。
【請求項72】
前記補助フィルタは、前記FDMLレーザのレーザキャビティの光往復時間の1つの倍数に、時変的、反復的、周期的な方法で同調され、前記倍数が、前記時変型で調整式の同調可能フィルタ要素が同調される倍数よりも高い請求項71に記載のレーザ。
【請求項73】
特定の波長を有する波動を増幅するように構成された利得要素と、
該利得要素と通信し、任意に選択することができる離散的狭波長帯域内で選択的な方法で波をフィルタリングするように構成されると共に、周期Tで、時変的、反復的、周期的方法で同調されるように構成されている時変型で調整式の離散的に同調可能な波長選択フィルタ要素と、
該離散的に同調可能なフィルタ要素および前記利得要素と通信するフィードバック要素と、
前記離散的に同調可能な波長選択フィルタ要素を含む回路と、を備え、
前記利得要素および前記フィードバック要素は、波動が前記回路を通過して伝播する往復時間が周期Tの非ゼロの整数倍に実質的に等しい構成である不連続で離散的な一連の光周波数に対して同調される光を発生するFDMLレーザ。
【請求項74】
前記離散的に同調可能な波長選択フィルタ要素は、動的利得等化器、動的チャネル等化器、可変波長ブロッカ、波長選択スイッチ、可変波長減衰器および可変光減衰器からなる群の少なくとも1つである請求項73に記載のレーザ。
【請求項75】
前記離散的に同調可能な波長選択フィルタ要素は、ファイバブラッグ格子を含む請求項73に記載のレーザ。
【請求項76】
前記離散的に同調可能な波長選択フィルタ要素は、MEMS同調可能フィルタである請求項73に記載のレーザ。
【請求項77】
前記離散的に同調可能な波長選択フィルタは、バーニア同調可能フィルタである請求項73に記載のレーザ。
【請求項78】
前記バーニア同調可能フィルタは、2つのファブリペローフィルタを含む請求項77に記載のレーザ。
【請求項1】
フーリエドメインモードロッキング(FDML)レーザからのレーザ出力から周期的に波長掃引された光場を受けて、測定パラメータを特定するように構成された光測定装置と、
前記測定パラメータを比較パラメータと比較するように構成されるとともに、前記比較の結果の関数としてエラー信号を発生するように構成された前記光測定装置と通信する比較装置と、
該比較装置と通信して、前記エラー信号の関数として前記FDMLレーザの動作の制御パラメータを調整する制御信号を発生するレーザ制御装置と、
を備えたFDMLレーザの動作をFDMLパラメータを制御することによって安定化させる制御システム。
【請求項2】
前記光測定装置は、光検出器と通信する波長選択フィルタである請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記光測定装置が、前記光場における光信号をこれに対応する電気信号に変換する光ダイオードを備えた請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
前記光測定装置が干渉計を備えた請求項1に記載の制御システム。
【請求項5】
前記光測定装置は、前記レーザ出力が、特定の波長を有することを示す過渡信号を検出するように構成される請求項1に記載の制御システム。
【請求項6】
前記光測定装置は、掃引波形の中心波長を測定するように構成される請求項1に記載の制御システム。
【請求項7】
前記比較装置は、前記光測定装置からの前記測定パラメータの到達時間を測定するように構成される請求項1に記載の制御システム。
【請求項8】
前記比較装置は、前記光測定装置からの前記測定パラメータの前記到達時間を、前記比較パラメータの到達時間と比較するように構成される請求項7に記載の制御システム。
【請求項9】
前記制御信号は、前記レーザの時変型で調整式の同調可能波長選択フィルタを調整するための制御電圧である請求項1に記載の制御システム。
【請求項10】
前記制御信号は、前記レーザの利得を調整するための制御電圧である請求項1に記載の制御システム。
【請求項11】
前記制御信号は、前記レーザの偏光を調整するための制御電圧である請求項1に記載の制御システム。
【請求項12】
前記制御信号は、前記レーザにおけるファブリペローフィルタへのDCバイアス電圧入力である請求項1に記載の制御システム。
【請求項13】
前記DCバイアス電圧が、前記レーザの中心波長を制御する請求項12に記載の制御システム。
【請求項14】
