説明

プラスチックレンズ用およびデバイス用低反射フルオロポリマー層

【課題】 プラスチック基質用の1層もしくは2層被覆系を開発した。
【解決手段】 1層被覆系の低反射層をVF2/TFE/HFPで構成させる。2層被覆系では、上方の被覆層をTFE/HFP、VF2/TFE/HFPまたはTFE/パーフルオロジオキソールで構成させそして下方の被覆層をVF2/TFE/HFP、VF/TFE/HFP、VAc/TFE/HFIBまたはTFEグラフト化PVOHで構成させ
る。この被覆系で用いる目的で新規なフルオロポリマー組成物を調製し、これを酢酸ビニルとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロイソブチレンの共重合で生じさせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフルオロポリマー被覆プラスチック(fluoropolymer
coated plastics)に関する。より具体的には、本発明は、良好な接着力と低い反射特性とはっ水およびはっ油性を示すフルオロポリマー被覆プラスチックに関する。
【背景技術】
【0002】
低反射性プラスチック、特にプラスチックレンズ用および光学デバイス(optical devices)用低反射性プラスチックに関する研究は数多く成されてきた。使用されている1つの方法は、酸化を受けさせた金属をプラスチックの表面に蒸着させる方法である。しかしながら、このような方法ではバッチ方法(batch process)が用いられておりかつ基質が大型の時には生産率が低くなってしまう。別の方法はフルオロポリマー溶液の被膜を付着させる方法である。このような被覆は浸漬方法で行われていて、大型の基質に高い生産率で適用可能である。フルオロポリマーは低い反射指数(reflective indexes)を示すが、また、それとプラスチック基質の接着力は非常に劣っている。フルオロポリマーと基質であるプラスチックの間の接着力を向上させることが長年に渡って探求されてきた。本発明の目的は、フルオロポリマー溶液を用いて反射指数を低くしかつ接着力を良好にする技術を提供することにある。
米国特許第5,798,158号にフルオロポリマーを被膜として用いることが開示されている。ヨーロッパ特許出願公開第0 050 436号には、芳香族重合体の基礎層を覆っている1層の被覆系が開示されている。ヨーロッパ特許出願公開第0 889 066号には共重合体を被膜として用いることが開示されている。米国特許第5,53,470号にはHFIBとVAcの共重合体が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明で提供する1層被覆系(one layer coating sys
tem)を式
VF2/TFE/HFP
で表されるフッ素置換共重合体で構成させ、ここでは、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)に対するテトラフルオロエチレン(TFE)のモル比を0.3から1.9、好適には0.4から1.9にし、そしてVF2の含有量を、好適には、基質がPMMAの場合には12から50モル%の範囲にし、そして基質がPC、PETおよびPSの場合には18から50モル%にする。HFPに対するTFEのモル比を0.9から1.9の範囲にするのがより好適であり、VF2含有量を、好適には、基質がポリメタアクリル酸メチル(PMMA)の場合には12から40モル%にし、そして基質がポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリスルホン(PS)の場合には18から40モル%にする。
【0004】
本発明でPMMA、PC、PETおよびPS基質用として開発した2層被覆系では、
a)ポリ(TFE/HFP)およびポリ(VF2/TFE/HFP)[ここで、TFEに対するHFPのモル比は約0.3から1.9の範囲であり、そしてVF2/TFE/HFPターポリマーの場合、VF2濃度は約19モル%である]、および
b)ポリ(TFE/パーフルオロ−2,2−ジメチルジオキソール)[ここで、パーフルオロジメチルジオキソールの濃度は60から90モル%の範囲である]、
から成る群から選択される上方層と、
a)ポリ(VF2/TFE/HFP)[ここで、HFPに対するTFEの比率は
約0.3から1.9の範囲であり、そしてVF2濃度は、基質がPMMAの場合には約18から60%の範囲であり、そして基質がPC、PETおよびPSの場合には約12から40モル%の範囲である]、
b)ポリ(VF/TFE/HFP)[ここで、HFPに対するTFEの比率は約2.1から0.9の範囲であり、そしてVF濃度は、約42から58モル%の範囲である]、
c)ポリ(VAc/TFE/HFIB)[ここで、VAcの濃度は36から69モル%の範囲であり、そしてHFIBの濃度は14から52モル%の範囲である]、および
d)PVOHにTFEが約46モル%グラフト化したTFEグラフト化PVOH(TFE graft to PVOH)、
から成る群から選択される下方被覆層、
を含める。
【0005】
下方層および上方層の両方とも、HFPに対するTFEの比率を約0.9から1.9の範囲にするのがより好適であり、PC、PETおよびPS基質を用いる時にはVF2濃度を約12から40モル%の範囲にするのがより好適である。
【0006】
本発明の1層被覆系の場合、この被膜の厚みを好適には約10から1000nm、より好適には約30から120nm、最も好適には約70から120nmの範囲にする。
【0007】
