ブレーキ制御装置
【課題】ブレーキ制御装置において、ABS作動時に充分な制御情報が得られない状況においてもブレーキペダルの踏力変動を抑制して操作フィーリングを改善する。
【解決手段】ブレーキペダル19の操作に応じて、入力ピストン17とプライマリピストン8との相対変位に基づき、電動モータ22の作動を制御して、マスタシリンダ2で液圧を発生させ、ホイール圧制御機構5を介してブレーキ装置Ba〜Bdに供給する。ホイール圧制御機構5によるABS作動時には、液圧センサ45A、45Bが検出するマスタシリンダ2の液圧に基づき、電動モータ22をフィードバック制御することにより、マスタシリンダ2の液圧の変動を抑制する。液圧センサ45A、45Bの異常時には、上述の相対変位制御を実行すると共に、電動モータ22に供給する電流の最大値を制限して、電動モータ22の出力を抑えることにより、マスタシリンダ2の圧力の変動を吸収する。
【解決手段】ブレーキペダル19の操作に応じて、入力ピストン17とプライマリピストン8との相対変位に基づき、電動モータ22の作動を制御して、マスタシリンダ2で液圧を発生させ、ホイール圧制御機構5を介してブレーキ装置Ba〜Bdに供給する。ホイール圧制御機構5によるABS作動時には、液圧センサ45A、45Bが検出するマスタシリンダ2の液圧に基づき、電動モータ22をフィードバック制御することにより、マスタシリンダ2の液圧の変動を抑制する。液圧センサ45A、45Bの異常時には、上述の相対変位制御を実行すると共に、電動モータ22に供給する電流の最大値を制限して、電動モータ22の出力を抑えることにより、マスタシリンダ2の圧力の変動を吸収する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキ装置の作動を制御するブレーキ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のブレーキシステムにおいて、負圧アクチュエータや電動アクチュエータを用いて、運転者によるブレーキの操作力を補助する倍力制御及びブレーキアシスト制御を行ない、また、ポンプ、アキュムレータ、電磁切換弁等を用いて、路面状態及び走行状態等に応じて車輪毎に制動力を調整することにより、制動時の車輪のロックを防止するアンチロックブレーキ制御、アンダーステア、オーバーステアを抑制して操縦安定性を高める車両安定性制御等の種々な制御を行なうようにしたブレーキ制御装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、ブレーキペダルによって直接操作される入力ピストンと、ブレーキペダルの操作量に応じて作動する電動アクチュエータによって駆動されるアシスト部材とよってマスタシリンダ内に倍力されたブレーキ液圧を発生させ、この液圧をアンチロックブレーキ装置(以下、ABSともいう)の液圧回路を介してホイールシリンダに供給するブレーキ制御装置が記載されている。このブレーキ制御装置では、ABSの作動中には、液圧センサによって検出したマスタシリンダの液圧に基づき、電動アクチュエータの作動をフィードバック制御することにより、ABSの作動時のマスタシリンダの液圧変動によるブレーキペダルの踏力の変動を抑制して、ブレーキペダルの操作フィーリングを改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−248673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたブレーキ制御装置では、液圧センサの異常によって液圧情報が得られない場合、あるいは、車載ネットワークの通信異常によってABSの作動情報が得られない場合等のマスタシリンダの液圧に基づく電動アクチュエータのフィードバック制御が不可能な状況においては、ABSの作動によるマスタシリンダの液圧変動に適切に対応することができず、ブレーキペダルの操作フィーリングの悪化が避けられない。
【0006】
そこで、本発明は、充分な制御情報が得られない状況においてもブレーキペダルの踏力変動を抑制して操作フィーリングを改善し得るブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係るブレーキ制御装置は、ブレーキペダルの操作により進退移動する入力部材と、該入力部材に対して相対移動可能に設けられたアシスト部材と、該アシスト部材の推進よってブレーキ液圧を発生してブレーキ装置に供給するマスタシリンダと、電動モータと、該電動モータの回転運動を直線運動に変換して前記アシスト部材を推進する回転−直動変換機構と、前記マスタシリンダ側又は前記ブレーキ装置側からの作動情報を含む制御情報に基づき、前記電動モータに電流を供給して該電動モータの作動を制御するコントローラとを備えたブレーキ制御装置において、前記コントローラは、前記マスタシリンダ側又は前記ブレーキ装置側から作動情報が得られなくなったとき、前記電動モータに供給する電流の最大値を所定の制限電流値に制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るブレーキ制御装置によれば、充分な制御情報が得られない状況においてもブレーキペダルの踏力変動を抑制して操作フィーリングを改善することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るブレーキ制御装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示すブレーキ制御装置のマスタ圧制御装置の概略構成を示す回路図である。
【図3】図2のマスタ圧制御装置による制御を示すブロック図である。
【図4】図1に示すブレーキ制御装置のマスタ圧制御機構における力の平衡を示す説明図である。
【図5】ブレーキペダルの変位方向によってヒステリシスを有する場合の相対変位制御を示すフローチャートである。
【図6】相対変位制御手段におけるブレーキペダルの操作量と目標相対変位との関係を示すグラフ図である。
【図7】ブレーキペダルの変位方向によってヒステリシスを有する場合の液圧制御を示すフローチャートである。
【図8】液圧制御手段におけるブレーキペダルの操作量と目標液圧との関係を示すグラフ図である。
【図9】通常のブレーキ制御において、相対変位制御と液圧制御との切換を実行するためのフローチャートである。
【図10】電動モータへの供給電流と液圧との関係を示すグラフ図である。
【図11】図1に示すブレーキ制御装置において、充分な制御情報が得られない場合の制御を実行するためのフローチャートである。
【図12】図1に示すブレーキ制御装置において、充分な制御情報が得られない場合の相対変位制御の状態を表すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態に係るブレーキ制御装置の概略構成を図1に示す。図1に示すように、本実施形態に係るブレーキ制御装置1は、自動車の制動装置に適用して、左前輪Wa、右後輪Wb、右前輪Wc、左後輪Wdの4輪の制動力を制御するためのものである。ブレーキ制御装置1は、マスタシリンダ2と、マスタシリンダ2に一体に組込まれたマスタ圧制御機構3と、マスタ圧制御機構3の作動を制御するマスタ圧制御ユニット4と、各車輪Wa、Wb、Wc、Wdに装着されたブレーキ装置Ba、Bb、Bc、Bdのホイールシリンダに供給する液圧を制御する液圧制御手段であるホイール圧制御機構5と、このホイール圧制御機構5の作動を制御するホイール圧制御ユニット6とを備えている。
【0011】
マスタシリンダ2は、タンデム型マスタシリンダであって、ブレーキ液が充填されたシリンダ7内の開口側にアシスト部材であるプライマリピストン8が挿入され、底部側にセカンダリピストン9が挿入され、プライマリピストン8とセカンダリピストン9との間にプライマリ室10を形成し、セカンダリピストン9とシリンダ7の底部との間にセカンダリ室11を形成している。そして、プライマリピストン8の前進により、プライマリ室10内のブレーキ液を加圧すると共に、セカンダリピストン9を前進させてセカンダリ室11内のブレーキ液を加圧して、プライマリポート12及びセカンダリポート13からホイール圧制御機構5を介してブレーキ装置Ba、Bb、Bc、Bdのホイールシリンダにブレーキ液を供給する。プライマリ室10及びセカンダリ室11は、それぞれシリンダ7の側壁に設けられたリザーバポート14A、14Bを介してリザーバ14に接続されている。リザーバポート14は、プライマリピストン8及びセカンダリピストン9が後退位置にあるとき開いて、プライマリ10室及びセカンダリ室11をリザーバ14に連通させて適宜ブレーキ液を補充し、プライマリピストン8及びセカンダリピストン9が前進すると閉じて、プライマリ10室及びセカンダリ室11の加圧を可能にする。プライマリピストン8及セカンダリピストン9は、戻しバネ15、16によって後退置に付勢されている。
【0012】
このように、プライマリピストン8及びセカンダリピストン9の2つのピストンによってプライマリポート12及びセカンダリポート13から2系統の液圧回路にブレーキ液を供給することにより、万一、一方の液圧回路が失陥した場合でも、他方の液圧回路によって液圧を供給することでき、制動力を確保することができる。
【0013】
プライマリピストン8の中心部には、入力部材である入力ピストン17が摺動可能かつ液密的に貫通され、入力ピストン17の先端部がプライマリ室10内に挿入されている。入力ピストン17の後端部には、入力ロッド18が連結され、入力ロッド18はマスタ圧制御機構3を貫通して外部へ延ばされ、その端部にブレーキペダル19が連結されている。プライマリピストン8と入力ピストン17との間には、一対の中立バネ20、21が介装され、プライマリピストン8及び入力ピストン17は、中立バネ20、21のバネ力によって中立位置に弾性的に保持され、これらの軸方向の相対変位に対して中立バネ20、21のバネ力が作用するようになっている。
【0014】
マスタ圧制御機構3は、プライマリピストン8を駆動するアクチュエータである電動モータ22と、プライマリピストン8と電動モータ22との間に介装された回転−直動変換機構であるボールネジ機構23及び減速機構であるベルト減速機構24とを備えている。電動モータ22は、その回転位置を検出する回転角検出センサ25を備え、マスタ圧制御装置4からの指令によって作動して、所望の回転位置が得られるようになっている。電動モータ22は、例えば公知のDCモータ、DCブラシレスモータ、ACモータ等とすることができるが、制御性、静粛性、耐久性等の観点から本実施形態では三相DCブラシレスモータを採用している。
【0015】
ボールネジ機構23は、入力ロッド18が挿入された中空の直動部材26と、直動部材26が挿入された円筒状の回転部材27と、これらの間に形成されたネジ溝に装填された複数の転動体であるボール28(鋼球)とを備え、直動部材26の前端部がプライマリピストン8の後端部に当接し、回転部材27が軸受29によってシリンダ7に回転可能に支持されている。そして、電動モータ22によってベルト減速機構24を介して回転部材27を回転させることにより、ネジ溝内をボール28が転動し、直動部材26が直線運動してプライマリピストン8を移動させるようになっている。直動部材26は、戻しバネ30によって後退位置側に付勢されている。
【0016】
なお、回転−直動変換機構は、電動モータ22(すなわちベルト減速機構24)の回転運動を直線運動に変換してプライマリピストン8に伝達するものであれば、ラックアンドピニオン機構等の他の機構を用いることができるが、本実施形態では、遊びの少なさ、効率、耐久性等の観点から、ボールネジ機構23を採用している。ボールネジ機構23は、バックドライバビリティを有しており、直動部材26の直線運動によって回転部材27を回転させることができる。また、直動部材26は、プライマリピストン8に後方から当接し、プライマリピストン8が直動部材26から離れて単独で前進できるようになっている。これにより、万一、電動モータ22が断線等によって作動不能になった場合、直動部材26が戻しバネ30のバネ力によって後退位置に戻され、このとき、プライマリピストン8は単独で移動できるので、ブレーキの引き摺りを防止することができ、また、ブレーキペダル19によって入力ピストン17を操作し、さらに、入力ロッド18を介してプライマリピストン8を操作することにより、液圧を発生させることができる。
