説明

プラスチゾル組成物

【課題】 被覆樹脂のベタツキ感がなく、シート割れが起こらず、及び表面平滑性が良好となるプラスチゾル組成物を提供する。
【解決手段】 (A)平均重合度1000以上であり、かつ、テトラヒドロフラン不溶物を含有しない塩化ビニル系樹脂40〜60重量部、(B)テトラヒドロフラン不溶物を含有する塩化ビニル系樹脂60〜40重量部、及び(C)塩化ビニル系樹脂100重量部に対して可塑剤40〜60重量部を含むことを特徴とするプラスチゾル組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチゾル組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は、優れた電気絶縁性、耐アーク性、耐トラッキング性、耐電圧性を有していることから、ゴム、ポリオレフィン等に比較して絶縁材料として非常に重要なものである。しかしながら、塩化ビニル系樹脂は、熱的および酸化的劣化によりその優れた諸特性の低下をきたし、実際上、使用に耐えなくなる。
【0003】
そこで、塩化ビニル系樹脂組成物を表面被覆用などに使用するためには、柔軟性付与するために可塑剤が配合される。ところが、可塑剤を配合することで、塩化ビニル系樹脂組成物の耐熱性が低下するという欠点が生じ、汎用のジ−2−エチルヘキシルフタレートなどのフタル酸系可塑剤を使用した場合には、被覆樹脂のベタツキ感があり、シート割れが生じ、又、表面平滑性が悪い等の問題点が存在する。
【0004】
このため、混合デカノールのトリメリット酸エステルとクレーとを配合してなる電線用塩化ビニル系樹脂組成物が提案(特許文献1)されており、混合デカノールのピロメリット酸エステル、安定剤および滑剤を配合してなる電線用塩化ビニル系樹脂組成物が提案(特許文献2)されており、混合デカノールのピロメリット酸エステル、安定剤および滑剤を配合してなる電線用塩化ビニル系樹脂組成物が提案(特許文献3)されている。
【0005】
しかし、これらでは、被覆樹脂のベタツキ感、シート割れ、及び、表面平滑性が悪い等の問題点が十分に解決されていない。
【0006】
また、別に、特許文献4には、(A)粒径0.5〜10μmの粒子が80重量%以上であって、テトラヒドロフラン不溶分が30〜60重量%である塩化ビニル系樹脂60〜95重量部と、(B)粒径0.1〜0.4μmの粒子が80重量%以上であって、実質的にテトラヒドロフラン可溶分のみからなる塩化ビニル系樹脂40〜5重量部からなる塩化ビニル系樹脂100重量部、及び(C)可塑剤30〜250重量部からなるプラスチゾル組成物が提案されている。
【0007】
しかし、このプラスチゾル組成物は、光沢のない、即ち、艶消し表面を有する塩化ビニル系樹脂に関するものであり、被覆樹脂のベタツキ感、シート割れ、及び、表面平滑性が悪い等の問題点を解決することを目的としたプラスチゾルではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−102141号公報
【特許文献2】特開平7−207093号公報
【特許文献3】特開平7−211153号公報
【特許文献4】特開平8−259761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、被覆樹脂のベタツキ感がなく、シート割れが起こらず、また表面平滑性が良好な塩化ビニル樹脂被覆シート物や電線が得られるプラスチゾル組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定のプラスチゾル組成物をシート物や電線被覆に使用すれば、被覆樹脂のベタツキ感がなく、シート割れが起こらず、表面平滑性が良好な塩化ビニル樹脂表面被覆物が得られることを見出して本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、(A)平均重合度1000以上であり、かつ、テトラヒドロフラン不溶物を含有しない塩化ビニル系樹脂40〜60重量部、(B)テトラヒドロフラン不溶物を含有する塩化ビニル系樹脂60〜40重量部、及び(C)塩化ビニル系樹脂100重量部に対して可塑剤40〜60重量部を含むことを特徴とするプラスチゾル組成物である。
【0011】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0012】
本発明のプラスチゾル組成物は、(A)平均重合度1000以上であり、かつ、テトラヒドロフラン不溶物を含有しない塩化ビニル系樹脂を40〜60重量部含むものである。当該塩化ビニル系樹脂が40重量部未満の場合には、表面被覆物にベタツキ感が出て好ましくなく、一方、60重量部を超える場合には、表面被覆物上にシート割れが生じ好ましくない。塩化ビニル系樹脂の平均重合度が1000未満の場合には、ベタツキ感の問題が生ずる。
【0013】