ツーコート(two coat)系の場合には、上方層の厚みを好適には10から1000nmの範囲にする。これをより好適には30から120nm、最も好適には70から120nmの範囲にする。
【0008】
本発明の別の面は、酢酸ビニル(VAc、即ちCH3−C(O)−OCH=CH2)とテトラフルオロエチレン(TFE、即ちCF2=CF2)とヘキサフルオロイソブチレン(HFIB、即ち(CF32C=CH2)を重合させることで生じさせた新規なフルオロポリマー組成物である。
【0009】
(発明の詳細な記述)
1層系および2層系の両方ともこれを光学的に透明なプラスチック基質に被覆した時に低反射被膜を与えることを見いだした。好適な基質はPMMA、PC、PETおよびPSである。
【0010】
本発明で提供する1層被覆系を式
VF2/TFE/HFP
で表されるフッ素置換共重合体で構成させ、ここでは、HFPに対するTFEのモル比を0.3から1.9の範囲にし、そしてVF2の含有量を、好適には、基質がPMMAの場合には12から50モル%にし、そして基質がPC、PETおよびPSの場合には18から50モル%にする。このような組成物は、低反射に必要な高フッ素含有量であることと、光学的透明性に必要な高HFP含有量であることと、VF2の含有量が基質との良好な接着力を与えるに充分な量であることの均衡が取れている。HFPに対するTFEのモル比を0.9から1.9の範囲にするのがより好適であり、VF2含有量を、好適には、基質がPMMAの場合には12から40モル%にし、そして基質がPC、PETおよびPSの場合には18から40モル%にする。
【0011】
多数種の重合体は低反射被膜として良好な性能を示すに充分なほど高いフッ素含有量を有するが、それらはしばしば基質、例えばPMMA、PC、PETおよびPSなどに対する接着力が不充分なことから不適切である。接着性コートを下方に位置させることで低反射性のトップコートと基質を接着させる方式に向かうことでそのような接着力に関する問題を解決した。本発明でPMMA、PC、PETおよびPS基質用として開発した2層被覆系では、これを、下記の式:
上方被覆層:
ポリ(TFE/HFP)およびポリ(VF2/TFE/HFP)
[式中、TFEに対するHFPのモル比は約0.3から1.9の範囲であり、そしてVF2/TFE/HFPターポリマーの場合、VF2濃度は約19モル%である]、または
ポリ(TFE/パーフルオロ−2,2−ジメチルジオキソール)
[式中、パーフルオロジメチルジオキソールの濃度は60から90モル%の範囲
である]、
下方被覆層:
ポリ(VF2/TFE/HFP)
[式中、HFPに対するTFEの比率は約0.3から1.9の範囲であり、そしてVF2濃度は、基質がPMMAの場合には約18から60%の範囲であり、そして基質がPC、PETおよびPSの場合には約12から50モル%の範囲である]、または
ポリ(VF/TFE/HFP)
[式中、HFPに対するTFEの比率は約2.1から0.9の範囲であり、そしてVF濃度は、約42から58モル%の範囲である]、または
ポリ(VAc/TFE/HFIB)
[式中、VAcの濃度は36から69モル%の範囲であり、そしてHFIBの濃度は14から52モル%の範囲である]、またはPVOHにTFEが約46モル%グラフト化したTFEグラフト化PVOH、で表されるフルオロポリマーで構成させる。
【0012】
下方層および上方層の両方とも、HFPに対するTFEの比率を約0.9から1.9の範囲にするのがより好適であり、PC、PETおよびPS基質を用いる時にはVF2濃度を約12から40モル%の範囲にするのがより好適である。
【0013】
本発明における下方層の目的は、高度にフッ素置換されている低反射重合体を高反射炭化水素重合体基質に接着させることにある。この接着層で用いる重合体が有効な接着剤であるようにする目的で、パーフルオロカーボン単量体、例えばTFEおよびHFPなどを共重合用単量体である炭化水素またはある程度フッ素置換されている炭化水素、例えばVF2、HFIBおよびVAcなどと組み合わ
せる。
【0014】
本発明の1層被覆系では、反射率の有意な低下が観察されるように、被膜の厚みを約10nmより厚くする必要がある。厚みを10nmより厚くすることでもうまく働くが、このように被膜をより厚くすると結局は実用上の問題が生じる。例えば厚みが約1000nmを越えると、厚みの変動が問題になる可能性があり、そして被覆用重合体が高価な場合、経済性が法外になり始める。このように、本発明の1層被覆系では、被膜の厚みを好適には約10から1000nm、より好適には約30から120nm、最も好適には約70から120nmの範囲にする。
【0015】
本発明の2層被膜系では、上方層の厚みを10から1000nmの範囲にしてもよい。これをより好適には約30から約120nm、最も好適には約70から120nmの範囲にする。本発明の被覆方法には、本技術分野で公知の如何なる方法も含まれ得、これらに限定するものでないが、重合体を用いた浸漬、スプレーまたはスピンコーティング(spin coating)方法が含まれる。
【0016】
本発明の別の面は、酢酸ビニル(VAc、即ちCH3−C(O)−OCH=CH2)とテトラフルオロエチレン(TFE、即ちCF2=CF2)とヘキサフルオロイソブチレン(HFIB、即ち(CF32C=CH2)を共重合させることで生じさせた新規なフルオロポリマー組成物である。この重合体の製造は本技術分野で公知の如何なるフリーラジカル重合方法で行われてもよく、そのような方法には、これらに限定するものでないが、塊状重合、非水性もしくは水性いずれかの溶媒を用いた溶液もしくは分散重合方法が含まれる。好適な方法は分散重合である。好適な溶媒は水およびt−ブタノール/酢酸メチル混合物である。場合により分散剤を用いてもよく、好適な開始剤はVazo(商標)52である。前記重合体に更に加水分解をある程度または完全に受けさせることでビニルアルコール含有共重合体を生じさせることも可能である。