【0017】
ベルト減速機構24は、電動モータ22の出力軸に取付けられた駆動プーリ31と、ボールネジ機構23の回転部材27の周囲に取付けられた従動プーリ32と、これらの間に巻装されたベルト33とを含み、電動モータ22の出力軸の回転を所定の減速比で減速してボールネジ機構23に伝達するものである。ベルト減速機構24に、歯車減速機構等の他の減速機構を組み合わせてもよい。ベルト減速機構24の代りに、公知の歯車減速機構、チェーン減速機構、差動減速機構等を用いることができるが、また、電動モータ22によって充分大きなトルクが得られる場合には、減速機構を省略して、電動モータ22によって回転−直動変換機構を直接駆動するようにしてもよい。
【0018】
入力ロッド18には、ブレーキ操作量検出装置34が連結されている。ブレーキ操作量検出装置34は、少なくとも入力ロッド18の位置又は変位量(ストローク)を検出できるもの(ストローク検出手段)であり、入力ロッド18の変位センサを含む複数の位置センサと、運転者によるブレーキペダル19の踏力を検出する力センサとを含むものであってもよい。また、ブレーキペダル19には、その操作を検知するブレーキスイッチ19Aが設けられている。ブレーキスイッチ19Aは、イグニッションスイッチのオン、オフにかかわらず、ブレーキペダル19の操作を検知して、マスタ圧制御ユニット4にブレーキ操作信号を供給する。
【0019】
ホイール圧制御機構5は、マスタシリンダ2のプライマリポート12からの液圧を左前輪Wa及び右後輪Wbのブレーキ装置Ba、Bbに供給するための第1液圧回路5A(図1のホイール圧制御機構5の中央より右側分部)と、セカンダリポート13からの液圧を右前輪Wc及び左後輪Wdのブレーキ装置Bc、Bdに供給するための第2液圧回路5B(図1のホイール圧制御機構5の中央より左側分部)とからなる2系統の液圧回路を備えている。本実施形態では、ブレーキ装置Ba〜Bdは、液圧をホイールシリンダに供給してピストンを前進させ、ブレーキパッドを車輪と共に回転するディスクロータに押圧して制動力を発生させる液圧式ディスクブレーキとしているが、公知のドラムブレーキ等の他の液圧式ブレーキでもよい。
【0020】
第1液圧回路5Aと第2液圧回路5Bとは同様の構成であり、また、各車輪Wa〜Wdのブレーキ装置Ba〜Bdに接続された液圧回路の構成は同様の構成であり、以下の説明において参照符号の添え字A及B並びにa乃至dは、それぞれ、第1液圧回路5A及び第2液圧回路5B、並びに、各車輪Wa乃至Wdに対応することを示している。
【0021】
ホイール圧制御機構5には、マスタシリンダ2から各車輪Wa〜Wdのブレーキ装置Ba〜Bdのホイールシリンダへの液圧の供給を制御する電磁開閉弁である供給弁35A、35Bと、ブレーキ装置Ba〜Bdへの液圧の供給を制御する電磁開閉弁である増圧弁36a〜36dと、ブレーキ装置Ba〜Bdから液圧を解放するためのリザーバ37A、37Bと、ブレーキ装置Ba〜Bdからリザーバ37A、37Bへの液圧の解放を制御する電磁弁開閉弁である減圧弁38a〜38dと、ブレーキ装置Ba〜Bdに液圧を供給するためポンプ39A、39Bと、ポンプ39A、39Bを駆動するポンプモータ40と、マスタシリンダ2からポンプ39A、39Bの吸込み側への液圧の供給を制御する電磁開閉弁である加圧弁41A、41Bと、ポンプ39A、39Bの下流側から上流側への逆流を防止するための逆止弁42A、42B、43A、43B、44A、44Bと、マスタシリンダ2のプライマリポート12及びセカンダリポート13の液圧を検出する液圧センサ45A、45Bとを備えている。
【0022】
そして、ホイール圧制御ユニット6によって供給弁35A、35B、増圧弁36a〜36d、減圧弁38a〜38d、加圧弁41A、41B及びポンプモータ40の作動を制御する。このとき、供給弁35A、35B及び増圧弁36a〜36dを開き、減圧弁38a〜38d、加圧弁41A、41Bを閉じることにより、マスタシリンダ2から各車輪Wa〜Wdのブレーキ装置Ba〜Bdに液圧を供給する。減圧弁38a〜38dを開き、供給弁35A、35B、増圧弁36a〜36d及び加圧弁41A、41Bを閉じることにより、ブレーキ装置Ba〜Bdの液圧をリザーバ37A、37Bに解放して減圧する。増圧弁36a〜36d及び減圧弁38a〜38dを閉じることにより、ブレーキ装置Ba〜Bdの液圧を保持する。増圧弁36a〜36dを開き、供給弁35A、35B、減圧弁38a〜38d及び加圧弁41A、41Bを閉じて、ポンプモータ40を作動することにより、マスタシリンダ2の液圧にかかわらず、ブレーキ装置Ba〜Bdの液圧を増圧する。また、加圧弁41A、41B及び増圧弁36a〜36dを開き、減圧弁38a〜38d及び供給弁35A、35Bを閉じて、ポンプモータ40を作動することにより、マスタシリンダ2からの液圧をポンプ42A、42Bによって更に加圧してブレーキ装置Ba〜Bdに供給する。
【0023】
これにより、各種ブレーキ制御を実行することができる。例えば、制動時に接地荷重等に応じて各車輪に適切に制動力を配分する制動力配分制御、制動時に各車輪の制動力を自動的に調整して車輪のロックを防止するアンチロックブレーキ制御、走行中の車輪の横滑りを検知して各車輪に適宜自動的に制動力を付与することにより、アンダーステア及びオーバーステアを抑制して車両の挙動を安定させる車両安定性制御、坂道(特に上り坂)において制動状態を保持して発進を補助する坂道発進補助(HSA)制御、発進時等において車輪の空転を防止するトラクション制御、先行車両に対して一定の車間を保持する車両追従制御、走行車線を保持する車線逸脱回避制御、障害物との衝突を回避する障害物回避制御等を実行することができる。
【0024】
なお、ポンプ39A、39Bとしては、例えばプランジャポンプ、トロコイドポンプ、ギヤポンプ等の公知の液圧ポンプを用いることができるが、車載性、静粛性、ポンプ効率等を考慮するとギヤポンプとすることが望ましい。ポンプモータ40としては、例えばDCモータ、DCブラシレスモータ、ACモータ等の公知のモータを用いることができるが、制御性、静粛性、耐久性、車載性等の観点からDCブラシレスモータが望ましい。
【0025】
また、ホイール圧制御機構5の電磁開閉弁の特性は、使用態様に応じて適宜設定することができるが、供給弁35A、35B及び増圧弁36a〜36dを常開弁とし、減圧弁38a〜38d及び加圧弁41A、41Bを常閉弁とすることにより、ホイール圧制御ユニット6からの制御信号がない場合に、マスタシリンダ12からブレーキ装置Ba〜Bdに液圧を供給することができるので、フェイルセーフ及び制御効率の観点から、このような構成とすることが望ましい。
【0026】
次に、マスタ圧制御ユニット4について説明する。マスタ圧制御ユニット4の回路構成の一例を図2に示す。
図2に示すように、マスタ圧制御ユニット4は、中央処理ユニット(CPU)46と、電動モータ22(三相DCブラシレスモータ)に駆動電流を出力する三相モータ駆動回路47と、マスタ圧制御機構3の回転角検出センサ25、変位センサを含むペダル操作量検出装置34、温度センサ48(図2にのみ示す)、並びに、マスタシリンダ2のプライマリ室10及びセカンダリ室11の圧力を検出する液圧センサ45A、45Bからの各種検出信号を中央処理ユニット46に受入れるための回転角検出センサインタフェイス49、温度センサインタフェイス50、変位センサインタフェイス51、51及び液圧センサインタフェイス52と、ホイール圧制御ユニット6を含む車載器機からのCAN信号を受入れるためのCAN通信インタフェイス53と、中央処理ユニット46(CPU)が処理を実行するための各種情報を格納した記憶装置54(EEPROM)と、中央処理ユニット46に安定電力を供給する第1及び第2電源回路55、56と、中央処理ユニット46並びに第1及び第2電源ユニット55、56の異常を監視する監視用制御回路57と、フェイルセーフリレー58及びECU電源リレー59と、フィルタ回路60とを備えている。
【0027】
中央処理ユニット46は、回転角検出センサ25、操作量検出装置34、温度センサ48及び液圧センサ45A、45B等からの各種検出信号、ホイール圧制御ユニット6を含む各種車載器機等からのCAN信号による各種情報、並びに、記憶装置54(EEPROM)の記憶情報等に基づき、これらを所定の論理規則によって処理して、三相モータ駆動回路47に指令信号を出力して電動モータ22の作動を制御する。
【0028】
車載の電源ライン61からECU電源リレー59を介して第1及び第2電源回路55、56に電力を供給する。このとき、ECU電源リレー59は、CAN通信インタフェイス53によるCAN信号の受信、又は、イグニッションスイッチ、ブレーキスイッチ、ドアスイッチ等からの所定の起動信号W/Uの受信のいずれかを検知することにより、第1及び第2電源回路55、56に電力を供給する。また、電源ライン61からフィルタ回路60及びフェイルセーフリレー58を介して三相モータ駆動回路47に電力を供給する。このとき、フィルタ回路60によって三相モータ駆動回路47に供給される電力のノイズを除去する。
【0029】
三相モータ駆動回路47の三相出力の各相は、相電流モニタ回路47A及び相電圧モニタ回路47Bによって監視されている。中央処理ユニット46は、これらの監視値及び記憶装置54に記憶された故障情報等に基づき、マスタ圧制御ユニット4の故障診断を実行し、故障ありと判断したとき、故障信号を監視用制御回路57に出力する。監視用制御回路57は、中央処理ユニット46からの故障信号、第1及び第2電源回路55、56の電圧等の各種作動情報に基づき、異常時には、フェイルセーフリレー58を作動させて三相モータ駆動回路47への電力の供給を遮断する。
【0030】
ブレーキ制御装置1が搭載された車両は、回生制動システムRを備えている。回生制動システムRは、減速時及び制動時等に車輪の回転によって発電機(電動モータ)を駆動することにより、運動エネルギーを電力として回収する。回生制動システムRは、CAN信号ラインに接続されており、CAN通信インタフェイス53を介してマスタ圧制御ユニット4に接続されている。
なお、通信信号は、CANに限らず、他の規格の車内通信システムであってもよい。
【0031】
次に、マスタ圧制御ユニット4によるマスタ圧制御機構3の制御について説明する。
操作量検出装置34によって検出したブレーキペダル19の操作量(変位量、踏力等)に基づき、電動モータ22を作動させてプライマリピストン8の位置を制御して液圧を発生させる。このとき、入力ピストン17に作用する液圧による反力が入力ロッド18を介してブレーキペダル19にフィードバックされる。そして、プライマリピストン8と入力ピストン17との受圧面積比及び相対変位によって、ブレーキペダル19の操作量と発生液圧との比である倍力比を調整することができる。
【0032】
例えば、入力ピストン17の変位に対して、プライマリピストン8を追従させ、これらの相対変位が0になるように相対変位制御することにより、入力ピストン17とプライマリピストン8との受圧面積比によって決まる一定の倍力比を得ることができる。また、入力ピストン17の変位に対して、比例ゲインを乗じて、入力ピストン17とプライマリピストン8との相対変位を変化させることにより、倍力比を変化させることができる。
【0033】
これにより、ブレーキペダル19の操作量、操作速度(操作量の変化率)等から緊急ブレーキの必要性を検知し、倍力比を増大させて迅速に必要な制動力(液圧)を得る、いわゆるブレーキアシスト制御を実行することができる。さらに、回生制動システムRからのCAN信号に基づき、回生制動時に、回生制動分を差引いた液圧を発生させるように倍力比を調整して、回生制動分と液圧による制動力との合計で所望の制動力が得られるようにする回生協調制御を実行することができる。また、ブレーキペダル19の操作量(入力ピストン17の変位量)にかかわらず、電動モータ22を作動させてプライマリピストン8を移動させることにより、制動力を発生させる自動ブレーキ制御を実行することも可能である。これにより、各種センサ手段によって検出した車両状態に基づき、自動的に制動力を調整し、適宜、エンジン制御、ステアリング制御等の他の車両制御と組合わせることにより、マスタ圧制御ユニット4を用いて前述の車両追従制御、車線逸脱回避制御、障害物回避制御等の車両の運転制御を実行することもできる。
