説明

プラスチック光ファイバー用コア材及びプラスチック光ファイバー

【課題】耐熱性及び伝送特性に優れたPOFを得るためのPOF用コア材を提供すること。
【解決手段】α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)と、該α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)とビニル重合可能な単量体(B)とを含む単量体混合物を共重合した後、環化縮合反応させることにより形成された、一般式(1)
【化1】


(式中、R1およびR2、R3は独立して水素原子または炭素数1〜20の酸素原子を含んでいてもよい有機残基を示す。)で表されるラクトン環構造を有し、ガラス転移温度が115℃〜160℃の範囲にある共重合体(X)からなるプラスチック光ファイバー用コア材あって、共重合体(X)に含まれるパーテイクルカウンターで測定した0.5μm以上の異物数が20000個/g以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性を有し伝送損失が少なく、耐熱性に優れたコア材や、このコア材を用いたプラスチック光ファイバーに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック光ファイバー(以下「POF」と略する)は、安価、軽量、柔軟性、大口径という特長を生かして照明用途、FA、通信分野などで実用化されており、コア材としてポリメチルメタクリレート(以下「PMMA」という)系を用いたものが主流となっている。
【0003】
PMMAをコア材としたPOFは、PMMAのガラス転移温度(Tg)が110℃程度であることから、より耐熱性の高い重合体を外側に被覆しても実際に使用できる温度は110℃程度が上限である。このため、さらに耐熱性が要求される用途ではPMMAより耐熱性の高い材料をコア材として使用することが検討されている。
【0004】
例えば、ポリカーボネート(特許文献1)、(特許文献2)、耐熱性の高い脂環式基を主鎖に有する非晶性ポリオレフィン(特許文献3)、(特許文献4)、(非特許文献1)など種々の素材をコア材とするPOFが提案されている。
【0005】
しかし、コア材としてポリカーボネートを用いたPOFは、コア材の精製、異物除去等が困難であることや、ポリマー自体の密度揺らぎに由来する光散乱損失が有限な大きさをもつことから、PMMAをコア材とするPOFと比べて伝送特性が大きく劣る。
【0006】
また、各社からそれぞれ上市されている脂環式基を主鎖に有する重合体は精製が困難であり、これらをコア材に用いたPOFは、ポリカーボネートをコア材とするPOFと同様に、ポリマー自体に由来する光散乱損失が有限な大きさをもつことから、伝送性能が劣る等の問題点を有している。
【0007】
このような問題を解決するものとして、ボルニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、トリシクロデカニルメタクリレート等の脂環式基を側鎖に有するメタクリレートとメチルメタクリレート(以下「MMA」という)との共重合体をコア材とする伝送特性が比較的良好なPOFが提案されている(特許文献5)、(特許文献6)。
【0008】
しかし、上述したような脂環式側鎖を有する(メタ)アクリレートの単量体単位を有する重合体は、耐熱分解性が低い傾向がある。そのため、該重合体をコア材とするPOFは、溶融紡糸によりPOFを紡糸する際のコア材の熱劣化が著しいため、伝送特性が低下したり、紡糸安定性が極めて劣るという問題があった。
【特許文献1】特開平6−200004号公報
【特許文献2】特開平6−200005号公報
【特許文献3】特開平4−365003号公報
【特許文献4】特開2001−174647号公報
【特許文献5】特開平63−74010号公報
【特許文献6】特開昭63−163306号公報
【非特許文献1】田中章、第8回POFコンソーシアム講演要旨集、POFコンソーシアム、1995年4月26日、p.7〜15
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、樹脂中に含有される異物や不純物の含有量の減少を図ることができる樹脂を見い出し、これを用いることにより伝送損失を低減させ、耐熱性に優れたプラスチック光ファイバーを得るためのプラスチック光ファイバー用コア材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル単量体とビニル重合可能な単量体を共重合体した後、環化縮合反応させることにより形成されるラクトン環を主鎖中に有する重合体は、従来において精製が困難で光伝送損失が大きいものであった脂環式構造を有しているにもかかわらず、異物や不純物の含有量を低減できるために、光ファイバーのコア材に用いた場合、光散乱損失を低減することができ、しかもこの重合体はガラス転移温度が高いため、高温環境下に置かれる光ファイバーのコア材としても好適に使用することができることの知見を得て、かかる知見に基づき本発明をするに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)と、該α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)とビニル重合可能な単量体(B)とを含む単量体混合物を共重合した後、環化縮合反応させることにより形成された、一般式(1)
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、R1およびR2、R3は独立して水素原子または炭素数1〜20の酸素原子を含んでいてもよい有機残基を示す。)で表されるラクトン環構造を有し、ガラス転移温度が115℃〜160℃の範囲にある共重合体(X)からなるプラスチック光ファイバー用コア材あって、
共重合体(X)に含まれるパーテイクルカウンターで測定した0.5μm以上の異物数が20000個/g以下であることを特徴とするプラスチック光ファイバー用コア材に関する。
【0014】
また、本発明は、一般式(2)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、R4〜R8は独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、水酸基または炭素数1〜5のアルコキシ基を示す。)で表される化合物を添加して保存したα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)と、該α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)とビニル重合可能な単量体(B)とを含む単量体混合物を共重合した後、環化縮合反応させることにより形成された、一般式(1)
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、R1およびR2、R3は独立して水素原子または炭素数1〜20の酸素原子を含んでいてもよい有機残基を示す。)で表されるラクトン環構造を有し、ガラス転移温度が115℃〜160℃の範囲にある共重合体(X)からなるプラスチック光ファイバー用コア材であって、
単量体混合物に含まれるα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)中の一般式(2)で表される化合物の含有量が100ppm以下であることを特徴とするプラスチック光ファイバー用コア材に関する。
【0019】
また、本発明は、請求項1〜6のいずれか記載のプラスチック光ファイバー用コア材を含むコア部と、コア部の屈折率より1%以上低い屈折率を有するクラッド部から構成され、25−5mのカットバック法により測定した伝送損失が400dB/Km以下であることを特徴とするプラスチック光ファイバーに関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明プラスチック光ファイバー用コア材は、含有する異物や不純物の減少を図ることができる樹脂を用いることにより、伝送損失を低減させ、耐熱性に優れたプラスチック光ファイバーを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のプラスチック光ファイバー用コア材は、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)と、該α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)とビニル重合可能な単量体(B)とを含む単量体混合物を共重合した後、環化縮合反応させることにより形成された、一般式(1)
【0022】
【化4】

