説明

ブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物およびブリスターパック用インキ塗工紙

【課題】本発明は、塗工作業性に優れ、かつ、表面強度、耐ブリスター 性、印刷光沢等の印刷適性に優れた、ブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物およびブリスターパック用インキ塗工紙の提供。
【解決手段】ブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物で、(a)炭酸カルシウムを5〜50重量%、(b)植物油を5〜50重量%、(c)ロジンフェノール樹脂を3〜75重量%、および(d)ワックスあるいはシリコンを0〜0.1重量%含有することを特徴とするブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物およびブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物を紙基材上に塗工してなることを特徴とするブリスターパック用インキ塗工紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物に関し、更に詳しくは、塗工操業性に優れ、かつ表面強度、剛度等の印刷適性のバランスが優れた塗工紙を与えるブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物およびブリスターパック用インキ塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、顔料と水性バインダーとを主体とした紙塗工用組成物を紙に塗工し、印刷適性に優れた塗工紙が製造されている。共重合体ラテックスは、その優れた接着強度から、紙塗工用組成物の主バインダーとして使用されているが、それに代用できる接着強度を有するインキ組成物が求められている。
【0003】
近年、印刷の高速化にともない、ブリスターパック用塗工紙に要求される性能も厳しくなってきており、表面強度、耐水性、剛度、インキ転移性、印刷光沢や耐ブリスター性などを有するブリスターパック用塗工紙が求められている。特にオフセット輪転印刷での高速印刷化には、高温で高速の乾燥が必要であり、そのため共重合体ラテックスを用いた粘着剤は、いわゆる「火ぶくれ」が発生しやすくなる。この火ぶくれが発生すると印刷物の商品価値が著しく損なわれることになり、塗工紙の品質の中でも特に耐火ぶくれ性の少ない塗工紙が強く求められている。
【0004】
更に、近年はコスト低減の目的から工程短縮する要求が高まっており、このため印刷物を印刷後の印刷機(オフセット輪転印刷機等)でブリスターパック用塗工物が印刷可能で、更に十分な接着強度を示す、インキ組成物が求められている。
【0005】
また、塗工紙の製造そのものも高速化しており、塗工操業性の改良、特に主な障害であるロール汚れ性の改良、すなわち共重合体ラテックスの粘着性(べとつき防止性)のない塗工物も強く要求されている。
【0006】
そこで、既存の密着性の良いインキを中心に改良検討していたが、性能を満たすものが見出せなかった。他社特許の中では、熱圧着可能なインキ組成物として、ポリウレタン樹脂をビヒクルの主成分とし、エポキシ基を有する化合物及び金属キレート化合物を含有することを特徴とする印刷インキ組成物の特許(特許文献1)、アクリル樹脂を含有し、さらに金属キレート化合物及びエポキシ基を有するポリエステルポリオール化合物の二つの内少なくとも一つを含有することを特徴とする印刷インキ組成物の特許(特許文献2)、あるいは塩素化ポリオレフィン樹脂を含有し、さらに金属キレート化合物あるいはエポキシ基を有する化合物のうち少なくとも一つを含有することを特徴とする印刷インキ組成物の特許(特許文献3)は、基材と媒体の材質が共にフィルムである。
【0007】
一方、基材がラミネート缶のものとしてはラミネート缶用印刷インキ組成物の特許(特許文献4)がみられるが、共に基材と媒体がフィルムか基材がラミネート缶であり、熱圧着可能な印刷インキ組成物特許中に、基材が紙のものは見られない。
【0008】
さらに、このラミネート缶用印刷インキ組成物の特許には(特許文献4)、高温下で熱圧着、加熱処理を施しても熱変色しにくい、ラミネート缶用印刷インキバインダーが紹介されている。
【0009】
また、ブリスターパック用包装材料およびその製造方法として電子線硬化型被覆剤あるいは電子線硬化型インキも紹介されているが(特許文献5)、基材がラミネート缶であり、電子線硬化装置を使う必要がある。
【特許文献1】特開2004−346197号公報
【特許文献2】特開2004−285245号公報
【特許文献3】特開2004−123782号公報
【特許文献4】特開平07−216280号公報
【特許文献5】特開2005−53109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
塗工作業性に優れ、かつ、表面強度、耐火ぶくれ性、印刷光沢等の印刷適性に優れた、ブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物およびブリスターパック用インキ塗工紙を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
各種密着性の良いインキを中心にインキを鋭意検討した結果、本発明のブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物およびブリスターパック用インキ塗工紙は、ブリスターパック形成時の密着性が良好で、熱圧着性のあることを見出した。
【0012】
