説明

プラスチック基材用水性接着剤、それを用いた積層体及び偏光板

【課題】比較的長期間放置等した場合であっても、プラスチック基材に対して優れた接着強さを発現可能なプラスチック基材用水性接着剤を提供する。
【解決手段】疎水性ポリイソシアネート(A)と、ノニオン性基及びイソシアネート基を有するビニル系重合体(B)と、水系媒体とを含有してなり、前記疎水性ポリイソシアネート(A)が、前記ビニル系重合体(B)によって水性媒体中に分散されてなることを特徴とするプラスチック基材用水性接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、食品包装フィルム、及びその他産業資材フィルム等のプラスチックフィルムの製造や、それらの貼り合せに使用することのできるプラスチック基材用水性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)等に使用される光学フィルムとしては、一般的に、ヨウ素等の二色性材料が含浸したポリビニルアルコール系フイルムからなる偏光子に、トリアセチルセルロースや熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂等からなる透明な保護フイルムが積層したものが知られている。
【0003】
前記偏光子と前記保護フィルムとの接着には、従来より水系の接着剤が好ましく使用されている。かかる接着剤としては、液晶ディスプレイが屋外をはじめとする様々な環境下で使用されるなかで、例えば高温多湿環境下であっても、プラスチック基材に対して優れた接着強さを長期間に渡り維持可能なものが求められており、とりわけ、湿気等の水の影響によっても接着強さの低下を引き起こしにくい性質、いわゆる耐水性に優れた接着剤が、産業界から求められている。
【0004】
前記したようなプラスチック基材に対して、優れた耐水性等を発現可能な接着剤としては、例えば分子内に水分散性成分を有するイソシアネート化合物を含有する水分散性のイソシアネート系接着剤からなる偏光板用接着剤が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、前記偏光板用接着剤中に含まれるイソシアネート化合物は、前記偏光板用接着剤を配合後、長期間放置した場合に、イソシアネート基と水との反応によって高分子量化し、その結果、本来発現されるべきはずの接着強さの低下等を引き起こす場合があった。
前記接着剤にみられるような現象は、イソシアネート基含有化合物を含む水性接着剤を、配合後概ね5〜6時間程度放置した場合に、一般に引き起こされうるものである。そのため、現在、前記接着剤を用いて偏光板等の各種積層体を製造する場合、基材上へ該接着剤を塗工等する直前に該接着剤を配合する等の対策をとっているのが現状である。
しかし、前記積層体の製造上、接着剤の配合時期が制限されると、その製造工程の改良が制限されてしまうため、積層体の生産効率や不良率等を改善することが困難となる場合がある。したがって、産業界からは、接着剤配合液を比較的長時間にわたり放置した場合であっても、品質への影響を及ぼさず、プラスチック基材に対する優れた接着強さを発現可能なプラスチック基材用水性接着剤の開発が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−107245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、比較的長期間放置等した場合であっても、プラスチック基材に対して優れた接着強さを発現可能なプラスチック基材用水性接着剤を提供することである。
【0008】
また、本発明が解決しようとする課題は、前記プラスチック基材用水性接着剤によって強固に接着された積層体、及び偏光板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ノニオン性基及びイソシアネート基を有するビニル系重合体を用いることで疎水性ポリイソシアネートを水系媒体中に分散させたプラスチック基材用水性接着剤によれば、本発明の課題を解決できることを見出した。
【0010】
即ち、本発明は、疎水性ポリイソシアネート(A)と、ノニオン性基及びイソシアネート基を有するビニル系重合体(B)と、水系媒体とを含有してなり、前記疎水性ポリイソシアネート(A)が、前記ビニル系重合体(B)によって水性媒体中に分散されてなることを特徴とするプラスチック基材用水性接着剤を提供するものである。
なお、「疎水性」なる技術用語は、一般的にはある物質が水との間の相互作用が弱く、水との親和力が弱い性質をもつことと解されているが、本明細書において「疎水性」というときは、ある物質がそれ単独では、実質的に水に分散又は溶解しない性質をもつことを意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプラスチック基材用水性接着剤は、水分散後のポットライフが長いために、比較的長期間放置等した後であっても、優れた塗工作業性を有し、かつプラスチック基材に対して優れた接着強さを発現可能であり、更には透明性、耐久性等に優れた接着剤層を形成可能であることから、光学フィルム、食品包装フィルム、その他産業資材フィルムの製造に使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、発明を実施するための最良の形態について詳述する。
本発明のプラスチック基材用水性接着剤は、疎水性ポリイソシアネート(A)と、ノニオン性基及びイソシアネート基を有するビニル系重合体(B)と、水系媒体と、必要に応じてその他の添加剤等とを含有してなり、前記疎水性ポリイソシアネート(A)が、前記ビニル系重合体(B)によって水性媒体中に分散されてなる。
【0013】
本発明のプラスチック基材用水性接着剤は、前記ビニル系重合体(B)が前記疎水性ポリイソシアネート(A)を乳化分散させるための分散剤として作用することで、前記疎水性ポリイソシアネート(A)が粒子内部に、前記ビニル系重合体(B)が粒子表面に局在化した粒子が、水系分散体中に分散したものであると考えられる。
【0014】
はじめに、本発明で使用する水系媒体とは、水、及び水と混和する有機溶剤のことである。水と混和可能な有機溶剤の例としては、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のアミド類、等を使用することができる。本発明においては、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、又は水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
【0015】
次に、本発明で使用する疎水性ポリイソシアネート(A)について説明する。
前記疎水性ポリイソシアネート(A)は、それ単独では実質的に水に分散又は溶解できないものであり、本発明のプラスチック基材用接着剤中では、自己水分散能を有する前記ビニル系重合体(B)によって水分散されている。
【0016】
かかる疎水性ポリイソシアネート(A)としては、例えば1,4−テトラメチレンジイソシアネート、エチル(2,6−ジイソシアナート)ヘキサノエート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアナート−4−イソシアナートメチルオクタン、2−イソシアナートエチル(2,6−ジイソシアナート)ヘキサノエート等の脂肪族トリイソシアネート;1,3−または1,4−ビス(イソシアナートメチルシクロヘキサン)、1,3−または1,4−ジイソシアナートシクロヘキサン、3,5,5−トリメチル(3−イソシアナートメチル)シクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,5−または2,6−ジイソシアナートメチルノルボルナン等の脂環族ジイソシアネート;2,5−または2,6−ジイソシアナートメチル−2−イソシネートプロピルノルボルナン等の脂環族トリイソシアネート;m−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−m−キシリレンジイソシアネート等のアラルキレンジイソシアネート;m−またはp−フェニレンジイソシアネート、トリレン−2,4−または2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナ ート−3,3’−ジメチルジフェニル、3−メチル−ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート; トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアナートフェニル)チオホスフェート等の芳香族トリイソシアネート、等を使用することができる。
【0017】
また、前記疎水性ポリイソシアネート(A)としては、ウレトジオン構造を有するポリイソシアネートや、イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネートやビュレット構造を有するポリイソシアネートやオキサダイアジントリオン構造を有するポリイソシアネートやアロファネート構造を有するポリイソシアネート等を使用することができる。
【0018】
