説明

ブラシコネクタユニット

【課題】外側に位置する金属素線の変形量を減少させて、接触信頼性を向上し、また、金属素線の塑性変形を抑制し耐用回数を増加させるとともに、ユニット全体の小型化を実現するブラシコネクタユニットを提供すること。
【解決手段】第1ブラシコネクタ100と第2ブラシコネクタ200とから構成され、第1ブラシコネクタ100は、第1金属素線110を配置する仮想格子Gの対角線方向の少なくとも一方において相互に隣接する第1金属素線110間の隣接間隔の半分を間隔Pと規定し、第1保持部材120上において第1金属素線110を配置した配置領域の中心から遠ざかる順に間隔P1、P2、P3・・・と規定した場合、少なくとも1つの間隔Pn+1(nは1以上の任意の整数)が、間隔Pn+1の内側に隣接する間隔Pnより大きく設定されているブラシコネクタユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシコネクタ間で金属素線同士を相互に接触させて導通を図るブラシコネクタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図19に示すように、半導体チップ(若しくは半導体装置)B600の表面に形成された複数の電極パッド620と実装基板B500の表面に形成された複数のランド520とを電気的に接続して実装する半導体チップ(若しくは半導体装置)B600の実装基板B500への実装構造であって、電極パッド620およびランド520の各表面には、導電性の柱状体510、610が間隔をあけて複数本直角に立設され、半導体チップ(若しくは半導体装置)B600は、電極パッド620に形成された複数の柱状体610が、電極パッド620に対応する位置のランド520に形成された複数の柱状体510間に挿入されると共に、双方の柱状体510、610の外周面同士が相互に接触した状態で嵌まり込んで実装される半導体チップ(若しくは半導体装置)B600の実装基板B500への実装構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この従来の実装構造では、図20に示すように、柱状体510は、ランド520上において同一間隔Pで4行×4列の格子状に配置され、柱状体610は、電極パッド620上において同一間隔Pで4行×4列の格子状に配置されている。
【0004】
また、柱状体510、610相互に嵌まり込ませる関係上、図20に示すように、柱状体510、610同士が差し込まれる前の状態で、相互に隣接する全ての柱状体510、610間は僅かに重複する。なお、図20に示す符号Sは、柱状体510、610間の重複部分Sを示している。そして、柱状体510、610同士が嵌まり込んだ時には、各柱状体510、610は、前述した重複部分Sに起因して、その先端部が外側に向けて変位し弾性変形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−114434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来の実装構造では、重複部分Sに起因した柱状体510、610の先端部の変位量(変形量)は、柱状体510、610の配置領域の内側から外側に向かって徐々に累積されていくため、外側の柱状体510、610の変位量(変形量)が大きくなり、接触信頼性を損なう恐れがあるとともに、内側の柱状体510、610に余裕のあるうちに外側の柱状体510、610が塑性変形を生じ、その結果、柱状体510、610間の挿抜回数(耐用回数)が限定されてしまうという問題があった。
【0007】
また、前述したように、外側に位置する柱状体510、610の変位量(変形量)が大きくなるため、柱状体510、610間の挿抜方向(接近方向)における柱状体510、610間の挿入量を充分に確保できず、その結果、実装構造全体が前記挿抜方向に大型化してしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、外側に位置する金属素線(柱状体)の変形量を減少させて、接触信頼性を向上し、また、金属素線の塑性変形を抑制し耐用回数を増加させるとともに、ユニット全体(実装構造全体)の小型化を実現するブラシコネクタユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のブラシコネクタユニットは、複数の導電性の第1金属素線、及び、前記第1金属素線を格子状に保持する第1保持部材を備えた第1ブラシコネクタと、複数の導電性の第2金属素線、及び、前記第2金属素線を保持する第2保持部材を備えた第2ブラシコネクタとから構成され、前記第1金属素線の先端部側と前記第2金属素線の先端部側を互いに嵌まり込ませて前記第1金属素線の側面と前記第2金属素線の側面とを互いに接触させるブラシコネクタユニットであって、前記第1ブラシコネクタは、前記第1金属素線を配置する仮想格子の対角線方向の少なくとも一方において相互に隣接する前記第1金属素線間の隣接間隔の半分を間隔Pと規定し、前記第1保持部材上において前記第1金属素線を配置した配置領域の中心から遠ざかる順に間隔P1、P2、P3・・・と規定した場合、少なくとも1つの間隔Pn+1(nは1以上の任意の整数)が、間隔Pn+1の内側に隣接する間隔Pnより大きく設定されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0010】
