説明

プッシュスイッチ

【課題】押し込み方向に沿って可動接点と固定接点が摺動し、通常時にはオン状態で、ノブをハウジング側へ押し込んだ操作時にはオフ状態に切り替わるプッシュスイッチを小型化する。
【解決手段】プッシュスイッチ10は、押し込み方向(ノブ11の摺動方向α’)に沿って可動接点13と固定接点14が摺動し、ハウジング12に可動接点13が取り付けられ、ハウジング12に対して摺動可能に取り付けられるノブ11に固定接点14が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプッシュスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
押し込み方向(ノブの摺動方向)に沿って可動接点(可動接片)と固定接点(固定接片)が摺動するプッシュスイッチが広く使用されている。
従来のプッシュスイッチでは、可動接点がノブ(操作部材)に取り付けられ、固定接点がハウジング(固定部材)に取り付けられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−310151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のプッシュスイッチにおいて、ノブがハウジングから突出している通常時にはオン状態で、ノブをハウジング側へ押し込んだ操作時にはオフ状態に切り替わるように構成する場合、固定接点の形状を、ハウジングの幅方向か又は厚さ方向のいずれかの方向に迂回した形状にする必要があるため、プッシュスイッチ全体が大きくなってしまい小型化できないという問題があった。
【0005】
また、従来のプッシュスイッチでは、ハウジングを筒状に形成し、固定接点をノブの反対側に引き出す場合、合成樹脂製のハウジングを射出成形する際に、固定接点をインサート成形しようとしても、成形金型の抜き方向と固定接点が平行になることや、固定接点と対向するハウジングの壁が障害になる、などの理由によりインサート成形が困難であるという問題があった。
【0006】
さらに、車両用照明では各ドアなどの複数箇所の照明を一括して操作するため、1個のプッシュスイッチで複数回路のオンオフ操作を同時に行うことが要求されるが、それを回路的に実現する場合には高電圧を扱うためコスト高となってしまう。
そこで、複数スイッチ回路同時オンオフ切替スイッチを用いることになるが、従来のプッシュスイッチでは、複数スイッチ回路分の固定接点と可動接点を1個のプッシュスイッチ内に設けるとなると、プッシュスイッチ全体が非常に大きくなってしまうという問題があった。
【0007】
特に、自動車室内のルーフ部(天井部)に設置した1個のハウジングに、車両各部の操作用の複数個のプッシュスイッチを横方向一列に配置した場合には、個々のプッシュスイッチの横幅が大きくなると、ハウジングの横幅が非常に大きくなってしまい、乗員にとっての操作性が甚だしく悪化するという問題があった。
【0008】
本発明は前記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、押し込み方向に沿って可動接点と固定接点が摺動し、通常時にはオン状態で、ノブをハウジング側へ押し込んだ操作時にはオフ状態に切り替わるプッシュスイッチを小型化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記のように本発明の各局面に想到した。
【0010】
<第1の局面>
第1の局面は、
押し込み方向に沿って可動接点と固定接点が摺動するプッシュスイッチであって、
前記可動接点が取り付けられたハウジングと、
前記ハウジングに対して摺動可能に取り付けられると共に、前記固定接点が取り付けられたノブと、
前記ノブに対して前記ハウジングから突出する方向に付勢力を印加する付勢部材とを備え、
前記ノブが前記ハウジングから突出している通常時には、前記可動接点と前記固定接点とが接触してオン状態となり、
前記付勢部材の付勢力に抗して前記ノブを前記ハウジング側へ押し込んだ操作時には、前記可動接点と前記固定接点との接触が解除されてオフ状態となるプッシュスイッチである。
【0011】
第1の局面によれば、固定接点の形状を略矩形平板状することが可能になり、従来のプッシュスイッチのように固定接点の形状をハウジングの幅方向か又は厚さ方向のいずれかの方向に迂回した形状にする必要が無いため、プッシュスイッチを小型化できる。
【0012】
