説明

ブラシホルダ及び該ブラシホルダを用いるモータ

【課題】ブラシの有効長を変更することなくブラシホルダ本体の小型化及び低コスト化を図ることができるブラシホルダを提供する。
【解決手段】ブラシホルダ本体21の中央にコンミュテータ18が貫通する円形の貫通孔21aを形成すると共に、該貫通孔21aを挾んで相対向する位置に一対のブラシ収容部21b,21bを形成し、この各ブラシ収容部21bにブラシ22を出没自在に収容し、かつ、一端部23bをブラシホルダ本体21に係止させたトーションスプリング23の他端部23cをブラシ22の背面22aに押圧付勢して該ブラシ22の正面22bをコンミュテータ18に接触させるようにしたブラシホルダ20において、トーションスプリング23の他端部23cを直線状に形成し、かつ、ブラシ22の背面22aを外側に突出する円弧凸面状に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電用のブラシを保持するブラシホルダ及び該ブラシホルダを用いるモータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のブラシホルダとして、図5に示すものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このブラシホルダ1は、図5に示すように、樹脂製で略円盤状のブラシホルダ本体2を有している。このブラシホルダ本体2の中央にはアーマチュア軸5のコンミュテータ6が貫通する円形の貫通孔2aを形成してある。
【0004】
そして、ブラシホルダ本体2の円形の貫通孔2aを挾んで相対向する位置には、一対のブラシ収容部2b,2bを形成してある。この一対のブラシ収容部2b,2b内には給電用のブラシ3を出没自在に収容してある。また、各ブラシ3の背面3aは、一端部4aがブラシホルダ本体2の係止部2cに係止されたトーションスプリング4の湾曲状の他端部4bにより押圧付勢されている。このトーションスプリング4の略V字湾曲状の他端部4bの押圧付勢により、ブラシ3の正面3bがコンミュテータ6に常に接触するようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−56920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のブラシホルダ1では、ブラシ3の押圧位置を一定にするために、トーションスプリング4の他端部4bを略V字湾曲状に折り曲げ形成しているため、ブラシホルダ本体2の幅寸法H′が大きくなった。また、トーションスプリング4の他端部4bを略V字湾曲状に折り曲げ加工しなければならないため、その分、工数が増えてコスト高であった。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、ブラシの有効長を変更することなくブラシホルダ本体の小型化及び低コスト化を図ることができるブラシホルダ及び該ブラシホルダを用いるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、ブラシホルダ本体の中央にコンミュテータが貫通する円形の貫通孔を形成すると共に、該貫通孔を挾むようにして少なくとも一対のブラシ収容部を形成し、この各ブラシ収容部にブラシを出没自在に収容し、かつ、一端部を前記ブラシホルダ本体に係止させたトーションスプリングの他端部を前記ブラシの背面に押圧付勢して該ブラシの正面を前記コンミュテータに接触させるようにしたブラシホルダにおいて、前記トーションスプリングの他端部を直線状に形成し、かつ、前記ブラシの背面を外側に突出する円弧凸面状に形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、内周面にマグネットを固着した有底筒状のヨークと、このヨークの開口部に固定され、中央にコンミュテータが貫通する円形の貫通孔を形成したブラシホルダと、このブラシホルダの貫通孔を挾むように少なくとも一対形成されたブラシ収容部に出没自在に収容されたブラシと、一端部を前記ブラシホルダに係止させると共に、他端部を前記ブラシの背面に押圧付勢させて該ブラシの正面を前記コンミュテータに接触させるトーションスプリングとを備えたモータにおいて、前記トーションスプリングの他端部を直線状に形成し、かつ、前記ブラシの背面を外側に突出する円弧凸面状に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、ブラシの背面を押圧付勢するトーションスプリングの他端部を直線状に形成し、かつ、ブラシの背面を外側に突出する円弧凸面状に形成したことにより、ブラシの大きさを変更することなく、ブラシホルダ本体の幅寸法を従来のものよりも小さくすることができる。