【0034】
次に、マスタ圧制御ユニット4の制御の切換について説明する。
マスタ圧制御ユニット4によるマスタ圧制御機構3の制御構成を図3に示す。図3に示すように、マスタ圧制御ユニット4は、制御入力Saに対して、プライマリピストン8と入力ピストン17との目標相対変位ΔXTを決定する相対変位制御手段46Aと、制御入力Sbに対して、マスタシリンダ2で発生する目標液圧PTを決定する液圧制御手段46Bと、これらの目標相対変位ΔXT又は目標液圧PTのいずれに基づいてマスタ圧制御機構3の電動モータ22の作動を制御するかを決定し、その制御を実行する制御切換手段46Cとを備えている。
【0035】
相対変位制御手段46Aは、制御入力Saとして、例えば、ブレーキ操作量検出装置34によって検出される入力ピストン17に連結された入力ロッド18(すなわちブレーキペダル19)の変位量(ストローク)、ブレーキペダル19の操作力(踏力)、マスタシリンダ2の発生液圧、又は、これらの検出値から演算によって得られる推定踏力FC等を用いることができ、このとき、これらの値は、単独又は組合わせて用いてもよい。目標相対変位ΔXTは、制御入力Saに対して、予めテーブルによって設定し、あるいは、所定の演算によって求めてもよい。
【0036】
液圧制御手段46Bは、制御入力Sbとして、上述の制御入力Saと同様の情報を用いることができ、制御入力Saと同一あるいは異なるものとすることもできる。目標液圧PTは、制御入力Sbに対して、予めテーブルによって設定し、あるいは、所定の演算によって求めてもよい。
【0037】
相対変位制御手段46A及び液圧制御手段46Bから得た目標制御量である目標相対変位ΔXT及び目標液圧PTは、制御切換手段46Cによって所定の判定条件に従っていずれかが選択される。このとき、制御切換手段46Cは、目標相対変位ΔXT及び目標液圧PTに対して、判定条件に応じて制限をかける等の処理を行なってもよい。
【0038】
制御切換手段46Cによって選択された目標相対変位ΔXT又は目標液圧PTに基づいて、三相モータ制御回路47によって制御駆動信号を出力して、目標相対変位ΔXT又は目標液圧PTが得られるように倍力制御装置3の電動モータ22の作動を制御する。このとき、例えば、目標相対変位ΔXT及び目標液圧PTに対して、対応するプライマリピストン8の目標位置を決定し、電動モータ22の作動を制御してプライマリピストン8を目標位置へ移動させることにより、目標相対変位ΔXT又は目標液圧PTを得ることができる。
【0039】
マスタシリンダ2及びマスタ圧制御機構3における圧力及び力の平衡について図4を参照して説明する。
図4において、次の(1)式が成り立つ。
F=−KΔX+Ai・P+N …(1)
ここで、
F:ブレーキペダル19の操作力(踏力)
K:中立バネ20、21の合成バネ定数
ΔX:プライマリピストン8と入力ピストン17との相対変位
Ai:プライマリ室10に対する入力ピストン17の受圧面積
P:マスタシリンダ2(プライマリ室10)の液圧
N:戻しバネ15、16及び戻しバネ30によるセット荷重
である。
(1)式より、相対変位ΔX及び液圧Pに基づいてブレーキペダル19の操作力F(推定踏力FC)を演算によって求めることができる。そして、このようにして求めた推定踏力FCを制御入力Sa、Sbとして用いることもできる(この場合、ブレーキ操作量検出装置34は踏力推定手段となる)。
【0040】
次に、相対変位制御手段46Aによる相対変位制御の一例について説明する。
本制御では、ブレーキペダル19の一定の操作量について、ブレーキペダル19を踏込んだ場合(入力ロッド18の進み方向)に対して、戻した(解放した)場合(入力ロッド18の戻り方向)の目標相対変位ΔXTを大きくする。これにより、ブレーキペダル19を戻し始めた際、目標相対変位ΔXTが大きくなり、また、戻し始めたブレーキペダル19を再度踏込んだ際、目標相対変位ΔXTが小さくなるので、入力ロッド18の移動に対して、プライマリピストン8の戻り始め及び進み始めに適度な遅れが生じて、マスタシリンダ2の液圧が緩やかに低下及び上昇して、ブレーキペダル19の操作フィーリングが向上する。
【0041】
ブレーキペダル19の変位方向でヒステリシスを有する相対変位制御を実行するための制御フローを図5に示す。図5を参照して、ステップS1で入力ロッド18の進み側の目標相対変位ΔXTを演算し、ステップS2で入力ロッド18の戻り側の目標相対変位ΔXTを演算し、ステップS3で入力ロッド18の移動方向が進み側か戻り側かを判定する。進み側と判定した場合、ステップS4で進み側目標相対変位ΔXTを目標相対変位ΔXTとして設定し、戻り側と判定した場合、ステップS5で戻り側目標相対変位ΔXTを目標相対変位ΔXTとして設定する。
【0042】
このとき、図6に示すように、入力ロッド18の変位すなわち操作量検出装置34の検出するブレーキペダル19の操作量に対して、操作量が大きいほど目標相対変位ΔXTを大きくし、更に、一定の操作量について、進み側の目標相対変位ΔXT(L1)に対して戻り側の目標相対変位ΔXT(L3)を大きくして、反時計回りのヒステリシスを設定する。そして、進み側目標相対変位ΔXT(L1)から戻り側目標相対変位ΔXT(L3)に移行する区間L2において、プライマリピストン8が移動しないように目標相対変位ΔXTを設定することにより、プライマリピストン8の移動によるプライマリ室10の液圧の過度の変動を抑制することができ、入力ピストン17を介してブレーキペダル19に伝達される液圧変動による振動を軽減してブレーキペダル19の踏力を解放する際の操作フィーリングが向上する。また、プライマリピストン8の移動頻度が少なくなるので、電動モータ22、ボールネジ機構23及びベルト減速機構24の作動頻度を少なくして、騒音の発生、電力の消費を低減すると共に、これらの耐久性を高めることができる。
【0043】
なお、進み側の目標相対変位ΔXT(L1)から戻り側の目標相対変位ΔXT(L3)に移行する区間L2及び戻り側の目標相対変位ΔXT(L3)から進み側の目標相対変位ΔXT(L1)に移行する区間L4において、目標相対変位ΔXTを急激に変化させると、ブレーキペダル19の操作方向に対して、マスタシリンダ2の液圧の増減の方向が一致しない状態が生じ得るので、このような状態が生じないように、これらの区間L2、L4における目標相対変位ΔXTの変化を緩やかに設定することが望ましい。
【0044】
また、相対変位制御手段46Aでは、制御入力Saとして、操作量検出装置34によって検出したブレーキペダル19すなわち入力ロッド18の変位、及び、マスタシリンダ2の液圧及びプライマリピストン8と入力ピストン17との相対変位ΔXから上述の(1)式に基づき計算によって求めたブレーキペダル19の推定踏力FCとを選択的に切換えて使用してもよい。
【0045】
次に、液圧制御手段46Bによる液圧制御について説明する。
本制御では、一定の操作量について、ブレーキペダル19を踏込んだ場合(入力ロッド18の進み方向)の進み側目標液圧PT1に対して、戻した場合(入力ロッドの戻り方向)の戻り側目標液圧PT2を大きくする。これにより、ブレーキペダル19を戻し始めた際、目標液圧PTが大きくなり、また、戻し始めたブレーキペダル19を再度踏込んだ際、目標液圧PTが小さくなるので、入力ロッド18の移動に対してプライマリピストン8の戻り始め及び進み始めに適度な遅れが生じて、マスタシリンダ2の液圧が緩やかに低下及び上昇して、ブレーキペダル19の操作フィーリングが向上する。このとき、進み側と戻し側とで目標液圧PTを切換える際、目標液圧PTを滑らかに変化させることにより、液圧の急変を抑制して、望ましくない制動力の急変を防止することができる。
【0046】
液圧制御を実行するための制御フローを図7に示す。図7を参照して、ステップS11で入力ロッド18の進み側の目標液圧PTを演算し、ステップS12で入力ロッド18の戻り側の目標液圧PTを演算し、ステップS13で入力ロッド18の移動方向が進み側か戻り側かを判定する。進み側と判定した場合、ステップS14で進み側目標液圧PT1を目標液圧PTとして設定し、戻り側と判定した場合、ステップS15で戻り側目標液圧PT2を目標液圧PTとして設定する。
【0047】
このとき、図8に示すように、入力ロッド18の変位すなわち操作量検出装置34の検出する操作量に対して、操作量が大きいほど目標液圧PTを大きくし、更に、一定の操作量について、進み側目標液圧PT1(区間L1)に対して戻り側目標液圧PT2(区間L3)を大きくして、反時計回りのヒステリシスを設定する。そして、進み側目標液圧PT1(区間L1)から戻り側目標液圧PT2(区間L3)に移行する区間L2、及び、戻り側目標液圧PT2(区間L3)から進み側目標液圧PT1(区間L1)に移行する区間L4において、目標液圧PTを一定にすることにより、プライマリピストン8の移動量を最小限に抑えることができ、プライマリピストン8の移動によるプライマリ室10から入力ロッド18への反力の影響を小さくすることができる。また、これにより、プライマリピストン8の移動頻度が少なくなるので、電動モータ22、ボールネジ機構23及び減速機構24の作動頻度を少なくして、騒音の発生、電力の消費を低減すると共に、これらの耐久性を高めることができる。
【0048】
制御切換手段46Cでは、回生制動システムの作動、通常の制動力制御、ホイール圧制御装置による液圧制御、坂道発進補助(HSA)の作動及び停車中か否かを判定して、相対変位制御手段46Aによる目標相対変位ΔXT、又は、液圧制御手段46Bによる目標液圧PTを用いた制御を適宜切換える。
【0049】
この場合の制御切換手段46Cによる切換制御フローを図9に示す。図9を参照して、ステップS21で、相対変位制御手段46Aによってブレーキペダル19の操作量に基づき目標相対変位を決定し、ステップS22で、液圧制御手段46Bによって目標液圧PTを決定する。ステップS23で、回生制動システムRが回生制動を実行中か否かを判定する。回生制動を実行中である場合、ステップS29で目標液圧PTを用いた制御を行ない、回生制動を実行中でない場合、ステップS4へ進む。
【0050】
回生協調時には、マスタシリンダ2で発生すべき液圧は、運転者の制動要求に対して、液圧ブレーキのみによって制動する場合に必要な液圧から回生制動分に相当する液圧を減じたものとなる。したがって、回生制動による制動分が液圧又は液圧に比例する量として与えられたとき、目標液圧PTに基づいて電動モータ22の作動を制御することにより、目標相対変位ΔXTに基づく制御に比して、演算を簡素化することができ、また、制御精度を高めることができる。
【0051】
ステップS24で、通常の制動力制御中であるか否かを判定し、通常の制動力制御中でないと判定された場合、ステップS29で目標液圧PTを用いて制御を行ない、通常の制動力制御中であると判定された場合、ステップS25へ進む。ここで、通常の制動力制御とは、運転者のブレーキペダル19の操作量(制動力要求)に対して、マスタシリンダ2で発生した液圧をそのままホイールシリンダに伝達する場合(制動力配分制御を含む)であるが、ABS作動時、トラクションコントロール作動時、車両安定性制御の実行等、ブレーキペダル19の操作量以外の制御入力に基づくホイール圧制御装置6によるホイール圧制御機構5の制御が介入する場合、あるいは、坂道発進補助(HSA)制御、停車中の制御を実行する場合については、以下のステップS25〜S27によって判定を行なう。
【0052】
