説明

プラズマディスプレイ用電磁波遮蔽フィルム及びその製造方法

【課題】ハロゲン化銀感光材料技術、インクジェット技術、また印刷技術を適用することにより、品質がよく、かつ安価な電磁波遮蔽層を製造する方法を提供する。
【解決手段】感光性銀塩を塗布した感光材料を、露光、現像処理して金属銀パターンを形成する電磁波遮蔽フィルムの製造方法において、該感光材料に対して遮光性インクを塗布して遮光性インクパターンを作製した後、露光することを特徴とする電磁波遮蔽フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、品質が向上し、製造コスト低減に寄与できる、プラズマディスプレイ(以下PDPと略記する場合あり)の前面に用いる電磁波遮蔽フィルムの製造方法に関し、またその電磁波遮蔽フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
軽量且つ薄型でありながら輝度が高く、しかも大画面が得られるプラズマディスプレイパネル(以下PDP)はすでに良く知られている。PDPは間隔をあけて配置された前面ガラス基板と後面ガラス基板(以下、管)の間隙内に多数のセルを形成するとともに管内にキセノンガスを封入し前面ガラス基板の内面に形成した誘電体層及び保護層の表面で面放電を起こしてキセノンガス分子を励起し、紫外線を発生させてセル内の蛍光体を発光させる構造となっている。管内にキセノンガスを封入したこの種のPDPにおいては、蛍光体を発光させるために発生させる紫外線と共に近赤外線及び電磁波も発生し、その一部が管外へ放出する。そのため従来のPDP前面には近赤外線カット(吸収)性能、電磁波遮蔽性能、傷つき防止性能、反射防止性能などを備えたフィルターが取り付けられていた(特許文献1)。このフィルターは一般的には基材であるポリエステルフィルムに電磁波遮蔽層として銀蒸着膜が形成され、その銀蒸着膜の上に近赤外線吸収剤をコーティングして近赤外線吸収層が形成されている。通常機能性フィルムと呼ばれている。
【0003】
電磁波遮蔽材料としては、金属蒸着膜のほかにも導電性金属パターンからなるもの、例えば、周波数選択性を有する(線状の)アンテナ素子を一定間隔で配列させたもの(特許文献2)や、開口率の高い金属メッシュからなるもの(特許文献3、4)なども提案されている。
【特許文献1】特開2000−231338号公報
【特許文献2】特開平10−169039号公報
【特許文献3】特開2003−46293号公報
【特許文献4】特開2004−221565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においては、銀蒸着膜等を用いる電磁波遮蔽層の製作は大型かつ高価な設備を利用して行っていた。本発明の目的は、ハロゲン化銀感光材料技術、インクジェット技術、また印刷技術を適用することにより、品質がよく、かつ安価な電磁波遮蔽層を製造する方法を提供することにあり、これにより品質よく、安価な電磁波遮蔽フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は以下の手段によって達成される。
【0006】
1.感光性銀塩を塗布した感光材料を、露光、現像処理して金属銀パターンを形成する電磁波遮蔽フィルムの製造方法において、前記感光材料に対して遮光性インクを塗布して遮光性インクパターンを作製した後、露光することを特徴とする電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【0007】
2.前記遮光性インクの塗布が、インクジェット塗布方式であることを特徴とする前記1に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【0008】
3.前記遮光性インクの塗布が、オフセット印刷方式であることを特徴とする前記1に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【0009】
4.前記露光が、所定面積の遮光性インクパターンを有する領域に対する不連続全面露光であるか、または連続搬送される、遮光性インクパターンを有する感光材料ウエブ上への全面露光であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【0010】
5.前記現像処理が、前記遮光性インクパターンの少なくとも一部を除去するものであることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【0011】
6.前記1〜5のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された電磁波遮蔽フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、品質が向上し、製造コスト低減に寄与できるプラズマディスプレイの前面に用いる電磁波遮蔽フィルム及びこの電磁波遮蔽フィルムの製造方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明において、電磁波遮蔽材料は、導電性金属パターンからなるものであり、例えば、周波数選択性を有する(線状の)アンテナ素子を一定間隔で配列させたもの(特許文献2)や、開口率の高い金属メッシュパターンを有するもの(特許文献3,4)を包含する。
【0014】
先ず、波数選択性を有する(線状の)アンテナ素子について説明する。
【0015】
導体片が空中にある場合、この面に電波が入射すると、線状アンテナ素子においては、例えば、端部を開放した形状とし、中心から伸びるその一辺の長さ(電気長)を遮蔽しようとする電波の1/4波長(一本形状では1/2波長)として、遮蔽しようとする波長に共振させるようにすると、電磁波を反射、散乱させ減衰させることができる。
【0016】
また、端部開放形状でなく、閉じた環状形状とした場合には、周囲長(電気長)を遮蔽しようとする電磁波の波長と同じくすればよい。