【0023】
(式中、R1およびR2、R3は独立して水素原子または炭素数1〜20の酸素原子を含んでいてもよい有機残基を示す。)で表されるラクトン環構造を有し、ガラス転移温度が115〜160℃の範囲にある共重合体(X)からなるプラスチック光ファイバー用コア材であって、共重合体(X)に含まれるパーテイクルカウンターで測定した0.5μm以上の異物数が20000個/g以下であるものである。
【0024】
また、本発明のプラスチック光ファイバー用コア材は、一般式(2)
【0025】
【化5】

【0026】
(式中、R4〜R8は独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、水酸基または炭素数1〜5のアルコキシ基を示す。)で表される化合物を添加して保存したα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)と、該α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)とビニル重合可能な単量体(B)とを含む単量体混合物を共重合した後、環化縮合反応させることにより形成された、一般式(1)
【0027】
【化6】

【0028】
(式中、R1およびR2、R3は独立して水素原子または炭素数1〜20の酸素原子を含んでいてもよい有機残基を示す。)で表されるラクトン環構造を有し、ガラス転移温度が115℃〜160℃の範囲にある共重合体(X)からなるプラスチック光ファイバー用コア材であって、
単量体混合物に含まれるα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)中の一般式(2)で表される化合物の含有量が100ppm以下のものである。
[α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)]
本発明のプラスチック光ファイバー用コア材に用いるα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)は一般式(3)で示すことができる。
【0029】
【化7】

【0030】
ここで式中、R2、R3は独立して水素原子または炭素数1〜20の酸素原子を含んでいてもよい有機残基を表す。
【0031】
一般式(3)中、R2、R3が示す炭素数1〜20の酸素原子を含んでいてもよい有機残基とは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のアシル基などを挙げることができる。
【0032】
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−ブチル、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチル、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸2−エチルヘキシル等を挙げることができ、これらの中でも、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、このうちα−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルは、耐熱性を向上する効果が著しいことから、特に好ましい。これらは1種のみ用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
ここで上記のα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステルは、極めて容易に重合しやすく、室温以上に放置されると重合固化するため、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステルは保存時において、一般式(2)
【0034】
【化8】

【0035】
(式中、R4〜R8はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、水酸基または炭素数1〜5のアルコキシ基を表す。)で示される化合物の所定量が添加されたものが好ましい。一般式(2)で示される化合物としては、例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル(メトキノン)、ハイドロキノンモノエチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール等を挙げることができる。
【0036】
本発明のプラスチック光ファイバー用コア材において、このような一般式(2)で表される化合物が添加されて保存された単量体(A)は、共重合体の単量体混合物に使用する際、一般式(2)で表される化合物の含有量を100ppm以下とする。より好ましくは、60ppm以下であり、更に好ましくは30ppm以下である。一般式(2)で示される化合物の含有量が100ppm以下であれば、重合性が著しく低下することがなく、重合時あるいは重合後にPOFを紡糸する際に、重合体において着色されず、POFのコア材において初期および高温環境下においても伝送損失の増加を抑制することができ、好適なものとなる。
【0037】
上記α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル中の一般式(2)で表される化合物の含有量を100ppm以下にするには、単量体(B)との重合直前に蒸留や吸着処理等を行い、一般式(2)で表される化合物の含有量を100ppm以下とした直後に単量体(B)と混合して単量体混合物とし共重合を行う方法を挙げることができる。
【0038】
このようなα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステルの使用量としては、ラクトン環構造を有する共重合体(X)の前駆体のビニル共重合体(x)を得るための全単量体混合物中の含有量として、10〜60質量%、好ましくは20〜55質量%、さらに好ましくは30〜50質量%を挙げることができる。α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステルの含有量が10質量%以上であれば、ラクトン環単位が十分に形成された共重合体(X)を得ることができ、耐熱性を有する共重合体(X)を得て高温下で用いることができるプラスチック光ファイバーを得ることができる。α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステルの含有量が20質量%以上、30質量%以上となると、かかる効果をより顕著に得ることができる。また、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステルの含有量が60質量%以下であれば、共重合体(X)において粘度が増大することがなく安定した成形を行うことができ、透明性を維持することができる。α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステルの含有量が55質量%以下、50質量%以下となると、かかる効果をより顕著に得ることができる。
[単量体(B)]
前記α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体の単位(A)とビニル重合可能な単量体(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル(B1)を主成分とすることが好ましく、それ以外に、酸基を有する単量体(B2)を挙げることができ、さらに必要に応じて、その他のビニル重合可能な単量体(B3)を含んでいてもよい。
【0039】
前記(メタ)アクリル酸エステル(B1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等を挙げることができ、これらの中でも特に、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル等のエステル基の炭素数が少ないものが好ましい。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記単量体成分中における(メタ)アクリル酸エステル(B1)の割合は、特に制限されないが、全単量体成分中50〜80重量%であるのがよい。
【0041】
前記酸基を有するモノマー(B2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸モノエステル等のカルボキシル基を有するモノマー、無水マレイン酸や無水イタコン酸等の酸無水物基を有するモノマー、リン酸基を有するモノマー、スルホン酸基を有するモノマー、フェノール基を有するモノマー等が挙げられるが、なかでも(メタ)アクリル酸が、共重合体(X)の耐熱性向上効果に優れる点から好適である。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記単量体成分中における酸基を有するモノマー(B2)の割合は、全単量体成分中1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%の範囲であるのが好ましい。酸基を有するモノマー(B2)の単量体成分中の含有量が10質量%以下であれば、粘度の増大を抑制し成形安定性を有し、透明性に優れた共重合体(X)を得ることができる。一方、1質量%以上であれば、重合前駆体(x)のラクトン環化が効率なされ、共重合体(X)を耐熱性に優れたものとすることができる。
【0043】
前記他の共重合可能なモノマー(B3)としては、具体的には、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル等を挙げることができる。これらの中でも、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリルが、耐熱性をさらに向上させることができる点で好ましい。なお、これらは、1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記単量体成分中における前記共重合可能なモノマー(B3)の割合は、特に制限されないが、全単量体成分中30重量%以下であるのが好ましい。
[単量体混合物]
本発明のプラスチック光ファイバー用コア材における単量体混合物としては、上記α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)と、上記単量体(B)とを含むものであれば、いずれのものであってもよいが、重合方法により、適宜溶液、重合反応開始剤、連鎖移動剤を含むものであってもよく、その他、必要に応じて得られる共重合体に特定の機能を付加する機能性物質を含有するものであってもよい。
[単量体混合物の共重合]
前記単量体混合物を共重合して共重合体(X)の前駆体であるビニル共重合体(x)を得る方法としては、溶液重合または塊状重合が好ましく、溶液重合が特に好ましい。
【0045】
上記溶液重合に用いる溶剤は特に限定されないが、例えば、通常のラジカル重合反応で使用する溶剤を用いることができ、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のヱステル類;クロロホルム、DMSO、テトラヒドロフランなどを挙げることができる。また、使用する溶剤の沸点が高すぎると、脱気後の樹脂中の残存揮発分が多くなることから、処理温度で重合体を溶解し、沸点が50〜200℃の範囲にあるものが好ましく、例えば、メチルエチルケトン等のケトン類やトルエンなどの芳香族炭化水素類などを好ましいものとして挙げることができる。
【0046】
上記溶液重合反応の単量体混合物に含有させる溶剤の量は、重合反応混合物中の単量体の濃度が10〜80質量%となる範囲を挙げることができ、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは30〜60質量%である。重合反応混合物中の単量体の濃度が10質量%以上であれば、溶剤の揮発を抑制することができ、重合反応を効率よく進行させることができる。単量体の濃度が20質量%以上、30質量%以上であれば、上記効果をより顕著に得ることができる。一方、単量体濃度が80質量%以下であれば、重合粘度が高くなるのを抑制できるため取り扱いが容易になり、単量体濃度が70質量%以下、60質量%以下であれば、かかる効果をより顕著に得ることができる。
【0047】
前記溶液重合反応の混合物には、必要に応じて、開始剤を添加してもよい。開始剤としては特に限定されないが、例えば、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(イソ酪酸ジメチル)、2,2'−アゾビス(シアノ吉草酸)、2,2'−アゾビス(2,4,4ートリメチルペンタン)等のアゾ系化合物、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシー2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物を挙げることができる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。この中でも特に2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート) 、または2,2'−アゾビス(イソ酪酸ジメチル)が得られた重合体の光学特性を向上させる点で好ましい。これらの重合開始剤の使用量は、上記単量体成分100質量部に対して例えば0.001〜3質量部の範囲とすることができる。
【0048】
さらに上記溶液重合反応の混合物には、必要に応じて、連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては特に限定されないが、例えば、n−プロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタンを挙げることができる。これらのうち、n−ブチルメルカプタン、t一ブチルメルカプタン等の炭索数が3〜6価のアルキルメルカプタンが好ましく、n−ブチルメルカプタンが沸点が低く揮発除去が容易である点で特に好ましい。これらの連鎖移動剤の使用量は、上記単量体成分100質量部に対して例えば3質量部以下の範囲とすることができる。
【0049】
上記溶液重合反応における温度、重合時間は使用する単量体の種類、使用比率等によって適宜選択することができ、重合温度0〜150℃で重合時間0.5〜20時間などとすることができ、好ましくは、重合温度80〜140℃で重合時間1〜10時間である。このような条件で、上記単量体が重合した共重合体を得ることができる。得られた共重合体は公知の方法により精製することができ、ラクトン環単位を有する共重合体(X)の前駆体であるビニル共重合体(x)を得ることができる。
[環化縮合反応]
上記の前駆体のビニル共重合体(x)を得た後、次いで該ビニル共重合体(x)中のα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル由来の構造単位を、ほぼ定量的に環化縮合反応(ラクトン環化反応)させることにより、一般式(1)で表されるラクトン環単位を有する共重合体(X)を得ることができる。
【0050】
【化9】

