説明

ブレーキ装置

【課題】ブレーキペダルに設けられる電動アクチュエータを小型化・小容量化しながらもブレーキペダルの位置調整を確実に行うことができるブレーキ装置を提供する。
【解決手段】ブレーキ装置10は、マスタシリンダと、ペダル12の操作情報に基づき液圧を発生するモータシリンダ18と、ブレーキ制動力を発生する制動力発生部14と、マスタシリンダ16の発生した液圧によりペダル12に反力を発生させるペダルシミュレータ48と、ペダル12の位置を調整する電動アクチュエータ24とを備える。そして、電動アクチュエータ24によりペダル12の位置を調整する際には、主経路33に設けられたフェイルセーフバルブ60及び経路44に設けられたブレーキバルブ64を連通させ、経路46に設けられたシミュレータバルブ66を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキペダルの初期位置を調整可能なブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のECUに入力されたブレーキペダル(以下、単にペダルともいう)の踏力やストローク等のペダル操作情報に基づき、車輪に設けられた制動力発生部に液圧を与えるためのモータシリンダや液圧ポンプを駆動制御するブレーキ装置が提案されている。
【0003】
この種の電気信号によりブレーキを制動制御するシステム、いわゆるブレーキバイワイヤでは、従来から広範に採用されているペダルとマスタシリンダとが直結された液圧制御システムに比べて、ペダル操作に一層忠実な制動が可能となり、スムーズなブレーキングを実現することができる。
【0004】
特許文献1には、ペダル操作情報に基づき、電動アクチュエータでペダル反力を発生させると共に、ECUからの指令に基づき制動力を発生させるブレーキ装置が開示されている。この場合、前記電動アクチュエータの駆動により、ペダルの初期位置を変更することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−281802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種のブレーキ装置では、車両バッテリでの電力消費量の低減や設置スペースのコンパクト化のため、ペダルに連結される電動アクチュエータのさらなる小容量化が希求されている。
【0007】
本発明は上記従来の技術に関連してなされたものであり、ブレーキペダルに設けられる電動アクチュエータを小容量化しながらも、最適なペダル反力を得ることができ、しかも、確実なブレーキペダルの位置調整を行うことができるブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るブレーキ装置は、ブレーキペダルに連結され、該ブレーキペダルの操作により液圧を発生するマスタシリンダと、前記ブレーキペダルの操作情報に基づき液圧を発生する液圧発生部と、前記マスタシリンダ又は前記液圧発生部で発生する液圧によりブレーキ制動力を発生する制動力発生部と、前記マスタシリンダに連通し、該マスタシリンダの発生した液圧により前記ブレーキペダルに反力を発生させるペダルシミュレータと、前記マスタシリンダと前記制動力発生部との間の主経路を連通又は遮断するフェイルセーフバルブと、前記主経路と前記ペダルシミュレータとの間の経路を連通又は遮断するシミュレータバルブと、前記主経路と前記液圧発生部との間の経路を連通又は遮断するブレーキバルブとを備えるブレーキ装置であって、前記ブレーキペダルに連結され、該ブレーキペダルの位置を調整するアクチュエータと、前記制動力発生部と液圧調整用のリザーバタンクとを連通する補助経路とを備え、前記アクチュエータにより前記ブレーキペダルの位置を調整する際には、前記フェイルセーフバルブ及び前記ブレーキバルブを連通とすると共に、前記シミュレータバルブを遮断することを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、前記アクチュエータによるブレーキペダルの初期位置調整の際に発生するマスタシリンダの液圧を、前記補助経路を介してリザーバタンクへと開放することができる。すなわち、ブレーキペダルの初期位置調整時にリザーバタンクにより調整された系内の液圧が、初期位置調整完了後にも保持されることになる。このため、ブレーキペダルの調整後の初期位置を保持するためのアクチュエータでの出力を低減することができ、アクチュエータの容量を小さくすることが可能となる。しかも、ペダル操作時の反力をペダルシミュレータにより付与することができるため、アクチュエータでは前記反力をほとんど発生させる必要がなく、該アクチュエータを一層小容量化することが可能となる。
