説明

プラスチックの接触分解油化装置及びその接触分解油化方法

【課題】プロセスが簡便であり高いエネルギー効率を実現できるプラスチックの接触分解油化装置及びプラスチックの接触分解油化方法を提供する。
【解決手段】
プラスチックを接触分解して低沸点油等の油分を製造するプラスチックの接触分解油化装置において、原料投入塔の原料投入口から反応釜までの原料の流路の途中の所定の位置に反応釜からの熱が原料投入塔に伝熱するのを遮断するための断熱板を備えた断熱ゲートを開閉自在に配設した、プラスチックの接触分解油化装置、及び当該プラスチックの接触分解油化装置を用いてプラスチックを分解油化する方法。
【効果】原料投入口より投入された原料のプラスチックが、反応釜への投入の途中で溶解したり、原料の流通路の内壁面に付着することを確実に防止して、高効率にプラスチックの接触分解油化を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックの接触分解油化装置及びその接触分解油化方法に関するものであり、更に詳しくは、有価のプラスチックや使用済みの廃プラスチックの接触分解油化装置及びその接触分解油化方法において、油化装置の原料投入塔の原料プラスチックの投入時に、反応釜より伝わる高熱によって原料が落下する途中で溶解したり、原料投入塔の内壁面に付着することがなく、反応釜へのスムーズな原料供給が実現でき、また、原料投入塔の高さを伸ばして原料投入口からの反応釜までの距離を長く取る必要がなく、原料投入塔の高さを大幅に削減することが可能となり、油化装置の高効率化と低コスト化を実現することを可能とする当該接触分解油化装置とその接触分解油化方法に関するものである。本発明は、有価で仕入れた原料プラスチック、たとえば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等、塩素を含有する樹脂、たとえば、ポリ塩化ビニル(PVC)等が混入している塩素含有プラスチックの廃棄物である廃プラスチックや、それらを加熱分解するプラスチックの接触分油化解装置及びその接触分解油化方法に関する新技術・新製品を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックについては、我が国だけで、年間約1000万tを上回る使用済みプラスチックが、産業廃棄物や一般廃棄物として廃棄されている。現在、廃プラスチックの約55%程度がリユースないしリサイクルされているが、その殆どは発電の熱源等として利用されている。一方、未利用の廃プラスチックは、埋立て処理や焼却処理されているが、埋立てや焼却による処理には限りがある。
【0003】
そこで、従来、廃プラスチックを熱分解処理して燃料油等に転換するために、廃プラスチックを熱分解することが試みられている。先行技術として、得られた分解ガスは燃料油に転換して、ガソリン、灯油、軽油、重油等として利用したり、熱分解によって得られた油分を化学製品を得るための原料として利用したりするために、廃プラスチックを熱分解処理して燃料油や油分を得る種々の技術が報告されている。
【0004】
たとえば、先行技術の一例として、塩化ビニルや、その他の塩素を含む廃プラスチックの熱分解方法に関して、廃プラスチックに高温の砂や中和剤を添加し、加熱して塩素を分離させ(第1の加熱分解工程)、更に高温に加熱して熱分解させ(第2の加熱分解工程)、これらの工程で生成した熱分解残渣を燃焼させること(燃焼工程)、から成る廃プラスチックの熱分解方法が提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、他の先行技術として、たとえば、反応器内で350〜500℃の温度域に加熱された熱媒体のFCC触媒と粒粉状のCa化合物や粒粉状の鉄化合物の混合物中に、廃プラスチックを原料として投入し、これらの混合物を混合、撹拌して前記廃プラスチックにFCC触媒をまぶして当該FCC触媒に接触した廃プラスチックを分解、ガス化させる方法(特許文献2、3)、が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−107058号公報
【特許文献2】WO2007/086348号公報
【特許文献3】特開2010−13657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術は、以下のような課題を有していた。
(1)廃プラスチックを接触分解する熱分解油化装置の原料投入塔へ原料プラスチックを投入する際に、反応釜より伝わる高熱によって原料プラスチックが落下する途中で溶解したり、原料投入塔の内壁面に付着することが原因して、反応釜へのスムーズな原料供給ができない事態を招く場合が多々あり、その解決が課題となっていた。
(2)そのため、従来の装置では、原料投入塔の高さを伸ばして原料投入口から反応釜までの距離を長く取る必要があり、それが原因して、装置の大型化と高コスト化を余儀なくされるという問題があり、その解決が課題となっていた。
(3)更に、原料投入塔の高さを伸ばして原料投入口から反応釜までの距離を長く取ったとしても、上述の(1)の課題を解決するには十分ではなく、更なる改善が要請されていた。