【0051】
式中R1およびR2、R3は独立して水素原子または炭素数1〜20の酸素原子を含んでもよい有機残基を表す。
【0052】
前記の環化縮合反応は、前記単量体成分を重合することにより形成される分子鎖中のα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)単位由来の水酸基と、これと隣接するα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)単位由来のエステル基または、これとビニル共重合可能な単量体(B)単位由来のエステル基(B1)もしくは酸基(B2)とを環化縮合させて、重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)にラクトン環を形成する反応であり、ラクトン環化によって水やアルコールが副生する。このように、重合体の主骨格中にラクトン環構造が形成された重合体をコア材として用いることにより、透明性、耐熱性などPOFコア材として要求される性能を向上させることができる。共重合体(X)は、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)単位がほぼ定量的にラクトン環化している重合体であるが、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)単位が全てラクトン環化している必要はなく、ラクトン環化率は、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上である。
【0053】
前記ビニル共重合体(x)をラクトン環化してラクトン環構造を有する共重合体(X)を得るための方法としては、上記の重合工程で得られた前駆体としてのビニル共重合体(x)と溶剤とを含む混合物を、
(i)触媒を添加して、加圧せずに、あるいは加圧下で加熱反応させる方法
(ii)無触媒で、加圧せずに、あるいは加圧下で加熱反応させる方法
を挙げることができる。
【0054】
このラクトン環化縮合工程において、環化縮合反応に用いる「ビニル共重合体(x)と溶剤とを含む混合物」は、上記溶液重合工程で得られた重合反応生成物の混合物そのものであっても、また、これらから溶剤を除去した後に、環化縮合反応に適した溶剤を再添加したものであってもよい。
【0055】
上記方法(i)において使用する触媒としては、公知のものを用いることができ、一般に用いられるp−トルエンスルホン酸などのエステル化触媒またはエステル交換触媒、有機酸、有機リン化合物、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩などを挙げることができる。上記ビニル共重合反応において酸基を有する単量体(B2)を使用した場合は、酸基を有する単量体および/または生じた重合体が、ビニル共重合体(x)のラクトン環化反応時に触媒として作用するので、ラクトン環化のために別途触媒を添加せず、ビニル重合反応と同時にラクトン環化反応を行うことも可能である。
【0056】
触媒の添加時期は、反応初期、あるいは反応途中であってもよく、また2回以上に分割して添加してもよい。触媒の添加量は、前駆体のビニル共重合体(x)に対し、0.001〜10質量%とすることができ、好ましくは0.01〜5重量%である。方法(i)の加熱温度と加熱時間としては、十分なラクトン環化率が得られ、また樹脂の着色や分解が生じない範囲を選択することが好ましく、加熱温度としては、例えば室温以上を挙げることができ、好ましくは50℃以上であり、加熱時間としては、例えば1〜20時間を挙げることができ、好ましくは2〜10時間である。
【0057】
上記方法(ii)としては、例えば、耐圧性の釜などを用いて、上記溶液重合反応工程で得られた重合反応生成物の混合物をそのまま加熱する方法などを挙げることができる。加熱温度と加熱時間としては、十分なラクトン環化率が得られ、また樹脂の着色や分解が生じない範囲を選択することが好ましく、加熱温度としては、例えば100℃以上を挙げることができ、好ましくは150℃以上である。加熱時間としては、例えば1〜20時間を挙げることができ、好ましくは2〜10時間である。
【0058】
上記方法(i)、(ii)ともに、条件によっては加圧下で行うことができる。
【0059】
ここで、上記方法により得られたラクトン環単位を有する共重合体(X)には、溶剤、残存単量体の揮発分や、ラクトン環化反応の縮合環化反応により副生したアルコールと水などの揮発成分が残存しているが、共重合体(X)中に残存する揮発成分が多くなると、着色や、泡、シルバーストリークなどが発生して、それに起因して伝送特性が低下するという問題が生じるため、揮発成分を除去することが好ましい。揮発成分の除去方法としては、これらを必要により減圧加熱条件下で除去する方法を挙げることができ、この方法を行なう装置としては真空装置、あるいは脱気装置を持つ加熱炉や反応装置や、脱揮装置のある押出機等を挙げることができる。
【0060】
上記の揮発成分の除去方法としては、上記のラクトン環化縮合反応を溶剤の存在下で行いつつ、且つ、脱気処理を併用して行うことが好ましい。溶剤の存在下で環化縮合反応を行うことにより、高収率の反応を行うことができる上に、環化縮合反応で副生するアルコールと水を強制的に除去するので、反応の平衡が生成側に移行するため有利となる。さらに、縮合環化反応と脱気処理を個々に行う方法と比較してプロセス的コストダウンを図ることができる。
【0061】
上記環化縮合反応と脱気処理を併用する形態の場合、使用する装置としては、熱交換器と脱気槽を備えた脱気装置や、ベント付き押出機や、これらの脱気装置と押出機とを直列に配置した装置を用いることができるが、熱交換器と脱気槽を備えた脱気装置およびベント付き押出機を用いることが好ましい。
【0062】
この熱交換器と脱気槽からなる脱気装置を用いる場合、反応・処理温度は、用いる単量体の気化温度により適宜選択することができ、例えば150〜350℃の範囲とすることができ、好ましくは200〜300℃の範囲である。上記温度が150℃以上であれば、縮合環化反応が進行し、残存揮発分の低減を図ることができ、350℃以下であれば、生成物の分解を抑制し、着色などを抑制することができる。反応・処理時の圧力は、931〜1.33hPa(700〜1mmHg)の範囲が好ましく、798〜66.5hPa(600〜50mmHg)の範囲がより好ましい。上記圧力が1.33hPa以上であれば、アルコールや水を含めた揮発分の残存量を低減することができ、931hPa以下であれば、工業的な実施を可能とすることができる。
【0063】
