説明

ブロー成形品

【課題】
解決しようとする課題は、溶着用のボスを有する熱可塑性樹脂のブロー成形品の製造に際し該ボスが成形時のブローアップによって引き伸ばされ、特に該ボスの平らな環状の溶着面が非常に薄肉となって溶着時の押圧力により大きく変形するため、溶着端と溶着面との片当りによって溶着部位が非常に限られた範囲になってしまう点である。
【解決手段】
平らな環状の溶着面と該溶着面の内側のフランジテーパー部分とを有するボス部を具備するブロー成形品の該溶着面に任意の相手部品を溶着することにより前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱板溶着用のボスを具備する熱可塑性樹脂のブロー成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂のブロー成形品の熱板溶着に関する従来技術としては特許文献1に開示されているようなものがある。
【0003】
しかし、特許文献1の段落0006に「また、パイプ部12はブロー成形部品であることから、その接合部20の溶着面の面精度(面歪)が悪い場合が多く、熱板溶着において、熱板26により該接合部20を溶融させる際に、均一に溶かすことができず、同一溶着面において多く溶ける部位と少ししか溶けない部位とが生じてしまい、ばらつきが出る問題を内在している。・・・」とあるように、ブロー成形品の溶着面の面精度が低いことは周知のことであり、加えて該溶着面の肉厚が薄い場合には溶着の際の押圧力により該溶着面が容易に変形して、更にばらつきが大きくなってしまうという問題があった。
【0004】
以下、図によってより詳しく説明する。図1は熱可塑性樹脂のブロー成形により形成される自動車用サクションパイプ1の斜視図である。溶着用のボス2上に設けられた孔3によって図1では図示しない相手部品11(図3にて図示)に連通するものであり、4は該相手部品11を熱板溶着するための平らな環状の溶着面である。
【0005】
図2は図1のB−B断面図である。該サクションパイプ1の該断面は図2に示すように扁平であるがためパーティングラインを5,5’に設定せざるを得ず、該ボス2は成形時のブローアップによって引き伸ばされ、該ボス2の平らな環状の該溶着面4が非常に薄肉となってその面精度が顕著に低くなっている。
【0006】
図3は図1のB−B断面相当の熱板溶着用の加熱、溶融中の部分断面図である。11は上記の相手部品、12は該相手部品11のスリーブ、14は該スリーブ12の溶着端、20は熱板である。該熱板20によって該ボス2の該溶着面4と該スリーブ12の該溶着端14とを加熱、溶融させた後、該熱板20を取り外して該溶着面4と該溶着端14とを互いに押圧、溶着させる。
【0007】
図4は図1のB−B断面相当の押圧、溶着中の部分断面図である。しかるに該ボス2の平らな環状の該溶着面4は非常に薄肉となっているので該スリーブ12の該溶着端14の押圧力により大きく変形し、該溶着端14と該溶着面4との片当りによって溶着部位が非常に限られた範囲になってしまっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−77321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする課題は、溶着用のボスを有する熱可塑性樹脂のブロー成形品の製造に際し該ボスが成形時のブローアップによって引き伸ばされ、特に該ボスの平らな環状の溶着面が非常に薄肉となって溶着時の押圧力により大きく変形するため、溶着端と溶着面との片当りによって溶着部位が非常に限られた範囲になってしまう点である。本発明は上記の点を解決するためになされた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を果たすため本発明は、熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成され、平らな環状の溶着面と該溶着面の内側のフランジテーパー部分とを有するボス部を具備するブロー成形品であって、該溶着面に任意の相手部品を溶着してなることを最も主要な特徴とする。
【0011】
また、該溶着面と該フランジテーパー部分の双方に任意の相手部品を溶着してなることを第2の主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、溶着用のボスを有する熱可塑性樹脂のブロー成形品の、平らな環状の溶着面と該溶着面の内側のフランジテーパー部分とを有するボス部を具備するブロー成形品の該溶着面に任意の相手部品を溶着することで、該フランジテーパー部分の剛性により溶着時の押圧に対する該溶着面の変形はほとんどなく、従来例のような該溶着端と該溶着面との片当りは生じないため、溶着部位が充分に広い範囲で形成され、強固な溶着が得られるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来の自動車用サクションパイプの斜視図
【図2】図1のB−B断面図
【図3】図1のB−B断面相当の加熱、溶融中の部分断面図
【図4】図1のB−B断面相当の押圧、溶着中の部分断面図
【図5】本発明に係る自動車用サクションパイプの部分斜視図
【図6】図5のB−B断面相当の近接加熱、溶融中の部分断面図
【図7】図5のB−B断面相当の接触加熱、溶融中の部分断面図
【図8】図5のB−B断面相当の押圧、溶着中の部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
