説明

ブレーキキャリパ並びにブレーキキャリパの製造方法

【課題】特に比較的少ない重量で十分な強度で比較的高い剛性を有している、改良された又は少なくとも1つの別の実施の形態のブレーキキャリパ及びブレーキキャリパの製造方法を提供することにある。
【解決手段】自動車のディスクブレーキ装置のためのブレーキキャリパにおいて、軽金属合金又は軽金属で鋳造されているキャリパボディ(2)を備えており、キャリパボディ(2)の内部に配置されたフレーム構造体(3)を備えており、該フレーム構造体(3)の材料は、キャリパボディ(2)の材料よりも高い弾性率を有しており、フレーム構造体(3)はキャリパボディ(2)内に鋳造されていて、キャリパボディ(2)がフレーム構造体(3)を取り囲んでいるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のディスクブレーキ装置のためのブレーキキャリパに関する。また、本発明は、自動車のディスクブレーキ装置のためのブレーキキャリパを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GB2087490Aにおいて、鋼材料又はチタンから成る補強材を有するアルミニウムから成るブレーキキャリパが公知になっている。補強材は、ブレーキキャリパブリッジから始まってブレーキキャリパの側方領域にフォーク状に延びている。
【0003】
DE19647999A1において、金属マトリックス複合材料から成る補強エレメントを有するアルミニウムをベースにするブレーキキャリパが公知になっている。
【0004】
WO03/089169A1において、有利にはセラミック繊維から成る補強材料が埋め込まれている、軽金属鋳造品として形成されているアルミニウムをベースにするブレーキキャリパが公知になっている。
【0005】
EP0725697B1において、ブレーキキャリパを製造する方法が公知になっている。この方法においては、ブレーキキャリパのブリッジ区分と外側アーム区分とが鋳造され、鉄をベースにした合金から成る挿入体が使用される。
【0006】
補強材を備えた、アルミニウムをベースにして鋳造された別のブレーキキャリパが、DE2950660A1及びEP0510930A1において公知になっている。
【0007】
DE4420652A1において、ディスクブレーキのためのブレーキキャリパが公知になっている。公知のブレーキキャリパにおいて、キャリパボディ内に付加的な構成部材が埋め込まれている。付加的な構成部材はキャリパボディ内に鋳造されている。これにより複合鋳造体がもたらされる。鋳造された構成部材は、キャリパボディの強度を高める補強部として働き、且つ鋳型において複数の位置決めワイヤを使用して位置を保持することができる。
【0008】
補強材を備えた、鋳造された別のブレーキキャリパが、DE2533058A1及びDE3025636A1において公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】GB2087490A
【特許文献2】DE19647999A1
【特許文献3】WO03/089169A1
【特許文献4】EP0725697B1
【特許文献5】DE2950660A1
【特許文献6】EP0510930A1
【特許文献7】DE4420652A1
【特許文献8】DE2533058A1
【特許文献9】DE3025636A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、冒頭で述べたブレーキキャリパ及びブレーキキャリパの製造方法を改良して、特に比較的少ない重量で十分な強度で比較的高い剛性を有している、改良された又は少なくとも1つの別の実施の形態のブレーキキャリパ及びブレーキキャリパの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る自動車のディスクブレーキ装置のためのブレーキキャリパは、軽金属合金又は軽金属で鋳造されているキャリパボディを備えており、キャリパボディの内部に配置されたフレーム構造体を備えており、フレーム構造体の材料は、キャリパボディの材料よりも高い弾性率を有しており、フレーム構造体はキャリパボディ内に鋳造されていて、キャリパボディがフレーム構造体を取り囲んでいるようになっている。
【0012】
