説明

プラスチック成形品のリサイクル方法

【課題】回収されたプラスチック成形品を該成形品と同一のものを成形するための成形材料としてリサイクルし、このリサイクルにより成形されたプラスチック成形品の強度や外観等を維持する。
【解決手段】使用済みコンテナの強度を落錘装置13及び割れ判定装置14により測定し、強度を保持している使用済みコンテナを選択して粉砕し、リサイクル樹脂を得ているので、リサイクルコンテナの強度を保持することができる。また、測定された強度に応じてリサイクル樹脂の投入比率の上限を設定することによっても、リサイクルコンテナの強度を保持している。更に、リサイクル樹脂のコア層及び未使用樹脂の表層を有するサンドイッチ構造のリサイクルコンテナを成形しているので、優れた外観のリサイクルコンテナを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック成形品を回収してリサイクルするためのプラスチック成形品のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の合成樹脂等からなるプラスチック成形品のリサイクルが盛んに行なわれている。通常は、回収されたプラスチック成形品の強度や外観等が劣ることから、このプラスチック成形品を成形材料としてリサイクルするにしても、適用対象となるプラスチック成形品の種類を特定している。
【0003】
例えば、物品の搬送のために用いられる合成樹脂製のコンテナの場合は、軽量、丈夫、安価であり、多数のものが流通している。その反面、コンテナが合成樹脂製であることから、静電気によるチリの付着、汚れの付着、傷、割れ等の劣化が発生し易く、この劣化したコンテナを処分する必要がある。この様なコンテナは、通常、焼却されたり埋めたて廃棄されており、成形材料としてリサイクルされるにしても、その強度等のバラツキが大きいために、外観や強度等を要求されない他の種類のプラスチック成形品(パレット等)のリサイクルに適用されている。
【0004】
あるいは、自動車のバンパーの場合も、その回収したものの強度等のバラツキが大きいために、外観や強度等を要求されないシューズラックやバッテリートレイ等の成形材料としてリサイクルされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この様に従来は、回収されたプラスチック成形品の強度や外観等が劣ることから、回収されたプラスチック成形品を成形材料としてリサイクルするにしても、このリサイクルの成形材料を回収されたプラスチック成形品と同一のものを成形するためには適用せず、他の種類のプラスチック成形品に適用していた。
【0006】
このため、プラスチック成形品をリサイクルする流通経路が複雑化し、プラスチック成形品のリサイクル率の向上やコストの低減を実現することが困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、回収されたプラスチック成形品を該成形品と同一のものを成形するための成形材料としてリサイクルし、このリサイクルにより成形されたプラスチック成形品の強度や外観等を維持することが可能なプラスチック成形品のリサイクル方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のプラスチック成形品のリサイクル方法は、使用済みプラスチック成形品を回収するステップと、使用済みプラスチック成形品から得られるリサイクル樹脂及び未使用樹脂をコア層及び表層とするサンドイッチ構造のプラスチック成形品を成形するときの該リサイクル樹脂及び該未使用樹脂の投入比率を設定しており、該リサイクル樹脂の投入比率を予め設定された値以下に抑えるステップと、この設定された投入比率に応じたそれぞれの重量のリサイクル樹脂及び未使用樹脂を投入して、リサイクル樹脂のコア層及び未使用樹脂の表層を有するサンドイッチ構造のプラスチック成形品を成形するステップとを含んでいる。
【0009】
