説明

プラズマ放電処理装置

【課題】 定期的なクリーニング頻度を少なくし、クリーニングによる生産性の低下を軽減し、オペレータの負担を軽減し、且つ固体となったパーティクルの一部等が薄膜に混入することを防止して高品質な薄膜を提供する大気圧プラズマ放電処理装置の提供。
【解決手段】 少なくとも1対の電極と、基材を搬送する搬送ローラと、高周波電界を印加させプラズマを発生させる電源と、混合ガスを供給する混合ガス供給手段と、を有するプラズマ放電処理装置において、パーティクルを含む排ガスを前記1対の電極と前記搬送ローラとの対向領域から排出する、少なくとも前記対向領域の下流側に備えられた排気部材を有し、少なくとも前記下流側に備えられた前記排気部材は前記排気部材の内壁に付着した粉体及び堆積物を剥離し且つ粉体等が該排気部材の内壁に付着することを軽減する、前記排気部材を振動させる振動手段を有することを特徴とするプラズマ放電処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プラズマ放電処理装置の特に排ガスの排気に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より1.333×10-6MPaから1.333×10-3MPa程度の圧力の環境において基材表面にプラズマCVDにより薄膜を製膜する方法が知られているが、この方法においては真空装置が必要となり連続性が損なわれることや、放電プラズマ密度が低いため処理効率が低く、生産性が低いという問題があり、その改良として、大気圧または大気圧近傍での放電プラズマによる処理が可能な技術が開示されている。
【0003】
大気圧または大気圧近傍の圧力下、放電プラズマの生成のため反応に必要な混合ガスを放電空間に導入し、ガスを拡散させる場合、ガスの拡散を低圧条件下で行う場合に比して、混合ガスの偏りが生じやすく、形成された薄膜に不均一性が生じ易い。
【0004】
特に、連続製膜空間を形成する放電空間内にガスを導入し、連続的に製膜を行うに当たっては、通常、1箇所ないしは数箇所のガス給気口にガス供給管を接続して薄膜を形成するが大気圧近傍の圧力下においては放電空間内でガスが拡散し難いために、ガス給気口に近い位置ほどガスの密度が高くなり、ガス給気口から遠い位置では必然的にガスの密度が低下する傾向にある。
【0005】
これら導入ガスの不均一さに起因した処理ムラが発生しやすく、これらの処理ムラは各種の光学フィルム例えば反射防止膜等の光学薄膜等においては致命的な欠点となる。
【0006】
また、このような不均一さに起因する原料ガスの滞留によって、例えば金属酸化物や有機金属化合物等の反応ガスを用いる場合、過反応や、未反応による原料ガス粉体等が発生し、これが排気側の配管等の吸引流路内等に堆積・付着したり、更に、これが形成される膜中に入り込むために、連続製膜された薄膜の膜の濁度が上昇してしまう、膜が柔らかくなる等、膜質を損なったり、膜厚分布の均一性を保ちにくいなどの問題が発生する。
【0007】
そのため、ガスの導入、排気の方法や大気圧プラズマ装置における処理空間の設計等構造的観点からも導入ガスの均一性を確保し、粉体の発生をなくし、膜質を向上させる検討が行われている。例えば、常圧プラズマCVDにおいて、放電プラズマ処理空間の一端に設けられたガス給気口からその供給量を制御して混合ガスを導入し、他端に設けられた排気口から排気量を制御して排気する方法が開示されている(例えば特許文献1参照。)。
【0008】
また、固定電極と固定電極に対向する回転ロール電極間にプラズマを発生させて薄膜を形成するプラズマ放電処理方法において、対となる固定電極の間から混合ガスを供給し、プラズマを発生させた排ガスを固定電極の両側に配設した排気手段から排出するものが知られている(例えば特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2001−98093号公報
【特許文献2】特開2004−162136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1または2に開示されたプラズマ放電処理装置では一端或いは中央のガス給気口から混合ガスを導入し、他端或いは両端に設けられた排気口から排ガスを排気する構成では、排ガスに含まれる過反応や、未反応による原料ガス粉体等のパーティクルが排気口内壁に堆積してしまい、堆積し固体となったパーティクルの一部が薄膜に混入してしまうといった問題があり、この混入を防止するため排気口内壁を所定の間隔で定期的にクリーニングしなければならないという問題点があった。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑み、定期的なクリーニング頻度を少なくし、クリーニングによる生産性の低下を軽減し、オペレータの負担を軽減し、且つ固体となったパーティクルの一部等が薄膜に混入することを防止して高品質な薄膜を提供する大気圧プラズマ放電処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は下記の発明により達成される。
【0012】
(1)少なくとも1対の電極と、前記1対の電極と対向し基材を搬送する搬送ローラと、前記1対の電極間、または前記1対の電極と前記搬送ローラ間に高周波電界を印加させプラズマを発生させる電源と、前記1対の電極の間から薄膜を形成する混合ガスを供給する混合ガス供給手段と、を有するプラズマ放電処理装置において、
パーティクルを含む排ガスを前記1対の電極と前記搬送ローラとの対向領域から排出する、少なくとも前記対向領域の下流側に備えられた排気部材を有し、
少なくとも前記下流側に備えられた前記排気部材は前記排気部材の内壁に付着した粉体及び堆積物を剥離し且つ粉体等が該排気部材の内壁に付着することを軽減する、前記排気部材を振動させる振動手段を有することを特徴とするプラズマ放電処理装置。
【0013】
(2)前記振動手段は前記排気部材の壁を前記排気部材の内部を通過する前記パーティクルを含む排ガスの移動方向と直角または平行、且つ前記壁の面に平行方向に振動させることを特徴とする(1)に記載のプラズマ放電処理装置。
【0014】
(3)少なくとも1対の電極と、前記1対の電極と対向し基材を搬送する搬送ローラと、前記1対の電極間、または前記1対の電極と前記搬送ローラ間に高周波電界を印加させプラズマを発生させる電源と、前記1対の電極の間から薄膜を形成する混合ガスを供給する混合ガス供給手段と、を有するプラズマ放電処理装置において、
パーティクルを含む排ガスを前記1対の電極と前記搬送ローラとの対向領域から排出する、少なくとも前記対向領域の下流側に備えられた排気部材を有し、
