説明

ブロー成形用金型

【課題】ブロー成形用金型について、(i)金型の構造を簡素化し(設計期間・作製期間の短縮)、(ii)メンテナンス性を向上し(特に冷却水路の詰まりに対する作業の軽減)、(iii)従来のものからの軽量化を実現し、(iv)成形品の品質を維持して、しかもできるだけ割り線を転写させない金型を提供する。
【手段】複数の金型部材1を組み合わせることで内部にできる空洞の形状に沿った成形体を得るブロー成形用金型10であって、前記金型部材1の外面は、凸形状の隆起部14と、該隆起部の最も高さのある部分もしくはその近傍に設けられた仕切り壁16と、前記隆起部を包囲するよう該金型部材外面の周縁に設けられた包囲壁17とを有し、前記包囲壁17の所定の面部分には該包囲壁を貫通する媒体流入口11と媒体流出口12とが前記仕切り壁16を隔てて左右両側に設けられているブロー成形用金型。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブロー成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製の容器や樹脂材料を用いた中空製品の成型には、ブロー成形が広く利用されている。この方法には成形製品の輪郭をかたどった空洞を内部に有する金型が用いられ、通常、この金型には内部の成形品を冷却するための複数の冷却水路が設けられている。例えば、特許文献1には図8に示した金型部材9が提案されている。この金型部材には内部に円管状の冷却水路91が形成されており、この冷却水路は成形品の冷却効率をより高めるために、金型部材の窪み部93の面になるべく近い位置に設けるようにされている。この金型部材9は同一形状のものがもう一つ準備され、一対の金型部材のパーティング面9pを互いに当接するようにして、一体となった金型が構成される。この金型部材の媒体流入口95から冷却媒体が導入され、冷却水路91を介して冷却媒体が窪み部93の近傍を往復し、媒体流出口94から排出するようにされている。この金型部材9は部材本体9Lと、入れ子部9Mと、底部9Nとからなり、入れ子部9M及び底部9Nに設けられた立体構造部の嵌め合いによりその境界に横方向の水路が形成されている。この横方向水路を介して、前記部材本体9Lの冷却水路91は連絡される。なお、部材本体9Lの底部9Nの逆側(上方)には首ブロック(図示せず)があり、この部分でも冷却水路91の冷却媒体が折り返されるようにされている。
【0003】
特許文献2には、成形面を有する成形型を薄肉に形成し、該成形型の裏面側全域に空間を設けて、該空間内に温度調節用熱媒体を循環させるようにしたブロー成形用金型が開示されている。具体的には、成形型とその背面に配設するバックアップ材との間に空間が形成され、その空間は内部で成形されるパリソンの供給方向に沿って長手方向を有して延び、該空間の長手方向の一端から他端にかけて前記熱媒体を一方向的に流通させる構造のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−225998号公報
【特許文献2】特開2003−1699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の金型部材は本出願人による出願に係るものである。この発明は金型部材本体9Lに対し従来分割されていた底部本体をさらに分割して、前記入れ子部9Mと底部9Nとし、この間に嵌合して形成される流路をなす立体構造部を設けたことを特徴とする。これによりこの部分の流路の形成に関する金属加工が容易化され、またメンテナンスのしやすさも大きく向上した。
【0006】