この様な本発明の製造方法によれば、サンドイッチ構造のプラスチック成形品は、その表層が未使用樹脂からなるため、外観上で劣ることがない。また、使用済みプラスチック成形品から得られるリサイクル樹脂の投入比率を一定値以下に抑えていることから、リサイクル樹脂のコア層の厚みが制限され、また未使用樹脂の表層が薄くなり過ぎることがなく、このためにサンドイッチ構造のプラスチック成形品の強度を十分に維持することができる。
【0010】
また、本発明のプラスチック成形品のリサイクル方法は、使用済みプラスチック成形品を回収するステップと、この回収された使用済みプラスチック成形品の強度を測定するステップと、この測定された使用済みプラスチック成形品の強度に基づいて、使用済みプラスチック成形品から得られるリサイクル樹脂及び未使用樹脂をコア層及び表層とするサンドイッチ構造のプラスチック成形品を成形するときの該リサイクル樹脂及び該未使用樹脂の投入比率を求めるステップと、この求められた投入比率に応じたそれぞれの重量のリサイクル樹脂及び未使用樹脂を投入して、リサイクル樹脂のコア層及び未使用樹脂の表層を有するサンドイッチ構造のプラスチック成形品を成形するステップとを含んでいる。
【0011】
この様な本発明の製造方法によれば、サンドイッチ構造のプラスチック成形品は、その表層が未使用樹脂からなるため、外観上で劣ることがない。また、使用済みプラスチック成形品の強度に基づいて、使用済みプラスチック成形品から得られるリサイクル樹脂の投入比率を求めているため、例えば使用済みプラスチック成形品の強度が低くなる程、リサイクル樹脂の投入比率を小さくして、リサイクル樹脂のコア層を薄くし、かつ未使用樹脂の表層を厚くすることができ、これによりサンドイッチ構造のプラスチック成形品の強度を十分に維持することができる。
【0012】
更に、本発明においては、回収された使用済みプラスチック成形品の強度に応じた取捨選択を行ない、選択された使用済みプラスチック成形品から得られるリサイクル樹脂を用いている。
【0013】
この様に回収された使用済みプラスチック成形品の強度に応じた取捨選択を行なえば、強度の劣化が大きな使用済みプラスチック成形品を廃棄し、強度の劣化が小さな使用済みプラスチック成形品を選択してリサイクルすることができ、リサイクル樹脂の品質を維持することができる。
【0014】
また、本発明のプラスチック成形品のリサイクル方法は、使用済みプラスチック成形品に対する落錘衝撃試験により、該使用済みプラスチック成形品の強度を測定するステップと、この測定された使用済みプラスチック成形品の強度に応じて、使用済みプラスチック成形品から得られるリサイクル樹脂及び未使用樹脂をコア層及び表層とするサンドイッチ構造のプラスチック成形品を成形するときの該リサイクル樹脂及び該未使用樹脂の投入比率を求めるステップとを含んでいる。
【0015】
この様な本発明の製造方法によれば、落錘衝撃試験により使用済みプラスチック成形品の強度を測定している。この落錘衝撃試験により、プラスチック成形品の曲げ強度、引っ張り強度、及び衝撃強度を同時にかつ簡単に試験することができる。このため、この測定された使用済みプラスチック成形品の強度に応じて、使用済みプラスチック成形品から得られるリサイクル樹脂及び未使用樹脂の投入比率を求め、この求められた投入比率に応じたそれぞれの重量のリサイクル樹脂及び未使用樹脂を投入して、リサイクル樹脂のコア層及び未使用樹脂の表層を有するサンドイッチ構造のプラスチック成形品を成形すれば、サンドイッチ構造のプラスチック成形品の強度を確実に維持することができる。また、このサンドイッチ構造のプラスチック成形品は、その表層が未使用樹脂からなるため、外観上
で劣ることがない。
【0016】
更に、本発明においては、プラスチック成形品は、オレフィン樹脂からなる。
【0017】
オレフィン樹脂は、その強度を落錘衝撃試験等により測定し易い。このため、本発明をオレフィン樹脂のプラスチック成形品のリサイクルに適用することが容易である。
【0018】
