説明

プラスチッククラッド光ファイバおよびその製造方法

【課題】優れたファイバ強度と伝送特性を両立するプラスチッククラッド光ファイバおよびその製造方法。
【解決手段】石英ガラスからなるコアガラスの外周に、フッ素系紫外線硬化型樹脂を含有する硬化性組成物を硬化することにより形成されたクラッド層を設けたプラスチッククラッド光ファイバであって、前記硬化性組成物は、下記一般式(I)で表されるシランカップリング剤を、硬化性組成物に含まれる該シランカップリング剤以外の成分100重量部に対して、0.05〜6重量部含有し、且つ、前記シランカップリング剤以外の成分の硬化後の屈折率が1.401以上1.450以下であることを特徴とするプラスチッククラッド光ファイバ。一般式(I)


Zは、(メタ)アクリル基、メルカプト基またはエポキシ基を表す。Xは、-OCH、-OCまたはCHを表す。Rは、C(n=1,2,3)を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチッククラッド光ファイバおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの一種に、プラスチッククラッド光ファイバと呼ばれるものがある(例えば特許文献1,2)。このプラスチッククラッド光ファイバは、例えば、純シリカなどの石英系ガラスからなる直径200μm程度のコアガラスと、該コアガラスを中心としてその外周上に設けられた紫外線硬化型フッ化アクリレート樹脂などのフッ素系樹脂からなる厚み15μm程度のクラッド層とからなる。かかる構造のプラスチッククラッド光ファイバは、通常、線引機で石英系ガラス母材を溶融線引きして光ファイバのコアガラスを形成した後、前記コアガラスの外周に、コーティングダイス等によってクラッド層となる紫外線硬化型フッ化アクリレート樹脂などのフッ素系樹脂液を塗布し、紫外線を照射して硬化することにより形成される。
かかるプラスチッククラッド光ファイバは、更にその外周面を紫外線硬化層や熱可塑性樹脂層などで保護被覆された形態で、局内光配線などの中短距離伝送用光ファイバやライトガイドとして使用されている。
【0003】
ところで、プラスチック光ファイバにおいては、コアガラスとクラッド層との密着性がガラスファイバ強度に影響することが知られており、近年、コアガラスとクラッド層の密着性の向上のため、クラッド層を形成するコーティング組成物の検討が多く成されている(例えば、非特許文献1)。
【0004】
しかしながら、従来検討されているプラスチック光ファイバにおいて、特にクラッド層をフッ素系紫外線硬化型樹脂により形成したものは、クラッド層と石英ガラスからなるコアガラスとの密着性が不十分であり、従ってファイバ強度が十分とは言えなかった。一方、クラッド層は優れた伝送特性を与える組成であることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−218734号公報
【特許文献2】特開平7−278255号公報
【非特許文献1】「Silane coupling agents」E.P.Plueddemann著、Springer、1991年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フッ素系紫外線硬化型樹脂により形成されたクラッド層を有しながら、優れたファイバ強度と伝送特性を両立するプラスチッククラッド光ファイバおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等の鋭意検討の結果、石英からなるコアガラスの外周面にフッ素系紫外線硬化型樹脂により形成されたクラッド層を有するプラスチッククラッド光ファイバにおいて、クラッド層の形成材料に特定の構造を有する含ケイ素化合物を使用することで、上記課題を解決できることを知見した。
かかる本発明のプラスチッククラッド光ファイバおよびその製造方法は、以下の通りである。
【0008】
(1) 石英ガラスからなるコアガラスの外周に、フッ素系紫外線硬化型樹脂を含有する硬化性組成物を硬化することにより形成されたクラッド層を設けたプラスチッククラッド光ファイバであって、
前記硬化性組成物は、下記一般式(I)で表されるシランカップリング剤を、硬化性組成物に含まれる該シランカップリング剤以外の成分100重量部に対して、0.05〜6重量部含有し、且つ、前記シランカップリング剤以外の成分の硬化後の屈折率が1.401以上1.450以下であることを特徴とするプラスチッククラッド光ファイバ。
一般式(I)
【0009】
【化1】