本発明は、ブロー成形用金型についてさらに一層の改善を課題とし、(i)金型の構造を簡素化し(設計期間・作製期間の短縮)、(ii)メンテナンス性を向上し(特に冷却水路の詰まりに対する作業の軽減)、(iii)従来のものからの軽量化を実現し、(iv)成形品の品質を維持して、しかもできるだけ割り線を転写させない金型の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記ブロー成形用金型に関する技術課題について鋭意検討し、意外にも、従来のように金型部材の内部に形成される空洞を分割する割り位置を増やすのではなく、逆に割り位置を減らすあるいは無くす方向とし、他方金型部材の外面に内面の窪みに対応した隆起を設けその特定の位置に仕切り壁を有する構造とすることで、上記の要求のすべてを満足しうることを見出した。本発明は上記知見に基づきなされたのであり、上記の課題は、複数の金型部材を組み合わせることで内部にできる空洞の形状に沿った成形体を得るブロー成形用金型であって、前記各金型部材は前記空洞側の内面とその反対側の外面とを有し、前記内面は前記空洞の形状の一部をなす凹形状の窪み部を有し、前記外面は、凸形状の隆起部と、該隆起部の最も高さのある部分もしくはその近傍に設けられた仕切り壁と、前記隆起部を包囲するよう該金型部材外面の周縁に設けられた包囲壁とを有し、前記包囲壁の所定の面部分には該包囲壁を貫通する媒体流入口と媒体流出口とが前記仕切り壁を隔てて左右両側に設けられており、前記金型部材外面の包囲壁の内方には前記媒体流入口から媒体流出口へと前記仕切り壁を迂回して冷却媒体を流通させる冷却槽が形成されているブロー成形用金型により解決された。
【発明の効果】
【0008】
本発明のブロー成形用金型は、(i)金型の構造を簡素化し(設計期間・作製期間の短縮)、(ii)メンテナンス性を向上し(特に冷却水路の詰まりに対する作業の軽減)、(iii)従来のものからの軽量化を実現し、(iv)成形品の品質を維持して、しかもできるだけ割り線を転写させないという優れた作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態における金型部材をその外面からみて模式的に示した斜視図である。
【図2】図1に示した金型部材をその内面からみて模式的に示した斜視図である。
【図3】図1に示した金型部材のIII−III線断面を示す拡大断面図である。
【図4】図1に示した金型部材を2つ組み合わせて金型とするときの実施態様を説明するために示した分解斜視図である。
【図5】本発明の別の実施形態における金型部材をその外面からみて模式的に示した斜視図である。
【図6】上記実施形態におけるブロー成形用金型が取り付けられる金型開閉装置を模式化して示した説明図である。
【図7】本発明の別の実施形態に係る金型部材を模式的に外面からみて示した平面図である。
【図8】底部に分割のある公知の金型部材を背板等に組み付けた状態でその内面からみて模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のブロー成形用金型の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず図6に基づき本実施形態におけるブロー成形用金型が取り付けられる金型開閉装置100の全体的な構成について説明する。この金型開閉装置100は、定位置に固定された本体部101と、この本体部に前後動自在かつ水平に支持されたタイバー102,102と、これらタイバー102,102の前後端部に配設されたフロントプラテン103及びリアプラテン104と、該フロントプラテン103に対向しかつ前後動自在に上記タイバー102,102に配設された可動プラテン105とを具備している。この可動プラテン105は金型部材1を固定する背板3としての役割も有する。
【0011】
さらに、この金型開閉装置は、上記リアプラテン104と可動プラテン105とを移動させる油圧作動のピストン・シリンダー機構106と、上記リアプラテン104及び可動プラテン105の移動をガイドするピニオン・ラック機構107を備えている。そして、本実施形態の金型部材1,1からなるブロー成形用金型10は、上記フロントプラテン103側の背板3と可動プラテン(背板)105の相対向する面に、それぞれボルトなどにより取り付けられている。
【0012】
