説明

プラスチックフィルム、その製造方法、偏光板および液晶表示装置

【課題】偏光板に位相差フィルムとして組み込んだときに良好なコントラストを有し、かつ、搬送性が良好であるプラスチックフィルムおよびその製造方法の提供。
【解決手段】内部ヘイズが0.08以下であり、全ヘイズが0.41以上であるプラスチックフィルム(但し、内部ヘイズは、フィルム中に最も多く含まれる熱可塑性樹脂の屈折率±0.02以内の屈折率を有するオイルを用い、該オイルでフィルム両表面を覆って測定したヘイズ値である。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチックフィルム、その製造方法、および該プラスチックフィルムを用いた偏光板および液晶表示装置に関する。特に、位相差フィルムなどの光学フィルムとして好ましく用いることができるプラスチックフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々なプラスチックフィルムが用いられており、様々な添加剤を添加したプラスチックフィルムが知られている。また、プラスチックフィルムは様々な製膜方法で製造されているが、代表的な方法として熱可塑性樹脂を溶剤に溶解させたドープを支持体上に流涎して製膜する溶液製膜法が知られている。このような溶液製膜法で製造される場合、フィルム搬送特性の改善など種々の目的からマット剤を添加したドープを用いる方法が知られている。このようなマット剤は、添加量が少ないとフィルムにシワやキシミが発生し、搬送性に問題を生じやすい。そのため、例えば偏光板用保護フィルムとして一般的に用いることが知られているセルロースアシレートフィルムを製膜するときにも添加剤としてマット剤が用いられている。
【0003】
また、マット剤を添加すると、フィルムのヘイズは高くなる。ここで、フィルムのヘイズとしては一般的にヘイズとして用いられる全へイズの他、フィルム両表面の凹凸による影響を除外した内部へイズが用いられる。
全ヘイズが高いフィルムは、他のフィルムや基板と粘着剤を用いて接着するときの密着性が良好となり、また、他のフィルムや基板と接着させる前処理としてけん化処理を行うときに、けん化時間が短くなる。そのため、フィルムの応用の観点や製造コストの観点からも、このような全ヘイズが高いフィルムが望まれている。
【0004】
一方、全ヘイズが高いフィルムは、特に光学フィルムとして用いる場合には好ましくないことが知られている。
まず、特許文献1には、マット剤を含み、内部へイズが0.6%以下であり、表面へイズ(全へイズ)が0.05%以上であるフィルムが記載されている。同文献では、このように内部ヘイズと全ヘイズをコントロールすることで、液晶表示装置に適用した場合にコントラストの低下を引き起こさず、視野角特性の改善ができることが記載されている。しかしながら、同文献の実施例および比較例によれば、内部ヘイズを高めれば全ヘイズも高くなり、内部へイズを低くすれば全へイズも低くなる傾向を読み取ることができる。すなわち、内部へイズが低く、全へイズが高いようなフィルムは同文献中に実質的に示唆も開示もされていない。
【0005】
特許文献2には、マット剤を含み、全へイズが0.5〜0.7のフィルムが開示されている。しかしながら、同文献には内部へイズの大きさについて言及が無く、また、内部へイズと全へイズを独立して調節する方法に関する開示も示唆もない。
【0006】
特許文献3には、マット剤を含み、全ヘイズが0.1〜0.4であり、内部へイズを全ヘイズの0.5倍以下としたフィルムが開示されており、内部ヘイズを全ヘイズの0.5〜5倍の範囲に制御することがより好ましいことが開示されている。また、全へイズが0.4を超える同文献比較例では内部ヘイズは0.10以上となっており、同文献に記載の方法では、内部ヘイズも低くすれば全へイズも低くなる傾向があることが読み取ることが出来る。さらに、同文献には全へイズが0.41を超えたときの利点についても開示がない。
なお、同文献には、内部ヘイズを低くすることで、位相差フィルムとして液晶表示装置に組み込んだときに正面コントラストを改善できることが開示されている。
【0007】
このように、従来、全ヘイズと内部ヘイズが共に小さいプラスチックフィルムは開示されていたものの、全ヘイズが大きく、内部へイズが小さいフィルムについては、検討がなされておらず、そのような特性を有するフィルムの製造方法について知られていなかったのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−279083号公報
【特許文献2】特開2008−262161号公報
【特許文献3】国際公開WO2008−54172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らが特許文献1に記載のフィルムおよびその製造方法を検討したところ、同文献実施例に記載のフィルムのうち、内部ヘイズが0.08以下のものは位相差フィルムとして組み込んだときに良好なコントラストを有するものの、搬送性に不満が残るものであることがわかった。
本発明者らが特許文献2に記載の製造方法を検討したところ、同文献に記載の方法で、同文献実施例の全へイズが0.5〜0.7のプラスチックフィルムを製造した場合、内部へイズは0.12を下回ることがなく、偏光板に位相差フィルムとして組み込んだときにコントラストが低下してしまうことが判明した。そのため、全ヘイズが高く、内部ヘイズが低いプラスチックフィルムの特性および製造方法については特許文献2にも開示はなく、さらなる検討が求められることがわかった。
また、本発明者らが特許文献3に記載のフィルムを製造したところ、内部へイズを低下させると全へイズも低下してしまい、同文献に記載のフィルムは偏光板に位相差フィルムとして組み込んだときに良好なコントラストを有するものの、製造時に搬送性が悪いことがわかった。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決することを目的としたものである。すなわち、本発明の課題は、偏光板に位相差フィルムとして組み込んだときに良好なコントラストを有し、かつ、搬送性が良好であるプラスチックフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題のもと、本発明者らが鋭意検討を行った結果、マット剤の量を特定の範囲とし、特定の条件で延伸することにより、偏光板に位相差フィルムとして組み込んだときに良好なコントラストを有し、かつ、搬送性が良好であるプラスチックフィルムを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、以下の手段により上記課題を解決した。
【0012】
[1] 内部ヘイズが0.08以下であり、全ヘイズが0.41以上であるプラスチックフィルム(但し、内部ヘイズは、フィルム中に最も多く含まれる熱可塑性樹脂の屈折率±0.02以内の屈折率を有するオイルを用い、該オイルでフィルム両表面を覆って測定したヘイズ値である。)
[2] 前記全ヘイズが0.51以上であることを特徴とする[1]に記載のプラスチックフィルム。
[3] 表面粗さが0.7以上であることを特徴とする[1]または[2]に記載のプラスチックフィルム。
[4] エステル系ポリマーを含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のプラスチックフィルム。
[5] 前記エステル系ポリマーを構成するジオール残基の平均炭素数が2.3〜7.0であることを特徴とする[4]に記載のプラスチックフィルム。
[6] 少なくとも最外層に無機微粒子を含むことを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載のプラスチックフィルム。
[7] セルロースアシレート樹脂または環状オレフィン樹脂を含むことを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載のプラスチックフィルム。
[8] セルロースアシレート樹脂を含むことを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載のプラスチックフィルム。
[9] 前記セルロースアシレート樹脂の全アシル置換度の平均値が2.1〜2.6であることを特徴とする[7]または[8]に記載のプラスチックフィルム。
[10] コア層と、該コア層の両面に少なくとも1層ずつの表層が積層されていることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載のプラスチックフィルム。
[11] 共流延されてなり、前記表層に無機微粒子を含むことを特徴とする[10]に記載のプラスチックフィルム。
[12] 前記コア層と、前記表層がそれぞれ全アシル置換度の異なるセルロースアシレート樹脂を含むことを特徴とする[10]または[11]に記載のプラスチックフィルム。
[13] 前記コア層に含まれるセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度が2.1〜2.6であることを特徴とする[12]に記載のプラスチックフィルム。
[14] 前記コア層用が無機微粒子を全く含まないことを特徴とする[10]〜[13]のいずれか一項に記載のプラスチックフィルム。
[15] 熱可塑性樹脂と該熱可塑性樹脂に対して0.1質量%以上の無機微粒子を含むドープを流涎して、プラスチックフィルムの少なくとも一方の最外層となるフィルムを形成する工程と、該最外層となるフィルムを含むプラスチックフィルムを、延伸温度A±10℃でフィルム搬送方向に直交する方向に20〜60%延伸する工程を含むことを特徴とするプラスチックフィルムの製造方法(但し、前記Aは、残留溶媒量が0%のときのセルロースアシレートの動的粘弾性tanδを測定した際にtanδがピークを示す温度を表す)。
[16] 前記熱可塑性樹脂としてセルロースアシレート樹脂を用い、前記延伸工程においてフィルム搬送方向に直交する方向に20〜40%延伸することを特徴とする[15]に記載のプラスチックフィルムの製造方法。
[17] 前記熱可塑性樹脂と該熱可塑性樹脂に対して0.1質量%以上の無機微粒子を含むドープと、熱可塑性樹脂を含む少なくとも1種のコア層用ドープを、該コア層用ドープの両面に前記熱可塑性樹脂と該熱可塑性樹脂に対して0.1質量%以上の無機微粒子を含むドープが積層されるように逐次流延または同時共流延することを特徴とする[15]または[16]に記載のプラスチックフィルムの製造方法。
[18] 前記熱可塑性樹脂と該熱可塑性樹脂に対して0.1質量%以上の無機微粒子を含むドープと、熱可塑性樹脂を含む少なくとも1種のコア層用ドープを、該コア層用ドープの両面に前記熱可塑性樹脂と該熱可塑性樹脂に対して0.1質量%以上の無機微粒子を含むドープが積層されるように同時共流延することを特徴とする[15]または[16]に記載のプラスチックフィルムの製造方法。