また、本発明においては、プラスチック成形品は、コンテナ又は車両用部材である。
【0019】
コンテナ又は車両用部材は、合成樹脂のプラスチック成形品であり、その回収が容易である。このため、本発明をコンテナ又は車両用部材のリサイクルに適用することができる。車両用部材としては、例えばバンパー、インスツルメントパネル等がある。
【発明の効果】
【0020】
以上説明した様に本発明によれば、回収された使用済みプラスチック成形品からリサイクル樹脂を得て、リサイクル樹脂及び未使用樹脂の投入比率を設定し、この設定された投入比率に応じたそれぞれの重量のリサイクル樹脂及び未使用樹脂を投入して、リサイクル樹脂のコア層及び未使用樹脂の表層を有するサンドイッチ構造のプラスチック成形品を成形している。このサンドイッチ構造のプラスチック成形品は、その表層が未使用樹脂からなるため、外観上で劣ることがない。また、使用済みプラスチック成形品から得られるリサイクル樹脂の投入比率を制限していることから、リサイクル樹脂のコア層の厚みが制限され、未使用樹脂の表層が薄くなり過ぎることがなく、このためにサンドイッチ構造のプラスチック成形品の強度を十分に維持することができる。
【0021】
また、回収された使用済みプラスチック成形品とリサイクルされるプラスチック成形品が全く同一もしくは同一種類であるため、プラスチック成形品をリサイクルする流通経路を簡単化し、プラスチック成形品のリサイクル率の向上やコストの低減を実現することができ、延いてはゼロエミッションやISO14000の実現に効を奏する。
【0022】
更に、ユーザ側では、使用済みプラスチック成形品の廃棄処理及びその処理費用を無くすことができる。また、プラスチック成形品を提供する側では、リサイクルのプラスチック成形品の強度及び外観が劣らないために、リサイクルのプラスチック成形品をコストを低減せずに提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明のリサイクル方法の一実施形態を示すフローチャートである。本実施形態のリサイクル方法は、物品の搬送のために用いられる合成樹脂製のコンテナをリサイクルの対象としており、使用済みコンテナを回収し(ステップS101)、強度を保持している使用済みコンテナのみを選択し(ステップS102)、この使用済みコンテナを粉砕してリサイクル樹脂を形成し(ステップS103)、リサイクル樹脂及び未使用樹脂の投入比率を設定し(ステップS104)、この設定された投入比率に応じたそれぞれの重量のリサイクル樹脂及び未使用樹脂を投入して、リサイクル樹脂のコア層及び未使用樹脂の表層を有するサンドイッチ構造のリサイクルコンテナを成形し(ステップS105)、このサンドイッチ構造のリサイクルコンテナを納品する(ステップS106)、というもの
である。
【0025】
次に、本実施形態のリサイクル方法を更に詳しく述べる。
【0026】
まず、使用済みコンテナを回収する(ステップS101)。
【0027】
ここで、使用済みコンテナから得られるリサイクル樹脂の投入比率の上限を40%に予め設定する。リサイクル樹脂の投入比率を上限の略40%に設定したときには、未使用樹脂の投入比率を略60%に設定することになる。そして、リサイクルコンテナの受注があれば、リサイクル樹脂の上限の投入比率に基づいて、受注量のリサイクルコンテナを製造するのに必要な使用済みコンテナの回収個数(リサイクル樹脂の重量)を求め、この回収個数の使用済みコンテナを回収する。例えば、ユーザのコンテナの保有個数が100万個であり、ユーザにより保有個数を105万個に増大させることが要求された場合は、3万3千個の使用済みコンテナを回収し、8万3千個のリサイクルコンテナを納品する必要がある。この回収された使用済みコンテナから得られるリサイクル樹脂の投入比率を次式(
1)に示す。
【0028】
(3万3千個/(5万個+3万3千個))≒0.4 ……(1)
ただし、使用済みコンテナ1個分の重量とリサイクルコンテナ1個分の重量が等しいものとする。