なお、本発明で言うところの「金属素線間の隣接間隔」とは、相互に隣接する金属素線の中心軸間の間隔のことを意味している。
また、本発明で言うところの「格子状に配置する」とは、2次元の仮想格子の各仮想格子点上に金属素線を配置することを意味している。しかしながら、金属素線の中心軸と仮想格子点とを完全に一致させるという厳格な意味には限定されず、仮想格子点の付近に金属素線を配置するという意味を含んでいる。
また、本発明で言うところの「仮想格子」とは、一方向に延びる互いに平行な複数の仮想格子線と、前記一方向に直交する方向に延びる互いに平行な複数の仮想格子線とから構成される2次元の仮想格子のことを意味し、また、「仮想格子点」とは、上記の仮想格子線同士の交差点のことを意味している。
また、本発明における大小関係を示す「より」は、「<」または「>」を意味するものであり、「≦」または「≧」の意味を含まない。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、内側に位置する金属素線間の隣接間隔より、外側に位置する金属素線間の隣接間隔を大きく設定することにより、外側に位置する金属素線の変位量(変形量)を低減することが可能であるため、金属素線の塑性変形を抑制できる。
【0012】
また、金属素線の塑性変形を抑制することにより、第1ブラシコネクタと第2ブラシコネクタとの間の挿抜回数(耐用回数)を増加させることができる。
【0013】
また、前述したように金属素線の変位量(変形量)を低減することにより、ブラシコネクタ間の挿抜方向における金属素線間の挿入量を増加することが可能であるため、ブラシコネクタ同士の嵌合時におけるブラシコネクタユニット全体の小型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施例であるブラシコネクタユニットを示す斜視図である。
【図2】第1ブラシコネクタ及び第2ブラシコネクタを相互に嵌合させた状態を示す斜視図である。
【図3】ブラシコネクタユニットの使用態様を示す斜視図である。
【図4】第1金属素線及び第2金属素線のみを示す斜視図である。
【図5】金属素線同士を嵌まり込ませた状態を模式的に示す説明図である。
【図6】金属素線の配置状態に関する各規定を説明する説明図である。
【図7】第1金属素線の配置状態を示す説明図である。
【図8】第2金属素線の配置状態を示す説明図である。
【図9】第1金属素線の配置状態及び第2金属素線の配置状態を重ね合わせた状態を示す説明図である。
【図10】金属素線同士を嵌まり込ませる前後における先端部側の変位を示す説明図である。
【図11】本発明の第2実施例のブラシコネクタユニットにおける第1金属素線の配置状態を示す説明図である。
【図12】第2金属素線の配置状態を示す説明図である。
【図13】第1金属素線の配置状態及び第2金属素線の配置状態を重ね合わせた状態を示す説明図である。
【図14】金属素線同士を嵌まり込ませる前後における先端部側の変位を示す説明図である。
【図15】本発明の第3実施例のブラシコネクタユニットにおける第1金属素線の配置状態を示す説明図である。
【図16】第2金属素線の配置状態を示す説明図である。
【図17】第1金属素線の配置状態及び第2金属素線の配置状態を重ね合わせた状態を示す説明図である。
【図18】金属素線同士を嵌まり込ませる前後における先端部側の変位を示す説明図である。
【図19】従来の実装構造を示す平面図である。
【図20】従来の実装構造における柱状体の配置状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施例であるブラシコネクタユニットを図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
まず、本発明の第1実施例であるブラシコネクタユニットは、図1に示すように、雌側の第1ブラシコネクタ100と、第1ブラシコネクタ100に嵌合される雄側の第2ブラシコネクタ200とから構成されている。
【0017】
第1ブラシコネクタ100及び第2ブラシコネクタ200は、図3に示すように、第1実装基板B1及び第2実装基板B2にそれぞれ固定され、図2に示すように、相互に嵌合することで、第1実装基板B1及び第2実装基板B2の間を電気的に接続するものである。