[19] 前記コア層用ドープが無機微粒子を全く含まないことを特徴とする[17]または[18]に記載のプラスチックフィルムの製造方法。
[20] [15]〜[19]のいずれか一項に記載のプラスチックフィルムの製造方法で製造されたことを特徴とするプラスチックフィルム。
[21] [1]〜[14]および[20]のいずれか一項に記載のプラスチックフィルムを少なくとも1枚用いたことを特徴とする偏光板。
[22] [1]〜[14]および[20]のいずれか一項に記載のプラスチックフィルムを少なくとも1枚用いたことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、偏光板に位相差フィルムとして組み込んだときに良好なコントラストを有し、かつ、搬送性が良好であるプラスチックフィルムおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の液晶表示装置の一例の概略断面図である。
【図2】共流延用ダイを用いて同時共流延により3層構造の積層プラスチックフィルムを流涎製膜するときの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0016】
[プラスチックフィルム]
本発明のプラスチックフィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)は、内部ヘイズが0.08以下であり、全ヘイズが0.41以上であることを特徴とする(但し、内部ヘイズは、フィルム中に最も多く含まれる熱可塑性樹脂の屈折率±0.02以内の屈折率を有するオイルを用い、該オイルでフィルム両表面を覆って測定したヘイズ値である)。
以下、本発明のフィルムについて説明する。
【0017】
(ヘイズ)
本発明のフィルムは、内部ヘイズが0.08以下である。本明細書中、内部ヘイズとは、フィルム中に最も多く含まれる熱可塑性樹脂の屈折率±0.02以内の屈折率を有するオイルを用い、該オイルでフィルム両表面を覆って測定した表面散乱成分を除外したヘイズ値である。
内部ヘイズが0.08以下であると偏光板に組み込んだときのコントラストが高くなり好ましい。コントラスト低下を抑制するためには内部ヘイズは0.07以下がより好ましく、0.06以下が特に好ましく、0.05以下がより特に好ましい。
【0018】
本発明のフィルムは、全ヘイズが0.41以上であり、0.51以上であることが好ましい。一方、全ヘイズの上限値は1.3以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましい。全ヘイズが0.41以上であると、ロールフィルムの送り出し、巻き取りのためのハンドリング時にハンドリングロールとの滑りを確保でき、傷が生じにくくなり、搬送性を改善することができる。また、長尺のロール状態で保存中に表裏面が密着しないようにもなる。さらに、フィルムは他の基板やフィルムとの間の密着性についても向上し、けん化処理する場合のけん化時間も短くなる。
【0019】
従来、フィルムの内部ヘイズと全ヘイズを独立して制御したフィルムはほとんど知られておらず、特に従来の製造方法で製造されたフィルムは全ヘイズを高くすると内部へイズも高まり、全へイズを低くすると内部へイズも低くなるものであった。
これに対し、本発明は、全へイズが0.41以上である場合でも、内部へイズが0.08以下であると偏光板に組み込んだときのコントラストが改善されることを見出したものである。また、本発明は、内部へイズが0.08以下であっても、全へイズが0.41以上であればフィルム搬送性が改善されることを見出したものである。すなわち、本発明のフィルムは、フィルムの内部ヘイズが低く、全ヘイズが高い、従来知られていなかった態様で制御されたフィルムであり、偏光板に組み込んだときのコントラストとフィルム搬送性を両立することができる。
【0020】
(表面粗さ)
本発明のフィルムは、搬送製をより改善する観点から、フィルム表面粗さが0.7μm以上であることが好ましく、0.65μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることが特に好ましい。前記表面粗さは、以下の方法によって測定をすることができる。
アンリツ(株)の膜厚測定器KG601Gを使用し、5mのフィルムを0.1mmピッチで採取したのち、測定データの標準偏差を算出する。この値をσとした時の6σをフィルム表面粗さとした.
【0021】
(レターデーション(Re、Rth))
フィルムのレターデーション値は、その用途に応じて好ましい範囲は異なる。本発明のフィルムのレターデーション値は、30nm<Re<100nm、かつ、80nm<Rth<300nmであることが好ましい。また、30nm<Re<80nm、かつ、80nm<Rth<200nmであることがより好ましく、30nm<Re<70nm、かつ、80nm<Rth<150nmであることが特に好ましい。
【0022】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(1)及び式(2)よりRthを算出することもできる。
【0023】
式(1)
【数1】

注記:
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を現す。
式(1)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
式(2)
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
【0024】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
【0025】
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。
なお、本明細書において、特に断らない限り、測定波長は590nmとする。
【0026】
<熱可塑性樹脂>
本発明のプラスチックフィルムは熱可塑性樹脂を含む。本発明のプラスチックフィルムは、前記熱可塑性樹脂としてセルロースアシレート樹脂または環状オレフィン樹脂を含むことが好ましく、セルロースアシレート樹脂を含むことがより好ましい。
【0027】
(セルロースアシレート樹脂)
本発明に用いられるセルロースアシレート樹脂は、特に定めるものではない。アシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
【0028】
まず、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートについて詳細に記載する。セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位に位置するセルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。
全アシル置換度、即ち、DS2+DS3+DS6は2.1〜2.9が好ましく、より好ましくは2.1〜2.8であり、特に好ましくは少なくとも1層に含まれるセルロースアシレートの全アシル置換度が2.1〜2.6である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は0.08〜0.66が好ましく、0.15〜0.60、さらに好ましくは0.20〜0.45である。ここで、DS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「3位のアシル置換度」とも言う)であり、DS6は6位の水酸基のアシル基による置換度である(以下、「6位のアシル置換度」とも言う)。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は全アシル置換度に対する6位のアシル置換度の割合であり、以下「6位のアシル置換率」とも言う。
【0029】
本発明のフィルムに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。本発明のフィルムは、炭素数2〜4のアシル基を置換基として有することが好ましい。2種類以上のアシル基を用いるときは、そのひとつがアセチル基であることが好ましく、炭素数2〜4のアシル基としてはプロピオニル基またはブチリル基が好ましい。2位、3位および6位の水酸基のアセチル基による置換度の総和をDSAとし、2位、3位および6位の水酸基のプロピオニル基またはブチリル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は2.3〜2.6であることが好ましい。DSA+DSBの値は2.35〜2.55、かつDSBの値は0.10〜1.70であることがより好ましく、さらに好ましくはDSA+DSBの値は2.40〜2.50、かつDSBの値は0.5〜1.2である。DSAとDSBの値を上記の範囲にすることで環境湿度によるRe値、Rth値の変化の小さいフィルムが得ることができ好ましい。
すなわち、本発明のフィルムに用いられるセルロースアシレート樹脂は、セルロースアセテートであることが、自然への還元性および環境負荷の観点から、好ましい。
さらにDSBはその28%以上が6位水酸基の置換基であるが、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%以上が6位水酸基の置換基であることがさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることも好ましい。これらのフィルムにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低くろ過性のよい溶液の作成が可能となる。
【0030】
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブタノイル基、tert−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、tert−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくはプロピオニル基、ブタノイル基である。
【0031】
セルロ−スのアシル化において、アシル化剤としては、酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、有機酸、例えば、酢酸、メチレンクロライド等が使用される。
【0032】
触媒としては、アシル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アシル化剤が酸クロライド(例えば、CH3CH2COCl)である場合には、塩基性化合物が用いられる。
【0033】
最も一般的なセルロ−スの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロ−スをアセチル基および他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、吉草酸等)またはそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でアシル化する方法である。