【0017】
この重合体は通常の如何なる手順を用いて反応から回収されてもよく、例えば濾過に続く洗浄そして乾燥などで回収可能である。この重合体生成物は多数種の溶媒に容易に溶解し、例えばアセトンなどに溶解し得、これを用いて、フルオロポリマーの有利な特性を有するフィルムおよび表面被膜を流し込み成形することができる。1つの特別な使用は低い反射特性を有する被膜を生じさせる使用である。
【0018】
以下に示す非制限実施例は本発明の説明を意味するものであり、決して本発明を限定することを意図するものでない。
【0019】
材料および方法
本明細書では下記の定義を用い、請求の範囲の解釈ではそれらを参照すべきである。
APS − 過硫酸アンモニウム
HFIB − ヘキサフルオロイソブチレン、即ち(CF32C=CH2
HFP − ヘキサフルオロプロピレン、即ちCF2=CF−CF3
PC − ポリカーボネート
PET − ポリエチレンテレフタレート
PMMA − ポリメタアクリル酸メチル
PVOH − ポリビニルアルコール
PS − ポリスルホン
Teflon(商標)AF − TFE/パーフルオロ−2,2−ジメチルジオキソール共重合体
TFE − テトラフルオロエチレン、即ちCF2=CF2
VAc − 酢酸ビニル、即ちCH3−C(O)−OCH=CH2
VF − フッ化ビニル、即ちCH2=CHF
VF2 − フッ化ビニリデン、即ちCF2=CH2
特に明記しない限り、下記の試験方法を用いた:
透過率測定方法
Shimazu#UV−3100分光測定装置を用いて500nmの所の光透過率を測定した。この機械はスプリットビーム(split beam)(これの一部がサンプルの中を通る)の連続比較(continuous comparison)を測定する機械である。
接着試験方法
1mmづつ離れて位置する10枚のカミソリ刃が備わっている工具を用いて被膜に切り込みをプラスチック基質に至る所まで入れるが、ここでは、このカミソリ刃工具を最初に1つの方向に引きそして次回にはそれに垂直な方向に引く。それによって正方形が100個の網目状切り込みが入る。この網目領域にスコッチテープを中程度の圧力で付着させた後、迅速に引き剥がす。それでも基質に付着している正方形の数(100個の正方形の中の)として接着力に得点を付ける。
【0020】
特に明記しない限り、他の全ての重合体および単量体を商業的に入手した。
【0021】
本発明で用いたVF2/TFE/HFPターポリマーおよびTFE/HFPジポリマーが光学的透明性および溶解性が理由で選択した組成物である。これらの調製を、米国特許第5,478,905号および5,637,663号に記述されているように、重合を14,000psi下200−400℃で行うことで実施した。このような重合方法を用いると、重合を本技術分野で知られる通常の乳化重合および塊状重合方法[例えばEncyclopedia of Polymer Science and Engineering, 1989, 16巻, 601-613頁および7巻, 257-269頁, John Wiley & Sonsを参照]で行った場合に比較して異なる単量体配列がもたらされかつより高いHFP含有量がもたらされる。そのようなより通常の方法を用いて作られたVF2/TFE/HFPおよびTFE/HFP共重合体も、高いフッ素含有量と光学的透明性と容易な溶液被覆性(solution coatability)を維持し得る限り、我々の適用でうまく働き得るであろう。
【0022】
TFEをグラフト化させたPVOHの調製は米国特許第5,847,048号(引用することによって本明細書に組み入れられる)に示される如く実施可能である。この重合体はビニルアルコールにグラフト化したTFE基を約46モル%含有していた。
【実施例】
【0023】
VAc/TFE/HFIBターポリマーの調製を以下の実施例36から45に記述する如く実施した。
【0024】
(実施例)
実施例1−9
比較実施例1−3
PMMAにポリ(VF2/TFE/HFP)を1層被覆
好適な厚み範囲
ポリ(VF2/TFE/HFP)の塊をFluorinert(商標)FC−75と一緒に室温で数日間撹拌することを通して、前記重合体が溶媒に2重量%入っている溶液を生じさせた。寸法が2.5cmx5.0cmx3mm(厚み)のPMMA板を試験で用いた。このPMMA板を300mm/分の速度で下げて前記重合体溶液の中に入れて30秒後に前記板を2.5から1000mm/分で持ち上げて前記溶液から取り出すことを通して、前記板に被覆を受けさせた。この板に空気乾燥を5−10分間受けさせた後、100℃の空気オーブンに水平に入れて乾燥を60分間受けさせた。実施例を被膜の厚みが厚くなる順で示す。
【0025】
表1
PMMAにポリ(VF2/TFE/HFP)(18.7/43.3/38.0モル%)を1回被覆
厚み(nm) 透過率(%)
比較#1 未被覆PMMA対照 92.1
比較#2 5.0 92.8
実施例#1 20.0 94.5
実施例#2 70.6 96.7
実施例#3 76.3 97.7
実施例#4 90.2 98.0
実施例#5 106.2 96.6
実施例#6 133.3 93.2
実施例#7 209.2 94.6
実施例#8 394.7 95.2
実施例#9 572.1 94.4
比較#3 2000 均一でない