このブロー成形機型閉装置の動作は、次の通りである。押出機109のクロスヘッド119から垂下するパリソン110が、2分割されたブロー成形用金型部材1,1の所定位置にくると、油圧ユニット111が作動し、電磁弁112と一対のサーボ弁108,108を制御し、上記ピストン・シリンダー機構106のピストンロッド106aを押し出して可動プラテン105をパリソン110に近づく方向に移動させるとともに、リアプラテン104をパリソン100より離れる方向に移動させる。このリアプラテン104の移動に伴うタイバー102,102自身の後方への移動により、フロントプラテン103をパリソン110に近づける方向に移動させて、これら背板にそれぞれ取り付けられたブロー成形用金型部材1,1を当接させ一体の金型10とし、金型内部にパリソン110を挟持する。その後、パリソン110内に空気を吹き込んでブロー成形する。そして、ブロー成形の終了後は、前記した動作を逆にして、ピストンロッド106aをシリンダ内に引き込んでリアプラテン104及び可動プラテン105を成型品から待避させ、成形を完了する。
【0013】
次に、本実施形態のブロー成形用金型部材1について、図1〜3を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態における金型部材をその外面からみて模式的に示した斜視図である。図2は図1に示した金型部材をその内面からみて模式的に示した斜視図であり、図3はそのIII−III線断面を示す拡大断面図である。なお、ここでは、パーティングラインに沿って2分割されたブロー成形用金型1,1は、製品成形部の形状を除いて、左右同一構造であるため、一方の金型部材1のみを説明する。ただし、これにより本発明が限定して解釈されるものではなく、本発明の効果を妨げない範囲で、例えば左右非対称の金型部材としたり、横方向(X方向)、縦方向(Y方向)、厚み方向(Z方向)にさらに割り位置を設けたものであったり、3つ以上の金型部材を組み合わせて1つの金型とするものであったりしてもよい。
【0014】
本実施形態の金型部材1は、その2つのパーティング面1p(図2)を互いに当接するようにして組み合わせることで、内部の窪み部13が連続してその金型内部に空洞が形成される。前記金型部材1,1を互いに当接する前に、上記空洞をなす位置にパリソンが垂下される。その後、上述のように、金型部材1,1を閉じそこに空気が吹き込まれる。これにより、金型部材1,1が一体化された金型内部に形成された空洞の輪郭にそった成形体が形成される。本実施形態の金型によれば、全体において略円筒形状であり、一端には広口の開口部があり、その開口部に向かって長手方向(Y方向)にみて徐々に狭まっていく形状の容器が成形される。このとき、金型部材1,1が閉じ、その食い切り部19どうしが当接することで、成形された容器の底を形成し、その部分のパリソンが切除され取り除かれる。このような形態の成形体は、例えば、洗剤や飲料の容器として利用される。ただし、本実施形態において示した成形体の形状により、本発明が限定して解釈されるものではない。なお、図2においては内面1iとパーティング面1pとが同じ箇所を指示しているが、内面1iは窪み部13を含む部材の内側の面全体を意味し、パーティング面1pは金型部材どうしが当接する面のみを意味する。
【0015】
各金型部材1は空洞側の内面1iとその反対側の外面1oとを有する。内面には金型部材が組み合わされてなす空洞の形状の一部を構成する凹形状の窪み部13がある。他方、金型部材の外面には、上記内面の窪み部13における凹形状と実質的に一致した凸形状の隆起部14がある。ここで、凹形状と凸形状とが実質的に一致するとは、金型部材を断面視したときに(図3参照)、窪み部13の輪郭がなす形状(外形輪郭線)と隆起部の輪郭がなす形状とが一致することはもとより、円弧状どうしであるとか、頂点の数を同じにしかつ当該頂点がそれぞれ対応する位置にある角形どうしであるとか、全体において同種の形状をなすものどうし等を含む意味である。本実施形態においては、窪み部13の断面形状がほぼ半円形であり、その外形輪郭線は半円の円弧をなしている。隆起部14の断面形状は半楕円状であり、その外形輪郭線は上記窪み部の円弧よりも曲率半径が大きい円弧状にされている。ただし、冷却槽Rの最も低くなった底をなす底部15の形状と矛盾無く連続するよう隆起部の端14aで隆起部全体の曲率半径とは逆向きの曲率半径を有する円弧で、隆起部14から底部15へとつながれている。
【0016】