前記制御信号は、前記レーザにおけるファブリペローフィルタに対するAC駆動電圧である請求項1に記載の制御システム。
【請求項15】
前記制御信号が、前記レーザにおける調整式同調可能フィルタの駆動周波数を調整する請求項1に記載の制御システム。
【請求項16】
前記制御信号が、前記レーザにおける調整式同調可能フィルタの駆動振幅を調整する請求項1に記載の制御システム。
【請求項17】
フーリエドメインモードロッキング(FDML)レーザからのレーザ出力から周期的に波長掃引された光場を受けて、測定パラメータを特定するように構成された光測定装置と、
前記測定パラメータの関数として直接制御信号を発生するように構成された前記光測定装置と通信する電子処理装置と、
該電子処理装置と通信して、前記制御信号の関数として前記FDMLレーザの動作の制御パラメータを調整するレーザ制御装置と、
を備えたFDMLレーザにおけるFDML動作のための制御信号を再生可能に発生させるシステム。
【請求項18】
前記電子処理装置が、電子帯域通過フィルタを含む請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記光測定装置は、光検出器と通信する波長選択フィルタである請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記電子処理装置は、前記測定パラメータを電子的に修正するように構成されており、前記制御信号が、前記FDMLレーザにおける調整式同調可能フィルタを駆動する請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記レーザ制御装置が、ファブリペローフィルタ用のDC電圧を生成する請求項17に記載のシステム。
【請求項22】
前記レーザ制御装置が、ファブリペローフィルタ用のAC駆動電圧を発生する請求項17に記載のシステム。
【請求項23】
フーリエドメインモードロッキング(FDML)レーザのレーザ出力から周期的に波長掃引された光場を受けて、測定パラメータを特定するように構成された光測定装置と、
前記測定パラメータに基づいて、非正弦波出力制御信号を発生し、前記FDMLレーザの同調可能波長選択フィルタの時間対波長同調特性を調整するように構成された電子処理装置と、
を備えたFDMLレーザにおけるFDML動作のための制御信号を発生するシステム。
【請求項24】
前記電子処理装置は、電子波形シンセサイザである請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記制御信号が、準周期駆動波形を生成する請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
前記準周期駆動波形は、FDMLレーザキャビティにおける分散効果を補償するように構成される請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記駆動波形が、定時に光周波数の線形依存性を有する波長掃引出力を生成する請求項23に記載のシステム。
【請求項28】
前記フィルタ制御信号が、前記フィルタに適用される所定の数値的に最適化された波形に前記駆動波形を調整する請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記フィルタに適用される前記所定の波形は、閉ループ内で制御される請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
フーリエドメインモードロッキング(FDML)レーザのレーザ出力から周期的に波長掃引された光場を受けて、測定パラメータを特定するように構成された光測定装置と、
前記測定パラメータに基づいて、時間依存利得制御信号を生成し、前記FDMLレーザのレーザ利得要素を調整して、前記レーザの強度対波長出力を制御するように構成された電子処理装置と、
を備えたFDMLレーザにおけるFDML動作のための制御信号を発生するシステム。
【請求項31】
前記利得制御信号は、一方向波長掃引を発生させる請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
FDMLレーザからの出力を受けて、前記レーザ出力に基づいて、測定偏光状態を特定するように構成された偏光状態分析装置と、