【0010】
さらに、本発明に係るブレーキ装置では、前記液圧発生部に加えて前記マスタシリンダを備えることにより、例えば、イグニッションオフ等のシステムオフ時であってもマスタシリンダの液圧により制動力を得ることができる。
【0011】
また、前記液圧発生部が、前記制動力発生部に前記ブレーキバルブを介して連通されると共に、前記補助経路が前記液圧発生部と前記リザーバタンクとの間を連通していると、液圧発生部での液圧(液量)の調整を前記補助経路を介してリザーバタンクから行うことができるため好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前記アクチュエータによるブレーキペダルの初期位置調整の際に発生するマスタシリンダの液圧を、前記補助経路を介してリザーバタンクへと開放することができる。従って、初期位置調整時でのブレーキペダルへの反力を低減することができ、しかも、ブレーキペダルの初期位置調整後における液圧系統での液圧を保持することができるため、アクチュエータの小容量化が可能となる。さらに、ペダル操作時の反力をペダルシミュレータにより発生することができるため、アクチュエータで前記反力を発生する必要がほとんどなく、該アクチュエータの一層の小容量化が可能となる。
【0013】
また、本発明によれば、ブレーキペダルの操作情報に基づき駆動される液圧発生部に加えてマスタシリンダを備えている。このため、例えば、イグニッションオフ等のシステムオフ時であっても、ペダル操作と連動するマスタシリンダからの液圧により制動力を発生することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るブレーキ装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るブレーキ装置10のブロック回路図である。本実施形態に係るブレーキ装置10は自動車等の車両に搭載され、運転者(操作者)によるペダル(ブレーキペダル)12の操作に基づき左車輪LWや右車輪RWに備えられた制動力発生部(キャリパ、ホイールシリンダ、ブレーキシリンダ)14L、14Rでディスク15L、15Rを狭持して制動力を発生させ、車両を制動する装置である。なお、図1では、自動車の前輪側を構成する左車輪LWや右車輪RWのみを図示しており、後輪側については図示を省略しているが、該後輪側についても前輪側(左車輪LWや右車輪RW)と同様な構成や他の構成を備えることができる。また、本実施形態に係るブレーキ装置10において、左車輪LW側に備えられるものの参照符号には「L」を付し、右車輪RW側に備えられるものの参照符号には「R」を付し、左車輪LW側及び右車輪RW側をまとめて説明する場合には前記の「L」や「R」を省略する。
【0016】
ブレーキ装置10は、運転者が運転状況等に応じて操作するペダル12と、該ペダル12の操作に連動して駆動されるマスタシリンダ16と、前記制動力発生部14L、14Rで制動力を発生するための液圧を付与するモータシリンダ(液圧発生部、キャリパシリンダ)18L、18Rとを備える。ブレーキ装置10の各構成部品は、制御部であるECU20に電気的に接続され、該ECU20により制御される。
【0017】
すなわち、ブレーキ装置10は、各構成部品間を液圧(油圧)を伝達可能に接続する液圧(油圧)系統と、各構成部品間とECU20とを電気的に接続する電気系統とから構成される。図1中、前記液圧系統を構成する経路(流路)を実線で示し、前記電気系統を構成する経路(信号線)を破線で示している。前記液圧系統に充填される液体としては、例えば、ブレーキフルードが挙げられる。
【0018】