【0034】
本発明に用いるセルロースアシレートは、例えば、特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
【0035】
(環状オレフィン樹脂)
本発明のフィルムは、環状オレフィン樹脂を含むフィルムであってもよい。前記環状オレフィン樹脂としては、本発明の趣旨に反しない限り公知の環状オレフィン樹脂を用いることができ、例えば、特願2007−288294号公報などに記載のものを用いることができる。また、前記環状オレフィン樹脂として、市販の環状オレフィン樹脂を用いることもでき、例えば、ARTONシリーズ(商品名、JSR(株)社製、型番として、D4531など)を好ましく用いることができる。
【0036】
(フィルムの層構造)
本発明のフィルムは、1層からなっていても、2層以上からなっていてもよい。
本発明のフィルムは、コア層と、該コア層の両面に少なくとも1層ずつの表層が積層されていることがより好ましい。すなわち、本発明のフィルムは、3層以上の積層構造を有している態様が、光学補償フィルムとして所望の光学特性を実現させる工程における自由度向上の観点から好ましい。なお、前記コア層とは、最も膜厚の厚い層のことをいう。
また、本発明のフィルムが2層以上からなる積層フィルムの場合、本発明のフィルムは、共流延されてなることが好ましい。
【0037】
本発明のフィルムは、前記表層に無機微粒子を含むことが、フィルムの全ヘイズを高くし、フィルムの表面粗さを大きくする観点から好ましい。
また、本発明のフィルムは、前記コア層用が無機微粒子を全く含まないことが、フィルムの内部ヘイズを低くする観点から好ましい。
【0038】
本発明のフィルムが2層以上からなる場合、各層の間に接着剤または粘着剤を含まないことが、製造プロセスの削減の観点から好ましく、このような層構造のフィルムは後述する積層流延法によって製造することができる。
なお、接着剤または粘着剤を介して接着された複層構造のフィルムを製造するときに用いられる接着剤や粘着剤としては、例えば特開平11−295527号公報に記載がある。
【0039】
本発明のフィルムが前記熱可塑性樹脂としてセルロースアシレート樹脂を含み、かつ2層以上からなる場合は、各層中におけるセルロースアシレートのアシル基置換度は均一であってもよく、複数のセルロースアシレートを一つの層に混在させてもよい。本発明のフィルムに含まれるセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度の平均値は、2.1〜2.6であることが好ましく、2.2〜2.5であることがより好ましく、2.3〜2.48であることが特に好ましい。
【0040】
本発明のフィルムが2層以上からなる場合、コア層に含まれる前記セルロースアシレート樹脂の全アシル置換度の平均値が2.1〜2.6を満たすことが特に好ましい。
前記コア層に含まれる前記セルロースアシレート樹脂の全アシル置換度の平均値は、2.2〜2.5であることがより好ましく、2.3〜2.48であることが特に好ましい。
【0041】
本発明のフィルムは、前記コア層と、前記表層がそれぞれ置換度の異なるセルロースアシレート樹脂を含むことが好ましい。
前記表層に含まれるセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度は、2.6〜2.9であることがより好ましく、2.65〜2.85であることが特に好ましい。
【0042】
(膜厚)
本発明のフィルムの厚さ(2層以上からなる場合は合計膜厚)は、用いる偏光板の種類等によって適宜定めることができるが、好ましくは30〜60μmであり、より好ましくは35〜55μmである。フィルムの厚さを60μm以下とすることにより、コストを下げることができ好ましい。
【0043】
本発明のフィルムが2層以上からなる場合における各層の膜厚は、フィルムの全膜厚(表層の膜厚+コア層の膜厚)に対する、前記表層の膜厚の膜厚比が0.005〜0.20であることが好ましく、0.005〜0.15であることがより好ましく、0.01〜0.10であることが特に好ましい。
【0044】
<添加剤>
本発明のフィルム中には、添加剤として、無機微粒子(マット剤)、非リン酸エステル系の化合物;レターデーション調整剤(レターデーション発現剤およびレターデーション低減剤);フタル酸エステル、リン酸エステル系の化合物などの可塑剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤などの添加剤を加えることもできる。
【0045】
(無機微粒子)
本発明のフィルムは、少なくとも最外層に無機微粒子を含むことが好ましい。
【0046】
本発明のフィルムには、無機微粒子(マット剤)を加えることが好ましい。本発明に使用される無機微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムを挙げることができる。無機微粒子はケイ素を含むものが、濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜30nmであるものがフィルムの全ヘイズを本発明の範囲に制御できる観点から、より好ましい。見かけ比重は10〜100g/リットル以上であるものが好ましく、30〜80g/リットル以上であるものがさらに好ましい。
本発明のフィルムが2層の積層構造であるときは、前記無機微粒子は少なくとも一方の最外層に含まれる。また、本発明のフィルムが3層以上の積層構造であるときは、前記無機微粒子は前記表層の両方に含まれることが好ましい。
【0047】
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm〜1.5μmが好ましく、0.4μm〜1.2μmがさらに好ましく、0.6μm〜1.1μmが最も好ましい。1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒子サイズとした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とした。
【0048】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976およびR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でアエロジルR972が、無機微粒子分散溶液を作製する際の凝集性の観点から特に好ましい。
【0049】
本発明において2次平均粒子径の小さな粒子を有するフィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ作成し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子がさらに再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行い、これを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がさらに好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gがさらに好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
【0050】
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0051】
(非リン酸エステル系の化合物)
本発明のフィルムは、リン酸エステル系の化合物または非リン酸エステル系のポリエステル系の化合物を含むことが、湿熱耐久性時にフィルムから添加剤が泣き出す現象を抑えるため好ましい。以下、本発明のフィルムに用いることができる添加剤について詳細に説明する。
【0052】
本発明のフィルムは、前記低置換度層中に、非リン酸エステル系の化合物を含むことが好ましい。このような非リン酸エステル系の化合物を含むことにより、本発明のフィルムは白化しにくくなるという効果を奏する。
また、本明細書中、「非リン酸エステル系の化合物」とは、「エステル結合を有する化合物であって、該エステル結合に寄与する酸がリン酸以外である化合物」のことを言う。すなわち、「非リン酸エステル系の化合物」は、リン酸を含まず、エステル系である、化合物を意味する。
また、前記非リン酸エステル系の化合物は、低分子化合物であっても、ポリマー(高分子化合物)であってもよい。以下、ポリマー(高分子化合物)である非リン酸エステル系の化合物のことを、非リン酸エステル系ポリマーとも言う。
【0053】
前記非リン酸エステル系の化合物としては、セルロースアシレートフィルムの添加剤として公知の高分子量添加剤および低分子量添加剤を広く採用することができる。添加剤の含量は、セルロース系樹脂に対して、1〜35質量%であることが好ましく、4〜30質量%であることがより好ましく10〜25質量%であることがさらに好ましい。
【0054】
本発明のフィルムに非リン酸エステル系の化合物として用いられる高分子量添加剤は、その化合物中に繰り返し単位を有するものであり、粘度平均分子量が600〜10000のものが好ましい。高分子量添加剤は、溶液流延法において、溶媒の揮発速度を速める機能や、残留溶媒量を低減する機能も有する。さらに、機械的性質向上、柔軟性付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点で、有用な効果を示す。
【0055】
ここで、本発明における非リン酸エステル系の化合物である高分子量添加剤の粘度平均分子量は、より好ましくは粘度平均分子量600〜8000であり、さらに好ましくは粘度平均分子量600〜5000であり、特に好ましくは粘度平均分子量600〜5000である。
以下、本発明に用いられる非リン酸エステル系の化合物である高分子量添加剤について、その具体例を挙げながら詳細に説明するが、本発明で用いられる非リン酸エステル系の化合物である高分子量添加剤がこれらのものに限定されるわけでないことは言うまでもない。
【0056】
非リン酸エステル系の化合物である高分子系添加剤としては、ポリエステル系ポリマー(脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー等)、ポリエステル系成分と他の成分の共重合体などが挙げられ、脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー(脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー等)とアクリル系ポリマーの共重合体およびポリエステル系ポリマー(脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー等)とスチレン系ポリマーの共重合体が好ましく、少なくとも共重合成分の1つとして芳香族環を含有するポリエステル化合物であることがより好ましい。