【0010】
(上記一般式(I)中、Zは、(メタ)アクリル基、メルカプト基またはエポキシ基を表す。Xは、-OCH、-OCまたはCHを表す。但し、Xの少なくとも1つは-OCHまたは-OCである。Rは、C(n=1,2,3)を表す。)
(2) 石英ガラスからなるコアガラスの外周に、フッ素系紫外線硬化型樹脂を含有する硬化性組成物を硬化することにより形成されたクラッド層を設けたプラスチッククラッド光ファイバの製造方法であって、
前記硬化性組成物は、下記一般式(I)で表されるシランカップリング剤を、硬化性組成物に含まれる該シランカップリング剤以外の成分100重量部に対して、0.05〜6重量部含有し、硬化前の初期1秒間における動的接触角の低下量が22.8°以上であり、且つ、前記シランカップリング剤以外の成分の硬化後の屈折率が1.401以上1.450以下であり、
前記硬化性組成物を、前記コアガラスの外周面に塗布した後、紫外線を照射して硬化させる工程を有することを特徴とするプラスチッククラッド光ファイバの製造方法。
一般式(I)
【0011】
【化2】

【0012】
(上記一般式(I)中、Zは、(メタ)アクリル基、メルカプト基またはエポキシ基を表す。Xは、-OCH、-OCまたはCHを表す。但し、Xの少なくとも1つは-OCHまたは-OCである。Rは、C(n=1,2,3)を表す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明のプラスチッククラッド光ファイバは、フッ素系紫外線硬化型樹脂により形成されたクラッド層を有しながら、優れたファイバ強度を有し、且つ伝送特性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のプラスチッククラッド光ファイバの一例を示す概略断面図である。
【図2】図1に示すプラスチッククラッド光ファイバの製造方法の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のプラスチッククラッド光ファイバおよびその製造方法の実施形態の例について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に、本発明に係るプラスチッククラッド光ファイバ1の断面概略図を示す。
プラスチッククラッド光ファイバ1は、純シリカなどの石英系ガラスからなるコアガラス(外径:150−200μm程度)2の外周に、紫外線硬化型フッ化アクリレート樹脂などのフッ素系紫外線硬化型樹脂からなるクラッド層3(外径:〜230μm程度)を有する。
以下、本発明のプラスチッククラッド光ファイバ1について詳細に説明する。
【0016】
クラッド層3はフッ素系紫外線硬化型樹脂を含有する硬化性組成物を硬化することで形成される。本発明におけるフッ素系紫外線硬化型樹脂としては、コアガラス2に対して屈折率が低く、紫外線等の活性エネルギー線で硬化することが可能であり、さらにはこの樹脂を含む硬化性組成物を硬化することによって機械的強度があり、可撓性を有し、かつ透明性に優れた硬化物が得られる樹脂であることが必要である。このような樹脂には、フッ素原子含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物、フッ素化されたポリエーテルを構造中に有する(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリレート化されたフッ素原子含有ビニル重合体が挙げられる。
【0017】
フッ素原子含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、例えば、フッ素原子含有(メタ)アクリレート化合物とジイソシアネート化合物を反応させることにより得ることができる。また、ポリエーテルを分子構造中に有するフッ素原子含有(メタ)アクリレート化合物は、例えば、フッ素原子含有(メタ)アルコール化合物と、フッ素原子含有(メタ)アクリレート化合物またはアクリル酸とを反応させることによって得ることができる。
【0018】
硬化性組成物には、フッ素系紫外線硬化型樹脂以外に、例えばN−ビニルカプロラクタムなどの重合性不飽和モノマーや、下記光重合開始剤、後述する一般式(I)で表されるシランカップリング剤あるいは各種添加剤など、プラスチッククラッド光ファイバ1のクラッド層3の形成材料として通常用いられるものを使用することができる。
【0019】
本発明においては、クラッド層3を形成する硬化性組成物は下記一般式(I)で表されるシランカップリング剤を含む。
一般式(I)
【0020】
【化3】