前記測定偏光状態を受けて、前記測定偏光状態に基づいて偏光制御信号を発生するように構成された処理装置と、
前記偏光制御信号の関数として前記光の偏光状態を変化させるように構成された能動偏光制御器と、
を備えたFDMLレーザにおける遅延ファイバの偏光色度および楕円偏光リターダンスを管理する制御システム。
【請求項33】
前記偏光制御器は、前記FDMLレーザのキャビティの外部に配置されて、前記レーザキャビティの外部の前記光の偏光状態を変化させるように構成される請求項32に記載の制御システム。
【請求項34】
前記偏光制御器は、前記FDMLレーザのキャビティの内部に配置されて、前記レーザキャビティの内部の前記光の偏光状態を変化させるように構成される請求項32に記載の制御システム。
【請求項35】
前記偏光制御信号は、時変型電子制御信号であり、該時変型電子制御信号は、準偏光解消レーザ光を発生させるために、前記レーザと関係して、測定システムのサンプリング速度よりも速い速度で時間的に変化する請求項32に記載の制御システム。
【請求項36】
前記偏光制御信号は、前記FDMLレーザの瞬間コヒーレンス時間よりも短い期間にわたって変化する時変型電子制御信号である請求項32に記載の制御システム。
【請求項37】
サンプリング内制御方法を用いるフィードバックループを備えた請求項32に記載の制御システム。
【請求項38】
掃引内制御方法を用いるフィードバックループを備えた請求項32に記載の制御システム。
【請求項39】
サンプリング間制御方法を用いるフィードバックループを備えた請求項32に記載の制御システム。
【請求項40】
長期制御方法を用いるフィードバックループを備えた請求項32に記載の制御システム。
【請求項41】
レーザからレーザ出力を受けるように構成された第1の分散要素であって、それぞれの波長に対してそれぞれの偏光回転を与えて、空間的に分散した光を生じるように構成された分散要素と、
それぞれの波長成分に、直交偏光状態のそれぞれの差動位相リターデーションを与えるように構成された前記空間的に分散した光を受ける複屈折材料のくさびと、
を備えたFDMLレーザにおける遅延ファイバの偏光色度および楕円偏光リターダンスを受動的に管理する制御システム。
【請求項42】
FDMLレーザからレーザ出力を受けるように構成された結合装置と、
前記レーザ出力のそれぞれの波長に対してそれぞれの偏光回転を与えるように構成された複数のファイバループをそれぞれ含む複数の複屈折ユニットと、
異なる波長成分が異なる複屈折を受けるそれぞれの位置において、前記レーザ出力のそれぞれの部分を反射して戻すように構成された一対の複屈折ユニットの間にそれぞれが位置する複数の反射器と、
を備えたFDMLレーザにおける遅延ファイバの偏光色度および楕円偏光リターダンスを受動的に管理する制御システム。
【請求項43】
特定の波長を有する波動を増幅するように構成された利得要素と、
であって、同調可能フィルタ要素が波動を選択的にフィルタリングするように構成されている前記利得要素と通信する時変型の同調可能波長選択フィルタと、
前記同調可能フィルタ要素および前記利得要素と通信するフィードバック要素と、
前記FDMLレーザのキャビティの内部の波長掃引光波形を、前記遅延ファイバ中を2つの異なる方向に伝播するように誘導するように構成された少なくとも1つの光学要素と、
を備えたFDMLレーザにおける遅延ファイバの偏光色度および楕円偏光リターダンスへの感度を低減した光を発生させるFDMLレーザ。
【請求項44】
前記少なくとも1つの光学要素は、前記光波形の2つの直交偏光状態を切り換えて、光波が後方に伝播するときに、前記光遅延ファイバにおける偏光色度および楕円偏光リターダンスの補償を行うように構成されたファラデー回転ミラーである請求項43に記載のレーザ。
【請求項45】
前記少なくとも1つの光学要素は、少なくとも1つの遅延構成要素を通過して前後方向に移動する前記光波形を分離するように構成された偏光ビームスプリッタである請求項43に記載のレーザ。
【請求項46】
前記少なくとも1つの光学要素は、少なくとも1つの遅延構成要素を通過して前後方向に移動する前記光波を分離するように構成されたサーキュレータである請求項43に記載のレーザ。
【請求項47】
前記少なくとも1つの光学要素は、前記FDMLキャビティの内部のマッハツェンダー干渉計である請求項43に記載のレーザ。
【請求項48】
