説明

ブロー成形容器

【課題】 化粧品容器などに好適な、底重量部が肉厚のブロー成形容器を提供する。
【解決手段】 容器底面の最小厚みt1(mm)は少なくとも容器側面の最小厚みt2(mm)よりも大きく、底面の最小厚みt1が3〜15mm、容積が10〜500cmである脂環構造含有重合体からなるブロー成形容器であって、縦方向の延伸倍率yが0.9以上1.4未満、縦方向の延伸倍率yに対する横方向の延伸倍率xの比(x/y)が2.5〜5である脂環構造含有重合体からなるブロー成形容器。この容器の口重量部から底面までの高さHと容器最大幅Dは、通常、H/D≧1.5以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品容器などに好適な、底面部が肉厚のブロー成形容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から透明性の高いガラス製容器は、透明性が高く内容物の視認性がよい、安全性が高いなどから医薬品や化粧品など衛生用品を保管する容器として用いられている。特に、側面や底面を厚くして意匠性を高めることで化粧品容器として好適である。ところが最近では、軽量化、易廃棄性などの観点からプラスチック製のものに置き換わりつつある。
プラスチック製化粧品容器としては、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート等の結晶性樹脂を用いたものと、脂環構造含有重合体のような非晶性樹脂を用いたものとがある。結晶性樹脂は適度な耐久性はあるが、容器の厚みが厚くなると、溶融成形時の冷却が不十分になり、その結果結晶化度が高まり透明性を維持しづらく、またブロー成形時に作られるプリフォームやパリソンなどの予備成形品がブロー工程で自重によるドローダウンが起こり設計通りの容器が安定的に成形しづらいという問題がある。非晶性樹脂を用いた容器は、こうした結晶性樹脂の問題点を解決できる容器であり、耐衝撃性、耐薬品性、低溶出性、耐熱性、透明性などに優れると言われている(特許文献1、2)。
特許文献3では、このように優れた性能を与える脂環構造含有重合体を用いて得られた成形体が、食器類のような油分との接触が多い容器や点眼薬容器のような油分を含む内容物を長期間保存する容器である場合、これらの容器をスチーム雰囲気などの高温高湿条件下に曝すと、白化が生じることを指摘している。そして、このような問題を解決するために、容器を、縦方向の延伸倍率が0.9以上1.4未満、縦方向の延伸倍率yに対する横方向の延伸倍率xの比、(x/y)が1.2〜2であるように成形することが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平3−000726号公報
【特許文献2】特開平11−170345公報
【特許文献3】特開2003−118718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来技術の下、本発明者は、底面部が肉厚の容器の形成を試みた。容器の容積が数十リットル以上の大きいものであれば、必然的に底面部の厚みも3mm以上になりうるが、500cm以下の小型の容器サイズでは、底面部の厚みが3〜15mmあれば意匠性に優れた肉厚底容器として、化粧品容器に好適に用いられる。
側面部より底面部の最小厚みが大きく、かつその底面部の厚みが3mm以上の容器を得るために、特許文献3の方法を採用すると、容器の側面部や底面部の厚みむらが生じ、波打ち状の外観となってしまうことが判った。この外観上の問題を解決するために、発明者が更なる検討を行った結果、縦方向の延伸倍率yに対する横方向の延伸倍率xの比(x/y)を大きめに設定することで、外観に優れた容器の得られることを見いだし、本発明を完成するに到った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かくして本発明によれば、容器底面の最小厚みt1(mm)は少なくとも容器側面の最小厚みt2(mm)よりも大きく、底面の最小厚みt1が3〜15mm、容積が10〜500cmである脂環構造含有重合体からなるブロー成形容器であって、縦方向の延伸倍率yが0.9以上1.4未満、縦方向の延伸倍率yに対する横方向の延伸倍率xの比(x/y)が2.5〜5である脂環構造含有重合体からなるブロー成形容器が提供される。この容器は、口部から底面までの高さHと容器最大幅Dが、H/D≧1.5以上であるのが好ましい。また、この容器は、容器底面の最小厚みt1(mm)と容器側面の最小厚みt2(mm)との関係が、3×t2≧t1≧1.2×t2である請求項1又は2記載のブロー成形容器であるのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明においては、脂環構造含有重合体をブロー成形して容器を得る。ブロー成形の際の延伸倍率は、縦方向の延伸倍率yが0.9以上1.4未満、縦方向の延伸倍率yに対する横方向の延伸倍率xの比(x/y)が2.5〜5である。
