説明

ブラケット構造

【課題】ブラケット構造において、コンパクトに構成しつつ、ワイヤハーネスが損傷することなく他部品の取り付けを可能にすることにある。
【解決手段】ブラケット構造(14)は、母材(8)に取り付けられるための取付部(17、18)と、他部品(10)を係合するための係合部(19)と、ワイヤハーネス(13)を配索する配索面(20)とを備える。また、係合部(19)は、ブラケット構造(14)に配索するワイヤハーネス(13)に沿うように配設されるとともに、ワイヤハーネス(13)を配索する配索面(20)から立ち上がる縦壁(25)と、この縦壁(25)の上端に接続して他部品(10)を係合する係合孔(26)が形成された係合面(27)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブラケット構造に係り、特にワイヤハーネスを所定の配索経路に配置するブラケット構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において、補機等に接続するワイヤハーネスは、他部品との干渉等を避けるように配索されている。この際、ワイヤハーネスが所定の配索経路を通るように、ブラケット構造を用いることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−178132号公報
【0004】
特許文献1に係るワイヤハーネスの折曲ガイド板は、所要角度に屈曲させた保持板(ガイド板)にワイヤハーネスを配置し、円弧状に湾曲したワイヤハーネスの外周にバンド部を巻き付けることで、保持板の屈曲角度に沿った状態でワイヤハーネスを固定できるというブラケット構造である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の特許文献1では、保持板自体は、ワイヤハーネスが所定の配索経路を取るためのガイドの役目を果たしており、このため、ワイヤハーネスを保持板に沿わせて配索する必要がある。
このため、保持板にはワイヤハーネスを逐一バンド部によって固定を行う必要があり、よって、ワイヤハーネスの配索作業が煩雑になるという不都合があった。また、保持板には、少なくともバンド部を取り付けるための係止部を準備する必要があった。さらに、保持板には他部品を固定するための取付構造を設けておらず、保持板にワイヤハーネス以外の他部品を固定するための取付構造を設けたい場合に、その係止部によって固定構造を設けるスペースが取られてしまい、取付構造を設けることができないという不都合があった。
【0006】
また、従来、限られたスペースの中でのブラケット構造のレイアウトにおいて、ワイヤハーネスと他部品とが干渉するおそれがあり、ワイヤハーネスと他部品との干渉を避けるようにするために、部品の追加や、部品同士のスペース拡大によって、その限られたスペースを超えてしまう場合があり、大型化を招くという不都合があった。
【0007】
そこで、この発明の目的は、コンパクトに構成しつつ、ワイヤハーネスが損傷することなく他部品の取り付けを可能とするブラケット構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、ワイヤハーネスを部分的に保持して母材に取り付けられるブラケット構造にあって、このブラケット構造は、前記母材に取り付けられるための取付部と他部品を係合するための係合部と前記ワイヤハーネスを配索する配索面とを備え、前記係合部は、前記ブラケット構造に配索する前記ワイヤハーネスに沿うように配置されるとともに、前記ワイヤハーネスを配索する配索面から立ち上がる縦壁とこの縦壁の上端に接続して前記他部品を係合する係合孔が形成された係合面とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明のブラケット構造は、コンパクトに構成しつつ、ワイヤハーネスが損傷することなく他部品の取り付けを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は他部品(アンダカバー)を省略して母材(空調ユニット)にブラケット構造を取り付けた斜視図である。(実施例)
【図2】図2は他部品(アンダカバー)を備えて母材(空調ユニット)にブラケット構造を取り付けた斜視図である。(実施例)
【図3】図3は図1の矢印IIIによるブラケット構造の底面図である。(実施例)
【図4】図4は図3のブラケット構造で空調用ユニットを取り外した状態の底面図である。(実施例)
【図5】図5は図4の係合部の拡大底面図である。(実施例)
