プラスチックレンズの製造方法
【課題】実用的な生産性を備え、光学歪や脈理などのない厚いプラスチックレンズが得られるプラスチックレンズの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のプラスチックレンズの製造方法は、重合性組成物を成形モールドに充填する充填工程と、所定の温度条件下に前記成形モールドを曝すことによって重合性組成物を硬化させる硬化工程と、を備えたプラスチックレンズの製造方法であって、硬化工程は、充填工程の後、重合性組成物を充填工程時の初期温度以上に保つ保持工程と、保持工程の後、重合性組成物を冷却する冷却工程と、を備えることを特徴とする。
【解決手段】本発明のプラスチックレンズの製造方法は、重合性組成物を成形モールドに充填する充填工程と、所定の温度条件下に前記成形モールドを曝すことによって重合性組成物を硬化させる硬化工程と、を備えたプラスチックレンズの製造方法であって、硬化工程は、充填工程の後、重合性組成物を充填工程時の初期温度以上に保つ保持工程と、保持工程の後、重合性組成物を冷却する冷却工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、ガラスレンズに比べて軽量であり、成形性や加工性が良く、割れ難く安全性も高い等の様々なメリットを備えている。このため、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の分野で広く用いられている。
プラスチックレンズは、当初、屈折率が1.50の素材が広く使われていたが、近年、高屈折率のプラスチックレンズの開発が進められ、ポリチオウレタン系の素材が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
これらのプラスチックレンズは、その高屈折率によって薄い眼鏡レンズを実現することを目的として開発されたものであるが、従来の眼鏡レンズでは対応が難しかった弱視矯正用としての検討がされ始めている。このような用途では、高屈折率で厚いプラスチックレンズが要望されている。
【0004】
【特許文献1】特開平2−270859号公報
【特許文献2】特開平7−252207号公報
【特許文献3】特開2001−342252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、厚いプラスチックレンズには、以下のような問題がある。
プラスチックレンズは、通常、成形モールド内に充填された重合性組成物を重合硬化させることで形成されるが、重合性組成物の重合速度は温度によって変化するため、わずかな温度分布が局所的な重合速度の上昇、低下を発生させる。
このため、例えば、重合速度が上昇した部分は、他よりも分子量が増大し、下方へ沈降または上方へ上昇する。また、成形モールド内で重合性組成物の対流が発生する場合もある。そして、これらの形跡が残ったまま重合性組成物が硬化すると、プラスチックレンズに光学歪、あるいは脈理が発生するおそれがある。
【0006】
ここで、厚いプラスチックレンズを形成しようとする場合、重合性組成物を温度分布が生じないように一様に加熱することが困難である。また、多量の重合性組成物を重合させるので、重合性組成物自体が重合反応熱を発生させ、これが温度分布の原因となる場合もある。
このような理由から、厚いプラスチックレンズを形成しようとすると、光学歪などの不具合が発生しやすい。
【0007】
これに対し、光学歪などの発生を抑制するため、反応がなるべく均一に進むように、低温でゆっくりと、時間を費やして重合を進行させる方法が知られている。
しかしながら、この方法では、重合硬化に要する時間が長くなり、生産性の低下につながる。
また、低温の重合性組成物は粘度が高いので、成形モールドへの充填が困難になったり、充填時に発生した重合性組成物のムラがプラスチックレンズの外観不良として残ってしまうおそれがある。
【0008】
そこで本発明は、このような従来の問題点などを解決し、実用的な生産性を備え、光学歪や脈理などのない厚いプラスチックレンズが得られるプラスチックレンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプラスチックレンズの製造方法は、重合性組成物を成形モールドに充填する充填工程と、所定の温度条件下に前記成形モールドを曝すことによって前記重合性組成物を硬化させる硬化工程と、を備えたプラスチックレンズの製造方法であって、前記硬化工程は、前記充填工程の後、前記重合性組成物を前記充填工程時の初期温度以上に保つ保持工程と、前記保持工程の後、前記重合性組成物を冷却する冷却工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
一般に、重合速度は反応の初期には遅いが、ある段階で急激に速くなる。この重合速度の上昇時に、光学歪などの不具合が発生しやすい。
本発明では、急激な重合速度の上昇が発生する前に冷却工程を実施し、重合性組成物の温度を低下させて、重合速度の局所的な上昇を防止することができる。
これにより、厚いプラスチックレンズを形成する場合においても、光学歪や脈理などの不具合の発生を抑制することができる。
【0011】
一方、問題の発生しにくい重合硬化の初期にあたる保持工程では、重合性組成物を比較的高い初期温度以上に保持し、重合をある程度進行させる。
このため、本発明の製造方法では、重合の均一性を確保するために重合硬化の初期から重合性組成物を低温としていた従来の製造方法と比べ、プラスチックレンズの製造に要する時間を飛躍的に短縮することができる。
【0012】
また、充填工程に続いて保持工程を実施するので、重合性組成物を充填工程の段階から低温にしておく必要がない。よって、重合性組成物の粘度が適度になるように初期温度を設定すれば、重合性組成物の成形モールドへの充填が容易となり、充填時にムラが発生することもない。
さらに、温度の高い成形モールドに低温の重合性組成物を充填すると、成形モールドが収縮して、重合性組成物が漏れたり、気泡が発生するおそれがあるが、本発明では初期温度を低温に設定する必要が無いので、このような問題は発生しない。
したがって、本発明によれば、光学歪や脈理などのない厚いプラスチックレンズを、容易かつ短時間に製造することができる。
【0013】
本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記冷却工程は、前記重合性組成物のゲル化前に実施されることが好ましい。
重合性組成物のゲル化の進行中は、重合速度の局所的な上昇が発生しやすい。
これに対し、本発明では、ゲル化前に冷却工程を実施するので、重合速度の局所的な上昇を防ぎ、光学歪や脈理などの発生を確実に防止することができる。
なお、本発明におけるゲル化とは、重合性組成物の重合反応が進み、粘度が上昇して流動性が無くなった状態を示す。ゲル化の目安を粘度で示すと、例えば、10000000mPa・s(10kPa・s)以上である。
【0014】
本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記冷却工程は、前記硬化工程の開始から終了までの時間を100%とした場合、前記保持工程の開始から15%以上80%以下の時間が経過した時点において実施されることが好ましい。
このような構成によれば、保持工程で重合を進めて製造時間の短縮を図りつつ、ゲル化が進行し始める前に冷却工程を実施することができる。
【0015】
ここで、冷却工程の実施が保持工程の開始から15%未満の時点であると、保持工程が短すぎて製造時間を短縮する効果が小さくなるため好ましくない。一方、80%を超える時点であると、冷却工程以前にゲル化の進行が開始してしまい、光学歪や脈理などが発生するおそれがあるので好ましくない。
【0016】
なお、冷却工程の実施は、重合性組成物がチオエポキシ基またはエポキシ基を有する化合物を含有する場合、保持工程の開始から20%以上80%以下の時点であることがより好ましい。
また、冷却工程の実施は、重合性組成物が硫黄原子およびセレン原子のうち少なくともいずれか一方を有する無機化合物(A)と、下記式(1)で表される化合物(B)と、チオール(SH)基を1個以上有する化合物(C)と、を含有する場合、保持工程の開始から20%以上80%以下の時点であることがより好ましい。
【0017】
また、冷却工程の実施は、重合性組成物がポリイソシアネート化合物およびポリイソチオシアネート化合物の少なくともいずれかと、ポリオール化合物およびポリチオール化合物の少なくともいずれかと、を含有する場合、保持工程の開始から50%以上80%以下の時点であることがより好ましい。
また、冷却工程の実施は、重合性組成物がアクリル基、メタクリル基およびアリル基の少なくともいずれかを有する化合物を含有する場合、保持工程の開始から30%以上70%以下の時点であることがより好ましい。
【0018】
本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記冷却工程の後、冷却された前記重合性組成物の温度を維持する低温維持工程を備えることが好ましい。
このような構成によれば、低温維持工程により、ゲル化が進行している間の重合性組成物の温度を低温に保つことができるので、光学歪や脈理などの発生をより確実に防止することができる。
【0019】
本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記冷却工程の開始時と終了時との間における前記重合性組成物の温度変化は、5℃以上50℃以下であることが好ましい。
このような構成によれば、冷却工程によって重合性組成物の温度を適度に低下させることができ、製造時間の増大を抑えつつ光学歪や脈理などの発生を防止することができる。
【0020】
ここで、温度変化が5℃未満であると、重合速度の局所的な上昇を抑制する効果が小さいため好ましくない。一方、温度変化が50℃を超えると、重合速度が低下しすぎてプラスチックレンズの製造にかかる時間が増大するため好ましくない。また、温度差が大きいため、成形モールドの収縮量が増大し、狙いの中心厚、所望の度数が得られなくなるといった問題が発生する。
なお、温度変化は、10℃以上45℃以下であることがより好ましく、10℃以上40℃以下であることがさらに好ましい。
【0021】
本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記初期温度は、0℃以上50℃以下であることが好ましい。
このような構成によれば、初期温度を適度な範囲内に設定することにより、重合性組成物が扱いやすい粘度となって充填工程が容易になり、充填時のムラも発生しにくくなる。また、保持工程における重合速度が適度に維持され、製造時間短縮の効果を得ることができる。
【0022】
ここで、初期温度が0℃未満であると、重合性組成物の粘度が高くなって充填工程が困難になり、重合速度が落ちて製造時間短縮の効果が小さくなるので好ましくない。一方、初期温度が50℃を超えると、成形モールドの熱膨張による重合性組成物の漏れや気泡の発生のおそれがあり、また、保持工程における重合速度が速すぎて、局所的な重合速度の上昇が発生しやすくなるので好ましくない。
なお、初期温度は、5℃以上45℃以下であることがより好ましく、10℃以上40℃以下であることがさらに好ましい。
【0023】
本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記保持工程では、前記重合性組成物が前記初期温度に維持されることが好ましい。
このような構成によれば、重合性組成物を初期温度に維持することにより、成形モールドの膨張、収縮を防ぎ、重合性組成物の漏れなどの不具合を防止することができる。
【0024】
本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記保持工程は、前記重合性組成物を加熱する初期加熱工程を有することが好ましい。
このような構成によれば、初期加熱工程において重合性組成物の温度を上昇させるので、重合速度を上昇させることができ、プラスチックレンズの製造に要する時間を短縮することができる。
【0025】
本発明のプラスチックレンズの製造方法において、初期加熱工程では、前記重合性組成物が0.1℃/時間以上3.0℃/時間以下の昇温スピードで加熱されることが好ましい。
このような構成によれば、重合性組成物の漏れなどの不具合を発生させることなく、重合速度を上昇させてプラスチックレンズの製造に要する時間を短縮することができる。
【0026】
ここで、昇温スピードが0.1℃/時間未満であると、昇温が遅すぎて製造時間短縮の効果が小さいため好ましくない。一方、昇温スピードが3.0℃/時間を超えると、成形モールドの熱膨張により重合性組成物の漏れなどの不具合が発生するおそれがあり、また、初期加熱工程における重合速度が速すぎて、局所的な重合速度の上昇が発生しやすくなるので好ましくない。
なお、昇温スピードは、0.5℃/時間以上2.5℃/時間以下であることがより好ましく、1℃/時間以上2℃/時間以下であることがさらに好ましい。
【0027】
本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記硬化工程は、前記重合性組成物がゲル化した後に前記重合性組成物を80℃以上200℃以下に加熱する加熱工程と、前記加熱工程の後、加熱された前記重合性組成物の温度を5分間以上維持する高温維持工程と、を備えることが好ましい。
このような構成によれば、ゲル化が終了し、光学歪や脈理などの発生のおそれがなくなった後に、重合性組成物を本硬化させ、完成したプラスチックレンズを得ることができる。
【0028】
ここで、加熱工程での加熱温度が80℃未満、または高温維持工程が5分未満であると、十分に本硬化をさせることができず好ましくない。一方、加熱温度が200℃を超えると、プラスチックレンズの変色や変形、成形モールドを傷めるおそれがあり好ましくない。
なお、加熱温度は、100℃以上150℃以下であることがより好ましい。
また、加熱工程は5分以上50時間以下の時間をかけて実施することが好ましく、1時間以上25時間以下の時間をかけることがより好ましい。5分未満では、重合性組成物が完全に硬化しないため好ましくない。50時間を超えると、プラスチックレンズの変色や変形、成形モールドを傷めるおそれがあると同時に、製造時間を増大させるため好ましくない。
高温維持工程は、製造時間の観点から10時間以下であることが好ましく、30分以上5時間以下であることがより好ましい。
【0029】
本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記重合性組成物は、チオエポキシ基またはエポキシ基を有する化合物を含有することが好ましい。
また、本発明のプラスチックレンズにおいて、前記重合性組成物は、ポリイソシアネート化合物およびポリイソチオシアネート化合物の少なくともいずれかと、ポリオール化合物およびポリチオール化合物の少なくともいずれかと、を含有することが好ましい。
また、本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記重合性組成物は、アクリル基、メタクリル基およびアリル基の少なくともいずれかを有する化合物を含有することが好ましい。
また、本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記重合性組成物は、(A)硫黄原子及び/又はセレン原子を有する無機化合物と、(B)下記一般式(1)式で表される構造を1分子中に1個以上有する化合物と、(C)1分子中にSH基を1個以上有するSH基含有有機化合物と、を含有することが好ましい。
【0030】
【化1】
【0031】
式中、R1は炭素数1〜10の炭化水素、R2、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素、YはO、S、Se又はTe、l=0〜5、m=0又は1、n=1〜5である。
【0032】
これらの重合性組成物を重合硬化させると、高屈折率の樹脂が得られるので、光学歪や脈理などがなく、高屈折率で厚いプラスチックレンズを得ることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、実用的な生産性を備え、光学歪や脈理などのない厚いプラスチックレンズが得られるプラスチックレンズの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明のプラスチックレンズの製造方法について実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態では、眼鏡用のプラスチックレンズを例示するが、本発明のプラスチックレンズの用途はこれに限定されず、例えばカメラ用レンズを始め各種光学レンズに好ましく適用できる。
本実施形態で製造するプラスチックレンズは、一般的なプラスチックレンズよりも厚く、例えば、10mm以上15mm以下程度の厚さである。
【0035】
本実施形態のプラスチックレンズの製造方法は、重合性組成物を成形モールドに充填する充填工程と、所定の温度条件下に成形モールドを曝すことによって重合性組成物を硬化させる硬化工程と、を備える。
【0036】
[充填工程]
充填工程では、成形モールドに、重合性組成物を充填する。
成形モールドとしては、例えば、レンズの凸面側、凹面側にそれぞれ対応する2枚のガラス型を対向配置させ、その周面をガスケットまたは粘着テープを巻回して封止したものが利用できる。
【0037】
充填工程における重合性組成物の温度は任意に設定することができ、この温度が、後述する保持工程の基準となる初期温度とされる。
成形モールドおよび重合性組成物の温度調整には、例えば、電気炉などの装置を適宜利用することができる。
【0038】
初期温度は、0℃以上50℃以下であることが好ましい。
初期温度が0℃以上であれば、重合性組成物の粘度を低くして充填工程を容易に実施することができ、保持工程における重合速度を確保して製造時間短縮の効果を得ることができる。また、初期温度が50℃以下であれば、成形モールドの熱膨張による重合性組成物の漏れや気泡の発生を防ぐことができ、保持工程における重合速度の上昇により重合速度の不均一が発生することを防止できる。
【0039】
[硬化工程]
硬化工程は、保持工程と、冷却工程と、低温維持工程と、加熱工程と、高温維持工程と、を備える。
【0040】
[保持工程]
保持工程は、充填工程から冷却工程実施までの間、重合性組成物を初期温度以上に保つ工程である。
本実施形態では、保持工程は、重合性組成物を加熱する初期加熱工程を有する。
初期加熱工程では、重合性組成物が0.1℃/時間以上3.0℃/時間以下の昇温スピードで加熱される。
昇温スピードが0.1℃/時間未満であれば、重合速度を上昇させて製造時間を短縮する効果が得られる。昇温スピードが3.0℃/時間以下であれば、成形モールドの熱膨張による重合性組成物の漏れなどの不具合を防止することができる。
【0041】
[冷却工程]
冷却工程は、保持工程の開始から所定時間経過後に、重合性組成物を所定温度だけ冷却する工程である。
【0042】
冷却工程は、硬化工程の開始(つまり充填工程の終了)から終了までの時間を100%とした場合、保持工程の開始から15%以上80%以下の時間が経過した時点において実施されることが好ましい。
冷却工程の実施が保持工程の開始から15%以上の時点であれば、維持工程の時間がある程度確保され、製造時間短縮の効果を得ることができる。80%以下の時点であれば、重合性組成物のゲル化前に冷却工程が実施することができ、光学歪や脈理などを防止することができる。
