説明

ブレード部材支持構造及びプロセスカートリッジ

【課題】本発明は、従来例をさらに発展させ、変形吸収部を最適配置することによって、環境(温度)変動に対してクリーニングブレードの位置変化を抑制し、常に安定したクリーニング性能を発揮できるプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るプロセスカートリッジの代表的な構成は、ブレード52aと、ブレード52aを支持するブレード支持部材52bと、ブレード支持部材52bが固定される2つの固定部51dを有するクリーニング枠体51と、を有し、クリーニング枠体51は、2つの固定部51dと対向した壁面と、壁面と連続したクリーニング枠体51の変形を吸収する吸収壁面51cと、を有する、画像形成装置本体に取り外し可能に装着されるプロセスカートリッジ2において、吸収壁面51cは、壁面から固定部51dの方向へ突出した凹形状であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられるブレード部材支持構造及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光体ドラム及び感光体ドラムに作用するプロセス手段を一体的にカートリッジ化したプロセスカートカートリッジを着脱可能に有する画像形成装置がある。このプロセスカートリッジにおいて、感光体ドラムの外周面上の残留トナーを除去するために弾性体のクリーニングブレードが設けられている。このクリーニングブレードは支持板金に一体的に形成され、支持板金を樹脂枠体に対して固定することで、感光体ドラムに対するクリーニングブレードの相対位置を規定している。さらに、樹脂枠体の一部に枠体変形吸収部を設けることによって、環境(温度)変動時に支持板金と樹脂枠体との熱膨張係数の違いから生じるクリーニングブレードの位置変化を軽減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−164094(第12頁、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来例をさらに発展させ、変形吸収部を最適配置することによって、環境(温度)変動に対してクリーニングブレードの位置変化を抑制し、常に安定したクリーニング性能を発揮できるプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明に係るブレード部材支持構造及びプロセスカートリッジの代表的な構成は、ブレード部材と、ブレード部材を支持する支持部材と、前記支持部材が固定される2つの固定部を有する枠体と、を有し、前記枠体は、前記2つの固定部と対向した壁面と、前記壁面と連続した前記枠体の変形を吸収する変形吸収部と、を有する、ブレード部材支持構造において、前記変形吸収部は、前記壁面から前記固定部の方向へ突出した凹形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、変形吸収部を最適配置することによって、環境(温度)変動に対してクリーニングブレードの位置変化を抑制し、常に安定したクリーニング性能を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係るプロセスカートリッジを有する画像形成装置の構成図である。
【図2】本実施形態に係るプロセスカートリッジの構成図である。
【図3】(a)本実施形態に係るクリーニング枠体とクリーニングブレードの斜視図である。(b)本実施形態に係るクリーニング枠体とクリーニングブレードの感光体ドラム側から見た斜視図である。(c)本実施形態に係るクリーニング枠体とクリーニングブレードの断面図である。
【図4】(a)比較例1(従来例)のクリーニング枠体とクリーニングブレードの斜視図である。(b)比較例1(従来例)のクリーニングブレードの感光体ドラム側から見た斜視図である。(c)比較例1(従来例)のクリーニング枠体とクリーニングブレードの断面図である。
【図5】(a)比較例2(従来例)のクリーニング枠体とクリーニングブレードの斜視図である。(b)比較例2(従来例)のクリーニングブレードの感光体ドラム側から見た斜視図である。(c)比較例2(従来例)のクリーニング枠体とクリーニングブレードの断面図である。
【図6】(a)比較例1(従来例)のクリーニング枠体、クリーニングブレードの伸縮量の相対を示す断面図である。(b)比較例1(従来例)のクリーニング枠体がブレード支持部材から受ける外力を説明する断面図である。(c)比較例1(従来例)のブレード支持部材がクリーニング枠体から受ける外力を説明する断面図である。(d)比較例1(従来例)のクリーニング枠体とブレード支持部材が外力により変形した状態を説明する断面図である。