【0008】
本発明は、上記従来技術の課題を解決することを目的とするものであり、プラスチックを接触分解する接触分解油化装置の原料投入塔への原料プラスチックの投入時に、反応釜より伝わる高熱によって原料が落下する途中で溶解したり、原料投入塔の内壁面に付着したりすることがなく、簡便な手段及びプロセスで、高効率かつ高収率で油分を回収することを実現できるプラスチックの接触分解油化装置及びその接触分解油化方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のプラスチックの接触分解油化装置は、以下の構成を有している。すなわち、本発明のプラスチックの接触分解油化装置は、原料のプラスチックを接触分解して油分(低沸点油等)を製造するプラスチックの熱分解油化装置において、原料投入塔の原料投入口から反応釜までの原料の流路の途中の所定の位置に断熱板を備えた断熱ゲートを開閉自在に配設した構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)接触分解油化装置の原料投入塔への原料プラスチックの投入時に、反応釜より伝わる高熱によって原料が落下する途中で溶解したり、原料投入塔の内壁面に付着したりすることがなく、反応釜へのスムーズな原料供給が実現できる。
(2)原料投入塔の高さを伸ばして原料投入口から反応釜までの距離を長く取る必要がなく、原料投入塔の高さを大幅に削減することが可能となり、油化装置の高効率化と低コスト化を実現することができる。
【0010】
本発明において、断熱板を備えた断熱ゲートは、好適には、断熱スライドゲート、たとえば、エアシリンダー式のナイフゲートや、手動・シリンダー式・モータ等で駆動する方式の開閉ダンパー等で構成することができるが、これらに限定されるものではなく、断熱板を構成する弁体自体を空冷、水冷等の適宜の冷却手段により冷却できる構造のもの等、反応釜からの熱が原料投入塔の上部に伝熱することを防ぐ作用を有する手段であれば適宜の手段を使用することができる。断熱ゲートの断熱板の材質としては、高温加熱後も高強度を維持することができ、寸法変化が少なく、石綿板と同等の断熱性を有し、吸湿、吸水性が低く、不燃性で、電気絶縁性に優れる無機質系の材料であることが好ましく、たとえば、焼結を行わない化学結合セラミックス(CBC)製品であって、無機複合材料で、ノンアスベスト製の高耐熱性で高強度の断熱、電気絶縁板(たとえば、商品名:ネオアーク)や、熱伝導率の低いステンレス鋼やチタン鋼等が例示される。
【0011】
しかし、これらに限定されるものではなく、このような製品と同等又は類似の製品であれば同様に使用することができる。当該断熱板を構成要素して含む断熱ゲートの具体的構成については、接触分解油化装置の種類、サイズ及び使用目的等に応じて任意に設計することが可能である。断熱ゲートの具体的構造は、図2に示したシリンダー式のナイフゲートが例示される。図2において、断熱ゲートは、エアシリンダー、ソレノイドバルブ、リミットスイッチ、グランドパッキン、Nバージ口、レジューサ、及び断熱板を有している。
【0012】
本発明の接触分解油化装置は、プラスチックの熱分解油化装置において、原料投入塔の原料投入口から反応釜までの原料の流路の途中の所定の位置に断熱板を備えた断熱ゲートを開閉自在に配設した構成を有していることを特徴的部分とするものであり、その余の構成は、通常の熱分解装置の構成を適宜採用することが可能である。したがって、上述の断熱ゲートに関連する操作を除いて、その操作手順は、通常の熱分解装置及びその方法あるいはその改良手段の操作手順を任意に利用することが可能である。したがって、以下の説明では、断熱ゲートに関連する操作の場合を除き、基本的には、通常の熱分解装置及びその方法をそのまま又はその改良手段の操作手順の全部又は一部の説明を引用して説明する場合がある。
【0013】
本発明で、原料のプラスチックとは、有価で仕入れたプラスチックや、都市ゴミや産業廃棄物から分別された、主としてプラスチックを含むプラスチックのことであり、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂を主成分とするものをいう。これらのプラスチックには、塩素を成分として含有するポリ塩化ビニル(PVC)や、熱硬化性樹脂、FRP(強化繊維)、紙等の夾雑物等が混入していても問題ない。これらのプラスチックとしては、ビーズ状,フレーク状,チップ状,粒状,ペレット等のように、破砕処理されたものを用いることが好ましい。
【0014】
本発明では、プラスチックを接触分解させてガス化させる工程において、熱媒体とし、適宜の触媒、たとえば、FCC触媒等を使用することができる。FCC触媒としては、石油の流動接触分解プロセスで用いられる40〜80μmの粒粉状に造粒された合成ゼオライト系の固体酸触媒が用いられる。FCC触媒は、平均比重が0.74〜0.91であり、廃プラスチックとほぼ同一であるため、反応釜内で廃プラスチックと十分に混合させることができる。
【0015】