少なくとも前記下流側に備えられた前記排気部材は粉体等が前記排気部材の内壁に付着することを軽減する、前記粉体等に直接振動を与える第2の振動手段を有することを特徴とするプラズマ放電処理装置。
【0015】
(4)前記第2の振動手段は前記排気部材の内部を通過する前記パーティクルを含む排ガスの移動方向と直角方向に向けて超音波を出力し、前記パーティクルを含む排ガスに直接超音波を当てることを特徴とする(3)に記載のプラズマ放電処理装置。
【0016】
(5)前記振動手段及び前記第2の振動手段は10KHz〜100KHzの振動数を有し、1μm〜100μmの振幅を有していることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のプラズマ放電処理装置。
【0017】
(6)前記振動手段は超音波振動子であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載のプラズマ放電処理装置。
【0018】
(7)前記排気部材の内壁はフッ素を含む樹脂またはその複合材料が被覆されていることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載のプラズマ放電処理装置。
【0019】
(8)前記プラズマは大気圧或いは大気圧近傍の環境下で発生させるものであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載のプラズマ放電処理装置。
【発明の効果】
【0020】
(1)、(2)、(5)、(6)のいずれか1項に記載の、少なくとも下流側に備えられた排気部材の壁に、排気部材を振動させる振動手段を配設し、振動手段により排気部材の壁面を壁面に平行方向に振動させることにより、排気部材の内壁に付着した粉体及び堆積物を剥離し且つパーティクル等が排気部材の内壁に付着することを抑制することを可能とし、これらにより排気部材のクリーニング頻度を少なくし、クリーニングによる生産性の低下を軽減し、オペレータの負担を軽減し、且つ堆積して固体となったパーティクルの一部等が薄膜に混入することを防止して、高品質な薄膜を提供するプラズマ放電処理装置の提供が可能となる。
【0021】
(3)、(4)、(5)、(6)のいずれか1項に記載の、少なくとも下流側に備えられた排気部材の内部を通過するパーティクル等を含む排ガスに高周波振動を与える振動手段を配設し、パーティクル等を振動させることによりパーティクル等が排気部材の内壁に付着することを抑制することを可能とし、これらにより定期的なクリーニング頻度を少なくし、クリーニングによる生産性の低下を軽減し、オペレータの負担を軽減し、且つ固体となったパーティクルの一部等が薄膜に混入することを防止して高品質な薄膜を提供するプラズマ放電処理装置の提供が可能となる。
【0022】
(7)に記載の、排気部材内壁をフッ素を含む樹脂またはその複合材料で被覆することにより、未反応による原料ガス粉体等のパーティクルが排気口内壁に付着・堆積してしまう事を更に抑制し、また、内壁に堆積した堆積物を更に剥離容易としたプラズマ放電処理装置の提供が可能となる。
【0023】
(8)に記載の、大気圧或いは大気圧近傍の環境下でプラズマ発生させることにより上記効果を奏すると共に、真空装置を不要とし連続成膜が可能な、放電プラズマ密度が高い、生産性が高いプラズマ放電処理装置の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
各図面において同一の構成・機能を有する部材等については同一の番号を付してある。
【0025】
また、上流側、下流側とは基材の搬送方向に対して上流・下流を指している。
【0026】
なお、本発明の大気圧及び大気圧近傍とは20kPa〜110kPa、好ましくは93kPa〜104kPaを指し、大気圧プラズマ放電処理装置において、ガスの励起及び被薄膜形成体への薄膜の形成は大気圧及び大気圧近傍の環境下で行われる。
【0027】
図1は、本発明の大気圧プラズマ放電処理装置の第1の形態の1例を示す概略図である。
【0028】
図1において、放電空間の外で薄膜を形成する第1の形態の大気圧プラズマ放電処理装置10(以下単に大気圧プラズマ放電処理装置10と記す)は、
基材Fの保持・搬送機能を兼ね備えた回転可能なロール形状の基材搬送ロール11と、基材搬送ロール11の外周面と所定の距離を離間して配列した固定電極12と、
固定電極12を形成する1対の固定電極の間(放電空間)に少なくとも薄膜形成ガスと放電ガスの混合ガスGを供給するガス供給手段14と、
固定電極12を形成する1対の固定電極のうち第1の固定電極121に第1の高周波電力を供給する第1の高周波電源21と、第2の固定電極122に第2の高周波電力を供給する第2の高周波電源22と、
第1の固定電極121と第2の固定電極122との対向領域である放電領域13及び基材搬送ロール11と固定電極12との対向領域である薄膜を形成する処理空間17で発生したパーティクルPを含む排ガス150を排出する、処理空間17の下流側に配設された第2の排気手段16を有している。なお、処理空間17の上流側に放電領域13及び処理空間17で発生したパーティクルPを含む排ガス150を排出する第1の排気手段15を有しても良い。
【0029】
ここで、基材搬送ロール11は、基材搬送ロール11外周面と固定電極12との間隙距離を安定に保つバックローラとしての機能も有している。
【0030】
第1の排気手段15は、主として上流側に流れるパーティクルを含む排ガス154を下流側から上流側に向けて吸引するもので、第1のブロア151と、第1のブロア151の駆動により発生した負圧による排気の流量を調整する第1のマスフローコントローラ152と、上流側に流れるパーティクルを含む排ガス154を吸引する排気部材である第1のノズル153と、パーティクルを含む排ガス150の経路である第1の排気ダクト155とを有している。
【0031】
第2の排出手段16は主として下流側に流れるパーティクルを含む排ガス164を上流側から下流側に向けて吸引するもので、第2のブロア161と、第2のブロア161の駆動により発生した負圧による排気の流量を調整する第2のマスフローコントローラ162と、下流側に流れるパーティクルを含む排ガス164を吸引する排気部材である第2のノズル163と、パーティクルを含む排ガス164の経路である第2の排気ダクト165と、を有している。
【0032】
そして、少なくとも第2のノズル163には、第2のノズル163の内壁に付着した粉体及び堆積物を剥離し且つパーティクル等が第2のノズル163の内壁に付着することを軽減する、第2のノズル163の壁を振動させる振動手段52が設けられている。