また、ベント付き押出機を用いる場合、ベントは1個でもよいが、複数個のベントを有する方が好ましい。ベント付き押出機での反応・処理温度は、用いる単量体の気化温度により適宜選択することができ、例えば150〜350℃の範囲とすることができ、好ましくは200〜300℃の範囲である。上記温度が150℃以上であれば、縮合環化反応が進行し、残存揮発分の低減を図ることができ、350℃以下であれば、生成物の分解を抑制し、着色などを抑制することができる。反応・処理時の圧力は、931〜1.33hPa(700〜1mmHg)の範囲が好ましく、798〜13.3hPa(600〜10mmHg)の範囲がより好ましい。上記圧力が1.33hPa以上であれば、アルコールや水を含めた揮発分の残存量を低減することができ、931hPa以下であれば、工業的な実施を可能とすることができる。
【0064】
このような環化縮合反応と脱気処理の両者を同時進行して行なう場合、例えば、2軸押出機を用いて、250℃近い、あるいはそれ以上の高温で熱処理するときに、熱履歴の違いにより縮合環化反応が起こる前に一部に分解が生じ、また、反応生成物である共重合体(X)が過酷な条件に置かれることにより物性が変化する可能性があるため、上述した脱アルコール反応の触媒を使用し、できるだけ温和な条件で、ベント付き押出機等を用いて行うことが好ましい。
【0065】
さらに、また、環化縮合反応と脱気処理を併用する場合、脱気処理を縮合環化反応の過程全体に亘って同時進行させず、縮合環化反応の過程の一部においてのみ併用することもできる。例えば、縮合環化反応のみを予め進行させラクトン環単位を一部に生成した共重合体(X)を製造し、その後縮合環化反応と脱気処理を同時に進行させ、残りのラクトン環単位の生成を行って反応を完結させる形態は、脱気処理と併用する際の反応条件を緩和することができ、物性の悪化を抑制できるので好ましい形態となる。このとき、脱気処理の前に予め行う環化縮合反応は、ラクトン環化率を目安とすると、50%以上などとすることができ、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。ラクトン環化率が50%以上であれば得られる共重合体(X)の変質が生じることを高度に抑制することができ、ラクトン環化率が60%、70%以上であれば、かかる効果をより顕著に得ることができる。具体的には、あらかじめ釜型の反応器を用いて溶剤の存在下で縮合環化反応をある程度の反応率まで進行させておき、その後、脱気装置のついた反応器、例えば、熱交換器と脱気槽とからなる脱気装置や、ベント付き押出機等で、縮合環化反応を完結させる形態等を挙げることができる。このとき、縮合環化反応は触媒の存在下で行なうことがより好ましい。このような縮合環化反応を先行させ、その後縮合環化反応と脱気反応を併用した形態により得られる共重合体(X)は、ガラス転移温度がより高く、環化縮合反応率もより高まり、耐熱性に優れたものとなる。
【0066】
上記脱気処理による揮発成分の除去は、共重合体(X)中に残存する揮発分が3.0質量%以下、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下になるまで行うことが好ましい。揮発成分の残存揮発分が3.0質量%以下であれば、POFの初期の伝送特性や、耐熱環境下での伝送特性が優れたものとなる。
【0067】
上記ラクトン環化率は、共重合体(X)における水酸基残存率からも定めることができ、共重合体(X)における水酸基残存率は10モル%以下であることが好ましく、より好ましくは5モル%以下である。共重合体(X)における水酸基残存率は、実施例で示すダイナミックTG測定から求めることができる。
[共重合体(X)]
このようにして得られる共重合体(X)の分子量は特に限定されないが、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算分子量が50,000以上、150,000以下であることが好ましく、70,000以上、125,000以下であることがより好ましい。分子量が50,000以上であれば、POFが屈曲されたときに破断することがなく、分子量が150,000以下であれば、POFの成形安定性が低下することがない。
【0068】
上記共重合体(X)は、115〜160℃の範囲のガラス転移温度を有しており、かかるガラス転移温度を有する共重合体(X)を用いたPOFは、半導体分野や食品分野におけるセンサー用途や、あるいは自動車内LANにおける安全制御用途のように、環境温度が115℃以上になるような空間に配置することができる。このような場合には、共重合体(X)のTgは125℃以上が好ましく、145℃以上であれば更に好ましい。共重合体(X)のTgが160℃以下であると、共重合体(X)が脆くなるのを抑制することができ、POFの材料のコスト増を回避することができる。上記共重合体(X)において、ガラス転移温度を前記範囲の中で適宜調整するには、単量体(A)と単量体(B)の組成を調整し、分子量を調整して行なうことができる。例えば共重合体(X)が、単量体単位として、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル単量体(A)の単位と、単量体(B)の単位としてMMA単位とを共重合して得られた前駆体(x)を環化縮合して得られた重合体である場合には、ガラス転移温度を115℃以上とするにはα−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル単量体(A)の単位が10質量%以上含まれていることが好ましく、25質量%以上、更に40質量%以上含まれていると、より伝送特性及び機械強度及び耐熱性の良好なPOFを得ることができる。具体的には、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル/MMA=40/60(質量%)である場合には、共重合体(X)のTgは150℃であり、これをコア材としたPOFは伝送特性及び機械強度に優れるだけでなくPMMAをコア材とするPOFと比較して耐熱性が飛躍的に向上する。また、共重合体(X)において、POFが熱収縮するという問題を防ぐには、ガラス転移温度と分子量を、上述した数値範囲の中で、適宜選択することが好ましい。
【0069】
このようにして得られた上記共重合体(X)は、パーテイクルカウンターを用いて光散乱法で測定した、粒子径0.5μm以上の異物の含有数が、20000個/g以下である。好ましくは10000個/g以下、より好ましくは6000個/g以下、最も好ましくは3000個/g以下である。0.5μm以上の異物数が20000個/g以下であれば、コア材の光散乱損失が増大するのを抑制でき、POFにおいて優れた伝送特性を備えたものとなる。粒子径0.5μm以上の異物の含有数が10000個/g以下、6000個/g以下、3000個/g以下となるに伴い、かかる効果をより顕著に得ることができる。共重合体(X)中の異物数を、20000個/g以下にする方法としては、重合に供する原料の単量体、溶剤等にフィルター濾過を施したり、重合操作の前に重合設備を、含有異物量の少ない溶剤で洗浄したり、原料の単量体、溶剤等を重合設備に投入してから共重合体(X)を取り出す工程までを閉塞系にして、外界からの異物の混入を極力下げる方法などを挙げることができる。
【0070】
また、上記共重合体(X)に含まれる一般式(2)
【0071】
【化10】