【0043】
冷却工程の開始時と終了時との間における重合性組成物の温度変化は、5℃以上50℃以下であることが好ましい。
温度変化が5℃以上であれば、重合速度の局所的な上昇を抑制する効果が得られる。温度変化が50℃以下であれば、重合速度が低下しすぎて製造時間が過度に増大することを防ぐことができる。また、温度差による成形モールドの収縮を抑え、狙いの中心厚、所望の度数を得ることができる。
【0044】
[低温維持工程]
低温維持工程は、冷却工程の後、冷却された重合性組成物の温度を所定時間だけ維持する工程である。
低温維持工程は、重合性組成物のゲル化が充分進行し、光学歪や脈理が発生しない時間領域まで実施されることが好ましい。
【0045】
[加熱工程および高温維持工程]
加熱工程は、重合性組成物がゲル化した後に重合性組成物を80℃以上200℃以下に加熱する工程である。
高温維持工程は、加熱工程の後、加熱された重合性組成物の温度を5分間以上維持する工程である。
これらは、重合性組成物を本硬化させプラスチックレンズを完成させる工程である。
加熱工程での加熱温度が80℃以上、高温維持工程が5分以上であれば、重合性組成物を十分に本硬化させることができる。加熱温度が200℃以下であれば、高温によりプラスチックレンズや成形モールドを傷めることを防止できる。
【0046】
[後処理について]
高温維持工程までで重合性組成物の重合硬化が終了し、プラスチックレンズが完成する。
その後、プラスチックレンズを、取り出し可能な温度、例えば、80℃以下まで、さらに好ましくは60℃以下まで0.1〜50時間かけて、さらに好ましくは1〜25時間かけて徐冷する。
このプラスチックレンズは、そのままでも眼鏡レンズ等として利用することができるが、表面にプライマー層、ハードコート層、反射防止層、防汚層等の機能層を形成してもよい。これらの機能層としては、従来公知のものを適宜選択することができる。
【0047】
[重合性組成物]
以下、本実施形態で用いる重合性組成物について説明する。
重合性組成物は、熱により重合硬化する組成物であれば特に限定されないが、例えば、以下のものが利用できる。
なお、以下に列挙する組成物は重合性組成物として利用可能な組成物の一例であって、本発明の重合性組成物はこれらの組成物に何ら限定されるものではない。
【0048】
〔チオエポキシ基等を有する化合物を含有する組成物〕
チオエポキシ基またはエポキシ基を有する化合物を含有する組成物は、重合性組成物として好適に用いることができる。
チオエポキシ基を持つ化合物としては、公知のチオエポキシ基を持つ化合物を使用できる。チオエポキシ基を持つ化合物の具体例としては、既存のエポキシ化合物のエポキシ基の一部あるいは全部の酸素を硫黄で置き換えることによって得られるチオエポキシ化合物等が挙げられる。また、プラスチックレンズの高屈折率化のためには、チオエポキシ基以外にも硫黄原子を含有する化合物がより好ましい。
【0049】
具体例としては、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。
また、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)エタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)プロパン等の鎖状脂肪族の2,3−エピチオプロピルチオ化合物、及び、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン等の環状脂肪族の2,3−エピチオプロピルチオ化合物、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、ビス(2,3−エピチオプロピルジチオ)メタン、ビス(2,3−エピチオプロピルジチオ)エタン、ビス(6,7−エピチオ−3,4−ジチアヘプタン)スルフィド、1,4−ジチアン−2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルジチオメチル)、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルジチオメチル)ベンゼン等のチオエポキシ基以外にも硫黄原子を含有する化合物が挙げられる。
【0050】
エポキシ基を持つ化合物としては、公知のエポキシ基を持つ化合物を使用できる。エポキシ基を1分子中に1個以上有する化合物の具体例としては、例えば、フェノール由来のエポキシ化合物、アルコール由来のエポキシ化合物、カルボン酸由来のエポキシ化合物、アミン由来のエポキシ化合物、ジフェニルエポキシ樹脂、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、エポキシ基を有する重合体等が挙げられる。
フェノール由来のエポキシ化合物としては、レゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール化合物とエピクロロヒドリンを反応させて得られる化合物、または市販品の油化シェルエポキシ社製エピコート828等が挙げられる。
アルコール由来のエポキシ化合物としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール等のアルコールとエピクロロヒドリンを反応させて得られるエポキシ化合物等が挙げられる。
【0051】
カルボン酸由来のエポキシ化合物としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸、フタル酸等とエピクロロヒドリンを反応させて得られるエポキシ化合物が挙げられる。
アミン由来のエポキシ化合物としては、ジアミノジフェニルメタン、p−アミノメチルフェノール、キジリレンジアミン等とエピクロロヒドリンを反応させて得られるエポキシ化合物が挙げられる。
上記のエポキシ化合物を含めて、実際の例としては、エポキシ基を1分子中に1個含む化合物としては、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ基を1分子中に2個以上有する化合物としては、1,6−ヘキサンジオールジグリコールエーテル、ヒドロキノンジグリコールエーテル、テレフタル酸ジグリコールエーテル、または繰り返し単位数がn=1〜22のエチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビス(2,3−エポキシプロピル)ジスルフィドなどが挙げられる。
【0052】
重合性組成物は、このようなチオエポキシ基またはエポキシ基を有する化合物を主成分として含有する。これらの化合物の重合性組成物に対する含有量としては、50質量%以上99質量%以下であることが好ましい。
【0053】
〔ポリイソシアネート化合物等およびポリオール化合物等を含有する組成物〕
ポリイソシアネート化合物およびポリイソチオシアネート化合物の少なくともいずれかと、ポリオール化合物およびポリチオール化合物の少なくともいずれかと、を含有する組成物は、重合性組成物として好適に用いることができる。
ポリイソシアネート化合物またはポリイソチオシアネート化合物としては、公知のイソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物が使用できる。好適な例は、m-キシリレンジイソシアネートとノルボルナンジイソシアネートであり、一方あるいは双方を用いても良い。
【0054】
ポリイソシアネート化合物の具体例としては、1,2−ジイソシアナトベンゼン、1,3−ジイソシアナトベンゼン、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン、エチルフェニレンジイソシアナート、イソプロピルフェニレンジイソシアナート、ジメチルフェニレンジイソシアネート、ジエチルフェニレンジイソシアネート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアネート、トリメチルベンゼントリイソシアネート、ベンゼントリイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(2−メチルフェニルイソシアネート)、ビベンジル−4,4’−ジイソシアネート、ビス(イソシアナトフェニル)エチレン、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルイソシアネート)、3,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカンが挙げられる。
【0055】
また、p−キシリレンジイソシアネート、テトラクロロ−m−キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3,8−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1、02、6]−デカン、3,9−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1.02、6]−デカン、4,8−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1、02、6]−デカン、4,9−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1、02、6]−デカン、ダイマー酸ジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物及びそれらの化合物のアロファネート変性体、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン、1,4−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリック型ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット化反応物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト生成物、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソシアヌレート変性体等が挙げられる。
なお、イソシアネートで例示したが、イソチオシアネートであってもよい。
これらのポリイソシアネート化合物、ポリイソチオシアネート化合物を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0056】
ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、1,2−メチルグルコサイド、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール、エリスリトール、スレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、マニトール、ドルシトール、イディトール、グリコール、イノシトール、ヘキサントリオール、トリグリセロール、ジグリペロール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ〔5,2,1,0,2,6〕デカン−ジメタノール、ビシクロ〔4,3,0〕−ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカンジオール、ビシクロ〔4,3,0〕ノナンジメタノール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカン−ジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカノール、スピロ〔3,4〕オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1’−ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、マルチトール、ラクチトール等の脂肪族ポリオール、ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゼン、ベンゼントリオール、ビフェニルテトラオール、ピロガロール、(ヒドロキシナフチル)ピロガロール、トリヒドロキシフェナントレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、キシリレングリコール、テトラブロムビスフェノールA等の芳香族ポリオール、ジ−(2−ヒドロキシエチル)スルフィド、1,2−ビス−(2−ヒドロキシエチルメルカプト)エタン、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド、1,4−ジチアン−2,5−ジオール、ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)スルフィド、テトラキス(4−ヒドロキシ−2−チアブチル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(商品名ビスフェノールS)、テトラブロモビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルチオエチル)−シクロヘキサンなどの硫黄原子を含有したポリオール等が挙げられる。
【0057】
ポリチオール化合物としては、以下に示す種々の化合物、および、これらの化合物の1つまたは複数を採用したものを挙げることができる。好適な例は、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンおよび1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタンであり、一方あるいは双方を用いても良い。その他のポリチオール化合物としては、例えば以下のようなものが挙げられる。1,2,5−トリメルカプト−4−チアペンタン、3,3−ジメルカプトメチル−1,5−ジメルカプト−2,4−ジチアペンタン、3−メルカプトメチル−1,5−ジメルカプト−2,4−ジチアペンタン、3−メルカプトメチルチオ−1,7−ジメルカプト−2,6−ジチアヘプタン、3,6−ジメルカプトメチル−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、3,7−ジメルカプトメチル−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、4,6−ジメルカプトメチル−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、3−メルカプトメチル−1,6−ジメルカプト−2,5−ジチアヘキサン、3−メルカプトメチルチオ−1,5−ジメルカプト−2−チアペンタン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,4,8,11−テトラメルカプト−2,6,10−トリチアウンデカン、1,4,9,12−テトラメルカプト−2,6,7,11−テトラチアドデカン、2,3−ジチア−1,4−ブタンジチオール、2,3,5,6−テトラチア−1,7−ヘプタンジチオール、2,3,5,6,8,9−ヘキサチア−1,10−デカンジチオール、4,5−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチオラン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−ビス(メルカプトメチルチオ)メチルー1,3−ジチエタン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン等が挙げられる。
【0058】
また、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グリセリンジ(メルカプトアセテート)、1−ヒドロキシ−4−メルカプトシクロヘキサン、2,4−ジメルカプトフェノール、2−メルカプトハイドロキノン、4−メルカプトフェノール、3,4−ジメルカプト−2−プロパノール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,2−ジメルカプト−1,3−ブタンジオール、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(チオグリコレート)、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチル−トリス(メルカプトエチルチオメチル)メタン、1−ヒドロキシエチルチオ−3−メルカプトエチルチオベンゼン等が挙げられる。
【0059】
さらに、構造内にメルカプト基を2個以上有する化合物としては、メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2−メチルシクロヘキサン−2,3−ジチオール、1,1−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(2−メルカプトアセテート)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンビス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパンビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラキス(メルカプトメチル)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,3−ジ(p−メトキシフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、フェニルメタン−1,1−ジチオール、2,4−ジ(p−メルカプトフェニル)ペンタン等の芳香族ポリチオール、1,2−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン等、およびこれらの核アルキル化物等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する芳香族ポリチオール化合物、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−ビス(3−メルカプトプロピル)エタン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,3−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、4−メルカプトメチル−3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオール、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−メルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−メルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−メルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、ビス(1,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)ジスルフィド等、およびこれらのチオグリコール酸およびメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−チオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−ジチオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する脂肪族ポリチオール化合物などが挙げられる。