本発明において、縦方向の延伸倍率とは、予備成形品の首下(延伸される部分)の長さに対する容器の首下(延伸された部分)の長さの比率であり、横方向の延伸倍率とは、予備成形品の横方向の最大径に対する、容器の横方向の最大径の比率である。尚、最大径とは、予備成形品及び容器の断面が円形である場合には最大の直径であり、断面が多角形又は楕円形である場合には、最大の相当直径である。
【0007】
本発明の容器の材料となる脂環構造含有重合体は、脂環式構造を含有してなる繰り返し単位を有する重合体である。脂環構造含有重合体中の脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が最も好ましい。脂環式構造は主鎖にあっても良いし、側鎖にあっても良いが、機械強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械強度、耐熱性、及びフィルムの成形性の特性が高度にバランスされる。
【0008】
本発明に使用される脂環構造含有重合体中の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環構造含有重合体中の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合がこの範囲にあるとフィルムの透明性及び耐熱性の観点から好ましい。
この脂環構造含有重合体の具体例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系重合体水素化物、ビニル脂環式炭化水素重合体及びその水素化物が好ましい。
【0009】
(1)ノルボルネン系重合体
ノルボルネン系重合体は、ノルボルネン骨格を有する単量体であるノルボルネン系単量体を重合してなるものであり、開環重合によって得られるものと、付加重合によって得られるものに大別される。
【0010】
開環重合によって得られるものとして、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体、ならびにこれらの水素化物などが挙げられる。付加重合によって得られるものとしてノルボルネン系単量体の付加重合体及びノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物が、耐熱性、機械的強度等の観点から好ましい。
【0011】
ノルボルネン系単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体、などが挙げられる。
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基などが例示でき、上記ノルボルネン系単量体は、これらを2種以上有していてもよい。具体的には、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
これらのノルボルネン系単量体は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0012】
ノルボルネン系単量体の開環重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体は、単量体成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などを挙げることができる。
ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0013】
ノルボルネン系単量体の付加重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体は、これらの単量体を、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて重合させて得ることができる。
【0014】
ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
これらの、ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ノルボルネン系単量体とこれと付加共重合可能なその他の単量体とを付加共重合する場合は、付加重合体中のノルボルネン系単量体由来の構造単位と付加共重合可能なその他の単量体由来の構造単位との割合が、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
【0015】
(2)単環の環状オレフィン系重合体
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの、単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体を用いることができる。
(3)環状共役ジエン系重合体
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−又は1,4−付加重合した重合体及びその水素化物などを用いることができる。