【0072】
(式中、R4〜R8はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、水酸基または炭素数1〜5のアルコキシ基を表す。)で示される化合物の含有量は、20ppm以下であることが好ましく、10ppm以下がより好ましい。含有量が20ppm以下であれば、POFにおいて、該化合物に起因する着色を抑制し、初期の伝送特性や高温環境下での伝送特性の低下を抑制することができる。
【0073】
上記共重合体(X)に含まれる残留硫黄化合物の量は20ppm以下であることが好ましく、10ppm以下がより好ましい。20ppm以下であれば、着色が抑制され高温下に置かれるPOFにおいて光伝送損失の低減を抑制することができ、優れた伝送特性を有するものとなる。残留硫黄化合物の量を10ppm以下とするには、連鎖移動剤として用いるメルカプタン化合物の添加量や重合条件(温度、時間等)を適宜調整することができる。残留硫黄化合物には、共重合体(X)中で遊離状態にあるメルカプタン化合物、ジスフィルド化合物、およびモノマーとメルカプタンが結合した化合物などを含むものである。
【0074】
さらに、共重合体(X)がMMA単位を含有する場合には、共重合体(X)に含まれるMMAダイマーの含有量が5ppm以下であることが好ましく、1ppm以下であることがより好ましい。5ppm以下であれば、着色が抑制されPOFにおいて光伝送損失の低減を抑制することができ、優れた伝送特性を有するものとなる。MMAダイマーの含有量を5ppm以下とするには、ビニル重合反応を行う前処理として、単量体混合物の窒素ガスによるバブリング等で単量体中の溶存酸素を低減する方法や、単量体混合物に公知の酸化防止剤などを添加する方法等、公知の技術を適用することができる。
[光ファイバー]
本発明のプラスチック光ファイバーとしては、上記本発明のプラスチック光ファイバー用コア材を含むコア部と、コア部の屈折率より1%以上低い屈折率を有するクラッド部から構成され、25−5mのカットバック法により測定した伝送損失が400dB/Km以下のものであれば、特に制限されるものではない。
【0075】
本発明のプラスチック光ファイバーは、コアの外周部に、コア材の屈折率より1%以上低い屈折率を有する重合体から構成されるクラッドを設けたものであり、コア材の屈折率より1%以上低い屈折率を有するクラッド材を設けることにより、開口角を大きくし、POFを曲げた場合の光の漏れを小さくして伝送特性をよくすることができる。
【0076】
本発明のPOFコア材の外周部に設けられるクラッドとしては1層構造に限定せず、2層以上の多層構造を有するものであってもよい。
【0077】
本発明のPOFに用いるクラッド材としては、公知のフッ素系重合体などを用いることができる。具体的には、含フッ素オレフィン系樹脂やフッ素化メタクリレート系共重合体を挙げることができる。かかる含フッ素オレフィン系樹脂としては、具体的に、フッ化ビニリデン単位(VdF)とテトラフルオロエチレン単位(TFE)とからなる共重合体、VdFとヘキサフルオロプロピレン単位(HFP)との共重合体、VdFとTFEとHFPとの共重合体、VdFとTFEとHFPと(パーフルオロ)アルキルビニルエーテルとの共重合体、VdFとヘキサフルオロアセトンとの共重合体、VdFとトリフルオロエチレンとの共重合体、VdFとTFEとヘキサフルオロアセトンとの共重合体、エチレンとTFEとHFPとの共重合体等を挙げることができる。
【0078】
一方、フッ素化メタクリレート系共重合体としては、具体的に、下記一般式(i)
CH2=CX−COO(CH2m(CF2nY (i)
(式中、Xは水素原子、フッ素原子またはメチル基を表し、Yは水素原子またはフッ素原子を表し、mは1または2、nは1〜12のいずれかの整数を表す。)で示されるフルオロアルキル(メタ)クリレート単位体(a)15〜90質量%と、他の共重合可能な単量体(b)10〜85質量%との共重合体が好ましい。クラッド材のガラス転移温度が適宜条件を満たすように、上記の単量体の組成範囲で、他の共重合可能な単量体(b)として、透明性が低下しないような単量体成分を用いることができる。
【0079】
このような単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸(1−メチルトリシクロヘプチル)、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸(1−メチルヘキサシクロドデシル)等の脂環式基を側鎖に有する(メタ)アクリル酸脂環式エステル;
(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸芳香族エステル;(メタ)アクリル酸ヘキサフルオロネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキサフルオロイソブチル等の分岐状フッ素化アルキル基を側鎖に有する(メタ)アクリル酸フッ素化エステル;
N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のN−置換マレイミド;
α−フルオロアクリル酸メチル、α−フルオロアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、α−フルオロアクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル等のα−フルオロアクリル酸エステル等を挙げることができる。これらの単量体から選ばれる少なくとも1種類以上の単量体を適宜選択して、重合体において屈折率や透明性、機械的強度、耐熱分解性等が、POFの使用用途に要求される物性を損なわないように、その配合比、重合方法により共重合することができる。
【0080】
本発明のPOFは、SI型POFの他、複数の島部が互いに隔てられた状態で共通の海部により一体化されてなる海島型のマルチコアPOFとすることもできる。海島型のマルチコアPOFにおいては島部全体をコアとすることも島部をコアとクラッドから構成することも可能である。
【0081】
本発明のPOFの製造方法としては、公知の方法を使用することができ、例えばクラッド材を酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の溶媒に溶解して得られる溶液を、コーティング法、浸漬法によって別途成形したコアの表面に被覆することによりクラッドを形成することができる。また、SI型POFを製造する場合、脱気押出し機に直結した複合紡糸ノズルに、上記共重合体(X)と、上記クラッド材を供給して、コア及びクラッドを押出賦形してPOFを得る複合紡糸法は、紡糸安定性や生産性に優れている点で好ましい。
【0082】
また、本発明のPOFはクラッドの外周に保護層を有するものであってもよい。かかる保護層の材料としては、例えば、VdFとTFEとの共重合体、VdFとTFEとHFPとの共重合体、VdFとTFEとHFPとパーフルオロ(フルオロ)アルキルビニルエーテルとの共重合体、VdFとTFEとパーフルオロ(フルオロ)アルキルビニルエーテルとの共重合体、エチレンとTFEとHFPとの共重合体、TFEとHFPとの共重合体、VdFとTFEとヘキサフルオロアセトンとの共重合体等を挙げることができる。
【0083】
上記保護層はコアの外周部にクラッドを形成する場合と同様にして、クラッドの外周部に形成することができる。即ち、コーティング法や浸漬法を用いたり、複合紡糸ノズルを用いてコア、クラッド及び保護層を押出賦形したりすることによって、保護層を形成することができる。海島型のPOFについても公知の複合紡糸ノズルなどを用いてPOFの外周に保護層を形成することができる。
【0084】
さらに、本発明のPOFは、耐屈曲性および耐湿熱性を向上させるためにクラッドの外周あるいは保護層の外周に被覆層を密着配設してPOFケーブルとすることができる。この被覆層は、コアと直接接しないので、結晶化により透明性が低下しても特に問題は生じない。被覆層の材料としては、POFの被覆材として一般的に用いられている種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、POFケーブルが使用される環境に応じて、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂、各種UV・紫外線硬化樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上の混合物を用いることができる。上記被覆材を形成する方法としては、被覆材の物性によって適宜選択することができる。走行するPOFの側面から溶融された被覆材を流し込んで被覆するT型ダイを用いてPOFに被覆する方法が加工性に優れているので好ましい。
【0085】
本発明のPOFであって、25−5mのカットバック法により測定した伝送損失が400dB/Km以下の伝送特性を有するPOFは、半導体分野や食品分野におけるセンサー用途や、あるいは自動車内LANにおける安全制御用途等に用いることが可能となる。
【実施例】
【0086】
次に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらによって限定されるものではない。各実施例、比較例において用いた単量体の略号は、以下の化合物を示す。
MMA:メタクリル酸メチル、
RHMA:α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル
MAA:メタクリル酸、
α3FA:α−フルオロアクリル酸2、2、2−トリフルオロエチル、
αFMe:α−フルオロアクリル酸メチル、
VdF:フッ化ビニリデン、
TFE:テトラフルオロエチレン、
HFP:ヘキサフルオロプロピレン、
PFPVE:パーフルオロプロピルビニルエーテル、
PC:ポリカーボネート系樹脂(出光石油化学社製、商品名:タフロンA1700)
PMMA:ポリメタクリル酸メチル(三菱レイヨン社製)
PA12:ナイロン12(ダイセル・デグッサ社製、商品名:ダイアミドL1640)
[屈折率]
得られた重合体(ペレット)を用いて、溶融プレスにより厚さ200μmのフィルム状の試験片を形成し、アッベの屈折計を用い、25℃におけるナトリウムD線の屈折率(nD25)を測定した。
[ガラス転移温度(Tg)]
示差走査熱量計(DSC)(株)リガク社製、装置名:DSC−8230)を使用した。得られた重合体(ペレット)を、DSC測定用のアルミニウムパンセルに約10mg採取して、窒素フロー約50ml/minの条件下で、昇温速度10℃/分で220℃まで昇温し、5分間保持して溶融させた後、10℃/分で0℃まで降温し、再度昇温速度10℃/分で昇温、5分間保持、10℃/分で降温を行い、始点法でこの時のTgを求めた。
[ダイナミックTG]
得られた重合体(もしくは重合体溶液あるいはペレット)を、テトラヒドロフランに溶解もしくは希釈し、次いで、過剰のヘキサンもしくはメタノールヘ投入して再沈殿を行なった。取り出した沈殿物を真空乾煤(1mmHg(1.33hPa)、80℃、3時間以上)することにより、揮発成分などを除去し、得られた白色固形状の樹脂を以下の方法(ダイナミックTG法)で分析した。
測定装置:ThermoPlus2 TG−8120 DynamicTG ((株)リガク社製)
測定条件:試料量5〜10mg
昇温速度:10℃/min
雰囲気 :窒素フロー 200ml/min
方法 :階段状等温制御法(60℃〜500℃の間で重量減少速度値0.005%/sec以下で制御)
[ラクトン環化率]
ラクトン環化率は式(I)により求めた。
【0087】
【数1】

