説明

ブラシレスモータ

【課題】励磁電流に発生する雑音を除去する機能を損なうことなく小型化されるブラシレスモータを提供する。
【解決手段】ブラシレスモータは、駆動用コイル23が巻回されたティース部41を有するステータ20と、前記ステータ20と対向配置される永久磁石32を備えたロータ30と、前記駆動用コイル23に励磁電流を供給する励磁回路とを備えている。所定のティース部41には、雑音除去用コイル43が巻回されている。雑音除去用コイル43の両端部(始端部及び終端部)は、電源と励磁回路を構成する出力素子との間に該雑音除去用コイル43が直列に介在されるように励磁回路が実装された回路基板に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブラシレスモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1にて開示されているように、ブラシレスモータには、該ブラシレスモータを駆動するための励磁回路が実装された回路基板が一体に備えられたものがある。このブラシレスモータは、コアにコイルが巻回されてなるステータと、該ステータと対向配置される永久磁石を有するロータとを備えている。そして、前記励磁回路から供給される励磁電流によってステータに回転磁界が発生され、ロータが回転する。
【0003】
励磁回路は複数の回路素子から構成されており、これら複数の回路素子の一つにチョークコイルがある。チョークコイルは、励磁回路から前記コイルに供給される励磁電流に発生する雑音(高周波ノイズ)を除去するものであり、電源と励磁回路の出力素子との間に直列に介在されている。
【特許文献1】特開平11−332203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、自動車の多機能化により、自動車の車両に搭載される部品の数は増加の一途を辿っている。そのため、自動車に搭載される部品の更なる小型化が望まれている。特許文献1にて開示されているブラシレスモータも例外ではなく、車両に搭載される場合には、その体格がより小さい方が望ましい。
【0005】
そこで、チョークコイルに着目すると、チョークコイルは、回路基板に実装された回路素子の中でもその体積が大きいために場所を取っている。しかしながら、チョークコイルは、励磁電流に発生する雑音を除去するために必要な回路素子であり、単純に省略することは望ましくない。即ち、チョークコイルは、ブラシレスモータの小型化を困難にしている原因の一つとなっている。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、励磁電流に発生する雑音を除去する機能を損なうことなく小型化されるブラシレスモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、駆動用コイルが巻回されたティース部を有するステータと、前記ステータと対向配置される永久磁石を備えたロータと、前記駆動用コイルに励磁電流を供給する励磁回路とを備えたブラシレスモータであって、前記ティース部には、前記励磁電流に発生する雑音を除去する雑音除去用コイルが巻回されている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のブラシレスモータにおいて、前記雑音除去用コイルは、それぞれで発生する誘起電圧を互いに相殺するように巻回された少なくとも一対のコイルから構成されている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のブラシレスモータにおいて、対をなす前記コイルは、互いに同数のティース部に巻回されている。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のブラシレスモータにおいて、対をなす前記コイルは、互いに巻数が等しい。
【0010】
請求項5に記載の発明は、モータケースに固定されたセンターピースと該センターピースに固定され駆動用コイルが巻回されたティース部を有するコアとを備えたステータと、回転軸が圧入されたヨークに、前記ステータと対向配置される永久磁石が固着されてなるロータと、前記駆動用コイルに励磁電流を供給する励磁回路とを備えたブラシレスモータであって、前記センターピースの外周には、前記励磁電流に発生する雑音を除去する雑音除去用コイルが設けられている。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載のブラシレスモータにおいて、前記雑音除去用コイルは、前記センターピースに直接巻回されている。