前記疎水性ポリイソシアネート(A)としては、前記したなかでも、該イソシアネート基の水との反応を抑制し、良好な作業安定性及び接着強さの発現の維持、及び接着剤層の耐候性を向上させるうえで、脂肪族系ジイソシアネートもしくはポリイソシアネート、または脂環族系ジイソシアネートもしくはポリイソシアネートを使用することが好ましい。
また、前記疎水性ポリイソシアネート(A)としては、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット構造を有するポリイソシアネート、ウレトジオン構造を有するポリソシアネート、アロファネート構造を有するポリイソシアネート、または、ジイソシアネートと3価以上のポリオールとを反応して得られるポリイソシアネート等を使用することが、耐候性及び耐久性に優れた接着剤層を形成するうえで好ましい。
【0019】
また、本発明では、前記疎水性ポリイソシアネート(A)のほかに、必要に応じて親水性ポリイソシアネートを、本発明の効果を阻害しない範囲で併用してもよい。
【0020】
次に、本発明で使用するノニオン性基及びイソシアネート基を有するビニル系重合体(B)について説明する。
ビニル系重合体(B)は、前記疎水性ポリイソシアネート(A)を水系媒体中に分散させることができる。また、前記ビニル系重合体(B)は、特に前記疎水性ポリイソシアネート(A)が有するイソシアネート基の水との反応による高分子量化を抑制することができる。また、ビニル系重合体(B)は、イソシアネート基を有するものであることから、接着剤層形成の際に該イソシアネート基を介して反応が進行する。したがって、該ビニル系重合体(B)を含有する本発明のプラスチック基材用水性接着剤によれば、耐候性及び耐久性に優れた接着剤層を形成することができる。
【0021】
前記ビニル系重合体(B)は、例えばアクリル系重合体、フルオロオレフィン系重合体、ビニルエステル系重合体、芳香族ビニル系重合体、ポリオレフィン系重合体等のうち、親水性基としてノニオン性基と、イソシアネート基とを有するものを使用することができる。なかでも、疎水性ポリイソシアネート(A)との相溶性を向上させる観点から、ノニオン性基及びイソシアネート基を有する、アクリル系重合体やフルオロオレフィン系重合体を使用することが好ましい。
【0022】
前記ノニオン性基としては、例えばポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)基、及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を使用することができる。なかでもオキシエチレン単位を有するポリオキシアルキレン基を使用することが、親水性をより一層向上させるうえで好ましい。
【0023】
前記ノニオン性基は、高分子量化に伴う粘度上昇を抑制する観点から、末端が封鎖されていることが好ましい。例えばポリオキシアルキレン基の片末端に存在する水酸基が、アルコキシ基や置換アルコキシ基等によってエーテル結合を形成し封鎖されているものや、エステル結合を形成し封鎖されていることが好ましい。
【0024】
ノニオン性基の末端封鎖に使用されうる官能基はアルコキシ基であることが好ましく、なかでもメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の低級アルコキシ基であることが好ましい。
【0025】
前記ビニル系重合体(B)は、本発明の効果を損なわない範囲であれば任意の量のノニオン性基を有していてもよい。具体的には、ノニオン性基の存在量は、ビニル系重合体(B)全量の8〜80質量%であることが好ましく、12〜65質量%であることがより好ましく、15〜55質量%であることが特に好ましい。
【0026】
また、ノニオン性基としての前記ポリオキシアルキレン基の数平均分子量は、本発明のプラスチック基材用水性接着剤の接着強さ等の特性を安定して発現し、かつ該接着剤の硬化性を維持する観点から、130〜10,000範囲内であることが好ましく、150〜6,000の範囲内であることがより好ましく、200〜2,000の範囲内であることが特に好ましい。
【0027】
また、前記ビニル系重合体(B)の重量平均分子量は、5,000〜200,000で、さらに好ましくは8,000〜70,000である。かかる範囲の重量平均分子量を有するビニル系重合体(B)を用いることによって、長期間保管等された後であっても塗工作業性及び接着強さの点で品質の安定したプラスチック基材用水性接着剤を得ることができる。
【0028】
また、前記ビニル系重合体(B)としては、親水性及び疎水性のバランスを調整することでより一層良好な水分散性を発現する観点から、前記ノニオン性基のほかに疎水性基を有しているものが好ましい。
【0029】
前記疎水性基としては、例えば総炭素原子数が4個以上有するものを使用することが好ましく、4〜22個有するものがより好ましく5〜18個有するものが特に好ましい。
総炭素原子数が4個以上の疎水性基としては、例えばn−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基もしくはn−オクタデシル基等のアルキル基;シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ジシクロペンタニル基、ボルニル基、イソボルニル基等のシクロアルキル基;シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、2−シクロペンチルエチル基、2−シクロヘキシルエチル基等のシクロアルキル基が置換したアルキル基;フェニル基、4−メチルフェニル基もしくは1−ナフチル基等のアリール基もしくは置換アリール基;ベンジル基や2−フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられるが、なかでもアルキル基、シクロアルキル基もしくはシクロアルキル基が置換したアルキル基であることが好ましい。
【0030】
前記したような疎水性基は、前記ビニル系重合体(B)全体に対して、1〜45質量%の範囲で存在することが好ましく、5〜30質量%の範囲で存在することがより好ましい。
【0031】
また、前記ビニル系重合体(B)は、各種方法で製造できるが、例えば疎水性ポリイソシアネート(b1)と、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、及び活性メチレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の活性水素含有基及びノニオン性基を有するビニル系重合体(b2)とを反応させる方法(1)や、イソシアネート基を有するビニル系単量体及びノニオン性基含有ビニル系単量体等を共重合する方法(2)や、イソシアネート基含有ビニル系重合体にノニオン性基含有化合物を反応させる方法(3)等で製造することができる。とりわけ、前記方法(1)は、製造方法が簡便であるため好ましい。
【0032】
まず、前記方法(1)について詳細に説明する。
前記疎水性ポリイソシアネート(b1)と前記ビニル系重合体(b2)とは、例えば、不活性ガス等の雰囲気下、それらを一括で混合し反応する方法(i)、疎水性ポリイソシアネート(b1)にビニル系重合体(b2)溶液を添加しながら反応する方法(ii)、ビニル系重合体(b2)溶液に疎水性ポリイソシアネート(b1)を添加しながら反応する方法(iii)等により得ることができる。
前記疎水性ポリイソシアネート(b1)と前記ビニル系重合体(b2)との反応は、ゲル化物の生成を抑制する観点から、前記方法(i)または(ii)の方法で行うことが好ましい。また、前記反応は、50〜130℃程度の温度で0.5〜20時間程度加熱・攪拌することで進行させることが好ましい。また、前記反応の際には、疎水性ポリイソシアネート(b1)が有するイソシアネート基と、前記ビニル系重合体(b2)が有する活性水素含有基との反応を促進可能な公知慣用の各種の触媒を使用してもよい。
【0033】
前記ビニル系重合体(B)の製造に使用可能な疎水性ポリイソシアネート(b1)としては、前記疎水性ポリイソシアネート(A)として例示したものと同様のものを使用することができる。
【0034】
また、前記疎水性ポリイソシアネート(b1)と反応しうる、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、及び活性メチレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の活性水素含有基及びノニオン性基を有するビニル系重合体(b2)としては、アクリル系重合体、フルオロオレフィン系重合体、ビニルエステル系重合体、芳香族ビニル系重合体、ポリオレフィン系重合体等のうち、親水性基としてノニオン性基と、前記したような各種活性水素含有基とを有するものを使用することができる。なかでも、疎水性ポリイソシアネート(A)との相溶性を向上させる観点から、アクリル系重合体やフルオロオレフィン系重合体を使用することが好ましい。
【0035】
前記ビニル系重合体(b2)が有する活性水素含有基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基及び活性メチレン基が挙げられ、特に好ましいものは水酸基およびカルボキシル基である。前記ビニル系重合体(b2)は、前記活性水素含有基の1種のみを有するものであっても、2種以上を有するものであってもよい。
