説明

ブラシレスモータ用駆動制御装置、ブラシレスモータシステム、草刈機、ローラシステム、搬送装置、並びに、巻き取り装置

【課題】ブラシレスモータの回転を緩やかに停止させることが可能なブラシレスモータ用駆動制御装置や、当該制御装置を備えたブラシレスモータシステム、当該システムを備えた草刈機、ローラシステム、搬送装置、並びに、巻き取り装置の提供を目的とした。
【解決手段】モータシステム1は、遅延パルス生成部32を有し、モータ7から発信され、モータパルス認識部30で認識されたモータパルス信号に対して位相が遅れ、時間の経過に伴って位相の遅れが大きくなる遅延パルス信号を発信することができる。モータ7を停止させる場合は、遅延パルス生成部32で生成された遅延パルス信号に基づき、モータ駆動部33がモータ7への通電が制御される。そのため、モータ7は、制動運転時に回転子15の回転が緩やかに減速しながら停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータの駆動制御を行うためのブラシレスモータ用駆動制御装置や、当該制御装置を備えたブラシレスモータシステム、当該ブラシレスモータシステムを備えた草刈機、ローラシステム、搬送装置、並びに、巻き取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、下記特許文献1に開示されているような刈払機や草刈機が提供されている。かかる刈払機や草刈機の多くは、モータやエンジンなどのような回転動力を付与可能な動力源や、この動力源から動力を受けて回転可能なように取り付けられた回転刃を備えた構造とされている。
【特許文献1】特開2007−20588号公報
【0003】
また、従来より、下記特許文献2に開示されているようにモータを駆動源として駆動するローラ装置が提供されている。このようなローラ装置は、ローラコンベアなどの搬送装置や、フィルム等の長尺物を巻き取るための巻き取り装置等に用いられている。
【特許文献2】特許第3673923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した刈払機や草刈機のように、動力源に対して回転刃が取り付けられたものは、安全性等を考慮して、使用後に回転刃が直ちに停止できる構成とすることが望ましい。しかしその一方で、回転刃の回転を直ちに停止させる構成とすると、回転刃に作用している慣性エネルギー等の影響により、回転刃を取り付けているネジやボルト、ナット等の固定部材がゆるんでしまったり、これに起因して回転刃が外れてしまうといったような不具合が発生する可能性がある。そのため、上記した刈払機や草刈機のように、回転動力を付与可能な動力源に対して回転刃のような回転体を取り付けた装置においては、当該回転体の回転をなるべく早く停止させることができると共に、回転体の回転に伴う慣性力の影響によってネジやボルト、ナット等の固定部材のゆるみが生じにくい構成であることが望ましい。そこで、かかる知見に基づき、本発明者らは、動力源としてブラシレスモータを採用し、回転体を停止させる際にブラシレスモータの回転子の回転数を緩やかに低下させることができれば、前記したような問題を解消できるものと考えた。
【0005】
また、上述のようにモータを駆動源とするローラ装置を搬送装置に用いた場合は、ローラ装置を急激に停止させると、搬送対象である物品に大きな衝撃が加わったり、搬送対象である物品を慣性力の影響により所望の位置に停止させることができないといった問題があった。さらに、上述のようにモータを駆動源とするローラ装置をフィルム等の長尺物を巻き取るために用いた場合、ローラ装置を急激に停止させるとフィルム等に大きな衝撃が加わり、フィルム等が破損する可能性があるといった問題があった。
【0006】
そこで、かかる知見に基づき、本発明は、ブラシレスモータの回転を緩やかに停止させることが可能なブラシレスモータ用駆動制御装置や、当該制御装置を備えたブラシレスモータシステム、当該システムを備えた草刈機、ローラシステム、搬送装置、巻き取り装置の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決すべく提供される請求項1に記載の発明は、回転子と、多相の駆動コイルを備えた固定子と、回転子の磁極の位置を検知してモータパルス信号を発信可能な回転位置検出手段とを有するブラシレスモータに接続され、前記回転位置検出手段により検出された回転子の磁極の位置に応じて前記多相の駆動コイルへの通電状態を順次切り替えることにより回転子を回転および制動させることが可能なブラシレスモータ用駆動制御装置であって、駆動コイルへの通電を制御するモータ駆動部と、回転位置検出手段から発信されるモータパルス信号を認識するモータパルス認識部と、前記モータパルス認識部において認識されたモータパルス信号に対して位相を遅らせた遅延パルス信号を生成可能な遅延パルス生成部とを有し、ブラシレスモータの制動を開始すると、モータパルス信号に対する遅延パルス信号の位相の遅れが段階的あるいは連続的に大きくなると共に、当該遅延パルス信号に従ってモータ駆動部から駆動コイルへの通電が制御されることを特徴とするブラシレスモータ用駆動制御装置である。
【0008】
本発明のブラシレスモータ用駆動制御装置は、ブラシレスモータの制動を行う際に遅延パルス信号に従って駆動コイルへの通電を制御する。また、ブラシレスモータの制動を開始すると遅延パルス信号が生成されるが、モータパルス認識部で認識されるモータパルス信号に対する遅延パルス信号の遅れは、制動開始後、段階的あるいは連続的に増大する。そのため、本発明のブラシレスモータ用駆動制御装置によりブラシレスモータの制動を行えば、制動開始後、回転子に加わる制動力が段階的あるいは連続的に強くなる。従って、本発明のブラシレスモータ用駆動制御装置によれば、制動時にブラシレスモータの回転子を緩やかに停止させることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、所定のクロック数でクロック信号を発信可能なクロック信号生成部を有し、遅延パルス生成部において、クロック信号生成部で生成されたクロック信号に基づき、前記モータパルス認識部で認識されたモータパルス信号に対して位相を遅らせた遅延パルス信号を生成可能であり、ブラシレスモータの制動開始後、所定時間毎に前記クロック数が減少することを特徴とする請求項1に記載のブラシレスモータ用駆動制御装置である。
