説明

ブロック樹脂

【課題】本発明は、高い顔料分散性を有し、かつ、良好なアルカリ現像さらには感光性樹脂との相溶性を有するブロック樹脂を提供する事を目的としたものである。
【解決手段】酸基を有するブロックのみからなる樹脂であって、酸価0.1〜90mgKOH/gであるブロック(A)および酸価100mgKOH/g以上であるブロック(B)とからなり、リビング重合で得ることができるブロック樹脂。
前記のブロック樹脂は、水酸基を有するモノマーをリビング重合して得られる水酸基含有樹脂を、該水酸基と反応することにより酸基を存在させうる化合物(c)で変性させることを特徴とするブロック樹脂であることが好ましく、特にリビング重合が、原子移動ラジカル重合であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック樹脂に関する。さらに詳しくは、印刷インキや塗料の使用適正を必要とする顔料分散樹脂、樹脂型分散剤およびそれを含有する顔料組成物ならびに顔料分散体の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷インキ、塗料、平画面パネルの色相材料などは高い透過性やコントラストが要求されるため、顔料分散体は高い顔料分散性や経時安定性が必要とされる。
これらの問題を解決する為に樹脂中に顔料または顔料分散剤と吸着するような置換基を持たせ、顔料の分散性を向上させる提案がなされている。しかしこの方法によると、樹脂中にランダムに顔料との吸着基が導入されるために、樹脂部分と分散媒との親和性が弱まり、分散安定化に充分な吸着層を確保しにくくなったり、また、樹脂中への顔料吸着基の導入量が増加すると分散媒への溶解性が減少するため、分散安定化に充分な吸着層を確保できなくなったりするという問題がある。
【0003】
さらにこの問題を解決する為に、樹脂中に顔料吸着基となるブロックと溶剤溶解性を持つブロックを持つ樹脂を使用したブロックタイプ顔料分散組成物が提案されている(特許文献1、2)。また酸基を樹脂中に局在化させたブロック共重合体により基板への密着性、現像時の地汚れや膜残りを改善する提案されている(特許文献3)。
しかし、酸基が局在化されたブロック樹脂またはグラジエント樹脂は良好な顔料分散性、または乾燥塗膜の良好なアルカリ現像性を得るものの、色相材料において感光性樹脂との良好な相溶性が得られない場合があり、ポストベーク後の塗膜の光透過率を低下させる事があった。
【特許文献1】特表2002−534542号公報
【特許文献2】特開2004−66235号公報
【特許文献3】特許第3094403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高い顔料分散性を有し、かつ、良好なアルカリ現像さらには感光性樹脂との相溶性を有するブロック樹脂を提供する事を目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、酸基を有するブロックのみからなる樹脂であって、酸価0.1〜90mgKOH/gであるブロック(A)および酸価100mgKOH/g以上であるブロック(B)とからなり、リビング重合で得ることができるブロック樹脂を提供する。
前記のブロック樹脂は、水酸基を有するモノマーをリビング重合して得られる水酸基含有樹脂を、該水酸基と反応することにより酸基を存在させうる化合物(c)で変性させることを特徴とするブロック樹脂であることが好ましく、特にリビング重合が、原子移動ラジカル重合であることが好ましい。また、前記の化合物(c)が、環状ポリカルボン酸無水物であることも望ましい。さらに、前記の化合物(c)とともに、水酸基と反応可能であり、硬化性不飽和二重結合を有する化合物(d)やブロック樹脂の有する酸基または水酸基と反応可能であり、硬化性不飽和二重結合を有する化合物(e)を反応させることも望ましい。
本発明のブロック樹脂においては、ブロック樹脂の数平均分子量が、1000〜50000であることが好ましい。また、ブロック(A)とブロック(B)の質量割合が、(A)60〜99.9重量%、(B)0.1〜40重量%であることが好ましい。
本発明のブロック樹脂を、顔料と、必要に応じて塩基性基を有する顔料誘導体および/または本発明のブロック樹脂以外の樹脂とともに、有機溶剤または水中に分散することで、好適な顔料分散体を得ることができる。
【0006】
次に、本発明は、リビング重合で得られる、水酸基を有する繰り返し単位70wt%以下のブロック(A’)および水酸基を有する繰り返し単位80wt%以上のブロック(B’)を持つブロック樹脂に対して、該水酸基と反応することにより酸基を存在させうる化合物(c)を反応させることを特徴とするブロック樹脂の製造方法に関する。
該製造方法は、さらに、水酸基と反応可能であり、硬化性不飽和二重結合を有する化合物(d)および/または酸基または水酸基と反応可能であり、硬化性不飽和二重結合を有する化合物(e)を反応させることを特徴とするブロック樹脂の製造方法であることが好ましく、特にリビング重合が、原子移動ラジカル重合であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、インキおよび塗料などの顔料分散液において、非集合性、流動性などの使用適性および、塗布物の色調の鮮明性、光沢などを著しく向上し、かつ良好なアルカリ現像性さらには感光性樹脂との相溶性が良好なブロック樹脂を提供する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のブロック樹脂は、酸価0.1〜90mgKOH/gであるブロック(A)と酸価100mgKOH/g以上を有するブロック(B)を持つブロック樹脂である。本発明のブロック樹脂は、アクリルブロック樹脂であり、その合成にはリビング重合を用いる。
ブロック(A)は、酸基を有するモノマーと有さないモノマーからなり、ブロック(B)も単一の繰り返し単位を有する必要はない。従って、本発明の樹脂は酸基を有するブロックのみからなる。なお、本発明のブロックは、重合度が5以上のモノマーの連鎖として定義される。