【0060】
重合性組成物は、これらの化合物を主成分として含有する。これらの化合物の合計含有量は、90質量%以上99.9質量%以下であることが好ましい。
【0061】
〔ラジカル重合可能な化合物を含有する組成物〕
また、ラジカル重合性基としてビニル基、アリル基、アクリル基又はメタクリル基、ビニリデン基、ビニレン基等の不飽和炭化水素基を分子中に1個以上含む、ラジカル重合可能な化合物を含有する組成物は、重合性組成物として好適に用いることができる。
中でも、アクリル基またはメタクリル基を持つ化合物、またはアリル基を持つ化合物が、レンズの光学特性、機械特性、耐熱性等の観点から好ましく用いられる。
【0062】
アクリル基またはメタクリル基を持つ化合物の具体例としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、ブトキシエチルアクリレート、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸シクロヘキシル、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、カプロラクトンアクリレート、グリシジルアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、2−エチルヘキシルメタクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、フェノキシエチルメタクリレート、メタクリル酸シクロヘキシル、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、イソボルニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、カプロラクトンメタクリレート、グリシジルメタクリレート等の単官能メタクリル酸エステル類などが挙げられる。
【0063】
さらに、これらの架橋度を高めるために、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アリルアクリレート、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラブロモビスフェノールAジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオ−ルジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、テトラブロモビスフェノールAジメタクリレート、ジシクロペンタニルジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリグリセーロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等の多官能単量体を用いることもできる。
【0064】
アリル基をもつ化合物としては、公知のアリル基を持つ化合物が使用できる。具体的には、アリルベンゼン、アリル−3−シクロヘキサンプロピオネート、1−アリル−3,4−ジメトキシベンゼン、アリルフェノキシアセテート、アリルフェニルアセテート、アリルシクロヘキサン、多価カルボン酸アリル等のアリル化合物が挙げられる。
さらに、これらの架橋度を高めるために、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の多官能単量体を用いることもできる。
【0065】
ビニル基をもつ化合物のうち、分子内に一つ以上の重合性二重結合を有する含硫黄ビニル化合物としては、例えば、2−(4−ビニルベンジルチオ)エタノールとm−キシリレンジイソシアネートをウレタン化させて得られる含硫黄ビニル化合物、2−(3−ビニルベンジルチオ)エタノールとm−キシリレンジイソシアネートをウレタン化させて得られる含硫黄ビニル化合物、p−ビス(β−メタクリロイルオキシエチルチオ)キシリレン等が挙げられる。
【0066】
重合性組成物は、これらの化合物を主成分として含有する。これらの化合物の合計含有量は、50質量%以上99.9質量%以下であることが好ましい。
【0067】
[硫黄原子またはセレン原子を有する無機化合物等を含有する組成物]
(A)硫黄原子及び/又はセレン原子を有する無機化合物と、(B)下記一般式(1)式で表される構造を1分子中に1個以上有する化合物と、(C)1分子中にSH基を1個以上有するSH基含有有機化合物と、を含有する組成物は、重合性組成物として好適に用いることができる。
【0068】
【化2】
【0069】
式中、R1は炭素数1〜10の炭化水素、R2、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素、YはO、S、Se又はTe、l=0〜5、m=0又は1、n=1〜5である。
【0070】
本発明で使用する無機化合物(A)は、硫黄原子およびセレン原子のうち少なくともいずれか一方を1個以上有する全ての無機化合物である。
無機化合物(A)の添加量は、無機化合物(A)および化合物(B)の合計を100質量%とした場合、1質量%以上50質量%以下を使用するが、1質量%以上30質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上20質量%以下である。
【0071】
硫黄原子を有する無機化合物(A)の具体例としては、硫黄、硫化水素、二硫化炭素、セレノ硫化炭素、硫化アンモニウム、二酸化硫黄、三酸化硫黄等の硫黄酸化物、チオ炭酸塩、硫酸およびその塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、次亜硫酸塩、過硫酸塩、チオシアン酸塩、チオ硫酸塩、二塩化硫黄、塩化チオニル、チオホスゲン等のハロゲン化物、硫化硼素、硫化窒素、硫化珪素、硫化リン、硫化砒素、硫化セレン、金属硫化物、金属水硫化物等が挙げられる。これらの中で好ましいものは硫黄、二硫化炭素、硫化リン、硫化セレン、金属硫化物および金属水硫化物であり、より好ましくは硫黄、二硫化炭素および硫化セレンであり、特に好ましくは硫黄である。
【0072】
セレン原子を有する無機化合物(A)は、硫黄原子を含む無機化合物(A)の具体例として挙げたセレノ硫化炭素、硫化セレンを除き、この条件を満たす無機化合物をすべて含む。
具体例としては、セレン、セレン化水素、二酸化セレン、二セレン化炭素、セレン化アンモニウム、二酸化セレン等のセレン酸化物、セレン酸およびその塩、亜セレン酸およびその塩、セレン酸水素塩、セレノ硫酸およびその塩、セレノピロ硫酸およびその塩、四臭化セレン、オキシ塩化セレン等のハロゲン化物、セレノシアン酸塩、セレン化硼素、セレン化リン、セレン化砒素、金属のセレン化物等があげられる。これらの中で好ましいものは、セレン、二セレン化炭素、セレン化リン、金属のセレン化物であり、特に好ましくはセレンおよび二セレン化炭素である。
これら硫黄原子およびセレン原子のうち少なくともいずれか一方を有する無機化合物(A)は、単独でも、2種類以上を混合して使用しても良い。
【0073】
化合物(B)は、前記式(1)で表される化合物である。
具体例としては、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)トリスルフィド、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)スルフィドなどのエピスルフィド類が挙げられる。化合物(B)は単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。中でも好ましい具体例は、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィドおよび/またはビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィドであり、最も好ましい具体例は、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィドである。
【0074】
化合物(B)の添加量は、化合物(A)および化合物(B)の合計を100質量%とした場合、25質量%以上96質量%以下を使用するが、より好ましくは50質量%以上80質量%以下である。
【0075】
化合物(C)は、チオール(SH)基を1個以上有する化合物である。
チオール(SH)基は活性水素を有しているため、上記の化合物(A)および化合物(B)に添加することで、低黄色なプラスチックレンズを得ることができる。また、低粘度な重合性組成物を得るという観点から、化合物(C)は、チオール(SH)基を1個だけ有する化合物であることがより好ましい。
また、この化合物(C)のうち、プラスチックレンズの高屈折率を維持するためには芳香環を有する化合物(C)が好ましく、プラスチックレンズの低黄色を実現するためには化合物(C)の分子量は200未満が好ましく、化合物(C)が液状または固状で臭気が弱くハンドリングしやすい面から化合物(C)の分子量は100以上が好ましい。
【0076】
化合物(C)の具体例としては、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n−プロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、i−プロピルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、t−ノニルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、アリルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、2−(2−メルカプトエチルチオ)エタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−1,3−プロパンジオール、メルカプト酢酸、メルカプトグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、メチルメルカプトグリコレート、メチルメルカプトプロピオネート、(2−メルカプトエチルチオ酢酸)メチルエステル、(2−メルカプトエチルチオプロピオン酸)メチルエステル、2−ジメチルアミノエタンチオール、2−ジエチルアミノエタンチオール、2−ジブチルアミノエタンチオール、2−(1−ピロリジニル)エタンチオール、2−(1−ピペリジニル)エタンチオール、2−(4−モルフォリニル)エタンチオール、2−(N−メチルアニリノ)エタンチオール、2−(N−エチルアニリノ)エタンチオール、2−(2−メルカプトエチルメチルアミノ)−エタンチオール、シクロペンチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、メルカプト−1,4−ジチアン、メルカプトメチル−1,4−ジチアン、メルカプトエチルチオメチル−1,4−ジチアン、チオフェノール、4−ヒドロキシチオフェノール、2−メチルチオフェノール、3−メチルチオフェノール、4−メチルチオフェノール、4−t−ブチルチオフェノール、2,4−ジメチルチオフェノール、2,5−ジメチルチオフェノール、3−メトキシチオフェノール、4−メトキシチオフェノール、5−t−ブチル−2−メチルチオフェノール、2−クロロチオフェノール、3−クロロチオフェノール、4−クロロチオフェノール、2,5−ジクロロチオフェノール、3,4−ジクロロチオフェノール、2,3−ジクロロチオフェノール、2,6−ジクロロチオフェノール、3,5−ジクロロチオフェノール、2,4−ジクロロチオフェノール、2,4,5−トリクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール、2−アミノ−4−クロロチオフェノール、2−ブロモチオフェノール、3−ブロモチオフェノール、4−ブロモチオフェノール、4−ニトロチオフェノール、2−アミノチオフェノール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノール、ベンジルメルカプタン、4−メトキシベンジルメルカプタン、4−クロロベンジルメルカプタン、2,4−ジクロロベンジルメルカプタン、4−ブロモベンジルメルカプタン、3−ビニルベンジルメルカプタン、4−ビニルベンジルメルカプタン、2−フェニルチオエタンチオール、2−ベンジルチオエタンチオール、2−メルカプトナフタレン、1−メルカプトフラン、2−メルカプトフラン、1−メルカプトメチルフラン、2−メルカプトメチルフラン、1−メルカプトチオフェン、2−メルカプトチオフェン、1−メルカプトメチルチオフェン、2−メルカプトメチルチオフェン、2−メルカプトピリジン、4−メルカプトピリジン、2−メルカプトビフェニル、4−メルカプトビフェニル、メルカプト安息香酸等が挙げられる。化合物(C)は単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。中でも好ましい具体例は、チオフェノール、2−メチルチオフェノール、3−メチルチオフェノール、4−メチルチオフェノール、ベンジルメルカプタン、4−クロロベンジルメルカプタン、1−メルカプトメチルフラン、2−メルカプトエタノール、シクロヘキシルメルカプタンであり、最も好ましい具体例は、ベンジルメルカプタンである。
【0077】
化合物(C)の添加量は、化合物(A)および化合物(B)の合計を100質量%とした場合、3質量%以上40質量%以下使用するが、より好ましくは5質量%以上20質量%以下である。
【0078】
また、上記材料を重合硬化する際には、必要に応じて重合触媒を添加することができる。重合触媒としては、アミン類、ホスフィン類、第4級アンモニウム塩類、第4級ホスホニウム塩類、アルデヒドとアミン系化合物の縮合物、カルボン酸とアンモニアとの塩、ウレタン類、チオウレタン類、グアニジン類、チオ尿素類、チアゾール類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、キサントゲン酸塩、第3級スルホニウム塩類、第2級ヨードニウム塩類、鉱酸類、ルイス酸類、有機酸類、ケイ酸類、四フッ化ホウ酸類、過酸化物、アゾ系化合物、酸性リン酸エステル類を挙げることができる。
【0079】
これら重合触媒は単独でも2種類以上を混合して使用してもかまわない。これらのうち好ましい具体例は、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、1−n−ドデシルピリジニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド等の第4級ホスホニウム塩が挙げられる。これらの中で、さらに好ましい具体例は、トリエチルベンジルアンモニウムクロライドおよび/またはテトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドであり、最も好ましい具体例は、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドである。
重合触媒の添加量は、無機化合物(A)および化合物(B)の合計100質量%に対して、0.001質量%以上5質量%以下であり、好ましくは0.002質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上3質量%以下である。
【0080】
さらに、上記材料を重合硬化する際に、ポットライフの延長や重合発熱の分散化などを目的として、必要に応じて重合調整剤を添加することができる。重合調整剤は、長期周期律表における第13〜16族のハロゲン化物を挙げることができる。
これら重合調整剤は単独でも2種類以上を混合して使用してもかまわない。これらのうち好ましいものはケイ素、ゲルマニウム、スズ、アンチモンのハロゲン化物である。より好ましくはケイ素、ゲルマニウム、スズ、アンチモンの塩化物であり、さらに好ましくはアルキル基を有するゲルマニウム、スズ、アンチモンの塩化物である。最も好ましいものの具体例はジブチルスズジクロライド、ブチルスズトリクロライド、ジオクチルスズジクロライド、オクチルスズトリクロライド、ジブチルジクロロゲルマニウム、ブチルトリクロロゲルマニウム、ジフェニルジクロロゲルマニウム、フェニルトリクロロゲルマニウム、トリフェニルアンチモンジクロライドである。
重合調整剤の添加量は、化合物(A)および化合物(B)の合計100質量%に対して、0.001質量%以上5質量%以下であり、好ましくは0.002質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上3質量%以下である。
【0081】
また、予備反応させる際に、反応を促進させる予備重合反応触媒を加えてもよい。予備重合反応触媒としては、前記した重合触媒と同じ化合物が挙げられるが、中でも窒素または燐原子を含む化合物が好ましく、窒素または燐原子を含みかつ不飽和結合を有する化合物がより好ましい。特に好ましくはイミダゾール類であり、最も好ましくは2−メルカプト−1−メチルイミダゾールである。予備重合反応触媒の添加量は、化合物(A)と化合物(B)の合計を100質量%に対して、0.001質量%以上5質量%以下であり、好ましくは0.002質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上3質量%以下である。
【0082】
上記以外にも、耐酸化性、耐候性、染色性、強度、屈折率等の各種性能改良を目的として、重合性組成物に含まれる化合物の一部もしくは全部と反応可能な化合物を添加して重合硬化することも可能である。この場合は、反応のために必要に応じて公知の重合触媒を別途加えることができる。
重合性組成物に含まれる化合物の一部もしくは全部と反応可能な化合物としては、SH基を2個以上有する化合物類、エポキシ化合物類、イソ(チオ)シアネート類、カルボン酸類、カルボン酸無水物類、フェノール類、アミン類、ビニル化合物類、アリル化合物類、アクリル化合物類、メタクリル化合物類等が挙げられる。
さらに、公知の酸化防止剤、ブルーイング剤、紫外線吸収剤、消臭剤、等の各種添加剤を加えて、得られるプラスチックレンズの実用性をより向上せしめることはもちろん可能である。
【0083】
[実施形態の作用効果]
以上のような本実施形態のプラスチックレンズによれば、例えば、次の作用効果を奏することができる。
【0084】
(1)急激な反応速度の上昇が発生する前に冷却工程を実施し、重合性組成物の温度を低下させて、重合速度の局所的な上昇を防止するので、厚いプラスチックレンズを形成する場合においても、光学歪や脈理などの不具合の発生を抑制することができる。
一方、問題の発生しにくい重合硬化の初期にあたる保持工程では、重合性組成物を比較的高い初期温度以上に保持して重合をある程度進行させるので、重合硬化の初期から低温としていた従来の製造方法と比べ、製造に要する時間を飛躍的に短縮することができる。
また、重合性組成物の粘度が適度になるように初期温度を設定できるので、成形モールドへの充填が容易となり、充填時にムラが発生することもない。成形モールドの収縮による重合性組成物の漏れ、気泡の発生をも防止することができる。
したがって、光学歪や脈理などのない厚いプラスチックレンズを、容易かつ短時間に製造することができる。