【0036】
前記活性水素含有基は、各種の方法でビニル系重合体(b2)中に導入することができるが、例えば各種の単量体を、重合開始剤の存在下でラジカル重合法等により共重合することによってビニル系重合体(b2)を製造する場合には、後述する各種のビニル系単量体とともに、活性水素含有基を有する単量体を共重合することによって、ビニル系重合体(b2)に導入することができる。
【0037】
前記活性水素含有基を有する単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、エチル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、ブチル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノ(2−ヒドロキシプロピル)−モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルエステル、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステル類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を含有するポリオキシアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート類;アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル等の水酸基を含有するアリル化合物;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基を含有するビニルエーテル化合物;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールクロトン酸アミド等の水酸基を有する不飽和カルボン酸アミド化合物;リシノール酸等の水酸基含有不飽和脂肪酸類;リシノール酸アルキル等の水酸基含有不飽和脂肪酸エステル類;前記した各種水酸基含有単量体にε−カプロラクトンが付加した単量体を、単独で使用または二種類以上を使用することができる。
【0038】
また、活性水素含有基としてカルボキシル基を有する単量体の代表的なものとしては、例えば(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチルアクリレート、クロトン酸、ビニル酢酸、アジピン酸モノビニル、セバシン酸モノビニル、イタコン酸モノメチル、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル、コハク酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、フタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ヘキサヒドロフタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ソルビン酸等の不飽和モノカルボン酸類;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。
【0039】
また、活性水素含有基としてアミノ基を有する単量体の代表的なものは、例えば2−(N−メチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(N−エチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(N−n−ブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(N−tert−ブチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−メチルアミノ)エチルクロトネート、2−(N−エチルアミノ)エチルクロトネート、2−(N−ブチルアミノ)エチルクロトネート等の二級アミノ基含有ビニル系単量体が挙げられる。
【0040】
また、活性水素含有基として活性メチレン基を有する単量体の代表的なものは、例えばビニルアセトアセテート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレート、4−アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート、2,3−ジ(アセトアセトキシ)プロピルメタクリレートが挙げられる。
【0041】
前記ビニル系重合体(b2)が有する活性水素含有基は、本発明のプラスチック基材用水性接着剤中に含まれるイソシアネート基と水系媒体との反応の進行を抑制する観点から、前記ビニル系重合体(b2)1000g当たり、0.01〜5モルの範囲であることが好ましく、0.05〜3モルの範囲であることがより好ましく、0.1〜2モルであることが特に好ましい。
【0042】
また、前記ビニル系重合体(b2)が有するノニオン性基としては、前記ビニル系重合体(B)が有するノニオン性基として例示したものと同様のものを使用することができる。
【0043】
前記ノニオン性基は、各種の方法でビニル系重合体(b2)中に導入することができるが、例えば各種の単量体を、重合開始剤の存在下でラジカル重合法等により共重合することによってビニル系重合体(b2)を製造する場合には、後述する各種のビニル系単量体とともに、ノニオン性基含有ビニル系単量体を共重合する方法等により、ビニル系重合体(b2)中に導入することができる。
【0044】
前記ノニオン性基含有ビニル系単量体としては、例えばポリオキシアルキレン基を有する、(メタ)アクリル酸エステル、クロトン酸エステル、イタコン酸エステル、フマル酸エステル、ビニルエーテル等を使用することができ、なかでもポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリル酸エステルを使用することが好ましい。
【0045】
前記ポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリル酸エステルの代表的なものとしては、モノメトキシ化ポリエチレングリコール、モノメトキシ化ポリプロピレングリコール、またはオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とを併有するポリエーテルジオールのモノメトキシ化物等の各種のモノアルコキシ化ポリエーテルジオールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を使用することができる。
【0046】
前記ビニル系重合体(b2)が有するノニオン性基は、本発明のプラスチック基材用水性接着剤中に含まれるイソシアネート基と水系媒体との反応の進行を抑制する観点から、ビニル系重合体(b2)の全量に対して10〜90質量%であることが好ましく、15〜70質量%であることがより好ましく、20〜60質量%であることが特に好ましい。
【0047】
また、前記ビニル系重合体(b2)としては、前記した各種ビニル系単量体の他に、必要に応じてその他の単量体を共重合して得られたものを使用することができる。
【0048】
前記その他の単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート等の炭素原子数が3以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;2−メトキシエチル(メタ)アクリレートもしくは4−メトキシブチル(メタ)アクリレート等の各種のω−アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の総炭素原子数が4以下のカルボン酸のビニルエステル類;クロトン酸メチルもしくはクロトン酸エチル等の炭素原子数が3以下のアルキル基を有する各種のクロトン酸エステル類;ジメチルマレート、ジメチルフマレート、ジメチルイタコネート等の炭素原子数が3以下のアルキル基を有する各種の不飽和二塩基酸ジエステル類;(メタ)アクリロニトリル、クロトノニトリルの等の各種のシアノ基含有ビニル系単量体類;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチエレン、ヘキサフルオロプロピレン等の各種のフルオロオレフィン類;塩化ビニルもしくは塩化ビニリデン等の各種のクロル化オレフィン類;エチレンもしくはプロピレン等の各種のα−オレフィン類;エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル等の炭素原子数が3以下のアルキル基を有する各種のアルキルビニルエーテル類;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピロリジンもしくはN−ビニルピロリドン等の3級アミド基含有ビニル系単量体類、等を使用することができる。
【0049】
また、前記その他の単量体としては、前記ビニル系重合体(b2)に総炭素原子数が4個以上の疎水性基を導入することによって、該ビニル系重合体(b2)が有する親水性基と疎水性基のバランスを適宜調整し、その結果、優れた水分散性を発現できるようにするとともに、プラスチック基材用水性接着剤中に含まれるイソシアネート基と水系媒体との反応の進行を一層抑制することを目的として、総炭素原子数が4個以上の疎水性基を有する単量体を使用することができる。
