説明

ブロワモータの制御方法とブロワシステム

【課題】センサなどの付加的な装置を用いることなくブロワを駆動するモータの回転数を制御でき、また、必要とする最低限の負圧を供給しながら、ブロワを駆動するモータの回転数を抑制でき、自動ワインダーを円滑に稼動させながら省エネルギー化を図る。
【解決手段】各ワインディングユニット1の糸継ぎ動作回数と、糸継ぎに失敗した失敗回数とを集計してシステム全体のミス率を算出する。算出したミス率に基づいて前記ブロワモータ18に電力を供給するインバータ19の出力周波数を増減制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ワインダーを構成する複数台のワインディングユニットに向けて負圧を供給するブロワモータの制御方法、および、ブロワシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
給糸ボビンから解舒される糸を巻き取ってパッケージを形成するための自動ワインダーのワインディングユニットには、糸欠陥が検出されたときに糸を切断し、糸欠陥を除去しつつ全自動的に糸継ぎを行う糸継ぎ機能が具備されている。かかる糸継ぎ動作においては、サクションマウスに供給される負圧(吸引力)によりパッケージ側の上糸端が捕捉され、このサクションマウスにより糸継ぎ装置に上糸端が受け渡される。このため、複数のワインディングユニットが並設された自動ワインダーにおいては、個々のワインディングユニットに対して負圧を供給する必要があり、共通の吸気ダクトを介して、該吸気ダクトに接続された1基のブロワで個々のワインディングユニットに負圧を供給するブロワシステムが広く採用されている。
【0003】
近年、地球温暖化問題やランニングコストの観点から自動ワインダーにおいても省エネルギー化が重大な課題となっている。自動ワインダーの消費電力を分析すると、ブロワシステムのブロワを駆動しているブロワモータ(以下、単にモータと記す)の消費電力が占める割合が大きく、過剰な負圧を供給しないように該モータの回転数を適正に制御して、消費する電力を抑えることで省エネルギー化を達成できると考える。この種のブロワシステムにおけるモータの制御方法の公知例としては、例えば特許文献1を挙げることができ、そこでは、サクションボックス内に設けられたセンサで負圧を検出し、該センサの検出値に基づき負圧が一定になるようにインバータの周波数を制御することで、ブロワを駆動するモータの回転数を制御している。つまり、センサの検出値を、予め設定されているしきい値と比較し、検出値がしきい値よりも低い場合にはインバータの周波数を増やしてモータの回転数を上げ、検出値がしきい値よりも高い場合にはインバータの周波数を減らしてモータの回転数を下げている。
【0004】
【特許文献1】実開平2−40759号公報(第5頁第9〜18行、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1において、予め設定されるしきい値は、自動ワインダーが円滑に稼動するのに必要な負圧の理論値であり、実際に必要な負圧より幾分高めに設定されている。このため、高めに設定された分だけモータの回転数が高くなり、電力を余分に消費する不利がある。圧力センサが異常状態に陥ったり、最悪の場合には故障する可能性もあり、調整や修理にコストが掛かる。
【0006】
本発明の目的は、センサなどの付加的な装置が不要であり、システム全体の低コスト化とメンテナンスの容易化とを図ることができるブロワシステムおよびブロワモータの制御方法を得るにある。本発明の目的は、必要とする最低限の負圧を供給しながら、ブロワを駆動するブロワモータの回転数を抑制でき、したがって、自動ワインダーを円滑に稼動させながら省エネルギー化を図ることができるブロワシステムおよびブロワモータの制御方法を得るにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、糸継ぎ機能を備えた複数台のワインディングユニットに向けて、糸継ぎ動作時において使用する負圧を供給するブロワシステムのブロワモータを制御する方法を対象とする。各ワインディングユニットの糸継ぎ動作回数と、糸継ぎに失敗した失敗回数とを集計してシステム全体のミス率を算出する。このミス率に基づいて前記ブロワモータに電力を供給するインバータの出力周波数を増減制御することを特徴とする。
【0008】