好ましくは、キャリパボディは、互いに平行に延びている2つの側壁と、側壁に対して横方向に延びている、側壁を互いに結合する複数のウェブとを有しており、フレーム構造体は互いに平行に延びている2つの長手方向支持体と、長手方向支持体に対して横方向に延び、長手方向支持体を互いに結合する複数の横方向支持体とを有しており、長手方向支持体は各々、側壁内に埋め込まれており、横方向支持体は各々、ウェブ内に埋め込まれている。
【0013】
好ましくは、フレーム構造体は複数の構成要素から組み立てられているか、又はフレーム構造体は連結して統合して製造された鋳造品として形成されている。
【0014】
好ましくは、ブレーキキャリパは複数の固定部を有しており、複数の固定部は各々、フレーム側の固定個所をボディ側の固定個所に形状結合式に結合する。
【0015】
好ましくは、各固定部は、固定ネジと、固定ナットと、固定スリーブとを有しており、各固定ネジはキャリパボディ内に挿入され、フレーム構造体において支持されている固定スリーブと、フレーム構造体に形成されている貫通開口とを突き抜け、固定ナットに係合し、固定ナットは、特にフレーム構造体に支持可能であり、且つ/又はキャリパボディを貫通可能である。
【0016】
好ましくは、フレーム構造体は鉄合金又は鉄から成っている。
【0017】
好ましくは、フレーム構造体は金属マトリックス複合材料から成っている。
【0018】
好ましくは、キャリパボディはアルミニウム合金又はアルミニウムから成っている。
【0019】
好ましくは、キャリパボディの材料は、フレーム構造体の材料よりも低い密度を有している。
【0020】
好ましくは、キャリパボディは、液圧液体を収容及び/又は案内するための内部構造を有している。
【0021】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る自動車のディスクブレーキ装置のためのブレーキキャリパを製造する方法は、フレーム構造体を製造するステップと、フレーム構造体の鋳ぐるみにより、軽金属又は軽金属合金からキャリパボディを鋳造するステップとを有しているようになっている。
【0022】
好ましくは、フレーム構造体を1つ又は複数の薄板部分から成形する。
【0023】
好ましくは、フレーム構造体をプロフィル部分の切断により製造する。
【0024】
好ましくは、フレーム構造体をレーザ焼結により製造する。
【0025】
好ましくは、フレーム構造体の鋳造を第1の鋳型内で行い、キャリパボディの鋳造を第2の鋳型内で行う。
【0026】
好ましくは、フレーム構造体の鋳造時に、フレーム構造体に支持突部が一体に成形されており、支持突部を、キャリパボディの鋳造時にコアとして働くフレーム構造体の位置決めのために使用する。
【0027】
好ましくは、支持突部をキャリパボディの鋳造後に取り除き、取り除かれた支持突部の領域に、フレーム側及びボディ側の固定個所を製造し、固定個所は固定部によって形状結合式に結合可能である。
【0028】
好ましくは、フレーム構造体の鋳造が薄壁鋳造方法により構成されている。
【0029】
好ましくは、フレーム構造体を被覆する。
【0030】
好ましくは、キャリパボディの鋳造を、フレーム構造体が予め中子として挿入されている鋳型内で行う。
【0031】
好ましくは、フレーム構造体をキャリパボディの鋳造前に加熱する。
【0032】
好ましくは、フレーム構造体の鋳ぐるみ、ひいてはキャリパボディの鋳造をチル鋳造において行う。
【0033】
好ましくは、キャリパボディの鋳造後に後緻密化処理を実施する。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、ブレーキキャリパにフレーム構造体を備え付け、フレーム構造体が軽金属もしくは軽金属合金から成るキャリパボディによって鋳ぐるまれており、補強するフレーム構造体の材料が、キャリパボディの材料より高い弾性率を有している、という思想に基づく。これにより、比較的高い剛性を特徴とする比較的軽い複合鋳造体が製造される。このことは特に、フレーム構造体がキャリパボディの剛性に関して重要な全領域、すなわち側方の側壁区分及び側壁を結合するブリッジ区分において延びている、ということに基づくことができる。従ってフレーム構造体は、いわばキャリパボディ全体を貫通している。更に、提案されたブレーキキャリパは、特に簡単に製造することができる。なぜならばキャリパボディの軽金属材料は、挿入体であるフレーム構造体を備えた鋳型内に鋳込むことができるからである。キャリパボディの材料は、有利には、フレーム構造体の材料より低い密度を有している。
【0035】
有利には、フレーム構造体は鉄合金、例えば鋼又は鉄から成っていてよい。この種のフレーム構造体は、製造において比較的高い弾性率及び有利な材料コストと、良好な取扱いやすさとを結びつける。