未被覆PMMAが示した透過率は92.1%であった。厚みが20.0nmを越えていて1000nmより薄い被膜は未被覆PMMAに比較して向上した透過率(>93%)を示した。厚みが〜30から120nmの被膜が示した透過率が最大(>96%)であった。
【0026】
実施例10−13
比較実施例4−5
PMMAにポリ(VF2/TFE/HFP)を1層被覆
好適なVF2含有量
実施例1から9と同様にして重合体のフィルムを生じさせた。透過率と接着力を測定して、その結果を以下の表2に示し、表2に実施例および比較実施例をVF2の含有量が高くなる順に示す。
【0027】
表2
標準的テープ引き剥がし試験による接着力
PMMAにポリ(VF2/TFE/HFP)を1回被覆
VF2/TFE/HFP 接着力(/100) 透過率(%)
モル%
比較#1 未被覆PMMA対照 - 92.1
比較#4 0/57/43対照 0 97.2
比較#5 7.8/60.3/31.8 64 97.5
実施例#10 12.6/51.3/36.1 96 97.2
実施例#11 18.7/43.3/18.0 99 97.9
実施例#12 25.2/42.9/31.9 100 95.1
実施例#13 37.4/28.9/33.7 100 96.0

VF2が12から50モル%のVF2/TFE/HFP重合体を被覆すると接着力が良好(>96/100)になると同時に透過率も未被覆PMMAに比較して向上(>97%)することが観察された。
【0028】
実施例14
ポリ(VF2/TFE/HFP=46.9/13.5/39.6モル%)の塊をVertrel(商標)XFと一緒に室温で数日間撹拌することを通して、前記重合体が溶媒に2重量%入っている溶液を生じさせた。寸法が2.5cmx5.0cmx3mm(厚み)のPMMA板を試験で用いた。このPMMA板を300mm/分の速度で下げて前記重合体溶液の中に入れて30秒後に前記板を50mm/分で持ち上げて前記溶液から取り出すことを通して、前記板に被覆を受けさせた。この板に空気乾燥を5−10分間受けさせた後、100℃の空気オーブンに水平に入れて乾燥を60分間受けさせた。透過率と接着力を測定して、以下の表に結果を示し、この表に実施例を挙げる。
【0029】
表3
PMMAにポリ(VF2/TFE/HFP)(46.9/13.5/39.6モル%)を1回被覆
VF2/TFE/HFP 接着力(/100) 透過率(%)
モル%
実施例#14B 46.9/13.5/39.6 100 97.4
比較#1 未被覆PMMA対照 -- 92.1

VF2/TFE/HFP=46.9/13.5/39.6モル%のターポリマーを被覆すると接着力が良好(100/100)になると同時に透過率も未被覆PMMAに比較して向上(>97%)することが観察された。
【0030】
実施例15−18
比較実施例6−8
PMMAにポリ(VF2/TFE/HFP)とポリ(HFP/TFE)を2層被覆
好適なVF2含有量
VF2が0−40%のポリ(VF2/TFE/HFP)の場合にはこれの塊をFluorinert(商標)FC−75と一緒に室温で数日間撹拌することで前記重合体が溶媒に1重量%入っている溶液を生じさせ、そしてVF2が4−55モル%のポリ(VF2/TFE/HFP)の場合にはこれの塊をアセトンと一緒に室温で数日間撹拌しすることで前記重合体が溶媒に1重量%入っている溶液を生じさせた。寸法が2.5cmx5.0cmx3mm(厚み)のPMMA板を試験で用いた。このPMMA板を300mm/分の速度で下げて前記重合体溶液の中に入れて30秒後に前記板を50mm/分で持ち上げて前記溶液から取り出すことを通して、前記板に被覆を受けさせた。この板に空気乾燥を5−10分間受けさせた後、100℃の空気オーブンに水平に入れて乾燥を60分間受けさせた。実施例および比較実施例を被膜の厚みが厚くなる順で示す。
【0031】
ポリ(VF2/TFE/HFP)プライマーコート(primer coat)中のVF2含有量を変えた。全てのサンプルで57モル%TFE/43モル%HFPのトップコートをポリ(VF2/TFE/HFP)プライマーコートと一緒に用いた。透過率と接着力を測定し、その結果を以下の表に示し、この表に実施例および比較実施例を被膜の厚みが厚くなる順で示す。
【0032】
表4
PMMAにポリ(VF2/TFE/HFP)とポリ(HFP/TFE)を2層被覆
好適なVF2含有量
VF2/TFE/HFP 接着力(/100) 透過率(%)
モル%
比較#1 未被覆PMMA対照 -- 92.1
比較#4 0/57/43対照 0 97.2
比較#6 7.8/60.3/31.8 0 97.7
比較#7 12.6/51.3/36.1 4 97.5
実施例#15 18.7/43.3/38.0 90 97.7
実施例#16 49.3/27.7/23.0 100 97.3
実施例#17 52.0/25.9/22.1 98 97.5
実施例#18 61.0/21.7/17.3 80 97.4
比較#8 66.2/16.9/16.9 6 97.1