この触媒は、FCC(U)と呼称され、軽質油から常圧残油までの広範囲の石油留分を選択的に接触分解する流動性分解法において用いられる触媒を再生したものであり、平衡触媒あるいは再生触媒ともいう。石油精製プラントでは、接触分解域と再生域との間で触媒を循環使用しており、触媒の劣化を補うため、常時、新たな触媒が所定量補給され、この補給量に見合う量の触媒が系外に排出される。系外に排出された廃触媒は、系内で循環使用されている、未だ十分な触媒活性を有している。具体的には、たとえば、原油精製時の触媒をコークス等が付着した状態で取り出し、随伴する炭化水素をスチームでストリップした後に、再生塔に送って空気を吹き込み、コークスを燃焼させて、触媒の活性化が行われる。
【0016】
反応釜内のFCC触媒等の熱媒体とプラスチックは、撹拌手段によって混合され、プラスチックと熱媒体が接触し、プラスチックの分解、ガス化が生じる。反応釜内における熱媒体の加熱温度は、350〜500℃、好ましくは400〜480℃、より好ましくは410〜430℃である。加熱温度が410℃より低くなると、油分に含まれるワックス分は少なくなり、分解時間が長くなる傾向がある。430℃より高くなると、分解時間は短縮化され、油分に含まれるワックス分が増加する傾向がある。400℃より低くなると、分解残渣が増加する傾向があり、350℃より低くなると、この傾向が著しくなる。480℃より高くなると、プラスチックが炭化され易くなり、分解残渣が増加する傾向があり、500℃より高くなると、この傾向が著しくなる。
【0017】
FCC触媒等の熱媒体の量は、反応釜の内容積の20〜60vol%が好適である。熱媒体が反応釜の内容積の20vol%より少なくなると、熱媒体に接触するプラスチックの量が減少し、分解処理時間が長くなり、処理効率が低下し、60vol%より多くなると、頻繁に熱媒体や分解残渣を排出しなければならなくなり、煩雑になる傾向がある。反応釜内にプラスチックを次々と投入していくと、プラスチックの分解残渣である紙ラベルやプラスチックのカーボンやプラスチックに付着した金属等が蓄積され、反応釜内が熱媒体及び分解残渣で溢れ、反応釜内へのプラスチックの投入量が制限される。
【0018】
酸触媒であるFCC触媒を用いると、プラスチック、たとえば、ポリエチレン(PE)は、イオン反応によって分解する。FCC触媒は、ゼオライトであり、プラスチックの分解は、先ずこの酸触媒がプロトンを炭素に供給して五配位炭素ができ、五配位炭素は不安定であるため水素を放出し、カルベニウムイオンとなる。直鎖状のカルベニウムイオンは、分解によってオレフィン、H−を得てパラフィンとなる。ポリエチレン(PE)の分解において、FCC触媒を用いることによって、低温分解が可能となり、炭化、ワックス化の問題を回避できるとともに、高品位の分解油を得ることができる。
【0019】
反応釜内に不活性ガスが導入された雰囲気でプラスチックの分解、ガス化を行うと、不活性ガスでパージされた又は酸素が希薄な反応釜内でプラスチックが加熱されて分解されるので、ダイオキシンの発生を防止することができる。不活性ガスとしては、アルゴン等の希ガスや、窒素、二酸化炭素等を用いることができる。反応釜内に導入される不活性ガスの流量や、反応釜内の不活性ガス濃度としては、反応釜の大きさやプラスチックの量によって適宜設定される。なお、プラスチックは、常圧下で接触分解することが好ましいが、これは、加圧するとプラスチックが気化し難くなり、炭化し易くなるためである。プラスチックの炭化を防止するために、反応釜内を減圧してプラスチックの接触分解温度を低下させることが好ましい。
【0020】
プラスチックが分解、ガス化されて生成する分解ガスを冷却することで、油分が得られる。プラスチックの伝熱と反応を迅速に進行せしめてプラスチックを接触分解し、これを冷却して油分を得ることにより、分解し難いポリエチレン(PE)でも、低温で分解することができ、90%に達する高い収率下に油分を得ることができ、また、油分純収率で50%以上の高いエネルギー効率を実現できる。この場合、直鎖分子のポリエチレンであっても低温で分解されるため、ワックスが生成され難く、生成炭化水素が分岐体及び芳香族分に富むため、低流動点(0℃以下)の油分を得ることができる。
【0021】
反応釜内に生成した分解ガスは、アルゴン等の希ガスや窒素等の不活性ガスをキャリアガスとして反応釜内に導入することで、キャリアガスに同伴させて反応釜から取り出すことができる。本発明では、たとえば、前記FCC触媒に粒粉状のCa化合物を混合することができ、これにより、PVC等の塩素原子を含有する樹脂が混在するプラスチックを接触分解油化するに際し、格別の脱塩素工程を必要とせず、また、脱塩素反応によって生成する塩化水素もCa化合物と反応してその場で除去されることから、極めて低い塩素濃度の油分を得ることができ、塩素濃度は100ppmにまで低下する。脱塩素反応によって生成する塩化水素がCa化合物と反応釜内で反応して、Ca化合物に固定化されるため、塩化水素によって腐食等が生じることが防止される。
【0022】