【図7】(a)比較例2(従来例)のクリーニング枠体、クリーニングブレードの伸縮量の相対を示す断面図である。(b)比較例2(従来例)のクリーニング枠体がブレード支持部材から受ける外力を説明する断面図である。(c)比較例2(従来例)のブレード支持部材がクリーニング枠体から受ける外力を説明する断面図である。(d)比較例2(従来例)のクリーニング枠体とブレード支持部材が外力により変形した状態を説明する断面図である。
【図8】(a)本実施形態に係るクリーニング枠体、クリーニングブレードの伸縮量の相対を示す断面図である。(b)本実施形態に係るクリーニング枠体がブレード支持部材から受ける外力を説明する断面図である。(c)本実施形態に係るブレード支持部材がクリーニング枠体から受ける外力を説明する断面図である。(d)本実施形態に係るクリーニング枠体とブレード支持部材が外力により変形した状態を説明する断面図である。
【図9】本実施形態に係る他の変形吸収部の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係るブレード部材支持構造及びプロセスカートリッジの実施形態について、図を用いて説明する。図1は本実施形態に係るプロセスカートリッジ2を用いた画像形成装置1の構成図である。図2はプロセスカートリッジ2の構成図である。図1に示すように、画像形成装置(画像形成装置本体)1は、プロセスカートリッジ2を取り外し可能に装着している。プロセスカートリッジ2は、感光体ドラム(像担持体)20、プロセス手段を有している。プロセス手段は、ドラム20に作用する帯電ローラ12、現像ローラ41、クリーニングブレード52等である。
【0009】
プリントスタート信号に基づいて、ドラム20は矢印R1方向に回転し、帯電ローラ12により帯電され、露光装置3により画像情報に基づいたレーザー光Lを露光窓部53を通して露光され、静電潜像が形成される。図2に示すように、静電潜像は、現像装置ユニット40の現像剤T(以下、トナーと記載する)によって可視化されトナー像として現像される。
【0010】
現像装置ユニット40は、トナー室45内のトナーTを攪拌部材43の回転によってトナー供給室44に送り出す。そして、マグネットローラ(固定磁石)41aを内蔵した現像剤担持体である現像ローラ41を回転させるとともに、現像ブレード42によって摩擦帯電電荷を付与したトナー層を現像ローラ41の表面に形成する。そして、そのトナーを潜像に応じてドラム20へ転移させることによってトナー像を形成して可視像化する。現像ブレード42は、現像ローラ41の周面のトナー量を規定すると共に摩擦帯電電荷を付与するものである。
【0011】
一方、シートトレイ4に収納されたシートPは、ピックアップローラ5a、給送ローラ5b、搬送ローラ対5cによって、転写ガイド6を経由して、ドラム20と転写用帯電ローラ7との間の転写位置へ搬送される。この転写位置において、トナー像はドラム20からシートPに順次転写されていく。トナー像が転写されたシートPは、ドラム20から分離されて搬送ガイド8に沿って定着装置9に搬送される。そしてシートPは、定着装置9を構成する定着ローラ9aと加圧ローラ9bとのニップ部で、加圧・加熱定着され、トナー像を定着される。トナー像を定着されシートPは、排出ローラ対10により、排出トレイ11へ排出される。
【0012】
転写後のドラム20上(像担持体上)に残留する現像剤は、クリーニングブレード52により除去され、ドラム20が再び、帯電から始まる作像に供される。ドラム20から除去された廃トナーはクリーニングユニット50の廃トナー室51eに貯蔵される。クリーニングユニット50は、クリーニング枠体(カートリッジ枠体)51にて構成されている。クリーニング枠体51はクリーニングブレード52を支持している。
【0013】
(ブレード部材支持構造、クリーニング枠体51とクリーニングブレード52)
図3(a)はクリーニング枠体51とクリーニングブレード52の斜視図である。図3(b)クリーニング枠体51とクリーニングブレード52のドラム20側から見た斜視図である。図3(c)はクリーニング枠体51とクリーニングブレード52の断面図である。
【0014】
図3に示すように、クリーニングブレード52は、ブレード(ブレード部材)52a、ブレード支持部材52bを有している。ブレード支持部材52bは、ブレード52aを支持しており、クリーニング枠体51の2つの固定部51dに固定され、ドラム20側に取り付けられている。クリーニング枠体51は、2つの固定部51d、前側壁面51b、凹形状の吸収壁面(変形吸収部)51c、側壁51jを有している。前側壁面51bは、2つの固定部51dと対向して反対側(ドラム20の反対側)に形成され、2つの固定部51d及びブレード支持部材52bと略平行に形成されている。