図1に示すように、ペダル12には、運転者がペダル12を踏み込む力(踏力)や運転者によりペダル12が操作された量(ストローク)を検出するペダル操作情報検出部22が設けられ、該ペダル操作情報検出部22の検出値はECU20に入力される。前記踏力の検出には、例えばペダル12の踏面に設けられるトルクセンサが用いられ、前記ストロークの検出には、例えばペダル12の回転角度を検出するポテンショメータやエンコーダが用いられる。なお、ペダル操作情報検出部22は、踏力のみを検出するように構成してもよい。
【0019】
ペダル12の基端側の揺動軸近傍には、電動アクチュエータ(アクチュエータ、反力モータ)24が連結される。電動アクチュエータ24は、ECU20の制御下に、運転者のペダル12の踏み込みに対する反力の調整と、ペダル12の位置調整とを行うものである。該電動アクチュエータ24は、ペダル12にトルクを与えることが可能であり、すなわち、電動アクチュエータ24にペダル12の踏力を検出するペダル操作情報検出部22の機能を兼ねさせてもよい。
【0020】
前記マスタシリンダ16は、軸方向に順に配置された2つのピストン26L、26Rと、後端がペダル12に連結されてピストン26L、26Rを進退駆動するロッド28と、シリンダ16a内が前記ピストン26L、26Rで仕切られ形成された2つの加圧室30L、30Rとから構成される。加圧室30L、30Rには、ペダル12の踏み込みで進動したピストン26L、26Rを原位置に戻す復帰ばね(弾性部材)32L、32Rが配設される。
【0021】
前記加圧室30L、30Rは、主経路33L、33Rによって前記制動力発生部14L、14Rに連結される。
【0022】
前記モータシリンダ18L、18Rは、ロッド34L、34Rの後端がブレーキモータ(キャリパモータ)36L、36Rに連結されることで、ピストン38L、38Rをシリンダ40L、40R内で進退駆動可能である。該モータシリンダ18L、18Rを構成する加圧室42L、42Rは、経路44L、44Rを介して前記主経路33L、33Rに連結される。すなわち、モータシリンダ18の加圧室42は、制動力発生部14に連結されている。
【0023】
前記主経路33L、33Rにおいて、前記経路44L、44Rよりもマスタシリンダ16側には、経路46L、46Rを介してペダルシミュレータ(P.S.)48L、48Rが連結されている。該ペダルシミュレータ48L、48Rは、反発バネ(弾性部材)50L、50Rを内装しており、マスタシリンダ16からの液圧に対する反力を発生させる機能を果たす。
【0024】
また、マスタシリンダ16の加圧室30L、30Rには、リザーバタンク52へと連結される経路54L、54Rが連通している。リザーバタンク52は、ブレーキ装置10の液圧系統の液圧(液量)を調節する機能を果たす。さらに、リザーバタンク52には、モータシリンダ18L、18Rの加圧室42L、42Rに連通する補助経路56L、56Rが連結される。これら経路54L、54R及び補助経路56L、56Rは、リザーバタンク52に連結される手前でそれぞれ合流している。
【0025】
リザーバタンク52へと連結される経路54において、加圧室30に連通する開口部は、ピストン26の原位置に近接して形成される。これにより、ピストン26L、26Rが原位置から進動すると同時に(僅かでも動くと)前記開口部は閉塞され、すなわち、加圧室30L、30Rとリザーバタンク52との間で経路54L、54Rが遮断される。補助経路56においても前記の経路54と略同様に構成される。すなわち、ピストン38L、38Rが原位置から進動すると同時に、加圧室42L、42Rとリザーバタンク52との間で補助経路56L、56Rが遮断される。
【0026】
このようなブレーキ装置10において、主経路33L、33Rには、加圧室30L、30R側から順に、マスタシリンダ圧力センサ58L、58Rと、フェイルセーフバルブ60L、60Rと、ブレーキ圧力センサ(キャリパ圧力センサ)62L、62Rとが配設される。経路44L、44Rには、ブレーキバルブ(キャリパバルブ)64L、64Rが配設される。経路46L、46Rには、シミュレータバルブ(PSバルブ)66L、66Rが配設される。
【0027】