<第2の局面>
第2の局面は、第1の局面において、前記ハウジングは筒状を成し、前記可動接点は前記ハウジングから前記ノブの反対側に引き出されているプッシュスイッチである。
そのため、ハウジングの背面側(ノブの反対側)にプリント配線基板を取付固定した場合に、可動接点をプリント配線基板に接続してハンダ付けし易くなり、複数個の可動接点を設けた場合でもプリント配線基板に対する接続の容易さは変わらない。
【0013】
<第3の局面>
第3の局面は、第1または第2の局面において、
前記可動接点は、
前記ノブの摺動方向に対して交わる方向に可動可能な自由端部と、
前記ハウジングに取付固定される固定端部と、
前記自由端部と前記固定端部とを繋いで湾曲した湾曲部とを備え、
前記ハウジングは、
前記可動接点の前記固定端部が圧入される溝と、
前記溝の端部から突出し、前記可動接点の前記湾曲部が当接して固定される突出部とを備えるプッシュスイッチである。
【0014】
第3の局面において、可動接点をハウジングに圧入する際には、可動接点の固定端部を、ハウジングの背面側(ノブの反対側)からハウジングの溝に対して挿入する。
そのため、可動接点の固定端部を除く可動部分(自由端部、湾曲部)を、ハウジングに接触させることなく、可動接点をハウジングに取り付けることが可能になり、取付作業中に可動接点の可動部分が変形・破損するのを防止できるため、プッシュスイッチの生産性および信頼性を向上できる。
そして、ハウジングの溝に可動接点の固定端部を圧入すると、可動接点の湾曲部がハウジングの突出部に当接して固定されるため、突出部が固定端部の圧入時のストッパとして機能し、可動接点をハウジングに対して確実に位置決めした状態で固定できる。
【0015】
<第4の局面>
第4の局面は、第1〜3の局面において、
前記ノブは、前記固定接点の側端面を保持すると共に、前記固定接点の側端面近傍の上面を覆うリブを備え、
前記リブは、前記ノブの摺動方向に沿って延びるように配置形成されるプッシュスイッチである。
【0016】
可動接点と固定接点が摺動すると、両接点の摺動箇所が削れて削れカスが発生する。
リブが設けられていない場合には、両接点の削れカスが隣合う固定接点の間に溜まり易いため、エレクトロケミカルマイグレーションにより、隣合う固定接点の間に削れカスが一体化したブリッジが生成され、隣合う固定接点がブリッジを介して接続されて短絡故障を起こすことがある。
しかし、第4の局面によれば、リブを設けることにより、隣合う固定接点の間の空間距離がリブの分だけ大きくなるため、ブリッジが生成されるのを阻止することが可能になり、隣合う固定接点の短絡故障を防止できる。
【0017】
<第5の局面>
第5の局面は、第1〜4の局面において、
前記ハウジングは、前記可動接点の側端面を保持すると共に、前記可動接点の側端面近傍の上面を覆うリブを備え、
前記リブは、前記ノブの摺動方向に沿って延びるように配置形成されるプッシュスイッチである。
【0018】
可動接点と固定接点が摺動すると、両接点の摺動箇所が削れて削れカスが発生する。
リブが設けられていない場合には、両接点の削れカスが隣合う可動接点の間に溜まり易いため、エレクトロケミカルマイグレーションにより、隣合う可動接点の間に削れカスが一体化したブリッジが生成され、隣合う可動接点がブリッジを介して接続されて短絡故障を起こすことがある。
しかし、第5の局面によれば、リブを設けることにより、隣合う可動接点の間の空間距離がリブの分だけ大きくなるため、ブリッジが生成されるのを阻止することが可能になり、隣合う可動接点の短絡故障を防止できる。
【0019】
<第6の局面>
第6の局面は、第4の局面において、前記リブと前記固定接点との間には空隙が設けられているプッシュスイッチである。
そのため、可動接点と固定接点の摺動に伴って発生した削れカスは、空隙の内部に入り込んで貯留されるため、削れカスがリブの保持部を越えるのを防止可能になり、第4の局面の作用・効果を更に高めることができる。
【0020】
<第7の局面>
第7の局面は、第5の局面において、前記リブと前記可動接点との間には空隙が設けられているプッシュスイッチである。
そのため、可動接点と固定接点の摺動に伴って発生した削れカスは、空隙Sbの内部に入り込んで貯留されるため、削れカスがリブの保持部を越えるのを防止可能になり、第5の局面の作用・効果を更に高めることができる。
【0021】
<第8の局面>
第8の局面は、第1〜7の局面において、