ここに、塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリテン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニリトル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体などの塩素含有樹脂、およびそれら相互のブレンド品、あるいは該塩素含有樹脂と、他の塩素を含まない合成樹脂、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリリレート共重合体、ポリエステルなどとのブレンド品、ブロック共重合体、グラフト共重合体などをあげることができる。
【0014】
塩化ビニル系樹脂が含有しないテトラヒドロフラン不溶物としては、テトラヒドロフランに溶解しない物をいい、例えば、熱可塑性樹脂では、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、パーフルオロアルコキシアルカンなどのフッ素樹脂、熱硬化性樹脂では、フェノールホルムアルデヒドのフェノール樹脂、フルフリルアルコール、フルフラール・フェノール共縮合体、フルフラール・ケトン共縮合体などのフラン樹脂、キシレン樹脂等があげられる。
【0015】
以上の(A)平均重合度1000以上であり、かつ、テトラヒドロフラン不溶物を含有しない塩化ビニル系樹脂、を製造する方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などその重合方法には特に限定されないが、ミクロ懸濁重合、乳化重合法が適し、重合温度は60℃以下にする必要がある。
【0016】
本発明のプラスチゾル組成物は、(B)テトラヒドロフラン不溶物を含有する塩化ビニル系樹脂を60〜40重量部含むものである。当該塩化ビニル系樹脂が60重量部を超える場合には、シート割れの問題が生じ、40重量部未満の場合には、べたつき感の問題が生じる。
【0017】
ここに、塩化ビニル樹脂としては、上記したものと同じである。
【0018】
塩化ビニル系樹脂が含有するテトラヒドロフラン不溶物としては、上記したものと同じである。含有するテトラヒドロフラン不溶物の量としては、特に限定するものではないが、ベタツキ感の軽減のために、50〜95重量%が好ましく、70〜90重量%がさらに好ましい。
【0019】
以上の(B)テトラヒドロフラン不溶物を含有する塩化ビニル系樹脂、を製造する方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などその重合方法には特に限定されないが、塩化ビニル単量体とエチレン性二重結合を分子内に2個以上有する多官能性単量体を用い重合する必要がある。
【0020】
本発明のプラスチゾル組成物は、(C)上記した塩化ビニル系樹脂100重量部に対して可塑剤の含有量を40〜60重量部を含むものである。40重量部未満であれば、シート割れが生じ好ましくなく、60重量部を超えればベタツキ感が出て好ましくない。
【0021】
本発明において、可塑剤の種類は特に限定されないが、通常は、フタル酸ジエステル、脂肪族二塩基酸ジエステル、ポリエステル、燐酸エステル、エポキシ可塑剤等の種々の化合物が使用されている。これらの可塑剤は目的に応じ、単独でまたは二種類以上を組み合わせて用いられているが、中でも、フタル酸ジエステル、特にフタル酸ジ−2−エチルヘキシルが、可塑化効率、熱安定性、耐寒性等の諸物性が好適範囲にあり、多く使用されている。
【0022】
軟質塩化ビニル系樹脂成形品の使用範囲の拡大・高度化に伴い、さらに良好な耐久性が要求されることが多くなってきており、特に、電線分野では機器のコンパクト化により電線の細線化が進み、被覆層も薄くなっている。そのため、被覆層にも従来以上の耐久性、即ち耐熱老化性、低揮発性と、薄い被覆層でも十分絶縁が可能なように、高い体積抵抗率が要求されるようになっている。
【0023】
このような、耐熱老化性を改良した可塑剤として、DOPよりも揮発性が低いフタル酸ジイソノニル(以下「DiNP」と記す)やフタル酸ジイソデシル(以下「DiDP」と記す)が用いられている。また、得られる軟質塩化ビニル系樹脂シートの強度や耐寒性を改良した可塑剤として、2−プロピルヘプタノールとフタル酸とのジエステルがあげられる(例えば、特開平4−106146号公報参照)。
【0024】
本発明において、(A)平均重合度1000以上であり、かつ、テトラヒドロフラン不溶物を含有しない塩化ビニル系樹脂、(B)テトラヒドロフラン不溶物を含有する塩化ビニル樹脂、及び(C)可塑剤の他に(D)希釈剤を含むプラスチゾル組成物が、プラスチゾルの粘度が低くなるので、表面被覆時の加工速度を増大するので好ましい。
【0025】
本発明に使用する希釈剤の種類について特に限定されなくエチルセロソルブ、ナフサ、ミネラルスピリット等、ポリ塩化ビニルゾルの希釈剤として一般に用いられる希釈剤であれば差し支えない。また、2種以上を混合して用いても差し支えない。その配合量は、10重量部以上であれば、プラスチゾルの溶融時の粘度が非常に小さくなるので好ましい。
【0026】
また、(A)平均重合度1000以上であり、かつ、テトラヒドロフラン不溶物を含有しない塩化ビニル系樹脂が、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体であり、該共重合体中の酢酸ビニル含有量が、2重量%以上であるプラスチゾル組成物については、シート物や電線被覆に使用すれば、さらにベタツキ感が無く、シート割れが起こらず、表面平滑性が良好な塩化ビニル樹脂表面被覆物が得られるので好ましい。