【0017】
こうした線状アンテナ素子を、その素子の電磁界反射等価面積(散乱開口面積)または電磁界反射等価体積(散乱開口体積)を考慮して、空間中あるいは非導電性材料上に平面的あるいは立体的に所定の間隔で配列させてやることで(アンテナ素子パターン)、共振させた周波数の電磁波を減衰させ遮蔽することができる。線状アンテナ素子の導線の太さを視界の妨げにならないように細くすれば、導線部分は全面を覆うことがないので、透光性・可視性を損なうことがない。
【0018】
図1には、アンテナ素子パターンを有する電波反射面の幾つかの例を示した。
【0019】
このようにパターン化した小さな線状アンテナ素子はその長さを特定することにより、特定の周波数を遮蔽でき、その結果、他の波長の電磁波を通過させるので、無線、テレビ電波等、外部からの情報の収集が必要なものは遮蔽せず、特定の電波のみを遮蔽できる。
【0020】
また、開口率を大きくとった導電性金属メッシュパターンは、透光性と電磁波遮蔽性(波長に選択性はない)を備えたシールド材を形成する。例えば、図4に示されるような正方形格子状のパターン等がある。透光性と導電性を併せもつ連続した、例えば、線幅10μm、ピッチ200μmのメッシュパターンである。
【0021】
本発明は、ハロゲン化銀感光材料を用いて(従って金属材料として銀を用い)、例えばポリイミドフィルムやポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム等非導電性のフィルム基材からなる連続したるウエブ上に、多種多様な周波数選択性や透過率等、異なった電磁波遮蔽条件に対応した複数のアンテナ素子パターンまたはメッシュパターンを連続的に効率よく製造する電磁波遮蔽フィルムの製造方法に関するものである。
【0022】
図2に本発明の電磁波遮蔽フィルムの製造プロセス全体の概念図を示す。
【0023】
最初の工程は、元巻きロールから繰り出されたフィルム基材に先ず、感光性銀塩が塗布され、感光材料が形成される工程である。形成された感光材料ウエブは連続的に乾燥された後、次いで、感光材料上に遮光性材料の塗布が行われる遮光材料塗布工程に通される。遮光材料の塗布は、必要とされるパターンに従って、例えばインクジェット法等により遮光性インクを用いて行われる。これにより導電性金属パターンを形成しようとする感光材料面の領域以外をマスクする。
【0024】
遮光性インクがパターン状に塗布されると、次いで感光材料ウエブは露光工程にはいる。露光工程は、導電性パターンを連続するウエブ上に記録する工程であり、露光工程において、感光材料は連続的に露光され、開口部となる領域には遮光性インクが塗布されているため、導電性金属銀パターンを形成すべき領域が露光される。
【0025】
現像工程は、該ウエブ上に記録されたパターンを金属銀パターンに変換する工程であり、現像工程により、感光材料が連続的に、現像処理され、また遮光性インクが除去されることで、露光部に形成された金属銀により導電性金属パターンが形成される。
【0026】
導電性金属パターンの形成により例えば導電性金属銀部と開口部からなるメッシュパターンが得られる。また、アンテナ素子を形成すれば、周波数特異性電磁波遮蔽パターンがフィルム基材上に形成され本発明の電磁波遮蔽フィルムが作製される。
【0027】
図2に示す様に、電磁波遮蔽フィルムの製造工程においては、現像工程の後、導電性付与工程を設けることが好ましい。導電性付与工程は、現像により感光材料上に形成された金属銀の導電性を更に高める工程であり、具体的には、物理現像処理及び/またはメッキ処理により、金属銀(パターン)の導電性を更に高める工程である。
【0028】
その後、更に、電磁波遮蔽フィルムは、例えば、PDP前面板とするために、フィルタ層塗布又反射層塗布等の付加工程を設けこれウエブ状に連続して行うこともできる。形成された電磁波遮蔽フィルムは、例えば、更に連続的に、赤外線吸収層、粘着層、又、一方の最表面には、反射防止層等が、付加工程において形成されてもよい。
【0029】
従って、本発明は、感光性銀塩を塗布した感光材料に対して遮光性インクを塗布して遮光性インクパターンを作製した後、露光し、現像処理し、銀による導電性金属パターンをフィルム上に形成する電磁波遮蔽フィルムの製造方法である。
【0030】
以下、本発明の実施の形態についてより詳細に説明する。
【0031】
図3に、本発明による感光性銀塩を塗布した感光材料に対し遮光材料を塗布して遮光性インクパターンを作製した後、これを露光し、現像処理し、銀による導電性金属パターンをフィルム上に形成するまでの電磁波遮蔽フィルムの形成工程の具体的態様の一例を示す。
【0032】
フィルム基材となる支持体フィルムとしては、PET(ポリエチレンテレフタレート),PC(ポリカーボネート)等のポリエステルフィルム,ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロース等のセルロースエステルフィルム,PMMA(ポリメチルメタアクリレート)等の各種の透明樹脂フィルム(厚さは例えば25〜250μm程度)のロールをもちいることができる。
【0033】
これらのフィルム基材は、感光性銀塩(ハロゲン化銀乳剤)層を塗設するための公知の親水性下引き層を有してもよい。
【0034】
これらの支持体フィルムは通常ロール形態で連続的に成膜され、又下引き処理等もロール形態で連続的に行われる。
【0035】
本発明は、基材フィルムに連続的に感光性銀塩の塗布を行って、露光、現像処理することにより金属銀パターンを基材フィルム上に形成させ電磁波遮蔽フィルムを製造するものである。
【0036】
図3において、基材となるフィルムロールから繰り出されたフィルム基材は、順次、銀塩塗布工程、インクジェットによる遮光材料塗布工程、露光工程、現像工程を通ることによって基材フィルム上に金属銀パターンが形成された電磁波遮蔽フィルムとなる。
【0037】
