説明

プラズマディスプレイパネル用の前面板及び背面板、それに用いられる組成物

【課題】本発明は誘電体層側の表面の基板または電極のいずれかに銅が存在するPDPの前面板または背面板において、焼成後に誘電体層内に気泡が残らず、十分な平坦性が得られた誘電体層を用いたPDP用の前面板および背面板を提供することを目的とする。
【解決手段】
前記誘電体層の焼成後の厚さが5〜15μmであり、焼成前の誘電体層が(a)無機粉末、側鎖に含まれる水酸基の量が、モノマー構成単位あたりの側鎖に含まれる水酸基の平均個数に換算して、1モノマー構成単位あたり0.4個以上である(b)側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂を含有することを特徴とすることにより、焼成後に誘電体層内に気泡が残らず、十分な平坦性を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体放電を用いた自発光形式のフラットパネルディスプレイとしてのプラズマディスプレイパネル(以下、PDPと記す)に用いられる前面板及び背面板、それに用いられる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
放電現象を利用して多数の微細なセルを自己発光させることにより画像を形成するプラズマディスプレイは、大画面、薄型、軽量、フラットという、従来のディスプレイでは実現できなかった優れた特徴を有しており、その普及が図られている。
【0003】
一般にPDPは、2枚の対向するガラス基板にそれぞれ規則的に配列した一対の電極を設け、その間にNe、Xe、He等を主体とする希ガスを封入した構造である。これらの電極間に電圧を印加し、電極周辺の微小なセル内で放電を発生させることにより各セルを発光させて表示を行っている。PDPは規則的に並んだセルを選択的に放電発光させることで情報を表示している。このPDPには、直流型(DC型)と交流型(AC型)があり、双方とも表示機能や駆動方法の違いによって、さらにリフレッシュ駆動方式とメモリー駆動方式等に分類される。
【0004】
AC型PDPの構成例として図1にワッフル構造型セルを有するプラズマディスプレイ要部の分解斜視図を示す。セル構造としてはその他にもストレート構造等がある。プラズマディスプレイは、透明電極110とバス電極112からなる複合電極11が互いに平行に形成された前面板1と、上記複合電極11と直交するようにアドレス電極21が互いに平行に形成された背面板2とが対向して配設され、一体化されてなる表示素子である。前記前面板1は表示面となる透明ガラス基板10を有しており、このガラス基板10の内側、すなわち背面板2側には、上記複合電極11が配置されている。そして、この複合電極11を覆うように誘電体層12が形成され、この誘電体層12上にはパターニングされたスペーサ層16が設けられており、この誘電体層12およびスペーサ層16の表面にはMgO等からなる保護膜19が形成されている。一方、背面板2の基板20の前面板1側には、上記のアドレス電極21が配置され、このアドレス電極21を覆うように誘電体層22が形成され、この誘電体層22上に下記の発光部が形成されている。
【0005】
上記の複合電極11とアドレス電極21とが交差する空間に位置することになる前記発光部は多数のセルから構成されている。多数のセルは、前記誘電体層22上の縦横方向に形成されたリブ24によって構成されており、リブ24の壁面とリブ内の誘電体層22の表面、すなわち各セルの内面と底面を覆うようにして蛍光体層26が設けられている。プラズマディスプレイでは、前面板の複合電極間に交流電源から所定の電圧を印加して電場を形成することにより、セル内で放電が行われ、この放電により生じる紫外線により蛍光体層26を発光させる。
【0006】
このような前面板、背面板の誘電体層としては特許文献1のようなガラス粉末および水酸基を有するアクリル系樹脂を含む誘電体層形成用組成物を用いる方法が知られている。しかし、誘電体層側の表面の基板または電極のいずれかに銅が存在する場合、銅表面から泡が発生し、焼成後も誘電体層中に気泡が残ることがあり、その際は十分な平坦性が得られず、良好な誘電体層が得られないという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開2002−328470号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コストや導電性、利用容易性の点からPDPの誘電体層側の表面の基板または電極のいずれかに銅が使用されることがある。しかし、その場合、焼成時に銅表面から泡が発生し、焼成後も誘電体層中に気泡が残ってしまい、十分な平坦性が得られず、良好な誘電体層が得られないという問題があった。
また、樹脂成分として水酸基を有する樹脂を用いる場合、側鎖の水酸基の比率が多い場合は焼成時の熱収縮が大きくなり、収縮時にクラックが入り良好な誘電体層が得られないという問題があった。特にPDPの前面板や背面板に用いられる誘電体層の場合、焼成時の熱収縮によるクラックでPDP自体が不良品となる恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