すなわち本発明は、(a)炭酸カルシウムを5〜50重量%、(b)植物油を5〜50重量%、(c)ロジンフェノール樹脂を3〜75重量%、および(d)ワックスあるいはシリコンを0〜0.1重量%含有することを特徴とするブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物に関するものでである。
さらに、炭酸カルシウム成分が下地の紙成分を隠蔽しないことを特徴とする上記何れか記載のブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物に関するものである。
また、熱圧着が可能な上記何れか記載のブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物に関するものである。
【0013】
さらに、上記何れか記載のブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物を紙基材上に塗工してなることを特徴とするブリスターパック用インキ塗工紙に関するものである。
【0014】
また、上記記載のブリスターパック用インキ塗工紙のインキ塗工部分がA−PETフィルムと熱圧着が可能であることを特徴とするブリスターパック用インキ塗工紙に関するものである。
【0015】
さらに、A−PETフィルムと熱圧着させるヒートシール条件が、150〜200℃で3〜10秒であることを特徴とする上記何れか記載のブリスターパック用インキ塗工紙に関するものである。
【0016】
また、ブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物を、オフセット輪転機により塗工することを特徴とする上記何れか記載のブリスターパック用インキ塗工紙に関するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係わるブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物は、塗工作業性に優れ、これを使用して印刷したブリスターパック用インキ塗工紙は、表面強度、耐火ぶくれ性、印刷光沢等の印刷適性に優れ、密着性が良好で、熱圧着性にも優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、高い密着性と耐熱性を有し、臭気が少なく安全衛生性の高いブリスターパッ
ク用のオフセット印刷塗工紙用インキで、ブリスターパックに用いる基材が紙及び塗工紙
であることを特徴とするブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物およびブリスターパック用インキ塗工紙を提供する。
【0019】
ブリスターパック用基材は、小型商品、簡易電気器具、おもちゃ、玩具、景品、食料品、化粧品または医薬品等の包装用として使用される。その中でも、本発明は、ブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物を、基材が紙及び紙塗工物上に印刷し、その上に、A−PET等のフィルムを熱圧着して成形される製品用のブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物およびブリスターパック用インキ塗工紙である。特に、使用されるインキは、A−PET等のフィルムと熱圧着が可能である。
【0020】
本発明において、使用されるA−PETフィルムとは、Amorphous(非結晶)−Polyethylene Terephthalateのフィルムを示す。
【0021】
本発明に用いられるブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物は、(a)炭酸カルシウムを5〜50重量%、(b)植物油を5〜50重量%を含有し、さらに、好ましくは、(c)ロジンフェノール樹脂を3〜75重量%、および(d)ワックスあるいはシリコンを0〜0.1重量%含有するオフセット印刷インキ組成物である。
【0022】
インキに、炭酸カルシウム(白艶華)を含有させるのは、炭酸カルシウムによりインキの透明性が向上でき、さらに、優れた光沢性を与え、また、炭酸カルシウムの微粒子によりインキに適度な流動性を与えるために、インキの性状であるタックやフローを所定の数値に調整することが、容易に出来るためである。本発明において使用される炭酸カルシウムは、白石工業株式会社製の合成炭酸カルシウムとして挙げられ、例として白艶華O、白艶華DD、Getton50、WhiteIGV.IV、白艶華T−DD、Homocal D、Brilliant−1500等が挙げられるが、その中で白艶華の付くものが好ましい。
【0023】
本発明において使用される植物油の例としては、カネダ株式会社の工業用植物油脂のあまに油、ひまし油や桐油を挙げられる。生産国としてはカナダ、中国、インド、ロシア、アルゼンチンやパラグアイ産も使用出来る。
【0024】
さらに、本発明において、ロジンフェノール樹脂としては、荒川化学株式会社の印刷インキ用ロジン変性フェノール樹脂シリーズが挙げられる。一例としては、タマノル340、350、351、352、353、354、359、361、362、366、374、279、380、381、383、386、387、388、392、394、395、396、405、406、409、410、412、414、417、418、419が挙げられる。
【0025】
滑り剤の一例としては信越化学工業株式会社の塗料添加剤KPシリーズが挙げられ、特にKP−354、355、356、357、358、359、362、365、366、368、369が望ましい。
【0026】