請求項7に記載の発明は、モータケースに固定されたセンターピースと該センターピースに固定され駆動用コイルが巻回されたティース部を有するコアとを備えたステータと、回転軸が圧入されたヨークに、前記ステータと対向配置される永久磁石が固着されてなるロータと、前記駆動用コイルに励磁電流を供給する励磁回路とを備えたブラシレスモータであって、前記回転軸の外周には、前記励磁電流に発生する雑音を除去する雑音除去用コイルが前記回転軸の外周面と非接触となるように設けられている。
【0012】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、励磁電流に発生する雑音を除去する雑音除去用コイルがステータのティース部に巻回されているため、従来のように雑音除去用のチョークコイルを回路基板に実装しなくてもよい。よって、従来のようなチョークコイルを備えない分だけブラシレスモータが小型化される。従って、励磁電流に発生する雑音を除去する機能を損なうことなくブラシレスモータが小型化される。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、雑音除去用コイルは、ステータのティース部に巻回されているため、ロータを構成する永久磁石の磁界の影響により該雑音除去用コイルにて誘起電圧が発生する。そこで、雑音除去用コイルを少なくとも一対のコイルにて構成すると共に、対をなす2つのコイルのそれぞれで発生する誘起電圧を、その対をなす2つのコイル同士で互いに相殺させている。従って、雑音除去用コイルにて発生する誘起電圧に起因するトルクむらや、ロストルク等の発生が抑えられる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、対をなすコイルは、互いに同数のティース部に巻回されているため、ロータを構成する永久磁石の磁界の影響により発生される誘起電圧が対のコイルでバランス良く発生する。そのため、対をなす雑音除去用コイルは、それぞれで発生する誘起電圧を互いに相殺し易い。従って、雑音除去用コイルにて発生される誘起電圧に起因するトルクむらや、ロストルク等の発生がより抑えられる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、対をなすコイルは、互いに同数のティース部に巻回されていると共にその巻数が互いに等しいため、ロータを構成する永久磁石の磁界の影響により発生される誘起電圧が互いにほぼ同じ大きさとなる。そのため、対をなす雑音除去用コイルは、それぞれで発生する誘起電圧を互いに等しく相殺する。従って、雑音除去用コイルにて発生される誘起電圧に起因するトルクむらや、ロストルク等の発生が更に抑えられる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、励磁電流に発生する雑音を除去する雑音除去用コイルは、センターピースの外周に設けられているため、従来のように雑音除去用のチョークコイルを回路基板に実装しなくてもよい。よって、従来のようなチョークコイルを備えない分だけブラシレスモータが小型化される。従って、励磁電流の雑音を除去する機能を損なうことなくブラシレスモータが小型化される。また、雑音除去用コイルはステータのティース部に巻回されているわけではないため、ロータを構成する永久磁石の磁界の影響によって雑音除去用コイルで誘起電圧が発生する虞がない。従って、誘起電圧に起因するトルクむらやロストルク等が発生する虞がなく、ブラシレスモータは従来と同様の性能を容易に維持する。更に、誘起電圧を相殺するように該雑音除去用コイルの巻回方法を工夫する必要がない。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、雑音除去用コイルはセンターピースに直接巻回されているため、該雑音除去用コイルは容易に設けられる。
請求項7に記載の発明によれば、雑音除去用コイルが回転軸の外周に設けられているため、従来のように雑音除去用のチョークコイルを回路基板に実装しなくてもよい。よって、従来のようなチョークコイルを備えない分だけブラシレスモータが小型化される。従って、励磁電流の雑音を除去する機能を損なうことなくブラシレスモータが小型化される。また、雑音除去用コイルはステータのティースに巻回されているわけではないため、ロータに備えられた永久磁石の影響によって雑音除去用コイルで誘起電圧が発生する虞がない。従って、誘起電圧に起因するトルクむらやロストルク等が発生する虞がなく、ブラシレスモータは従来と同様の性能を容易に維持する。更に、誘起電圧を相殺するように該雑音除去用コイルの巻回方法を工夫する必要がない。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、励磁電流に発生する雑音を除去する機能を損なうことなく小型化されるブラシレスモータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。