【図6】図6は図5のVI−VI線による係合部の断面図である。(実施例)
【図7】図7は図1の矢印VIIによるブラケット構造の左下斜めから視た斜視図である。(実施例)
【図8】図8は図7の係合部の正面図である。(実施例)
【図9】図9は図7の係合部の斜視図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明は、ブラケット構造をコンパクトに構成しつつ、ワイヤハーネスが損傷することなく他部品の取り付けを可能にする目的を、他部品の取付構造をワイヤハーネスの配索経路に近接させて配置して実現するものである。
【実施例】
【0012】
図1〜図9は、この発明の実施例を示すものである。
図1、図2において、1は車両、2はこの車両1のインストルメントパネル、3は車室、4は前部カバー、5は収納扉、6はセンタカバーである。
インストルメントパネル2には、空調装置7の一部である空調用ユニット(HVACユニット)8が搭載されているとともに、収納扉5の直下方でアンダカバー用取付部9が設けられている。
空調用ユニット8は、車室3側からアンダカバー10で覆われている。このアンダカバー10は、アンダカバー用取付部9に係止してクリップ等の固定具を用いて固定される上側カバー部11と、空調用ユニット8を車室3側から覆う下側カバー部12とからなる。
【0013】
車両1においては、空調用ユニット8の下端部で、補機等に接続されるワイヤハーネス13が配索される。
このワイヤハーネス13は、空調用ユニット8の下端部からこの空調用ユニット8の側面に沿って上方に延びて車両前方に配置され、また、部分的にブラケット構造14に保持されて母材としての前記空調用ユニット8に取り付けられ、所定の配索経路R(図8参照)に配置される。
【0014】
図1、図3、図4に示すように、ブラケット構造14は、空調ユニット8の下端部に他部品としてのアンダカバー10を取り付けるためのものであって、空調用ユニット8の下端部に取り付けられる板状のブラケット本体15を備える。
このブラケット本体15は、略中央部位で車両前方に突出するボス16を備えるとともに、空調用ユニット8に取り付けられるための取付部として、両端側の一側取付部17と他側取付部18とを備える。一側取付部17は、車両後方に延びるように配置されている。他側取付部18は、一側取付部17と直交方向で、車両左方に延びるように配置されている。
一側取付部17は、図3、図4に示すように、他部品としての前記アンダカバー10を係合するための係合部19と、ワイヤハーネス13を配索する配索面20とを備えている。
一側取付部17・他側取付部18は、下方からの固定具としての一側取付ねじ21・他側取付ねじ22で空調用ユニット8の下端部に固定される。
【0015】
ボス16は、図3に示すように、空調用ユニット8の挿込部23に挿着される。従って、ブラケット構造14は、空調用ユニット8に、一側取付部17・他側取付部18と、挿込部23との2種類の固定構造によって取り付けられる。これにより、ボス16の差し込み方向以外のブラケット構造14が規制され、仮止めとなる。
一側取付部17・他側取付部18と挿込部23とは、インストルメントパネル2の車両1への搭載状態において、一側取付部17・他側取付部18がワイヤハーネス13よりも車両後方に配置されている一方、挿込部23が車両前方に配置されている。つまり、上記の夫々隣り合う構造同士がワイヤハーネス13を境に車両前方と車両後方とに配置され(図3、図4参照)、いわゆる千鳥状に配置されている。
この理由は、ブラケット構造14にワイヤハーネス13を配索経路Rに沿って配索していることで、ワイヤハーネス13が元の形状に戻ろうとする弾性力がブラケット構造14に働くためである。そして、上記のように、一側取付部17・他側取付部18と挿込部23とを所定箇所に配置することで、ブラケット構造14へその弾性力の影響を極力軽減させることができる。
【0016】
アンダカバー10には、図7に示すように、ブラケット構造14の係合部19に係合する係合爪24が設けられている。そして、ブラケット構造14の係合部19にアンダカバー10の係合爪24を係合させることで、アンダカバー10が空調用ユニット8に固定され、よって、インストルメントパネル2に安定してアンダカバー10を固定できる。
また、この場合、係合部19に挿着した係合爪24が係合部19内に収納されるように設定されており、ブラケット構造14の下端部から係合爪24が突出しない設定となっている(図8、図9参照)。このため、ブラケット構造14の取り付け相手である空調用ユニット8には係合爪24が干渉することなく、ブラケット構造14にアンダカバー10を取り付けできる。