【0085】
(2)ゲル化前に冷却工程を実施するので、重合速度の局所的な上昇を防ぎ、光学歪や脈理などの発生を確実に防止することができる。
(3)冷却工程を、保持工程の開始から15%以上80%以下の時間が経過した時点において実施するので、保持工程で重合を進めて製造時間の短縮を図りつつ、ゲル化が進行し始める前に冷却工程を実施することができる。
(4)低温維持工程により、ゲル化が進行している間の重合性組成物の温度を低温に保つことができるので、光学歪や脈理などの発生をより確実に防止することができる。
【0086】
(5)冷却工程における重合性組成物の温度変化を5℃以上50℃以下としたので、重合性組成物の温度を適度に低下させることができ、製造時間の増大を抑えつつ光学歪や脈理などの発生を防止することができる。
(6)初期温度を0℃以上50℃以下としたので、重合性組成物が扱いやすい粘度となって充填工程が容易になり、充填時のムラも発生しにくくなる。また、保持工程における重合速度が適度に維持され、製造時間短縮の効果を得ることができる。
(7)初期加熱工程において重合性組成物の温度を上昇させるので、重合速度を上昇させることができ、プラスチックレンズの製造に要する時間を短縮することができる。
【0087】
(8)初期加熱工程で、重合性組成物が0.1℃/時間以上3.0℃/時間以下の昇温スピードで加熱されるので、重合性組成物の漏れなどの不具合を発生させることなく、重合速度を上昇させてプラスチックレンズの製造に要する時間を短縮することができる。
(9)加熱工程と高温維持工程により、ゲル化が終了し、光学歪や脈理などの発生のおそれがなくなった後に、重合性組成物を本硬化させ、完成したプラスチックレンズを得ることができる。
(10)上述した組成物は重合硬化させると高屈折率の樹脂が得られるので、これらを重合性組成物とした本実施形態では、光学歪や脈理などがなく、高屈折率で厚いプラスチックレンズを得ることができる。
【0088】
[変形例]
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の実施形態において、保持工程が初期過熱工程を有する構成を例示したが、これに限らない。
保持工程では、重合性組成物が初期温度に維持されることとしてもよい。
この場合、初期加熱工程による製造時間短縮の効果は得られないものの、成形モールドの膨張、収縮を防ぎ、重合性組成物の漏れなどの不具合を防止することができる。
【0089】
[実施例]
次に、本発明の実施形態に基づく実施例および比較例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
〔実施例1〕
上述の「硫黄原子またはセレン原子を有する無機化合物等を含有する組成物」を重合性組成物としてプラスチックレンズを製造した。
【0091】
(重合性組成物の調製)
まず、硫黄20質量%、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド80質量%を65℃でよく混合し均一とした。
次いで、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール0.5質量%を加え、60℃で約60分反応させた。
その後、得られた樹脂用組成物を20℃に冷却した。
一方、ベンジルメルカプタン5質量%、トリエチルベンジルアンモニウムクロライドを0.03質量%、ジn−ブチルスズジクロライド0.2質量%を加えてよく混合して均一とし、これをA溶液とした。
そして、このA溶液を前述の冷却した樹脂用組成物に加えて均一な重合性組成物とした。
次いで、得られた重合性組成物を、10torr、10分間、20℃の条件下で脱気処理した。
【0092】
(プラスチックレンズの製造)
2枚のレンズ成形用のガラスモールド(ガラス型)を用い、ガラスモールドの間を最小厚み15mmとなるように対向配置させ、その周囲にまたがるように粘着テープを巻回して成形用モールドとした。
多くのプラスチックレンズの厚みは薄いものでは1mm程度であり、厚い物は10〜15mmである。本実施例では、レンズの厚みが一番厚い条件を選択し、最小厚みを15mmとし、製造過程において光学歪が発生し易い状況でプラスチックレンズを製造した。
【0093】
この成形用モールドの中に重合性組成物を注入し、さらに、成形用モールドを昇温炉に入れ、図1に示した温度パターンにほぼ沿って、25時間かけて硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したプラスチックレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0094】
なお、図1中、AからBまでは保持工程(初期加熱工程)、BからCまでは冷却工程、CからDまでは低温維持工程、DからEまでは加熱工程、EからFまでは高温維持工程にあたる。FからGまでは、硬化工程後のプラスチックレンズの離型のための冷却である。
【0095】
〔実施例2〕
上述の「ポリイソシアネート化合物等およびポリオール化合物等を含有する組成物」を重合性組成物としてプラスチックレンズを製造した。
【0096】
(重合性組成物の調製)
この実施例2の重合性組成物は、芳香族ポリイソシアネートの1種であるm−キシリレンジイソシアネートを19.6重量部と、脂環族ポリイソシアネートの1種であるノルボルナンジイソシアネートを29.7重量部と、ポリチオールの1種である1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンを主成分とするポリチオール組成物を50.7重量部とを調合したものである。
この重合性組成物を混合攪拌して均一にした後、内部離型剤としてZelecUN(stepan社製)0.1重量部、紫外線吸収剤としてSEESORB701(シプロ化成工業)0.05重量部をさらに添加して撹拌して、完全に溶解させた。その後、重合触媒としてジブチル錫ジクロライド0.01重量部を加えて、常温で良く攪拌して溶解させた後、5mmHgに減圧して攪拌しながら30分間脱気を行った。
【0097】
(プラスチックレンズの製造)
この重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図2に示した温度パターンにほぼ沿って、28時間かけて硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したプラスチックレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0098】
〔実施例3〕
上述の「チオエポキシ基等を有する化合物を含有する組成物」を重合性組成物としてプラスチックレンズを製造した。
【0099】
(重合性組成物の調製)
この実施例3の重合性組成物は、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィドを90重量部、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンの混合物を10重量部、紫外線吸収剤としてSEESORB701(シプロ化成工業)を1.0重量部添加し、混合した後、十分に撹拌して、完全に分散又は溶解させ、さらに、その原料中に、触媒としてN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンを0.1重量部添加し、室温で十分に撹拌して均一液としたものである。さらに、この重合性組成物を5mmHgに減圧して攪拌しながら30分脱気を行った。
【0100】
(プラスチックレンズの製造)
この重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図3に示した温度パターンにほぼ沿って、21時間かけて硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0101】
〔実施例4〕
上述の「ラジカル重合可能な化合物を含有する組成物」を重合性組成物としてプラスチックレンズを製造した。
【0102】
(重合性組成物の調製)
ジエチレングリコールビスアリルカーボネート50重量部、ジアリルイソフタレート50重量部を混合、撹拌した後、ベンゾイルパーオキサイド3部を加えて良く混合した。
(プラスチックレンズの製造)
この重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図4に示した温度パターンにほぼ沿って、16.5時間かけて硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したレンズを離型し、100℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0103】
〔比較例1〕
実施例1と同じ重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図5に示した温度パターンにほぼ沿って、18時間かけて冷却工程を含まない硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0104】
〔比較例2〕
実施例2と同じ重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図6に示した温度パターンにほぼ沿って、21時間かけて冷却工程を含まない硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0105】
〔比較例3〕
実施例3と同じ重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図7に示した温度パターンにほぼ沿って、21時間かけて冷却工程を含まない硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0106】
〔比較例4〕
実施例4と同じ重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図8に示した温度パターンにほぼ沿って、14.5時間かけて冷却工程を含まない硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0107】
〔比較例5〕
実施例1と同じ重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図9に示した温度パターンにほぼ沿って、42時間かけて冷却工程を含まない硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0108】
〔比較例6〕
実施例2と同じ重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図10に示した温度パターンにほぼ沿って、51時間かけて冷却工程を含まない硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0109】
〔比較例7〕
実施例3と同じ重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図11に示した温度パターンにほぼ沿って、49時間かけて冷却工程を含まない硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0110】
〔比較例8〕
実施例4と同じ重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図12に示した温度パターンにほぼ沿って、28.5時間かけて冷却工程を含まない硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0111】
〔プラスチックレンズの評価〕
上述の実施例1〜4、比較例1〜8のプラスチックレンズの外観(光学歪、ハガレの有無)を、水銀灯、目視により検査した。
(光学歪)
高圧水銀ランプ(USHIO製、UI−100)から投射され、プラスチックレンズを透過した光を、映写幕に投影させた。この透過像を目視で観察した。歪がないものを「○」、歪がわずかにあるものを「△」、歪が多いものを「×」とした。
(重合ハガレ)
成形モールドから離型した際のプラスチックレンズの表面を目視で観察し、評価した。表面に凹凸が観察されなかったものを「○」、凹凸が観察されたものを「×」とした。
これらの評価の結果を、以下の表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
表1に示したように、本発明の冷却工程を実施する実施例1〜4の製造方法で製造したプラスチックレンズについては、光学歪、ハガレは確認されなかった。
一方、比較例1では光学歪が多く、比較例2〜4では光学歪がわずかに見られた。
従来からある一般的な厚さのプラスチックレンズであれば、比較例1〜4のような温度パターンで製造しても光学歪は発生しない。しかし、厚みのあるプラスチックレンズを製造する場合、比較例1〜4のような温度パターンでは光学歪が発生することがわかった。
比較例5〜8では、重合硬化の開始から本硬化のための加熱工程に入るまでの間を、比較例1〜4よりも低温にしている。このため、重合速度の局所的な上昇が防止され、光学歪のないプラスチックレンズが得られた。しかし、重合開始から加熱工程までの長時間にわたり重合性化合物が低温に保たれるので、実施例1〜4、比較例1〜4に比べ、プラスチックレンズの製造に長時間を有することがわかる。
これに対し、実施例1〜4の製造方法では、冷却工程を実施することにより、厚みのある場合でも光学歪を防止することができる。また、保持工程を実施することにより、製造時間の過度の増大を防ぐことができる。
【0114】
重合ハガレの発生メカニズムは、次のように考えられる。
重合性組成物が液体の状態から固体の状態へ変化する際には、体積収縮が起こる。
反応の進行が遅くまだ硬化(体積収縮)が終わっていないうちに高温を加えると、一気に硬化(体積収縮)が進行する。体積収縮にモールド形状が追従できないときに、成形モールドから硬化中の重合性組成物が剥離してしまい、これに伴って発生した凹凸がいわゆるハガレであると考えられる。
実施例1〜4において、冷却工程を実施しても、ハガレの発生は見られなかった。したがって、ハガレの有無という点でも、冷却工程を実施することがプラスチックレンズの外観の悪化にがることはないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の実施形態に係る実施例1の温度パターンを示す図。
【図2】本発明の実施形態に係る実施例2の温度パターンを示す図。
【図3】本発明の実施形態に係る実施例3の温度パターンを示す図。
【図4】本発明の実施形態に係る実施例4の温度パターンを示す図。
【図5】本発明の実施形態に係る比較例1の温度パターンを示す図。
【図6】本発明の実施形態に係る比較例2の温度パターンを示す図。
【図7】本発明の実施形態に係る比較例3の温度パターンを示す図。
【図8】本発明の実施形態に係る比較例4の温度パターンを示す図。
【図9】本発明の実施形態に係る比較例5の温度パターンを示す図。
【図10】本発明の実施形態に係る比較例6の温度パターンを示す図。
【図11】本発明の実施形態に係る比較例7の温度パターンを示す図。
【図12】本発明の実施形態に係る比較例8の温度パターンを示す図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、ガラスレンズに比べて軽量であり、成形性や加工性が良く、割れ難く安全性も高い等の様々なメリットを備えている。このため、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の分野で広く用いられている。
プラスチックレンズは、当初、屈折率が1.50の素材が広く使われていたが、近年、高屈折率のプラスチックレンズの開発が進められ、ポリチオウレタン系の素材が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
これらのプラスチックレンズは、その高屈折率によって薄い眼鏡レンズを実現することを目的として開発されたものであるが、従来の眼鏡レンズでは対応が難しかった弱視矯正用としての検討がされ始めている。このような用途では、高屈折率で厚いプラスチックレンズが要望されている。
【0004】
【特許文献1】特開平2−270859号公報
【特許文献2】特開平7−252207号公報
【特許文献3】特開2001−342252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、厚いプラスチックレンズには、以下のような問題がある。
プラスチックレンズは、通常、成形モールド内に充填された重合性組成物を重合硬化させることで形成されるが、重合性組成物の重合速度は温度によって変化するため、わずかな温度分布が局所的な重合速度の上昇、低下を発生させる。
このため、例えば、重合速度が上昇した部分は、他よりも分子量が増大し、下方へ沈降または上方へ上昇する。また、成形モールド内で重合性組成物の対流が発生する場合もある。そして、これらの形跡が残ったまま重合性組成物が硬化すると、プラスチックレンズに光学歪、あるいは脈理が発生するおそれがある。
【0006】
ここで、厚いプラスチックレンズを形成しようとする場合、重合性組成物を温度分布が生じないように一様に加熱することが困難である。また、多量の重合性組成物を重合させるので、重合性組成物自体が重合反応熱を発生させ、これが温度分布の原因となる場合もある。
このような理由から、厚いプラスチックレンズを形成しようとすると、光学歪などの不具合が発生しやすい。
【0007】
これに対し、光学歪などの発生を抑制するため、反応がなるべく均一に進むように、低温でゆっくりと、時間を費やして重合を進行させる方法が知られている。
しかしながら、この方法では、重合硬化に要する時間が長くなり、生産性の低下につながる。
また、低温の重合性組成物は粘度が高いので、成形モールドへの充填が困難になったり、充填時に発生した重合性組成物のムラがプラスチックレンズの外観不良として残ってしまうおそれがある。
【0008】
そこで本発明は、このような従来の問題点などを解決し、実用的な生産性を備え、光学歪や脈理などのない厚いプラスチックレンズが得られるプラスチックレンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプラスチックレンズの製造方法は、重合性組成物を成形モールドに充填する充填工程と、所定の温度条件下に前記成形モールドを曝すことによって前記重合性組成物を硬化させる硬化工程と、を備えたプラスチックレンズの製造方法であって、前記硬化工程は、前記充填工程の後、前記重合性組成物を前記充填工程時の初期温度以上に保つ保持工程と、前記保持工程の後、前記重合性組成物を冷却する冷却工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
一般に、重合速度は反応の初期には遅いが、ある段階で急激に速くなる。この重合速度の上昇時に、光学歪などの不具合が発生しやすい。
本発明では、急激な重合速度の上昇が発生する前に冷却工程を実施し、重合性組成物の温度を低下させて、重合速度の局所的な上昇を防止することができる。
これにより、厚いプラスチックレンズを形成する場合においても、光学歪や脈理などの不具合の発生を抑制することができる。
【0011】
一方、問題の発生しにくい重合硬化の初期にあたる保持工程では、重合性組成物を比較的高い初期温度以上に保持し、重合をある程度進行させる。