図1は、車両用空調装置の送風装置1を示す。図1に示すように、送風装置1を構成するブラシレスモータ10は、合成樹脂製のモータホルダ11を備えている。モータホルダ11の中央部には有底状の円筒部12が形成されている。
【0020】
前記円筒部12の内部には、ステータ20が収容されている。ステータ20は、センターピース21と、コア22と、駆動用コイル23とから構成されている。
センターピース21は、熱伝導率に優れた金属からなり、円筒部21aと該円筒部21aの下端から径方向に沿って延設された延設部21bとから構成されている。センターピース21は、延設部21bが円筒部12の底部12aにゴムクッション24を介してねじ25で固定されることにより、モータホルダ11に対して固定されている。また、円筒部21a内の上下両側には、上側軸受26a及び下側軸受26bが固定されている。
【0021】
前記センターピース21にはロータ30が回転可能に支持されている。ロータ30は、釣鐘状のヨーク31と、該ヨーク31の内周面に固着されステータ20と径方向に対向配置される永久磁石32と、前記ヨーク31の中心部に圧入された回転軸33とから構成されている。ヨーク31は、その下部が円筒部12内に収容されている。
【0022】
図2に示すように、永久磁石32は円筒状をなしている。そして、この永久磁石32は、N極とS極とが周方向に交互に着磁され、複数の界磁極(本実施形態では6つ)有している。
【0023】
図1に示すように、前記回転軸33は、上側軸受26a及び下側軸受26bを介して前記センターピース21の中心部に回転可能に支持されている。そして、回転軸33の上端部には送風装置1を構成するファン34が固定されている。
【0024】
図2に示すように、前記ステータ20のコア22は、円筒部40と、該円筒部40の外周面から径方向外側に向かって放射状に延びる複数(本実施形態では18個)のティース部41とから構成されている。このコア22は、円筒部40が前記センターピース21の円筒部21aの外周面に固定されることにより、センターピース21に対して固定されている(図1参照)。そして、コア22は、センターピース21に固定された状態では前記永久磁石32の内側に配置され、ティース部41の先端面が永久磁石32と径方向に対向している。
【0025】
ティース部41には、合成樹脂製のインシュレータ42を介して前記駆動用コイル23が巻回されている。また、所定のティース部41には、雑音除去用コイル43が巻回されている。雑音除去用コイル43は、駆動用コイル23よりもコア22の径方向内側の位置、即ち、駆動用コイル23よりも永久磁石32から離れた位置でティース部41に巻回されている。
【0026】
雑音除去用コイル43は、対をなす2つのコイル(第1のコイル44及び第2のコイル45)から構成されている。第1のコイル44は、周方向に連続して並ぶ3つのティース部41に巻回されている。そして、第2のコイル45は、第1のコイル44が巻回されたティース部41と周方向に連続して並ぶ3つのティース部41に巻回されている。これら第1のコイル44及び第2のコイル45は一本の巻線で構成されており、互いに巻数が同じとなっている。そして、図3に示すように、第1のコイル44が巻回された後、第2のコイル45が巻回される。尚、図3では、ティース部41に対して複数回巻回される第1のコイル44及び第2のコイル45を簡略化して図示している。
【0027】
また、本実施形態では、第1のコイル44が巻回されている3つのティース部41が永久磁石32のN極と対向する時には、第2のコイル45が巻回されている3つのティース部41は永久磁石32のS極と対向する。逆に、第1のコイル44が巻回されている3つのティース部41が永久磁石32のS極と対向する時には、第2のコイル45が巻回されている3つのティース部41は永久磁石32のN極と対向する。即ち、第1のコイル44と第2のコイル45とは互いに異極と対向するティース部41に巻回されている。従って、ロータ30が回転すると、永久磁石32の磁界の影響によって、第1のコイル44と第2のコイル45とでは互いに逆向きの誘起電圧(図3中では誘起電圧の向きを矢印α、及び矢印βにて図示している)が発生する。そのため、第1のコイル44と第2のコイル45とは、巻線の巻回方向(図3中に矢印Aにて図示)が同じ方向となるように巻回されている。このように第1のコイル44と第2のコイル45との巻線の巻回方向を同じにすると、第1のコイル44で発生した誘起電圧と第2のコイル45で発生した誘起電圧とは互いに相殺される。
【0028】