本実施例では、第1実装基板B1の電極(図示しない)と第1ブラシコネクタ100の第1保持部材120とが電気的に接続され、第2実装基板B2の電極(図示しない)と第2ブラシコネクタ200の第2保持部材220とが電気的に接続されている。
【0018】
第1ブラシコネクタ100は、図1や図5に示すように、複数の導電性の第1金属素線110と、所定本数の第1金属素線110を格子状かつブラシ状にそれぞれ保持する複数の導電性の第1保持部材120と、複数の第1保持部材120を保持する絶縁性の第1インシュレータ130とから構成されている。
【0019】
第1金属素線110は、銅合金から成形され、図4に示すように、先端部111と、第1保持部材120により保持される被保持部112とを有している。第1金属素線110は、図4に示すように、直線状を呈するとともに、同一の長さでそれぞれ形成されている。また、図5に示すように、第1保持部材120からの第1金属素線110の突出量Lも、全ての第1金属素線110に共通して同一である。第1金属素線110は、円形状の断面をそれぞれ有し、この第1金属素線110の断面の直径は、同一の直径Dで設定されている。第1金属素線110の先端部111は、図4に示すように、第2金属素線210に嵌まり込んでいない状態で、同一の仮想平面上に位置している。
【0020】
第1保持部材120は、銅合金から成形され、所定本数(本実施例では、5列×5行の25本)の第1金属素線110を直立させた状態で格子状かつブラシ状に保持している。なお、本実施例では、各第1保持部材120を単一部材として構成しているが、複数の第1金属素線110を格子状に保持するものであれば如何なる形態であってもよい。また、後述する第2保持部材220の実施形態についても同様である。
【0021】
第1インシュレータ130は、絶縁性樹脂から成形され、各第1保持部材120をそれぞれ保持する複数の保持部(図示しない)と、第2ブラシコネクタ200側に向けて開口し第1保持部材120及び第1金属素線110をそれぞれ収容する複数の収容部132とを有している。
【0022】
第2ブラシコネクタ200は、図1や図5に示すように、複数の導電性の第2金属素線210と、所定本数の第2金属素線210をブラシ状にそれぞれ保持する複数の導電性の第2保持部材220と、複数の第2保持部材220を保持する絶縁性の第2インシュレータ230とから構成されている。
【0023】
第2金属素線210は、銅合金から成形され、図4に示すように、先端部211と、第2保持部材220により保持される被保持部212とを有している。第2金属素線210は、図4に示すように、直線状を呈するとともに、同一の長さでそれぞれ形成されている。また、図5に示すように、第2保持部材220からの第2金属素線210の突出量Lも、全ての第2金属素線210に共通して同一である。第2金属素線210は、円形状の断面をそれぞれ有し、この第2金属素線210の断面の直径は、同一の直径Dで設定されている。第2金属素線210の先端部211は、図4に示すように、第1金属素線110に嵌まり込んでいない状態で、同一の仮想平面上に位置している。
【0024】
第2保持部材220は、銅合金から成形され、所定本数(本実施例では、4列×4行の16本)の第2金属素線210を直立させた状態で格子状に保持している。
【0025】
第2インシュレータ230は、絶縁性樹脂から成形され、各第2保持部材220をそれぞれ保持する複数の保持部231と、第1ブラシコネクタ100側に向けて開口し第2保持部材220及び第2金属素線210をそれぞれ収容する複数の収容部(図示しない)とを有している。
【0026】
ブラシコネクタ100、200の嵌合時には、第2インシュレータ230の収容部(図示しない)を囲繞する側壁部232aが、第1インシュレータ130の収容部132内に挿入される。この際、第2インシュレータ230の側壁部232aと第1インシュレータ130の収容部132を囲繞する側壁部132aとが、ブラシコネクタ100、200同士の挿抜方向(接近方向)に直交する方向にブラシコネクタ100、200間を位置決めする。更に、このブラシコネクタ100、200間の位置決めにより、金属素線110、210間も前記挿抜方向に直交する方向に位置決めされる。
【0027】
そして、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合時には、図5に示すように、第1金属素線110及び第2金属素線210が、その先端部111、211側で相互に嵌まり込み、第1金属素線110及び第2金属素線210の側面同士が相互に接触し、その結果、第1金属素線110及び第2金属素線210が電気的に接続される。この際、図5に示すように、外側に位置する金属素線110、210は、内側に位置する金属素線210、110によって前記挿抜方向に直交する方向に押され、弾性変形する。なお、図5は、模式的に示した図であり、金属素線110、210の変形量を誇張して示すとともに、金属素線110、210の本数等についても、本実施例の形態とは若干異なる。