【0033】
なお、少なくとも第1のノズル153及び第2のノズル163の内壁202はフッ素を含む樹脂またはその複合材料で被覆され、未反応による原料ガス粉体等のパーティクルが排気口内壁に付着・堆積してしまう事を更に抑制し、また、内壁に堆積した堆積物を更に剥離容易としている。第1の排気手段15及び第2の排出手段16を構成する部材の内面をフッ素を含む樹脂またはその複合材料で被覆しても良い。
【0034】
振動手段52は高周波の振動を発生する振動部材である超音波振動子511を有し、超音波振動子511の振動方向の一端が大気圧プラズマ放電処理装置本体101に固定され、他端が第2のノズル163の外壁に固定されている。
【0035】
また、超音波振動子511には超音波振動子511を駆動する超音波発信器(不図示)が接続され、薄膜形成中に超音波発信器がONとなり超音波振動子511に超音波振動を発生させる。
【0036】
ここで、超音波振動子511は上述した様に一端が大気圧プラズマ放電処理装置本体101に固定され、他端が振動方向、即ち排気部材の内部を通過する排ガスの移動方向と平行方向に離間した位置の、第2のノズル163の外壁に固定されているため、超音波振動子511の振動により第2のノズル163壁面を内部を通過する排ガスの移動方向と、直角または平行、且つ壁面に平行方向である、移動方向と平行方向に(図示矢印方向)振動させる。
【0037】
なお、超音波振動子511は第2のノズル163を紙面の垂直方向に振動させる様に取りつけても良い。
【0038】
超音波振動子511の振動周波数は10KHz〜100KHzが好ましく、振幅は1μm〜100μmが好ましい。
【0039】
パーティクルの外径(例えば1μm)より振幅が小さすぎると浮遊するパーティクル或いは第2のノズル163内面に堆積したパーティクルに対する振動による第2のノズル163の見掛け上の移動量が小さくなり、パーティクル等が第2のノズル163内面に付着しやすくなると共に一端堆積したパーティクルは剥離しにくくなる。
【0040】
また、振動周波数が小さすぎると浮遊するパーティクルに対する第2のノズル163の移動速度が小さくなり、パーティクルは第2のノズル163の振動による移動速度に応じて自己の質量に打ち勝ち容易に移動し第2のノズル163内面に付着しやすくなる。また、一端堆積したパーティクル等は同様にして自己の質量に打ち勝ち容易に移動し剥離しにくくなる。
【0041】
また、超音波振動子511を駆動する超音波発信器の必要とする出力電力、及び超音波振動子は振動周波数と振幅との積に応じて増加するため、振動周波数と振幅との少なくともいずれかが大きすぎるような場合は超音波発信器の出力電力及び超音波振動子が大きなものを必要とし、装置の大型化、不要なエネルギーの消費の増加を招いてしまう。
【0042】
なお、上述した第1のノズル153に第1のノズル153の内壁に付着した粉体及び堆積物を剥離し且つパーティクル等が第1のノズル153の内壁に付着することを軽減する、上述した第2のノズル163と振動手段52に相当する第1のノズル153を振動させる振動手段51を設けても良い。このため第1のノズル153及び振動手段51に係る説明を省略する。
【0043】
第1のブロア151と第2のブロア161とは、パーティクルを含む排ガス150を吸引し大気圧プラズマ放電処理装置の外に排出するブロワで、両者の排気流量の和はガス供給手段14からの混合ガスGの供給流量より少なくとも1.0倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは3倍以上の排気能力を有している。
【0044】
排気能力が少ないと十分な排気ができずに大気圧プラズマ放電処理装置内にパーティクルの拡散を招いたり、例えば排気ダクト等の排出手段内部に粉体を堆積してしまう。
【0045】
第1のマスフローコントローラ152及び第2のマスフローコントローラ162の排気流量の和はガス供給手段14からの混合ガスGの供給流量より少なくとも1.0倍以上、好ましくは1.2〜3倍の排気流量に調節され、且つ、第2のマスフローコントローラ162の排気流量は第1のマスフローコントローラ152の排気流量より大きく調節されている。
【0046】
排気流量が少ないと十分な排気ができずに大気圧プラズマ放電処理装置内にパーティクルの拡散を招いたり、例えばノズル等の排出手段内部に粉体を堆積してしまう。
【0047】
そして基材搬送ロール11は、基材Fをその周面に密接した状態で、不図示の駆動手段により基材Fを搬送する。
【0048】
また、固定電極12は、対をなす第1の固定電極121と第2の固定電極122を有し、第1の固定電極121と第2の固定電極122とは所定の間隙を隔てて対向し、その対向領域が放電空間13を形成している、また、第1の固定電極121及び第2の固定電極122と基材搬送ロール11外周面とは所定の間隙を隔てて対向し、その対向面が薄膜を形成する処理空間17を形成している。
【0049】
また、第1の高周波電源21は周波数ω1、電界強度V1を発生する電圧、電流I1を出力可能な電源で、第2の高周波電源22は周波数ω2、電界強度V2を発生する電圧、電流I2を出力可能な電源で、放電空間13に周波数ω1と周波数ω2が重畳された高周波電界を発生させる。
【0050】
ここで、窒素等の放電ガスに対して安定して放電が開始し、放電開始後も薄膜形成ガス等を安定して励起できるように、放電開始電界強度をVIとすると各電源の出力の関係はω1<ω2、及び、V1≧VI>V2またはV1>VI≧V2の関係を有し、第1の高周波電界の電流I1は、好ましくは0.3mA/cm2〜20mA/cm2、さらに好ましくは1.0mA/cm2〜20mA/cm2である。また、第2の高周波電界の電流I2は、好ましくは10mA/cm2〜100mA/cm2、さらに好ましくは20mA/cm2〜100mA/cm2で、前記第2の高周波電界の出力密度が1W/cm2以上となっている。
【0051】
ガス供給手段14は、薄膜形成ガスと放電ガスを均一に混合して混合ガスGとして、ガス供給経路141を介して放電空間13に混合ガスGを供給する。
【0052】
ここで、ガス供給手段14から供給される薄膜形成ガスと放電ガスとの混合ガスGのガスの種類、ガスの量、及び、第1の高周波電源21と第2の高周波電源22とから印加される周波数、電圧波形、電圧値、電流等を選択することにより、例えば反射防止膜や防汚膜等の、薄膜の形成、及び、例えば薄膜の酸化処理等の、薄膜の表面処理等が可能となる。
【0053】
以下に上述した大気圧プラズマ放電処理装置10による、成膜の1例として基材F上にセラミック層を形成する場合を例に取り、薄膜の形成方法について説明する。
【0054】