【0009】
リビング重合は一般的なラジカル重合に起こる副反応が抑制され、さらには重合の成長が均一に起こる為、容易にブロックポリマーや分子量の揃った樹脂を合成できる。
【0010】
なかでも、有機ハロゲン化物、ハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法は、広範囲の単量体に適応できる点、既存の設備に適応可能な重合温度を採用できる点で好ましい。原子移動ラジカル重合法は、下記の参考文献1〜8などに記載された方法で行うことができる。
(参考文献1)Fukudaら、Prog. Polym. Sci. 2004, 29, 329。
(参考文献2)Matyjaszewskiら、Chem.R e v.2001,10 1,2921。
(参考文献3)Matyjaszewskiら、J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614。
(参考文献4)Macromolecules 1995,28,7901,Science 1996,272,866
(参考文献5)国際公開第96/30421号パンフレット
(参考文献6)国際公開第97/18247号パンフレット
(参考文献7)特開平9−208616号公報
(参考文献8)特開平8−41117号公報
【0011】
本発明のブロック樹脂は比較的低酸価のブロック(A)が現像性および感光性樹脂との相溶性に寄与する事となり、酸基を密に有する高酸価のブロック(B)が顔料または顔料誘導体表面への吸着部位となるものである。
【0012】
本発明のブロック樹脂のブロック(A)の酸価が0.1未満である場合、感光性樹脂との相溶性の低下を招き、一方、90mgKOH/gを超える場合、感光性樹脂との相溶性の低下を招くばかりか、ブロック(B)のみならずブロック(A)が顔料または顔料誘導体に吸着する事になり、分散安定化に寄与する樹脂吸着層が形成されず、分散安定性が損なわれる。またブロック(B)の酸価が100mgKOH/g未満である場合、樹脂の顔料または顔料誘導体への十分な吸着力が得られず、分散安定性が損なわれる。
【0013】
本発明のブロック樹脂のブロック(A)は、溶剤や樹脂との相溶性の向上、立体反発による分散安定化さらにはアルカリ現像性の効果に寄与する。ブロック(A)を構成するモノマーは、顔料および顔料誘導体との相互作用が低いモノマーであり、使用する有機溶剤や水溶剤に合わせて適宜選択できる。
【0014】
本発明の樹脂が原子移動ラジカル重合で合成される場合は、カルボキシル基が触媒毒となる為、直接カルボキシル基を有するモノマーを使用することは困難である。
このため、水酸基を含むアクリルモノマーで重合して水酸基を疎に有するブロック(A’)と水酸基を密に有するブロック(B’)とからなる樹脂を重合した後、それぞれのブロックの水酸基に酸無水物などを反応させて本発明のブロック樹脂を形成することが好ましい。
【0015】
このような方法で合成したポリマーはリビング重合の特性上、樹脂中に酸基を疎に有するブロックと、密に有するブロックを持つ。このため、本発明のブロック樹脂は、酸基を有さないブロックを含まない。
【0016】
また、本発明のブロック樹脂が原子移動ラジカル重合で合成される場合は、水酸基を有さないモノマーと少量の水酸基を有するモノマーとをランダム共重合して、ブロック(A’)を形成した後、重合反応物に水酸基を有するモノマーを添加しブロック(B’)を形成することが好ましい。
当然に、水酸基を有する繰り返し単位80wt%以上有するブロック(B’)が水酸基を有する繰り返し単位70wt%以下有するブロック(A’)に挟まれた形、すなわちA’B’A’トリブロックを形成するものであっても良い。
【0017】
水酸基を有しないモノマーの例としては例えば、エチレン、ブタ−1,3−ジエン、2−メチルブタ−1,3−ジエン、2−クロロブタ−1,3−ジエンのようなジエン類;
スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン類;
アクリル酸メチル、アクリル酸ノルマルブチル、アクリル酸ターシャリーブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸エチルヘキシル、パラクミルフェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、アクリル酸2−ビニロキシエチル、アクリル酸2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸グリセリン、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、アクリル酸フェノキシポリエチレングリコールなどのアクリル酸エステル類;
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ノルマルブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリセリン、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール、メタクリル酸フェノキシポリエチレングリコール、グリシジルメタクリレート、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ビニロキシエチル、メタクリル酸2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチル、メタクリル酸シクロペンタジエニルなどのメタクリル酸エステル類;
アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの(メタ)、アクリル酸誘導体;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類;
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル類;
ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルケトン類、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾル、N−ビニルインドール、N-ビニルピロリドンなどのN-ビニル化合物;
アリルアルコール、塩化アリル、酢酸アリル、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのアリル化合物;
フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのフッ素アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、また2種類以上を併用しても良い。
【0018】
水酸基を含むアクリルモノマーの例としては特に限定されないが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシビニルベンゼン、2−ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートまたはこれらモノマーのカプロラクトン付加物などが挙げられる。これらを単独で用いても2種類以上を併せて使用しても良い。
【0019】
ブロック(B’)の水酸基は、カルボン酸基へ変性される。このとき、水酸基と反応可能であり前記反応後カルボン酸基を存在させうる化合物(c)を使用する。
化合物(c)は、水酸基と反応可能な官能基を有する。このような官能基として、カルボン酸無水物基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸ハロゲン基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボジイミド基、ビニルオキシ基、ハロゲン基などが挙げられる。
さらに、化合物(c)は、ブロック(B’)の水酸基と反応後に、カルボキシル基が存在させることができるものでなければならない。そのためには、化合物(c)は、水酸基と反応可能な官能基以外にカルボキシル基を有しているか、水酸基との反応によってカルボン酸が発生するものでなければならない。
【0020】
水酸基と反応可能な官能基と、カルボキシル基とを有している化合物としては、カルボン酸基を有するエポキシ化合物類、カルボン酸基を有するカルボニルクロリド類、カルボン酸基を有するスルホニルクロライド類、カルボン酸基を有するイソシアネート類、カルボン酸基を有するクロロトリアジン類などが挙げられる。
また、水酸基との反応後にカルボン酸基を導入できる化合物は、酸による加水分解によりカルボン酸を生成する置換基を有する。たとえば、ポリカルボン酸無水物基やt−ブチルエステル基などの上記水酸基と反応可能な置換基を同一分子内に持つ化合物である。
【0021】
水酸基との反応によってカルボン酸が発生するような官能基として、ポリカルボン酸無水物基があり、これを有する化合物として、環状ポリカルボン酸無水物がある。環状ポリカルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水琥珀酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、無水ヘット酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水ハイミック酸およびその誘導体等が挙げられ、これらを単独で用いても併用して用いても良い。また、水酸基とポリカルボン酸無水物基との反応は、公知の条件に従って行う事ができる。
【0022】
本発明のブロック樹脂のブロック(A)とブロック(B)の質量割合は、ブロック(A)が60〜99.9重量%であり、ブロック(B)が0.1〜40重量%であることが好ましい。ブロック(B)が40重量%を超えると、樹脂の分散溶剤への溶解性が低下し、分散不良を招く。また、ブロック(B)の質量割合が0.1重量%未満であると、樹脂と顔料との吸着部位が少ないため、顔料の凝集を防げない。
【0023】
また、公知の熱硬化剤と、本発明のブロック樹脂中のカルボキシル基や水酸基との反応により本発明の顔料分散体を熱硬化させることができる。
【0024】
本発明のブロック樹脂は、水酸基と反応可能であり、硬化性不飽和二重結合を有する化合物(d)、および/または、カルボキシル基または水酸基と反応可能であり、硬化性不飽和二重結合を有する化合物(e)を反応させることでブロック樹脂に光硬化性あるいは熱硬化性を持たせることができる。
例えば、化合物(c)の反応の前に、化合物(d)と、ブロック(B’)の水酸基とを反応させてよい。
また、化合物(c)と共に、化合物(d)を用いてもよい。
また、化合物(c)と反応後のブロック樹脂に、化合物(e)を反応させてもよい。この場合、硬化性不飽和二重結合の導入量は、樹脂全体の水酸基の20〜60モル%となることが好ましい。
化合物(d)または化合物(e)の、水酸基と反応可能な官能基としては、化合物(c)のそれと同じものを例示できる。また、化合物(e)の、カルボキシル基と反応可能な官能基としては、イソシアネート基、グリシジル基、ビニルオキシ基、アミノ基、カルボン酸ハロゲン基、オキサゾリン基、イソチオシアネート基、カルボジイミド基などが挙げられる。
【0025】
化合物(d)および化合物(e)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、グリシジルアリルエーテル、2,3−エポキシ−2−メチルプロピル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、4−ビニル−1−シクロヘキセン1,2エポキシド、グリシジルシンナメート、1,3−ブタジエンモノエポキサイド、セロキサイド2000(ダイセル化学工業株式会社製)などが挙げられる。