Ca化合物としては、Ca(OH)、CaCO、CaO等が用いられる。反応釜内でプラスチックから脱離せしめられた塩素は、塩化水素として生成する。Ca化合物が塩化水素と反応してCaの塩化物を形成し、Ca(OH)、CaCO、CaOは、塩化水素をトラップする。Ca化合物の混合量としては、たとえば、FCC触媒100質量部に対し15〜50質量部が好適である。Ca化合物の混合量が15質量部より少なくなるにつれ、トラップできない塩化水素が増え、反応釜等が腐食し易くなるとともに、油分の塩素濃度が増加する傾向となり、50質量部より多くなると、プラスチック分解反応において流出速度が遅くなり、収率が低下する傾向となる。
【0023】
PVC等の塩素原子を含有する樹脂の質量に対して、50〜200mol%のCa化合物が混合されていることが好ましい。Ca化合物の混合量が50mol%より少なくなると、トラップできない塩化水素が生じ、反応釜等が腐食し易くなる傾向となり、200mol%より多くなると、プラスチック分解反応において流出速度が遅くなり、収率が低下する傾向となる。塩化水素がCa化合物と反応することによって塩化カルシウムが生成するが、この塩化カルシウムは、道路の凍結防止剤、道路や工事現場における防塵剤、あるいは食品添加物として有用である。
【0024】
プラスチックの分解反応後の反応釜内に残留したFCC触媒等を水洗することによって、水溶性の塩化カルシウムを水に溶解させて反応釜の外に排出し、FCC触媒及び水に溶解し難い未反応のCa化合物を反応釜内に残留させることができる。反応釜内に残留させたFCC触媒及びCa化合物は、反応釜内で乾燥後、再生し、Ca化合物を補充して再利用することができる。FCC触媒等を水洗した排水の塩化カルシウム濃度を測定することによって、脱塩素反応に使われたCa化合物の量を求め、その量を補充することができる。
【0025】
本発明では、プラスチックの接触分解工程において、たとえば、失活した前記FCC触媒を酸素雰囲気下、前記反応釜内で加熱して再生することができる。この構成により、FCC触媒の再生を反応釜内で行うことができるので、FCC触媒の再生装置を別途設けなくても、プラスチックの分解、ガス化を長期間に亘って行うことができる。反応釜内の酸素濃度としては1〜20%、加熱温度としては500〜650℃が好適である。また、加熱時間としては、2〜12時間が好適である。
【0026】
本発明では、プラスチックの接触分解油化装置において、前記反応釜として、たとえば、ロータリキルン型の反応釜や、外面・内面加熱型の反応釜を用いることができる。この構成により、反応釜に、プラスチックを連続的に投入することで、転動又は撹拌翼羽根によって撹拌させてFCC触媒と接触させ、分解、ガス化させるので、連続操業が可能となり生産性を格段に高めることができる。
【0027】
反応釜内には、加熱された熱触媒が存在しているので、少なくともプラスチックを連続的に投入することで、プラスチックを分解、ガス化させることができる。反応釜内のFCC触媒にCa化合物を予め混合しておき、プラスチックを反応釜内に投入してもよく、また、プラスチックと一緒に、Ca化合物やFCC触媒を反応釜内に投入してもよい。
【0028】
一定時間連続操業させた後、反応釜内に残留したFCC触媒、反応後及び未反応のCa化合物、プラスチックの分解残渣を取り出し、篩い分け等によって、FCC触媒、Ca化合物、プラスチックの分解残渣と分別して取り出すことができる。更に、水洗等によって、塩化水素と反応後のCa化合物(塩化カルシウム)を溶解させ、反応前のCa化合物及びFCC触媒を取り出すこともできる。
【0029】
本発明では、プラスチックの接触分解工程において、たとえば、前記FCC触媒として、廃触媒を用いることができる。これにより、処理が問題となっている廃触媒(産業廃棄物)の有効利用を図ることができるとともに、低コストでプラスチックの分解処理を行うことができる。
【0030】
本発明のプラスチックの接触分解油化装置は、円筒状に形成された横型又は縦型の反応釜や、船底形に形成された横型又は縦型の反応釜等の反応釜と、前記反応釜内の熱媒体を350〜500℃の温度域に加熱する加熱手段と、前記熱媒体と原料のプラスチックとを混合、撹拌する撹拌手段と、前記反応釜の一端側に形成された排出口と、前記FCC触媒を前記排出口から排出させる排出装置とを備えた構成を有している。これにより、たとえば、粒粉状のFCC触媒を熱媒体として用い、予め加熱した反応釜内のFCC触媒中に、原料であるプラスチックを投入して粒粉状のFCC触媒とプラスチックを混合、撹拌し、伝熱と反応を迅速に進行させて、プラスチックを短時間で接触分解油化させることができる。
【0031】
それにより、装置の構成を簡便にすることができ、また、分解し難い直鎖分子のポリエチレンであっても低温で分解することができ、炭化され難く、分解残渣がほとんど生じない。比表面積の大きな粒粉状のFCC触媒を熱媒体として用い、1つの反応釜内でプラスチックを接触させるようにしたことで、プロセスが複雑でなく、エネルギー効率が高い。接触分解油化装置は、排出装置と撹拌手段とを備えているので、反応釜内のFCC触媒をプラスチックが投入可能な量に調節することができ、安定的に操業を行うことができる。
【0032】
上記油化装置において、加熱手段としては、反応釜内を350〜500℃の雰囲気に加熱できるものであれば特に制限なく用いることができ、たとえば、反応釜の外側若しくは内側から輻射熱によって反応釜内を加熱する手段が用いられ、また、反応釜内に熱風として、たとえば、加熱したNガスや不燃性の気体等を吹き込んで反応釜内を加熱する手段を用いることができる。また、電気ヒーター等を用いて加熱することもできる。