【0029】
また、8万3千個のリサイクルコンテナを一度に納品することが困難であるため、複数回に分けて、例えば1千個ずつを納品し、納品の前に40%に当たる4百個の使用済みコンテナを回収するものとする。
【0030】
次に、使用済みコンテナの強度を落錘衝撃試験により測定する(ステップS102)。
【0031】
図2(a)及び(b)は、コンテナの強度測定用システムを概略的に示す側面図及び平面図である。このシステムでは、複数の使用済みコンテナ11を第1ベルトコンベア12により落錘装置13まで順次搬送し、各使用済みコンテナ11の強度を落錘装置13及び割れ判定装置14により逐次測定する。落錘装置13は、例えば使用済みコンテナ11を台の上に置き、1kgの錘を1.5mを超える高さから使用済みコンテナ11へと落下させる。割れ判定装置14は、例えばビデオカメラ及び画像処理装置を備えており、1kgの錘を受けた使用済みコンテナ11をビデオカメラにより撮影し、その画像を画像処理装置により処理して、使用済みコンテナ11が割れているか否かを判定する。そして、割れ判定装置14は、使用済みコンテナ11が割れていないと判定したならば、この使用済み
コンテナ11を第2ベルトコンベア15に渡す。第2ベルトコンベア15は、使用済みコンテナ11をコンテナの粉砕機(図示せず)へと搬送する。粉砕機は、使用済みコンテナ11を粉砕して、成形材料となるリサイクル樹脂を形成する。
また、割れ判定装置14は、使用済みコンテナ11が割れていると判定したならば、この割れた使用済みコンテナ11を第3ベルトコンベア16に渡す。第3ベルトコンベア16は、割れた使用済みコンテナ11を製造ライン外へと搬送し、この割れた使用済みコンテナ11を廃棄する。
【0032】
使用済みコンテナ11は、その強度が低下していることがある。この強度が低下した使用済みコンテナ11を粉砕して、リサイクル樹脂を形成し、このリサイクル樹脂を用いて、リサイクルコンテナを成形すると、このリサイクルコンテナの強度も低下してしまう。そこで、落錘装置13の試験によって割れなかった使用済みコンテナ11、つまり強度を保持している使用済みコンテナ11のみを選択して粉砕し、リサイクル樹脂を形成している。
【0033】
プラスチック成形品の強度としては、曲げ強度、引っ張り強度、及び衝撃強度がある。これらの強度別に、プラスチック成形品の強度試験を行なうならば、多くの手間と時間を要する。ところが、本発明の発明者等が鋭意研究を進めたところ、錘を使用済みコンテナ11に落下させて、使用済みコンテナ11の割れを判定すれば、曲げ強度、引っ張り強度、及び衝撃強度を一度に判定し得ることが分かった。従って、図2に示す様な落錘装置13及び割れ判定装置14を含むシステムにより、使用済みコンテナ11の強度を確実かつ速やかに判定することが可能である。
【0034】
本発明の発明者等の実験では、ポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン樹脂を材料とするコンテナを実験の対象としているため、オレフィン樹脂のプラスチック成形品に関しては、落錘装置13及び割れ判定装置14によりプラスチック成形品の強度を測定することができる。また、他の種類の樹脂に関しても、オレフィン樹脂と類似する特性を持つものであれば、同様の方法により強度を測定することができるといえる。
【0035】
ここで、ステップS101で回収された使用済みコンテナ11の殆どが割れなければ、この回収された使用済みコンテナ11の殆どが粉砕されてリサイクル樹脂となり、つまり回収された使用済みコンテナ11の利用効率が100%近くになり、リサイクル樹脂の投入比率が上限の40%近くに達する。
【0036】