このため、本発明の製造方法では、重合の均一性を確保するために重合硬化の初期から重合性組成物を低温としていた従来の製造方法と比べ、プラスチックレンズの製造に要する時間を飛躍的に短縮することができる。
【0012】
また、充填工程に続いて保持工程を実施するので、重合性組成物を充填工程の段階から低温にしておく必要がない。よって、重合性組成物の粘度が適度になるように初期温度を設定すれば、重合性組成物の成形モールドへの充填が容易となり、充填時にムラが発生することもない。
さらに、温度の高い成形モールドに低温の重合性組成物を充填すると、成形モールドが収縮して、重合性組成物が漏れたり、気泡が発生するおそれがあるが、本発明では初期温度を低温に設定する必要が無いので、このような問題は発生しない。
したがって、本発明によれば、光学歪や脈理などのない厚いプラスチックレンズを、容易かつ短時間に製造することができる。
【0013】
本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記冷却工程は、前記重合性組成物のゲル化前に実施されることが好ましい。
重合性組成物のゲル化の進行中は、重合速度の局所的な上昇が発生しやすい。
これに対し、本発明では、ゲル化前に冷却工程を実施するので、重合速度の局所的な上昇を防ぎ、光学歪や脈理などの発生を確実に防止することができる。
なお、本発明におけるゲル化とは、重合性組成物の重合反応が進み、粘度が上昇して流動性が無くなった状態を示す。ゲル化の目安を粘度で示すと、例えば、10000000mPa・s(10kPa・s)以上である。
【0014】
本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記冷却工程は、前記硬化工程の開始から終了までの時間を100%とした場合、前記保持工程の開始から15%以上80%以下の時間が経過した時点において実施されることが好ましい。
このような構成によれば、保持工程で重合を進めて製造時間の短縮を図りつつ、ゲル化が進行し始める前に冷却工程を実施することができる。
【0015】
ここで、冷却工程の実施が保持工程の開始から15%未満の時点であると、保持工程が短すぎて製造時間を短縮する効果が小さくなるため好ましくない。一方、80%を超える時点であると、冷却工程以前にゲル化の進行が開始してしまい、光学歪や脈理などが発生するおそれがあるので好ましくない。
【0016】
なお、冷却工程の実施は、重合性組成物がチオエポキシ基またはエポキシ基を有する化合物を含有する場合、保持工程の開始から20%以上80%以下の時点であることがより好ましい。
また、冷却工程の実施は、重合性組成物が硫黄原子およびセレン原子のうち少なくともいずれか一方を有する無機化合物(A)と、下記式(1)で表される化合物(B)と、チオール(SH)基を1個以上有する化合物(C)と、を含有する場合、保持工程の開始から20%以上80%以下の時点であることがより好ましい。
【0017】
また、冷却工程の実施は、重合性組成物がポリイソシアネート化合物およびポリイソチオシアネート化合物の少なくともいずれかと、ポリオール化合物およびポリチオール化合物の少なくともいずれかと、を含有する場合、保持工程の開始から50%以上80%以下の時点であることがより好ましい。
また、冷却工程の実施は、重合性組成物がアクリル基、メタクリル基およびアリル基の少なくともいずれかを有する化合物を含有する場合、保持工程の開始から30%以上70%以下の時点であることがより好ましい。
【0018】
本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記冷却工程の後、冷却された前記重合性組成物の温度を維持する低温維持工程を備えることが好ましい。
このような構成によれば、低温維持工程により、ゲル化が進行している間の重合性組成物の温度を低温に保つことができるので、光学歪や脈理などの発生をより確実に防止することができる。
【0019】
本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記冷却工程の開始時と終了時との間における前記重合性組成物の温度変化は、5℃以上50℃以下であることが好ましい。
このような構成によれば、冷却工程によって重合性組成物の温度を適度に低下させることができ、製造時間の増大を抑えつつ光学歪や脈理などの発生を防止することができる。
【0020】
ここで、温度変化が5℃未満であると、重合速度の局所的な上昇を抑制する効果が小さいため好ましくない。一方、温度変化が50℃を超えると、重合速度が低下しすぎてプラスチックレンズの製造にかかる時間が増大するため好ましくない。また、温度差が大きいため、成形モールドの収縮量が増大し、狙いの中心厚、所望の度数が得られなくなるといった問題が発生する。
なお、温度変化は、10℃以上45℃以下であることがより好ましく、10℃以上40℃以下であることがさらに好ましい。
【0021】
本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記初期温度は、0℃以上50℃以下であることが好ましい。
このような構成によれば、初期温度を適度な範囲内に設定することにより、重合性組成物が扱いやすい粘度となって充填工程が容易になり、充填時のムラも発生しにくくなる。また、保持工程における重合速度が適度に維持され、製造時間短縮の効果を得ることができる。
【0022】
ここで、初期温度が0℃未満であると、重合性組成物の粘度が高くなって充填工程が困難になり、重合速度が落ちて製造時間短縮の効果が小さくなるので好ましくない。一方、初期温度が50℃を超えると、成形モールドの熱膨張による重合性組成物の漏れや気泡の発生のおそれがあり、また、保持工程における重合速度が速すぎて、局所的な重合速度の上昇が発生しやすくなるので好ましくない。
なお、初期温度は、5℃以上45℃以下であることがより好ましく、10℃以上40℃以下であることがさらに好ましい。
【0023】
本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記保持工程では、前記重合性組成物が前記初期温度に維持されることが好ましい。
このような構成によれば、重合性組成物を初期温度に維持することにより、成形モールドの膨張、収縮を防ぎ、重合性組成物の漏れなどの不具合を防止することができる。
【0024】
本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記保持工程は、前記重合性組成物を加熱する初期加熱工程を有することが好ましい。
このような構成によれば、初期加熱工程において重合性組成物の温度を上昇させるので、重合速度を上昇させることができ、プラスチックレンズの製造に要する時間を短縮することができる。
【0025】
本発明のプラスチックレンズの製造方法において、初期加熱工程では、前記重合性組成物が0.1℃/時間以上3.0℃/時間以下の昇温スピードで加熱されることが好ましい。
このような構成によれば、重合性組成物の漏れなどの不具合を発生させることなく、重合速度を上昇させてプラスチックレンズの製造に要する時間を短縮することができる。
【0026】
ここで、昇温スピードが0.1℃/時間未満であると、昇温が遅すぎて製造時間短縮の効果が小さいため好ましくない。一方、昇温スピードが3.0℃/時間を超えると、成形モールドの熱膨張により重合性組成物の漏れなどの不具合が発生するおそれがあり、また、初期加熱工程における重合速度が速すぎて、局所的な重合速度の上昇が発生しやすくなるので好ましくない。
なお、昇温スピードは、0.5℃/時間以上2.5℃/時間以下であることがより好ましく、1℃/時間以上2℃/時間以下であることがさらに好ましい。
【0027】
本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記硬化工程は、前記重合性組成物がゲル化した後に前記重合性組成物を80℃以上200℃以下に加熱する加熱工程と、前記加熱工程の後、加熱された前記重合性組成物の温度を5分間以上維持する高温維持工程と、を備えることが好ましい。
このような構成によれば、ゲル化が終了し、光学歪や脈理などの発生のおそれがなくなった後に、重合性組成物を本硬化させ、完成したプラスチックレンズを得ることができる。
【0028】
ここで、加熱工程での加熱温度が80℃未満、または高温維持工程が5分未満であると、十分に本硬化をさせることができず好ましくない。一方、加熱温度が200℃を超えると、プラスチックレンズの変色や変形、成形モールドを傷めるおそれがあり好ましくない。
なお、加熱温度は、100℃以上150℃以下であることがより好ましい。
また、加熱工程は5分以上50時間以下の時間をかけて実施することが好ましく、1時間以上25時間以下の時間をかけることがより好ましい。5分未満では、重合性組成物が完全に硬化しないため好ましくない。50時間を超えると、プラスチックレンズの変色や変形、成形モールドを傷めるおそれがあると同時に、製造時間を増大させるため好ましくない。
高温維持工程は、製造時間の観点から10時間以下であることが好ましく、30分以上5時間以下であることがより好ましい。
【0029】
本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記重合性組成物は、チオエポキシ基またはエポキシ基を有する化合物を含有することが好ましい。
また、本発明のプラスチックレンズにおいて、前記重合性組成物は、ポリイソシアネート化合物およびポリイソチオシアネート化合物の少なくともいずれかと、ポリオール化合物およびポリチオール化合物の少なくともいずれかと、を含有することが好ましい。
また、本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記重合性組成物は、アクリル基、メタクリル基およびアリル基の少なくともいずれかを有する化合物を含有することが好ましい。
また、本発明のプラスチックレンズの製造方法において、前記重合性組成物は、(A)硫黄原子及び/又はセレン原子を有する無機化合物と、(B)下記一般式(1)式で表される構造を1分子中に1個以上有する化合物と、(C)1分子中にSH基を1個以上有するSH基含有有機化合物と、を含有することが好ましい。
【0030】
【化1】
【0031】
式中、R1は炭素数1〜10の炭化水素、R2、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素、YはO、S、Se又はTe、l=0〜5、m=0又は1、n=1〜5である。
【0032】
これらの重合性組成物を重合硬化させると、高屈折率の樹脂が得られるので、光学歪や脈理などがなく、高屈折率で厚いプラスチックレンズを得ることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、実用的な生産性を備え、光学歪や脈理などのない厚いプラスチックレンズが得られるプラスチックレンズの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明のプラスチックレンズの製造方法について実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態では、眼鏡用のプラスチックレンズを例示するが、本発明のプラスチックレンズの用途はこれに限定されず、例えばカメラ用レンズを始め各種光学レンズに好ましく適用できる。
本実施形態で製造するプラスチックレンズは、一般的なプラスチックレンズよりも厚く、例えば、10mm以上15mm以下程度の厚さである。
【0035】
本実施形態のプラスチックレンズの製造方法は、重合性組成物を成形モールドに充填する充填工程と、所定の温度条件下に成形モールドを曝すことによって重合性組成物を硬化させる硬化工程と、を備える。
【0036】
[充填工程]
充填工程では、成形モールドに、重合性組成物を充填する。
成形モールドとしては、例えば、レンズの凸面側、凹面側にそれぞれ対応する2枚のガラス型を対向配置させ、その周面をガスケットまたは粘着テープを巻回して封止したものが利用できる。
【0037】
充填工程における重合性組成物の温度は任意に設定することができ、この温度が、後述する保持工程の基準となる初期温度とされる。
成形モールドおよび重合性組成物の温度調整には、例えば、電気炉などの装置を適宜利用することができる。
【0038】
初期温度は、0℃以上50℃以下であることが好ましい。
初期温度が0℃以上であれば、重合性組成物の粘度を低くして充填工程を容易に実施することができ、保持工程における重合速度を確保して製造時間短縮の効果を得ることができる。また、初期温度が50℃以下であれば、成形モールドの熱膨張による重合性組成物の漏れや気泡の発生を防ぐことができ、保持工程における重合速度の上昇により重合速度の不均一が発生することを防止できる。
【0039】
[硬化工程]
硬化工程は、保持工程と、冷却工程と、低温維持工程と、加熱工程と、高温維持工程と、を備える。
【0040】
[保持工程]
保持工程は、充填工程から冷却工程実施までの間、重合性組成物を初期温度以上に保つ工程である。
本実施形態では、保持工程は、重合性組成物を加熱する初期加熱工程を有する。
初期加熱工程では、重合性組成物が0.1℃/時間以上3.0℃/時間以下の昇温スピードで加熱される。
昇温スピードが0.1℃/時間未満であれば、重合速度を上昇させて製造時間を短縮する効果が得られる。昇温スピードが3.0℃/時間以下であれば、成形モールドの熱膨張による重合性組成物の漏れなどの不具合を防止することができる。
【0041】
[冷却工程]
冷却工程は、保持工程の開始から所定時間経過後に、重合性組成物を所定温度だけ冷却する工程である。
【0042】
冷却工程は、硬化工程の開始(つまり充填工程の終了)から終了までの時間を100%とした場合、保持工程の開始から15%以上80%以下の時間が経過した時点において実施されることが好ましい。
冷却工程の実施が保持工程の開始から15%以上の時点であれば、維持工程の時間がある程度確保され、製造時間短縮の効果を得ることができる。80%以下の時点であれば、重合性組成物のゲル化前に冷却工程が実施することができ、光学歪や脈理などを防止することができる。
【0043】
冷却工程の開始時と終了時との間における重合性組成物の温度変化は、5℃以上50℃以下であることが好ましい。
温度変化が5℃以上であれば、重合速度の局所的な上昇を抑制する効果が得られる。温度変化が50℃以下であれば、重合速度が低下しすぎて製造時間が過度に増大することを防ぐことができる。また、温度差による成形モールドの収縮を抑え、狙いの中心厚、所望の度数を得ることができる。
【0044】
[低温維持工程]
低温維持工程は、冷却工程の後、冷却された重合性組成物の温度を所定時間だけ維持する工程である。
低温維持工程は、重合性組成物のゲル化が充分進行し、光学歪や脈理が発生しない時間領域まで実施されることが好ましい。
【0045】
[加熱工程および高温維持工程]
加熱工程は、重合性組成物がゲル化した後に重合性組成物を80℃以上200℃以下に加熱する工程である。
高温維持工程は、加熱工程の後、加熱された重合性組成物の温度を5分間以上維持する工程である。
これらは、重合性組成物を本硬化させプラスチックレンズを完成させる工程である。
加熱工程での加熱温度が80℃以上、高温維持工程が5分以上であれば、重合性組成物を十分に本硬化させることができる。加熱温度が200℃以下であれば、高温によりプラスチックレンズや成形モールドを傷めることを防止できる。
【0046】
[後処理について]
高温維持工程までで重合性組成物の重合硬化が終了し、プラスチックレンズが完成する。
その後、プラスチックレンズを、取り出し可能な温度、例えば、80℃以下まで、さらに好ましくは60℃以下まで0.1〜50時間かけて、さらに好ましくは1〜25時間かけて徐冷する。
このプラスチックレンズは、そのままでも眼鏡レンズ等として利用することができるが、表面にプライマー層、ハードコート層、反射防止層、防汚層等の機能層を形成してもよい。これらの機能層としては、従来公知のものを適宜選択することができる。
【0047】
[重合性組成物]
以下、本実施形態で用いる重合性組成物について説明する。
重合性組成物は、熱により重合硬化する組成物であれば特に限定されないが、例えば、以下のものが利用できる。
なお、以下に列挙する組成物は重合性組成物として利用可能な組成物の一例であって、本発明の重合性組成物はこれらの組成物に何ら限定されるものではない。
【0048】
〔チオエポキシ基等を有する化合物を含有する組成物〕
チオエポキシ基またはエポキシ基を有する化合物を含有する組成物は、重合性組成物として好適に用いることができる。
チオエポキシ基を持つ化合物としては、公知のチオエポキシ基を持つ化合物を使用できる。チオエポキシ基を持つ化合物の具体例としては、既存のエポキシ化合物のエポキシ基の一部あるいは全部の酸素を硫黄で置き換えることによって得られるチオエポキシ化合物等が挙げられる。また、プラスチックレンズの高屈折率化のためには、チオエポキシ基以外にも硫黄原子を含有する化合物がより好ましい。
【0049】
具体例としては、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。
また、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)エタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)プロパン等の鎖状脂肪族の2,3−エピチオプロピルチオ化合物、及び、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン等の環状脂肪族の2,3−エピチオプロピルチオ化合物、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、ビス(2,3−エピチオプロピルジチオ)メタン、ビス(2,3−エピチオプロピルジチオ)エタン、ビス(6,7−エピチオ−3,4−ジチアヘプタン)スルフィド、1,4−ジチアン−2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルジチオメチル)、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルジチオメチル)ベンゼン等のチオエポキシ基以外にも硫黄原子を含有する化合物が挙げられる。
【0050】
エポキシ基を持つ化合物としては、公知のエポキシ基を持つ化合物を使用できる。エポキシ基を1分子中に1個以上有する化合物の具体例としては、例えば、フェノール由来のエポキシ化合物、アルコール由来のエポキシ化合物、カルボン酸由来のエポキシ化合物、アミン由来のエポキシ化合物、ジフェニルエポキシ樹脂、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、エポキシ基を有する重合体等が挙げられる。
フェノール由来のエポキシ化合物としては、レゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール化合物とエピクロロヒドリンを反応させて得られる化合物、または市販品の油化シェルエポキシ社製エピコート828等が挙げられる。
アルコール由来のエポキシ化合物としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール等のアルコールとエピクロロヒドリンを反応させて得られるエポキシ化合物等が挙げられる。
【0051】