ポリ(VF2/TFE/HFP)プライマー層のVF2含有量を約18から60モル%にした時に接着力が良好になりかつ透過率も未被覆PMMA対照に比較して向上することが観察された。
【0033】
実施例19−21
PMMAにポリ(VF2/TFE/HFP)を2回被覆することで2層被覆
透過率はプライマーコートのVF2含有量から独立
VF2含有量が異なるポリ(VF2/TFE/HFP)サンプル(以下の表5を参照)をプライマーコートで用いた。ポリ(VF2/TFE/HFP)の塊をアセトンと一緒に室温で数日間撹拌することで前記重合体が溶媒に1重量%入っている溶液を生じさせた。寸法が2.5cmx5.0cmx3mm(厚み)のPMMA板を試験で用いた。このPMMA板を300mm/分の速度で下げて前記重合体溶液の中に入れた後直ちに前記板を50mm/分で持ち上げて前記溶液から取り出すことを通して、前記板に被覆を受けさせた。この板に空気乾燥を5−10分間受けさせた後、100℃の空気オーブンに水平に入れて乾燥を60分間受けさせた。全てのケースでトップコート、即ち同じ18.7モル%VF2/43.3モル%TFE/38.0モル%HFPターポリマーを同じ方法で生じさせた。
【0034】
以下の表5に実施例および比較実施例をVF2含有量が高くなる順で挙げる。
【0035】
表5
PMMAにポリ(VF2/TFE/HFP)を2層被覆
プライマーコート
VF2/TFE/HFP 接着力(/100) 透過率(%)
モル%
比較#1 未被覆PMMA対照 -- 92.1
実施例#19 49.3/27.7/23.0 100 97.5
実施例#20 61.0/21.7/17.3 100 97.0
実施例#21 66.2/16.9/16.9 100 97.5

下方層のVF2含有量を49.3から66.2モル%に及んで変えたにも拘らず、全体としての透過率は相対的に影響を受けなかった。VF2含有量が49.3から66.2モル%の時の接着力が卓越している(100/100)。
【0036】
実施例22から24
比較実施例9−12
ポリカーボネートにポリ(VF2/TFE/HFP)を1回被覆
好適なVF2含有量
実施例14の方法を用いて、いろいろなVF2含有量を持たせたポリ(VF2/TFE/HFP)ターポリマーサンプルをポリカーボネート(PC)シートに被覆した。前記ポリカーボネートはKyoto−Jushi Seiko Co.,Ltd.が製造しているポリカーボネートであった。このポリカーボネートのシートの寸法は2.5cmX5.0cmX3mm(厚み)であった。
【0037】
透過率と接着力を測定して、その結果を以下の表6に示し、この表に実施例および比較実施例をVF2含有量が高くなる順で挙げる。
【0038】
表6
PCにポリ(VF2/TFE/HFP)を1層被覆
VF2/TFE/HFP 接着力(/100) 透過率(%)
モル%
比較#9 未被覆PC対照 -- 87.2
比較#10 0/57/43 0 95.2
比較#11 7.8/60.3/31.8 0 90.5
比較#12 12.6/51.3/36.1 53 94.7
実施例#22 18.7/43.3/38.0 70 94.0
実施例#23 25.2/42.9/31.9 100 92.0
実施例#24 37.4/28.9/33.7 100 93.8

VF2含有量が約18から40モル%の範囲の時にHFP/THF共重合体が示した接着力(0/100)に比較して向上した接着力(>70/100)が得られそして未被覆PCの透過率(87.2%)に比較して向上した透過率(>92%)が得られる。
【0039】
実施例25−28
比較実施例13から14
ポリカーボネートに2層被覆
プライマーに好適なVF2含有量
VF2含有量が異なるポリ(VF2/TFE/HFP)サンプル(以下の表7を参照)をプライマーコートで用いた。ポリ(VF2/TFE/HFP)の塊をアセトンと一緒に室温で数日間撹拌することで前記重合体が溶媒に1重量%入っている溶液を生じさせた。寸法が2.5cmX5.0cmX3mm(厚み)のPC板(Kyoto−Jushi Seiko Co.,Ltd.)を試験で用いた。このPC板を300mm/分の速度で下げて前記重合体溶液の中に入れた後直ちに前記板を50mm/分で持ち上げて前記溶液から取り出すことを通して、前記板に被覆を受けさせた。この板に空気乾燥を5−10分間受けさせた後、100℃の空気オーブンに水平に入れて乾燥を60分間受けさせた。
【0040】
全てのケースでトップコート、即ち同じ57.0モル%TFE/43.0モル%HFP共重合体を同じ方法で生じさせた。
【0041】
以下の表7に実施例および比較実施例をVF2含有量が高くなる順で挙げる。
【0042】
表7
PCに2層被覆
プライマーコート
VF2/TFE/HFP 接着力(/100) 透過率(%)
モル%
比較#9 未被覆PC対照 -- 87.2
比較#13 0/57/43対照 68 93.8
比較#14 7.8/60.3/31.8 12 91.6
実施例#25 12.6/51.3/36.1 83 94.2
実施例#26 18.7/43.3/38.0 96 92.3
実施例#27 25.2/42.9/31.9 88 93.4
実施例#28 37.4/28.9/33.7 97 93.2