また、ステップS101で回収された使用済みコンテナ11の割れる割合が高いこともある。この場合は、落錘装置13における錘を落下させる高さを低くして、使用済みコンテナ11の選択基準を低くし、落錘装置13及び割れ判定装置14による測定をやり直す。例えば、落錘装置13により1kgの錘を1.0m以上1.5m未満の高さから使用済みコンテナ11へと落下させ、割れ判定装置14により使用済みコンテナ11が割れているか否かを判定する。そして、割れていないと判定された使用済みコンテナ11を第2ベルトコンベア15により粉砕機へと搬送して、使用済みコンテナ11を粉砕し、成形材料となるリサイクル樹脂を形成する。
【0037】
ただし、このときに選択された使用済みコンテナ11は、1kgの錘を1.5mを超える高さから受けても割れなかった使用済みコンテナ11よりも強度が低い。このため、リサイクル樹脂の投入比率の上限を30%に変更して、未使用樹脂の投入比率を高くし、これによりリサイクル樹脂のコア層及び未使用樹脂の表層を有するリサイクルコンテナの強度低下を防止する。
【0038】
更に、落錘装置13における錘を落下させる高さを1m以上1.5mの範囲に変更しても、使用済みコンテナ11の割れる割合が高ければ、落錘装置13における錘を落下させる高さを0.7m以上1.0m未満の範囲でより低くして、使用済みコンテナ11の選択基準をより低くし、落錘装置13及び割れ判定装置14による測定をやり直す。そして、割れていないと判定された使用済みコンテナ11を第2ベルトコンベア15により粉砕機へと搬送して、成形材料となるリサイクル樹脂を形成する。
【0039】
また、このときに選択された使用済みコンテナ11の強度がより低くなるため、リサイクル樹脂の投入比率の上限を20%に変更して、未使用樹脂の投入比率を高くし、これによりリサイクル樹脂のコア層及び未使用樹脂の表層を有するリサイクルコンテナの強度低下を防止する。
【0040】
更に、落錘装置13における錘を落下させる高さを0.7m以上1.0m未満の範囲に変更しても、使用済みコンテナ11の割れる割合が高ければ、使用済みコンテナ11の強度が低すぎるため、使用済みコンテナ11のリサイクルを中止する。
【0041】
表1は、落錘装置13及び割れ判定装置14による測定内容、つまり使用済みコンテナ11の選択基準と、リサイクル樹脂の投入比率の上限を対応付けて示す表である。
【0042】
【表1】

【0043】
この表1からも明らかな様に錘を落下させる高さの範囲が低くなり、使用済みコンテナ11の選択基準が低くなる程、リサイクル樹脂の投入比率の上限を低くしている。これにより、リサイクルコンテナの強度が低下しない様なリサイクル樹脂のコア層の厚みを設定することができる。
【0044】
こうして選択された使用済みコンテナ11は、先に述べた様に第2ベルトコンベア15により粉砕機へと搬送され、この粉砕機により粉砕されて、リサイクル樹脂となる。そして、リサイクル樹脂は、洗浄され、その重量を計量されてから一時保管される(ステップS103)。
【0045】
次に、ユーザの受注を正式に受け、リサイクル樹脂及び未使用樹脂の投入比率を決定する(ステップS104)。
【0046】
ここで、例えばコンテナ1個当たりの重量を1kgとする。そして、ステップS101で4百個の使用済みコンテナ11(400kg)を回収し、ステップS102で使用済みコンテナ11を選択してから、ステップS103で使用済みコンテナ11を粉砕して、380kgのリサイクル樹脂を得て保管し、ステップS104で1千個のリサイクルコンテナを受注したものとする。この場合は、リサイクルコンテナを1千個納品するので、リサイクル樹脂及び未使用樹脂の全投入重量が1000kgとなる。また、リサイクル樹脂の投入比率の上限が40%であれば、380kgのリサイクル樹脂の全てを投入することができ、(1000kg−380kg)=620kgの未使用樹脂を投入することになる。従って、リサイクル樹脂の投入比率が38%となり、未使用樹脂の投入比率が62%となる。リサイクルコンテナ1個当たりでは、リサイクル樹脂の重量が0.38kgとなり、未使用樹脂の重量が0.62kgとなる。
【0047】