具体的には、前記ブロワシステムは、前記ワインディングユニットに接続される複数の分岐管を備える吸気ダクトと、該吸気ダクトの一端に接続されて負圧を発生させるブロワと、該ブロワを回転駆動するブロワモータと、該ブロワモータに電力供給を行うインバータとを含む。前記ブロワモータの回転数は、該ブロワモータに電力供給を行う前記インバータの出力周波数により制御されている。前記ワインディングユニットは、糸欠陥が検出されると、糸を切断する糸切断装置と、糸切断動作により形成された下糸端と上糸端との糸継ぎ動作を行う糸継ぎ装置と、前記ブロワによって発生した負圧を利用して前記上糸端を吸引捕捉して前記糸継ぎ装置に受け渡すサクションマウスとを備えている。ブロワモータの制御方法は、各ワインディングユニットの糸継ぎ動作回数と、糸継ぎに失敗した失敗回数とを取得し、これら動作回数と失敗回数とからシステム全体の上糸口出しミス率を算出するミス率算出工程と、前記ミス率算出工程において算出された上糸口出しミス率に基づいて、前記インバータの出力周波数を増減制御する周波数変更工程とを含む。
【0009】
詳しくは、前記ミス率算出工程においては、設定時間毎に上糸口出しミス率を算出し、これを記憶部内に格納してある。前記周波数変更工程においては、前記記憶部に格納されている直近の上糸口出しミス率を読み出す。算出された上糸口出しミス率が読み出された上糸口出しミス率よりも大きい場合には、前記インバータの出力周波数を増加させる。算出された上糸口出しミス率が読み出された上糸口出しミス率と同一あるいは小さい場合には、前記インバータの出力周波数を減少させる。
【0010】
前記ミス率算出工程においては、設定時間毎に上糸口出しミス率を算出するものとしてもよい。この場合には、前記周波数変更工程においては、上糸口出しミス率が算出されると、これを予め設定されているしきい値と比較する。算出された上糸口出しミス率がしきい値よりも大きい場合には、前記インバータの出力周波数を増加させる。しきい値と同一あるいは小さい場合には前記インバータの出力周波数を減少させる。
【0011】
前記周波数変更工程においては、前記インバータの出力周波数を、予め設定された最小値と最大値との範囲内で変動させるようにすることが好ましい。
【0012】
また本発明は、自動ワインダーを構成する複数台のワインディングユニットに向けて負圧を供給するブロワシステムを対象とする。前記ブロワシステムは、前記ワインディングユニットに接続される複数の分岐管を備える吸気ダクトと、該吸気ダクトの一端に接続されて負圧を発生させるブロワと、該ブロワを回転駆動するブロワモータと、該ブロワモータに電力供給を行うインバータと、該インバータの出力周波数を増減制御することで、前記ブロワモータの回転数を調整する制御部とを含む。ワインディングユニットは、糸欠陥が検出されると糸を切断する糸切断装置と、糸切断動作により形成された下糸端と上糸端との糸継ぎ動作を行う糸継ぎ装置と、前記ブロワによって発生した負圧を利用して上糸端を吸引捕捉して糸継ぎ装置に受け渡すサクションマウスとを備える。前記制御部が、各ワインディングユニットの糸継ぎ動作回数と、糸継ぎに失敗した失敗回数とを取得し、これら動作回数と失敗回数とからシステム全体の上糸口出しミス率を算出し、この上糸口出しミス率に基づいて、前記インバータの出力周波数を増減制御することを特徴とする。
【0013】
具体的には、前記制御部で算出された設定時間毎の上糸口出しミス率が格納される記憶部を備えるものとすることができる。前記制御部は、上糸口出しミス率が算出されると前記記憶部に格納されている直近の上糸口出しミス率を読み出す。算出された上糸口出しミス率が読み出された上糸口出しミス率よりも大きい場合には、前記インバータの出力周波数を増加させる。算出された上糸口出しミス率が読み出された上糸口出しミス率と同一あるいは小さい場合には、前記インバータの出力周波数を減少させる。
【0014】
予め設定されたしきい値が格納される記憶部を備えるものとしてもよい。この場合には、前記制御部は、上糸口出しミス率が算出されると、これを前記記憶部に格納されているしきい値と比較する。算出された上糸口出しミス率がしきい値よりも大きい場合には、前記インバータの出力周波数を増加させる。しきい値と同一あるいは小さい場合には、前記インバータの出力周波数を減少させる。
【0015】