【0010】
本発明のブラシレスモータ用駆動制御装置は、クロック信号生成部を有し、これにより発信されるクロック信号に基づいて遅延パルスが生成される。また、クロック信号生成部で生成されるクロック信号は、ブラシレスモータの制動開始後、所定時間毎にクロック数が減少するため、1クロック分に相当する時間が長くなっていく。そのため、本発明のブラシレスモータ用駆動制御装置によりブラシレスモータの制動を行う場合は、遅延パルス信号がモータパルス信号に対して位相の遅れが段階的に大きくなることとなる。従って、本発明のブラシレスモータ用駆動制御装置によれば、ブラシレスモータの制動時にブラシレスモータの回転子の回転速度を段階的に低下させることができる。
【0011】
ここで、上記各発明にかかるブラシレスモータ用駆動制御装置によりブラシレスモータを制動する場合は、ブラシレスモータが発電機としての機能を発揮し、誘起電力が発生する。そのため、当該誘起電力を回収し蓄電できれば、電気エネルギーを有効利用できるものと想定される。
【0012】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のブラシレスモータ用駆動装置と、ブラシレスモータと、電力を蓄電可能な蓄電装置とを備え、ブラシレスモータの制動に伴いブラシレスモータにおいて発生した誘起電力が、蓄電装置に蓄電されることを特徴とするブラシレスモータシステムである。
【0013】
本発明のブラシレスモータシステムは、蓄電装置を備えているため、これにブラシレスモータの制動時に発生する誘起電力を蓄電し、有効利用することができる。
【0014】
ここで、ブラシレスモータを利用したモータシステムの多くは、回転子に何らかの回転体を取り付けて使用されることが多い。回転体がネジやボルト、ナット等の固定具を用いて取り付けられている場合は、回転体を急激に停止させると、回転体の回転に伴って発生している慣性力の影響で固定具がゆるんでしまう等の不具合が発生しやすい。
【0015】
そこで、かかる不具合を解消すべく提供される請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載のブラシレスモータ用駆動装置と、ブラシレスモータと、回転体と、固定具とを備え、当該ブラシレスモータの回転子と連動して回転する回転軸を有し、前記固定具が、前記回転軸に対して螺合し、前記回転体を回転軸に対して前記回転体を装着可能であることを特徴とするブラシレスモータシステムである。
【0016】
本発明のブラシレスモータシステムでは、回転子と連動して回転する回転軸に固定具を螺合させることにより回転体が回転軸に対して装着されている。しかし、上記請求項1又は2に記載のブラシレスモータ用駆動装置を用いてブラシレスモータが制動されるため、回転体を緩やかに停止させることができるため、回転体の停止時に急激に大きな慣性力が作用しない。そのため、本発明のブラシレスモータシステムでは、回転体の固定に用いられている固定具のゆるみが発生しにくい。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載のブラシレスモータシステムを備えており、ブラシレスモータの回転子と共に回転する回転軸を有し、当該固定軸に対して螺合する固定具を用いて刃が装着されていることを特徴とする草刈機である。
【0018】
本発明の草刈機のように、ブラシレスモータの回転軸に対して螺合する固定具を用いて刃が装着されたものは、刃の回転を急激に停止させると、刃を装着するために回転軸に取り付けられた固定具がゆるんでしまう可能性がある。しかし、本発明の草刈機は、上記請求項1又は2に記載のブラシレスモータ用駆動装置を備えており、これによりブラシレスモータを制動できるため、刃の回転を緩やかに停止させることができる。従って、本発明の草刈機は、刃の回転を停止させる際に固定具のゆるみが発生しにくい。
【0019】
請求項6に記載の発明は、ブラシレスモータと、当該ブラシレスモータを駆動源として回転するローラと、請求項1又は2に記載のブラシレスモータ用駆動装置とを有し、当該ブラシレスモータ用駆動装置により、前記ローラの駆動制御を実施可能であることを特徴とするローラシステムである。
【0020】
かかる構成によれば、ローラが停止の際に急激に停止するのを防止し、ローラやこれに搭載、接触等している物品に加わる衝撃を最小限に抑制できる。
【0021】
また、上述した本発明のローラシステムは、ローラにブラシレスモータが内蔵されていてもよい(請求項7)。
【0022】
上述のローラシステムは、ローラの上方に配された物品を搬送可能な搬送装置に好適に使用することができる(請求項8)。
また、上述のローラシステムは、ローラに取り付けられた長尺物をローラの表面に巻き取り可能な巻き取り装置にも好適に使用することができる(請求項9)。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ブラシレスモータの回転を緩やかに停止させることが可能なブラシレスモータ用駆動制御装置や、当該制御装置を備えたブラシレスモータシステム、当該システムを備えた草刈機、ローラシステム、搬送装置、並びに、巻き取り装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