【0021】
(上記一般式(I)中、Zは、(メタ)アクリル基、メルカプト基またはエポキシ基を表す。Xは、-OCH、-OCまたはCHを表す。但し、Xの少なくとも1つは-OCHまたは-OCである。-OCで十分に作用するが、強度の点nで-OCHが好ましい。Rは、C(n=1,2,3)を表す。)
【0022】
一方、本発明では、硬化性組成物における上記シランカップリング剤以外の成分は、上記シランカップリング剤を除く成分を混合した硬化性組成物を硬化させた際の屈折率が1.401以上1.450以下となるものを用いる必要がある。この範囲の屈折率の硬化性組成物で優れたファイバ強度と伝送特性を両立することが確認された(具体的には1.401、1.413、1.430、1.450)。屈折率が1.450を超えるとコア(ガラス)との屈折率の差が小さく光信号を伝搬するに適さない。また、シランカップリング剤とクラッド層3を構成する主材料となるフッ素系紫外線硬化型樹脂等の相溶性が低下すると、クラッド層3を構成する樹脂が白濁してしまい、伝送特性の低下の原因となる。本発明では、クラッド層3のシランカップリング剤以外の成分を混合した硬化性組成物の屈折率を上記数値範囲とすることで、クラッド層3を構成する主材料となるフッ素系紫外線樹脂等と上記シランカップリング剤との相溶性を担保している。硬化性組成物における上記シランカップリング剤以外の成分を硬化させた後の屈折率を1.401以上1.450以下とするためには、紫外線硬化型樹脂中におけるフッ素含有量あるいは樹脂種を適宜調整することで達成できる。
クラッド層3を形成するための硬化性組成物は、通常、クラッド材となる成分を混合して紫外線硬化樹脂液として形成される。この紫外線硬化樹脂液は、クラッド層3の硬化の際に結合に関与するモノマーあるいは硬化後もクラッド層3中に残存する成分等の液状成分を溶媒とし、樹脂などの固形成分を溶解している。したがって、本発明における「硬化性組成物におけるシランカップリング剤以外の成分」とは、クラッド層3の形成に実質的に関与する、重合性化合物、光重合開始剤、あるいは紫外線硬化型樹脂等を意味する(単に溶解させる等のみに添加される揮発性溶媒等は含まない)。
【0023】
本発明では、硬化性組成物において、上記一般式(I)で表されるシランカップリング剤は、硬化性組成物に含まれる該シランカップリング剤以外の成分100重量部に対して、0.05〜6重量部含有される。クラッド層3を形成する硬化性組成物において、一般式(I)で表されるシランカップリング剤を上記数値範囲で含有させることにより、硬化性組成物の硬化前の初期1秒間における動的接触角の低下量を大きくでき、即ち、硬化性組成物とコアガラス2とが短時間でなじむため、形成されるクラッド層3とコアガラス2との密着性を格段に向上させることができる。これにより、プラスチッククラッド光ファイバ1のファイバ強度を向上させることが可能となる。上記一般式(I)で表されるシランカップリング剤の添加量が0.05重量部未満であるとファイバ強度向上効果が得られず、一方、添加量が6重量部を超えると、ファイバ強度は向上するものの、一般式(I)で表されるシランカップリング剤とフッ素系紫外線硬化型樹脂の相溶性が低下し、樹脂が白濁することにより伝送特性が低下する懸念がある。
【0024】
ここで本明細書における接触角(静的接触角、動的接触角)を説明する。
固体表面に液滴を落とした際、液体が固相、液相、気相の3相系に存在し、固気界面、固液界面、気液界面が存在することとなる。この際、固体表面と液体の表面とは一定の角を成し、これを接触角という。固体液体間の濡れを示す指標として用いられる場合が多い。また、接触角は一般的に液滴が被着面に接触したのち、測定液の濡れ性により濡れ広がり切った値をとる。後述の動的接触角と特に区別する場合は静的接触角と呼ばれる。一方、コーティング分野においては被コーティング材であるコアガラス2は非常に高速にライン上を動いており、液滴との初期接触の時間は非常に短くmsオーダーとなる場合も多い。このような場合においては前記静的接触角では十分な指標ということはできない。このために用いられるのが、動的接触角である。近年の測定機器の進歩により数十msオーダーでの接触角変化を追跡することも可能である。
【0025】
本発明における「硬化性組成物の硬化前の初期1秒間における動的接触角の変化量」とは、0.5secの間隔で接触角測定を行い最初の1secにおける変化量を表す。また、前記フッ素系紫外線硬化型樹脂に所定種類/量の添加剤を加え、均一になるように混合して形成した硬化性組成物を測定液として用いている。更に、被着面を構成する基板としては超音波洗浄処理を行った石英板を用いている。
【0026】
本発明においては、硬化性組成物の硬化前の初期1秒間における動的接触角の低下量が22.8°以上であることが好ましい。動的接触角の強度が上記の数値範囲であると、製造工程において高速にライン上を動いているコアガラス2とも短時間でなじむため、該コアガラス2と形成されるクラッド層3との密着性に優れ、高強度のファイバを得ることができる。硬化性組成物の硬化前の初期1秒間における動的接触角の低下量が22.8°以上とするためには、クラッド層3を形成する硬化性組成物において、上記一般式(I)で表されるシランカップリング剤を、硬化性組成物に含まれる該シランカップリング剤以外の成分100重量部に対して、0.05〜6重量部含有することで達成できる。
【0027】
硬化性組成物における光重合開始剤としては公知のどのような光重合開始剤を用いても構わないが、配合した後の貯蔵安定性のよいことが要求される。このような光重合開始剤の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等を挙げることができる。
【0028】
本発明ではこれらの成分を適宜混合して硬化性組成物である紫外線硬化樹脂液となし、本樹脂液に紫外線を照射してクラッド層3を製造する形態が好ましい。樹脂液の塗布方法は、ダイスコーティング方式とすることが好ましい。
【0029】
本実施形態に係るプラスチッククラッド光ファイバ1を製造する方法の一例としては、例えば図2に示す方法が挙げられるがこれに限定されるものではない。
まず、線引炉11内に石英系ガラス母材12を収め、常法により溶融紡糸して、石英系ガラスからなるコアガラス2を得る。このコアガラス2を引き続き冷却筒14に送り、この冷却筒14に導入される冷却ガスのヘリウムによって冷却する。次いで、冷却されたコアガラス2をコーティングダイス15に導入して、ここでクラッド層3となる紫外線硬化型フッ化アクリレート樹脂などのフッ素系樹脂液を塗布する。この時、硬化性組成物であるフッ素系樹脂液の硬化前の初期1秒間における動的接触角の低下量を22.8°以上とすることで、かかるフッ素系樹脂液を、高速にライン上を動いているコアガラス2と短時間でなじませることできる。次いで、フッ素系樹脂液が塗布されたコアガラス2を紫外線照射装置16に導入して紫外線を照射し、このフッ素系樹脂液を硬化することによりプラスチッククラッド光ファイバ1を形成することができる。
【実施例】
【0030】
以下に本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、勿論本発明の範囲は、これらによって限定されるものではない。
【0031】
〔プラスチッククラッド光ファイバ1の作製〕
上述した製造方法(図2参照)に基づき、図1に示すプラスチッククラッド光ファイバ1を作成した。コアガラス2の外径は200μm、クラッド層3の外径は230μmとした。クラッド層3を構成するための硬化性組成物は、下記に示すシランカップリング剤とクラッド樹脂とを表1に示す組み合わせで混合することにより調整した。
【0032】
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤は、いずれも信越化学(株)製のものを用いた。使用したシランカップリング剤A〜Eは下記の構造を有する。
【0033】
【化4】

