説明

プッシャー式鋼片加熱炉の切出し装置

【課題】簡単な機構の装置でもって、溶着したビレット鋼片があっても、確実にビレット鋼片を1本ずつ切出せるプッシャー式鋼片加熱炉の切出し装置を提供する。
【解決手段】プッシャー式鋼片加熱炉20に取付けられ、炉内において、複数のスキッドレール11に載置された複数の鋼片10を該スキッドレール11の前方に位置する搬送ローラ15上に1本ずつ移送する切出し装置1において、該スキッドレール11前端の上面に繋がる上り勾配を呈するレ−ル状のガイドスロープ13と、該ガイドスロープ13の頂部から搬送ローラ15上に案内されるレール状の排出シュート14と、隣合うスキッドレール11の中間で、ガイドスロープ13頂部やや前方に位置し、かつ、待機位置ではガイドスロープ13面より低く位置し、上昇時にはガイドスロープ13面より高く突き出る鋼片突上げ先端部を有する昇降具3を備えた昇降装置2と、を備えること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼片加熱炉の鋼片切出し装置に関し、詳しくは、プッシャー式鋼片加熱炉内の固定レール上に載置されて順次押し出されてくる複数のビレット鋼片を一本ずつ取り出しを行う切出し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧延工場では、連続鋳造または粗圧延されたビレット鋼片を圧延工程で更に圧延するために、加熱炉で所定温度に再加熱する加熱工程があり、ビレット鋼片を連続的に加熱する手段としてプッシャー式鋼片加熱炉が広く用いられている。
【0003】
このプッシャー式鋼片加熱炉は、ビレット鋼片を炉内の固定スキッドレール上に、接触状態で、並列状に位置するように載置し、該ビレット鋼片をバーナにより加熱して、所定温度に上昇または保持する。プッシャー式鋼片加熱炉には、装入部にあるプッシャーにてビレット鋼片を装入するとともに、炉内の載置したビレット鋼片群を押し出し、抽出部にて前記加熱された複数の鋼片を一本ずつ取出す切出し装置が設置されている。
【0004】
この切出し装置1は、図5に示すように、加熱処理されたビレット鋼片10が載置され、搬送される固定スキッドレール11に近接して設けられ、固定スキッドレール11の抽出端と、それに接続するシュート14から構成される。端末に位置するビレット鋼片10は、後続のビレット鋼片10群に押し出されて固定スキッドレール11からシュート14を経由して搬送ローラ15上に転落する。また、転落したビレット鋼片10は後続のビレット鋼片10群との間隔を取って搬送ローラ15上を移送される。なお、ビレット鋼片10は、装入部に設けられた前進後退動するプッシャー(図示しない)によって間欠的に押し出される。
【0005】
前述した切出し装置1において、加熱炉20内で固定スキッドレール11上のビレット鋼片10同士が溶着して押し出されて来た場合には、ビレット鋼片10は固定スキッドレール11からシュート14を介して搬送ローラ15へ重力により転落するから、この過程で1本ずつ切り離して転落できないことが生じる。この場合、溶着したビレット鋼片10を搬送ローラ15上で切り離す作業は困難で時間がかかり、一連の生産工程を乱す結果となる。また、場合により、溶着したビレット鋼片が加熱炉20の炉壁21や出口扉22に突当たり壁を損傷させるおそれがあった。この問題に対して、有効な手段が先行技術として開示されている(文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−271118公報(〔0016〕、〔0025,0026〕〔図6〕)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記先行技術は、鋼片の載置面と突起を有する軸棒から構成され、軸棒の進退及び回動の二動作で鋼片の切出しを行うものである。この先行技術は、鋼片の溶着を突起を回動して鋼片を長軸方向に斜め方向に擦り揚げて分離するものであるから、鋼片に擦り傷を負わすおそれがあり、また、軸棒の進退シリンダ、回動シリンダ等を要し、装置が複雑になる問題があった。
【0008】