基材Fを基材搬送ロール11外周に沿わせて密接した状態で基材搬送ロール11と固定電極12との対向領域に搬送する。
【0055】
ガス供給手段14により放電空間13にセラミック層を形成する混合ガスGを供給し、第1の高周波電源21及び第2の高周波電源22により第1の固定電極121及び第2の固定電極122間に、上述した周波数ω、電界強度V、電流Iの条件を満たす、周波数ω1と周波数ω2が重畳された高周波電界を印加し、発生したプラズマにより混合ガスGを励起する。
【0056】
励起した混合ガスG’は混合ガスに押し出され処理空間17に放出される。そして、処理空間17で基材Fに励起した混合ガスG’が晒されて、基材F表面にセラミック層が堆積・形成される。
【0057】
放電空間13で混合ガスGが励起されるとき、及び、処理空間17で基材Fに薄膜が堆積される時、堆積されずに残った励起された混合ガスG’や、過反応の混合ガス等の一部がパーティクルPとなり、処理空間17に浮遊し、第1の排気手段15と第2の排気手段16とで排ガスごと吸引、排気される。
【0058】
そして、第1の排気手段15と第2の排気手段16内部に付着しようとするパーティクルは振動手段52の超音波振動により付着が抑制されると共に、一端付着・堆積したパーティクルは剥離される。
【0059】
従って、オペレータが所定の間隔で第1の排気手段15と第2の排気手段16との内部をクリーニングする必要もなくなり、クリーニングによる生産性の低下を軽減し、オペレータの負担を軽減し、且つ固体となったパーティクルの一部等が薄膜に混入することを防止して高品質な薄膜を提供する大気圧プラズマ放電処理装置が提供可能となる。
【0060】
図2は、本発明の大気圧プラズマ放電処理装置の第2の形態の1例を示す概略図である。
【0061】
図2において、放電空間内で薄膜を形成する第2の形態の大気圧プラズマ放電処理装置30(以下単に大気圧プラズマ放電処理装置30と記す)は、
基材Fの保持・搬送機能を兼ね備えた回転可能なロール形状の基材搬送ロール11と、基材搬送ロール11の外周面と所定の距離を離間して配列した固定電極123と、
固定電極内部31を通過し、放電空間であり且つ薄膜を形成する処理空間32に少なくとも薄膜形成ガスと放電ガスの混合ガスGを供給するガス供給手段14と、
基材搬送ロール11に第1の高周波電力を供給する第1の高周波電源21と、固定電極123に第2の高周波電力を供給する第2の高周波電源22と、
基材搬送ロール11と固定電極123の対向領域でもある処理空間32で発生したパーティクルPを含む排ガス150を排出する、基材の搬送方向下流側に配設された第2の排気手段16を有している。
【0062】
処理空間32で発生したパーティクルを含む排ガス150を排出する、基材の搬送方向上流側に配設された第1の排気手段15を有するようにしても良い。
【0063】
ここで、基材搬送ロール11は、基材搬送ロール11外周面と固定電極123との間隙距離を安定に保つバックローラとしての機能も有している。
【0064】
第1の排気手段15は、主として上流側に流れるパーティクルを含む排ガス154を下流側から上流側に向けて吸引するもので、第1のブロア151と第1のブロア151の駆動により発生した負圧による排気の流量を調整する第1のマスフローコントローラ152と、上流側に流れるパーティクルを含む排ガス154を吸引する排気部材である第1のノズル153と、パーティクルを含む排ガス150を排気する第1の排気ダクト155とを有している。
【0065】
第2の排出手段16は主として下流側に流れるパーティクルを含む排ガス164を上流側から下流側に向けて吸引するもので、第2のブロア161と第2のブロア161の駆動により発生した負圧による排気の流量を調整する第2のマスフローコントローラ162と、下流側に流れるパーティクルを含む排ガス164を吸引する排気部材である第2のノズル163と、パーティクルを含む排ガス150を排気する第2の排気ダクト165と、を有している。
【0066】
なお、少なくとも第1のノズル153及び第2のノズル163の内壁202はフッ素を含む樹脂またはその複合材料で被覆され、未反応による原料ガス粉体等のパーティクルが排気口内壁に付着・堆積してしまう事を更に抑制し、また、内壁に堆積した堆積物を更に剥離容易としている。第1の排気手段15及び第2の排出手段16を構成する部材の内面をフッ素を含む樹脂またはその複合材料で被覆しても良い。
【0067】
そして、少なくとも第2のノズル163には第2のノズル163の内壁に付着した粉体及び堆積物を剥離し且つパーティクル等が第2のノズル163の内壁に付着することを軽減する、図1を参照して説明したものと同様な第2のノズル163を振動させる振動手段52が設けられている。このため第2のノズル163及び振動手段52に係る説明を省略する。
【0068】
なお、上述した第1のノズル153に第1のノズル153の内壁に付着した粉体及び堆積物を剥離し且つパーティクル等が第1のノズル153の内壁に付着することを軽減する、図1を参照して説明したものと同様な第1のノズル153を振動させる振動手段51を設けても良い。このため第1のノズル153及び振動手段51に係る説明を省略する。
【0069】
第1のブロア151と第2のブロア161とは、パーティクルを含む排ガス150を吸引し大気圧プラズマ放電処理装置の外に排出するブロワで、両者の排気流量の和はガス供給手段14からの混合ガスGの供給量より少なくとも1.0倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは3〜5倍の排気能力を有している。
【0070】
排気能力が少ないと十分な排気ができずに大気圧プラズマ放電処理装置内にパーティクルの拡散を招いたり、例えば排気ダクト等の排出手段内部に粉体を堆積してしまう。
【0071】
第1のマスフローコントローラ152及び第2のマスフローコントローラ162の排気流量の和はガス供給手段14からの混合ガスGの供給流量より少なくとも1.0倍以上、好ましくは1.2〜3倍の排気流量に調節去れ、且つ、第2のマスフローコントローラ162の排気流量は第1のマスフローコントローラ152の排気流量より大きく調節される。
【0072】
排気流量が少ないと十分な排気ができずに大気圧プラズマ放電処理装置内にパーティクルの拡散を招いたり、例えばノズル等の排出手段内部に粉体を堆積してしまう。
【0073】
そして基材搬送ロール11は、基材Fをその周面に密接した状態で、不図示の駆動手段により基材Fを搬送する。
【0074】
また、固定電極123と基材搬送ロール11外周との対向領域とは所定の間隙を隔てて対向し、その対向面が放電空間でもある処理空間32を形成している。
