説明

ブレーキシステム

【課題】 ブレーキシステムのコストを低減すること。
【解決手段】 ブレーキブースタに負圧を供給する電動バキュームポンプと、ブレーキブースタの負圧を検出する負圧検出手段と、負圧検出手段からの負圧が所定値以下のときに、電動バキュームポンプが駆動するように制御する制御手段と、を備え、内燃機関の吸気通路に発生する負圧がブレーキブースタに供給されるブレーキシステムであって、内燃機関の始動後、所定時間以内における所定値は、所定時間以外の所定値より低く設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コスト低減を実現したブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大気圧センサおよび負圧センサの出力信号に基づいて、真空ポンプの作動を制御して、高地における真空ポンプの作動時間の増加を抑える負圧ブースタ用負圧源装置が知られている(特許文献1参照)。真空ポンプの作動条件となる負圧室の負圧の閾値を変化させることにより、真空ポンプの作動時間を抑えている。
【特許文献1】特開平9−58457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の負圧ブースタ用負圧源装置においては、真空ポンプの作動時間が抑えられるのは、高地等の大気圧が低いときのみである。したがって、平地等の通常の大気圧状態での真空ポンプの作動時間の抑制効果は余り期待できない。
【0004】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、ブレーキシステムのコスト低減を主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、ブレーキブースタに負圧を供給する電動バキュームポンプと、上記ブレーキブースタの負圧を検出する負圧検出手段と、上記負圧検出手段からの上記負圧が所定値以下のときに、上記電動バキュームポンプが駆動するように制御する制御手段と、を備え、内燃機関の吸気通路に発生する負圧が上記ブレーキブースタに供給されるブレーキシステムであって、上記内燃機関の始動後、所定時間以内における上記所定値は、上記所定時間以外の上記所定値より低く設定されていることを特徴とするブレーキシステムである。
【0006】
この一態様において、例えば上記負圧を供給するとは、上記負圧を導入することである。
【0007】
この一態様によれば、上記内燃機関の始動後、所定時間以内における上記所定値は、上記所定時間以外の上記所定値より低く設定されている。これにより、例えば、上記内燃機関の始動後、所定時間以内における上記所定値を設定して、上記制御手段は上記内燃機関の始動後、所定時間以内において、上記電動バキュームポンプが駆動しないように制御させることができる。したがって、上記電動バキュームポンプの作動頻度を低減し、上記電動バキュームポンプの寿命を延ばすことができる。すなわち、ブレーキシステムのコストを低減できる。
【0008】
なお、この一態様において、上記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段を更に備え、上記制御手段は上記回転数検出手段からの上記回転数が所定値以上のとき、上記内燃機関が始動したと判断してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ブレーキシステムのコストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。なお、車両用ブレーキシステムの基本概念、主要なハードウェア構成、作動原理、及び基本的な制御手法等については当業者には既知であるため、詳しい説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の一実施例に係るブレーキシステムのシステム構成図である。本実施例に係るブレーキシステム1は、圧力室内に供給された負圧を倍力源としてブレーキペダル3に助勢力を付加するブレーキブースタ(ブレーキ倍力装置)5を備える。なお、ブレーキブースタ5はブレーキペダル3とブレーキ用マスタシリンダとの間に配設されている。また、ブレーキブースタ5はブレーキペダル3の踏込み力を圧力室内に供給された負圧により増大させて、ブレーキ用マスタシリンダに伝達することにより、ブレーキペダル3の踏込み力に助勢力を付加している。
【0012】
ブレーキブースタ5には、エンジン等の内燃機関7のインテークマニホールド(吸気通路)9が配管13を介して接続連通されている。エンジン7駆動時にインテークマニホールド9内には、スロットル弁11の開度に応じた負圧が発生し、この負圧が配管13を介してブレーキブースタ5に供給される。
【0013】
例えば、スロットル弁11の開度が増加すると、インテークマニホールド9内の負圧は低下する。一方、スロットル弁11の開度が減少すると、インテークマニホールド9内の負圧は増加する。なお、負圧が増加するとは圧力が低下することであり、負圧が低下するとは圧力が増加することである。
【0014】