本発明は、これらの問題を解決したものであって、簡単な機構の装置でもって、溶着したビレット鋼片があっても、確実にビレット鋼片を1本ずつ切出せるプッシャー式鋼片加熱炉の切出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係るプッシャー式鋼片加熱炉の切出し装置は、プッシャー式鋼片加熱炉に取付けられ、炉内において、複数のスキッドレールに載置された複数の鋼片を該スキッドレールの前方に位置する搬送ローラ上に1本ずつ移送する切出し装置において、該スキッドレール抽出部において、先頭の鋼片を突上げる昇降具を隣り合うスキッドレールの中間部に備えることを特徴とする。また、請求項2に係るプッシャー式鋼片加熱炉の切出し装置は、プッシャー式鋼片加熱炉に取付けられ、炉内において、複数のスキッドレールに載置された複数の鋼片を該スキッドレールの前方に位置する搬送ローラ上に1本ずつ移送する切出し装置において、該スキッドレール前端の上面に繋がる上り勾配を呈するレ−ル状のガイドスロープと、該ガイドスロープの頂部から搬送ローラ上に案内されるレール状の排出シュートと、隣合うスキッドレールの中間で、ガイドスロープ頂部やや前方に位置し、かつ、待機位置ではガイドスロープ面より低く位置し、上昇時にはガイドスロープ面より高く突き出る鋼片突上げ先端部を有する昇降具を備えた昇降装置と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明で言及する鋼片は、厚み40mm〜150mm、幅75〜350mm、長さ650mm〜2500mm、重量15kg〜1000kgのビレット鋼片を主として対象にする。本発明の特徴を説明すると、プッシャー式鋼片加熱炉の抽出端において、加熱されたスキッドレール上の鋼片群がプッシャーによりガイドスロープ上でお互いに接触して整列している。その際、上り勾配のガイドスロープ上の鋼片列には自重の分力が装入側に向いている。その抽出端の鋼片がガイドスロープの頂部を乗り越えるところを狙って、昇降具を上昇させ、その先端部が先頭の鋼片を突き上げて、後続の鋼片と縁切りして、次いでプッシャが作動して鋼片群が1ピッチ押し出し、これに伴い先頭鋼片を排出シュートへ転落させるものである。
【0011】
この構成により、先頭と後続の鋼片同士が側面で溶着している場合に、先頭の鋼片を昇降具で突き上げて上昇又は傾動させ、かつ後続の鋼片には装入側へ引き戻す力が作用しているので、鋼片同士の溶着を分離し易く、次いでプッシャの作動により先頭の鋼片のみ排出シュート側に転落することができ、鋼片2本が溶着したままで転落することはない。また、昇降具は排出毎に鋼片を突き上げているから、鋼片を1本ずつ確実に排出することができる。
【0012】
請求項3に係るプッシャー式鋼片加熱炉の切出し装置は、請求項2に記載のプッシャー式鋼片加熱炉の切出し装置において、ガイドスロープ頂部における鋼片の位置を検出できる鋼片感知装置を設けたことを特徴とする。
【0013】
本構成は、鋼片感知装置を炉外に設け、炉壁孔を通して、スキッドレール上の鋼片の存在を観察し、抽出端の所定の位置に先頭の赤熱鋼片が来たら検知信号を発するものである。この検知信号により、前記昇降具を上昇させるタイミングが決まり、毎回一回の昇降動作を実施する。すなわち、排出端のガイドスロープに来る各鋼片について、定点である昇降具に対し鋼片を突き上げる位置を設定しておけば、先頭鋼片を確実に突上げるので、溶着した鋼片であっても、先頭鋼片を確実に分離し、かつ、排出シュートに転落させ易くできるから、確実にビレット鋼片を1本ずつ切出すことが可能となる。また、鋼片感知装置には、例えば、赤熱した鋼片の存在の有無により位置を確認できる透過型光電子センサ(Cold Metal Detector、通称CMD)を用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る請求項1、2に記載のプッシャー式鋼片加熱炉の切出し装置によれば、加熱炉内の鋼片を溶着している場合も含めて、スキッドレール上の先頭鋼片を確実に切り離して1本ずつ切出すことができる。また、切出しの際にも、鋼片の表面に疵が付かないので、最終製品の品質を維持することに結び付く。また、搬送ローラ上での溶着した鋼片の切り離し作業を皆無にし、加熱炉出口の炉壁での衝突による設備損傷を無くすことができる。