続いて、本発明の一実施形態にかかるブラシレスモータシステム1(以下、単にモータシステム1とも称す)、並びに、ブラシレスモータ駆動制御装置10(以下、単に制御装置10とも称す)について図面を参照しながら詳細に説明する。図1に示すように、ブラシレスモータシステム1は、駆動部2と、電源3と、スイッチ5と、制御装置10とを備えている。駆動部2は、ブラシレスモータ7(以下、単にモータ7とも称す)と回転体6を備えている。
【0025】
モータ7は、従来公知のブラシレスモータと同様に回転子15や固定子16、ホール素子17からなる回転位置検出手段19、回転軸18を備えたものである。回転子15は、磁石を備えている。本実施形態では、回転子15として、N・S一対(2極)の磁極を備えた磁石が採用されている。また、回転子15には、回転軸18が一体的に回転可能なように取り付けられている。固定子16は、多相(n相)の駆動コイル20を備えている。図2に示すように、本実施形態では、固定子16は、U,V,Wの3相の駆動コイル20(以下、それぞれを駆動コイル20U,20V,20Wとも称す)を備えている。
【0026】
ホール素子17は、回転子15の磁極を検知してパルス信号(以下、モータパルス信号とも称す)を発信可能なものであり、回転子15の回転位置を検出するために設けられている。本実施形態では、3つのホール素子17(以下、それぞれをホール素子17a〜17cとも称す)が回転子15の中心軸に対して120度の間隔をあけて配されており、これら3つのホール素子17a〜17cによって回転位置検出手段19が形成されている。
【0027】
図4(a)に示すように、ホール素子17a〜17cは、それぞれ独立的にモータパルス信号P(以下、それぞれをPa,Pb,Pcとも称す)を発信する。モータ7は、各ホール素子17a〜17cから発信される各モータパルス信号Pa,Pb,Pcに基づいて駆動コイル20に順次切替通電することにより、回転子15およびこれに一体化された回転軸18を所定方向に回転させたり、回転子15や回転軸18の回転を制動することができる。
【0028】
回転体6は、モータ7の回転子15と連動して回転する回転軸18に対して螺合可能な固定具21を用いて、回転軸18と一体的に回転可能なように固定されている。固定具21としては、例えばネジや、ボルト、ナットのようなものが採用されている。回転体6としては、草刈機に用いられる回転刃のようなものが採用されている。
【0029】
電源3は、駆動部2に設けられたモータ7と電気的に接続されている。電源3は、蓄電池25(蓄電装置)を備えており、蓄電池25からモータ7に対して電力供給できると共に、モータ7の制動時に発生する誘起電力を蓄電池25側に供給して蓄電できる構成とされている。
【0030】
スイッチ5は、ブラシレスモータシステム1の起動、停止を行うためのものである。スイッチ5をオン状態とすると、駆動信号がモータ駆動部33に向けて発信され、駆動部2においてモータ7の回転子15と連動して回転する回転軸18およびこれに装着された回転体6が回転する。一方、スイッチ5をオフ状態とすると、制動信号がモータ駆動部33に向けて発信され、回転軸18および回転体6の回転が停止する。
【0031】
制御装置10は、図1に示すようにモータパルス認識部30や、クロック信号生成部31、遅延パルス生成部32、モータ駆動部33、遅延時間タイマ35、ショートブレーキタイマ36を備えた構成とされている。制御装置10は、上記した駆動部2のモータ7や、スイッチ5と電気的に接続されている。
【0032】
モータパルス認識部30は、モータ7に設けられたホール素子17a〜17cから発信されるモータパルス信号P(Pa,Pb,Pc)を受信する部分である。モータパルス認識部30で受信されたモータパルス信号Pは、遅延パルス生成部32やモータ駆動部33に向けて発信される。
【0033】
クロック信号生成部31は、所定のクロック数でクロック信号を発信可能なものである。クロック信号生成部31で生成されたクロック信号は、遅延パルス生成部32に向けて発信される。クロック信号生成部31は、図3(d)に示すように、クロック数すなわちクロック信号の発信間隔を適宜調整することができる。
【0034】
遅延パルス生成部32は、モータ7を制動する際に作動する部分であり、モータパルス認識部30から受信したモータパルス信号Pに対して位相が遅れたパルス信号(以下、遅延パルス信号Lとも称す)を生成し、発信する機能を有する。さらに詳細に説明すると、遅延パルス生成部32は、図3(a)のようにモータパルス信号Pがモータ7側から発信されて来たのを検知すると、図3(b)のようにモータパルス信号Pが立ち上がる時点を基準として、クロック信号生成部31から発信されるクロック信号の1パルス分に相当する分だけ位相を遅らせた遅延パルス信号Lを発信することができる。すなわち、図4(b),(c)に示すように、遅延パルス生成部32は、モータパルス信号P(Pa,Pb,Pc)に対してクロック信号生成部31から発信されるクロック信号の1クロック分に相当する分だけ位相を遅らせた遅延パルス信号L(La,Lb,Lc)を発信することができる。
【0035】
モータ駆動部33は、モータパルス認識部30から発信されたモータパルス信号Pや、遅延パルス生成部32から発信された遅延パルス信号L、スイッチ5から発信される起動・停止信号を受信し、これに基づいてモータ7への通電を制御する機能を有する部分である。さらに詳細には、モータ7を作動させる場合、すなわちスイッチ5の操作によりモータ駆動部33に向けて駆動信号が発信されている状態において、モータ駆動部33は、モータパルス認識部30から受信したモータパルス信号Pに基づいて駆動コイル20への通電を制御し、回転子15を回転させる通常運転を実施することができる。
【0036】