また、落錘装置13における錘を落下させる高さを1.0m以上1.5m未満の範囲で低くして、使用済みコンテナ11の選択基準を低くし、その上で380kgのリサイクル樹脂を得た場合は、リサイクル樹脂の投入比率の上限が30%であるから、300kgのリサイクル樹脂を投入し、(1000kg−300kg)=700kgの未使用樹脂を投入することになり、80kgのリサイクル樹脂が余る。リサイクルコンテナ1個当たりでは、リサイクル樹脂の重量が0.3kgとなり、未使用樹脂の重量が0.7kgとなる。
【0048】
更に、落錘装置13における錘を落下させる高さを0.7m以上1.0m未満の範囲でより低くして、使用済みコンテナ11の選択基準をより低くし、その上で380kgのリサイクル樹脂を得た場合は、リサイクル樹脂の投入比率の上限が20%であるから、200kgのリサイクル樹脂を投入し、(1000kg−200kg)=800kgの未使用樹脂を投入することになり、180kgのリサイクル樹脂が余る。リサイクルコンテナ1個当たりでは、リサイクル樹脂の重量が0.2kgとなり、未使用樹脂の重量が0.8kgとなる。
【0049】
こうしてリサイクル樹脂及び未使用樹脂の投入比率が設定されると、これらの投入比率に応じたそれぞれの重量のリサイクル樹脂及び未使用樹脂を投入して、リサイクル樹脂のコア層及び未使用樹脂の表層を有するサンドイッチ構造のリサイクルコンテナを成形する(ステップS105)。
【0050】
図3は、サンドイッチ構造のリサイクルコンテナを成形するための成形機を示す側面図である。この成形機は、リサイクル樹脂を加熱溶融して射出するコア層樹脂射出機21と、未使用樹脂を加熱溶融して射出する表層樹脂射出機22と、リサイクル樹脂及び未使用樹脂をコンテナの金型23の成形空間に射出するMMPプレート24と、固定プラテン25とを備えている。
【0051】
図4は、MMPプレート24周辺を拡大して示す断面図である。図4から明らかな様にMMPプレート24は、幹流路24aと、幹流路24aに合流する枝流路24bとを有しており、幹流路24aの一端が表層樹脂射出機22のノズル22a先端に接続され、枝流路24bの一端がコア層樹脂射出機21のノズル21a先端に接続され、幹流路24aの他端がコンテナの金型23の樹脂導入口23aに接続されている。
【0052】
この様な構成の成形機では、まず未使用樹脂を表層樹脂射出機22から送り出し、この未使用樹脂を幹流路24aを通じて金型23の成形空間に射出する。そして、この未使用樹脂の送り出し時点より僅かに遅れて、リサイクル樹脂をコア層樹脂射出機21から枝流路24bを通じて幹流路24aへと送り出し、リサイクル樹脂を未使用樹脂と共に金型23の成形空間に射出する。このとき、先に送り出された未使用樹脂が幹流路24aの内周壁に沿って流れ、遅れて送り出されたリサイクル樹脂が幹流路24aの中央に流れ、そのままの状態で未使用樹脂及びリサイクル樹脂が金型23の成形空間に射出される。この結果、金型23の成形空間では、リサイクル樹脂がコア層26となり、未使用樹脂が該コア層26を挟み込む表層27となり、リサイクル樹脂のコア層26及び未使用樹脂の表層27を有するサンドイッチ構造のリサイクルコンテナが成形される。
【0053】
図5は、コア層樹脂射出機21及び表層樹脂射出機22の作動過程を示すグラフであり、曲線Aが表層樹脂射出機22の作動過程を示し、曲線Bがコア層樹脂射出機21の作動過程を示している。この図5のグラフからも明らかな様に、まず時点T0で表層樹脂射出機22の射出スクリューの前進を開始して、未使用樹脂を送り出し、時点T1でコア層樹脂射出機21の射出スクリューの前進を開始して、リサイクル樹脂を送り出している。このとき、表層樹脂射出機22の射出スクリューの前進速度をコア層樹脂射出機21の射出スクリューの前進速度よりも遅くして、未使用樹脂の送り出し量をリサイクル樹脂の送り出し量よりも多くしている。そして、時点T4でコア層樹脂射出機21の射出スクリューの前進を停止して、リサイクル樹脂の送り出しを停止し、時点T5で表層樹脂射出機22の射出スクリューの前進を停止して、未使用樹脂の送り出しを停止している。こ