【0015】
吸収壁面51cは、前側壁面51bの間に前側壁面51bから固定部51d側(ブレード支持部材52b側、ドラム20側)へ突出(突出量L51)する三角形が連続して形成される蛇腹形状となっている。吸収壁面51cは、前側壁面51bよりも固定部51d側の反対側へは突出していない。側壁51jは、固定部51dから前側壁面51bへと繋がる側壁である。前側壁面51b、吸収壁面51c、側壁51jは、廃トナー室51eを形成している。
【0016】
(環境(温度)変動時のクリーニング枠体51、クリーニングブレード52の変化)
図4(a)〜図4(c)は比較例1(従来例)に係る吸収壁面51cの無いクリーニング枠体101、クリーニングブレード52の斜視図、断面図である。図5(a)〜図5(c)は比較例2(従来例)に係る吸収壁面102cを有するクリーニング枠体102、クリーニングブレード52の斜視図、断面図である。図5に示すように、比較例2の吸収壁面102cは、本実施形態の吸収壁面51cとは形状が異なる。比較例2は背景技術の項で説明した従来の変形吸収部を有するカートリッジに該当する。比較例1、2は、吸収壁面51cの有無の差や形状が異なる点を除くその他の構成は、本実施形態と同様である。
【0017】
比較例2のクリーニング枠体102の前側壁面102bは、前側壁面102bに対し凹凸形状の吸収壁面102cを備えている。吸収壁面102cは、前側壁面102bの間に前側壁面102bから固定部102aの方向およびその反対方向へ同じ長さ分(突出量L102)突出する三角形が連続して形成される蛇腹形状となっている。比較例2の突出量L102の2倍と本実施形態の突出量L51(図3)が等しくなっているので、両者の吸収壁面は、位置は異なるが、形状自体はほぼ同じである。
【0018】
(比較例1の環境(温度)変動)
図6は比較例1のクリーニング枠体101、クリーニングブレード52の環境(温度)変動を説明する模式図である。図6(a)はクリーニング枠体101、クリーニングブレード52の伸縮量の相対を示す断面図である。図6(b)はクリーニング枠体101がブレード支持部材52bから受ける外力を説明する断面図である。図6(c)はブレード支持部材52bがクリーニング枠体101から受ける外力を説明する断面図である。図6(d)はクリーニング枠体101とブレード支持部材52bが外力により変形した状態を説明する断面図である。
【0019】
ブレード支持部材52b、クリーニング枠体101は、材質固有の熱膨張係数に従い環境(温度)変動量に比例して伸縮する。熱膨張係数は使用する材料に依存するが、ブレード支持部材52bは鉄、クリーニング枠体101は樹脂を使用しており、それら材料の熱膨張係数が異なるために各々の伸縮量は異なる。クリーニング枠体101の熱膨張係数は、ブレード支持部材52bの熱膨張係数に対して大きいため、環境(温度)変動時にはクリーニング枠体101の伸縮量がブレード支持部材52bに対して大きくなる。
【0020】
温度上昇(下降)時にクリーニング枠体101とブレード支持部材52bは全方位に膨張(収縮)する。しかし、クリーニングブレード52とドラム20の相対位置変化量は、ドラム20の長手方向の膨張(収縮)が支配的である。よって、以下の説明では、長手方向の膨張(収縮)の影響についてのみ記述する。
【0021】
温度が上昇した場合を想定して説明する。図6(a)はブレード支持部材52bがクリーニング枠体101に固定されていない状態での膨張による伸び量を示す。図6(a)に示すように、クリーニング枠体101の伸び量X09a1は、ブレード支持部材52bの伸び量X09a2より大きい。
【0022】
ブレード支持部材52bは、クリーニング枠体101に2箇所の固定部101aで固定されているので、固定部101aにおいて互いに圧縮と引っ張りの力を作用しあう。図6(b)に示すように、クリーニング枠体101は、ブレード支持部材52bから外力X09b1を受ける。クリーニング枠体101の伸び量X09a1の方がブレード支持部材52bの伸び量X09a2より大きい。このため、ブレード支持部材52bは、クリーニング枠体101が長手外側に伸びる抵抗となり、外力X09b1は長手内側に圧縮力として作用する。
【0023】
図6(d)に示すように、外力X09b1によってクリーニング枠体101の固定部101aが長手内側をドラム20(図2)から遠ざかる方向に傾斜し、前側壁面101bがドラム20(図2)から遠ざかる方向に弓なりに変形する。
【0024】