更に、一側取付部17の係合部19は、図4に示すように、ワイヤハーネス13よりも車両後方に配置され且つ配索面20よりも突出され、ブラケット構造14に配索するワイヤハーネス13に沿うように配設されるとともに、図4〜図7に示すように、ワイヤハーネス13を配索する配索面20から立ち上がる縦壁25と、この縦壁25の上端に接続して他部品としてのアンダカバー10を係合する係合孔26が形成された係合面27とを備えている。
【0017】
そして、空調用ユニット8にブラケット構造14を取り付ける際には、先ず、ブラケット構造14のボス16を空調用ユニット8に設けた挿込部23に挿し込み、このとき、ブラケット構造14は、空調用ユニット8に対してボス16の挿込方向のみに沿うように移動が可能な状態で仮止めされる。そして、このボス16を空調用ユニット8に挿し込んだ状態で他の2箇所の一側取付部17・他側取付部18を一側取付ねじ21・他側取付ねじ22で締め付けることで、空調用ユニット8へのブラケット構造14の固定が完了する。
このように、挿込部23を用いることで、作業者は、一側取付部17・他側取付部18に一側取付ねじ21・他側取付ねじ22を締め付ける際に、ブラケット構造14の動きがボス16の挿込方向のみに規制されて、一側取付部17・他側取付部18に一側取付ねじ21・他側取付ねじ22による締め付け作業がしやすくなるとともに、取付部材の削減も図ることができる。
また、係合部19の係合面27の法線方向は、車両1の下側且つ車両後方に指向するように傾斜している。係合面27を、車両後方のみに指向させるのではなく、車両下側にも指向させることで、作業者のアンダカバー10の組付性の向上を図っている。
【0018】
ところで、インストルメントパネル2の車両1への搭載状態において、係合部19は、ワイヤハーネス13よりも車両後方に位置している(図1参照)。これは、車両後方から取り付けるアンダカバー10を取り付けしやすくするとともに、係合部19の近傍に配置されるワイヤハーネス13の損傷防止も可能としている。アンダカバー10は、ブラケット構造14を既に取り付けてある空調用ユニット8をインストルメントパネル2に組み込み、そのインストルメントパネル2を車両1に搭載してから取り付ける。このとき、ブラケット構造14はインストルメントパネル2の下面に位置しており、アンダカバー10をブラケット構造14に取り付ける際には、作業者が係合孔を目視し難いものである。
このため、この実施例においては、ブラケット構造14の係合部19を配索面20から突出させ、さらにワイヤハーネス13を係合部19よりも車両前方に配置する。つまり、係合部19へのアンダカバー10の取り付け方向である車両後方から見て、ワイヤハーネス13を係合部19に隠れるように配置したので、その係合部19にアンダカバー10を取り付ける際に、ワイヤハーネス13を傷つけることなく、アンダカバー10を取り付けできる。
【0019】
また、係合部19を、配索経路Rに配索されるワイヤハーネス13に沿うように設けており、係合部19の縦壁25がワイヤハーネス13のガイドの役目を果たしている。ここで、縦壁25とは、ワイヤハーネス13に近接してワイヤハーネス13のガイドの役目を果たす壁を指している。これにより、ワイヤハーネス13をブラケット構造14に固定するための固定構造を設ける必要がなくなるので、固定構造の削減とワイヤハーネス13の配索作業の時間削減を図ることができる。
また、係合部19とワイヤハーネス13とを近接させて配置しているので、ブラケット構造14をコンパクトに形成できる。
【0020】
係合部19は、図8、図9に示すように、係合面27の周囲に該係合面27の交差方向に沿うように延びる縦面28(図8、図9の斜線部分で示す)を備えている。
ここで、縦面28とは、縦壁25をその一部として係合面27の周囲に配置する複数の面を指すものである。これにより、係合部19を箱状に突出させることで、係合部19の剛性向上を図っている。
即ち、係合面27の周囲には縦壁25を含む縦面28を係合面27から交差する方向に沿うように設け、その縦面28をブラケット構造14に接続させている。
一側取付部17には、一側取付ねじ21の近傍で、アンダカバー10を取り付けるための係合部19が設けられている。この係合部19は、ワイヤハーネス13を配索する配索面20よりも突出している。
具体的には、係合部19は、ブラケット構造14のワイヤハーネス13を配索する配索面20より立ち上がる縦壁25と、この縦壁25の上端から配索面20に沿うように設けられる係合面27を備える。