前記フェイルセーフバルブ60は、主経路33と、経路44の連結部及び経路46の連結部との間に設けられており、ECU20の制御下にソレノイド60aが励磁(駆動)されると主経路33を連通又は遮断する。同様に、ECU20の制御下に、前記ブレーキバルブ64はソレノイド64aが励磁されると経路44を連通又は遮断し、前記シミュレータバルブ66はソレノイド66aが励磁されると経路46を連通又は遮断する。
【0028】
なお、図1では簡単のため、マスタシリンダ圧力センサ58及びブレーキ圧力センサ62からECU20へと接続される信号線と、ソレノイド60a、64a、66aからECU20へと接続される信号線等を省略している。
【0029】
以上のように構成されるブレーキ装置10では、通常時、ペダル12の操作情報が、ペダル操作情報検出部22で検出されると共にECU20へと入力される。そして、ECU20からの指令に基づきモータシリンダ18が駆動されて、制動力発生部14で制動力が発生し、ブレーキ動作が行われる。すなわち、ブレーキ装置10は、バイワイヤ技術を採用したシステム(ブレーキバイワイヤ)として構成されている。
【0030】
そこで、次に、本実施形態に係るブレーキ装置10の基本的な動作及び作用効果について説明する。
【0031】
第1に、ブレーキ装置10がブレーキバイワイヤとして駆動制御される通常時(システムオン時)について説明する。
【0032】
システムオン時には、先ず、ECU20の制御下に、ブレーキバルブ64及びシミュレータバルブ66を開弁し、フェイルセーフバルブ60を閉弁する。これにより、モータシリンダ18と制動力発生部14を連結する経路44が連通し、マスタシリンダ16とペダルシミュレータ48を連結する経路46(主経路33の一部を含む)が連通し、マスタシリンダ16と制動力発生部14を連結する主経路33が遮断される。
【0033】
この状態で、運転者がペダル12を操作すると、該ペダル12の操作によりマスタシリンダ16の加圧室30で発生する液圧がペダルシミュレータ48に与えられ、該ペダルシミュレータ48で反力が発生することにより、ペダル12の踏力とストロークの基本特性が定められる。ところが、該基本特性(ペダルシミュレータ特性)は、ペダルシミュレータ48の反発バネ50により発せられる反力に基づくものであり、図2中に破線で示すように、踏力とストロークとの関係で線形なものとなっている。そこで、ブレーキ装置10では、ペダル操作情報検出部22で検出された踏力(操作トルク)を基に電動アクチュエータ24を駆動し、該電動アクチュエータ24で生じる反力により踏力とストロークの特性を最適特性(図2中に実線で示す)に補正する。これにより、運転者は、ペダル12の操作を最適な感覚で行うことができる。
【0034】
同時に、運転者のペダル12の操作によって、ペダル操作情報検出部22からペダル12の操作情報(踏力やストローク)がECU20に入力され、ECU20では入力された前記操作情報(ペダル12の操作情報)に基づきモータシリンダ18を駆動制御する。従って、モータシリンダ18で発生する液圧が制動力発生部14に与えられ、該制動力発生部14で制動力が発生し、左車輪LWや右車輪RWが制動される。
【0035】
第2に、ブレーキ装置10がブレーキバイワイヤとして駆動制御されない状態(システムオフ時)について説明する。このシステムオフ時としては、例えば、電動アクチュエータ24が故障や誤動作を生じた場合やイグニッションオフとされたシステム停止時等、いわゆる失陥時が挙げられる。
【0036】
システムオフ時には、先ず、ECU20の制御下に、フェイルセーフバルブ60を開弁し、ブレーキバルブ64及びシミュレータバルブ66を閉弁する(図1参照)。これにより、マスタシリンダ16と制動力発生部14を連結する主経路33が連通し、モータシリンダ18と制動力発生部14を連結する経路44が遮断され、マスタシリンダ16とペダルシミュレータ48を連結する経路46が遮断される。
【0037】
この状態で、運転者がペダル12を操作すると、該ペダル12の操作によりマスタシリンダ16の加圧室30で発生する液圧が制動力発生部14に与えられ、該制動力発生部14で制動力が発生し、左車輪LWや右車輪RWが制動される。なお、ペダル12への反力は、マスタシリンダ16により得ることができるため、運転者は確実にペダル12を操作することができる。