水酸基と反応しうる官能基と重合性二重結合とを有する化合物としては、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)、アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)、メタクリロイルオキシエチルイソチオシアネート、アクリロイルオキシエチルイソチオシアネート、メタクリロイルイソチオシアネート、アクリロイルイソチオシアネート、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート(MAI)、イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(TMI)等がある。また、1,6ージイソシアナトヘキサン、ジイソシアン酸イソホロン、ジイソシアン酸4,4’−ジフェニルメタン、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアン酸トリレン、ジイソシアン酸トルエン、2,4−ジイソシアン酸トルエン、ジイソシアン酸ヘキサメチレン、ジイソシアン酸4−メチル−m−フェニレン、ナフチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネートがある。また、ダイマー酸ジイソシアネート等のジイソシアン酸エステル化合物と水酸基、カルボキシル基、アミド基含有ビニルモノマーとを等モルで反応せしめた化合物も、イソシアン酸エステル化合物として化合物(d)および化合物(e)に使用することができる。
さらに、(メタ)アクリル酸の酸ハロゲン化物、ハロプロピオン酸類またはその酸ハロゲン化物なども化合物(d)および化合物(e)に使用できる。ハロプロピオン酸類またはその酸ハロゲン化物を使用した際には、生成したハロプロピオン酸エステル化合物を、脱ハロゲン化水素して、(メタ)アクリル酸エステル化合物を製造することにより、硬化後の硬度を上げることができる。
【0026】
上記化合物の中でも、環状ポリカルボン酸無水物で不飽和二重結合を有するものが望ましく、例えば無水マレイン酸、テトラヒドロフタル酸無水物または分子内にアクリレート基と環状ポリカルボン酸構造を有するものを使用するのが好ましい。
【0027】
本発明に使用する原子移動ラジカル重合では、一般的なラジカル重合中に発生する副反応を抑制するために、重合時に添加する原子移動ラジカル重合の開始剤とラジカル重合性モノマーとの仕込み比によって、樹脂の分子量やブロック(A)または(B)の比率を自由にコントロールできる。
【0028】
本発明のブロック樹脂の数平均分子量(Mn)としては、通常1000〜50000が好ましく、特に3000〜30000がさらに好ましい。上記数平均分子量の(Mn)が1000未満であると、ブロック(A)による立体反発の効果、溶剤溶解性または樹脂との相溶効果が少なく、顔料の凝集を防ぐことが困難となり、分散体の粘度が上昇してしまう。またMnが50000を超えると、分散に必要な樹脂のブロック樹脂の添加量が多くなり、塗膜中の顔料濃度の低下を招く。
【0029】
本発明におけるブロック樹脂はリビング重合法において製造される為、その分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は通常2.0以下、好ましくは1.5以下である。
【0030】
リビング重合においても原子移動ラジカル重合法では、レドックス触媒として銅、ルテニウム、鉄、ニッケルなどの遷移金属錯体を用いて行われる。遷移金属錯体の具体的な例としては、塩化銅(I)、臭化銅(I)などの低原子価のハロゲン化遷移金属が挙げられるが、重合速度をコントロールするために、周知の方法に従って塩化銅(II)や臭化銅(II)などの高原子価の遷移金属を重合系に添加してもよい。
【0031】
上記金属錯体には有機配位子が使用される。有機配位子は、重合溶媒への可溶性およびレドックス共役錯体の可逆的な変化を可能にするために使用される。金属の配位原子としては、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子などが挙げられるが、好ましくは窒素原子またはリン原子である。有機配位子の具体例としては、スパルテイン、2,2’-ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス(ジメチルアミノエチル)アミン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等が挙げられる。
【0032】
前記の遷移金属と有機配位子とは、別々に添加して重合体中で金属錯体を生成させてもよいし、予め金属錯体を合成して重合系へ添加しても良い。特に、遷移金属が銅の場合前者の方法が好ましく、ルテニウム、鉄、ニッケルは後者の方法が好ましい。
【0033】
予め合成されるルテニウム、鉄、ニッケル錯体の具体例としては、トリストリフェニルホスフィノニ塩化ルテニウム(RuCl2(PPh3)3)、ビストリスフェニルホスフィノニ塩化鉄(FeCl2(PPh32)、ビストリスフェニルホスフィノニ塩化ニッケル(NiCl2(PPh32)、ビストリブチルホスフィノニ臭化ニッケル(NiBr2(PBu3)2)等が挙げられる。
【0034】
原子移動ラジカル重合法に使用される開始剤としては、公知のものを使用できるが、主に反応性の高い炭素ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物、ハロゲン化スルホニル化合物等が用いられる。具体的に例示すると、ブロモイソ酪酸エチル、ブロモ酪酸エチル、クロロイソ酪酸エチル、クロロ酪酸エチル、パラトルエンスルホン酸クロライド、ブロモエチルベンゼン、クロロエチルベンゼンなどである。これらは単独または併用で用いる。
【0035】
上記原子移動ラジカル重合において、原子移動ラジカル重合の開始剤は、ラジカル重合性モノマー全量に対し、0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜2モル%の割合で用いられる。
また、遷移金属の使用量は、ハロゲン化物などの形態として、開始剤1モルに対して、0.03〜3モル、好ましくは0.1〜2モルの割合で用いられる。さらに、その配位子は、上記の遷移金属(ハロゲン化物などの形態)1モルに対して、通常1〜5モル、好ましくは2〜3モルの割合で用いられる。