【0036】
有利には、フレーム構造体は金属マトリックス複合材料から成っていてよい。マトリックスとして、マグネシウム、有利にはまたアルミニウムを使用することもできる。マトリックスは、基礎金属として又は合金の形式であってよい。補強相として、例えばセラミックス製の粒子、短繊維又は炭素に基づく繊維を使用することができる。金属マトリックス複合材料から成るフレーム構造体は高い剛性を提供し、特に鉄合金と比べて少ない重量を特徴とする。
【0037】
有利には、キャリパボディはアルミニウム合金又はアルミニウムから成っていてもよい。この種のキャリパボディは特に軽量であり、且つ良好な耐腐食性を特徴とする。
【0038】
有利な構成によれば、キャリパボディは互いに平行に延びている2つの側壁と、側壁に対して横方向に延びていて、側壁を互いに結合する複数のウェブを有していてよい。フレーム構造体が、キャリパボディの1つの側壁内に各々埋め込まれている互いに平行に延びている2つの長手方向支持体と、キャリパボディの1つのウェブに各々埋め込まれている、長手方向支持体に対して横方向に延びていて、且つ長手方向支持体を互いに結合する横方向支持体とを有する、別の構成が特に有利である。この構成においては、フレーム構造体はキャリパボディの支持性の全構成要素、すなわち側壁及び側壁を結合するためのウェブを通って延びている。これにより側壁及びウェブ自体は、フレーム構造体の長手方向支持体もしくは横方向支持体自体により夫々補強されている。更にフレーム構造体の内部では横方向支持体と長手方向支持体が互いに結合されているので、フレーム構造体は更にキャリパボディ全体、特にウェブを介しての側壁間の結合の補強にも繋がる。
【0039】
フレーム構造体が一部材により一体に製造されている、特に有利には鋳造品として製造されている構成は特に有利である。択一的には、原則としてフレーム構造体が複数の構成要素から組み立てられている別の構成も考慮可能である。コストにかかわる理由から、フレーム構造体を1つ又は複数の薄板部分から製造することは有利であってよい。
【0040】
フレーム構造体は有利には、予被覆部、例えば化成被覆部を有することができる。これによりフレーム構造体の材料と、キャリパボディの材料との不都合な反応を避けることができる。
【0041】
更に別の有利な構成によれば、ブレーキキャリパは複数の固定部を有している。これらの固定部は各々、フレーム側の固定個所をボディ側の固定個所に形状結合式に結合する。この構成により、キャリパボディとフレーム構造体との間には、固定部を介して付加的な集中的な結合が形成可能となる。集中的な結合はブレーキキャリパの2つの構成要素の連結を改良し、ブレーキキャリパの高められた剛性に貢献する。
【0042】
有利には、キャリパボディは液圧液体を収容及び/又は案内するための内部構造を有している。従って、例えば液圧液体のための管路はブレーキキャリパ内に統合されていてよい。
【0043】
本発明の別の重要な特徴及び利点は、従属請求項、図面、図面に関する説明から明らかになる。
【0044】
上記及び以下で説明する特徴は、記載した各組合せだけでなく、別の組合せ又は単独でも使用可能であり、この場合、本発明の範囲を越えることはない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】ブレーキキャリパの斜視図である。
【図2】ブレーキキャリパの斜視図である。
【図3】ブレーキキャリパの斜視図である。
【図4】ブレーキキャリパの斜視図である。
【図5】ブレーキキャリパの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。同じ機能又は類似の機能を有する部材には同じ符号を使用する。
【0047】
図1〜5に示すように、自動車のディスクブレーキ装置(図示せず)のためのブレーキキャリパ1は、図3〜5において透過して記載されているキャリパボディ2と、フレーム構造体3とを有している。キャリパボディ2は鋳造品として設計されており、軽金属もしくは軽金属合金から成っている。キャリパボディ2は、特にアルミニウム構成部材である。これに対して、フレーム構造体3は鉄材料もしくは鉄合金から、特に鋼もしくは鋼合金から成っていてよい。フレーム構造体3はキャリパボディ2の内部に配置されている。このことは、キャリパボディ2がフレーム構造体3と一体に鋳造されていて、とりわけキャリパボディ2がフレーム構造体3を取り囲むことにより達成される。つまりフレーム構造体3はキャリパボディ2内に鋳造されている。