また、トーションスプリングの他端部を従来のように折り曲げ加工しなくても済むため、その分工数及びコストを削減することができる。これらにより、ブラシホルダの小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、ブラシの背面を押圧付勢するトーションスプリングの他端部を直線状に形成し、かつ、ブラシの背面を外側に突出する円弧凸面状に形成したことにより、ブラシの大きさを変更することなく、ブラシホルダの幅寸法を従来のものよりも小さくすることができる。また、トーションスプリングの他端部を従来のように折り曲げ加工しなくても済むため、その分工数及びコストを削減することができる。これらにより、モータ全体の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施形態のブラシホルダを示す斜視図、図2は同ブラシホルダの平面図、図3は同ブラシホルダに用いるブラシとトーションスプリングの関係を示す拡大平面図、図4は同ブラシホルダを用いるモータの断面図である。
【0014】
図4に示すように、モータ10は、略有底扁平円筒状のヨーク11と、このヨーク11の開口部11aにビス12等を介して結合されるギヤケース13とを備えている。ヨーク11の内周面11bには一対のマグネット14,14が接着剤等を介して固着してある。そして、ヨーク11の有底筒部11cに嵌合された軸受15aと、ギヤケース13の軸穴13aの両端近傍に嵌合された一対の軸受15b,15cとでアーマチュア軸17を回転自在に支持してある。
【0015】
このアーマチュア軸17は、その一端の近傍にウォーム17aを形成してある。また、アーマチュア軸17の一対のマグネット14,14に対向する位置にはアーマチュア16を取り付けてある。このアーマチュア16は、アーマチュア軸17に固定され、所定のスロット数のコイル巻回部を持つアーマチュアコア16aと、このアーマチュアコア16aのコイル巻回部に巻き回されたアーマチュアコイル16bとで構成されている。
【0016】
さらに、アーマチュア軸17のヨーク11とギヤケース13との境部分に対向する位置の該ヨーク11の開口部11a内には、コンミュテータ18を固定してある。このコンミュテータ18はアーマチュアコア16aのコイル巻回部と同数のコンミュテータ片18aを備えていて、各コンミュテータ片18aとアーマチュアコイル16bとは電気的にそれぞれ接続されている。
【0017】
また、ヨーク11の開口部11a内のコンミュテータ18に対向する位置には、ブラシホルダ20を介して後延する一対のブラシ22,22をコンミュテータ18の各コンミュテータ片18aに接触するように取り付けてある。各ブラシ22は図示しないモータ制御回路にそれぞれ電気的に接続されていて、このモータ制御回路の制御により電流がアーマチュア16等に流れてアーマチュア軸17が正逆回転するようになっている。
【0018】
また、ギヤケース13の略中央には、軸穴13aに連通する凹状の減速機構収容部13bを形成してある。この減速機構収容部13b内には、アーマチュア軸17のウォーム17aに噛合するウォームホイール19を回転自在に支持してある。このウォームホイール19の中央には出力軸19Aが固定されている。これらウォーム17aとウォームホイール19とでアーマチュア16のアーマチュア軸17の回転を減速させる減速機構Sが構成されている。
【0019】
図1と図2及び図4に示すように、ブラシホルダ20は合成樹脂製で略円盤状のブラシホルダ本体21を有している。このブラシホルダ本体21の中央にはコンミュテータ18が貫通する円形の貫通孔21aを形成してある。そして、ブラシホルダ本体21の円形の貫通孔21aを挾んで相対向する位置には一対のブラシ収容部21b,21bを一体形成してある。この各ブラシ収容部21bは前後が開口した四角筒状に形成してあり、その内部にブラシ22を出没自在に収容してある。この各ブラシ22の背面22aは、一端部23bをブラシホルダ本体21の各起立片部21dの係止孔(係止部)21eに係止させた押圧手段としてのトーションスプリング23の他端部23cで押圧付勢してある。これにより、各ブラシ22の正面22bはコンミュテータ18の各コンミュテータ片18aに常に接触するようになっている。
【0020】
図1〜図3に示すように、各ブラシ22は略四角形のブロック状に形成してあり、その背面22aは外側に突出するように円弧凸面状に形成してある。また、各ブラシ22の正面22bはコンミュテータ18の各コンミュテータ片18aに摺接するように内側に凹む円弧凹面状に形成してある。さらに、各ブラシ22の上面にはピクテール線24の一端を接続してある。このピクテール線24の他端は円柱状の磁性コア25に巻き付けられた電磁ノズル低減用のチョークコイル26に接続されている。尚、ピクテール線24は各ブラシ収容部21bの天板部に形成されたU字状の切欠き部21c内に収容されていて各ブラシ22の摺動を許容するようになっている。また、磁性コア25及びチョークコイル26はブラシホルダ本体21の円形の貫通孔21aを挾んで相対向する各コーナ部に一体形成された略C字状の支持片部21fに保持されている。