【0088】
ラクトン環化率を、重合で得られた重合体組成からすべての水酸基がメタノールとして脱アルコールした際に起こる重量減少量を基準にし、ダイナミックTG測定において重量減少が始まる前の150℃から重合体の分解が始まる前の300℃までの脱アルコール反応による重量減少から求めた。
【0089】
具体的には、ラクトン環構造を有した重合体のダイナミツックTG測定において150℃から300℃までの間の重量減少率の測定を行い、得られた実測重量減少率を(X)とする。
他方、当該重合体の組成から、その重合体組成に含まれる総ての水酸基がラクトン環の形成に関与するためアルコールになり脱アルコールすると仮定したときの理論重量減少率(すなわち、その組成上において100%脱アルコール反応が起きたと仮定して算出した重量減少率)を(Y)とする。理論重量減少率(Y)は、より具体的には、重合体中の脱アルコール反応に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体のモル比、すなわち当該重合体組成における前記原料単量体の含有率から算出することができる。これらの値(X)、(Y)を脱アルコール計算式:
【0090】
【数2】

【0091】
に代入してその値を求め、%で表記してラクトン環化率を求めた。
【0092】
実施例1で得たペレットにおいて、ラクトン環構造の占める割合を計算した。この重合体の理論重量減少率(Y)を求めた。メタノールの分子量は32であり、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの分子量は116であり、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの重合体中の含有率(重量比)は組成上40.0重量%であるから、(32/116)×40.0≒11.03重量%となる。他方、ダイナミックTG測定による実測重量減少率(X)は0.43重量%であった。これらの値を上記の脱アルコール計算式に当てはめると、1一(0.43/11.03)≒0.961となるので、ラクトン環化率として96.1%を得た。
[水酸基残存率]
水酸基残存率は、下記式(II)で求めた。
【0093】
【数3】