【0048】
フレーム構造体3はキャリパボディ2よりも高い弾性率を有している。キャリパボディ2は比較的低い密度を特徴としている。有利な実施の形態では、例えば以下の材料組合せを使用することができる。アルミニウム又はアルミニウム合金から成るキャリパボディ2に対して、鋼から成るフレーム構造体3。アルミニウム又はアルミニウム合金から成るキャリパボディ2に対して、金属マトリックス複合材料、有利にはアルミニウム系金属マトリックス複合材料から成るフレーム構造体3。アルミニウム又はアルミニウム合金から成るキャリパボディ2に対して、チタン又はチタン合金からなるフレーム構造体3。マグネシウム又はマグネシウム合金から成るキャリパボディ2に対して、鋼から成るフレーム構造体3。マグネシウム又はマグネシウム合金から成るキャリパボディ2に対して、金属マトリックス複合材料、有利にはアルミニウム系金属マトリックス複合材料から成るフレーム構造体3。
【0049】
ブレーキキャリパ1は、特に固定型キャリパである。しかし本発明において提示される構成は、浮動型キャリパ又は固定型キャリパの場合でも理論的に実施可能である。
【0050】
キャリパボディ2は互いに平行に延びる2つの側壁4を有している。ブレーキキャリパ1が組付けられた状態では、2つの側壁4がブレーキディスク(図示せず)を両側で取囲み係合する。更にキャリパボディ2は、側壁4に対して横方向に延びている複数のウェブ5を有している。これらのウェブ5は、ブレーキキャリパ1が組付けられた状態において、ブレーキディスクの外側の縁部に上方から係合し、2つの側壁4を互いに結合する。例えば、4つのこの種のウェブ5が設けられている。4つのこの種のウェブ5よりも多い又は少ないウェブ5が設けられていてもよい、ということは明らかである。
【0051】
上記特別な実施の形態において、フレーム構造体3は互いに平行に延びている2つの長手方向支持体6と、複数の横方向支持体7とを有している。長手方向支持体6は各々、側壁4内に埋め込まれていて、側壁4の集中的な補強をもたらす。横方向支持体7は長手方向支持体6に対して横方向に延びていて、長手方向支持体6を互いに結合する。更に横方向支持体7は各々、ウェブ5内に埋め込まれていて、各ウェブ5の集中的な補強をもたらす。重要な全領域におけるブレーキキャリパ1の補強は、ブレーキキャリパ1の有効に高められた全体的な剛性をもたらす。負荷吸収はフレーム構造体3により実質的に行われ、これによりブレーキキャリパ1の運転強度は向上する。
【0052】
本発明の上記有利な実施の形態に応じて、フレーム構造体3は鋳造品として設計されている。従ってフレーム構造体3は一部材において一体に製造されている。基本的に、互いに別個に製造された複数の構成要素から成るフレーム構造体3を組み合わせた実施の形態も可能である。この種の構成要素は、例えば長手方向支持体6及び横方向支持体7である。
【0053】
更にブレーキキャリパ1は、特に図5から判るように、複数の固定部8を有している。例えば4つの固定部8が設けられている。各固定部8は形状結合(Formschluss)により、フレーム構造体3に形成されているフレーム側の固定個所9を、キャリパボディ2に形成されているボディ側の固定個所10に結合する。
【0054】
本発明において記載された別の有利な実施の形態では、各固定部8は、固定ネジ11と、固定ナット12と、固定スリーブ13とを有している。各固定スリーブ13はキャリパボディ2内に挿入され、フレーム構造体3において支持可能となっている。このためにキャリパボディ2は各固定部8に対して、フレーム構造体3にまで延びているスリーブ開口14を含んでいる。スリーブ開口14は、いわゆるボディ側の固定個所10を形成する。スリーブ開口14に整合してフレーム構造体3に貫通開口15が形成されている。貫通開口15はいわゆるフレーム側の固定個所9を形成する。設けられているスリーブ開口14内に挿入されている固定スリーブ13及び貫通開口15を固定ネジ11が貫通し、固定ナット12に係合するように各固定部8の内側に固定ネジ11が組み付けられている。更にキャリパボディ2は各スリーブ開口14に対向して別の開口を備えている。別の開口は以下、ナット開口16と称呼する。ナット開口16は、特に、ナット開口16を通って、固定ナット12がキャリパボディ2をフレーム構造体3まで貫通することができるように形成されていてよく、その結果、固定ナット12をフレーム構造体3において直接支持することができる。
【0055】