【0027】
その他、本発明のプラスチゾル組成物には、必要に応じて通常塩化ビニル系樹脂に使用される添加剤、例えば、架橋剤、帯電防止剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、滑剤、難燃剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤等を配合することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のプラスチゾル組成物を使用して塩化ビニル樹脂被覆電線を作製すれば、被覆樹脂のベタツキ感がなく、被覆樹脂においてシート割れが起こらず、また被覆樹脂の表面平滑性が良好な塩化ビニル樹脂のシート物や被覆電線が得られるものである。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0030】
なお、実施例及び比較例において、プラスチゾル組成物のゾル粘度測定とシートの成形加工は下記の条件で行った。
【0031】
<粘度測定>
プラスチゾル組成物をB形粘度計(B8H形)にて、測定温度は23℃、ローターは♯5、回転数20rpmの条件で、ゾル粘度を測定した。
【0032】
<シート成形加工方法>
基材(マイラーフィルム)上にプラスチゾル組成物を塗布し、180℃、5secで加熱溶融し、シート成形物を作製した。
【0033】
<評価方法>
得られたシート成形物のベタツキ感を触感により観察し、○(なし)、△(若干あり)、×(ベタツキ感が大いにあり)の3段階で評価した。
【0034】
得られたシート成形物の割れを指による折り曲げ試験からシートの割れを目視観察し、○(なし)、△(若干あり)、×(多数あり)の3段階で評価した。
【0035】
得られたシート成形物の表面状態を目視により観察し、○(滑らか)、△(若干ザラ付き)、×(ザラザラ)の3段階で評価した。
【0036】
合成例1
2.5Lオートクレーブ中に重合開始前に脱イオン水500g、塩化ビニル単量体800g、ラウロイルパーオキサイドを2重量%含有させたシード粒子を110g、乳化重合により得られたシード粒子を70g、0.1重量%硫酸第一鉄水溶液4g、界面活性剤を仕込み、反応混合物の温度58℃に上げると共に、0.1%重量%アスコルビン酸水溶液130gを重合終了まで連続的に添加した。更に重合開始1.5時間より7.5時間まで界面活性剤を連続的に添加した。重合前および重合中の界面活性剤はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用した。重合温度が58℃における塩化ビニル飽和蒸気圧から0.44MPa降下した時に重合を停止し、重合終了後に未反応の塩化ビニル単量体を回収し、塩化ビニル重合体ラテックスを得た。次いで、このラテックスを回転円盤式噴霧乾燥機により乾燥し、粉砕機を通してペースト用塩化ビニル系樹脂(A)を得た。
【0037】
合成例2
2.5Lオートクレーブ中に重合開始前に脱イオン水500g、塩化ビニル単量体800g、ラウロイルパーオキサイドを2重量%含有させたシード粒子を110g、乳化重合により得られたシード粒子を70g、界面活性剤を仕込み、反応混合物の温度64℃に上げて重合を開始。重合開始1.0時間より6.0時間まで界面活性剤を連続的に添加した。重合前および重合中の界面活性剤はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用した。重合温度が64℃における塩化ビニル飽和蒸気圧から0.5MPa降下した時に重合を停止し、重合終了後に未反応の塩化ビニル単量体を回収し、塩化ビニル重合体ラテックスを得た。次いで、このラテックスを回転円盤式噴霧乾燥機により乾燥し、粉砕機を通してペースト用塩化ビニル系樹脂(B)を得た。
【0038】
合成例3
2.5Lオートクレーブ中に重合開始前に脱イオン水500g、塩化ビニル単量体800g、酢酸ビニル単量体60g、ラウロイルパーオキサイドを2重量%含有させたシード粒子を110g乳化重合により得られたシード粒子を70g、0.1重量%硫酸第一鉄水溶液4g、界面活性剤を仕込み、反応混合物の温度53℃に上げると共に、0.1%重量%アスコルビン酸水溶液150gを重合終了まで連続的に添加した。更に重合開始1.5時間より7・5時間まで界面活性剤を連続的に添加した。重合前および重合中の界面活性剤はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用した。重合温度が53℃における塩化ビニル飽和蒸気圧から0.32MPa降下した時に重合を停止し、重合終了後に未反応の塩化ビニル単量体を回収し、塩化ビニル重合体ラテックスを得た。次いで、このラテックスを回転円盤式噴霧乾燥機により乾燥し、粉砕機を通してペースト用塩化ビニル系樹脂(C)を得た。
【0039】
合成例4
酢酸ビニル単量体を20g添加した以外は、合成例3と同様にしてペースト用塩化ビニル系樹脂(D)を得た。
【0040】
合成例5