【0094】
ポリマー1g中のα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステルユニット由来の水酸基残存量(P)は、重合体のダイナミックTG測定により得られた実測重量減少率(X)を脱離するアルコールの分子量で除して求めた。
【0095】
実施例1で得たペレットにおける水酸基残存率を計算した。この重合体の全単量体成分1g中のα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル量[mol]は、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの分子量は116であり、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの全単量体中の含有率(重量比)は40.0重量%であるから、1×(40/100)/116≒3.45mmolとなる。他方、ダイナミックTG測定による実測重量減少率(X)は0.43重量%であり、脱離するメタノールの分子量は32であるので、ポリマー1g中のα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステルユニツト由来の水酸基残存量(P)は1×(0.43/100)/32≒0.134mmolとなり、水酸基残存率は(0.134/3.45)×100=3.9%であった。
[重量平均分子量]
重合体の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(東ソー社製GPCシステム)を用いて測定し、ポリスチレン換算分子量として求めた。
[重合禁止剤の定量方法]
ポリマー中の重合禁止剤(メトキノン)の定量は次の手順に従って行った。氷酢酸溶媒中に2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルまたはジメチルホルムアミドに溶解したポリマーペレットを溶解させ、飽和亜硝酸ナトリウム水溶液を添加し発色させた。分光光度計(波長420nm)で吸光度を測定し、事前に作成した検量線によりメトキノン量を定量した。
[パーテイクルカウンターによる異物数の測定]
ペレットの場合には、ペレット1gに対してジメチルアセトアミド(DMAc) 100gを加え、一晩放置して十分溶解させた後、パーテイクルカウンター装置(Pacific Sientific社製、装置名:ARS−2)で、大きさ0.5μm以上の異物数を測定した。重合体溶液の場合には、ポリマー溶液10gに対してDMAc90gを加え、上と同様の手順で異物数を測定した。なお、DMAcは、市販品をテフロン製フィルター(口径0.22μm)で濾過して、DMAc中の大きさ0.5μm以上の異物数が100個/g以下になることを確認した後、上記の測定に供した。
[MMAダイマーの定量]
得られた重合体(重合体溶液、あるいはPOF/ペレット)を塩化メチレンに溶解し、ガス・クロマトグラフィー(島津製作所社製、装置名:GC−8A)によりMMAダイマーを測定した。事前に作成した検量線によりMMAダイマーを定量した。
[残量硫黄化合物の定量]
得られた重合体(POF/ペレット)を塩化メチレンに溶解し、SCD検出器(Sulfur Chemiluminescence Detector )を装着したガス・クロマトグラフィー(島津製作所社製、装置名:GC−8A)により残量硫黄化合物を測定した。
[POFの伝送特性]
励振NA0.1、測定波長650nmにおけるPOFの伝送損失を25m−5mカットバック法にて測定した。
[POFの耐熱試験]
POFケーブルを、温度125℃のオーブンに1000時間放置した時の伝送損失(dB/km)を、25m−5mカットバック法により測定した。測定波長が650nm、励振NAが0.1の光を用いた。
[実施例1]
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した2m3の耐圧反応釜を、フイルターを通したメチルエチルケトン(MEK)で洗浄し、釜内の0.5μm以上の異物量を1000個/g以下とした。この反応釜に、蒸留により精製し、重合禁止剤であるメトキノン量を20ppmに調整した2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル92.0kg、メタクリル酸メチル126.5kg、メタクリル酸11.5kg、MEK224.0kg、n−ブチルメルカプタン0.46kgをフィルターを通して仕込んだ。これに、30分窒素をバブリングし、釜内の溶存酸素量を0.2mg/Lとした。これを90℃まで昇温し、還流したところで、開始剤として2,2´一アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.23kg、MEK6kgからなる溶液を5時間かけて滴下しながら還流下(約80℃〜90℃)で溶液重合を行い、常圧で1時間、さらに、反応釜内を加圧し、90〜95℃の間で3時間熟成を行った。
【0096】
得られた反応溶液の一部を取り出し、先に記載の方法でダイナミックTGの測定を行なったところ、2.68%の重量減少を検知し、ラクトン環化率は76%であった。
【0097】
次いで、上記の環化縮合反応で得られた重合体溶液を、バレル温度260℃、回転数100rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個とフォアベント数4個のベントタイプスクリュー2軸押出機(口径29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.5kg/時間の処理速度で導入し、該押出機内で環化縮合反応と脱揮を行い、押し出すことにより、透明なペレットを得た。
得られたペレットについて、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.43%の重量減少率を検知し、ラクトン環化率は96.0%、水酸基残存率は3.9%であった。また、このペレットの重量平均分子量は66000であり、ガラス転移温度は149℃、屈折率は1.510であった。このペレットに含まれるメトキノンは1.1ppm、MMAダイマーは1.4ppm、残留硫黄化合物は8ppmであった。
[実施例2]
実施例1に記載のベントタイプスクリュー2軸押出機に、実施例1で得られた重合体溶液をコア材用ポリマーとして供給し、さらにスクリュー単軸押出機(口径15mm、L/D=20)にVdF/TFE/HFP共重合体(商品名:THV415、住友3M(株)社製、屈折率1.360)のペレットをクラッド材用ポリマーとして供給し、この2つの押出機に直結した2層構造の複合紡糸ノズルから、該重合体を同時に押し出してコア/クラッド構造からなるPOFを製造した。このときの複合紡糸ノズルの温度は225℃であった。170℃に加熱した延伸部にこのPOFを通過させ2.4倍に延伸して、最終的にSI型POFを製造した。このPOFの直径は1mmでクラッドの厚みは10μm、コアの直径は980μmであった。
【0098】
得られたPOFを、適当な長さに切断して塩化メチレン中で一晩放置して、コア材ポリマーだけを溶解した後、パーテイクルカウンターにより塩化メチレン中の異物数の数を測定した。コア材のポリマー1g当たりに含まれる0.5μm以上の異物数は4500個/grであった。
【0099】
励振NA0.1、測定波長650nmにおけるPOFの伝送損失を25m−5mカットバック法にて測定したところ390dB/kmであった。また、このPOFを125℃の雰囲気中に1000時間放置した後の損失増加は110dB/kmであった。
[実施例3、4]
表1に示したクラッド材を用いた点を除き、実施例2と同様にしてPOFを作製した。得られたPOFの各種特性を評価し、その結果を表1に示す。
[実施例5〜7]
表2に示したコア材及びクラッド材を用いた点を除き、実施例2と同様にしてPOFを作製した。得られたPOFのコア材ポリマーの各種物性を評価し、その結果を表2に示した。また、得られたPOFの各種特性を評価し、その結果を表1に示す。
[実施例8〜10]
実施例2及び実施例4のPOFの外周部に、被覆用ダイを用いてポリアミド12樹脂(ダイセル・デグッサ社製、商標名:ダイアミド-L1640)を被覆し、直径1.5mmのPOFケーブルを作製し、評価を行った。結果を表3に示す。
[比較例1、2]
表1に示したコア材及びクラッド材を用いた点を除き、実施例2と同様にしてSI型POFを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例2〜10、比較例1、2の結果]
表1の実施例2〜7で示したように、POFのコア材が、ラクトン環構造を有する共重合体(X)により構成される場合、得られたPOFの初期の伝送特性、耐熱性は良好であった。表2の実施例8〜10で示したように、ポリアミド12樹脂を被覆層に設けたPOFケーブルは、初期の伝送特性が良好であった。
【0100】
比較例1に記載したように、POFのコア材がPMMAから構成される場合、125℃の耐熱試験のときに、POFがカール状に収縮してしまい、測定不可であった。また、比較例2に記載したように、POFのコア材がポリカーボネート系樹脂から構成される場合、POFケーブルは初期の伝送特性が劣っていた。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明のPOFは、半導体分野や食品分野におけるセンサー用途や、あるいは自動車内LANにおける安全制御用途のように、環境温度が115℃以上になるような空間で用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)と、該α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)とビニル重合可能な単量体(B)とを含む単量体混合物を共重合した後、環化縮合反応させることにより形成された、一般式(1)
【化1】