こうした現状に鑑み、本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、焼成後の誘電体層の厚さを5〜15μmとし、焼成前の誘電体層が無機粉末、側鎖に含まれる水酸基の量が、モノマー構成単位あたりの側鎖に含まれる水酸基の平均個数に換算して、1モノマー構成単位あたり0.4個以上であるバインダー樹脂を含有する誘電体層とすることで、誘電体層側の表面の基板または電極のいずれかに銅が存在するPDPの前面板または背面板に用いられる誘電体層において、焼成後に誘電体層内に気泡が残らず、十分な平坦性が得られた誘電体層を用いたPDP用の前面板および背面板が作成できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は誘電体層側の表面の基板または電極のいずれかに銅が存在するPDPの前面板または背面板において、焼成後に誘電体層内に気泡が残らず、十分な平坦性が得られた誘電体層を用いたPDP用の前面板および背面板を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は上記前面板及び背面板の誘電体層を形成するための誘電体層形成用組成物を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0012】
誘電体層に側鎖に含まれる水酸基の量が、モノマー構成単位あたりの側鎖に含まれる水酸基の平均個数に換算して、1モノマー構成単位あたり0.4個以上であるバインダー樹脂を含有させることにより、少なくとも誘電体層側の表面の基板または電極のいずれかに銅が存在するPDPの前面板または背面板において、焼成後の誘電体層内に気泡が残らず、十分な平坦性が得られた誘電体層を用いたPDP用の前面板および背面板が作成できるという効果を奏する。
【0013】
また、焼成後の厚さを5〜15μmとすることにより、焼成時の熱収縮によって誘電体層にクラックが生じることを防ぎ、良好な誘電体層を用いたPDP用の前面板および背面板が作成できるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明のPDP用の誘電体層形成用組成物において、無機粉末、側鎖に含まれる水酸基の量が、モノマー構成単位あたりの側鎖に含まれる水酸基の平均個数に換算して、1モノマー構成単位あたり0.4個以上であるバインダー樹脂を含有することで、前記前面板および背面板に好適に用いられるクラックのない十分に平坦な誘電体層の作成に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について、下記の順に詳細に説明する。
[A]誘電体層形成用組成物
[B]誘電体層形成用組成物の製造方法
[C]PDP用誘電体層形成用シート状未焼成体
[D]PDP用の前面板の製造方法及びPDP用の背面板の製造方法
【0016】
[A]誘電体層形成用組成物
本発明の誘電体層形成用組成物は、少なくとも、無機粉末、側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂を含有する。
【0017】
本発明の誘電体層形成用組成物は、側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂を組成物中に溶解または分散させ、無機粉末を分散させてペースト状としたものである。
【0018】
本発明の誘電体層形成用組成物において、バインダー樹脂としては、誘電体層の軟化点の制御と、無機粉末の分散性の観点から側鎖末端に水酸基を含有する水酸基含有樹脂が用いられる。
組成物の軟化点を焼成温度より低くすることにより、焼成後に誘電体層に気泡が残らず、十分な平坦性が保たれた良好な誘電体を得ることができる。組成物の軟化点が焼成温度より高い場合、誘電体に気泡が残り、十分な平坦性が保たれた誘電体を得ることができない場合がある。また、バインダー樹脂に水酸基が多い場合、無機粉末の分散性が増し、無機粉末の粒子が小さく均一になり、平坦性の向上や下層で接している金属物の析出の防止等、焼成後の誘電体の品質が向上する。
【0019】
(a)無機粉末
本発明に用いる無機粉末は、焼成することでガラス化するガラスフリットであることが好ましく、例えば、PbO−SiO2系、PbO−B2O3−SiO2系、ZnO−SiO2系、ZnO−B2O3−SiO2系、BiO−SiO2系、BiO−B2O3−SiO2系、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3系、PbO−ZnO−B2O3−SiO2系などが挙げられる。
【0020】
また、セラミックス(コーディライト等)、金属等の無機粉末を用いてもよい。このような無機粉末として、具体的には、酸化コバルト、酸化鉄、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化マンガン、酸化ネオジウム、酸化バナジウム、酸化セリウムチペークイエロー、酸化カドミウム、酸化ルテニウム、シリカ、マグネシア、スピネルなどNa、K、Mg、Ca、Ba、Ti、Zr、Al等の各酸化物等が挙げられる。
【0021】
無機粉末の粒子径は、平均粒径が0.1〜10μm、より好ましくは0.5〜8μmが好適に用いられる。平均粒径が10μm以下だと、焼成後の誘電体表面の平坦性が得られるため好ましく、平均粒径が0.1μm以上では焼成時に微細な空洞が形成されず絶縁不良が発生しないため好ましい。前記無機粉末の形状としては、球状、ブロック状、フレーク状、デンドライト状が挙げられ、その単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