従って各固定部8は、ボディ側の固定個所10とフレーム側の固定個所9との形状結合式の連結をもたらす。これにより固定部8の領域では、キャリパボディ2とフレーム構造体3との間に集中的な結合部12を形成することができる。これにより全体構造もしくはブレーキキャリパ1の補強は改良される。記載されていない実施の形態にとって特に重要であることは、固定部8が各々、長手方向支持体6もしくは側壁4の長手方向端部、つまり、キャリパボディ2とフレーム構造体3との間で最大の力が伝達される個所に設けられている、ということである。
【0056】
固定ナット12は、図示の実施の形態では、円筒状の外側輪郭を有している。特に固定ナット12は、ブレーキパッド(図示せず)のための案内部もしくは保持部として形成されていてよい。これにより固定ナット12は有利な二重機能を獲得し、これによりブレーキキャリパ1のためのコンパクトな構成が簡単に達成される。
【0057】
キャリパボディ2とフレーム構造体3との結合は、孔及び/又は切欠きを設けること、もしくは突起、ピン及び/又はアンカを設けることにより、マクロ構造的(makrostrukturell)に改良される。
【0058】
キャリパボディ2とフレーム構造体3との結合は、ミクロ構造的(mikrostrukuturell)な表面固定部を設けることにより更に改良される。更にフレーム構造体3は、キャリパボディ2との結合前にショットピーニングしてもよく、且つ/又はフレーム構造体3の鋳造時に有利に粒度を調節することができる。
【0059】
露出している個所が腐食するという危険性を低減するために、フレーム構造体3は貴金属から製造することができる。
【0060】
以下に、ブレーキキャリパ1を製造する有利な方法を詳細に説明する。
【0061】
まず図1記載のフレーム構造体3が製造される、具体的には、例えば各鉄材料もしくは鋼から鋳造される。
【0062】
鋳造方法に対して択一的には、フレーム構造体3はレーザ焼結により製造することもできる。別の択一的な実施の形態では、フレーム構造体3は1つ又は複数の薄板部分から成形することもできる。1つ又は複数の薄板部分はまず打抜き成形され、次いで変形される。フレーム構造体3を製造するために、形材部分(Profilteil)を有利にはレーザ処理によって切断することもできる。形材部分は有利には管状に形成されている。切断後に、場合によっては、1つ又は複数の別の変形加工プロセスを実施する。フレーム構造体3は、予被覆部(Vorbeschichtung)、例えば化成被覆部(Konversionsbeschichtung)を有していてよい。
【0063】
フレーム構造体3の製造後、所定の時間をおいた後、図3記載の各軽金属材料から成るキャリパボディ2は、フレーム構造体3が次いでキャリパボディ2内に埋め込まれているようにフレーム構造体3に一体に鋳造される。常温での移動(Kaltlaeufern)を避けるために、フレーム構造体3をキャリパボディ2の鋳造前に、例えば約300℃に加熱することが有利であり得る。
【0064】
有利には、フレーム構造体3の鋳造は、第1の鋳型(図示せず)において行われ、キャリパボディ2の鋳造は、第1の鋳型とは異なる第2の鋳型(図示せず)において行われる。キャリパボディ2が鋳造される前に、第2の鋳型内に予め鋳造されたフレーム構造体3がコアとして挿入されている。
【0065】
特に図1から判るように、フレーム構造体3の鋳造時には、フレーム構造体3に支持突部17、例えば4つの支持突部17を一体に成形することができる。支持突部17はキャリパボディ2の鋳造時にフレーム構造体3の位置決めのために働く。フレーム構造体3は挿入体もしくはコアとして働く。例えば支持突部17は、第2の鋳型において、挿入体もしくはコアとして使用されるフレーム構造体3の位置決めのために使用することができる。図2記載の支持突部17は、中間ステップにおいて加工することができる。このことは、挿入体もしくはコアとして働くフレーム構造体3のための、第2の鋳型における比較的厳密な位置公差の保持を容易にする。加工された支持突部は、図2では符号17′で記載されている。キャリパボディ2によってフレーム構造体3を鋳ぐるんだ後に、図3に記載した状態がもたらされる。次の加工ステップでは、図4記載のように支持突部17もしくは17′が、キャリパボディ2の鋳造後に除去される。更に除去された支持突部17′の領域には、前記フレーム側及びボディ側の固定個所9,10が製造される。固定個所9,10によって固定部8は形成可能である。例えば、貫通開口15と、スリーブ開口14と、場合によってはナット開口16とを製造することができる。