ここで、前記金型部材の内面の窪み部13と外面の隆起部14との間の部材厚みにおいて、最も薄い部分の厚みtが3〜8mmであることが好ましく、5〜7mmであることがより好ましい。このような厚みの設定とすることにより、金型の強度を保ちつつ、冷却効率の良い金型を製作することができる。また本実施形態においては、金型部材の内面の窪み部13及び外面の隆起部14の形状が断面視においていずれも円弧状であり(図3参照)、前記内面の窪み部の円弧状の輪郭線における距離di(窪み部端13a,13a間の道程)に対して、これと対応する外面の隆起部14の円弧状の輪郭線における距離do(隆起部端14a,14a間の道程。ただし、仕切り壁部16は含まずそこを連続した一連の円弧してみる。)の比率(do/di)が0.7〜1.2であることが好ましく、0.8〜1.0であることがより好ましい。このような外形輪郭線の設定とすることにより、冷却効率の良い金型を製作することができる。
【0017】
本実施形態の金型部材1には、その外面の隆起部14の最も高さのある部分に仕切り壁16が設けられている(図1、図3参照)。より詳しくいうと、本実施形態の隆起部14は縦方向(Y方向)に延びる母線を有する縦切円柱状(2つの母線を通る面で切断した円柱。楕円柱や斜円柱、さらにそれらに類似する形状の場合を含む。)ないし断面アーチ形にされており、パーティング面1pを高さの基線と見て最も高さが高くなる母線部分、換言すればその隆起面の稜線部分にさらに高さをなす方向に起立するよう仕切り壁16が設けられている。これを断面視にみると(図3参照)、仕切り壁16は、隆起部がなす円弧形状の最も高さのある部分で、その法線方向に延びて設けられている。この仕切り壁16は、後述する第1包囲壁17aの媒体流入口と媒体流出口との間で横方向(X方向)中央において連続し、かつ、これと反対側の第3包囲壁17cに向かって前記第1包囲壁17aに対しては垂直に延びている。ただし、仕切り壁16は第3包囲壁とは連続せずこの部分に不連続部rが形成されている。このように、冷却槽Rの内部に仕切り壁のない不連続部rを有することで、後述するような、ここで折り返し返戻される本実施形態において特有の冷却媒体の流通形態が実現される。なお、本明細書において高さというとき、特に断らない限り、上記金型部材のパーティング面1pを高さの基線(高さ=0)と見た高さをいう。
【0018】
仕切り壁16は本実施形態のように1つであってそこを迂回するように媒体を流通させても、複数であってもよい。ただし、複数ある場合には、冷却媒体の流通性を考慮して配置することが好ましく、例えば3つある場合には横方向(X方向)両側のものは第1包囲壁17aから延びるようにし第3包囲壁17c近傍には不連続部rがあるようにする。他方、横方向中央の仕切り壁は第3包囲壁17cから延び第1包囲壁17a近傍に不連続部rを形成するようにすることが挙げられる。これは、本実施形態のように第1包囲壁に媒体流入口11と媒体流出口12とが設けられていることを前提とする変形例となるが、これにより媒体流入口11から導入された冷却媒体は第1包囲壁17aと第3包囲壁17cとの間を行ったり来たりして、ジグザグに迂回して流通して媒体流出口に至るようにすることができる。
【0019】
前記仕切り壁16の平面視における方向は特に限定されず、媒体の流通方向の調節による冷却効率等を考慮して定めればよいが、例えば本実施形態のように、金型内部の空洞で成形されるパリソンが供給される方向に沿って延びることが好ましい。また、本実施形態以外の前記仕切り壁16の形態としては、図7に示したもののように仕切り壁構成部16a〜16dを組み合わせて構成されているものが挙げられる。ただし、本発明がこれらの変形例によって特に限定されるものではない。上記変形例のようにすることで、成形品の形状にも適合した効果的な冷却が可能となる。
仕切り壁の寸法は特に限定されないが、後述する背板と当接しその部分で水の流通を遮断することが好ましく、その観点からは包囲壁17と同じ高さとすることが好ましい。1本の仕切り壁を適用する場合でいうと、仕切り壁の幅tは、5〜20mmであることが好ましく、10〜16mmであることがより好ましい。仕切り壁と包囲壁との不連続部rの距離は、良好な冷却媒体の流通性を考慮すると、10〜45mmであることが好ましく、10〜20mmであることがより好ましい。
【0020】