【0075】
また、第1の高周波電源21は周波数ω1、電界強度V1とする電圧、電流I1を出力可能な電源で、第2の高周波電源22は周波数ω2、電界強度V2とする電圧、電流I2を出力可能な電源で、処理空間32に周波数ω1と周波数ω2が重畳された高周波電界を発生させる。
【0076】
ここで、窒素等の放電ガスに対して安定して放電が開始し、放電開始後も薄膜形成ガス等を安定して励起できるように、放電開始電界強度をVIとすると、各電源の出力の関係は、ω1<ω2、及び、V1≧VI>V2またはV1>VI≧V2の関係を有し、第1の高周波電界の電流I1は、好ましくは0.3mA/cm2〜20mA/cm2、さらに好ましくは1.0mA/cm2〜20mA/cm2である。また、第2の高周波電界の電流I2は、好ましくは10mA/cm2〜100mA/cm2、さらに好ましくは20mA/cm2〜100mA/cm2で、前記第2の高周波電界の出力密度が1W/cm2以上となっている。
【0077】
ガス供給手段14は、薄膜形成ガスと放電ガスを均一に混合して混合ガスGとして、ガス供給経路141及び固定電極内部31を通過し処理空間32に混合ガスGを供給する。
【0078】
ここで、ガス供給手段14から供給される薄膜形成ガスと放電ガスとの混合ガスGのガスの種類、ガスの量、及び、第1の高周波電源21と第2の高周波電源22とから印加される周波数、電圧波形、電圧値、電流等を選択することにより、例えば反射防止膜や防汚膜等の、薄膜の形成、及び、例えば薄膜の酸化処理等の、薄膜の表面処理等が可能となる。
【0079】
上述した大気圧プラズマ放電処理装置30による、成膜の1例として基材F上にセラミック層を形成する場合を例に取り、薄膜の形成方法について説明する。
【0080】
基材Fを基材搬送ロール11外周に沿わせて密接した状態で基材搬送ロール11と固定電極123との対向領域に搬送する。
【0081】
ガス供給手段14により処理空間32にセラミック層を形成する混合ガスGを供給し、第1の高周波電源21及び第2の高周波電源22により固定電極123及び基材搬送ロール11間に、上述した周波数ω、電界強度V、電流Iの条件を満たす、周波数ω1と周波数ω2が重畳された高周波電界を印加し、発生したプラズマにより混合ガスGを励起する。
【0082】
処理空間32で基材Fに励起した混合ガスG’が晒されて、基材F表面にセラミック層が堆積・形成される。
【0083】
励起した混合ガスG’は混合ガスに押し出され処理空間17に放出される。そして、処理空間17で基材Fに励起した混合ガスG’が晒されて、基材F表面にセラミック層が堆積・形成される。
【0084】
処理空間32で混合ガスGが励起され基材Fに薄膜が堆積される時、堆積されずに残った励起された混合ガスG’や、過反応の混合ガス等の一部がパーティクルPとなり、処理空間17に浮遊し、第1の排気手段15と第2の排気手段16とで排ガスごと吸引、排気される。
【0085】
そして、第1の排気手段15と第2の排気手段16内部に付着しようとするパーティクルは振動手段52の超音波振動により付着が抑制されると共に、一端付着・堆積したパーティクルは剥離される。
【0086】
従って、オペレータが所定の間隔で第1の排気手段15と第2の排気手段16との内部をクリーニングする必要もなくなり、クリーニングによる生産性の低下を軽減し、オペレータの負担を軽減し、且つ固体となったパーティクルの一部等が薄膜に混入することを防止して高品質な薄膜を提供する大気圧プラズマ放電処理装置が提供可能となる。
【0087】
図3は大気圧プラズマ放電処理ユニットを複数配列した場合の説明図である。
【0088】
以下に、大気圧プラズマ放電処理ユニットとして前述した大気圧プラズマ放電処理装置30を複数配列した場合を例に取り説明する。前述した大気圧プラズマ放電処理装置10を同様にして複数配列することも可能なことは言うまでもない。
【0089】
固定電極123と、ガス供給手段14と、少なくとも振動手段52を有する第2の排気手段16とを1組の大気圧プラズマ放電ユニット19として、複数組の大気圧プラズマ放電ユニット19が基材搬送ロール11を中心にして同心円上に配列されている。
【0090】
ここで、第1の排気手段15を更に設けて、第1の排気手段15に振動手段51を設けても良い。
【0091】
なお、各ガス供給手段は同一のガスを供給しても良く、異なるガスを供給しても良い。
【0092】
また、ガス供給手段14はこれを1設け、図示しない供給ガス流量調節手段により各固定電極123にそれぞれ所定量の混合ガスを調整して供給しても良い。
【0093】
そして、各固定電極123には第2の高周波電源22が接続され、基材搬送ロール11には第1の高周波電源21が接続されており、両電源のONにより各固定電極123と基材搬送ロール11との対向領域に高周波電界を発生させ、ガス供給手段14から供給された混合ガスGを励起する。
【0094】
なお、固定電極側の高周波電源は形成する薄膜に応じて各大気圧プラズマ放電ユニット19に1台毎設けても良い。この場合各高周波電源の周波数や電力は同じでもそれぞれ異なっても良い。
【0095】
励起した混合ガスG’は、放電空間であり且つ薄膜を形成する処理空間32において基材搬送ロール11により搬送される基材F表面或いは基材表面上に形成された薄膜上に所定の薄膜を堆積・形成する。
【0096】
ここで、大気圧プラズマ放電ユニット19毎に、各ガス供給手段14による混合ガスの供給量に応じて下流側の第2の排気手段16の排気流量と、上流側の第1の排気手段15の排気流量とが調整されており、更に下流側の第2の排気手段16の排気流量が、上流側の第1の排気手段15の排気流量より多く設定してある。
【0097】
なお、64と67は基材Fを安定して基材搬送ロール11にガイドするガイドローラである。
【0098】
また、固定電極123と基材搬送ロール11は図示しない電極及びロールの温度を調節する温度調節手段によりその表面温度が所定温度となるように調節されている。
【0099】
以上説明したように、各大気圧プラズマ放電ユニット19毎にガスの供給手段と排ガスの排気手段とを設けることにより、各大気圧プラズマ放電ユニット19毎にガス流量の調整を可能とし、各大気圧プラズマ放電ユニット19相互でのガスの混入を防止可能とし、パーティクルの薄膜への混入等が低減し高品質な膜を形成することが可能となり、更に排気手段に振動手段を設け自動的に排気手段のクリーニングを行わせることにより、オペレータによるクリーニング頻度を軽減したことによりクリーニングによる生産性の低下を軽減し、オペレータの負担を軽減することが可能となる。
【0100】
