説明

プラスチック塗装成形物

【課題】 表面硬度及び耐候性に優れる硬化皮膜を有するプラスチック塗装成形物、特に、軟化点の低いプラスチック素材を用いた塗装成形物を提供する。
【解決手段】 プラスチック成形物上に硬化皮膜を有するプラスチック塗装成形物であって、該硬化皮膜が、紫外線重合性オリゴマー、紫外線重合性モノマー及び又は有機溶剤、及び、光重合開始剤を含有する紫外線硬化型塗料組成物を、該プラスチック成形物上に塗工する工程、酸素濃度8%未満、且つ、二酸化炭素濃度50%以上のガス雰囲気下で紫外線を照射強度0.1〜50mW/cmの範囲で照射する工程によって形成されることを特徴とするプラスチック塗装成形物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック素材が低軟化温度にも関わらず、表面硬度、耐候性に優れた、紫外線硬化型塗料組成物の硬化皮膜を有するプラスチック塗装成形物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラスチック基材の表面には表面硬度、耐候性等の様々な機能や意匠性を付加し、表面を保護するためにコーティングが行われている。近年環境問題への対応から、活性エネルギー線硬化型塗料の需要が拡大している。しかしながら、立体成形物の場合、紫外線、電子線等の活性エネルギー線を均一に照射すること容易ではない。塗布面全体の温度を均一化、紫外線照射器の数、配置を考慮した照射方法が紹介されている(例えば、特許文献1参照)。また、紫外線ランプを立体旋回運動させることにより、被照射物を回転、移動等させずに全体に紫外線を照射する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、プラスチック素材の場合、十分な硬化性を保つために必要な活性エネルギー線照射によって、基材の温度が上昇するため、特に軟化点の低いプラスチックの場合は、硬化に必要な照射による温度上昇と基材の軟化温度とのバランスで、塗膜全体を硬化させることは非常に困難であり、複雑な形状の成形物では実用化されていない。また、耐候性を意図しての紫外線吸収剤の添加によって、紫外線硬化反応を阻害することからも、表面硬度と耐候性の両立は困難であった。
【0003】
【特許文献1】特開平07−124959号公報
【特許文献2】特開平08−257468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、表面硬度、耐候性に優れる硬化皮膜を有するプラスチック塗装成形物、特に、軟化点の低いプラスチック素材を用いた塗装成形物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討の結果、特定の硬化条件を有する紫外線硬化型塗料組成物をプラスチック成形物表面に塗工し、低酸素濃度のガス雰囲気下で紫外線を照射することにより、表面硬度、耐候性に優れた塗膜を得ることを見いだし、本発明に至った。
【0006】
すなわち本発明は、プラスチック成形物上に硬化皮膜を有するプラスチック塗装成形物であって、該硬化皮膜が、紫外線重合性オリゴマー、紫外線重合性モノマー及び又は有機溶剤、及び、光重合開始剤を含有する紫外線硬化型塗料組成物を、該プラスチック成形物上に塗工する工程、酸素濃度8%未満、且つ、二酸化炭素濃度50%以上のガス雰囲気下で紫外線を照射強度0.1〜50mW/cmの範囲で照射する工程によって形成されることを特徴とするプラスチック塗装成形物、及び、その製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記手段により、温度上昇の少ない条件で紫外線を照射することができ、従来困難であった、低軟化温度のプラスチック成形物に対しても、十分な表面硬度、耐候性を有する硬化塗膜を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のプラスチック塗装成形物は、プラスチック成形物上に硬化皮膜を有するプラスチック塗装成形物であって、該硬化皮膜が、紫外線重合性オリゴマー、紫外線重合性モノマー及び又は有機溶剤、光重合開始剤を含有する紫外線硬化型塗料組成物を、該プラスチック成形物上に塗工する工程、酸素濃度8%未満、且つ、二酸化炭素濃度50%以上のガス雰囲気下で紫外線を照射強度0.1〜50mW/cmの範囲で照射する工程によって形成されることを特徴としている。以下に各構成要件について詳述する。
【0009】
本発明のプラスチック塗装成形物に用いるプラスチック素材としては、任意の材料を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。これらの中でも、特に、活性エネルギー線照射による温度上昇に弱い素材、すなわち、ビカット軟化温度(JIS−K7206、プラスチック−熱可塑プラスチック−ビカット軟化温度試験方法)が100℃以下の低軟化温度を有するプラスチック素材の場合に、効果を奏する。ビカット軟化温度100℃以下の素材としては、同温度が70〜100℃の範囲のポリエチレン、70〜90℃のメタクリル樹脂、70〜100℃のアクリロニトリルブタジエンスチレン等が好ましく用いられる。
【0010】