本実施形態において、前記金型部材の外面1oの外周縁には包囲壁17が設けられており、前記隆起部14はこの包囲壁により囲まれている。包囲壁17は第1包囲壁17a、第2包囲壁17b、第3包囲壁17c、第4包囲壁17dからなり、第1包囲壁にはそれを厚み方向に貫通する媒体流入口11と媒体流出口12とが設けられている。この媒体流入口及び媒体流出口には図示していないジョイントを介して媒体配管が接続され、そこを通じて媒体の流入と流出(図1の矢印f、f参照)とが行われる。上記包囲壁17により囲まれた内方には金型部材の素材を刳り貫いて形成された冷却槽Rが形成されている。この冷却槽Rは背板3(図4、図6参照)により蓋閉じされ上記媒体流入口から流入した冷却媒体が前記仕切り壁16で仕切られながら第1冷却室rを過ぎ(図1参照)、さらに仕切り壁のない不連続部rを介して返戻され、第2冷却室rに流入する。その後、この金型部材の熱を奪いながら冷却媒体は媒体流出口12から流出し、その一連の媒体流通により効果的な金型の冷却が実現される。図1中の矢印fはこの媒体流通方向を示している。
【0021】
本実施形態においては、上述のように金型部材の外面1oにその素材を刳り貫いてできた冷却槽Rが設けられたことを特徴とするが、これにより奏する作用は上記冷却効果のみでなく、以下のような点が挙げられる。まず、従来の金型のように典型的には直径8mm程度の細い冷却管をなくし、広く開放した冷却槽Rとしたため、そのメンテナンス性が大幅に向上した。さらに、金型部材の素材が大きく刳り貫かれた形状を有するため、金型全体の質量を大幅に減少させることができる。
【0022】
さらにまた、金型部材の加工性が大幅に改善され、金型の設計から製作にかかる費用及び日数を大きく短縮することができる。例えば、冷却管を設けた従来の金型部材ではその冷却管の加工を限られた方向からしか行うことができず、さらに分割部材をそれぞれに加工しなければならず、工作機器ないし加工作業との関係で設計自由度に大きな制約があった。そのため、加工工程において相当程度の工数及び時間がとられることとなる。これに対し、本実施形態の金型部材であれば、基本的に6方向からの加工が可能であるため、設計自由度を大幅に高め、しかも工作機器の設定の変更等を要さずに手際良く短時間でその加工を終えることができる。こういった加工性及び設計自由度の大幅向上は、たとえば、開発検討用の金型の工作期間を短縮し、容器や各種部品等の成形品の開発期間の短縮に大きな効果を発揮する。さらには、頻繁にニーズや仕様が変更される製品の製作においても、カスタムメードを実現して好適に対応することができる。
【0023】
さらに、本実施形態の前記金型部材1においては、その内部に形成される空洞を分割する割り位置がないこともその特徴として挙げられる。換言すれば、金型部材1の窪み部は面一の湾曲した面で構成されており、この部分に割り位置がないことで、成形品の外観に影響する不用意なバリの発生を防止することができる。また、割り位置がないことによる加工性及び設計性の良化、メンテナンス性や取り扱い正の向上については、上述したとおりであり、本実施形態において得られる利点である。本実施形態の前記金型部材を作製するための素材としては、特に限定されないが、アルミ合金、真鍮、銅合金、金型用鋼材などが好ましく、さらに冷却効率,加工性からアルミ合金であることがより好ましい。
【0024】
図4は、図1に示した金型部材を2つ組み合わせて金型とするときの実施態様を説明するために示した分解斜視図である。
本実施形態の金型部材1,1は、上述のように、その背面1oに当接させて背板3が設置される。この背板の組み付けは背板3に設けた孔31にネジ5を挿通し、このネジ5を金型部材1のネジ孔18に螺合して行われる。これにより、金型部材の外面1oには閉じられた冷却槽Rが形成され、そこを冷却媒体が流通する(流通方向f,f,f参照)。背板を組み付けた金型部材はブロー成形機のプラテンに取り付けられる。そして、タイバー102沿って一対の金型部材1,1が背板3ごと平行移動して、パーティング面1pで当接し一体となった金型をなすようにされている。
【0025】
図5は、本発明の別の実施形態における金型部材をその外面からみて模式的に示した斜視図である。同図に示したとおり、本実施形態の金型部材1については、隆起部14の表面に段差が設けられている。この段差は、階段状になっており、1つ1つの段14tが連続して、仕切り壁16の配置された最も高さのある部分(横方向中央部分)から、高さのない底部15に向かって徐々にステップダウンするようにして配置されている。このようにすることで、曲面ではなく、平面的な形状の組み合わせで加工できるため加工性が大幅に高まる。1つ1つの段差の寸法は特に限定されないが、段差14tの高さは1〜3mmであることがより好ましい。