図6(c)に示すように、ブレード支持部材52bは、クリーニング枠体101から外力X09c1を受ける。クリーニング枠体101の伸び量X09a1の方がブレード支持部材52bの伸び量X09a2より大きい。このため、ブレード支持部材52bは長手外側に引っ張られ、外力X09c1は長手外側に引張り力として作用する。
【0025】
図6(d)に示すように、外力X09c1によってブレード支持部材52bもドラム20(図2)から遠ざかる方向に弓なりに変形する。
【0026】
ここで、ブレード52aの熱膨張係数とブレード支持部材52bの熱膨張係数は異なるため、ブレード52aとブレード支持部材52bの伸び量は異なる。しかし、ブレード52aの材質(ウレタンゴム)の縦弾性係数(5[MPa])はブレード支持部材52bの縦弾性係数(206[GPa])に対して約4万分の1と非常に小さいので、相互作用によるブレード52aとブレード支持部材52bの変形は無視できる。ブレード52aは、ブレード支持部材52bに一体的に固定されているため、ブレード支持部材52bの変形に追従し、ドラム20(図2)から遠ざかる方向に弓なりに変形する。つまり、ドラム20(図2)に対するブレード52aの位置関係が変化してしまう。
【0027】
(比較例2の環境(温度)変動)
図7は比較例2のクリーニング枠体102、クリーニングブレード52の環境(温度)変動を説明する模式図である。図7(a)はクリーニング枠体102、クリーニングブレード52の伸縮量の相対を示す断面図である。図7(b)はクリーニング枠体102がブレード支持部材52bから受ける外力を説明する断面図である。図7(c)はブレード支持部材52bがクリーニング枠体102から受ける外力を説明する断面図である。図7(d)はクリーニング枠体102とブレード支持部材52bが外力により変形した状態を説明する断面図である。
【0028】
比較例1と同様に温度が上昇した場合を想定して説明する。図7(a)はブレード支持部材52bがクリーニング枠体102に固定されていない状態での膨張による伸び量を示す。図7(a)に示すように、クリーニング枠体102の伸び量X10a1は、ブレード支持部材52bの伸び量X10a2より大きい。
【0029】
ブレード支持部材52bは、クリーニング枠体102に2箇所の固定部102aで固定されているので、固定部102aにおいて互いに圧縮と引っ張りの力を作用しあう。図7(b)に示すように、クリーニング枠体102は、ブレード支持部材52bから外力X10b1を受ける。クリーニング枠体102の伸び量X10a1の方がブレード支持部材52bの伸び量X10a2より大きい。このため、ブレード支持部材52bは、クリーニング枠体102が長手外側に伸びる抵抗となり、外力X10b1は長手内側に圧縮力として作用する。ただし、吸収壁面102cの切り欠いた形状(凹凸形状)がクリーニング枠体102の長手方向の剛性を下げる。このため、外力X10b1は吸収壁面102cがない比較例1の外力X09b1より小さくなる。
【0030】
図7(d)に示すように、外力X10b1によってクリーニング枠体102の固定部102aが長手内側をドラム20(図2)から遠ざかる方向に傾斜し、前側壁面102bと吸収壁面102cがドラム20(図2)から遠ざかる方向に弓なりに変形する。外力X10b1が比較例1の外力X09b1より小さくなっているため、この傾斜する度合い(角度)と、弓なりに変形する度合いは比較例1よりも減少する。
【0031】
図7(c)に示すように、ブレード支持部材52bは、クリーニング枠体102から外力X10c1を受ける。クリーニング枠体102の伸び量X10a1の方がブレード支持部材52bの伸び量X10a2より大きい。このため、ブレード支持部材52bは長手外側に引っ張られ、外力X10c1は長手外側に引張り力として作用する。ただし、吸収壁面102cの切り欠いた形状(凹凸形状)がクリーニング枠体102の長手方向の剛性を下げる。このため、外力X10c1は吸収壁面102cがない比較例1の外力X09c1より小さくなる。
【0032】
図7(d)に示すように、外力X10c1によってブレード支持部材52bもドラム20(図2)から遠ざかる方向に弓なりに変形する。外力X10c1が比較例1の外力X09c1より小さくなっているため、この傾斜する度合い(角度)と、弓なりに変形する度合いは比較例1よりも減少する。
【0033】
上述のごとく、相互作用によるブレード52aとブレード支持部材52bの変形は無視できる。ブレード52aは、ブレード支持部材52bに一体的に固定されているためにブレード支持部材52bの変形に追従しドラム20(図2)から遠ざかる方向に弓なりに変形する。つまり、ドラム20(図2)に対するブレード52aの位置関係が変化してしまうことになる。