被塗布物としての、成形物は、必ずしも立体成形物である必要はなく平面状でも良いが、従来の活性エネルギー線照射装置では、均一に照射しにくい立体成形物の場合に特に効果を奏する。成形方法は任意であり、射出成形、圧縮成形、押出成形等各種の成形手段で成形された成形物で良い。
【0011】
本発明のプラスチック塗装成形物に用いる紫外線硬化型塗料組成物は、紫外線重合性オリゴマー、紫外線重合性モノマー及び又は有機溶剤、及び、光重合開始剤を含有する。
【0012】
主たる硬化成分としての紫外線重合性オリゴマーとしては、従来公知のものが使用できるが、その中でも特に代表的なものとしては、ビスフェノールA型、ノボラック型、多価アルコール型、多塩基酸型、ポリブタジエン型のエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル型、ポリエーテル型のウレタン(メタ)アクリレートなどである。特に好ましくは、ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエーテルアクリレートオリゴマーである。
【0013】
これらのオリゴマー成分は、必要に応じて1種または2種以上の混合系で用いることができる。紫外線硬化型塗料組成物中の含有量は、30〜90質量%であることが好ましい。
【0014】
紫外線重合性モノマー及び又は有機溶剤は、立体成形物の塗装方法として、ディッピング又はスプレー方式を採用することが好ましく、そのための適正粘度を得るために添加するものである。
【0015】
紫外線重合性モノマーの内、単官能モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下ECHと略記)変性ブチル(メタ)アクリレート、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(以下EOと略記)変性フタル酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
2官能モノマーとしては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(以下POと略記)変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ECH変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジアクリレート、EO変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロイルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0017】
3官能以上の多官能モノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ECH変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
紫外線重合性モノマーとしては、以上が挙げられるが、単官能又は2官能モノマーの使用が好ましい。
【0019】
適正粘度を得るために添加する有機溶媒としては、従来公知のものが使用できるが、その中でも特に代表的なものとしては、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。中でも、脱芳香族の観点から、酢酸エチル、酢酸ブチルが好ましい。
【0020】
オリゴマー成分とモノマー及び又は有機溶剤成分の比は、ディッピング方式で塗装する場合は、95:5〜70:30、スプレー方式で塗装する場合は、85:15〜40:60であることが好ましい。
【0021】
その他、本発明のプラスチック塗装成形物に用いることの出来る紫外線重合性化合物としては、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、スチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、1,4−ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、特開平11−124403号公報、特開平11−124404号公報記載のマレイミド化合物等が挙げられ、必要に応じて使用することができる。
【0022】
光重合開始剤としては、従来公知のベンゾフェノン、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、ベンゾイル安息香酸、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等の水素引き抜き型重合開始剤、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルフェニルケトン等の光開裂型重合開始剤が挙げられる。これらの水素引き抜き型重合開始剤、光開裂型重合開始剤のうち1種または2種以上のものを組み合わせて使用することができる。
【0023】
紫外線重合性オリゴマー成分、モノマー成分及び又は溶剤成分と光重合開始剤を有する紫外線硬化型塗料組成物中の光重合開始剤の配合割合は、溶剤を除いた塗料組成物100質量%中、1〜15質量%であることが好ましい。