ステップS25で、ホイール液圧制御装置6によるホイール液圧制御機構5の制御実行中であるか否かを判断する。制御実行中であると判定された場合、ステップS29で目標液圧PTを用いて制御を行なう。ホイール液圧制御機構5が作動すると、供給弁35A、35B及び加圧弁41A、41Bの開閉、並びに、ポンプ39A、39Bの作動、停止により、マスタシリンダ2の下流側の液圧回路の液圧に対する剛性が変化する場合があり、目標相対変位ΔXTを用いて制御を行なった場合、この液圧回路の剛性の変化により、プライマリピストン8の位置が不安定になり、マスタシリンダ2の発生液圧が不安定になる虞がある。これに対して、目標液圧PTを用いて制御した場合、マスタシリンダ2の液圧は、液圧回路の剛性の変化に比較的影響されにくいので、マスタシリンダ2の発生液圧が不安定になりにくい。
【0053】
ステップS25でホイール液圧制御装置6によるホイール液圧制御機構5の制御実行中でないと判定された場合、ステップS26へ進む。ステップS6で、坂道発進補助(HSA)の作動中か否かを判定する。HSA作動中であると判定した場合、ステップS29で目標液圧PTを用いた制御を行なう。HSA作動中でないと判定した場合、ステップS27へ進む。ステップS27で、停車中か否かを判定する。停車中であると判定した場合、ステップS29で目標液圧PTを用いた制御を行ない、停車中でないと判定した場合、ステップS28で相対変位制御手段46Aによる目標相対変位ΔXTを用いた制御を行なう。
【0054】
このようにして、相対変位制御と液圧制御の切換を行なう。なお、図9に示す制御フローにおいて、ステップS23〜S27は、判定の順序を適宜変更してもよく、また、全ての判定を用いることなく、必要な判定のみを適宜選択して用いるようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、目標相対変位ΔXTを用いた制御と目標液圧PTを用いた制御とを一定の条件に従って切換える場合について説明しているが、これらを切換える条件は、そのシステムの個々の特性に応じて設定すればよく、いずれに切換えるかは任意に設定することができる。
【0056】
次に、上述のアンチロックブレーキ制御が実行された場合について、更に詳細に説明する。アンチロックブレーキ制御の実行により、ホイール圧制御機構5が各車輪Wa〜Wdのロック状態に応じて、減圧モード、加圧モード及び保持モードを実行すると、ポンプ39A、39Bの作動により、マスタシリンダ2に対してブレーキ液の還流、吸出しが頻繁に行なわれ、還流時には、マスタシリンダ2の液圧が相当の昇圧されることになる。
【0057】
このとき、相対位置制御を行なうと、マスタシリンダ2の液圧の変動に対して、プライマリピストン8の位置は、入力ピストン17の位置に応じて一定に保持されるので、マスタシリンダ2の液圧剛性が高くなる。このため、マスタシリンダ2の液圧の変動が入力ピストン17を介してブレーキペダル19に直接伝達されることになり、ブレーキペダル19の操作フィーリングが悪化する。また、マスタシリンダ2の液圧の過度の上昇により、プライマリピストン8のピストンシールが損傷する虞がある。
【0058】
これに対して、制御切換手段46Cは、アンチロックブレーキ制御が実行された場合には、通常の相対変位制御手段46Aによる相対変位制御から液圧制御手段46Bによる液圧制御に切換える。そして、液圧センサ45A、45Bによって検出したマスタシリンダ2の液圧に基づき、電動モータ22の作動をフィードバック制御してプライマリピストン8の位置を調整することにより、マスタシリンダ2の液圧の上昇に対してプライマリピストン8が後退して液圧の変動を吸収して、過度の液圧の上昇を防止する。その結果、ブレーキペダル19の反力の変動を抑制してブレーキペダル19の操作フィーリングを改善することができる。また、マスタシリンダ2の液圧の過度の上を抑制して、プライマリピストン8のピストンシールの損傷を防止することができる。
【0059】
マスタ圧制御ユニット4は、液圧センサ45A、45Bの異常、CAN通信システムの異常を監視し、これらの異常により、液圧センサ45A、45Bからのマスタシリンダ2の液圧情報が得られない場合、又は、CAN通信システムを介してホイール圧制御ユニット6からのホール圧制御機構5の作動情報が得られないため、液圧制御への切換ができない場合には、所定の電流制限制御を実行する。
【0060】
ここで、液圧制御への切換ができない場合には、上述の液圧センサ45A、45Bの異常及びCAN通信システム異常のほか、ブレーキペダル19が踏込まれた状態でブレーキシステムが起動したため(例えば、ブレーキペダル19が踏込まれた状態でのイグニッションスイッチオン、あるいは、ブレーキペダル19が踏込まれたことをブレーキスイッチ19Aで検知してブレーキシステムが起動した場合)、液圧センサ45A、45B、あるいは、ブレーキ操作量検出装置34(ストローク検出装置)、回転角検出センサ25のゼロ点学習が完了しない状態を含む。
【0061】
電流制限制御では、上述の相対位置制御を実行すると共に、電動モータ22に供給する電流の最大値を所定の制限電流値に制限する。このように電動モータ22に供給する電流の最大値を制限することにより、電動モータ22の最大出力(すなわち、プライマリピストン8の最大推力)が制限されるので、マスタシリンダ2の液圧剛性が低くなり、アンチロック制御の実行中のホイール圧制御機構5によるブレーキ液の還流及び吸込みに対して、プライマリピストン8が移動してマスタシリンダ2の液圧変動を吸収することができる。その結果、マスタシリンダ2の液圧変動を抑制して、ブレーキペダル19の操作フィーリングを改善することができる。また、マスタシリンダ2の液圧の過度の上昇を防止して、プライマリピストン8のピストンシールの損傷を防止することができる。
【0062】
ここで、電動モータ22に供給する電流の実効値とマスタシリンダ2で発生するブレーキ液圧との関係について図10を参照して説明する。ボールネジ機構23の逆作動時(直動から回転への変換時)の変換効率の低下及びベルト減速機構24等の各部の摩擦抵抗により、電動モータ22に供給する電流に対してマスタシリンダ2の液圧は、図10に示すようにヒステリシスを有している。すなわち、一定の液圧を発生させるために必要な電流に対して、その液圧を保持するための電流は小さくなり、その差は、電流が大きい(液圧が高い)ほど大きい。図10を参照して、例えば、電動モータ22に電流I1を供給したとき、マスタシリンダ2で液圧P1が発生する場合、この液圧P1は、電流I1よりも小さい電流I2(<I1)によって保持することができ、電流I2の供給によりマスタシリンダ2で発生する液圧P2は、電流I2よりも小さい電流I3(<I2)によって保持することができる。
【0063】
そこで、電流制限制御においては、制限電流値を設定する際には、通常の作動状態おいて最大の電流I1を供給して電動モータ22でプライマリピストン8を推進することによってマスタシリンダ2で発生可能な最大の液圧P1を保持するために必要な電流I2を制限電流値として設定するとよい。これにより、アンチロックブレーキ制御中に、ホイール圧制御機構5からのブレーキ液の還流により、マスタシリンダ2が昇圧された場合でも、制限電流値I2によって保持できる液圧は、最大で液圧P1であるから、マスタシリンダ2の液圧が液圧P1を超えると、プライマリピストン8が後退するので、マスタシリンダ2の液圧が液圧P1を超えることはない。その結果、マスタシリンダ2の液圧の過度の上昇を確実に防止することができ、ブレーキペダルの操作フィーリングを改善すると共に、プライマリピストン8のピストンシールの損傷を防止することができる。
【0064】
次に、電流制限制御を実行するための制御フローについて、図11のフローチャートを参照して説明する。
図11を参照して、ステップS31で、マスタシリンダ2の液圧に基づいて電動モータ22の作動を制御する液圧制御への切換が可能か否かを判定する。具体的には、次の(1)〜(4)の事項について判定し、(1)〜(4)の全てが肯定されたか否かを判定する。
(1)液圧センサ45A、45Bが正常である。
(2)液圧センサ45A、45Bのゼロ点学習が完了している。
(3)ブレーキ操作量検出装置34(ストローク検出装置)、回転角検出センサ25を含む他のセンサのゼロ点学習が完了している。
(4)CAN通信システムが正常で、ABSの作動情報が得られ、液圧制御の切換が可能である。
そして、(1)〜(4)の全てが肯定される場合には、ステップS32へ進み、図9に示す通常のブレーキ制御のフローを実行する。また、(1)〜(4)のいずれかが否定された場合、ステップS33に進む。
【0065】
ステップS33では、電動モータ22に供給する電流の最大値を制限電流値に制限してステップS34に進む。ステップS34では、制御切換手段46Cによって、入力ピストン17のプライマリピストン8との相対変位を一定、図12に示すように、プライマリピストン8が待機位置にあるときに相当する相対変位量となるように制御する相対位置制御を実行して、ステップS35に進む。
【0066】
ステップS35では、ステップS31と同様、上述の(1)〜(4)の全てが肯定されるか否かを判定する。(1)〜(4)の全てが肯定された場合には、ステップS36に進み、(1)〜(4)のいずれかが否定された場合には、ステップS33に戻る。ステップS36では、ブレーキペダル19が解放されたか否かを判定し、解放された場合には、ステップS31に戻り、解放されていない場合には、ステップS33に戻る。
これにより、アンチロックブレーキ制御中に、液圧制御への切換が不可能になった場合でも、電流制限制御を実行することにより、ブレーキペダルの操作フィーリングの悪化を抑制すると共に、ピストンシールの損傷を防止することができる。
【0067】
本発明のマスタシリンダ側の作動情報とは、マスタシリンダの液圧、ブレーキペダルの操作量等、ホイール圧制御機構5より上流側の情報をいうもので、マスタシリンダに直接付けたセンサに限られるものではない。
また、前記ブレーキ装置側から作動情報とは、ホイール圧制御機構5の作動情報を含み、それより下流側(ホイールシリンダ側)の情報をいうものである。
【符号の説明】
【0068】
1 ブレーキ制御装置、2 マスタシリンダ、4 マスタ圧制御ユニット(コントローラ)、8 プライマリピストン(アシスト部材)、17 入力ピストン(入力部材)、19 ブレーキペダル、22 電動モータ、23 ボールネジ機構(回転−直動変換機構)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキ装置の作動を制御するブレーキ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のブレーキシステムにおいて、負圧アクチュエータや電動アクチュエータを用いて、運転者によるブレーキの操作力を補助する倍力制御及びブレーキアシスト制御を行ない、また、ポンプ、アキュムレータ、電磁切換弁等を用いて、路面状態及び走行状態等に応じて車輪毎に制動力を調整することにより、制動時の車輪のロックを防止するアンチロックブレーキ制御、アンダーステア、オーバーステアを抑制して操縦安定性を高める車両安定性制御等の種々な制御を行なうようにしたブレーキ制御装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、ブレーキペダルによって直接操作される入力ピストンと、ブレーキペダルの操作量に応じて作動する電動アクチュエータによって駆動されるアシスト部材とよってマスタシリンダ内に倍力されたブレーキ液圧を発生させ、この液圧をアンチロックブレーキ装置(以下、ABSともいう)の液圧回路を介してホイールシリンダに供給するブレーキ制御装置が記載されている。このブレーキ制御装置では、ABSの作動中には、液圧センサによって検出したマスタシリンダの液圧に基づき、電動アクチュエータの作動をフィードバック制御することにより、ABSの作動時のマスタシリンダの液圧変動によるブレーキペダルの踏力の変動を抑制して、ブレーキペダルの操作フィーリングを改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−248673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたブレーキ制御装置では、液圧センサの異常によって液圧情報が得られない場合、あるいは、車載ネットワークの通信異常によってABSの作動情報が得られない場合等のマスタシリンダの液圧に基づく電動アクチュエータのフィードバック制御が不可能な状況においては、ABSの作動によるマスタシリンダの液圧変動に適切に対応することができず、ブレーキペダルの操作フィーリングの悪化が避けられない。