VF2含有量が約12から40モル%の範囲の時にHFP/THFジポリマーが示した接着力(68/100)に比較して向上した接着力(>83/100)が得られそして未被覆ポリカーボネートの透過率(87.2%)に比較して向上した透過率(>2.2%)が得られる。
【0043】
実施例29から31
PMMAに2層被覆
ポリ(VF/TFE/HFP)をプライマーコートとして使用
好適なVF含有量
容量が7.6L(2米国ガロン)のジャケット付きステンレス鋼製撹拌オートクレーブ(水平)を重合槽として用いた。このオートクレーブに温度および圧力測定装置を取り付けかつこのオートクレーブに単量体混合物を所望圧力で送り込むことができるように圧縮機を取り付けた。このオートクレーブにこれの容積の55−60%になるまでZonyl(商標)FS−62界面活性剤[デュポン社(DuPont Co.)、Wilmington、DE]を15g含有させた脱イオン水を入れて90℃に加熱した。次に、これに窒素を用いて3.1MPa(450psig)になるまで加圧した後に真空排気を行うことを3回実施した。このオートクレーブに以下の表に示す如き単量体を所望比率で前以て仕込んでおいた後、3.1MPa(450psig)の作業圧力にもって行った。1Lの
脱イオン水にAPSを2g溶解させることで開始剤溶液を調製した。この開始剤溶液を前記反応槽に25mL/分の供給速度で5分かけて供給した後、この供給速度を1mL/分にまで下げて実験時間の間維持した。実施例36および38では前記オートクレーブをバッチ様式で操作した。10%の圧力降下が観察された時点で残存する未変換単量体を排出させかつオートクレーブの温度を室温に下げることで重合を停止させた。
【0044】
26.2/46.4/27.5の重合体の場合には前記オートクレーブを半バッチ様式で操作し、重合を起こさせながら単量体混合物を圧縮機で圧力が一定に保持されるように反応槽に加えた。この補給用供給材料の組成を、以下の表に示すように、単量体の反応性が異なることから前以て仕込んだ混合物のそれとは異ならせた。この組成を、組成的に均一な生成物が生じるようにする目的で、反応槽に入っている単量体の組成が一定に維持されるように選択した。反応槽の圧力を維持する目的で、圧力を自動調節するバルブを用いて補給用単量体供給材料を前記圧縮機に通してオートクレーブに送り込んだ。単量体の供給を、最終的ラテックス固体量が得られるように前以て決めておいた量の単量体が前記オートクレーブに送り込まれるまで継続した。次に、この供給を止めて、オートクレーブの内容物を冷却した後、排気を行った。
【0045】
全てのケースで、重合体のラテックスがミルク状の均一な混合物として受け槽に容易に排出された。急速撹拌を行いながら炭酸アンモニウムをラテックス1リットル当たり15g(水に溶解)添加しそして続いてHFC−4310(1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン)をラテックス1リットル当たり70mL添加した後、重合体を吸引フィルターで単離した。このフィルターケーキを水で洗浄した後、空気オーブンに入れて90−100℃で乾燥させた。
【0046】
【表1】

【0047】
VF含有量が異なるポリ(VF/TFE/HFP)サンプル(以下の表9を参照)をプライマーコートで用いた。ポリ(VF/TFE/HFP)の塊をアセトンと一緒に室温で数日間撹拌することで前記重合体が溶媒に2重量%入っている溶液を生じさせた。寸法が2.5cmX5.0cmX3mm(厚み)のPMMA板を試験で用いた。このPMMA板を300mm/分の速度で下げて前記重合体溶液の中に入れた後直ちに前記板を50mm/分で持ち上げて前記溶液から取り出すことを通して、前記板に被覆を受けさせた。この板に空気乾燥を5−10分間受けさせた後、100℃の空気オーブンに水平に入れて乾燥を60分間受けさせた。
【0048】
全てのケースでトップコート、即ち同じ57モル%TFE/43モル%HFP重合体を同じ方法で生じさせた。
【0049】
以下の表9に実施例をVF含有量が高くなる順で挙げる。
【0050】
【表2】

【0051】
VF含有量が約42から58モル%のポリ(VF/TFE/HFP)をプライ
マーコートとして用いると接着力(>99/100)が優れることに加えて透過
率(>96.0%)も未被覆PMMAのそれ(92.1%)に比較して優れる。
【0052】
実施例32
PMMAに2層被覆
TFEグラフト化PVOHをプライマーコートとして使用
TFEを46モル%グラフト化させたポリ(ビニルアルコール)(PVOH−g−TFE)をプライマーコートで用いた。この重合体の塊をアセトンと一緒に室温で数日間撹拌することで前記重合体が溶媒に2重量%入っている溶液を生じさせた。寸法が2.5cmX5.0cmX3mm(厚み)のPMMA板を試験で用いた。このPMMA板を300mm/分の速度で下げて前記重合体溶液の中に入れた後直ちに前記板を50mm/分で持ち上げて前記溶液から取り出すことを通して、前記板に被覆を受けさせた。この板に空気乾燥を5−10分間受けさせた後、100℃の空気オーブンに水平に入れて乾燥を60分間受けさせた。
【0053】
トップコート、即ち57モル%TFE/43モル%HFP重合体を同じ方法で生じさせた。
【0054】
以下の表10に接着力と透過率の結果を示す。
【0055】
表10
PMMAに2層被覆、PVOH−g−TFEプライマー
プライマーコート
PVOH−g−TFE 接着力(/100) 透過率(%)
比較#1 未被覆PMMA対照 -- 92.1
実施例#32 TFEが46モル% 97 97.1