また、無機粉末は物性値の異なる微粒子の混合物であってもよい。特に、ガラスフリットと熱軟化点の異なるセラミックス粉末等を用いることによって、焼成時の収縮率を抑制することができる。この無機粉末は、誘電体層形成用組成物の用途に応じて形状、物性値の組合せ等を変えて配合するのがよい。
無機粉末は、全ての有機成分(有機溶剤、バインダー樹脂など含む)100質量部に対して、100〜1000質量部の割合で配合することが好ましい。
【0023】
(b)側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂
本発明の組成物においては、バインダー樹脂として、側鎖に水酸基を有する樹脂を用いる。
【0024】
このようなバインダー樹脂としては、次に挙げるような、水酸基を導入可能なモノマーを重合あるいは共重合させたものを用いることができる。
【0025】
このような水酸基を導入可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、エチレン性不飽和カルボン酸、その他の共重合可能なモノマーを好適に用いることができ、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、スチレン、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレンモノアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレンモノメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルアクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルアクリレート、i−ブチルメタクリレート、sec−ブチルアクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、3−エチルヘキシルアクリレート、エチレングリコールモノアクリレート、エチレングリコールモノメタクリレート、グリセロールアクリレート、グリセロールメタクリレート、ジペンタエリトリトールモノアクリレート、ジペンタエリトリトールモノメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等を挙げることができる。このうち、アクリル酸及びメタクリル酸が好適に用いられる。
【0026】
また、その他の共重合可能なモノマーとしては、例えば前述の(メタ)アクリル酸エステルの例示化合物をフマレートに代えたフマル酸エステル類、マレエートに代えたマレイン酸エステル類、クロトネートに代えたクロトン酸エステル類、イタコネートに代えたイタコン酸エステル類、α−メチルスチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、イソプレン、クロロプレン、3−ブタジエン等を挙げることができる。
【0027】
本発明に用いるバインダー樹脂の側鎖における水酸基量は、バインダー樹脂のモノマー構成単位あたりの側鎖に含まれる水酸基の平均個数に換算して、1モノマー構成単位あたり0.4個以上であることが好ましい。分子内の水酸基含有量が1構成単位あたり0.4個以上だと無機粉末の分散性が良好で、誘電体軟化点の制御が可能であり、十分な平坦性が保たれた良好な誘電体層が得られる。
【0028】
また、バインダー樹脂の側鎖における水酸基量が、バインダー樹脂のモノマー構成単位あたりの側鎖に含まれる水酸基の平均個数に換算して、1モノマー構成単位あたり0.4個以上であるため、無機粉末をバインダー樹脂と水素結合させる事が容易であり、無機粉末の分散性が増す。それにより無機粉末の粒子が小さく均一になり、誘電体層としての質が向上する。層の質の向上により、例えば下層の金属の析出を抑えることができる。また、粒子の大きい部分が塊状になることにより生じる、組成物層の線上の凹凸(スジ引き)やクレーターの発生を抑えることができる。
【0029】
(c)その他の成分
本発明の誘電体層形成用組成物は、上述の(a)無機粉末、および、(b)側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂を必須成分として含有するものであり、その用途に応じて、さらに他の成分を含有せしめることができる。
【0030】
特性を調節するために、側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂と、他のバインダー樹脂を組み合わせてもよい。他のバインダー樹脂としては、セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロースなどのセルロース誘導体や、さらに、これらセルロース誘導体とエチレン性不飽和カルボン酸や(メタ)アクリレート化合物等との共重合体を用いることができる。