【0006】
そこで、本発明は、充分な制御情報が得られない状況においてもブレーキペダルの踏力変動を抑制して操作フィーリングを改善し得るブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係るブレーキ制御装置は、ブレーキペダルの操作により進退移動する入力部材と、該入力部材に対して相対移動可能に設けられたアシスト部材と、該アシスト部材の推進よってブレーキ液圧を発生してブレーキ装置に供給するマスタシリンダと、電動モータと、該電動モータの回転運動を直線運動に変換して前記アシスト部材を推進する回転−直動変換機構と、前記マスタシリンダ側又は前記ブレーキ装置側からの作動情報を含む制御情報に基づき、前記電動モータに電流を供給して該電動モータの作動を制御するコントローラとを備えたブレーキ制御装置において、前記コントローラは、前記マスタシリンダ側又は前記ブレーキ装置側から作動情報が得られなくなったとき、前記電動モータに供給する電流の最大値を所定の制限電流値に制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るブレーキ制御装置によれば、充分な制御情報が得られない状況においてもブレーキペダルの踏力変動を抑制して操作フィーリングを改善することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るブレーキ制御装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示すブレーキ制御装置のマスタ圧制御装置の概略構成を示す回路図である。
【図3】図2のマスタ圧制御装置による制御を示すブロック図である。
【図4】図1に示すブレーキ制御装置のマスタ圧制御機構における力の平衡を示す説明図である。
【図5】ブレーキペダルの変位方向によってヒステリシスを有する場合の相対変位制御を示すフローチャートである。
【図6】相対変位制御手段におけるブレーキペダルの操作量と目標相対変位との関係を示すグラフ図である。
【図7】ブレーキペダルの変位方向によってヒステリシスを有する場合の液圧制御を示すフローチャートである。
【図8】液圧制御手段におけるブレーキペダルの操作量と目標液圧との関係を示すグラフ図である。
【図9】通常のブレーキ制御において、相対変位制御と液圧制御との切換を実行するためのフローチャートである。
【図10】電動モータへの供給電流と液圧との関係を示すグラフ図である。
【図11】図1に示すブレーキ制御装置において、充分な制御情報が得られない場合の制御を実行するためのフローチャートである。
【図12】図1に示すブレーキ制御装置において、充分な制御情報が得られない場合の相対変位制御の状態を表すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態に係るブレーキ制御装置の概略構成を図1に示す。図1に示すように、本実施形態に係るブレーキ制御装置1は、自動車の制動装置に適用して、左前輪Wa、右後輪Wb、右前輪Wc、左後輪Wdの4輪の制動力を制御するためのものである。ブレーキ制御装置1は、マスタシリンダ2と、マスタシリンダ2に一体に組込まれたマスタ圧制御機構3と、マスタ圧制御機構3の作動を制御するマスタ圧制御ユニット4と、各車輪Wa、Wb、Wc、Wdに装着されたブレーキ装置Ba、Bb、Bc、Bdのホイールシリンダに供給する液圧を制御する液圧制御手段であるホイール圧制御機構5と、このホイール圧制御機構5の作動を制御するホイール圧制御ユニット6とを備えている。
【0011】
マスタシリンダ2は、タンデム型マスタシリンダであって、ブレーキ液が充填されたシリンダ7内の開口側にアシスト部材であるプライマリピストン8が挿入され、底部側にセカンダリピストン9が挿入され、プライマリピストン8とセカンダリピストン9との間にプライマリ室10を形成し、セカンダリピストン9とシリンダ7の底部との間にセカンダリ室11を形成している。そして、プライマリピストン8の前進により、プライマリ室10内のブレーキ液を加圧すると共に、セカンダリピストン9を前進させてセカンダリ室11内のブレーキ液を加圧して、プライマリポート12及びセカンダリポート13からホイール圧制御機構5を介してブレーキ装置Ba、Bb、Bc、Bdのホイールシリンダにブレーキ液を供給する。プライマリ室10及びセカンダリ室11は、それぞれシリンダ7の側壁に設けられたリザーバポート14A、14Bを介してリザーバ14に接続されている。リザーバポート14は、プライマリピストン8及びセカンダリピストン9が後退位置にあるとき開いて、プライマリ10室及びセカンダリ室11をリザーバ14に連通させて適宜ブレーキ液を補充し、プライマリピストン8及びセカンダリピストン9が前進すると閉じて、プライマリ10室及びセカンダリ室11の加圧を可能にする。プライマリピストン8及セカンダリピストン9は、戻しバネ15、16によって後退置に付勢されている。
【0012】
このように、プライマリピストン8及びセカンダリピストン9の2つのピストンによってプライマリポート12及びセカンダリポート13から2系統の液圧回路にブレーキ液を供給することにより、万一、一方の液圧回路が失陥した場合でも、他方の液圧回路によって液圧を供給することでき、制動力を確保することができる。
【0013】
プライマリピストン8の中心部には、入力部材である入力ピストン17が摺動可能かつ液密的に貫通され、入力ピストン17の先端部がプライマリ室10内に挿入されている。入力ピストン17の後端部には、入力ロッド18が連結され、入力ロッド18はマスタ圧制御機構3を貫通して外部へ延ばされ、その端部にブレーキペダル19が連結されている。プライマリピストン8と入力ピストン17との間には、一対の中立バネ20、21が介装され、プライマリピストン8及び入力ピストン17は、中立バネ20、21のバネ力によって中立位置に弾性的に保持され、これらの軸方向の相対変位に対して中立バネ20、21のバネ力が作用するようになっている。
【0014】
マスタ圧制御機構3は、プライマリピストン8を駆動するアクチュエータである電動モータ22と、プライマリピストン8と電動モータ22との間に介装された回転−直動変換機構であるボールネジ機構23及び減速機構であるベルト減速機構24とを備えている。電動モータ22は、その回転位置を検出する回転角検出センサ25を備え、マスタ圧制御装置4からの指令によって作動して、所望の回転位置が得られるようになっている。電動モータ22は、例えば公知のDCモータ、DCブラシレスモータ、ACモータ等とすることができるが、制御性、静粛性、耐久性等の観点から本実施形態では三相DCブラシレスモータを採用している。
【0015】
ボールネジ機構23は、入力ロッド18が挿入された中空の直動部材26と、直動部材26が挿入された円筒状の回転部材27と、これらの間に形成されたネジ溝に装填された複数の転動体であるボール28(鋼球)とを備え、直動部材26の前端部がプライマリピストン8の後端部に当接し、回転部材27が軸受29によってシリンダ7に回転可能に支持されている。そして、電動モータ22によってベルト減速機構24を介して回転部材27を回転させることにより、ネジ溝内をボール28が転動し、直動部材26が直線運動してプライマリピストン8を移動させるようになっている。直動部材26は、戻しバネ30によって後退位置側に付勢されている。
【0016】
なお、回転−直動変換機構は、電動モータ22(すなわちベルト減速機構24)の回転運動を直線運動に変換してプライマリピストン8に伝達するものであれば、ラックアンドピニオン機構等の他の機構を用いることができるが、本実施形態では、遊びの少なさ、効率、耐久性等の観点から、ボールネジ機構23を採用している。ボールネジ機構23は、バックドライバビリティを有しており、直動部材26の直線運動によって回転部材27を回転させることができる。また、直動部材26は、プライマリピストン8に後方から当接し、プライマリピストン8が直動部材26から離れて単独で前進できるようになっている。これにより、万一、電動モータ22が断線等によって作動不能になった場合、直動部材26が戻しバネ30のバネ力によって後退位置に戻され、このとき、プライマリピストン8は単独で移動できるので、ブレーキの引き摺りを防止することができ、また、ブレーキペダル19によって入力ピストン17を操作し、さらに、入力ロッド18を介してプライマリピストン8を操作することにより、液圧を発生させることができる。
【0017】
ベルト減速機構24は、電動モータ22の出力軸に取付けられた駆動プーリ31と、ボールネジ機構23の回転部材27の周囲に取付けられた従動プーリ32と、これらの間に巻装されたベルト33とを含み、電動モータ22の出力軸の回転を所定の減速比で減速してボールネジ機構23に伝達するものである。ベルト減速機構24に、歯車減速機構等の他の減速機構を組み合わせてもよい。ベルト減速機構24の代りに、公知の歯車減速機構、チェーン減速機構、差動減速機構等を用いることができるが、また、電動モータ22によって充分大きなトルクが得られる場合には、減速機構を省略して、電動モータ22によって回転−直動変換機構を直接駆動するようにしてもよい。
【0018】
入力ロッド18には、ブレーキ操作量検出装置34が連結されている。ブレーキ操作量検出装置34は、少なくとも入力ロッド18の位置又は変位量(ストローク)を検出できるもの(ストローク検出手段)であり、入力ロッド18の変位センサを含む複数の位置センサと、運転者によるブレーキペダル19の踏力を検出する力センサとを含むものであってもよい。また、ブレーキペダル19には、その操作を検知するブレーキスイッチ19Aが設けられている。ブレーキスイッチ19Aは、イグニッションスイッチのオン、オフにかかわらず、ブレーキペダル19の操作を検知して、マスタ圧制御ユニット4にブレーキ操作信号を供給する。
【0019】
ホイール圧制御機構5は、マスタシリンダ2のプライマリポート12からの液圧を左前輪Wa及び右後輪Wbのブレーキ装置Ba、Bbに供給するための第1液圧回路5A(図1のホイール圧制御機構5の中央より右側分部)と、セカンダリポート13からの液圧を右前輪Wc及び左後輪Wdのブレーキ装置Bc、Bdに供給するための第2液圧回路5B(図1のホイール圧制御機構5の中央より左側分部)とからなる2系統の液圧回路を備えている。本実施形態では、ブレーキ装置Ba〜Bdは、液圧をホイールシリンダに供給してピストンを前進させ、ブレーキパッドを車輪と共に回転するディスクロータに押圧して制動力を発生させる液圧式ディスクブレーキとしているが、公知のドラムブレーキ等の他の液圧式ブレーキでもよい。
【0020】
第1液圧回路5Aと第2液圧回路5Bとは同様の構成であり、また、各車輪Wa〜Wdのブレーキ装置Ba〜Bdに接続された液圧回路の構成は同様の構成であり、以下の説明において参照符号の添え字A及B並びにa乃至dは、それぞれ、第1液圧回路5A及び第2液圧回路5B、並びに、各車輪Wa乃至Wdに対応することを示している。
【0021】
ホイール圧制御機構5には、マスタシリンダ2から各車輪Wa〜Wdのブレーキ装置Ba〜Bdのホイールシリンダへの液圧の供給を制御する電磁開閉弁である供給弁35A、35Bと、ブレーキ装置Ba〜Bdへの液圧の供給を制御する電磁開閉弁である増圧弁36a〜36dと、ブレーキ装置Ba〜Bdから液圧を解放するためのリザーバ37A、37Bと、ブレーキ装置Ba〜Bdからリザーバ37A、37Bへの液圧の解放を制御する電磁弁開閉弁である減圧弁38a〜38dと、ブレーキ装置Ba〜Bdに液圧を供給するためポンプ39A、39Bと、ポンプ39A、39Bを駆動するポンプモータ40と、マスタシリンダ2からポンプ39A、39Bの吸込み側への液圧の供給を制御する電磁開閉弁である加圧弁41A、41Bと、ポンプ39A、39Bの下流側から上流側への逆流を防止するための逆止弁42A、42B、43A、43B、44A、44Bと、マスタシリンダ2のプライマリポート12及びセカンダリポート13の液圧を検出する液圧センサ45A、45Bとを備えている。