【0024】
また、これらの光重合開始剤に、公知慣用の光増感剤をも併用することができる。併用する場合は、溶剤を除いた塗料組成物100質量%中、1〜15質量%であることが好ましい。
【0025】
本発明のプラスチック塗装成形物に用いる紫外線硬化型塗料組成物には、硬化塗膜としての耐候性を向上させるために、紫外線吸収剤、光安定剤を0.1〜10.0質量%添加することが好ましい。通常、耐候性を意図しての紫外線吸収剤、光安定剤の添加によって、紫外線硬化反応を阻害することがあるが、本発明では、紫外線照射工程を、酸素濃度8%未満、且つ、二酸化炭素濃度50%以上のガス雰囲気下で行うため、十分な量の紫外線吸収剤、光安定剤を添加することができる。
【0026】
低光沢を意図する場合に、ワックス、艶消しビーズ等を添加することもできる。添加する場合の配合割合は、溶剤を除いた塗料組成物100質量%中、0.1〜15質量%であることが好ましい。
【0027】
本発明に用いる紫外線硬化型塗料組成物には、さらに必要に応じて本発明の目的を逸脱しない範囲内で、各種の機能を付与するため着色剤、体質顔料、滑剤、可塑剤、消泡剤、酸化防止剤、カップリング剤、有機溶剤及びキレート剤などの添加剤を添加することができる。
【0028】
本発明に用いる紫外線硬化型塗料組成物の粘度範囲としては、塗工方式により異なるが、液温25℃において30〜1000mPa・sが好ましい。例えば、ディッピング方式の場合、150〜1000mP・s程度、スプレー方式の場合30〜100mP・s程度であることが好ましい。
【0029】
本発明のプラスチック塗装成形物に用いる紫外線硬化型塗料組成物の製造は、従来公知の方法で実施出来る。一例として、紫外線重合性オリゴマー、紫外線重合性モノマー及び又は有機溶剤、及び、光重合開始剤、必要に応じて塗料添加剤をこの順に仕込み混合、撹拌等の方法で製造可能である。
【0030】
本発明のプラスチック塗装成形物は、前記した紫外線硬化型塗料組成物をディッピング方式又はスプレー方式で塗装することが好ましい。塗布厚は、1〜500μmで任意に設定できるが、例えば、住宅内装部材用途の場合、50〜200μm程度が好ましい。
【0031】
本発明のプラスチック塗装成形物は、前記した紫外線硬化型塗料組成物を成形物表面に塗工する工程の後、酸素濃度8%未満、且つ、二酸化炭素濃度50%以上のガス雰囲気下で活性エネルギー線を紫外線照射強度0.1〜50mJ/cmで照射する工程によって形成される。紫外線照射を不活性ガス雰囲気下で行うことで、硬化時の酸素の存在による硬化阻害を避けることにより、低照射強度での硬化を進行させることが可能となり、被照射体である成形物の温度上昇を抑制することができる。
【0032】
従来から、立体成形物に塗工された紫外線硬化型塗料を硬化させるには、立体形状に出来るだけ均一に紫外線を照射するために、形状に応じて、多数の紫外線照射ランプを周囲に配置することを余儀なくされていた。本発明では、紫外線照射ランプとして、高圧水銀灯、エキシマランプ、メタルハライドランプ等を備えた、平板状、シート状の基材に塗工された紫外線硬化型塗料を硬化させるための従来から公知の紫外線照射装置を使用することができる。照射装置の構造としては、従来の平板状、シート状の基材用と同様に、上部に紫外線照射ランプを配置し、被照射体である成形物の下面及び又は側面に乱反射板を配置した構造を用いることができる。更に、本発明では、照射強度を0.1〜50mW/cmとしており、低圧水銀灯、発光ダイオード等の電力の小さいランプも使用できる。
【0033】
本発明に用いる、酸素濃度8%未満、且つ二酸化炭素濃度50%以上のガス雰囲気とは、通常の空気に二酸化炭素(CO)を混合することで実現されるものである。不活性ガス成分として、空気よりも比重の大なる二酸化炭素を用いることで、プール状に形成された紫外線照射用の槽部分に二酸化炭素が安定的に存在することでき、空気と比重が近い窒素ガスの場合に比べ、照射機周辺の構造を簡略化できる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を用いて、本発明を具体的に説明する。特に断らない限り、部、%は、それぞれ質量部、質量%を表す。
【0035】
基材として、ビカット軟化温度125℃のポリカーボネート(表1,2でPCと標記)と、ビカット軟化温度80℃のアクリロニトリルブタジエンスチレン(表1,2でABSと標記)を使用した。紫外線硬化型塗料組成物は、以下の組成で定法により調製した。
【0036】
(塗料A)
2官能エポキシアクリレートオリゴマー55部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート20部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5部、酢酸ブチル40部。
【0037】
(塗料B)
3官能ウレタンアクリレートオリゴマー55部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート20部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5部、酢酸ブチル40部。