上記原子移動ラジカル重合の開始基を有する芳香環、複素環、縮合芳香環と遷移金属および配位子とをこのような使用割合にすると、リビングラジカル重合の反応性、生成ポリマーの分子量などの点で好適となる。
【0036】
また、原子移動ラジカル重合の特性上、得られた樹脂の停止末端には活性な炭素-ハロゲン結合を有し、公知の方法でこれを変性して官能基を導入する事ができる。
【0037】
また重合開始剤に官能基を持たせておけば、樹脂の片末端にのみ官能基を持たせることができる。
例えば、ターシャリーブチルエステル基を有する開始剤を用いて重合した後に、エステル加水分解することで樹脂片末端にカルボキシル基を導入する方法、または水酸基を有する開始剤を使用して重合し、片末端にのみ水酸基を有する樹脂が合成された後にポリカルボン酸との反応などにより樹脂片末端にカルボキシル基を導入する方法などである。
【0038】
原子移動ラジカル重合は無溶剤でも進行させることができるし、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アニソール、MEKなどの溶剤の存在下で進行させてもよい。溶剤を用いる場合、重合速度の低下を防ぐため、重合終了後の溶剤濃度が50重量%以下となる使用量とするのがよい。無溶剤または少量の溶剤量でも、重合熱の制御などに関する安全性の問題は特に無く、むしろ溶剤削減によって経済性や環境対策などの面で好適である。
【0039】
重合条件としては、重合速度や触媒の失活の点から、60〜130℃の重合温度で、最終的な分子量や重合温度にも依存するが、約1〜100時間の重合時間とすればよい。また、重合反応に際しては、酸素による重合触媒の失活を防ぐ為、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行われるのが望ましい。
【0040】
ブロック共重合体の合成は周知の方法によって行うことが出来るが、ブロック(A’)を形成するモノマーを重合し、重合収率が90%〜100%を超えた後、ブロック(B’)を形成するモノマーを添加して重合を行うことが好ましい。
【0041】
合成例としては、重合反応終了後、重合反応系を0℃以下、好ましくは−78℃程度に冷却して反応を停止させ、周知の方法に従って、残存モノマー及び/または溶剤の除去、適当な溶媒中での再沈殿、沈殿したポリマーの濾過または遠心分離、ポリマーの洗浄および乾燥を行うことができる。
必要に応じて周知の方法により重合系に含まれる遷移金属などを除去した後、揮発分を蒸発させることによって本発明のブロック樹脂を得ることが出来る。
除去方法としては、THF、トルエン、MEK等の有機溶媒で反応混合液を希釈し、水・希塩酸やアミン水溶液などで洗浄、樹脂溶液を陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に接触させる方法、アルミナ・シリカ若しくはクレーのカラムまたはパッドに通す方法、還元剤やハイドロサルタイト類などの吸着剤を加えた後に濾過・遠心分離する方法などがある。
【0042】
本発明のブロック樹脂には、さらに顔料、本発明のブロック樹脂とは異なる樹脂、溶剤、さらには塩基性基を有する顔料誘導体とを加えて顔料分散組成物とすることができる。
【0043】
本発明のブロック樹脂は、一般に市販されている顔料に優れた分散効果を発揮する。例えば、可溶性および不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ペリレン・ペリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アンスラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、チオインジゴ系顔料等の有機顔料および、カーボンブラック、酸価チタン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、弁柄、鉄黒、亜鉛華、紺青、群青等の無機顔料さらにはジルコニウム、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、錫、インジウムなどの金属酸化物で例示される機能性無機物質などの分散に用いる事ができる。
【0044】
本発明のブロック樹脂は塩基性基を有する顔料誘導体と併用する事で、非常に良好な顔料分散性を示す。
【0045】
本発明の顔料分散体に使用される塩基性基を有する顔料誘導体としては、公知のものを使用することができるが、下記一般式(1)で示される顔料誘導体を使用することが好ましい。

P−〔X−Y−Z−N(R1 )R 〕n 一般式(1)
(式中、Pは有機色素残基であり、Xは、S、C、N、O、Hから選ばれる2〜15個の原子で構成される化学的に合理的な組合せからなる2価の結合基であり、Yは、直接結合、−NR−(但し、RはHまたは炭素数1〜18のアルキル基)または−O−であり、Zは炭素数1〜6のアルキレン基であり、R1およびRは、それぞれ独立に置換されていてもよい炭素数1〜18のアルキル基または、R1とRとで一体となって形成した複素環であり、nは1〜3の整数を表す。)
【0046】
有機色素残基Pとして具体的には、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、金属錯体系色素等の色素である。
【0047】
Xとしては例えば、−SO2 −、−CO−、−CH2 −、−CH2S−、−CR、H2 O−、−COO−、−NH−、−CH2 NHCOCH−、またはこれらの組合せが挙げられる。
なかでも−SO2−、−CO−、−CH2−が好ましい。また、R1およびRとで複素環を形成した場合、該複素環の炭素以外の構成元素としてはN、O、Sが挙げられる。
【0048】
なお、有機顔料の分子骨格と顔料誘導体における有機色素残基Pの分子骨格とは必ずしも一致している必要はないが、通常色相の関係から同一の分子骨格を用いることが好ましい。