具体的には、通常運転を行う場合において、例えばホール素子17a〜17cによって回転子15の磁極が図5(a)のような位置関係にあることが検知されると、モータ駆動部33により、図中に矢印で示すように駆動コイル20U側から駆動コイル20W側に電流が流れるように通電制御される。これにより、駆動コイル20W側がN極に励磁された状態になると共に、駆動コイル20U側がS極に励磁された状態になり、回転子15が図5(a),(b)に矢印で示す方向(図示状態では反時計回り方向)に回転する。その後、モータ駆動部33により、図5(c)に示すように、駆動コイル20V側から駆動コイル20W側に電流が流れるように電流の流れ方向が切り替えられる。これにより、駆動コイル20W側がN極に、駆動コイル20V側がS極にそれぞれ励磁した状態になると共に、これに追従して図5(c),(d)に矢印で示すように、回転子15がさらに反時計回りに回転する。
【0037】
一方、モータ7を停止させる制動運転を行う場合、すなわちスイッチ5の操作によりモータ駆動部33に向けて制動信号が発信された場合は、制動信号が発信されたタイミングから所定の期間にわたってクロック信号生成部31から遅延パルス生成部32に向けてクロック信号が発信される。また、これと共に、遅延パルス生成部32からモータ駆動部33に向けて遅延パルス信号Lが発信される。モータ駆動部33は、遅延パルス生成部32から受信した遅延パルス信号Lに基づき、回転子15の回転を制動する。これにより、回転子15の回転速度は徐々に低下していき、その後完全に停止状態とされる。
【0038】
さらに具体的に説明すると、スイッチ5の操作によってクロック信号生成部31に向けて制動信号が発信される(オン状態になる)と、クロック信号生成部31においてクロック信号が発信される。ここで、クロック信号生成部31は、制動信号が発信された時点から所定の単位時間T毎に1クロック分に相当する期間(以下、クロック時間とも称す)が長くなるようにクロック数を切り替えていく。すなわち、制動信号がオン状態になった後、単位時間T毎に期間T1,T2・・・,Tn(n=1,2,3,4・・・)とし、各期間Tnの間に発信されるクロック信号についてのクロック時間をtn(n=1,2,3,4・・・)とした場合、期間Tnにおけるクロック時間tnは、期間T(n−1)におけるクロック時間t(n−1)よりも大きくなる。すなわち、tn>t(n−1)の関係が成立する。
【0039】
上記したようにしてクロック信号生成部31において生成されたクロック信号は、遅延パルス生成部32に向けて発信される。遅延パルス生成部32は、モータパルス認識部30から受信したモータパルス信号Pと、クロック信号生成部31から受信したクロック信号とに基づき、遅延パルス信号Lを生成し、モータ駆動部33に向けて発信する。さらに詳細には、遅延パルス生成部32が期間Tnにおいてモータパルス信号Pを受信すると、この信号が立ち上がった時点から期間Tnにおけるクロック時間tnに相当する分だけ遅延した時点を起点として、モータパルス信号Pがオン状態である期間と同一の期間にわたってオン状態となる遅延パルス信号Lを生成する。遅延パルス生成部32で遅延パルス信号Lが生成されると、これがモータ駆動部33に向けて発信される。
【0040】
制動信号がオン状態となった後、遅延パルス生成部32から遅延パルス信号Lが発信されると、モータ駆動部33は、遅延パルス信号Lに基づいて駆動コイル20U,20V,20Wへの通電を行う。すなわち、制動信号がオン状態となった後は、モータパルス認識部30で認識されるモータパルス信号Pに対して遅延クロック信号の1クロック分に相当する分だけ位相が遅れた状態で駆動コイル20U,20V,20Wへの通電がなされる。そのため、制動信号がオン状態になると、モータ7の回転子15は、前記した位相の遅れ分だけ制動された状態になる。また、制動信号がオン状態になると、単位時間T毎にクロック時間tnが長くなり、その分だけ位相の遅れが大きくなる。そのため、制動信号がオン状態になった後、単位時間Tが経過する毎に回転子15にかかる制動力が強くなっていく。
【0041】
上記したようにして制動信号がオン状態となり、回転子15が制動された状態になると、モータ7の駆動コイル20において誘起電力が発生する。ここで発生した誘起電力は、電源3に向けて供給され、蓄電池25に蓄電される。
【0042】
上記した制動運転は、制動信号がオン状態となった後、所定時間が経過した時点になるまで継続される。本実施形態では、制動信号がオン状態となった時点から制動運転および遅延時間タイマ35により計時が開始され、遅延時間タイマ35がタイムアップ状態になると制動運転が終了する。
【0043】
このようにして制動運転が完了すると、所定のタイミングでモータ駆動部33は、いわゆるショートブレーキをかけ、回転子15を完全に停止させる。すなわち、各駆動コイル20間をショートさせることで回転子15の回転が完全に停止する。本実施形態のモータシステム1では、制動信号がオン状態となった時点からショートブレーキタイマ36が計時を開始し、ショートブレーキを作用させるべきタイミングになるとタイムアップ状態になる。そして、ショートブレーキタイマ36がタイムアップ状態になると、モータ駆動部33がモータ7に対してショートブレーキをかける。
【0044】
続いて、本実施形態のモータシステム1の動作について、図6に示すフローチャートを参照しながら詳細に説明する。モータシステム1の制御装置10は、ステップ1においてスイッチ5がオン状態になり、モータ駆動部33に向けて発信される駆動信号がオン状態になったことを確認すると、制御フローをステップ2に進め、モータ7を通常運転させる。すなわち、ステップ2では、上記したように回転位置検出手段19を構成する各ホール素子17a〜17cから発信されるモータパルス信号Pに基づき、モータ駆動部33がモータパルスが立ち上がるタイミングにあわせて固定子16の駆動コイル20U,20V,20Wのそれぞれに順次切替通電する。これにより、図5(a)〜(d)に示すように回転子15が回転する。
【0045】