【実施例】
【0026】
以下に、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。
【0027】
(実施例1)
図1に示した金型部材を作製した。素材には、アルミ合金製で、寸法が縦(Y)250mm,横(X)180mm,高さ(Z)60mmのものを用い、この内面及び外面を所定輪郭形状になるよう刳り貫くことにより加工した。このとき仕切り壁と包囲壁との不連続部rの離間距離tを10mmとした。
【0028】
(比較例1)
図8に示した金型部材を作製した。部材本体部分の素材は実施例1と同じものを用い、寸法としては首ブロック、入れ子部、及び底部と組み合わせたときに実施例1のものと同じになるようにした。入れ子部及び底部の材料及び形状の加工は、特開平09−225998号公報を参照して行った。
【0029】
以下に、実施例及び比較例1で作製した金型部材について、下記の項目を比較した結果を示す。
(作製時間)
金型部材の作製にかかった時間を比較した。実施例のものにかかった時間を100として、これに対する比較例のものでかかった時間の比率(インデックス)で表した。なお、この評価を始め、以下の評価を含め、成形する成形品の形状の異なるものとして異なる空洞をもつ複数の水準の金型部材の作製を行い、それらの結果の平均値あるいは平均化した評価結果として示している。
(重量)
実施例で作成した金型部材の重量を100とし、これに対する比較例で作製したものの重量(首ブロック、入れ子部、及び底部を含む)の比率(インデックス)を示した。
(メンテナンス性)
冷却手段に詰まりが発生した場合のメンテナンス、分解,清掃,組み付けを行った場合の作業の難易度,要する時間を比較し評価した。評価の区別は下記のとおりである。
○:分解,清掃,組み付けが容易に短時間で行えるもの
△:分解,清掃,組みつけが容易に行えるもの
×:分解,清掃,組み付けが行えるが時間を要するもの
(成形品の寸法精度)
成形品の設計値を100とし、これに対する成形品寸法精度の測定を行い、評価した。評価の区別は下記のとおりである。
○:成形品の設計寸法値からの差が2%未満のもの
△:成形品の設計寸法値からの差が2%以上3%未満のもの
×:成形品の設計寸法値からの差が3%以上のもの
【0030】
[表1]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
項目 実施例1 比較例1
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
作製時間(インデックス) 100 140〜175
重量(インデックス) 100 130〜140
メンテナンス性 ○ ×
成形品の寸法精度 ○ ○
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0031】
上記の結果より、本発明の金型によれば、製造される成形品の品質を維持して、その金型部材の作製期間の大幅な短縮、重量の軽減、メンテナンス性の向上を達成できることが分かる。
【0032】
(実施例2〜3.比較例2)
図1の不連続部rの離間距離tを30mm、45mm、に変化させ、その他の部分は実施例1と同様の加工で加工し、可視化した状態で冷却水流れを確認した。この確認は、実際に冷却水を流した場合の空気溜まりの状態を比較し評価した。評価の結果は下記のとおりである。
空気溜まりの量が大きいものから、順に 比較例2(仕切り壁無し)>実施例3(t=45mm)>実施例2(t=30mm)>実施例1(t=10mm)という結果となった。この結果から、上記の範囲においては、不連続部rの離間距離tが小さい方が媒体の流通に液溜まりができにくく好ましいことが分かる。
【符号の説明】
【0033】
1 ブロー成形用金型部材
11 媒体流入口
12 媒体流出口
13 窪み部
14 隆起部
15 底部
16 仕切り壁部
17 包囲壁
19 食い切り部
1i 内面
1o 外面
1p パーティング面