【0038】
(塗料C)
3官能ウレタンアクリレートオリゴマー55部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート20部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5部、チヌビン400(チバスペシャリティーケミカルズ製)2部、チヌビン123(チバスペシャリティーケミカルズ製)2部、酢酸ブチル42部。
【0039】
(塗料D)
トリメチロールプロパントリアクリレート55部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート20部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5部、酢酸ブチル40部。
【0040】
これらの塗料を、下処理した10cm角のプラスチック基材に70g/mとなる様にスプレーでそれぞれ2枚ずつ塗布し、60℃温風乾燥機にて5分間放置した後、塗布面を1cmの間隔を空け、向かい合わせに配置する中表の状態にし、底面と側面に乱反射板を配置した装置の内部に垂直に立て、上部から紫外線照射を行った。硬化条件は、表1〜2に示した各酸素濃度、各紫外線照射強度、各時間積算照射量とした。
【0041】
上記方法で得られた硬化塗膜に、以下の方法で耐候性試験、表面硬度試験を行った。
【0042】
(耐候性試験)
耐候性試験機には、メタルウェザー耐候性試験機(ダイプラ・ウィンテス社製)を用いた。試験条件は1サイクルが10時間であり、そのうち6時間を照射時間(温度:65℃、湿度:30%、1時間毎にシャワーによる噴霧:5秒、照射強度:75mW/cm)、4時間を結露時間(温度:30℃、湿度:98%以上)とした。これを10サイクル繰り返し、連続100時間の試験を行った後、色相の測定を行い、変色の程度を評価した。色相の測定方法として、SE2000(日本電色製)を用い、Lab値を測定して△Eの算出を行った。
【0043】
(表面硬度試験)
塗料塗工物表面にスチールウール#0(日本スチールウール製)を1cm、8.0N/cmの条件下で50往復させた後、傷跡を評価し、結果を(良い)◎−○−△−×(悪い)で表した。
【0044】
(硬化性試験)
硬化条件を表1〜2に示す各酸素濃度、紫外線強度10〜500mW/cm、時間積算照射量50〜500mJ/cmとし、塗膜表面の硬化状態を評価し、結果を(下部まで全面硬化)◎−○−△−×(全面未硬化)で表した。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
上記の結果から、本発明のプラスチック塗装成形物は、表面硬度、耐候性に優れる硬化皮膜を有することが分かる。特に、低軟化点のプラスチック素材に対しても有効な硬化皮膜を形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のプラスチック塗装成形物は、表面硬度、耐候性に優れる硬化皮膜を有し、住宅内装部材、自動車内装部材、家庭用電気製品等に使用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック成形物上に硬化皮膜を有するプラスチック塗装成形物であって、該硬化皮膜が、紫外線重合性オリゴマー、紫外線重合性モノマー及び又は有機溶剤、及び、光重合開始剤を含有する紫外線硬化型塗料組成物を、該プラスチック成形物上に塗工する工程、酸素濃度8%未満、且つ、二酸化炭素濃度50%以上のガス雰囲気下で紫外線を照射強度0.1〜50mW/cmの範囲で照射する工程によって形成されることを特徴とするプラスチック塗装成形物。
【請求項2】
前記したプラスチック成形物が、ビカット軟化温度が100℃以下のプラスチックからなる成形物である請求項1に記載のプラスチック塗装成形物。
【請求項3】
前記した紫外線重合性オリゴマーが、ウレタンアクリレートオリゴマー及び又はポリエーテルアクリレートオリゴマーである請求項1又は2に記載のプラスチック塗装成形物。
【請求項4】
前記した紫外線硬化型塗料組成物が、紫外線吸収剤及び又は光安定剤を0.1〜10.0質量%含有する請求項1〜3の何れかに記載のプラスチック塗装成形物。
【請求項5】
前記した硬化皮膜の、メタルウェザー耐候試験100時間後における硬化皮膜の表面色相変化(△E)が3.0未満である請求項1〜4の何れかに記載のプラスチック塗装成形物。
【請求項6】
プラスチック成形物上に、紫外線重合性オリゴマー、紫外線重合性モノマー及び又は有機溶剤、及び、光重合開始剤を含有する紫外線硬化型塗料組成物を塗工する工程、及び、酸素濃度8%未満、且つ、二酸化炭素濃度50%以上のガス雰囲気下で紫外線を照射強度0.1〜50mW/cmの範囲で照射する工程を有することを特徴とするプラスチック塗装成形物の製造方法。


【公開番号】特開2006−160847(P2006−160847A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352606(P2004−352606)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】