【0034】
・シランカップリング剤A:上記式中、Zがアクリル、3つのXが全て-OCH
・シランカップリング剤B:上記式中、Zがアクリル、2つのXが-OCH3、1つのXがCH
・シランカップリング剤C:上記式中、Zがメタアクリル、3つのXが全て-OCH
・シランカップリング剤D:上記式中、Zがメタアクリル、2つのXが-OCH3、1つのXがCH
【0035】
また、シランカップリング剤Eは下記の構造を有する(特許文献2に記載されたシランカップリング剤)。
【0036】
【化5】

【0037】
(シランカップリング剤以外の成分)
クラッド樹脂A:フッ素系紫外線硬化型樹脂および重合開始剤を含む組成物で、紫外線による硬化後の屈折率が1.401〜1.450であるもの(具体的には1.413)
クラッド樹脂B:フッ素系紫外線硬化型樹脂および重合開始剤を含む組成物で、紫外線による硬化後の屈折率が1.401未満のもの(具体的には1.389)
【0038】
〔プラスチッククラッド光ファイバ1の評価〕
(接触角の測定)
接触角の測定は、協和界面科学(株)製DropMaster500を用いて行なった。0.5秒の間隔で20秒間測定を行い最初の1秒における低下量(動的接触角)と20秒後の接触角(静的接触角)をデータとして用いた。
測定液としては、表1に示す所定種類/量の成分を均一になるように混合して得られた硬化性組成物を用いた。また、被着基板としては超音波洗浄処理を行った石英板を用いた。
【0039】
(ファイバ強度の測定)
破断強度は下記の測定方法により行った。
汎用の引張り試験機(縦型)を使用した。引張り条件としては、標点間距離500mm、引張速度50mm/分で引張り、破断時の値を読み取った。各サンプルの破断強度(kg/mm)を表1に示す。
【0040】
(伝送特性(ロス値)の測定)
850nmにおける値。下記の基準により評価した。結果を表1に示す。
8dB/km以下・・・合格(○)
8dB/km超・・・・不合格(×)
【0041】
【表1】