れにより、リサイクル樹脂のコア層26及び未使用樹脂の表層27を有するサンドイッチ構造のリサイクルコンテナが成形される。
【0054】
また、コア層樹脂射出機21の射出スクリューの前進開始時点、つまりリサイクル樹脂の送り出し開始時点を変更することにより、リサイクル樹脂の投入比率を調節することができ、これに伴って未使用樹脂の投入比率も調節することができる。例えば、コア層樹脂射出機21の射出スクリューの前進開始時点を時点T1、時点T2、時点T3と遅くする程、リサイクル樹脂の投入比率が40%、30%、20%という様に順次低くなり、未使用樹脂の投入比率が60%、70%、80%という様に順次高くなる。そして、リサイクル樹脂の投入比率が低くなる程、リサイクル樹脂のコア層26が薄くなり、未使用樹脂の投入比率が高くなる程、未使用樹脂の表層27が厚くなる。
【0055】
従って、コア層樹脂射出機21の射出スクリューの前進開始時点の調節により、リサイクル樹脂及び未使用樹脂をそれぞれの投入比率の重量分だけ投入して、リサイクル樹脂のコア層及び未使用樹脂の表層を有するサンドイッチ構造のリサイクルコンテナを成形することができる。また、それぞれの投入比率の設定により、リサイクル樹脂のコア層の厚み及び未使用樹脂の表層の厚みを制御することができる。
【0056】
ここで、リサイクルコンテナの強度は、リサイクル樹脂及び未使用樹脂そのものの強度、リサイクル樹脂のコア層の厚み及び未使用樹脂の表層の厚み等により決まる。このため、既に述べて来た様に使用済みコンテナの強度が低くなる程、リサイクル樹脂の上限の投入比率を低く設定して、リサイクル樹脂のコア層を薄くし、かつ未使用樹脂の表層を厚くすれば、リサイクルコンテナの強度が維持される。
【0057】
こうしてステップS104で受注した1千個のリサイクルコンテナを成形すると、これらのリサイクルコンテナをユーザに出荷納品する。また、リサイクル樹脂が余った場合は、余った量に対応する使用済みコンテナの個数を算出し、この算出された使用済みコンテナの個数を4百個から差し引いた差の個数を求め、この差の個数の使用済みコンテナを次回の1千個のリサイクルコンテナの納品前に回収するものとし、この差の個数をユーザに報告する(ステップS106)。
【0058】
この様に本実施形態のリサイクル方法では、使用済みコンテナの強度を落錘装置13及び割れ判定装置14により測定し、強度を保持している使用済みコンテナを選択して粉砕し、リサイクル樹脂を得ているので、リサイクルコンテナの強度を保持することができる。また、リサイクルコンテナをリサイクル樹脂のコア層及び未使用樹脂の表層を有するサンドイッチ構造とし、使用済みコンテナの強度に応じてリサイクル樹脂の投入比率の上限を設定して、リサイクル樹脂のコア層の厚み及び未使用樹脂の表層の厚みを制御することによっても、リサイクルコンテナの強度を維持している。この結果、リサイクルコンテナの強度を未使用樹脂100%のコンテナと同等にすることができる。
【0059】
また、リサイクル樹脂のコア層及び未使用樹脂の表層を有するサンドイッチ構造の採用により、優れた外観のリサイクルコンテナを提供することができる。更に、未使用樹脂については、着色を自在になし得るので、各種の色のリサイクルコンテナを提供することができる。
【0060】
尚、本実施形態では、コンテナを例示しているが、他の種類のプラスチック成形品であっても、本発明を適用することができる。例えば、本発明をバンパー、インスツルメントパネル等の車両用部材をリサイクルするために適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施形態のリサイクル方法を示すフローチャートである。
【図2】(a)及び(b)は、コンテナの強度測定用システムを概略的に示す側面図及び平面図である。
【図3】サンドイッチ構造のコンテナを成形するための成形機を示す側面図である。
【図4】図3の成形機におけるMMPプレート周辺を拡大して示す断面図である。