【0034】
上述のごとく、吸収壁面102cがクリーニング枠体102の長手方向の剛性を下げるため、外力X10b1(外力X10c1)は吸収壁面102cがない比較例1の外力X09b1(外力X09c1)より小さくなる。よって、ドラム20(図2)に対するブレード52aの位置関係が変化する量を低減できる。
【0035】
(本実施形態の環境(温度)変動)
図8は比較例2のクリーニング枠体51、クリーニングブレード52の環境(温度)変動を説明する模式図である。図8(a)はクリーニング枠体51、クリーニングブレード52の伸縮量の相対を示す断面図である。図8(b)はクリーニング枠体51がブレード支持部材52bから受ける外力を説明する断面図である。図8(c)はブレード支持部材52bがクリーニング枠体51から受ける外力を説明する断面図である。図8(d)はクリーニング枠体51とブレード支持部材52bが外力により変形した状態を説明する断面図である。
【0036】
比較例1、比較例2と同様に温度が上昇した場合を想定して説明する。図8(a)はブレード支持部材52bがクリーニング枠体51に固定されていない状態での膨張による伸び量を示す。図8(a)に示すように、クリーニング枠体51の伸び量X11a1は、ブレード支持部材52bの伸び量X11a2より大きい。
【0037】
ブレード支持部材52bは、クリーニング枠体51に2箇所の固定部51dで固定されているのでこの固定部51dにおいて互いに圧縮と引っ張りの力を作用しあう。図8(b)に示すように、クリーニング枠体51は、ブレード支持部材52bから外力X11b1を受ける。クリーニング枠体51の伸び量X11a1の方がブレード支持部材52bの伸び量X11a2より大きい。このため、ブレード支持部材52bは、クリーニング枠体51が長手外側に伸びる抵抗となり、外力X11b1は長手内側に圧縮力として作用する。ただし、吸収壁面51cの切り欠いた形状(凹形状)がクリーニング枠体51の長手方向の剛性を下げる。このため、外力X11b1は吸収壁面51cがない比較例1の外力X09b1より小さくなる。
【0038】
図8(d)に示すように、外力X11b1によってクリーニング枠体51が変形する。ただし、比較例1、比較例2と異なり、吸収壁面51cはドラム20(図2)に近づく方向に弓なりに変形する。この理由を以下で説明する。吸収壁面102cは、前側壁面102bを基準として、前側壁面102bから固定部102aの方向およびその反対方向へ同じ長さ分(突出量L102)突出した凹凸形状となっていた。しかし、吸収壁面51cは、前側壁面51bよりも固定部51dの方向にずれた位置が重心となるように、前側壁面51bよりも固定部51dの方向にのみ切り欠いた凹形状となっている。このため、吸収壁面51cが前側壁面51bよりうける外力X11b1は、吸収壁面51cの重心からずれた偏心圧縮荷重となり、吸収壁面51cが曲げモーメントを受ける。この曲げモーメントにより、吸収壁面51cはドラム20(図2)に近づく方向に弓なりに変形する。
【0039】
前側壁面51bは比較例1、比較例2と同様に長手内側をドラム20(図2)から遠ざかる方向に弓なりに変形する。つまり、吸収壁面51cが前側壁面51bから圧縮力を受けると、前側壁面51bとは逆側の固定部51aの方向へ撓むことになる。また、固定部51dは比較例1、比較例2と同様に長手内側をドラム20(図2)から遠ざかる方向に傾斜する。
【0040】
このように、前側壁面51bと吸収壁面51cの変形する方向が反対であるため、それぞれの変形量が相殺され、前側壁面51b及び吸収壁面51cが弓なりに変形する度合いと、固定部51dが傾斜する度合いは比較例1および比較例2よりも減少する。
【0041】
図8(c)に示すように、ブレード支持部材52bは、クリーニング枠体51から外力X11c1を受ける。クリーニング枠体51の伸び量X11a1の方がブレード支持部材52bの伸び量X11a2より大きい。このため、ブレード支持部材52bは長手外側に引っ張られ、外力X11c1は長手外側に引張り力として作用する。ただし、吸収壁面51cの切り欠いた形状(凹形状)がクリーニング枠体51の長手方向の剛性を下げる。このため、外力X11c1は吸収壁面51cがない比較例1の外力X09c1より小さくなる。
【0042】
さらに、吸収壁面51cが偏心圧縮荷重により曲げモーメントを受けて、ドラム20(図2)に近づく方向に変形するため、側壁51jは固定部51dから見て長手内側に倒れる方向に変形しようとする。これにより、ブレード支持部材52bの図8中右側の固定部51dには、反時計回りとなる回転モーメントX11c2が加えられる。ブレード支持部材52bの図8中左側の固定部51dには、時計回りとなる回転モーメントX11c2が加えられる。