【0057】
前記脂肪族ポリエステル系ポリマーとしては、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールから選ばれる少なくとも1種類以上のジオールとの反応によって得られるものであり、かつ反応物の両末端は反応物のままでもよいが、さらにモノカルボン酸類やモノアルコール類またはフェノール類を反応させて、所謂末端の封止を実施してもよい。この末端封止は、特にフリーなカルボン酸類を含有させないために実施されることが、保存性などの点で有効である。本発明のポリエステル系ポリマーに使用されるジカルボン酸は、炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸残基または炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸残基であることが好ましい。
【0058】
本発明で好ましく用いられる炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
これらの中でも好ましい脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。特に好ましくは、脂肪族ジカルボン酸成分としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸である。
【0059】
前記高分子量添加剤に利用されるジオールは、例えば、炭素数2〜20の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールから選ばれるものである。
【0060】
炭素原子2〜20の脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールおよび脂環式ジオール類を挙げることができ、例えば、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
【0061】
好ましい脂肪族ジオールとしては、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、特に好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールである。
【0062】
炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールとしては、好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコールおよびポリプロピレンエーテルグリコールならびにこれらの組み合わせが挙げられる。その平均重合度は、特に限定されないが好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜10であり、さらには2〜5であり、特に好ましくは2〜4である。これらの例としては、典型的に有用な市販のポリエーテルグリコール類としては、カーボワックス(Carbowax)レジン、プルロニックス(Pluronics)レジンおよびニアックス(Niax)レジンが挙げられる。
【0063】
本発明では、脂肪族ポリエステル系ポリマーとして、ジオール残基の平均炭素数が2.3以上であるものを添加剤として使用することが、フィルムの耐久性を高めることができるため好ましい。ジオール残基の平均炭素数は2.4以上であるものがより好ましく、2.5以上であるものがさらに好ましい。平均炭素数の上限については、7.0以下であることが好ましい。ここでいうジオール残基の平均炭素数とは、ポリマーを構成するジオール残基の炭素数の平均値を意味する。複数のジオール成分を用いて脂肪族ポリエステル系ポリマーを合成している場合は、各ジオール成分の炭素数にモル分率を乗じて合計することにより平均炭素数を算出することができる。複数のジオール成分を組み合わせて用いる場合の典型例として、エチレングリコールと炭素数3以上のグリコールとの組み合わせを挙げることができる。
本発明で用いる脂肪族ポリエステル系ポリマーの粘度平均分子量は、600〜2000であることが好ましく、600〜1400であることがより好ましく、600〜900であることがさらに好ましい。
【0064】
本発明においては、特に末端がアルキル基あるいは芳香族基で封止された高分子量添加剤であることが好ましい。これは、末端を疎水性官能基で保護することにより、高温高湿での経時劣化に対して有効であり、エステル基の加水分解を遅延させる役割を示すことが要因となっている。
本発明のポリエステル添加剤の両末端がカルボン酸やOH基とならないように、モノアルコール残基やモノカルボン酸残基で保護することが好ましい。
この場合、モノアルコールとしては炭素数1〜30の置換、無置換のモノアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、tert−ノニルアルコール、デカノール、ドデカノール、ドデカヘキサノール、ドデカオクタノール、アリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコール、ベンジルアルコール、3−フェニルプロパノールなどの置換アルコールなどが挙げられる。
【0065】
好ましく使用され得る末端封止用アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコールであり、特にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール、シクロヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、ベンジルアルコールである。
【0066】
また、モノカルボン酸残基で封止する場合は、モノカルボン酸残基として使用されるモノカルボン酸は、炭素数1〜30の置換、無置換のモノカルボン酸が好ましい。これらは、脂肪族モノカルボン酸でも芳香族環含有カルボン酸でもよい。好ましい脂肪族モノカルボン酸について記述すると、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられ、芳香族環含有モノカルボン酸としては、例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−tert−アミル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上を使用することができる。
【0067】
かかる前記高分子量添加剤の合成は、常法により上記脂肪族ジカルボン酸とジオールおよび/または末端封止用のモノカルボン酸またはモノアルコール、とのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。これらのポリエステル系添加剤については、村井孝一編者「添加剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
【0068】
前記芳香族ポリエステル系ポリマーは、前記ポリエステルポリマーに芳香環を有するモノマーを共重合することによって得られる。芳香環を有するモノマーとしては、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸、炭素数6〜20の芳香族ジオールから選ばれる少なくとも1種類以上のモノマーである。
炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸等がある。これらの中でも好ましい芳香族ジカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、である。
【0069】
炭素数6〜20の芳香族ジオールとしては、特に限定されないがビスフェノールA、1,2−ヒドロキシベンゼン、1,3−ヒドロキシベンゼン、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールが挙げられ、好ましくはビスフェノールA、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールである。
【0070】
本発明では、芳香族ポリエステル系ポリマーは前述のポリエステルに芳香族ジカルボン酸または芳香族ジオールのそれぞれの少なくとも一種類を組み合わせて用いられるが、その組み合わせは特に限定されるものではなく、それぞれの成分を数種類組み合わせても問題ない。本発明においては、前述のように、特に末端がアルキル基あるいは芳香族基で封止された高分子量添加剤であることが好ましく、封止には前述の方法を使用することができる。
【0071】
本発明では非リン酸エステル系の化合物以外のレターデーション低減剤として、例えば、リン酸エステル系の化合物や、セルロースアシレートフィルムの添加剤として公知のエステル系以外の化合物を広く採用することができる。
【0072】
高分子系レターデーション低減剤としては、リン酸ポリエステル系ポリマー、スチレン系ポリマーおよびアクリル系ポリマーおよびこれら等の共重合体から選択され、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましい。また、スチレン系ポリマー、アクリル系ポリマーといった、負の固有複屈折を有するポリマーを少なくとも一種含まれることが好ましい。
【0073】
非リン酸エステル系以外の化合物である低分子量レターデーション低減剤としては、以下を挙げることができる。これらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に劣化防止剤の混合などである。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はセルロースアシレート溶液(ドープ)作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。さらにまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
【0074】
非リン酸エステル系以外の化合物である低分子量レターデーション低減剤としては、特に限定されないが、詳細は特開2007−272177号公報の[0066]〜[0085]に記載されている。
【0075】
特開2007−272177号公報の[0066]〜[0085]に一般式(1)として記載される化合物は、以下の方法にて作成することができる。
該公報一般式(1)の化合物は、スルホニルクロリド誘導体とアミン誘導体との縮合反応により得ることができる。
【0076】
特開2007−272177号公報一般式(2)に記載の化合物は、縮合剤(例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)など)を用いた、カルボン酸類とアミン類との脱水縮合反応、またはカルボン酸クロリド誘導体とアミン誘導体との置換反応などにより得ることができる。