【0028】
次に、第1保持部材120上における第1金属素線110の配置状態を図6及び図7に基づいて説明する。
【0029】
第1金属素線110は、図6に示すように、一方向に延びる互いに平行な複数の仮想格子線G1と、前記一方向に直交する方向に延びる互いに平行な複数の仮想格子線G2とから構成される2次元の仮想格子Gの仮想格子点G3の付近に5行×5列でそれぞれ配置されている。なお、後述するように各間隔Pに変化をつけている関係上、一部の第1金属素線110の中心軸は、仮想格子点G3に完全には一致しない。
【0030】
そして、図6に示すように、仮想格子Gの対角線方向において相互に隣接する第1金属素線110間の間隔の半分を間隔Pと規定し、この間隔Pを仮想格子Gの中心(金属素線110の配置領域の中心)Cから遠ざかる順に間隔P1、P2、P3、P4と規定した場合、図7に示すように各間隔Pは、P1<P2、且つ、P1=P3=P4の関係で設定されている。
また、金属素線110、210の直径をDとし、所定値をTとした場合、間隔P1、P3、P4は、D−T=P1=P3=P4の大きさで設定されている。また、間隔P2は、D=P2の大きさで設定されている。
【0031】
次に、第2保持部材220上における第2金属素線210の配置状態を図8に基づいて説明する。
【0032】
第2金属素線210は、前述した第1金属素線110と同様に、仮想格子Gの仮想格子点G3の付近に4行×4列でそれぞれ配置されている。なお、後述するように各間隔Pに変化をつけている関係上、一部の第2金属素線210の中心軸は、仮想格子点G3に完全には一致しない。なお、仮想格子Gに関しては、図6を参照されたい。
【0033】
そして、仮想格子Gの対角線方向において相互に隣接する第2金属素線210間の間隔の半分を間隔Pと規定し、この間隔Pを仮想格子Gの中心(金属素線210の配置領域の中心)Cから遠ざかる順に間隔P1、P2、P3と規定した場合、図8に示すように、各間隔Pは、P1<P2、且つ、P1=P3の関係で設定されている。
また、金属素線110、210の直径をDとし、所定値をTとした場合、間隔P1、P3は、D−T=P1=P3の大きさで設定されている。また、間隔P2は、D=P2の大きさで設定されている。
【0034】
次に、ブラシコネクタ100、200同士を相互に嵌合させた場合の各部の作用について、図9及び図10に基づいて説明する。
【0035】
図9は、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合前、且つ、前記挿抜方向に直交する方向に第1金属素線110及び第2金属素線210を相互に位置合わせした状態の第1金属素線110及び第2金属素線210を第2金属素線210側から見て示す説明図である。上記の第1金属素線110及び第2金属素線210間の位置合わせに関して詳述すると、第1金属素線110の配置領域の中心Cと第2金属素線110の配置領域の中心Cとを相互に一致させ、且つ、格子状に配置された4つの金属素線110、210の間に他方の金属素線110、210が位置するように、第1金属素線110及び第2金属素線210は、位置合わせされている。
【0036】
図9に示すように、間隔P2の領域(P2=Dで設定された間隔P2の領域)では、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合前における第1金属素線110及び第2金属素線210の位置関係は、金属素線110、210同士が相互に当接するような関係になる。図9に示す符号Mは、金属素線110、210間の当接部分を示している。
また、図9に示すように、間隔P1、P3、P4の領域(P1=P3=P4=D−Tで設定された間隔P1、P3、P4の領域)では、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合前における第1金属素線110及び第2金属素線210の位置関係は、金属素線110、210同士が相互に重複するような関係になる。図9に示す符号Sは、金属素線110、210間の重複部分を示しており、この重複部分Sの大きさは、所定値Tに一致する。
【0037】
図10は、図9の符号Xの領域を一例として抜き出して示す説明図であり、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合前後における金属素線110、210の先端部111、211の変位を示す説明図である。図10の上段には、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合前の状態を示し、図10の下段には、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合後の状態を示している。