なお、以上図1、2、3で説明した周波数ω1の第1の高周波電源21、周波数ω2の第2の高周波電源22は下記の電源が好適に使用できる。
第1の高周波電源としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
A1 神鋼電機 3kHz SPG3−4500
A2 神鋼電機 5kHz SPG5−4500
A3 春日電機 15kHz AGI−023
A4 神鋼電機 50kHz SPG50−4500
A5 ハイデン研究所 100kHz* PHF−6k
A6 パール工業 200kHz CF−2000−200k
A7 パール工業 400kHz CF−2000−400k
等の市販のものを挙げることが出来、何れも使用することが出来る。
【0101】
また、第2の高周波電源としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
B1 パール工業 800kHz CF−2000−800k
B2 パール工業 2MHz CF−2000−2M
B3 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
B4 パール工業 27MHz CF−2000−27M
B5 パール工業 150MHz CF−2000−150M
等の市販のものを挙げることが出来、何れも好ましく使用出来る。
【0102】
なお、上記電源のうち、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。それ以外は連続サイン波のみ印加可能な高周波電源である。
【0103】
高周波電界の波形としては、特に限定されない。連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モード等があり、そのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2の固定電極側(第2の高周波電界)は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
【0104】
また、図1又は図2に示すように、基材搬送ロール11と第1の高周波電源21との間、及び、第1の固定電極121と第1の高周波電源21との間には第1フィルタ23が設置されており、第1の高周波電源21から基材搬送ロール11及び第1の固定電極121への電流を通過しやすくし、第2の高周波電源22からの電流をアースして第2の高周波電源22から第1の高周波電源21への電流が通過しにくくなるようになっている。
【0105】
また、固定電極123と第2の高周波電源22との間、及び第2の固定電極122と第2の高周波電源22との間には、第2フィルター24が設置されており、第2の高周波電源22から固定電極123及び第2の固定電極122への電流を通過しやすくし、第1の高周波電源21からの電流をアースして、第1の高周波電源21から第2の高周波電源22への電流を通過しにくくするようになっている。
【0106】
次に例えばセラミック層を大気圧プラズマ放電処理装置10、30で形成する場合の混合ガスGとして供給する薄膜材料について説明する。
【0107】
セラミック層を形成する条件として、原材料(原料ともいう)である有機金属化合物、及び分解ガス、及び分解温度、及び投入電力などを選ぶことで、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属硫化物、金属ハロゲン化物、またこれらの混合物(金属酸窒化物、金属酸化ハロゲン化物、金属窒化炭化物など)を形成することができる。
【0108】
例えば、珪素化合物を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いれば、珪素酸化物が生成する。また、亜鉛化合物を原料化合物として用い、分解ガスにニ硫化炭素を用いれば、硫化亜鉛が生成する。これはプラズマ空間内では非常に活性な荷電粒子・活性ラジカルが高密度で存在するため、プラズマ空間内では多段階の化学反応が非常に高速に促進され、プラズマ空間内に存在する元素は熱力学的に安定な化合物へと非常な短時間で変換されるためである。
【0109】
セラミック層を構成する薄膜材料として具体的には、無機酸化物が好ましく、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化窒化珪素、酸化窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等、又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0110】
これらの有機金属化合物としては、
ケイ素化合物として、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキスジメチルアミノシラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、Mシリケート51等が挙げられる。
【0111】
チタン化合物としては、例えば、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンテトライソポロポキシド、チタンn−ブトキシド、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−エチルアセトアセテート)、チタンジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンアセチルアセトネート、ブチルチタネートダイマー等が挙げられる。
【0112】
ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド、ジルコニウムトリ−n−ブトキシドアセチルアセトネート、ジルコニウムジ−n−ブトキシドビスアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムヘキサフルオロペンタンジオネート等が挙げられる。
【0113】
アルミニウム化合物としては、アルミニウムエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムs−ブトキシド、アルミニウムt−ブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、トリエチルジアルミニウムトリ−s−ブトキシド等が挙げられる。
【0114】