(4)ビニル脂環式炭化水素重合体
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素化物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素化物;などが挙げられ、ビニル脂環式炭化水素重合体やビニル芳香族系単量体と、これらの単量体と共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体などの共重合体及びその水素化物など、いずれでもよい。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロック、又はそれ以上のマルチブロックや傾斜ブロック共重合体などが挙げられ、特に制限はない。
【0016】
本発明においては、脂環構造含有重合体に、酸化防止剤、光安定剤、着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、軟質重合体、耐電防止剤、滑剤、溶剤などの添加剤を適宜配合することができる。中でも、光学特性を確保するためには、酸化防止剤や光安定剤を配合するのが好ましい。
脂環構造含有重合体に添加剤を配合する方法に格別な制限はなく、例えば、ロール、ニーダー、押出混練機、バンバリーミキサー、フィーダールーダー等の混練器で練りながら、脂環構造含有重合体と添加剤とを混合する方法;脂環構造含有重合体を適当な溶剤に溶解し、これに添加剤を配合して混合し、次いで溶媒を除去する方法;などが挙げられる。
必要に応じて添加剤が配合された脂環構造含有重合体は、通常、ペレット化された後、成形される。ペレットの製造方法に格別な制限はないが、脂環構造含有重合体と必要に応じて配合された添加剤とを二軸混練機などの混合機を用いて混合した後、ストランド状に押出、それをペレタイザーなどで細かく切断することでペレットを得ることができる。
【0017】
こうして得られたペレットを用いて、プリフォーム、パリソンなどの予備成形品を形成した後、ブロー成形を行う。ブロー成形法には、インジェクションブロー成形法を用いる。インジェクションブロー成形は、(1)射出成形により、開口部を有する中空体である予備成形品を成形した後、(2)前記予備成形品をブロー金型内に挿入し、加熱溶融させながら開口部より内部にエアーを吹き込んでブロー成形を行う。予備成形品の形状に格別な制限はなく、目的とする容器の大きさや形状により適宜選択することができるが、断面の直径が一定の円柱状のものを用いるのが好ましい。また、ブロー成形して得る容器の底面部の厚みを3〜15mmにするためには、予備成形品の、ブロー成形して得られる容器底面に相当する部位の厚みを、通常4〜50mm、好ましくは5〜30mm程度にするのが良い。また、容器底面の最小厚みを、容器側面の最小厚みより大きくするためには、予備成形品の、ブロー成形して得られる容器側面に相当する部位の厚みを、容器底面に相当する部位の厚みの、通常50〜120%、好ましくは80〜100%程度に設計するのが良い。
【0018】
予備成形品成形時の成形条件は、シリンダ温度が、通常、150〜400℃、好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜330℃の範囲である。シリンダ温度が過度に低いと流動性が悪化し、得られる容器にひずみを生じ、シリンダ温度が過度に高いと樹脂の熱分解等により容器が着色するおそれがある。射出成形型で成形された予備成形品を射出成形型から剥離させる際の剥離時の射出成形型温度としては、用いる脂環式構造含有重合体樹脂のガラス転移温度をTgとした場合に、(Tg−50℃)〜(Tg+10℃)の範囲であると好ましい。剥離時の射出成形型温度がこの範囲であると、予備成形品の形状安定性の点で好ましい。
【0019】
本発明において、温調(加熱ポット)を利用する場合、温調(加熱ポット)の設定温度は150〜450℃の範囲が好ましく、200〜400℃の範囲であるとより好ましく、250〜350℃の範囲であると特に好ましい。温調の設定温度が150℃以下では成形体表面を再加熱するのに充分機能せず、450℃以上では成形体表面が黄変やヤケ異物が発生する。
また、温調(加熱ポット)と予備成形品の間隔は、特に限定されないが、1〜50mmの範囲であると好ましく、2〜25mmの範囲であるとより好ましく、3〜10mmの範囲であると特に好ましい。
【0020】
温調(加熱ポット)とプリフォームの間隔がこの範囲にあると、温調とプリフォームが接触する恐れが少なく、又、プリフォームの加熱が均一となるので好ましい。
加熱ポットを利用しないと、プリフォームの厚みが厚いため、射出金型から離型する際充分に冷却するため、そのままブロー工程でブローすると膨らまず、例えブローされても応力が残り、長期間使用により容器外表面が白化する場合がある。
【0021】
ブロー成形時のブロー金型温度は、用いる脂環式構造含有重合体樹脂により適宜選択されるが、用いる脂環式構造含有重合体樹脂のガラス転移温度をTgとした場合に、(Tg−50℃)〜(Tg+20℃)の範囲であると好ましく、(Tg−30℃)〜(Tg+10℃)の範囲であるとより好ましい。