【0050】
前記総炭素原子数が4個以上の疎水性基を有するビニル系単量体の代表的なものとしては、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等の総炭素原子数が4〜22なるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の各種のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;シクロペンチルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2−シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレートの如きシクロアルキルアルキル(メタ)アクリレート類;ベンジル(メタ)アクリレートもしくは2−フェニルエチル(メタ)アクリレート等の各種のアラルキル(メタ)アクリレート類;スチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の各種の芳香族ビニル系単量体類;ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニルもしくは安息香酸ビニル等の総炭素原子数が5以上のカルボン酸のビニルエステル類;クロトン酸−n−ブチル、クロトン酸−2−エチルヘキシル等の炭素原子数が4〜22のアルキル基を有する各種のクロトン酸エステル類;ジ−n−ブチルマレート、ジ−n−ブチルフマレート、ジ−n−ブチルイタコネート等の炭素原子数が4〜22のアルキル基を少なくとも1つ有する各種の不飽和二塩基酸ジエステル類;n−ブチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル等の炭素原子数が4〜22のアルキル基を有する各種のアルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルビニルエーテル等の各種のシクロアルキルビニルエーテル類、等が挙げられる。
【0051】
前記総炭素原子数が4個以上の疎水性基は、優れた水分散性の付与と、プラスチック基材用水性接着剤中に含まれるイソシアネート基と水系媒体との反応の進行を一層抑制する観点から、前記ビニル系重合体(b2)全体に対して1〜50質量%であり、好ましくは、5〜30質量%である。
【0052】
また、前記その他の単量体としては、反応性の官能基を有するものを使用することができる。例えばトリオルガノシリル基でブロックされた水酸基を有するビニル系単量体、シリルエステル基を含有するビニル系単量体、ヘミアセタールエステル基またはヘミケタールエステル基を含有するビニル系単量体、エポキシ基を含有するビニル系単量体、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体等が挙げられる。
【0053】
前記トリオルガノシリル基でブロックされた水酸基を有するビニル系単量体の代表的なものとしては、2−トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリメチルシロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−トリメチルシロキシブチル(メタ)アクリレート、2−トリエチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリブチルシロキシプロピル(メタ)アクリレートまたは3−トリフェニルシロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−トリメチルシロキシエチルビニルエーテル、4−トリメチルシロキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0054】
前記シリルエステル基を含有するビニル系単量体の代表的なものとしては、トリメチルシリル(メタ)アクリレート、ジメチル−tert−ブチルシリル(メタ)アクリレート、ジメチルシクロヘキシルシリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルクロトネート、アジピン酸のモノビニル−モノトリメチルシリルエステル等が挙げられる。
【0055】
前記ヘミアセタールエステル基またはヘミケタールエステル基を含有するビニル系単量体の代表的なものとしては、1−メトキシエチル(メタ)アクリレート、1−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロパンもしくは2−(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0056】
前記エポキシ基を含有するビニル系単量体の代表的なものとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0057】
前記加水分解性シリル基を有するビニル系単量体の代表的なものとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、3−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、3−(メチルジメトキシシリル)プロピルビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリiso−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン等が挙げられる。
【0058】
前記ビニル系重合体(b2)は、例えば前記した各種単量体を、重合開始剤の存在下でラジカル重合法等により共重合することによって製造することができるが、かかる共重合反応は、有機溶剤中で行うことが簡便で好ましい。
【0059】
前記重合開始剤としては、公知慣用の種々の化合物が使用できる。代表的なものとしては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルブチロニトリル)もしくは2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等の、各種のアゾ化合物類;tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドもしくはジイソプロピルパーオキシカーボネート等が挙げられる。
【0060】
また、前記有機溶剤としては、イソシアネート基に対して不活性なものを使用することが出来る。代表的なものとしては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族系ないしは脂環族系の炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の各種のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、シクロヘキサノン等の各種ケトン類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のポリアルキレングリコールジアルキルエーテル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはエチレンカーボネート等が挙げられ、これらを単独で使用または2種以上を併用することができる。
【0061】
前記有機溶剤としては、イソシアネート基の安定性を維持する観点から、含水率の低いものを使用することが好ましい。また、必要に応じて共沸脱水法等により有機溶剤中に混合している水を脱水したものを使用してもよい。
【0062】
また、前記ビニル系重合体(b2)を製造する際には、前記した有機溶剤の一部または全量に代えて、前記疎水性ポリイソシアネート(A)を使用してもよい。有機溶剤の代わりに疎水性ポリイソシアネート(A)を使用することによって、前記ビニル系重合体(b2)の製造と、前記ビニル系重合体(B)の製造とを並行して進行させることができる。
【0063】
前記ビニル系重合体(b2)の重量平均分子量は、優れた水分散性の付与と、プラスチック基材用水性接着剤中に含まれるイソシアネート基と水系媒体との反応の進行を一層抑制する観点から、3,000〜100,000の範囲であることが好ましく、5,000〜40,000の範囲であることがより好ましい。
【0064】
また、前記疎水性ポリイソシアネート(b1)と前記ビニル系重合体(b2)とは、前記ビニル系重合体(b2)が有する水酸基、カルボキシル基、アミノ基、及び活性メチレン基等の活性水素含有基に対して、前記疎水性ポリイソシアネート(b1)が有するイソシアネート基が過剰となるモル比率で反応させることが好ましい。
【0065】
前記モル比率[疎水性ポリイソシアネート(b1)が有するイソシアネート基/ビニル系重合体(b2)が有する活性水素含有基]は約1.5〜3未満の範囲であることが好ましい。前記モル比率の範囲で反応させた場合には、ビニル系重合体(B)の他に未反応の疎水性ポリイソシアネート(b1)が混合していてもよい。