尚、前記駆動用コイル23は、雑音除去用コイル43が巻回された後にティース部41に巻回されている。
図1に示すように、前記モータホルダ11の下面には、制御回路装置50が備えられている。制御回路装置50は、回路基板51を備えており、該回路基板51には励磁回路を構成する多数の回路素子52が実装されている。また、回路基板51には、前記雑音除去用コイル43の両端部(始端部及び終端部)が、電源と励磁回路を構成する出力素子53との間に該雑音除去用コイル43が直列に介在されるように接続されている。尚、出力素子53には前記駆動用コイル23の端部が接続されており、出力素子53を介して駆動用コイル23に励磁電流が供給される。このような制御回路装置50は、回路基板51が1つ若しくは複数のねじ54で固定されることにより、モータホルダ11に対して固定されている。
【0029】
前記回転軸33の下端部には、円板状のセンサマグネット55が嵌着されている。そして、前記回路基板51上おいて、センサマグネット55と軸方向に対向する位置に、ホール素子56が配設されている。センサマグネット55の磁束をホール素子56で検出することによりロータ30の回転角度が検出され、その検出信号に基づいて前記励磁回路で励磁電流が制御される。
【0030】
前記モータホルダ11には前記回路基板51を覆う下部ケース61が取着されている。下部ケース61は、モータホルダ11と同様に合成樹脂よりなり、その周囲が上方へ垂立する皿形に成形されている。そして、モータホルダ11と下部ケース61との間に形成された制御回路収容部62内に前記制御回路装置50が収容されている。
【0031】
また、前記モータホルダ11には、前記ファン34の周囲を覆うブロワケース63が取着されている。このブロワケース63は、ブラシレスモータ10及びファン34と共に送風装置1を構成している。ブロワケース63の上部には、車室外或いは車室内から空気を導入する導入ダクト(図示しない)に連なる開口部64が形成されている。また、ブロワケース63の側方には、送風ダクトに連なる送風口(図示しない)が形成されている。そして、ファン34の回転に基づいて開口部64から取り入れられた空気は、ブロワケース63内を渦巻き状に送風口まで案内され、送風ダクトを介して車室内或いは空調器に案内される。
【0032】
上記のように構成された送風装置1において、励磁回路から駆動用コイル23に励磁電流が供給されると、ステータ20にて回転磁界が発生され、該回転磁界によって永久磁石32を備えたロータ30が回転し、回転軸33が回転する。そして、回転軸33の回転と共にファン34が回転される。ファン34が回転されると、導入ダクトから導入された空気がブロワケース63を介して送風ダクトに送風される。
【0033】
この時、ブラシレスモータ10において、駆動用コイル23に供給される励磁電流は、第1のコイル44及び第2のコイル45からなる雑音除去用コイル43によって雑音(高周波ノイズ)が除去されている。そして、ロータ30の永久磁石32が回転するため、該永久磁石32の磁界の影響により第1のコイル44及び第2のコイル45では誘起電圧が発生する。しかしながら、本実施形態では、第1のコイル44と第2のコイル45とは、互いに異極と対向するティース部41に巻回されていると共に、1本の巻線で巻回方向Aが同じ方向となるように巻回されている。そのため、第1のコイル44で発生する誘起電圧と第2のコイル45で発生する誘起電圧とは互いに相殺し合う。従って、第1のコイル44にて発生される誘起電圧及び第2のコイル45にて発生される誘起電圧によって、ロータ30を回転させるための回転磁界が悪影響を受けることが抑制される。その結果、ブラシレスモータ10におけるトルクむらやロストルクの発生が抑制される。
【0034】
上記したように、本第1実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)励磁電流に発生する雑音を除去する雑音除去用コイル43が所定のティース部41に巻回されているため、従来のように雑音除去用のチョークコイルを回路基板に実装しなくてもよい。従って、従来のようなチョークコイルを回路基板51上に備えない分だけ回路基板51を小さくすることができ、引いてはブラシレスモータ10を小型化することができる。よって、励磁電流の雑音を除去する機能を損なうことなくブラシレスモータ10を小型化することができる。
【0035】
(2)雑音除去用コイル43は、ティース部41に巻回されているため、ロータ30を構成する永久磁石32の磁界の影響により該雑音除去用コイル43にて誘起電圧が発生される。本実施形態では、雑音除去用コイル43は、対をなす第1のコイル44及び第2のコイル45から構成されると共に、第1のコイル44及び第2のコイル45は、それぞれで発生する誘起電圧を互いに相殺するように巻回されている。従って、雑音除去用コイル43で発生する誘起電圧に起因するトルクむらや、ロストルク等の発生が抑えられ、ブラシレスモータ10における振動や騒音の発生を抑制することができる。