前記固定接点における前記ノブの正面側の端部には、前記可動接点の摺動方向に突出した凸部を備え、
前記ノブは、前記固定接点の前記凸部に合致する平面形状に貫通形成されたエアーギャップを備えるプッシュスイッチである。
【0022】
ノブがハウジング側へ押し込まれ、可動接点と固定接点との接触が解除され、プッシュスイッチがオン状態からオフ状態に切り替わるときには、可動接点と固定接点との間にアーク放電が発生し易い。
そのアーク放電による削れカスがプッシュスイッチのオフ時に固定接点とつながらないように、可動接点と固定接点との接触が解除される箇所にはエアーギャップが貫通形成されている。
【0023】
固定接点の凸部が設けられていない場合には、可動接点がエアーギャップ上を通過する際に、可動接点がエアーギャップ内に一時的に落ち込むため、プッシュスイッチの操作者はノブの摺動に引っかかりを感じることから操作フィーリングが低下する。
しかし、第8の局面によれば、固定接点の凸部が設けられ、固定接点の前記凸部に合致する平面形状にエアーギャップが形成されているため、可動接点がエアーギャップ上を通過する際に可動接点がエアーギャップ内に落ち込む量を低減可能になるため、プッシュスイッチの操作者がノブの摺動に引っかかりを感じなくなることから操作フィーリングを向上できる。
【0024】
ここで、固定接点の凸部の形状および対応するエアーギャップの平面形状を、正規分布曲線状に湾曲した形状にすることで前記作用・効果を確実に得られる。
また、固定接点の凸部の突出長を、エアーギャップの幅の半分程度の寸法にすることで前記作用・効果を確実に得られる。
【0025】
<第9の局面>
第9の局面は、第1〜8の局面において、
前記ノブの幅方向に前記固定接点が複数個並べて配置され、
その複数個の前記固定接点の配置箇所に対応して、前記ハウジングの幅方向に前記可動接点が複数個並べて配置され、
1個の前記固定接点と複数個の前記可動接点とから成るスイッチ回路が複数個設けられ、
前記複数個のスイッチ回路が前記ノブの操作により同時にオンオフ切替がなされるプッシュスイッチである。
【0026】
第9の局面では、第1の局面のようにプッシュスイッチを小型化可能であるため、複数個の可動接点および固定接点をノブおよびハウジングの幅方向に並べて配置しても、ノブおよびハウジングの幅を小さくすることが可能であり、プッシュスイッチ全体を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を具体化した一実施形態のプッシュスイッチ10が設けられたマップランプ兼用スイッチ装置100を正面側から見た斜視図。
【図2】マップランプ兼用スイッチ装置100のハウジング101の正面図。
【図3】ハウジング101の横断面図であり、図2におけるA−A矢線断面図。
【図4】図4(a)は、マップランプ兼用スイッチ装置100におけるプッシュスイッチ10の縦断面の端面図であり、図1〜図3におけるB−B矢線断面の端面図。図4(b)は、マップランプ兼用スイッチ装置100におけるプッシュスイッチ103の縦断面の端面図であり、図1〜図3におけるC−C矢線断面の端面図。尚、図2および図3では、ノブ11を取り外した状態を図示してある。
【図5】プッシュスイッチ10のノブ11の上面図であり、図4(a)におけるD矢線方向から見た図。
【図6】ノブ11の要部上面図。
【図7】ノブ11の縦断面図であり、図5におけるE−E矢線断面の端面図。
【図8】ハウジング12の縦断面図であり、図4(a)におけるF−F矢線断面の端面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した一実施形態のプッシュスイッチ10について、図1〜図8を参照して説明する。
プッシュスイッチ10は、ノブ11(押圧操作部11a、側壁11b、溝11c、リブ11d、平坦部11e、エアーギャップ11f、保持部11g,11h、突起11i、湾曲部11j、空隙Sa)、ハウジング12(側壁12a、溝12b、突出部12c、リブ12d、底壁12e、突起12f、保持部12g,12h、空隙Sb)、可動接点13(自由端部13a、固定端部13b、湾曲部13c、接触部13d)、固定接点14(接触部14a、舌片部14b、凸部14c)、圧縮コイルバネ(押しバネ)PSなどから構成されている。
【0029】
図1〜図3に示すように、マップランプ兼用スイッチ装置100は扁平な横長形状であり、自動車室内のルーフ部(図示略)にて、マップランプ兼用スイッチ装置100の長手方向が自動車の横方向と合致するように設置される。