【0015】
本発明に係る請求項3に記載のプッシャー式鋼片加熱炉の切出し装置によれば、先頭鋼片の位置検出を容易にし、昇降具によって先頭鋼片の縁切りが確実にできるので、溶着した場合であっても、鋼片の一本ずつの切出し作業を安定して確実に行うことができる。
【0016】
本発明に係る請求項1から3に記載のプッシャー式鋼片加熱炉の切出し装置によれば、簡易な装置でもって、大小を問わず、いずれの加熱炉に対応して適用できるので、総合的に、圧延設備の稼働率の維持向上を図ることができる。また、これにより圧延工程の生産性、省エネルギーに貢献すると共に、製品の品質を維持向上することが可能である。また、簡易な装置であるから設置が容易であり、設備コスト及び保全コストも過大にならない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施するための形態に係るプッシャー式鋼片加熱炉の切出装置であって、模式的配置図である。
【図2】図2(a)は、図1の切出装置の模式的縦断面図である。図2(b)は、図2aのA−A矢視の模式的断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明に係るプッシャー式鋼片加熱炉の切出装置であって、ビレット鋼片切出し時の昇降具の作動状態を示す説明図である。図3(b)は、ビレット鋼片切出し時の昇降具の作動が終了し、プッシャにより押し出す状態を示す説明図である。
【図4】図4(a)は、本発明に係るプッシャー式鋼片加熱炉の切出装置であって、別形状のビレット鋼片切出し時の昇降具の作動状態を示す説明図である。図4(b)は、別形状のビレット鋼片切出し時の昇降具の作動が終了し、プッシャにより押し出す状態を示す説明図である。
【図5】図5は、従来のプッシャー式鋼片加熱炉の切出装置であって、模式的配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係わるプッシャー式鋼片加熱炉の切出装置を実施するための形態について図1、2、3、4を用いて説明する。図1は、本発明の実施するための形態に係るプッシャー式鋼片加熱炉の切出装置であって、模式的配置図である。図2(a)は、図1の切出装置の模式的縦断面図である。図2(b)は、図2aのA−A矢視の模式的断面図である。図3(a)は、本発明に係るプッシャー式鋼片加熱炉の切出装置であって、ビレット鋼片切出し時の昇降具の作動状態を示す説明図である。図3(b)は、ビレット鋼片切出し時の昇降具の作動が終了し、プッシャにより押し出す状態を示す説明図である。図4(a)は、本発明に係るプッシャー式鋼片加熱炉の切出装置であって、別形状のビレット鋼片切出し時の昇降具の作動状態を示す説明図である。図4(b)は、別形状のビレット鋼片切出し時の昇降具の作動が終了し、プッシャにより押し出す状態を示す説明図である。
【0019】
本発明に係るプッシャー式鋼片加熱炉20は、圧延工場において、連続鋳造または粗圧延されたビレット鋼片10を圧延工程で更に圧延するために、圧延に適した所定温度にビレット鋼片10を再加熱する加熱炉20である。ビレット鋼片10の形状は、通常、厚み40mm〜150mm、幅75〜350mm、長さ650mm〜2500mmの鋼片で、重量は15kg〜1000kgの範囲である。プッシャー式鋼片加熱炉20内には、複数列からなる固定スキッドレール11を全長に亘り配設する。そして、装入部のプッシャー(図示しない)により、ビレット鋼片10を進行方向に接触状態で、並列状に位置するように固定スキッドレール11の全長に亘り載置すると共に抽出側へ向けて押し込む。該ビレット鋼片10群をバーナ(図示しない)により加熱して、所定温度に上昇または保持する。プッシャー式鋼片加熱炉20には、装入部にあるプッシャーにてビレット鋼片10を装入するとともに、載置したビレット鋼片10群を押し出し、抽出部にて前記加熱された複数のビレット鋼片10を一本ずつ取出す切出し装置1が設置されている。
【0020】