【0036】
(3)対をなす第1のコイル44及び第2のコイル45は、互いに同数(3つ)のティース部41に巻回されているため、ロータ30を構成する永久磁石32の影響により発生される誘起電圧が第1のコイル44と第2のコイル45とでバランス良く発生(誘起電圧の発生時期等)する。従って、第1のコイル44と第2のコイル45とで発生する誘起電圧を互いに相殺し易い。その結果、雑音除去用コイル43で発生する誘起電圧に起因するトルクむらや、ロストルク等の発生がより抑えられ、ブラシレスモータ10における振動や騒音の発生をより抑制することができる。
【0037】
(4)対をなす第1のコイル44及び第2のコイル45は、それぞれ3つのティース部41に巻回されていると共に、巻数が同じであるため、ロータ30を構成する永久磁石32の磁界の影響により発生する誘起電圧がほぼ同じ大きさとなる。そのため、第1のコイル44と第2のコイル45とは、それぞれで発生する誘起電圧を互いに等しく相殺する。従って、雑音除去用コイル43で発生する誘起電圧に起因するトルクむらや、ロストルク等の発生が更に抑えられ、ブラシレスモータ10における振動や騒音の発生を更に抑制することができる。
【0038】
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図面に従って説明する。尚、本第2実施形態では、上記第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0039】
図4に示すように、本第2実施形態のブラシレスモータ70は、上記第1実施形態のブラシレスモータ10に替えて送風装置1に備えられるものである。
本第2実施形態のブラシレスモータ70における雑音除去用コイル71は、センターピース21の円筒部21aに直接巻回されている。詳しくは、雑音除去用コイル71は、円筒部21aにおいて、コア22の上端面よりも上側に突出した部分に巻回されている。
【0040】
雑音除去用コイル71の両端部(始端部お及び終端部)は、上記実施形態の雑音除去用コイル43と同様に、電源と出力素子53との間に該雑音除去用コイル71が直列に介在されるようにして回路基板51に接続されている。従って、励磁電流に発生する雑音(高周波ノイズ)は雑音除去用コイル71によって除去される。
【0041】
上記したように、本第2実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)円筒部21aにおいて、コア22の上端面よりも上側の部分の周囲は、従来、ブラシレスモータ内でデッドスペースとなっていた部分である。この部分に雑音除去用コイル71を巻回することにより、ブラシレスモータ70内の空間が有効に利用される。そして、励磁電流の雑音を除去する雑音除去用コイル71は、センターピース21の円筒部21aに直接巻回されているため、従来のように雑音除去用のチョークコイルを回路基板に実装しなくてもよい。従って、従来のようなチョークコイルを回路基板51上に備えない分だけ回路基板51を小型化することができ、引いてはブラシレスモータ70を小型化することができる。従って、励磁電流の雑音を除去する機能を損なうことなくブラシレスモータ70を小型化することができる。
【0042】
(2)雑音除去用コイル71はティース部41に巻回されているわけではないため、上記第1実施形態のように、ロータ30を構成する永久磁石32の磁界の影響によって雑音除去用コイル71で誘起電圧が発生する虞がない。従って、誘起電圧に起因するトルクむらやロストルク等が発生する虞がなく、ブラシレスモータ70は従来と同様の性能を容易に維持することができる。また、誘起電圧を相殺するように巻線の巻回方法を工夫する必要がなく、雑音除去用コイル71を容易に巻回することができる。
【0043】
(3)雑音除去用コイル71は、円筒部21aに直接巻回されている。従って、円筒部21aと非接触となるように雑音除去用コイル71を巻回する場合よりも、更に容易に雑音除去用コイル71を巻回することができる。
【0044】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
○雑音除去用コイルは、図5に示すように、回転軸に巻回されてもよい。図5に示すブラシレスモータ80は、合成樹脂製のモータホルダ81を備えている。そして、該モータホルダ81の中央部には、円筒状をなすセンターピース82が固定されている。センターピース82の外周面には、該センターピース82と共にステータ83を構成するコア84が固定されている。コア84のティース部には駆動用コイル85が巻回されている。