さらに、バインダー樹脂としては、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドとの反応生成物であるポリブチラール樹脂などのポリビニルアルコール類、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、α−メチル−β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、α−メチル−β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、α,α−ジメチル−β−プロピオラクトン、β,β−ジメチル−β−プロピオラクトンなどのラクトン類が開環重合したポリエステル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール単独または二種以上のジオール類と、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸などのジカルボン酸類との縮合反応で得られたポリエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリペンタメチレングリコールなどのポリエーテル類、ビスフェノールA、ヒドロキノン、ジヒドロキシシクロヘキサン等のジオール類と、ジフェニルカーボネート、ホスゲン、無水コハク酸等のカルボニル化合物との反応生成物であるポリカーボネート類が挙げられる。以上のバインダー樹脂は単独でも又2種以上での混合物でも使用できる。
【0031】
この場合、側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂と他のバインダー樹脂の総和100質量部に対して、側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂の割合を30質量部以上、他のバインダー樹脂の割合を70質量部以下とする。好ましくは、側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂の割合が50質量部以上、他のバインダー樹脂の割合が50質量部以下であり、より好ましくは側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂の割合が70質量部以上、他のバインダー樹脂の割合が30質量部以下である。他のバインダー樹脂の割合が増加すると、無機粉末の分散性を低下させる場合があるので好ましくない。
【0032】
本発明に用いる有機溶剤としては、バインダー樹脂を容易に溶解できる有機溶剤であれば得に限定されない。このような有機溶剤としては、エーテル類、ケトン類、エステル類、アルコール類からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0033】
本発明に用いることのできる有機溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、エチレングリコールモノヘキシルエーテルアセテート、グリセリントリアセテート、グリセリントリラウリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトフェノン、イソホロン、エチル-N-ブチルケトン、ジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、ジ-N-プロピルケトン、メチル-N-アミルケトン(アミルメチルケトン)、メチルシクロヘキサノン、メチル-N-ブチルケトン、メチル-N-プロピルケトン、メチル-N-ヘキシルケトン、メチル-N-ヘプチルケトン、アジピン酸ジエチル、アセチルクエン酸トリメチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチル、安息香酸イソアミル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸プロピル、安息香酸ベンジル、ギ酸イソアミル、ギ酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、ギ酸プロピル、ギ酸ヘキシル、ギ酸ベンジル、ギ酸メチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、酢酸アミル、酢酸アリル、酢酸イソアミル、酢酸メチルイソアミル、酢酸メトキシブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸第二ヘキシル、酢酸-2-エチルヘキシル、酢酸-2-エチルブチル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸-n-ブチル、酢酸第二ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸ベンジル、酢酸メチルシクロヘキシル、シュウ酸ジアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、乳酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、フタル酸エステル、γ-ブチロラクトン、プロピオン酸
イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ベンジル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、酪酸イソアミル、酪酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルカン類、トルエン、ヘキサン類、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロペンタン、ハロゲン化炭化水素、含窒素化合物、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、3-メトキシ-3-メチルブタノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類等を例示することができる。