(式中、R1およびR2、R3は独立して水素原子または炭素数1〜20の酸素原子を含んでいてもよい有機残基を示す。)で表されるラクトン環構造を有し、ガラス転移温度が115℃〜160℃の範囲にある共重合体(X)からなるプラスチック光ファイバー用コア材あって、
共重合体(X)に含まれるパーテイクルカウンターで測定した0.5μm以上の異物数が20000個/g以下であることを特徴とするプラスチック光ファイバー用コア材。
【請求項2】
一般式(2)
【化2】

(式中、R4〜R8は独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、水酸基または炭素数1〜5のアルコキシ基を示す。)で表される化合物を添加して保存したα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)と、該α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)とビニル重合可能な単量体(B)とを含む単量体混合物を共重合した後、環化縮合反応させることにより形成された、一般式(1)
【化3】

(式中、R1およびR2、R3は独立して水素原子または炭素数1〜20の酸素原子を含んでいてもよい有機残基を示す。)で表されるラクトン環構造を有し、ガラス転移温度が115℃〜160℃の範囲にある共重合体(X)からなるプラスチック光ファイバー用コア材であって、
単量体混合物に含まれるα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)中の一般式(2)で表される化合物の含有量が100ppm以下であることを特徴とするプラスチック光ファイバー用コア材。
【請求項3】
共重合体(X)に含まれる一般式(2)で表される化合物の含有量が20ppm以下であることを特徴とする請求項2記載のプラスチック光ファイバー用コア材。
【請求項4】
共重合体(X)に含まれる硫黄化合物の含有量が20ppm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか記載のプラスチック光ファイバー用コア材。
【請求項5】
α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体(A)とビニル重合可能な単量体(B)がメタクリル酸メチルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のプラスチック光ファイバー用コア材。
【請求項6】
共重合体(X)に含まれるメタクリル酸メチルのダイマーの含有量が5ppm以下であることを特徴とする請求項5記載のプラスチック光ファイバー用コア材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載のプラスチック光ファイバー用コア材を含むコア部と、コア部の屈折率より1%以上低い屈折率を有するクラッド部から構成され、25−5mのカットバック法により測定した伝送損失が400dB/Km以下であることを特徴とするプラスチック光ファイバー。

【公開番号】特開2007−58047(P2007−58047A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245926(P2005−245926)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】