特に、青色顔料に対してはフタロシアニン系残基、赤色顔料に対してはキナクリドン系残基、ジケトピロロピロール系残基またはベンズイミダゾール残基、黄色顔料に対してはベンズイミダゾール系残基を組み合わせることが好ましい。
【0049】
顔料誘導体の構造としては下記表1のa〜gが好ましい。
【表1】

【0050】
また、本発明の顔料分散体に使用する顔料誘導体は、顔料分散体中の顔料100重量部に対し、好ましくは0.5〜30重量部、更に好ましくは5〜20重量部の割合で使用する。
【0051】
また、本発明の顔料分散体に使用される有機溶剤としては、本発明のブロック樹脂が溶解するものであれば限定されないが、シクロヘキサン、n-ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチルなどの酢酸エステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのグリコールエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸セロソルブ、酢酸メトキシブチルなどのグリコールエステル類などが挙げられる。
【0052】
本発明のブロック樹脂の使用量は、顔料100重量部に対して固形分換算で5〜300重量部が好ましい。特に、濃縮分散体として使用する場合、顔料100重量部に対してブロック樹脂が固形分換算で10〜150重量部が好ましい。また、塗料または印刷インキとして使用する場合は、顔料100重量部に対してブロック樹脂が固形分換算で30〜300重量部が好ましい。顔料100重量部に対してブロック樹脂が5重量部より少ないと顔料が分散しにくくなり、300重量部より多いと着色力が低いため塗料または印刷インキとして使用に適さない場合がある。
なお、塗料または印刷インキとして使用する場合には、メラニン樹脂・エポキシ樹脂等の硬化剤樹脂や硬化触媒、界面活性剤等を添加しても良い。
【0053】
本発明の顔料分散体においてブロック樹脂は分散樹脂として単独で用いても良いが、本発明のブロック樹脂と異なる樹脂と併用しても良い。その際、併用する他の樹脂は本発明のブロック樹脂と相溶するものであれば良いが、着色感光性組成物として露光・現像されるものが好ましく、樹脂中に酸性基や不飽和二重結合を有するものがさらに好ましい。また、使用される他の樹脂の割合としては、顔料分散体中の顔料100重量部に対し、5〜200重量部が好ましい。
【0054】
本発明のブロック樹脂と併用して顔料分散体に使用される樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩ビ−酢ビ共重合体、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ブタジエンーアクリルニトリル共重合体、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、エチレン−酢ビ系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、塩酢ビ系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、シリコン樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂等が挙げられる。本発明のブロック樹脂と相溶性の良好なアクリル樹脂、さらに詳しくは酸性基、不飽和二重結合を有するアクリル樹脂を用いるのが好ましい。
【0055】
また、本発明の顔料分散体にはさらに市販の分散剤を添加しても良く、その場合、市販の分散剤は酸性基を有するものが望ましい。
【0056】
本発明のブロック樹脂の使用方法としては、例えば下記1.〜4.のような方法がある。これらの方法によっても本発明の効果を奏する。
1. 顔料とブロック樹脂を予め混合して得られる顔料組成物を、非水系または水系ビヒクル添加して分散する。
2. 非水系または水系ビヒクルに顔料とブロック樹脂を添加して分散する。
3. 非水系または水系ビヒクルに顔料とブロック樹脂を予め別々に分散し、得られた分散体を混合する。この場合、ブロック樹脂を溶剤のみで分散しても良い。
4. 非水系または水系ビヒクルに顔料を分散した後、得られた顔料分散体にブロック樹脂を添加する。
【0057】
前記1.〜4.を含む顔料組成物の調整法としては、顔料粉末と本発明のブロック樹脂とを単に混合しても十分な分散効果が得られるが、下記(ア)〜(ウ)の調整法に従うことが好ましい。
(ア)ニーダー、ディソルバー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、2本ロールミル、3本ロールミル、その他のロール、サンドミル、スーバーミル、アトライター、その他の粉砕機、その他の分散機などにより機械的に混合する調整法
(イ)顔料の水または有機溶剤によるサスペンジョン系に本発明のブロック樹脂を含む溶液を添加し、顔料表面にブロック樹脂を沈着させる調整法
(ウ)硫酸等の強い溶解力を持つ溶媒に有機顔料とブロック樹脂を共溶解して水等の貧溶媒により共沈させる等の賢密な混合法
【0058】
本発明のブロック樹脂は光硬化性不飽和二重結合と酸基を有する為に、顔料分散体にした後、公知の方法に従って光開始剤・増感剤を添加し、マスクして活性エネルギー線を照射することで光硬化させる事ができる。未露光部分をアルカリ現像する事でパターン形成することができる。
【実施例】
【0059】
以下実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の部は重量部、%は重量%を示す。
【0060】
製造例1