【0033】
撹拌手段としては、反応釜内に配設された撹拌羽根を用いることができる。また、反応釜が回転円筒体の場合は、撹拌羽根を用いなくても、FCC触媒を転動によって撹拌させることもできる。反応釜内にボール等の撹拌メディアを入れることもできる。また、反応釜を傾斜した回転円筒体とすることによって、反応釜内に投入したプラスチックを転動によって軸方向に移動させながら、撹拌することもできる。
【0034】
プラスチックの接触分解油化装置は、Ca化合物が混合されたFCC触媒を反応釜内に投入する投入装置を備えていることが好ましい。この構成により、PVC等の塩素原子を含有する樹脂が混在するプラスチックを接触分解油化する場合でも、格別の脱塩素装置を必要とせず、極めて低い油分を得ることができ、塩素濃度は、100ppmにまで低下する。脱塩素反応によって生成する塩化水素がCa化合物と反応釜内で反応して、Ca化合物に固定化されるため、塩化水素によって反応釜や分解ガス管等に腐食等が生じることを防止できる。これらの投入装置は、プラスチックを反応釜内に投入する原料投入口と兼用でき、投入装置は、ロータリーバルブ、開閉ダンパー、コンベヤー等の適宜の手段を用いることができる。
【0035】
また、プラスチックの接触分解油化装置は、少なくともFCC触媒を反応釜の外部に排出する排出装置を備えていることが好ましい。これにより、プラスチックを接触分解油化した後、反応釜内のFCC触媒や分解残渣等を反応釜の外部に排出して、反応釜内のFCC触媒をプラスチックが投入可能な量に調節することができる。
【0036】
排出装置としては、排出口と反対側に配設された傾動装置やスクリューコンベヤ等を用いることができる。反応釜の下部等の所定部に形成された排出口から、スクリューコンベヤ等の排出装置を用いて、定期的に、反応釜内のFCC触媒、プラスチックの分解残渣、反応後及び未反応のCa化合物を反応釜の外部に排出することができる。
【0037】
排出したFCC触媒等は、比重分離や篩い分け等の手段で分解残渣を分別し、残りを水洗することによって、水溶性の塩化カルシウムを水に溶解させ、FCC触媒、反応前のCa化合物を取り出すことができる。取り出されたFCC触媒、Ca化合物は、乾燥後、再生し、Ca化合物を補充して再利用することができる。
【0038】
反応釜内でプラスチックの接触分解を繰り返すと、反応釜内に分解残渣が堆積するとともに、FCC触媒の表面にカーボンが付着してFCC触媒が失活し分解性能が低下する。この失活したFCC触媒は、酸素雰囲気下、反応釜内で加熱して付着したカーボンを焼失させることによって再生することができる。反応釜内の酸素濃度としては1〜20%、加熱温度としては500〜650℃が好適である。また、加熱時間としては、2〜12時間が好適である。
【0039】
以上のような条件で反応釜を加熱することによって、反応釜からFCC触媒及び分解残渣を排出することなく、反応釜内に堆積した分解残渣の焼失及びFCC触媒の再生を行うことができる。FCC触媒の再生を反応釜内で行うことができるので、FCC触媒の再生装置を別に設けなくても、プラスチックの分解、ガス化を長期間に亘って行うことができる。
【0040】
本発明のプラスチックの接触分解油化装置は、前記プラスチックが分解して生成する分解ガスを冷却し液化する冷却装置を備えた構成を有している。これにより、分解し難いポリエチレン(PE)でも低温で分解することができ、90%に達する高い収率下に油分を得ることができ、また、油分純収率で50%以上の高いエネルギー効率を実現できる。直鎖分子のポリエチレンであっても低温で分解されるため、ワックスが生成され難く、低流動点(0℃以下)の油分を得ることができる。冷却手段は、分解ガスの露点以下に冷却し液化することができるものであれば特に制限なく用いることができる。
【0041】
本発明のプラスチックの接触分解油化装置は、たとえば、前記反応釜が、ロータリキルン型の反応釜や、外面・内面加熱型の反応釜であることが好適である。これにより、反応釜に、プラスチックを連続的に投入することで、プラスチックを転動又は撹拌翼羽根によって撹拌させてFCC触媒と接触させ、分解、ガス化させることができるので、簡便な装置で連続操業が可能となり、生産性を格段に高めることができる。本発明では、原料プラスチックとして、有価で仕入れたプラスチックや、廃プラスチックを使用することができ、熱媒体として、FCC触媒や、それと同等の他の触媒を使用することができる。
【発明の効果】
【0042】
以上のように、本発明のプラスチックの接触分解装置及びプラスチックの接触分解方法によれば、以下の(1)及び(2)のような、断熱板を備えた断熱ゲートを採用したことに原因する効果が得られ、かつ、以下の(3)以降のような格別の効果が得られる。
(1)油化装置の原料投入塔の原料プラスチックの投入時に、反応釜より伝わる高熱によって原料が落下する途中で溶解したり、原料投入塔の内壁面に付着することがなく、反応釜へのスムーズな原料供給が実現できる。