ブロー成形の際の延伸倍率は、縦方向の延伸倍率yが0.9以上1.4未満、好ましくは1以上1.35以下であり、縦方向の延伸倍率yに対する横方向の延伸倍率xの比(x/y)が2.5〜5、好ましくは2.5〜4である。延伸倍率をこのような範囲に制御する方法に格別な制限はないが、通常、用いる予備成形品の形状と用いる金型とを調整することにより制御できる。
【0022】
このようにして得られる本発明の容器は、容器底面の最小厚みt1(mm)は少なくとも容器側面の最小厚みt2(mm)よりも大きい、底面が厚い容器である。また本発明の容器の、底面の最小厚みt1が、3〜15mm、好ましくは3.5〜15mm、より好ましくは4〜12mmである。容器の形状としては、円柱状、角柱状、球状等が挙げられるが、衝撃強度等の観点から円柱状、角柱状が好ましい。容器は、開口部から底部にかけての裾広がり形状であっても、高さ方向の中央部が膨らんだ形状などであってもよい。また容器の底部の形状については特に制限されず、平面状であっても内側に向かって窪みのある形状であってもよい。
更に本発明の容器の容積は、好ましくは10〜500cm、より好ましくは10〜300cmである。
【0023】
容器は、開口部から底部にかけての裾広がり形状であっても、高さ方向の中央部が膨らんだ形状などであってもよい。また容器の底部の形状については特に制限されず、平面状であっても内側に向かって窪みのある形状であってもよい。
また容器は、化粧品を密閉保存できるように、蓋を取り付けることができる首部及び胴体部を有する形状であるのが好ましい。首部は、蓋が取り付けられ、かつ密閉できるように、螺子溝、蓋と嵌合可能な凹凸部等を有しているものが好ましい。
更に容器は、意匠性を向上させるため、容器の表面又は一部に絵柄デザイン等の塗装性、印刷性などを併用して加飾しても構わない。容器と印刷層の接着性を向上させるため、容器に表面処理を施しても良く、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理、樹脂塗布、ホットスタンプ等が挙げられる。
【0024】
本発明のブロー成形容器は、液体、粉体状の薬品容器、特に精油などの油分を含有した液体を充填するための容器に適当である。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。
実施例、比較例における各物性の測定、評価は以下の方法で行った。
(1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)
特に記載がない限りシクロヘキサンを溶剤とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリイソプレン換算値として測定した。
(2)水素添加率
H−NMRにより測定した。
(3)ガラス転移温度(Tg)
昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量計を用いJIS K 7121に準じ測定した値である。
(4)容器の厚み
超音波厚み計(KARL DEUTSCH社製)の端子をブロー容器に当てて容器底面の最小厚み(t1)と容器側面の最小厚み(t2)を求めた。
(5)ノルマルヘプタン含浸試験(耐ソルベントクラック性)
ノルマルヘプタン(和光純薬社製)2.5リットル中に測定試料容器を浸漬した。浸漬10分後の、測定試料容器表面の白化状態(ミクロクレーズ)及び破裂(ソルベントクラック)の有無を観察し、以下の基準で評価した。
蛍光灯直下30cmの距離でも白化も破壊も確認されないものを「◎」
蛍光灯直下30cmの距離では白化が確認されたが、50cmの距離では白化も破壊が確認できなかったものを「○」
蛍光灯直下50cmの距離でも白化又は破壊が確認されるものを×
(6)容器外観評価
容器を蛍光灯下で目視にて観察し、容器側面及び底面について、波打ちや厚みむらの有無を確認した。
【0026】
[重合体製造例1]
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500重量部に、1−ヘキセン0.82重量部、ジブチルエーテル0.15重量部、及びトリイソブチルアルミニウム0.30重量部を室温で反応器に入れ混合した後、45℃に保ちながら、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン、以下、「DCP」と略記する。)170重量部と、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(エチリデンテトラシクロドデセン、以下、「ETD」と略す。)30重量部と、六塩化タングステン(0.7重量%トルエン溶液)70重量部とを、2時間かけて連続的に添加し重合した。重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06重量部とイソプロピルアルコール0.52重量部を加えて重合触媒を不活性化し重合反応を停止させた。