【0045】
モータホルダ81の下面には制御回路装置86が固定されると共に、該制御回路装置86を覆う下部ケース87が取着されている。制御回路装置86は、励磁回路を構成する複数の回路素子88が実装された回路基板89を備えている。励磁回路は前記駆動用コイル85に励磁電流を供給する。
【0046】
前記センターピース82にはロータ90が回転可能に支持されている。ロータ90は、釣鐘状のヨーク91と、該ヨーク91の内周面に固着されステータ83と径方向に対向配置される永久磁石92と、前記ヨーク91の中心部に圧入された回転軸93とから構成されている。回転軸93は、センターピース82内に固定された軸受94によって回転可能に支持されている。また、回転軸93の下端部には、雑音除去用コイル95が巻回されている。雑音除去用コイル95は、回転軸93の外周面と非接触となるように巻回されている。これにより、回転する回転軸93によって雑音除去用コイル95が損傷を受けることを防止している。また、雑音除去用コイル95の両端部(始端部及び終端部)は、電源と励磁回路を構成する出力素子96との間に該雑音除去用コイル95が直列に介在されるようにして回路基板89に接続されている。従って、励磁電流に発生する雑音(高周波ノイズ)は雑音除去用コイル95によって除去される。
【0047】
上記のように構成されたブラシレスモータ80において、雑音除去用コイル95は回転軸93の外周に設けられているため、従来のように雑音除去用のチョークコイルを回路基板に実装しなくてもよい。従って、従来のようなチョークコイルを回路基板89上に備えない分だけ回路基板89を小型化することができ、引いてはブラシレスモータ80の小型化を図ることができる。そして、例えば、ブラシレスモータ80が、センサマグネットを備えないセンサレスのブラシレスモータである場合には、より容易に雑音除去用コイル95を回転軸93に巻回してブラシレスモータ80の小型化を図ることができる。
【0048】
更に、雑音除去用コイル95はコア84に巻回されているわけではないため、上記第1実施形態のように、ロータ90を構成する永久磁石92の磁界の影響によって雑音除去用コイル95で誘起電圧が発生する虞がない。従って、誘起電圧に起因するトルクむらやロストルク等が発生する虞がなく、ブラシレスモータ80は従来と同様の性能を容易に維持することができる。また、誘起電圧を相殺するように巻線の巻回方法を工夫する必要がなく、雑音除去用コイル95を更に容易に巻回することができる。
【0049】
○上記第2実施形態では、雑音除去用コイル95は円筒部21aに直接巻回されているが、センターピース21の外周でセンターピース21に直接接触することなく巻回されてもよい。
【0050】
○上記第1実施形態では、第1のコイル44及び第2のコイル45はそれぞれ周方向に連続して並ぶ3つのティース部41に巻回されているが、これに限らない。例えば、図6に示すように、第1のコイル101が周方向に連続して並ぶ4つのティース部41に巻回され、第2のコイル102が、第1のコイル101が巻回されたティース部41と周方向に連続して並ぶ4つのティース部41に巻回されてもよい。また、第1のコイル44及び第2のコイル45は、5つ以上のティース部41に巻回されてもよい。
【0051】
○上記第1実施形態では、雑音除去用コイル43を構成する第1のコイル44及び第2のコイル45は、それぞれ3つのティース部41に巻回されているが、第1のコイル44と第2のコイル45とは、互いに異なる数のティース部41に巻回されてもよい。また、第1のコイル44と第2のコイル45とは、巻数が異なっていてもよい。
【0052】
○上記第1実施形態では、雑音除去用コイル43を構成する一対のコイル(第1のコイル44及び第2のコイル45)は、周方向に隣り合うように巻回されているが、これに限らない。第1のコイル44及び第2のコイル45は、雑音除去用コイル43にて発生する誘起電圧が対をなす2つのコイル同士で互いに相殺されるように巻回されていればよい。例えば、雑音除去用コイルは、図7乃至図9に示すように巻回されてもよい。図7に示す雑音除去用コイル110の第1のコイル111は、周方向に連続して並ぶ3つのティース部41に巻回されている。そして、第1のコイル111と対をなす第2のコイル112は、第1のコイル111が巻回された3つのティース部41のうち、中央のティース部41から周方向に180°離れた位置に形成されたティース部41と、該ティース部41の周方向両側のティース部41との計3つのティース部41に巻回されている。即ち、第1のコイル111と第2のコイル112とは、コア22の軸方向に沿った中心線Lを挟んで対称となる位置に巻回されている。そして、第1のコイル111が巻回されている3つのティース部41が永久磁石32のN極と対向する時には、第2のコイル112が巻回されている3つのティース部41は永久磁石32のS極と対向する。また、第1のコイル111と第2のコイル112とは、第1のコイル44及び第2のコイル45と同様に、図3に示すような巻回方向で巻回され、同じ方向(矢印A方向)に巻回されている。