【0022】
そして、ホイール圧制御ユニット6によって供給弁35A、35B、増圧弁36a〜36d、減圧弁38a〜38d、加圧弁41A、41B及びポンプモータ40の作動を制御する。このとき、供給弁35A、35B及び増圧弁36a〜36dを開き、減圧弁38a〜38d、加圧弁41A、41Bを閉じることにより、マスタシリンダ2から各車輪Wa〜Wdのブレーキ装置Ba〜Bdに液圧を供給する。減圧弁38a〜38dを開き、供給弁35A、35B、増圧弁36a〜36d及び加圧弁41A、41Bを閉じることにより、ブレーキ装置Ba〜Bdの液圧をリザーバ37A、37Bに解放して減圧する。増圧弁36a〜36d及び減圧弁38a〜38dを閉じることにより、ブレーキ装置Ba〜Bdの液圧を保持する。増圧弁36a〜36dを開き、供給弁35A、35B、減圧弁38a〜38d及び加圧弁41A、41Bを閉じて、ポンプモータ40を作動することにより、マスタシリンダ2の液圧にかかわらず、ブレーキ装置Ba〜Bdの液圧を増圧する。また、加圧弁41A、41B及び増圧弁36a〜36dを開き、減圧弁38a〜38d及び供給弁35A、35Bを閉じて、ポンプモータ40を作動することにより、マスタシリンダ2からの液圧をポンプ42A、42Bによって更に加圧してブレーキ装置Ba〜Bdに供給する。
【0023】
これにより、各種ブレーキ制御を実行することができる。例えば、制動時に接地荷重等に応じて各車輪に適切に制動力を配分する制動力配分制御、制動時に各車輪の制動力を自動的に調整して車輪のロックを防止するアンチロックブレーキ制御、走行中の車輪の横滑りを検知して各車輪に適宜自動的に制動力を付与することにより、アンダーステア及びオーバーステアを抑制して車両の挙動を安定させる車両安定性制御、坂道(特に上り坂)において制動状態を保持して発進を補助する坂道発進補助(HSA)制御、発進時等において車輪の空転を防止するトラクション制御、先行車両に対して一定の車間を保持する車両追従制御、走行車線を保持する車線逸脱回避制御、障害物との衝突を回避する障害物回避制御等を実行することができる。
【0024】
なお、ポンプ39A、39Bとしては、例えばプランジャポンプ、トロコイドポンプ、ギヤポンプ等の公知の液圧ポンプを用いることができるが、車載性、静粛性、ポンプ効率等を考慮するとギヤポンプとすることが望ましい。ポンプモータ40としては、例えばDCモータ、DCブラシレスモータ、ACモータ等の公知のモータを用いることができるが、制御性、静粛性、耐久性、車載性等の観点からDCブラシレスモータが望ましい。
【0025】
また、ホイール圧制御機構5の電磁開閉弁の特性は、使用態様に応じて適宜設定することができるが、供給弁35A、35B及び増圧弁36a〜36dを常開弁とし、減圧弁38a〜38d及び加圧弁41A、41Bを常閉弁とすることにより、ホイール圧制御ユニット6からの制御信号がない場合に、マスタシリンダ12からブレーキ装置Ba〜Bdに液圧を供給することができるので、フェイルセーフ及び制御効率の観点から、このような構成とすることが望ましい。
【0026】
次に、マスタ圧制御ユニット4について説明する。マスタ圧制御ユニット4の回路構成の一例を図2に示す。
図2に示すように、マスタ圧制御ユニット4は、中央処理ユニット(CPU)46と、電動モータ22(三相DCブラシレスモータ)に駆動電流を出力する三相モータ駆動回路47と、マスタ圧制御機構3の回転角検出センサ25、変位センサを含むペダル操作量検出装置34、温度センサ48(図2にのみ示す)、並びに、マスタシリンダ2のプライマリ室10及びセカンダリ室11の圧力を検出する液圧センサ45A、45Bからの各種検出信号を中央処理ユニット46に受入れるための回転角検出センサインタフェイス49、温度センサインタフェイス50、変位センサインタフェイス51、51及び液圧センサインタフェイス52と、ホイール圧制御ユニット6を含む車載器機からのCAN信号を受入れるためのCAN通信インタフェイス53と、中央処理ユニット46(CPU)が処理を実行するための各種情報を格納した記憶装置54(EEPROM)と、中央処理ユニット46に安定電力を供給する第1及び第2電源回路55、56と、中央処理ユニット46並びに第1及び第2電源ユニット55、56の異常を監視する監視用制御回路57と、フェイルセーフリレー58及びECU電源リレー59と、フィルタ回路60とを備えている。
【0027】
中央処理ユニット46は、回転角検出センサ25、操作量検出装置34、温度センサ48及び液圧センサ45A、45B等からの各種検出信号、ホイール圧制御ユニット6を含む各種車載器機等からのCAN信号による各種情報、並びに、記憶装置54(EEPROM)の記憶情報等に基づき、これらを所定の論理規則によって処理して、三相モータ駆動回路47に指令信号を出力して電動モータ22の作動を制御する。
【0028】
車載の電源ライン61からECU電源リレー59を介して第1及び第2電源回路55、56に電力を供給する。このとき、ECU電源リレー59は、CAN通信インタフェイス53によるCAN信号の受信、又は、イグニッションスイッチ、ブレーキスイッチ、ドアスイッチ等からの所定の起動信号W/Uの受信のいずれかを検知することにより、第1及び第2電源回路55、56に電力を供給する。また、電源ライン61からフィルタ回路60及びフェイルセーフリレー58を介して三相モータ駆動回路47に電力を供給する。このとき、フィルタ回路60によって三相モータ駆動回路47に供給される電力のノイズを除去する。
【0029】
三相モータ駆動回路47の三相出力の各相は、相電流モニタ回路47A及び相電圧モニタ回路47Bによって監視されている。中央処理ユニット46は、これらの監視値及び記憶装置54に記憶された故障情報等に基づき、マスタ圧制御ユニット4の故障診断を実行し、故障ありと判断したとき、故障信号を監視用制御回路57に出力する。監視用制御回路57は、中央処理ユニット46からの故障信号、第1及び第2電源回路55、56の電圧等の各種作動情報に基づき、異常時には、フェイルセーフリレー58を作動させて三相モータ駆動回路47への電力の供給を遮断する。
【0030】
ブレーキ制御装置1が搭載された車両は、回生制動システムRを備えている。回生制動システムRは、減速時及び制動時等に車輪の回転によって発電機(電動モータ)を駆動することにより、運動エネルギーを電力として回収する。回生制動システムRは、CAN信号ラインに接続されており、CAN通信インタフェイス53を介してマスタ圧制御ユニット4に接続されている。
なお、通信信号は、CANに限らず、他の規格の車内通信システムであってもよい。
【0031】
次に、マスタ圧制御ユニット4によるマスタ圧制御機構3の制御について説明する。
操作量検出装置34によって検出したブレーキペダル19の操作量(変位量、踏力等)に基づき、電動モータ22を作動させてプライマリピストン8の位置を制御して液圧を発生させる。このとき、入力ピストン17に作用する液圧による反力が入力ロッド18を介してブレーキペダル19にフィードバックされる。そして、プライマリピストン8と入力ピストン17との受圧面積比及び相対変位によって、ブレーキペダル19の操作量と発生液圧との比である倍力比を調整することができる。
【0032】
例えば、入力ピストン17の変位に対して、プライマリピストン8を追従させ、これらの相対変位が0になるように相対変位制御することにより、入力ピストン17とプライマリピストン8との受圧面積比によって決まる一定の倍力比を得ることができる。また、入力ピストン17の変位に対して、比例ゲインを乗じて、入力ピストン17とプライマリピストン8との相対変位を変化させることにより、倍力比を変化させることができる。
【0033】
これにより、ブレーキペダル19の操作量、操作速度(操作量の変化率)等から緊急ブレーキの必要性を検知し、倍力比を増大させて迅速に必要な制動力(液圧)を得る、いわゆるブレーキアシスト制御を実行することができる。さらに、回生制動システムRからのCAN信号に基づき、回生制動時に、回生制動分を差引いた液圧を発生させるように倍力比を調整して、回生制動分と液圧による制動力との合計で所望の制動力が得られるようにする回生協調制御を実行することができる。また、ブレーキペダル19の操作量(入力ピストン17の変位量)にかかわらず、電動モータ22を作動させてプライマリピストン8を移動させることにより、制動力を発生させる自動ブレーキ制御を実行することも可能である。これにより、各種センサ手段によって検出した車両状態に基づき、自動的に制動力を調整し、適宜、エンジン制御、ステアリング制御等の他の車両制御と組合わせることにより、マスタ圧制御ユニット4を用いて前述の車両追従制御、車線逸脱回避制御、障害物回避制御等の車両の運転制御を実行することもできる。
【0034】
次に、マスタ圧制御ユニット4の制御の切換について説明する。
マスタ圧制御ユニット4によるマスタ圧制御機構3の制御構成を図3に示す。図3に示すように、マスタ圧制御ユニット4は、制御入力Saに対して、プライマリピストン8と入力ピストン17との目標相対変位ΔXTを決定する相対変位制御手段46Aと、制御入力Sbに対して、マスタシリンダ2で発生する目標液圧PTを決定する液圧制御手段46Bと、これらの目標相対変位ΔXT又は目標液圧PTのいずれに基づいてマスタ圧制御機構3の電動モータ22の作動を制御するかを決定し、その制御を実行する制御切換手段46Cとを備えている。
【0035】
相対変位制御手段46Aは、制御入力Saとして、例えば、ブレーキ操作量検出装置34によって検出される入力ピストン17に連結された入力ロッド18(すなわちブレーキペダル19)の変位量(ストローク)、ブレーキペダル19の操作力(踏力)、マスタシリンダ2の発生液圧、又は、これらの検出値から演算によって得られる推定踏力FC等を用いることができ、このとき、これらの値は、単独又は組合わせて用いてもよい。目標相対変位ΔXTは、制御入力Saに対して、予めテーブルによって設定し、あるいは、所定の演算によって求めてもよい。
【0036】
液圧制御手段46Bは、制御入力Sbとして、上述の制御入力Saと同様の情報を用いることができ、制御入力Saと同一あるいは異なるものとすることもできる。目標液圧PTは、制御入力Sbに対して、予めテーブルによって設定し、あるいは、所定の演算によって求めてもよい。
【0037】
相対変位制御手段46A及び液圧制御手段46Bから得た目標制御量である目標相対変位ΔXT及び目標液圧PTは、制御切換手段46Cによって所定の判定条件に従っていずれかが選択される。このとき、制御切換手段46Cは、目標相対変位ΔXT及び目標液圧PTに対して、判定条件に応じて制限をかける等の処理を行なってもよい。
【0038】
制御切換手段46Cによって選択された目標相対変位ΔXT又は目標液圧PTに基づいて、三相モータ制御回路47によって制御駆動信号を出力して、目標相対変位ΔXT又は目標液圧PTが得られるように倍力制御装置3の電動モータ22の作動を制御する。このとき、例えば、目標相対変位ΔXT及び目標液圧PTに対して、対応するプライマリピストン8の目標位置を決定し、電動モータ22の作動を制御してプライマリピストン8を目標位置へ移動させることにより、目標相対変位ΔXT又は目標液圧PTを得ることができる。
【0039】
マスタシリンダ2及びマスタ圧制御機構3における圧力及び力の平衡について図4を参照して説明する。
図4において、次の(1)式が成り立つ。
F=−KΔX+Ai・P+N …(1)
ここで、
F:ブレーキペダル19の操作力(踏力)
K:中立バネ20、21の合成バネ定数
ΔX:プライマリピストン8と入力ピストン17との相対変位
Ai:プライマリ室10に対する入力ピストン17の受圧面積
P:マスタシリンダ2(プライマリ室10)の液圧