【0027】
次いで、得られた開環重合体を含有する反応溶液100重量部に対して、シクロヘキサン270重量部を加え、さらに水素添加触媒としてニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5重量部を加え、水素により5MPaに加圧して撹拌しながら温度200℃まで加温した後、4時間反応させ、DCP/ETD開環共重合体水素添加物を20重量%含有する反応溶液を得た。濾過により水素化触媒を除去した後、前記水素添加物100重量部あたり0.1重量部のヒンダードフェノール系酸化防止剤(テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)を、得られた溶液に添加して溶解させた。次いで、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去しつつ水素添加物を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後ペレット化してペレットを回収した。この開環共重合体水素添加物の、重量平均分子量(Mw)は35,000、Tgは102℃であった。
【0028】
〔実施例1〕
製造例1で得られたペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて80℃で2時間乾燥した後、インジェクション延伸ブロー成形機(日精エー・エス・ビー機械社製)を用いて、シリンダ温度250℃、ノズル温度270℃、プリフォーム金型温度80℃の条件で、高さ107mm、断面の直径22mm、厚さ5mm、容量27mmのプリフォームを成形した。
このプリフォーム内重量部を加熱できるように設置した加熱コア及び、プリフォームとの間隔が5mmとなるように設置した加熱ポットを備えた加熱装置を用いて、加熱ポット350℃、加熱時間40秒の条件で、プリフォームを加熱した。
次いで、ブロー型温度80℃の条件で、上記プリフォーム内にエアーを吹き込みながらブロー成形を行い、開口重量部を有する首重量部と、胴体重量部とを有する容器を得た。
得られた容器の寸法は、高さH97mm、容器最大幅D51mm、H/D=1.9、容器容量55ml、容器底面最小厚み(t1)3.0mm、容器側面最小厚み(t2)2.5mmであった。
各延伸倍率及び延伸倍率の比は、縦方向の延伸倍率y0.9倍、横方向の延伸倍率x2.3倍、縦方向の延伸倍率yに対する横方向の延伸倍率xの比(x/y)2.5となる。
得られた容器の容器底面最小厚みにおける全光線透過率は92%であり、表面平滑性に優れた脂環式構造含有重合体樹脂重合体製延伸ブロー容器を作成することができた。
評価結果を表1に示す。
【0029】
〔実施例2〜6、比較例1〜3〕
プリフォームの形状やブロー成形温度を変えて、表1記載の容器底面の厚み、縦延伸倍率y及び縦横延伸倍率比(x/y)である容器を得て、耐ソルベントクラック性と容器外観の評価を行った。
評価結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
この結果から、縦方向の延伸倍率x及び該縦方向の延伸倍率yに対する横方向の延伸倍率の比(x/y)が本発明の範囲となるブロー容器全体をノルマルヘプタンに浸漬し、10分後取り出して容器全体を目視にて観察したところ、表層の白化(ミクロクレーズ)やソルベントクラックの発生は全く又は殆どみられないのに対し(実施例1〜6)、縦方向と横方向の延伸倍率比(x/y)が本発明の範囲を外れるものは表層の白化が観察されたり(比較例1)、容器が波打ったように模様が観察されたり(比較例2)、底面の厚みが本発明の範囲を外れるもの(比較例3)は容器の偏肉ムラが観察され外観の意匠性に劣ることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器底面の最小厚みt1(mm)は少なくとも容器側面の最小厚みt2(mm)よりも大きく、底面の最小厚みt1が3〜15mm、容積が10〜500cmである脂環構造含有重合体からなるブロー成形容器であって、縦方向の延伸倍率yが0.9以上1.4未満、縦方向の延伸倍率yに対する横方向の延伸倍率xの比(x/y)が2.5〜5である脂環構造含有重合体からなるブロー成形容器。
【請求項2】
口部から底面までの高さHと容器最大幅Dが、H/D≧1.5以上である請求項1記載のブロー成形容器。
【請求項3】
容器底面の最小厚みt1(mm)と容器側面の最小厚みt2(mm)との関係が、3×t2≧t1≧1.2×t2である請求項1又は2記載のブロー成形容器。

【公開番号】特開2007−253491(P2007−253491A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81867(P2006−81867)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】