ポリ(PVOH−g−TFE)をプライマーコートとして用いると接着力(97/100)が優れることに加えて透過率(97.1%)も未被覆PMMAのそれ(92.1%)に比較して優れる。
【0056】
実施例33
比較実施例15−16
PETにポリ(VF2/TFE/HFP)を1回被覆
被膜を実施例1から9と同様に生じさせた。寸法が2.5cmX5.0cmX0.12mm(厚み)のPETシートを基質として用いた。透過率と接着力を測定して、その結果を以下の表に示し、この表に実施例および比較実施例を挙げる。
【0057】
表11
PETにポリ(VF2/TFE/HFP)を被覆
VF2/TFE/HFP 接着力(/100) 透過率(%)
モル%
比較#15 未被覆PET対照 -- 85.0
比較#16 0/57/43 2 96.0
実施例#33 18.7/43.3/38.0 99 96.0
未被覆PETが示した透過率は85.0%であった。接着力(>99/100)が良好であると同時に透過率(>96%)も未被覆PETに比較して向上することが観察された。
【0058】
実施例34
比較実施例17−18
ポリスルホンにポリ(VF2/TFE/HFP)を1回被覆
被膜を実施例1から9と同様に生じさせた。寸法が2.5cmX5.0cmX0.05mm(厚み)のポリスルホンシートを基質として用いた。透過率と接着力の結果を以下の表に示し、この表に実施例および比較実施例を挙げる。
【0059】
表12
ポリスルホンにポリ(VF2/TFE/HFP)を1層被覆
VF2/TFE/HFP 接着力(/100) 透過率(%)
モル%
比較#17 未被覆PS -- 88.5
比較#18 0/57/43 97 98.2
実施例#34 18.7/43.3/38.0 100 95.0

未被覆ポリスルホンが示した透過率は88.5%であった。接着力(>97/100)が良好であると同時に透過率(>95%)も未被覆ポリスルホン(88.5%)に比較して向上することが観察された。
【0060】
実施例35
比較実施例19
実施例15−18と同様にして、PMMAシート上に重合体フィルムを2層生じさせた。Teflon(商標)AFのトップコートを用いた。透過率と接着力を測定し、その結果を以下の表に示し、この表に実施例および比較実施例を挙げる。
【0061】
表13
PMMAにポリ(VF2/TFE/HFP)とTeflon(商標)AFを2層
被覆
VF2/TFE/HFP 接着力(/100) 透過率(%)
モル%
比較#1 未被覆PMMA対照 -- 92.1
比較#19 AF1600対照 0 98.1
(下方コートなし)
実施例#35 49.3/27.7/23.0 100 98.0

ツーコートシート[VF2/TFE/HFPとTeflon(商標)AF]が示した接着力は100/100であったが、Teflon(商標)AFを1層被覆したシートが示したそれは0/100のみであった。このことから、ポリ(VF2/TFE/HFP)はTeflon(商標)AFの接着力を更に向上させるに有効なプライマーであることが分る。
【0062】
ツーコートシート[VF2/TFE/HFPとAF]が示した500nmの所の透過率は98.0%であったが、未被覆PMMA対照が示したそれは92.1のみであった。このことから、Teflon(商標)AFはポリ(VF2/TFE/HFPの透過率を更に向上させるに有効なトップコートであることが分る。
【0063】
実施例36−45
VAc/TFE/HFIBの水性重合。400mLの脱イオン水にPlasdone K−90[立体安定剤(steric stabilizer)]を0.3gとイソプロパノール(連鎖移動剤)を5mL入れることで生じさせた溶液を1Lの撹拌オートクレーブ(垂直)に仕込んだ。酢酸ビニル(126g、1.47モル)およびVazo(商標)52を0.6g加えた。この槽を閉じて、窒素を用いて100psiになるまで加圧した後に真空排気を行うことを2回実施した。漏れ試験として前記槽を窒素で295psiに加圧した後、排気を行った。この槽を約−4℃に冷却し、排気を行った(evacuated)後、ヘキサフルオロイソブチレンを42g(0.26モル)およびテトラフルオロエチレンを42g(0.42モル)仕込んだ。前記槽の内容物を750rpmで撹拌しな
がら70℃に加熱して3時間保持した。この内容物を85℃に加熱して3時間保持した。室温に冷却して排気を大気圧になるまで行った後、必要に応じて水を濯ぎで用いて、水性懸濁液を前記槽から取り出した。追加的に脱イオン水を350mL添加した後、白色の懸濁液をホットプレート上で撹拌しながら約250mLの溶液が蒸発するまで加熱した。室温に冷却した後、焼結ガラス漏斗を用いて固体を濾過したが、この濾過は容易であり、そしてそれを脱イオン水で洗浄した。これを真空オーブンに入れて90℃で一晩乾燥させることで白色重合体を181.8g(87%)得た。
【0064】
VAc/TFE/HFIBの非水性重合。110gの酢酸エチルと200gのt−ブタノールに酢酸ビニルを126g入れることで生じさせた溶液を1Lの撹拌オートクレーブ(垂直)に仕込んだ。この槽を閉じて、窒素を用いて100psiになるまで加圧した後に真空排気を行うことを2回実施した。漏れ試験として前記槽を窒素で295psiに加圧した後、排気を行った。この槽を約−4℃に冷却し、排気を行った後、テトラフルオロエチレンを63gおよびHFIBを21g仕込んだ。前記槽の内容物を750rpmで撹拌しながら70℃に加熱した。25mLの酢酸メチルにVazo(商標)52を0.2g入れることで生じさせた溶液(25mL)を5ml/分の注入速度で注入した。3時間後、前記槽の内容物を室温に冷却した後、残存する気体を排出させた。粘性のある溶液を前記槽から吸引で取り出し、溶液の粘度を下げる必要に応じてアセトンで希釈した。必要ならば、透明な溶液が得られるように前記重合体溶液を更にアセトンで希釈した後、これをブレンダーに入れておいた16オンスの脱イオン水と少量の氷にゆっくりと30−45mLづつ加えた。焼結ガラス漏斗を用いて、沈澱した固体を濾過した。重合体が全部沈澱した後、固体を一緒にして水で分割して洗浄し、濾過した後、ゴムダム(rubber dam)で圧縮した。この固体を真空オーブンに入れてゆっくり窒素パージしながら110−115℃で数時間乾燥させた。結果として得た白色固体の重量は141.1g(67%)であった。
【0065】
以下の表14に、この上に挙げた方法の1つを用いて実施した重合の結果を示す。
【0066】
水酸化ナトリウムを過剰量で用いて酢酸エステル基に加水分解を還流THF下で受けさせた後、過剰量の塩基を標準塩酸溶液で滴定することを通して、酢酸ビニル含有量の測定を行った。THFを溶媒として用いかつポリスチレンを標準として用いてGPC分析を実施した。元素分析をSchwarkkoff Microanalytical Laboratoryで行った。19F NMRスペクトルの測定を、一般に、TMSとCFC−11を内部標準として用いてTHF−d6溶液中で行った。19F NMRを用いて、−66から−70の所に表われるHFIBのCF3基の積分値を−110から−126の所に表われるTFEのCF2基の積分値と対比させることで前記2種類のフッ素置換単量体の相対量を割り当てた。
【0067】
【表3】