また、配管13のインテークマニホールド9寄りの位置およびブレーキブースタ5の近傍位置には、チェック弁15が1つずつ配置され、ブレーキブースタ5内に負圧を封じ込めている。このチェック弁15は、インテークマニホールド9側の負圧がブレーキブースタ5側の負圧より高い場合のみ、開状態となるように構成されている。なお、配置されるチェック弁15の数はそれぞれ1以上であれば任意でよい。
【0015】
電動バキュームポンプ19は配管13を介してブレーキブースタ5に接続連通され、配管13を介してブレーキブースタ5に負圧を供給する。電動バキュームポンプ19と配管13との間には、1つのチェック弁15が介在している。
【0016】
電動バキュームポンプ19には、電動バキュームポンプ19の駆動を制御するECU等の制御手段21が接続されている。ECU(Electronic Control Unit)21はマイクロコンピュータによって構成されており、制御プログラムを格納するROM、演算結果等を格納する読書き可能なRAM、タイマ、カウンタ、入力インターフェイス、及び出力インターフェイスを有している。
【0017】
電動バキュームポンプ19はECU21からの駆動開始信号に基づいて駆動を開始して、配管13を介して負圧をブレーキブースタ5の圧力室に供給する。また、電動バキュームポンプ19はECU21からの駆動停止信号に基づいて駆動を停止して、負圧をブレーキブースタ5の圧力室に供給するのを停止する。
【0018】
ECU21にはエンジン7のクランクシャフトの回転数を検出する回転センサ等の回転数検出手段23が接続されている。ECU21は回転センサ23からの回転数に基づいて、エンジン7が始動しているか否かを判定する。例えば、ECU21は回転センサ23からの回転数が所定値以上となったときに、エンジン7が始動したと判定する。なお、ECU21にはIG(イグニッション)スイッチ25が接続され、ECU21はIGスイッチ25からのオン信号に基づいて、エンジン7が始動しているか否かを判定してもよい。
【0019】
ECU21にはブレーキブースタ5の負圧を検出する負圧センサ27が接続されている。ECU21は負圧センサ27からの負圧に基づいて、電動バキュームポンプ19を駆動させ、停止させる。例えば、ECU21は負圧センサ27からの負圧が所定値以下である場合に、電動バキュームポンプ19に駆動開始信号を送信する。駆動開始信号を受信した電動バキュームポンプ19は駆動を開始して、配管13を介してブレーキブースタ5に負圧を供給する。また、ECU21は負圧センサ27からの負圧が所定値以上である場合に、電動バキュームポンプ19に駆動停止信号を送信する。駆動停止信号を受信した電動バキュームポンプ19は駆動を停止して、ブレーキブースタ5に負圧を供給するのを停止する。
【0020】
ECU21には、スロットル弁11を駆動するスロットアクチュエータ29が接続されている。ECU21はアクセルペダルの踏込み量、エンジン7の負荷状態等に基づいて、スロットルアクチュエータ29に開度信号を送信する。スロットルアクチュエータ29は、この開度信号に基づいて、スロットル弁11の開度を増加させ、または減少させる。
【0021】
ECU21にはECU21に電力を供給するバッテリ等の電源31が接続されている。
【0022】
図2はエンジン7始動後の時間とインテークマニホールド9の負圧(以下、インマニ負圧と称す。)およびブレーキブースタ5の負圧との関係を示す図である。なお、図2において、縦軸は負圧を示し、横軸は時間を示している。縦軸の負圧は、下方向に負圧が高くなる(下方向に負圧が大きくなる)。
【0023】
図2に示すように、例えばブレーキペダル3が踏込まれると、ブレーキブースタ5の負圧は階段状に減少する(a)。ECU21は負圧センサ27からの負圧が所定値Va以下となったと判断すると、電動バキュームポンプ19に駆動開始信号を送信する。駆動開始信号を受信した電動バキュームポンプ19は駆動を開始して、ブレーキブースタ5に負圧を供給開始する。電動バキュームポンプ19が、ブレーキブースタ5に負圧を供給開始すると、ブレーキブースタ5の負圧が増加する(b)。さらに、ECU21は負圧センサ27からの負圧が所定値Vb以上となったと判断すると、電動バキュームポンプ19に駆動停止信号を送信する。駆動停止信号を受信した電動バキュームポンプ19は駆動を停止する(c)。その後、ブレーキブースタ5の負圧はインテークマニホールド9から供給される負圧によって、一定の値に維持される(c)。
【0024】
なお、エンジン7始動直後、インマニ負圧は急激に増加し、最高値に達した後減少に転じ、その後、略一定の値を維持する(d)。したがって、エンジン7始動後、所定時間ΔT以内において、インマニ負圧は相対的に高い状態にある。インテークマニホールド9から、配管13を介して、このような高い状態のインマニ負圧がブレーキブースタ5に供給されている。さらに、ブレーキブースタ5内には、一定の負圧が残存している場合が多い。例えば、ハイブリッド車両のように、エンジン7停止とエンジン7始動とが短時間で繰り返され、しかもエンジン7停止中において、ブレーキ操作があまり行われなかった場合は、エンジン7始動前において、ブレーキブースタ5内には十分な負圧が保持される。
【0025】
すなわち、エンジン7始動後所定時間ΔT以内において、電動バキュームポンプ19を駆動することなく、ブレーキブースタ5内に予め保持された負圧およびインテークマニホールド9から供給される負圧のみで、ブレーキブースタ5の負圧は十分確保され得る。そこで、本実施例に係るブレーキシステム1において、ECU21はエンジン7始動後所定時間ΔT以内において、電動バキュームポンプ19を駆動しないように制御し、電動バキュームポンプ19の作動頻度を低減している。