好ましくは、銀パターン形成後、更に、例えばメッキ処理、又は更に物理現像処理等により導電性付与が行われることが好ましい。
【0038】
第一の銀塩塗布工程は、基材フィルム(例えば、ポリエステルフィルム)上に、先ず、感光性銀塩を塗布して、感光材料とする工程である。
【0039】
(感光性銀塩)
本発明で用いられる感光性銀塩としては、ハロゲン化銀などの無機銀塩及び酢酸銀などの有機銀塩が挙げられるが、光センサーとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましい。
【0040】
本発明では、ハロゲン化銀を光センサーとして機能させるために使用するが、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられるハロゲン化銀に関する技術は、本発明においてそのまま用いることができる。
【0041】
ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらを組み合わせでもよい。例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、さらにAgBrを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。
【0042】
ここで、「AgBr(臭化銀)を主体としたハロゲン化銀」とは、ハロゲン化銀組成中に占める臭化物イオンのモル分率が50%以上のハロゲン化銀をいう。このAgBrを主体としたハロゲン化銀粒子は、臭化物イオンのほかに沃化物イオン、塩化物イオンを含有していてもよい。
【0043】
ハロゲン化銀は固体粒子状であるため、露光、現像処理後に形成されるメッシュパターン状金属銀層の品質の観点からは、ハロゲン化銀の平均粒子サイズは、球相当径で0.1〜1000nm(1μm)であることが好ましく、1nm〜100nmであることがより好ましく、10nm〜100nmであることがさらに好ましい。尚、ハロゲン化銀粒子の球相当径とは、粒子形状が球形の同じ体積を有する粒子の直径である。
【0044】
ハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(6角平板状、三角形平板状、4角形平板状など)、八面体状、14面体状など様々な形状であることができる。
【0045】
ハロゲン化銀は、さらに他の元素を含有していてもよく、例えば、写真乳剤において、硬調な乳剤を得るために用いられる金属イオンをドープすることも有用である。特にロジウムイオンやイリジウムイオンなどの遷移金属イオンは、金属銀像の生成の際に露光部と未露光部の差が明確に生じやすくなるため好ましく用いられる。ロジウムイオン、イリジウムイオンに代表される遷移金属イオンは、各種の配位子を有する化合物であることもできる。そのような配位子としては、例えば、シアン化物イオンやハロゲンイオン、チオシアナートイオン、ニトロシルイオン、水、水酸化物イオンなどを挙げることができる。具体的な化合物の例としては、K3Rh2Br9及びK2IrCl6などが挙げられる。
【0046】
本発明において、ハロゲン化銀に含有されるロジウム化合物及び/又はイリジウム化合物の含有率は、好ましくは、ハロゲン化銀の銀のモル数に対して、10-10〜10-2モル/モルAgであり、10-9〜10-3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0047】
その他、Pd(II)イオン及び/又はPd金属を含有するハロゲン化銀も好ましく用いることができる。このようなハロゲン化銀粒子は、ハロゲン化銀粒子を形成する過程においてPdを添加することにより作製することができ。またPd(II)イオンを後熟時に添加するなどの方法でハロゲン化銀表層に存在させることも好ましい。
【0048】
Pdは、無電解メッキ触媒としてよく知られて用いられており、このPdの含有によって、物理現像や無電解メッキの速度を速め、所望の電磁波遮蔽材料の生産効率を上げ、生産コストの低減に寄与する。
【0049】
本発明において、ハロゲン化銀に含まれるPdイオン及び/又はPd金属の含有率は、ハロゲン化銀の銀のモル数に対して10-8〜10-4モル/モルAgであることが好ましく、10-6〜10-5モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0050】
また、ゼラチンとの結合を抑制しAgXへより効率的に配位させるために、Pd(SCN)2錯体やパラジウムグリシネートとして添加することが好ましい。
【0051】
Pd化合物の例としては、PdCl4やNa2PdCl4等が挙げられる。
【0052】
ハロゲン化銀は、さらに光センサーとしての感度を向上させるため、ハロゲン化銀写真乳剤で行われる化学増感を施すことができる。化学増感としては、例えば、金増感などの貴金属増感、イオウ増感などのカルコゲン増感、還元増感等を利用することができる。
【0053】
本発明で使用できる乳剤としては、例えば、特開平11−305396号公報、特開2000−321698号公報、特開平13−281815号公報、特開2002−72429号公報の実施例に記載されたカラーネガフィルム用乳剤、特開2002−214731号公報に記載されたカラーリバーサルフィルム用乳剤、特開2002−107865号公報に記載されたカラー印画紙用乳剤などを好適に用いることができる。
【0054】
〈バインダー〉
本発明の銀塩含有層において、バインダーは、銀塩粒子を均一に分散させ、かつ銀塩含有層と支持体との密着を補助する目的で用いることができ、本発明においては、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれもバインダーとして用いることができるが、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
【0055】
バインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体等が挙げられる。ゼラチンが特に好ましい。
【0056】
本発明の銀塩含有層中に含有されるバインダーの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することがでる。銀塩含有層中のバインダーの含有量は、Ag/バインダー体積比で1/4〜100であることが好ましく、1/3〜10であることがより好ましく、1/2〜2であることがさらに好ましい。1/1〜2であることが最も好ましい。銀塩含有層中にバインダーをAg/バインダー体積比で1/4以上含有すれば、物理現像及び/又はメッキ処理工程において金属粒子同士が互いに接触しやすく、高い導電性を得ることが可能であるため好ましい。
【0057】
また、本発明の銀塩含有層には、感光性銀塩のほか、活性剤、硬膜剤等各種の添加剤を含んでもよい。
【0058】
本発明の銀塩含有層で用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、酢酸エチルなどのエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。ハロゲン化銀ゼラチン乳剤を用いるには水を主体とすることが好ましい。
【0059】
上記の銀塩層の塗設は上記各成分を含有する例えばハロゲン化銀乳剤の水性の塗布液を写真業界にて周知の各種コーターによって基材フィルム上に塗布すればよい。例えばスライド塗布、エクストルージョン塗布、スプレー塗布等特に限定はされない。塗布工程は、例えば、図3におけるように、バックアップロールに対向するコーターヘッド10から供給される塗布液により、バックアップロール上で基材フィルムに塗布される。
【0060】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤の具体例としては、例えば、銀38gに対してゼラチン3gを含む球相当径(平均粒径)0.05μmの微粒子AgBrI(I=2mol%)粒子を含むハロゲン化銀乳剤を、金硫黄増感を行った後、ゼラチン硬膜剤と共に、銀量で5g/m2程度となるように下引き済みのPETフィルム(100μm厚)上に塗布すればよい。
【0061】
塗布後、乾燥工程を通過させ(省略されている)乾燥された感光材料は、次に、(インクジェットによる)遮光材料塗布工程となる。ここにおいて連続して搬送された感光材料ウエブは、インクジェット法によりインクジェットヘッド100から遮光性インクの供給を連続的に受けて、感光材料上に遮光性インクのパターンが形成される。
【0062】
感光性銀塩層の塗設後、乾燥しないで、遮光材料塗布工程としてもよいが、感光性銀塩層とインク層が相互に余り混じり合い、遮光性能が不充分となることがあるため、この場合は、このような不具合がないかどうか感光性銀塩層の組成、又インク組成等によって異なるため、慎重に判断を下す。
【0063】
遮光性インクの塗布は、電磁波遮蔽層として必要な銀パターンが形成される領域以外の部分にインクジェット(IJ)法により行われる。例えば、メッシュパターンの場合であれば現像後開口部となる部分に遮光性インクが付与される。
【0064】
その後、マスクなしで全面露光を行い、現像処理をすることによって銀粒子の定着とインクの剥がれ(溶解)が行われて必要な金属銀パターンを形成する。
【0065】
図4には、感光材料ウエブ(図4(a))上にインクジェット(IJ)塗布により遮光性インクパターンが形成されところ(図4(b))、また、更に露光、現像工程によって金属銀パターンが形成されたところ(図4(c))を示した。図において形成されたメッシュパターンは、例えば、各線幅10μm、線間ピッチ200μmの現像銀メッシュ画像である。
【0066】
(遮光性インク)
本発明においては遮光性インクは水溶性であることが好ましく、遮光性インクは、塗布(印刷)したとき、インク層の370〜780nmにおける波長の平均透過率が30%以下となるよう印刷される。遮光性インクは、水溶性ポリマーに分散剤と遮光性の顔料が含まれた水性インクを用いることができる。
【0067】
遮光性インク層用顔料としては、カーボンブラック、また、アルミニウム粉(Pigment Metal 1)、ブロンズ粉、銅粉(Pigment Metal 2)、錫粉(Pigment Metal 5)、鉛粉(Pigment Metal 4)、亜鉛末(Pigment Metal 6)等金属粉も使用できる。
【0068】
インクを構成する水溶性ポリマーとしては、アルギン酸、デキストラン、デキストリン、グアーガム、アラビアゴム、ペクチン、カゼイン、寒天、キサンタンガム等の天然水溶性高分子化合物、またポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成高分子化合物であってもよい。
【0069】
また、遮光性の顔料としては、露光波長を吸収する特性を有するものであればよい必ずしも黒色である必要はないが、可視光全域を吸収するので、カーボンブラックが好ましい。
【0070】
例えば、水溶性ポリマーとして3.5質量%程度のポリビニルアルコール水溶液に遮光性顔料としてカーボンブラックをやはり3.5〜5質量%程度分散したものを(オルフィンe1010(日信化学社製)を少量添加)遮光性インクとして用いインクジェットヘッド100より噴射して塗布する。
【0071】
インクジェットヘッドとしては、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。又吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)等など何れの吐出方式を用いても構わない。
【0072】
その中でも、30μm以下のノズル径を有するピエゾ型インクジェット記録ヘッドで感光材料に記録を行うこと、また、30μm以下のノズル径を有するピエゾ型インクジェット記録ヘッドを用いて、20ppm以上の印字速度で、記録材料に画像記録することが好ましい。