前記干渉計のアーム長の差は、レーザ出力の1光波長よりも実質的に小さい長さとバランスされる請求項47に記載のレーザ。
【請求項49】
前記干渉計のアーム長の差は、前記レーザの瞬間コヒーレンス長よりも小さい長さとバランスされる請求項47に記載のレーザ。
【請求項50】
前記干渉計のアーム長は、前記レーザの瞬間コヒーレンス長よりも大きい長さとバランスされる請求項47に記載のレーザ。
【請求項51】
FDMLレーザの前記波長掃引波形を少なくとも2つの部分に分離する分離光学要素と、
前記少なくとも2つの部分の間に時間遅延を導入する遅延要素と、
前記時間遅延を導入するのと同時に、前記少なくとも2つの部分を再結合する再結合要素と、
を備えたFDMLレーザの波長掃引波形を修正するシステム。
【請求項52】
前記分離要素、遅延要素および再結合要素は、複数のマッハツェンダー干渉計の列であり、各干渉計のアーム長ミスマッチが、最大キャビティ全長の2の累乗の分数に実質的に等しい請求項51に記載のレーザ。
【請求項53】
前記分離要素、遅延要素および再結合要素は、個々の波長または波長群を選択するように構成された、または分散補償のために構成された前記FDMLレーザのキャビティの内部のスイッチを備えた請求項51に記載のレーザ。
【請求項54】
前記分離要素、遅延要素および再結合要素は、個々の波長または波長群を選択するように構成された、または分散補償のために構成された前記FDMLレーザのシグマリングレーザキャビティの内部の光位相変調器を備えた請求項51に記載のレーザ。
【請求項55】
フーリエドメインモードロッキング(FDML)レーザの測定過渡出力強度を検出する光検出器と、
前記比較の結果の関数としてエラー信号を生成して、前記FDMLレーザの同期波形ドライバの掃引周波数を調整するように構成された前記光検出器と通信して前記測定過渡出力強度を比較パラメータと比較する比較装置と、
を備えたFDMLレーザにおける調整式同調可能光学フィルタの掃引周波数をFDMLレーザのキャビティの光往復時間と同期させる制御システム。
【請求項56】
波長選択フィルタと通信する少なくとも1つの光検出器と、
該少なくとも1つの光検出器と通信して、前記光検出器からの信号のタイミングを、フーリエドメインモードロッキング(FDML)出力掃引と既知の位相関係を有する固定クロックのタイミングと比較するとともに、該比較の関数として、前記ファブリペローフィルタのDCオフセット電圧を調整するエラー信号を発生するように構成された比較装置と、
を備えたFDMLレーザのキャビティの内部のファブリペローフィルタのDC電圧を調整する制御システム。
【請求項57】
特定の波長を有する波動を増幅するように構成された利得要素と、
前記利得要素と通信し、波動を選択的にフィルタリングするように構成されると共に、時変的、反復的かつ周期的な方法で周期Tと同調される時変型で調整式の同調可能波長選択フィルタ要素と、
該同調可能波長選択フィルタ要素と通信し、波動を選択可能な方法でフィルタリングするように構成されていると共に、前記利得要素の利得帯域幅内で複数の透過極大を有する補助波長選択フィルタ要素と、
該補助フィルタ要素および前記利得要素と通信するフィードバック要素と、
前記時変型で調整式の同調可能波長選択フィルタ要素を含む回路と、を含み、
前記補助波長選択フィルタ要素、前記利得要素および前記フィードバック要素は、波動が前記回路を通過して伝播する往復時間が周期Tの非ゼロの整数倍に実質的に等しい構成である離散的な一連の光周波数にわたって段階状に掃引される光を発生させるFDMLレーザ。
【請求項58】
前記時変型で調整式の同調可能フィルタ要素の前記利得帯域幅は、前記補助フィルタ要素の自由スペクトル領域よりも小さい請求項57に記載のレーザ。
【請求項59】
前記時変型で調整式の同調可能フィルタ要素の前記利得帯域幅は、前記補助フィルタ要素の自由スペクトル領域よりも大きい請求項57に記載のレーザ。
【請求項60】
前記時変型で調整式の同調可能フィルタ要素の帯域幅は、前記補助フィルタ要素の自由スペクトル領域にほぼ等しい請求項57に記載のレーザ。
【請求項61】
前記補助フィルタは、ファブリペローフィルタである請求項57に記載のレーザ。
【請求項62】
前記補助フィルタは、1THz未満の自由スペクトル領域を有する請求項61に記載のレーザ。
【請求項63】