マップランプ兼用スイッチ装置100において、その両端部にはマップランプ102が設けられ、2個のマップランプ102の間には車両各部の操作用の複数個のプッシュスイッチ10,103などが横方向一列に配置されている。
【0030】
図1に示すように、プッシュスイッチ10,103のノブ11,103aは、マップランプ兼用スイッチ装置100の正面側に露出している。
尚、図2および図3は、マップランプ兼用スイッチ装置100からノブ11,103aおよびマップランプ102のレンズ104(図1参照)を取り外した状態を図示してある。
【0031】
図1〜図3に示すように、マップランプ兼用スイッチ装置100のハウジング101は射出成形によって一体形成されており、本実施形態のプッシュスイッチ10のハウジング12はハウジング101と一体形成されている。
図2〜図4(a),図8に示すように、ハウジング12は略四角筒状を成しており、ハウジング12の側壁12aの裏側には、ノブ11の摺動方向(矢印α,α’方向)に沿って延びる6本の溝12bが等間隔に配置されて穿設され、個々の溝12bの正面側(ノブ11側)の端部にはハウジング12内に突出する突出部12cが突設されている。
【0032】
図2,図3,図8に示すように、個々の溝12bの間には、溝12bからハウジング12内に突出する5本のリブ12dがノブ11の摺動方向α,α’に沿って延びるように突設されている。
図2に示すように、ハウジング12の底壁12eには十字状の突起12fが突設されている。
【0033】
図2〜図4(a)に示すように、可動接点13は、導電性が高く弾性を有する金属板(例えば、スズめっきやクロムめっきが施された真鍮板など)のプレス加工によって一体形成されており、ノブ11の摺動方向α,α’に対して交わる方向に可動可能な自由端部13aと、ハウジング12に取付固定される固定端部13bと、自由端部13aと固定端部13bとを繋いで湾曲した湾曲部13cと、自由端部13aの先端側に設けられて固定接点14と接触する接触部13dと、固定端部13bに接続されて折り曲げられハウジング12の背面側に延びる端子部13eとから構成され、自由端部13aおよび湾曲部13cが板バネを構成している。
【0034】
図2および図3に示すように、ハウジング12は6個の可動接点13を備えている。
図2〜図4(a),図8に示すように、ハウジング12の個々の溝12bにはそれぞれ可動接点13の固定端部13bが圧入されて嵌合固定され、可動接点13の湾曲部13cが突出部12cに当接して固定されている。つまり、6個の可動接点13はハウジング12の幅方向(図1〜図3に示す矢印β,β’方向)に対して等間隔に並べて配置されている。
図3および図4(a)に示すように、可動接点13の端子部13eの先端側は、ハウジング12の背面側(ノブ11の反対側)から引き出され、ハウジング101の背面側に取付固定されたプリント配線基板105(図3参照)にハンダ付けされている。
【0035】
図4(a)および図5に示すように、ノブ11の押圧操作部11aの背面側には、固定接点14が取付固定される側壁11bと、円筒状の突起11iとが突設されている。
図5に示すように、側壁11bには、ノブ11の摺動方向α,α’に沿って延びる3本の溝11cが等間隔に配置されて穿設され、個々の溝11cの間には2本のリブ11dがノブ11の摺動方向α,α’に沿って延びるように突設され、個々の溝11cの正面側(押圧操作部11a側)には可動接点13の方向(図4(a)参照)に突出した平坦部11eが突設され、個々の溝11cと平坦部11eとの間にはエアーギャップ11fが貫通形成されている。
図5に示すように、ノブ11の突起11iには圧縮コイルバネPSが嵌め込まれている。
【0036】
図4(a)および図5に示すように、ノブ11は3個の固定接点14を備えている。固定接点14は、導電性が高い金属板(例えば、スズめっきやクロムめっきが施された真鍮板など)のプレス加工によって一体形成されており、ノブ11に取付固定されると共に可動接点13と接触する矩形平板状の接触部14aと、接触部14aに接続されてノブ11の背面側に延びる2個の矩形状の舌片部14bと、ノブ11の正面側(押圧操作部11a側)の端部にて可動接点13の摺動方向α,α’に突出した凸部14cとから構成されている。
図4(a)に示すように、固定接点14の舌片部14bは、ノブ11の摺動方向α,α’に沿って可動接点13の反対方向に傾斜を付けて折り曲げられている。
【0037】