【0026】
例えば、ECU21が電動バキュームポンプ19に対し駆動開始信号を送信する負圧の所定値Va′をエンジン7始動後所定時間ΔT以内のみ低く設定している(Va>Va′)。なお、負圧の所定値Va′は、通常、エンジン7始動直後から越えるような低い値で設定することにより、ECU21はエンジン7始動後所定時間ΔT以内において、電動バキュームポンプ19に駆動開始信号を送信しないように構成される。ところで、ブレーキブースタ5内に負圧が残存していない為に、インテークマニホールド9からの負圧のみで、ブレーキブースタ5内の負圧が十分確保されない場合がある。この場合は、ECU21は負圧センサ27からの負圧に基づいて、電動バキュームポンプ19を駆動させてもよい。
【0027】
以上、ECU21はエンジン7が始動したと判定したときから所定時間ΔT以内において、電動バキュームポンプ19が駆動しないよう制御している。これにより、ブレーキブースタ5内に残存する負圧を有効に活用して、電動バキュームポンプ19の作動頻度を減少させることができ、電動バキュームポンプ19の寿命を延ばすことが可能となる。すなわち、電動バキュームポンプ19の寿命を延ばすことにより、ブレーキシステム1のコスト低減が可能となる。
【0028】
なお、電動バキュームポンプ19の作動頻度を減少させることにより、消費電力の低減にもつながる。例えば、本実施例にかかるブレーキシステム1がハイブリッド車両に搭載された場合に消費電力の低減により、バッテリの蓄電量の減少を抑制でき、ハイブリット車両の実走行距離を向上させることができる。
【0029】
以上、本発明を実施するための最良の形態について一実施例を用いて説明したが、本発明はこうした一実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上述した一実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0030】
例えば、上記一実施例において、配管13のブレーキブースタ5近傍にバキュームタンクが配置されていてもよい。インテークマニホールド9および電動バキュームポンプ19から供給された負圧は一度バキュームタンク内に蓄積され、バキュームタンクからブレーキブースタ5に安定的に供給される。したがって、ブレーキブースタ5によってブレーキペダル3に十分な助勢力が付加され、ブレーキ操作性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、一般的な自動車はもちろん、ハイブリッド車両およびエコラン車両において採用されるブレーキシステムに利用できる。搭載される車両の外観、重量、サイズ、走行性能等は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例に係るブレーキシステムのシステム構成図である。
【図2】エンジン始動後の時間とインマニ負圧およびブレーキブースタの負圧との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ブレーキシステム
3 ブレーキペダル
5 ブレーキブースタ
7 エンジン(内燃機関)
9 インテークマニホールド(吸気通路)
11 スロットル弁
13 配管
19 電動バキュームポンプ
21 ECU(制御手段)
23 回転センサ(回転数検出手段)
25 IGスイッチ
27 負圧センサ(負圧検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキブースタに負圧を供給する電動バキュームポンプと、
前記ブレーキブースタの負圧を検出する負圧検出手段と、
前記負圧検出手段からの前記負圧が所定値以下のときに、前記電動バキュームポンプが駆動するように制御する制御手段と、を備え、内燃機関の吸気通路に発生する負圧が前記ブレーキブースタに供給されるブレーキシステムであって、
前記内燃機関の始動後、所定時間以内における前記所定値は、前記所定時間以外の前記所定値より低く設定されていることを特徴とするブレーキシステム。
【請求項2】
請求項1記載のブレーキシステムであって、
前記制御手段は前記内燃機関の始動後、前記所定時間以内において、前記電動バキュームポンプが駆動しないように制御することを特徴とするブレーキシステム。
【請求項3】
請求項1又は2記載のブレーキシステムであって、
前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段を更に備え、
前記制御手段は前記回転数検出手段からの前記回転数が所定値以上のとき、前記内燃機関が始動したと判断することを特徴するブレーキシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−142942(P2006−142942A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334642(P2004−334642)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】