【0073】
インクジェットプリンターの印字方式としては、シャトルヘッド方式の記録ヘッドに対し、ラインヘッド方式の記録ヘッドを用いて印字してもよい。
【0074】
遮光性インクの塗布工程としては、オフセット印刷法も好ましい方法の一つとして挙げられる。
【0075】
図5にオフセット印刷を用いた工程の一例を模式的に示す。
この方法によれば、インク供給ロール50から遮光性パターンに対応したインクを転写された印刷用原版51から、インクを一旦ブランケット52に転写した後、圧銅53上を搬送する感光材料上にブランケットからの転写により印刷が行われ連続して感光材料上に遮光性インクの印刷を行うことができる。
【0076】
(遮光性インク)
本発明においては遮光性インクは水溶性であることが好ましく、遮光性インクは、塗布(印刷)したとき、370〜780nmの波長の平均透過率が30%以下となるよう印刷される。遮光性インクは、前述のインク用親水性ポリマー及び遮光性顔料から成る。
【0077】
遮光性顔料としては、カーボンブラックのほか、アルミニウム粉(Pigment Metal 1)、ブロンズ粉、銅粉(Pigment Metal 2)、錫粉(Pigment Metal 5)、鉛粉(Pigment Metal 4)、亜鉛末(Pigment Metal 6)等金属粉も使用できる。
【0078】
インクを構成する親水性ポリマーとしては、アルギン酸、デキストラン、デキストリン、グアーガム、アラビアゴム、ペクチン、カゼイン、寒天、キサンタンガム等の天然水溶性高分子化合物が好ましいが、合成高分子化合物であってもよい。インク同様に活性剤等を加えてペースト状とする。
【0079】
次の露光工程は、遮光性インクパターンが形成された感光材料が、露光ゾーンにおいて、少なくとも遮光性インクパターンが形成された領域に露光を受ける工程である。パターン部の露光は、遮光性インクパターン側から全面に行えばよく、感光材料ウエブの搬送とともに、連続的に行うことができる。感光材料ウエブが、感光材料の感度で決まる充分な露光量にて、均一に、連続的に露光を受けられるよう、感光材料感度、及び感光材料の搬送速度に合わせて露光強度を調整する。
【0080】
また、遮光性インクパターンが形成された領域にのみ間欠的に露光する方式、即ち、遮光性インクパターンを有する所定面積の領域に対する不連続全面露光であってもよい。
【0081】
尚、露光は必ずしも白色でなく感光材料の分光感度に合わせた光源を用いてもよい。
【0082】
光源としてはタングステンランプ、蛍光灯、水銀灯等各種光源が用いられる。面光源であってもよい。
【0083】
感光性銀塩を用いた感光材料により電磁波遮蔽フィルムを作製する場合、従来、露光によるパターニングはマスキング部材等を用いて行われるが、ロール ツー ロール製法では、いちいちマスキング部材を合わせて露光するのは困難があり、本発明によれば、均一前面露光であるためこの点容易であり好ましい。
【0084】
マスキング部材を用いる方法は、ロール ツウ ロールでの製造スピードを落とさねばならず、やや劣る、また、製造コストもスピードが落ちる分やや悪い。本発明に係わるインクジェット法によって遮光性インクパターンを形成する方法は、連続的に、遮光性パターンの形成、また、現像処理も連続で行えるので、製造コスト面からも有利である。又遮光性パターンの形成を(オフセット)印刷法によって行うものについてもオフセット印刷は効率が高いため、インクジェット方式と余り変わらない効率でパターン形成でき、効率がよい。
【0085】
一方、本願と異なり、露光をレーザで連続的に行ってもそれ程違わない速度は得られると考えられるが、レーザによる連続走査露光は方式は、露光装置の制御またメンテナンス等のコスト負担が大きく、製造コストとしてはかかってしまう。
【0086】
露光工程の後、引き続き現像工程(現像処理)を行うことにより、銀現像、銀像の定着、及び遮光性インクの除去が行われ、金属銀パターンが形成されて電磁波遮蔽パターンが形成される。
【0087】
(現像処理)
本発明では、銀塩含有層を露光した後、さらに現像処理が行われる。現像処理は、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもでき、例えば、富士フィルム社製のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトール、KODAK社製のC−41、E−6、RA−4、D−19、D−72などの現像液、又はそのキットに含まれる現像液、また、D−85などのリス現像液を用いることができる。
【0088】
本発明では、上記の露光及び現像処理を行うことにより金属銀部、好ましくはパターン状金属銀部が形成されると共に、後述する光透過性部が形成される。
【0089】
本発明における現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。本発明における定着処理は、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
【0090】
現像処理で用いられる現像液は、画質を向上させる目的で、画質向上剤を含有することができる。画質向上剤としては、例えば、ベンゾトリアゾールなどの含窒素へテロ環化合物を挙げることができる。また、リス現像液を利用する場合特に、ポリエチレングリコールを使用することも好ましい。
【0091】
現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得ることができるため好ましい。
【0092】
本発明における現像処理後の階調は、特に限定されるものではないが、4.0を超えることが好ましい。現像処理後の階調が4.0を超えると、光透過性部の透明性を高く保ったまま、導電性金属部の導電性を高めることができる。階調を4.0以上にする手段としては、例えば、前述のロジウムイオン、イリジウムイオンのドープが挙げられる。
【0093】