【0053】
また、図8に示す雑音除去用コイル120を構成する第1のコイル121及び第2のコイル122は、図7に示す第1のコイル111及び第2のコイル112と同様に、中心線Lを挟んで対称となる位置に巻回されている。そして、第1のコイル121と第2のコイル122とは、それぞれ周方向に連続して並ぶ4つのティース部41に巻回されている。これらの第1のコイル121と第2のコイル122とは、第1のコイル44及び第2のコイル45と同様に、図3に示すような巻回方向で巻回され、同じ方向(矢印A方向)に巻回されている。
【0054】
更に、図9に示す雑音除去用コイル130を構成する第1のコイル131は、周方向に連続して並ぶ3つのティース部41に巻回されている。第1のコイル131と対をなす第2のコイル132は、第1のコイル131との間に周方向に連続して並ぶ3つのティース部41(第1のコイル131が巻回されているティース部41から時計方向に連続して並ぶ3つのティース部41)を挟んだ位置に形成された3つのティース部41に巻回されている。そして、第1のコイル131が巻回されている3つのティース部41が永久磁石32のN極と対向する時、第2のコイル132が巻回されている3つのティース部41もN極と対向する。また、第1のコイル131が巻回されている3つのティース部41が永久磁石のS極と対向する時、第2のコイル132が巻回されている3つのティース部41もS極と対向する。即ち、第1のコイル131と第2のコイル132とは、永久磁石32において周方向位置が異なる同極と対向するティース部41に巻回されている。従って、ロータ30が回転すると、永久磁石32の磁界の影響によって、第1のコイル131及び第2のコイル132では同じ方向の誘起電圧が発生する。そのため、図10に示すように、第1のコイル131と第2のコイル132とは一本の巻線で構成されると共に、巻線の巻回方向が互いに逆方向となるように巻回されている。尚、図10においては、第1のコイル131の巻回方向を矢印Bにて図示し、第2のコイル132の巻回方向を矢印Cにて図示している。また、図10では、ティース部41に対して複数回巻回される第1のコイル131及び第2のコイル132を簡略化して図示している。このように第1のコイル131と第2のコイル132とを巻回することにより、第1のコイル131で発生する誘起電圧と第2のコイル132で発生する誘起電圧とは互いに相殺し合う。上記したように、図7乃至図9のように構成しても上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
○上記第1実施形態では、雑音除去用コイル43は、一対のコイル(第1のコイル44及び第2のコイル45)から構成されているが、複数対のコイルから構成されていてもよい。例えば、図11に示す雑音除去用コイル140は、2対のコイル(第1のコイル141と第2のコイル142、及び第1のコイル143と第2のコイル144)から構成されている。この場合、対をなす第1のコイル141と第2のコイル142とは、コイル同士で発生する誘起電圧を互いに相殺するように巻回されるとよい。第1のコイル143と第2のコイル144についても同様に、コイル同士で発生する誘起電圧を互いに相殺するように巻回されるとよい。
【0056】
○上記第1実施形態では、雑音除去用コイル43は、対をなす第1のコイル44及び第2のコイル45とから構成されているが、1つのコイルのみから構成されてもよい。また、雑音除去用コイル43は、3つ以上のコイルから構成されてもよい。
【0057】
○上記各実施形態では、コア22は18個のティース部41を有しており、永久磁石32は6つの界磁極を備えている。しかしながら、ティース部41の数及び永久磁石32の界磁極の数は、これに限らず適宜変更すればよい。
【0058】
○上記各実施形態のブラシレスモータ10,70,80は、ステータ20,83の径方向外側にロータ30,90が配置されたアウタロータ型のブラシレスモータであるが、ステータの径方向内側にロータが配置されたインナロータ型のブラシレスモータに雑音除去用コイル43,71,95のいずれか一つを備えてもよい。
【0059】