【0038】
図10に示すように、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合後には、最も内側に位置する先端部111cは変位せず、また、先端部111cの外側に隣接する先端部211b、211cは外側にTだけ変位し、また、先端部211b、211cの外側に隣接する先端部111b、111dは外側にTだけ変位し、また、先端部111b、111dの外側に隣接する先端部211a、211dは外側に2Tだけ変位し、また、先端部211a、211dの外側に隣接する先端部111a、111eは外側に3Tだけ変位する。
【0039】
上記のように、間隔P2を金属素線110、210の直径Dと同一の大きさに設定することにより、各間隔Pを同一の大きさ(P=D−T)で設定した場合と比較して、間隔P2の領域より外側に位置する先端部111a、211a、111b、111d、211d、111eの変位量がTだけ低減する。そして、この現象は、図9の符号Xの領域以外の領域においても同様である。
【0040】
このようにして得られた第1実施例のブラシコネクタユニットでは、中心Cを基準として外側に位置する金属素線110、210の変位量(変形量)を低減できるため、接触信頼性を向上し、また、前記外側に位置する金属素線110、210の塑性変形を抑制できる。
【0041】
また、金属素線110、210の塑性変形を抑制することにより、第1ブラシコネクタ100及び第2ブラシコネクタ200間の挿抜回数(耐用回数)を増加させることができる。
【0042】
また、金属素線110、210の変位量(変形量)を低減することにより、ブラシコネクタ100、200の挿抜方向における金属素線110、210間の挿入量(図5に示す符号R)を増加することが可能であるため、ブラシコネクタ100、200の嵌合時におけるブラシコネクタユニット全体の小型化を実現できる。
【0043】
また、全ての第1金属素線110及び第2金属素線210を同一に構成する、すなわち、同一の素材、形状、寸法、直径等で構成することにより、部材の種類の増加を回避し、製造負担の増大を回避できる。
【実施例2】
【0044】
次に、本発明の第2実施例であるブラシコネクタユニットを図11乃至図14に基づいて説明する。
ここで、第2実施例であるブラシコネクタユニットにおける保持部材120、220に対する金属素線110、210の配置状態以外の構成は前述した第1実施例の内容と全く同じであるため、前記配置状態以外の構成については、その説明を省略する。
【0045】
まず、第1保持部材120上における第1金属素線110の配置状態を図11に基づいて説明する。
【0046】
第1金属素線110は、2次元の仮想格子Gの仮想格子点G3の付近に5行×5列でそれぞれ配置されている。なお、後述するように各間隔Pに変化をつけている関係上、一部の第1金属素線110の中心軸は、仮想格子点G3に完全には一致しない。なお、仮想格子Gに関しては、図6を参照されたい。
【0047】
そして、仮想格子Gの対角線方向において相互に隣接する第1金属素線110間の間隔の半分を間隔Pと規定し、この間隔Pを仮想格子Gの中心Cから遠ざかる順に間隔P1、P2、P3、P4と規定した場合、図11に示すように、各間隔Pは、P1<P2=P3=P4の関係で設定されている。
また、金属素線110、210の直径をDとし、所定値をTとした場合、間隔P1は、D−T=P1の大きさで設定されている。また、間隔P2、P3、P4は、D=P2=P3=P4の大きさで設定されている。
【0048】
次に、第2保持部材220上における第2金属素線210の配置状態を図12に基づいて説明する。
【0049】
第2金属素線210は、前述した第1金属素線110と同様に、仮想格子Gの仮想格子点G3の付近に4行×4列でそれぞれ配置されている。なお、後述するように各間隔Pに変化をつけている関係上、一部の第2金属素線210の中心軸は、仮想格子点G3に完全には一致しない。なお、仮想格子Gに関しては、図6を参照されたい。
【0050】
そして、仮想格子Gの対角線方向において相互に隣接する第2金属素線210間の間隔の半分を間隔Pと規定し、この間隔Pを仮想格子Gの中心Cから遠ざかる順に間隔P1、P2、P3と規定した場合、図12に示すように、各間隔Pは、P1<P2=P3の関係で設定されている。
また、金属素線110、210の直径をDとし、所定値をTとした場合、間隔P1は、D−T=P1の大きさで設定されている。また、間隔P2、P3は、D=P2=P3の大きさで設定されている。
【0051】
次に、ブラシコネクタ100、200同士を相互に嵌合させた場合の各部の作用について、図13及び図14に基づいて説明する。