【0068】
実施例46−48
PMMAに2回被覆
ポリ(VAc/TFE/HFIB)をプライマーコートとして使用
好適なVAc含有量
VAc含有量が異なるポリ(VAc/TFE/HFIB)サンプル(以下の表9を参照)をプライマーコートで用いた。ポリ(VAc/TFE/HFIB)の塊をアセトンと一緒に室温で数日間撹拌することで前記重合体が溶媒に2重量%入っている溶液を生じさせた。寸法が2.5cmX5.0cmX3mm(厚み)のPMMA板を試験で用いた。このPMMA板を300mm/分の速度で下げて前記重合体溶液の中に入れた後直ちに前記板を50mm/分で持ち上げて前記溶液から取り出すことを通して、前記板に被覆を受けさせた。この板に空気乾燥を5−10分間受けさせた後、100℃の空気オーブンに水平に入れて乾燥を60分間受けさせた。
【0069】
全てのケースでトップコート、即ち同じ57モル%TFE/43モル%HFP重合体を同じ方法で生じさせた。
【0070】
以下の表15に実施例をVAc含有量が高くなる順で挙げる。
【0071】
表15
PMMAに2層被覆、VAc/TFE/HFIBプライマー
プライマーコート
VAc/TFE/HFIB 接着力(/100) 透過率(%)
モル%
比較#1 未被覆PMMA対照 --- 92.1
実施例#46 36/12/52 100 96.8
実施例#47 58/16/26 100 97.6
実施例#48 69/17/14 100 97.3

VAc含有量が約36から69モル%のポリ(VAc/TFE/HFIB)をプライマーコートとして用いると、得られる接着力(100/100)が優れることに加えて透過率(>96.8%)も未被覆PMMAのそれ(92.1%)に比較して優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメタアクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリスルホンから成る群から選択される基質を被覆するための2層被覆系であって、
a)ポリ(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)およびポリ(フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)[ここで、
テトラフルオロエチレンに対するヘキサフルオロプロピレンのモル比は0.3から1.9の範囲であり、そしてフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンターポリマーの場合、フッ化ビニリデン濃度は19モル%である]、および
b)ポリ(テトラフルオロエチレン/パーフルオロ−2,2−ジメチルジオキソール)[ここで、パーフルオロジメチルジオキソールの濃度は60から90モル%の範囲である]、
から成る群から選択される上方層と、
a)ポリ(フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)[ここで、ヘキサフルオロプロピレンに対するテトラフルオロエチレンの比率は0.3から1.9の範囲であり、そしてフッ化ビニリデン濃度は、基質がポリメタアクリル酸メチルの場合には18から60%の範囲であり、そして基質がポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリスルホンの場合には12から40モル%の範囲である]、
b)ポリ(フッ化ビニル/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)[ここで、ヘキサフルオロプロピレンに対するテトラフルオロエチレンの比率は2.1から0.9の範囲であり、そしてフッ化ビニル濃度は、42から58モル%の範囲である]、
c)ポリ(酢酸ビニル/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロイソブチレン)[ここで、酢酸ビニルの濃度は36から69モル%の範囲であり、そしてヘキサフルオロイソブチレンの濃度は14から52モル%の範囲である]、および
d)ポリビニルアルコールにテトラフルオロエチレンが46モル%グラフト化したテトラフルオロエチレングラフト化ポリビニルアルコール、
から成る群から選択される下方被覆層、
を含んで成る2層被覆系。
【請求項2】
前記下方被覆層の厚みが20nm未満である請求項1記載の2層被覆系。
【請求項3】
前記上方層の厚みが10nmから1000nmである請求項1記載の2層被覆系。
【請求項4】
前記上方層の厚みが70nmから120nmである請求項3記載の2層被覆系。

【公開番号】特開2011−16361(P2011−16361A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178771(P2010−178771)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【分割の表示】特願2000−605561(P2000−605561)の分割
【原出願日】平成12年3月15日(2000.3.15)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】