前記制御部が、前記インバータの出力周波数を予め設定された最小値と最大値との範囲内で変動変動させるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のブロワシステム及びブロワモータの制御方法においては、各ワインディングユニットのサクションマウスが糸継ぎ装置への受け渡し動作を行った動作回数と、該上糸端の前記糸継ぎ装置への受け渡し動作に失敗した失敗回数とに基づいて、システム全体の上糸口出しミス率(ミス率)を算出し、この上糸口出しミス率に基づいて、インバータの出力周波数を増減制御して、ブロワモータの回転数を増減させるようにした。つまり、各ワインディングユニットの受け渡し動作の動作回数と失敗回数とを集計してシステム全体の上糸口出しミス率を算出し、このミス率に基づいて、インバータの出力周波数を増減制御するようにした。したがって、本発明によれば、従来のブロワシステムにおいては不可欠であった負圧検出用のセンサを排して、システム全体の構造を簡素化することができるので、ブロワシステムの低コストを図ることができる。センサが異常状態に陥ったり、故障するおそれが無く、したがってメンテナンスの手間が少なくて済み、ブロワシステムの維持費を削減できる。
【0017】
上述のように、特許文献1において、予め設定されているしきい値は、自動ワインダーが円滑に稼動するのに必要な負圧の理論値であり、実際に必要な負圧より幾分高めに設定されている。したがって、高めに設定された分だけモータの回転数が高くなり、電力を余分に消費することが避けられない。これに対して本発明においては、上糸口出しミス率に基づいて、インバータの出力周波数を増減制御して、ブロワモータの回転数を増減させるようにしたので、必要とする最小限の負圧を供給しながら、ブロワを駆動するブロワモータの回転数を抑制でき、自動ワインダーを円滑に稼動させながら省エネルギー化を図ることができる。つまり、上糸口出しミス率(ミス率)が基準値よりも高い場合には、供給されている負圧が不足して上糸口出し動作が適切に行われていないと判断でき、また、上糸口出しミス率が基準値と同程度あるいは低い場合には、負圧は十分に供給されていると判断することができる。したがって、必要とする最小限の負圧を供給しながら、ブロワを駆動するブロワモータの回転数を効果的に抑制することができる。ワインディングユニットが処理する糸の状態に応じて、適宜且つ自動的にブロワモータの回転数を増減制御できる点でも優れている。
【0018】
具体的には、上記の基準値としては、直近の上糸口出しミス率を採用することができる。これによれば、算出されたミス率と直近のミス率とを比較して、前者が後者よりも大きい場合には、サクションマウスに供給される負圧が不足気味であり、受け渡し動作の失敗が多くなる傾向にあると判断して、インバータの出力周波数を増やしてブロワモータの回転数を増加させる。また、算出されたミス率と直近のミス率とを比較し、前者が後者よりも小さい場合には、サクションマウスに供給される負圧が過剰気味であると判断して、インバータの出力周波数を減らして、ブロワモータの回転数を低下させる。
【0019】
上記の基準値としては、予め設定されているしきい値であってもよい。これによれば、算出されたミス率としきい値とを比較して、前者が後者よりも大きい場合には、サクションマウスに供給される負圧が不足気味であり、受け渡し動作の失敗が多くなる傾向にあると判断して、インバータの出力周波数を増やしてブロワモータの回転数を増加させる。また、算出されたミス率と直近のミス率とを比較し、前者が後者よりも小さい場合には、サクションマウスに供給される負圧が過剰気味であると判断して、インバータの出力周波数を減らして、ブロワモータの回転数を低下させる。
【0020】
加えて、インバータの出力周波数に最小値と最大値とを設定してあると、供給する負圧の最低値を規定することができ、また、モータの回転数がブロワの出力特性の適正範囲を超えて上昇することを防止できる。また、ブロワの回転数が異常に低くなったり、異常に高くなったりすることがなく、信頼性に優れたブロワシステムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1実施例) 本発明に係るブロワモータの制御方法を適用した自動ワインダーの第1の実施例を図1ないし図4に基づき説明する。自動ワインダーは、図2に示すように、列状に配置した一群のワインディングユニット1と、各ワインディングユニット1に負圧を供給するためのブロワシステム2と、一群のワインディングユニット1およびブロワシステム2の運転管理をする制御装置3とで構成される。
【0022】