【0043】
この外力X11c1と回転モーメントX11c2の合力によって、ブレード支持部材52bもドラム20(図2)から遠ざかる方向に弓なりに変形する。しかし、回転モーメントX11c2はブレード支持部材52bがドラム20に近づく方向に弓なりに変形するよう作用する(外力X11c1の作用と逆方向)ので、図8(d)に示すように、弓なりに変形する度合いは比較例2よりも減少する。
【0044】
上述のごとく、相互作用によるブレード52aとブレード支持部材52bの変形は無視できる。ブレード52aは、ブレード支持部材52bに一体的に固定されているためにブレード支持部材52bの変形に追従しドラム20(図2)から遠ざかる方向に弓なりに変形する。つまり、ドラム20(図2)に対するブレード52aの位置関係が変化してしまうことになる。
【0045】
上述のごとく、本実施形態では、吸収壁面51cが前側壁面51bから固定部51dの方向へ突出している。このため、吸収壁面51cがクリーニング枠体51の長手方向の剛性を下げることに加えて、ブレード支持部材52bの固定部51dに回転モーメントX11c2が加えられる。この回転モーメントX11c2がブレード支持部材52bの変形を軽減するので、比較例2(従来例)よりも、ドラム20(図2)に対するブレード52aの位置関係の変化量を抑えることができる。これにより、クリーニングブレード52は、環境(温度)変動した場合(温度上昇時)にも、常に安定してクリーニング性能を発揮できる。
【0046】
(比較実験)
比較例1、2、本実施形態の上記効果を確かめるため、比較例1、2、本実施形態におけるブレード52aの最大変形量を解析にて求めた。環境(温度)変動:10K上昇とした。物性値として、クリーニング枠体101、102、51の熱膨張係数は70[μ/K]、縦弾性係数は2.44[GPa]とした。ブレード支持部材52bの熱膨張係数11.4[μ/K]、縦弾性係数は206[GPa]とした。
【0047】
その比較実験の結果、最大変形量は、比較例1で79[μm]、比較例2で63[μm]であり、本実施形態では27[μm]まで低減した。本実施形態のブレード52aの最大変形量は、比較例1に比べて34%となり、比較例2と比較しても43%と大幅に減少する。これにより、本実施形態の凹形状の吸収壁面51cの効果が確かめられた。
【0048】
なお、温度が上昇した場合を想定して説明したが、逆の温度下降時にも本実施形態は、比較例1、比較例2に対して、好適な結果が得られる。温度下降時には、クリーニング枠体102(クリーニング枠体51)とブレード支持部材52bは収縮する。その結果、比較例2の吸収壁面102cとブレード支持部材52bはドラム20(図2)に近づく方向に弓なりに変形する。
【0049】
しかし、本実施形態においては吸収壁面51cが偏心引張荷重を受け、ドラム20(図2)から遠ざかる方向に弓なりに変形する。その結果、ブレード支持部材52bの変形が軽減するので、比較例2(従来例)よりも、ドラム20(図2)に対するブレード52aの位置関係の変化量を抑えることができる。これにより、環境(温度)変動した場合(温度下降時)にも、常に安定してクリーニング性能を発揮できる。
【0050】
なお、クリーニング枠体101(クリーニング枠体102、クリーニング枠体51)の熱膨張係数がブレード支持部材52bの熱膨張係数より大きい条件で説明してきたが、熱膨張係数の関係が逆でも本発明の効果は損なわれない。この場合、温度上昇時には、クリーニング枠体よりもブレード支持部材52b方が伸び量が大きくなり、クリーニング枠体には引張り荷重、ブレード支持部材52bには圧縮荷重が作用する。これにより、ブレード支持部材52bとブレード52aはドラム20(図2)に近づく方向に変形するが、吸収壁面51cには偏心引張荷重が掛かることによって吸収壁面はドラム20(図2)から遠ざかる方向に変形する。吸収壁面51cのこの挙動によってブレード支持部材52bとブレード52aがドラム20(図2)に近づく方向に変形する量を軽減する。温度下降時には、クリーニング枠体よりもブレード支持部材52b方が収縮量が大きいため、クリーニング枠体には圧縮荷重、ブレード支持部材52bには引張り圧縮荷重が作用する。これにより、ブレード支持部材52bとブレード52aはドラム20(図2)から遠ざかる方向に変形するが、吸収壁面51cには偏心圧縮荷重が掛かることによって吸収壁面51cはドラム20(図2)に近づく方向に変形する。吸収壁面51cのこの挙動によってブレード支持部材52bとブレード52aがドラム20(図2)から遠ざかる方向に変形する量を軽減する。
【0051】