カルボン酸由来のエポキシ化合物としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸、フタル酸等とエピクロロヒドリンを反応させて得られるエポキシ化合物が挙げられる。
アミン由来のエポキシ化合物としては、ジアミノジフェニルメタン、p−アミノメチルフェノール、キジリレンジアミン等とエピクロロヒドリンを反応させて得られるエポキシ化合物が挙げられる。
上記のエポキシ化合物を含めて、実際の例としては、エポキシ基を1分子中に1個含む化合物としては、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ基を1分子中に2個以上有する化合物としては、1,6−ヘキサンジオールジグリコールエーテル、ヒドロキノンジグリコールエーテル、テレフタル酸ジグリコールエーテル、または繰り返し単位数がn=1〜22のエチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビス(2,3−エポキシプロピル)ジスルフィドなどが挙げられる。
【0052】
重合性組成物は、このようなチオエポキシ基またはエポキシ基を有する化合物を主成分として含有する。これらの化合物の重合性組成物に対する含有量としては、50質量%以上99質量%以下であることが好ましい。
【0053】
〔ポリイソシアネート化合物等およびポリオール化合物等を含有する組成物〕
ポリイソシアネート化合物およびポリイソチオシアネート化合物の少なくともいずれかと、ポリオール化合物およびポリチオール化合物の少なくともいずれかと、を含有する組成物は、重合性組成物として好適に用いることができる。
ポリイソシアネート化合物またはポリイソチオシアネート化合物としては、公知のイソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物が使用できる。好適な例は、m-キシリレンジイソシアネートとノルボルナンジイソシアネートであり、一方あるいは双方を用いても良い。
【0054】
ポリイソシアネート化合物の具体例としては、1,2−ジイソシアナトベンゼン、1,3−ジイソシアナトベンゼン、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン、エチルフェニレンジイソシアナート、イソプロピルフェニレンジイソシアナート、ジメチルフェニレンジイソシアネート、ジエチルフェニレンジイソシアネート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアネート、トリメチルベンゼントリイソシアネート、ベンゼントリイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(2−メチルフェニルイソシアネート)、ビベンジル−4,4’−ジイソシアネート、ビス(イソシアナトフェニル)エチレン、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルイソシアネート)、3,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカンが挙げられる。
【0055】
また、p−キシリレンジイソシアネート、テトラクロロ−m−キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3,8−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1、02、6]−デカン、3,9−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1.02、6]−デカン、4,8−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1、02、6]−デカン、4,9−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1、02、6]−デカン、ダイマー酸ジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物及びそれらの化合物のアロファネート変性体、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン、1,4−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリック型ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット化反応物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト生成物、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソシアヌレート変性体等が挙げられる。
なお、イソシアネートで例示したが、イソチオシアネートであってもよい。
これらのポリイソシアネート化合物、ポリイソチオシアネート化合物を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0056】
ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、1,2−メチルグルコサイド、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール、エリスリトール、スレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、マニトール、ドルシトール、イディトール、グリコール、イノシトール、ヘキサントリオール、トリグリセロール、ジグリペロール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ〔5,2,1,0,2,6〕デカン−ジメタノール、ビシクロ〔4,3,0〕−ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカンジオール、ビシクロ〔4,3,0〕ノナンジメタノール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカン−ジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカノール、スピロ〔3,4〕オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1’−ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、マルチトール、ラクチトール等の脂肪族ポリオール、ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゼン、ベンゼントリオール、ビフェニルテトラオール、ピロガロール、(ヒドロキシナフチル)ピロガロール、トリヒドロキシフェナントレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、キシリレングリコール、テトラブロムビスフェノールA等の芳香族ポリオール、ジ−(2−ヒドロキシエチル)スルフィド、1,2−ビス−(2−ヒドロキシエチルメルカプト)エタン、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド、1,4−ジチアン−2,5−ジオール、ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)スルフィド、テトラキス(4−ヒドロキシ−2−チアブチル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(商品名ビスフェノールS)、テトラブロモビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルチオエチル)−シクロヘキサンなどの硫黄原子を含有したポリオール等が挙げられる。
【0057】
ポリチオール化合物としては、以下に示す種々の化合物、および、これらの化合物の1つまたは複数を採用したものを挙げることができる。好適な例は、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンおよび1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタンであり、一方あるいは双方を用いても良い。その他のポリチオール化合物としては、例えば以下のようなものが挙げられる。1,2,5−トリメルカプト−4−チアペンタン、3,3−ジメルカプトメチル−1,5−ジメルカプト−2,4−ジチアペンタン、3−メルカプトメチル−1,5−ジメルカプト−2,4−ジチアペンタン、3−メルカプトメチルチオ−1,7−ジメルカプト−2,6−ジチアヘプタン、3,6−ジメルカプトメチル−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、3,7−ジメルカプトメチル−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、4,6−ジメルカプトメチル−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、3−メルカプトメチル−1,6−ジメルカプト−2,5−ジチアヘキサン、3−メルカプトメチルチオ−1,5−ジメルカプト−2−チアペンタン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,4,8,11−テトラメルカプト−2,6,10−トリチアウンデカン、1,4,9,12−テトラメルカプト−2,6,7,11−テトラチアドデカン、2,3−ジチア−1,4−ブタンジチオール、2,3,5,6−テトラチア−1,7−ヘプタンジチオール、2,3,5,6,8,9−ヘキサチア−1,10−デカンジチオール、4,5−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチオラン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−ビス(メルカプトメチルチオ)メチルー1,3−ジチエタン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン等が挙げられる。
【0058】
また、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グリセリンジ(メルカプトアセテート)、1−ヒドロキシ−4−メルカプトシクロヘキサン、2,4−ジメルカプトフェノール、2−メルカプトハイドロキノン、4−メルカプトフェノール、3,4−ジメルカプト−2−プロパノール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,2−ジメルカプト−1,3−ブタンジオール、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(チオグリコレート)、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチル−トリス(メルカプトエチルチオメチル)メタン、1−ヒドロキシエチルチオ−3−メルカプトエチルチオベンゼン等が挙げられる。
【0059】
さらに、構造内にメルカプト基を2個以上有する化合物としては、メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2−メチルシクロヘキサン−2,3−ジチオール、1,1−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(2−メルカプトアセテート)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンビス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパンビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラキス(メルカプトメチル)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,3−ジ(p−メトキシフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、フェニルメタン−1,1−ジチオール、2,4−ジ(p−メルカプトフェニル)ペンタン等の芳香族ポリチオール、1,2−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン等、およびこれらの核アルキル化物等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する芳香族ポリチオール化合物、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−ビス(3−メルカプトプロピル)エタン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,3−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、4−メルカプトメチル−3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオール、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−メルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−メルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−メルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、ビス(1,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)ジスルフィド等、およびこれらのチオグリコール酸およびメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−チオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−ジチオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する脂肪族ポリチオール化合物などが挙げられる。
【0060】
重合性組成物は、これらの化合物を主成分として含有する。これらの化合物の合計含有量は、90質量%以上99.9質量%以下であることが好ましい。
【0061】
〔ラジカル重合可能な化合物を含有する組成物〕
また、ラジカル重合性基としてビニル基、アリル基、アクリル基又はメタクリル基、ビニリデン基、ビニレン基等の不飽和炭化水素基を分子中に1個以上含む、ラジカル重合可能な化合物を含有する組成物は、重合性組成物として好適に用いることができる。
中でも、アクリル基またはメタクリル基を持つ化合物、またはアリル基を持つ化合物が、レンズの光学特性、機械特性、耐熱性等の観点から好ましく用いられる。
【0062】
アクリル基またはメタクリル基を持つ化合物の具体例としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、ブトキシエチルアクリレート、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸シクロヘキシル、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、カプロラクトンアクリレート、グリシジルアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、2−エチルヘキシルメタクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、フェノキシエチルメタクリレート、メタクリル酸シクロヘキシル、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、イソボルニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、カプロラクトンメタクリレート、グリシジルメタクリレート等の単官能メタクリル酸エステル類などが挙げられる。
【0063】
さらに、これらの架橋度を高めるために、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アリルアクリレート、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラブロモビスフェノールAジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオ−ルジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、テトラブロモビスフェノールAジメタクリレート、ジシクロペンタニルジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリグリセーロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等の多官能単量体を用いることもできる。
【0064】
アリル基をもつ化合物としては、公知のアリル基を持つ化合物が使用できる。具体的には、アリルベンゼン、アリル−3−シクロヘキサンプロピオネート、1−アリル−3,4−ジメトキシベンゼン、アリルフェノキシアセテート、アリルフェニルアセテート、アリルシクロヘキサン、多価カルボン酸アリル等のアリル化合物が挙げられる。
さらに、これらの架橋度を高めるために、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の多官能単量体を用いることもできる。
【0065】
ビニル基をもつ化合物のうち、分子内に一つ以上の重合性二重結合を有する含硫黄ビニル化合物としては、例えば、2−(4−ビニルベンジルチオ)エタノールとm−キシリレンジイソシアネートをウレタン化させて得られる含硫黄ビニル化合物、2−(3−ビニルベンジルチオ)エタノールとm−キシリレンジイソシアネートをウレタン化させて得られる含硫黄ビニル化合物、p−ビス(β−メタクリロイルオキシエチルチオ)キシリレン等が挙げられる。
【0066】
重合性組成物は、これらの化合物を主成分として含有する。これらの化合物の合計含有量は、50質量%以上99.9質量%以下であることが好ましい。
【0067】
[硫黄原子またはセレン原子を有する無機化合物等を含有する組成物]
(A)硫黄原子及び/又はセレン原子を有する無機化合物と、(B)下記一般式(1)式で表される構造を1分子中に1個以上有する化合物と、(C)1分子中にSH基を1個以上有するSH基含有有機化合物と、を含有する組成物は、重合性組成物として好適に用いることができる。
【0068】
【化2】
【0069】
式中、R1は炭素数1〜10の炭化水素、R2、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素、YはO、S、Se又はTe、l=0〜5、m=0又は1、n=1〜5である。
【0070】
本発明で使用する無機化合物(A)は、硫黄原子およびセレン原子のうち少なくともいずれか一方を1個以上有する全ての無機化合物である。