図3において、ワインディングユニット1は、起立固定される縦長箱状の本体フレーム5を基体にして構成する。本体フレーム5の一側には、バルーンブレーカー6と、テンション装置7と、糸継ぎ装置8と、スラブキャッチャー9などが、フレーム下部からフレーム上部へ向かって記載順に配置してある。本体フレーム5の一側上部には、糸Yを一定の幅範囲で変位操作する綾振ドラム10と、パッケージPを回転自在に軸支するクレードル11などが配置してある。これらの機器以外に、切断された糸Yを吸引捕捉して糸継ぎ装置8に渡す中継ぎパイプ12とサクションマウス13が、先の機器列の中途部に上下方向へ旋回可能に設けられている。
【0023】
バルーンブレーカー6の下方には、精紡ボビンBが起立姿勢で支持されている。精紡ボビンBから繰り出された糸Yは、先の各機器6〜9を通過する間に糸欠陥の有無がチェックされ、糸欠陥が発見されるとスラブキャッチャー9に設けたカッターで切断される。このカッターが本発明の「糸切断手段」を構成する。
【0024】
糸Yの巻き取り動作中に糸Yの欠陥部が検出されて、糸Yが切断される。この欠陥部を除去して、上糸と下糸を繋ぐ糸継ぎ動作が行われる。糸Yが切断されると、欠陥部を含む上糸はパッケージPに巻き取られ、下糸は、中継ぎパイプ12に捕捉される。次いで、サクションマウス13が上方へ旋回し、パッケージPに巻き取られた上糸の上糸端を吸引捕捉する。その後、中継ぎパイプ12およびサクションマウス13がそれぞれ旋回して、下糸および上糸を糸継ぎ装置8に受け渡し、欠陥部が除去されると共に糸継ぎされる。欠陥部を含む上糸はサクションマウス13に吸引捕捉され、糸継ぎ装置8で下糸と糸継ぎされる際に、欠陥部を含む上糸の糸端部分が糸継ぎ装置8に設けられたカッターにより切断されて、くず糸として廃棄される。ワインディングユニット1に供給される負圧は、主に糸継ぎ動作時に糸継ぎ装置8と、中継ぎパイプ12およびサクションマウス13とで必要となるが、中でも、サクションマウス13が上糸端を吸引捕捉する際に最も消費される。
【0025】
ブロワシステム2は、図2および図3に示すように、一端にはブロワ17が設置されて他端は封止された吸気ダクト16と、ブロワ17を回転駆動するモータ(ブロワモータ)18と、モータ18に電力供給を行うインバータ19と、各ワインディングユニット1と吸気ダクト16とを接続し負圧を供給する分岐管20と、ブロワ17とワインディングユニット1との間に設置されるサクションボックス21とを備えている。吸気ダクト16はワインディングユニット1の背面側を列の方向に沿って配置される。ブロワ17は、ケーシング内でインペラーが回転して負圧を発生させる遠心式のファンである。なお、サクションボックス21には、糸継ぎ動作などで吸引された糸くずなどの塵を取り除くためのフィルター(図示しない)を取り付けてあり、ブロワ17側に塵が流入しないようにしてある。
【0026】
制御装置3は、各ワインディングユニット1の運転管理と、ブロワシステム2の運転管理を行う。図1に示すように、制御装置3は、機器の制御を行う制御部23と、各種データを保存してあるメモリ24(記憶部)を備えている。メモリ24は、電源を遮断してもデータが消去されない不揮発性の記憶装置である。制御装置3の前面には、入力装置(図示しない)が設けられて、作業者が運転指示や設定変更などの操作が行えるようになっている。
【0027】
各ワインディングユニット1に供給される負圧は、ブロワシステム2によって供給されている。ブロワ17を回転駆動するモータ18にインバータ19から電力が供給されるとブロワ17によって負圧が発生し、吸気ダクト16および分岐管20を介してワインディングユニット1に負圧が供給される。供給された負圧により各ワインディングユニット1は糸継ぎ動作などを行うことができ、精紡ボビンBから糸Yが巻き取られてパッケージPが形成される。
【0028】
ワインディングユニット1は、ブロワシステム2により負圧を供給されており、そのほとんどが糸継ぎ動作に使用される。特に糸Yが切断された時にパッケージPに巻き取られる上糸を吸引捕捉するサクションマウス13で必要となる。供給される負圧が不足していると、糸継ぎ動作時に、サクションマウス13による上糸端の吸引捕捉ができずに、該上糸端が糸継ぎ装置に受け渡されないために糸継ぎ動作を完了することができない。糸継ぎ動作が完了しなかった場合には、再度サクションマウス13が旋回して上糸端の捕捉を試みる動作を行う。
【0029】
上述のように、ワインディングユニット1はこの糸継ぎ動作の結果を記録しており、制御部23は、各ワインディングユニット1の上糸口出しミス率(MUP)を集計して、上糸口出しミス率を算出し、その値をメモリ24に記憶された前回算出された値と比較してインバータ19の出力周波数を増減させる。本実施例では、インバータ19の出力周波数を1Hz刻みで増減するようにした。