【0034】
また、沸点250℃以下の有機溶剤、特に沸点100℃〜200℃の有機溶剤が好ましい。以上の溶剤は単独でも2種以上を組み合わせてもよい。複数の溶剤を組み合わせた場合、共沸する温度が250℃以下であることが好ましく、特に100℃〜200℃であることが製造が容易になるため好ましい。溶剤は(b)側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂100質量部に対し、溶剤を30〜500質量部、好ましくは50〜300質量部、より好ましくは100〜250質量部の割合で配合することが好ましい。
【0035】
物性の制御のために、本来の特性を損なわない範囲で単量体を添加することができる。単量体としては、上述の(b)側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂で例示したモノマーを挙げることができるが、重合可能なエチレン性不飽和結合を2個以上有するモノマー(以下、多官能性モノマーという)が好ましい。多官能性モノマーとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコールのジアクリレート又はジメタクリレート類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのジアクリレート又はジメタクリレート類、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールのポリアクリレート又はポリメタクリレート類やそれらのジカルボン酸変性物などが挙げられる。この中で、具体的には、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート等が挙げられる。
【0036】
また、可塑性を付与するために可塑剤を添加することもできる。可塑剤としては、公知のものを用いることができ、沸点が200℃以上で室温で液体の透明性に優れるものが好ましい。その可塑剤の例としては、フタル酸ジメチルやフタル酸ジエチル、フタル酸ジブチルやフタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシルやフタル酸ジイソブチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシルやフタル酸ジブトキシエチル、フタル酸ジブチルベンジル、フタル酸ジオクチルやブチルフタリルブチルグリコレートなどのフタル酸系化合物、アジピン酸ジメチルやアジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチルやアジピン酸ジヘプチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシルやアジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシルやアジピン酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジブチルベンジル、アジピン酸ジオクチルなどのアジピン酸系化合物、セバシン酸ジメチルやセバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチルやセバシン酸ジヘプチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシルやセバシン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソノニル、セバシン酸ジイソデシルやセバシン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジブチルベンジル、セバシン酸ジオクチルなどのセバシン酸系化合物、アゼライン酸ジメチルやアゼライン酸ジエチル、アゼライン酸ジブチルやアゼライン酸ジヘプチル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルやアゼライン酸ジイソブチル、アゼライン酸ジイソノニル、アゼライン酸ジイソデシルやアゼライン酸ジブトキシエチル、アゼライン酸ジブチルベンジル、アゼライン酸ジオクチルなどのアゼライン酸系化合物、リン酸トリエチルやリン酸トリフェニル、リン酸トリクレジルやリン酸トリキシレニル、リン酸クレジルフェニルなどのリン酸系化合物、ジオクチルセバケートやメチルアセチルリシノレートなどの脂肪酸系化合物、ジイソデシル−4,5−エポキシテトラヒドロフタレートなどのエポキシ系化合物、トリメリット酸トリブチルやトリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリn−オクチルやトリメリット酸トリイソデシルなどのトリメリット酸系化合物、その他、オレイン酸ブチルや塩素化パラフィン、ポリブテンやポリイソブチレンなどが挙げられる。これらは必要に応じて1種又は2種以上を配合できる。