【0052】
図13は、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合前、且つ、前記挿抜方向に直交する方向に第1金属素線110及び第2金属素線210を相互に位置合わせした状態の第1金属素線110及び第2金属素線210を第2金属素線210側から見て示す説明図である。上記の第1金属素線110及び第2金属素線210間の位置合わせに関して詳述すると、第1金属素線110の配置領域の中心Cと第2金属素線110の配置領域の中心Cとを相互に一致させ、且つ、格子状に配置された4つの金属素線110、210の間に他方の金属素線110、210が位置するように、第1金属素線110及び第2金属素線210は、位置合わせされている。
【0053】
図13に示すように、間隔P2、P3、P4の領域(D=P2=P3=P4)で設定された間隔P2、P3、P4の領域では、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合前における第1金属素線110及び第2金属素線210の位置関係は、金属素線110、210同士が相互に当接するような関係になる。図13に示す符号Mは、金属素線110、210間の当接部分を示している。
また、図13に示すように、間隔P1の領域(P1=D−Tで設定された間隔P1の領域)では、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合前における第1金属素線110及び第2金属素線210の位置関係は、金属素線110、210同士が相互に重複するような関係になる。図13に示す符号Sは、金属素線110、210間の重複部分を示しており、この重複部分Sの大きさは、所定値Tに一致する。
【0054】
図14は、図13の符号Xの領域を一例として抜き出して示す説明図であり、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合前後における金属素線110、210の先端部111、211の変位を示す説明図である。図14の上段には、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合前の状態を示し、図14の下段には、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合後の状態を示している。
【0055】
図14に示すように、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合後には、最も内側に位置する先端部111cは変位せず、また、先端部111cの外側に位置する先端部111a、211a、111b、211b、211c、111d、211d、111eは、全て外側にTだけ変位する。
【0056】
上記のように、間隔P2、間隔P3、間隔P4を金属素線110、210の直径Dと同一の大きさに設定することにより、間隔P2の領域より外側に位置する先端部111a、211a、111b、111d、211d、111eの変位量が全て同一のTになる。そして、この現象は、図13の符号Xの領域以外の領域においても同様である。
【0057】
このようにして得られた第2実施例のブラシコネクタユニットでは、前述した第1実施例における効果に加えて、間隔P2、P3、P4を金属素線110、210の直径Dと同一の大きさで設定することにより、最も内側に位置する金属素線(本実施例では、中心C上に位置する第1金属素線110)以外の金属素線110、210の変位量(変形量)を同一にすることができ、局所的な金属素線110、210の塑性変形の発生を回避して、第1ブラシコネクタ100及び第2ブラシコネクタ200間の挿抜回数(耐用回数)を増加できる。
【0058】
また、前述したように、金属素線110、210の変位量(変形量)を同一にすることにより、各金属素線110、210の条件が同一になるため、金属素線110、210の素材や寸法等の設計が容易になる。
【実施例3】
【0059】
次に、本発明の第3実施例であるブラシコネクタユニットを図15乃至図18に基づいて説明する。
ここで、第3実施例であるブラシコネクタユニットにおける保持部材120、220に対する金属素線110、210の配置状態以外の構成は前述した第1実施例の内容と全く同じであるため、前記配置状態以外の構成については、その説明を省略する。
【0060】
まず、第1保持部材120上における第1金属素線110の配置状態を図15に基づいて説明する。
【0061】
第1金属素線110は、2次元の仮想格子Gの仮想格子点G3の付近に5行×5列でそれぞれ配置されている。なお、後述するように各間隔Pに変化をつけている関係上、一部の第1金属素線110の中心軸は、仮想格子点G3に完全には一致しない。なお、仮想格子Gに関しては、図6を参照されたい。