【0030】
算出した上糸口出しミス率(MUP)が前回値より大きい場合には、インバータ19の出力周波数を1Hz上昇させてモータ18の回転数を上昇させ、糸継ぎ動作が円滑に行われるようにブロワ17が発生する負圧が増加するように制御する。逆に、算出した上糸口出しミス率(MUP)が前回値より小さいあるいは同一の場合には、インバータ19の出力周波数を1Hz低下させてモータ18の回転数を下降させ、モータ18に供給する電力を抑えてブロワ17が発生する負圧が低下するように制御する。
【0031】
図4を用いて本実施例のブロワモータの制御方法をより詳しく説明する。自動ワインダーの電源が投入されると、制御部23はメモリ24に保存されているインバータ19の出力周波数と上糸口出しミス率(MUP)を読み込む(S1)。すなわち、電源投入時には、前回のインバータ19の出力周波数でブロワ17のモータ18に電力を供給する。糸の巻き取り動作が開始されるとタイマを作動させて計時を開始する(S2)。巻き取り動作が設定された時間経過すると(S3でYES)、制御部23は、稼動しているワインディングユニット1に記録されているデータを読み取り、取得したデータに基づいてMPU値を算出し、メモリ24に保存されている前回のMUP値と比較する(S4)。比較したMUP値が前回値より大きい場合には(S5でYES)、現在のインバータ19の出力周波数が、制御部23に予め設定された最大値であるか否かを確認し(S6)、最大値になっていれば、現在の出力周波数を維持し(S7)、最大値になっていなければ出力周波数を1Hz増加させるようにインバータ19を制御する(S8)。インバータ19の出力周波数が増えるとモータ18の回転数が上昇し、ブロワ17によってワインディングユニット1に供給される負圧が上昇する。そして、変更した出力周波数と算出したMUP値とをメモリ24に保存して(S9)、再びタイマによる計時を開始する。
【0032】
次に、比較したMUP値が前回値より小さいあるいは同一の場合には(S5でNO)、現在のインバータ19の出力周波数が、制御部23に予め設定された最小値であるか否かを確認し(S10)、最小値になっていれば、現在の出力周波数を維持し(S11)、最小値になっていなければ出力周波数を1Hz減少させるようにインバータ19を制御する(S12)。インバータ19の出力周波数が減少するとモータ18の回転数が下降し、ブロワ17によってワインディングユニット1に供給される負圧が低下する。そして、変更した出力周波数と算出したMUP値とをメモリ24に保存して(S9)、再びタイマによる計時を開始する。保存された出力周波数は、次回起動時の初期値として使用され、MUP値は、次回の比較時に前回値として使用する。
【0033】
(第2実施例) 本発明に係るブロワモータの制御方法を適用した自動ワインダーの第2の実施例を説明する。自動ワインダーの構成は、第1実施例と同一であるので、説明は省略する。第2実施例では予め設定されているしきい値と算出したMUP値とを比較し、この比較結果に基づいてインバータ19の出力周波数を制御する。
【0034】
図5を用いて本発明の第2の実施例のブロワモータの制御方法を説明する。自動ワインダーの電源が投入されると、制御部23はメモリ25に保存されているインバータ19の出力周波数を読み込む(S13)。すなわち、電源投入時には、前回のインバータ19の出力周波数でブロワ17のモータ18に電力を供給する。糸の巻き取り動作が開始されるとタイマを作動させて計時を開始する(S14)。巻き取り動作が設定された時間経過すると(S15でYES)、制御部23は、稼動しているワインディングユニット1に記録されているデータを読み取り、取得したデータに基づいてMUP値を算出し、メモリ24に保存されている予め設定されたしきい値と比較する(S16)。比較したMUP値が前回値より大きい場合には(S17でYES)、現在のインバータ19の出力周波数が、制御部23に予め設定された最大値であるか否かを確認し(S18)、最大値になっていれば、現在の出力周波数を維持し(S19)、最大値になっていなければ出力周波数を1Hz増加させるようにインバータ19を制御する(S20)。インバータ19の出力周波数が増えるとモータ18の回転数が上昇し、ブロワ17によってワインディングユニット1に供給される負圧が上昇する。そして、変更した出力周波数をメモリ24に保存して(S21)、再びタイマによる計時を開始する。
【0035】