【0077】
前記レターデーション低減剤は、Rth低減剤であることが好適なNzファクターを実現する観点からより好ましい。前記レターデーション低減剤のうち、Rth低減剤としては、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマー、特開2007−272177号公報一般式(3)〜(7)の低分子化合物などを挙げることができ、その中でもアクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましく、アクリル系ポリマーがより好ましい。
【0078】
レターデーション低減剤は、セルロース系樹脂に対し、0.01〜30質量%の割合で添加することが好ましく、0.1〜20質量%の割合で添加することがより好ましく、0.1〜10質量%の割合で添加することが特に好ましい。
上記添加量を30質量%以下とすることにより、セルロース系樹脂との相溶性を向上させることができ、白化を抑制させることができる。2種類以上のレターデーション低減剤を用いる場合、その合計量が、上記範囲内であることが好ましい。
【0079】
(可塑剤)
本発明に用いられる可塑剤としては、セルロースアシレートの可塑剤として知られる多くの化合物も有用に使用することができる。可塑剤としては、リン酸エステル系化合物またはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステル系化合物の例には、トリフェニルホスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
【0080】
(レターデーション発現剤)
本発明では、レターデーション発現剤を含んでいてもよい。レターデーション発現剤を採用することにより、低延伸倍率で高いRe発現性を得られる。レターデーション発現剤の種類としては、特に定めるものではないが、棒状または円盤状化合物からなるものや、前記非リン酸エステル系の化合物のうちレターデーション発現性を示す化合物を挙げることができる。上記棒状または円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として好ましく用いることができる。
二種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
【0081】
レターデーション発現財としては、例えば特開2004−50516号公報、特開2007−86748号公報に記載されている化合物を用いることができるが、本発明はこれらに限定されない。
円盤状化合物としては、例えば欧州特許出願公開第0911656A2号明細書に記載の化合物、特開2003−344655号公報に記載のトリアジン化合物、特開2008−150592号公報[0097]〜[0108]に記載されるトリフェニレン化合物も好ましく用いることもできる。
【0082】
円盤状化合物は、例えば特開2003−344655号公報に記載の方法、特開2005−134884号公報に記載の方法等、公知の方法により合成することができる。
【0083】
前述の円盤状化合物の他に直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができ、例えば特開2008−150592号公報[0110]〜[0127]に記載される棒状化合物を好ましく用いることができる。
【0084】
溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより長波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。
棒状化合物は、文献記載の方法を参照して合成できる。文献としては、Mol. Cryst. Liq. Cryst., 53巻、229ページ(1979年)、同89巻、93ページ(1982年)、同145巻、111ページ(1987年)、同170巻、43ページ(1989年)、J. Am. Chem. Soc.,113巻、1349ページ(1991年)、同118巻、5346ページ(1996年)、同92巻、1582ページ(1970年)、J. Org. Chem., 40巻、420ページ(1975年)、Tetrahedron、48巻16号、3437ページ(1992年)を挙げることができる。
【0085】
(偏光板)
また、本発明のフィルムは、本発明のフィルムを少なくとも一枚用いる偏光板に応用することができる。
前記偏光板は、偏光子と、該偏光子の片面に本発明のフィルムを有することが好ましい。本発明の光学補償フィルムと同様、前記偏光板の態様は、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用とするためには、上記した通り、偏光板の幅は1470mm以上とすることが好ましい。
前記偏光板の具体的な構成については、特に制限はなく公知の構成を採用できるが、例えば、特開2008−262161号公報の図6に記載の構成を採用することができる。
【0086】
(液晶表示装置)
本発明のフィルムは、前記偏光板を有する液晶表示装置に応用することができる。
前記液晶表示装置は液晶セルと該液晶セルの両側に配置された一対の偏光板を有する液晶表示装置であって、前記偏光板の少なくとも一方が本発明の偏光板であることを特徴とするIPS、OCBまたはVAモードの液晶表示装置であることが好ましい。
前記液晶表示装置の具体的な構成としては特に制限はなく公知の構成を採用できるが、例えば図1に記載の構成とした例を採用することができる。また、特開2008−262161号公報の図2に記載の構成も好ましく採用することができる。
【0087】
[プラスチックフィルムの製造方法]
本発明のプラスチックフィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法とも言う)は、熱可塑性樹脂と該熱可塑性樹脂に対して0.1質量%以上の無機微粒子を含むドープを流涎して、プラスチックフィルムの少なくとも一方の最外層となるフィルムを形成する工程と、該最外層となるフィルムを含むプラスチックフィルムを、延伸温度A±10℃でフィルム搬送方向に直交する方向に20〜60%延伸する工程を含むことを特徴とする(但し、前記Aは、残留溶媒量が0%のときのセルロースアシレートの動的粘弾性tanδを測定した際にtanδがピークを示す温度を表す)。
本発明の製造方法によれば、従来知られていなかったフィルムの内部ヘイズが低く、全ヘイズが高い、従来知られていなかった態様で制御された本発明のプラスチックフィルムを製造することができる。
【0088】
本発明のフィルムは、溶液製膜法(ソルベントキャスト法)により製造される。ソルベントキャスト法を利用したセルロースアシレートフィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同2,367,603号、同2,492,078号、同2,492,977号、同2,492,978号、同2,607,704号、同2,739,069号及び同2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号及び同736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号及び同62−115035号等の公報を参考にすることができる。また、本発明のフィルムは、延伸処理を施されるが、本明細書中で規定される以外の延伸処理の方法及び条件については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号等の公報を参考にすることができる。
【0089】
<ドープの調製>
ソルベントキャスト法では、熱可塑性樹脂を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造することができる。
有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステルおよび炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0090】
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
2種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0091】
一般的な方法で熱可塑性樹脂溶液を調製できる。一般的な方法とは、0℃以上の温度(常温または高温)で、処理することを意味する。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特に、メチレンクロリド)を用いることが好ましい。
熱可塑性樹脂の量は、得られる溶液中に10〜40質量%含まれるように調整することが好ましい。熱可塑性樹脂の量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。前記熱可塑性樹脂は、本発明のフィルムにおける好ましい範囲と同様であり、セルロースアシレート樹脂または環状オレフィン樹脂であることが好ましく、セルロースアシレート樹脂であることがより好ましく、セルロースアセテートであることが特に好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、本発明のフィルムに好ましく添加できる添加剤として挙げた添加剤の中から、任意の添加剤を添加しておいてもよい。また、本発明の製造方法では、前記ドープが、無機微粒子を含む。
溶液は、常温(0〜40℃)で熱可塑性樹脂と有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、熱可塑性樹脂と有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、さらに好ましくは80〜110℃である。
【0092】
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶媒中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
【0093】
<流延方法>
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるが、いずれも好ましく用いることができる。またここで挙げた方法以外にも、従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施することができ、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することにより、それぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。
【0094】