【0062】
そして、図15に示すように、仮想格子Gの対角線方向において相互に隣接する第1金属素線110間の間隔の半分を間隔Pと規定し、この間隔Pを仮想格子Gの中心Cから遠ざかる順に間隔P1、P2、P3、P4と規定した場合、各間隔Pは、P1<P2<P3<P4の関係で設定されている。
また、金属素線110、210の直径をDとし、所定値をTとした場合、間隔P1は、D−(3/3)T=P1の大きさで設定され、また、間隔P2は、D−(2/3)T=P2の大きさで設定され、また、間隔P3は、D−(1/3)T=P3の大きさで設定され、また、間隔P4は、D=P4の大きさで設定されている。
【0063】
次に、第2保持部材220上における第2金属素線210の配置状態を図16に基づいて説明する。
【0064】
第2金属素線210は、前述した第1金属素線110と同様に、仮想格子Gの仮想格子点G3の付近に4行×4列でそれぞれ配置されている。なお、後述するように各間隔Pに変化をつけている関係上、一部の第2金属素線210の中心軸は、仮想格子点G3に完全には一致しない。なお、仮想格子Gに関しては、図6を参照されたい。
【0065】
そして、仮想格子Gの対角線方向において相互に隣接する第2金属素線210間の間隔の半分を間隔Pと規定し、この間隔Pを仮想格子Gの中心Cから遠ざかる順に間隔P1、P2、P3と規定した場合、図16に示すように、各間隔Pは、P1<P2<P3の関係で設定されている。
また、金属素線110、210の直径をDとし、所定値をTとした場合、間隔P1は、D−(3/3)T=P1の大きさで設定され、また、間隔P2は、D−(2/3)T=P2の大きさで設定され、また、間隔P3は、D−(1/3)T=P3の大きさで設定されている。
【0066】
次に、ブラシコネクタ100、200同士を相互に嵌合させた場合の各部の作用について、図17及び図18に基づいて説明する。
【0067】
図17は、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合前、且つ、前記挿抜方向に直交する方向に第1金属素線110及び第2金属素線210を相互に位置合わせした状態の第1金属素線110及び第2金属素線210を第2金属素線210側から見て示す説明図である。上記の第1金属素線110及び第2金属素線210間の位置合わせに関して詳述すると、第1金属素線110の配置領域の中心Cと第2金属素線110の配置領域の中心Cとを相互に一致させ、且つ、格子状に配置された4つの金属素線110、210の間に他方の金属素線110、210が位置するように、第1金属素線110及び第2金属素線210は、位置合わせされている。
【0068】
図17に示すように、間隔P4の領域(D=P4で設定された間隔P4の領域)では、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合前における第1金属素線110及び第2金属素線210の位置関係は、金属素線110、210同士が相互に当接するような関係になる。図17に示す符号Mは、金属素線110、210間の当接部分を示している。
また、図17に示すように、間隔P1の領域(D−(3/3)T=P1で設定された間隔P1の領域)、間隔P2の領域(D−(2/3)T=P2で設定された間隔P2の領域)、及び、間隔P3の領域(D−(1/3)T=P3で設定された間隔P3の領域)では、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合前における第1金属素線110及び第2金属素線210の位置関係は、金属素線110、210同士が相互に重複するような関係になる。図17に示す符号Sは、金属素線110、210間の重複部分を示している。そして、間隔P1の領域における重複部分Sの大きさは、(3/3)Tになり、間隔P2の領域における重複部分Sの大きさは、(2/3)Tになり、間隔P3の領域における重複部分Sの大きさは、(1/3)Tになる。
【0069】
図18は、図17の符号Xの領域を一例として抜き出して示す説明図であり、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合前後における金属素線110、210の先端部111、211の変位を示す説明図である。図18の上段には、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合前の状態を示し、図18の下段には、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合後の状態を示している。
【0070】