次に、比較したMUP値が前回値より小さいあるいは同一の場合には(S17でNO)、現在のインバータ19の出力周波数が、制御部23に予め設定された最小値であるか否かを確認し(S22)、最小値になっていれば、現在の出力周波数を維持し(S23)、最小値になっていなければ出力周波数を1Hz減少させるようにインバータ19を制御する(S24)。インバータ19の出力周波数が減少するとモータ18の回転数が降下し、ブロワ17によってワインディングユニット1に供給される負圧が低下する。そして、変更した出力周波数をメモリ24に保存して(S21)、再びタイマによる計時を開始する。S21で保存された出力周波数は、次回の起動時に初期値として使用する。
【0036】
上記のように、上糸口出しミス率に基づいてインバータ19の出力周波数を制御して、モータ18の回転数を制御すると、上糸口出しミス率は、従来からワインディングユニット1自体が管理しているデータを利用して算出するので、圧力センサなど付加的な機器を用いなくてもワインディングユニット1に適正な負圧が供給されているかどうかが判断でき、したがって、センサが不要であり、自動ワインダーのコストの低減とメンテナンスの容易化とを図ることができる。
【0037】
設定時間毎に制御部23でワインディングユニット1の上糸口出しミス率を算出して、前回算出された上糸口出しミス率、あるいは、予め設定されたしきい値を基準にして比較すると、大きくなっている場合は、供給される負圧が不足して、サクションマウス13による上糸口出し動作が適切に行われていないと判断でき、ブロワ17の発生する負圧が上昇するようにインバータ19の出力周波数を増加させて、モータ18の回転数を上げるように制御できる。同一あるいは小さくなっている場合は、負圧が十分であり、サクションマウス13の上糸口出し動作が適切に行われていると判断でき、ブロワ17の発生する負圧が低下するように、インバータ19の周波数を減少させてモータ18の回転数を低下させるよう制御できる。このように、ワインディングユニット1の稼動状況に応じて、必要な時には負圧を上昇させ、または、不必要な時には負圧を低下させるようにインバータ19の出力周波数を制御することで、モータ18の消費する電力を抑えることができ、したがって、自動ワインダーの省エネルギー化に貢献できる。
【0038】
加えて、インバータ19の出力周波数に最小値と最大値とを設定してあると、供給する負圧の最低値を規定することができ、また、モータ18の回転数がブロワ17の出力特性の適正範囲を超えて上昇することを防止できる。また、ブロワ17の回転数が異常に低くなったり、異常に高くなったりすることがなく、信頼性に優れたブロワシステム2を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る自動ワインダーのブロック構成図である。
【図2】ワインディングユニットの正面図である。
【図3】自動ワインダーの全体図である。
【図4】本発明に係る制御方法の第1実施例を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る制御方法の第2実施例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1 ワインディングユニット
2 ブロワシステム
8 糸継ぎ装置
13 サクションマウス
16 吸気ダクト
17 ブロワ
18 ブロワモータ
19 インバータ
20 分岐管
23 制御部
24 記憶部(メモリ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸継ぎ機能を備えた複数台のワインディングユニットに向けて、糸継ぎ動作時において使用する負圧を供給するブロワシステムのブロワモータを制御する方法であって、
各ワインディングユニットの糸継ぎ動作回数と、糸継ぎに失敗した失敗回数とを集計してシステム全体のミス率を算出し、このミス率に基づいて前記ブロワモータに電力を供給するインバータの出力周波数を増減制御することを特徴とするブロワモータの制御方法。
【請求項2】
前記ブロワシステムは、前記ワインディングユニットに接続される複数の分岐管を備える吸気ダクトと、該吸気ダクトの一端に接続されて負圧を発生させるブロワと、該ブロワを回転駆動するブロワモータと、該ブロワモータに電力供給を行うインバータとを含み、
前記ブロワモータの回転数は、該ブロワモータに電力供給を行う前記インバータの出力周波数により制御されており、