また、金属画像に変換されなかったハロゲン化銀は、現像工程に含まれる写真用の定着処理により除去される。
【0094】
例えば、現像液として、25℃のCDH−100現像液(コニカミノルタ製)で60秒現像し、その後、CFL871定着液(コニカミノルタ製)で3分処理後、40℃の温純水で5分洗浄する現像処理を行うことができる。
【0095】
また、これらの現像処理工程中、現像液、又定着液、水洗等によって、水溶性である遮光性インクは溶解、剥がれ等により除去される。水溶性インクであれば現像液中に滲出し、殆どが除かれることが好ましいが、全て現像液中で除去される必要はなく、少なくとも一部は現像液中において除去され、定着、水洗等の現像工程中で全て除去されることが好ましい。
【0096】
これら現像処理の後、更にフィルムウエブを乾燥することで、現像銀パターンを基材フィルム上に有する本発明に係わる電磁波遮蔽フィルムが得られる。
【0097】
以上の工程により、銀塩塗布、マスキング、露光、現像の処理工程が連続搬送によっても可能でとなり。つまり、電磁波遮蔽フィルムのロール ツウ ロールの生産が可能になる。
【0098】
本発明の電磁波遮蔽フィルムの製造方法において、好ましい態様においては、更に現像工程の後、金属銀に更に導電性を高めるための導電性付与工程を設ける。導電性付与工程は、具体的には物理現像、及び/又はメッキ処理で、これにより導電性金属粒子を金属銀部に担持させる。
【0099】
(物理現像及びメッキ処理)
本発明では、前記露光及び現像処理により形成された金属銀部に導電性を付与する目的で、前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させるための物理現像及び/又はメッキ処理を行う。本発明では物理現像又はメッキ処理のみで導電性金属粒子を金属性部に担持させることが可能であるが、さらに物理現像とメッキ処理を組み合わせて導電性金属粒子を金属銀部に担持させることもできる。
【0100】
本発明において「物理現像」とは、金属や金属化合物の核上に、銀イオンなどの金属イオンを還元剤で還元して金属粒子を析出させることをいう。この物理現象は、インスタントB&Wフィルム、インスタントスライドフィルムや、印刷版製造等に利用されており、本発明ではその技術を用いることができる。
【0101】
また、物理現像は、露光後の現像処理と同時に行っても、現像処理後に別途行ってもよい。
【0102】
本発明において、メッキ処理は、無電解メッキ(化学還元メッキや置換メッキ)、電解メッキ、又は無電解メッキと電解メッキの両方を用いることができる。本発明における無電解メッキは、公知の無電解メッキ技術を用いることができ、例えば、プリント配線板などで用いられている無電解メッキ技術を用いることができ、無電解メッキは無電解銅メッキであることが好ましい。
【0103】
無電解銅メッキ液に含まれる化学種としては、硫酸銅や塩化銅、還元剤としてホルマリンやグリオキシル酸、銅の配位子としてEDTAやトリエタノールアミン等、その他、浴の安定化やメッキ皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポリエチレングリコール、黄血塩、ビピリジン等が挙げられる。電解銅メッキ浴としては、硫酸銅浴やピロリン酸銅浴が挙げられる。
【0104】
本発明におけるメッキ処理時のメッキ速度は、緩やかな条件で行うことができ、さらに5μm/hr以上の高速メッキも可能である。メッキ処理において、メッキ液の安定性を高める観点からは、例えば、EDTAなどの配位子など種々の添加剤を用いることができる。
【0105】
(酸化処理)
本発明では、現像処理後の金属銀部、並びに物理現像及び/又はメッキ処理後に形成される導電性金属部には、好ましくは酸化処理が行われる。酸化処理を行うことにより、例えば、光透過性部に金属が僅かに沈着していた場合に、該金属を除去し、光透過性部の透過性をほぼ100%にすることができる。
【0106】
酸化処理としては、例えば、Fe(III)イオン処理など、種々の酸化剤を用いた公知の方法が挙げられる。酸化処理は、銀塩含有層の露光及び現像処理後、あるいは物理現像又はメッキ処理後に行うことができ、さらに現像処理後と物理現像又はメッキ処理後のそれぞれで行ってもよい。
【0107】
本発明では、さらに露光及び現像処理後の金属銀部を、Pdを含有する溶液で処理することもできる。Pdは、2価のパラジウムイオンであっても金属パラジウムであってもよい。この処理により無電解メッキ又は物理現像速度を促進させることができる。
【0108】
例えばメッキ液としては、硫酸銅0.06モル/L,ホルマリン0.22モル/L,トリエタノールアミン0.12モル/L,およびポリエチレングリコール100ppm、黄血塩50ppm、α、α′−ビピリジン20ppmを含有する、pH=12.5の無電解Cuメッキ液等が具体例として挙げられ、例えば、該メッキ液を用いて45℃にて無電解銅メッキ処理を行った後、10ppm程度のFe(III)イオンを含有する水溶液で酸化処理を行なう。
【0109】
前記金属部に担持させる導電性金属粒子としては、上述した銀(物理現像の場合)のほか、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、コバルト、スズ、ステンレス、タングステン、クロム、チタン、パラジウム、白金、マンガン、亜鉛、ロジウムなどの金属、又はこれらを組み合わせた合金の粒子を挙げることができる。導電性、価格等の観点から導電性金属粒子は、銅、アルミニウム又はニッケルの粒子であることが好ましい。また、磁場シールド性を付与する場合、導電性金属粒子として常磁性金属粒子を用いることが好ましい。
【0110】
上記導電性金属部において、コントラストを高くし、かつ導電性金属部が経時的に酸化され退色されるのを防止する観点からは、導電性金属部に含まれる導電性金属粒子は銅粒子であることが好ましい。
【0111】