図18に示すように、ブラシコネクタ100、200同士の嵌合後には、最も内側に位置する先端部111cは変位せず、また、先端部111cの外側に隣接する先端部211b、211cは外側に(3/3)Tだけ変位し、また、先端部211b、211cの外側に隣接する先端部111b、111dは外側に(5/3)Tだけ変位し、また、先端部111b、111dの外側に隣接する先端部211a、211dは外側に(6/3)Tだけ変位し、また、先端部211a、211dの外側に隣接する先端部111a、111eは外側に(6/3)Tだけ変位する。
【0071】
上記のように、内側から外側に向けて間隔Pの大きさを漸増させることにより、内側から外側に向けて金属素線110、210の変位量の累積量が漸減する。そして、この現象は、図17の符号Xの領域以外の領域においても同様である。
【0072】
このようにして得られた第3実施例のブラシコネクタユニットでは、前述した第1実施例における効果に加えて、内側から外側に向けて金属素線110、210の変位量の累積量を漸減させることができる。
【0073】
上記の実施例では、第1保持部材に対して第1金属素線が5行×5列の格子状に配置され、第2保持部材に対して第2金属素線が4行×4列の格子状に配置されるものとして説明したが、保持部材上における金属素線の配置状態は上記に限定されるものではなく、6行×6列の格子状や、6行×5列の格子状等であっても何ら構わない。
【符号の説明】
【0074】
100 ・・・ 第1ブラシコネクタ
110 ・・・ 第1金属素線
111 ・・・ 第1金属素線の先端部
112 ・・・ 第1金属素線の被保持部
120 ・・・ 第1保持部材
130 ・・・ 第1インシュレータ
132 ・・・ 収容部
132a ・・・ 側壁部
200 ・・・ 第2ブラシコネクタ
210 ・・・ 第2金属素線
211 ・・・ 第2金属素線の先端部
212 ・・・ 第2金属素線の被保持部
220 ・・・ 第2保持部材
230 ・・・ 第2インシュレータ
231 ・・・ 保持部
232a ・・・ 側壁部
D ・・・ 金属素線の直径
P ・・・ 間隔
S ・・・ 金属素線同士の重複部分
M ・・・ 金属素線同士の当接部分
T ・・・ 所定量
G ・・・ 仮想格子
G1 ・・・ 第1仮想格子線
G2 ・・・ 第2仮想格子線
G3 ・・・ 仮想格子点
C ・・・ 仮想格子の中心
B1 ・・・ 第1実装基板
B2 ・・・ 第2実装基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電性の第1金属素線、及び、前記第1金属素線を格子状に保持する第1保持部材を備えた第1ブラシコネクタと、複数の導電性の第2金属素線、及び、前記第2金属素線を保持する第2保持部材を備えた第2ブラシコネクタとから構成され、前記第1金属素線の先端部側と前記第2金属素線の先端部側を互いに嵌まり込ませて前記第1金属素線の側面と前記第2金属素線の側面とを互いに接触させるブラシコネクタユニットであって、
前記第1ブラシコネクタは、
前記第1金属素線を配置する仮想格子の対角線方向の少なくとも一方において相互に隣接する前記第1金属素線間の隣接間隔の半分を間隔Pと規定し、前記第1保持部材上において前記第1金属素線を配置した配置領域の中心から遠ざかる順に間隔P1、P2、P3・・・と規定した場合、
少なくとも1つの間隔Pn+1(nは1以上の任意の整数)が、間隔Pn+1の内側に隣接する間隔Pnより大きく設定されていることを特徴とするブラシコネクタユニット。
【請求項2】
前記第1ブラシコネクタは、
全ての間隔Pn+1(nは1以上の整数)が、間隔P1以上の大きさで設定されていることを特徴とする請求項1に記載のブラシコネクタユニット。
【請求項3】
前記第1ブラシコネクタは、
全ての間隔Pn+1(nは1以上の整数)が、各間隔Pn+1の内側に隣接する間隔Pn以上の大きさで設定されていることを特徴とする請求項2に記載のブラシコネクタユニット。
【請求項4】
前記第1ブラシコネクタは、
間隔Pn+1(nは1以上の任意の整数)が間隔Pn+1の内側に隣接する間隔Pnより大きい関係が、1箇所に成立し、
間隔Pn+1、及び、間隔Pn+1より外側に位置する全ての間隔Pn+1+k(kは1以上の整数)が、前記第2金属素線の直径Dと同じ大きさで設定されていることを特徴とする請求項3に記載のブラシコネクタユニット。
【請求項5】
前記第1ブラシコネクタは、
全ての間隔Pn+1(n=1以上の整数)が、各間隔Pn+1の内側に隣接する間隔Pnより大きく設定されていることを特徴とする請求項3に記載のブラシコネクタユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−109086(P2012−109086A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256074(P2010−256074)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】