図5〜図7に示すように、ノブ11の個々の溝11cにはそれぞれ固定接点14の接触部14aが圧入されて嵌合固定されている。つまり、3個の固定接点14は、6個の可動接点13の配置箇所に対応して、ノブ11の幅方向(図1および図5に示す矢印β,β’方向)に対して等間隔に並べて配置されている。
図5および図6に示すように、固定接点14の凸部14cの形状はノブ11のエアーギャップ11fの形状に対応し、エアーギャップ11fには凸部14cの正規分布曲線状に湾曲した形状に合致する平面形状の湾曲部11jが形成され、エアーギャップ11fの幅Tは一定寸法(例えば、0.6mm)に形成されている。
【0038】
図7に示すように、ノブ11のリブ11dの縦断面形状はキノコ状を成しており、固定接点14の接触部14aの側端面を保持する保持部11gと、固定接点14の接触部14aの側端面近傍の上面を覆う保持部11hとを備えており、保持部11g,11hはノブ11の摺動方向(図1,図4〜図6に示す矢印α,α’方向)に沿って延びるように配置形成されている。
リブ11dの保持部11hと固定接点14の接触部14aとの間には、空隙Saが形成されている。
【0039】
図8に示すように、ハウジング12のリブ12dの縦断面形状はキノコ状を成しており、可動接点13の固定端部13bの側端面を保持する保持部12gと、固定端部13bの側端面近傍の上面を覆う保持部12hとを備えており、保持部12g,12hはノブ11の摺動方向(図1〜図4に示す矢印α,α’方向)に沿って延びるように配置形成されている。
リブ12dの保持部12hと可動接点13の固定端部13bとの間には、空隙Sbが形成されている。
【0040】
図1および図4(a)に示すように、ノブ11をハウジング12に挿入すると、ノブ11の突起11iに嵌め込まれている圧縮コイルバネPSが、ハウジング12の突起12fに挿入され(図示略)、ハウジング12に対してノブ11が脱落不能に且つ摺動可能に取り付けられる。
このとき、固定接点14の舌片部14bがノブ11の摺動方向α,α’に沿って可動接点13の反対方向に傾斜を付けて折り曲げられているため、固定接点14が可動接点13の自由端部13aおよび接触部13dに引っ掛かることなく、ハウジング12に対してノブ11を容易に挿入できる。
【0041】
圧縮コイルバネPSの伸張力は、ノブ11に対してハウジング12から突出する方向に印加される付勢力となる。
そのため、図1および図4(a)に示す通常時には、圧縮コイルバネPSの伸張力により、ノブ11がハウジング12から正面側へ矢印α方向に突出されており、板バネを構成する可動接点13の押圧力により、可動接点13の接触部13dと固定接点14の接触部14aとが接触し、プッシュスイッチ10はオン状態になっている。
【0042】
プッシュスイッチ10の操作者が、圧縮コイルバネPSの伸張力(付勢力)に抗してノブ11の押圧操作部11aをハウジング12側へ押し込んだ操作時には、その押し込み方向(ノブの摺動方向α’)に沿って、可動接点13の接触部13dと固定接点14の接触部14aとが摺動し、接触部13dはノブ11の平坦部11e上に乗り上げ、接触部13d,14a間の接触が解除され、プッシュスイッチ10はオン状態からオフ状態に切り替わる(図示略)。
【0043】
このとき、図6に示すように、1個の固定接点14の接触部14aには、2個の可動接点13の接触部13dが接触するため、その2個の可動接点13は固定接点14を介して接続されることになり、1個の固定接点14と2個の可動接点13とが1組となって1個のスイッチ回路が構成される。
1個のプッシュスイッチ10は、ノブ11に設けられた3個の固定接点14と、ハウジング12に設けられた6個の可動接点13とを備えているため、合計3個のスイッチ回路が設けられ、その3個のスイッチ回路がノブ11の操作により同時にオンオフ切替がなされる。
つまり、プッシュスイッチ10は、3回路1接点で構成される3回路同時オンオフ切替スイッチとして機能する。
【0044】
[実施形態の作用・効果]
本実施形態のプッシュスイッチ10によれば、以下の作用・効果を得ることができる。
【0045】
[1]プッシュスイッチ10は、押し込み方向(ノブ11の摺動方向α’)に沿って可動接点13と固定接点14が摺動し、ハウジング12に可動接点13が取り付けられ、ハウジング12に対して摺動可能に取り付けられるノブ11に固定接点14が取り付けられている。