【0021】
図1〜図3に示すように、トーションスプリング23は、複数に巻き付けされた巻線部23aと、この巻線部23aの上端から直角に折れ曲がって延びる一端部23bと、巻線部23aの下端から直線状に延びる他端部23cとを有している。このトーションスプリング23の巻線部23aは、ブラシホルダ本体21の円形の貫通孔21aを挾んで相対向する各コーナ部に一体突出形成された円柱部21gに装着してある。また、トーションスプリング23の一端部23bは、ブラシホルダ本体21の各起立片部21dの係止孔21e内に挿通されて係止されている。さらに、トーションスプリング23の直線状の他端部23cは、ブラシ22の円弧凸面状の背面22aに当接している。そして、このトーションスプリング23の押圧付勢によりブラシ22の円弧凹面状の正面22bがコンミュテータ18の各コンミュテータ片18aに常に摺接するようになっている。
【0022】
以上実施形態のモータ10のブラシホルダ20によれば、ブラシ22の背面22aを押圧付勢するトーションスプリング23の他端部23cを直線状に形成し、かつ、ブラシ22の背面22aを外側に突出する円弧凸面状に形成したことにより、ブラシ22の有効長を変更することなく、ブラシホルダ本体21の幅寸法Hを従来のものよりも小さくすることができる。さらに、トーションスプリング23の他端部23cを従来のように折り曲げ加工しなくても済むため、その分、工数及びコストを削減することができる。これらにより、ブラシホルダ20の小型化及び低コスト化を図ることができ、モータ10全体の小型化を図ることができる。
【0023】
尚、前記実施形態によれば、ブラシホルダ本体の円形の貫通孔を挾んで相対向する位置にブラシを収容するブラシ収容部を一対形成したが、3つのブラシ収容部を形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態のブラシホルダを示す斜視図である。
【図2】上記ブラシホルダの平面図である。
【図3】上記ブラシホルダに用いるブラシとトーションスプリングの関係を示す拡大平面図である。
【図4】上記ブラシホルダを用いるモータの断面図である。
【図5】従来のブラシホルダの平面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 モータ
11 ヨーク
11a 開口部
11b 内周面
14 マグネット
18 コンミュテータ
20 ブラシホルダ
21 ブラシホルダ本体
21a 円形の貫通孔
21b,21b 一対のブラシ収容部
22 ブラシ
22a 円弧凸面状の背面
22b 正面
23 トーションスプリング
23b 一端部
23c 直線状の他端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシホルダ本体の中央にコンミュテータが貫通する円形の貫通孔を形成すると共に、該貫通孔を挾むようにして少なくとも一対のブラシ収容部を形成し、この各ブラシ収容部にブラシを出没自在に収容し、かつ、一端部を前記ブラシホルダ本体に係止させたトーションスプリングの他端部を前記ブラシの背面に押圧付勢して該ブラシの正面を前記コンミュテータに接触させるようにしたブラシホルダにおいて、
前記トーションスプリングの他端部を直線状に形成し、かつ、前記ブラシの背面を外側に突出する円弧凸面状に形成したことを特徴とするブラシホルダ。
【請求項2】
内周面にマグネットを固着した有底筒状のヨークと、このヨークの開口部に固定され、中央にコンミュテータが貫通する円形の貫通孔を形成したブラシホルダと、このブラシホルダの貫通孔を挾むように少なくとも一対形成されたブラシ収容部に出没自在に収容されたブラシと、一端部を前記ブラシホルダに係止させると共に、他端部を前記ブラシの背面に押圧付勢させて該ブラシの正面を前記コンミュテータに接触させるトーションスプリングとを備えたモータにおいて、
前記トーションスプリングの他端部を直線状に形成し、かつ、前記ブラシの背面を外側に突出する円弧凸面状に形成したことを特徴とするモータ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−131677(P2008−131677A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310523(P2006−310523)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】