(2)原料投入塔の高さを伸ばして原料投入口からの反応釜までの距離を長く取る必要がなく、原料投入塔の高さを大幅に削減することが可能となり、油化装置の高効率化と低コスト化を実現することができる。
【0043】
(3)分解し難い直鎖分子のポリエチレンであっても低温で分解することができ、炭化され難く、分解残渣がほとんど生じない。
(4)比表面積の大きな粒粉状のFCC触媒を熱媒体として用い、プラスチックを接触させて伝熱と反応を迅速に進行せしめることにより、高エネルギー効率でプラスチックを接触分解油化できる。
(5)格別の脱塩素工程を必要とせず、また、脱塩素反応によって生成する塩化水素もCa化合物と反応してその場で除去されることから、100ppmの極めて低い塩素濃度の油分を得ることができる。
【0044】
(6)脱塩素反応によって生成する塩化水素がCa化合物と反応釜内で反応して、Ca化
合物に固定化されるため、塩化水素によって腐食等が生じるのを防止できる。
(7)FCC触媒の再生を反応釜内で行うことができるので、FCC触媒の再生装置を設けなくても、プラスチックの分解、ガス化を長期間に亘って行うことができる。
(8)反応釜として、ロータリキルン型の反応釜や、外面・内面加熱型の反応釜を使用し、プラスチックを連続的に投入して、それを転動又は撹拌翼羽根によって撹拌させてFCC触媒と接触させて分解、ガス化させることで、連続操業が可能となり、生産性を格段に高めることができる。
(9)処理が問題となっている廃触媒(産業廃棄物)の有効利用を図ることができるとともに、低コストでプラスチックの分解処理を行うことができる。
【0045】
(10)排出装置と撹拌手段とを備えることで、反応釜内のFCC触媒をプラスチックが投入可能な量に調節することができ、安定的に操業できる。
(11)プラスチックを接触分解し、これを冷却して油分を得ることにより、分解し難いポリエチレン(PE)でも低温で分解することができ、90%に達する高い収率で油分を得ることができ、また、油分純収率で50%以上の高いエネルギー効率を実現できる。
【0046】
(12)直鎖分子のポリエチレンであっても低温で分解されるため、ワックスが生成され難く、低流動点(0℃以下)の油分を得ることができる。
(13)反応釜としてロータリキルン型の反応釜や、外面・内面加熱型の反応釜を使用し、プラスチックを連続的に投入して、該プラスチックを転動又は撹拌翼羽根によって撹拌させてFCC触媒と接触させて分解、ガス化させることにより、簡便な装置で連続操業が可能となり、生産性を格段に高めることができるプラスチックの接触分解装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施例に係るプラスチックの接触分解油化装置の模式図を示す。
【図2】本発明のプラスチックの接触分解油化装置の原料投入塔の所定の位置に開閉自在に配設する断熱板を備えた断熱ゲートの一実施例であるエアシリンダー式ナイフゲートの正面図(上図)及び断面図(下図)を示す。
【図3】船底形反応釜の一例を示す。
【図4】船底形反応釜の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。本実施の形態においては、熱媒体として、廃触媒(FCC廃触媒)を用いた。
【0049】
実施例1
本実施例で構築した本発明のプラスチックの接触分解油化装置の好適な実施の形態を図1に示す。図において、1は円筒状に形成された横型の反応釜、2はセラミック式ヒーター、3は回転翼方式の撹拌機、4は撹拌機用GM、5は原料投入塔、6は原料、熱媒体、添加剤等を投入するための投入ホッパー、7は断熱ゲート(エアシリンダ式スライドゲート)、8は分解ガス管、9は反応釜でプラスチックの接触分解によって生成した分解ガスを吐出する分解ガス吐出口、8は反応釜から吐出した分解ガスを送出する分解ガス管、10は分解ガスを冷却する冷却器、11は冷却器で冷却されて液化した油分(分解油)を貯留するための油分貯留槽、である。
【0050】
上記接触分解油化装置では、反応釜1は、安全弁a、冷却水入口b、冷却水出口c、Nパージ口dを備えている。また、断熱板を備えた断熱ゲート7を開閉自在に配設した、原料投入塔5は、ロータリーバルブe、エアシンダー式のナイフゲートf、冷却水入口g、冷却水出口h、Nパージ口iを備えている。また、分解ガス管8、冷却器10及び油化貯留槽11は、それぞれ、圧力スイッチj、温度計k、冷却水入口m、冷却水出口l、液度計n、手動ポンプバルブoを備えている。
【0051】
予め、断熱板を備えた断熱ゲート7の断熱板を開けた状態にして、原料投入塔5に原料のプラスチックを投入し、反応釜1に予め投入された熱媒体上に落下させ、撹拌機3により熱媒体のFCC触媒等と撹拌混合して、熱媒体によりプラスチックを加熱した。接触分解反応により背性した分解ガスを分解ガス吐出口9から吐出させ、分解ガス管8を介して冷却器10に送出して、冷却器で液化した油分(分解油)を油分貯留槽11に貯留させ、油分(分解油)を回収した。
【0052】
実施例2