そのため、ノブ11がハウジング12から突出している通常時には可動接点13と固定接点14とが接触してオン状態となり、ノブ11をハウジング12側へ押し込んだ操作時には可動接点13と固定接点14との接触が解除されてオフ状態となるプッシュスイッチ10を実現できる。
そして、プッシュスイッチ10では、固定接点14の接触部14aの形状が矩形平板状であり、従来のプッシュスイッチのように固定接点14の形状をハウジング12の幅方向か又は厚さ方向のいずれかの方向に迂回した形状にする必要が無いため、プッシュスイッチ10を小型化できる。
【0046】
図4(b)に示すプッシュスイッチ103は、ノブ103aに可動接点103bが取り付けられ、ハウジング103cに固定接点103dが取り付けられている。
そして、プッシュスイッチ103では、ノブ103aがハウジング103cから突出している通常時には可動接点103bと固定接点103dとの接触が解除されてオフ状態となり(図4(b)参照)、ノブ103aをハウジング103c側へ押し込んだ操作時には可動接点103bと固定接点103dとが接触してオン状態となる(図示略)。
【0047】
[2]ハウジング12は略四角筒状を成し、可動接点13の端子部13eの先端側はハウジング12の背面側からノブ11の反対側に引き出されている。
そのため、ハウジング12の背面側に取付固定されたプリント配線基板105に対して、6個の可動接点13の端子部13eを接続してハンダ付けし易くなり、可動接点13の個数を6個以上にする場合でもプリント配線基板105に対する接続の容易さは変わらない。
【0048】
[3]可動接点13は、自由端部13aと固定端部13bとを繋いで湾曲した湾曲部13cを備える。ハウジング12は、可動接点13の固定端部13bが圧入される溝12bと、溝12bの正面側(ノブ11側)の端部からハウジング12内に突出する突出部12cとを備える。
【0049】
可動接点13をハウジング12に圧入する際には、可動接点13の固定端部13bを、ハウジング12の背面側(ノブ11の反対側)からハウジング12の溝12bに対して、図4(a)に示す矢印γ方向に挿入する。
そのため、可動接点13の固定端部13bを除く可動部分(自由端部13a、湾曲部13c、接触部13d)を、ハウジング12に接触させることなく、可動接点13をハウジング12に取り付けることが可能になり、取付作業中に可動接点13の可動部分が変形・破損するのを防止できるため、プッシュスイッチ10の生産性および信頼性を向上できる。
【0050】
そして、ハウジング12の溝12bに可動接点13の固定端部13bを圧入すると、可動接点13の湾曲部13cがハウジング12の突出部12cに当接して固定されるため、突出部12cが固定端部13bの圧入時のストッパとして機能し、可動接点13をハウジング12に対して確実に位置決めした状態で固定できる。
【0051】
[4]ノブ11は、固定接点14の接触部14aの側端面を保持する保持部11gと、固定接点14の接触部14aの側端面近傍の上面を覆う保持部11hとから構成されたリブ11dを備え、リブ11dはノブ11の摺動方向α,α’に沿って延びるように配置形成されている。
【0052】
可動接点13と固定接点14が摺動すると、両接点13,14の摺動箇所が削れて削れカスが発生する。
リブ11dが設けられていない場合には、両接点13,14の削れカスが隣合う固定接点14の間に溜まり易いため、図7に示すように、エレクトロケミカルマイグレーション(イオンマイグレーション)により、隣合う固定接点14の間に削れカスが一体化したブリッジCOが生成され、隣合う固定接点14がブリッジCOを介して接続されて短絡故障を起こすことがある。
【0053】
しかし、図7に示すように、リブ11dを設けることにより、隣合う固定接点14の間の空間距離がリブ11dの分だけ大きくなるため、ブリッジCOが生成されるのを阻止することが可能になり、隣合う固定接点14の短絡故障を防止できる。
【0054】
[5]ハウジング12は、可動接点13の固定端部13bの側端面を保持する保持部12gと、固定端部13bの側端面近傍の上面を覆う保持部12hとから構成されたリブ12dを備え、リブ12dはノブ11の摺動方向α,α’に沿って延びるように配置形成されている。
【0055】
図8に示すように、リブ12dを設けることにより、隣合う固定端部13bの間の空間距離がリブ12dの分だけ大きくなるため、前記[4]と同様に、ブリッジCOが生成されるのを阻止することが可能になり、隣合う固定端部13b(可動接点13)の短絡故障を防止できる。
【0056】