溶着用のボスを有する熱可塑性樹脂のブロー成形品の製造に際し、従来例のように溶着端と溶着面との片当りが生じず、溶着部位を充分に広い範囲で形成させて、強固な溶着を得るという目的を、平らな環状の溶着面と該溶着面の内側のフランジテーパー部分とを有するボス部を具備するブロー成形品の該溶着面に任意の相手部品を溶着することによって、経済性を損なわずに実現した。
【実施例1】
【0015】
本発明の構成を発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。尚、従来例と同一の符号は同一の部材を表す。
【0016】
図5は、本発明の1実施例を示す自動車用サクションパイプ1の部分斜視図である。前記従来例との違いは、ボス2の平らな環状の溶着面4の内側にフランジテーパー部分30が一体に形成されている点である。
【0017】
図6ないし図8は図5のB−B断面相当の部分断面図である。
図6において、相手部品11のスリーブ12には該フランジテーパー部分30のテーパー角度に合致するスリーブテーパー部分40が設けられている。
【0018】
図6において、該溶着面4と該フランジテーパー部分30、及び溶着端14と該スリーブテーパー部分40を溶融すべく、熱板20が近接して配置されている。
【0019】
尚、図7に示すように該熱板20を該溶着面4、該フランジテーパー部分30、該溶着端14、該スリーブテーパー部分40と接触させて加熱しても構わない。
【0020】
該溶着面4、該フランジテーパー部分30、該溶着端14、該スリーブテーパー部分40の充分な加熱、溶融が完了した後、該熱板20を取り除いて該ボス2と該スリーブ12とを互いに押圧し、熱溶着させている状態を図8に示す。
【0021】
従来例同様該ボス2の該溶着面4はブローアップにより薄肉となっているが、従来例には無かった該フランジテーパー部分30の剛性付加により上記押圧に対して充分抵抗し得るようになったことで、該溶着面4の変形はほとんどなく、従来例のような該溶着端14と該溶着面4との片当りが生じないため、溶着部位が充分に広い範囲で形成され、強固な溶着が得られることになる。
【0022】
尚、該自動車用サクションパイプ1や該相手部品11に適用される熱可塑性樹脂としてはポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、ポリスチレン、ゴム改質ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィン系エラストマー等、ブロー成形が可能で尚且つ溶着が可能な樹脂であれば何でも良い。また、該熱可塑性樹脂にガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、硫酸カルシウム粉末、炭酸カルシウム粉末等を混錬させた複合材であってもよい。
【0023】
また、上記実施例では溶着面4、フランジテーパー部分30、溶着端14、スリーブテーパー部分40を同時に加熱、溶融させる例を説明したが、溶着面4と溶着端14だけを加熱、溶融させて押圧、熱溶着させるだけでもよい。この場合該フランジテーパー部分30を溶融、軟化させない分、低温の該フランジテーパー部分30による剛性アップの効果をより以上に期待できることになる。
【0024】
また、上記実施例では熱板溶着を例に説明したがこれに限るものではなく、摩擦溶着や、溶剤を用いての溶着等の、他の溶着方法を適用しても構わない。
【0025】
また、上記平らな「環状」の溶着面とは完全な円環状の溶着面に限るものではなく、例えば「東京都の環状道路」のような用例のごとく、多角形や楕円形や自由閉曲線等、単にドーナツ状の領域を広く意味するものである。
【0026】
以上実施例に述べたように本発明によれば、溶着用のボスを有する熱可塑性樹脂のブロー成形品の、平らな環状の溶着面と該溶着面の内側のフランジテーパー部分とを有するボス部を具備するブロー成形品の該溶着面に任意の相手部品を溶着したことで、該フランジテーパー部分の剛性により溶着時の押圧に対する該溶着面の変形はほとんどなく、従来例のような溶着端と溶着面との片当りは生じないため、溶着部位が充分に広い範囲で形成され、強固な溶着が得られるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、自動車用サクションパイプ、或いは自動車用に限らず、溶着用ボスに相手部品を溶着する一般の熱可塑性樹脂のブロー成形品の製造に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 サクションパイプ
2 (溶着用の)ボス
3 孔
4 (平らな環状の)溶着面
5,5’ パーティングライン
11 相手部品
12 スリーブ
14 溶着端
20 熱板
30 フランジテーパー部分
40 スリーブテーパー部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成され、平らな環状の溶着面と該溶着面の内側のフランジテーパー部分とを有するボス部を具備するブロー成形品であって、該溶着面に任意の相手部品を溶着してなることを特徴とするブロー成形品
【請求項2】
請求項1における溶着面とフランジテーパー部分の双方に任意の相手部品を溶着してなることを特徴とする請求項1記載のブロー成形品

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−93288(P2011−93288A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252502(P2009−252502)
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【出願人】(503233130)株式会社アイテック (96)
【Fターム(参考)】