【0066】
次いで、図5記載の固定部8を形成することができる。これと同様に、例えばブレーキパッド(図示せず)の操作のための液圧管路及び液圧ピストンといった、ブレーキキャリパ1の別の構成部材を組み付けることもできる。
【0067】
フレーム構造体3を製造する鋳造方法は、特に、比較的薄い壁厚を特徴とする薄壁鋳造方法(Duennwandgussverfahren)として構成されていてよい。フレーム構造体3の壁厚は、例えば約1.5mm〜約6.0mmの間にあってよい。薄壁鋳造方法によって、例えば1.0〜1.5mmのフレーム構造体3の壁厚を達成することもできる。この事例の場合、フレーム構造体3は、特に支持突部17の領域において部分的に明らかに比較的大きな壁厚を有することもできる。
【0068】
フレーム構造体3に一体にキャリパボディ2を鋳造した後、基本的には、後緻密化処理(Nachverdichtungsverfahren)を実施することができる。これによりキャリパボディ2とフレーム構造体3との複合体を改良することができる。鋳造ミスを減じることができるか、もしくは取り除くことができ、ギャップの形成を防ぐことができる。適切な後緻密化処理は、例えば鍛造加工及び/又は真空プレス加工である。
【符号の説明】
【0069】
1 ブレーキキャリパ、 2 キャリパボディ、 3 フレーム構造体、 4 側壁、 5 ウェブ、 6 長手方向支持体、 7 横方向支持体、 8 固定部、 9,10 固定個所、 11 固定ネジ、 12 固定ナット、 13 固定スリーブ、 14 スリーブ開口、 15 貫通開口、 16 ナット開口、 17,17′ 支持突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のディスクブレーキ装置のためのブレーキキャリパにおいて、
−軽金属合金又は軽金属で鋳造されているキャリパボディ(2)を備えており、
−キャリパボディ(2)の内部に配置されたフレーム構造体(3)を備えており、該フレーム構造体(3)の材料は、キャリパボディ(2)の材料よりも高い弾性率を有しており、
−フレーム構造体(3)はキャリパボディ(2)内に鋳造されていて、キャリパボディ(2)がフレーム構造体(3)を取り囲んでいる、
ことを特徴とする、自動車のディスクブレーキ装置のためのブレーキキャリパ。
【請求項2】
−キャリパボディ(2)は、互いに平行に延びている2つの側壁(4)と、該側壁(4)に対して横方向に延びている、側壁(4)を互いに結合する複数のウェブ(5)とを有しており、
−フレーム構造体(3)は互いに平行に延びている2つの長手方向支持体(6)と、該長手方向支持体(6)に対して横方向に延びている、長手方向支持体(6)を互いに結合する複数の横方向支持体(7)とを有しており、長手方向支持体(6)は各々、側壁(4)内に埋め込まれており、横方向支持体(7)は各々、ウェブ(5)内に埋め込まれていることを特徴とする、請求項1記載のブレーキキャリパ。
【請求項3】
−フレーム構造体(3)は複数の構成要素から組み立てられているか、又は
−フレーム構造体(3)は連結して統合して製造された鋳造品として形成されていることを特徴とする、請求項1又は2記載のブレーキキャリパ。
【請求項4】
ブレーキキャリパ(1)は複数の固定部(8)を有しており、該複数の固定部(8)は各々、フレーム側の固定個所(9)をボディ側の固定個所(10)に形状結合式に結合することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項記載のブレーキキャリパ。
【請求項5】
各固定部(8)は、固定ネジ(11)と、固定ナット(12)と、固定スリーブ(13)とを有しており、各固定ネジ(11)は、キャリパボディ(2)内に挿入されている、フレーム構造体(3)において支持されている固定スリーブ(13)と、フレーム構造体(3)に形成されている貫通開口(15)とを突き抜け、固定ナット(12)に係合し、該固定ナット(12)は、特にフレーム構造体(3)に支持可能であり、且つ/又はキャリパボディ(2)を貫通可能であることを特徴とする、請求項4記載のブレーキキャリパ。
【請求項6】
フレーム構造体(3)は鉄合金又は鉄から成っていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項記載のブレーキキャリパ。
【請求項7】
フレーム構造体(3)は金属マトリックス複合材料から成っていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項記載のブレーキキャリパ。