また、可塑剤は、(b)側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂100質量部に対し、200質量部以下、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは10〜80質量部の割合で配合することが好ましい。
【0037】
[B]誘電体層形成用組成物の製造方法
本発明の誘電体層形成用組成物の製造方法は、無機粉末、側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂、および、必要に応じてその他の成分を混合し、この混合物を混練する混練工程を含む誘電体層形成用組成物の製造方法である。
【0038】
本発明においては、バインダー樹脂、無機粉末の混合順序は特に限定されない。例えば、バインダー樹脂、無機粉末を一度に混合してもよいし、予めバインダー樹脂を有機溶剤に溶解させてバインダー成分を調整してから、このバインダー成分に無機粉末を添加して混合することもできる。以下、後者の方法を例にして本発明の誘電体層形成用組成物の製造方法について詳細に説明するが、各成分の混合順序はこれに限定されるものではない。
【0039】
まず、有機溶剤およびバインダー樹脂をかき混ぜ機で混合することにより、バインダー樹脂を溶解させ、バインダー成分を調整する。この際、単量体や、可塑剤、分散剤、粘着性付与剤、表面張力調整剤、安定剤、消泡剤などの各種添加剤を添加してもよい。
【0040】
バインダー成分を調整した後、このバインダー成分中に無機粉末を添加して混合物を調整し、この混合物を混練することによって無機粉末を分散させる。通常の保存状態において、無機粉末は大気中の水分を吸着し、その表面に水に由来する水酸基を有している。したがって、表面に水酸基を導入するために無機粉末自体に特別な処理を施す必要はないが、乾燥下に長時間保存されていた場合などは、必要に応じて、使用前に無機粉末を吸湿させてからバインダー成分に添加することが好ましい。
【0041】
このように混練工程を経て、無機粉末を分散させた混合物は、そのまま本発明の誘電体層形成用組成物として用いることが可能である。
【0042】
[C]PDP用誘電体層形成用シート状未焼成体
本発明に係るシート状未焼成体は、離型支持フィルム上に本発明の誘電体層形成用組成物を塗布し、この塗膜を乾燥させることにより誘電体層形成用組成物膜を形成したものである。例えば、このシート状未焼成体は、プラズマディスプレイ前面板及び背面板の誘電体層の形成材料として使用可能である。本発明のシート状未焼成体は、誘電体層形成用組成物膜の表面を容易に剥離可能な離型フィルムにより保護されて、貯蔵、搬送、および取り扱いが容易とされる。
【0043】
本発明に係るシート状未焼成体は、無機粉末が均一に分散した本発明の誘電体層形成用組成物を用いて形成されるため、高い膜平坦性を有する。また、焼成時にシュリンクの発生を抑制することができるため、ひび割れ等のない均一な膜厚を有する誘電体層を得ることができる。したがって、品質の高いディスプレイパネルを製造することが可能となる。
【0044】
また、本発明のシート状未焼成体は、予め製造しておき、使用期限はあるものの所定期間を貯蔵しておくことができるので、ディスプレイパネルを製造する場合に、即座に使用することができ、ディスプレイパネルの製造の効率化を高めることができる。
【0045】
本発明のシート状未焼成体は、誘電体層形成用組成物膜の両面を容易に剥離可能な離型フィルムにより保護した形態で供給することが好ましい。具体的には、可剥離性の支持フィルム上に、誘電体層を形成し、その上に保護層として保護フィルムを被覆する。
【0046】
本発明のシート状未焼成体の製造に使用する支持フィルムとしては、支持フィルム上に製膜された各層を支持フィルムから容易に剥離することができ、各層をガラス基板上に転写できる離型フィルムであれば特に限定なく使用でき、例えば膜厚15〜125μmのポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂フィルムからなる可撓性フィルムが挙げられる。前記支持フィルムには必要に応じて、転写が容易となるように離型処理されていることが好ましい。
【0047】
支持フィルム上に誘電体層形成用組成物膜を形成するに際しては、本発明の誘電体層形成用組成物を調整し、支持フィルム上にアプリケーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、カーテンフローコーターなどを用いて誘電体層形成用組成物を塗布する。特にロールコーターが膜厚の均一性に優れ、かつ厚さの厚い膜が効率よく形成できて好ましい。
【0048】
塗膜を乾燥させた後、誘電体層形成用組成物膜の表面には未使用時に誘電体層形成用組成物膜を安定に保護するため保護フィルムを貼着するのがよい。この保護フィルムとしては、シリコーンをコーティングまたは焼き付けした厚さ15〜125μm程度のポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリプロピレンフイルム、ポリエチレンフィルムなどが好適である。
【0049】
[D]PDP用の前面板の製造方法及びPDP用の背面板の製造方法
ディスプレイパネルの製造に際しては、本発明のシート状未焼成体から保護フィルムを剥離し、ガラス基板の電極設置面に露出した誘電体層形成用組成物膜を重ね合わせて、支持フィルム上から加熱ローラを移動させることにより、誘電体層形成用組成物膜を基板の表面に熱圧着させる。
【0050】
熱圧着は、基板の表面温度を80〜140℃に加熱し、ロール圧1〜5kg/cm2