図1に示した、本発明に係るプラスチックの接触分解油化装置において、円筒状に形成された横型の反応釜1は、加熱手段としてのセラミック式ヒーター2及び撹拌手段としての回転翼方式の撹拌機3を備えている。セラミック式ヒーター2によって、原料投入口としての投入ホッパー6から予め投入された粒粉状の廃触媒を300〜500℃、好ましくは400〜480℃、より好ましくは410〜430℃の温度域に加熱した。この実施の形態においては、セラミック式ヒーター2は、温度制御の容易な電気加熱方式のものを採用した。
【0053】
原料投入塔5に開閉自在に配設した断熱ゲート(エアシンダー式スライドゲート)7の断熱板を開けた状態にして、原料投入口としての投入ホッパー6より原料のプラスチックを投入し、反応釜1内熱媒体の廃触媒上に落下させた。それにより、反応釜1内で高温に加熱された粒粉状の廃触媒上に、粒状乃至はフレーク状のプラスチックが落下され、回転翼方式の撹拌機3によって高温の触媒と混合することによって、プラスチックの表面において、高温の触媒によってプラスチックが加熱されて接触分解反応が進行した。
【0054】
9は反応釜1のガス出口に位置する分解ガス吐出口であり、プラスチックの接触分解によって生成した分解ガスをこの分解ガス吐出口9から送出させた。8は分解ガス管であり、分解ガスは、この実施の形態においては、Nガスをキャリヤーとして送出して、水を冷媒とする冷却器10によって液化させ、油分(分解油)とした。油分(分解油)を、油分貯留槽11に貯留させ、油化(分解油)として取り出した。なお、Nガスを反応釜1内に導入するのは、分解ガスのキャリアガスとして用いるためと、反応釜1内の酸素濃度を低減させるためである。Nガスに代えて、アルゴン等の希ガスを用いることもできる。
【0055】
本実施の形態では、プラスチックの接触分解油化装置は、反応釜1の一端側の下部に形成された排出口、反応釜1及び回転翼方式の撹拌機3を載置する架台、架台の一端側が軸支された軸支部、架台の下部に配置され架台の他端側を上昇させ架台を傾動させるプッシャ等の傾動装置を備えている。当該、傾動装置を稼動して架台を傾動させ、排出口を開けて回転翼方式の撹拌機3を回転させると、廃触媒及び分解残渣が反応釜1の軸方向に変位され、排出口から排出されるようにすることができる。傾動装置及び回転翼方式の撹拌機3が、本実施の形態における排出装置を構成しているが、排出装置を備えることで、反応釜1内における廃触媒等の量を投入されるプラスチックに対して適正にすることができ、安定操業を可能にすることができる。
【0056】
次に、本発明を他の実施例により説明するが、実施例において使用したポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックは、各々、プラスチックの再生品である。
【0057】
実施例3
反応釜内に、触媒のみ投入し、原料プラスチックは投入しない状態で、熱源(ヒーター)で加熱して、油化装置における昇温実験を実施した。反応釜の加熱を開始し、30分ごとに油化装置を構成する各要素手段(反応釜内部、ガス出口、A〜F、図1に示した反応釜内部、ガス出口、A〜Fを参照)における上昇温度のデータを採取した後、熱源(ヒーター)を止めて、30分ごとに降下温度のデータを採取した。その結果を表1に示した。
【0058】
表1に示されるように、原料投入塔の原料投入口より断熱ゲートまでの間に位置するC〜Dのうち反応釜に最も近接しているCでは、70.3℃まで昇温し、それより原料投入口側のDでは31.3℃まで上昇したのに対して、上記断熱ゲートより反応釜までの間に位置するA〜Bのうち、断熱ゲートに近いBでは125.6℃まで昇温し、反応釜に最も近いAでは225.0℃まで昇温した。また、分解ガス管の経路に位置するE〜Fのうち、反応釜に近いEの位置では、115.8℃まで昇温し、反応釜から距離のあるFの位置では21.9℃まで昇温した。
【0059】
上述の反応釜内部、ガス出口、及びA〜Fにおける昇温の結果から明らかなように、原料投入塔の原料の流路の所定の位置に断熱板を備えた断熱ゲートを配設することにより、反応釜に近い原料の流路を含めて当該原料の流路における昇温を70.3℃以下に抑制でき、それ以上の高温にならないことから、原料のプラスチックが原料の流路において溶解したり、内壁面に付着したりする現象を確実に防止できることが確認された。また、上記円筒状に形成された横型の反応釜1に代えて、図3〜4に示した船底形反応釜を用いて同様の実験を同様に実施したところ、同様の結果が得られた。
【0060】
【表1】

【0061】
実施例4
実施例1で説明したプラスチックの接触分解油化装置を用いて、粒粉状のFCC廃触媒を、反応釜1内でヒーター2を作動させて420℃に加熱し、この高温の粒粉状のFCC廃触媒中に原料投入塔に配設した、断熱ゲートの断熱板を開いた状態にして、粒状乃至はフレーク状としたポリエチレン(PE)を原料投入口の投入ホッパー6から投入し、次いで、断熱ゲートを閉じて、撹拌機3を50rpmで回転させ、粒粉状のFCC廃触媒と粒状乃至はフレーク状とされたポリエチレン(PE)を混合、撹拌し、ポリエチレン(PE)の加熱及び分解反応を進行させた。分解反応は、大気圧下に420℃で進行するようにした。分解ガスを、Nガス(100ml/分)をキャリヤーとして冷却器10に送り、冷却、液化して油分を採取した。
【0062】