2 サイドプレート
3 背板
4 ストライカープレート
5 ネジ
6 シム
、f、f 媒体流通方向
R 冷却槽
【0034】
9 金型部材(底部分割式)
91 冷却水路
93 窪み部
95 媒体流入口
94 媒体流出口
9L 部材本体
9M 入れ子部
9N 底部
【0035】
100 金型開閉装置
101 本体部
102 タイバー
103 フロントプラテン
104 リアプラテン
105 可動プラテン
106 ピストン・シリンダー機構
106a ピストンロッド
107 ピニオン・ラック
108 サーボ弁
109 ピストン
110 パリソン
111 油圧ユニット
112 電磁弁
119 クロスヘッド




【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金型部材を組み合わせることで内部にできる空洞の形状に沿った成形体を得るブロー成形用金型であって、
前記各金型部材は前記空洞側の内面とその反対側の外面とを有し、
前記内面は前記空洞の形状の一部をなす凹形状の窪み部を有し、
前記外面は、凸形状の隆起部と、該隆起部の最も高さのある部分もしくはその近傍に設けられた仕切り壁と、前記隆起部を包囲するよう該金型部材外面の周縁に設けられた包囲壁とを有し、
前記包囲壁の所定の面部分には該包囲壁を貫通する媒体流入口と媒体流出口とが前記仕切り壁を隔てて左右両側に設けられており、前記金型部材外面の包囲壁の内方には前記媒体流入口から媒体流出口へと前記仕切り壁を迂回して冷却媒体を流通させる冷却槽が形成されているブロー成形用金型。
【請求項2】
前記仕切り壁は、前記流入口と前記流出口との間で平面視において前記包囲壁の所定面に対し垂直方向に延びて配置された請求項1に記載のブロー成形用金型。
【請求項3】
前記金型部材の外面に設けられた前記包囲壁に背板を当接して前記冷却槽が蓋閉じされる請求項2に記載のブロー成形用金型。
【請求項4】
前記仕切り壁は、前記背板と当接し、かつ前記媒体流入口及び媒体流出口が設けられた前記包囲壁の所定面に連続し、他方、該所定面とは反対側の包囲壁の面とは連続していない請求項3に記載のブロー成形用金型。
【請求項5】
前記金型部材外面の隆起部にはその外表面に段差が設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載のブロー成形用金型。
【請求項6】
前記金型部材には、その内部に形成される空洞を分割する割り位置がない請求項1〜5のいずれか1項に記載のブロー成形用金型。
【請求項7】
前記金型部材外面の隆起部は縦切円柱状にされている請求項1〜6のいずれか1項に記載のブロー成形用金型。
【請求項8】
前記金型部材内面の窪み部と外面の隆起部との断面における部材厚みが3〜8mmである請求項1〜7のいずれか1項に記載のブロー成形用金型。
【請求項9】
前記金型部材内面の窪み部及び外面の隆起部の形状が断面視においていずれも円弧状であり、前記窪み部の円弧状の外形輪郭線における距離diに対して、これと対応する隆起部の円弧状の外形輪郭線における距離doの比率(do/di)が0.7〜1.2である請求項1〜8のいずれか1項に記載のブロー成形用金型。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の金型を用い、その金型部材の外面側に冷却媒体を流通させ金型を冷却し、該金型内部の空洞の形状に沿った成形体を製造するに当たり、
前記金型部材の外面の隆起部で最も高い部分に設けられた仕切り壁の片側に前記冷却媒体を流入させ、その後、前記仕切り壁の反対側から前記冷却媒体を流出させる成形体の製造方法。
【請求項11】
前記仕切り壁の片側に流入させた冷却媒体を該仕切り壁の端部位置で折り返させ、前記仕切り壁の反対側に前記冷却媒体を流通させる請求項10に記載の成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−136424(P2011−136424A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295972(P2009−295972)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】