【0038】
第3に、ブレーキ装置10において、ペダル12の初期位置を変更する場合について説明する。ペダル12の初期位置変更とは、例えば、運転者の体格に応じてペダル12の前後(揺動)方向での初期位置(原位置)を変更する場合に行われる。
【0039】
ペダル12の初期位置変更時には、先ず、運転者が位置変更スイッチ68をオンすると、ECU20の制御下に、フェイルセーフバルブ60及びブレーキバルブ64が開弁され、シミュレータバルブ66が閉弁される。これにより、マスタシリンダ16と制動力発生部14を連結する主経路33が連通し、モータシリンダ18と制動力発生部14を連結する経路44が連通し、マスタシリンダ16とペダルシミュレータ48を連結する経路46が遮断される。
【0040】
この状態で、運転者が前記位置変更スイッチ68を操作すると、ECU20の制御下に、電動アクチュエータ24が駆動されてペダル12が移動する。従って、ペダル12が所望の位置となった状態で、運転者が前記位置変更スイッチ68を操作することでペダル12の初期位置が決定される。なお、ペダル12を所望の位置にする動作は、電動アクチュエータ24で行う以外にも運転者が直接ペダル12を操作して移動させるように構成することもできる。
【0041】
このようなペダル12の初期位置変更時においては、電動アクチュエータ24によりペダル12が移動されるに伴い、マスタシリンダ16のピストン26も移動する。ところが、該ピストン26が移動した分の液圧(液量)は、主経路33からブレーキバルブ64を経てモータシリンダ18の加圧室42へと送られ、補助経路56を介してリザーバタンク52へと戻されることになる。この場合、シミュレータバルブ66が閉弁されているため、ペダルシミュレータ48で反力が生じることはもちろんなく、ペダル12にはマスタシリンダ16の復帰バネ32からの反力のみが作用するため、電動アクチュエータ24は大きな容量を必要としない。
【0042】
また、ペダル12の初期位置変更が完了した後、ブレーキ装置10がブレーキバイワイヤとして駆動制御(システムオン)された場合であっても、初期位置変更時にリザーバタンク52で調整された液圧系統での液圧(液量)が保持されている。これにより、変更されたペダル12の初期位置を確実に保持しておくことができる。しかも、初期位置変更後のペダル12に作用する反力は、マスタシリンダ16の復帰バネ32からの微小なものだけであるため、位置変更後のペダル12の初期位置を保持しておくための電動アクチュエータ24の消費電力は極めて小さいものであり、換言すれば、電動アクチュエータ24の容量を一層小さいものとすることができる。
【0043】
以上のように、本実施形態に係るブレーキ装置10において、ECU20は、ペダル12への最適な反力を算出するペダル最適反力算出部と、ペダル12の初期位置を変更し設定するペダル初期位置設定部と、車両の制動力を決定する制動力決定部と、各バルブの動作を設定するバルブ動作モード設定部としての機能を有することになる(図3参照)。
【0044】
また、ブレーキ装置10によれば、ブレーキバイワイヤとして駆動制御されるシステムオン時、ペダル12を操作した際の反力としてペダルシミュレータ48の反力を利用しており、電動アクチュエータ24はその反力を補正して最適化を図る機能を果たしている。従って、電動アクチュエータ24のみで全ての反力を発生させる必要がなく、該電動アクチュエータ24を小容量のものとすることができる。
【0045】
ブレーキ装置10では、失陥時等のシステムオフ時であっても、ペダル12の操作によりマスタシリンダ16を介して制動力発生部14での制動力を発生させることが可能となる。
【0046】