前記ワインディングユニットは、糸欠陥が検出されると、糸を切断する糸切断装置と、糸切断動作により形成された下糸端と上糸端との糸継ぎ動作を行う糸継ぎ装置と、前記ブロワによって発生した負圧を利用して前記上糸端を吸引捕捉して前記糸継ぎ装置に受け渡すサクションマウスとを備えており、
各ワインディングユニットの糸継ぎ動作回数と、糸継ぎに失敗した失敗回数とを取得し、これら動作回数と失敗回数とからシステム全体の上糸口出しミス率を算出するミス率算出工程と、
前記ミス率算出工程において算出された上糸口出しミス率に基づいて、前記インバータの出力周波数を増減制御する周波数変更工程とを含む請求項1記載のブロワモータの制御方法。
【請求項3】
前記ミス率算出工程においては、設定時間毎に上糸口出しミス率を算出し、これを記憶部内に格納しており、
前記周波数変更工程においては、前記記憶部に格納されている直近の上糸口出しミス率を読み出し、算出された上糸口出しミス率が読み出された上糸口出しミス率よりも大きい場合には前記インバータの出力周波数を増加させ、算出された上糸口出しミス率が読み出された上糸口出しミス率と同一あるいは小さい場合には前記インバータの出力周波数を減少させる請求項2記載のブロワモータの制御方法。
【請求項4】
前記ミス率算出工程においては、設定時間毎に上糸口出しミス率を算出し、
前記周波数変更工程においては、上糸口出しミス率が算出されると、これを予め設定されているしきい値と比較し、算出された上糸口出しミス率がしきい値よりも大きい場合には前記インバータの出力周波数を増加させ、しきい値と同一あるいは小さい場合には前記インバータの出力周波数を減少させる請求項2記載のブロワモータの制御方法。
【請求項5】
前記周波数変更工程においては、前記インバータの出力周波数を、予め設定された最小値と最大値との範囲内で変動させるようになっている請求項2ないし請求項4のいずれかに記載のブロワモータの制御方法。
【請求項6】
自動ワインダーを構成する複数台のワインディングユニットに向けて負圧を供給するブロワシステムであって、
前記ブロワシステムは、前記ワインディングユニットに接続される複数の分岐管を備える吸気ダクトと、該吸気ダクトの一端に接続されて負圧を発生させるブロワと、該ブロワを回転駆動するブロワモータと、該ブロワモータに電力供給を行うインバータと、該インバータの出力周波数を増減制御することで、前記ブロワモータの回転数を調整する制御部とを含み、
前記ワインディングユニットは、糸欠陥が検出されると糸を切断する糸切断装置と、糸切断動作により形成された下糸端と上糸端との糸継ぎ動作を行う糸継ぎ装置と、前記ブロワによって発生した負圧を利用して上糸端を吸引捕捉して糸継ぎ装置に受け渡すサクションマウスとを備えており、
前記制御部が、各ワインディングユニットの糸継ぎ動作回数と、糸継ぎに失敗した失敗回数とを取得し、これら動作回数と失敗回数とからシステム全体の上糸口出しミス率を算出し、この上糸口出しミス率に基づいて、前記インバータの出力周波数を増減制御することを特徴とするブロワシステム。
【請求項7】
前記制御部で算出された設定時間毎の上糸口出しミス率が格納される記憶部を備え、
前記制御部は、上糸口出しミス率が算出されると前記記憶部に格納されている直近の上糸口出しミス率を読み出し、算出された上糸口出しミス率が読み出された上糸口出しミス率よりも大きい場合には前記インバータの出力周波数を増加させ、算出された上糸口出しミス率が読み出された上糸口出しミス率と同一あるいは小さい場合には前記インバータの出力周波数を減少させる請求項6記載のブロワシステム。
【請求項8】
予め設定されたしきい値が格納される記憶部を備え、
前記制御部は、上糸口出しミス率が算出されると、これを前記記憶部に格納されているしきい値と比較し、算出された上糸口出しミス率がしきい値よりも大きい場合には前記インバータの出力周波数を増加させ、しきい値と同一あるいは小さい場合には前記インバータの出力周波数を減少させる請求項6記載のブロワシステム。
【請求項9】
前記制御部が、前記インバータの出力周波数を予め設定された最小値と最大値との範囲内で変動させる請求項6ないし請求項8のいずれかに記載のブロワシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−102132(P2009−102132A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276186(P2007−276186)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】