【図5】コア層樹脂射出機及び表層樹脂射出機の作動過程を示すグラフである。
【符号の説明】
【0062】
11 使用済みコンテナ
12 第1ベルトコンベア
13 落錘装置
14 割れ判定装置
15 第2ベルトコンベア
16 第3ベルトコンベア
21 コア層樹脂射出機
22 表層樹脂射出機
23 コンテナの金型
24 MMPプレート
24a 幹流路
24b 枝流路
25 固定プラテン
26 コア層
27 表層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みプラスチック成形品を回収するステップと、
使用済みプラスチック成形品から得られるリサイクル樹脂及び未使用樹脂をコア層及び表層とするサンドイッチ構造のプラスチック成形品を成形するときの該リサイクル樹脂及び該未使用樹脂の投入比率を設定しており、該リサイクル樹脂の投入比率を予め設定された値以下に抑えるステップと、
この設定された投入比率に応じたそれぞれの重量のリサイクル樹脂及び未使用樹脂を投入して、リサイクル樹脂のコア層及び未使用樹脂の表層を有するサンドイッチ構造のプラスチック成形品を成形するステップと
を含むことを特徴とするプラスチック成形品のリサイクル方法。
【請求項2】
使用済みプラスチック成形品を回収するステップと、
この回収された使用済みプラスチック成形品の強度を測定するステップと、
この測定された使用済みプラスチック成形品の強度に基づいて、使用済みプラ
スチック成形品から得られるリサイクル樹脂及び未使用樹脂をコア層及び表層とするサンドイッチ構造のプラスチック成形品を成形するときの該リサイクル樹脂及び該未使用樹脂の投入比率を求めるステップと、
この求められた投入比率に応じたそれぞれの重量のリサイクル樹脂及び未使用樹脂を投入して、リサイクル樹脂のコア層及び未使用樹脂の表層を有するサンドイッチ構造のプラスチック成形品を成形するステップと
を含むことを特徴とするプラスチック成形品のリサイクル方法。
【請求項3】
回収された使用済みプラスチック成形品の強度に応じた取捨選択を行ない、選択された使用済みプラスチック成形品から得られるリサイクル樹脂を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチック成形品のリサイクル方法。
【請求項4】
使用済みプラスチック成形品に対する落錘衝撃試験により、該使用済みプラスチック成形品の強度を測定するステップと、
この測定された使用済みプラスチック成形品の強度に応じて、使用済みプラスチック成形品から得られるリサイクル樹脂及び未使用樹脂をコア層及び表層とするサンドイッチ構造のプラスチック成形品を成形するときの該リサイクル樹脂及び該未使用樹脂の投入比率を求めるステップと
を含むことを特徴とするプラスチック成形品のリサイクル方法。
【請求項5】
プラスチック成形品は、オレフィン樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプラスチック成形品のリサイクル方法。
【請求項6】
プラスチック成形品は、コンテナ又は車両用部材であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプラスチック成形品のリサイクル方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−237741(P2007−237741A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106479(P2007−106479)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【分割の表示】特願2002−328812(P2002−328812)の分割
【原出願日】平成14年11月12日(2002.11.12)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】