硼素化合物としては、ジボラン、テトラボラン、フッ化硼素、塩化硼素、臭化硼素、ボラン−ジエチルエーテル錯体、ボラン−THF錯体、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、三フッ化硼素ジエチルエーテル錯体、トリエチルボラン、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、トリ(イソプロポキシ)ボラン、ボラゾール、トリメチルボラゾール、トリエチルボラゾール、トリイソプロピルボラゾール、等が挙げられる。
【0115】
錫化合物としては、テトラエチル錫、テトラメチル錫、二酢酸ジ−n−ブチル錫、テトラブチル錫、テトラオクチル錫、テトラエトキシ錫、メチルトリエトキシ錫、ジエチルジエトキシ錫、トリイソプロピルエトキシ錫、ジエチル錫、ジメチル錫、ジイソプロピル錫、ジブチル錫、ジエトキシ錫、ジメトキシ錫、ジイソプロポキシ錫、ジブトキシ錫、錫ジブチラート、錫ジアセトアセトナート、エチル錫アセトアセトナート、エトキシ錫アセトアセトナート、ジメチル錫ジアセトアセトナート等、錫水素化合物等、ハロゲン化錫としては、二塩化錫、四塩化錫等が挙げられる。
【0116】
また、その他の有機金属化合物としては、例えば、アンチモンエトキシド、ヒ素トリエトキシド、バリウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、ベリリウムアセチルアセトナート、ビスマスヘキサフルオロペンタンジオネート、ジメチルカドミウム、カルシウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、クロムトリフルオロペンタンジオネート、コバルトアセチルアセトナート、銅ヘキサフルオロペンタンジオネート、マグネシウムヘキサフルオロペンタンジオネート−ジメチルエーテル錯体、ガリウムエトキシド、テトラエトキシゲルマン、テトラメトキシゲルマン、ハフニウムt−ブドキシド、ハフニウムエトキシド、インジウムアセチルアセトナート、インジウム2,6−ジメチルアミノヘプタンジオネート、フェロセン、ランタンイソプロポキシド、酢酸鉛、テトラエチル鉛、ネオジウムアセチルアセトナート、白金ヘキサフルオロペンタンジオネート、トリメチルシクロペンタジエニル白金、ロジウムジカルボニルアセチルアセトナート、ストロンチウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、タンタルメトキシド、タンタルトリフルオロエトキシド、テルルエトキシド、タングステンエトキシド、バナジウムトリイソプロポキシドオキシド、マグネシウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、ジエチル亜鉛、などが挙げられる。
【0117】
また、これらの金属を含む原料ガスを分解して無機化合物を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、水蒸気、フッ素ガス、フッ化水素、トリフルオロアルコール、トリフルオロトルエン、硫化水素、二酸化硫黄、二硫化炭素、塩素ガスなどが挙げられる。
【0118】
金属元素を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで、各種の金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物を得ることができる。
【0119】
これらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合し、プラズマ放電発生装置にガスを送りこむ。
【0120】
このような放電ガスとしては、窒素ガスおよび/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
【0121】
上記放電ガスと反応性ガスを混合し、混合ガスGとして大気圧プラズマ放電装置10及び30に供給することで膜形成を行う。放電ガスと反応性ガスの割合は、得ようとする膜の性質によって異なるが、混合ガス全体に対し、放電ガスの割合を50%以上として反応性ガスを供給する。
【0122】
図4は、電極の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0123】
図4は上述した、第1の固定電極121と第2の固定電極122と固定電極123と基材搬送ロール11等の概念を示したもので、導電性の金属質母材41に対し、誘電体42が被覆されたものである。
【0124】
そして、金属質母材41に接続されたケーブル(不図示)、或いは必要に応じ金属質母材41の軸部43に設けられた電機子及びブラシ(不図示)等を介して高周波電源(不図示)に接続されている。
【0125】
なお、上記電極の内、高周波電界を発生する対となった電極の内少なくとも一方に誘電体42が被覆されている。
【0126】
導電性の金属質母材41としては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることが出来るが、チタン金属またはチタン合金が特に好ましい。
【0127】
また、金属質母材41の表面に被覆した誘電体42は、誘電体としてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。
【0128】
誘電体42は片肉で1mm程度被覆されていればよく、溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0129】
誘電体を被覆する電極においては、金属質母材と誘電体との間に線熱膨張係数の差が少ない組み合わせのものが好ましく、例えば金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜が特に好ましく、他に、金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング、金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜、金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング、金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜、金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング、等が挙げられる。
【0130】
このような組み合わせにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが出来る。
【0131】
再び話を排気手段に戻して、
図5は他の形態の振動手段を有する排気手段のノズルの部分説明図である。
【0132】
図5の排気手段20が、前述した第1の排気手段15或いは第2の排気手段16に相当しパーティクルを含む排ガスを排気する。