ステップ2でモータ7が通常運転を開始すると、制御フローがステップ3に進み、制動信号がオン状態になっているか否かが確認される。ここで、制動信号がオフ状態である場合(ステップ3でNOの場合)は、引き続きモータ7が通常運転を継続する。一方、制動信号がオン状態である場合は、制御フローがステップ4に進み、遅延時間タイマ35およびショートブレーキタイマ36がカウントを開始する。その後、制御フローはステップ5に進む。
【0046】
制御フローがステップ5に移行すると、制御装置10は、上記したようにして遅延パルス生成部32からモータ駆動部33に向けて発信される遅延パルス信号Lに基づいて制動運転を開始する。すなわち、制御フローがステップ5に移行すると、制御装置10の遅延パルス生成部32は、モータパルス認識部30から発信されるモータパルス信号P(図3(a)参照)およびクロック信号生成部31から発信されるクロック信号(図3(d)参照)に基づき、遅延パルス信号L(図3(b)参照)を生成し、モータ駆動部33に向けて発信する。制御装置10のモータ駆動部33は、遅延パルス生成部32から受信した遅延パルス信号Lの立ち上がりのタイミングにあわせてモータ7の固定子16を構成する駆動コイル20U,20V,20Wのそれぞれに順次切替通電する。
【0047】
さらに具体的には、制動運転が開始されると、通常運転時における各駆動コイル20U,20V,20Wへの通電のタイミングからクロック信号生成部31から発信されるクロック信号の1クロック分に相当する分(クロック時間tn)だけ位相が遅れた状態で各駆動コイル20U,20V,20Wに対して通電される。また、制動運転が開始されると、このタイミングから所定の単位時間Tn(n=1,2,3,4・・・)毎にクロック時間tn(n=1,2,3,4・・・)が長くなり、その分モータパルス信号Pに対する遅延パルス信号Lの位相のズレが大きくなる。そのため、制動運転が開始された後、単位時間Tn(n=1,2,3,4・・・)が経過する毎に回転子15に作用する制動力が増していき、回転子15の回転速度が徐々に低下していく。
【0048】
上記したようにして制動運転が開始されると、制御フローがステップ6に移行し、遅延時間タイマ35がタイムアップ状態になったか否かが確認される。ここで、遅延時間タイマ35がタイムアップ状態になっていない場合は、制御フローがステップ9に進み、駆動信号がオン状態になっているか否かが確認される。ステップ9で駆動信号がオン状態になっていることが確認された場合は、制御フローがステップ2に戻され、通常運転が再開される。一方、ステップ9で駆動信号がオフ状態である場合は、制御フローがステップ6に戻され、引き続き制動運転が継続される。
【0049】
ステップ6で遅延時間タイマ35がタイムアップ状態になったことが確認されると、制御フローがステップ7に移行し、ショートブレーキタイマ36がタイムアップ状態になっているか否かが確認される。ここで、ショートブレーキタイマ36がタイムアップ状態になっていない場合は、制御フローがステップ10に進み、駆動信号がオン状態か否かが確認される。ステップ10で駆動信号がオン状態になっていることが確認された場合は、制御フローがステップ2に戻され、通常運転が再開される。
【0050】
一方、ステップ10で駆動信号がオフ状態である場合は、制御フローがステップ7に戻され、引き続きショートブレーキタイマ36がタイムアップ状態になるまで待機する。その後、ショートブレーキタイマ36がタイムアップ状態になると、制御フローがステップ8に移行し、モータ7にショートブレーキがかけられる。ショートブレーキがかけられると、モータ7の回転子15が回転を停止し、図6に示す一連の制御フローが完了する。
【0051】
本実施形態の制御装置10は、モータ7の制動運転を行う際に遅延パルス信号Lに従って駆動コイル20への通電を制御する。また、モータ7の制動運転の開始後、遅延パルス生成部32で生成される遅延パルス信号Lのモータパルス信号Pに対する位相の遅れは単位時間T毎に段階的に増大する。そのため、本実施形態の制御装置10によりモータ7の制動を行えば、制動運転の開始後、回転子15に加わる制動力が段階的に強くなる。従って、本実施形態の制御装置10によれば、制動時にモータ7の回転子15を緩やかに停止させることができる。
【0052】
また、制御装置10は、所定のクロック数でクロック信号を発信可能なクロック信号生成部31を有し、これにより発信されるクロック信号に基づいて遅延パルス信号Lを生成する構成とされている。また、クロック信号生成部31で生成されるクロック信号は、モータ7の制動開始後、単位時間T毎に1クロック分に相当する時間が長くなっていく。そのため、遅延パルス生成部32から発信される遅延パルス信号Lは、制動運転の開始後、単位時間Tの経過毎にモータパルス信号Pに対して位相の遅れが段階的に大きくなる。従って、制御装置10によれば、モータ7の制動時にモータ7の回転子15の回転速度を段階的に低下させることができる。
【0053】
上記実施形態では、クロック信号生成部31のクロック数を単位時間T毎に少なくすることにより、クロック信号の発信間隔を延長すると共に、1クロック分に相当する分だけモータパルス信号Pに対する遅延パルス信号Lの位相の遅れを増幅していく構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、例えばクロック信号生成部31を時間の経過によらず所定のクロック数でクロック信号を発するものとし、単位時間Tの経過毎にモータパルス信号Pに対してクロック数Xだけ遅れた遅延パルス信号Lを生成することとし、前記クロック数Xを時間の経過と共に増大させていくことにより遅延パルス信号Lの位相の遅れを増幅していく構成としてもよい。また、クロック信号生成部31のクロック数Xを単位時間T毎に少なくすると共に、クロック数Xを時間の経過と共に増大させることにより遅延パルス信号Lの位相の遅れを増幅していく構成としてもよい。
【0054】