[6]ノブ11において、リブ11dの保持部11hと固定接点14の接触部14aとの間には、空隙Saが形成されている。
図7に示すように、可動接点13と固定接点14の摺動に伴って発生した削れカスは、空隙Saの内部に入り込んで貯留されるため、削れカスがリブ11dの保持部11hを越えるのを防止可能になり、前記[4]の作用・効果を更に高めることができる。
【0057】
[7]ハウジング12において、リブ12dの保持部12hと可動接点13の固定端部13bとの間には、空隙Sbが形成されている。
図8に示すように、可動接点13と固定接点14の摺動に伴って発生した削れカスは、空隙Sbの内部に入り込んで貯留されるため、削れカスがリブ12dの保持部12hを越えるのを防止可能になり、前記[5]の作用・効果を更に高めることができる。
【0058】
[8]固定接点14におけるノブ11の正面側の端部には、可動接点13の摺動方向α,α’に突出した凸部14cを備える。ノブ11は、固定接点14の凸部に合致する平面形状の湾曲部11jが形成されたエアーギャップ11fを備える。
【0059】
図4(a)に示すように、ノブ11がハウジング12側へ押し込まれ(ノブ11の摺動方向α’)、可動接点13と固定接点14との接触が解除され、プッシュスイッチ10がオン状態からオフ状態に切り替わるときには、可動接点13の接触部13dと固定接点14の接触部14aとの間にアーク放電が発生し易い。
そのアーク放電による削れカスがプッシュスイッチ10のオフ時に固定接点14とつながらないように、可動接点13と固定接点14との接触が解除される箇所(ノブ11における溝11cと平坦部11eとの間)にはエアーギャップ11fが貫通形成されている。
【0060】
エアーギャップ11fの湾曲部11jおよび固定接点14の凸部14cが設けられていない場合には、可動接点13の接触部13dがエアーギャップ11f上を通過する際に、接触部13dがエアーギャップ11f内に一時的に落ち込むため、プッシュスイッチ10の操作者はノブ11の摺動に引っかかりを感じることから操作フィーリングが低下する。
【0061】
しかし、図6に示すように、エアーギャップ11fの湾曲部11jおよび固定接点14の凸部14cを設けることにより、可動接点13の接触部13dがエアーギャップ11f上を通過する際に接触部13dがエアーギャップ11f内に落ち込む量を低減可能になるため、プッシュスイッチ10の操作者がノブ11の摺動に引っかかりを感じなくなることから操作フィーリングを向上できる。
【0062】
ここで、エアーギャップ11fの湾曲部11jおよび固定接点14の凸部14cの形状を、正規分布曲線状に湾曲した形状にすることで前記作用・効果を確実に得られる。
また、固定接点14の凸部14cの突出長Lを、エアーギャップ11fの幅Tの半分程度の寸法にすることで(例えば、T=0.6mm、L=0.3mm)、前記作用・効果を確実に得られる。
【0063】
[9]プッシュスイッチ10では、ノブ11の幅方向β,β’に固定接点14が3個並べて配置され、3個の固定接点14の配置箇所に対応して、ハウジング12の幅方向β,β’に可動接点13が6個並べて配置され、1個の固定接点14と2個の可動接点13とから成るスイッチ回路が3個(3回路)設けられ、3個のスイッチ回路がノブ11の操作により同時にオンオフ切替がなされる。
【0064】
前記[1]のようにプッシュスイッチ10は小型化可能である。
そのため、複数個の可動接点13および固定接点14をノブ11およびハウジング12の幅方向β,β’に並べて配置しても、ノブ11およびハウジング12の幅を小さくすることが可能であり、プッシュスイッチ10全体を小型化できる。
その結果、プッシュスイッチ10を備えたマップランプ兼用スイッチ装置100の横幅も小さくすることが可能になり、マップランプ兼用スイッチ装置100に備えられたプッシュスイッチ10,103などの操作性を向上できる。
【0065】
[10]ノブ11に対してハウジング12から突出する方向に付勢力を印加する付勢部材であれば、圧縮コイルバネPSに限らず、どのような付勢部材(例えば、板バネ、竹の子バネ、輪バネなどの各種バネ、ゴム材料から成る弾性部材など)を用いてもよい。
【0066】
本発明は、前記各局面および前記実施形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様も本発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【符号の説明】