本発明に係る切出装置1は、図1、図2、図3、図4に示すように、スキッドレール11の抽出端の上面に載置され、かつ上り勾配を呈するレ−ル状のガイドスロープ13と、ガイドスロープ13の頂部から搬送ローラ15上にビレット鋼片10を落下し案内するレール状の排出シュート14と、隣合うスキッドレール11の中間で、ガイドスロープ13の頂部やや進行方向の前方に位置し、かつ、待機位置ではガイドスロープ13面より低く位置し、上昇時にはガイドスロープ13面より高く突き出て鋼片を突上げる先端キャップ3−1を有する昇降具3と、昇降具3を備え、かつ昇降させる昇降装置2とから構成される。なお、スキッドレール11は、通常、耐火物張りの水冷ボックス又は水冷管の上部に、鋼片10がスライドする金属製のスキッドを設けたものであり、ガイドスロープ13も同様な構造を有する。
【0021】
また、一例として、厚み40mm〜150mm、幅75〜350mm、長さ650mm〜2500mmのビレット鋼片10を対象にするプッシャー式鋼片加熱炉20内の固定スキッドレール11の配置は、図2bに示すように、隣り合う固定スキッドレール11の間隔を300mmとする3列の固定スキッドレール11で、長さ650mm〜2000mmのビレット鋼片10を載置することが可能であり、しかも、2500mm長さのビレット鋼片10に対しては、3列の固定スキッドレール11を二列に2100mmの中心間隔で配置することで対応できる、すなわち、長さ650mm〜2500mmの範囲のビレット鋼片10を3列の固定スキッドレール11の二列上に載置することができる。従って、3列の固定スキッドレール11一組に対して、2本の昇降具3を有する昇降装置2が1セット配置される。
【0022】
昇降装置2は、鋼片10を突き上げる先端キャップ3−1を備える昇降具3の二組と、二組の昇降具3の底部とその上面で結合する昇降体本体4−1の一組と、昇降体本体4−1を昇降させる流体圧シリンダ5の二組と、から構成される。
【0023】
昇降体4は、傾斜板4−4と複数のガイドローラ4−2を有する昇降体本体4−1と、ガイドローラ4−2と係合するガイドレール4−3とその支柱と、から構成される。昇降体本体4−1の各側面部には、複数のガイドローラ4−2が備えられ、また複数のガイドローラ4−2を垂直方向に昇降案内するガイドレール4−3とその支柱を基礎面から立設する。すなわち、昇降体本体4−1の流体圧シリンダ5と反対側の側面部には、2本のガイドレール4−3が配設され、流体圧シリンダ5側には1本のガイドレール4−3が2個の流体圧シリンダ5の中間部に配設される。また、昇降体本体4−1のスキッドレール11と交差する方向の両側面部には夫々ガイドレール4−3が配設される。5本のガイドレール4−3に対応して、10個のガイドローラ4−2を昇降体本体4−1の各側面部の上下に配設している。
【0024】
昇降体本体4−1の下面には、2組の流体圧シリンダ5のシリンダロッド5−1の先端にある押上げローラ5−2と対応し、各押上げローラ5−2と圧接する傾斜面を有する傾斜板4−4の2組を接合している。流体圧シリンダ5により押上げローラ5−2を傾斜板版4−4の傾斜面に対して押込むと、昇降体本体4−1を垂直方向に所定位置まで上昇させると共に昇降具3も上昇して先頭ビレット鋼片10−1を突き上げる。反対に、押上げローラ5−2を引込めると、昇降具3と昇降体本体4−1の自重により昇降具3と昇降体本体4−1は共に所定位置まで下降する。流体圧シリンダ5は空気圧又は油圧で駆動される。また、流体圧シリンダ5のシリンダロッド5−1の駆動力及び駆動速度は、流体シリンダ5に供給する流体圧力及び流体流量により調節することができる。これにより、昇降具3の上昇加圧力及び昇降速度をも調節できる。また、流体圧シリンダ5の採用によりストロークに関係なく一定の力を昇降具3に付与できるし、過剰な力が加わり、昇降装置2の機器を損傷することがない。
【0025】