本発明のプラスチック基材用水性接着剤は、前記方法で得られたビニル系重合体(B)と、疎水性ポリイソシアネート(A)とを、水系媒体中に混合、分散することによって製造することができる。
【0066】
一方で、前記モル比率が3以上で、前記疎水性ポリイソシアネート(b1)とビニル系重合体(b2)とを反応させた場合、前記ビニル系重合体(B)及び未反応の疎水性ポリイソシアネート(b1)を含有する反応物を得ることができる。かかる未反応の疎水性ポリイソシアネート(b1)は、実質的に前記疎水性ポリイソシアネート(A)と同様であるから、前記範囲のモル比率で反応させて得られた反応物を水系媒体に分散させることによって、本発明のプラスチック基材用水性接着剤を一段階で製造することができる。
【0067】
前記モル比率は、本発明のプラスチック基材用水性接着剤の水分散安定性と硬化性との両立、及び該水性接着剤の製造工程簡略化の観点から、3〜350の範囲であることが好ましく、5〜300なる範囲がより好ましく、10〜250なる範囲が特に好ましく、15〜100なる範囲が最も好ましい。
【0068】
次に、上記方法(2)、即ち、イソシアネート基含有ビニル系単量体とノニオン性基含有ビニル系単量体とを共重合することにより、ビニル系重合体(B)を製造する方法について説明する。
【0069】
前記イソシアネート基含有ビニル系単量体としては、例えば2−イソシアナートプロペン、2−イソシアナートエチルビニルエーテル、2−イソシアナートエチルメタアクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、ポリイソシアネートと水酸基を有するビニル系単量体との反応生成物等を使用することができる。
【0070】
また、ノニオン性基含有ビニル系単量体としては、前記方法(1)で使用可能なものとして例示したものと同様のものを使用することができる。
【0071】
また、方法(2)では、前記イソシアネート基含有ビニル系単量体及び前記ノニオン性基含有ビニル系単量体のほかに、必要に応じて、総炭素原子数が4個以上の疎水性基を有するビニル系単量体等の、その他の単量体を併用することができる。総炭素原子数が4個以上の疎水性基を有するビニル系単量体等のその他の単量体としては、方法(1)で例示したものと同様のものを使用することができる。
【0072】
前記イソシアネート基含有ビニル系単量体及び前記ノニオン性基含有ビニル系単量体等の重合は、例えば前記方法(1)で例示した重合開始剤及び有機溶剤等と同様のものを使用して、前記方法(1)と同様の溶液ラジカル重合法等で行うことができる。
【0073】
本発明のプラスチック基材用水性接着剤は、前記方法(2)で得られたビニル系重合体(B)と、疎水性ポリイソシアネート(A)とを、水系媒体中に混合、分散することによって製造することができる。
【0074】
次に、上記方法(3)、即ち、イソシアネート基含有ビニル系重合体とノニオン性基含有化合物を反応させ、ビニル系重合体(B)を製造する方法について説明する。
前記イソシアネート基含有ビニル系重合体は、方法(2)で例示したイソシアネート基含有ビニル系単量体と同様のものを、公知慣用の方法でラジカル重合することによって製造することができる。
【0075】
また、前記ノニオン性基含有化合物としては、例えば片末端がアルコキシ基等で封鎖されたポリオキシアルキレングリコールを使用することができる。
【0076】
前記イソシアネート基含有ビニル系重合体と前記ノニオン性基含有化合物とは、該ビニル系重合体が有するイソシアネート基が、ノニオン性基含有化合物の有する、前記イソシアネート基と反応しうる官能基に対して、過剰となるモル比率の範囲で反応させることが好ましい。
【0077】
本発明のプラスチック基材用水性接着剤は、前記方法(3)で得られたビニル系重合体(B)と、疎水性ポリイソシアネート(A)とを、水系媒体中に混合、分散することによって製造することができる。
【0078】
本発明のプラスチック基材用水性接着剤は、前記疎水性ポリイソシアネート(A)とノニオン性基及びイソシアネート基を有するビニル系重合体(B)とを、質量比率で、(A)/(B)=30/70〜85/15の範囲で含んでいることが好ましく、50/50〜80/20の範囲で含んでいることがより好ましく、60/40〜80/20の範囲で含んでいることが最も好ましい。前記疎水性ポリイソシアネート(A)及び前記ビニル系重合体(B)との質量割合が前記した範囲内であるプラスチック基材用水性接着剤は、水分散安定性に優れ、該接着剤中に含まれるイソシアネート基の水系媒体との反応を十分に抑制でき、かつ優れた硬度の接着剤層を形成可能である。
【0079】
また、本発明のプラスチック基材用水性接着剤は、前記疎水性ポリイソシアネート(A)及び前記ビニル系重合体(B)の他に、必要に応じて各種の水分散性または水溶性樹脂を含んでいてもよい。
【0080】
前記水分散性または水溶性樹脂としては、例えば酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、アクリル樹脂、フルオロオレフィン樹脂、シリコン変性ビニル系重合体、ポリビニルアルコールなどのビニル系重合体;ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコン樹脂等のビニル系重合体以外の合成樹脂類;動物性たんぱく質、でんぷん、セルロース誘導体、デキストリン、アラビアゴム等の天然高分子等を使用できるが、なかでもプラスチック基材に対する密着性を向上させることのできるウレタン樹脂を使用することが好ましい。
【0081】
本発明のプラスチック基材用水性接着剤に使用できる前記ウレタン樹脂は、水分散または水に溶解するうえで、アニオン性基、ノニオン性基、及びカチオン性基からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水基を有することが好ましく、耐水性、耐光性、及び密着性に優れた接着剤層を形成するうえでアニオン性基を有するウレタン樹脂(C)を使用することが最も好ましい。
【0082】
前記アニオン性基を有するウレタン樹脂(C)は、例えばアニオン性基としてカルボキシル基やスルホン酸基やそれらの塩を分子内に有するものである。
【0083】
前記ウレタン樹脂(C)が有するアニオン性基の含有量は、ウレタン樹脂(C)を水分散体にしたときの粒子径と強い相関性を有しており、ウレタン樹脂(C)に対して、50〜1000mmol/kgの範囲であることが好ましい。かかる範囲内であれば、良好な耐水性を有する接着剤層を形成可能で、かつ水分散安定性に優れたプラスチック基材用水性接着剤を得ることができる。
【0084】
かかるウレタン樹脂(C)は、ポリオールとポリイソシアネートを必須成分とし、反応させることによって製造することができる。その際、必要に応じて鎖伸長剤等を使用してもよい。
【0085】
前記ポリオールとしては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、その他低分子量のポリオール等を単独で使用または2種以上併用することができる。なかでも、プラスチック基材に対する密着性を向上させ、樹脂の高い凝集力を得ることができる観点から、ポリエステルポリオールを主に使用することが好ましい。
【0086】
前記ポリエステルポリオールは、例えば低分子量ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応させることによって製造することができる。
【0087】
前記低分子量ポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環族ジオール、また多官能成分としてグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール、あるいはビスフェノールA、ビスフェノールS、ハイドロキノン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、あるいはそれらとアルキレンオキサイド付加物などの芳香族環式構造を有するポリオールを使用することができる。
【0088】
また、前記ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−P,P’−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸やそれらの酸無水物又はエステル形成性誘導体、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロヘキサントリカルボン酸等のポリカルボン酸やそれらの無水物又はエステル誘導体、p−ヒドロキシ安息香酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸やそれらのエステル形成性誘導体を使用することができる。また、ポリエステルポリオールとしては、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状ラクトンを付加させたポリエステルポリオールを使用することもできる。
【0089】
また、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、後述する活性水素原子を少なくとも2個有する化合物を開始剤として使用し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の化合物の1種以上を付加重合することによって得られるものを使用することができる。