【0133】
排気ノズル201が第1のノズル153或いは第2のノズル163に相当し、排気ノズル201に、図示しないパーティクルを含む排ガスの経路である排気ダクトと、パーティクルを含む排ガスを吸引するブロアと、ブロアの駆動により発生した負圧による排気の流量を調整するマスフローコントローラと、が接続されている。
【0134】
そして、振動手段53は、少なくとも処理空間の下流側に備えられた排気部材である排気ノズル201に、パーティクルP等が排気ノズル201の内壁202に付着することを軽減する、パーティクルP等に直接振動を与える第2の振動手段である第2の超音波振動子531を有しており、第2の超音波振動子531は排気ノズル201の内部を通過するパーティクルPを含む排ガス203の移動方向204と直角方向に向けて超音波534を出力し、パーティクルPを含む排ガス203に直接超音波を当てるようになっている。
【0135】
なお、第2の超音波振動子531は、振動子取り付け部材535により、排気ノズル201の開口部533から第2の超音波振動子531の超音波振動面532が突出しない様に固定されている。
【0136】
これらにより、第2の超音波振動子531がパーティクルP及びパーティクルPを含む排ガス203を振動させることによりパーティクル等が排気部材の内壁に付着することを抑制することを可能とし、定期的なクリーニング頻度を少なくし、クリーニングによる生産性の低下を軽減し、オペレータの負担を軽減し、且つ固体となったパーティクルの一部等が薄膜に混入することを防止して高品質な薄膜を提供するプラズマ放電処理装置の提供を可能としている。
【0137】
なお、排気ノズル201の内壁202はフッ素を含む樹脂またはその複合材料で被覆され、未反応による原料ガス粉体等のパーティクルが排気口内壁に付着・堆積してしまう事を更に抑制し、また、内壁に堆積した堆積物を更に剥離容易としている。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の大気圧プラズマ放電処理装置の第1の形態の1例を示す概略図である。
【図2】本発明の大気圧プラズマ放電処理装置の第2の形態の1例を示す概略図である。
【図3】大気圧プラズマ放電処理ユニットを複数配列した場合の説明図である。
【図4】電極の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図5】他の形態の振動手段を有する排気手段のノズルの部分説明図である。
【符号の説明】
【0139】
10、30 大気圧プラズマ放電処理装置
11 基材搬送ロール
12 固定電極
15 第1の排気手段
16 第2の排気手段
17、32 処理空間
19 大気圧プラズマ放電ユニット
51、52、53 振動手段
121 第1の固定電極
122 第2の固定電極
150 パーティクルを含む排ガス
153 第1のノズル
163 第2のノズル
201 排気ノズル
202 内壁
511 超音波振動子
531 第2の超音波振動子
G 混合ガス
P パーティクル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1対の電極と、前記1対の電極と対向し基材を搬送する搬送ローラと、前記1対の電極間、または前記1対の電極と前記搬送ローラ間に高周波電界を印加させプラズマを発生させる電源と、前記1対の電極の間から薄膜を形成する混合ガスを供給する混合ガス供給手段と、を有するプラズマ放電処理装置において、
パーティクルを含む排ガスを前記1対の電極と前記搬送ローラとの対向領域から排出する、少なくとも前記対向領域の下流側に備えられた排気部材を有し、
少なくとも前記下流側に備えられた前記排気部材は前記排気部材の内壁に付着した粉体及び堆積物を剥離し且つ粉体等が該排気部材の内壁に付着することを軽減する、前記排気部材を振動させる振動手段を有することを特徴とするプラズマ放電処理装置。
【請求項2】
前記振動手段は前記排気部材の壁を前記排気部材の内部を通過する前記パーティクルを含む排ガスの移動方向と直角または平行、且つ前記壁の面に平行方向に振動させることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ放電処理装置。
【請求項3】
少なくとも1対の電極と、前記1対の電極と対向し基材を搬送する搬送ローラと、前記1対の電極間、または前記1対の電極と前記搬送ローラ間に高周波電界を印加させプラズマを発生させる電源と、前記1対の電極の間から薄膜を形成する混合ガスを供給する混合ガス供給手段と、を有するプラズマ放電処理装置において、
パーティクルを含む排ガスを前記1対の電極と前記搬送ローラとの対向領域から排出する、少なくとも前記対向領域の下流側に備えられた排気部材を有し、
少なくとも前記下流側に備えられた前記排気部材は粉体等が前記排気部材の内壁に付着することを軽減する、前記粉体等に直接振動を与える第2の振動手段を有することを特徴とするプラズマ放電処理装置。
【請求項4】
前記第2の振動手段は前記排気部材の内部を通過する前記パーティクルを含む排ガスの移動方向と直角方向に向けて超音波を出力し、前記パーティクルを含む排ガスに直接超音波を当てることを特徴とする請求項3に記載のプラズマ放電処理装置。
【請求項5】
前記振動手段及び前記第2の振動手段は10KHz〜100KHzの振動数を有し、1μm〜100μmの振幅を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラズマ放電処理装置。
【請求項6】
前記振動手段は超音波振動子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラズマ放電処理装置。
【請求項7】
前記排気部材の内壁はフッ素を含む樹脂またはその複合材料が被覆されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のプラズマ放電処理装置。
【請求項8】
前記プラズマは大気圧或いは大気圧近傍の環境下で発生させるものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のプラズマ放電処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−265598(P2006−265598A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83325(P2005−83325)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】