本発明の製造方法では、プラスチックフィルムの全へイズを本発明の範囲とするために、熱可塑性樹脂と該熱可塑性樹脂に対して0.1質量%以上の無機微粒子を含むドープを流涎して、プラスチックフィルムの少なくとも一方の最外層となるフィルムを形成する。この最外層となるフィルムは、本発明のフィルムが単層である場合はそのまま本発明のフィルムとなる。一方、本発明のフィルムが2層以上からなる場合は、本発明のフィルムの少なくとも一方の最外層となり、本発明のフィルムの両方の最外層となることが好ましい。
【0095】
(共流延)
本発明のフィルムが2層以上からなる場合は、その形成においては共流延法、逐次流延法、塗布法などの積層流延法を用いることが好ましく、同時共流延法および逐次流延法がより好ましく、同時共流延法を用いることが、安定製造および生産コスト低減の観点から特に好ましい。
【0096】
共流延法および逐次流延法により製造する場合には、まず、各層用の熱可塑性樹脂溶液(ドープ)を調製する。
本発明の製造方法では、前記熱可塑性樹脂と該熱可塑性樹脂に対して0.1質量%以上の無機微粒子を含むドープと、熱可塑性樹脂を含む少なくとも1種のコア層用ドープを、該コア層用ドープの両面に前記熱可塑性樹脂と該熱可塑性樹脂に対して0.1質量%以上の無機微粒子を含むドープが積層されるように逐次流延または同時共流延することが好ましい。
本発明の製造方法では、前記熱可塑性樹脂と該熱可塑性樹脂に対して0.1質量%以上の無機微粒子を含むドープと、熱可塑性樹脂を含む少なくとも1種のコア層用ドープを、該コア層用ドープの両面に前記熱可塑性樹脂と該熱可塑性樹脂に対して0.1質量%以上の無機微粒子を含むドープが積層されるように同時共流延することがより好ましい。
【0097】
前記熱可塑性樹脂としてセルロースアシレート樹脂を用いる場合、本発明の製造方法では、前記熱可塑性樹脂と該熱可塑性樹脂に対して0.1質量%以上の無機微粒子を含むドープと、前記コア層用ドープがそれぞれ置換度の異なるセルロースアシレート樹脂を含むことが好ましい。
本発明の製造方法では、前記コア層用ドープに含まれる前記セルロースアシレート樹脂の全アシル置換度の平均値が2.1〜2.6を満たすことが好ましく、より好ましい範囲は本発明のフィルムの説明における好ましい範囲と同様である。
【0098】
同時共流延法(重層同時流延)では、流延用金属支持体(バンドまたはドラム)の上に、各層(2層あるいはそれ以上でもよい)各々の流延用ドープを別のスリットなどから同時に押出す流延用ギーサからドープを押出して、各層同時に流延し、適当な時期に金属支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。 図2に、共流延ギーサ3を用い、流延用金属支持体4の上に表層用ドープ1とコア層用ドープ2を3層同時に押出して流延する状態を断面図で示した。
【0099】
逐次流延法は、流延用金属支持体の上にまず前記最外層用のドープを流延用ギーサから押出して、流延し、乾燥あるいは乾燥することなく、その上に第2層用(コア層用)の流延用ドープを流延用ギーサから押出して流延する要領で、必要なら第3層以上まで逐次ドープを流延・積層して、適当な時期に金属支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。
【0100】
一方、塗布法は、一般的には、コア層のフィルムを溶液製膜法によりフィルムに成形し、表層に塗布する塗布液を調製し、適当な塗布機を用いて、片面ずつまたは両面同時にフィルムに塗布液を塗布・乾燥して積層構造のフィルムを成形する方法である。
【0101】
例えば前述の可塑剤、紫外線吸収剤、無機微粒子(マット剤)等の添加剤濃度が異なるドープを共流延して、各層で添加剤濃度が異なる積層構造のプラスチックフィルムを作製することもできる。無機微粒子は、表層用ドープ中における濃度を高くし、コア層用ドープ中における濃度を低くすることができる。本発明の製造方法では、表層用ドープが無機微粒子を含むことが好ましく、前記コア層用ドープが無機微粒子を全く含まないことが内部へイズを低くする観点からより好ましい。
可塑剤、紫外線吸収剤は表層用ドープよりもコア層用ドープのみに多くいれることができ、コア層用ドープのみにいれてもよい。また、コア層用ドープと表層用ドープで可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもできる。また、剥離剤を金属支持体側の表層用ドープにのみ含有させることも好ましい態様である。また、冷却ドラム法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、表層用ドープに貧溶媒であるアルコールをコア層用ドープより多く添加することも好ましい。表層用ドープとコア層用ドープのTgが異なっていてもよく、表層用ドープのTgよりコア層用ドープのTgが低いことが好ましい。また、流延時の熱可塑性樹脂を含む溶液の粘度も表層用ドープとコア層用ドープで異なっていてもよく、表層用ドープの粘度がコア層用ドープの粘度よりも小さいことが好ましいが、コア層用ドープの粘度が表層用ドープの粘度より小さくてもよい。
【0102】
また、本発明の製造方法では、表層用ドープとコア層用ドープに含まれる熱可塑性樹脂が異なっていることも好ましい。熱可塑性樹脂としてセルロースアシレート樹脂を用いる場合、表層用ドープとコア層用ドープにそれぞれ含まれるセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度は異なっていることが好ましい。
【0103】
本発明のフィルムを製造するのに使用される、エンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたSUS(ステンレス)ベルト(バンドといってもよい)を用いることが好ましい。使用される加圧ダイは、金属支持体の上方に1基又は2基以上の設置でもよい。好ましくは1基又は2基である。2基以上設置する場合には、流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるセルロースアシレート溶液の温度は−10〜55℃が好ましく、より好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべての溶液温度が同一でもよく、又は工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
【0104】
<延伸処理>
本発明の製造方法では、該最外層となるフィルムを含むプラスチックフィルムを、延伸温度A±10℃でフィルム搬送方向に直交する方向に20〜60%延伸する工程を含むことを特徴とする(但し、前記Aは、残留溶媒量が0%のときのセルロースアシレートの動的粘弾性tanδを測定した際にtanδがピークを示す温度を表す)。前述の通り、本発明のフィルムは全ヘイズが高く、内部へイズが低いことを特徴とするが、熱可塑性樹脂と該熱可塑性樹脂に対して0.1質量%以上の無機微粒子を含むドープを流涎して得られたプラスチックフィルムの少なくとも一方の最外層となるフィルムを含むプラスチックフィルムを、上記特定の条件で延伸する処理によってこのような性能を付与することが可能である。
本発明のフィルムの製造方法における上記特定の条件でのフィルムの延伸方向はフィルム搬送方向に直交する方向(幅方向、TD方向)であるが、本発明の趣旨に反しない限りにおいてフィルム搬送方向に延伸してもよい。
【0105】
前記Aは、バイブロンにより残留溶媒量0%のセルロースアシレートの動的粘弾性tanδを測定した際にtanδがピークを示した温度であり、フィルムごとに固有の温度である。動的粘弾性を測定する際に用いるバイブロンとしては特に制限はないが、例えば、IT計測制御株式会社製、商品名DVA200を用いることができる。
【0106】
本発明の製造方法では、前記熱可塑性樹脂としてセルロースアシレート樹脂を用い、前記延伸工程においてフィルム搬送方向に直交する方向に20〜40%延伸することがより好ましく、フィルム搬送方向に直交する方向に30〜40%延伸することが特に好ましい。
【0107】
フィルム搬送方向に直交する方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。フィルム搬送方向(長手方向)の延伸の場合、例えば、フィルムの搬送ローラーの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりもフィルムの巻き取り速度の方を速くするとフィルムは延伸される。フィルム搬送方向に直交する方向の延伸の場合、フィルムの幅をテンターで保持しながら搬送して、テンターの幅を徐々に広げることによってもフィルムを延伸できる。フィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。
【0108】
プラスチックフィルムを偏光子の保護膜として使用する場合には、偏光板を斜めから見たときの光漏れを抑制するため、偏光子の透過軸とプラスチックフィルムの面内の遅相軸を平行に配置する必要がある。連続的に製造されるロールフィルム状の偏光子の透過軸は、一般的に、ロールフィルムの幅方向に平行であるので、前記ロールフィルム状の偏光子とロールフィルム状のプラスチックフィルムからなる保護膜を連続的に貼り合せるためには、ロールフィルム状の保護膜の面内遅相軸は、フィルムの幅方向に平行であることが必要となる。従って幅方向により多く延伸することが好ましい。また延伸処理は、製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよいが、本発明の製造方法では残留溶媒を含んだ状態で延伸を行うため、製膜工程の途中で延伸することが好ましい。
【0109】
<乾燥>
プラスチックフィルムの製造に係わる、金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には、金属支持体(ドラム又はベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム又はベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム又はベルトを加熱し表面温度をコントロールする裏面液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度は、ドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。なお流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
【0110】
フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
【0111】
<巻き取り>
以上のようにして得られた、プラスチックフィルムの長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。プラスチックフィルムの幅は、0.5〜5.0mが好ましく、より好ましくは1.0〜3.0mであり、さらに好ましくは1.0〜2.5mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