【0042】
表1から、実施例1〜12のポリマークラッド光ファイバは、優れたファイバ強度と伝送特性を両立することが明らかである。
【0043】
比較例1のポリマークラッド光ファイバは、硬化性組成物にシランカップリング剤を含まないため伝送特性には優れるものの、ファイバ強度が小さい結果となった。
【0044】
比較例2〜5のポリマークラッド光ファイバは、クラッド樹脂として硬化時の屈折率が1.401未満のもの(具体的には1.389)のものを使用しているため、伝送特性が悪い結果となった。この原因は、クラッド樹脂中のフッ素含有量が多すぎるため、シランカップリング剤とクラッド樹脂との相溶性が悪いことに起因するものと考えられる。
【0045】
比較例6のポリマークラッド光ファイバは、クラッド樹脂として硬化時の屈折率が1.401〜1.450のものを使用しているが、シランカップリング剤の添加量が少ないため、ファイバ強度が小さい結果となった。一方、比較例7のポリマークラッド光ファイバは、シランカップリング剤の添加量が多すぎるため、クラッド樹脂と該シランカップリング剤との相溶性が低下し、伝送特性が悪化する結果となった。
【0046】
比較例8および9のポリマークラッド光ファイバは、ファイバ強度が小さい結果となった。比較例8および9では、一般式(I)で表されるシランカップリング剤とは異なる化合物を使用したため、実施例と比較して動的接触角の低下量が小さい。従って、コアガラス2にクラッド層3の構成材料となる硬化性組成物が短時間ではなじまず、所望の密着性が得られなかったものと考えられる。
【符号の説明】
【0047】
1…プラスチッククラッド光ファイバ、 2…コアガラス、 3…クラッド層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラスからなるコアガラスの外周に、フッ素系紫外線硬化型樹脂を含有する硬化性組成物を硬化することにより形成されたクラッド層を設けたプラスチッククラッド光ファイバであって、
前記硬化性組成物は、下記一般式(I)で表されるシランカップリング剤を、硬化性組成物に含まれる該シランカップリング剤以外の成分100重量部に対して、0.05〜6重量部含有し、且つ、前記シランカップリング剤以外の成分の硬化後の屈折率が1.401以上1.450以下であることを特徴とするプラスチッククラッド光ファイバ。
一般式(I)
【化1】


(上記一般式(I)中、Zは、(メタ)アクリル基、メルカプト基またはエポキシ基を表す。Xは、-OCH、-OCまたはCHを表す。但し、Xの少なくとも1つは-OCHまたは-OCである。Rは、C(n=1,2,3)を表す。)
【請求項2】
石英ガラスからなるコアガラスの外周に、フッ素系紫外線硬化型樹脂を含有する硬化性組成物を硬化することにより形成されたクラッド層を設けたプラスチッククラッド光ファイバの製造方法であって、
前記硬化性組成物は、下記一般式(I)で表されるシランカップリング剤を、硬化性組成物に含まれる該シランカップリング剤以外の成分100重量部に対して、0.05〜6重量部含有し、硬化前の初期1秒間における動的接触角の低下量が22.8°以上であり、且つ、前記シランカップリング剤以外の成分の硬化後の屈折率が1.401以上1.450以下であり、
前記硬化性組成物を、前記コアガラスの外周面に塗布した後、紫外線を照射して硬化させる工程を有することを特徴とするプラスチッククラッド光ファイバの製造方法。
一般式(I)
【化2】


(上記一般式(I)中、Zは、(メタ)アクリル基、メルカプト基またはエポキシ基を表す。Xは、-OCH、-OCまたはCHを表す。但し、Xの少なくとも1つは-OCHまたは-OCである。Rは、C(n=1,2,3)を表す。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−33933(P2011−33933A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181625(P2009−181625)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】