温度計、攪拌装置、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、MEK 94部、ノルマルブチルメタクリレート94部、ヒドロキシエチルメタクリレート0.6部、ブロモイソ酪酸エチル1.0 部、テトラメチルエチレンジアミン2.3部を仕込み、40℃に昇温して30分窒素を導入した。塩化第一銅 1.0部を投入し、窒素気流下で70℃まで昇温して重合を開始した。5時間重合後、重合溶液をサンプリングし、重合の固形分から重合収率が100%である事を確認し0℃に冷却して重合を停止した。GPC測定の結果、ポリマーのMnは19000、Mw/Mn=1.3であった。重合反応物に無水琥珀酸(新日本理化株式会社製:リカシッドSA)を0.5部加え、85℃に昇温した。1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(東京化成工業株式会社製)を0.8部添加し、4時間反応を行った。反応後の生成物のIR測定において酸無水物に由来する1782cm-1 および 1862cm-1の吸収は消失していた。反応生成物の酸価は2.9mgKOH/gであった。GPC測定より求めたポリマーの数平均分子量Mnは20000であり、分子量分布:Mw/Mn=1.4であった。
【0061】
製造例2
上記製造例と同様の方法でMEK 94部、ノルマルブチルメタクリレート94部、ヒドロキシエチルメタクリレート0.6部、ブロモイソ酪酸エチル1.0 部、テトラメチルエチレンジアミン2.3部を仕込み重合を行った。5時間後、ヒドロキシエチルメタクリレート5.7部、MEK5.7部を添加しさらに2時間重合を行った。反応混合物をサンプリングし、重合の固形分から収率が100%であるのを確認して重合を停止した。GPC測定の結果ポリマーのMnは21000であり、Mw/Mn=1.3であった(樹脂X−0)。
【0062】
製造例3
上記製造例2で得られた反応混合物に無水琥珀酸(新日本理化株式会社製:リカシッドSA)を0.5部加え、85℃に昇温した。1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(東京化成工業株式会社製)を0.8部添加し、4時間反応を行った。反応後の生成物のIR測定において酸無水物に由来する1782cm-1 および1862cm-1の吸収は消失していた。反応生成物の酸価は26.1mgKOH/gであった。GPC測定より求めたポリマーの数平均分子量Mnは20000であり、分子量分布:Mw/Mn=1.4であった。酸基をランダムに有し酸価2.9mgKOHであるブロック(A)と酸価が243mgKOHであるブロック(B)を有する樹脂を得た(樹脂X−1)。
【0063】
製造例4
製造例1で得られた水酸基を有する樹脂(樹脂X−0)溶液200部に、イソシアネートエチルメタクリレート0.8部、無水琥珀酸4.4部、メトキノン0.3部を加え、ラウリン酸ジブチル錫(DBTDL)を0.1部、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン0.95部を添加し、乾燥空気気流下80℃で5時間反応させた。反応後の生成物のIR測定においてイソシアネート基による2275cm-1の吸収、および酸無水物に由来する1782cm-1 および 1862cm-1の吸収は消失していた。反応生成物の酸価は23.5mgKOH/gであり不飽和二重結合を有するブロック樹脂を得た(樹脂X−2)。
【0064】
比較製造例1
製造例1と同様の方法で、MEK 93.7部、ノルマルブチルメタクリレート93.7部、ブロモイソ酪酸エチル1.0部、テトラメチルエチレンジアミン2.3部を仕込み、5時間重合した。反応物の固形分から重合収率が99%であるのを確認し、フラスコを冷却して重合を停止した。この反応性生物をMEKで希釈した後、大量のメタノールで沈殿精製し、フィルターを用いて吸引濾過・減圧乾燥を行いマクロ開始剤を得た(Mnは18000、Mw/Mn=1.3)。得られたマクロ開始剤94.6部、MEK 100部、テトラメチルエチレンジアミン 2.3部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート6.3部をフラスコに仕込み、上記製造例と同様の方法で塩化第一銅1.0部を添加して重合を開始した。2時間後、溶液の固形分から重合収率が100%であるのを確認し重合を停止した。さらに上記製造例2と同様の方法で樹脂中の水酸基を酸基へと変換し酸基を有するブロックポリマーを得た(Mn=18800、Mw/Mn=1.5、酸価24.1mgKOH/g、樹脂Y−1)。
【0065】
比較製造例2
製造例1と同様の方法で、MEK 93.7部、ノルマルブチルメタクリレート93.7部、ブロモイソ酪酸エチル1.0部、テトラメチルエチレンジアミン2.3部を仕込み、5時間重合した。反応物の固形分から重合収率が93%であるのを確認し、反応混合物に2−ヒドロキシエチルメタクリレート6.3部、MEK6.3部を添加した。さらに2時間重合を行った。重合後の固形分から収率は100%であり、ポリマーのMn =19500、Mw/Mn =1.3であった。上記製造例2と同様の方法で樹脂中の水酸基を酸基へと変換した(Mn=19000、Mw/Mn=1.4、酸価26.1mgKOH/g、樹脂Y−2)。
【0066】
比較製造例3
温度計、攪拌装置、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、MEK 100部、ノルマルブチルメタクリレート93.7部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート6.3部、ブロモイソ酪酸エチル1.0部、テトラメチルエチレンジアミン2.3部を仕込み、30分窒素を導入した。塩化第一銅 1.0部を投入し、窒素気流下で70℃まで昇温して重合を開始した。5時間重合後、重合溶液をサンプリングし、反応混合物の固形分から重合収率が100%である事を確認した後、重合を停止した。GPC測定の結果、ポリマーのMnは23000、Mw/Mn=1.3であり水酸基を有するランダム樹脂を得た。上記製造例2と同様の方法で樹脂中の水酸基をカルボン酸基へと変換した。樹脂の酸価は26.1mgKOH/gであった(樹脂Y−3)。
【0067】
得られた樹脂X−1〜2および樹脂Y−1〜3の樹脂溶液はそれぞれMEKで希釈した後、加圧濾過し、樹脂溶液中の重合触媒の残渣を取り除いた。濃縮により溶剤を除去し、酸性アクリル樹脂を得た。
【0068】