【0067】
10…プッシュスイッチ
11…ノブ
11c…ノブ11の溝
11d…ノブ11のリブ
11f…エアーギャップ
12…ハウジング
12b…ハウジング12の溝
12c…突出部
12d…ハウジング12のリブ
13…可動接点
13a…自由端部
13b…固定端部
13c…湾曲部
14…固定接点
14c…凸部
PS…圧縮コイルバネ(付勢部材)
Sa…ノブ11の空隙
Sb…ハウジング12の空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押し込み方向に沿って可動接点と固定接点が摺動するプッシュスイッチであって、
前記可動接点が取り付けられたハウジングと、
前記ハウジングに対して摺動可能に取り付けられると共に、前記固定接点が取り付けられたノブと、
前記ノブに対して前記ハウジングから突出する方向に付勢力を印加する付勢部材と
を備え、
前記ノブが前記ハウジングから突出している通常時には、前記可動接点と前記固定接点とが接触してオン状態となり、
前記付勢部材の付勢力に抗して前記ノブを前記ハウジング側へ押し込んだ操作時には、前記可動接点と前記固定接点との接触が解除されてオフ状態となるプッシュスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載のプッシュスイッチにおいて、
前記ハウジングは筒状を成し、前記可動接点は前記ハウジングから前記ノブの反対側に引き出されているプッシュスイッチ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプッシュスイッチにおいて、
前記可動接点は、
前記ノブの摺動方向に対して交わる方向に可動可能な自由端部と、
前記ハウジングに取付固定される固定端部と、
前記自由端部と前記固定端部とを繋いで湾曲した湾曲部とを備え、
前記ハウジングは、
前記可動接点の前記固定端部が圧入される溝と、
前記溝の端部から突出し、前記可動接点の前記湾曲部が当接して固定される突出部と
を備えるプッシュスイッチ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のプッシュスイッチにおいて、
前記ノブは、前記固定接点の側端面を保持すると共に、前記固定接点の側端面近傍の上面を覆うリブを備え、
前記リブは、前記ノブの摺動方向に沿って延びるように配置形成されるプッシュスイッチ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のプッシュスイッチにおいて、
前記ハウジングは、前記可動接点の側端面を保持すると共に、前記可動接点の側端面近傍の上面を覆うリブを備え、
前記リブは、前記ノブの摺動方向に沿って延びるように配置形成されるプッシュスイッチ。
【請求項6】
請求項4に記載のプッシュスイッチにおいて、
前記リブと前記固定接点との間には空隙が設けられているプッシュスイッチ。
【請求項7】
請求項5に記載のプッシュスイッチにおいて、
前記リブと前記可動接点との間には空隙が設けられているプッシュスイッチ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のプッシュスイッチにおいて、
前記固定接点における前記ノブの正面側の端部には、前記可動接点の摺動方向に突出した凸部を備え、
前記ノブは、前記固定接点の前記凸部に合致する平面形状に貫通形成されたエアーギャップを備えるプッシュスイッチ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のプッシュスイッチにおいて、
前記ノブの幅方向に前記固定接点が複数個並べて配置され、
その複数個の前記固定接点の配置箇所に対応して、前記ハウジングの幅方向に前記可動接点が複数個並べて配置され、
1個の前記固定接点と複数個の前記可動接点とから成るスイッチ回路が複数個設けられ、
前記複数個のスイッチ回路が前記ノブの操作により同時にオンオフ切替がなされるプッシュスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−203981(P2012−203981A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64250(P2011−64250)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】