ブレーキ装置10では、ペダル12の初期位置を変更する場合、ペダル12が移動されるに伴って移動したマスタシリンダ16のピストン26の移動分の液圧(液量)を、補助経路56からリザーバタンク52へと戻すことができる。従って、ペダル12の初期位置変更が完了した後、ブレーキ装置10がシステムオンされた際にも、液圧系統では、初期位置変更時にリザーバタンク52により調整された液圧系統での液圧(液量)が保持されており、ペダル12の初期位置を確実に保持することができる。しかも、初期位置変更後のペダル12に作用する反力は、マスタシリンダ16の復帰バネ32からの微小なものだけであるため、ペダル12の初期位置保持に要する電動アクチュエータ24の消費電力を低減することができ、電動アクチュエータ24の容量を一層小さくすることができる。
【0047】
前記補助経路56は、ペダル12の位置変更時での液圧調整用以外にも、モータシリンダ18の駆動で低下した該モータシリンダ18へと、リザーバタンク52からの液圧(液量)を補充する際にも利用される。
【0048】
なお、上記実施形態に係るブレーキ装置10では、制動力発生部14に液圧を与える液圧発生部として、モータシリンダ18に代えて液圧(油圧)ポンプを用いてもよい。
【0049】
ペダルシミュレータ48L、48Rは、左車輪LW側及び右車輪RW側で共用としてもよい。
【0050】
また、制動力発生部14としては、いわゆるディスクブレーキとしてディスク15を狭持するキャリパ以外にも、ドラムブレーキとしてドラムにシューを当接させるホイールシリンダ等が挙げられる。
【0051】
以上、実施形態により本発明を説明したが、これに限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係るブレーキ装置のブロック回路図である。
【図2】ペダルの踏力とストロークとの関係を示すグラフである。
【図3】図1に示すブレーキ装置の電気系統を模式的に示すブロック構成図である。
【符号の説明】
【0053】
10…ブレーキ装置 12…ペダル
14L、14R…制動力発生部 16…マスタシリンダ
18L、18R…モータシリンダ 20…ECU
24…電動アクチュエータ 33L、33R…主経路
44L、44R、46L、46R、54L、54R…経路
48L、48R…ペダルシミュレータ 52…リザーバタンク
56L、56R…補助経路
60L、60R…フェイルセーフバルブ
64L、64R…ブレーキバルブ
66L、66R…シミュレータバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルに連結され、該ブレーキペダルの操作により液圧を発生するマスタシリンダと、
前記ブレーキペダルの操作情報に基づき液圧を発生する液圧発生部と、
前記マスタシリンダ又は前記液圧発生部で発生する液圧によりブレーキ制動力を発生する制動力発生部と、
前記マスタシリンダに連通し、該マスタシリンダの発生した液圧により前記ブレーキペダルに反力を発生させるペダルシミュレータと、
前記マスタシリンダと前記制動力発生部との間の主経路を連通又は遮断するフェイルセーフバルブと、
前記主経路と前記ペダルシミュレータとの間の経路を連通又は遮断するシミュレータバルブと、
前記主経路と前記液圧発生部との間の経路を連通又は遮断するブレーキバルブとを備えるブレーキ装置であって、
前記ブレーキペダルに連結され、該ブレーキペダルの位置を調整するアクチュエータと、
前記制動力発生部と液圧調整用のリザーバタンクとを連通する補助経路と、
を備え、
前記アクチュエータにより前記ブレーキペダルの位置を調整する際には、前記フェイルセーフバルブ及び前記ブレーキバルブを連通とすると共に、前記シミュレータバルブを遮断とすることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1記載のブレーキ装置において、
前記液圧発生部は、前記制動力発生部に前記ブレーキバルブを介して連通されると共に、前記補助経路は前記液圧発生部と前記リザーバタンクとの間を連通していることを特徴とするブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−222029(P2008−222029A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63058(P2007−63058)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】