○送風装置1を構成するブラシレスモータ以外で、励磁回路が実装された回路基板51が一体化されたブラシレスモータに、雑音除去用コイル43,71,95のいずれか一つを備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1実施形態におけるブラシレスモータの軸方向断面図。
【図2】第1実施形態におけるブラシレスモータの概略径方向断面図。
【図3】第1実施形態における雑音除去用コイルを示す模式図。
【図4】第2実施形態におけるブラシレスモータの軸方向断面図。
【図5】別例のブラシレスモータの軸方向断面図。
【図6】別例の雑音除去用コイルを示すためのブラシレスモータの概略径方向断面図。
【図7】別例の雑音除去用コイルを示すためのブラシレスモータの概略径方向断面図。
【図8】別例の雑音除去用コイルを示すためのブラシレスモータの概略径方向断面図。
【図9】別例の雑音除去用コイルを示すためのブラシレスモータの概略径方向断面図。
【図10】別例の雑音除去用コイルを示す模式図。
【図11】別例の雑音除去用コイルを示すためのブラシレスモータの概略径方向断面図。
【符号の説明】
【0061】
11,81…モータケースとしてのモータホルダ、20,83…ステータ、21,82…センターピース、22,84…コア、23,85…駆動用コイル、30,90…ロータ、31,91…ヨーク、32,92…永久磁石、33,93…回転軸、41…ティース部、43,71,95,110,120,130,140…雑音除去用コイル、44,111,121,131,141,143…コイルとしての第1のコイル、45,112,122,132,142,144…コイルとしての第2のコイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用コイルが巻回されたティース部を有するステータと、
前記ステータと対向配置される永久磁石を備えたロータと、
前記駆動用コイルに励磁電流を供給する励磁回路と
を備えたブラシレスモータであって、
前記ティース部には、前記励磁電流に発生する雑音を除去する雑音除去用コイルが巻回されていることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシレスモータにおいて、
前記雑音除去用コイルは、それぞれで発生する誘起電圧を互いに相殺するように巻回された少なくとも一対のコイルから構成されていることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項3】
請求項2に記載のブラシレスモータにおいて、
対をなす前記コイルは、互いに同数のティース部に巻回されていることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項4】
請求項3に記載のブラシレスモータにおいて、対をなす前記コイルは、互いに巻数が等しいことを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項5】
モータケースに固定されたセンターピースと該センターピースに固定され駆動用コイルが巻回されたティース部を有するコアとを備えたステータと、
回転軸が圧入されたヨークに、前記ステータと対向配置される永久磁石が固着されてなるロータと、
前記駆動用コイルに励磁電流を供給する励磁回路と
を備えたブラシレスモータであって、
前記センターピースの外周には、前記励磁電流に発生する雑音を除去する雑音除去用コイルが設けられていることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項6】
請求項5に記載のブラシレスモータにおいて、
前記雑音除去用コイルは、前記センターピースに直接巻回されていることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項7】
モータケースに固定されたセンターピースと該センターピースに固定され駆動用コイルが巻回されたティース部を有するコアとを備えたステータと、
回転軸が圧入されたヨークに、前記ステータと対向配置される永久磁石が固着されてなるロータと、
前記駆動用コイルに励磁電流を供給する励磁回路と
を備えたブラシレスモータであって、
前記回転軸の外周には、前記励磁電流に発生する雑音を除去する雑音除去用コイルが前記回転軸の外周面と非接触となるように設けられていることを特徴とするブラシレスモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−149038(P2006−149038A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333714(P2004−333714)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】