(実施例1〜5、比較例1〜3)
表2のように、顔料(C.I.. Pigment Blue 15:6)、樹脂X−1、X−2または樹脂Y−1、Y−2、Y−3の酸性分散樹脂、一般的なラジカル重合で合成した酸基を有するアクリル樹脂(Z)(ブチルメタクリレート-アクリル酸共重合体 Mw=35000 酸価130)、下記構造式(2)で表される塩基性基を有する顔料誘導体、およびシクロヘキサノンを配合し、0.8mmφジルコニアビーズ100部を加えペイントコンディショナーで3時間分散した。
式(2)
【化1】



CuPcは、銅フタロシアニン残基を表す。
【0069】
得られた顔料分散組成物をPETフィルム上にバーコーターで塗工し、150℃で10分乾燥させた。光沢の測定はデジタル変角光沢計により60°グロスを測定した。測定結果は表2に記す。
【0070】
得られた顔料分散組成物について、E型粘度計を用いてその粘度を測定し、増粘の程度を調べた。測定結果を表2に記す。
【0071】
得られた顔料分散体をガラス基板上にスピンコーターにより乾燥膜厚で2μmとなるように塗布し、150℃で10分乾燥させた。得られた塗膜を炭酸ソーダ1%水溶液で現像し、水でリンスした後、180℃で60分乾燥を行った。塗膜の有機皮膜または顔料残りの程度を目視で、A(良)〜D(不良)で判別した。測定結果を表2に記す。
【0072】
樹脂X−1、X−2または樹脂Y−1、Y−2、Y−3のアクリル樹脂15部に放射線硬化樹脂であるアロニックスM−240(東亜合成化学社製、東亜合成化学社製、二官能アクリレート)15部と酢酸エチル70部を混合しガラス基板上にスピンコーターにより乾燥膜厚で2μmとなるように塗布した。さらに塗膜を150℃で90分乾燥させた。得られた塗膜の濁度を目視で観測し、5(良)〜1(不良)で評した。測定結果を表3に記す。
【表2】


【表3】

【0073】
表2および表3より、比較例の樹脂は良好な顔料分散性またはアルカリ現像性と光硬化性樹脂との相溶性を両立できないのに対して、本発明のブロック樹脂は良好な顔料分散性とアルカリ現像性、さらには光硬化性樹脂との相溶性を両立し、それら全てに優れた効果を発揮した。本発明の樹脂は良好な分散性と感光性樹脂との相溶性を両立するので、アルカリ現像が必要とされない用途にも好適である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のブロック樹脂は、印刷インキや塗料の使用適正の向上を図る顔料分散樹脂、樹脂型分散剤およびそれを含有する顔料組成物、ならびに顔料分散体に使用できるほか、親水性基と非親水性基を有することから、界面活性剤、相間移動物質、表面改質剤、顔料以外の物質の分散剤などに利用が期待できる。
本発明のブロック樹脂は、インキ、塗料、樹脂成型品または平画面パネルの色相材料、ブラックマトリックスなどの顔料分散を必要とする用途に、幅広く使用できる。
























【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸基を有するブロックのみからなる樹脂であって、酸価0.1〜90mgKOH/gであるブロック(A)および酸価100mgKOH/g以上であるブロック(B)とからなり、リビング重合で得ることができるブロック樹脂。
【請求項2】
水酸基を有するモノマーをリビング重合して得られる水酸基含有樹脂を、該水酸基と反応することにより酸基を存在させうる化合物(c)で変性させることを特徴とする請求項1記載のブロック樹脂。
【請求項3】
リビング重合が、原子移動ラジカル重合である請求項1または2記載のブロック樹脂。
【請求項4】
ブロック樹脂の数平均分子量が、1000〜50000である請求項1〜3いずれか1項に記載のブロック樹脂。
【請求項5】
ブロック(A)とブロック(B)の質量割合が、(A)60〜99.9重量%、(B)0.1〜40重量%である請求項1〜4いずれか1項に記載のブロック樹脂。
【請求項6】
前記の化合物(c)が、環状ポリカルボン酸無水物である請求項2〜5いずれか1項に記載のブロック樹脂。
【請求項7】
さらに、前記の化合物(c)とともに、水酸基と反応可能であり、硬化性不飽和二重結合を有する化合物(d)を用いることを特徴とする請求項2〜6いずれか1項に記載のブロック樹脂。
【請求項8】
さらに、ブロック樹脂の有する酸基または水酸基と反応可能であり、硬化性不飽和二重結合を有する化合物(e)と反応させることを特徴とする請求項2〜7いずれか1項に記載のブロック樹脂。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか1項に記載のブロック樹脂と、顔料と、必要に応じて顔料誘導体および/またはブロック樹脂以外の酸性樹脂とを、有機溶剤または水中に分散してなる顔料分散体。
【請求項10】
顔料誘導体が塩基性基を有することを特徴とする請求項9記載の顔料分散体。
【請求項11】
リビング重合で得られる、水酸基を有する繰り返し単位70wt%以下のブロック(A’)および水酸基を有する繰り返し単位80wt%以上のブロック(B’)を持つブロック樹脂に対して、該水酸基と反応することにより酸基を存在させうる化合物(c)を反応させることを特徴とするブロック樹脂の製造方法。
【請求項12】
さらに、水酸基と反応可能であり、硬化性不飽和二重結合を有する化合物(d)および/または酸基または水酸基と反応可能であり、硬化性不飽和二重結合を有する化合物(e)を反応させることを特徴とする請求項11記載のブロック樹脂の製造方法。
【請求項13】
リビング重合が、原子移動ラジカル重合である請求項11または12記載のブロック樹脂の製造方法。





























【公開番号】特開2007−112932(P2007−112932A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307149(P2005−307149)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】