移動速度0.1〜10.0m/分の範囲で行うのがよい。前記ガラス基板は予熱されていてもよく、予熱温度としては例えば40〜100℃の範囲が選択される。
【0051】
誘電体層形成用組成物膜上から剥離した保護フィルムは、順次巻き取りローラでロール状に巻き取って保存すれば再利用が可能である。
【0052】
このようにして、基板の表面に誘電体層形成用組成物膜を加熱接着した後、誘電体層形成用組成物膜から支持フィルムを剥離して、誘電体層形成用組成物膜を表面に露出させる。誘電体層形成用組成物膜から剥離した支持フィルムもまた、順次巻き取りローラでロール状に巻き取って保存すれば再利用が可能である。
【0053】
このようにしてガラス基板の表面に誘電体層形成用組成物膜を形成した後、500℃〜700℃で焼成することにより、誘電体層形成用組成物膜に含まれるガラスフリットが焼結され誘電体層となる。焼成工程で、誘電体層形成用組成物膜に含まれる有機物は、揮発、分解され、誘電体層には有機成分は実質的に残らない。上記方法により本発明のディスプレイパネル前面板が得られる。
【0054】
このようにして、ディスプレイパネルを製造した後、表面に露出している誘電体層をMgO等の保護膜で被覆することが好ましい。
【0055】
PDP用背面板の場合、ガラス基板などの基板の電極設置面に上記と同様の方法で誘電体層を形成し、さらにこの後、公知の方法によりリブ(バリアリブ)及び蛍光体層を形成することで本発明の背面板が得られる。背面板の場合、上記電極はアドレス電極であることが好ましい。
【0056】
焼成工程後の前面板の誘電体層の膜厚は5〜20μmであり、好ましくは5〜15μmであり、より好ましくは10〜15μmである。焼成後の膜厚が20μm以下であると誘電体層形成用組成物の収縮によりクラックが発生しないため好ましい。焼成後の膜厚が5μm以上であると誘電体層としての十分な特性が得られるので好ましい。背面板の誘電体層の膜厚は5〜15μmであり、好ましくは7〜12μmである。焼成後の膜厚が15μm以下であると誘電体層形成用組成物の収縮によりクラックが発生しないため好ましい。焼成後の膜厚が5μm以上であると誘電体層としての十分な特性が得られるので好ましい。また、膜厚は表面の銅接触面からの厚さである。
【0057】
本発明において誘電体層側の表面の少なくとも基板または電極のいずれかの一部は銅である。特に電極に銅が用いられている場合が好ましい。本発明の前面板及び背面板において本発明の誘電体層形成用組成物が用いられることにより、誘電体層側の表面の少なくとも基板または電極のいずれかの一部に用いられている銅より発生する泡が少なく、泡が発生したとしても軟化点が焼成温度よりも低いので焼成後に誘電体層に泡が混入しておらず、平坦性の高い誘電体層を得ることができる。また、本発明の組成物を用いることにより下層(基板、電極)に存在する金属の析出を押さえることができ、質の高い誘電体層を得ることができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0059】
実施例1〜7、比較例1〜2
(1)誘電体層形成用組成物の調整
下記表1に記載の組成(単位は質量部)に従って、側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂、可塑剤としてフタル酸ジブチル25質量部及び溶剤として酢酸3-メトキシブチル100質量部をかきまぜ機で3時間混合することにより有機成分を調整後、該有機成分(固形分50%)
50質量部とガラスフリット75質量部を混練りすることで誘電体層形成用組成物を調整した。
【0060】
(2)PDP用誘電体層形成用シート状未焼成体の製造
得られた誘電体層形成用組成物を38μm厚みのシリコーン系離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ピューレックスA43:帝人ディポンフィルム(株)社製)からなる支持フィルム上にリップコーターを用いて塗布し、塗膜を100℃で6分間乾燥して溶剤を完全に除去し、下記表1に記載の厚さの誘電体層形成用組成物膜を支持フィルム上に形成した。次に誘電体層形成用組成物膜上に25μm厚みのシリコーン系離型PETフイルム(ピューレックスA24:帝人ディポンフィルム(株)社製)を張り合わせPDP用誘電体層形成用シート状未焼成体を製造した。
【0061】
(3)PDP用の前面板または背面板の形成
(2)で得られたPDP用誘電体層形成用シート状未焼成体のシリコーン系離型PETフィルム(ピューレックスA24:帝人ディポンフィルム(株)社製)を剥がしながら、予め80℃に加熱しておいた銅電極が形成された下記表1に記載のパネルにホットロールラミネーターにより105℃でラミネートした。エア圧力は3kg/cm2とし、ラミネート速度は1.0m/minとした。
【0062】
(4)誘電体層の評価
上記(3)で得られた誘電体層形成用組成物膜の支持フィルムであるシリコーン系離型PETフィルム(ピューレックスA43:帝人ディポンフィルム(株)社製)を剥離した後、誘電体層形成用組成物膜の下記の評価基準に基づき外観観察を行った。また、触針式表面粗さ計にて表面粗さを計測した。また、焼成後の特性を評価するため、昇温スピード6.0℃/minで加熱させ580℃で30分間保持する焼成処理を行った後、触針式表面粗さ計にて表面粗さ及び焼成後膜厚を計測した。また、泡の発生による欠陥の防止、クラック耐性、耐電圧について下記の評価基準で誘電体層の外観観察を行った。評価結果を下記表1に記載する。