昇降具3は、図2、図3、図4に示すように、先端部には先頭ビレット鋼片10−1を突上げ、接触する耐摩耗性耐熱性金属製の先端キャップ3−1を備える。昇降具3の本体は冷却水流入管3−2を中心に、冷却水流出管3−3を外側に配設した二重管から構成されており、冷却水流入管3−2は二重管の先端部で開口し、重点的に先端キャップ3−1に強制冷却を施すことができる。昇降具3の下部では、冷却水流入管3−2の下端で冷却水入口ホース3−4が繋がれ、一方冷却水流出管3−3の下端は、昇降体本体4−1に備えられた排水管4−5に結合し、系外に排出される。この構成をとることにより、加熱炉20や鋼片10からの輻射熱による損傷を防止することができ、鋼片10を突き上げる際の昇降具3がその反力により曲がり又は座屈することを防止できる。また、金属の先端キャップ3−1を設けているので、加熱鋼片10と頻繁に接触しても変形が防止できるし、鋼片10にも過大な疵をもたらすこともない。また、金属製先端キャップ3−1の形状を鋼片10を分離し易く、転落させ易いような形状、例えば勾配を持たすことも可能である。
【0026】
また、昇降具3の通路は、プッシャー式加熱炉20内と連通しているので、内部を昇降具3が昇降するガイド管と、後部が末広がりの円錐管状を呈するシール部6が設けられ、シール部6の下端部は定法の水封部(図示しない)を昇降体本体4−1の上部に設けている。この構成により、加熱炉20は通常炉内を若干負圧状態で運転しているので、昇降具3が昇降作動を行っても、シール部6と水封部により、炉内への外気の侵入を防止して、加熱炉20の加熱効率の低下を防止する。またビレット鋼片10の表面酸化も防止し、鋼片表面品質の維持と歩留りの低下を防ぎ、さらに酸化による酸化鉄皮膜の溶着、すなわち鋼片10の表面同士の融着の防止にも貢献する。
【0027】
昇降具3を上昇させ、ビレット鋼片10を1本ずつ切り離して切出す際には、昇降具3と鋼片10との相対的位置が所定の位置になった時を見計らって、昇降具3を上昇させるタイミングとしなければならない。そのために、本発明に係るプッシャー式鋼片加熱炉の切出し装置1では、ガイドスロープ13頂部における先頭鋼片10−1の位置を検出できる鋼片感知装置7を設けている。鋼片感知装置7には、赤熱した鋼片10と炉壁21を含む炉20内とを区別して、赤熱した鋼片10の位置を感知・検出し、鋼片10の位置を特定するために透過型光電子センサ(CMD)7−1を用いる。すなわち、透過型光電子センサ(CMD)7−1を炉外に設け、炉壁孔を通して、スキッドレール11上の鋼片10を観察し、抽出端の所定の位置に先頭の赤熱鋼片10−1が来たら検知信号を発するものである。この検知信号により、昇降具3を上昇させるタイミングが決まり、毎回一回の昇降動作を実施する。すなわち、排出端のガイドスロープ13に来る各鋼片10について、昇降具3の定点に対し先頭鋼片10−1を突き上げる位置を設定しておけば、先頭鋼片10−1を確実に突上げるので、溶着した先頭鋼片10−1であっても、先頭鋼片10−1を確実に分離させ、次いでプッシャーの作動により押し出されて、排出シュート14を経由して搬送ローラ15に載せることができるので、確実にビレット鋼片10の切出しが可能となる。
【0028】
昇降具3によって、溶着したビレット鋼片10同士を切り離す状況を、図3、図4を用いて説明する。図3のビレット鋼片10の断面形状は略正方形であるのに対し、図4の場合は進行方向に長手の長方形である。この断面形状は、後工程の圧延等加工製品の形状に左右されることが多い。図3a、図4aは昇降具3が先頭鋼片10−1を突上げる直前の状態を示している。鋼片10群は、スキッドレール11とガイドスロープ13の上面を、装入端にある間欠作動するプッシャー(図示しない)の押し出しにより間欠的に走行する。ガイドスロープ13の上面は、出口端のスキッドレール11の上面と繋がり、鋼片10の進行方向fへ上り勾配を有する。この勾配によりスロープ13上面に在る鋼片10には、進行方向fと逆方向に戻す鋼片10の自重の分力が働いている。
【0029】