上記導電性金属部は、該導電性金属部に含まれる金属の全質量に対して、銀を50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがさらに好ましい。銀を50質量%以上含有すれば、物理現像及び/又はメッキ処理に要する時間を短縮し、生産性を向上させ、かつ低コストとすることができる。
【0112】
さらに、導電性金属部を形成する導電性金属粒子として銅及びパラジウムが用いられる場合、銀、銅及びパラジウムの合計の質量が導電性金属部に含まれる金属の全質量に対して80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0113】
本発明における導電性金属部は、導電性金属粒子を担持するため良好な導電性が得られる。このため、本発明の透光性電磁波遮蔽膜(導電性金属部)の表面抵抗値は、103Ω/sq以下であることが好ましく、2.5Ω/sq以下であることがより好ましく、
1.5Ω/sq以下であることがさらに好ましく、0.1Ω/sq以下であることが最も好ましい。
【0114】
本発明の導電性金属部は、透光性電磁波遮蔽材料としての用途である場合、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形などの(正)n角形、円、楕円、星形などを組み合わせた幾何学図形からなるメッシュ状であることがさらに好ましい。EMIシールド性の観点からは三角形の形状が最も有効であるが、可視光透過性の観点からは同一のライン幅なら(正)n角形のn数が大きいほど開口率が上がり可視光透過性が大きくなるので有利である。
【0115】
透光性電磁波遮蔽材料の用途において、上記導電性金属部の線幅は20μm以下、線間隔は50μm以上であることが好ましい。また、導電性金属部は、アース接続などの目的においては、線幅は20μmより広い部分を有していてもよい。また画像を目立たせなくする観点からは、導電性金属部の線幅は18μm未満であることが好ましく、15μm未満であることがより好ましく、14μm未満であることがさらに好ましく、10μm未満であることが最も好ましい。
【0116】
本発明における導電性金属部は、可視光透過率の点から開口率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが最も好ましい。開口率とは、メッシュをなす細線のない部分が全体に占める割合であり、例えば、線幅10μm、ピッチ200μmの正方形の格子状メッシュの開口率は、90%である。
【0117】
(光透過性部)
本発明における「光透過性部」とは、透光性電磁波遮蔽膜のうち導電性金属部以外の透明性を有する部分を意味する。光透過性部における透過率は、前述のとおり、支持体の光吸収及び反射の寄与を除いた380〜780nmの波長領域における透過率の最小値で示される透過率が90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上であり、さらにより好ましくは98%以上であり、最も好ましくは99%以上である。
【0118】
(電磁波遮蔽フィルムの層構成)
本発明の電磁波遮蔽フィルムにおける支持体の厚さは、5〜200μmであることが好ましく、30〜150μmであることがさらに好ましい。5〜200μmの範囲であれば所望の可視光の透過率が得られ、かつ取り扱いも容易である。
【0119】
物理現像及び/又はメッキ処理前の支持体上に設けられる金属銀部の厚さは、支持体上に塗布される感光性銀塩層用塗料の塗布厚みに応じて適宜決定することができる。金属銀部の厚さは、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、0.01〜9μmであることがさらに好ましく、0.05〜5μmであることが最も好ましい。また、金属銀部はパターン状であることが好ましい。
【0120】
導電性金属部の厚さは、ディスプレイの電磁波遮蔽材料としての用途としては、薄いほどディスプレイの視野角が広がるため好ましい。さらに、導電性配線材料の用途としては、高密度化の要請から薄膜化が要求される。このような観点から、導電性金属部に担持された導電性金属からなる層の厚さは、9μm未満であることが好ましく、0.1μm以上5μm未満であることがより好ましく、0.1μm以上3μm未満であることがさらに好ましい。
【0121】
本発明の電磁波遮蔽フィルムの製造方法において、物理現像処理及び/又はメッキ処理の後、付加的な工程を設け、近赤外線吸収層、粘着剤層、また反射防止層等を設けてもよい。
【0122】
これらの層もまた、現像処理、メッキ処理等に続いて連続してウエブ上にこれらの層を形成する塗布液を適用することにより設けることが出来る。
【0123】
塗布には、感光材料において用いられたものと同様のコーターを用いることができる。又インクジェット、印刷等の方式でもよい。
【0124】
近赤外線遮蔽層としては、850〜1250nmなど近赤外の幅広い波長域において、近赤外線を十分に吸収する性能を得るため、例えば、前記850〜1250nmの範囲に吸収をもつ種々の有機、又錯体系の染料を、樹脂(例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等)に溶解したものをコーティングした厚さ0.5〜30μmのコーティング層が挙げられる。
【0125】
また、更に、PDP用前面板として用いるために粘着剤層を更に最表面に形成できる。粘着剤(感圧接着剤)としては、アクリル系、SBS、SEBS等の熱可塑性エラストマー系などが好適に用いられる。これらの粘着剤には、タッキファイヤー、紫外線吸収剤、着色顔料、着色染料、老化防止剤、接着付与剤等を適宜添加することができる。この粘着剤層8の厚みは10〜1000μm程度が良い。また、粘着剤層8には適当な剥離紙(フィルム)を装着しておくことができる。
【0126】
また、反射防止層は、最表面にあることが好ましく、本発明の電磁波遮蔽フィルムの場合、導電性銀パターンを有する側とは反対側に塗設されることが好ましい。