【0112】
一般的に、大画面表示装置において、斜め方向のコントラストの低下および色味付きが顕著となるので、本発明のフィルムは、特に大画面液晶表示装置に用いるのに適している。大画面用液晶表示装置用の光学補償フィルムとして用いる場合は、例えば、フィルム幅を1470mm以上として成形するのが好ましい。また、本発明の光学補償フィルムには、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様のフィルムのみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様のフィルムも含まれる。後者の態様の光学補償フィルムは、その状態で保管・搬送等され、実際に液晶表示装置に組み込む際や偏光子等と貼り合わされる際に、所望の大きさに切断されて用いられる。また、同様に長尺状に作製されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子等と、長尺状のまま貼り合わされた後に、実際に液晶表示装置に組み込む際に、所望の大きさに切断されて用いられる。ロール状に巻き上げられた光学補償フィルムの一態様としては、ロール長が2500m以上のロール状に巻き上げられた態様が挙げられる。
【実施例】
【0113】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0114】
本発明では、下記の測定方法により測定を行った。
【0115】
(全ヘイズ)
全ヘイズの測定は、本発明のフィルム試料40mm×80mmを、25℃、相対湿度60%で、ヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−6714に従って測定した。その結果を下記表3に示す。
【0116】
(内部ヘイズ)
まず本発明のフィルム試料40mm×80mmの屈折率をアッベ屈折計((株)アタゴ社製の『アッベ屈折計2−T』)により測定した。
次に、フィルム試料の表面及び裏面に、フィルム中に最も多く含まれる熱可塑性樹脂の屈折率±0.02以内の屈折率を有するオイルを数滴添加し、厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S 9111、MATAUNAMI製)を2枚用いて裏表より挟んで、完全に2枚のガラス板と得られたフィルムを光学的に密着し、全ヘイズを除去した状態でヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)によってJIS K−6714に従ってヘイズを測定し、別途測定したガラス板2枚の間にオイルのみを挟んで測定したヘイズを引いた値をフィルムの内部ヘイズとして算出した。
実施例および比較例で得られたセルロースアシレート樹脂を用いたフィルム試料は屈折率が1.48〜1.49であったため、屈折率1.48の流動パラフィンを用いて測定した。また、ARTONを用いたフィルム試料では屈折率が1.52であったため、屈折率1.52のシリコンオイルを用いて測定した。
また、本発明では上記方法で30回測定を行い、その平均値を内部へイズとした。その結果を下記表3に示す。
【0117】
(表面粗さ)
フィルム表面粗さをアンリツ(株)の膜厚測定器KG601Gを使用し、5mのフィルムを0.1mmピッチで採取したのち、測定データの標準偏差を算出した。この値をσとした時の6σをフィルム表面粗さとした。その結果を下記表3に示す。
【0118】
(光学発現性)
KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)で上記の方法によりRe、Rthを波長590nmで計測した。その結果を下記表3に示す。
【0119】
(搬送性)
得られたフィルムの搬送性を下記の方法で測定した。
フィルム試料A100mm×200mmおよびフィルム試料B75mm×100mmを23℃、相対湿度65%、2時間調湿し、テンシロン引張り試験機(RTA−100.オリエンテック(株)製にて、フィルム試料Aを測定台に固定し、200g(W)の重りを付けた載せたフィルム試料Bをフィルム試料Aの上に載せた。フィルム試料Bを水平方向に引張り、動き出した時の力(F)を測定し、下式により静摩擦係数(μ)を算出した。
F=μ×W (W:重りの重さ(kgf))
上記の測定にて、得られた静摩擦係数に応じて下記分類を行った。その結果を下記の基準にしたがって評価し、その結果を下記表3に記載した。
○:0.7以下。
△:0.7を超え、0.8以下。
×:0.8を超え、1.0以下。
××:1.0を超える。
【0120】
[A:共流延フィルム]
2層以上からなるフィルムを製造した実施例および比較例については、以下の方法でプラスチックフィルムを製膜した。
【0121】
(1)合成によるセルロースアシレート樹脂の調製
表1に記載のアシル置換度のセルロースアシレートを調製した。触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、カルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。その後、硫酸触媒量、水分量および熟成時間を調整することで全置換度と6位置換度を調整した。熟成温度は40℃で行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
【0122】
(2)ドープ調製
<2−1>コア層用ドープ
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例1のコア層用ドープ
――――――――――――――――――――――――――――――――――
・セルロースアセテート(置換度2.41) 100.0質量部
・化合物A 18.5質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0123】
下記の表3に示したようにセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度、添加剤種類や添加剤添加量を変更した以外は実施例1のコア層用ドープと同様にして、その他のコア層用ドープを調製した。なお、全アシル置換度が2.39のセルロースアセテートプロピオネート樹脂は、プロピオニル置換度が0.8であり、全アシル置換度が2.43のセルロースアセテートプロピオネート樹脂は、プロピオニル置換度が0.8であった。
添加剤A〜Eについては下記表1に記載のものであり、添加剤FはTPP/BDP可塑剤を、添加剤AOは酸化防止剤 Ir1010(商品名イルガノックス1010 チバスペシャリティ・ケミカルズ社製)をそれぞれ示している。なお、下記表1中、TPAはテレフタル酸を、PAはフタル酸を、AAはアジピン酸を、SAはコハク酸をそれぞれ示している。
また、前記添加剤の添加量は、各コア層用ドープ中に含まれる熱可塑性樹脂に対する質量%である。
【0124】
【表1】

【0125】
添加剤G
【化1】

【0126】
<2−2>表層用セルロースアシレートドープ
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例1の表層用ドープ
――――――――――――――――――――――――――――――――――
・セルロースアセテート(置換度2.81) 100.0質量部
・化合物A 11.0質量部
・無機微粒子(アエロジルR972) 0.2質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0127】
【表2】

【0128】
下記表3に示したようにセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度、添加剤種類や添加剤添加量を変更した以外は実施例1の表層用ドープと同様にして、その他の表層用ドープを調製した。
【0129】
(3)共流延
前記コア層用ドープと、前記表層用ドープを下記表3に記載の膜厚比のコア層および表層にそれぞれなるように、同時共流延した。なお、バンドはSUS製であった。
【0130】
(4)延伸
得られたウェブ(フィルム)をバンドから剥離し、クリップに挟み、フィルム全体の質量に対する残留溶媒量が30〜5%の状態のときに固定端一軸延伸の条件で、下記表3に記載の延伸温度および延伸倍率でテンターを用いてフィルム搬送方向に直交する方向(横方向)に延伸した。
その後にフィルムからクリップを外して130℃で20分間乾燥させた。このとき、延伸後の膜厚が表1に記載の膜厚(単位:μm)になるように、流延膜厚を調整した。表3に示した組成のフィルムを作製し、その製造適性を判断する目的で、ロール幅1280mm、ロール長2600mmのロールを上記条件で最低24ロール作製した。連続で製造した24ロールの中の1ロールについて100m間隔で長手1mのサンプル(幅1280mm)を切り出して各測定を行った。
【0131】
[B:単層フィルム]
単層フィルムを製造したその他の実施例および比較例については、以下の方法でプラスチックフィルムを製膜した。
【0132】
(1)セルロースアシレート樹脂の調製
共流延フィルムの製造と同様の方法により、セルロースアシレート樹脂を調製した。
【0133】
(1)環状オレフィン樹脂の調製
環状オレフィン樹脂として、ARTON(商品名、JSR社製、型番D4531)を用い、ドープ調製前にジクロロメタン溶解の前処理をした。
【0134】
(2)ドープ調製
<2−1> 熱可塑性樹脂溶液
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
比較例1のセルロースアシレート溶液
――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記表3に記載の熱可塑性樹脂 100.0質量部
下記表3に記載の添加剤A 18.5質量部
メチレンクロライド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0135】
<1−2> マット剤分散液
次に上記方法で作成したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
比較例1のマット剤分散液
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
・無機微粒子(アエロジルR972) 0.2質量部
・メチレンクロライド 72.4質量部
・メタノール 10.8質量部
・セルロースアシレート溶液 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0136】
上記比較例1のセルロースアシレート溶液を100質量部、比較例1のマット剤分散液をセルロースアシレート樹脂に対して無機微粒子が0.03質量部となる量を混合し、製膜用ドープを調製した。
【0137】