【請求項8】
キャリパボディ(2)はアルミニウム合金又はアルミニウムから成っていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項記載のブレーキキャリパ。
【請求項9】
キャリパボディ(2)の材料は、フレーム構造体(3)の材料よりも低い密度を有していることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項記載のブレーキキャリパ。
【請求項10】
キャリパボディ(2)は、液圧液体を収容及び/又は案内するための内部構造を有していることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項記載のブレーキキャリパ。
【請求項11】
自動車のディスクブレーキ装置のためのブレーキキャリパ(1)、特に請求項1から10までのいずれか一項記載のブレーキキャリパ(1)を製造する方法において:
−フレーム構造体(3)を製造するステップと、
−フレーム構造体(3)の鋳ぐるみにより、軽金属又は軽金属合金からキャリパボディ(2)を鋳造するステップと
を有していることを特徴とする、自動車のディスクブレーキ装置のためのブレーキキャリパを製造する方法。
【請求項12】
フレーム構造体(3)を1つ又は複数の薄板部分から成形することを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
フレーム構造体(3)を形材部分の切断により製造することを特徴とする、請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
フレーム構造体(3)をレーザ焼結により製造することを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項15】
フレーム構造体(3)の鋳造を第1の鋳型内で行い、キャリパボディ(2)の鋳造を第2の鋳型内で行うことを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項16】
フレーム構造体(3)の鋳造時に、フレーム構造体(3)に支持突部(17)が一体に成形されており、該支持突部(17)を、キャリパボディ(2)の鋳造時にコアとして働くフレーム構造体(3)の位置決めのために使用することを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
支持突部(17)をキャリパボディ(2)の鋳造後に除去し、除去した支持突部(17)の領域に、フレーム側及びボディ側の固定個所(9,10)を製造し、該固定個所(9,10)は固定部(8)によって形状結合式に結合可能であることを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項18】
フレーム構造体(3)の鋳造が薄壁鋳造方法により構成されていることを特徴とする、請求項15から17までのいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
フレーム構造体(3)を被覆することを特徴とする、請求項11から18までのいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
キャリパボディ(2)の鋳造を、フレーム構造体(3)が予めコアとして挿入されている鋳型内で行うことを特徴とする、請求項11から19までのいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
フレーム構造体(3)をキャリパボディ(2)の鋳造前に加熱することを特徴とする、請求項20記載の方法。
【請求項22】
フレーム構造体(3)の鋳ぐるみ、ひいてはキャリパボディ(2)の鋳造をチル鋳造において行うことを特徴とする、請求項20又は21記載の方法。
【請求項23】
キャリパボディ(2)の鋳造後に後緻密化処理を実施することを特徴とする、請求項11から22までのいずれか一項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−43742(P2010−43742A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188612(P2009−188612)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】