断熱ゲートを配設することにより、原料が落下する途中で溶解したり、原料投入塔の内壁面に付着することがなく、反応釜への原料供給がスムーズに行えることが確認された。また、廃触媒(FCC(U))を用いることにより、反応温度を5℃低下させたにもかかわらず、流出速度が高くなるとともに収率も多少高くなり、また、廃触媒(FCC(U))を使用すると、ワックス分が殆ど生じず、装置への悪影響は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上詳述したとおり、本発明は、プラスチックの接触分解油化装置及びその接触分解油化方法に係るものであり、本発明により、たとえば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチックや、その廃棄物である廃プラスチック、更には、塩素を組成成分として含有する樹脂、たとえば、ポリ塩化ビニル(PVC)等が混入しているプラスチックや、その廃プラスチックを加熱分解する方法及びそのための装置において、油化装置の原料投入塔の原料プラスチックの投入時に、反応釜より伝わる高熱によって原料が落下する途中で溶解したり、原料投入塔の内壁面に付着することがなく、反応釜へのスムーズな原料供給が実現でき、また、原料投入塔の高さを伸ばして原料投入口からの反応釜までの距離を長く取る必要がなく、原料投入塔の高さを大幅に削減することが可能となる。本発明は、油化装置の高効率化と低コスト化を実現できる新しいプラスチックの接触分解油化装置及びその接触分解油化方法を提供するものとして有用である。
【符号の説明】
【0064】
1 反応釜
2 ヒーター(セラミック式)
3 撹拌機
4 撹拌機用GM
5 原料投入塔
6 投入ホッパー
7 断熱ゲート(エアシリンダー式スライドゲート)
8 分解ガス管
9 分解ガス吐出口
10 冷却器
11 油分貯留槽
a 安全弁
b 冷却水入口
c 冷却水出口
d Nパージ口
e ロータリーバルブ
f ナイフゲート(エアシリンダー式)
g 冷却水入口
h 冷却水出口
i Nパージ口
j 圧力スイッチ
k 温度計
l 冷却水出口
m 冷却水入口
n 液度計(丸ガラス式)
o 手動ポンプバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックを接触分解して油分を製造するプラスチックの接触分解油化装置において、原料投入塔の原料投入口から反応釜までの原料の流路の途中の所定の位置に反応釜からの熱が原料投入塔に伝熱するのを遮断するための断熱板を備えた断熱ゲートを開閉自在に配設したことを特徴とするプラスチックの接触分解油化装置。
【請求項2】
反応釜として、円筒状あるいは船底形に形成された横型又は縦型の反応釜を備え、該反応釜と、前記反応釜内の熱媒体及び原料プラスチックを所定の温度域に加熱する加熱手段と、前記熱媒体と原料のプラスチックとを混合、撹拌する撹拌手段と、前記反応釜の一端側に形成された排出口と、前記熱媒体を前記排出口から排出させる排出装置と、前記プラスチックが分解して生成する分解ガスを冷却して液化する冷却装置と、液化した油分を貯留する油分貯留槽とを備えている、請求項1に記載のプラスチックの接触分解油化装置。
【請求項3】
前記熱媒体が、FCC触媒である、請求項1又は2に記載のプラスチックの接触分解油化装置。
【請求項4】
前記反応釜が、外面加熱型の反応釜である、請求項1から3のいずれかに記載のプラスチックの接触分解油化装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかの装置を使用して、反応釜内でプラスチックを接触分解油化する方法であって、原料投入塔の所定の位置に配設した断熱ゲートの断熱板を開いた状態で、プラスチックを原料として投入し、予め加熱した熱媒体上に落下させ、撹拌手段によって前記熱媒体中に前記プラスチックを混合し、前記プラスチックを前記熱媒体との接触面において接触分解させてガス化させ、分解ガスを冷却して、凝縮した油分を採取することを特徴とするプラスチックの接触分解油化方法。
【請求項6】
前記熱媒体として、FCC触媒を使用し、適宜、粒粉状のCa化合物を混合する、請求項5に記載のプラスチックの接触分解油化方法。
【請求項7】
失活した前記FCC触媒を、酸素雰囲気下、前記反応釜内で加熱して再生する、請求項6に記載のプラスチックの接触分解油化方法。
【請求項8】
前記反応釜が、外面加熱型の反応釜であり、少なくともプラスチックを連続的に投入し、分解し、ガス化させる、請求項5から7のいずれかに記載のプラスチックの接触分解油化方法。
【請求項9】
前記FCC触媒が、廃触媒である、請求項6又は7に記載のプラスチックの接触分解油化方法。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−188663(P2012−188663A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−39398(P2012−39398)
【出願日】平成24年2月24日(2012.2.24)
【出願人】(503406424)トスミック株式会社 (2)
【出願人】(511052901)株式会社リサイクルエナジー (2)
【Fターム(参考)】