酢酸ビニル単量体を110g添加した以外は、合成例3と同様にしてペースト用塩化ビニル系樹脂(E)を得た。
【0041】
合成例6
酢酸ビニル単量体を40g添加した以外は、合成例3と同様にしてペースト用塩化ビニル系樹脂(F)を得た。
【0042】
合成例7
2.5Lオートクレーブ中に重合開始前に脱イオン水500g、塩化ビニル単量体800g、トリアリルイソシアヌレート3.0g、ラウロイルパーオキサイドを2重量%含有させたシード粒子を110g乳化重合により得られたシード粒子を70g、0.1重量%硫酸第一鉄水溶液8g、界面活性剤を仕込み、反応混合物の温度48℃に上げると共に、0.1%重量%アスコルビン酸水溶液160gを重合終了まで連続的に添加した。更に重合開始1.5時間より7.5時間まで界面活性剤を連続的に添加した。重合前および重合中の界面活性剤はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用した。重合温度が48℃における塩化ビニル飽和蒸気圧から0.29MPa降下した時に重合を停止し、重合終了後に未反応の塩化ビニル単量体を回収し、塩化ビニル重合体ラテックスを得た。次いで、このラテックスを回転円盤式噴霧乾燥機により乾燥し、粉砕機を通してペースト用塩化ビニル系樹脂(G)を得た。
【0043】
実施例1
合成例1で得られたペースト用塩化ビニル系樹脂(A)および合成例7で得られたペースト用塩化ビニル系樹脂(G)を40/60(重量比)で混合し、ペースト用塩化ビニル系樹脂を得た。該ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、可塑剤としてジオクチルフタレート40重量部、希釈剤10重量部(エクソンモービル社製、商品名エクソールD40)、熱安定剤(旭電化(株)製、商品名SC34)3重量部を混合・攪拌後、−700mmHg〜−760mmHgで、15分間減圧脱泡することによりプラスチゾル組成物を調製した。
【0044】
表1に示されている組成物の組成のプラスチゾル組成物を使用して塩化ビニル樹脂シート成形物を作製して、上記評価項目の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

表1から明らかなように、本発明の組成のプラスチゾル組成物を使用して塩化ビニル樹脂シート成形物や電線被覆などの被覆物を作製すれば、得られた塩化ビニル樹脂シート成形物や被覆物のベタツキ感がなく、シート割れが起こらず、また、表面平滑性が良好な塩化ビニル樹脂シート物や被覆物が得られた。
【0046】
実施例2〜実施例9
ペースト用塩化ビニル系樹脂、可塑剤、希釈剤を表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂シート成形物を作製して、上記評価項目の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0047】
表1から明らかなように、本発明の組成のプラスチゾル組成物を使用して塩化ビニル樹脂シート物や電線被覆などの被覆物を作製すれば、得られた塩化ビニル樹脂シート物や被覆物のベタツキ感がなく、シート割れが起こらず、また、表面平滑性が良好な塩化ビニル樹脂シート物や被覆物が得られた。
【0048】
比較例1〜比較例9
ペースト用塩化ビニル系樹脂、可塑剤、希釈剤を表2に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂シート成形物を作製して、上記評価項目の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0049】
【表2】

表2から明らかなように、本発明の組成以外のプラスチゾル組成物はベタツキ感、シート割れ、表面平滑性を満足するものは得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均重合度1000以上であり、かつ、テトラヒドロフラン不溶物を含有しない塩化ビニル系樹脂40〜60重量部、(B)テトラヒドロフラン不溶物を含有する塩化ビニル系樹脂60〜40重量部、及び(C)塩化ビニル系樹脂100重量部に対して可塑剤40〜60重量部を含むことを特徴とするプラスチゾル組成物。
【請求項2】
(D)希釈剤を含むことを特徴とする請求項1記載のプラスチゾル組成物。
【請求項3】
請求項1記載の(A)平均重合度1000以上であり、かつ、テトラヒドロフラン不溶物を含有しない塩化ビニル系樹脂が、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体であり、該共重合体中の酢酸ビニル含有量が、2重量%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のプラスチゾル組成物。

【公開番号】特開2011−111535(P2011−111535A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269222(P2009−269222)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】