下記表3に示したように熱可塑性樹脂の種類、熱可塑性樹脂がセルロースアシレート樹脂であるときはその全アシル置換度、添加剤種類や添加剤添加量を変更した以外は比較例1のドープと同様にして、その他の各実施例および比較例のドープを調製した。
【0138】
(3)流延
上述のドープを、下記表3に記載の膜厚となるように、バンド流延機を用いて流延した。なお、バンドはSUS製であった。
【0139】
(4)延伸
得られたウェブ(フィルム)をバンドから剥離し、クリップに挟み、フィルム全体の質量に対する残留溶媒量が30〜5%の状態のときに固定端一軸延伸の条件で、下記表3に記載の延伸温度および延伸倍率でテンターを用いてフィルム搬送方向に直交する方向(横方向)に延伸した。
その後にフィルムからクリップを外して130℃で20分間乾燥させた。このとき、延伸後の膜厚が表3に記載の膜厚(単位:μm)になるように、流延膜厚を調整した。表3に示した組成のフィルムを作製し、その製造適性を判断する目的で、ロール幅1280mm、ロール長2600mmのロールを上記条件で最低24ロール作製した。連続で製造した24ロールの中の1ロールについて100m間隔で長手1mのサンプル(幅1280mm)を切り出して各測定を行った。
【0140】
[C:偏光板の作成]
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。作製した各実施例および比較例のフィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の片側に貼り付けた。なお、ケン化処理は以下のような条件で行った。
1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.005mol/Lの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。各実施例および比較例で作製したフィルムを上記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、上記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。 最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
市販のセルローストリアシレートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付け、70℃で10分以上乾燥した。
偏光子の透過軸と各実施例および比較例のフィルムの遅相軸とは平行になるように配置した。偏光子の透過軸と市販のフィルムの遅相軸とは直交するように配置した。
【0141】
(偏光板加工後の実装時のコントラスト)
BRAVIA−KDL40V5(商品名、SONY(株)社製)の液晶セルから偏光板を剥がした。実施例:偏光板の作成で得られた偏光板に、各実施例および比較例のフィルムの偏光子とは逆側に粘着剤を貼り付け、各実施例または比較例のフィルム/粘着剤/液晶セルの順になるようにこの液晶セルに対して貼り合わせた。この液晶表示装置に対して、コントラストを測定した。その結果を下記表3に記載した。
【0142】
【表3】

【0143】
表3より、本発明のフィルムは、フィルム搬送性が良好であり、偏光板加工後実装時のコントラストも高いことがわかった。一方、比較例1のフィルムは、最外層における熱可塑性樹脂に対する無機微粒子の添加濃度を本発明の製造方法の範囲を下回る条件として製造したものであり、全ヘイズが本発明の範囲を下回り、フィルム搬送性が悪いことがわかった。比較例2のフィルムは、延伸温度を本発明の製造方法の範囲を上回る条件としたものであり、全ヘイズが小さく、フィルム搬送性が悪い上、偏光板加工後実装時のコントラストが悪いことがわかった。比較例3のフィルムは、延伸温度を本発明の製造方法の範囲を下回る条件としたものであり、内部へイズが本発明の範囲を超え、偏光板加工後実装時のコントラストが悪いことがわかった。比較例4のフィルムは、無機微粒子を添加せずに製造したフィルムであり、全ヘイズが本発明の範囲を下回り、フィルム搬送性が悪いことがわかった。比較例5のフィルムは、特開2008−262161号公報に記載の方法にしたがって製造したフィルムであり、延伸温度を、本発明の範囲を大幅に下回る条件として製造したものであり、内部へイズが本発明の範囲外であり、偏光板加工後実装時のコントラストが悪いことがわかった。
また、表3に記載した本発明のフィルムは密着性についても向上し、けん化時間も短くなることを確認した。
【0144】
(経時のコントラスト変化)
添加剤の種類が耐久性に及ぼす影響を検討するために、実施例2、12〜15、23〜25の各フィルムを選択して、これらを60℃、相対湿度90%の環境下に500時間静置した。その後、上記の(偏光板加工後の実装時のコントラスト)と同じ手順にしたがってコントラストを測定し、500時間静置せずに測定した場合のコントラストに対する低下率を算出して結果を下記表4に記載した。
【0145】
【表4】

【0146】
各フィルムのコントラスト低下率は、いずれも実用レベルの範囲内であった。なかでも、平均炭素数が2.4以上の添加剤を添加した実施例2、13、14、23、24、25のフィルムはコントラスト低下率が低く、さらに、平均炭素数が2.6以上の添加剤を添加した実施例13、23、24、25のフィルムはコントラストが低下せず、極めて高い耐久性を示すことが確認された。
【符号の説明】
【0147】
1 表層用ドープ
2 コア層用ドープ
3 共流延ギーサ
4 流延用支持体
11 偏光子
12 偏光子
13 液晶セル
14 各実施例および比較例のフィルム
15 光学異方性フィルム(フジタックTD80UL)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部ヘイズが0.08以下であり、全ヘイズが0.41以上であるプラスチックフィルム。
【請求項2】
前記全ヘイズが0.51以上であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックフィルム。
【請求項3】
表面粗さが0.7以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチックフィルム。
【請求項4】
エステル系ポリマーを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラスチックフィルム。
【請求項5】
前記エステル系ポリマーを構成するジオール残基の平均炭素数が2.3〜7.0であることを特徴とする請求項4に記載のプラスチックフィルム。
【請求項6】
少なくとも最外層に無機微粒子を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラスチックフィルム。
【請求項7】
セルロースアシレート樹脂または環状オレフィン樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のプラスチックフィルム。
【請求項8】
セルロースアシレート樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のプラスチックフィルム。
【請求項9】
前記セルロースアシレート樹脂の全アシル置換度の平均値が2.1〜2.6であることを特徴とする請求項7または8に記載のプラスチックフィルム。
【請求項10】
コア層と、該コア層の両面に少なくとも1層ずつの表層が積層されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のプラスチックフィルム。
【請求項11】
共流延されてなり、前記表層に無機微粒子を含むことを特徴とする請求項10に記載のプラスチックフィルム。
【請求項12】
前記コア層と、前記表層がそれぞれ全アシル置換度の異なるセルロースアシレート樹脂を含むことを特徴とする請求項10または11に記載のプラスチックフィルム。
【請求項13】
前記コア層に含まれるセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度が2.1〜2.6であることを特徴とする請求項12に記載のプラスチックフィルム。
【請求項14】
前記コア層用が無機微粒子を全く含まないことを特徴とする請求項10〜13のいずれか一項に記載のプラスチックフィルム。
【請求項15】
熱可塑性樹脂と該熱可塑性樹脂に対して0.1質量%以上の無機微粒子を含むドープを流涎して、プラスチックフィルムの少なくとも一方の最外層となるフィルムを形成する工程と、
該最外層となるフィルムを含むプラスチックフィルムを、延伸温度A±10℃でフィルム搬送方向に直交する方向に20〜60%延伸する工程を含むことを特徴とするプラスチックフィルムの製造方法(但し、前記Aは、残留溶媒量が0%のときのセルロースアシレートの動的粘弾性tanδを測定した際にtanδがピークを示す温度を表す)。
【請求項16】
前記熱可塑性樹脂としてセルロースアシレート樹脂を用い、前記延伸工程においてフィルム搬送方向に直交する方向に20〜40%延伸することを特徴とする請求項15に記載のプラスチックフィルムの製造方法。
【請求項17】
前記熱可塑性樹脂と該熱可塑性樹脂に対して0.1質量%以上の無機微粒子を含むドープと、熱可塑性樹脂を含む少なくとも1種のコア層用ドープを、該コア層用ドープの両面に前記熱可塑性樹脂と該熱可塑性樹脂に対して0.1質量%以上の無機微粒子を含むドープが積層されるように逐次流延または同時共流延することを特徴とする請求項15または16に記載のプラスチックフィルムの製造方法。
【請求項18】
前記熱可塑性樹脂と該熱可塑性樹脂に対して0.1質量%以上の無機微粒子を含むドープと、熱可塑性樹脂を含む少なくとも1種のコア層用ドープを、該コア層用ドープの両面に前記熱可塑性樹脂と該熱可塑性樹脂に対して0.1質量%以上の無機微粒子を含むドープが積層されるように同時共流延することを特徴とする請求項15または16に記載のプラスチックフィルムの製造方法。
【請求項19】
前記コア層用ドープが無機微粒子を全く含まないことを特徴とする請求項17または18に記載のプラスチックフィルムの製造方法。
【請求項20】
請求項15〜19のいずれか一項に記載のプラスチックフィルムの製造方法で製造されたことを特徴とするプラスチックフィルム。
【請求項21】
請求項1〜14および20のいずれか一項に記載のプラスチックフィルムを少なくとも1枚用いたことを特徴とする偏光板。
【請求項22】
請求項1〜14および20のいずれか一項に記載のプラスチックフィルムを少なくとも1枚用いたことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−132496(P2011−132496A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217619(P2010−217619)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】