図3a、図4aで、昇降具3の先端キャップ3−1で鋼片10−1の下面を昇降具3のストロークdで突き上げると、先頭鋼片10−1は浮き上がり、後続の鋼片10との間を縁切りして分離させる。しかも後続の鋼片10には進行方向と逆の力が働いていることも加わって、結果的に、昇降具3により先頭鋼片10−1が浮き上がり易く、後続の鋼片10からの切り離しを容易にしている。次いで、図3b、図4bに示すように、昇降具3が下降して待機状態の位置に戻れば、プッシャを作動させて鋼片10群を間欠的に押し出し、分離した先頭鋼片10−1のみを排出シュート14を経由して搬送ローラ15上へ移送する。したがって、本発明に係る切出し装置は、定型的な断面形状のいずれの鋼片に対しても、十分対応できる。
【0030】
総括すると、先頭鋼片10−1がガイドスロープ13の所定位置に到達したことを鋼片感知装置7で検出したならば、その検出信号は昇降装置4の流体圧シリンダー5の動作開始のトリガーとなる。流体圧シリンダー5の押上ローラ5−2が昇降体4の傾斜板4−4を押し上げて、結果的に昇降具3をストロークdだけ上昇してガイドスロープ13面より高く鋼片10−1を押し上げ、後続の鋼片10との間を強制的に分離することができる。次に上昇終了を検知して、流体圧シリンダー5に逆作動を行わせ、昇降体4、昇降具3に下降動作を行わせて昇降具3の昇降動作の1サイクルが終了する。そして、昇降具3が通常の待機状態に戻ったら、プッシャを作動させて鋼片10群を押し出し、分離した先頭鋼片10−1を排出シュート14へ転落させる。したがって、鋼片10−1の検出信号と、昇降具3の昇降動作と、装入部にあるプッシャーの間欠動作とを連動して作動させるのが好適である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
工業加熱炉における熱処理品の切出し作業に利用できる。
【符号の説明】
【0032】
1:切出装置
2:昇降装置 3:昇降具 3−1:先端キャップ
3−2:冷却水流入管 3−3:冷却水流出管 3−4:冷却水入口ホース
4昇降体 4−1:昇降体本体 4−2:ガイドローラ
4−3:ガイドレール 4−4:傾斜板 4−5:排水管
5:流体圧シリンダ 5−1:シリンダロッド 5−2:押上ローラ
6:シール部 7:鋼片感知装置 7−1:赤外線センサ
10:ビレット鋼片 10−1:先頭鋼片 11:スキッドレール
13:ガイドスロープ 14:排出シュート 15:搬送ローラ
20:プッシャー式鋼片加熱炉 21:加熱炉炉壁 22:出口扉
d:昇降具のストローク f:鋼片進行方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プッシャー式鋼片加熱炉に取付けられ、炉内において、複数のスキッドレールに載置された複数の鋼片を該スキッドレールの前方に位置する搬送ローラ上に1本ずつ移送する切出し装置において、該スキッドレール抽出部において、先頭の鋼片を突上げる昇降具を隣り合うスキッドレールの中間部に備えることを特徴とするプッシャー式鋼片加熱炉の切出し装置。
【請求項2】
プッシャー式鋼片加熱炉に取付けられ、炉内において、複数のスキッドレールに載置された複数の鋼片を該スキッドレールの前方に位置する搬送ローラ上に1本ずつ移送する切出し装置において、該スキッドレール前端の上面に繋がる上り勾配を呈するレ−ル状のガイドスロープと、該ガイドスロープの頂部から搬送ローラ上に案内されるレール状の排出シュートと、隣合うスキッドレールの中間で、ガイドスロープ頂部やや前方に位置し、かつ、待機位置ではガイドスロープ面より低く位置し、上昇時にはガイドスロープ面より高く突き出る鋼片突上げ先端部を有する昇降具を備えた昇降装置と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のプッシャー式鋼片加熱炉の切出し装置。
【請求項3】
前記ガイドスロープ頂部における鋼片の位置を検出できる鋼片感知装置を設けたことを特徴とする請求項2に記載のプッシャー式鋼片加熱炉の切出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−63872(P2011−63872A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218214(P2009−218214)
【出願日】平成21年9月19日(2009.9.19)
【出願人】(000143190)株式会社広築 (10)
【Fターム(参考)】