本実施形態のモータシステム1は、回転体6がネジやボルト、ナットのような固定具21を用いて回転軸18に取り付けられているが、上記したようにモータ7の制動運転時に回転子15が緩やかに減速して停止する。そのため、モータシステム1によりモータ7の動作を制御すれば、回転体6の回転を停止させる際に作用する慣性力が小さく、回転体6を装着するために使用されている固定具21のゆるみが発生しにくい。
【0055】
また、本実施形態の制御装置10は、蓄電池25を備えており、モータ7の制動運転時に発生する誘起電力を蓄電する構成としている。そのため、モータシステム1は、電力を有効利用することができる。
【0056】
上記実施形態で示した制御装置10は、単位時間T毎に段階的にモータパルス信号Pに対する遅延パルス信号Lの位相の遅れを段階的に増幅させ、回転子15を減速させる構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記した位相の遅れを連続的に増幅させる構成としてもよい。
【0057】
上記実施形態で示したモータ7は、回転位置検出手段19としてホール素子17a〜17cにより構成されるものを例示したが、例えばフォトトランジスタのようなものにより構成されるものであってもよい。
【0058】
上記実施形態では、電源3に、電力を蓄電するための蓄電手段の一例として蓄電池25を採用した例を例示したが、これに代わって例えば従来公知のキャパシタ等のような蓄電手段を採用した構成としてもよい。
【0059】
制動信号がオン状態になってから遅延時間タイマ35による計時がタイムアップ状態になった時点でショートブレーキをかけて回転子15を完全に停止させるものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、例えば回転子15やこれと連動して回転する回転軸18、回転体6等の回転速度を従来公知のロータリーエンコーダ等で検知し、回転速度が所定速度まで低速になった時点でショートブレーキを作動させる構成としてもよい。
【実施例1】
【0060】
続いて、上記実施形態に示したブラシレスモータシステム1、並びに、ブラシレスモータ駆動制御装置10の一実施例にかかる草刈機50について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施例の草刈機50は、モータ7を動力源として作動する、いわゆる電動草刈機である。草刈機50は、上記した制御装置10をはじめとするモータシステム1が組み込まれている。草刈機50は、図7に示すように、前方側操作杆51や、後方側操作杆52を接続してなる長尺状の外観を有する部分が主要部をなしている。草刈機50は、前方側操作杆51の先端側に作動部53を有すると共に、後方側操作杆52の末端側に電源部54や、制御部56を有する。草刈機50は、その全長の略中央部にモータ部55が設けられている。
【0061】
前方側操作杆51は、中空の筒体によって構成されており、動力伝動軸(図示せず)が内蔵されている。前方側操作杆51の先端側には作動部53が設けられている。作動部53は、従来公知の草刈機と同様に、図示しない傘歯車列を有し、この傘歯車列の入力側に前方側操作杆51に内蔵されている動力伝動軸が接続されている。また、作動部53には、回転刃57(上記実施形態の回転体6に相当)が設けられており、これが前記した傘歯歯車に接続されている。
【0062】
モータ部55は、上記実施形態に示したモータ7を内蔵している。前方側操作杆51には、図示しない動力伝達軸(上記実施形態の回転軸18に相当)が内蔵されている。この動力伝達軸は、モータ7の回転子15と連動して回転可能なように接続されている。そのため、草刈機50は、モータ7を作動させることにより、モータ7において発生した回転動力を動力伝達軸および作動部53に設けられた傘歯歯車(図示せず)を介して回転刃57に伝達させ、これを回転させることができる。
【0063】
後方側操作杆52には、操作用ハンドル58が設けられている。操作用ハンドル58には、操作レバー58aや回転刃57の回転速度調整用の切替スイッチ58b等が設けられている。また、後方側操作杆52の末端部分には制御部56が設けられている。制御部56には、上記実施形態に示した制御装置10が内蔵されている。また、制御部56には、スイッチ5が設けられている。制御部56を構成する制御装置10やスイッチ5は、それぞれモータ7に対して電気的に接続されている。
【0064】
また、後方側操作杆52の後端には、電源部54が設けられている。電源部54には、上記実施形態に示したモータシステム1の電源3を構成する蓄電池25が内蔵されている。蓄電池25は、モータ部55に設けられたモータ7に対して電気的に接続されている。
【0065】
本実施例の草刈機50は、上記実施形態に示したモータシステム1を採用しているため、スイッチ5を操作して回転刃57を停止させる際に、回転刃57が緩やかに減速する。そのため、草刈機7は、回転刃57の回転を停止させる際に作用する慣性力が小さく、回転刃57を固定している固定具21のゆるみが発生しにくい。
【0066】
本実施例では、モータシステム1や制御装置10を草刈機50に適用した例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ブラシレスモータを駆動源とする他の構成の草刈機や、他の装置類にモータシステム1や制御装置10を採用したものであってもよい。
具体的には、図8に示すように、上述の制御装置10とモータ内蔵ローラ70(ローラ)と組み合わせてローラシステムRSを構築し、制御装置10によりモータ内蔵ローラ70の動作制御することも可能である。
【0067】