そして、この係合面27には、図7、図8に示すように、アンダカバー10の係合爪24が係合する係合孔26が設けられている。この係合孔26に、挿入方向Fから係合爪24を挿着し、アンダカバー10の下端部をブラケット構造14に固定できる。
また、縦壁25は、係合部19を形成するものであって、ワイヤハーネス13の動きを規制し、さらに、ワイヤハーネス13が係合孔26を覆わないようにするものである。
【0021】
ブラケット本体15には、図4に示すように、配索面20上において、複数のクランプ等の取付具を用いてワイヤハーネス13を固定するものであり、一側取付部17側で、ワイヤハーネス固定点となるベルトクランプ29と、他側取付部18側で、ワイヤハーネス固定点となるヒンジ付きクランプ30とにより、ワイヤハーネス13が固定される。ヒンジ付きクランプ29は、ブラケット本体15に一体的に設けられたものである。
【0022】
以上、この発明の実施例について説明してきたが、上述の実施例の構成を請求項毎に当てはめて説明する。
請求項1に係る発明では、ブラケット構造14は、母材である空調用ユニット8に取り付けられるための一側取付部17・他側取付部18と、他部品であるアンダカバー10を係合するための係合部19と、ワイヤハーネス13を配索する配索面20とを備えている。また、係合部19は、ブラケット構造14に配索するワイヤハーネス13に沿うように配置されるとともに、ワイヤハーネス13を配索する配索面20から立ち上がる縦壁25と、この縦壁25の上端に接続してアンダカバー10の係合爪24を係合する係合孔26が形成された係合面27とを備える。
これにより、ブラケット構造14がワイヤハーネス13だけでなくアンダカバー10の取り付けも兼ねることができ、部品点数を削減できる。また、他部品を取り付けるための係合部19をワイヤハーネス13の配索経路Rに近接させて設置でき、ブラケット構造14をコンパクトに形成できるとともに、係合部19の構成要素の一部である縦壁25にワイヤハーネス13のガイドの役目を持たせることができる。
また、請求項2に係る発明では、係合部19は、係合面27の周囲に該係合面27の交差方向に沿うように延びる縦面28を備えている。また、アンダカバー10の係合爪24は、係合部19内に収納される。
これにより、係合部19を箱状に形成することが可能となり、剛性の高い係合部19を形成することができる。また、係合部19内に係合爪24を収納することで、係合爪24が空調用ユニット8に干渉することなくアンダカバー10をブラケット構造14に取り付けできる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
この発明に係るブラケット構造を、各種車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 車両
2 インストルメントパネル
3 車室
7 空調装置
8 空調用ユニット
10 アンダカバー
13 ワイヤハーネス
14 ブラケット構造
15 ブラケット本体
16 ボス
17 一側取付部
18 他側取付部
19 係合部
20 配索面
23 挿込部
24 係合爪
25 縦壁
26 係合孔
27 係合面
28 縦面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスを部分的に保持して母材に取り付けられるブラケット構造であって、このブラケット構造は、前記母材に取り付けられるための取付部と他部品を係合するための係合部と前記ワイヤハーネスを配索する配索面とを備え、前記係合部は、前記ブラケット構造に配索する前記ワイヤハーネスに沿うように配置されるとともに、前記ワイヤハーネスを配索する配索面から立ち上がる縦壁とこの縦壁の上端に接続して前記他部品を係合する係合孔が形成された係合面とを備えることを特徴とするブラケット構造。
【請求項2】
前記係合部は前記係合面の周囲に該係合面の交差方向に沿うように延びる縦面を備え、前記他部品の係合爪を前記係合部内に収納したことを特徴とする請求項1に記載のブラケット構造


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−120311(P2012−120311A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267163(P2010−267163)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】