無機化合物(A)の添加量は、無機化合物(A)および化合物(B)の合計を100質量%とした場合、1質量%以上50質量%以下を使用するが、1質量%以上30質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上20質量%以下である。
【0071】
硫黄原子を有する無機化合物(A)の具体例としては、硫黄、硫化水素、二硫化炭素、セレノ硫化炭素、硫化アンモニウム、二酸化硫黄、三酸化硫黄等の硫黄酸化物、チオ炭酸塩、硫酸およびその塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、次亜硫酸塩、過硫酸塩、チオシアン酸塩、チオ硫酸塩、二塩化硫黄、塩化チオニル、チオホスゲン等のハロゲン化物、硫化硼素、硫化窒素、硫化珪素、硫化リン、硫化砒素、硫化セレン、金属硫化物、金属水硫化物等が挙げられる。これらの中で好ましいものは硫黄、二硫化炭素、硫化リン、硫化セレン、金属硫化物および金属水硫化物であり、より好ましくは硫黄、二硫化炭素および硫化セレンであり、特に好ましくは硫黄である。
【0072】
セレン原子を有する無機化合物(A)は、硫黄原子を含む無機化合物(A)の具体例として挙げたセレノ硫化炭素、硫化セレンを除き、この条件を満たす無機化合物をすべて含む。
具体例としては、セレン、セレン化水素、二酸化セレン、二セレン化炭素、セレン化アンモニウム、二酸化セレン等のセレン酸化物、セレン酸およびその塩、亜セレン酸およびその塩、セレン酸水素塩、セレノ硫酸およびその塩、セレノピロ硫酸およびその塩、四臭化セレン、オキシ塩化セレン等のハロゲン化物、セレノシアン酸塩、セレン化硼素、セレン化リン、セレン化砒素、金属のセレン化物等があげられる。これらの中で好ましいものは、セレン、二セレン化炭素、セレン化リン、金属のセレン化物であり、特に好ましくはセレンおよび二セレン化炭素である。
これら硫黄原子およびセレン原子のうち少なくともいずれか一方を有する無機化合物(A)は、単独でも、2種類以上を混合して使用しても良い。
【0073】
化合物(B)は、前記式(1)で表される化合物である。
具体例としては、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)トリスルフィド、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)スルフィドなどのエピスルフィド類が挙げられる。化合物(B)は単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。中でも好ましい具体例は、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィドおよび/またはビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィドであり、最も好ましい具体例は、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィドである。
【0074】
化合物(B)の添加量は、化合物(A)および化合物(B)の合計を100質量%とした場合、25質量%以上96質量%以下を使用するが、より好ましくは50質量%以上80質量%以下である。
【0075】
化合物(C)は、チオール(SH)基を1個以上有する化合物である。
チオール(SH)基は活性水素を有しているため、上記の化合物(A)および化合物(B)に添加することで、低黄色なプラスチックレンズを得ることができる。また、低粘度な重合性組成物を得るという観点から、化合物(C)は、チオール(SH)基を1個だけ有する化合物であることがより好ましい。
また、この化合物(C)のうち、プラスチックレンズの高屈折率を維持するためには芳香環を有する化合物(C)が好ましく、プラスチックレンズの低黄色を実現するためには化合物(C)の分子量は200未満が好ましく、化合物(C)が液状または固状で臭気が弱くハンドリングしやすい面から化合物(C)の分子量は100以上が好ましい。
【0076】
化合物(C)の具体例としては、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n−プロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、i−プロピルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、t−ノニルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、アリルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、2−(2−メルカプトエチルチオ)エタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−1,3−プロパンジオール、メルカプト酢酸、メルカプトグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、メチルメルカプトグリコレート、メチルメルカプトプロピオネート、(2−メルカプトエチルチオ酢酸)メチルエステル、(2−メルカプトエチルチオプロピオン酸)メチルエステル、2−ジメチルアミノエタンチオール、2−ジエチルアミノエタンチオール、2−ジブチルアミノエタンチオール、2−(1−ピロリジニル)エタンチオール、2−(1−ピペリジニル)エタンチオール、2−(4−モルフォリニル)エタンチオール、2−(N−メチルアニリノ)エタンチオール、2−(N−エチルアニリノ)エタンチオール、2−(2−メルカプトエチルメチルアミノ)−エタンチオール、シクロペンチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、メルカプト−1,4−ジチアン、メルカプトメチル−1,4−ジチアン、メルカプトエチルチオメチル−1,4−ジチアン、チオフェノール、4−ヒドロキシチオフェノール、2−メチルチオフェノール、3−メチルチオフェノール、4−メチルチオフェノール、4−t−ブチルチオフェノール、2,4−ジメチルチオフェノール、2,5−ジメチルチオフェノール、3−メトキシチオフェノール、4−メトキシチオフェノール、5−t−ブチル−2−メチルチオフェノール、2−クロロチオフェノール、3−クロロチオフェノール、4−クロロチオフェノール、2,5−ジクロロチオフェノール、3,4−ジクロロチオフェノール、2,3−ジクロロチオフェノール、2,6−ジクロロチオフェノール、3,5−ジクロロチオフェノール、2,4−ジクロロチオフェノール、2,4,5−トリクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール、2−アミノ−4−クロロチオフェノール、2−ブロモチオフェノール、3−ブロモチオフェノール、4−ブロモチオフェノール、4−ニトロチオフェノール、2−アミノチオフェノール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノール、ベンジルメルカプタン、4−メトキシベンジルメルカプタン、4−クロロベンジルメルカプタン、2,4−ジクロロベンジルメルカプタン、4−ブロモベンジルメルカプタン、3−ビニルベンジルメルカプタン、4−ビニルベンジルメルカプタン、2−フェニルチオエタンチオール、2−ベンジルチオエタンチオール、2−メルカプトナフタレン、1−メルカプトフラン、2−メルカプトフラン、1−メルカプトメチルフラン、2−メルカプトメチルフラン、1−メルカプトチオフェン、2−メルカプトチオフェン、1−メルカプトメチルチオフェン、2−メルカプトメチルチオフェン、2−メルカプトピリジン、4−メルカプトピリジン、2−メルカプトビフェニル、4−メルカプトビフェニル、メルカプト安息香酸等が挙げられる。化合物(C)は単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。中でも好ましい具体例は、チオフェノール、2−メチルチオフェノール、3−メチルチオフェノール、4−メチルチオフェノール、ベンジルメルカプタン、4−クロロベンジルメルカプタン、1−メルカプトメチルフラン、2−メルカプトエタノール、シクロヘキシルメルカプタンであり、最も好ましい具体例は、ベンジルメルカプタンである。
【0077】
化合物(C)の添加量は、化合物(A)および化合物(B)の合計を100質量%とした場合、3質量%以上40質量%以下使用するが、より好ましくは5質量%以上20質量%以下である。
【0078】
また、上記材料を重合硬化する際には、必要に応じて重合触媒を添加することができる。重合触媒としては、アミン類、ホスフィン類、第4級アンモニウム塩類、第4級ホスホニウム塩類、アルデヒドとアミン系化合物の縮合物、カルボン酸とアンモニアとの塩、ウレタン類、チオウレタン類、グアニジン類、チオ尿素類、チアゾール類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、キサントゲン酸塩、第3級スルホニウム塩類、第2級ヨードニウム塩類、鉱酸類、ルイス酸類、有機酸類、ケイ酸類、四フッ化ホウ酸類、過酸化物、アゾ系化合物、酸性リン酸エステル類を挙げることができる。
【0079】
これら重合触媒は単独でも2種類以上を混合して使用してもかまわない。これらのうち好ましい具体例は、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、1−n−ドデシルピリジニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド等の第4級ホスホニウム塩が挙げられる。これらの中で、さらに好ましい具体例は、トリエチルベンジルアンモニウムクロライドおよび/またはテトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドであり、最も好ましい具体例は、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドである。
重合触媒の添加量は、無機化合物(A)および化合物(B)の合計100質量%に対して、0.001質量%以上5質量%以下であり、好ましくは0.002質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上3質量%以下である。
【0080】
さらに、上記材料を重合硬化する際に、ポットライフの延長や重合発熱の分散化などを目的として、必要に応じて重合調整剤を添加することができる。重合調整剤は、長期周期律表における第13〜16族のハロゲン化物を挙げることができる。
これら重合調整剤は単独でも2種類以上を混合して使用してもかまわない。これらのうち好ましいものはケイ素、ゲルマニウム、スズ、アンチモンのハロゲン化物である。より好ましくはケイ素、ゲルマニウム、スズ、アンチモンの塩化物であり、さらに好ましくはアルキル基を有するゲルマニウム、スズ、アンチモンの塩化物である。最も好ましいものの具体例はジブチルスズジクロライド、ブチルスズトリクロライド、ジオクチルスズジクロライド、オクチルスズトリクロライド、ジブチルジクロロゲルマニウム、ブチルトリクロロゲルマニウム、ジフェニルジクロロゲルマニウム、フェニルトリクロロゲルマニウム、トリフェニルアンチモンジクロライドである。
重合調整剤の添加量は、化合物(A)および化合物(B)の合計100質量%に対して、0.001質量%以上5質量%以下であり、好ましくは0.002質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上3質量%以下である。
【0081】
また、予備反応させる際に、反応を促進させる予備重合反応触媒を加えてもよい。予備重合反応触媒としては、前記した重合触媒と同じ化合物が挙げられるが、中でも窒素または燐原子を含む化合物が好ましく、窒素または燐原子を含みかつ不飽和結合を有する化合物がより好ましい。特に好ましくはイミダゾール類であり、最も好ましくは2−メルカプト−1−メチルイミダゾールである。予備重合反応触媒の添加量は、化合物(A)と化合物(B)の合計を100質量%に対して、0.001質量%以上5質量%以下であり、好ましくは0.002質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上3質量%以下である。
【0082】
上記以外にも、耐酸化性、耐候性、染色性、強度、屈折率等の各種性能改良を目的として、重合性組成物に含まれる化合物の一部もしくは全部と反応可能な化合物を添加して重合硬化することも可能である。この場合は、反応のために必要に応じて公知の重合触媒を別途加えることができる。
重合性組成物に含まれる化合物の一部もしくは全部と反応可能な化合物としては、SH基を2個以上有する化合物類、エポキシ化合物類、イソ(チオ)シアネート類、カルボン酸類、カルボン酸無水物類、フェノール類、アミン類、ビニル化合物類、アリル化合物類、アクリル化合物類、メタクリル化合物類等が挙げられる。
さらに、公知の酸化防止剤、ブルーイング剤、紫外線吸収剤、消臭剤、等の各種添加剤を加えて、得られるプラスチックレンズの実用性をより向上せしめることはもちろん可能である。
【0083】
[実施形態の作用効果]
以上のような本実施形態のプラスチックレンズによれば、例えば、次の作用効果を奏することができる。
【0084】
(1)急激な反応速度の上昇が発生する前に冷却工程を実施し、重合性組成物の温度を低下させて、重合速度の局所的な上昇を防止するので、厚いプラスチックレンズを形成する場合においても、光学歪や脈理などの不具合の発生を抑制することができる。
一方、問題の発生しにくい重合硬化の初期にあたる保持工程では、重合性組成物を比較的高い初期温度以上に保持して重合をある程度進行させるので、重合硬化の初期から低温としていた従来の製造方法と比べ、製造に要する時間を飛躍的に短縮することができる。
また、重合性組成物の粘度が適度になるように初期温度を設定できるので、成形モールドへの充填が容易となり、充填時にムラが発生することもない。成形モールドの収縮による重合性組成物の漏れ、気泡の発生をも防止することができる。
したがって、光学歪や脈理などのない厚いプラスチックレンズを、容易かつ短時間に製造することができる。
【0085】
(2)ゲル化前に冷却工程を実施するので、重合速度の局所的な上昇を防ぎ、光学歪や脈理などの発生を確実に防止することができる。
(3)冷却工程を、保持工程の開始から15%以上80%以下の時間が経過した時点において実施するので、保持工程で重合を進めて製造時間の短縮を図りつつ、ゲル化が進行し始める前に冷却工程を実施することができる。
(4)低温維持工程により、ゲル化が進行している間の重合性組成物の温度を低温に保つことができるので、光学歪や脈理などの発生をより確実に防止することができる。
【0086】
(5)冷却工程における重合性組成物の温度変化を5℃以上50℃以下としたので、重合性組成物の温度を適度に低下させることができ、製造時間の増大を抑えつつ光学歪や脈理などの発生を防止することができる。
(6)初期温度を0℃以上50℃以下としたので、重合性組成物が扱いやすい粘度となって充填工程が容易になり、充填時のムラも発生しにくくなる。また、保持工程における重合速度が適度に維持され、製造時間短縮の効果を得ることができる。
(7)初期加熱工程において重合性組成物の温度を上昇させるので、重合速度を上昇させることができ、プラスチックレンズの製造に要する時間を短縮することができる。
【0087】
(8)初期加熱工程で、重合性組成物が0.1℃/時間以上3.0℃/時間以下の昇温スピードで加熱されるので、重合性組成物の漏れなどの不具合を発生させることなく、重合速度を上昇させてプラスチックレンズの製造に要する時間を短縮することができる。
(9)加熱工程と高温維持工程により、ゲル化が終了し、光学歪や脈理などの発生のおそれがなくなった後に、重合性組成物を本硬化させ、完成したプラスチックレンズを得ることができる。
(10)上述した組成物は重合硬化させると高屈折率の樹脂が得られるので、これらを重合性組成物とした本実施形態では、光学歪や脈理などがなく、高屈折率で厚いプラスチックレンズを得ることができる。
【0088】
[変形例]
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の実施形態において、保持工程が初期過熱工程を有する構成を例示したが、これに限らない。
保持工程では、重合性組成物が初期温度に維持されることとしてもよい。
この場合、初期加熱工程による製造時間短縮の効果は得られないものの、成形モールドの膨張、収縮を防ぎ、重合性組成物の漏れなどの不具合を防止することができる。
【0089】
[実施例]
次に、本発明の実施形態に基づく実施例および比較例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
〔実施例1〕
上述の「硫黄原子またはセレン原子を有する無機化合物等を含有する組成物」を重合性組成物としてプラスチックレンズを製造した。
【0091】
(重合性組成物の調製)
まず、硫黄20質量%、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド80質量%を65℃でよく混合し均一とした。
次いで、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール0.5質量%を加え、60℃で約60分反応させた。
その後、得られた樹脂用組成物を20℃に冷却した。
一方、ベンジルメルカプタン5質量%、トリエチルベンジルアンモニウムクロライドを0.03質量%、ジn−ブチルスズジクロライド0.2質量%を加えてよく混合して均一とし、これをA溶液とした。
そして、このA溶液を前述の冷却した樹脂用組成物に加えて均一な重合性組成物とした。
次いで、得られた重合性組成物を、10torr、10分間、20℃の条件下で脱気処理した。
【0092】
(プラスチックレンズの製造)
2枚のレンズ成形用のガラスモールド(ガラス型)を用い、ガラスモールドの間を最小厚み15mmとなるように対向配置させ、その周囲にまたがるように粘着テープを巻回して成形用モールドとした。
多くのプラスチックレンズの厚みは薄いものでは1mm程度であり、厚い物は10〜15mmである。本実施例では、レンズの厚みが一番厚い条件を選択し、最小厚みを15mmとし、製造過程において光学歪が発生し易い状況でプラスチックレンズを製造した。
【0093】
この成形用モールドの中に重合性組成物を注入し、さらに、成形用モールドを昇温炉に入れ、図1に示した温度パターンにほぼ沿って、25時間かけて硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したプラスチックレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0094】
なお、図1中、AからBまでは保持工程(初期加熱工程)、BからCまでは冷却工程、CからDまでは低温維持工程、DからEまでは加熱工程、EからFまでは高温維持工程にあたる。FからGまでは、硬化工程後のプラスチックレンズの離型のための冷却である。
【0095】
〔実施例2〕
上述の「ポリイソシアネート化合物等およびポリオール化合物等を含有する組成物」を重合性組成物としてプラスチックレンズを製造した。
【0096】
(重合性組成物の調製)
この実施例2の重合性組成物は、芳香族ポリイソシアネートの1種であるm−キシリレンジイソシアネートを19.6重量部と、脂環族ポリイソシアネートの1種であるノルボルナンジイソシアネートを29.7重量部と、ポリチオールの1種である1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンを主成分とするポリチオール組成物を50.7重量部とを調合したものである。