【0090】
前記活性水素原子を少なくとも2個有する化合物としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、グリセリン、ソルビトール;アクニット酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、燐酸、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリイソプロパノールアミン、ピロガロール、ジヒドロ安息香酸、ヒドロキシフタール酸、1,2,3−プロパントリチオール等を使用することができる。
【0091】
前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリテトラメチレングリコールを使用することが好ましい。また、前記ポリオールとしては、水酸基の一部がメタノールやブタノール等のモノアルコールにてブロック化されたポリエーテルモノオールについては、高分子量化を阻害しない範囲で使用しても構わない。
【0092】
また、ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のようなジオール類と、ジメチルカーボネート等によって代表されるようなジアルキルカーボネート或いはエチレンカーボネート等によって代表されるような環式カーボネートとの反応生成物などが挙げられる。
【0093】
また、前記ウレタン樹脂(C)を製造する際に使用可能なポリイソシアネートとしては、公知のものがいずれも使用できるが、例えば1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ないしは1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、2−ないしは4−イソシアナトシクロヘキシル−2’−イソシアナトシクロヘキシルメタン、1,3−ないしは1,4−ビス−(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、ビス−(4−イソシアナト−3−メチルシクロヘキシル)メタン、1,3−ないしは1,4−α,α,α’α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,4−ないしは2,6−ジイソシアナトトルエン、2,2’−、2,4’−ないしは4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−ないしはm−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートまたはジフェニル−4,4’−ジイソシアネートなどを使用することができる。前記ポリイソシアネートとしては、得られる接着剤層の機械的強度を向上させるうえで芳香族環式構造を有するジイソシアネートを使用することが好ましく、また、得られる接着剤層の耐久性及び耐光性等を向上させる観点から、脂肪族ジイソシアネート又は脂肪族環式構造を有するジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0094】
また、前記鎖伸長剤は、一般的にウレタン樹脂の凝集量を向上させる目的で使用することができ、代表的なものとしては、1,2−ジアミノエタン、1,2−ないしは1,3−ジアミノプロパン、1,2−ないしは1,3−ないしは1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、N,N’−ビス−(2−アミノエチル)ピペラジン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキサン(イソホロンジアミン)、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノ−3−ブチルシクロヘキシル)メタン、1,2−、1,3−ないしは1,4−ジアミノシクロヘキサンまたは1,3−ジアミノプロパン等のジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン、さらにはヒドラジンまたはアジピン酸ジヒドラジドなどのヒドラジン誘導体、エタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、N−メチルジイソプロパノールアミン、N−エチルジエチレンアミン、N−エチルジイソプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミンを使用することもできる。
【0095】
また、前記鎖伸長剤としては、前記ポリエステルポリオールの製造に使用可能なものとして例示したものと同様の低分子量ポリオールを使用することができ、メタノール、エタノール、ブタノール等のモノアルコールについても、前記ウレタン樹脂(C)の高分子量化を阻害しない範囲で使用しても構わない。
【0096】
また、前記鎖伸長剤としては、親水性基を有するポリオール及び/又は(ポリ)アミンを使用することができ、例えばアニオン性基を有するポリオール、及び/又は(ポリ)アミン等を使用することができる。
前記アニオン性基を有するポリオールとしては、例えばカルボキシル基を有するポリオールやスルホン酸基を含有するポリオールを使用することができる。
【0097】
前記カルボキシル基を有するポリオールとしては、例えば2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸等を使用することができる。また、これらカルボキシル基を有するポリオール、及び必要に応じて前記の低分子量ポリオールと、各種ポリカルボン酸とを反応させて得られるカルボキシル基含有ポリエステルポリオールも使用することができる。
【0098】
前記スルホン酸基を含有するポリオールとしては、例えば5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸等のジカルボン酸やそれらのエステル形成性誘導体のNa、K、Li等の金属イオン、アンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン等とのスルホン酸塩と、各種ポリオール、必要に応じて前記ポリカルボン酸及び/または環状ラクトンとを反応させて得られる芳香族スルホン酸基又はそれらの塩を含有するポリエステルポリオールを使用することができる。
【0099】
また、前記アニオン性基有する(ポリ)アミンとしては、例えばタウリン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(塩)、N−(2−アミノエチル)−2−アミノプロピオン酸(塩)、及び2−(β−アミノ−プロピオンアミド)−アルカンスルホン酸塩等を使用することができ、なかでも、スルホン酸基を有する(ポリ)アミンが幅広いpH領域での安定性に優れることから好ましい。
【0100】
また、前記ウレタン樹脂(C)の有するアニオン性基がカルボキシル基やスルホン酸基である場合、それらの一部又は全部を中和することにより、ウレタン樹脂(C)に良好な水分散性を付与することができる。
【0101】
前記中和に使用可能な中和剤としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミン、更にNa、K、Li等を含む金属塩等を使用することができる。中和率としては、好ましくは中和剤/アニオン性基=0.5〜3.0(モル比)、より好ましくは中和剤/アニオン性基=0.9〜2.0(モル比)の範囲で使用することが望まれる。かかる範囲であれば、接着剤層の耐水性を損なうことなく、ウレタン樹脂(C)に安定した水分散性を付与することができる。
【0102】
また、前記ウレタン樹脂(C)は、前記アニオン性基の他に、必要に応じてノニオン性基を有していてもよい。
前記ノニオン性基は、例えばノニオン性基を有するポリオールを、前記ポリオール及びポリイソシアネートと反応させることによって、ウレタン樹脂(C)中に導入することができる。
前記ノニオン性基を有するポリオールとしては、例えばエチレンオキサイドの繰り返し単位を少なくとも30質量%以上有するものを使用することができる。また、前記ノニオン性基を有するポリオールとしては、例えば数平均分子量300〜10,000のポリアルキレングリコール等を使用することができる。
ノニオン基含有量としては、ウレタン樹脂(C)全体の10質量%以下となるように調製することが好ましい。かかる範囲内であれば、耐水性を損なうことなく、良好な水分散安定性を得ることができる。
【0103】
前記ウレタン樹脂(C)は、前記疎水性ポリイソシアネート(A)と前記ビニル系重合体(B)の100質量部に対して、0〜2000質量部使用することが好ましく、30〜200質量部使用することがより好ましい。かかる範囲のウレタン樹脂(C)を使用することによって、透明性や、耐熱性及び耐水性等の高い耐久性を有する優れた接着剤層を形成可能なプラスチック基材用水性接着剤を得ることができる。
【0104】