N:戻しバネ15、16及び戻しバネ30によるセット荷重
である。
(1)式より、相対変位ΔX及び液圧Pに基づいてブレーキペダル19の操作力F(推定踏力FC)を演算によって求めることができる。そして、このようにして求めた推定踏力FCを制御入力Sa、Sbとして用いることもできる(この場合、ブレーキ操作量検出装置34は踏力推定手段となる)。
【0040】
次に、相対変位制御手段46Aによる相対変位制御の一例について説明する。
本制御では、ブレーキペダル19の一定の操作量について、ブレーキペダル19を踏込んだ場合(入力ロッド18の進み方向)に対して、戻した(解放した)場合(入力ロッド18の戻り方向)の目標相対変位ΔXTを大きくする。これにより、ブレーキペダル19を戻し始めた際、目標相対変位ΔXTが大きくなり、また、戻し始めたブレーキペダル19を再度踏込んだ際、目標相対変位ΔXTが小さくなるので、入力ロッド18の移動に対して、プライマリピストン8の戻り始め及び進み始めに適度な遅れが生じて、マスタシリンダ2の液圧が緩やかに低下及び上昇して、ブレーキペダル19の操作フィーリングが向上する。
【0041】
ブレーキペダル19の変位方向でヒステリシスを有する相対変位制御を実行するための制御フローを図5に示す。図5を参照して、ステップS1で入力ロッド18の進み側の目標相対変位ΔXTを演算し、ステップS2で入力ロッド18の戻り側の目標相対変位ΔXTを演算し、ステップS3で入力ロッド18の移動方向が進み側か戻り側かを判定する。進み側と判定した場合、ステップS4で進み側目標相対変位ΔXTを目標相対変位ΔXTとして設定し、戻り側と判定した場合、ステップS5で戻り側目標相対変位ΔXTを目標相対変位ΔXTとして設定する。
【0042】
このとき、図6に示すように、入力ロッド18の変位すなわち操作量検出装置34の検出するブレーキペダル19の操作量に対して、操作量が大きいほど目標相対変位ΔXTを大きくし、更に、一定の操作量について、進み側の目標相対変位ΔXT(L1)に対して戻り側の目標相対変位ΔXT(L3)を大きくして、反時計回りのヒステリシスを設定する。そして、進み側目標相対変位ΔXT(L1)から戻り側目標相対変位ΔXT(L3)に移行する区間L2において、プライマリピストン8が移動しないように目標相対変位ΔXTを設定することにより、プライマリピストン8の移動によるプライマリ室10の液圧の過度の変動を抑制することができ、入力ピストン17を介してブレーキペダル19に伝達される液圧変動による振動を軽減してブレーキペダル19の踏力を解放する際の操作フィーリングが向上する。また、プライマリピストン8の移動頻度が少なくなるので、電動モータ22、ボールネジ機構23及びベルト減速機構24の作動頻度を少なくして、騒音の発生、電力の消費を低減すると共に、これらの耐久性を高めることができる。
【0043】
なお、進み側の目標相対変位ΔXT(L1)から戻り側の目標相対変位ΔXT(L3)に移行する区間L2及び戻り側の目標相対変位ΔXT(L3)から進み側の目標相対変位ΔXT(L1)に移行する区間L4において、目標相対変位ΔXTを急激に変化させると、ブレーキペダル19の操作方向に対して、マスタシリンダ2の液圧の増減の方向が一致しない状態が生じ得るので、このような状態が生じないように、これらの区間L2、L4における目標相対変位ΔXTの変化を緩やかに設定することが望ましい。
【0044】
また、相対変位制御手段46Aでは、制御入力Saとして、操作量検出装置34によって検出したブレーキペダル19すなわち入力ロッド18の変位、及び、マスタシリンダ2の液圧及びプライマリピストン8と入力ピストン17との相対変位ΔXから上述の(1)式に基づき計算によって求めたブレーキペダル19の推定踏力FCとを選択的に切換えて使用してもよい。
【0045】
次に、液圧制御手段46Bによる液圧制御について説明する。
本制御では、一定の操作量について、ブレーキペダル19を踏込んだ場合(入力ロッド18の進み方向)の進み側目標液圧PT1に対して、戻した場合(入力ロッドの戻り方向)の戻り側目標液圧PT2を大きくする。これにより、ブレーキペダル19を戻し始めた際、目標液圧PTが大きくなり、また、戻し始めたブレーキペダル19を再度踏込んだ際、目標液圧PTが小さくなるので、入力ロッド18の移動に対してプライマリピストン8の戻り始め及び進み始めに適度な遅れが生じて、マスタシリンダ2の液圧が緩やかに低下及び上昇して、ブレーキペダル19の操作フィーリングが向上する。このとき、進み側と戻し側とで目標液圧PTを切換える際、目標液圧PTを滑らかに変化させることにより、液圧の急変を抑制して、望ましくない制動力の急変を防止することができる。
【0046】
液圧制御を実行するための制御フローを図7に示す。図7を参照して、ステップS11で入力ロッド18の進み側の目標液圧PTを演算し、ステップS12で入力ロッド18の戻り側の目標液圧PTを演算し、ステップS13で入力ロッド18の移動方向が進み側か戻り側かを判定する。進み側と判定した場合、ステップS14で進み側目標液圧PT1を目標液圧PTとして設定し、戻り側と判定した場合、ステップS15で戻り側目標液圧PT2を目標液圧PTとして設定する。
【0047】
このとき、図8に示すように、入力ロッド18の変位すなわち操作量検出装置34の検出する操作量に対して、操作量が大きいほど目標液圧PTを大きくし、更に、一定の操作量について、進み側目標液圧PT1(区間L1)に対して戻り側目標液圧PT2(区間L3)を大きくして、反時計回りのヒステリシスを設定する。そして、進み側目標液圧PT1(区間L1)から戻り側目標液圧PT2(区間L3)に移行する区間L2、及び、戻り側目標液圧PT2(区間L3)から進み側目標液圧PT1(区間L1)に移行する区間L4において、目標液圧PTを一定にすることにより、プライマリピストン8の移動量を最小限に抑えることができ、プライマリピストン8の移動によるプライマリ室10から入力ロッド18への反力の影響を小さくすることができる。また、これにより、プライマリピストン8の移動頻度が少なくなるので、電動モータ22、ボールネジ機構23及び減速機構24の作動頻度を少なくして、騒音の発生、電力の消費を低減すると共に、これらの耐久性を高めることができる。
【0048】
制御切換手段46Cでは、回生制動システムの作動、通常の制動力制御、ホイール圧制御装置による液圧制御、坂道発進補助(HSA)の作動及び停車中か否かを判定して、相対変位制御手段46Aによる目標相対変位ΔXT、又は、液圧制御手段46Bによる目標液圧PTを用いた制御を適宜切換える。
【0049】
この場合の制御切換手段46Cによる切換制御フローを図9に示す。図9を参照して、ステップS21で、相対変位制御手段46Aによってブレーキペダル19の操作量に基づき目標相対変位を決定し、ステップS22で、液圧制御手段46Bによって目標液圧PTを決定する。ステップS23で、回生制動システムRが回生制動を実行中か否かを判定する。回生制動を実行中である場合、ステップS29で目標液圧PTを用いた制御を行ない、回生制動を実行中でない場合、ステップS4へ進む。
【0050】
回生協調時には、マスタシリンダ2で発生すべき液圧は、運転者の制動要求に対して、液圧ブレーキのみによって制動する場合に必要な液圧から回生制動分に相当する液圧を減じたものとなる。したがって、回生制動による制動分が液圧又は液圧に比例する量として与えられたとき、目標液圧PTに基づいて電動モータ22の作動を制御することにより、目標相対変位ΔXTに基づく制御に比して、演算を簡素化することができ、また、制御精度を高めることができる。
【0051】
ステップS24で、通常の制動力制御中であるか否かを判定し、通常の制動力制御中でないと判定された場合、ステップS29で目標液圧PTを用いて制御を行ない、通常の制動力制御中であると判定された場合、ステップS25へ進む。ここで、通常の制動力制御とは、運転者のブレーキペダル19の操作量(制動力要求)に対して、マスタシリンダ2で発生した液圧をそのままホイールシリンダに伝達する場合(制動力配分制御を含む)であるが、ABS作動時、トラクションコントロール作動時、車両安定性制御の実行等、ブレーキペダル19の操作量以外の制御入力に基づくホイール圧制御装置6によるホイール圧制御機構5の制御が介入する場合、あるいは、坂道発進補助(HSA)制御、停車中の制御を実行する場合については、以下のステップS25〜S27によって判定を行なう。
【0052】
ステップS25で、ホイール液圧制御装置6によるホイール液圧制御機構5の制御実行中であるか否かを判断する。制御実行中であると判定された場合、ステップS29で目標液圧PTを用いて制御を行なう。ホイール液圧制御機構5が作動すると、供給弁35A、35B及び加圧弁41A、41Bの開閉、並びに、ポンプ39A、39Bの作動、停止により、マスタシリンダ2の下流側の液圧回路の液圧に対する剛性が変化する場合があり、目標相対変位ΔXTを用いて制御を行なった場合、この液圧回路の剛性の変化により、プライマリピストン8の位置が不安定になり、マスタシリンダ2の発生液圧が不安定になる虞がある。これに対して、目標液圧PTを用いて制御した場合、マスタシリンダ2の液圧は、液圧回路の剛性の変化に比較的影響されにくいので、マスタシリンダ2の発生液圧が不安定になりにくい。
【0053】
ステップS25でホイール液圧制御装置6によるホイール液圧制御機構5の制御実行中でないと判定された場合、ステップS26へ進む。ステップS6で、坂道発進補助(HSA)の作動中か否かを判定する。HSA作動中であると判定した場合、ステップS29で目標液圧PTを用いた制御を行なう。HSA作動中でないと判定した場合、ステップS27へ進む。ステップS27で、停車中か否かを判定する。停車中であると判定した場合、ステップS29で目標液圧PTを用いた制御を行ない、停車中でないと判定した場合、ステップS28で相対変位制御手段46Aによる目標相対変位ΔXTを用いた制御を行なう。
【0054】
このようにして、相対変位制御と液圧制御の切換を行なう。なお、図9に示す制御フローにおいて、ステップS23〜S27は、判定の順序を適宜変更してもよく、また、全ての判定を用いることなく、必要な判定のみを適宜選択して用いるようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、目標相対変位ΔXTを用いた制御と目標液圧PTを用いた制御とを一定の条件に従って切換える場合について説明しているが、これらを切換える条件は、そのシステムの個々の特性に応じて設定すればよく、いずれに切換えるかは任意に設定することができる。
【0056】
次に、上述のアンチロックブレーキ制御が実行された場合について、更に詳細に説明する。アンチロックブレーキ制御の実行により、ホイール圧制御機構5が各車輪Wa〜Wdのロック状態に応じて、減圧モード、加圧モード及び保持モードを実行すると、ポンプ39A、39Bの作動により、マスタシリンダ2に対してブレーキ液の還流、吸出しが頻繁に行なわれ、還流時には、マスタシリンダ2の液圧が相当の昇圧されることになる。
【0057】
このとき、相対位置制御を行なうと、マスタシリンダ2の液圧の変動に対して、プライマリピストン8の位置は、入力ピストン17の位置に応じて一定に保持されるので、マスタシリンダ2の液圧剛性が高くなる。このため、マスタシリンダ2の液圧の変動が入力ピストン17を介してブレーキペダル19に直接伝達されることになり、ブレーキペダル19の操作フィーリングが悪化する。また、マスタシリンダ2の液圧の過度の上昇により、プライマリピストン8のピストンシールが損傷する虞がある。
【0058】
これに対して、制御切換手段46Cは、アンチロックブレーキ制御が実行された場合には、通常の相対変位制御手段46Aによる相対変位制御から液圧制御手段46Bによる液圧制御に切換える。そして、液圧センサ45A、45Bによって検出したマスタシリンダ2の液圧に基づき、電動モータ22の作動をフィードバック制御してプライマリピストン8の位置を調整することにより、マスタシリンダ2の液圧の上昇に対してプライマリピストン8が後退して液圧の変動を吸収して、過度の液圧の上昇を防止する。その結果、ブレーキペダル19の反力の変動を抑制してブレーキペダル19の操作フィーリングを改善することができる。また、マスタシリンダ2の液圧の過度の上を抑制して、プライマリピストン8のピストンシールの損傷を防止することができる。