この重合性組成物を混合攪拌して均一にした後、内部離型剤としてZelecUN(stepan社製)0.1重量部、紫外線吸収剤としてSEESORB701(シプロ化成工業)0.05重量部をさらに添加して撹拌して、完全に溶解させた。その後、重合触媒としてジブチル錫ジクロライド0.01重量部を加えて、常温で良く攪拌して溶解させた後、5mmHgに減圧して攪拌しながら30分間脱気を行った。
【0097】
(プラスチックレンズの製造)
この重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図2に示した温度パターンにほぼ沿って、28時間かけて硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したプラスチックレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0098】
〔実施例3〕
上述の「チオエポキシ基等を有する化合物を含有する組成物」を重合性組成物としてプラスチックレンズを製造した。
【0099】
(重合性組成物の調製)
この実施例3の重合性組成物は、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィドを90重量部、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンの混合物を10重量部、紫外線吸収剤としてSEESORB701(シプロ化成工業)を1.0重量部添加し、混合した後、十分に撹拌して、完全に分散又は溶解させ、さらに、その原料中に、触媒としてN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンを0.1重量部添加し、室温で十分に撹拌して均一液としたものである。さらに、この重合性組成物を5mmHgに減圧して攪拌しながら30分脱気を行った。
【0100】
(プラスチックレンズの製造)
この重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図3に示した温度パターンにほぼ沿って、21時間かけて硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0101】
〔実施例4〕
上述の「ラジカル重合可能な化合物を含有する組成物」を重合性組成物としてプラスチックレンズを製造した。
【0102】
(重合性組成物の調製)
ジエチレングリコールビスアリルカーボネート50重量部、ジアリルイソフタレート50重量部を混合、撹拌した後、ベンゾイルパーオキサイド3部を加えて良く混合した。
(プラスチックレンズの製造)
この重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図4に示した温度パターンにほぼ沿って、16.5時間かけて硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したレンズを離型し、100℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0103】
〔比較例1〕
実施例1と同じ重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図5に示した温度パターンにほぼ沿って、18時間かけて冷却工程を含まない硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0104】
〔比較例2〕
実施例2と同じ重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図6に示した温度パターンにほぼ沿って、21時間かけて冷却工程を含まない硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0105】
〔比較例3〕
実施例3と同じ重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図7に示した温度パターンにほぼ沿って、21時間かけて冷却工程を含まない硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0106】
〔比較例4〕
実施例4と同じ重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図8に示した温度パターンにほぼ沿って、14.5時間かけて冷却工程を含まない硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0107】
〔比較例5〕
実施例1と同じ重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図9に示した温度パターンにほぼ沿って、42時間かけて冷却工程を含まない硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0108】
〔比較例6〕
実施例2と同じ重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図10に示した温度パターンにほぼ沿って、51時間かけて冷却工程を含まない硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0109】
〔比較例7〕
実施例3と同じ重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図11に示した温度パターンにほぼ沿って、49時間かけて冷却工程を含まない硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0110】
〔比較例8〕
実施例4と同じ重合性組成物を、実施例1と同じ成形用モールドに、同様の方法で注入した。成形用モールドを昇温炉に入れ、図12に示した温度パターンにほぼ沿って、28.5時間かけて冷却工程を含まない硬化工程を実施した。
その後、成形用モールドから硬化したレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
【0111】
〔プラスチックレンズの評価〕
上述の実施例1〜4、比較例1〜8のプラスチックレンズの外観(光学歪、ハガレの有無)を、水銀灯、目視により検査した。
(光学歪)
高圧水銀ランプ(USHIO製、UI−100)から投射され、プラスチックレンズを透過した光を、映写幕に投影させた。この透過像を目視で観察した。歪がないものを「○」、歪がわずかにあるものを「△」、歪が多いものを「×」とした。
(重合ハガレ)
成形モールドから離型した際のプラスチックレンズの表面を目視で観察し、評価した。表面に凹凸が観察されなかったものを「○」、凹凸が観察されたものを「×」とした。
これらの評価の結果を、以下の表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
表1に示したように、本発明の冷却工程を実施する実施例1〜4の製造方法で製造したプラスチックレンズについては、光学歪、ハガレは確認されなかった。
一方、比較例1では光学歪が多く、比較例2〜4では光学歪がわずかに見られた。
従来からある一般的な厚さのプラスチックレンズであれば、比較例1〜4のような温度パターンで製造しても光学歪は発生しない。しかし、厚みのあるプラスチックレンズを製造する場合、比較例1〜4のような温度パターンでは光学歪が発生することがわかった。
比較例5〜8では、重合硬化の開始から本硬化のための加熱工程に入るまでの間を、比較例1〜4よりも低温にしている。このため、重合速度の局所的な上昇が防止され、光学歪のないプラスチックレンズが得られた。しかし、重合開始から加熱工程までの長時間にわたり重合性化合物が低温に保たれるので、実施例1〜4、比較例1〜4に比べ、プラスチックレンズの製造に長時間を有することがわかる。
これに対し、実施例1〜4の製造方法では、冷却工程を実施することにより、厚みのある場合でも光学歪を防止することができる。また、保持工程を実施することにより、製造時間の過度の増大を防ぐことができる。
【0114】
重合ハガレの発生メカニズムは、次のように考えられる。
重合性組成物が液体の状態から固体の状態へ変化する際には、体積収縮が起こる。
反応の進行が遅くまだ硬化(体積収縮)が終わっていないうちに高温を加えると、一気に硬化(体積収縮)が進行する。体積収縮にモールド形状が追従できないときに、成形モールドから硬化中の重合性組成物が剥離してしまい、これに伴って発生した凹凸がいわゆるハガレであると考えられる。
実施例1〜4において、冷却工程を実施しても、ハガレの発生は見られなかった。したがって、ハガレの有無という点でも、冷却工程を実施することがプラスチックレンズの外観の悪化にがることはないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の実施形態に係る実施例1の温度パターンを示す図。
【図2】本発明の実施形態に係る実施例2の温度パターンを示す図。
【図3】本発明の実施形態に係る実施例3の温度パターンを示す図。
【図4】本発明の実施形態に係る実施例4の温度パターンを示す図。
【図5】本発明の実施形態に係る比較例1の温度パターンを示す図。
【図6】本発明の実施形態に係る比較例2の温度パターンを示す図。
【図7】本発明の実施形態に係る比較例3の温度パターンを示す図。
【図8】本発明の実施形態に係る比較例4の温度パターンを示す図。
【図9】本発明の実施形態に係る比較例5の温度パターンを示す図。
【図10】本発明の実施形態に係る比較例6の温度パターンを示す図。
【図11】本発明の実施形態に係る比較例7の温度パターンを示す図。
【図12】本発明の実施形態に係る比較例8の温度パターンを示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性組成物を成形モールドに充填する充填工程と、
所定の温度条件下に前記成形モールドを曝すことによって前記重合性組成物を硬化させる硬化工程と、を備えたプラスチックレンズの製造方法であって、
前記硬化工程は、
前記充填工程の後、前記重合性組成物を前記充填工程時の初期温度以上に保つ保持工程と、
前記保持工程の後、前記重合性組成物を冷却する冷却工程と、
を備える
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記冷却工程は、前記重合性組成物のゲル化前に実施される
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記冷却工程は、前記硬化工程の開始から終了までの時間を100%とした場合、前記保持工程の開始から15%以上80%以下の時間が経過した時点において実施される
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記冷却工程の後、冷却された前記重合性組成物の温度を維持する低温維持工程を備える
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記冷却工程の開始時と終了時との間における前記重合性組成物の温度変化は、5℃以上50℃以下である
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記初期温度は、0℃以上50℃以下である
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法おいて、
前記保持工程では、前記重合性組成物が前記初期温度に維持される
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記保持工程は、前記重合性組成物を加熱する初期加熱工程を有する
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のプラスチックレンズの製造方法において、
初期加熱工程では、前記重合性組成物が0.1℃/時間以上3.0℃/時間以下の昇温スピードで加熱される
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記硬化工程は、
前記重合性組成物がゲル化した後に前記重合性組成物を80℃以上200℃以下に加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後、加熱された前記重合性組成物の温度を5分間以上維持する高温維持工程と、
を備える
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記重合性組成物は、チオエポキシ基またはエポキシ基を有する化合物を含有する
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項12】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記重合性組成物は、ポリイソシアネート化合物およびポリイソチオシアネート化合物の少なくともいずれかと、
ポリオール化合物およびポリチオール化合物の少なくともいずれかと、
を含有する
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項13】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記重合性組成物は、アクリル基、メタクリル基およびアリル基の少なくともいずれかを有する化合物を含有する
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項14】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記重合性組成物は、
(A)硫黄原子及び/又はセレン原子を有する無機化合物と、
(B)下記一般式(1)式で表される構造を1分子中に1個以上有する化合物と、
(C)1分子中にSH基を1個以上有するSH基含有有機化合物と、
を含有することを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【化1】
(式中、R1は炭素数1〜10の炭化水素、R2、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素、YはO、S、Se又はTe、l=0〜5、m=0又は1、n=1〜5である。)
【請求項1】
重合性組成物を成形モールドに充填する充填工程と、
所定の温度条件下に前記成形モールドを曝すことによって前記重合性組成物を硬化させる硬化工程と、を備えたプラスチックレンズの製造方法であって、
前記硬化工程は、
前記充填工程の後、前記重合性組成物を前記充填工程時の初期温度以上に保つ保持工程と、
前記保持工程の後、前記重合性組成物を冷却する冷却工程と、
を備える
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記冷却工程は、前記重合性組成物のゲル化前に実施される
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記冷却工程は、前記硬化工程の開始から終了までの時間を100%とした場合、前記保持工程の開始から15%以上80%以下の時間が経過した時点において実施される
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記冷却工程の後、冷却された前記重合性組成物の温度を維持する低温維持工程を備える
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記冷却工程の開始時と終了時との間における前記重合性組成物の温度変化は、5℃以上50℃以下である
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記初期温度は、0℃以上50℃以下である
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法おいて、
前記保持工程では、前記重合性組成物が前記初期温度に維持される
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記保持工程は、前記重合性組成物を加熱する初期加熱工程を有する
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のプラスチックレンズの製造方法において、
初期加熱工程では、前記重合性組成物が0.1℃/時間以上3.0℃/時間以下の昇温スピードで加熱される
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記硬化工程は、
前記重合性組成物がゲル化した後に前記重合性組成物を80℃以上200℃以下に加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後、加熱された前記重合性組成物の温度を5分間以上維持する高温維持工程と、
を備える
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記重合性組成物は、チオエポキシ基またはエポキシ基を有する化合物を含有する
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項12】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記重合性組成物は、ポリイソシアネート化合物およびポリイソチオシアネート化合物の少なくともいずれかと、
ポリオール化合物およびポリチオール化合物の少なくともいずれかと、
を含有する
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項13】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記重合性組成物は、アクリル基、メタクリル基およびアリル基の少なくともいずれかを有する化合物を含有する
ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項14】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法において、
前記重合性組成物は、
(A)硫黄原子及び/又はセレン原子を有する無機化合物と、
(B)下記一般式(1)式で表される構造を1分子中に1個以上有する化合物と、
(C)1分子中にSH基を1個以上有するSH基含有有機化合物と、
を含有することを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【化1】
(式中、R1は炭素数1〜10の炭化水素、R2、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素、YはO、S、Se又はTe、l=0〜5、m=0又は1、n=1〜5である。)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−226742(P2009−226742A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75102(P2008−75102)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]