AFソルベントの使用例としては、新日本石油の印刷インキ用ノンアロマ溶剤、AFソルベント4号、5号、6号、7号が挙げられる。
【実施例】
【0027】
次に本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明する。なお、%は特に指定のない限り質量%を示す。以下、本発明の実施例について比較例を挙げて説明する。なお、下記実施例の記載において「部」は「重量部」を意味する。
【0028】
インキ組成物については原料名、含有量等の内容について以下に説明する。
〔実施例1〕(1)炭酸カルシウム 45部
(2)植物油(あまに油20/桐油10)45部
(3)ロジン変性フェノール樹脂、10部
〔実施例2〕(1)炭酸カルシウム 30部
(2)植物油(あまに油25/桐油15)40部
(3)ロジン変性フェノール樹脂 25部
(4)AFソルベント 5部
〔実施例3〕(1)炭酸カルシウム 31.95部
(2)植物油(あまに油28/桐油12)40部
(3)ロジン変性フェノール樹脂 20部
(4)AFソルベント 8部
(5)滑り剤 0.05部
〔比較例1〕(1)白艶華(炭酸カルシウム)35部
(2)植物油(あまに油25/桐油10)35部
(3)ロジン変性フェノール樹脂、25部
(4)滑り剤(信越化学工業株式会社KP−354) 5部
〔比較例2〕(1)炭酸カルシウム25部
(2)植物油(あまに油20/桐油10)30部
(3)脂環族飽和炭化水素樹脂 35部
(4)AFソルベント 10部
なお脂環族飽和炭化水素としては荒川化学製、アルコンPシリーズのアルコンP−70が例として上げら、本実施例で使用した。
【0029】
以上をそれぞれ配合し、3本ロールで練肉して、粒度が5μm以下になったら取り出し、透明なインキ組成物を得た。このインキ組成物のタック、フローの結果を下記に示す。
【0030】
【表1】


タック・フローの測定条件は、以下の通りである。
タック:インコメーター、30℃、400rpm、1分値
フロー:スプレッドメーター、25℃、1分値
【0031】
経時安定性:上記作成インキを37℃の恒温室に1週間保管し、1週間保管後のタック、フローを測定したところ、最初の値と変わらず経時安定性に問題の無いインキであることを確認した。
【0032】
印刷物作成条件:原紙(コート紙)に、熱圧着に対応する高濃度高耐性インキ、弊社CKウインエコーSOYインキを0.06mg/cm2を展色した。その上に上記インキ(比較例1−2と実施例1−3)を0.1mg/cm2展色した熱圧着試験用下地塗工紙を作成した。今回の改良インキはオフセット用インキを基本組成のインキを使用しているので、タックとフローの数値からも、また展色量からも印刷物上にブリードは見られずきれいに展色出来た。
原紙として望ましい用紙として、熱圧着の工程が加わるためインキを印刷した時に、印刷されたインキが平滑で均一に塗布されることが望ましい。そのため原紙も表面が平滑なアート紙やコート紙を使用するのが望ましい。マットコート紙や上質紙の様に表面平滑性の劣るものや、インキの浸透性にムラが有るものもあまり好ましくない。
【0033】
熱圧着条件(ヒートシール条件):上記、熱圧着試験用下地塗工紙にA−PETを重ね、160℃と180℃で各5秒間接着部分を加熱圧着した。その時の圧力は2Kg/cm2である。圧着装置はテスター産業製(TESTER)TP−701S HEAT SEAL
接着性評価試験:上記で熱圧着して作成した、原反上にA−PETを重ねたサンプルの接着性を評価した。剥離面は(1)原反と改良インキ面と(2)改良インキ面とA−PETの2箇所で測定した。(1)の原反と改良インキ面は全てのサンプルで密着性が良好で問題が見られなかった。(2)の改良インキ面とA−PETの間の接着性については、各サンプルで接着性の差が見られた。結果を表1に示す。
【0034】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭酸カルシウムを5〜50重量%、(b)植物油を5〜50重量%、(c)ロジンフェノール樹脂を3〜75重量%、および(d)ワックスあるいはシリコンを0〜0.1重量%含有することを特徴とするブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物。
【請求項2】
炭酸カルシウム成分が下地の紙成分を隠蔽しないことを特徴とする請求項1記載のブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物。
【請求項3】
熱圧着が可能な請求項1乃至2何れか記載のブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3何れか記載のオフセットインキ組成物を紙基材上に塗工してなることを特徴とするブリスターパック用インキ塗工紙。
【請求項5】
請求項4記載のブリスターパック用インキ塗工紙のインキ塗工部分がA−PETフィルムと熱圧着が可能であることを特徴とするブリスターパック用インキ塗工紙。
【請求項6】
A−PETフィルムと熱圧着させるヒートシール条件が、150〜200℃で3〜10秒であることを特徴とする請求項4乃至5何れか記載のブリスターパック用インキ塗工紙。
【請求項7】
ブリスターパック用インキ塗工紙に用いるオフセットインキ組成物を、オフセット輪転機により塗工することを特徴とする請求項4乃至6何れか記載のブリスターパック用インキ塗工紙。


【公開番号】特開2008−150538(P2008−150538A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342006(P2006−342006)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】