モータ内蔵ローラ70についてさらに詳細に説明すると、モータ内蔵ローラ70は、図8に示すようにローラ本体71と、閉塞部材72と、支軸73,75とを具備している。ローラ本体71は、金属製の筒体であり、両端の開口部分が閉塞部材72によって閉塞されている。支軸73,75は、それぞれ閉塞部材72,72から突出した軸体であり、閉塞部材72,72に組み込まれた軸受76,77により回転自在なように支持されている。
【0068】
支軸73には、軸方向一端側に開口した凹部78が設けられている。支軸73は、凹部78が開口している側の端部がローラ本体71の内側を向くようにして閉塞部材72に差し込まれている。凹部72にはボール80とバネ81が収容されている。バネ81の一端側は、凹部72の開口から支軸73の軸方向外側に向けて突出しており、ローラ本体71の内側において閉塞部材72に取り付けられた座部材82に当接している。そのため、支軸73は、常時はバネ81によってローラ本体71の外側に向けて付勢されて突出しているが、モータ内蔵ローラ70を平行に配されたフレーム等に設置したり取り外す際には、ローラ本体71の内側に向けて押圧して退入させることができる。
【0069】
支軸75は、閉塞部材72に対して軸受77および軸継手83を介して回転自在に取り付けられている。支軸75には、軸方向に貫通し、ローラ本体71の内外を連通する貫通孔85が設けられている。貫通孔85には、モータ7への電源の供給や、モータ7に付属しているホール素子17等の電気部品あるいは電子部品との電気信号の送受信を行うケーブル86が挿通され、ローラ本体71の外部に取り出されている。また、ケーブル86は、上述のモータシステム1を構成する電源3や制御装置10に接続されている。
【0070】
図8に示すように、モータ内蔵ローラ70は、ローラ本体71内に上述したモータ7と減速機87とから構成される駆動ユニット88を内蔵している。モータ7の回転軸18は、軸受90,91により回転自在な状態で支持されている。モータ7の回転軸18は、減速機87に接続されている。
【0071】
減速機87は、図8に示すように遊星歯車列からなる減速機であり、回転軸18を介して伝播するモータ7の回転動力を所定の減速比で減速するものである。また、減速機87の出力軸92には、外歯車93が接続されている。また、外歯車93は、ローラ本体71の内周面に固定されている内歯車95に接続されている。そのため、モータ7の回転動力は、減速機87において減速され、減速機87の出力軸92、外歯車93、並びに、内歯車95を介してローラ本体71に伝播され、ローラ本体71を回転駆動させる。
【0072】
上記したように、モータ内蔵ローラ70は、ローラ本体71に内蔵されたモータ7により回転駆動するものである。そのため、モータ7を制御装置10により動作制御すれば、モータ内蔵ローラ70の回転を停止させる際に、回転速度を緩やかに減速させることができる。
【0073】
上記したモータ内蔵ローラ70は、例えば図9(a)に示すローラコンベア98等の搬送装置に用いることができる。また、モータ内蔵ローラ70は、例えばフィルム等の長尺物を巻き取るための巻き取り装置として使用することも可能である。モータ内蔵ローラ70を巻き取り装置として使用する例としては、例えば図9(b)に示す表示装置100のようなものがある。
【0074】
さらに具体的に説明すると、表示装置100は、間隔を空けて平行に配された2本のモータ内蔵ローラ70,70と、広告等を表示したフィルム101(長尺物)とを有する。そして、一方のモータ内蔵ローラ70には、フィルム101の一端側が固定されており、他方のモータ内蔵ローラ70には、フィルム101の他端側が固定された構成とされている。フィルム101は、モータ内蔵ローラ70,70のいずれか一方あるいは双方の表面に巻き取られており、モータ内蔵ローラ70,70の間でたるまないよう、一定の張力で引っ張られた状態とされている。
【0075】
表示装置100は、フィルム101のうち、モータ内蔵ローラ70,70の間に位置する領域に表示されている広告等を表示することができる。また、表示装置100は、モータ内蔵ローラ70,70を回動させ、フィルム101をモータ内蔵ローラ70の表面に巻き取ることにより、フィルム101をたるませることなくモータ内蔵ローラ70,70の間で移動させ、表示内容を変更することができる。
【0076】
上述した表示装置100は、フィルム101を一定の張力で引っ張った状態でモータ内蔵ローラ70,70に巻き取るものであるため、フィルム101にかかる負荷を最小限に抑制するためにはモータ内蔵ローラ70,70を緩やかに停止させることが望ましい。従って、表示装置100において上記実施形態で示した制御装置10をモータ内蔵ローラ70,70の制御に用いれば、モータ内蔵ローラ70,70を緩やかに停止させることが可能であり、フィルム101にかかる負荷を最小限に抑制し、フィルム101の破損を防止することができる。
【0077】
上記実施例および変形例では、モータ7をモータ内蔵ローラ70に組み込み、これを搬送装置98や、表示装置100における巻取装置として利用し、モータ7を制御装置10で駆動制御することにより、モータ内蔵ローラ70の動作を制御する例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、モータ7は、例えばチェーン式、ギヤ式、ベルト式のコンベアの駆動源として採用することができる。また、モータ7は、図9(c)に示す表示装置110のように、動力源を持たない2本のローラ111とモータ70とを設け、ベルトやチェーン等からなる動力伝達手段112によりモータ70の動力をローラ111に伝達可能としたものに採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態にかかるブラシレスモータシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すブラシレスモータシステムにおいて採用されているモータの内部構造を示す模式図である。