本発明のプラスチック基材用水性接着剤は、更に必要に応じて耐ブロッキング性あるいは耐滑り性を改良するための無機系微粒子(コロイダルシリカ)、濡れ性を改良するためのエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アニオン系、ノニオン系の炭化水素系あるいはフッ素系の界面活性剤、アセチレングリコール系のレベリング剤「サーフィノール」(エアープロダクツ社製)、あるいはBYK−348、346、345、341(BYK−Chemie GmbH製)に代表されるポリアルキレングリコール変性ポリシロキサンを含んでいてもよい。これらのうち、濡れ性を改良するためには、アセチレングリコール系レベリング剤を使用することが好ましい。また、本発明のプラスチック基材用水性接着剤は、前記したものの他に、必要に応じて充填剤、増粘剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料分散剤等の公知慣用の添加剤を含んでいてもよい。また、本発明のプラスチック基材用水性接着剤は、接着層内に残留しない範囲で公知慣用の有機溶剤を含んでいてもよい。
【0105】
次に、本発明の積層体、及び偏光板について説明する。
本発明のプラスチック基材用水性接着剤は、各種プラスチック基材からなる積層体の製造に使用することができる。
【0106】
前記積層体は、同一または異なっていてもよい2以上のプラスチック基材の間に、前記プラスチック基材用水性接着剤によって形成された接着剤層を有するものであり、例えば偏光板や食品包装等に使用することができる。
【0107】
前記プラスチック基材としては、得られる積層体を使用する用途等に応じて、適宜選択することができ、接着する複数のプラスチック基材がいずれも同一素材からなる基材であってもよく、また、それらが互いに異なる素材からなる基材であってもよい。
【0108】
前記プラスチック基材としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィン構造ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂やエポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂等からなるフィルム等を使用することができ、なかでもポリエステル系ポリマー、アミド系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマーからなるフィルムやシートを使用することが好ましい。
【0109】
また、本発明の偏光板は、同一または異なっていてもよい2以上のプラスチック基材の間に、前記プラスチック基材用水性接着剤によって形成された接着剤層を有するものである。かかるプラスチック基材としては、一般に透明保護フィルムと偏光子といわれるものを使用する。
【0110】
前記の透明保護フィルムとしては、偏光特性や耐久性等を向上させる観点から、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーやシクロオレフィン構造を有する樹脂、ノルボルネン樹脂等からなるプラスチックフィルムを使用することが好ましい。
【0111】
また、前記の偏光子としては、特に制限されず各種のものを使用できるが、例えば、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化物等の親水性高分子化合物からなるプラスチック基材に、ヨウ素や二色性染料等の二色性材料を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等を使用することができる。なかでも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質を吸着させたフィルムを使用することが好ましい。
【0112】
本発明の積層体及び偏光板を製造する際に使用可能な前記プラスチック基材の厚みは、その使用される用途によって異なるが、概ね10μm〜3mmの範囲であることが好ましい。
【0113】
また、前記プラスチック基材の表面には、コロナ放電処理、紫外線照射処理、アルカリ処理等の表面処理が施されていることが好ましい。好ましくは濡れ指数で45mN/m以上、更に好ましくは50mN/m以上の表面状態のプラスチック基材を使用することが好ましい。なお、前記濡れ指数とは、Zismanによる臨界表面張力を意味し、JIS K 8768に基づき標準濡れ試薬で測定される値である。
【0114】
前記プラスチック基材用水性接着剤を用いて前記プラスチック基材を接着し、積層体、特に偏光板を製造する方法としては、従来公知の方法を適用することができるが、例えば該水性接着剤をプラスチック基材に塗布した後、溶媒を留去せずに貼り合わせを行うウェットラミネーション法、及び接着剤を基材に塗布後、溶媒を留去してから貼り合わせを行うドライラミネーション法を適用することが好ましい。
【0115】
前記プラスチック基材上に本発明のプラスチック基材用水性接着剤を塗布する方法としては、該水性接着剤を必要に応じて任意の樹脂濃度、粘度に調整した後、例えばグラビアコート法、ロッドコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、ロールコート法等の従来公知の塗工方法により、前記プラスチック基材上に塗布することができる。この際、該水性接着剤中の樹脂の濃度は、良好な塗工作業性を維持する観点から、0.1〜50質量%の範囲であることが好ましい。
【0116】
本発明のプラスチック基材用水性接着剤は、その乾燥膜厚が0.01〜100μmの範囲となるように塗布することが好ましく、0.05〜50μmの範囲であることがより好ましい。
【実施例】
【0117】
次に実施例および比較例により本発明を詳述する。
【0118】
疎水性ポリイソシアネート(A−I)
ヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアヌレート型ポリイソシアネートである「バーノックDN−980S」〔大日本インキ化学工業(株)製のイソシアネート基含有率(以下、NCO基含有率と略称。)21質量%、1分子中に存在するイソシアネート基の平均数(以下、平均NCO官能基数と省略。)が約3.6、不揮発分 100質量%〕
【0119】
〔活性水素含有基及びノニオン性基含有ビニル系重合体(b−I)の調製〕
攪拌機、温度計、冷却管、窒素導入管を装備した4つ口のフラスコにジエチレングリコールジエチルエーテル 429質量部を仕込み、窒素気流下に110℃に昇温した後、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(1分子当たりオキシエチレン単位を平均9個含有。以下「MPEGMA−1」と略称する。)500質量部、メチルメタクリレート300質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、2−HEMAと略称する。) 50質量部、シクロヘキシルメタクリレート(以下、CHMAと略称する。)150質量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 45質量部、t−ブチルパーオキシベンゾエート 5質量部からなる混合液を5時間かけて滴下した。滴下後、110℃にて9時間反応せしめ、不揮発分が70質量%のアクリル系重合体の溶液を得た。以下、これを活性水素含有基を有するビニル系重合体(b−I)溶液と略称する。
【0120】
〔イソシアネート基及びノニオン性基含有ビニル系重合体(B−I)の調製〕
攪拌機、温度計、冷却管、窒素導入管を装備した4つ口のフラスコにジエチレングリコールジエチルエーテル 429質量部を仕込み、窒素気流下に110℃に昇温した後、MPEGMA−1 400質量部、2−イソシアナートエチルメタアクリレート 100質量部、メチルメタクリレート 500質量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 45質量部、t−ブチルパーオキシベンゾエート 5質量部からなる混合液を5時間かけて滴下した。滴下後、110℃にて9時間反応せしめ、不揮発分が70質量%のアクリル系重合体の溶液を得た。以下、これをビニル系重合体(B−I)溶液と略称する。
【0121】
〔アニオン性基を有するウレタン樹脂(C−I)の調製〕
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、5−スルホソジウムイソフタル酸ジメチル 1480質量部、1,6−ヘキサンジオール 1240質量部、及びジブチル錫オキサイド0.5質量部を仕込み、塔頂温度が60〜70℃になるように反応容器内温度を180〜190℃に維持し、酸価が1以下になるまでエステル交換反応を行い、次いで、210℃で2時間反応させることにより水酸基価240、酸価0.3のポリエステルポリオールを得た。
次に、前記ポリエステルポリオールとε−カプロラクトン2280質量部とを混合し、180℃で3時間開環重合反応することにより水酸基価120、酸価0.3のスルホン酸基含有ポリエステルポリオールを得た。
前記スルホン酸基含有ポリエステルポリオール20質量部をメチルエチルケトン50質量部に混合、溶解し、次いでイソホロンジイソシアネート29質量部を加えて80℃で3時間反応させた後、メチルエチルケトン50質量部を投入し60℃まで冷却した。