【0063】
(焼成前の膜厚)
焼成前の膜厚。単位μm。
【0064】
(前面板又は背面板)
上記工程(3)において形成したパネル。
A:前面板
B:背面板
【0065】
(支持フィルム剥離後の外観観察)
A:スジ及びクレーター等の欠陥は見られなかった。
C:スジ及びクレーター等の欠陥が見られた。
【0066】
(焼成前の表面粗さRmax)
触針式表面粗さ計にて表面粗さを計測した。単位μm。
【0067】
(焼成後の表面粗さRmax)
触針式表面粗さ計にて表面粗さを計測した。単位μm。
【0068】
(焼成後の膜厚)
焼成後の膜厚。単位μm。
【0069】
(泡の発生による欠陥の防止)
焼成後、外観観察を行った。
A:泡の発生による欠陥は見られない。
C:泡の発生により誘電体層中に気泡が残り欠陥が見られた。
【0070】
(クラック防止)
焼成後、外観観察を行った。
A:誘電体層にクラックが見られない。
C:誘電体層にクラックが見られた。
【0071】
(耐電圧)
焼成後、耐電圧を測定した。
A:面内で値が安定している。
C:面内で耐電圧にバラツキが見られる。
【0072】
【表1】

【0073】
この結果は、本発明の特定の組成物を用いた誘電体層において、無機粉末の分散性が良好であり、焼成後の平坦性、泡の発生による欠陥の防止特性、クラック防止特性、耐電圧特性に優れており、それにより形成されたPDP用の前面板及び背面板の特性も良好であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明にかかるプラズマディスプレイパネル用の前面板及び背面板、それに用いられる組成物は、無機粉末の分散性が高く、均一で、クラック、スジ引きなどの欠陥のない誘電体層を形成できることから、誤放電や点欠損のない高品質の画像表示を可能とするプラズマディスプレイパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】ワッフル構造型セルを有するプラズマディスプレイの展開図である。
【符号の説明】
【0076】
1 前面板
10 ガラス基板
11 電極
110 透明電極
112 バス電極
12 誘電体層
12A 未焼成誘電体層
16 スペーサ層
19 保護膜
2 背面板
20 基板
21 アドレス電極
22 誘電体層
24 リブ
26 蛍光体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に形成された複数の電極と、該電極を覆うように前記基板上に形成された誘電体層とを少なくとも備えてなるプラズマディスプレイパネル用の前面板であって、
誘電体層側の表面の少なくとも前記基板または前記電極のいずれかの一部が銅であり、
前記誘電体層の焼成後の厚さが5〜20μmであり、焼成前の誘電体層が(a)無機粉末、側鎖に含まれる水酸基の量が、モノマー構成単位あたりの側鎖に含まれる水酸基の平均個数に換算して、1モノマー構成単位あたり0.4個以上である(b)側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂を含有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル用の誘電体層であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル用の前面板。
【請求項2】
基板と、該基板上に形成された複数のアドレス電極と、該アドレス電極を覆うように前記基板上に形成された誘電体層とを少なくとも備えてなるプラズマディスプレイパネル用の背面板であって、
誘電体層側の表面の少なくとも前記基板または前記アドレス電極のいずれかの一部が銅であり、
前記誘電体層の焼成後の厚さが5〜15μmであり、焼成前の誘電体層が(a)無機粉末、側鎖に含まれる水酸基の量が、モノマー構成単位あたりの側鎖に含まれる水酸基の平均個数に換算して、1モノマー構成単位あたり0.4個以上である(b)側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂を含有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル用の誘電体層であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル用の背面板。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか一項に記載の誘電体層を形成することが可能であり、(a)無機粉末、側鎖に含まれる水酸基の量が、モノマー構成単位あたりの側鎖に含まれる水酸基の平均個数に換算して、1モノマー構成単位あたり0.4個以上である(b)側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂を含有するプラズマディスプレイパネル用の誘電体層形成用組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−107947(P2006−107947A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−293643(P2004−293643)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】