【図3】(a)は図1に示すブラシレスモータが制動運転を行う際にモータパルス認識部で認識されるモータパルス信号のタイムチャート、(b)は遅延パルス生成部で生成される遅延パルス信号のタイムチャート、(c)は遅延時間の経過を示すタイムチャート、(d)はクロック生成部で生成されるクロック信号のタイムチャートである。
【図4】(a)は通常運転時にモータパルス認識部で認識されるモータパルス信号のタイムチャート、(b),(c)はクロック時間t1,t2の際に遅延パルス生成部で生成される遅延パルス信号のタイムチャートである。
【図5】(a)〜(d)は、ブラシレスモータを通常運転する際の動作状態を示す模式図である。
【図6】図1に示すブラシレスモータシステムの動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施例にかかる草刈機を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施例にかかるモータ内蔵ローラを示す断面図である。
【図9】(a)は本発明の一実施例に係る搬送装置を示す斜視図であり、(b),(c)は、それぞれ本発明の一実施例にかかる表示装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0079】
1 ブラシレスモータシステム(モータシステム)
2 駆動部
6 回転体
7 ブラシレスモータ(モータ)
10 ブラシレスモータ駆動制御装置(制御装置)
15 回転子
16 固定子
17 ホール素子
18 回転軸
19 回転位置検出手段
20 駆動コイル
25 蓄電池(蓄電装置)
30 モータパルス認識部
31 クロック信号生成部
32 遅延パルス生成部
33 モータ駆動部
50 草刈機
57 回転刃(回転体)
70 モータ内蔵ローラ(ローラ装置)
98 搬送装置
100,110 表示装置
101 フィルム(長尺物)
111 動力伝達手段
RS ローラシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子と、多相の駆動コイルを備えた固定子と、回転子の磁極の位置を検知してモータパルス信号を発信可能な回転位置検出手段とを有するブラシレスモータに接続され、前記回転位置検出手段により検出された回転子の磁極の位置に応じて前記多相の駆動コイルへの通電状態を順次切り替えることにより回転子を回転および制動させることが可能なブラシレスモータ用駆動制御装置であって、
駆動コイルへの通電を制御するモータ駆動部と、
回転位置検出手段から発信されるモータパルス信号を認識するモータパルス認識部と、
前記モータパルス認識部において認識されたモータパルス信号に対して位相を遅らせた遅延パルス信号を生成可能な遅延パルス生成部とを有し、
ブラシレスモータの制動を開始すると、モータパルス信号に対する遅延パルス信号の位相の遅れが段階的あるいは連続的に大きくなると共に、当該遅延パルス信号に従ってモータ駆動部から駆動コイルへの通電が制御されることを特徴とするブラシレスモータ用駆動制御装置。
【請求項2】
所定のクロック数でクロック信号を発信可能なクロック信号生成部を有し、
遅延パルス生成部において、クロック信号生成部で生成されたクロック信号に基づき、前記モータパルス認識部で認識されたモータパルス信号に対して位相を遅らせた遅延パルス信号を生成可能であり、
ブラシレスモータの制動開始後、所定時間毎に前記クロック数が減少することを特徴とする請求項1に記載のブラシレスモータ用駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブラシレスモータ用駆動装置と、ブラシレスモータと、電力を蓄電可能な蓄電装置とを備え、
ブラシレスモータの制動に伴いブラシレスモータにおいて発生した誘起電力が、蓄電装置に蓄電されることを特徴とするブラシレスモータシステム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のブラシレスモータ用駆動装置と、ブラシレスモータと、回転体と、固定具とを備え、
当該ブラシレスモータの回転子と連動して回転する回転軸を有し、
前記固定具が、前記回転軸に対して螺合し、前記回転体を回転軸に対して前記回転体を装着可能であることを特徴とするブラシレスモータシステム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のブラシレスモータシステムを備えており、
ブラシレスモータの回転子と共に回転する回転軸を有し、当該固定軸に対して螺合する固定具を用いて刃が装着されていることを特徴とする草刈機。
【請求項6】
ブラシレスモータと、
当該ブラシレスモータを駆動源として回転するローラと、
請求項1又は2に記載のブラシレスモータ用駆動装置とを有し、
当該ブラシレスモータ用駆動装置により、前記ローラの駆動制御を実施可能であることを特徴とするローラシステム。
【請求項7】
ローラにブラシレスモータが内蔵されていることを特徴とする請求項6に記載のローラシステム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のローラシステムを備えており、ローラの上方に配された物品を搬送可能であることを特徴とする搬送装置。
【請求項9】
請求項6又は7に記載のローラシステムを備えており、
ローラに取り付けられた長尺物をローラの表面に巻き取り可能であることを特徴とする巻き取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−259406(P2008−259406A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19802(P2008−19802)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(592026819)伊東電機株式会社 (71)
【Fターム(参考)】