前記時変型で調整式の同調可能フィルタ要素は、ファブリペローフィルタである請求項57に記載のレーザ。
【請求項64】
前記時変型で調整式の同調可能フィルタ要素は、1THzを超える自由スペクトル領域を有する請求項63に記載のレーザ。
【請求項65】
前記レーザからの光出力波を、時間的に遅延された前記レーザの別の光出力波と結合することによって、無線周波数ビート信号を発生するように構成された再結合要素を含み、前記無線周波数ビート信号が、連続する光周波数段階間の光周波数の差の測定データを与える請求項57に記載のレーザ。
【請求項66】
前記2つの光出力波の間の時間遅延は、連続する光周波数段階間の時間差またはその整数倍に実質的に等しい請求項65に記載のレーザ。
【請求項67】
前記補助フィルタは、実質的に一定の波長透過特性を有する請求項57に記載のレーザ。
【請求項68】
前記補助フィルタは、電子回路によって熱的に安定化されている請求項57に記載のレーザ。
【請求項69】
前記補助フィルタの透過率は、追加の狭帯域光源によって測定される請求項57に記載のレーザ。
【請求項70】
前記補助フィルタの透過率は、外部光周波数基準に能動的にロックされる請求項57に記載のレーザ。
【請求項71】
前記補助フィルタは、前記FDMLレーザのレーザキャビティの光往復時間の1つの倍数に、時変的、反復的、周期的な方法で同調され、前記時変型で調整式の同調可能フィルタ要素は、前記レーザキャビティの光往復時間の別の倍数に、時変的、反復的、周期的な方法で同調される請求項57に記載のレーザ。
【請求項72】
前記補助フィルタは、前記FDMLレーザのレーザキャビティの光往復時間の1つの倍数に、時変的、反復的、周期的な方法で同調され、前記倍数が、前記時変型で調整式の同調可能フィルタ要素が同調される倍数よりも高い請求項71に記載のレーザ。
【請求項73】
特定の波長を有する波動を増幅するように構成された利得要素と、
該利得要素と通信し、任意に選択することができる離散的狭波長帯域内で選択的な方法で波をフィルタリングするように構成されると共に、周期Tで、時変的、反復的、周期的方法で同調されるように構成されている時変型で調整式の離散的に同調可能な波長選択フィルタ要素と、
該離散的に同調可能なフィルタ要素および前記利得要素と通信するフィードバック要素と、
前記離散的に同調可能な波長選択フィルタ要素を含む回路と、を備え、
前記利得要素および前記フィードバック要素は、波動が前記回路を通過して伝播する往復時間が周期Tの非ゼロの整数倍に実質的に等しい構成である不連続で離散的な一連の光周波数に対して同調される光を発生するFDMLレーザ。
【請求項74】
前記離散的に同調可能な波長選択フィルタ要素は、動的利得等化器、動的チャネル等化器、可変波長ブロッカ、波長選択スイッチ、可変波長減衰器および可変光減衰器からなる群の少なくとも1つである請求項73に記載のレーザ。
【請求項75】
前記離散的に同調可能な波長選択フィルタ要素は、ファイバブラッグ格子を含む請求項73に記載のレーザ。
【請求項76】
前記離散的に同調可能な波長選択フィルタ要素は、MEMS同調可能フィルタである請求項73に記載のレーザ。
【請求項77】
前記離散的に同調可能な波長選択フィルタは、バーニア同調可能フィルタである請求項73に記載のレーザ。
【請求項78】
前記バーニア同調可能フィルタは、2つのファブリペローフィルタを含む請求項77に記載のレーザ。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公表番号】特表2012−506636(P2012−506636A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533216(P2011−533216)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/059324
【国際公開番号】WO2010/047936
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/059324
【国際公開番号】WO2010/047936
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】
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