さらに、ブレード部材およびブレード部材支持の一例としてクリーニングブレード52を、これらを長手2点で固定する相手としてのカートリッジ枠体の一例としてクリーニング枠体51を、用いて構成されるクリーニングユニット50を使用して説明を行った。しかし、本発明はかかる構成に限定されるものではなく、現像装置ユニット40にも適用できる。
【0052】
具体的には、ブレード部材を現像ブレード42のブレード42aとする。ブレード部材支持部材としてブレード42aを一体的に支持する現像ブレード支持部材42bとする。カートリッジ枠体として現像ブレード42を長手2箇所で固定する固定部を有するトナー収納容器40aとする。そして、トナー収納容器40aに、クリーニング枠体と同様の変形吸収部を設ける。これにより、環境(温度)変動時の現像ローラ41に対するブレード42aの位置関係の変化量を抑えることができる。これにより、環境(温度)変動した場合にも、常に安定して、摩擦帯電電荷を付与したトナー層を形成できる。
【0053】
また、本実施形態の吸収壁面51cの形状として、三角形が連続した蛇腹形状を用いて説明を行ったが、本発明におけるブレード支持部材52bおよびブレード52aの変形を抑制する形状は、この形状に限定されるものではない。
【0054】
図9、図10は本実施形態の吸収壁面の他の形状を示す図である。図9に示すような四角形が連続した櫛歯形状の吸収壁面103cや、図10に示すような曲線が連続した波形状の吸収壁面104cであっても、ブレード支持部材の固定部側に突出していればよい。
【符号の説明】
【0055】
L …レーザー光
P …シート
T …現像剤
X09a1、X09a2、X10a1、X10a2、X11a1、X11a2 …伸び量
X09b1、X09c1、X10c1、X11b1 …外力
X11c2 …回転モーメント
1 …画像形成装置
2 …プロセスカートリッジ
20 …感光体ドラム
40 …現像装置ユニット
41 …現像ローラ
41a …マグネットローラ
42 …現像ブレード
42a、52a …ブレード(ブレード部材)
42b …現像ブレード支持部材
50 …クリーニングユニット
51 …クリーニング枠体(カートリッジ枠体)
51b、102b …前側壁面
51c、102c …吸収壁面(変形吸収部)
51d、102a …固定部
51e …廃トナー室
51j …側壁
52 …クリーニングブレード
52b …ブレード支持部材
101、102 …クリーニング枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレード部材と、
ブレード部材を支持する支持部材と、
前記支持部材が固定される2つの固定部を有する枠体と、を有し、
前記枠体は、前記2つの固定部と対向した壁面と、前記壁面と連続した前記枠体の変形を吸収する変形吸収部と、を有する、ブレード部材支持構造において、
前記変形吸収部は、前記壁面から前記固定部の方向へ突出した凹形状であることを特徴とするブレード部材支持構造。
【請求項2】
前記枠体の熱膨張係数は、前記支持部材の熱膨張係数と異なることを特徴とする請求項1に記載のブレード部材支持構造。
【請求項3】
前記変形吸収部は、三角形が連続して形成された形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載のブレード部材支持構造。
【請求項4】
前記変形吸収部は、四角形が連続した形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載のブレード部材支持構造。
【請求項5】
前記変形吸収部は、曲線が連続した形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載のブレード部材支持構造。
【請求項6】
画像形成装置本体に取り外し可能に装着されるプロセスカートリッジであって、
請求項1乃至5のいずれかのブレード部材支持構造を有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
前記ブレード部材は、像担持体上に残留する現像剤を除去するクリーニングブレード又は、現像ローラにトナー層を形成する現像ブレードであることを特徴とする請求項6に記載のプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−42551(P2012−42551A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181591(P2010−181591)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】