【0059】
マスタ圧制御ユニット4は、液圧センサ45A、45Bの異常、CAN通信システムの異常を監視し、これらの異常により、液圧センサ45A、45Bからのマスタシリンダ2の液圧情報が得られない場合、又は、CAN通信システムを介してホイール圧制御ユニット6からのホール圧制御機構5の作動情報が得られないため、液圧制御への切換ができない場合には、所定の電流制限制御を実行する。
【0060】
ここで、液圧制御への切換ができない場合には、上述の液圧センサ45A、45Bの異常及びCAN通信システム異常のほか、ブレーキペダル19が踏込まれた状態でブレーキシステムが起動したため(例えば、ブレーキペダル19が踏込まれた状態でのイグニッションスイッチオン、あるいは、ブレーキペダル19が踏込まれたことをブレーキスイッチ19Aで検知してブレーキシステムが起動した場合)、液圧センサ45A、45B、あるいは、ブレーキ操作量検出装置34(ストローク検出装置)、回転角検出センサ25のゼロ点学習が完了しない状態を含む。
【0061】
電流制限制御では、上述の相対位置制御を実行すると共に、電動モータ22に供給する電流の最大値を所定の制限電流値に制限する。このように電動モータ22に供給する電流の最大値を制限することにより、電動モータ22の最大出力(すなわち、プライマリピストン8の最大推力)が制限されるので、マスタシリンダ2の液圧剛性が低くなり、アンチロック制御の実行中のホイール圧制御機構5によるブレーキ液の還流及び吸込みに対して、プライマリピストン8が移動してマスタシリンダ2の液圧変動を吸収することができる。その結果、マスタシリンダ2の液圧変動を抑制して、ブレーキペダル19の操作フィーリングを改善することができる。また、マスタシリンダ2の液圧の過度の上昇を防止して、プライマリピストン8のピストンシールの損傷を防止することができる。
【0062】
ここで、電動モータ22に供給する電流の実効値とマスタシリンダ2で発生するブレーキ液圧との関係について図10を参照して説明する。ボールネジ機構23の逆作動時(直動から回転への変換時)の変換効率の低下及びベルト減速機構24等の各部の摩擦抵抗により、電動モータ22に供給する電流に対してマスタシリンダ2の液圧は、図10に示すようにヒステリシスを有している。すなわち、一定の液圧を発生させるために必要な電流に対して、その液圧を保持するための電流は小さくなり、その差は、電流が大きい(液圧が高い)ほど大きい。図10を参照して、例えば、電動モータ22に電流I1を供給したとき、マスタシリンダ2で液圧P1が発生する場合、この液圧P1は、電流I1よりも小さい電流I2(<I1)によって保持することができ、電流I2の供給によりマスタシリンダ2で発生する液圧P2は、電流I2よりも小さい電流I3(<I2)によって保持することができる。
【0063】
そこで、電流制限制御においては、制限電流値を設定する際には、通常の作動状態おいて最大の電流I1を供給して電動モータ22でプライマリピストン8を推進することによってマスタシリンダ2で発生可能な最大の液圧P1を保持するために必要な電流I2を制限電流値として設定するとよい。これにより、アンチロックブレーキ制御中に、ホイール圧制御機構5からのブレーキ液の還流により、マスタシリンダ2が昇圧された場合でも、制限電流値I2によって保持できる液圧は、最大で液圧P1であるから、マスタシリンダ2の液圧が液圧P1を超えると、プライマリピストン8が後退するので、マスタシリンダ2の液圧が液圧P1を超えることはない。その結果、マスタシリンダ2の液圧の過度の上昇を確実に防止することができ、ブレーキペダルの操作フィーリングを改善すると共に、プライマリピストン8のピストンシールの損傷を防止することができる。
【0064】
次に、電流制限制御を実行するための制御フローについて、図11のフローチャートを参照して説明する。
図11を参照して、ステップS31で、マスタシリンダ2の液圧に基づいて電動モータ22の作動を制御する液圧制御への切換が可能か否かを判定する。具体的には、次の(1)〜(4)の事項について判定し、(1)〜(4)の全てが肯定されたか否かを判定する。
(1)液圧センサ45A、45Bが正常である。
(2)液圧センサ45A、45Bのゼロ点学習が完了している。
(3)ブレーキ操作量検出装置34(ストローク検出装置)、回転角検出センサ25を含む他のセンサのゼロ点学習が完了している。
(4)CAN通信システムが正常で、ABSの作動情報が得られ、液圧制御の切換が可能である。
そして、(1)〜(4)の全てが肯定される場合には、ステップS32へ進み、図9に示す通常のブレーキ制御のフローを実行する。また、(1)〜(4)のいずれかが否定された場合、ステップS33に進む。
【0065】
ステップS33では、電動モータ22に供給する電流の最大値を制限電流値に制限してステップS34に進む。ステップS34では、制御切換手段46Cによって、入力ピストン17のプライマリピストン8との相対変位を一定、図12に示すように、プライマリピストン8が待機位置にあるときに相当する相対変位量となるように制御する相対位置制御を実行して、ステップS35に進む。
【0066】
ステップS35では、ステップS31と同様、上述の(1)〜(4)の全てが肯定されるか否かを判定する。(1)〜(4)の全てが肯定された場合には、ステップS36に進み、(1)〜(4)のいずれかが否定された場合には、ステップS33に戻る。ステップS36では、ブレーキペダル19が解放されたか否かを判定し、解放された場合には、ステップS31に戻り、解放されていない場合には、ステップS33に戻る。
これにより、アンチロックブレーキ制御中に、液圧制御への切換が不可能になった場合でも、電流制限制御を実行することにより、ブレーキペダルの操作フィーリングの悪化を抑制すると共に、ピストンシールの損傷を防止することができる。
【0067】
本発明のマスタシリンダ側の作動情報とは、マスタシリンダの液圧、ブレーキペダルの操作量等、ホイール圧制御機構5より上流側の情報をいうもので、マスタシリンダに直接付けたセンサに限られるものではない。
また、前記ブレーキ装置側から作動情報とは、ホイール圧制御機構5の作動情報を含み、それより下流側(ホイールシリンダ側)の情報をいうものである。
【符号の説明】
【0068】
1 ブレーキ制御装置、2 マスタシリンダ、4 マスタ圧制御ユニット(コントローラ)、8 プライマリピストン(アシスト部材)、17 入力ピストン(入力部材)、19 ブレーキペダル、22 電動モータ、23 ボールネジ機構(回転−直動変換機構)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルの操作により進退移動する入力部材と、
該入力部材に対して相対移動可能に設けられたアシスト部材と、
該アシスト部材の推進よってブレーキ液圧を発生してブレーキ装置に供給するマスタシリンダと、
電動モータと、
該電動モータの回転運動を直線運動に変換して前記アシスト部材を推進する回転−直動変換機構と、
前記マスタシリンダ側又は前記ブレーキ装置側からの作動情報を含む制御情報に基づき、前記電動モータに電流を供給して該電動モータの作動を制御するコントローラとを備えたブレーキ制御装置において、
前記コントローラは、前記マスタシリンダ側又は前記ブレーキ装置側から作動情報が得られなくなったとき、前記電動モータに供給する電流の最大値を所定の制限電流値に制限することを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記マスタシリンダのブレーキ液圧を検出する液圧検出手段を備え、前記コントローラは、前記液圧検出手段が検出するブレーキ液圧を前記マスタシリンダ側からの作動情報としていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記ブレーキ装置と前記マスタシリンダとの間に前記ブレーキ装置に供給するブレーキ液圧を制御する液圧制御手段が介装され、前記コントローラは、前記液圧制御手段から前記ブレーキ装置側からの作動情報を得ていることを特徴とする請求項1又は2に記載のブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記電動モータで前記アシスト部材を推進することによって前記マスタシリンダで発生可能な最大のブレーキ液圧を保持するために必要な電流値を前記制限電流値として設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかにブレーキ制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記電動モータに供給する電流の最大値を所定の制限電流値に制限しているときに、前記入力部材の移動量に対する前記アシスト部材の相対変位量を一定に制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかにブレーキ制御装置。
【請求項1】
ブレーキペダルの操作により進退移動する入力部材と、
該入力部材に対して相対移動可能に設けられたアシスト部材と、
該アシスト部材の推進よってブレーキ液圧を発生してブレーキ装置に供給するマスタシリンダと、
電動モータと、
該電動モータの回転運動を直線運動に変換して前記アシスト部材を推進する回転−直動変換機構と、
前記マスタシリンダ側又は前記ブレーキ装置側からの作動情報を含む制御情報に基づき、前記電動モータに電流を供給して該電動モータの作動を制御するコントローラとを備えたブレーキ制御装置において、
前記コントローラは、前記マスタシリンダ側又は前記ブレーキ装置側から作動情報が得られなくなったとき、前記電動モータに供給する電流の最大値を所定の制限電流値に制限することを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記マスタシリンダのブレーキ液圧を検出する液圧検出手段を備え、前記コントローラは、前記液圧検出手段が検出するブレーキ液圧を前記マスタシリンダ側からの作動情報としていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記ブレーキ装置と前記マスタシリンダとの間に前記ブレーキ装置に供給するブレーキ液圧を制御する液圧制御手段が介装され、前記コントローラは、前記液圧制御手段から前記ブレーキ装置側からの作動情報を得ていることを特徴とする請求項1又は2に記載のブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記電動モータで前記アシスト部材を推進することによって前記マスタシリンダで発生可能な最大のブレーキ液圧を保持するために必要な電流値を前記制限電流値として設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかにブレーキ制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記電動モータに供給する電流の最大値を所定の制限電流値に制限しているときに、前記入力部材の移動量に対する前記アシスト部材の相対変位量を一定に制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかにブレーキ制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−106556(P2012−106556A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255849(P2010−255849)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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