次にネオペンチルグリコール3質量部と、1,4−ブチレングリコール及びアジピン酸を反応させて得られるポリエステル(水酸基価=56)100質量部とを加え、80℃にて反応させた。反応物のNCO基含有率が1.01質量%以下になったら、40℃まで冷却し、水280質量部を加え十分撹拌混合した後、10質量%ピペラジン水溶液23.4質量部(残イソシアネート基に対しアミン基として90当量%)を加えて鎖伸長反応を行った。次いで、得られた乳化液から有機溶剤を除去し、不揮発分40質量%のウレタン樹脂(C−I)分散液を得た。
【0122】
〔アニオン性基を有するウレタン樹脂(C−II)の調製〕
ネオペンチルグリコール3質量部と、1,4−ブチレングリコール及びアジピン酸を反応させて得られるポリエステル(水酸基価=56)100質量部とをメチルエチルケトン50質量部に混合することで溶解したものに、イソホロンジイソシアネート30質量部を加えて80℃で3時間反応させた。次いでメチルエチルケトン50質量部を投入し60℃まで冷却した後、2,2’−ジメチロールプロピオン酸6質量部を加え80℃で反応させた。反応物のNCO基含有率が1.13質量%以下になったら40℃まで冷却し、トリエチルアミン4.5質量部を用いて該反応物が有するカルボキシル基を中和した後、水255質量部を加え十分撹拌混合し、更に10質量%ピペラジン水溶液23.7質量部(残イソシアネート基に対しアミン基として90当量%)を加えて鎖伸長反応を行った。次いで、得られた乳化液から有機溶剤を除去し、不揮発分40質量%のウレタン樹脂(C−II)分散液を得た。
【0123】
実施例1
4つ口フラスコに疎水性ポリイソシアネート(A−I) 200質量部と活性水素含有基を有するビニル系重合体(b−I) 100質量部を仕込み、窒素気流下に90℃に昇温した後、同温度で6時間攪拌下で反応することによって、前記疎水性ポリイソシアネート(A−I)と前記ビニル系重合体(b−I)との反応物(B−II)、及び前記疎水性ポリイソシアネート(A−I)を含有する、不揮発分が90質量%でNCO基含有率が13質量%のポリイソシアネート組成物(P−1)を得た。
次いで、得られたポリイソシアネート組成物(P−1)100質量部に対して、水800質量部を加え、攪拌機を用いて均一に攪拌、混合することによって、[疎水性ポリイソシアネート(A−I)/反応物(B−II)]の質量割合が200/70である、不揮発分が10質量%のプラスチック基材用水性接着剤(AD−1)を得た。
【0124】
実施例2
4つ口フラスコに疎水性ポリイソシアネート(A−I) 200質量部とビニル系重合体(B−I) 100質量部を仕込み、窒素気流下に50℃に昇温した後、同温度で1時間攪拌下で攪拌混合することによって、不揮発分が90質量%、NCO基含有率が14.6質量%のポリイソシアネート組成物(P−2)を得た。
次いで、得られたポリイソシアネート組成物(P−2)100質量部に対して、水800質量部を加え、攪拌機を用いて均一に攪拌、混合することによって、不揮発分が10質量%のプラスチック基材用水性接着剤(AD−2)とした。
【0125】
実施例3
実施例1で得られたポリイソシアネート組成物(P−1)10質量部に対して、ウレタン樹脂(C−I)200質量部と水680質量部を加え、攪拌機を用いて均一に攪拌、混合することによって、不揮発分が10質量%のプラスチック基材用水性接着剤(AD−3)を得た。
【0126】
実施例4
実施例1で得られたポリイソシアネート組成物(P−1)100質量部に対して、ウレタン樹脂(C−I)100質量部と水1100質量部を加え、攪拌機を用いて均一に攪拌、混合することによって、不揮発分が10質量%のプラスチック基材用水性接着剤(AD−4)を得た。
【0127】
実施例5
実施例1で得られたポリイソシアネート組成物(P−1)100質量部に対して、ウレタン樹脂(C−II)100質量部と水1100質量部を加え、攪拌機を用いて均一に攪拌、混合することによって、不揮発分が10質量%のプラスチック基材用水性接着剤(AD−5)とした。
【0128】
比較例1
攪拌機、温度計、冷却管、窒素導入管を装備した4つ口のフラスコにジエチレングリコールジエチルエーテル 15質量部、メトキシポリエチレングリコール(1分子当たりオキシエチレン単位を平均12個含有) 36質量部、疎水性ポリイソシアネート(A−I)100質量部を仕込み、30分かけて90℃に昇温した後、90℃にて6時間反応させ、不揮発分が90質量%、NCO基含有率が12質量%なるメトキシポリエチレングリコールで変性されたポリイソシアネート組成物(P−3)を得た。
次いで、得られたポリイソシアネート組成物(P−3)100質量部に対して、水800質量部を加え、攪拌機を用いて均一に攪拌、混合することによって、不揮発分が10質量%のプラスチック基材用水性接着剤(AD−6)を得た。
【0129】
〔ポットライフの確認〕
調製直後、または調製後25℃の環境下に5時間保存した各プラスチック基材用水性接着剤中に存在するイソシアネート基の含有量を、後述する逆滴定法により求め、下記式により算出されたイソシアネート基の保持率をもって各プラスチック基材用水性接着剤が有するイソシアネート基の安定性を評価した。
【0130】
イソシアネート基残存率[質量%]=(5時間放置後のイソシアネート基含有量/調製直後のイソシアネート基含有量)×100
○・・・保持率95質量%以上
△・・・保持率90質量%以上95%質量未満
×・・・保持率90質量%未満
【0131】
[逆滴定法]
各プラスチック基材用水性接着剤に、該水性接着剤中に存在するイソシアネート基に対して過剰のジブチルアミンを添加した後、該水性接着剤中に残留するジブチルアミンを塩酸を用いて滴定する逆滴定法により、プラスチック基材用水性接着剤中に残存するイソシアネート基の含有量を決定した。
【0132】
〔接着強さ〕
調製直後、または調製後25℃の環境下に5時間保存した各プラスチック基材用水性接着剤を、バーコーターを用いて予めコロナ処理を施したノルボルネンフィルム(厚さ100μm)上に塗布し(接着層約3μm)、70℃で3分乾燥した後、接着剤塗布面と塩化ビニルフィルム(厚み2mm)とを、ゴムローラーを用いた加圧し貼り合わせ積層体を作製した。次いで、40℃の環境下に3日間養生した各積層体の剥離強度を、引張試験機を用いて測定した(引張速度=100mm/分 T型剥離)。なお、剥離強度は概ね10N/25mm以上であることが好ましく、フィルムの破断が引き起こされるレベルであることが好ましい。
【0133】
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性ポリイソシアネート(A)と、ノニオン性基及びイソシアネート基を有するビニル系重合体(B)と、水系媒体とを含有してなり、前記疎水性ポリイソシアネート(A)が、前記ビニル系重合体(B)によって水性媒体中に分散されてなることを特徴とするプラスチック基材用水性接着剤。
【請求項2】
前記ビニル系重合体(B)がウレタン結合を有するものである、請求項1に記載のプラスチック基材用水性接着剤。
【請求項3】
前記ビニル系重合体(B)が、疎水性ポリイソシアネート(b1)と、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、及び活性メチレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の活性水素含有基、及びノニオン性基を有するビニル系重合体(b2)とを反応させて得られるものである、請求項1または2に記載のプラスチック基材用水性接着剤。
【請求項4】
更にアニオン性基を有するウレタン樹脂(C)を含有してなる、請求項1〜3のいずれかに記載のプラスチック基材用水性接着剤。
【請求項5】
前記ウレタン樹脂(C)が、前記疎水性ポリイソシアネート(A)と前記ビニル系重合体(B)との合計100質量部に対して30〜200質量部含まれる、請求項4に記載のプラスチック基材用水性接着剤。
【請求項6】
前記ウレタン樹脂(C)が有するアニオン性基がスルホン酸基である、請求項4に記載のプラスチック基材用水性接着剤。
【請求項7】
同一または異なっていてもよい2以上のプラスチック基材の間に、請求項1〜6のいずれかに記載のプラスチック基材用水性接着剤によって形成された接着剤層を有することを特徴とする積層体。
【請求項8】
前記プラスチック基材がシクロオレフィン構造を有する樹脂からなる基材である、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記プラスチック基材がプラスチックフィルムである、請求項7に記載の積層体。
【請求項10】
同一または異なっていてもよい2以上のプラスチック基材の間に、請求項1〜6のいずれかに記載のプラスチック基材用水性接着剤によって形成された接着剤層を有することを特徴とする偏光板。
【請求項11】
前記プラスチック基材がシクロオレフィン構造を有する樹脂からなる基材である、請求項10に記載の偏光板。
【請求項12】
前記プラスチック基材がプラスチックフィルムである、請求項10に記載の偏光板。


【公開番号】特開2007−308588(P2007−308588A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138818(P2006−138818)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】