(1) 電磁波遮蔽性光透過積層フィルムを貼着するパネルの構成材料よりも屈折率の低い透明膜を一層積層したもの
(2) 高屈折率透明膜と低屈折率透明膜を1層ずつ合計2層に積層したもの
(3) 高屈折率透明膜と低屈折率透明膜を2層ずつ交互に合計4層積層したもの
(4) 中屈折率透明膜/高屈折率透明膜/低屈折率透明膜の順で1層ずつ、合計3層に積層したもの
(5) 高屈折率透明膜/低屈折率透明膜の順で各層を交互に3層ずつ、合計6層に積層したもの等が挙げられる。
【0127】
例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を含有するハードコート組成物から形成したハードコート層上に、例えば低屈折率酸化ケイ層を塗設した反射防止層が挙げられる。
【0128】
図6に、前記の導電性付与工程に加えて反射防止層の形成工程を付加した電磁波遮蔽フィルムの製造プロセスを示す。同様に、付加工程(連続或いは非連続でもよい)として近赤外遮蔽層、また粘着層、離型紙貼合等をこの後付加してもよい。
【0129】
図7に本発明の製造方法による電磁波遮蔽フィルムの一例について断面図を模式的に示した。基材フィルム1上に金属銀パターン層2、近赤外線遮蔽層3、粘着層4、更に離型紙5が貼合され、裏面には反射防止層6が形成されたものである。
【0130】
上記反射防止層、また、近赤外遮蔽層等は、別途フィルム基材上に塗設し、反射防止フィルム、また、フィルタとして、本発明に係わる電磁波遮蔽フィルムと貼合して、多層フィルムとして、例えばPDP用前面板に用いてもよい。この場合、透明ベースフィルム(厚さは例えば25〜250μm程度)上に下記(1)の単層膜や、高屈折率透明膜と低屈折率透明膜との積層膜からなる反射防止層、また前記の近赤外吸収能を有する材料を含有する層を塗設し用いればよい。これらの基材フィルムについても、透明フィルムが好ましく、PET(ポリエチレンテレフタレート),PC(ポリカーボネート),セルロースエステル(トリアセチルセルロース),PMMA(ポリメチルメタアクリレート)等の樹脂フィルムが挙げられる。
【0131】
又、フィルムを積層する場合、接着樹脂としては、透明で弾性のあるもの、例えば、通常、合せガラス用接着剤として用いられているものが好ましい。具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体等、厚さは、例えば10〜1000μm程度が好ましい。
【0132】
以上、プラズマディスプレイパネル(PDP)に必要な本発明に係わる電磁波遮蔽フィルムの製造方法について説明したが、フィルム上に銀塩を全面塗布後、パターン以外の部分にインクジェットによって遮光性インクの塗布を行い、現像処理を行うことで、現像銀パターンを基材フィルム上に有する電磁波遮蔽フィルムがロール ツウ ロールでの製造が可能になり、この電磁波遮蔽フィルムを用いて電磁波遮蔽性のPDP用前面板が容易に得られる。尚、電磁波遮蔽メッシュパターンの作製についてのみ説明したが、アンテナ素子パターンを同様に遮光性インクで印刷することで、周波数選択性の電磁波遮蔽フィルムが同様に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】アンテナ素子パターンを有する電波反射面の幾つかの例を示す図である。
【図2】本発明の電磁波遮蔽フィルムの製造プロセス全体の概念図である。
【図3】本発明の電磁波遮蔽フィルムの形成工程の具体的態様の一例を示す図である。
【図4】IJによる遮光性インクパターンの形成、また、露光、現像によって金属銀パターンが形成されるところを示す模式図である。
【図5】オフセット印刷を用いた工程の一例を模式的に示す図である。
【図6】反射防止層形成工程を加えた電磁波遮蔽フィルムの製造プロセス全体の概念図である。
【図7】本発明の電磁波遮蔽フィルムの一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0134】
1 基材フィルム
2 金属銀パターン層
3 近赤外線遮蔽層
4 粘着層
5 離型紙
6 反射防止層
10 コーターヘッド
100 インクジェットヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性銀塩を塗布した感光材料を、露光、現像処理して金属銀パターンを形成する電磁波遮蔽フィルムの製造方法において、前記感光材料に対して遮光性インクを塗布して遮光性インクパターンを作製した後、露光することを特徴とする電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記遮光性インクの塗布が、インクジェット塗布方式であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記遮光性インクの塗布が、オフセット印刷方式であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記露光が、所定面積の遮光性インクパターンを有する領域に対する不連続全面露光であるか、または連続搬送される、遮光性インクパターンを有する感光材料ウエブ上への全面露光であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記現像処理が、前記遮光性インクパターンの少なくとも一部を除去するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された電磁波遮蔽フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−60118(P2008−60118A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231810(P2006−231810)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】